(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】光学用スチレン系樹脂組成物、導光板、エッジライト型面光源ユニット、光拡散版、及び直下型面光源ユニット
(51)【国際特許分類】
C08L 25/14 20060101AFI20241218BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20241218BHJP
C08K 5/51 20060101ALI20241218BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20241218BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241218BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20241218BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241218BHJP
【FI】
C08L25/14
C08K5/3435
C08K5/51
C08K5/524
F21S2/00 430
F21S2/00 480
G02B6/00 301
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2024520400
(86)(22)【出願日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2023016702
(87)【国際公開番号】W WO2023218994
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2022079368
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰生
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亘
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-154445(JP,A)
【文献】特開2007-224221(JP,A)
【文献】特開2007-263993(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102093689(CN,A)
【文献】特開2007-246810(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039368(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/199501(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/010553(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/129675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
F21S 2/00
F21V 3/00-3/12
F21V 8/00
G02B 6/00
F21Y 105/00-115/18
F21Y 115/00-115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)とを含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、
前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位85~20質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~80質量%を含有し、
前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有
し、
前記ヒンダードアミン光安定剤(B)がN-R型ヒンダードアミン光安定剤を含む、光学用スチレン系樹脂組成物(但し、ゴム質重合体存在下、少なくともスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体混合物をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体を10~60質量部、前記スチレン系樹脂(A)を40~90質量部含むものを除く)。
【請求項2】
スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)とを含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、
前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位85~45質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~55質量%を含有し、
前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有
し、
前記ヒンダードアミン光安定剤(B)がN-R型ヒンダードアミン光安定剤を含む、光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン光安定剤(B)が、
前記N-R型ヒンダードアミン光安定剤である、請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記N-R型ヒンダードアミン光安定剤が、
メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)n-ブチル3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシベンジルマロネート、
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸ジメチルエステルとの重縮合物、
1,5,8,12-テトラキス〔4,6-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物、
コハク酸と(4-ヒドロキシ―2,2,6,6-テトラメチルピペリジン―1-イル)エタノールとの重縮合物及びN,N′,N′′,N′′′-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンの混合物、
から選ばれる少なくとも1種である、
請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン系酸化防止剤(C-1)を0.001~0.5質量部、含有する、請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン系酸化防止剤(C-1)は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕-4,4′-ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、請求項
5に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレートが、0.5~5.0g/10分である、請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、JIS K 7206に従って、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定したビカット軟化温度が、95~104℃である、請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる導光板。
【請求項10】
光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる導光板であって、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)とを含有し、
前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位85~20質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~80質量%を含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレートが、0.5~5.0g/10分である、
導光板(但し、前記光学用スチレン系樹脂組成物が、ゴム質重合体存在下、少なくともスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体混合物をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体を10~60質量部、前記スチレン系樹脂(A)を40~90質量部含むものを除く)。
【請求項11】
光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる導光板であって、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)とを含有し、
前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位85~45質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~55質量%を含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレートが、0.5~5.0g/10分である、
導光板。
【請求項12】
請求項
9に記載の導光板と、該導光板の端面にLED光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニット。
【請求項13】
請求項10又は請求項11に記載の導光板と、該導光板の端面にLED光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニット。
【請求項14】
請求項1又は請求項2に記載の光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる光拡散板。
【請求項15】
光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる光拡散板であって、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)とを含有し、
前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位85~20質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~80質量%を含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレートが、0.5~5.0g/10分である、
光拡散板(但し、前記光学用スチレン系樹脂組成物が、ゴム質重合体存在下、少なくともスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体混合物をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体を10~60質量部、前記スチレン系樹脂(A)を40~90質量部含むものを除く)。
【請求項16】
光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる光拡散板であって、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)とを含有し、
前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位85~45質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位15~55質量%を含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有し、
前記光学用スチレン系樹脂組成物は、200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレートが、0.5~5.0g/10分である、
光拡散板。
【請求項17】
請求項
11に記載の光拡散板と、該光拡散板にLED光を供給する光源を有する、直下型面光源ユニット。
【請求項18】
請求項15又は請求項16に記載の光拡散板と、該光拡散板にLED光を供給する光源を有する、直下型面光源ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用スチレン系樹脂組成物、導光板、エッジライト型面光源ユニット、光拡散版、及び直下型面光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトには、光源を表示装置の正面に配置する直下型と側面に配置するエッジライト型がある。エッジライト型バックライトには、側面に配置された光源の光を表示装置の正面に導く導光板と呼ばれる部品が使用されている。テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピュータのモニター、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、カーナビゲーション用モニター等幅広い用途で使用されている。また、導光板を用いたバックライトは、照明装置や看板等としても使用される。
【0003】
導光板は、光透過距離が比較的長く、光路長での光損失が大きいため、特に高い光線透過率を有することが求められる。このため、導光板の材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるアクリル系樹脂が使用されている。しかしながら、PMMAは吸水性が高いため、吸水により導光板の反りや寸法変化が生じる場合がある。また、成形時に熱分解しやすいため、高温で成形すると成形体に外観不良が生じやすいという問題がある。これらの問題を改善するため、例えば、特許文献1には、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体を導光板の材料として用いることが提案されている。
【0004】
一方、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体の成形体は、PMMAと比較して、色相が悪くバックライトとして使用した場合、色ムラが生じる場合がある。この問題を改善するため、スチレン-(メタ)アクリル酸メチルの色相改善技術として、特許文献2が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-075648号公報
【文献】国際公開第2016-129675号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、テレビやモニター等のバックライトユニットの高解像度化に伴い、エッジ光源として高輝度タイプのLEDが用いられる場合があるが、従来のスチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体の導光板は、使用環境によっては、長時間点灯後に、導光板の端面部に劣化(炭化)が生じることがあった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、透明性、色相、寸法安定性に優れ、且つ、LED光源の長期使用に対する光安定性に優れる、光学用スチレン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)とヒンダードアミン光安定剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位95~20質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位5~80質量%を含有し、前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有する、光学用スチレン系樹脂組成物、が提供される。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が特定の範囲内のスチレン系樹脂、及び特定の範囲内のヒンダードアミン光安定剤を含む、光学用スチレン系樹脂組成物が、透明性、色相、寸法安定性、及びLED光源の長期使用に対する光安定性を同時に満たすであることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1] スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体であるスチレン系樹脂(A)とヒンダードアミン光安定剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物であって、 前記共重合体は、前記共重合体100質量%中に、前記スチレン系単量体単位95~20質量%と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位5~80質量%を含有し、前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、前記ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部、含有する、光学用スチレン系樹脂組成物。
[2] 前記ヒンダードアミン光安定剤(B)が、N-H型ヒンダードアミン光安定剤、及び/または、N-R型ヒンダードアミン光安定剤である、[1]に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
[3] 前記N-H型ヒンダードアミン光安定剤が、
ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート、
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート、
テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、
N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの重縮合物、
2,4-ジクロロ-6-(1,1,3,3-テトラメチルブチルアミノ)と1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンとの重縮合物、
N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサメチレンジアミンと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとN-ブチル-1ーブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの重縮合物、
1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物、
から選ばれる少なくとも1種である、[2]に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
[4] 前記N-R型ヒンダードアミン光安定剤が、
メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート、
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)n-ブチル3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシベンジルマロネート、
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸ジメチルエステルとの重縮合物、
1,5,8,12-テトラキス〔4,6-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、
1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物、
コハク酸と(4-ヒドロキシ―2,2,6,6-テトラメチルピペリジン―1-イル)エタノールとの重縮合物及びN,N′,N′′,N′′′-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンの混合物、
から選ばれる少なくとも1種である、[2]または[3]に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
[5] 前記スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン系酸化防止剤(C-1)を0.001~0.5質量部、含有する、[1]~[4]の何れか1つに記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
[6] 前記リン系酸化防止剤(C-1)は、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕-4,4′-ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも1種である、[5]に記載の光学用スチレン系樹脂組成物。
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる導光板。
[8] [7]に記載の導光板と、該導光板の端面にLED光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニット。
[9] [1]~[6]のいずれか1つに記載の光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる光拡散板。
[10] [9]に記載の光拡散板と、該光拡散板にLED光を供給する光源を有する、直下型面光源ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.光学用スチレン系樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)と、ヒンダードアミン光安定剤(B)を含有する光学用スチレン系樹脂組成物である。
【0013】
<スチレン系樹脂(A)>
スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む単量体を共重合して得られる樹脂である。スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含む共重合体である。共重合体は、共重合体100質量%中に、スチレン系単量体単位95~20質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位5~80質量%を含有し、好ましくはスチレン系単量体単位90~25質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位10~75質量%を含有し、より好ましくはスチレン系単量体単位80~30質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20~70質量%を含有し、さらに好ましくはスチレン系単量体単位60~40質量%と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位40~60質量%を含有する。このような範囲とすることで、透明性、色相、寸法安定性を同時に満たすことができる。スチレン系単量体を90質量%以下とすることで、透明性、色相に優れる導光板が得られ、スチレン単量体を20%以上とすることで、寸法安定性に優れる導光板を得ることができる。スチレン系樹脂(A)の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、具体的には例えば、5,6,7,8,9,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
スチレン系単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。スチレン系単量体は、好ましくはスチレンである。
【0015】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンタン―1-イル、(メタ)アクリル酸2-メチルアダマンタン―2-イル、(メタ)アクリル酸2-エチル―2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、より好ましくはメタクリル酸メチルである。
【0016】
また、スチレン系樹脂(A)は、スチレン系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能な単量体と共重合して得られる共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド類が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万~40万であり、より好ましくは10万~35万である。また、スチレン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~3.5であり、より好ましくは1.5~3.0である。このような範囲にすることにより成形性と導光板の強度を両立することができる。重量平均分子量(Mw)が5万未満では成形品の強度が不十分となり、40万を超えると成形性が低下する場合がある。また、数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.0未満では成形性が低下し、3.5を超えると成形品の強度が低下する場合がある。
【0018】
<ヒンダードアミン光安定剤(B)>
光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、ヒンダードアミン光安定剤(B)を0.001~1.0質量部含有し、好ましくは0.01~0.3質量部含有する。このような範囲とすることで、透明性、色相、LED光源に対する光安定性を改善することができる。ヒンダードアミン光安定剤(B)の含有量は、スチレン系樹脂(A)に対して、具体的には例えば、0.001,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。また、ヒンダードアミン光安定剤(B)は、1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
ヒンダードアミン光安定剤(B)とは、次の一般式(1)で表される構造単位を有する化合物である。
【0020】
【0021】
一般式(1)中、Xは炭素原子、酸素原子、窒素原子を介してピペリジル基の4-位と結合する有機基であり、Rとしては、水素原子、炭素数1~10の直鎖状、または分岐状のアルキル基、メチレン基、アルコキシ基が挙げられる。ここで、Rが水素原子の場合を、N-H型ヒンダードアミン光安定剤、Rが炭素数1~10の直鎖状、または分岐状のアルキル基、メチレン基の場合を、N-R型ヒンダードアミン光安定剤、Rがアルコキシ基の場合を、N-ORヒンダードアミン型光安定剤とする。
【0022】
N-H型ヒンダードアミン光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート(BASF社製 TINUVIN770DF)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート(SONGWON社製 SABOSTAB UV91)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製 ADK STAB LA-57)、N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの重縮合物(SONGWON社製 SABOSTAB UV79)、2,4-ジクロロ-6-(1,1,3,3-テトラメチルブチルアミノ)と1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンとの重縮合物(BASF社製 Chimassоrb944FDL)、N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサメチレンジアミンと2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとN-ブチル-1ーブタンアミンとN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンとの重縮合物(SONGWON社製 SABOSTAB UV40)、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン(BASF社製 Chimassоrb2020FDL)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物(ADEKA社製 ADKSTAB LA-68)、ドデシル 3-(2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘニコサン-20-イル)プロピオネート、テトラデシル 3-(2,2,4,4-テトラメチル-21-オキソ-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ(5.1.11.2)ヘニコサン-20-イル)プロピオネート(CLARIANT社製 HOSTAVIN3030)、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ-(5.1.11.2)ヘニコサン-21-オンとエピクロロヒドリンとの重縮合物(CLARIANT社製 HOSTAVIN N30P)が挙げられる。
【0023】
N-R型ヒンダードアミン光安定剤の具体例としては、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート(BASF社製 TINUVIN292,TINUVIN765)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)n-ブチル3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシベンジルマロネート(BASF社製 TINUVIN144)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸ジメチルエステルとの重縮合物(BASF社製 TINUVIN622SF)、1,5,8,12-テトラキス〔4,6-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン(BASF社製 Chimassоrb119)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β',β'-テトラメチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデンカン―3,9-ジエタノールとの重縮合物(ADEKA社製 ADKSTAB LA-63P)、コハク酸と(4-ヒドロキシ―2,2,6,6-テトラメチルピペリジン―1-イル)エタノールとの重縮合物及び、N,N′,N′′,N′′′-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンの混合物(BASF社製 TINUVIN111FDL)が挙げられる。
【0024】
N-OR型ヒンダードアミン光安定剤の具体例としては、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート(BASF社製 TINUVIN123)、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート(ADEKA社製 ADKSTAB LA-81)が挙げられる。
【0025】
中でも、光学用スチレン系樹脂組成物の透明性、色相への影響が少ないという点で、ヒンダードアミン光安定剤(B)が、N-H型ヒンダードアミン光安定剤、及び/または、N-R型ヒンダードアミン光安定剤であることが好ましく、N-R型ヒンダードアミン光安定剤であることが、より好ましい。ヒンダードアミン光安定剤(B)は、一般に、酸素、紫外線、およびパーオキサイドにより酸化され、ニトロキシラジカルを生じることが知られている。本実施形態において、ヒンダードアミン光安定剤(B)がLED光源の長期使用に対する光安定性を向上できるメカニズムについては解明中であるが、本発明によってヒンダードアミン光安定剤(B)の有効性が見いだされたものである。
【0026】
<酸化防止剤(C)>
光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン系酸化防止剤(C-1)を0.001~0.5質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは0.002~0.4質量部、特に好ましくは0.005~0.3質量部である。このような範囲とすることで、透明性、色相を改善することができる。リン系酸化防止剤(C-1)の含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0.001,0.002,0.003,0.004,0.005,0.01,0.02,0.05,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
リン系酸化防止剤(C-1)とは、基本骨格にフェノール性水酸基を有しない(亜)リン酸エステル類であり、好ましくは三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤(C-1)の具体例としては、2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5,5〕ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1ビフェニル〕-4,4′-ジイルビスホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル亜リン酸エステル等が挙げられ、これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
また、光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、フェノール系酸化防止剤(C-2)を0~0.5質量部含有してもよい。フェノール系酸化防止剤(C-2)の含有量が0.5質量部を超えると、色相が悪化するため、好ましくない。フェノール系酸化防止剤(C-2)の含有量は、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、具体的には例えば、0,0.001,0.002,0.003,0.004,0.005,0.01,0.02,0.05,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
フェノール系酸化防止剤(C-2)とは、基本骨格にフェノール性水酸基を持ち(亜)リン酸エステル類でない酸化防止剤である。フェノール系酸化防止剤(C-2)の具体例としては、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、これらは1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
酸化防止剤には、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンのように、同一分子内にフォスファイト構造とフェノール構造を併せ持つ、リン-フェノール系化合物がある。このような化合物の場合、光学用スチレン系樹脂組成物には、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤のそれぞれを含有すると考え、例えば、スチレン系樹脂(A)100質量部に対して、リン-フェノール系化合物を0.1質量部含有する場合には、リン系酸化防止剤を0.1質量部、フェノール系酸化防止剤を0.1質量部含有すると考える。
【0031】
<その他の成分>
光学用スチレン系樹脂組成物中のt-ブチルカテコール(TBC)は、10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは、5ppm以下である。このような範囲とすることで、色相と透過率に優れる導光板が得られる。TBCの含有量は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0032】
光学用スチレン系樹脂組成物中の6-tert-ブチル-2,4-キシレノール(TBX)は、10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5ppm以下である。このような範囲とすることで、色相と透過率に優れる導光板が得られる。TBXの含有量は、具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20ppmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
光学用スチレン系樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、親水性添加剤、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ブルーイング剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ラウリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘン酸モノグリセライド等の高級脂肪酸グリセライド、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等の離型剤を含んでいてもよい。
【0034】
光学用スチレン系樹脂組成物の温度200℃、49N荷重の条件でのメルトマスフローレート(MFR)は、0.5~5.0g/10分であることが好ましく、より好ましくは、1.0~4.0g/10分である。MFRが0.5g/10分未満では、成形安定性が低下し、MFRが5.0g/10分を超えると強度が不十分となる。
【0035】
光学用スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、好ましくは95~104℃であり、より好ましくは100~104℃である。ビカット軟化温度が95℃未満では耐熱性が不足し、使用環境によっては導光板が変形する可能性がある。
【0036】
<光学用スチレン系樹脂組成物の製造方法>
スチレン系樹脂(A)の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
【0037】
スチレン系樹脂(A)の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤、架橋剤などの重合助剤、その他の重合助剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N′-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N′-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等の脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等のチオカルボン酸類、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸、またはメルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。中でも、分子量調整が容易な点から、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、チオカルボン酸類、多官能メルカプタンが好ましい。
【0038】
連続重合の場合、スチレン系樹脂(A)は、重合工程と、脱揮工程、造粒工程を備える方法によって製造可能である。
【0039】
まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。
【0040】
重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
【0041】
光学用スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)にヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(C-1)、フェノール系酸化防止剤(C-2)を添加することにより製造可能である。ヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(C-1)、フェノール系酸化防止剤(C-2)は、スチレン系樹脂(A)の重合前に原料溶液中に添加してもよいし、スチレン系樹脂(A)を重合後、造粒前に設置された押出機、若しくは静的混合装置で混合してもよい。また、スチレン系樹脂(A)を造粒後のペレットとヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(C-1)、フェノール系酸化防止剤(C-2)をドライブレンドし、溶融混練して製造してもよい。また、ヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(C-1)、フェノール系酸化防止剤(C-2)を予め少量のスチレン系樹脂と共に溶融混練して得たペレット状のマスターバッチを作成し、スチレン系樹脂(A)と該マスターバッチをドライブレンド後、溶融混練し、調整してもよい。
【0042】
光学用スチレン系樹脂組成物中のt-ブチルカテコール又は6-tert-ブチル-2,4-キシレノールの含有量は、スチレン系樹脂(A)の重合開始時における含有量の調整及びその後の脱揮工程等における含有量の調整が可能である。
【0043】
2.導光板
本発明の一実施形態に係る導光板は、上記光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形品である。導光板は、エッジライト型面光源ユニットに用いることが可能な導光板である。
【0044】
<導光板の形状>
導光板は、導光板の表面に凹凸形状を有していてよい。より詳細には、導光板の表面に複数のレンチキュラー形状及び/又はプリズム形状の凸部を有していてよい。凸部は、導光板の少なくとも一つの面に設けられていることが好ましく、特に導光板の前面(発光面)である一つの面に設けられる。他の面についても必要であれば設けてもよいが、導光板の前面(発光面)にのみ設けられていることがより好ましい。
【0045】
ここで、レンチキュラー形状の凸部とは、円弧状の凸部であり、断面の縁形状が円弧状の突条体である。また、プリズム形状とは、円弧状の凸部であり、断面の縁形状が三角山形の突条体である。また、凸部は複数条、互いに平行関係となるように形成されうる。また、凸部は導光板に一体的に形成されうる。
【0046】
導光板の厚みは、0.2~3.0mmであり、好ましくは0.3~2.5mmであり、より好ましくは0.4~2.4mmである。このような範囲内であると、光学用スチレン系樹脂組成物の成形において、優れた押出安定性等の成形性や強度に優れる導光板を製造することが容易である。
【0047】
<光学特性>
導光板の光路長115mmでの波長380~780nmの平均透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは86%以上である。
【0048】
導光板の光路長115mmでのYI値は、好ましくは6.0以下であり、より好ましくは4.0以下である。
【0049】
<導光板の製造方法>
本発明の一実施形態に係る導光板は、上記の光学用スチレン系樹脂組成物を成形して得られ、成形方法としては、シート押出成形や、射出成形、圧縮成形等の公知の方法を用いることができるが、生産性、成形品の大型化が容易という点で、表面形状転写型を備えた連続シート押出成形であることが好ましい。該シート押出成形の例としては、樹脂を加熱溶融状態でフィードブロックに供給し、ダイから連続的に押し出しシートを作成する押出工程と、前記樹脂シートを、圧着ロールと冷却ロールで挟み込む押圧工程、押圧工程後、樹脂シートを冷却ロールに密着させながら搬送する搬送工程を有し、冷却ロールの表面に転写型を備える連続シート押出成形法が挙げられ、該転写型の形状を変更することで、シート表面に任意の凹凸形状を転写することができる。
【0050】
また、導光板は、前面(発光面)に凹凸形状を有していてよく、背面には光を乱反射させる反射加工が施されうる。反射加工としては、例えば、シルク印刷やインクジェット印刷のほか、レーザー照射によりドット形状の凹凸を付与する方法が挙げられ、ドットパターンの印刷には、光を拡散させる微粒子を有するインクを使用することができる。
【0051】
3.エッジライト型面光源ユニット
本発明の一実施形態に係るエッジライト型面光源ユニットは、上記導光板と、該導光板の端面にLED光を供給する光源を有する、エッジライト型面光源ユニットである。エッジライト型面光源ユニットは、液晶表示装置用の面光源装置として好適に用いられる。
【0052】
4.光拡散板
本発明の一実施形態に係る光拡散板は、上記光学用スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形品である。光拡散板は、直下型面光源ユニットに用いることが可能な光拡散板である。
【0053】
<光拡散板の形状>
本発明の一実施形態に係る光拡散板の厚みは、制限されないが、例えば1~3mmである。光拡散板には、その表面に帯電防止剤が塗布されていてもよい。帯電防止剤が塗布されていることによって、光拡散板をバックライト装置に取り付け後、静電気による埃等の付着が抑えられるため、長期間にわたって輝度の低下なく使用することができる。また、本発明の光拡散板には、その両面もしくは方面にエンボス加工等の細かな凹凸形状が形成されていてもよいし、両面もしくは片面にレンチキュラー形状、もしくはプリズム形状が形成されていてもよい。
【0054】
光拡散板には、光学用スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、光拡散剤を0.1~1.0質量部含むことができる。光拡散剤は、光学用スチレン系樹脂組成物と屈折率が異なる粒子であって、入射する光を拡散する効果のあるものであれば用いることができるが、例えば、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などの有機粒子やガラスビーズ、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、タルクなどの無機粒子を用いることができる。中でも、アクリル系重合体粒子、スチレン系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
<光拡散板の製造方法>
本発明の一実施形態に係る光拡散板は、上記の光学スチレン系樹脂組成物を、押出成形、射出成形等、種々の方法により成形することにより製造可能であるが、好ましくは押出成形によって製造する。押出成形の例としては、光学スチレン系樹脂組成物を単軸押出機、または二軸押出機を用いて溶融混錬し、Tダイスより連続的に押出し後、冷却ロールユニットにより冷却固化する方法が上げられる。光拡散板の表面に凹凸形状を形成させる場合には、冷却ロールの表面に転写型を備え、該転写型の形状を変更することで、任意の凹凸形状を形成させることができる。また、光拡散板の両面、片面に表面層を積層する場合には、共押出法、貼付法、熱接着法、溶剤接着法、キャスト法、表面塗布法等の方法を採用することができる。
【0056】
5.直下型面光源ユニット
本発明の一実施形態に係る直下型面光源ユニットは、上記光拡散板と、該光拡散板にLED光を供給する光源を有する、直下型面光源ユニットである。直下型面光源ユニットは、液晶表示装置用の面光源装置として好適に用いられる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。また、これらは何れも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0058】
1.光学用スチレン系樹脂組成物の製造
[実施例1]
完全混合型撹拌槽である第1反応器と静的混合器付プラグフロー型反応器である第2反応器を直列に接続して重合工程を構成し、スチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を30リットル、第2反応器を12リットルとした。スチレン(TBC濃度11μg/g)51質量%、メタクリル酸メチル(TBX濃度7μg/g)39質量%、エチルベンゼン10質量%の原料組成に対して、第1反応器の入口で、重合開始剤として、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(日油株式会社製:パーブチルI)150ppm、連鎖移動剤として、n-ドデシルメルカプタン(アルケマ株式会社製)500ppmの添加濃度(いずれも単量体全体に対する質量基準の濃度)となるように調整した後、原料溶液を128℃に設定した第1反応器に、8.0kg/hにて連続的に供給した。さらに、得られた重合溶液を第2反応器に連続的に供給し、重合を完結させた。このときの単量体の重合率は70%であった。なお、第2反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分を130℃、出口部分で145℃となるよう調整した。
続いて、第2反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、樹脂温度が220℃となるよう予熱器の温度を調整し、0.8kPaの圧力にて、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した。得られた溶融ポリマーを押出機に連続的に供給し、添加剤のフィード口から、重合体100質量部に対して、ヒンダードアミン光安定剤(770)を0.1質量部にて添加し、設定温度220℃にて混合した後、多孔ダイよりストランド状に押出して、コールドカット方式にて、ストランドを冷却及び切断しペレット化した。得られた光学用スチレン系樹脂組成物中のTBC濃度は1.5μg/g、TBX濃度は0.2μg/gであった。また、重量平均分子量(Mw)は、17万であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は2.0であった。
【0059】
[実施例2~17及び比較例1~6]
原料溶液の組成、及び重合条件を表1に示すように変更し、ヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(C-1)、フェノール系酸化防止剤(C-2)、紫外線吸収剤(D)の配合を表2(表2-1及び表2-2)~表3のように変更した以外は実施例1と同様に光学用スチレン系樹脂組成物及び導光板を製造した。各種測定及び評価結果を表2(表2-1及び表2-2)~表3に示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
なお、表2(表2-1及び表2-2)~表3中のヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(C-1)、フェノール系酸化防止剤(C-2)、紫外線吸収剤(D)についてはそれぞれ下記の通りである。
【0065】
(ヒンダードアミン光安定剤(B))
770:ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート(BASF社製 TINUVIN770DF)
944:2,4-ジクロロ-6-(1,1,3,3-テトラメチルブチルアミノ)と1,3,5-トリアジン・N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンの重縮合物(BASF社製 Chimassоrb944FDL)
292:メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート:25%とビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)セバケート:75%の混合物(BASF社製 TINUVIN292)
123:ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート(BASF社製 TINUVIN123)
【0066】
(リン系酸化防止剤(C-1))
168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製 Irgafos 168)
HP-10:2,2′-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス(ADEKA社製 ADKSTAB HP-10)
126:ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(BASF社製 Irgafos 126)
【0067】
(フェノール系酸化防止剤(C-2))
1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製 Irganox 1076)
【0068】
(紫外線吸収剤(D))
P:2-(2-ヒドロキシ―5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製 TINUVIN P)
【0069】
2.評価
表2(表2-1及び表2-2)~3に記載の光学用スチレン系樹脂組成物の評価は、下記の方法により行った。
【0070】
<メルトマスフローレート(MFR)>
メルトマスフローレートは、JIS K 7210に従って、温度200℃、49N荷重の条件で測定した。
【0071】
<ビカット軟化温度>
ビカット軟化温度は、JIS K 7206に従って、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定した。
【0072】
<光学用スチレン系樹脂組成物中TBC及びTBXの含有量>
光学用スチレン系樹脂組成物0.2gを少量のTHFに溶解した後、BSTFA(M,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド)200μLを添加し、トリメチルシリル誘導体化処理を実施し、THFにて10mL定容した後、遠心分離によって分離した上澄み液について、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)にて、以下の条件で測定した。なお、濃度の決定には、予め作成した検量線を用いた。
GC装置 :Agilent社製 7890A
カラム :Agilent社製 DB-5ms(0.25mm i.d.×30m)液相膜厚0.25μm
カラム温度:50℃(1min)→(20℃/min昇温)→320℃(6.5min)計20min
注入口 :300℃、1.5mL/min、(スプリット比1:5)
注入量 :1μL
MS装置 :Agilent社製 5975C
インターフェイス温度:320℃
MS検出条件:SIM測定 TBC(定量用m/z 295、確認用m/z 310)
【0073】
<光学用スチレン系樹脂組成物中ヒンダードアミン光安定剤(B)、リン系酸化防止剤(B-1)、フェノール系酸化防止剤(B-2)の含有量>
光学用スチレン系樹脂組成物1.0gを20mLのTHFに完全に溶解した後、メタノールを5mL滴下し、20分間攪拌した。4000rpmで10分間、遠心分離を行い、分離した上澄み液について、ガスクロマトグラフィー(GC)にて、以下の条件で測定した。なお、濃度の決定には、予め作成した検量線を用いた。
GC装置 : 島津製作所社製 GC2010 Plus
カラム : DB-1(30m×0.25mm i.d.、df=0.10μm)
カラム温度 :240℃(1min)→(10℃/min昇温)→320℃(15min)
注入口 :320℃、1.02mL/min(スプリット比1:5)
注入量 :1μL
【0074】
<重量平均分子量(Mw)>
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
【0075】
3.導光板の製造及び評価
<導光板の製造>
前記光学用スチレン系樹脂組成物を、スクリュー径90mm、L/D=32の単軸ベント付き押出機に供給し、200~235℃で溶融混練した後、リップ幅1000mm、リップ開度3.0mmのTダイにて、Tダイ温度245~250℃で吐出し、縦型3本冷却ロールで冷却固化後、端面をトリミングし、幅800mm、厚み2.0mmの導光板を得た。
【0076】
<導光板の評価>
表2~表3における導光板の平均透過率、YI値、寸法安定性(吸湿変形)、LED耐久性について下記のように評価した。
【0077】
<導光板の平均透過率及びYI値>
平均透過率及びYI値は、次の手順にて測定を行った。
前記で得られた導光板から115mm×85mmの試験片を切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。平均透過率(全光線透過率)は、波長380~780nmにおける分光透過率の平均として算出した。
【0078】
<寸法安定性(吸湿変形)>
前記で得られた導光板から、200mm×300mmの試験片を切り出し、試験片を温度60℃、相対湿度90%の条件で500時間保管し、保管前後での長辺の寸法変化を測定し、以下の式により変形率を計算した。
変形率=((保管後の長辺長さ)-(保管前の長辺長さ))÷(保管前の長辺の長さ)×100(%)
変化率が0.10%未満のものを〇、0.10~0.15%のものを△、0.15%超のものを×として、導光板の寸法安定性(吸湿変化)を評価した。
【0079】
<LED耐久性>
前記で得られた導光板から115mm×85mmの試験片を切り出し、端面を端面研磨機(メガロテクニカ株式会社製GCPB-500)を用い、8000rpmの速度で回転するダイヤモンド刃で2.0m/minの送り速度で0.2mm研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を作成した。研磨後の板状成形品について、端面より0.5mmの位置にTV用フラット型青色LED光源(ピーク波長445nm)を配置し、80℃の環境下、0.05W/mm2の入力電流にて、500h、LED光を照射した。試験後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。試験後のYI値から試験前のYI値を差し引いた値をΔYIとした。また、試験後の板状成形品のLED入光部を目視で確認し、変化がないものを〇、炭化が発生したものを×として、LED耐久性を評価した。
【0080】
実施例1~17においては、透明性、色相、寸法安定性が良好で、LED暴露後の炭化の発生が無く、且つ色相安定性に優れていた。