(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】タンデム型太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 30/57 20230101AFI20241218BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20241218BHJP
H10K 30/86 20230101ALI20241218BHJP
H10K 39/15 20230101ALI20241218BHJP
【FI】
H10K30/57
H10K30/40
H10K30/86
H10K39/15
(21)【出願番号】P 2023512693
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2021113582
(87)【国際公開番号】W WO2022037653
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】202010855550.7
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523059763
【氏名又は名称】隆基緑能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LONGI GREEN ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.388 Middle Aerospace Road, Chang’an Dist Xi’an, Shaanxi 710100, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲セン▼
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0190377(US,A1)
【文献】特開2018-093168(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104465992(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111357120(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104795499(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109411607(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107104189(CN,A)
【文献】特表2017-526176(JP,A)
【文献】特表2013-515016(JP,A)
【文献】特表2017-530546(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105609641(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0261394(US,A1)
【文献】特表2019-521531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テクスチャー面を有するボトムセルと、
前記ボトムセルのテクスチャー面上に形成される正孔輸送層と、
前記正孔輸送層上に形成される第2秩序化誘導層及びペロブスカイト吸収層であって、前記第2秩序化誘導層が前記正孔輸送層と前記ペロブスカイト吸収層との間に位置する第2秩序化誘導層及びペロブスカイト吸収層と、
前記ペロブスカイト吸収層上に形成される透明導電層と、を含むタンデム型太陽電池であって、
前記第2秩序化誘導層に含有される誘導材料は酢酸アンモニウム又は無機鉛化合物であり、
前記無機鉛化合物は酸化鉛、臭化鉛及びヨウ化鉛のうちの1種又は複数種であり、
前記ペロブスカイト吸収層の材料の化学一般式はABX
3であり、AはCH
3NH
3カチオン、C
4H
9NH
3カチオン、NH
2=CHNH
2カチオン、Csカチオンのうちの1種又は複数種であり、BはPb
2+、Sn
2+のうちの1種又は2種であり、XはCl
-、Br
-、I
-のうちの1種又は複数種であ
り、
前記ボトムセルと前記正孔輸送層との間に位置する第1秩序化誘導層をさらに含み、
前記第1秩序化誘導層に含有される誘導材料は棒状分子材料であり、前記正孔輸送層の材料は有機正孔輸送材料を用い、又は、
前記第1秩序化誘導層に含有される誘導材料は金属酸化物であり、前記正孔輸送層の材料は無機正孔輸送材料を用い、
前記棒状分子材料はBPTTであり、前記金属酸化物は酸化亜鉛であり、
前記第1秩序化誘導層の厚さが1nm~20nmである、
ことを特徴とするタンデム型太陽電池。
【請求項2】
前記第2秩序化誘導層の厚さが1nm~20nmであることを特徴とする請求項1に記載のタンデム型太陽電池。
【請求項3】
前記正孔輸送層の材料はPTAA、Cz2T、Spiro-OMeTAD、Spiro-TTB、銅フタロシアニン、酸化ニッケルのうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1
または2に記載のタンデム型太陽電池。
【請求項4】
前記正孔輸送層の厚さが5nm~100nmであることを特徴とする請求項1
または2に記載のタンデム型太陽電池。
【請求項5】
前記第2秩序化誘導層及び正孔輸送層を形成するプロセスはマグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスのうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項1
または2に記載のタンデム型太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記ペロブスカイト吸収層を形成する方法は、
共同蒸発成膜法によって前記第2秩序化誘導層上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成するステップと、
前記ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジンとホルムアミジン臭化水素酸塩の混合溶液を塗布し、ペロブスカイト材料フィルムを形成するステップと、
前記ペロブスカイト材料フィルムをアニール処理して、ペロブスカイト吸収層を形成するステップと、を含むことを特徴とする請求項1
または2に記載のタンデム型太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本開示は、2020年08月20日に中国特許庁に提出された、出願番号が202010855550.7、名称が「タンデム型太陽電池」である中国特許出願の優先権を主張しており、その全ての内容は引用によって本出開示に組み込まれている。
【0002】
本開示は太陽光発電の技術分野に関し、特にタンデム型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0003】
単一接合太陽電池は、所定波長の太陽光しか吸収できない場合が多い。太陽光の利用率を向上させるために、複合層を介してバンドギャップの異なる複数の太陽電池を直列に接続することで、異なる波長の太陽光を吸収することができる。ペロブスカイト電池はバンドギャップが広くて、それに、成分の配合比を調整することにより、ペロブスカイト電池の吸収スペクトルのバンドギャップを調整することができる。このように、ペロブスカイト電池は、タンデム型太陽電池のトップセルとして好適である。
【0004】
ペロブスカイト電池とテクスチャー構造を有するボトムセルとを連携する場合、ボトムセル上にフィルムの秩序度が高い機能層をどのように形成するかは、タンデム型太陽電池の光電変換効率を向上させる上での難点となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、ボトムセル上にフィルムの秩序度が高い機能層を形成することで、タンデム型太陽電池の光電変換効率を向上させるタンデム型太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本開示はタンデム型太陽電池を提供する。該タンデム型太陽電池は、テクスチャー面を有するボトムセルと、ボトムセルのテクスチャー面上に形成される正孔輸送層と、正孔輸送層上に形成される第2秩序化誘導層及びペロブスカイト吸収層であって、第2秩序化誘導層が正孔輸送層とペロブスカイト吸収層との間に位置する第2秩序化誘導層及びペロブスカイト吸収層と、ペロブスカイト吸収層上に形成される透明導電層と、を含む。第2秩序化誘導層に含有される誘導材料は有機アンモニウム塩又は無機鉛化合物である。
【0007】
上記の技術的解決手段を採用すると、ペロブスカイト吸収層は第2秩序化誘導層上に成長しており、第2秩序化誘導層の緩衝作用により、ペロブスカイト吸収層は正孔輸送層の表面の分子無秩序度による悪影響を回避することができる。また、ペロブスカイト吸収層は、第2秩序化誘導層の誘導作用により秩序化成長することができ、しかも、結晶性が高く、大きい結晶粒径結晶粒径を有する。この場合、ペロブスカイト吸収層は、欠陥が少なく、光電変換効率が高い。さらに、第2秩序化誘導層は、正孔輸送層とペロブスカイト吸収層との間の中間層として、フィルム間のエネルギー準位差を低減し、正孔輸送に有利なエネルギー準位整合を達成させ、タンデム型太陽電池の正孔輸送性能を向上させることができる。
【0008】
第2秩序化誘導層の誘導材料が有機アンモニウム塩又は無機鉛化合物である場合、有機アンモニウム塩及び無機鉛化合物はペロブスカイト吸収層のペロブスカイト材料の結晶構造によくマッチし、性質が近いので、高秩序なペロブスカイト吸収層の成長を容易に誘導することができる。
【0009】
いくつかの可能な実施形態では、上記の無機鉛化合物は酸化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛、塩化鉛、酢酸鉛、チオシアン酸鉛及び硫化鉛のうちの1種又は複数種である。これらの無機鉛化合物は金属酸化物であり、金属酸化物の正孔輸送層とは優れた適合性を有するため、第2秩序化誘導層と正孔輸送層との間には良好な界面接触を実現することができる。また、無機鉛化合物及びペロブスカイト吸収層のペロブスカイト材料がともに鉛化合物であるため、両者は優れた適合性を有し、これにより、第2秩序化誘導層はペロブスカイト吸収層の成長を誘導しやすくすることができる。
【0010】
いくつかの可能な実施形態では、上記の第2秩序化誘導層の厚さが1nm~20nmである。
【0011】
いくつかの可能な実施形態では、上記のタンデム型太陽電池は第1秩序化誘導層をさらに含む。第1秩序化誘導層はボトムセルと正孔輸送層との間に位置する。
【0012】
第2秩序化誘導層の作用メカニズムと同様に、第1秩序化誘導層の界面緩衝及び誘導作用により、正孔輸送層は、はより高い結晶化度と大きな粒径で秩序的に成長できるため、結晶粒径、正孔輸送層の欠陥を低減し、正孔輸送層の正孔輸送性能を向上させることができる。さらに、第1秩序化誘導層は、正孔輸送層とボトムセルとの間の中間層として、フィルム間のエネルギー準位差を小さくし、正孔輸送層とボトムセルとの間で正孔輸送に有利なエネルギー準位整合を達成させ、タンデム型太陽電池の正孔輸送性能を向上させることができる。
【0013】
第1秩序化誘導層の誘導材料が棒状分子材料である場合、棒状分子材料は密に積層することにより下層フィルムに直立しやすく、高度に秩序化された幾何学的チャネル形成される。この高度に秩序化された幾何学的チャネルは、強い相互作用を通じて、上層有機フィルムを幾何学的チャネルに沿って配向して成長させるように誘導できる。このとき、棒状分子材料を含有する第1秩序化誘導層は、その上層フィルムに対して良好な秩序成長誘導効果を発揮する。さらに、棒状分子材料は、厚さの小さいフィルムにおいて液晶に類似した性質を持ち、そして、その液晶相の温度が低いので、液晶の移動度を利用して低温で大面積の高秩序な第1秩序化誘導層を容易に形成することができる。
【0014】
いくつかの可能な実施形態では、上記の第1秩序化誘導層に含有される誘導材料は金属酸化物であり、正孔輸送層の材料は無機正孔輸送材料を用いる。
【0015】
上記の技術的解決手段を採用すると、金属酸化物は無機材料であり、無機材料で製造される無機正孔輸送層とは材料の性質が類似しているので、第1秩序化誘導層と正孔輸送層との間には良好な界面接触を形成することができ、適合性が良好であり、正孔輸送層の秩序化成長をより誘導しやすい。
【0016】
いくつかの可能な実施形態では、上記の第1秩序化誘導層の厚さが1nm~20nmである。この厚さの第1秩序化誘導層では、棒状分子材料などが液晶に類似した性質を持ちやすく、これにより、秩序化された大面積フィルムが形成されやすい。
【0017】
いくつかの可能な実施形態では、上記の棒状分子材料はBPTTであり、金属酸化物は酸化亜鉛である。
【0018】
いくつかの可能な実施形態では、上記の正孔輸送層の材料はPTAA、Cz2T、Spiro-OMeTAD、Spiro-TTB、銅フタロシアニン、酸化ニッケルのうちの1種又は複数種を含む。
【0019】
いくつかの可能な実施形態では、上記の正孔輸送層の厚さが5nm~100nmである。
【0020】
いくつかの可能な実施形態では、上記の第1秩序化誘導層、第2秩序化誘導層及び正孔輸送層を形成するプロセスはマグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスのうちの1種又は複数種である。
【0021】
いくつかの可能な実施形態では、上記のペロブスカイト吸収層を形成する方法は、
共同蒸発成膜法によって第2秩序化誘導層上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成するステップと、
ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジンとホルムアミジン臭化水素酸塩の混合溶液を塗布し、ペロブスカイト材料フィルムを形成するステップと、
ペロブスカイト材料フィルムをアニール処理して、ペロブスカイト吸収層を形成するステップと、を含む。
【0022】
上記の説明は本開示の技術的解決手段の概要に過ぎず、本開示の技術手段をより明確に把握するために、明細書の内容に基づいて本開示の技術手段を実施することができ、本開示の上記や他の目的、特徴及び利点をより理解しやすくするために、以下、本開示の具体的な実施形態を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで説明される図面は、本開示をさらに理解するために提供されるものであり、本開示の一部を構成し、本開示の例示的な実施例及びこれらの説明は本開示を解釈することに用いられ、本開示に対する不当な限定を構成しない。
【
図1】本開示の実施例に係るタンデム型太陽電池の構造概略図である。
【
図2】本開示の実施例に係るBPTT及びCz2Tの分子構造の概略図であり、aはBPTTの構造概略図、bはCz2Tの構造概略図である。
【
図3】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の構造概略図である。
【
図4】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図5】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図6】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図7】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図8】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図9】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図10】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図11】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図12】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図13】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【
図14】本開示の実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法の各段階における状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本開示をさらに詳細に説明する。なお、ここで説明する特定実施例は本開示を解釈するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0025】
なお、素子が別の素子に「固定」又は「配置」されると記載した場合、当該素子は別の素子に直接位置してもよいし、別の素子に間接的に位置してもよい。素子が別の素子に「接続」されると記載した場合、当該素子は別の素子に直接接続されてもよいし、別の素子に間接的に接続されてもよい。
【0026】
さらに、「第1」、「第2」などの用語は説明の目的にのみ使用され、相対重要性を指示又は暗示するか、又は係る技術的特徴の数を暗黙的に示すものではない。よって、「第1」、「第2」により限定される特徴は1つ又は複数の該特徴を明示的又は暗黙的に含む。本開示の説明においては、「複数」は、特に特定の限定がない限り、2つ以上を意味する。「いくつか」は、特に特定の限定がない限り、1つ以上を意味する。
【0027】
なお、本開示の説明においては、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」などの用語により示される方位又は位置関係は図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本開示を便利に又は簡単に説明するためのものに過ぎず、係る装置又は素子が必ずしも特定の方位にあり、特定の方位で構成、操作されることを指示又は暗示するものではないため、本開示を制限するものとして理解すべきではない。
【0028】
なお、本開示の説明においては、別途明確な規定や限定がない限り、「取り付ける」、「互いに接続」、「接続」などの用語は広く理解されるべきであり、例えば、固定接続や、着脱可能な接続や、あるいは一体的な接続でも可能である。機械的な接続や、電気的な接続でも可能であり、直接的に互いに接続することや、中間媒体を介して間接的に互いに接続することも可能であり、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本開示での具体的な意味を理解することができる。
【0029】
現在、結晶シリコン電池は、太陽光発電分野の主流製品として、高効率結晶シリコン太陽電池の技術に属し、その電池効率(26.7%)がその理論限界効率(29.4%)に近い。太陽光発電技術の更なる発展に伴い、タンデム型太陽電池技術は従来の結晶シリコン太陽電池の効率を超えるのに有効な手段であることが確認された。
【0030】
有機-無機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池は新型の高効率・低コストの太陽電池として世界中で広く注目されている。わずか数年の間に、ペロブスカイト太陽電池の光電変換効率は、2009年の3.8%から25%以上に急速に上昇し、市販のシリコン系太陽電池の効率に近づいている。ペロブスカイト電池では、成分の配合を調整することにより1.5eV~1.8eVの範囲内でペロブスカイト電池の吸収スペクトルのバンドギャップを調整し、ペロブスカイト電池を好適なタンデム型トップセルとすることができる。ペロブスカイト電池と結晶シリコン電池を組み合わせた結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池では、30%以上の光電変換効率を実現することが期待されている。現在、結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の変換効率が25%以上に達することができることを確認した文献がある。
【0031】
結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、結晶シリコン電池をボトムセルとして波長800nm~1200nmの太陽光のエネルギーを吸収し、ペロブスカイト電池をトップセルとして波長300nm~800nmの太陽光のエネルギーを吸収する。複合層を介してボトムセルとトップセルを接続することにより両端直列電池が形成され、タンデム型太陽電池全体の開路電圧はトップセルとボトムセルとの電圧の和であり、タンデム型太陽電池の電流はトップセルとボトムセルの最小電流であり、このとき、トップセルとボトムセルとの間で良好な電流整合が必要とされる。
【0032】
従来技術では、ペロブスカイト電池において、デバイスの各機能層が溶液スピンコート方法により製造される。高効率結晶シリコンボトムセルは、一般的に、ダブルピラミッド状テクスチャー面の光閉じ込め構造を用いて太陽光の吸収及び利用率を向上させ、電池変換効率を向上させる。テクスチャー面構造の結晶シリコンボトムセルにペロブスカイトトップセルを製造する際には、結晶シリコンボトムセルのミクロンスケールのピラミッド状テクスチャー面の光閉じ込め構造はペロブスカイトトップセルを溶液法で製造することにとっては難問となっている。その問題点としては、ペロブスカイト電池の各機能層の厚さが一般に数百ナノであるので、溶液状態の各機能層材料がピラミッド状テクスチャー面の底部に蓄積されやすく、このため、各機能層は溶液スピンコート法によってミクロンスケールのピラミッド状テクスチャー面に均一に堆積することが困難である。現在、結晶シリコンボトムセルを研磨し、ペロブスカイトトップセルと接触するテクスチャー面の粗さを低下させることで、ペロブスカイトトップセルを溶液法で製造することを可能とするという解決手段が一般的に採用される。このような方法は、結晶シリコンボトムセルに溶液スピンコート法によりペロブスカイトトップセルを製造することができるものの、テクスチャー面構造及びその光閉じ込め効果による電池効率のゲインを犠牲にする。また、研磨プロセスは電池全体の製造コストを大幅に増加させた。
【0033】
テクスチャー面上にペロブスカイトトップセルの各機能層(正孔輸送層、ペロブスカイト吸収層、電子輸送層、正孔遮断層、電極緩衝層、電極など)を均一に成膜するかは、結晶シリコンボトムセルのテクスチャー面上にペロブスカイトトップセルを製造する際に重要なパラメーターである。溶液加工方法に比べて、真空成膜プロセスは各種の基板上に様々な蒸着可能な機能性材料を成膜することができ、このため、真空成膜プロセスは結晶シリコンボトムセルのテクスチャー面上にペロブスカイトトップセルを製造するのに好適である。
【0034】
結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の従来の製造プロセスでは、正孔輸送層はトンネル複合層上に直接成長する。トンネル複合層は通常高濃度ドープ微結晶シリコンなどの無機材料で製造される。正孔輸送層の材料は、2,2’,7,7’-テトラキス(ジ-p-トリルアミノ)-9,9’-スピロビスフルオレン(spiro-TTB)などの有機半導体と、酸化ニッケルなどの無機半導体の2種に分けられる。無機トンネル複合層上に様々なタイプの正孔輸送材料を直接成長させる場合、無機材料で製造されるトンネル複合層の表面の分子の高度無秩序化及び有機材料に存在する材料性質の違いにより、トンネル複合層の表面において、正孔輸送層の材料分子に核生成サイトが多く、小さな島状の成長構造が形成されやすい。この場合、製造された正孔輸送層には格子整合度が低く、粒界欠陥が大きく、界面接触性能が劣り、フィルムの秩序度が悪いなどの問題が存在し、その結果として、正孔輸送層の正孔輸送性能が劣る。これらの問題は主に正孔輸送層とトンネル複合層の悪い適合性及びトンネル複合層の高度無秩序化に起因するフィルムの不意な成長に繋がる。同様に、ペロブスカイト吸収層も上記の正孔輸送層上に直接成膜する場合が多い。正孔輸送層が無機半導体材料で製造される場合、ペロブスカイト吸収層のペロブスカイト材料は、有機無機ハイブリッド材料として、酸化ニッケルとの間に適合性の問題が存在する。無機材料上にペロブスカイト材料を直接成膜すれば、無機材料の無秩序度によりペロブスカイト材料の結晶核生成サイトが多くなり、小さな結晶粒が成長し、フィルム成長の制御性が劣化する。以上から、正孔輸送層であっても、ペロブスカイト吸収層であっても、界面適合性が劣り、結晶粒径が小さく、フィルムの秩序度が低いなどの問題が存在する。これらの欠陥は各機能層の性能に悪影響を及ぼし、タンデム型太陽電池の光電変換効率を低下させる傾向がある。
【0035】
以上から分かるように、如何にボトムセル上にフィルムの秩序度が高い各機能層を形成するかはタンデム型太陽電池の光電変換効率を向上させるカギとなっている。
【0036】
上記の問題を解決するために、本開示の実施例はタンデム型太陽電池を提供する。該タンデム型太陽電池は、ペロブスカイト電池をトップセル、結晶シリコン電池、ポリシリコン電池、単結晶シリコンインゴット電池、CIGS電池、ペロブスカイト電池、ガリウムヒ素電池、有機太陽電池のうちのいずれかをボトムセルとするタンデム型太陽電池であってもよいが、これに限定されない。
【0037】
図1に示すように、本開示の実施例に係るタンデム型太陽電池は、順次積層されたボトムセル10、第1秩序化誘導層31、正孔輸送層32、第2秩序化誘導層33、ペロブスカイト吸収層34及び透明導電層36を含む。
【0038】
図1に示すように、ボトムセル10はタンデム型太陽電池に使用され得る上記のボトムセルのいずれか1種であってもよい。このボトムセル10はn型太陽電池であってもよく、p型太陽電池であってもよい。ボトムセル10は、構造やタイプに関わらず、テクスチャー面を有してもよい。該テクスチャー面はテクスチャリングプロセスによってボトムセル10の表面や裏面に形成されてもよい。具体的には、該テクスチャー面構造はピラミッド形状のテクスチャー面であってもよいし、逆ピラミッド形状のテクスチャー面などであってもよい。
【0039】
結晶シリコン電池を例として、ボトムセルの構造は、pn接合が形成されたp型結晶シリコンウエハ又はn型結晶シリコンウエハを含んでもよい。pn接合を有するp型結晶シリコンウエハ又はn型結晶シリコンウエハはボトムセルの光吸収層であり、太陽光を吸収して、光子を光生成キャリアに変換する。pn接合を有するp型結晶シリコンウエハ又はn型結晶シリコンウエハの表面や裏面には、テクスチャリングプロセスによってテクスチャー面構造が形成されてもよい。
【0040】
図1に示すように、タンデム型太陽電池は、ボトムセル10とペロブスカイトトップセルの光生成キャリアのトンネル複合収集を可能とするために、ボトムセル10上に位置するトンネル複合層20をさらに含んでもよい。該トンネル複合層20はスズドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、タングステンドープ酸化インジウム(IWO)、チタンドープ酸化インジウム(ITIO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などの透明金属酸化物で製造されたトンネル複合層20であってもよい。
【0041】
トンネル複合層20はボトムセル10のpn接合と反対の高濃度ドープ微結晶シリコンで製造されるトンネル複合層20であってもよい。例えば、n型ドープ微結晶シリコン層とp型ドープ微結晶シリコン層とからなるトンネル複合層20が挙げられる。ここで、p型ドープ微結晶シリコン層は正孔輸送層32に直接接触し、n型ドープ微結晶シリコン層はボトムセル10に直接接触する。具体的には、n型ドープ微結晶シリコン層はリンドープ微結晶シリコン層であってもよいし、p型ドープ微結晶シリコン層はホウ素ドープ微結晶シリコン層であってもよい。
【0042】
図1に示すように、実際の適用では、トンネル複合層20はプラズマ化学気相成膜(PECVD)プロセス、マグネトロンスパッタリングプロセス、ホットフィラメント化学気相成膜プロセス、触媒化学気相成膜プロセスのうちの1種により製造され得る。ボトムセル10がテクスチャー面を有するため、ボトムセル10上に追従して成長させたトンネル複合層20もテクスチャー面構造を有することになる。
【0043】
図1に示すように、上記の第1秩序化誘導層31はトンネル複合層20上に形成される。なお、実際の適用では、第1秩序化誘導層31も省略されてもよい。第1秩序化誘導層31を形成するプロセスはマグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0044】
図1に示すように、第1秩序化誘導層31の秩序度を向上させるために、第1秩序化誘導層31を製造する誘導材料が液晶に類似した性質を有するように第1秩序化誘導層31の厚さなどのパラメータを調整し、これにより、大面積秩序フィルムを形成することができ、第1秩序化誘導層31の秩序度向上に有利である。第1秩序化誘導層31が高い秩序度を有する場合、その上層の正孔輸送層32の秩序化成長に有利であり、それにより、正孔輸送層32の欠陥を減少させ、正孔輸送性能を向上させることができる。
【0045】
例えば、第1秩序化誘導層31の厚さが1nm~20nmである場合、第1秩序化誘導層31は極薄フィルムであり、第1秩序化誘導層31の誘導材料は、極薄フィルムにおいて液晶に類似した性質を発現させやすく、これにより、液晶の流動性を利用して大面積秩序フィルムを形成しやすく、第1秩序化誘導層31の秩序度向上に有利である。第1秩序化誘導層31の厚さは1nm、5nm、8nm、10nm、12nm、18nm、20nmなどであってもよい。
【0046】
図1に示すように、上記の正孔輸送層32は第1秩序化誘導層31上に形成される。正孔輸送層32を形成するプロセスはマグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスのうちの1種又は複数種であってもよい。なお、正孔輸送層32の厚さは5nm~100nmであってもよい。例えば、正孔輸送層32の厚さは5nm、10nm、30nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nmなどであってもよい。
【0047】
図1に示すように、正孔輸送層32は第1秩序化誘導層31のファンデルワールス作用により誘導されて、第1秩序化誘導層31上に形成され、特定の配向、相状態及び秩序凝集状態構造を持つ。
【0048】
図1に示すように、上記の第1秩序化誘導層31が弱エピタキシャル能力を有するので、弱エピタキシャル相互作用(ファンデルワールス作用)により、第1秩序化誘導層31と正孔輸送層32との間に格子整合関係を形成し、正孔輸送層32の秩序成長を誘導し、それによって、正孔輸送層32の微細構造の制御を実現することができる。
【0049】
図1に示すように、実際の適用では、高度に秩序化された第1秩序化誘導層31を形成し、第1秩序化誘導層31に良好な秩序化誘導作用を持たせるために、第1秩序化誘導層31の誘導材料として棒状分子材料を使用して、有機正孔輸送材料で製造される正孔輸送層32を誘導してもよい。棒状分子材料は密に積層することにより下層フィルム(トンネル複合層20)に直立しやすく、高度に秩序化された幾何学的チャネルを形成される。しかも、棒状分子材料は、厚さの小さいフィルムにおいて液晶に類似した性質を持ち、そして、その液晶相の温度が低いので、比較的低い温度で液晶の流動性を利用して高度に秩序化された大面積フィルムを形成しやすい。以上から、棒状分子材料は分子特性及び液晶特性により高度に秩序化された第1秩序化誘導層31を形成しやすく、このため、優れた秩序化成長誘導作用がある。具体的には、棒状分子材料はビフェニルチオフェン(BPTT)を選択することができる。BPTTは構造が安定的な幾何学的チャネルを形成することができ、これにより、高度に秩序化されてかつ安定性に優れたフィルムの成長を誘導することができる。
【0050】
実際の適用では、金属酸化物は第1秩序化誘導層31の誘導材料として、無機正孔輸送材料で製造される正孔輸送層32を誘導してもよい。この場合、金属酸化物は無機材料であり、無機材料で製造される無機正孔輸送層32と材料性質が類似しており、これにより、第1秩序化誘導層31と正孔輸送層32との間には良好な界面接触を実現することができ、適合性が良好であり、正孔輸送層32の秩序化成長をより誘導しやすい。具体的には、金属酸化物は酸化亜鉛であってもよい。
【0051】
上記の正孔輸送層32の材料はPTAA、Cz2T、Spiro-OMeTAD、Spiro-TTB、銅フタロシアニン、酸化ニッケルのうちの1種又は複数種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0052】
一例として、第1秩序化誘導層31の誘導材料分子がBPTTである場合、BPTTフィルムの表面にある幾何学的チャネルのファンデルワールス作用(弱相互作用)によって、銅フタロシアニン材料の秩序化成長が誘導されてもよい。さらに、BPTTフィルムと銅フタロシアニンフィルムとの間の弱相互作用により、両者は配向関係のみが存在し、厳格な格子整合関係がなく、このため、第1秩序化誘導層31と通約関係のない銅フタロシアニン正孔輸送層を製造することができる。
【0053】
図1に示すように、実際の適用では、成長誘導対象の正孔輸送層32の材料性質に応じて、正孔輸送層32と適合性を有し且つ相互作用の強い材料を用いて第1秩序化誘導層31を製造してもよい。例えば、正孔輸送層32の材料が酸化ニッケルである場合、第1秩序化誘導層31に含有される誘導材料は酸化亜鉛であってもよい。正孔輸送層32の材料がCz2Tである場合、第1秩序化誘導層31に含有される誘導材料分子はBPTTであってもよい。
【0054】
理解の便宜上、BPTTを例として、第1秩序化誘導層31が正孔輸送層32の秩序化成長を誘導する過程について説明する。
図2はBPTT及びCz2Tの分子構造図を示している。
図2に示すように、BPTTは剛性棒状分子であり、トンネル複合層20の表面に秩序度の高いフィルムを形成しやすく、その末端基のベンゼン環が結晶アレイの表面に特定配向の幾何学的チャネルを形成する。BPTT材質の第1秩序化誘導層31の表面にCz2T材質の正孔輸送層32を成長させる際には、Cz2T分子の外周のベンゼン環上の水素原子とBPTT材料で形成された幾何学的チャネル内のベンゼン環との間にファンデルワールス作用が存在し、これにより、Cz2T分子がBPTTの幾何学的チャネルに沿って成長するように誘導される。Cz2T分子がBPTTの幾何学的チャネルに沿って成長する過程では、Cz2T分子とBPTT分子との間のファンデルワールス作用力は弱相互作用であり、Cz2T分子の成長とBPTT第1秩序化誘導層31との間には配向関係があり、これにより、Cz2T分子はBPTT分子で形成された幾何学的チャネルに沿って整然と積み上げられ、秩序度の高い正孔輸送層32を形成する。また、Cz2T分子とBPTT分子との間には厳格な格子整合関係がなく、これによって、正孔輸送層32の厚さが第1秩序化誘導層31により影響されることを回避する。
【0055】
以上より、第1秩序化誘導層31の緩衝作用及び誘導作用により、正孔輸送層32は秩序化成長することができ、高い結晶化度、大きな結晶粒径を有することが分かった。この場合、正孔輸送層32は、欠陥が少なく、良好な正孔輸送性能を有する。さらに、第1秩序化誘導層31は、正孔輸送層32とトンネル複合層20との間の中間層として、フィルム間のエネルギー準位差を小さくし、正孔輸送層32とトンネル複合層20との間で正孔輸送に有利なエネルギー準位整合を達成させ、タンデム型太陽電池の正孔輸送性能を向上させることができる。
【0056】
以上に基づいて、
図1に示すように、第2秩序化誘導層33は正孔輸送層32上に形成される。第2秩序化誘導層33を形成するプロセスはマグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスのうちの1種又は複数種であってもよい。
【0057】
上記の方法で製造された第2秩序化誘導層33の厚さは1nm~20nmであってもよい。例えば、第2秩序化誘導層33の厚さは1nm、5nm、8nm、10nm、12nm、18nm、20nmなどである。
【0058】
図1に示すように、上記のペロブスカイト吸収層34は第2秩序化誘導層33上に形成される。ペロブスカイト吸収層34を形成する方法は、共同蒸発成膜法によって正孔輸送層32上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成するステップと、ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジンとホルムアミジン臭化水素酸塩の混合溶液を塗布し、ペロブスカイト材料フィルムを形成するステップと、ペロブスカイト材料フィルムをアニール処理して、ペロブスカイト吸収層34を形成するステップと、を含んでもよい。
【0059】
上記のペロブスカイト吸収層34の厚さは250nm~1000nmであってもよいが、実際の状況に応じて設定してよい。ペロブスカイト吸収層34の厚さは250nm、350nm、500nm、700nm、800nm、900nm、1000nmなどであってもよい。
【0060】
ペロブスカイト吸収層34の材料は1種又は複数種のペロブスカイト材料を含んでもよい。ペロブスカイト材料の化学一般式はABX3であり、AはCH3NH3カチオン、C4H9NH3カチオン、NH2=CHNH2カチオン、Csカチオンのうちの1種又は複数種であり、BはPb2+、Sn2+のうちの1種又は2種であり、XはCl-、Br-、I-のうちの1種又は複数種である。
【0061】
図1に示すように、ペロブスカイト吸収層34は第2秩序化誘導層33上に形成され、特定の配向、相状態及び秩序凝集状態構造を持つ。第2秩序化誘導層33は界面緩衝を提供し、その上層のペロブスカイト吸収層34の秩序化成長を誘導し、秩序度の高いペロブスカイト吸収層34を製造し、正孔輸送層32とペロブスカイト吸収層34との間のエネルギー準位整合を改善し、正孔輸送性能を向上させるためのものである。
【0062】
秩序度の高い第2秩序化誘導層33を形成し、第2秩序化誘導層33に良好な秩序化誘導作用を持たせるために、誘導材料として有機アンモニウム塩又はペロブスカイト材料の性質に近い無機鉛化合物が使用されてもよい。
【0063】
第2秩序化誘導層の誘導材料が有機アンモニウム塩又は無機鉛化合物である場合、有機アンモニウム塩及び無機鉛化合物はペロブスカイト吸収層34のペロブスカイト材料に対して結晶形構造の整合度が高く、性質が類似しており、高度に秩序化されたペロブスカイト吸収層34の成長を誘導しやすい。
【0064】
図1に示すように、実際の適用では、有機アンモニウム塩は酢酸アンモニウムなどであってもよい。無機鉛化合物は酸化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛、塩化鉛、酢酸鉛、チオシアン酸鉛及び硫化鉛のうちの1種又は複数種であってもよい。これらの無機鉛化合物は金属酸化物であり、金属酸化物の正孔輸送層32とは優れた適合性を有し、これにより、第2秩序化誘導層33と正孔輸送層32との間には良好な界面接触を実現することができる。また、無機鉛化合物及びペロブスカイト吸収層34のペロブスカイト材料はいずれも鉛化合物であり、両者は優れた適合性を有し、これにより、第2秩序化誘導層33はペロブスカイト吸収層34の成長をより誘導しやすい。
【0065】
以上から、ペロブスカイト吸収層34は第2秩序化誘導層33上に成長しており、第2秩序化誘導層33の緩衝作用により、ペロブスカイト吸収層34は正孔輸送層32の表面分子の無秩序度による悪影響を回避することができることが分かった。また、ペロブスカイト吸収層34は、第2秩序化誘導層33の誘導作用により秩序化成長することができ、高い結晶化度、大きな結晶粒径を有する。この場合、ペロブスカイト吸収層34は、欠陥が少なく、光電変換効率が高い。さらに、第2秩序化誘導層33は、正孔輸送層32とペロブスカイト吸収層34との間の中間層として、フィルム間のエネルギー準位差を小さくし、正孔輸送に有利なエネルギー準位整合を達成させ、タンデム型太陽電池の正孔輸送性能を向上させることができる。
【0066】
図1に示すように、光生成キャリアを輸送するために、上記の透明導電層36とペロブスカイト吸収層34との間に電子輸送層35をさらに有してもよい。該電子輸送層35の材質はSnO2などであってもよい。
【0067】
図1に示すように、上記の透明導電層36は電子輸送層35上に形成され、光生成キャリアを収集する。もちろん、電子輸送層35が省略された場合、透明導電層36はペロブスカイト吸収層34上に直接形成されてもよい。透明導電層36の材料はスズドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、タングステンドープ酸化インジウム(IWO)、チタンドープ酸化インジウム(ITIO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)などの透明金属酸化物のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0068】
以上は本開示の実施例に係るタンデム型太陽電池であり、ただし、タンデム型太陽電池の表面と裏面、すなわち、透明導電層36及びボトムセル10のペロブスカイトトップセルから離れた面には電極37が形成されるべきである。
【0069】
本開示の実施例は上記のタンデム型太陽電池の製造方法を更に提供する。具体的には、以下、
図3に示すp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池を例として、その製造方法を説明し、製造方法のステップは具体的には以下の通りである。
【0070】
図4に示すように、p型結晶シリコンウエハ11を提供する。p型結晶シリコンウエハ11に対して、研磨、テクスチャリング及び洗浄を順次行い、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハ11を形成する。
【0071】
図5に示すように、イオン注入などの拡散プロセスを利用して、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハ11の表面にn型高濃度ドープ層12を形成する。この場合、p型結晶シリコンウエハ11はpn接合を有し、上記のステップで得られた構造はボトムセル10として定義される。
【0072】
図6に示すように、PECVDプロセス、マグネトロンスパッタリングプロセス、ホットフィラメント化学気相成膜プロセス又は触媒化学気相成膜プロセスによって、p型結晶シリコンウエハ11のpn接合を有する面(ボトムセル10)に透明金属酸化物材質のトンネル複合層20を形成する。
【0073】
図7に示すように、マグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスによって、トンネル複合層20上に厚さが1nm~20nmである第1秩序化誘導層31を形成する。
【0074】
図8に示すように、マグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスによって、第1秩序化誘導層31上に厚さが5nm~100nmである正孔輸送層32を形成する。
【0075】
図9に示すように、マグネトロンスパッタリングプロセス、レーザパルス成膜プロセス、熱蒸着成膜プロセス、化学気相成膜プロセス、溶液成膜プロセス、ゲル-ゾル成膜プロセス又は水熱法によるナノ粒子合成プロセスによって、正孔輸送層32上に厚さが1nm~20nmである第2秩序化誘導層33を形成する。
【0076】
図10に示すように、第2秩序化誘導層33上に厚さが250nm~1000nmであるペロブスカイト吸収層34を形成する。具体的には、以下のことを含む。
【0077】
【0078】
ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジン(FAI)とホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)の混合溶液を塗布し、FAIとFABrの混合溶液はヨウ化鉛と臭化セシウムと反応してペロブスカイト材料フィルムを形成する。FAIとFABrの混合溶液の溶媒はエタノール又はイソプロパノールであってもよい。
【0079】
100℃~200℃の温度で、ペロブスカイト材料フィルムを5min~30 minアニール処理して、ペロブスカイト吸収層34を形成する。ペロブスカイト吸収層34の材料成分はCsxFA1-xPb(BryI1-y)3であり、ペロブスカイト吸収層34の厚さは100nm~1000nmであってもよい。
【0080】
図11に示すように、熱蒸着プロセスによって、ペロブスカイト吸収層34上に厚さが0.1nm~10nmである電子輸送界面層351及び厚さが1nm~20nmであるリーク電流修復層352を形成する。電子輸送界面層351の材料はLiFであってもよい。リーク電流修復層352の材料はC60又はフラーレン誘導体(PCBM)であってもよい。
【0081】
図12に示すように、化学気相成膜プロセス、物理気相成膜プロセス、原子層成膜プロセス、溶液成膜プロセスのうちのいずれかを用いて、リーク電流修復層352上に厚が1nm~30nmである電子輸送層35を形成する。電子輸送層35の材料はSnO2であってもよい。
【0082】
図13に示すように、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、電子輸送層35上に透明金属酸化物材質の、厚さが30nm~200nmである透明導電層36を形成する。
【0083】
図14に示すように、シルクスクリーン印刷又はマスク蒸着プロセスによって、ボトムセル10と透明導電層36上に材質が銀である電極37(厚さが100nm~500nmである)を形成する。
【0084】
本開示の実施例に係るタンデム型太陽電池の性能を検証するために、以下、実施例と比較例を比較することにより説明する。
【0085】
実施例1
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、順次積層されたp型結晶シリコンボトムセル、トンネル複合層、BPTT材質の第1秩序化誘導層、Cz2T材質の正孔輸送層、臭化鉛材質の第2秩序化誘導層、ペロブスカイト吸収層、電子輸送界面層、リーク電流修復層、電子輸送層及び透明導電層を含む。
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
ステップ1、p型結晶シリコンウエハを提供する。p型結晶シリコンウエハに対して、研磨、テクスチャリング及び洗浄を順次行い、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハを形成する。
ステップ2、イオン注入プロセスによって、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハの表面にn型高濃度ドープ層を形成する。
ステップ3、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、p型結晶シリコンウエハのpn接合を有する面(ボトムセル)上にITO材質のトンネル複合層を形成する。
ステップ4、熱蒸着成膜プロセスによって、トンネル複合層上にBPTT材質の第1秩序化誘導層(厚さが1nmである)を形成する。
ステップ5、熱蒸着成膜プロセスによって、第1秩序化誘導層上にCz2T材質の正孔輸送層(厚さが5nmである)を形成する。
ステップ6、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、正孔輸送層上に臭化鉛材質の第2秩序化誘導層(厚さが1nmである)を形成する。
ステップ7、第2秩序化誘導層上にペロブスカイト吸収層を形成する。具体的には、以下のことを含む。
共同蒸発成膜法によって第2秩序化誘導層上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成し、ここで、臭化セシウム(CsBr)の形成速度は0.05A/s、ヨウ化鉛(PbI2)の形成速度は0.1A/s、全厚さは250nmである。
ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジン(FAI)とホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)の混合溶液を塗布し、FAIとFABrの混合溶液はヨウ化鉛と臭化セシウムと反応して、ペロブスカイト材料フィルムを形成する。FAIとFABrの混合溶液の溶媒はエタノール又はイソプロパノールであってもよい。
100℃の温度で、ペロブスカイト材料フィルムを30minアニール処理して、ペロブスカイト吸収層を形成する。ペロブスカイト吸収層の材料成分はCsxFA1-xPb(BryI1-y)3であり、ペロブスカイト吸収層の厚さは250nmであってもよい。
ステップ8、熱蒸着プロセスによって、ペロブスカイト吸収層上にLiF材質の電子輸送界面層(厚さが0.1nmである)及びC60材質のリーク電流修復層(厚さが1nmである)を形成する。
ステップ9、原子層成膜プロセスによって、リーク電流修復層上にSnO2材質の電子輸送層(厚さが1nmである)を形成する。
ステップ10、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、電子輸送層上にIWO材質の透明導電層(30nm)を形成する。
ステップ11、シルクスクリーン印刷によって、ボトムセルと透明導電層上に材質が銀である電極(厚さが100nmである)を形成する。
【0086】
実施例2
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、順次積層されたp型結晶シリコンボトムセル、トンネル複合層、酸化亜鉛材質の第1秩序化誘導層、酸化ニッケル材質の正孔輸送層、酸化鉛材質の第2秩序化誘導層、ペロブスカイト吸収層、電子輸送界面層、リーク電流修復層、電子輸送層及び透明導電層を含む。
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
ステップ1、p型結晶シリコンウエハを提供する。p型結晶シリコンウエハに対して、研磨、テクスチャリング及び洗浄を順次行い、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハを形成する。
ステップ2、イオン注入プロセスによって、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハの表面にn型高濃度ドープ層を形成する。
ステップ3、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、p型結晶シリコンウエハのpn接合を有する面(ボトムセル)上にFTO材質のトンネル複合層を形成する。
ステップ4、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、トンネル複合層上に酸化亜鉛材質の第1秩序化誘導層(厚さが20nmである)を形成する。
ステップ5、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、第1秩序化誘導層上に酸化ニッケル材質の正孔輸送層(厚さが100nmである)を形成する。
ステップ6、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、正孔輸送層上に酸化鉛材質の第2秩序化誘導層(厚さが20nmである)を形成する。
ステップ7、第2秩序化誘導層上にペロブスカイト吸収層を形成する。具体的には、以下のことを含む。
共同蒸発成膜法によって第2秩序化誘導層上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成し、ここで、臭化セシウム(CsBr)の形成速度は0.2A/s、ヨウ化鉛(PbI2)の形成速度は10A/s、全厚さは1000nmである。
ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジン(FAI)とホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)の混合溶液を塗布し、FAIとFABrの混合溶液はヨウ化鉛と臭化セシウムと反応して、ペロブスカイト材料フィルムを形成する。FAIとFABrの混合溶液の溶媒はエタノール又はイソプロパノールであってもよい。
200℃の温度で、ペロブスカイト材料フィルムを5minアニール処理して、ペロブスカイト吸収層を形成する。ペロブスカイト吸収層の材料成分はCsxFA1-xPb(BryI1-y)3であり、ペロブスカイト吸収層の厚さは1000nmである。
ステップ8、熱蒸着プロセスによって、ペロブスカイト吸収層上にLiF材質の電子輸送界面層(厚さが10nmである)及びPCBM材質のリーク電流修復層(厚さが20nmである)を形成する。
ステップ9、原子層成膜プロセスによって、リーク電流修復層上にSnO2材質の電子輸送層(厚さが30nmである)を形成する。
ステップ10、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、電子輸送層上にIzO材質の透明導電層(200nm)を形成する。
ステップ11、シルクスクリーン印刷によって、ボトムセルと透明導電層上に材質が銀である電極(厚さが500nmである)を形成する。
【0087】
実施例3
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、順次積層されたp型結晶シリコンボトムセル、トンネル複合層、酸化亜鉛材質の第1秩序化誘導層、酸化ニッケル材質の正孔輸送層、ヨウ化鉛材質の第2秩序化誘導層、ペロブスカイト吸収層、電子輸送界面層、リーク電流修復層、電子輸送層及び透明導電層を含む。
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
ステップ1、p型結晶シリコンウエハを提供する。p型結晶シリコンウエハに対して、研磨、テクスチャリング及び洗浄を順次行い、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハを形成する。
ステップ2、イオン注入プロセスによって、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハの表面にn型高濃度ドープ層を形成する。
ステップ3、PECVDプロセスによって、p型結晶シリコンウエハのpn接合を有する面(ボトムセル)上にITO材質のトンネル複合層を形成する。
ステップ4、レーザパルス成膜プロセスによって、トンネル複合層上に酸化亜鉛材質の第1秩序化誘導層(厚さが8nmである)を形成する。
ステップ5、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、第1秩序化誘導層上に酸化ニッケル材質の正孔輸送層(厚さが60nmである)を形成する。
ステップ6、レーザパルス成膜プロセスによって、正孔輸送層上にヨウ化鉛材質の第2秩序化誘導層(厚さが8nmである)を形成する。
ステップ7、第2秩序化誘導層上にペロブスカイト吸収層を形成する。具体的には、以下のことを含む。
共同蒸発成膜法によって第2秩序化誘導層上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成し、ここで、臭化セシウム(CsBr)の形成速度は0.1A/s、ヨウ化鉛(PbI2)の形成速度は3A/s、全厚さは500nmである。
ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジン(FAI)とホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)の混合溶液を塗布し、FAIとFABrの混合溶液はヨウ化鉛と臭化セシウムと反応して、ペロブスカイト材料フィルムを形成する。FAIとFABrの混合溶液の溶媒はエタノール又はイソプロパノールであってもよい。
120℃の温度で、ペロブスカイト材料フィルムを20minアニール処理して、ペロブスカイト吸収層を形成する。ペロブスカイト吸収層の材料成分はCsxFA1-xPb(BryI1-y)3であり、ペロブスカイト吸収層の厚さは500nmである。
ステップ8、熱蒸着プロセスによって、ペロブスカイト吸収層上にLiF材質の電子輸送界面層(厚さが5nmである)及びPCBM材質のリーク電流修復層(厚さが10nmである)を形成する。
ステップ9、化学気相成膜プロセスによって、リーク電流修復層上にSnO2材質の電子輸送層(厚さが12nmである)を形成する。
ステップ10、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、電子輸送層上にIZO材質の透明導電層(50nm)を形成する。
ステップ11、シルクスクリーン印刷によって、ボトムセルと透明導電層上に材質が銀である電極(厚さが250nmである)を形成する。
【0088】
実施例4
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、順次積層されたp型結晶シリコンボトムセル、トンネル複合層、BPTT材質の第1秩序化誘導層、銅フタロシアニン材質の正孔輸送層、酢酸アンモニウム材質の第2秩序化誘導層、ペロブスカイト吸収層、電子輸送界面層、リーク電流修復層、電子輸送層及び透明導電層を含む。
本実施例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は、具体的には、以下のとおりである。
ステップ1、p型結晶シリコンウエハを提供する。p型結晶シリコンウエハに対して、研磨、テクスチャリング及び洗浄を順次行い、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハを形成する。
ステップ2、イオン注入プロセスによって、テクスチャー面を有するp型結晶シリコンウエハの表面にn型高濃度ドープ層を形成する。
ステップ3、PECVDプロセスによって、p型結晶シリコンウエハのpn接合を有する面(ボトムセル)上にAZO材質のトンネル複合層を形成する。
ステップ4、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、トンネル複合層上にBPTT材質の第1秩序化誘導層(厚さが16nmである)を形成する。
ステップ5、熱蒸着成膜プロセスによって、第1秩序化誘導層上に銅フタロシアニン材質の正孔輸送層(厚さが80nmである)を形成する。
ステップ6、レーザパルス成膜プロセスによって、正孔輸送層上に酢酸アンモニウム材質の第2秩序化誘導層(厚さが16nmである)を形成する。
ステップ7、第2秩序化誘導層上にペロブスカイト吸収層を形成する。具体的には、以下のことを含む。
共同蒸発成膜法によって第2秩序化誘導層上にヨウ化鉛と臭化セシウムを形成し、ここで、臭化セシウム(CsBr)の形成速度は0.15A/s、ヨウ化鉛(PbI2)の形成速度は7A/s、全厚さは800nmである。
ヨウ化鉛と臭化セシウム上によう化ホルムアミジン(FAI)とホルムアミジン臭化水素酸塩(FABr)の混合溶液を塗布し、FAIとFABrの混合溶液はヨウ化鉛と臭化セシウムと反応して、ペロブスカイト材料フィルムを形成する。FAIとFABrの混合溶液の溶媒はエタノール又はイソプロパノールであってもよい。
180℃の温度で、ペロブスカイト材料フィルムを20minアニール処理して、ペロブスカイト吸収層を形成する。ペロブスカイト吸収層の材料成分はCsxFA1-xPb(BryI1-y)3であり、ペロブスカイト吸収層の厚さは800nmである。
ステップ8、熱蒸着プロセスによって、ペロブスカイト吸収層上にLiF材質の電子輸送界面層(厚さが9nmである)及びC60材質のリーク電流修復層(厚さが18nmである)を形成する。
ステップ9、物理気相成膜プロセスによって、リーク電流修復層上にSnO2材質の電子輸送層(厚さが17nmである)を形成する。
ステップ10、マグネトロンスパッタリングプロセスによって、電子輸送層上にITO材質の透明導電層(100nm)を形成する。
ステップ11、シルクスクリーン印刷によって、ボトムセルと透明導電層上に材質が銀である電極(厚さが300nmである)を形成する。
【0089】
比較例1
本比較例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、BPTT材質の第1秩序化誘導層及び臭化鉛材質の第2秩序化誘導層を省略した以外、実施例1に記載のタンデム型太陽電池の構造と同様である。
本比較例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は実施例1と同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0090】
比較例2
本比較例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、BPTT材質の第1秩序化誘導層を省略した以外、実施例1に記載のタンデム型太陽電池の構造と同様である。
本比較例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は実施例1と同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0091】
比較例3
本比較例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池は、臭化鉛材質の第2秩序化誘導層を省略した以外、実施例1に記載のタンデム型太陽電池の構造と同様である。
本比較例に係るp型結晶シリコン-ペロブスカイトタンデム型太陽電池の製造方法は実施例1と同様であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0092】
タンデム型太陽電池の性能を検証するために、実施例1~4及び比較例1~3で製造されたデバイスの光電変換効率、フィルファクタ(FF)、開路電圧(VOC)、短絡電流(JSC)などの性能パラメータをテストし、性能パラメータの比較を表1に示す。
【0093】
表1 各タンデム型太陽電池の性能パラメータの比較表
【0094】
上記の実施例、比較例及び表1から分かるように、第1秩序化誘導層又は第2秩序化誘導層を個別に設置すると、光電変換効率は向上したが、第1秩序化誘導層と第2秩序化誘導層の両方を設置したタンデム型太陽電池では、光電変換効率は大幅に向上し、その原因は主にフィルファクタ(FF)と開路電圧(Voc)の上昇によるものである。このことから、第1秩序化誘導層と第2秩序化誘導層を使用することにより、正孔輸送層及びペロブスカイト吸収層の結晶性能が向上し、光生成キャリアの分離や輸送に有利であり、電子と正孔のタンデム型太陽電池における蓄積及び複合が減少される。
【0095】
上記の実施形態の説明においては、具体的な特徴、構造、材料又は特性は実施例又は例のいずれか又は複数において適切な方式で組み合わせられてもよい。
【0096】
以上は本開示の特定実施形態に過ぎず、本開示の保護範囲はこれらに限定されず、当業者が本開示で開示された技術範囲内で容易に想到し得る変化や置換は、本開示の保護範囲に含まれるものとする。よって、本開示の保護範囲は前記の特許請求の範囲による保護範囲に準じるべきである。