(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】立体回路部品及び立体回路部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20241218BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241218BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241218BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241218BHJP
H05K 3/44 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 F
H01L23/12 Q
H05K1/02 F
H05K3/00 W
H05K3/44 Z
(21)【出願番号】P 2023525937
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2022022757
(87)【国際公開番号】W WO2022255496
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021094143
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100194777
【氏名又は名称】田中 憲治
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 朗子
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 敦
(72)【発明者】
【氏名】山本 智史
(72)【発明者】
【氏名】太田 寛紀
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-025123(JP,A)
【文献】特開2012-094605(JP,A)
【文献】特開2020-102587(JP,A)
【文献】特開2020-147818(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/12
H05K 1/02
H05K 3/00
H05K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体回路部品であって、
金属部材と、
前記金属部材の上に形成された第1樹脂層と、
第1樹脂層の表面の配線領域に形成された、メッキ膜を含む第1回路配線と、
第1樹脂層の表面の実装領域に実装され、第1回路配線と電気的に接続している第1実装部品とを有し、
第1樹脂層の表面において、前記配線領域と前記実装領域とが重複する重複領域の表面粗さRzが10μm~120μmであり、
前記重複領域における第1回路配線と、第1樹脂層の前記金属部材と対向する面との最短距離が、10μm~100μmであり、
前記重複領域の表面粗さRaが、前記重複領域以外の前記配線領域の表面粗さRaより大きい、立体回路部品。
【請求項2】
前記重複領域の表面粗さRzが、前記重複領域以外の前記配線領域の表面粗さRzより大きい、請求項1に記載の立体回路部品。
【請求項3】
前記重複領域以外の第1樹脂層の表面に形成され、第1回路配線を覆う第2樹脂層を更に有し、
前記重複領域の表面粗さRzに対する、前記重複領域以外の前記配線領域の表面粗さRzの比率が、1/2以下である、請求項1
又は2に記載の立体回路部品。
【請求項4】
前記重複領域以外の第1樹脂層の表面に形成され、第1回路配線を覆う第2樹脂層と、
第2樹脂層上に形成されるメッキ膜を含む第2回路配線と、
第2樹脂層上に実装され、第2回路配線と電気的に接続する第2実装部品とを更に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の立体回路部品。
【請求項5】
第1樹脂層が、熱硬化性樹脂を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の立体回路部品。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である請求項5に記載の立体回路部品。
【請求項7】
前記金属部材が、板金加工品である請求項1~6のいずれか一項に記載の立体回路部品。
【請求項8】
前記鈑金加工品を構成する材料が、アルミニウム、ステンレス及び銅からなる群から選択される1つである、請求項7に記載の立体回路部品。
【請求項9】
立体回路部品であって、
金属部材と、
前記金属部材の上に形成された第1樹脂層と、
第1樹脂層の表面の配線領域に形成された、メッキ膜を含む第1回路配線と、
第1樹脂層の表面の実装領域に実装され、第1回路配線と電気的に接続している第1実装部品とを有し、
第1樹脂層は、前記配線領域に形成されてる第1溝と、第1溝内に形成されており、第1溝よりも幅の狭い第2溝と、を含む複数段の溝を有し、
第1回路配線の前記メッキ膜が前記複数段の溝を充填しており、
第1回路配線の前記メッキ膜は、前記複数段の溝の外に突出する突出部を有し、
第1回路配線が形成されていない第1樹脂層の表面からの、前記突出部の高さは、前記メッキ膜の膜厚の30%以下である、立体回路部品。
【請求項10】
前記突出部は、第1樹脂層の表面において、第1溝から第1回路配線の線幅方向に突出しており、
第1樹脂層の表面において、前記突出部の、前記線幅方向に第1溝から突出している部分の長さは、第1回路配線の線幅の30%以下である、請求項9に記載の立体回路部品。
【請求項11】
第1回路配線の線幅に対する、第1回路配線の前記メッキ膜の膜厚の比率が、0.3~4であり、
第1回路配線の前記メッキ膜の膜厚が、15~100μmである、請求項9~10のいずれか一項に記載の立体回路部品。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の立体回路部品の製造方法であって、
前記金属部材を用意することと、
前記金属部材上に、第1樹脂シートを賦形するか、又は第1樹脂液を塗布することにより第1樹脂層を形成することと、
第1樹脂層の表面の前記配線領域に、メッキにより第1回路配線を形成することと、
第1樹脂層の表面の前記実装領域に第1実装部品を実装することを含む製造方法。
【請求項13】
第1実装部品を実装する前に、前記重複領域以外の第1樹脂層の表面に、第1回路配線を覆うように第2樹脂層を形成することを更に含み、
第2樹脂層は、第1樹脂層上に第2樹脂シートを賦形するか、又は第2樹脂液を塗布することにより形成する請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
第2樹脂層は、第1樹脂層上に第2樹脂液を塗布することにより形成する請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
第1回路配線を形成することが、
前記配線領域にレーザー光を照射して、前記配線領域を粗化することと、
粗化した前記配線領域に、無電解メッキ触媒を付与することと、
前記無電解メッキ触媒を付与した前記配線領域に、無電解メッキ液を接触させ無電解メッキ膜を形成することを含む請求項12~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
第1回路配線を形成することが、前記配線領域にレーザー光を照射する前に、前記配線領域を含む第1樹脂層の表面に触媒活性妨害剤を含む層を形成することを更に含み、
前記配線領域に前記レーザー光を照射することにより、前記配線領域上の前記触媒活性妨害剤を含む層を除去する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
第1回路配線を形成することが、
レーザー光の照射、又はプレス加工により、前記配線領域に第1溝を形成することと、
前記配線領域を含む第1樹脂層の表面に触媒活性妨害剤を含む層を形成することと、
第1溝内にレーザー光を照射して第1溝よりも幅が狭い第2溝を形成することと、
前記配線領域に、無電解メッキ触媒を付与することと、
前記無電解メッキ触媒を付与した前記配線領域に無電解メッキ液を接触させ、第2溝内に無電解メッキ膜を形成することと、
前記無電解メッキ膜上に、電解メッキ膜を形成すること、とを含む請求項12~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記金属部材を用意することが、金属板を板金加工して前記金属部材を形成することで
ある請求項12~17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記金属板の材料が、アルミニウム、ステンレス及び銅からなる群から選択される1つである、請求項18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体回路部品及び立体回路部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MID(Molded Interconnected Device)が、スマートフォン等で実用化されており、今後、自動車分野での応用拡大が期待されている。MIDは、樹脂成形体の表面に金属膜で回路を形成したデバイスであり、製品の軽量化、薄肉化及び部品点数削減に貢献できる。
【0003】
発光ダイオード(LED)が実装されたMIDも提案されている。LEDは、通電により発熱するため背面からの排熱が必要であり、MIDの放熱性を高めることが重要となる。特許文献1では、MIDと金属製の放熱材料とを一体化した複合部品が提案されている。また、特許文献1のMIDでは、メッキ膜により回路配線を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
近年、電子機器は高性能化及び小型化し、これに用いられるMIDも高密度、高機能化が進み、より高い放熱性が要求されている。放熱材料である金属部材上に樹脂層を設けたMIDにおいて、樹脂層を薄くすることは、樹脂層上の回路配線から金属部材への熱伝導を向上させるために有効である。しかし、例えば、金属部材の立体的な面に絶縁性の樹脂層を均一な厚みで薄く形成することは困難であり、樹脂層の厚さを単に薄くすることのみにより放熱性を向上させることには限界があった。
【0006】
また、大電流を流すパワーデバイスが実装されたMIDも提案されている。この場合、実装密度が高くなり回路配線の線幅が狭くなることと放熱性確保との両立のため、回路配線を厚くする必要がある。しかし、例えば、回路配線がメッキ膜を含む場合、メッキ時に配線の線幅方向にメッキ膜が広がることを抑制できず、回路の高密度化が難しいという課題があった。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、高い放熱性を有し、また、回路の高密度化が可能な立体回路部品を提供する。
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、立体回路部品であって、金属部材と、前記金属部材の上に形成された第1樹脂層と、第1樹脂層の表面の配線領域に形成された、メッキ膜を含む第1回路配線と、第1樹脂層の表面の実装領域に実装され、第1回路配線と電気的に接続している第1実装部品とを有し、第1樹脂層の表面において、前記配線領域と前記実装領域とが重複する重複領域の表面粗さRzが10μm~120μmであり、前記重複領域における第1回路配線と、第1樹脂層の前記金属部材と対向する面との最短距離が、10μm~100μmである立体回路部品が提供される。
【0009】
前記重複領域の表面粗さRzが、前記重複領域以外の前記配線領域の表面粗さRzより大きくてもよい。前記重複領域以外の第1樹脂層の表面に形成され、第1回路配線を覆う第2樹脂層を更に有し、前記重複領域の表面粗さRzに対する、前記重複領域以外の前記配線領域の表面粗さRzの比率が、1/2以下であってもよい。また、前記重複領域以外の第1樹脂層の表面に形成され、第1回路配線を覆う第2樹脂層と、第2樹脂層上に形成されるメッキ膜を含む第2回路配線と、第2樹脂層上に実装され、第2回路配線と電気的に接続する第2実装部品とを更に有してもよい。第1樹脂層が、熱硬化性樹脂を含んでもよく、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であってもよい。
【0010】
前記重複領域の表面粗さRaが、前記重複領域以外の前記配線領域の表面粗さRaより大きくてもよい。
【0011】
前記金属部材が、板金加工品であってもよい。前記鈑金加工品を構成する材料が、アルミニウム、ステンレス及び銅からなる群から選択される1つであってもよい。
【0012】
本発明の第2の態様に従えば、立体回路部品であって、金属部材と、前記金属部材の上に形成された第1樹脂層と、第1樹脂層の表面の配線領域に形成された、メッキ膜を含む第1回路配線と、第1樹脂層の表面の実装領域に実装され、第1回路配線と電気的に接続している第1実装部品とを有し、第1樹脂層は、前記配線領域に形成されてる第1溝と、第1溝内に形成されており、第1溝よりも幅の狭い第2溝と、を含む複数段の溝を有し、第1回路配線の前記メッキ膜が前記複数段の溝を充填している立体回路部品が提供される。
【0013】
第1回路配線の前記メッキ膜は、前記複数段の溝の外に突出する突出部を有し、第1回路配線が形成されていない第1樹脂層の表面からの、前記突出部の高さは、前記メッキ膜の膜厚の30%以下であってもよい。また、前記突出部は、第1樹脂層の表面において、第1溝から第1回路配線の線幅方向に突出しており、第1樹脂層の表面において、前記突出部の、前記線幅方向に第1溝から突出している部分の長さは、第1回路配線の線幅の30%以下であってもよい。また、第1回路配線の線幅に対する、第1回路配線の前記メッキ膜の膜厚の比率が、0.3~4であってもよい。第1回路配線の前記メッキ膜の膜厚が、15~100μmであってもよい。
【0014】
本発明の第3の態様に従えば、第1の態様又は第2の態様の立体回路部品の製造方法であって、前記金属部材を用意することと、前記金属部材上に、第1樹脂シートを賦形するか、又は第1樹脂液を塗布することにより第1樹脂層を形成することと、第1樹脂層の表面の前記配線領域に、メッキにより第1回路配線を形成することと、第1樹脂層の表面の前記実装領域に第1実装部品を実装することを含む製造方法が提供される。
【0015】
第1実装部品を実装する前に、前記重複領域以外の第1樹脂層の表面に、第1回路配線を覆うように第2樹脂層を形成することを更に含み、第2樹脂層は、第1樹脂層上に第2樹脂シートを賦形するか、又は第2樹脂液を塗布することにより形成してもよい。また、第2樹脂層は、第1樹脂層上に第2樹脂液を塗布することにより形成してもよい。
【0016】
第1回路配線を形成することが、前記配線領域にレーザー光を照射して、前記配線領域を粗化することと、粗化した前記配線領域に、無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した前記配線領域に、無電解メッキ液を接触させ無電解メッキ膜を形成することとを含んでもよい。第1回路配線を形成することが、前記配線領域にレーザー光を照射する前に、前記配線領域を含む第1樹脂層の表面に触媒活性妨害剤を含む層を形成することを更に含み、前記配線領域にレーザー光を照射することにより、前記配線領域上の触媒活性妨害剤を含む層を除去してもよい。
【0017】
第1回路配線を形成することが、レーザー光の照射、又はプレス加工により、前記配線領域に第1溝を形成することと、前記配線領域を含む第1樹脂層の表面に触媒活性妨害剤を含む層を形成することと、第1溝内にレーザー光を照射して第1溝よりも幅が狭い第2溝を形成することと、前記配線領域に、無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した前記配線領域に無電解メッキ液を接触させ、第2溝内に無電解メッキ膜を形成することと、前記無電解メッキ膜上に、電解メッキ膜を形成すること、とを含んでもよい。
【0018】
前記金属部材を用意することが、金属板を板金加工して前記金属部材を形成することであってもよい。前記金属板の材料が、アルミニウム、ステンレス及び銅からなる群から選択される1つであってもよい。
【0019】
本発明の立体回路部品は、高い放熱性を有し、また、回路の高密度化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は第1実施形態の回路部品の上面模式図であり、
図1(b)は、
図1(a)のIB-IB線断面の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1(a)のII-II線断面の拡大模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の回路部品の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は第2実施形態の回路部品の断面の模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の回路部品の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7(a)は第3実施形態の回路部品の上面模式図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIB-VIIB線断面の模式図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態の回路部品の製造方法を説明するフローチャートである。
【
図9】
図9は、第4実施形態の回路部品の断面模式図である。
【
図11】
図11(a)~(d)は、第4実施形態の回路部品の製造方法を説明する図であり、
図9のX部分に対応する図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態の回路部品の製造途中で、電解メッキ膜を形成した状態を示す図であり、
図9のX部分に対応する図である。
【
図13】
図13は、第5実施形態の回路部品の断面模式図である。
【
図14】
図14(a)~(c)は、比較例3の回路部品の製造方法を説明する図であり、
図9のX部分に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
<回路部品>
図1及び
図2に示す回路部品100について説明する。回路部品100は、金属部材50と第1樹脂層10とを含む基材70と、基材70の第1樹脂層10の上に形成されている第1回路配線20と、第1樹脂層10の上に実装され、第1回路配線20と電気的に接続する第1実装部品30とを含む。尚、本実施形態の回路部品100は、立体回路部品(MID、三次元成形回路部品)であってもよい。立体回路部品とは、回路パターンが、基材の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の面に沿って立体的に形成されている回路部品である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、基材70は曲面を有し、曲面に立体的に第1回路配線20が形成されている。したがって、本実施形態の回路部品100は、立体回路部品である。
【0022】
金属部材50は、第1樹脂層10に実装される第1実装部品30が発する熱を放熱する。したがって、金属部材50には放熱性のある金属を用いることが好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ステンレス(SUS)等を用いることができる。中でも、軽量化、放熱性及びコストの観点から、マグネシウム、アルミニウムを用いることが好ましい。これらの金属は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよし、合金であってもよい。金属部材50の熱伝導率は、例えば、80~300W/m・Kである。
【0023】
金属部材50の形状及び大きさは特に限定されず、回路部品100の用途に合わせて任意に設計できる。例えば、金属部材50の形状は、板状体(金属板)でもよいし、放熱フィンであってもよい。また、金属部材50は、切削、ダイカストにより作製された複雑形状であってもよい。
【0024】
第1樹脂層10は、第1回路配線20と金属部材50とを絶縁させて短絡を防止するため絶縁性を有する。即ち、第1樹脂層10は、絶縁性樹脂層である。第1樹脂層10の絶縁性の程度は、回路部品100の用途(アプリケーション)にもよるが、例えば、金属部材50と第1回路配線20との間に100Vの電圧を印可したときの抵抗が、100MΩ以上、1000MΩ以上又は、10000MΩを超えることが好ましい。また、金属部材50と第1回路配線20との間の耐電圧は、0.5kV以上、1kV以上、又は1.5kV以上が好ましい。第1回路配線20と金属部材50の間の抵抗が低過ぎる、又は耐電圧が低過ぎると、第1回路配線20から金属部材50へ微小電流が流れ、第1回路配線20が機能できなくなる虞がある。第1回路配線20と金属部材50の間の抵抗及び/又は耐電圧が上記範囲であれば、第1回路配線20と金属部材50とは十分に絶縁される。なお、第1樹脂層10は、金属部材50の上に直接形成されるのが好ましい。すなわち、第1樹脂層10は、金属部材50の表面に接触して形成されてよい。これにより、例えば第1樹脂層10と金属部材50との間にセラミックス等を介在させた場合と比べて、略同等の絶縁性が得られると考えられる。さらに、これにより、耐衝撃性をより高くでき、また、セラミックスを介在させる際の真空工程などの製造工程を削減することができる。
【0025】
また、第1樹脂層10は、回路部品100の放熱性を高めるため、ある程度の熱伝導率を有することが好ましい。このように、第1樹脂層10は、絶縁性とある程度の熱伝導率とを併せ持つ、絶縁放熱樹脂層である。第1樹脂層10の熱伝導率は、例えば、0.7~5W/m・K、又は1~5W/m・Kである。本願明細書で規定する熱伝導率は、第1樹脂層10の厚み方向における熱伝導率であり、レーザーフラッシュ法等によって測定できる。熱伝導率が上記範囲の下限値より小さいと、放熱性が低下する虞がある。また、熱伝導率が上記範囲の上限値より大きいと、例えば、後述する絶縁性熱伝導フィラーを多く含有する必要がり、第1樹脂層10を塗布で形成することが困難になる等の不都合が生じる虞がある。
【0026】
第1樹脂層10は、樹脂を含む。第1実装部品30がハンダ付けにより第1樹脂層10に実装される場合、第1樹脂層10に用いる樹脂は、ハンダリフロー耐性を有する耐熱性のある高融点の樹脂が好ましい。第1樹脂層10に用いる樹脂の融点は、260℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。尚、第1実装部品30の実装に、低温ハンダを用いる場合はこの限りではない。
【0027】
第1樹脂層10に用いる樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂を用いることができる。中でも、薄く成形することが容易であり、成形精度が高く、更に硬化後は高耐熱性及び高密度を有する熱硬化樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱樹脂を用いることができ、中でもエポキシ樹脂が好ましい。光硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、6Tナイロン(6TPA)、9Tナイロン(9TPA)、10Tナイロン(10TPA)、12Tナイロン(12TPA)、MXD6ナイロン(MXDPA)等の芳香族ポリアミド及びこれらのアロイ材料、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニルスルホン(PPSU)等を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの樹脂は、第1樹脂層10の主成分であってもよい。第1樹脂層10中の樹脂の配合量は、例えば、20~100重量%、又は50~100重量%であってもよい。
【0028】
第1樹脂層10は、絶縁性熱伝導フィラーを含んでもよい。絶縁性熱伝導フィラーは、第1樹脂層10の絶縁性を維持しながら熱伝導性を向上させることができる。絶縁性熱伝導フィラーとは、ここでは、熱伝導率1W/m・K以上のフィラーであり、カーボン等の導電性の放熱材料は除外される。絶縁性熱伝導フィラーとしては、例えば、高熱伝導率の無機粉末である、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等のセラミックス粉が挙げられる。フィラー同士の接触率を高めて熱伝達性を高めるために、ワラストナイト等の棒状、タルクや窒化ホウ素等の板状のフィラーを混合してもよい。また、鱗片状、顆粒状、球状のフィラーを用いてもよい。これらの絶縁性熱伝導フィラーは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
絶縁性熱伝導フィラーの最大直径(最大粒子サイズ)は、例えば、比較的安価なセラミック粒子を用いる場合、30μm~100μmが好ましい。また、第1樹脂層10の厚さを薄くする場合には、絶縁性熱伝導フィラーの最大直径は、10μm~60μmが好ましい。
【0030】
絶縁性熱伝導フィラーは、第1樹脂層10中に例えば、10重量%~90重量%含まれ、30重量%~80重量%含まれてよい。絶縁性熱伝導フィラーの配合量が上記範囲内であると、回路部品100は、十分な放熱性を得られる。
【0031】
第1樹脂層10は、更に、その強度を制御するために、ガラス繊維、チタン酸カルシウム等の棒状又は針状のフィラーを含んでもよい。また、第1樹脂層10は、必要に応じて、樹脂成形体に添加される汎用の各種添加剤を含んでもよい。
【0032】
図1(b)及び
図2に示すように、第1樹脂層10の表面10aは、第1回路配線20が形成されている配線領域10Aと、第1実装部品30が実装されている実装領域10Bを有する。第1回路配線20は、直接、第1樹脂層10の表面10aに形成されている。したがって、配線領域10Aは、第1回路配線20に直接、接触している。第1実装部品30は、第1回路配線20及びハンダ40を介して、実装領域10Bに実装されている。したがって、第1実装部品30は、実装領域10Bに直接、接触していなくてもよい。実装領域10Bは、第1実装部品30の基材70に対向する底面30bに直交する直交方向において、第1実装部品30と金属部材50との間に位置する。
【0033】
第1実装部品30は第1回路配線20の上に配置されているので、実装領域10Bの一部又は全部は、配線領域10Aの一部と重複する。配線領域10Aと実装領域10Bとが重複する領域を重複領域10Cとし、
図1(b)及び
図2に示す。重複領域10Cは、第1回路配線20と直接接触し、且つ、第1実装部品30の基材70に対向する底面30bに直交する直交方向において、第1実装部品30と金属部材50との間に位置する。
【0034】
重複領域10Cの表面粗さRzは、10μm~120μmであり、好ましくは、15~150、又は20μm~100μmである。また、重複領域10Cにおける第1回路配線20と、第1樹脂層10の金属部材50と対向する面10bとの最短距離tは、10μm~100μmであり、好ましくは、30μm~100μm、又は30~60μmである。重複領域10Cは、発熱源である第1実装部品30と第1回路配線20との電気的接合部の真下に位置し、回路部品100の動作時に高温となり易い。このため、重複領域10Cから金属部材50へ向かって熱を逃し易い構造とすることが好ましい。重複領域10Cの表面粗さRzを上記範囲の下限値以上とし、最短距離tを上記範囲の上限値以下とすることで、第1実装部品の発する熱を効率よく金属部材50へ放熱できる。この結果、回路部品100全体の放熱性が向上する。一方で、重複領域10Cの表面粗さRzを上記範囲の上限値以下とし、最短距離tを上記範囲の下限値以上とすることで、第1回路配線20と金属部材50とを十分に絶縁できる。
【0035】
重複領域10Cの表面粗さRzとは、所謂、「最大高さ」であり、重複領域10Cにおいて最も高い部分と最も深い部分の差である。最短距離tは、重複領域10Cの最も深い部分から、第1樹脂層10の面10bまでの最短距離である。重複領域10Cの表面粗さRz、及び最短距離tは、例えば、重複領域10Cを含む、第1樹脂層10の断面SEM観察により求めてもよい。尚、後述する、重複領域10C以外の配線領域10Aの表面粗さRz、非配線領域10Dの表面粗さRzも、同様に、第1樹脂層10の断面SEM観察により求めてもよい。
【0036】
重複領域10C以外の配線領域10A(以下、適宜、「領域(10A-10C)」と記載する)の表面粗さRzは、重複領域10Cの表面粗さRzよりも小さくてよい。例えば、重複領域10Cの表面粗さRzに対する、領域(10A-10C)の表面粗さRzの比率は、1/2以下、1/5以下、又は1/10以下が好ましい。直上に第1実装部品30が配置されないため、領域(10A-10C)は、重複領域10Cほど放熱性を重要視する構造としなくてもよい。上記表面粗さの比率が上記範囲内であれば、領域(10A-10C)は大きく粗化する必要がなく、加工(粗化)時間が短縮され、回路部品100全体の製造効率が向上する。領域(10A-10C)の表面粗さRzは、例えば、0.5~20μm、1~30μm又は10~40μmであってよい。
【0037】
また、重複領域10C及び領域(10A-10C)は、表面粗さRaを有する。表面粗さRaは、算術平均粗さである。表面粗さRaは、第1樹脂層10の断面SEM観察に基づいて求めてもよい。例えば、領域(10A-10C)の表面粗さRaは、重複領域10Cの表面粗さRaよりも小さくてよ。換言すれば、重複領域10Cの表面粗さRaは、領域(10A-10C)の表面粗さRaよりも大きくてよい。例えば、重複領域10Cの表面粗さRaに対する、領域(10A-10C)の表面粗さRaの比率は、0.9倍以下、0.6倍以下、又は0.5倍以下が好ましい。直上に第1実装部品30が配置されないため、領域(10A-10C)は、重複領域10Cほど放熱性を重要視する構造としなくてもよい。上記表面粗さRaの比率が上記範囲内であれば、領域(10A-10C)は大きく粗化する必要がなく、加工(粗化)時間が短縮され、回路部品100全体の製造効率が向上する。領域(10A-10C)の表面粗さRaは、例えば、0.3~20μm、0.5~15μm又は1~10μmであってよい。
【0038】
図2に、第1樹脂層10の表面10aにおいて、第1回路配線20が形成されていない領域を非配線領域10Dとして示す。第1回路配線20との密着性向上の観点から、配線領域10Aの表面粗さRzは、非配線領域10Dの表面粗さRzより大きい方が好ましく、配線領域Aの表面粗さRaは、非配線領域10Dの表面粗さRaより大きい方が好ましい。また、重複領域10Cの表面粗さRzは、非配線領域10Dの表面粗さRzの2倍以上であってよく、重複領域10Cの表面粗さRaは、非配線領域10Dの表面粗さRaの2倍以上であってよい。これにより、熱源となる第1実装部品30直下において、第1回路配線20のメッキ膜が放熱部材である金属部材50に近づくため、放熱性が更に高まる。
【0039】
第1樹脂層10の厚さ10dは特に限定されない。上述した範囲の重複領域10Cの表面粗さRz及び最短距離tを実現できるのであれば、第1樹脂層10の厚さ10dは、回路部品100の用途に合わせて任意に設計できる。第1樹脂層10の厚さ10dは、例えば、10μm~200μmが好ましく、40μm~100μmがより好ましい。第1樹脂層10の厚さ10dが上記範囲の下限値より薄いと絶縁性が担保できない虞があり、上記範囲の上限値より厚いと放熱性低下やコスト高の要因となり得る。第1樹脂層10は、金属部材50上に塗布されることで賦形されるよりも薄く形成することができる。第1樹脂層10を塗布により形成した場合、第1樹脂層10は、比較的薄い20μm~150μmの厚みを有する。塗布により形成された第1樹脂層10の厚みは、20μm以上、好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上とするのがよく、150μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下とするのがよい。この場合、表面粗さRzは、10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上とするのがよく、100μm以下、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下とするのがよい。ここで、第1樹脂層10の厚さ10dは、第1回路配線20が形成されていない部分(非配線領域10Dを含む部分)の厚さである。厚さ10dは、例えば、第1樹脂層10の表面10a(非配線領域10D)から、第1樹脂層10の金属部材50と対向する面10bまでの距離である。
【0040】
第1回路配線20は、第1樹脂層10の表面10aの配線領域10Aにメッキ膜により形成されている。第1回路配線20は、配線領域10A上に形成される無電解メッキ膜を含む。更に、無電解メッキ膜上に形成される電解メッキ膜を含んでもよい。
【0041】
無電解メッキ膜としては、例えば、無電解ニッケルリンメッキ膜、無電解銅メッキ膜、無電解ニッケルメッキ膜が挙げられ、中でも、無電解ニッケルリンメッキ膜が好ましい。電解メッキ膜としては、電解ニッケルリンメッキ膜、電解銅メッキ膜、電解ニッケルメッキ膜が挙げられる。また、メッキ膜のハンダの濡れ性を向上させるために、金、銀、錫等のメッキ膜を第1回路配線20の最表面に形成してもよい。
【0042】
第1回路配線20の厚さは、特に限定されず、回路部品100の用途に合わせて任意に設計できる。第1回路配線20の厚さは、例えば、10~100μm、又は20~80μmであってもよい。ここで、第1回路配線20の厚さは、領域(10A-10C)上に形成された部分の厚さである。
【0043】
図2に示すように、第1実装部品30は、端子が設けられた面(底面)30bを第1回路配線20に対向させて配置され、端子と第1回路配線20がハンダ40により電気的に接続されている。第1実装部品30は、重複領域10C上で第1回路配線20とハンダ40を介して電気的に接続する。ハンダ40は、特に限定されず、汎用のものを用いることができる。第1実装部品30は、通電により熱を発生して発熱源となる。第1実装部品30は任意のものを用いることができ、例えば、LED(発光ダイオード)、パワーモジュール、IC(集積回路)、熱抵抗等が挙げられる。
【0044】
本実施形態の回路部品100には、第1樹脂層10が設けられていない金属部材50の表面に、第1樹脂層10とは異なる別の機能層(不図示)、例えば、輻射層が設けられてもよい。輻射層は、第1樹脂層10よりも高い輻射率を有する。輻射層を有することで、本実施形態の回路部品100は、第1実装部品30が発生する熱を更に効率的に放熱できる。輻射層は、金属部材50の表面の一部のみに形成されてもよいし、第1樹脂層10が設けられていない金属部材50の表面の全てを覆うように形成されてもよい。輻射層は、例えば、アルマイト、電着塗装膜であってよい。また、輻射層は、無電解メッキを用いて第1回路配線20を形成する場合に、金属部材50の表面に無電解メッキ膜が析出することを抑制できる。
【0045】
以上説明した本実施形態の回路部品100は、第1樹脂層10の表面10aにおいて、重複領域10Cの表面粗さRzを特定の範囲とする。また、重複領域10Cにおける第1回路配線と、第1樹脂層10の金属部材50と対向する面10bとの最短距離tを特定の範囲とする。これにより、回路部品100全体の放熱性が向上し、同時に、第1回路配線20と金属部材50とを十分に絶縁できる。
【0046】
<回路部品の製造方法>
図3に示すフローチャートに従って、回路部品100の製造方法について説明する。
【0047】
(1)金属部材50の用意
まず、金属部材50を用意する(
図3のステップS1)。金属部材50は、放熱フィン等の市販品であってもよいし、任意の形状に切削加工してもよいし、ダイカストにより成形してもよい。金属部材50の第1樹脂層10が形成されている表面は、その上に積層される第1樹脂層10との密着性を高めるために粗化してもよい。金属部材50の表面の粗化には、化学エッチング、ブラスト処理、レーザー粗化など公知の方法を用いてよい。
【0048】
(2)第1樹脂層10の形成
次に、金属部材50上に第1樹脂層10を形成する(
図3のステップS2)。第1樹脂層10の形成方法は特に限定されない。例えば、第1樹脂層10は、射出成形、トランスファー成形等を用いたインサート成形(一体成形)によって形成してもよい。
【0049】
また、第1樹脂層10は、金属部材50上に第1樹脂層10と略同一の組成を有する樹脂シート(第1樹脂シート)を賦形して形成してもよい。例えば、下金型として金属部材50を用いて、下金型(金属部材50)と上金型との間に樹脂シートを挟んでプレスする。これにより、樹脂シートが賦形され、金属部材50(金属部材50)の立体的な面に均一で薄い第1樹脂層10を短時間で容易に形成できる。また、樹脂シートの賦形には上金型は必ずしも必要ではない。例えば、圧空成形、真空成形等によれば、上金型を用いずに、下金型(金属部材50)上に第1樹脂シートを賦形して第1樹脂層10を形成できる。これにより、金型製作のためのコスト及び時間を削減できる。
【0050】
また、第1樹脂層10は、金属部材50上に樹脂液(第1樹脂液)を塗布することにより形成してもよい。第1樹脂液を塗布することで、金属部材50の立体的な面に均一で薄い第1樹脂層10を短時間で容易に形成できる。
【0051】
金属部材50上に第1樹脂液を塗布する方法は、特に限定されない。例えば、スプレーコーターを用いてよい。また、第1樹脂液の塗布後、塗膜が形成された金属部材50を加熱することが好ましい。加熱温度及び加熱時間は、第1樹脂液の組成等から適宜調整可能である。
【0052】
第1樹脂液の組成は、所望の組成の第1樹脂層10を形成可能なように適宜調整してよい。例えば、第1樹脂層10がエポキシ樹脂等の熱硬化樹脂を含む場合、第1樹脂液は、エポキシ塗料であってもよい。この場合、第1樹脂液を金属部材50上に塗布した後、塗膜を加熱して熱硬化樹脂を硬化させ、第1樹脂層10を形成できる。また、第1樹脂液の粘度を調整して塗布の作業性を向上するため、第1樹脂液は第1樹脂層10を構成する材料以外に溶剤を含んでもよい。溶剤は、塗布後、塗膜から揮発するため、得られる第1樹脂層10内には含まれない。溶剤の種類、配合量は、第1樹脂液に含まれる樹脂の種類等に応じて適宜選択できる。
【0053】
尚、後述するように、第1回路配線20を形成するために配線領域10Aは粗化されるが、粗化される前の第1樹脂層10の、配線領域10A部分の厚さは、10~200μmが好ましく、40~100μmがより好ましい。厚さが上記範囲の下限値より薄いと絶縁性が担保できない虞があり、上記範囲の上限値より厚いと放熱性低下やコスト高の要因となり得る。また、粗化前の配線領域10A部分の厚さは、放熱性及び絶縁性の安定化の観点より、平均膜厚±30%の範囲内であることが好ましく、平均膜厚±10%範囲内であることがより好ましい。
【0054】
(3)第1回路配線20の形成
次に、第1樹脂層10の配線領域10Aに、メッキ膜を含む第1回路配線20を形成する(
図3のステップS3)。第1回路配線20を形成する方法は、特に限定されず、汎用の方法を用いることができる。例えば、表面10a全体にメッキ膜を形成し、メッキ膜にフォトレジストでパターニングし、エッチングにより回路配線以外の部分のメッキ膜を除去する方法、回路配線を形成したい部分にレーザー光を照射して樹脂層を粗化し、レーザー光照射部分のみにメッキ膜を形成する方法等が挙げられる。特に、第1樹脂層10にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いた場合は、配線領域10Aをレーザー光で粗化することでメッキ触媒である金属イオンの吸着を促進でき、配線領域10Aのみに無電解メッキ膜を形成し易くなる。
【0055】
本実施形態では、例えば、国際公開第2018/131492号に開示されている以下に説明する方法により第1回路配線20を形成する。まず、第1樹脂層10の表面10aに、触媒活性妨害層を形成する。次に、触媒活性妨害層が形成された表面10aの配線領域10Aにレーザー光を照射し、配線領域10A上の触媒活性妨害層を除去する。次に、レーザー光を照射した配線領域10Aに無電解触媒を付与し、そして、無電解メッキ液を接触させる。触媒活性妨害層は、その上に付与される無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる(妨害する)。このため、触媒活性妨害層上では、無電解メッキ膜の生成が抑制される。一方、配線領域10Aは、触媒活性妨害層が除去されているため、無電解メッキ膜が生成する。これにより、配線領域10Aに無電解メッキ膜による第1回路配線20が形成される。
【0056】
触媒活性妨害層は、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる(妨害する)触媒活性妨害剤(触媒失活剤)を含む。触媒活性妨害剤(触媒失活剤)は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2018/131492号に開示されているデンドリマー、ハイパーブランチポリマー等のデンドリティックポリマーが好ましい。これらは、触媒失活能力に優れ、また、ポリマーであるので、バインダ樹脂を用いずに、触媒活性妨害層を形成できる。無電解メッキ触媒は、特に限定されず、汎用のものを適宜選択して用いることができ、例えば、塩化パラジウム等の金属塩を含むメッキ触媒液を用いてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、配線領域10Aにレーザー光を照射して触媒活性妨害層を除去すると共に、配線領域10Aを粗化してもよい。即ち、レーザー光の照射により、重複領域10Cの表面粗さRz及び、領域(10A-10C)の表面粗さRzを上述した特定の範囲に調整してもよい。同時に、重複領域10Cにおける第1回路配線と、第1樹脂層10の金属部材50と対向する面10bとの最短距離tを上述の範囲に調整してもよい。レーザー光の強度、レーザー光照射パターン等のレーザー光照射条件(レーザー描画条件)を変更することで、配線領域10Aの表面粗さを容易に調整できる。レーザー光照射に用いるレーザー光の種類、レーザー加工装置は特に限定されず、第1樹脂層10の種類等を考慮し、適宜選択できる。
【0058】
第1回路配線20は無電解メッキ膜と共に電解メッキ膜を含んでもよく、この場合、無電解メッキ膜の上に電解メッキ膜を形成してもよい。電解メッキ膜を形成する方法は特に限定されず、汎用の電解メッキ方法を適宜選択して用いることができる。
【0059】
尚、本実施形態では、触媒活性妨害層を用いて第1回路配線20を形成したが、触媒活性妨害層を用いずに第1回路配線20を形成してもよい。触媒活性妨害層を用いた方が、配線領域10A以外でのメッキ反応を抑制できるため、メッキ膜の選択性を高められる。しかし、レーザー光照射により粗化された配線領域10Aは、レーザー光を照射していない領域(非配線領域10D)と比較して、メッキ反応性が高まっている。第1樹脂層10の種類(組成)、無電解メッキ液の種類、濃度等を調整することにより、触媒活性妨害層を用いずに、メッキ反応性が高まっている配線領域10Aに選択的に無電解メッキ膜を形成してもよい。
【0060】
(4)第1実装部品30の実装
第1樹脂層10に第1回路配線20を形成した後、第1回路配線20上に第1実装部品30を実装する(
図3のステップS4)。これにより、本実施形態の回路部品100が得られる。第1実装部品30の実装方法は特に限定されず、汎用の方法を用いることができる。例えば、第1回路配線20上に常温のハンダと第1実装部品30とを配置して高温のリフロー炉に通過させるハンダリフロー法、又はレーザー光を第1樹脂層10と第1実装部品30の界面に照射してハンダ付けを行うレーザーハンダ付け法(スポット実装)により、第1実装部品30を第1樹脂層10にハンダ付けしてもよい。
【0061】
以上説明した回路部品100の製造方法では、金属部材50上に第1樹脂シートを賦形するか、又は第1樹脂液を塗布することにより第1樹脂層10を形成してもよい。この方法によれば、金属部材50の立体的な面に厚みが均一で薄い第1樹脂層10を短時間で容易に形成できるため、回路部品100の製造効率が高まる。薄い第1樹脂層10を形成できるため、回路部品100の放熱性と絶縁性を両立し易い。また、薄い第1樹脂層10を形成できるため、例えば、最短距離tが特定の範囲となるまでの重複領域10Cのレーザー描画時間を短くできる。これにより、回路部品100の製造効率を更に高められる。
【0062】
[第2実施形態]
図4及び
図5に示す、本実施形態の回路部品200について説明する。回路部品200は、第2樹脂層110を有する。第2樹脂層110は、重複領域10C以外の第1樹脂層10の表面10aに形成され、第1回路配線20を覆う。第2樹脂層110を有する以外の回路部品200の構成は、第1実施形態の回路部品100と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
第2樹脂層110は、第1実施形態で説明した回路部品100の第1樹脂層10と同様の構成を採用し得る。第2樹脂層110の厚さは、第1回路配線20を覆うことが可能なように、第1回路配線20の厚さより大きい方が好ましい。また、本実施形態の回路部品200において、第1樹脂層10が含有する樹脂と、第2樹脂層110が含有する樹脂とは、同一であっても異なってもよい。第1樹脂層10と第2樹脂層110との接着性向上の観点からは、第1樹脂層10と第2樹脂層110とは、同じ種類の樹脂を含むことが好ましい。
【0064】
図6に示す回路部品200の製造方法について説明する。まず、第1実施形態で説明した回路部品100の製造方法と同様に、金属部材50を用意し(
図6のステップS1)、金属部材50上に第1樹脂層10を形成し(
図6のステップS2)、第1樹脂層10上に第1回路配線20を形成する(
図6のステップS3)。
【0065】
次に、重複領域10C以外の第1樹脂層10の表面10aにおいて、第1回路配線20を覆うように第2樹脂層110を形成する(
図6のステップS12)。第2樹脂層110の形成方法は特に限定されないが、例えば、第1実施形態において第1樹脂層10の成形方法として説明した、樹脂シート(第2樹脂シート)の賦形、又は樹脂液(第2樹脂液)の塗布により形成してもよい。特に、第2樹脂液の塗布は、第1回路配線が形成されたことで平坦でなくなった表面10aにも、容易に第2樹脂層を形成できるため好ましい。また、第2樹脂層110は、まず、重複領域10Cを含む表面10a全体に形成し、その後、重複領域10C上に存在する第2樹脂層110をレーザー光照射等により削除してもよい。
【0066】
第2樹脂層110を形成した後、第1樹脂層10の実装領域10Bに第1実装部品30を実装する(
図6のステップS4)。第1実装部品30の実装方法は、第1実施形態と同様の方法を採用できる。第2樹脂層110は、重複領域10C上には形成されていない。即ち、第1回路配線20の重複領域10C上に位置する部分は、第2樹脂層110に覆われずに露出している。第1実装部品30は、重複領域10C上で、第2樹脂層110から露出している第1回路配線20とハンダ40を介して電気的に接続する。
【0067】
通常、回路配線(メッキ膜)の密着強度は、それが形成されている樹脂層の表面粗さが大きい程高くなり、表面粗さが小さい程低くなる。しかし、本実施形態の回路部品200では、第2樹脂層110が、領域(10A-10C)上に形成された第1回路配線20を覆って保護している。このため、領域(10A-10C)の表面粗さを小さくしても、領域(10A-10C)上に形成された第1回路配線20は剥離し難く、これにより、回路部品200の信頼性が向上する。領域(10A-10C)の表面粗さが小さければ、加工(粗化)時間が短縮され、回路部品100全体の製造効率が向上する。本実施形態では、回路部品200の信頼性と製造効率とを同時に向上させることができる。領域(10A-10C)の表面粗さRzは、重複領域10Cの表面粗さRzよりも小さくてよく、例えば、重複領域10Cの表面粗さRzに対する、領域(10A-10C)の表面粗さRzの比率は、1/2以下、1/5以下、又は1/10以下が好ましい。領域(10A-10C)の表面粗さRzは、例えば、0.5~20μm、1~30μm又は10~40μmであってよい。また、重複領域10Cの表面粗さRaに対する、領域(10A-10C)の表面粗さRaの比率は、0.9以下、0.6以下、又は0.5以下が好ましい。領域(10A-10C)の表面粗さRaは、例えば、0.3~20μm、0.5~15μm又は1~10μmであってよい。
【0068】
尚、第2樹脂層110は、重複領域10C以外の表面10aの全てを覆わなくてもよい。例えば、
図5に示すように、第1実装部品30を実装し易いように、重複領域10Cの周囲は、配線領域10Aであっても第2樹脂層110に覆われていない部分があってもよい。即ち、第2樹脂層110は、第1回路配線20の全てを覆わなくてもよい。また、第2樹脂層110は、
図5に示すように、非配線領域10Dに形成されていてもよい。反対に、第2樹脂層110は、非配線領域10Dに形成されていなくてもよい。
【0069】
[第3実施形態]
図7に示す、本実施形態の回路部品300について説明する。回路部品300は、第2樹脂層110と、第2樹脂層110上に形成されるメッキ膜を含む第2回路配線120と、第2回路配線120上に実装され、第2回路配線120と電気的に接続する第2実装部品130とを有する。第2樹脂層110は、重複領域10C以外の第1樹脂層10の表面10aに形成され、第1回路配線20を覆う。第2樹脂層110、第2回路配線120、第2実装部品130以外の回路部品300の構成は、第1実施形態の回路部品100とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0070】
第2樹脂層110は、第2実施形態で説明した第2樹脂層110と同様の構成とすることができる。また、第2回路配線120及び第2実装部品130は、第1実施形態で説明した回路部品100の第1回路配線20及び第1実装部品30と同様の構成とすることができる。第1実装部品30は、重複領域10C上で、第2樹脂層110から露出している第1回路配線20とハンダ40を介して電気的に接続する。第2実装部品130は、端子が設けられた面(底面)を第2回路配線120に対向させて配置され、端子と第2回路配線120がハンダにより電気的に接続されている。
【0071】
図8に示す回路部品300の製造方法について説明する。まず、第1実施形態で説明した回路部品100の製造方法と同様に、金属部材50を用意し(
図8のステップS1)、金属部材50上に第1樹脂層10を形成し(
図8のステップS2)、第1樹脂層10上に第1回路配線20を形成する(
図8のステップS3)。次に、重複領域10C以外の第1樹脂層10の表面10aに、第2樹脂層110を形成する(
図8のステップS12)。第2樹脂層110は、第2実施形態で説明した形成方法により形成できる。次に、第2樹脂層110上に第2回路配線120形成し(
図8のステップS13)、その後、第1実装部品30及び第2実装部品130を実装する(
図8のステップS14)。第2回路配線120は、第1実施形態で説明した第1回路配線20の形成方法と同様の方法で形成できる。第1実装部品30及び第2実装部品130は、第1実施形態で説明した第1実装部品30の実装方法と同様の方法で実装できる。
【0072】
本実施形態の回路部品300は、立体回路部品であり、更に、第1樹脂層10に形成された第1回路配線20の上に、第2樹脂層110に形成された第2回路配線120を積層した積層構造をとる。このため、回路部品300は高密度に回路を形成可能である。回路の高密度化は、回路部品に高い放熱性を要求する。回路部品300は、重複領域10Cの表面粗さRzを特定の範囲とし、最短距離tを特定の範囲とすることで、十分な放熱性を有する。更に放熱性を高める観点から、より発熱量が多い実装部品を金属部材50に近い、第1樹脂層10上に実装することが好ましい。即ち、第1実装部品30は、第2実装部品130よりも発熱量が多い部品であってよい。また、本実施形態において、第2樹脂層110は、第2樹脂液を塗布することにより形成してもよい。この方法によれば、立体面で、且つ第1回路配線が形成されたことで平坦でなくなった表面10aにも、容易に第2樹脂層を形成でき、立体回路部品の回路の多層化が容易にできる。尚、回路部品300は回路配線が形成された樹脂層を2層積層したが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態の回路部品は、回路配線が形成された樹脂層を3層以上積層した回路部品であってもよい。
【0073】
[第4実施形態]
図9及び
図10に示す、本実施形態の回路部品400について説明する。回路部品400の基本的な構成は、第2実施形態の回路部品200(
図4参照)とほぼ同様である。但し、回路部品400は、金属部材450が板金加工品であること、第1樹脂層10の配線領域10Aに第1溝11及び第2溝12からなる2段溝13が形成されていること等が第2実施形態の回路部品200とは異なる。以下に、回路部品400の構成について、その製造方法と共に説明する。
【0074】
<回路部品400の製造方法>
図6に示すフローチャートに従って、回路部品400の製造方法について説明する。
【0075】
(1)金属部材450の板金加工
まず、金属部材450を板金加工により製造する(
図6のステップS1)。板金加工は、金属の薄板を加工するため、切削、鋳造、鍛造加工よりも軽い部材を製造し易く、加工時間も短い。また、専用金型を作る必要がないため、低コストで小ロットの生産が可能である。
【0076】
本実施形態では、
図9に示すように、金属の薄板を板金加工して、下部に開口を有する中空の板状の金属部材450を製造する。金属薄板を屈曲することで強度が増加し、また、中空とすることで放熱性が向上する。
【0077】
金属部材450の材料としては、第1実施形態で挙げた公知の金属を用いることができるが、熱伝導性の高さ、加工性、信頼性の観点から、銅、アルミニウム、ステンレス(SUS)が好ましい。これらの金属は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよし、合金であってもよい。また、金属部材450の第1樹脂層10が形成される表面は、その上に積層される第1樹脂層10との密着性を高めるために粗化することが好ましい。
【0078】
(2)第1樹脂層10の形成
次に、金属部材450上に第1樹脂層10を塗布により形成する(
図6のステップS2)。第1樹脂層10に用いる樹脂としては、第1実施形態で挙げた樹脂を用いることができるが、中でも、熱硬化性又は光硬化性のエポキシ樹脂が好ましい。また、塗布性及び熱電率を向上させる観点から、第1樹脂層10は、粒子径が0.1~30μm、好ましくは、1~10μmの球状の絶縁性熱伝導フィラーを含有することが好ましい。
【0079】
第1樹脂層10は、第1実施形態で説明した塗布方法により形成できる。例えば、金属部材450上に樹脂液(第1樹脂液)をスプレー塗布して塗膜を形成し、その後、加熱、又は紫外線照射により塗膜を硬化させて第1樹脂層10を形成する。
【0080】
(3)第1回路配線20の形成
次に、以下に説明する方法により、第1樹脂層10の配線領域10Aに、メッキ膜60を含む第1回路配線20を形成する(
図6のステップS3)。
【0081】
(3-1)第1溝11の形成
図11(a)に示すように、第1樹脂層10の配線領域10Aに第1溝11を形成する。第1溝11は、第1回路配線20の延在方向に延在する。第1溝11は、例えば、金型の突起を用いたプレス加工により形成してもよいし、レーザー光照射(レーザー描画、レーザー切削)により形成してもよい。メッキ膜60は、後述するように、2段溝13を充填して、更に2段溝13の外に広がる場合もあるため、第1溝11の幅11dは、その上に形成されるのメッキ膜60の予定される幅60dより狭いことが好ましい(
図10参照)。メッキ膜60の幅60dは、配線領域20Aの幅でもある。したがって、第1溝11の幅11dは、、配線領域20Aの幅よりも狭いことが好ましい。尚、本願明細書において、第1溝11の幅11d、メッキ膜60の幅(配線領域20Aの幅)60d、更に後述する第2溝12の幅12dは、第1樹脂層10の表面10aにおける、第1回路配線20の延在方向と直交する方向における幅(長さ)を意味する。また、第1樹脂層10の表面10aにおいて、第1回路配線20の延在方向と直交する方向を「線幅方向」と記載する場合がある。
【0082】
(3-2)触媒活性妨害層80の形成、及び第2溝12の形成
図11(b)に示すように、第1実施形態と同様の方法により、第1樹脂層10の配線領域10Aを含む表面10aに、触媒活性妨害層80を形成する。触媒活性妨害層80を形成した後、
図11(c)に示すように、レーザー光照射(レーザー描画、レーザー切削)により、第1溝部21の内部に第2溝12を形成する。これにより、第1溝11と第2溝12とからなる2段溝13が完成する。第2溝12の幅12dは、第1溝11の幅11dよりも狭い。第2溝12は、第1溝11と同様に、第1回路配線20の延在方向に延在する。レーザー光照射(レーザー切削)により、触媒活性妨害層80も削除される。これにより、
図11(c)に示すように、第2溝12の内部には触媒活性妨害層80が存在せず、それ以外の領域には触媒活性妨害層80が存在する。
【0083】
(3-3)無電解メッキ、及び電解メッキ
次に、配線領域10Aに無電解触媒を付与し、無電解メッキ液を接触させる。上述のように、第2溝12の内部には媒活性妨害層80が存在せず、それ以外の領域には媒活性妨害層80が存在する。このため、第1溝11の側面ではメッキ膜生成は抑制され、第2溝12の内部では、メッキ活性が高まる。特に、第2溝12の底にはメッキ触媒が溜まり易いため、よりメッキ膜が形成され易い。この結果、
図11(d)に示すように、無電解メッキ膜(下地メッキ膜)61は、主に、第2溝12の底に形成される。
【0084】
第2溝12の底に無電解メッキ膜(下地メッキ膜)61を形成した後、電解メッキを行う。第2溝12の底は、導通が無電解メッキ膜61により確保されているため、無電解メッキ膜61が成長し易い。一方、第1溝11の側面は導通が不十分であるため、第1溝11の側面では電解メッキ膜の成長が抑制される。この結果、
図12に示すように、電解メッキ膜62は、第2溝12の底からボトムアップして成長して2段溝13を充填し、第1回路配線20が形成される。
【0085】
(4)第2樹脂層110の形成、第1実装部品30の実装
第1回路配線20を形成した後、第2実施形態と同様の方法により、第2樹脂層110を形成し、第1実装部品30を実装して、回路部品400が得られる(
図6のステップS12及びS4)。
【0086】
<回路部品400の構成>
本実施形態の回路部品400は、第2実施形態の回路部品200(
図4参照)とほぼ同様の構成を有する。このため、回路部品200と同様の効果を奏する。また、本実施形態では、金属部材450を板金加工で形成するため、製造コストを削減でき、且つ製造効率を高められる。
【0087】
また、回路部品400の第1樹脂層10の配線領域10Aには、第1溝11と、第2溝12とを含む2段溝13が形成されている。回路部品400では、2段溝13を設けることで、第1回路配線20の線幅(メッキ膜60の幅60d)を狭くすることができ、メッキ膜60を厚くする必要がある場合でも、配線間の絶縁性を確保できる。このメカニズムについて以下に説明する。
【0088】
電解メッキでは、メッキ膜形成面のコーナー部分や突起で電流が多く流れ、その部分に電解メッキ膜が厚く形成されて膜厚に偏りが生じ易い。例えば、
図14(b)に示すように、溝711内に電解メッキ膜762を含む配線720を形成する場合、溝711の開口の縁711a(コーナー部分)に電解メッキ膜762が厚く形成される。そして、溝711の内部を電解メッキ膜762が充填する前に、電解メッキ膜762は溝711の外側に広がって成長してしまう。この結果、配線720は、隣接する配線同士が連結してしまい、配線間の絶縁性を確保することができない(
図14(c)参照)。この問題は、配線720の線幅が狭い程、また、電解メッキ膜762の膜厚が厚い程(即ち、溝711の深さが深い程)、顕著である。
【0089】
これに対して、本実施形態では、2段溝13を設けることで、第1溝11の開口の縁(コーナー部分)11a(
図11(d)参照)を含む側面におけるメッキ膜の成長を抑制し、電解メッキ膜62を第2溝12の底からボトムアップさせて成長させる。これにより、電解メッキ膜62は2段溝13を充填し、且つ、2段溝13の外側へ広がり過ぎない。この結果、第1回路配線20の配線間の絶縁性が確保できる。尚、本実施形態の配線領域10Aに形成される溝は、2段溝に限定されない。例えば、第2溝12の中に更に溝が形成された、複数段の溝であってもよい。
【0090】
第1実装部品30として、大電流を流す必要のあるパワーデバイスを用いた場合、実装密度が高くなり第1回路配線20の線幅が狭くなるため、メッキ膜60の膜厚を厚くする必要がある。このような場合であっても、本実施形態の回路部品400は、2段溝13を深くしてメッキ膜60の膜厚を十分にとった上で、メッキ膜60の2段溝13の外側への広がり過ぎを抑制して、第1回路配線20における配線間の絶縁性を確保できる。尚、レジスト等の防御膜を用いて回路配線幅の拡大を抑制する従来技術が存在するが、回路部品400では、このような従来技術を用いることなく、第1回路配線20の細線化と、メッキ膜60の厚膜化を両立できる。
【0091】
第1回路配線20のメッキ膜60は、2段溝13を充填し、更に、2段溝13の外に突出する突出部64を有してもよい(
図12参照)。但し、突出部64の、第1回路配線20が形成されていない第1樹脂層10の表面10aからの高さ64hは、第1回路配線20のメッキ膜60の膜厚60Dの30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。また、高さ64hは、20μm以下が好ましい。突出部64の高さ64hが、上記範囲を超えると、メッキ膜60の線幅方向への広がりが大きくなり、第1回路配線20の細線化が困難となる虞がある。
【0092】
図12に示すように、突出部64は、第1樹脂層10の表面10aにおいて2段溝13より線幅方向に広がっていてもよい。線幅方向における突出部64の幅が第1回路配線20の線幅(メッキ膜60の幅60d)であるので、この場合、第1回路配線20の線幅は、2段溝13の幅(第1溝11の幅11d)より広くなる。但し、第1樹脂層10の表面10aにおいて、突出部64の、線幅方向に2段溝13から突出している部分の長さ64dは、第1回路配線の線幅60dの30%以下が好ましい。長さ64dが上記範囲を超えると、第1回路配線20の細線化困難となる虞がある。
【0093】
第1回路配線20の線幅60dに対する、第1回路配線20のメッキ膜60の膜厚60Dの比率(60D/60d)が、0.3~4であってもよい(
図12参照)。即ち、第1回路配線20のメッキ膜60の膜厚60Dは、第1回路配線20の線幅60dの0.3~4倍であってよい。また、第1回路配線20のメッキ膜60の膜厚60Dは、15~100μmであってもよい。比率(60D/60d)が上記範囲内であれば、第1回路配線20は、メッキ膜の幅60dに対して膜厚60Dが十分に厚い、アスペクト比の高い配線だといえる。アスペクト比の高い配線は、線幅が狭いため高密度化が可能であり、且つ、メッキ膜の膜厚が厚いため大電流を流すことが可能となる。本実施形態では、メッキ膜60の第1樹脂層10内に存在する部分を厚くし、第1樹脂層10の表面10aに露出する部分(突出部64)を薄くすることで、高アスペクト比を有しながら、メッキ膜の配線方向の拡大を抑制できる。
【0094】
[第5実施形態]
図13に示す、本実施形態の回路部品500について説明する。回路部品500は、板金加工により形成された板金加工品である金属部材550、金属部材550を補強する補強部材560、及び第1樹脂層10を含む基材570を有する。補強部材560を有する基材570以外の回路部品500の構成は、第4実施形態の回路部品400(
図9参照)と同様であるため、説明を省略する。
【0095】
金属部材550は、板金加工により金属の薄板を立体形状(多面体)に加工した部材である。材料としては、第4実施形態で挙げた公知の金属を用いることができる。金属部材550は金属の薄板で構成されるため、それ単独では剛性が低い虞がある。本実施形態では、金属部材550の第1回路配線20が形成されている面と反対の面(対向する面)に、補強部材560を設けて金属部材550を補強する。補強部材560の材料としては、金属、樹脂を用いることができる。例えば、金属部材550及び補強部材560の両方がアルミニウムで形成され、それらが溶接されていてもよい。
【0096】
本実施形態の回路部品500は、第4実施形態の回路部品400(
図9参照)とほぼ同様の構成を有するため、回路部品400と同様の効果を奏する。また、本実施形態の回路部品500は、補強部材560を設けることで、板金加工品である金属部材550の寸法精度を高めることができ、結果として、基材570の信頼性を高める。
【0097】
以上説明した複数の実施形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
【0099】
[実施例1]
本実施例では、
図1に示す回路部品100を作製した。第1実装部品30として、LED(発光ダイオード)を用いた。
【0100】
(1)金属部材の用意
金属部材50の材料として、アルミニウム合金を用いた。
図1に示す、半円球状の表面を有する凹部が形成された金属部材50を切削加工により作製し、作製した金属部材50の表面を酸エッチングにより洗浄した。
【0101】
(2)第1樹脂層の形成
汎用のプレス機を用いて、金属部材50上に樹脂シート(第1シート)を賦形して第1樹脂層10を形成した。樹脂シートとして、エポキシ樹脂シート(厚さ70μm、溶融温度100℃、硬化温度170℃)を用いた。
【0102】
プレス機に、下金型(金属部材50)と、アルミニウム製の上金型を設置し、下金型と上金型との間に樹脂シートを挟みプレス加工した。下金型と上金型との篏合時に、それらの間に形成されるキャビティの厚さを0mmとした。プレス最大圧力3MPa、金型温度200℃の状態を5分間保持し、その後、プレス機から篏合した状態の下金型及び上金型を取り出した。空冷後、上金型を取り外し、第1樹脂層10が形成された金属部材50、即ち、基材70を得た。第1樹脂層10はエポキシ樹脂で構成され、その厚さは、樹脂シートと同じ70μmであった。
【0103】
(3)第1回路配線の形成
本実施例では、以下に説明する方法により、第1樹脂層10上にメッキ膜により形成される第1回路配線20を形成した。
【0104】
(a)触媒活性妨害層の形成
第1樹脂層10の表面10aに、触媒失活剤である下記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを含む触媒活性妨害層を形成した。式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、国際公開第2018/131492号に開示される方法により合成した。式(1)において、R0はビニル基又はエチル基である。
【0105】
【0106】
合成したハイパーブランチポリマーの分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した。分子量は、数平均分子量(Mn)=9,946、重量平均分子量(Mw)=24,792であり、ハイパーブランチ構造独特の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)とが大きく異なった値であった。
【0107】
合成した式(1)で表されるポリマーをメチルエチルケトンに溶解して、ポリマー濃度0.5重量%のポリマー溶液を調製した。室温のポリマー溶液に、基材を5秒間浸漬し、その後、100℃乾燥機中で10分間乾燥した。これにより、基材70の表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層の厚さは、100nmであった。
【0108】
(b)レーザー描画
第1樹脂層10の表面10aの第1回路配線20を形成する予定の領域(配線領域10A)にレーザー光を照射した。UVレーザー(キーエンス製)を用い、パワー80%、速度300mm/s、周波数40kHzのレーザー描画条件で、20μmピッチの格子状のパターンを描画した。
【0109】
レーザー描画により、配線領域10A上の触媒活性妨害層を除去し、同時に配線領域10Aを粗化した。また、レーザー描画条件を調整することで、重複領域10Cの両面粗さRz、領域(10A-10C)のRz、最短距離tが所定の値になるよう調整した。後述するSEMによる断面観察により求めた各値を表1に示す。
【0110】
(c)メッキ膜の形成
30℃に調整した市販の塩化パラジウム(PdCl2)水溶液(奥野製薬工業製、アクチベータ)に基材70を5分間浸漬した。その後、基材を塩化パラジウム水溶液から取り出し、水洗した。
【0111】
60℃に調整した無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンLPH-L、pH6.5)に、基材70を10分間浸漬した。第1樹脂層10上のレーザー描画部分(配線領域10A)に無電解ニッケルリンメッキ膜が約1μm成長した。
【0112】
無電解ニッケルリンメッキ膜上に、更に、電解銅メッキ膜20μm、電解金メッキ膜0.1μmを、この順に積層し、第1回路配線20を形成した。
【0113】
(4)第1実装部品の実装
第1実装部品30として、面実装タイプの高輝度LED(日亜化学製、NS2W123BT、3.0mm×2.0mm×高さ0.7mm)を用いた。まず、
図1に示すように、3個の第1実装部品30を第1回路配線20の上に常温のハンダ40を介して配置した。次に、LEDを配置した基材をリフロー炉に入れた(ハンダリフロー)。リフロー炉内で基材は加熱され、基材の最高到達温度は240℃~260℃となり、基材が最高到達温度で加熱された時間は約1分であった。ハンダにより、第1実装部品30は第1樹脂層10に実装され、
図1に示す本実施例の回路部品100を得た。
【0114】
[実施例2]
本実施例では、第1樹脂層10を賦形で形成するのではなく、金属部材50上に樹脂液(第1樹脂液)を塗布することにより形成した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、
図1に示す回路部品100を作製した。
【0115】
実施例1と同様に作製した金属部材50上に、第1樹脂液としてエポキシ塗料をスプレーコーターにより塗布した。塗布後、170℃で1時間乾燥し、第1樹脂層10が形成された金属部材50、即ち、基材70を得た。第1樹脂層(エポキシ樹脂層)10の厚さは70μmであった。
【0116】
その後、実施例1と同様に、第1回路配線20の形成、及び第1実装部品30の実装を行い、本実施例の回路部品100を得た。
【0117】
[実施例3及び4]
実施例3及び4では、レーザー描画条件を調整することにより、重複領域10Cの表面粗さRz、最短距離tを実施例1とは異なる所定の値に変更した。また、実施例4では、重複領域10Cの表面粗さRaを実施例1とは異なる所定の値に変更した。後述するSEMによる断面観察により求めた各値を表1に示す。それ以外は、実施例1と同様の方法により、
図1に示す回路部品100を作製した。
【0118】
[実施例5]
本実施例では、
図7に示す回路部品300を作製した。回路部品300は、第2樹脂層110と、メッキ膜を含む第2回路配線120と、第2実装部品130とを有する。これ以外の回路部品300の構成は、実施例1の回路部品100とほぼ同様である。
【0119】
まず、実施例1と同様の方法により、金属部材50の作製、第1樹脂層10の形成(賦形)及び第1回路配線20の形成を行った。次に、重複領域10C以外の第1樹脂層10の表面10aに第2樹脂層110を形成した。第2樹脂層110は、実施例2の第1樹脂層10と同様の方法、即ち、エポキシ塗料(第2樹脂液)を塗布し、その後乾燥することにより形成した。第2樹脂層110は、まず、重複領域10Cを含む表面10a全体に形成し、その後、重複領域10C上に存在する第2樹脂層110をレーザー光照射により削除した。第2樹脂層110はエポキシ樹脂で構成され、その厚さは70μmであった。
【0120】
第2樹脂層110上に第2回路配線120を形成し、その後、第1実装部品30及び第2実装部品130を実装して、本実施例の回路部品300を得た。第2回路配線120は、実施例1の第1回路配線20と同様の方法により形成した。第1実装部品30及び第2実装部品130は、実施例1の第1実装部品30と同様の方法で実装した。
【0121】
[実施例6]
本実施例では、
図7に示す回路部品300を作製した。本実施例では、第1樹脂層10を実施例2と同様の方法で、即ち、エポキシ塗料(第1樹脂液)を塗布し、その後乾燥することにより形成した。それ以外は、実施例5と同様の方法により、回路部品300を作製した。
【0122】
[実施例7]
本実施例では、
図4に示す回路部品200を作製した。回路部品200は、第2樹脂層110を有する。これ以外の回路部品200の構成は、実施例1の回路部品100と同様である。
【0123】
まず、実施例1と同様の方法により、金属部材50の作製、第1樹脂層10の形成(賦形)及び第1回路配線20の形成を行った。次に、重複領域10C以外の第1樹脂層10の表面10aに第2樹脂層110を形成した。第2樹脂層110は、実施例2の第1樹脂層10と同様の方法で、即ち、エポキシ塗料(第2樹脂液)を塗布し、その後乾燥することにより形成した。第2樹脂層110は、まず、重複領域10Cを含む表面10a全体に形成し、その後、重複領域10C上に存在する第2樹脂層110をレーザー光照射により削除した。第2樹脂層110はエポキシ樹脂で構成され、その厚さは70μmであった。その後、実施例1と同様の方法で第1実装部品30を実装して、本実施例の回路部品200を得た。
【0124】
[実施例8]
本実施例では、第1樹脂層10が設けられていない金属部材50の表面に輻射層(不図示)が設けられた回路部品100を作製した。輻射層を有する以外の構成は、実施例1の回路部品100とほぼ同様である。
【0125】
まず、実施例1と同様の方法により、金属部材50の作製を行った。次に、金属部材50の表面に輻射層を電着塗装により形成した。その後、実施例1と同様の方法により、第1樹脂層10の形成(賦形)、第1回路配線20の形成、第1実装部品30の実装を行い、本実施例の回路部品100を得た。
【0126】
[比較例1及び2]
比較例1及び2では、第1樹脂層10をインサート成形(トランスファー成形)により形成した。第1樹脂層10はエポキシ樹脂で構成され、その厚さは200μmであった。また、レーザー描画条件を調整することにより、重複領域10Cの表面粗さRz、最短距離tを実施例1とは異なる所定の値に変更した。後述するSEMによる断面観察により求めた各値を表1に示す。以上説明したこと以外は、実施例1と同様の方法により、
図1に示す回路部品100を作製した。
【0127】
[回路部品の評価]
以上説明した実施例1~8及び比較例1~2で作製した回路部品について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0128】
(1)回路部品の放熱性試験
実施例1~8及び比較例1~2で作製した回路部品において、実装部品(LED)30の端部に熱電対を接着させてから、一定電流(0.8A)を流してLED30を点灯させ、点灯してから30分後のLED30の温度を測定した。回路部品上の全てのLED30の平均温度を計算し、以下の評価基準に従って、回路部品の放熱性を評価した。
【0129】
<回路部品の放熱性の評価基準>
A:点灯してから30分後のLED表面温度が95℃以下であった。
B:点灯したから30分後のLED表面温度が95℃を超え、且つ130℃未満であった。
C:点灯してから30分後のLED表面温度が130℃以上であった。
【0130】
(2)絶縁性樹脂層の絶縁性試験1
実施例1~8及び比較例1~2で作製した回路部品とは別に、各実施例及び比較例の絶縁性試験1用の試料を作製した。絶縁性試験1用の試料は、第1実装部品30及び第2実装部品130が実装されていないこと以外は、各実施例及び比較例で作製した回路部品と同じ構成である。
【0131】
絶縁性試験1用の試料において、100Vの電圧を第1回路配線20と金属部材50との間に印加して、テスターを用いて第1回路配線20と金属部材50との間の抵抗を測定し、以下の絶縁性の評価基準1に基づいて、絶縁性樹脂層の絶縁性を評価した。
【0132】
<絶縁性の評価基準1>
A:第1回路配線20と金属部材50との間の抵抗が10000MΩを超えていた。
B:第1回路配線20と金属部材50との間の抵抗が100~10000MΩであった。C:第1回路配線20と金属部材50との間の抵抗が100MΩ未満であった。
【0133】
(3)絶縁性樹脂層の絶縁性試験2
実施例1~8及び比較例1~2で作製した回路部品とは別に、各実施例及び比較例の絶縁性試験2用の試料を作製した。絶縁性試験2用の試料は、第1実装部品30及び第2実装部品130が実装されていないこと以外は、各実施例及び比較例で作製した回路部品と同じ構成である。
【0134】
絶縁性試験2用の試料において、第1回路配線20と金属部材50との間の耐電圧を耐電圧絶縁抵抗試験機5300(菊水電子工業株式社製)にて測定し、絶縁性の評価基準2に基づいて、絶縁性樹脂層の耐電圧を評価した。
【0135】
<絶縁性の評価基準2>
A:第1回路配線20と金属部材50との間の耐電圧が1.5kV以上であった。
B:第1回路配線20と金属部材50との間の耐電圧が0.5kVを超えて1.5kV未満であった。
C:第1回路配線20と金属部材50との間の耐電圧が0.2kV以下であった。
【0136】
(4)回路配線(メッキ膜)の密着性試験
実施例1~8及び比較例1~2で作製した回路部品とは別に、各実施例及び比較例の密着性試験用の試料を作製した。密着性試験用の試料は、第1実装部品30及び第2実装部品130が実装されていないこと以外は、各実施例及び比較例で作製した回路部品と同じ構成である。
【0137】
まず、密着性試験用の試料の第1樹脂層10上において、第1回路配線20の直線部分を他の部分から切り離した。切り離した直線部分の端部を引っ張り試験でつかみ、直線部分を第1樹脂層10から引き剥がして剥がし強度を測定し、単位幅あたりの密着強度を算出した。
【0138】
<密着性の評価基準>
A:メッキ膜の密着強度が10N/cm以上であった。
B:メッキ膜の密着強度が5N/cm以上、且つ10N/cm未満であった。
C:メッキ膜の密着強度が5N/cm未満であった。
【0139】
(5)回路部品の断面観察
実施例1~8及び比較例1~2で作製した回路部品とは別に、各実施例及び比較例の断面観察用の試料を作製した。断面観察用の試料は、第1実装部品30及び第2実装部品130が実装されていないこと以外は、各実施例及び比較例で作製した回路部品と同じ構成である。
【0140】
重複領域10Cを含む配線領域10Aの断面が出るように断面観察用の試料を切断し、研磨した後、SEMによる断面観察を行った。同様に、非配線領域10Dの断面が出るように、断面観察用の試料を切断して研磨した後、SEMによる断面観察を行った。観察は、200倍の倍率で異なる2か所の場所において行った。以上の断面観察から、重複領域10Cの表面粗さRz及び表面粗さRa、重複領域10Cから、第1樹脂層10の金属部材50と対向する面10bまでの最短距離t、領域(10A-10C)の表面粗さRz及び表面粗さRa、並びに、非配線領域10Dの表面粗さRzを求めた。結果を表1に示す。
【0141】
【0142】
表1に示すように、実施例1~8で作製した回路部品は、放熱性、絶縁性(抵抗及び耐電圧)及び密着強度の全ての評価結果が良好であった。また、実施例1~7で作製した回路部品は、実用上の問題は無いが、金属部材の表面に僅かにメッキ膜が析出した。これに対して、実施例8で作製した輻射層を設けた回路部品では、金属部材の表面にメッキ膜は析出しなかった。この結果から、輻射層は回路部品の放熱性を高めると共に、金属部材表面での無電解メッキ膜の析出を抑制することが確認できた。
【0143】
一方、最短距離tが170μmである比較例1は、放熱性が低かった。また、重複領域10Cの表面粗さRzが150μmである比較例2は、放熱性及び絶縁性(抵抗、耐電圧)が低かった。
【0144】
[実施例9]
本実施例では、
図9に示す回路部品400を作製した。本実施例では、金属部材450として板金加工品を用いた。また、第1実装部品30を基材470の複数の面に実装した。第1実装部品30としては、1.5A電流を流すパワー半導体を用いた。パワー半導体の端子ピッチは、50μmであった。
【0145】
(1)金属部材の用意
アルミニウム(アルミA1050)の薄板を板金加工して、下部に開口を有する中空の板状の金属部材450を作製した。金属部材450と、その上に形成される第1樹脂層10との密着強度を高めるために、第1樹脂層10を形成する領域をレーザーにより粗化した。
【0146】
(2)第1樹脂層の形成
作製した金属部材50の粗化した領域に、粒子径1~10μmの球状アルミナを70体積%含有するエポキシ塗料をスプレーコーターにより塗布した。塗布後、150℃で5時間乾燥し、第1樹脂層10が形成された金属部材450、即ち、基材470を得た。第1回路配線(メッキ膜)20を形成する予定の領域(配線領域10A)において、第1樹脂層の膜厚を5箇所測定した。平均膜厚は90μmであり、5箇所の測定結果は、79μm~101μmの範囲内(平均膜厚90μm±12%の範囲内)であった。
【0147】
(3)第1回路配線の形成
(a)第1溝形成
レーザー描画により、第1樹脂層10の配線領域10Aに第1溝11を形成した(
図11(a)参照)。レーザー描画は、UVレーザー(キーエンス製)を用い、線速20mm/s、出力80%、周波数100kHzの描画条件で行った。第1溝11は、配線領域10Aの延在方向の全域に亘って形成した。
【0148】
(b)触媒活性妨害層の形成及び第2溝形成
実施例1と同様の方法により、第1樹脂層10の表面10aに触媒活性妨害層80を形成した(
図11(b)参照)。尚、
図11(b)に触媒活性妨害層80を図示しているが、実際は100nm以下と薄いために視認はできない。
【0149】
アライメント用ピン(不図示)で基材470の位置を固定して、第1溝11形成時と同じレーザー描画条件でレーザー描画を行い、第1溝11内部に第2溝12を形成した(
図11(c)参照)。第2溝12も、第1溝11と同様に、配線領域10Aの延在方向の全域に亘って形成した。これにより、第1溝11と第2溝12からなる2段溝13が形成された。また、レーザー描画により、第2溝12が形成された領域の媒活性妨害層80も削除された。
【0150】
(c)メッキ膜の形成
実施例1と同様の方法で無電解メッキ触媒を付与した。次に、60℃に調整した無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロン LTN)に、基材470を5分間浸漬した。第2溝12の底に無電解ニッケルリンメッキ膜61(下地メッキ膜)が約1μm成長したが、第1溝11の側面には無電解メッキ膜の成長は殆ど認められなかった(
図11(d)参照)。次に、電解メッキを行い、70μmの電解銅メッキ膜62を形成した。電解銅メッキ膜62は、その一部が2段溝13の外に突出して突出部64を形成した(
図12参照)。更に、本実施例では、電解メッキ時に繋がった配線(メッキ膜)を機械的切削により部分的に切り落とし、所望の回路パターン(第1回路配線20)を得た。
【0151】
(4)第2樹脂層の形成、及び第1実装部品の実装
実施例7と同様の方法で、第2樹脂層110を形成して、第1実装部品30を実装し、本実施例の回路部品400を得た。
【0152】
<作製した回路部品の構成及び評価>
回路部品400の2段溝13、メッキ膜60に関する各サイズは以下のとおりである。尚、本実施例で作成した第1回路配線20の線幅は一定ではない。以下には、第1回路配線20の線幅が最も狭い部分の各値を示す。
図11(a)参照
第1溝11の幅(2段溝13の幅)11d:40μm
第1溝11の深さ11D:40μm
隣接する第1溝11間の距離(最小値)11A:40μm
図11(c)参照
第2溝12の幅12d:25μm
第2溝12の深さ12D:20μm
2段溝13の深さ13D:60μm
(第1溝11側面と第2溝12の側面との距離12a:5μm以上を確保)
図12参照
メッキ膜60の膜厚60D:70μm
突出部64の高さ64h:10μm
メッキ膜60の幅(第1回路配線20の線幅)60d:50μm
突出部64の、線幅方向に2段溝13から突出している部分の長さ64d:5μm
配線間スペース14:30μm
【0153】
回路部品400において、第1回路配線20が形成されていない第1樹脂層10の表面10aからの、突出部64の高さ64h(10μm)は、メッキ膜60の膜厚60D(70μm)の約14%であった。
【0154】
突出部64は、2段溝13から第1回路配線20の線幅方向に突出していた。但し、第1樹脂層10の表面10aにおいて、突出部64の、線幅方向に2段溝13から突出している部分の長さ64d(5μm)は、第1回路配線20の線幅60d(50μm)の10%であった。隣接する第1溝11間の距離11Aが40μmであるので、配線間スペース14として30μmを確保できた。
【0155】
第1回路配線20の線幅60d(50μm)に対する、第1回路配線20のメッキ膜13の膜厚60D(70μm)の比率が(60D/60d)は、1.4であった。第1回路配線20は、線幅に対してメッキ膜の膜厚が十分に厚い高アスペクト比を有していた。本実施例では、第1回路配線20の細線化と、メッキ膜60の厚膜化を両立できた。
【0156】
回路部品400に最大電流1.5Aを流したところ、問題なく駆動することが確認できた。
【0157】
[比較例3]
本比較例では、
図14(a)~(c)に示すように、回路部品700を作製しようと試みた。回路部品700は、2段溝13に代えて、1段溝である溝711を第1樹脂層10の表面10aに形成したこと以外は、実施例9の回路部品400とほぼ同様の構成である。
【0158】
まず、実施例9と同様の方法で基材470を作製し、第1樹脂層10の表面10aに触媒活性妨害層80を形成した。次に、レーザー描画により溝711を形成した。レーザー描画により、溝711内の触媒活性妨害層80も削除された。溝711の各サイズを以下に記載する。
溝711の幅711d:40μm
溝711の深さ711D:40μm
隣接する溝711間の距離(最小値)711A:40μm
【0159】
次に、実施例9と同様の方法により無電解メッキを行った。この結果、溝711の側面を含む、溝711全体に無電解メッキ膜761が形成された(
図14(a)参照)。
【0160】
次に、実施例9と同様の方法により電解メッキを行った。
図14(b)に示すように、電解メッキの途中において、溝711の開口の縁711a(コーナー部分)に電解メッキ膜762が厚く形成された。本比較例では、電解集中しやすい縁711aを含む溝711全体に無電解メッキ膜761が形成されている。このため、縁711a近傍に電解メッキ膜762が厚く形成され、電解メッキ膜の厚みに偏りが生じたと推測される。その後、メッキ膜760の膜厚760Dが凡そ70μmとなるまで、電解メッキを行って第1回路配線720を形成した(
図14(c)参照)。
【0161】
第1回路配線720では、メッキ膜760が溝711の外に大きく突出して、突出部764を形成した。突出部764は隣接する配線同士を連結してしまい、配線間の絶縁性が保てなかった。突出部764の高さ764hは30μmであり、メッキ膜760の膜厚760D(70μm)の約43%であった。このように、本比較例では、十分に機能する第1回路配線720を形成できなかったため、ここで回路部品700の作製を中止した。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明の回路部品は、放熱性が高い。このため、本発明の回路部品は、LED等の実装部品を実装した部品に適しており、スマートフォンや自動車の部品に応用可能である。
【符号の説明】
【0163】
10 第1樹脂層
11 第1溝
12 第2溝
13 2段溝(複数段の溝)
20 第1回路配線
30 第1実装部品
40 ハンダ
50、450、550 金属部材
60 メッキ膜
70、470、570 基材
100、200、300、400、500 回路部品(立体回路部品)
110 第2樹脂層
120 第2回路配線
130 第2実装部品
560 補強部材