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特許7606627スイッチング制御装置、スイッチング電源装置および電力供給システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】スイッチング制御装置、スイッチング電源装置および電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023548075
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034388
(87)【国際公開番号】W WO2023042392
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 研
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204726(JP,A)
【文献】特開2021-108522(JP,A)
【文献】特開2013-021758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側巻線および2次側巻線を有するトランスと、入力電圧が入力される入力端子対と前記1次側巻線との間に配置されたインバータ回路と、出力電圧が出力される出力端子対と前記2次側巻線との間に配置された整流平滑回路と、を備えたスイッチング電源装置に適用される制御装置であって、
前記インバータ回路および前記整流平滑回路の少なくとも一方に含まれる複数のスイッチング素子のうちの、第1のスイッチング素子におけるオフ状態での両端間の電圧が基準電圧以下となった時点から、前記第1のスイッチング素子がオフ状態からオン状態へと切り替わる時点までの時間を計測し、計測時間として出力する時間計測回路と、
前記計測時間と基準時間とを比較して、前記計測時間と前記基準時間との間の誤差積分値を求める積分回路と、
前記複数のスイッチング素子のうちの第2のスイッチング素子がオン状態からオフ状態へと切り替わった時点から、前記第1のスイッチング素子がオフ状態からオン状態へと切り替わる時点までの遅れ時間を、前記誤差積分値に応じて随時設定すると共に、設定した前記遅れ時間を用いて、前記第1および第2のスイッチング素子を含む前記複数のスイッチング素子におけるスイッチング動作を、それぞれ制御する駆動回路と
を備えたスイッチング制御装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記計測時間が前記基準時間に収束するように、前記遅れ時間を設定する
請求項1に記載のスイッチング制御装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、
前記計測時間の値が前記基準時間よりも大きいことにより、前記誤差積分値が減少した場合には、前記遅れ時間を短縮させ、
前記計測時間の値が前記基準時間よりも小さいことにより、前記誤差積分値が増加した場合には、前記遅れ時間を延長させる
請求項2に記載のスイッチング制御装置。
【請求項4】
前記基準電圧が、所定の負電圧である
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
【請求項5】
前記遅れ時間として設定可能な最大値である最大遅れ時間と、
前記遅れ時間として設定可能な最小値である最小遅れ時間と
がそれぞれ、前記スイッチング電源装置の動作状態に応じて、変更されるようになっている
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
【請求項6】
前記スイッチング電源装置の動作状態としての出力電流の値が、相対的に小さくなった場合には、前記最大遅れ時間および前記最小遅れ時間の値がそれぞれ、相対的に大きくなるように変更されると共に、
前記出力電流の値が、相対的に大きくなった場合には、前記最大遅れ時間および前記最小遅れ時間の値がそれぞれ、相対的に小さくなるように変更され、
前記スイッチング電源装置の動作状態としての、前記入力電圧または前記出力電圧の値が、相対的に小さくなった場合には、前記最大遅れ時間および前記最小遅れ時間の値がそれぞれ、相対的に小さくなるように変更されると共に、
前記入力電圧または前記出力電圧の値が、相対的に大きくなった場合には、前記最大遅れ時間および前記最小遅れ時間の値がそれぞれ、相対的に大きくなるように変更される
請求項5に記載のスイッチング制御装置。
【請求項7】
前記入力電圧の値、または、前記スイッチング電源装置の出力電流の値が、急変した場合には、
前記遅れ時間として設定可能な最小値である最小遅れ時間の値が、相対的に大きくなるように変更される
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
【請求項8】
前記第1および第2のスイッチング素子がいずれも、前記インバータ回路内に配置されているスイッチング素子である
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
【請求項9】
前記第1および第2のスイッチング素子のうちの少なくとも一方が、前記整流平滑回路内に配置されており、同期整流を行うスイッチング素子である
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のスイッチング制御装置と、
前記入力端子対と、前記出力端子対と、前記トランスと、前記インバータ回路と、前記整流平滑回路と、
を備えたスイッチング電源装置。
【請求項11】
請求項10に記載のスイッチング電源装置と、
前記入力端子対に対して前記入力電圧を供給する電源と
を備えた電力供給システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を用いて電圧変換を行うスイッチング電源装置、そのようなスイッチング電源装置に適用されるスイッチング制御装置、および、そのようなスイッチング電源装置を備えた電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置の一例として種々のDC-DCコンバータが提案され、実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。この種のDC-DCコンバータは一般に、スイッチング素子を含むインバータ回路と、電力変換トランス(変圧器)と、整流平滑回路とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-519092号公報
【発明の概要】
【0004】
ところで、このようなDC-DCコンバータ等のスイッチング電源装置では一般に、電力損失を抑えることが求められている。電力損失を抑えることが可能なスイッチング制御装置、スイッチング電源装置および電力供給システムを提供することが望ましい。
【0005】
本発明の一実施の形態に係るスイッチング制御装置は、1次側巻線および2次側巻線を有するトランスと、入力電圧が入力される入力端子対と1次側巻線との間に配置されたインバータ回路と、出力電圧が出力される出力端子対と2次側巻線との間に配置された整流平滑回路と、を備えたスイッチング電源装置に適用される制御装置であって、インバータ回路および整流平滑回路の少なくとも一方に含まれる複数のスイッチング素子のうちの、第1のスイッチング素子におけるオフ状態での両端間の電圧が基準電圧以下となった時点から、第1のスイッチング素子がオフ状態からオン状態へと切り替わる時点までの時間を計測し、計測時間として出力する時間計測回路と、計測時間と基準時間とを比較して、計測時間と基準時間との間の誤差積分値を求める積分回路と、複数のスイッチング素子のうちの第2のスイッチング素子がオン状態からオフ状態へと切り替わった時点から、第1のスイッチング素子がオフ状態からオン状態へと切り替わる時点までの遅れ時間を、誤差積分値に応じて随時設定すると共に、設定した遅れ時間を用いて、第1および第2のスイッチング素子を含む複数のスイッチング素子におけるスイッチング動作をそれぞれ制御する駆動回路と、を備えたものである。
【0006】
本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置は、上記入力端子対と、上記出力端子対と、上記トランスと、上記インバータ回路と、上記整流平滑回路と、上記本発明の一実施の形態に係るスイッチング制御装置と、を備えたものである。
【0007】
本発明の一実施の形態に係る電力供給システムは、上記本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置と、上記入力端子対に対して上記入力電圧を供給する電源と、を備えたものである。
【0008】
本発明の一実施の形態に係るスイッチング制御装置、スイッチング電源装置および電力供給システムによれば、電力損失を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
図2図1に示したスイッチング電源装置の動作例を表すタイミング図である。
図3】トランジスタにおける導通特性例を表す図である。
図4】実施の形態に係るデッドタイムの設定例を表す図である。
図5】実施の形態に係る最大デッドタイムおよび最小デッドタイムの設定例を表す図である。
図6】変形例1に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
図7】変形例2に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
図8】変形例3に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(センタタップ型の整流回路を用いた場合の例)
2.変形例
変形例1(ブリッジ型の整流回路を用いた場合の例)
変形例2,3(同期整流回路とした場合の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1)の概略構成例を、回路図で表したものである。このスイッチング電源装置1は、直流入力電源10(例えばバッテリ)から供給される直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに電圧変換し、負荷9に電力を供給するDC-DCコンバータとして機能するものである。なお、この負荷9としては、例えば電子機器やバッテリ等が挙げられる。また、このスイッチング電源装置1は、以下説明するように、いわゆる「(絶縁型ハーフブリッジ)LLC共振型」のDC-DCコンバータとなっている。なお、スイッチング電源装置1における電圧変換の態様としては、アップコンバート(昇圧)およびダウンコンバート(降圧)のいずれであってもよい。
【0012】
ここで、直流入力電圧Vinは、本発明における「入力電圧」の一具体例に対応し、直流出力電圧Voutは、本発明における「出力電圧」の一具体例に対応している。また、直流入力電源10は、本発明における「電源」の一具体例に対応し、この直流入力電源10とスイッチング電源装置1とを備えたシステムが、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0013】
スイッチング電源装置1は、2つの入力端子T1,T2と、2つの出力端子T3,T4と、インバータ回路2と、トランス3と、整流平滑回路4と、制御回路7とを備えている。入力端子T1,T2間には直流入力電圧Vinが入力され、出力端子T3,T4の間からは直流出力電圧Voutが出力されるようになっている。なお、図1に示した例では、1次側低圧ラインL1LがグランドGNDに接続されている。
【0014】
ここで、入力端子T1,T2は、本発明における「入力端子対」の一具体例に対応し、出力端子T3,T4は、本発明における「出力端子対」の一具体例に対応している。また、制御回路7は、本発明における「スイッチング制御装置」の一具体例に対応している。
【0015】
なお、入力端子T1に接続された1次側高圧ラインL1Hと、入力端子T2に接続された1次側低圧ラインL1Lとの間に、例えば、入力平滑コンデンサが配置されているようにしてもよい。具体的には、後述するインバータ回路2と入力端子T1,T2との間の位置において、入力平滑コンデンサの第1端(一端)が1次側高圧ラインL1Hに接続されると共に、入力平滑コンデンサの第2端(他端)が1次側低圧ラインL1Lに接続されているようにしてもよい。このような入力平滑コンデンサは、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのコンデンサである。
【0016】
(A.インバータ回路2)
インバータ回路2は、入力端子T1,T2と、後述するトランス3における1次側巻線31との間に、配置されている。このインバータ回路2は、2つのスイッチング素子S1,S2と、共振インダクタLrと、共振コンデンサCrとを有しており、いわゆる「ハーフブリッジ型」のインバータ回路となっている。なお、共振インダクタLrは、後述するトランス3における漏れインダクタンスにより構成されていてもよいし、あるいは、そのような漏れインダクタンスとは別個に設けられているようにしてもよい。
【0017】
ここで、上記したスイッチング素子S1、S2はそれぞれ、本発明における「複数のスイッチング素子」の一具体例に対応している。また、スイッチング素子S2は、本発明における「第1のスイッチング素子」の一具体例に対応し、スイッチング素子S1は、本発明における「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応している。
【0018】
なお、スイッチング素子S1,S2としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS-FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、HEMT((High Electron Mobility Transistor)=HFET(Heterostructure Field-Effect Transistor))などの、各種のスイッチ素子が用いられる。また、HEMTの一例としては、GaN(窒化ガリウム)トランジスタが挙げられる。
【0019】
図1に示した例では、スイッチング素子S1,S2がそれぞれ、MOS―FETまたはHEMTからなるトランジスタにより構成されている。このようにして、スイッチング素子S1,S2としてMOS―FETやHEMTを用いた場合には、各スイッチング素子S1,S2に並列接続されるコンデンサおよびダイオード(図1中に図示せず)をそれぞれ、MOS―FETやHEMTの寄生容量または寄生ダイオードから構成することが可能である。
【0020】
このインバータ回路2では、入力端子T1,T2の間(1次側高圧ラインL1Hと1次側低圧ラインL1Lとの間)において、2つのスイッチング素子S1,S2が、この順序で互いに直列接続されている。具体的には、1次側高圧ラインL1Hと接続点P1との間に、スイッチング素子S1が配置され、接続点P1と1次側低圧ラインL1Lとの間に、スイッチング素子S2が配置されている。
【0021】
また、このインバータ回路2における共振インダクタLrおよび共振コンデンサCrと、後述するトランス3における1次側巻線31とが、上記した接続点P1と1次側低圧ラインL1Lとの間において、互いに直列接続されている。具体的には、図1の例では、共振コンデンサCrの第1端(一端)が接続点P1に接続され、この共振コンデンサCrの第2端(他端)が、共振インダクタLrの第1端(一端)に接続されている。また、共振インダクタLrの第2端(他端)が、上記した1次側巻線31の一端に接続され、この1次側巻線31の他端が、1次側低圧ラインL1Lに接続されている。
【0022】
このような構成によりインバータ回路2では、後述する制御回路7内の駆動回路5から供給される駆動信号SG1,SG2に従って、各スイッチング素子S1,S2がスイッチング動作(オン・オフ動作)を行うことで、以下のようになる。すなわち、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを交流電圧に変換して、トランス3(1次側巻線31)へと出力するようになっている。
【0023】
(B.トランス3)
トランス3は、1つの1次側巻線31と、2つの2次側巻線321,322とを有している。
【0024】
1次側巻線31では、1次側巻線31の第1端(一端)が、前述した共振インダクタLrにおける第2端(他端)に接続され、1次側巻線31の第2端(他端)が、前述した1次側低圧ラインL1Lに接続されている。
【0025】
2次側巻線321では、2次側巻線321の第1端が、後述する接続ラインL21を介して、後述する整流ダイオード41のカソードに接続され、2次側巻線321の第2端が、後述する整流平滑回路4内のセンタタップP6に接続されている。2次側巻線322では、2次側巻線322の第1端が、後述する接続ラインL22を介して、後述する整流ダイオード42のカソードに接続され、2次側巻線322の第2端が、上記したセンタタップP6に接続されている。つまり、2次側巻線321,322における第2端同士は、このセンタタップP6に対して互いに共通接続されている。
【0026】
このトランス3は、インバータ回路2によって生成された電圧(トランス3の1次側巻線31に入力される、矩形パルス波化した電圧)を電圧変換し、2次側巻線321,322の各端部から交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合における、直流入力電圧Vinに対する直流出力電圧Voutの電圧変換の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線321,322との巻数比、および、後述するスイッチング周期Tsw(スイッチング周波数fsw=1/Tsw)によって、定まる。
【0027】
(C.整流平滑回路4)
整流平滑回路4は、2個の整流ダイオード41,42と、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有している。具体的には、この整流平滑回路4は、整流ダイオード41,42を有する整流回路と、出力平滑コンデンサCoutを有する平滑回路と、を含んでいる。
【0028】
上記した整流回路は、いわゆる「センタタップ型」の整流回路となっている。すなわち、整流ダイオード41,42のアノードがそれぞれ、接地ラインLGに接続され、整流ダイオード41のカソードが、接続ラインL21を介して、2次側巻線321における前述した第1端に接続され、整流ダイオード42のカソードが、接続ラインL22を介して、2次側巻線322における前述した第1端に接続されている。また、前述したように、2次側巻線321,322における第2端同士は、センタタップP6に対して互いに共通接続されており、このセンタタップP6は、出力ラインLOを介して、前述した出力端子T3に接続されている。なお、上記した接地ラインLGは、前述した出力端子T4に接続されている。
【0029】
上記した平滑回路では、上記した出力ラインLOと接地ラインLGとの間(出力端子T3,T4の間)に、出力平滑コンデンサCoutが接続されている。すなわち、この出力平滑コンデンサCoutの第1端は、出力ラインLOに接続され、出力平滑コンデンサCoutの第2端は、接地ラインLGに接続されている。
【0030】
このような構成の整流平滑回路4では、整流ダイオード41,42を含んで構成される整流回路において、トランス3から出力される交流電圧を整流して出力するようになっている。また、出力平滑コンデンサCoutを含んで構成される平滑回路において、上記整流回路によって整流された電圧を平滑化することで、直流出力電圧Voutを生成するようになっている。なお、このようにして生成された直流出力電圧Voutにより、前述した負荷9へと直流出力電流Iout(負荷電流)が流れ、出力端子T3,T4から負荷9に対して電力が供給されるようになっている。
【0031】
ここで、上記した直流出力電流Iout(負荷電流)は、本発明における「出力電流」の一具体例に対応している。
【0032】
(D.制御回路7)
制御回路7は、スイッチング電源装置1の制御を行う回路である。この制御回路7は、図1に示したように、時間計測回路61、積分回路62および駆動回路5を有している。
【0033】
ここで、図2は、スイッチング電源装置1の動作例(各種の電圧や電流の波形例)を、タイミング図で表したものである。具体的には、図2(A)は、前述した駆動信号SG1(スイッチング素子S1のゲート・ソース間の電圧Vgs1)、図2(B)は、前述した駆動信号SG2(スイッチング素子S2のゲート・ソース間の電圧Vgs2)について、各波形例を示している。また、図2(C)は、スイッチング素子S2のドレイン・ソース間(両端間)の電圧Vds2(図1中に図示)、図2(D)は、スイッチング素子S2のドレイン・ソース間を流れる電流Ids2(図1中に図示)について、各波形例を示している。なお、図2において、横軸は時間tを示している。また、この図2中には、スイッチング電源装置1におけるスイッチング周期Tsw(=1/fsw)についても、示している。
【0034】
以下では図1図2を参照して、上記した時間計測回路61、積分回路62および駆動回路5について、詳細に説明する。
【0035】
(時間計測回路61)
時間計測回路61は、図1に示したように、インバータ回路2に含まれるスイッチング素子S2の両端間の電圧(接続点P1にて検出される、上記したドレイン・ソース間の電圧Vds2)に基づいて、以下説明する計測時間T1を出力する回路である。具体的には、時間計測回路61は、例えば図2に示したように、上記した電圧Vds2が所定の基準電圧Vr(この例では、負電圧としてのVr=-0.2V)以下となった(Vds2≦Vr)時点から、インバータ回路2に含まれるスイッチング素子S1がオフ状態(Vgs2=0V)からオン状態(Vgs2=例えば5V)へと切り替わる時点までの時間を計測し、計測時間T1として出力する。
【0036】
(積分回路62)
積分回路62は、図1に示したように、時間計測回路61から出力される計測時間T1と、所定の基準時間Tref(例えば、Tref=10ns)とを比較して、これらの計測時間T1と基準時間Trefとの間の誤差積分値(積分値Ie)を、求める回路である。なお、このようにして求められた積分値Ieは、図1に示したように、以下の駆動回路5へと出力されるようになっている。
【0037】
(駆動回路5)
駆動回路5は、インバータ回路2におけるスイッチング素子S1,S2の動作をそれぞれ制御する、スイッチング駆動を行う回路である。具体的には、駆動回路5は、スイッチング素子S1,S2に対してそれぞれ、駆動信号SG1,SG2を個別に供給することで、各スイッチング素子S1,S2におけるスイッチング動作(オン・オフ動作)を制御するようになっている。
【0038】
また、駆動回路5は、各スイッチング素子S1,S2のスイッチング動作を制御する(スイッチング駆動を行う)際に、スイッチング周波数制御を行うようになっている。すなわち、駆動信号SG1,SG2において、PFM(Pulse Frequency Modulation:パルス周波数変調)制御を行うようになっている。
【0039】
更に、駆動回路5は、スイッチング素子S1,S2がそれぞれ、固定された時比率にてスイッチング動作すると共に、スイッチング周波数fswが可変動作するように、上記したスイッチング駆動を行うようになっている。ちなみに、スイッチング素子S1,S2のオン期間をそれぞれ、Ton1,Ton2として表した場合、上記した各スイッチング素子S1,S2の時比率は、スイッチング周期Tsw(=1/fsw)を用いて、(Ton1/Tsw),(Ton2/Tsw)として表される。また、これらの(Ton1/Tsw),(Ton2/Tsw)はいずれも、50%未満の値となっており、オン期間Ton1,Ton2の間には、同時のオン期間による短絡破損を防ぐための、以下説明するデッドタイムTdが設けられるようになっている。
【0040】
ここで、この駆動回路5はまた、上記したスイッチング駆動を行う際に、以下説明する遅れ時間としてのデッドタイムTdの長さを、上記した積分回路62から出力される積分値Ieの大きさに応じて、随時設定するようになっている(図1参照)。つまり、駆動回路5は、このようにして随時設定したデッドタイムTdを用いて、スイッチング素子S1,S2におけるスイッチング動作を、それぞれ制御するようになっている。
【0041】
このデッドタイムTdとは、例えば図2に示したように、スイッチング素子S1がオン状態(Vgs1=例えば5V)からオフ状態(Vgs1=0V)へと切り替わった時点から、スイッチング素子S2がオフ状態からオン状態へと切り替わる時点までの期間である。つまり、このデッドタイムTdでは、これら2つのスイッチング素子S1,S2がいずれも、オフ状態に設定されている期間である。
【0042】
なお、このデッドタイムTdは、本発明における「遅れ時間」の一具体例に対応している。
【0043】
ここで、例えば図2に示したように、具体的には駆動回路5は、このようにして随時設定するデッドタイムTd(例えば、図2中に示したデッドタイムTd’)にて、次のスイッチング周期Tswでのスイッチング動作を行う。また、この際に駆動回路5は、上記した計測時間T1が基準時間Trefに収束するように(T1がTrefと略等しくなるように)、デッドタイムTdを設定するようになっている。
【0044】
なお、このようなデッドタイムTdの設定手法の詳細については、後述する(図4図5)。
【0045】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
このスイッチング電源装置1では、インバータ回路2において、直流入力電源10から入力端子T1,T2を介して供給される直流入力電圧Vinが、スイッチング素子S1,S2によってスイッチングされることで、矩形パルス波化した電圧が生成される。この矩形パルス波化した電圧は、トランス3における1次側巻線31へと供給され、このトランス3において変圧されることで、2次側巻線321,322から、変圧された交流電圧が出力される。
【0046】
整流平滑回路4では、トランス3から出力された交流電圧(上記した変圧された交流電圧)が、整流回路内の整流ダイオード41,42によって整流された後、平滑回路内の出力平滑コンデンサCoutによって、平滑化される。これにより、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutが出力される。そして、この直流出力電圧Voutにより、負荷9へと直流出力電流Ioutが流れるとともに、負荷9に対して電力が供給される。
【0047】
(B.トランジスタの導通特性について)
ところで、トランジスタをスイッチング素子として用いている、従来の一般的なスイッチング電源装置では、以下のようなおそれがある。
【0048】
すなわち、前述したデッドタイムTdにおいて、スイッチング素子としてのトランジスタのドレイン・ソース間に、例えば2V以上の逆方向電圧降下が生じる。そして、このような逆方向電圧と、そのトランジスタを流れるドレイン電流とにより、スイッチング素子での導通損失が発生してしまうことになる。特に、スイッチング素子として、前述したGaNトランジスタを用いるようにした場合、例えば以下の図3に示したように、上記した逆方向電圧降下が大きくなることから、上記した導通損失も大きくなってしまう。
【0049】
図3は、一般的なトランジスタにおける導通特性例(上記したGaNトランジスタの場合における、ドレイン・ソース間の電圧Vdsと、ドレイン・ソース間を流れる電流Idsとの対応関係の一例)を、表したものである。なお、この図3の例では、ゲート・ソース間の電圧Vgs=-3V,-2V,0V,2V,6Vの各場合について、そのような導通特性例を示している。
【0050】
まず、このようなGaNトランジスタは、デバイス構造にてボディダイオードを内蔵していないものの、GaNトランジスタの回路動作の際に、疑似ボディダイオードを持つことになる。この疑似ボディダイオードは、GaNトランジスタのゲートがオフ状態の場合において、上記した電圧Vdsが負電圧になったときに、ゲート・ドレイン間の電圧Vgdが正電圧となり、所定の閾値を超えてチャネルが導通することで、動作する。このため、このGaNトランジスタでは、シリコン型のMOS-FETにおける、ボディダイオードの順方向の降下電圧VF=0.7Vより高い、2V程度のVFとなる。
【0051】
また、GaNトランジスタのゲートがオフ状態において、電圧Vgsが負電圧の場合には、例えば図3に示したように、更に大きなVFとなる。そして、このVFが大きいことから、上記した疑似ボディダイオードが導通している期間が長く、上記した電流Idsが大きいと、更に大きな導通損失が発生することになる。
【0052】
ここで、スイッチング素子におけるボディダイオードや疑似ボディダイオードの導通は、同期整流を行う場合、または、ゼロボルト・スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)を行う場合に、そのスイッチング素子がターンオンする直前または直後に、発生する。また、スイッチング素子がターンオンする直前の場合には、上記した電圧Vdsが負電圧になると同時にターンオンするのが、理想的である。ターンオンするのが早過ぎると、スイッチング素子の出力容量Cossに蓄積された電荷がターンオンにより短絡して電力損失が発生したり、別のスイッチング素子のオン期間とターンオンのタイミングとが重なって、貫通電流が流れたりする。逆に、ターンオンするのが遅過ぎると、ボディダイオードまたは疑似ボディダイオードの導通期間が、長くなる。
【0053】
また、スイッチング素子のターンオンの直前に、電圧Vdsが急速に低下するため、帰還容量を通してスイッチング素子のゲートに電流が流れ、電圧Vgsが負電圧になる場合がある。GaNトランジスタでは、電圧Vgsの負電圧によってVFが大きくなり、疑似ボディダイオードの導通による電力損失が、大きくなってしまう。
【0054】
更に、適切なターンオンまたはターンオフのタイミングは、スイッチング電源装置の動作条件(入力電圧や負荷など)、寄生容量やインダクタンスなどの定数のばらつきにより、異なる。したがって、ターンオンが早過ぎたりターンオフが遅過ぎたりすることによる致命的な電力損失の増加や、サージやノイズを避けるため、ターンオンのタイミングは理想よりも遅く設定され、ターンオフのタイミングは理想より早く設定されるのが望ましいと言える。
【0055】
このようにして、トランジスタをスイッチング素子として用いている、従来の一般的なスイッチング電源装置では、スイッチング素子における逆方向電圧の発生等に起因して、電力損失が増大してしまうおそれがある。したがって、上記したデッドタイムTdを最小化することが求められると言える。
【0056】
(C.本実施の形態の動作例)
そこで、本実施の形態のスイッチング電源装置1では、前述したように、スイッチング駆動を行う際のデッドタイムTdの長さが、計測時間T1と基準時間Trefとの間の誤差積分値(積分値Ie)の大きさに応じて、制御回路7によって随時設定されるようになっている。
【0057】
図4は、本実施の形態に係るデッドタイムTdの設定例を、表したものである。また、図5は、本実施の形態に係る最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの設定例を、表したものである。
【0058】
なお、最大デッドタイムTdmaxは、デッドタイムTdとして設定可能な最大値であり、本発明における「最大遅れ時間」の一具体例に対応している。また、最小デッドタイムTdminは、デッドタイムTdとして設定可能な最小値であり、本発明における「最小遅れ時間」の一具体例に対応している。
【0059】
本実施の形態ではまず、例えば図4に示したように、制御回路7内の駆動回路5は、計測時間T1と基準時間Trefとの大小関係(積分値Ieの増減)に応じて、デッドタイムTdを短縮または延長させるようになっている。
【0060】
具体的には、駆動回路5は、計測時間T1の値が基準時間Trefよりも大きい(T1>Tref)ことにより、積分値Ieが減少した場合には、デッドタイムTdを短縮させる。一方、駆動回路5は、計測時間T1の値が基準時間Trefよりも小さい(T1<Tref)ことにより、積分値Ieが増加した場合には、デッドタイムTdを延長させる。
【0061】
また、例えば図4に示したように、デッドタイムTdの値が最大デッドタイムTdmaxよりも大きくなる場合(Td>Tdmax)には、積分値Ieが維持されて、デッドタイムTdが最大デッドタイムTdmaxに設定される。同様に、デッドタイムTdの値が最小デッドタイムTdminよりも小さくなる場合(Td<Tdmin)には、積分値Ieが維持されて、デッドタイムTdが最小デッドタイムTdminに設定される。
【0062】
このようにして駆動回路5は、前述したように、計測時間T1が基準時間Trefに収束するように、デッドタイムTdを随時設定するようになっている。
【0063】
また、例えば図5に示したように、本実施の形態では、上記した最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの値がそれぞれ、スイッチング電源装置1の動作状態(例えば、直流出力電流Iout、直流入力電圧Vin、直流出力電圧Voutの値など)に応じて、随時変更されるようになっている。
【0064】
具体的には、例えば図5に示したように、スイッチング電源装置1の動作状態としての直流出力電流Ioutの値が、相対的に小さくなった場合には、最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの値がそれぞれ、相対的に大きくなるように変更される。一方、直流出力電流Ioutの値が、相対的に大きくなった場合には、最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの値がそれぞれ、相対的に小さくなるように変更される。
【0065】
また、例えば図5に示したように、スイッチング電源装置1の動作状態としての、直流入力電圧Vinまたは直流出力電圧Voutの値が、相対的に小さくなった場合には、最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの値がそれぞれ、相対的に小さくなるように変更される。一方、直流入力電圧Vinまたは直流出力電圧Voutの値が、相対的に大きくなった場合には、最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの値がそれぞれ、相対的に大きくなるように変更される。
【0066】
更に、例えば図5に示したように、上記した直流入力電圧Vinの値、または、直流出力電流Ioutの値が、急変した場合(急に増加または減少した場合)には、最小デッドタイムTdminの値が、相対的に大きくなるように変更される。
【0067】
(D.作用・効果)
このようにして本実施の形態では、スイッチング駆動を行う際のデッドタイムTdの長さが、計測時間T1と基準時間Trefとの間の誤差積分値(積分値Ie)の大きさに応じて、制御回路7によって随時設定されるようにしたので、以下のようになる。すなわち、スイッチング素子S2において前述したZVSを確実に行いつつ、スイッチング素子S2にて前述した逆方向電圧が生じる期間を、短縮することができる。具体的には、上記したデッドタイムTdを短縮して、スイッチング素子S2における(前述したボディダイオードでの)導通損失を、低減することができる。その結果、本実施の形態では、スイッチング電源装置1における電力損失を抑えることが可能となる。
【0068】
特に、スイッチング素子S1,S2として、GaNトランジスタを用いるようにした場合には、前述したように、逆方向電圧降下が大きいことから、以下のようになる。すなわち、この場合には、上記したスイッチング素子S1,S2での導通損失の低減による、スイッチング電源装置1での電力損失の抑制効果が、特に大きいと言える。
【0069】
また、上記したように、スイッチング素子S2における導通損失が低減されることから、スイッチング電源装置1の小型化や低コスト化を図ることも可能となる。
【0070】
また、本実施の形態では、上記した計測時間T1が基準時間Trefに収束するように、デッドタイムTdを設定するようにしたので、以下のようになる。すなわち、上記したスイッチング素子S2におけるZVSを、より確実に実現することができる結果、スイッチング電源装置1における電力損失を、更に抑えることが可能となる。
【0071】
更に、本実施の形態では、前述した最大デッドタイムTdmaxおよび最小デッドタイムTdminの値がそれぞれ、前述したスイッチング電源装置1の動作状態に応じて変更されるようにしたので、以下のようになる。すなわち、このようなスイッチング電源装置1の動作状態に応じて、デッドタイムTdの範囲を適切に調整することができることから、スイッチング電源装置1における電力損失を、更に抑えることが可能となる。
【0072】
加えて、本実施の形態では、直流入力電圧Vinの値、または、直流出力電流Ioutの値が、急変した場合には、最小デッドタイムTdminの値が相対的に大きくなるように変更されることから、以下のようになる。すなわち、スイッチング電源装置1の動作状態の急変に対処して、最小デッドタイムTdminの値を適切に調整することができることから、スイッチング電源装置1における電力損失を、更に抑えることが可能となる。
【0073】
また、本実施の形態では、整流平滑回路4における整流回路を、いわゆる「センタタップ型」の整流回路としたので、例えば、いわゆる「ブリッジ型」の整流回路とした場合と比べ、以下のようになる。すなわち、整流素子の個数が2つ(整流ダイオード41,42)となって、少なくなる結果、整流回路の小型化や低損失化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0074】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~3)について説明する。なお、以下では、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0075】
[変形例1]
(構成)
図6は、変形例1に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1A)の概略構成例を、回路図で表したものである。
【0076】
なお、実施の形態と同様に、直流入力電源10とこのスイッチング電源装置1Aとを備えたシステムは、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0077】
この変形例1のスイッチング電源装置1Aは、実施の形態のスイッチング電源装置1(図1参照)において、トランス3および整流平滑回路4の代わりに、トランス3Aおよび整流平滑回路4Aをそれぞれ設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0078】
トランス3Aは、1つの1次側巻線31と、1つの2次側巻線32とを有している。すなわち、トランス3では、2つの2次側巻線321,322が設けられていたのに対し、トランス3Aでは、1つの2次側巻線32のみが設けられている。この2次側巻線32では、第1端が、後述する整流平滑回路4A内の接続点P7に接続され、第2端が、この整流平滑回路4A内の接続点P8に接続されている。
【0079】
このトランス3Aもトランス3と同様に、インバータ回路2によって生成された電圧(矩形パルス波化した電圧)を電圧変換し、2次側巻線32の端部から交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合における、直流入力電圧Vinに対する直流出力電圧Voutの電圧変換の度合いは、1次側巻線31と2次側巻線32との巻数比、および、前述したスイッチング周波数fswによって、定まる。
【0080】
整流平滑回路4Aは、4個の整流ダイオード41~44と、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有している。具体的には、この整流平滑回路4Aは、整流ダイオード41~44を有する整流回路と、出力平滑コンデンサCoutを有する平滑回路と、を含んでいる。すなわち、この整流平滑回路4Aは、整流平滑回路4において、整流回路の構成を変更したものとなっている。
【0081】
この変形例1の整流回路は、実施の形態の整流回路(いわゆる「センタタップ型」の整流回路)とは異なり、いわゆる「ブリッジ型」の整流回路となっている。すなわち、整流ダイオード41,43のカソードがそれぞれ、出力ラインLOに接続され、整流ダイオード41のアノードが、接続点P7において、整流ダイオード42のカソードおよび2次側巻線32における前述した第1端に接続されている。また、整流ダイオード42,44のアノードがそれぞれ、接地ラインLGに接続され、整流ダイオード44のカソードが、接続点P8において、整流ダイオード43のアノードおよび2次側巻線32における前述した第2端に接続されている。
【0082】
このような構成の整流平滑回路4Aでは、整流平滑回路4と同様に、整流ダイオード41~44を含んで構成される整流回路において、トランス3Aから出力される交流電圧を整流して出力するようになっている。
【0083】
(作用・効果)
このような構成からなる変形例1のスイッチング電源装置1Aにおいても、基本的には、実施の形態のスイッチング電源装置1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0084】
また、特にこの変形例1では、整流平滑回路4Aにおける整流回路を、ブリッジ型の整流回路としたので、例えば実施の形態の場合と比べ、トランス3Aにおける巻線数(2次側巻線の個数)が1つ(2次側巻線32)となって、少なくなる。その結果、トランス3Aの小型化や低損失化を図ることが可能となる。
【0085】
[変形例2,3]
変形例2,3に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1B,1C)はそれぞれ、これまでに説明した、実施の形態および変形例1において、整流平滑回路4,4A内の整流回路をそれぞれ、以下説明するように、いわゆる同期整流回路としたものとなっている。また、そのような同期整流回路が設けられていることに伴い、これらの変形例2,3のスイッチング電源装置1B,1Cではそれぞれ、実施の形態および変形例1の制御回路7の代わりに、後述する制御回路7B,7Cが設けられている。
【0086】
(変形例2の構成)
具体的には、図7は、変形例2に係るスイッチング電源装置1Bの概略構成例を、回路図で表したものである。
【0087】
なお、実施の形態および変形例1と同様に、直流入力電源10とこのスイッチング電源装置1Bとを備えたシステムは、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0088】
この変形例2のスイッチング電源装置1Bは、実施の形態のスイッチング電源装置1において、整流平滑回路4および制御回路7の代わりに、整流平滑回路4Bおよび制御回路7Bをそれぞれ設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0089】
この変形例2における同期整流回路(整流平滑回路4B)では、図7に示したように、実施の形態で説明した整流ダイオード41,42がそれぞれ、スイッチング素子としてのMOS-FET(MOSトランジスタM9,M10)により構成されている。そして、この同期整流回路では、各MOSトランジスタM9,M10の寄生ダイオードが導通する期間と同期して、これらのMOSトランジスタM9,M10自身もオン状態となる(同期整流を行う)ように、制御される。具体的には、この変形例2では、後述する制御回路7B内の駆動回路5は、駆動信号SG9,SG10を用いて、各MOSトランジスタM9,M10のオン・オフ動作を制御するようになっている(図7参照)。
【0090】
なお、このようなMOSトランジスタM9,M10はそれぞれ、本発明における「同期整流を行うスイッチング素子」の一具体例に対応している。
【0091】
また、この変形例2の制御回路7Bは、基本的には、実施の形態および変形例1の制御回路7と同様に、前述した時間計測回路61、積分回路62および駆動回路5を有している。ただし、この制御回路7Bは制御回路7とは異なり、以下のようになっている。
【0092】
すなわち、まず、制御回路7では、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子S2,S1(本発明における「第1および第2のスイッチング素子」に相当)がいずれも、インバータ回路2内に配置されているスイッチング素子であった。これに対して制御回路7Bでは、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子(本発明における「第1および第2のスイッチング素子」に相当)のうちの少なくとも一方が、上記した整流平滑回路4B内に配置された、同期整流を行うスイッチング素子(上記したMOSトランジスタM9,M10のうちの少なくとも一方)となっている。
【0093】
具体的には、制御回路7Bでは、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子が、下記の(a)または(b)で示したようになっている。
(a)スイッチング素子S1,S2のうちの一方と、MOSトランジスタM9,M10のうちの一方とが、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子となっている
(b)MOSトランジスタM9,M10がそれぞれ、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子となっている
【0094】
そして、この制御回路7Bは、これらの2つのスイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子(本発明における「第1のスイッチング素子」に相当)における両端間の電圧に基づき、実施の形態および変形例1と同様にして、デッドタイムTdを設定する。具体的には、制御回路7Bは、前述した計測時間T1と基準時間Trefとの間の誤差積分値(積分値Ie)の大きさに応じて、スイッチング駆動を行う際のデッドタイムTdの長さを、随時設定する。そして、制御回路7Bは、このようにして随時設定したデッドタイムTdを用いて、上記した2つのスイッチング素子を含む複数のスイッチング素子(スイッチング素子S1,S2およびMOSトランジスタM9,M10)におけるスイッチング動作を、それぞれ制御する。
【0095】
なお、このような制御回路7Bは、本発明における「スイッチング制御装置」の一具体例に対応している。また、この変形例2では、上記したスイッチング素子S1、S2およびMOSトランジスタM9,M10がそれぞれ、本発明における「複数のスイッチング素子」の一具体例に対応している。更に、これらのスイッチング素子S1、S2およびMOSトランジスタM9,M10のうちの任意の2つ(上記した2つのスイッチング素子)が、本発明における「第1のスイッチング素子」および「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応している。
【0096】
(変形例3の構成)
また、図8は、変形例3に係るスイッチング電源装置1Cの概略構成例を、回路図で表したものである。
【0097】
なお、実施の形態および変形例1,2と同様に、直流入力電源10とこのスイッチング電源装置1Cとを備えたシステムは、本発明における「電力供給システム」の一具体例に対応している。
【0098】
この変形例3のスイッチング電源装置1Cは、変形例1のスイッチング電源装置1Aにおいて、整流平滑回路4Aおよび制御回路7の代わりに、整流平滑回路4Cおよび制御回路7Cをそれぞれ設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0099】
この変形例3における同期整流回路(整流平滑回路4C)では、図8に示したように、変形例1で説明した整流ダイオード41~44がそれぞれ、スイッチング素子としてのMOS-FET(MOSトランジスタM11~M14)により構成されている。そして、この変形例3の同期整流回路においても、上記した変形例2の同期整流回路と同様に、各MOSトランジスタM11~M14の寄生ダイオードが導通する期間と同期して、これらのMOSトランジスタM11~M14自身もオン状態となる(同期整流を行う)ように、制御される。具体的には、この変形例3では、後述する制御回路7C内の駆動回路5は、駆動信号SG11~SG14を用いて、各MOSトランジスタM11~M14のオン・オフ動作を制御するようになっている(図8参照)。
【0100】
なお、このようなMOSトランジスタM11~M14はそれぞれ、本発明における「同期整流を行うスイッチング素子」の一具体例に対応している。
【0101】
また、この変形例3の制御回路7Cは、基本的には、実施の形態および変形例1の制御回路7と同様に、前述した時間計測回路61、積分回路62および駆動回路5を有している。ただし、この制御回路7Cは制御回路7とは異なり、変形例2にて説明した制御回路7Bと同様に、以下のようになっている。
【0102】
すなわち、制御回路7Cでは、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子(本発明における「第1および第2のスイッチング素子」に相当)のうちの少なくとも一方が、上記した整流平滑回路4C内に配置された、同期整流を行うスイッチング素子(上記したMOSトランジスタM11~M14のうちの少なくとも1つ)となっている。
【0103】
具体的には、制御回路7Cでは、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子が、下記の(c)または(d)で示したようになっている。
(c)スイッチング素子S1,S2のうちの一方と、MOSトランジスタM11~M14のうちの1つとが、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子となっている
(d)MOSトランジスタM11~M14のうちの2つがそれぞれ、デッドタイムTdの設定対象となる2つのスイッチング素子となっている
【0104】
そして、この制御回路7Cは、これらの2つのスイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子(本発明における「第1のスイッチング素子」に相当)における両端間の電圧に基づき、実施の形態および変形例1,2と同様にして、デッドタイムTdを設定する。具体的には、制御回路7Cは、前述した計測時間T1と基準時間Trefとの間の誤差積分値(積分値Ie)の大きさに応じて、スイッチング駆動を行う際のデッドタイムTdの長さを、随時設定する。そして、制御回路7Cは、このようにして随時設定したデッドタイムTdを用いて、上記した2つのスイッチング素子を含む複数のスイッチング素子(スイッチング素子S1,S2およびMOSトランジスタM11~M14)におけるスイッチング動作を、それぞれ制御する。
【0105】
なお、このような制御回路7Cは、本発明における「スイッチング制御装置」の一具体例に対応している。また、この変形例3では、上記したスイッチング素子S1、S2およびMOSトランジスタM11~M14がそれぞれ、本発明における「複数のスイッチング素子」の一具体例に対応している。更に、これらのスイッチング素子S1、S2およびMOSトランジスタM11~M14のうちの任意の2つ(上記した2つのスイッチング素子)が、本発明における「第1のスイッチング素子」および「第2のスイッチング素子」の一具体例に対応している。
【0106】
(変形例2,3の作用・効果)
このような構成からなる変形例2,3のスイッチング電源装置1B,1Cにおいても、基本的には、これまでに説明したスイッチング電源装置1,1Aと同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0107】
また、特にこれらの変形例2,3では、整流回路における複数の整流素子(整流ダイオード)がそれぞれ、スイッチング素子によって構成されており、この整流回路が同期整流回路になっているようにしたので、以下のようになる。すなわち、このような同期整流回路によって、整流時の導通損失が低減されることから、整流回路の小型化や低損失化を図ることが可能となる。ちなみに、このようなスイッチング素子としては、上記したMOS-FETの他、例えば、前述したHEMTや、並列にダイオード付加したIGBTまたはバイポーラトランジスタ等が、挙げられる。
【0108】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0109】
例えば、上記実施の形態等では、インバータ回路の構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、例えば、インバータ回路として他の構成のものを用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、互いに直列接続されている、共振インダクタLr、共振コンデンサCrおよび1次側巻線31の配置関係については、実施の形態等で説明した配置関係には限られず、これら3つの配置位置が互いに順不同となっていてもよい。また、上記実施の形態等では、いわゆる「ハーフブリッジ型」のインバータ回路の例について説明したが、この例には限られず、例えば、いわゆる「フルブリッジ型」のインバータ回路などであってもよい。
【0110】
また、上記実施の形態等では、トランス(1次側巻線および2次側巻線)の構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、例えば、トランス(1次側巻線および2次側巻線)として他の構成のものを用いるようにしてもよい。
【0111】
更に、上記実施の形態等では、整流平滑回路(整流回路および平滑回路)の構成を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、例えば、整流平滑回路(整流回路および平滑回路)として他の構成のものを用いるようにしてもよい。
【0112】
加えて、上記実施の形態等では、駆動回路による各スイッチング素子の動作制御(スイッチング駆動)の手法を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、スイッチング駆動の手法として、他の手法を用いるようにしてもよい。
【0113】
また、上記実施の形態等では、本発明に係るスイッチング電源装置の一例として、DC-DCコンバータを挙げて説明したが、本発明は、例えばAC-DCコンバータなどの、他の種類のスイッチング電源装置にも適用することが可能である。
【0114】
更に、これまでに説明した各構成例等を、任意の組み合わせで適用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8