(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】運転支援装置及び車両並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241218BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023550921
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036166
(87)【国際公開番号】W WO2023053355
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 育郎
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-244985(JP,A)
【文献】特開2020-154502(JP,A)
【文献】特開2019-109591(JP,A)
【文献】特開2002-74595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置において、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
車両の周囲を撮影した画像データに基づいて前記車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出し、
前記車両とは異なる位置に存在し、前記影を形成
している光源の位置を推定し、
前記光源の位置及び前記影の時間変化に基づいて前記物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに前
記車両と前記物体との衝突可能性を判定する、運転支援装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
日の出時刻及び日の入時刻の情報及び現在時刻に基づいて前記光源としての太陽の位置を推定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
移動不可能に設置された照明装置の設置位置のデータに基づいて前記光源としての照明装置の位置を推定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記車両の外部から受信した移動体のデータに基づいて前記光源を備えた移動体の位置を推定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記画像データに基づいて前記死角領域から前記死角領域の外へ移動した移動体及び当該移動体の影を検出し、
前記移動体及び前記移動体の影に基づいて前記光源の位置を推定する、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項6】
物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置において、
車両の周囲を撮影した画像データに基づいて前記車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出する影領域検出部と、
前記車両とは異なる位置に存在し、前記影を形成
している光源の位置を推定する光源位置推定部と、
前記光源の位置及び前記影の時間変化に基づいて前記物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに前
記車両と前記物体との衝突可能性を判定する衝突判定部と、
を備えた、運転支援装置。
【請求項7】
物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置を備えた車両において、
前記運転支援装置は、一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記プロセッサは、
車両の周囲を撮影した画像データに基づいて前記車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出し、
前記車両とは異なる位置に存在し、前記影を形成
している光源の位置を推定し、
前記光源の位置及び前記影の時間変化に基づいて前記物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに前
記車両と前記物体との衝突可能性を判定する、車両。
【請求項8】
物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置に適用されるコンピュータプログラムを記録した記録媒体であって、
一つ又は複数のプロセッサに、
車両の周囲を撮影した画像データに基づいて前記車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出することと、
前記車両とは異なる位置に存在し、前記影を形成
している光源の位置を推定することと、
前記光源の位置及び前記影の時間変化に基づいて前記物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに前
記車両と前記物体との衝突可能性を判定することと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、死角領域から飛び出す物体との衝突を回避するように車両の運転を支援する運転支援装置及び車両並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、主として交通事故の削減及び運転負荷の軽減を目的として、運転支援機能や自動運転機能が搭載された車両の実用化が進められている。例えば自車両に設けられた車外撮影カメラやLiDAR(Light Detection and Ranging)等の種々のセンサにより検出された情報に基づいて自車両の周囲に存在する物体を検知し、自車両と物体との衝突を回避するよう自車両の運転を支援する装置が知られている。しかしながら、交通事故のなかには、死角領域からの急な飛び出しなど、あらかじめ事故を想定して減速等の予備行動を取っていない場合には回避が困難な事象が存在する。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、自車両が死角のある状況を走行する場合に、状況に応じて適切に車両を制御することができる車両制御装置が提案されている。具体的に、特許文献1には、自車両にとって死角となる死角領域を検出し、死角領域から出現する可能性のある移動体の進路と自車両の進路の相対的な優先度を判定し、判定した優先度に基づいて自車両に対する制御信号を出力する車両制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された運転支援装置は、死角領域から飛び出してくる物体を実際に検出するものではないため、死角領域を通過する際に実際に飛び出しが無い場合にも減速等の制御が実行される。飛び出しが無いにもかかわらず減速等が繰り返されると、運転支援装置に対する信頼や受容性が低下し、場合によっては運転支援機能が活用されなくなるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、死角領域に存在する物体を検出し、当該物体と自車両との衝突を判定可能な運転支援装置及び車両並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置において、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、車両の周囲を撮影した画像データに基づいて車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出し、影を形成する光源の位置を推定し、光源の位置及び影の時間変化に基づいて物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに自車両と物体との衝突可能性を判定する運転支援装置が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置において、車両の周囲を撮影した画像データに基づいて車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出する影領域検出部と、影を形成する光源の位置を推定する光源位置推定部と、光源の位置及び影の時間変化に基づいて物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに自車両と物体との衝突可能性を判定する衝突判定部とを備えた運転支援装置が提供される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置を備えた車両において、運転支援装置は、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、プロセッサは、車両の周囲を撮影した画像データに基づいて車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出し、影を形成する光源の位置を推定し、光源の位置及び影の時間変化に基づいて物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに自車両と物体との衝突可能性を判定する車両が提供される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、物体との衝突を回避する運転を支援する運転支援装置に適用されるコンピュータプログラムを記録した記録媒体であって、一つ又は複数のプロセッサに、車両の周囲を撮影した画像データに基づいて車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出することと、影を形成する光源の位置を推定することと、光源の位置及び影の時間変化に基づいて物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに自車両と物体との衝突可能性を判定することとを含む処理を実行させるコンピュータプログラムを記録した記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、死角領域に存在する物体を検出し、当該物体と自車両との衝突を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る運転支援装置を備えた車両の構成例を示す模式図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る運転支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態の運転支援装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図4】同実施形態の運転支援装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図5】同実施形態の運転支援装置による光源位置推定処理を示すフローチャートである。
【
図6】光源が太陽である場合の例を説明するための走行シーンを示す図である。
【
図7】
図6の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図8】
図6の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図9】光源が街灯である場合の例を説明するための走行シーンを示す図である。
【
図10】
図9の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図11】
図9の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図12】光源が移動体のライトである場合の例を説明するための走行シーンを示す図である。
【
図13】
図12の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図14】
図12の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図15】第2の実施の形態の運転支援装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図16】同実施形態の運転支援装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図17】同実施形態の光源位置の推定方法を説明するための走行シーンを示す図である。
【
図18】
図17の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【
図19】
図17の走行シーンを自車両の進行方向から見た様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<<1.第1の実施の形態>>
<1-1.車両の全体構成>
まず、本開示の実施の形態に係る運転支援装置を適用可能な車両の全体構成の一例を説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る運転支援装置50を備えた車両1の構成例を示す模式図である。
図1に示した車両1は、車両1の駆動トルクを生成する駆動力源9から出力される駆動トルクを左前輪3LF、右前輪3RF、左後輪3LR及び右後輪3RR(以下、特に区別を要しない場合には「車輪3」と総称する)に伝達する四輪駆動車として構成されている。駆動力源9は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であってもよく、駆動用モータであってもよく、内燃機関及び駆動用モータをともに備えていてもよい。
【0016】
なお、車両1は、例えば前輪駆動用モータ及び後輪駆動用モータの二つの駆動用モータを備えた電気自動車であってもよく、それぞれの車輪3に対応する駆動用モータを備えた電気自動車であってもよい。また、車両1が電気自動車やハイブリッド電気自動車の場合、車両1には、駆動用モータへ供給される電力を蓄積する二次電池や、バッテリに充電される電力を発電するモータや燃料電池等の発電機が搭載される。さらに、車両1は、二輪駆動の四輪自動車であってもよく、二輪自動車等の他の種類の車両であってもよい。
【0017】
車両1は、車両1の運転制御に用いられる機器として、駆動力源9、電動ステアリング装置15及びブレーキ液圧制御ユニット20を備えている。駆動力源9は、図示しない変速機や前輪差動機構7F及び後輪差動機構7Rを介して前輪駆動軸5F及び後輪駆動軸5Rに伝達される駆動トルクを出力する。駆動力源9や変速機の駆動は、一つ又は複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を含んで構成された車両制御装置41により制御される。
【0018】
前輪駆動軸5Fには電動ステアリング装置15が設けられている。電動ステアリング装置15は図示しない電動モータやギヤ機構を含む。電動ステアリング装置15は、車両制御装置41により制御されることによって左前輪3LF及び右前輪3RFの操舵角を調節する。車両制御装置41は、手動運転中には、ドライバによるステアリングホイール13の操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。また、車両制御装置41は、自動運転中には、運転支援装置50や図示しない自動運転制御装置により設定される目標操舵角に基づいて電動ステアリング装置15を制御する。
【0019】
車両1のブレーキシステムは、油圧式のブレーキシステムとして構成されている。ブレーキ液圧制御ユニット20は、それぞれ前後左右の駆動輪3LF,3RF,3LR,3RRに設けられたブレーキキャリパ17LF,17RF,17LR,17RR(以下、特に区別を要しない場合には「ブレーキキャリパ17」と総称する)に供給する油圧をそれぞれ調節し、制動力を発生させる。ブレーキ液圧制御ユニット20の駆動は、車両制御装置41により制御される。車両1が電気自動車あるいはハイブリッド電気自動車の場合、ブレーキ液圧制御ユニット20は、駆動用モータによる回生ブレーキと併用される。
【0020】
車両制御装置41は、車両1の駆動トルクを出力する駆動力源9、ステアリングホイール13又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両1の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット20の駆動を制御する一つ又は複数の電子制御装置を含む。車両制御装置41は、駆動力源9から出力された出力を変速して車輪3へ伝達する変速機の駆動を制御する機能を備えていてもよい。車両制御装置41は、運転支援装置50又は図示しない自動運転制御装置から送信される情報を取得可能に構成され、車両1の自動運転制御を実行可能に構成されている。また、車両制御装置41は、車両1の手動運転時においては、ドライバの運転による操作量の情報を取得し、車両1の駆動トルクを出力する駆動力源9、ステアリングホイール13又は操舵輪の操舵角を制御する電動ステアリング装置15、車両1の制動力を制御するブレーキ液圧制御ユニット20の駆動を制御する。
【0021】
また、車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF、車両状態センサ35及びGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ37を備えている。前方撮影カメラ31LF,31RFは、車両1の周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサ31を構成する。前方撮影カメラ31LF,31RFは、車両1の前方を撮影し、画像データを生成する。前方撮影カメラ31LF,31RFは、CCD(Charged-Coupled Devices)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)等の撮像素子を備え、生成した画像データを運転支援装置50へ送信する。
【0022】
図1に示した車両1では、前方撮影カメラ31LF,31RFは、左右一対のカメラを含むステレオカメラとして構成されているが、単眼カメラであってもよい。車両1は、前方撮影カメラ31LF,31RF以外に、例えば車両1の後部に設けられて後方を撮影する後方撮影カメラあるいはサイドミラーに設けられて左後方又は右後方を撮影するカメラを備えていてもよい。
【0023】
車両1は、周囲環境の情報を取得するための周囲環境センサとして、前方撮影カメラ31LF,31RFと併せて、LiADR、ミリ波レーダ等のレーダセンサ又は超音波センサのうちのいずれか一つ又は複数のセンサを備えていてもよい。
【0024】
車両状態センサ35は、車両1の操作状態及び挙動を検出する一つ又は複数のセンサからなる。車両状態センサ35は、例えば舵角センサ、アクセルポジションセンサ、ブレーキストロークセンサ、ブレーキ圧センサ又はエンジン回転数センサのうちの少なくとも一つを含む。これらのセンサは、それぞれステアリングホイール13あるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の車両1の操作状態を検出する。また、車両状態センサ35は、例えば車速センサ、加速度センサ、角速度センサのうちの少なくとも一つを含む。これらのセンサは、それぞれ車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の車両の挙動を検出する。車両状態センサ35は、検出した情報を含むセンサ信号を運転支援装置50へ送信する。
【0025】
GNSSセンサ37は、GPS(Global Positioning System)衛星に代表される衛星から送信される衛星信号を受信する。GNSSセンサ37は、受信した衛星信号に含まれる世界座標系上の自車両1の位置情報を運転支援装置50へ送信する。なお、GNSSセンサ37は、GPS衛星以外に、自車両1の位置を特定する他の衛星システムからの衛星信号を受信するアンテナを備えていてもよい。
【0026】
通知装置43は、運転支援装置50から送信される情報に基づいて、画像表示や音声出力等の手段により、ドライバに対して種々の情報を提示する。通知装置43は、例えばインストルメントパネル内に設けられた表示装置及び車両に設けられたスピーカを含む。表示装置は、ナビゲーションシステムの表示装置であってもよい。また、通知装置43は、自車両1の周囲の風景に重畳させてフロントウィンドウ上へ表示を行うHUD(ヘッドアップディスプレイ)を含んでもよい。
【0027】
<1-2.運転支援装置>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50を具体的に説明する。なお、以下、運転支援装置50を搭載した車両1を自車両と称する。
【0028】
(1-2-1.全体構成)
図2は、本実施形態に係る運転支援装置50の構成例を示すブロック図である。
運転支援装置50には、専用線又はCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Inter Net)等の通信手段を介して、周囲環境センサ31、車両状態センサ35及びGNSSセンサ37が接続されている。また、運転支援装置50には、専用線又はCANやLIN等の通信手段を介して、車両制御装置41及び通知装置43が接続されている。なお、運転支援装置50は、自車両1に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートホンやウェアラブル機器等の端末装置であってもよい。
【0029】
運転支援装置50は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで自車両1の運転を支援する装置として機能する。当該コンピュータプログラムは、運転支援装置50が実行すべき後述する動作をプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。プロセッサにより実行されるコンピュータプログラムは、運転支援装置50に備えられた記憶部(メモリ)53として機能する記録媒体に記録されていてもよく、運転支援装置50に内蔵された記録媒体又は運転支援装置50に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0030】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ等の磁気媒体、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びBlu-ray(登録商標)等の光記録媒体、フロプティカルディスク等の磁気光媒体、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等の記憶素子、並びにUSB(Universal Serial Bus)メモリ及びSSD(Solid State Drive)等のフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0031】
運転支援装置50は、処理部51及び記憶部53を備えている。処理部51は、一つ又は複数のプロセッサを備えて構成される。処理部51の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。記憶部53は、RAM又はROM等のメモリにより構成され、処理部51と通信可能に接続される。ただし、記憶部53の数や種類は特に限定されない。記憶部53は、処理部51により実行されるコンピュータプログラムや、演算処理に用いられる種々のパラメタ、検出データ、演算結果等の情報を記憶する。
【0032】
また、運転支援装置50は、高精度地図データ記憶部55及び太陽位置データ記憶部57を備えている。高精度地図データ記憶部55及び太陽位置データ記憶部57は、それぞれ処理部51と通信可能に接続された記録媒体からなる。高精度地図データ記憶部55は、道路や路外の構造物の位置情報及び立体形状のデータを含む地図データを記憶する。高精度地図データは、例えば建物や側壁、生け垣、橋梁等の構造物あるいは交通信号機、街灯等の設置物などの位置情報及び立体形状のデータを含む。特に、高精度地図データは、街灯の光源の高さのデータを含む。また、太陽位置データ記憶部57は、太陽の高度及び向きを記憶する。太陽位置データは、時刻、季節及び地域に応じた太陽の高度及び向きのデータを含む。
【0033】
高精度地図データ記憶部55及び太陽位置データ記憶部57を構成する記録媒体は、任意の記録媒体であってよい。また、高精度地図データ記憶部55及び太陽位置データ記憶部57は、移動体通信等の無線通信手段を介して接続された車外のサーバ等に備えられていてもよい。
【0034】
また、運転支援装置50は、第1の通信部58及び第2の通信部59を備えている。第1の通信部58及び第2の通信部59は、それぞれ処理部51と通信可能に接続された外部通信用のインタフェースである。第1の通信部58は、例えば移動体通信等の無線通信用のインタフェースであり、テレマティクスサービスとの送受信に用いられる。第2の通信部59は、車車間通信用のインタフェースであり、自車両1の周囲の他車両との通信に用いられる。
【0035】
(1-2-2.機能構成)
運転支援装置50の処理部51は、走行状態検出部61、周囲環境検出部63、死角領域検出部65、影領域検出部67、光源位置推定部69、衝突判定部71、運転条件設定部73及び通知部75を備えている。これらの各部は、プロセッサによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能であるが、各部の一部が、アナログ回路により構成されていてもよい。以下、各部の機能を簡単に説明した後、運転支援装置50の処理動作を詳しく説明する。
【0036】
(走行状態検出部)
走行状態検出部61は、車両状態センサ35から送信される検出データに基づいて自車両1の操作状態及び挙動の情報を検出する。走行状態検出部61は、ステアリングホイールあるいは操舵輪の操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量又はエンジン回転数等の自車両1の操作状態、及び、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート等の自車両1の挙動の情報を所定の演算周期ごとに取得し、これらの情報を記憶部53に記憶する。
【0037】
(周囲環境検出部)
周囲環境検出部63は、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて自車両1の周囲環境を検出する。具体的に、周囲環境検出部63は、自車両1の前方に存在する物体の種類、サイズ(幅、高さ及び奥行き)、位置、自車両1から物体までの距離、及び自車両1と物体との相対速度を算出する。検出される物体は、走行中の他車両や駐車車両、歩行者、自転車、側壁、縁石、建造物、電柱、交通標識、交通信号機、自然物、その他の自車両1の周囲に存在するあらゆる移動体及び静止物を含む。
【0038】
(死角領域検出部)
死角領域検出部65は、周囲環境検出部63により検出された周囲環境の情報及び高精度地図データ記憶部55に基づいて、自車両1から見た死角領域を検出する。例えば死角領域検出部65は、高精度地図データ記憶部55に基づいて、自車両1の前方の曲がり角の手前に側壁等の建造物が存在しており、周囲環境センサ31では検出できない曲がり角の先の領域を死角領域として検出する。また、死角領域検出部65は、周囲環境検出部63により検出された周囲環境の情報に基づいて、自車両1の前方に駐車車両が存在しており、周囲環境センサ31では検出できない駐車車両の奥の領域を死角領域として検出する。なお、死角領域検出部65は、周囲環境検出部63により検出された周囲環境の情報又は高精度地図データ記憶部55のいずれか一方の情報に基づいて、自車両1から見た死角領域を検出してもよい。ただし、死角領域の検出方法は特に限定されるものではない。
【0039】
(影領域検出部)
影領域検出部67は、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて、画像データ内に存在する影を検出する。本実施形態において、「影」とは、移動体や静止物等の物体が光の進行を遮る結果、壁や地面等に生じる暗い領域をいう。例えば影領域検出部67は、画像データの各ピクセルの輝度情報及び色相情報に基づいて、所定距離内で輝度又は色相が大きく変化する輪郭線を求めることで影を特定することができる。ただし、影の検出方法は特に限定されるものではなく、任意の公知の影検出技術を利用することができる。影領域検出部67により検出される影は、周囲環境検出部63により検出されている物体の影だけでなく、自車両1から見た死角領域に存在し、周囲環境検出部63によっては直接検出されていない物体(以下「潜在物体」ともいう)の影も含む。
【0040】
(光源位置推定部)
光源位置推定部69は、影領域検出部67により検出された影を作り出している光を発している光源の位置を推定する。本実施形態では、光源位置推定部69は、周囲環境センサ31から送信される画像データ、時刻情報、高精度地図データ、太陽位置データ及びテレマティクスサービスから取得される情報並びに車車間通信を介して他車両から取得される情報を用いて光源及び光源の位置を推定する。具体的に、光源位置推定部69は、影を作り出している光源が太陽である場合、移動不可能に設置された照明装置である場合、又は光源を備えた移動体のライトである場合をそれぞれ判別するとともに、光源である太陽、移動不可能に設置された照明装置又は移動体の位置を推定する。
【0041】
(衝突判定部)
衝突判定部71は、影領域検出部67により検出された潜在物体の影の情報、及び、光源位置推定部69により推定された光源の位置の情報に基づいて、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定する。具体的に、衝突判定部71は、光源の位置及び潜在物体の影の時間変化に基づいて死角領域内での潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算し、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定する。
【0042】
(運転条件設定部)
運転条件設定部73は、衝突判定部71により自車両1と潜在物体とが衝突する可能性があると判定された場合、衝突を回避するための自車両1の運転条件を設定する。具体的に、運転条件設定部73は、自車両1を減速させ、あるいは、走行軌道を修正するための目標加速度又は目標操舵角を設定し、これらの情報を車両制御装置41へ送信する。運転条件の情報を受信した車両制御装置41は、設定された運転条件の情報に基づいてそれぞれの制御機器の駆動を制御する。
【0043】
(通知部)
通知部75は、衝突判定部71により自車両1と潜在物体とが衝突する可能性があると判定された場合、通知装置43に対して指令信号を出力し、ドライバに対して衝突の可能性があることを通知する。通知部75は、衝突の可能性があることを通知するだけでなく、飛び出し位置及び飛び出し速度等の飛び出してくる潜在物体の情報を併せて通知してもよい。
【0044】
<1-3.運転支援装置の動作>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50の動作例をフローチャートに沿って具体的に説明する。
【0045】
図3~
図4は、本実施形態の運転支援装置50の処理動作の一例を示すフローチャートである。まず、運転支援装置50を含む車載システムが起動されると(ステップS11)、処理部51の周囲環境検出部63は、自車両1の周囲環境情報を取得する(ステップS13)。具体的に、周囲環境検出部63は、周囲環境センサ31から送信される検出データに基づいて自車両1の周囲に存在する物体を検出する。また、周囲環境検出部63は、検出した物体の位置、サイズ、速度、自車両1から物体までの距離及び自車両1と物体との相対速度を算出する。
【0046】
例えば周囲環境検出部63は、前方撮影カメラ31LF,31RFから送信される画像データを画像処理することにより、パターンマッチング技術等を用いて自車両1の前方の物体を検出する。また、周囲環境検出部63は、画像データ中の物体の位置、画像データ中に物体が占めるサイズ及び左右の前方撮影カメラ31LF,31RFの視差の情報に基づいて、自車両1から見た物体の位置、サイズ及び物体までの距離を算出する。さらに、周囲環境検出部63は、距離の変化を時間微分することにより自車両1と物体との相対速度を算出するとともに、当該相対速度の情報と自車両1の車速の情報とに基づいて物体の速度を算出する。
【0047】
周囲環境検出部63は、検出した物体のうち、速度が所定値以下、例えば徐行速度(10km/h以下)の物体を静止物としてラベリングし、速度が当該所定値を超える物体を移動体としてラベリングする。所定値は0km/hであってもよいが、徐行速度を所定値とすることで、渋滞時に徐行している車両の間の死角領域から飛び出すリスクのある歩行者を、本開示の技術における死角領域に存在する物体として検出することができるようになる。周囲環境検出部63は、検出した物体の情報を記憶部53に記録する。ただし、物体の検出方法は、上記の例に限られない。
【0048】
次いで、処理部51の死角領域検出部65は、高精度地図データ記憶部55に記憶された高精度地図データを参照し、GNSSセンサ37から送信される自車両1の現在位置の情報に基づいて自車両1の周囲の道路及び構造物等のデータを取得する(ステップS15)。例えば死角領域検出部65は、自車両1が走行する道路の位置及び形状と、自車両1が走行中の道路端の構造物の位置、形状及びサイズ(高さ)のデータを取得する。
【0049】
次いで、死角領域検出部65は、自車両1の前方に死角領域があるか否かを判定する(ステップS17)。具体的に、死角領域検出部65は、ステップS13で検出された周囲環境の情報及びステップS15で取得した自車両1の周囲のデータに基づいて、自車両1の前方に、自車両1から見た死角領域が存在するか否かを判定する。例えば自車両1の前方に駐車車両が存在する場合や自車両1の前方の曲がり角の奥が見えない場合に、死角領域検出部65は、死角領域があると判定する。
【0050】
死角領域があると判定されない場合(S17/No)、処理部51は、ステップS21において車載システムが停止したと判定されない限り、ステップS13に戻って死角領域が検出されるまで処理を繰り返す。一方、死角領域があると判定された場合(S17/Yes)、影領域検出部67は、死角領域に存在する潜在物体の影があるか否かを判定する(ステップS19)。具体的に、影領域検出部67は、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて、画像データ内に存在する影を検出する。また、影領域検出部67は、検出した影のうち、周囲環境検出部63により検出されていない物体の影であって、死角領域から外へ延びている物体の影がある場合に、死角領域に存在する潜在物体の影があると判定する。
【0051】
死角領域に存在する潜在物体の影があると判定されない場合(S19/No)、処理部51は、ステップS21において車載システムが停止したと判定されない限り、ステップS13に戻ってここまで説明した処理を繰り返す。一方、死角領域に存在する潜在物体の影があると判定された場合(S19/Yes)、処理部51の光源位置推定部69は、影を作り出している光源の位置を推定する処理を実行する(ステップS23)。
【0052】
図5は、光源の位置を推定する処理の一例を示すフローチャートである。
まず、光源位置推定部69は、光源及び光源の位置を推定するための種々のデータを取得する(ステップS41)。本実施形態では、光源位置推定部69は、周囲環境センサ31から送信される画像データ、時刻情報、GNSSセンサ37から送信される自車両1の位置及び進行方向の情報、高精度地図データ記憶部55に記憶された高精度地図データ、太陽位置データ記憶部57に記憶された太陽位置データ、テレマティクスサービスから送信される天候情報及び車車間通信を介して取得される他車両の情報を取得する。
【0053】
次いで、光源位置推定部69は、影を作り出している光源が太陽であるか否かを判定する(ステップS43)。例えば光源位置推定部69は、天候が晴であり、現在時刻が日の出時刻後、日の入時刻前である場合に、光源が太陽であると判定する。日の出時刻より所定時間後から日の入時刻から所定時間前まで等、時間が限定されていてもよい。さらに、光源位置推定部69は、周囲環境センサ31から送信される画像データ中の、死角領域に存在する潜在物体の影と判定された影の周囲の輝度及び色相に基づいて当該影の周囲に日が当たっているか否かを併せて判定してもよい。
【0054】
光源が太陽であると判定した場合(S43/Yes)、光源位置推定部69は、自車両1あるいは死角領域から見た太陽の位置を推定する(ステップS45)。具体的に、光源位置推定部69は、時刻情報及び太陽位置データに基づいて現在時刻における太陽の高度及び向き(方向)を特定する。さらに、光源位置推定部69は、太陽の高度及び向きの情報と、自車両1の進行方向の情報に基づいて、自車両1から見た太陽の向きを推定する。死角領域から見た太陽の高度及び向きは、自車両1から見た太陽の高度及び向きと同じと見做すことができる。光源位置推定部69は、推定した太陽の高度及び向きの情報を記憶部53に記憶する。
【0055】
一方、光源が太陽であると判定されない場合(S43/No)、光源位置推定部69は、光源が街灯であるか否かを判定する(ステップS47)。例えば光源位置推定部69は、現在時刻が日の入時刻後であり、高精度地図データに含まれる街灯の設置位置のデータに該当する街灯のデータが存在する場合に、光源が街灯であると判定する。具体的には、現在時刻が日の入時刻後であり、死角領域から延びる影が延びる方向とは反対の方向に設置されている街灯のデータが存在する場合、光源位置推定部69は、光源が街灯であると判定する。
【0056】
なお、本実施形態では、移動不可能に設置された照明装置として街灯を例に採って説明するが、移動不可能に設置された照明装置は街灯に限られない。あらかじめ高精度地図データ記憶部55に記憶されるなど、処理部51により設置位置を特定可能な照明装置であればよい。移動不可能に設置された照明装置は、例えば商業施設やレジャー施設に設置された照明装置であってもよい。
【0057】
光源が街灯であると判定した場合(S47/Yes)、光源位置推定部69は、高精度地図データに含まれる当該街灯の設置位置及び高さのデータを参照し、死角領域から見た街灯の位置を推定する(ステップS49)。この場合、街灯の位置は、街灯の光源の高さ及び向きを意味する。光源位置推定部69は、推定した街灯の高さ及び向きの情報を記憶部53に記憶する。
【0058】
一方、光源が街灯であると判定されない場合(S47/No)、光源位置推定部69は、光源が車両等の移動体のライトであるか否かを判定する(ステップS51)。例えば光源位置推定部69は、現在時刻が日の入時刻後であり、車車間通信を介して取得される他車両の位置及び進行方向の情報に基づいて死角領域から延びる影が延びる方向とは反対の方向から死角領域の方向へと移動する他車両が存在する場合、光源が移動体のライトであると判定する。
【0059】
光源が移動体のライトと判定した場合(S51/Yes)、光源位置推定部69は、他車両の情報に基づき、死角領域から見た他車両のライトの位置を推定する(ステップS53)。車車間通信を介して取得される他車両の情報が、他車両の種類のデータを含む場合、光源位置推定部69は、GNSSシステム上での他車両の位置座標から他車両の前部までの距離と、他車両の車高とに応じて、死角領域から見た他車両のライトの高さ及び向きを推定する。他車両の情報が他車両の種類のデータを含まない場合、光源位置推定部69は、あらかじめ設定された距離や高さの情報を用いて、死角領域から見た他車両のライトの高さ及び向きを推定する。あらかじめ設定された距離や高さは、例えばGNSSシステム上での乗用車の位置座標から車体の前部までの平均的な距離及び乗用車の平均的な車高の値であってよいが、特に限定されるものではない。光源位置推定部69は、推定した移動体のライトの高さ及び向きの情報を記憶部53に記憶する。
【0060】
一方、光源が移動体のライトと判定されない場合(S51/No)、光源位置推定部69は、光源の位置を特定することができないと判定する(ステップS55)。
【0061】
図4に戻り、光源推定処理の終了後、衝突判定部71は、光源が特定されたか否かを判定する(ステップS25)。光源推定処理により光源が特定されなかった場合(S25/No)、影領域検出部67は、死角領域に存在する潜在物体の影が移動しているか否かを判定する(ステップS27)。例えば影領域検出部67は、光源の位置を推定可能な静止物の影の位置が変化している場合に、死角領域に存在する潜在物体の影が移動していると判定する。
【0062】
死角領域に存在する潜在物体の影が移動していない場合(S27/No)、ステップS39において車載システムが停止したと判定されない限り、ステップS13に戻ってここまで説明した処理を繰り返す。死角領域に存在する潜在物体の影が移動している場合(S27/Yes)、死角領域に存在する潜在物体が自車両1の前方に飛び出してくると判断することまではできないものの、死角領域に潜在物体が存在することをドライバに知らせるために、通知部75は、警告処理を行う(ステップS29)。例えば通知部75は、音声、警告音又は警告表示のうちの少なくとも一つの手段により、ドライバに対して死角領域に潜在物体が存在することを通知する。
【0063】
一方、光源推定処理により光源が特定された場合(S25/Yes)、衝突判定部71は、光源の位置及び死角領域に存在する潜在物体の影の時間変化に基づいて潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定する(ステップS31)。以下、光源が太陽である場合、街灯である場合、移動体のライトである場合のそれぞれについて、潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定する方法を説明する。
【0064】
(光源が太陽である場合)
図6~
図8は、光源が太陽Sである場合に、ステップS53で推定された太陽Sの位置及び潜在物体の影84の時間変化に基づいて潜在物体の位置及び移動速度を推定する方法を説明するために示す図である。ここでは、
図6に示すように、昼間の太陽Sが照っている時刻において、自車両1が走行する道路の前方の左側に存在する駐車車両80の先が死角になっている走行シーンを例に採って説明する。死角領域には潜在物体として歩行者が存在し、当該歩行者は自車両1が走行する経路上に向かって移動している。自車両1からは、駐車車両80の影81及び歩行者の影84が視認されている。
【0065】
図7及び
図8は、
図6の走行シーンを自車両1の進行方向から見た様子を示す図であり、
図7は時刻tでの状況、
図8は時刻t+Δtでの状況を示す。歩行者83の高さをh1、歩行者83から駐車車両80の外縁(図示の例ではタイヤ位置)までの距離をx1、駐車車両80から歩行者83の影84の先端までの距離をL1、太陽Sと影84の先端を結ぶ線と地面とのなす角度をθ1とする。歩行者83の高さh1は、子供又は大人の平均身長等の任意の値に設定されてよい。三角法から、時刻t及び時刻t+Δtにおいて、それぞれ下記式(1)及び(2)が成り立つ。
【0066】
【0067】
【0068】
光源が太陽Sである場合、光源の位置は短時間で変化しないとみなせることから、cotθ1(t)とcotθ1(t+Δt)とは近似的に等しいと言えるため、歩行者83の移動速度vは下記式(3)で表すことができる。
【0069】
【0070】
つまり、上記式(1)及び(2)により、各時刻t及び時刻t+Δtにおける歩行者83の位置が求められ、上記式(3)により時刻tから時刻t+Δtの間の歩行者83の移動速度v(t)が求められる。したがって、衝突判定部71は、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて駐車車両80から歩行者83の影84の先端までの距離L1、及び太陽Sと影84の先端を結ぶ線と地面とのなす角度θ1を求めることにより、歩行者83の位置及び移動速度を求めることができる。さらに、衝突判定部71は、歩行者83の影84の先端の位置の変化から、歩行者83の移動方向を求めることができる。歩行者83の移動方向を求めるための基準点は、影84の先端の位置に限定されるものではなく任意の位置であってよい。
【0071】
(光源が街灯である場合)
図9~
図11は、光源が街灯93である場合に、ステップS53で推定された街灯93の位置及び潜在物体の影91の時間変化に基づいての潜在物体の位置及び移動速度を推定する方法を説明するために示す図である。ここでは、
図9に示すように、夜間において、左右両側に側壁94,95が存在する路地を自車両1が走行しており、前方の右側に存在する曲がり角の先が死角になっている走行シーンを例に採って説明する。死角領域には潜在物体として歩行者90が存在し、当該歩行者90は自車両1が走行する経路上に向かって移動している。自車両1からは、歩行者90の影91が視認されている。
【0072】
図10及び
図11は、
図9の走行シーンを自車両1の進行方向から見た様子を示す図であり、
図10は時刻tでの状況、
図11は時刻t+Δtでの状況を示す。歩行者90の高さをh2、街灯93の光源の高さをH2、歩行者90から側壁94の端までの距離をx2、街灯93の設置位置から側壁94の端までの距離をX2、側壁94の端から歩行者90の影91の先端までの距離をL2、街灯93の光源と影91の先端を結ぶ線と地面とのなす角度をθ2とする。歩行者90の高さh2は、子供又は大人の平均身長等の任意の値に設定されてよい。三角法から、時刻t及び時刻t+Δtにおいて、それぞれ下記式(4)及び(5)が成り立つ。
【0073】
【0074】
【0075】
時刻tから時刻t+Δtまでの移動距離を時間Δtで割ることで歩行者90の移動速度vが求められることから、上記式(4)及び(5)より、歩行者90の移動速度vは下記式(6)で表すことができる。
【0076】
【0077】
つまり、上記式(4)及び(5)により、各時刻t及び時刻t+Δtにおける歩行者90の位置が求められ、上記式(6)により時刻tから時刻t+Δtの間の歩行者90の移動速度v(t)が求められる。したがって、衝突判定部71は、高精度地図データに基づいて街灯93の設置位置から側壁94の端までの水平距離X2を求め、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて側壁94の端から歩行者90の影91の先端までの距離L2、及び街灯93の光源と影91の先端を結ぶ線と地面とのなす角度θ2を求めることにより、歩行者90の位置及び移動速度を求めることができる。さらに、衝突判定部71は、歩行者90の影91の先端の位置の変化から、歩行者90の移動方向を求めることができる。歩行者90の移動方向を求めるための基準点は、影91の先端の位置に限定されるものではなく任意の位置であってよい。
【0078】
(光源が移動体のライトである場合)
図12~
図14は、光源が移動体のライトである場合に、ステップS53で推定されたライトの位置及び潜在物体の影97の時間変化に基づいての潜在物体の位置及び移動速度を推定する方法を説明するために示す図である。ここでは、
図12に示すように、夜間において、左右両側に側壁94,95が存在する路地を自車両1が走行しており、前方の右側に存在する曲がり角の先が死角になっている走行シーンを例に採って説明する。死角領域には潜在物体として歩行者96が存在し、当該歩行者96は自車両1が走行する経路上に向かって移動している。自車両1からは、歩行者96の影97が視認されている。
【0079】
図13及び
図14は、
図12の走行シーンを自車両1の進行方向から見た様子を示す図であり、
図13は時刻tでの状況、
図14は時刻t+Δtでの状況を示す。歩行者96の高さをh3、移動体である他車両98のライトの高さをH3、歩行者96から道路左側の側壁95の端までの距離をx3、他車両98のライトの位置から側壁95の端までの距離をX3、側壁95に投影される歩行者96の影97の高さをL3、他車両98のライトと側壁95に投影された影97の上端を結ぶ線と地面に平行な線とのなす角度をθ3とする。歩行者96の高さh3は、子供又は大人の平均身長等の任意の値に設定されてよい。三角法から、時刻t及び時刻t+Δtにおいて、それぞれ下記式(7)及び(8)が成り立つ。
【0080】
【0081】
【0082】
時刻tから時刻t+Δtまでの移動距離を時間Δtで割ることで歩行者96の移動速度vが求められることから、上記式(7)及び(8)より、歩行者96の移動速度vは下記式(9)で表すことができる。
【0083】
【0084】
つまり、上記式(7)及び(8)により、各時刻t及び時刻t+Δtにおける歩行者96の位置が求められ、上記式(9)により時刻tから時刻t+Δtの間の歩行者96の移動速度v(t)が求められる。したがって、衝突判定部71は、車車間通信により取得される他車両98のデータ及び高精度地図データに基づいて他車両98のライトから側壁95までの距離X3を求め、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて側壁95に投影される歩行者90の影91の高さL3、及び他車両98のライトと影97の上端を結ぶ線と地面に平行な線とのなす角度θ3を求めることにより、歩行者96の位置及び移動速度を求めることができる。さらに、衝突判定部71は、歩行者96の影97の先端の位置の変化から、歩行者96の移動方向を求めることができる。歩行者96の移動方向を求めるための基準点は、影97の先端の位置に限定されるものではなく任意の位置であってよい。
【0085】
なお、光源の位置及び影の時間変化に基づいて潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定する例として潜在物体が歩行者である例を説明したが、潜在物体として想定する物体は歩行者に限られない。衝突判定部71は、歩行者以外にも自転車や乗用車等の他の移動体を想定して潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定してもよい。この場合、想定する潜在物体に応じて、上記の各式で用いる高さhの値を変更することが好ましい。また、処理部51は、検出される影領域の輪郭を検出し、マッチング処理等により潜在物体の種類を想定してもよい。影領域の輪郭に基づいて潜在物体の種類を想定することにより、複数の種類の潜在物体を想定する場合に比べてプロセッサの演算処理の負荷を軽減することができる。
【0086】
図4に戻り、衝突判定部71は、潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定した後、潜在物体と自車両1との衝突可能性を判定する(ステップS33)。例えば衝突判定部71は、走行状態検出部61により検出される自車両1の走行状態の情報に基づいて自車両1の走行軌道を推定するとともに、自車両1のサイズに応じた走行範囲を仮定する。そして、衝突判定部71は、潜在物体の位置、移動方向及び移動速度に基づいて潜在物体の軌道を推定するとともに、潜在物体の軌道が自車両1の走行範囲に重複する場合に、潜在物体と自車両1とが衝突すると判定する。ただし、潜在物体と自車両1との衝突可能性の判定方法は、上記の例に限定されるものではなく、任意の判定方法であってよい。例えば自車両1及び潜在物体に対してリスク値を設定し衝突リスクを演算する公知のリスク演算処理により、潜在物体と自車両1との衝突可能性を判定してもよい。
【0087】
次いで、衝突判定部71は、衝突可能性の判定の結果、潜在物体と自車両1とが衝突する可能性があるか否かを判定する(ステップS35)。衝突の可能性がない場合(S35/No)、処理部51は、ステップS39において車載システムが停止したと判定されない限り、ステップS13に戻ってここまで説明した処理を繰り返す。一方、衝突の可能性がある場合(S35/Yes)、処理部51は、潜在車両と自車両1との衝突を回避するための運転支援処理を実行する(ステップS37)。
【0088】
例えば処理部51の運転条件設定部73は、自車両1を減速させる指令信号を車両制御装置41へ送信し、自車両1を減速させる。この場合、運転条件設定部73は、減速度の最大値を超えない範囲で、衝突を回避可能な最低限の目標加速度を設定してもよい。これにより、自車両1の過剰な急減速による危険を軽減することができる。また、運転条件設定部73は、自車両1の減速だけでは衝突を回避できない場合、あるいは、自車両1の減速動作と併せて、自車両1の走行軌道を修正するための目標操舵角を設定してもよい。この場合、自車両1のスピンや側壁等への衝突を生じないように目標操舵角を設定する。
【0089】
さらに、処理部51の通知部75は、通知装置43に対して指令信号を出力し、自車両1と潜在物体とが衝突する可能性があることを通知してもよい。この場合、通知部75は、潜在物体が死角領域から飛び出すおそれがあることや、潜在物体の飛び出し位置及び飛び出し速度等の潜在物体の情報を併せて通知してもよい。さらに、通知部75は、潜在物体と自車両1との衝突を回避するために運転操作に介入したことを通知してもよい。
【0090】
次いで、処理部51は、車載システムが停止したか否かを判定する(ステップS39)。車載システムが停止していない場合(S39/No)、処理部51は、ステップS13に戻って、これまでに説明した各ステップの処理を繰り返す。一方、車載システムが停止した場合(S39/Yes)、処理部51は、本ルーチンの処理を終了する。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援装置50は、前方撮影カメラ31LF,31RFにより生成された画像データに基づいて自車両1から見た死角領域に存在する潜在物体の影を検出し、当該影を形成する光源の位置を推定する。また、運転支援装置50は、推定した光源の位置及び潜在物体の影の時間変化に基づいて潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算し、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定する。これにより、死角領域が検出された場合に、実際に物体が飛び出してくるか分からない場合においても自車両1を減速させる等の運転支援が実行されるのではなく、死角領域に潜在物体が存在することを認識し、当該潜在物体の飛び出しによって自車両1に衝突するおそれがある場合に運転支援が実行されるようになる。したがって、自車両1と潜在物体との衝突の可能性を低減することができるとともに、運転支援装置に対する信頼や受容性の低下を防ぐことができる。
【0092】
また、本実施形態に係る運転支援装置50は、太陽の位置を推定して、潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算し、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。これにより、昼間に潜在物体に日光が照射されて影が作り出される条件が成立していれば、自車両1から見た死角領域に存在する潜在物体の位置等に基づいて自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る運転支援装置50は、移動不可能に設置された照明装置の位置を推定して、潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算し、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。これにより、日の入時刻後の時間帯であっても、潜在物体を照らす照明装置が存在している場合に、自車両1から見た死角領域に存在する潜在物体の位置等に基づいて自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る運転支援装置50は、移動体に設けられた光源の位置を推定して、潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算し、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。これにより、日の入時刻後の時間帯に、潜在物体を照らす照明装置が存在していない場合であっても、潜在物体を照らす他車両等が存在している場合に、自車両1から見た死角領域に存在する潜在物体の位置等に基づいて自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。
【0095】
なお、上記実施の形態では、光源が太陽である場合、移動不可能な照明装置である場合及び移動体の光源である場合を判別可能に構成されていたが、いずれか一つのみ又は任意の二つの組み合わせを判別可能に構成されていてもよい。この場合、運転支援装置50
は、判別する光源の種類に応じて、判別に不要なデータを取得しないように構成されていてもよい。
【0096】
<<2.第2の実施の形態>>
続いて、本開示の第2の実施の形態に係る運転支援装置を説明する。
第1の実施の形態では、運転支援装置50が、光源の存在位置あるいは設置位置に関する情報を取得できる場合の実施形態を説明したが、第2の実施の形態では、運転支援装置が、光源の存在位置に関する情報を取得できない場合の実施形態を説明する。
【0097】
なお、本実施形態に係る運転支援装置の機能は、第1の実施の形態に係る運転支援装置の機能と併用されてもよい。
【0098】
<2-1.車両及び運転支援装置の全体構成>
本実施形態に係る運転支援装置及び運転支援装置を搭載した車両の全体構成は、第1の実施の形態に係る運転支援装置50及び車両1と同一であってよい。ただし、運転支援装置が、第2の実施の形態に係る運転支援装置の機能のみを備える場合、運転支援装置は、太陽位置データ記憶部57、第1の通信部58及び第2の通信部59を備えていなくてもよい。
【0099】
以下、
図2に示す運転支援装置50の構成例を参照しながら、同一の符号を用いて、第2の実施の形態に係る運転支援装置を説明する。
【0100】
<2-2.運転支援装置の機能構成>
運転支援装置50の処理部51の機能構成のうち、走行状態検出部61、周囲環境検出部63、死角領域検出部65、影領域検出部67、衝突判定部71、運転条件設定部73及び通知部75は、第1の実施の形態に係る運転支援装置50の処理部51の各部と同様の機能を有している。
【0101】
本実施形態において、光源位置推定部69は、死角領域内から死角領域の外へ移動して顕在化した移動体の影をトレースし、当該移動体の影の時間変化に基づいて光源の位置を推定する。顕在化した移動体の影の時間変化に基づいて光源の位置が推定されれば、同じ光源により作り出される他の潜在物体の影の時間変化と光源の位置とに基づいて潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定することができる。したがって、影を作り出している光源の位置に関する情報を取得することができない走行シーンにおいても、死角領域に存在する潜在物体と自車両1との衝突可能性を判定することができる。
【0102】
<2-3.運転支援装置の動作>
続いて、本実施形態に係る運転支援装置50の動作例をフローチャートに沿って具体的に説明する。
【0103】
図15~
図16は、本実施形態の運転支援装置50の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図15~
図16に示すフローチャートのうち、ステップS11~ステップS21及びステップS27~ステップS39の処理は、
図3~
図4に示した第1の実施の形態の運転支援装置50の処理動作におけるステップS11~ステップS21及びステップS27~ステップS39の処理と同様に実行される。一方、本実施形態の運転支援装置50は、第1の実施の形態の運転支援装置50の処理動作におけるステップS23~ステップS25の代わりに、ステップS61~ステップS65の処理が実行される。
【0104】
運転支援装置50を含む車載システムが起動されると(ステップS11)、処理部51は、第1の実施の形態で説明した手順に沿ってステップS11~ステップS21の処理を実行する。
【0105】
ステップS19において死角領域に存在する物体の影があると判定された場合(S19/Yes)、影領域検出部67は、死角領域から死角領域の外へ移動した物体を検出したか否かを判定する(ステップS61)。具体的に、影領域検出部67は、死角領域に存在する潜在物体の影として検出していた影が、周囲環境検出部63により検出された物体の影に変更された場合に、死角領域から死角領域の外へ移動した物体を検出したと判定する。
【0106】
死角領域から死角領域の外へ移動した物体が検出されない場合(S61/No)、影領域検出部67は、死角領域に存在する潜在物体の影が移動しているか否かを判定するステップS27へ進む。一方、死角領域から死角領域の外へ移動した物体が検出された場合(S61/Yes)、光源位置推定部69は、影を作り出している光源の位置を推定する処理を実行する(ステップS63)。以下、光源が街灯である場合を例に採って、光源の位置を推定する方法を説明する。
【0107】
図17~
図19は、光源が街灯109である場合に、死角領域から死角領域の外へ移動した他車両103の影105の時間変化に基づいて光源(街灯)109の位置を推定する方法を説明するために示す図である。ここでは、
図17に示すように、夜間において、自車両1が走行する道路の右側に建造物107が存在し、当該建造物107の奥の曲がり角の先が死角になっている走行シーンを例に採って説明する。死角領域には潜在物体として歩行者100が存在し、当該歩行者100は自車両1が走行する経路上に向かって移動している。また、死角領域に潜在物体として存在していた他車両103が死角領域の外へ移動して顕在化した物体となっている。自車両1からは、歩行者100の影101、他車両103及び他車両103の影105が視認されている。
【0108】
図18~
図19は、
図17の走行シーンを自車両1の進行方向から見た様子を示す図であり、
図18は時刻tでの状況、
図19は時刻t+Δtでの状況を示す。街灯109の光源の高さをH4、地面から街灯109の光源と他車両103の影105の先端を結ぶ線が接する他車両103の部分104までの高さをh4、当該部分104から影105の先端までの水平距離をx4、街灯109の光源から建造物107の端までの水平距離をX4、建造物107の端から他車両103の影105の先端までの水平距離をL4、街灯109の光源と他車両103の影105の先端を結ぶ線と地面とのなす角度をθ4とする。影105の先端部分は、他車両103の部分104の影である。本実施形態では、街灯109の光源の高さH4、及び街灯109の光源から建造物107の端までの水平距離X4は、未知の値である。三角法から、時刻t及び時刻t+Δtにおいて、それぞれ下記式(10)及び(11)が成り立つ。
【0109】
【0110】
【0111】
街灯109の光源の高さH4、及び街灯109の光源から建造物107の端までの水平距離X4以外の高さh4及び距離x4, L4は、周囲環境センサ31から送信される画像データに基づいて算出することができる。したがって、光源位置推定部69は、画像データに基づいてそれぞれの高さh4及び距離x4, L4を求めることにより、上記式(10)及び(11)を用いて街灯109の光源の高さH4、及び街灯109の光源から建造物107の端までの水平距離X4を算出することができる。
【0112】
図16に戻り、光源位置推定部69により光源の位置が推定された後、影領域検出部67は、ステップS19の処理と同様の手順で死角領域に存在する潜在物体の影が存在するか否かを判定する(ステップS65)。死角領域に存在する潜在物体の影が存在しない場合(S65/No)、処理部51は、ステップS39において車載システムが停止したと判定されない限り、ステップS13に戻ってここまで説明した処理を繰り返す。一方、死角領域に存在する潜在物体の影が存在する場合(S65/Yes)、ステップS31に進み、処理部51は、第1の実施の形態で説明した手順に沿ってステップS31~ステップS39の処理を実行する。これにより、運転支援装置50は、光源の位置に関する情報を取得できない場合であっても、死角領域から死角領域の外へ移動した移動体の影をトレースすることにより光源の位置を推定して、死角領域に存在する潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を推定することができる。
【0113】
以上説明したように、本実施形態に係る運転支援装置50は、光源の位置に関する情報を取得できない場合であっても、死角領域から死角領域の外へ移動した移動体の影をトレースすることにより光源の位置を推定することができる。このため、光源の位置に関する情報を取得できない場合であっても、第1の実施の形態に係る運転支援装置50と同様に、推定した光源の位置及び潜在物体の影の時間変化に基づいて潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算し、自車両1と潜在物体との衝突可能性を判定することができる。これにより、死角領域が検出された場合に、実際に物体が飛び出してくるか分からない場合においても自車両1を減速させる等の運転支援が実行されるのではなく、死角領域に潜在物体が存在することを認識し、当該潜在物体の飛び出しによって自車両1に衝突するおそれがある場合に運転支援が実行されるようになる。したがって、自車両1と潜在物体との衝突の可能性を低減することができるとともに、運転支援装置に対する信頼や受容性の低下を防ぐことができる。
【0114】
なお、本実施形態において、光源位置推定部69は、推定された光源の位置のデータを高精度地図データ上に記録してもよい。これにより、光源の位置データが蓄積され、第1の実施の形態における光源が街灯である場合と同様に、潜在物体の影を作り出している光源の特定が容易になって、光源の位置を推定する処理の負荷を軽減することができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0116】
例えば、上記実施形態では、影を作り出す光源が一つである例を説明したが、影を作り出す光源が複数ある場合、つまり、一つの潜在物体に対して複数の影が形成されている場合であっても本開示の技術を適用することができる。この場合、運転支援装置は、それぞれの影を形成する光源の位置と影の時間変化に基づいて潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算したうえで、それぞれの平均値を用いて自車両と潜在物体との衝突可能性を判定してもよい。あるいは、運転支援装置は、影の濃さや影の輪郭の鮮明さ等に基づいて重み付けをして潜在物体の位置、移動方向及び移動速度を計算したうえで、自車両と潜在物体との衝突可能性を判定してもよい。複数の光源によって形成された影の時間変化に基づいて潜在物体の位置等を推定することにより、自車両と潜在物体との衝突可能性の判定精度を高めることができる。
【0117】
また、上記処理部51を構成するプロセッサに、車両の周囲を撮影した画像データに基づいて車両から見た死角領域に存在する物体の影を検出することと、影を形成する光源の位置を推定することと、光源の位置及び影の時間変化に基づいて物体の位置、移動方向及び移動速度を計算するとともに自車両と物体との衝突可能性を判定することと、を含む処理を実行させるコンピュータプログラムも本開示の技術の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0118】
1:車両(自車両)、31:周囲環境センサ、31LF・31RF:前方撮影カメラ、35:車両状態センサ、37:GNSSセンサ、41:車両制御装置、43:通知装置、50:運転支援装置、51:処理部、53:記憶部、55:高精度地図データ記憶部、57:太陽位置データ記憶部、61:走行状態検出部、63:周囲環境検出部、65:死角領域検出部、67:影領域検出部、69:光源位置推定部、71:衝突判定部、73:運転条件設定部、75:通知部、80:駐車車両、81:影、83:歩行者、84:影、90:歩行者、91:影、93:街灯、94:側壁、95:側壁、96:歩行者、97:影、98:他車両