(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】消火スティック用メガホン
(51)【国際特許分類】
A62C 13/76 20060101AFI20241218BHJP
A62C 13/22 20060101ALI20241218BHJP
【FI】
A62C13/76 Z
A62C13/22
(21)【出願番号】P 2024190792
(22)【出願日】2024-10-30
【審査請求日】2024-11-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599053713
【氏名又は名称】株式会社ホワイトハウス
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 文夫
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3107083(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111686388(CN,A)
【文献】特開2015-123277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
A62D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火スティック(1)の外壁に脱着可能な筒状の取付部(71)と、
前記取付部の一端と軸方向に連結する筒状のメガホン本体(720)と、
を備え、
前記取付部の他端に吹き口(75)を有し、前記メガホン本体の反取付部側に拡声口(76)を有する消火スティック用メガホン。
【請求項2】
前記取付部は、径方向に弾性変形可能であり、
前記消火スティックの外壁に取り付けられるとき、前記取付部の内壁(715)が弾性で広がり、前記消火スティックの外壁に当接する請求項1に記載の消火スティック用メガホン。
【請求項3】
前記メガホン本体は、中心軸に直交する断面形状が扁平に形成されている請求項1に記載の消火スティック用メガホン。
【請求項4】
前記メガホン本体は、中心軸に直交する少なくとも一部の断面において、仮想円に沿って形成された円弧曲面部(72)と、前記仮想円の内側に形成され、両端が前記円弧曲面部に接続する一つ以上の干渉回避部(73)と、を有する請求項3に記載の消火スティック用メガホン。
【請求項5】
前記メガホン本体の前記反取付部側の端部である開放端(74)は、外周縁のエッジ(743)が丸められている請求項1に記載の消火スティック用メガホン。
【請求項6】
前記消火スティックは、スティック本体(3)の先端部に設置された着火剤(7)に側薬(10)を擦って点火することにより前記スティック本体の内部に封入された消火薬剤が噴射するものであり、
前記スティック本体に被せられて前記着火剤を保護する保護キャップ(4)と、
前記スティック本体に連結され、使用者が把持可能なハンドル(5)と、
を備え、
前記取付部は、前記保護キャップの外壁に脱着可能である請求項1~5のいずれか一項に記載の消火スティック用メガホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火スティックに用いられるメガホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害時に用いられるレスキュー用品の積載に関する考案が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、災害時の移動手段として使用される自動二輪車や自動三輪車に消火器やメガホン等のレスキュー用品を積載することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された消火器は、レバーを握って粉末消火剤を噴射する従来の一般消火器である。また、特許文献1の自動二輪車又は自動三輪車は、警察官、消防団員、自衛隊員などが使用することを想定して、多種類のレスキュー用品が積載されたものである。例えば個人住宅の壁に掛けたり部屋の隅に床置きしたりするのに適したコンパクトさは考慮されていない。また、多種類のレスキュー用品の中から消火器とメガホンとを探し出すのに時間がかかり、消火作業や救助要請を開始するのが遅れるおそれがある。
【0006】
従来の一般消火器に比べ、消火スティックは、先端から消火薬剤を噴射する小型軽量の棒状消火器具であり、火災発生直後(例えば2分以内)の初期消火に適している。一方、例えば住宅で火災が発生したとき、すぐにメガホンが使えれば、住人は外に向かって救助を求めることができ、助かる可能性が高くなる。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、火災時等の救助要請に利用可能な消火スティック用メガホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による消火スティック用メガホンは、消火スティック(1)の外壁に脱着可能な筒状の取付部(71)と、取付部の一端と軸方向に連結する筒状のメガホン本体(720)と、を備える。
【0009】
この消火スティック用メガホンは、取付部の他端に吹き口(75)を有し、メガホン本体の反取付部側(すなわち、取付部とは反対側)に拡声口(76)を有する。
【0010】
例えば住宅で火災が発生したとき、メガホンの使用者である住人は、部屋に常備されているメガホン付き消火スティックを手に取って、まず消火スティックの外壁からメガホンを取り外す。例えば住人は、片手で消火スティックを持って消火しながら、もう片方の手でメガホンを持って救助を求めることが可能である。
【0011】
部屋に2人以上の住人が居る場合、1人がメガホン70を使って救助を求め、別の1人が消火スティック1で消火作業を行うことで、迅速な対応が可能となる。特に小型軽量で不活性ガスを連続噴射可能であるという消火スティックの特性を活かし、火災発生直後の初期消火作業を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のメガホンが取り付けられた状態の消火スティックの図。
【
図2】
図1の状態からメガホンを取り外した状態の図。
【
図3】
図2の状態から保護キャップ及びエンドキャップを取り外した状態の図。
【
図5】第1実施形態による(壁掛け用)スリムタイプメガホンの正面図。
【
図8】(a)
図5のVIIIa方向から視た平面図、(b)
図5のVIIIb方向から視た底面図、(c)
図9のVIIIc-VIIIc線断面図。
【
図9】ブラケットにより壁掛けされた状態のスリムタイプメガホンの側面図。
【
図10】火災時等にメガホンを使用して救助を求める状況を示す図。
【
図11】第2実施形態による(床置き用)スタンダードタイプメガホンの正面図。
【
図13】(a)
図11のXIIIa方向から視た平面図、(b)
図11のXIIIb方向から視た底面図。
【
図14】第3実施形態において環状空間に収容される安全メガネの図。
【
図15】スタンダードタイプメガホン内に安全メガネが収容された図。
【
図16】(a)スリムタイプメガホンでの
図16(b)に相当する図、(b)
図15のXVIb方向矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による消火スティック用メガホンの複数の実施形態について図面に基づいて説明する。このメガホンが取り付けられる消火スティックは、先端から消火薬剤を噴射可能な小型軽量の棒状消火器具である。消火スティックは、例えば個人住宅や事業所、車両等に常備され、火災発生時に消火作業のため使用される。本実施形態では100秒噴射タイプの消火スティックを代表例として説明する。
【0014】
(消火スティックの構成)
図1~
図3を参照し、消火スティック1の構成を説明する。消火スティック1は、中心軸Oに沿って同軸に配置されたスティック本体3、保護キャップ4、ハンドル5及びエンドキャップ6で構成されている。また、消火スティック1の外壁にメガホン(第1実施形態のスリムタイプメガホンを例示する)70Sが脱着可能に取り付けられている。ハンドル5はスティック本体3に一体に連結されている。保護キャップ4はスティック本体3から脱着可能である。エンドキャップ6は、ハンドル5のスティック本体3とは反対側に脱着可能に取り付けられている。スティック本体3は金属製であり、保護キャップ4、ハンドル5及びエンドキャップ6は樹脂で形成されている。
【0015】
以下、メガホンに関して、第1実施形態のスリムタイプメガホン70S及び第2実施形態のスタンダードタイプメガホン70Lに共通する事項については「メガホン70」として記載する。
図1に、消火スティック1の外壁にメガホン70が取り付けられた状態を示す。
図2に、
図1の状態からメガホン70を取り外した状態を示す。
図3に、
図2の状態から保護キャップ4及びエンドキャップ6を取り外した状態を示す。
図1~
図3の紙面左側である、消火薬剤が噴射される側を先端側と定義する。消火スティック1の先端側とは反対側を基端側という。
【0016】
スティック本体3は円筒状の金属管で構成され、消火薬剤が封入されたカートリッジが内部に収納されている。スティック本体3の先端部には、マッチの頭薬に相当する着火剤7が塗布や貼付により設置されている。ハンドル5は、先端側がスティック本体3に連結されており、基端側に開口する中空円筒部15を有している。使用者は消火スティック1を使用時にハンドル5を把持可能である。
【0017】
保護キャップ4は先端側が閉塞された有底筒状であり、スティック本体3に先端側から被せられ、着火剤7を保護する。保護キャップ4の基端側の外壁には、軸方向の突条が形成された保護キャップ把持部13が設けられている。使用者は、保護キャップ把持部13を持って保護キャップ4を先端側に取り外すことができる。
【0018】
エンドキャップ6は、消火スティック1の基端側からハンドル5の中空円筒部15に脱着可能に取り付けられている。エンドキャップ6の先端部には側薬10が塗布や貼付により設置されている。エンドキャップ6の外壁には、軸方向の突条が形成されたエンドキャップ把持部12が設けられている。使用者は、エンドキャップ把持部12を持ってエンドキャップ6を中空円筒部15に嵌め込むことができる。エンドキャップ6の外壁が中空円筒部15の内壁に軽い締まり嵌めで嵌合することで脱落が防止される。
【0019】
エンドキャップ6が中空円筒部15に取り付けられた状態で、側薬10はハンドル5の内部に収容される。エンドキャップ6を取り外す時、使用者は、エンドキャップ把持部12を持って引き抜くことで、ハンドル5の中空円筒部15からエンドキャップ6を取り外すことができる。
【0020】
図1に示すように、メガホン70は、筒状の取付部71及びメガホン本体720を備える。本実施形態では、取付部71は、保護キャップ4の外壁に脱着可能であり、保護キャップ把持部13の先端側に当接することで軸方向に位置決めされる。メガホン本体720は、取付部71の一端と軸方向に連結する。メガホン70は、取付部71の他端に吹き口75を有し、メガホン本体720の取付部71とは反対側に拡声口76を有する。メガホン70の詳細な構成については後述する。消火スティック1を使用するとき、最初に保護キャップ4の外壁からメガホン70が取り外される。
【0021】
(消火スティックの使用方法)
図4を参照し、消火スティックの使用方法について説明する。最初にメガホン70が取り外された後、第1段階で使用者は、消火スティック1のスティック本体3から保護キャップ4を取り外す。第2段階で使用者は、ハンドル5からエンドキャップ6を取り外す。これにより、保管時に覆われていた着火剤7及び側薬10が露出する。第3段階で使用者は、エンドキャップ6の側薬10をスティック本体3の着火剤7に擦って点火すると、スティック本体3の内部に封入された消火薬剤が噴射する。第4段階で使用者は、噴射口を炎の底に向けて消火する。
【0022】
第3段階でスティック本体3の着火剤7に点火すると、カートリッジ内部の成分が化学反応を起こし、スティック本体3の先端部から消火薬剤が噴射する。詳しくは、硝酸カリウムとジシアンジアミドとが化学反応により燃焼し、白い蒸気状のカリウム微粒子を含んだ不活性ガスが噴射する。大量のカリウムラジカルが炎の内部及び周囲の酸素を枯渇させる窒息効果及び抑制効果で燃焼の連鎖が遮断される。
【0023】
(消火スティックと比較形態の消火器との対比)
従来の一般的な粉末消火器(一般消火器)を比較形態とし、消火スティックの特徴を比較形態と対比して説明する。例えば、付属品を含まない100秒噴射タイプの消火スティックのサイズは直径4cm×全長33cm、重量は365gであり、小型軽量である。
【0024】
比較形態の一般消火器は、大径の筒状金属製の容器を使用し、重さが例えば5kgの重量物である。重量物の消火器を用いて高所や隙間空間の火炎発生源に消火剤を噴射することは困難である。また、片手で消火器本体を持ちながら、もう片方の手でレバーを握って噴射する必要があるため、両手がふさがり操作性が悪い。比較形態に対し、本実施形態が使用される消火スティックは、小型軽量で、片手で使用することができるため、操作性、利便性に優れている。以下、項目毎に対比する。
【0025】
(1)噴射時間:消火スティックは例えば最大100秒間連続噴射可能である。火災発生から2分間以内の消火と言われる初期消火の実現に効果がある。
(2)重量:消火スティック(付属品を含まない)は365gと軽量であり、火災時に持ち運びが容易である。
(3)残留物:消火スティックは不活性ガスを噴射するため有害な残留物が残らない。このため、消火後の被災箇所の物品や設備の復旧が容易である。
(4)消火スティックは、一般消火器が対応できない可燃性ガス火災に対応可能である。
【0026】
(5)使用期限:消火スティックの使用期限は15年であり一般消火器に比べて長い。
(6)耐久性:消火スティックは非加圧式であるため耐久性と耐衝撃性に優れている。
(7)定期点検:消火スティックは法定資格者による定期点検を必要としない。
(8)安全・環境:消火スティックは、噴射ガスが不活性ガスである。このため、操作者及び周囲の者の呼吸や視力に悪影響を与えず、地球温暖化やオゾン層の破壊の原因にもならない。
【0027】
これに対し比較形態の一般消火器についての諸元は、参考までに次のとおりである。
(1)噴射時間:一般消火器は噴射期間が例えば約15秒である。初期消火を達成できないことが多い。
(2)重量:一般消火器は重量が約5kgであり、火災時に持ち運びが困難である。
(3)残留物:一般消火器は噴射後に薬剤残留物や汚れが残る。このため、消火後の被災箇所の物品や設備の復旧が困難である。
(4)一般消火器は、可燃性ガス火災に対応できない。
【0028】
(5)使用期限:一般消火器は劣化が速く、使用期限が短い。
(6)耐久性:一般消火器は加圧式であるため耐久性と耐衝撃性が劣る。
(7)定期点検:一般消火器は法定資格者による定期点検を必要とし、取扱いが煩雑である。
(8)安全・環境:一般消火器が噴射する薬剤は、操作者及び周囲の者に対し呼吸や視力に影響を与えやすく、地球温暖化やオゾン層の破壊の原因にもなっている。
【0029】
続いて消火スティック用メガホンの構成について説明する。複数の実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。第1~第3実施形態を包括して「本実施形態」という。第1実施形態のスリムタイプメガホン70S、及び、第2実施形態のスタンダードタイプメガホン70Lに共通する事項については「メガホン70」として記載する。
【0030】
消火スティック1に取り付けられた状態での保管形態について、第1実施形態のスリムタイプメガホン70Sは壁掛け用を想定したものである。第2実施形態のスタンダードタイプメガホン70Lは床置き用を想定したものであり、スリムタイプメガホン70Sよりも一回り大きい。なお、「スタンダード」の頭文字SはスリムタイプのSと重なるため、「ラージ」のLで代用する。
【0031】
<第1実施形態>
図5~
図9を参照し、第1実施形態のスリムタイプメガホン70Sについて説明する。
図5~
図8(b)には、消火スティック1から取り外された単体のスリムタイプメガホン70Sを各方向から視た外観形状を示す。
図9及び
図8(c)には、スリムタイプメガホン70Sが取り付けられた消火スティック1がブラケットBにより壁Wに掛けられた状態を示す。なお、
図8(c)の図示方向は
図9の断面指示線の向きとは異なるが、便宜上、
図8(a)、(b)の向きと合わせる。
【0032】
メガホン70は、可撓性を有する樹脂材料で形成され、中心軸Oを中心とする筒状の取付部71及びメガホン本体720を備える。取付部71は、消火スティック1の外壁に脱着可能に取り付けられる。本実施形態では、取付部71は、消火スティック1のハンドル5の外壁ではなく、保護キャップ4の外壁に脱着可能に取付られる。ハンドル5がメガホン70で覆われることがないため、使用者がハンドル5を把持するのに支障とならない。メガホン本体720は、取付部71の一端と軸方向に連結する。
【0033】
メガホン70は、取付部71の他端、すなわちメガホン本体720とは反対側の端部に吹き口75を有する。吹き口75は、取付部71が消火スティック1の外壁に脱着されるときの嵌合孔を兼ねる。またメガホン70は、メガホン本体720の反取付部側の端部である開放端74に拡声口76を有する。メガホン70は、使用者により吹き口75に入力された音声を拡声して拡声口76から出力する。好ましくは、開放端74は、外周縁のエッジ743が丸められている(すなわち「角丸め」されている)。これにより、使用者が誤ってメガホン70を人や物にぶつけたとき、衝撃を緩和することができる。
【0034】
取付部71は、径方向に弾性変形可能に形成されている。
図5~
図8には、メガホン単体の状態で縮径した取付部71が楕円形に変形した径方向形状が図示されている。消火スティック1の外壁に取り付けられるとき、取付部71の内壁715が弾性で広がり、消火スティック1の外壁に当接する。取付部71の内壁715は軸方向に数cm程度の長さを有し、消火スティック1の外壁と面接触するため、メガホン70の取付姿勢が安定する。また、取付部71には、使用者が首に掛ける首紐79を通すリング部719が設けられている。
【0035】
メガホン本体720は、中心軸Oに直交する断面形状が扁平に形成されている。スリムタイプメガホン70Sでは、
図8(a)、(b)に示すように、メガホン本体720は、中心軸Oに直交する少なくとも一部の断面において円周の一部が弦で接続されたD字状に形成されている。つまり、スリムタイプメガホン70Sのメガホン本体720は、円弧曲面部72と一つの干渉回避部73とを有する。円弧曲面部72は、中心軸Oに直交する断面において、二点鎖線で示す仮想円の一部に沿って形成されている。干渉回避部73は、仮想円の内側に形成され、両端が円弧曲面部72に接続する。
【0036】
スリムタイプメガホン70Sでは、円弧曲面部72は、取付部71側から反取付部側に向かってテーパ状に拡径してから、ほぼ一定の径で開放端74まで延びている。干渉回避部73は略平面状に形成されている。これにより、干渉回避部73では中心軸Oから外壁までの距離が円弧曲面部72に比べて短くなるため、相手物に接近して配置されたとき、相手物との干渉が回避される。干渉回避部73は略平面状に限らず、円弧曲面部72よりも曲率の小さい緩曲面や折れ曲がった複数の面で形成されてもよい。
【0037】
具体的には、壁掛け保管時の壁Wが、干渉回避部73が干渉を回避する相手物となる。
図9及び
図8(c)に示すように、スリムタイプメガホン70Sが取り付けられた消火スティック1は、ブラケットBにより壁Wに掛けられる。ブラケットBは、円筒状の一対の係止部B1が板バネB2を介して台座B3に接合されている。板バネB2は、一対の係止部B1を内側に向かって付勢する。
図8(c)に破線で示す自由状態では、一対の係止部B1間の距離は取付部71の径よりも狭い。使用者が取付部71を押し込むことにより、板バネB2が外側に広がって、一対の係止部B1の間に取付部71がクランプされる。
【0038】
このとき、スリムタイプメガホン70Sの中心軸Oに対する向きは、干渉回避部73が壁Wに対向するようにセットされることで、メガホン本体720が壁Wに干渉することが回避される。したがって、個人住宅や事業所等の壁Wに掛けて保管するに際し、壁Wからの突出寸法を小さくし、コンパクトな保管が可能となる。
【0039】
次に
図10を参照し、本実施形態のメガホン付き消火スティックが使用される状況について説明する。メガホン付き消火スティックは、マンションやアパートでは共同の廊下でなく、各部屋に常備されることが好ましい。例えば住宅で火災が発生した時、2階以上の部屋に居た住人は、部屋の壁に掛けてある、又は床に置いてあるメガホン付き消火スティックを手に取って、まず消火スティック1の外壁からメガホン70を取り外す。
【0040】
メガホン70の使用者である住人は、例えば2階の窓から外に向かって、メガホン70で「火事だ、助けて!」と叫ぶ。消火スティック1は小型軽量であるため、片手で消火スティック1を持って消火しながら、もう片方の手でメガホン70を持って救助を求めることが可能である。また、リング部719に通された首紐79を首に掛けることで、使用者は両手を自由に使うことができる。
【0041】
部屋に2人以上の住人が居る場合、1人がメガホン70を使って救助を求め、別の1人が消火スティック1で消火作業を行うことで、迅速な対応が可能となる。特に小型軽量で不活性ガスを100秒間連続噴射可能であるという消火スティック1の特性を活かし、火災発生直後(例えば2分以内)の初期消火作業を効果的に行うことができる。
【0042】
さらに火災以外に、集中豪雨や河川の氾濫で周囲が冠水した場合、地震等で家屋が倒壊し部屋に取り残された場合、強盗や不審者が侵入した場合等にも、メガホン70を使って救助を求めることができる。
【0043】
<第2実施形態>
図11~
図13を参照し、第2実施形態のスタンダードタイプメガホン70Lについて、主にスリムタイプメガホン70Sとの相違点を説明する。
図11~
図13には、消火スティック1から取り外された単体のスタンダードタイプメガホン70Lを各方向から視た外観形状を示す。
【0044】
メガホン本体720は、中心軸Oに直交する断面形状が扁平に形成されている。スタンダードタイプメガホン70Lでは、
図13(a)、(b)に示すように、メガホン本体720は、中心軸Oに直交する少なくとも一部の断面において、中心軸Oを通る直線の両側で円周の一部が弦で接続されている。つまり、スタンダードタイプメガホン70Lのメガホン本体720は、二つの円弧曲面部72と二つの干渉回避部73とを有する。
【0045】
円弧曲面部72は、中心軸Oに直交する断面において、二点鎖線で示す仮想円に沿って形成されており、取付部71から開放端74に向かって、勾配がほぼ一定のテーパ状に拡径している。メガホン本体720の軸方向における取付部71側の約半分の範囲では、円弧曲面部72は仮想円の全周に沿って形成されている。開放端74側の約半分の範囲では、円弧曲面部72は仮想円の一部に沿って形成されている。仮想円の内側に形成された例えば略平面状の二つの干渉回避部73は、両端が円弧曲面部72に接続する。
【0046】
図12に破線で示すように、消火スティック1に取り付けられたスタンダードタイプメガホン70Lは、開放端74が床Fに接するように床置きされる。このとき、二つの干渉回避部73が壁Wと平行になる向きに置くことで壁Wになるべく寄せることができ、部屋や廊下等における占有スペースを減らすことができる。
【0047】
<第3実施形態>
図14~
図16を参照し、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、保管状態の消火スティック1において、メガホン70の内壁と保護キャップ4の外壁との間に安全メガネ80が収容されている。
図14に示すように、安全メガネ80は、横20cm×縦8cm程度の可撓性シート81で形成されている。以下、
図14に図示された安全メガネ80の向き、すなわち使用者が顔に着用した状態での向きに従って、安全メガネ80の長手方向を「横方向」といい、短手方向を「縦方向」という。
【0048】
可撓性シート81は、四隅と鼻に掛かる部分とが丸く切り取られた外形を呈し、両眼に対応する位置に覗き窓82が開いている。覗き窓82を覆うように耐熱性の接眼フィルム83が貼り付けられている。可撓性シート81の横方向両端部には耳紐84が付けられており、使用者は耳紐84を耳に掛けて安全メガネ80を着用することができる。また、両眼の間の上の部分に、簡易的な照明部85が設けられている。
【0049】
図15及び
図16(b)に、スタンダードタイプメガホン70Lが取り付けられた消火スティック1での収容状態を示す。スタンダードタイプメガホン70Lと保護キャップ4との間の環状空間78は十分に広い。そのため、開放端74の近くでは保護キャップ4の一方側に安全メガネ80をほぼそのままの形で収容可能であり、開放端74から奥の方では安全メガネ80を軽く湾曲させて収容可能である。また、保護キャップ4の他方側に、例えば防災用マスク87を収容させることができる。防災用マスク87に限らず、ハンカチ、防災頭巾、軍手等のアイテムが環状空間78に収容されてもよい。
【0050】
図16(a)に、スリムタイプメガホン70Sが取り付けられた消火スティック1での収容状態を示す。スリムタイプメガホン70Sでは保護キャップ4との間の環状空間78が比較的狭いが、可撓性シート81の縦方向の縁を環状空間78に倣って湾曲させることで、安全メガネ80を環状空間78に収容可能である。
【0051】
使用者は、火災での避難時や消火作業時に安全メガネ80を着用することで、炎や煙から目を保護することができる。また、フレームを折り畳んで保管される一般的な安全メガネは剛性があり、変形自由度が小さいため、スリムタイプメガホン70Sはもちろん、スタンダードタイプメガホン70Lであっても環状空間78に収容することは困難である。それに対し、第3実施形態で用いられる安全メガネ80は可撓性シート81を基材としているため、湾曲させて環状空間78に入れ込み、消火スティック1と一体に保管することができる。
【0052】
<その他の実施形態>
(a)消火スティックは、上記実施形態の構成に限らず、先端から消火薬剤を噴射可能であり、メガホン70の取付部71が脱着可能な外壁を有する棒状の消火器具であればよい。使用者が把持するのに支障がない場合、ハンドル5の外壁に取付部71が取り付けられる構成としてもよい。
【0053】
(b)メガホン本体720の具体的形状は、
図5~
図8、
図11~
図13に例示された形状に限らず、少なくとも筒状であればよい。軸に直交する断面形状は扁平でなく、円形状等であってもよい。各部分の軸方向長さの比や勾配は、拡声機能、成形性、デザイン性等を考慮して適宜設定されてよい。
【0054】
(c)メガホン本体720の取付部の開放端74は、外周縁のエッジ743が丸められた構成に限らず、例えば環状の緩衝部材が外周縁に取り付けられることで衝撃を緩和するようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ・・・消火スティック、
4 ・・・保護キャップ、
70、70S・・・(消火スティック用)スリムタイプメガホン、
70、70L・・・(消火スティック用)スタンダードタイプメガホン、
71・・・取付部、 715・・・内壁、
720・・・メガホン本体、
72・・・円弧曲面部、 73・・・干渉回避部、
75・・・吹き口、 76・・・拡声口。
【要約】
【課題】火災時等の救助要請に利用可能な消火スティック用メガホンを提供する。
【解決手段】消火スティック用メガホン70Sは、消火スティック外壁に脱着可能な筒状の取付部71と、取付部71の一端と軸方向に連結する筒状のメガホン本体720と、を備える。消火スティック用メガホン70Sは、取付部71の他端に吹き口75を有し、メガホン本体720の反取付部側に拡声口76を有する。取付部71は、径方向に弾性変形可能であり、消火スティックの外壁に取り付けられるとき、取付部71の内壁715が弾性で広がり、消火スティックの外壁に当接する。使用者は、火災時等にメガホン70Sを使って救助を求めることができる。
【選択図】
図5