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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/04 20060101AFI20241218BHJP
   F02B 31/06 20060101ALI20241218BHJP
   F02M 35/108 20060101ALI20241218BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20241218BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
F02B31/06 500B
F02M35/10 301B
F02F1/42 F
F02M35/10 101E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023550938
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036224
(87)【国際公開番号】W WO2023053377
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-77760(JP,A)
【文献】特開2019-23459(JP,A)
【文献】特開2007-239703(JP,A)
【文献】特開2019-143612(JP,A)
【文献】特開2015-155684(JP,A)
【文献】特開2011-179427(JP,A)
【文献】特開平9-119317(JP,A)
【文献】特公昭61-18011(JP,B2)
【文献】特開平7-174028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/04
F02B 31/06
F02M 35/108
F02F 1/42
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(10)の燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)を、前記燃焼室(20)でのタンブル流を発生させるためのタンブル流路となる第1吸気通路(64)と、第2吸気通路(66)とに仕切る主仕切部(62)と、
前記第1吸気通路(64)に、第3吸気通路(68)と第4吸気通路(70)とを形成するように設けられる副仕切部(72)であって、前記第4吸気通路(70)は、前記第3吸気通路(68)と前記第2吸気通路(66)との間に位置して該第2吸気通路よりも小さな断面積を有するように形成されている、副仕切部(72)と、
前記主仕切部(62)の上流に設けられた吸気制御弁(76c)と、
前記第3吸気通路(68)と前記第4吸気通路(70)とが合流する合流部(86)であって、該合流部(86)を介して前記第1吸気通路(64)は前記第2吸気通路(66)に合流する、合流部(86)と
を備え、
前記吸気制御弁(76c)は、前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を開閉可能であるように構成されていて、前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を閉じる第1位置(P1)、前記第2吸気通路(66)を閉じて前記第4吸気通路(70)を開く第2位置(P2)、及び、全開位置(PA)を有し、
前記吸気制御弁(76c)が前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を閉じる状態にあるとき、前記副仕切部(72)と前記吸気制御弁(76c)の弁体(76d)との間に第1の隙間部(G1)が形成され、かつ、前記吸気制御弁(76c)の前記副仕切部(72)とは反対側の吸気通路壁面(77a)と前記弁体(76d)との間に第2の隙間部(G2)が形成されていて、
吸気流れ方向(F)において、前記第1の隙間部(G1)は、前記第2の隙間部(G2)よりも下流側に位置し、
前記吸気制御弁(76c)は、バタフライ式であり、弁軸(76b)と一体的に回転する単一の弁部材(76d)を備えて構成され、
前記弁部材(76d)の動きを許容する凹部(77)は、前記吸気通路(38)を区画形成する壁部に設けられていて、
前記凹部(77)の前記吸気通路壁面(77a)は凹湾曲し、
前記第3吸気通路(68)及び前記第4吸気通路(70)の断面積(S1、S2)の和よりも、前記合流部(86)の上流側端部(86u)よりも下流側の流れ方向に直交する断面での面積が小さくなるように、前記合流部(86)は区画形成されている
ことを特徴とする内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項2】
内燃機関(10)の燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)を、前記燃焼室(20)でのタンブル流を発生させるためのタンブル流路となる第1吸気通路(64)と、第2吸気通路(66)とに仕切る主仕切部(62)と、
前記第1吸気通路(64)に、第3吸気通路(68)と第4吸気通路(70)とを形成するように設けられる副仕切部(72)であって、前記第4吸気通路(70)は、前記第3吸気通路(68)と前記第2吸気通路(66)との間に位置して該第2吸気通路よりも小さな断面積を有するように形成されている、副仕切部(72)と、
前記主仕切部(62)の上流に設けられた吸気制御弁(76c)と
を備え、
前記吸気制御弁(76c)は、前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を開閉可能であるように構成されていて、前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を閉じる第1位置(P1)、前記第2吸気通路(66)を閉じて前記第4吸気通路(70)を開く第2位置(P2)、及び、全開位置(PA)を有し、
前記吸気制御弁(76c)が前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を閉じる状態にあるとき、前記副仕切部(72)と前記吸気制御弁(76c)の弁体(76d)との間に第1の隙間部(G1)が形成され、かつ、前記吸気制御弁(76c)の前記副仕切部(72)とは反対側の吸気通路壁面(77a)と前記弁体(76d)との間に第2の隙間部(G2)が形成されていて、
吸気流れ方向(F)において、前記第1の隙間部(G1)は、前記第2の隙間部(G2)よりも下流側に位置し、
前記吸気制御弁(76c)は、バタフライ式であり、弁軸(76b)と一体的に回転する単一の弁部材(76d)を備えて構成され、
前記弁部材(76d)の動きを許容する凹部(77)は、前記吸気通路(38)を区画形成する壁部に設けられていて、
前記凹部(77)の前記吸気通路壁面(77a)は凹湾曲し、
前記吸気制御弁(76c)が前記第2吸気通路(66)及び前記第4吸気通路(70)を閉じる状態にあるとき、前記弁軸(76b)を中心として、吸気流れ方向(F)において、前記吸気制御弁(76c)の前記弁部材(76d)の一端側半体(76f)は、下流側に位置し、前記一端側半体(76f)の下流側において前記副仕切部(72)と鈍角(α)をなし、前記弁部材(76d)の他端側半体(76g)は、上流側に位置し、前記他端側半体(76g)の下流側において前記凹部(77)の壁部(76e)と鋭角(β)をなす
ことを特徴とする内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項3】
前記主仕切部(62)は、シリンダ軸線(C)の方向においてクランク軸(17)側からシリンダヘッド(14)側を第1方向と定義するとき、前記吸気通路(38)を前記第1吸気通路(64)と、該第1吸気通路(64)の前記第1方向側の第2吸気通路(66)とに仕切り、
前記副仕切部(72)は、前記第1吸気通路(64)に、前記第3吸気通路(68)と、該第3吸気通路(68)の前記第1方向側の前記第4吸気通路(70)とを形成するように設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項4】
前記第1の隙間部(G1)及び前記第2の隙間部(G2)のそれぞれは前記主仕切部(62)の厚さ以下の隙間幅を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項5】
前記第3吸気通路(68)と前記第4吸気通路(70)とが合流する合流部(86)であって、該合流部(86)を介して前記第1吸気通路(64)は前記第2吸気通路(66)に合流する、合流部(86)
を更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項6】
前記第3吸気通路(68)及び前記第4吸気通路(70)の断面積(S1、S2)の和よりも、前記合流部(86)の上流側端部(86u)よりも下流側の流れ方向に直交する断面での面積が小さくなるように、前記合流部(86)は区画形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【請求項7】
前記第2吸気通路(66)からの吸気よりも、前記合流部(86)を介しての前記第1吸気通路(64)からの吸気が小さい進入角で燃焼室(20)に流入するように、前記合流部(86)は区画形成されている
ことを特徴とする請求項1、請求項5および請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関(10)の吸気構造(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路を複数に分ける仕切部が設けられる内燃機関の吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットル弁の下流側の吸気通路が、仕切部により複数の通路に分けられる内燃機関の吸気構造が種々提案されている。例えば、特許文献1の内燃機関の吸気構造では、スロットル弁の下流側にタンブル弁を設け、そのタンブル弁の下流側にインレットパイプから吸気ポートへと続けて仕切部である仕切板部を設け、この仕切板部により吸気通路を上下の下側副通路と上側主流路とに仕切ることが行われる。下側副通路がタンブル流路となり、タンブル弁は上側主流路を実質的に開閉するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第6714764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、例えば内燃機関の運転状態が低負荷領域にあるとき、タンブル弁を閉じて、タンブル流路からの吸気で燃焼室においてタンブル流を生じさせることが行われる。しかし、タンブル弁でのタンブル流路以外の通路、例えば上記上側主流路の閉塞の度合いが低いと、その主流路に吸気流れがリークしてしまい、タンブル流路からの吸気によるタンブル流の発生を弱めてしまう虞がある。
【0005】
一方で、閉弁時のタンブル弁の閉塞の度合いを高めるためには、タンブル弁と吸気通路壁面とのクリアランス管理が必要となる。このクリアランス管理は、コスト増大をもたらし得る。
【0006】
本発明の目的は、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、タンブル弁とも称され得る吸気制御弁のクリアランス管理を緩和することを可能にするとともに、タンブル性能を確保することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
内燃機関の燃焼室に連なる吸気通路を、前記燃焼室でのタンブル流を発生させるためのタンブル流路となる第1吸気通路と、第2吸気通路とに仕切る主仕切部と、
前記第1吸気通路に、第3吸気通路と第4吸気通路とを形成するように設けられる副仕切部であって、前記第4吸気通路は、前記第3吸気通路と前記第2吸気通路との間に位置して該第2吸気通路よりも小さな断面積を有するように形成されている、副仕切部と、
前記主仕切部の上流に設けられた吸気制御弁と
を備え、
前記吸気制御弁が前記第2吸気通路及び前記第4吸気通路を閉じる状態にあるとき、前記副仕切部と前記吸気制御弁の弁体との間に第1の隙間部が形成され、かつ、前記吸気制御弁の前記副仕切部とは反対側の吸気通路壁面と前記弁体との間に第2の隙間部が形成されている
ことを特徴とする内燃機関の吸気構造
を提供する。
【0008】
上記構成によれば、第1吸気通路に、第3吸気通路と第4吸気通路とを形成するように副仕切部が設けられ、第4吸気通路は第3吸気通路と第2吸気通路との間に位置して該第2吸気通路よりも小さな断面積を有するように形成されていて、吸気制御弁が第2吸気通路及び第4吸気通路を閉じる状態にあるとき、副仕切部と吸気制御弁の弁体との間に第1の隙間部が形成され、かつ、吸気制御弁の副仕切部とは反対側の吸気通路壁面と前記弁体との間に第2の隙間部が形成される。したがって、第1及び第2隙間部を通過した吸気の流れをタンブル流路となり得る第4吸気通路へ促すことができる。よって、タンブル性能を確保することができる。また、第1及び第2隙間部を形成するように吸気制御弁は設計されるので、閉弁時の吸気制御弁の閉塞の度合いを高めることに比べて、吸気制御弁のクリアランス管理を緩和することができる。よって、上記内燃機関の吸気構造によれば、吸気制御弁のクリアランス管理を緩和することを可能にしつつ、タンブル性能を確保することが可能になる。
【0009】
好ましくは、前記主仕切部は、シリンダ軸線の方向においてクランク軸側からシリンダヘッド側を第1方向と定義するとき、前記吸気通路を前記第1吸気通路と、該第1吸気通路の前記第1方向側の第2吸気通路とに仕切り、前記副仕切部は、前記第1吸気通路に、前記第3吸気通路と、該第3吸気通路の前記第1方向側の前記第4吸気通路とを形成するように設けられている。この構成により、タンブル流をより好適に生じさせることが可能になる。
【0010】
好ましくは、吸気流れ方向において、前記第1の隙間部は、前記第2の隙間部よりも下流側に位置する。この構成により、吸気制御弁が第2吸気通路及び第4吸気通路を閉じる状態にあるとき、タンブル流路となり得る第4吸気通路への吸気の流入をより好適に生じさせることができる。
【0011】
好ましくは、前記第1の隙間部及び前記第2の隙間部のそれぞれは前記主仕切部の厚さ以下の隙間幅を有する。この構成により、吸気制御弁が第2吸気通路及び第4吸気通路を閉じる状態にあるとき、タンブル流路となり得る第3吸気通路と第4吸気通路とを含む第1吸気通路への吸気の流れをより一層促すことができる。
【0012】
好ましくは、前述の内燃機関の吸気構造は、前記第3吸気通路と前記第4吸気通路とが合流する合流部であって、該合流部を介して前記第1吸気通路は前記第2吸気通路に合流する、合流部を更に備える。この構成により、第3吸気通路と第4吸気通路とを備える第1吸気通路からの吸気に強い指向性を持たせることができ、タンブル性能を更に確保することができる。
【0013】
好ましくは、前記第3吸気通路及び前記第4吸気通路の断面積の和よりも、前記合流部の上流側端部よりも下流側の流れ方向に直交する断面での面積が小さくなるように、前記合流部は区画形成されている。この構成により、第3吸気通路からの吸気と第4吸気通路からの吸気とが合流部で合流して第2吸気通路に流れるとき、吸気の流速を速い状態に保つことが可能になる。
【0014】
好ましくは、前記第2吸気通路からの吸気よりも、前記合流部を介しての前記第1吸気通路からの吸気が小さい進入角で燃焼室に流入するように、前記合流部は区画形成されている。この構成により、第1吸気通路を通った吸気が強い指向性を持ったまま燃焼室に導入可能になるため、燃焼室で強いタンブル流を発生させることができる。
【0015】
好ましくは、前記吸気制御弁は、前記第2吸気通路及び前記第4吸気通路を開閉可能であるように構成されていて、前記第2吸気通路及び前記第4吸気通路を閉じる第1位置、前記第2吸気通路を閉じて前記第4吸気通路を開く第2位置、及び、全開位置を有する。この構成により、タンブル流を好適に生じさせつつ、運転状態に応じた吸入空気量をより好適に確保することが可能になる。
【0016】
好ましくは、前記吸気制御弁は弁軸と一体的に回転する単一の弁部材を備えて構成され、前記弁部材の動きを許容する凹部が、前記吸気通路を区画形成する壁部に設けられている。この構成により、単一の弁部材の動きを制御することで吸入空気量をより容易に調整することができ、また、その凹部によって上記弁部材の開閉機能をより良好なものにすることができる。
【0017】
好ましくは、前記吸気制御弁が前記第2吸気通路及び前記第4吸気通路を閉じる状態にあるとき、前記弁軸を中心として、吸気流れ方向において、前記吸気制御弁の前記弁部材の一端側半体は、下流側に位置し、前記一端側半体の下流側において前記副仕切部と鈍角をなし、前記弁部材の他端側半体は、上流側に位置し、前記他端側半体の下流側において前記凹部の壁部と鋭角をなす。この構成により、吸気制御弁が第2吸気通路及び第4吸気通路を閉じる状態にあるとき、吸気制御弁を通過した吸気の第4吸気通路側への流れをより一層促すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、吸気通路が仕切部により分けられるように構成された内燃機関において、吸気制御弁のクリアランス管理を緩和することを可能にするとともに、タンブル性能を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の概略構成を示す断面図である。
図2図1の内燃機関におけるスロットル弁よりも下流側の吸気通路の部分の立体モデルを示す図である。
図3図2と異なる角度からみた、図2の立体モデルの図である。
図4図1の内燃機関におけるタンブル弁の弁体を示す図である。
図5図1の内燃機関における、スロットル弁下流側かつタンブル弁下流側の吸気通路の部分及び排気ポートを含む立体モデルを上側からみた図である。
図6図5の立体モデルをシリンダ軸線に直交するとともに吸気流れ方向に直交する方向からみた図である。
図7A図6の立体モデルのVIIA-VIIA線に沿った位置での断面図である。
図7B図6の立体モデルのVIIB-VIIB線に沿った位置での断面図である。
図7C図6の立体モデルのVIIC-VIIC線に沿った位置での断面図である。
図7D図6の立体モデルのVIID-VIID線に沿った位置での断面図である。
図8】バタフライ弁による吸気の流れを説明するための図である。
図9】バタフライ弁による吸気の流れを説明するための更なる図である。
図10図1の内燃機関における、吸気制御弁であるタンブル弁周囲での吸気の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
本発明の一実施形態に係る内燃機関10の概略構成を図1に示す。図1は、内燃機関10のシリンダブロック12のシリンダボア12bの軸線(シリンダ軸線)Cに沿った、内燃機関10の断面図である。
【0022】
シリンダブロック12のシリンダボア12b内を往復動するピストン15は、クランクケース部16のクランク軸17のクランクピンと、コネクティングロッド18により連結されている。シリンダブロック12のシリンダボア12b内に摺動自在に嵌合されるピストン15の頂面15aと、頂面15aが対向するシリンダヘッド14の燃焼室天井面14aとの間には燃焼室20が構成される。
【0023】
内燃機関10は、SOHC型式の2バルブシステムを採用しており、シリンダヘッド14に動弁機構22が設けられている。動弁機構22を覆うように、シリンダヘッド14にはシリンダヘッドカバー24が重ねられて被せられる。シリンダヘッドカバー24内の動弁機構22に動力伝達を行うため、図示しない無端状のカムチェーンが、クランクケース部16、シリンダブロック12、シリンダヘッド14のクランク軸方向の一方側に設けられた図示しないカムチェーン室を通って、カム軸26とクランク軸17との間に架設され、カム軸26はクランク軸17に同期して1/2の回転速度で回転する。なお、シリンダヘッド14においてカムチェーン室と反対側(クランク軸方向の他方側)から燃焼室20内に向かって点火プラグが嵌挿されている。
【0024】
シリンダヘッド14において、燃焼室天井面14aに開口した吸気弁口28と排気弁口30からは、各々吸気ポート32と排気ポート34が互いに上下に離れる方向に湾曲しながら延出して形成される。吸気ポート32の上流端は、シリンダヘッド14の上方に向けて開口し、インレットパイプ36と接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。
【0025】
排気ポート34の下流端は、シリンダヘッド14の下方に向けて開口し、排気管42に連結される。排気管42の下流側には、排気浄化装置及び消音装置が設けられ得る。
【0026】
シリンダヘッド14における吸気ポート32の湾曲外壁部32aに一体に円筒状の吸気弁ガイド44が嵌着されている。吸気弁ガイド44に摺動可能に支持された吸気弁46が、吸気ポート32の燃焼室20に臨む吸気弁口28を開閉する。
【0027】
また、シリンダヘッド14における排気ポート34の湾曲外壁部34aに一体に嵌着された排気弁ガイド48に摺動可能に支持された排気弁50が、排気ポート34の燃焼室20に臨む排気弁口30を開閉する。
【0028】
吸気弁46及び排気弁50はその傘部46a、50aが、いずれも燃焼室20に臨む吸気弁口28、排気弁口30を閉じるように、弁ばねにより上方に付勢されている。カム軸26の吸気カム、排気カムに当接揺動する吸気ロッカアーム56、排気ロッカアーム58によって、吸気弁46、排気弁50のステムエンド46b、50bが押し下げられて、所定のタイミングで吸気弁46、排気弁50が開弁し、吸気ポート32と燃焼室20、また、排気ポート34と燃焼室20が連通し、所定のタイミングの吸気、排気がなされる。
【0029】
内燃機関10の吸気ポート32の上流端には、インシュレ-タ60を介してインレットパイプ36が接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。スロットルボディ40は、内燃機関10の燃焼室20に連なる吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路40aを有し、その上流側は、図示しないエアクリーナ装置に接続している。
【0030】
スロットルボディ40は、その吸気路40aの吸気の流れ方向と垂直、すなわち吸気路40aの中心軸線と直角に交差する弁軸つまりスロットル弁軸40bによってスロットルボディ40内に回転自在に軸支されて、吸気路40aの流路面積を可変制御し、吸気路40aを開閉し得るスロットル弁40cを備えている。スロットル弁40cはバタフライ式のもので、スロットル弁軸40bと、スロットル弁軸40bに固定される共に一体的に回転する円盤状の弁体40dとを有している。
【0031】
スロットル弁40cは運転者の操作等により、図1において反時計回りに開弁方向に回動可能となっているとともに、図示しない復帰ばねにより、弁体40dはそれの縁部が吸気路40aの内壁面に当接する全閉位置に位置するように、閉弁方向に時計回りに付勢されている。なお、スロットル弁40cのこの開弁方向と閉弁方向とはそれぞれ逆向きであってもよい。
【0032】
以上のような内燃機関10において、燃焼室20でのより好ましい燃焼を得るために燃焼室20において燃料・空気混合気のタンブル渦流つまりタンブル流、すなわち縦回転を与えるための吸気構造Sが構成されている。すなわち、吸気通路38は、インレットパイプ36から吸気ポート32へと続く仕切部62によって、吸気流れ方向に沿って分割され、通った吸気が燃焼室20内でタンブル流を発生するように構成されたタンブル流路64と、タンブル流路64を除く主流路66とに仕切られている。タンブル流路64が第1吸気通路に相当し、主流路66が第2吸気通路に相当する。なお、タンブル流路64は副通路と称されてもよい。
【0033】
更に、タンブル流路64に、仕切部72が主にインレットパイプ36から吸気ポート32へと続くように設けられている。仕切部72を設けることで、タンブル流路64に、2つの吸気通路68、70が区画形成される。2つの吸気通路68、70の一方は第1タンブル流路68であり、それらの他方は第2タンブル流路70である。第1タンブル流路68は第3吸気通路に相当し、第2タンブル流路70は第4吸気通路に相当する。
【0034】
ここでは、タンブル流路64と主流路66とを仕切る仕切部62を主仕切部と称し、タンブル流路64の第1タンブル流路68と第2タンブル流路70とを仕切る仕切部72を副仕切部と称する。主仕切部62は吸気の流れ方向に板状に延在し、副仕切部72も主仕切部62に沿って、例えば略平行に、吸気の流れ方向に板状に延在する。主仕切部62は吸気通路38を実質的に上下方向において二分するように、ここでは流れ方向に延びる中心軸線上に実質的に延びるように設けられている。また、副仕切部72はタンブル流路64を実質的に上下方向において二分するように、ここでは流れ方向に延びるタンブル流路64の中心軸線上に実質的に延びるように設けられている。これにより、吸気通路38に、主仕切部62によって仕切られたタンブル流路64と主流路66が形成され、そのタンブル流路64に、副仕切部72によって第1タンブル流路68と、第1タンブル流路68よりも主流路66よりのつまり第1タンブル流路68と主流路66との間に位置する第2タンブル流路70とが形成される。ここでは、前述のように、主仕切部62は吸気通路38を実質的に上下方向において二分するように延び、かつ、副仕切部72はタンブル流路64を実質的に上下方向において二分するように延びるので、主流路66の断面積は、第2タンブル流路70の断面積よりも明らかに大きい。なお、副仕切部72は、例えば上下方向のいずれかに偏るように設けられてもよい。
【0035】
なお、主流路66とタンブル流路64との断面積の比率(主流路66の断面積:タンブル流路64の断面積)は、1:1~3:1の範囲にあるとよく、本実施形態の内燃機関10の吸気構造Sもこの範囲に設計されている。また、主流路66と、第2タンブル流路70と、第1タンブル流路68との断面積の比率(主流路66の断面積:第2タンブル流路70の断面積:第1タンブル流路68の断面積)は、6:4:2~9:1:2の範囲にあるとよい。
【0036】
吸気通路38の主仕切部62によって仕切られた下側部分がタンブル流路64、上側部分が主流路66となり、タンブル流路64の副仕切部72によって仕切られた下側部分が第1タンブル流路68、上側部分が第2タンブル流路70となるが、本明細書においてはそれらはその上下配置に限定されない。なお、本明細書において、吸気通路38などについての「上」、「下」とは、シリンダ軸線C方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14ないしシリンダヘッドカバー24側の方向を「上」又は「上」方向、この「上」方向とは逆向きの方向つまりシリンダヘッド14側からクランク軸17側の方向を「下」又は「下」方向といい、空間上の絶対的な「上」、「下」の意味ではない。本明細書では、この「上」又は「上」方向は第1方向に相当し、「下」又は「下」方向は第2方向に相当する。
【0037】
インレットパイプ36の上流端には、インシュレ-タ74を介してタンブル弁ボディ76が接続されている。このタンブル弁ボディ76は、吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路76aを有し、その上流端に前述のスロットルボディ40が接続されている。
【0038】
タンブル弁ボディ76は、その吸気路76aの吸気流れ方向と垂直、すなわち吸気路76aの中心軸線と直角に交差する弁軸76bによってタンブル弁ボディ76内に回転自在に軸支されて、吸気路76aの流路面積を可変制御し、吸気路76aの上側領域を上記仕切部62、72と協働して開閉し得るタンブル弁76cを備えている。タンブル弁76cはバタフライ式のもので、弁軸76bと、この弁軸76bに固定される共に一体的に回転する略円盤状の弁体76dとを有している。このように、タンブル弁76cは弁軸76bと一体的に回転する単一の弁部材である弁体76dを備えて構成されている。ただし、タンブル弁76cの弁軸76bはスロットル弁軸40bと平行である。なお、タンブル弁76cは、タンブル制御弁、TCVなどとも称され得、本発明の吸気制御弁に相当する。
【0039】
ここで、スロットル弁40cよりも下流側の吸気通路38の部分の立体モデルM1を図2及び図3に示す。図2は立体モデルM1の下流側からの斜視図であり、図3は立体モデルM1の(上下方向に直交する)左右方向からの図である。図3は、吸気弁46のバルブ軸線46cに直交する方向であって主仕切部62の延在方向及び副仕切部72の延在方向に対して直交する方向から立体モデルM1をみた図である。立体モデルM1では、タンブル弁76cの弁体76dが表されている。また、図4にタンブル弁76cの弁体76dを示す。タンブル弁76cの単一の弁部材である弁体76dは上述のように略円盤状であるが、下流側において弁軸76bまわりに振られる先端部76tは略直線状にされている。これにより、弁体76dは主仕切部62との間で閉状態になったり、副仕切部72との間で閉状態になったりすることができる。
【0040】
主仕切部62は、タンブル弁76cのすぐ下流側の位置から吸気ポート32にまで連続して延びている。同様に、副仕切部72は、タンブル弁76cのすぐ下流側の位置から吸気ポート32にまで連続して延びている。図1から明らかなように、タンブル弁76cの弁軸76bは主仕切部62の上側に位置付けられている。よって、当然に、タンブル弁76cの弁軸76bは、副仕切部72よりも上側に位置付けられている。加えて、タンブル弁76cはバタフライ式のバルブである。したがって、主仕切部62の上流端縁62aの方が、副仕切部72の上流端縁72aよりも下流側に位置する。ここでは、副仕切部72の上流側はタンブル弁ボディ76内にまで延び、その上流端縁72aはタンブル弁ボディ76に形成されているが、これに限定されず、例えば上流端縁72aがインレットパイプ36に位置するように吸気構造Sは設計されてもよい。なお、主仕切部62の下流端縁62bは、副仕切部72の下流端縁72bよりも下流側に位置する。
【0041】
タンブル弁ボディ76には、図1に示すように、タンブル弁76cの弁体76dの動きを許容する凹部77が設けられている。凹部77は、吸気通路38を区画形成する壁部、特にここでは吸気路76aを区画形成する壁部であるタンブル弁ボディ76の壁部76eのうち上側の壁部76uに設けられている。なお、図1及び図3では凹部77は略円弧状である。
【0042】
上記構成のタンブル弁76cは、第2吸気通路である主流路66及び第4吸気通路である第2タンブル流路70を開閉可能であるように構成されている。ここでは、タンブル弁76cは、第1タンブル流路68の開度に影響しないように設けられている。
【0043】
図1では、タンブル弁76cの弁体76dは、下流側が副仕切部72の上流端縁72aに延びるように位置付けられている。つまり、図1では、タンブル弁76cは、主流路66と第2タンブル流路70は実質的に閉じられ、当然に第1タンブル流路68は開いたままになっている。
【0044】
図1に示すように、タンブル弁76cは、弁体76dの下流側の先端部76tが副仕切部72の上流端縁72aに延びる第1位置P1に位置付けられ得る。タンブル弁76cは、この第1位置P1(図3の実線)の他、タンブル弁76cの弁体76dが流れ方向に延びる全開位置PA(図3の一点鎖線)と、その弁体76dの下流側の先端部76tが主仕切部62の上流端縁62aに延びる第2位置P2(図3の二点鎖線)とを有する。タンブル弁76cが全開位置PAにあることで、タンブル流路64及び主流路66が全開状態になる。タンブル弁76cが第1位置P1にあることで、図1に基づいて前に説明したように、主流路66と第2タンブル流路70は実質的に閉じられ、当然に第1タンブル流路68は開いたままになる。タンブル弁76cが第2位置P2にあることで、主流路66は実質的に閉じられ、第1タンブル流路68に加えて第2タンブル流路70は開いた状態になる。このように、タンブル弁76cは複数の開度で用いられることになるが、凹部77が設けられていることにより、弁体76dは全開位置PA、第1位置P1、第2位置P2に好適に位置づけられるようになる。タンブル弁76cが第1位置P1に位置付けられているときも、第2位置P2に位置付けられているときも、凹部77の内壁面77aとそれに対向する弁体76dの部分(以下、円弧状部)76s(図4参照)との間に略同じ形状及び略同じ幅の隙間が形成されるように、凹部77の内壁面77aは凹湾曲する。なお、タンブル弁76cはこれら以外の任意の位置に位置付けられることができる。タンブル弁76cのこれらの位置は、ここでは内燃機関10の運転状態に基づいて後述するECU80により制御される。
【0045】
なお、図1及び図3に示す第1位置P1にあるとき、タンブル弁76cの弁体76dは傾斜している。このとき、弁軸76bを中心として、吸気流れ方向Fにおいて、タンブル弁76cの弁体76dの下側に位置する一端側半体76fは、下流側に位置し、一端側半体76fの下流側において、対応する副仕切部72と鈍角αをなす。また、このとき、弁軸76bを中心として、吸気流れ方向Fにおいて、タンブル弁76cの弁体76dの上側に位置する他端側半体76gは、上流側に位置し、他端側半体76gの下流側において、対応する凹部77の壁部76eのうち上側の壁部76uつまり、吸気通路壁面である凹部77の内壁面77aと鋭角βをなす。この角度関係は、タンブル弁76cの弁体76dが第2位置P2にあるときにも同様に成立し、このとき、タンブル弁76cの弁体76dの下側に位置する一端側半体76fは、対応する主仕切部62とその下流側において鈍角をなす。
【0046】
内燃機関10では、燃料噴射弁78が設けられている。燃料噴射弁78は、スロットル弁40c及びタンブル弁76cの下流側に設けられている。ここでは、燃料噴射弁78は、主流路66に臨むようにインレットパイプ36に設けられ、吸気ポート32に向けて燃料を噴射するように設けられている。より具体的には、燃料噴射弁78は主流路66を介して吸気弁46に向けて燃料を噴射するように設けられている。この燃料噴射弁78からの燃料噴射量及びその噴射タイミングは、スロットル弁40c及びタンブル弁76cのそれぞれの制御と関連付けて制御される。
【0047】
なお、スロットル弁40cは、電子制御されることに限定されず、例えばスロットルケーブルで機械的にコントロールされる弁であってもよく、これはタンブル弁76cにおいても同様である。また、燃料噴射弁78に加えて、更なる燃料噴射弁が設けられてもよく、この場合、この更なる燃料噴射弁はスロットル弁40cの下流側かつタンブル弁76cの上流側の吸気通路に燃料を噴射するように設けられるとよい。この更なる燃料噴射弁が設けられる場合、この更なる燃料噴射弁からの燃料噴射量及びその噴射タイミングは、燃料噴射弁78からの燃料噴射量及びその噴射タイミングと同様に、又は、燃料噴射弁78からの燃料噴射量及びその噴射タイミングと関連付けて制御されるとよい。
【0048】
内燃機関10を制御するECU(電子制御ユニット)80は、所謂コンピュータとしての構成を備え、吸気制御部82及び燃料噴射制御部84を備えている。ECU80は、エンジン回転速度センサ、エンジン負荷センサなどの各種センサからの出力に基づいて内燃機関10の運転状態を解析して、吸気制御部82により、スロットル弁40c及びタンブル弁76cの各作動を制御する。例えば、スロットル弁40cは、運転者によるアクセル操作に応じた開度に制御される。また、ECU80は、解析した内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射制御部84により、燃料噴射弁78の作動を制御する。なお、ECU80には、これらの制御のためのプログラム及び各種データが記憶されている。
【0049】
ここで、タンブル弁76cの制御について詳しく説明する。例えば、内燃機関10の運転状態が低負荷領域にあるとき、ECU80は、第1タンブル流路68のみから実質的に吸気を吸入させるように、タンブル弁76cを第1位置P1に位置するようにその作動を制御する。これにより、低負荷領域に即した吸入空気量を確保するとともに、第1タンブル流路68からの吸気で燃焼室20にタンブル流を形成させる。第1タンブル流路68は比較的断面積が小さいため、低負荷領域に即した吸入空気量でも流速を早くすることができ、強いタンブル流を形成することができる。ここでは、内燃機関10の運転状態が低負荷領域にあるとき、燃料噴射弁78からの燃料噴射は空燃比がリーンになるように制御されるが、タンブル流を形成することで効果的に燃焼を生じさせることができる。
【0050】
また、例えば、内燃機関10の運転状態が中負荷領域にあるとき、ECU80は、第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70からつまりタンブル流路64から吸気を吸入させるように、タンブル弁76cを第2位置P2に位置するようにその作動を制御する。これにより、中負荷領域に即した吸入空気量を確保するとともに、第1及び第2タンブル流路68、70からの吸気で燃焼室20にタンブル流を形成させる。第1及び第2タンブル流路68、70からの吸気でタンブル流を形成するため、低負荷領域より多くの吸入空気量が必要な中負荷領域においても必要な吸入空気量を確保しつつ、強いタンブル流を形成することができる。ここでは、内燃機関10の運転状態が中負荷領域にあるとき、燃料噴射弁78からの燃料噴射は空燃比がリーンになるように制御されるが、タンブル流を形成することで効果的に燃焼を生じさせることができる。
【0051】
更に、例えば、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、ECU80は、第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70を含むタンブル流路64並びに主流路66から吸気を吸入させるように、タンブル弁76cを全開位置PAに位置するようにその作動を制御する。これにより、高負荷領域に即した吸入空気量を確保するとともに、第1及び第2タンブル流路68、70からの吸気で燃焼室20に好ましくはタンブル流を、そうでなくても好適な筒内流速を実現させる。ここでは、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、燃料噴射弁78からの燃料噴射は空燃比がストイキになるように制御され、更に好適な筒内流速を実現することでより効果的に燃焼を生じさせることができる。
【0052】
例えば、内燃機関10の運転状態が高負荷領域にあるとき、タンブル弁76cは全開位置PAに位置するようにその作動が制御され、タンブル流路64及び主流路66から吸気を吸入させる。このときに、主流路66からの吸気により吸入空気量をより多くし、かつ、タンブル流路64からの吸気によるタンブル性能をより好適に確保可能にするように、内燃機関10の吸気構造Sは更なる構成及び形状を有する。以下、更に説明する。
【0053】
タンブル流路64の下流側には合流部86が区画形成されている。合流部86は、第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70がその下流側で合流する個所に設けられている。そして、合流部86を介してタンブル流路64は主流路66に合流する。合流部86は、シリンダヘッド14に形成されている。ここでは、合流部86は吸気ポート32の一部として形成されている。
【0054】
ここで、図5及び図6に、スロットル弁40c及びタンブル弁76cの下流側の吸気通路38の部分及び排気ポート34の排気通路を含む立体モデルM2を示す。図5は立体モデルM2の上側からの図であり、図6はシリンダ軸線Cに直交するとともに吸気流れ方向に直交する方向からの立体モデルM2の図である。更に、図6のVIIA-VIIA線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Aに示し、図6のVIIB-VIIB線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Bに示し、図6のVIIC-VIIC線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Cに示し、図6のVIID-VIID線に沿った位置での立体モデルM2の断面図を図7Dに示す。図6のVIIA-VIIA線は主仕切部62の上流端縁近傍を通り、図6のVIIB-VIIB線は吸気ポート32の上流端近傍を通り、図6のVIIC-VIIC線は副仕切部72の下流端縁近傍を通り、図6のVIID-VIID線は主仕切部62の下流端縁の近傍を通る。これらのVIIA-VIIA線からVIID-VIID線は、いずれも、図6においてシリンダ軸線Cに平行である。
【0055】
図7A図7B及び図7Cにおいて、第1タンブル流路68と第2タンブル流路70とは概ね同じ形状及びサイズを有する。このように、第1タンブル流路68と第2タンブル流路70とのそれぞれは、その吸気流れ方向においてその形状又はサイズが大きく変わることなく、滑らかに上流側から下流側に至る。そして、第1タンブル流路68と第2タンブル流路70とは合流部86につながる。合流部86は、主仕切部62の下流端の下流端縁62bよりも下流側で主流路66につながる(図1及び図6参照)。この構成により、第1タンブル流路68と第2タンブル流路70とは副仕切部72の下流端縁72bよりも下流側の合流部86を経て、主流路66につながることになる。よって、タンブル流路64の第1タンブル流路68と第2タンブル流路70を通った吸気に指向性を強く持たせることができる。
【0056】
図6において、合流部86において吸気流れ方向に延びるように定められる線L1が直角に近い角度θ1でシリンダ軸線Cに交わるのに対して、主流路66の下流端において流れ方向に延びるように定められる線L2が角度θ1よりも小さな角度θ2でシリンダ軸線Cに交わる。このように、主流路66からの吸気よりも、合流部86を介してのタンブル流路64からの吸気が小さい進入角で燃焼室20に流入するように、合流部86は区画形成されている。この構成により、タンブル流路64を通った吸気が強い指向性を持ったまま燃焼室20に導入可能になり、例えば燃焼室20で強いタンブル流を発生させることができる。なお、ここでいう進入角とは、燃焼室20に向けて流入する吸気の燃焼室20への流入の角度であり、例えばシリンダ軸線Cに直交するとともに吸気流れ方向に直交する方向からみた図6においてシリンダ軸線Cとの間でなす角度が大きいほど進入角は小さいということになる。
【0057】
更に、図1図3及び図6から明らかなように、タンブル流路64は、下側に凸の湾曲形状を有するように区画形成され、主流路66は、上側に凸の湾曲形状を有するように区画形成されている。この構成により、上述のように、タンブル流路64からの吸気をより小さな進入角で燃焼室20に導くことが可能になり、また、主流路66からの吸気をより効果的に燃焼室20に導くことが可能になる。
【0058】
図7Cに、合流部86の上流側端部に第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70が連通するところが示されている。ここで、参考までに、図7Cに、第1タンブル流路68の断面68A、第2タンブル流路70の断面70A、及び、合流部86の上流側端部86uに定められる仮想面のつまりこの仮想面での断面の1つの辺TA1を示す。第1タンブル流路68の断面68Aの上下方向の長さ及び第2タンブル流路70の断面70Aの上下方向の長さのそれぞれよりも、合流部86の上流側端部86uの辺TA1の方が明らかに長い。このように、第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70の各々の断面積(図7Cの面積S1、S2)が、合流部86の上流側端部86uの断面積S3(辺TA1により一部が区画形成される断面の面積)より小さいように、合流部86は区画形成されている(S1<S3、S2<S3)。この構成により、第1タンブル流路68からの吸気と第2タンブル流路70からの吸気とが合流部86に好適に流入可能である。より詳細には、タンブル弁76cが第2位置P2にあり第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70に吸気が流れている場合、合流部86の断面積が第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70それぞれの断面積より大きいため、合流部86で吸入空気量が制限されにくく、中負荷領域の運転領域に即した吸入空気量を確保することができる。
【0059】
また、例えば、図7Dの辺TA2の方が図7Cの辺TA1よりも短い。つまり、下流側に至るに従い、例えば図7Cの辺TA1の箇所よりも図7Dの断面箇所で、タンブル流路64の合流部86の断面積が小さくなる傾向にある。このように、内燃機関10では、合流部86は、該合流部86の上流側端部から下流側に向けて概ね先細りするように区画形成されている。この構成により、第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70の断面積の和(例えば断面68Aの面積S1と断面70Aの面積S2の和)よりも、合流部86の上流側端部86uよりも下流側の流れ方向に直交する断面での面積(断面積)が小さくなる。これにより、第1タンブル流路68からの吸気と第2タンブル流路70からの吸気とが合流部86で合流して主流路66に流れ込むとき、吸気の流速を速い状態に保つことが可能になる。したがって、タンブル流路64からの吸気は、速い流速で燃焼室20内に流入し、好ましくはタンブル流を形成することができる。なお、第1タンブル流路68及び第2タンブル流路70の断面積の和よりも、合流部86の上流側端部よりも下流側の流れ方向に直交する断面での面積を小さくすることは、先細り以外の手段により実現されてもよい。
【0060】
さて、前述のように、タンブル弁76cは第1位置P1及び第2位置P2に位置付けられ得る。それらのいずれかに位置付けられるときは少なくとも1つの吸気通路を閉じて残りの吸気通路からの吸気でタンブル流を積極的に生じさせようとする。しかし、タンブル弁76cにおける少なくとも1つの吸気通路の閉弁時の閉塞の度合いを高めるためには、その弁体76dの設計精度を高めたり、タンブル弁ボディ76の吸気路76aを区画形成する壁面の精度を高めたりする必要がある。そこで、本実施形態では、特に、タンブル弁76cが第1位置P1に位置付けられて第2吸気通路である主流路66と、第4吸気通路である第2タンブル流路70とを閉じる状態にあるとき、積極的に、副仕切部72と弁体76dとの間に隙間部(第1の隙間部)G1を形成し、かつ、タンブル弁76cの副仕切部72とは反対側つまり上側に延びる吸気路76aを区画形成する壁面つまり吸気通路壁面とタンブル弁76cの弁体76dとの間に隙間部(第2の隙間部)G2を形成する。換言すると、そのとき、副仕切部72の上流端72aが弁体76dの対向する先端部76tから第1の隙間部G1に対応した所定距離(第1所定距離)離れ、かつ、タンブル弁76cの上側に延びる吸気路76aを区画形成する壁面はタンブル弁76cの弁体76dの対向する縁部つまり円弧状部76sから第2の隙間部G2に対応した所定距離(第2所定距離)離れる。ここでは、タンブル弁76cの上側に延びる吸気路76aを区画形成する壁面とは、タンブル弁ボディ76の壁部76eのうち上側の壁部76uつまり凹部77の内壁面77aのことである。なお、図1及び図3に示す第1位置P1にあるとき、タンブル弁76cの弁体76dは傾斜しているので、吸気流れ方向Fにおいて、第1の隙間部G1は、第2の隙間部G2よりも下流側に位置する。
【0061】
第1の隙間部G1及び第2の隙間部G2のそれぞれは主仕切部62の厚さ以下の隙間幅を有する。なお、主仕切部62の厚さとは、吸気流れ方向に延びる主仕切部62の平均の厚さであるとよい。具体的には、第1の隙間部G1及び第2の隙間部G2のそれぞれは3mm以下(0<隙間幅≦3mm)、より好ましくは2mm以下の隙間幅を有するとよい(0<隙間幅≦2mm)。ここでは、副仕切部72も主仕切部62とほぼ同じ厚さを有するように形成されている。つまり、本実施形態では、第1の隙間部G1及び第2の隙間部G2のそれぞれは副仕切部72の厚さ以下の隙間幅を有する。なお、第1の隙間部G1は図1及び図3において最大幅を有し、その左右(図1及び図3で紙面に直交する向き)に進むにしたがい隙間幅が小さくなるように形成されるとよい。同様に、第2の隙間部G2は図1及び図3において最大幅を有し、その左右に進むにしたがい隙間幅が小さくなるように形成されるとよい。これらの隙間部G1、G2は、後述する吸気の流れ(例えば図10の矢印参照)を実現するように設計される。ここでは、図1及び図3において、隙間部G1、G2は、約2mmの隙間幅を有するが、これに限定されるものではない。
【0062】
この隙間部G1、G2を設けることによる作用効果について説明する前に、まず、図8及び図9に基づいて関連する現象を以下説明する。なお、図8及び図9に基づく以下の説明と同様の説明は、特開2019-23459号公報にて詳しく記載している。
【0063】
図8は、吸気通路100に、タンブル流路102と主流路104とに仕切る仕切部106を設け、仕切部106の上流側にバタフライ弁108を設けたときに、そのバタフライ弁108が徐開しているとき(わずかに開いている状態にあるとき)の吸気の流れを模式的に示す図である。図9は、図8に示すバタフライ弁108の徐開時の主にその下流側の圧力を示す図である。
【0064】
バタフライ弁108は、図8において反時計回りRに開弁方向に回動可能となっているとともに、図示しない復帰ばねにより、その弁体108aの回動する一端側半体108bが吸気通路100を区画形成する内壁面110に当接するとともに、回動する他端側半体108cが同内壁面110に当接する全閉位置に位置するように、閉弁方向に時計回りに付勢されている。
【0065】
全閉状態のバタフライ弁108の一端側半体108bは、吸気流れ方向Fの下流側における吸気通路100の内壁面110との当接角が鈍角であり、その他端側半体108cは、吸気流れ方向Fの下流側における吸気通路100の内壁面110の当接角が鋭角である。換言すると、バタフライ弁108は傾斜しており、その一端側半体108bは、弁軸108dを中心にして、吸気通路100の下流側に位置し、バタフライ弁108の他端側半体108cは、吸気通路100の上流側に位置する。そのような状態の全閉位置から、図8に示すようにバタフライ弁108が徐開位置になると、吸気は、吸気通路100の上流側から、一端側半体108bと吸気通路100を区画形成する内壁面110との間に形成される間隙(以下、鈍角側間隙)110a、及び、他端側半体108cと内壁面110との間に形成される間隙(以下、鋭角側間隙)110bを通り、下流側に流れる。なお、このとき、図8及び図9に示すように、バタフライ弁108の一端側半体108bと吸気通路100の内壁面110とのなす角α1は鈍角であり、その他端側半体108cと吸気通路100の内壁面110とのなす角β1は鋭角である。
【0066】
このとき、図9に示すように、鈍角側間隙110aと鋭角側間隙110bの直下流領域部112には強い負圧が生じるとともに(図9中の黒色部)、バタフライ弁108の弁軸108dを含むバタフライ弁108の下流側範囲に広い負圧域114(図9中の、点ハッチング部)が発生する。すなわち、図9に示されるように、バタフライ弁108の下流側の吸気流路100の部分を、吸気流れ方向Fに沿ってバタフライ弁108の弁軸108dと略平行な面を有する仕切部106により、断面面積が大、小となる2つの流路102、104に仕切り、断面面積が大きい側の流路104を他端側半体108cの下流側に、断面面積の小さい側の流路102を一端側半体108bの下流側に配置すると、バタフライ弁108の徐開時にバタフライ弁108を通過し断面面積の大きい流路104側に流れる吸気の勢いが衰えやすくなり、勢いを失った断面面積の大きい流路104に流れた吸気は、バタフライ弁108の一端側半体108bと他端側半体108cの各端部の直下流部112(図9の黒色部)に発生する負圧に誘引され、上流側に逆流する。そして、逆流した吸気は、断面面積の小さい流路102側の一端側半体108bの直下流部112に発生する負圧に誘引された後、バタフライ弁108を通過した吸気とともに断面面積の小さい流路102に流れ込み、流路102を流れる吸気が増大する。
【0067】
したがって、断面面積の大きい流路104を主流路とし、断面面積の小さい流路102をタンブル流路とする、すなわち、主流路104の断面面積をタンブル流路102の断面面積より大きく設定することで、一旦主流路104に流れた吸気をタンブル流路102に導くことができる。すなわち、主流路104の断面面積をタンブル流路102の断面面積より大きく設定すれば、タンブル流路102を流れる吸気を強化することができる。
【0068】
更に、バタフライ弁108の弁軸108dに直角で吸気通路100の中心軸線Xに沿った断面視で、全閉時のバタフライ弁108の一端側半体108bが内壁面110と鈍角をなして接し、バタフライ弁108の他端側半体108cが内壁面110と鋭角をなして接し、一端側半体108bの下流側にタンブル流路102が位置し、他端側半体108cの下流側に主流路104が位置している。そのように、全閉時のバタフライ弁108の一端側半体108bが下流側の内壁面110と鈍角をなして接するように配置されたので、バタフライ弁108の下流側において一端側半体108bが、主流路104からタンブル流路102へ向けて傾斜しており、バタフライ弁108の徐開時等において、主流路104の逆流がタンブル流路102側に導かれ易くなるとともに、仕切部106を一端側半体108bに近接することができ、吸気流れ方向Fにおいて、一端側半体108bから仕切部106までの距離が、他端側半体108cから仕切部106までの距離より小さい。そのため、一端側半体108b側を通過した吸気がタンブル流路102に流入し易く、タンブル流路102に流入する吸気を多くすることができる。
【0069】
ここで、本発明の上記実施形態の説明に戻る。前述のように、タンブル弁76cが図3に示す第1位置P1にあるとき、傾斜しており、弁軸76bを中心として、吸気流れ方向Fにおいて、タンブル弁76cの弁体76dの下側に位置する一端側半体76fは、下流側に位置し、対応する副仕切部72とその下流側において鈍角αをなし、タンブル弁76cの弁体76dの上側に位置する他端側半体76gは、上流側に位置し、対応する凹部77の壁部76eとその下流側において鋭角βをなす。そして、主流路66の断面積は第2タンブル流路70の断面積よりも大きく、タンブル弁76cの弁体76dの一端側半体76fの下流側に第2タンブル流路70が配置され、弁体76dの他端側半体76gの下流側に主流路66が配置されている。よって、図8のバタフライ弁108、タンブル流路102及び主流路104を、本実施形態におけるタンブル弁76c、第2タンブル流路70及び主流路66に対応付けることができる。したがって、タンブル弁76cを前述のように第1の隙間部G1及び第2の隙間部G2を形成するように設計することで、本実施形態の内燃機関の吸気構造Sでは、図8に基づいて説明した吸気の流れを実現できる。
【0070】
図10に示すように、図1の内燃機関10の吸気構造Sによれば、タンブル弁76cが第1位置P1にあるとき、第1の隙間部G1、及び、第2の隙間部G2が上記のように形成される。このときの吸気の流れを、図10において矢印で模式的に示す。第2の隙間部G2を通過した吸気は主流路66側に一旦流れ得るが、その一部好ましくはその全部は第2タンブル流路70側に戻り、第1の隙間部G1を通過した吸気とともに、第2タンブル流路70を流れるようになる。このように、第1位置P1にあるタンブル弁76cを下流側に流れた吸気は、第2タンブル流路70に入り、結局はタンブル流路64に流れる。
【0071】
以上説明した内燃機関10の吸気構造Sでは、タンブル弁76cが第1位置P1に位置付けられるとき、副仕切部72とタンブル弁76cの弁体76dとの間に第1の隙間部G1が形成され、かつ、タンブル弁76cの上側の吸気路を区画形成する壁面77aと弁体76dとの間に第2の隙間部G2が形成される。これにより、上記のように、タンブル弁76cが第1位置P1に制御されるとき、主に開かれる第1タンブル流路68に加えて、第2タンブル流路70への吸気の流れが促され、よってそれらを含むタンブル流路64への吸気の流れが促されるので、第1タンブル流路68を介した吸気でのタンブル流の形成を阻害するのではなく、タンブル流を好適に強化することができる。よって、タンブル性能を好適に確保することができる。
【0072】
また、このように、タンブル弁76cは閉塞の度合いを高めるように設計されるのではなく、第1及び第2の隙間部G1、G2を形成するように設計される。その第1及び第2の隙間部G1、G2は前述のようにある程度の幅を有し得るので、タンブル弁76cをこのように隙間部G1、G2を形成するように設計することは、閉弁時のタンブル弁76cの閉塞の度合いを高めることに比べて、容易である。よって、タンブル弁76cのクリアランス管理を緩和することが可能になる。
【0073】
したがって、内燃機関10の吸気構造Sによれば、タンブル弁76cのクリアランス管理を緩和することができるとともに、タンブル性能を確保することが可能になる。
【0074】
そして、タンブル弁76cがこのように第1位置に制御されるとき、第2タンブル流路70に流れた吸気は、そのときに吸気を流すことが主目的とされる第1タンブル流路68の吸気と合流部86で合流し、燃焼室20に吸入される。よって、このとき、第2タンブル流路70を流れる吸気を含むタンブル流路64からの吸気に強い指向性を持たせることができ、燃焼室20でのタンブル流を好適に強化することができ、タンブル性能を更に確保することができる。
【0075】
なお、タンブル弁76cが第2位置P2にあるとき、このときにも、それが第1位置P1にあるときと同様に、タンブル弁76cは同様に傾き、また主仕切部62と弁体76dとの間に隙間部を形成し、かつ、タンブル弁76cの上側に延びる吸気路76aを区画形成する壁面とタンブル弁76cの弁体76dとの間に隙間部を形成する。このとき、主流路66にタンブル弁76cを通過した吸気が流れ得るが、このときには、前述の合流部86によりタンブル流路64の第1タンブル流路68と第2タンブル流路70を通った吸気に指向性を強く持たせることができるので、総合的には十分なタンブル性能を得ることができる。
【0076】
なお、内燃機関10の吸気構造Sでは、タンブル流路64と主流路66とを仕切る主仕切部62と、タンブル流路64を第1及び第2タンブル流路68、70とに仕切る副仕切部72とが設けられる。この吸気構造Sによれば、主流路66と、タンブル流路64とを備え、タンブル流路64を第1タンブル流路68と第2タンブル流路70とに分けることができる。よって内燃機関の運転状態によってそれらのいずれか又は全てを使用して、運転状態に応じた吸入空気量を確保することが可能になる。
【0077】
なお、副仕切部は1つに限定されず、複数であってもよい。複数の副仕切部をタンブル流路64に設けることで、タンブル流路64を、上記第1タンブル流路68に対応する第3吸気通路及び上記第2タンブル流路70に対応する第4吸気通路を含む3つ以上の吸気通路つまり吸気通路部分に分けることが可能になる。この分けられた複数の吸気通路部分は、上述の第1及び第2タンブル流路68、70と同様に合流部86を介して主流路66につながり、燃焼室20につながるとよい。なお、この場合、複数の副仕切部は上下方向に離してタンブル流路64に設けられ得る。そして、このとき、図8から図10に基づいて説明したタンブル流路への吸気の逆流現象を積極的に活用するように、タンブル弁が設けられるとよい。
【0078】
また、上記内燃機関10の吸気通路を、特にスロットル弁40cの下流側の吸気通路を区画形成する各種部材は主に鋳造により作製されるとよい。これにより、下側に凸のタンブル流路64及び上側に凸の主流路66など種々の形状を実現することが可能である。なお、鋳造以外の方法により、吸気通路を区画形成する部材が作製されることを本開示は排除するものではない。
【0079】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0080】
なお、上記実施形態の内燃機関の吸気構造では、第1タンブル流路の上側に第2タンブル流路を形成し、これらを含むタンブル流路の上側に主流路を設けた。しかし、第1タンブル流路の下側に第2タンブル流路を形成し、これらを含むタンブル流路の下側に主流路を設けてもよい。ただし、このとき、タンブル弁76cは図1に相当する図面において、上下反転されて逆向きにされるとよい。
【符号の説明】
【0081】
10…内燃機関、12…シリンダブロック、14…シリンダヘッド、15…ピストン
20…燃焼室、28…吸気弁口、30…排気弁口、32…吸気ポート、34…排気ポート
38…吸気通路、40…スロットルボディ、46…吸気弁、50…排気弁
62…仕切部(主仕切部)、64…タンブル流路(第1吸気通路)
66…主流路(第2吸気通路)、68…第1タンブル流路(第3吸気通路)
70…第2タンブル流路(第4吸気通路)、72…仕切部(副仕切部)
76…タンブル弁ボディ、76c…タンブル弁(吸気制御弁)、86…合流部、S…吸気構造
G1…第1の隙間部、G2…第2の隙間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10