(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-17
(45)【発行日】2024-12-25
(54)【発明の名称】荷重検出装置及び荷重検出装置のゲイン調整方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20241218BHJP
G01L 5/1627 20200101ALI20241218BHJP
【FI】
G01L1/22 A
G01L5/1627
(21)【出願番号】P 2024530171
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022026039
(87)【国際公開番号】W WO2024004096
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 翼
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-271163(JP,A)
【文献】特開平08-247868(JP,A)
【文献】特開2006-112948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0085176(US,A1)
【文献】特開2020-112455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22
G01L 5/1627
G01L 9/04
G01L 25/00
G01L 27/00
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみゲージを接続したブリッジ回路を有するロードセルから出力される差動信号に基づいて測定対象に加えられる荷重を検出する荷重検出装置において、
前記ロードセルへ伝送する励起信号を増幅させる励起側差動増幅回路と、
前記ロードセルから出力される第1差動信号を増幅させる計測側差動増幅回路と、
前記励起側差動増幅回路及び前記計測側差動増幅回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記計測側差動増幅回路から出力される第2差動信号に基づいて計測される計測値が所定範囲内となるように、前記励起側差動増幅回路による励起側ゲインとして所定間隔で設定された複数の励起側ゲイン候補値、及び、前記計測側差動増幅回路による計測側ゲインとして所定間隔で設定された複数の計測側ゲイン候補値のなかからそれぞれ前記励起側ゲイン及び前記計測側ゲインを選択し、出力ゲインを調整するゲイン調整処理を実行する、
荷重検出装置。
【請求項2】
前記荷重検出装置は、車両のタイヤに作用する複数の分力を検出する装置であり、
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
現在時刻より前の所定期間内に前記車両が走行状態であり、かつ、当該所定期間内の前記計測値の最大値である最大計測値が、前記荷重
検出装置が計測可能な所定の計測可能最大値未満の場合に、
現在設定されている前記出力ゲインに応じて定められた、前記計測値を保障可能な許容最大計測値に対する前記最大計測値の比である第1の比が、現在設定されている前記出力ゲインに対する1段階小さい前記出力ゲインの比である第2の比よりも小さいか否かを判定し、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が所定の第1時間以上継続した場合に前記出力ゲインを大きくする、
請求項1に記載の荷重検出装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が前記所定の第1時間以上継続する前であっても、
前記車両が減速状態にあり、前記車両に対して所定方向に作用する加速度に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記所定方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第1閾値未満である状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを大きくする、
請求項2に記載の荷重検出装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が前記所定の第1時間以上継続する前であっても、
前記車両が減速状態にあり、前記車両に対して車幅方向に作用する横方向加速度及び遠心力の加速度の和に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記車幅方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第1閾値未満である状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを大きくする、
請求項3に記載の荷重検出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が前記所定の第1時間以上継続する前であっても、
前記車両の直進走行時に前記車両が減速状態にあり、前記車両に対して前後方向に作用する前後加速度の絶対値に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記前後方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第1閾値未満である状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを大きくする、
請求項3に記載の荷重検出装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
前記所定期間内に前記車両が走行状態であり、かつ、当該所定期間内の前記最大計測値が前記所定の計測可能最大値以上である場合に、前記出力ゲインを小さくする、
請求項2に記載の荷重検出装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
前記車両に対して所定方向に作用する加速度に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記所定方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第2閾値を超える状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを小さくする、
請求項2に記載の荷重検出装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記車両が加速状態にあり、前記車両に対して車幅方向に作用する横方向加速度及び遠心力の加速度の和に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記車幅方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第2閾値を超える状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを小さくする、
請求項7に記載の荷重検出装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記車両の直進走行が継続する場合、前記車両に対して前後方向に作用する前後加速度の絶対値に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記前後方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第2閾値を超える状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを小さくする、
請求項7に記載の荷重検出装置。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
前記励起側ゲインを大きくすることができるか否かを判定し、
前記励起側ゲインを大きくすることができる場合、前記計測側ゲインよりも前記励起側ゲインを優先的に大きくする、
請求項1に記載の荷重検出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記ひずみゲージに負荷がかかっておらず、かつ、適正姿勢で保持されているか否かを判定し、
前記ひずみゲージに負荷がかかっておらず、かつ、適正姿勢で保持されている場合に、前記計測値のゼロ点オフセット処理を実行する、
請求項1に記載の荷重検出装置。
【請求項12】
ひずみゲージを接続したブリッジ回路を有するロードセルから出力される差動信号に基づいて測定対象に加えられる荷重を検出する荷重検出装置のゲインを調整するゲイン調整方法において、
前記ロードセルへ伝送する励起信号を励起側差動増幅回路により増幅させることと、
前記ロードセルから出力される第1差動信号を計測側差動増幅回路により増幅させることと、
前記計測側差動増幅回路から出力される第2差動信号に基づいて計測される計測値が所定範囲内となるように、前記励起側差動増幅回路による励起側ゲインとして所定間隔で設定された複数の励起側ゲイン候補値、及び、前記計測側差動増幅回路による計測側ゲインとして所定間隔で設定された複数の計測側ゲイン候補値のなかからそれぞれ前記励起側ゲイン及び前記計測側ゲインを選択し、出力ゲインを調整することと、
を含む、荷重検出装置のゲイン調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロードセルから出力される差動信号に基づいて測定対象に加えられる荷重を検出する荷重検出装置及び荷重検出装置のゲイン調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷重によって生じる歪みにより抵抗値が変化するひずみゲージを用いたロードセルが広く用いられている。例えば荷重によるひずみゲージの抵抗値の変化を電気信号に変換する変換回路であるブリッジ回路にひずみゲージを組み込み、抵抗値の変化を差動信号として出力するように構成されたロードセルが知られている。このようなロードセルを用いて荷重を測定する場合、出力される差動信号を増幅する増幅器が用いられることがある。
【0003】
例えば特許文献1には、ブリッジ回路の出力電圧を精度よく検出可能な検出装置が開示されている。具体的に、特許文献1の検出装置は、ブリッジ回路と、ブリッジ回路に電圧を印加する電源と、ハイインピーダンスの入力端子からブリッジ回路の出力電圧を入力し、入力した出力電圧を増幅して出力する計装アンプと、計装アンプにより増幅された出力電圧を入力し、出力電圧に基づいて物理量を算出する物理量算出部を備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両に搭載されるロードセルとして例示される、車軸に設けられて車輪に加えられる荷重を検出する力検出センサは、出力範囲(出力のレンジ)が広いため、ロードセルからの出力に応じてゲインを適切に設定することが必要となる。例えばロードセルからの出力が小さいにもかかわらず設定されているゲインが小さいと、荷重の検出精度が低下するおそれがある。一方、ロードセルからの出力が大きいにもかかわらず設定されているゲインが大きいと、検出装置の計測範囲を超えるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、ロードセルの出力範囲が広い場合であっても、荷重検出装置の計測値を所定の計測範囲内とし、かつ、荷重を精度よく検出可能な荷重検出装置及び荷重検出装置のゲイン調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、
ひずみゲージを接続したブリッジ回路を有するロードセルから出力される差動信号に基づいて測定対象に加えられる荷重を検出する荷重検出装置において、
前記ロードセルへ伝送する励起信号を増幅させる励起側差動増幅回路と、
前記ロードセルから出力される第1差動信号を増幅させる計測側差動増幅回路と、
前記励起側差動増幅回路及び前記計測側差動増幅回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記計測側差動増幅回路から出力される第2差動信号に基づいて計測される計測値が所定範囲内となるように前記励起側差動増幅回路による励起側ゲイン及び前記計測側差動増幅回路による計測側ゲインの少なくともいずれか一方のゲインを調整して出力ゲインを調整するゲイン調整処理を実行する、荷重検出装置が提供される。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、
ひずみゲージを接続したブリッジ回路を有するロードセルから出力される差動信号に基づいて測定対象に加えられる荷重を検出する荷重検出装置のゲインを調整するゲイン調整方法において、
前記ロードセルへ伝送する励起信号を励起側差動増幅回路により増幅させることと、
前記ロードセルから出力される第1差動信号を計測側差動増幅回路により増幅させることと、
前記計測側差動増幅回路から出力される第2差動信号に基づいて計測される計測値が所定範囲内となるように前記励起側差動増幅回路による励起側ゲイン及び前記計測側差動増幅回路による計測側ゲインの少なくともいずれか一方のゲインを調整して出力ゲインを調整することと、を含む、荷重検出装置のゲイン調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本開示によれば、ロードセルの出力範囲が広い場合であっても、荷重検出装置の計測値を所定の計測範囲内とし、かつ、荷重を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ロードセル(6分力検出器)の構成例を示す断面図である。
【
図2】ロードセルにおけるひずみゲージの配置を示す模式図である。
【
図3】ロードセルのブリッジ回路の構成例を示す説明図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る荷重検出装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5】同実施形態に係る荷重検出装置のゲイン調整方法による事前設定処理を示すフローチャートである。
【
図6】同実施形態に係る荷重検出装置のゲイン調整方法によるゲインフィードバック調整処理を示すフローチャートである。
【
図7】同実施形態に係る荷重検出装置のゲイン調整方法による励起側ゲイン及び計測側ゲインの設定処理を示すフローチャートである。
【
図8】同実施形態に係る荷重検出装置のゲイン調整方法によるゲインフィードバック調整処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図9】出力ゲインを固定し、ゲイン調整をしない場合の基本計測値を示す説明図である。
【
図10】同実施形態に係る荷重検出装置による出力ゲインを大きくする場合の計測値を示す説明図である。
【
図11】出力ゲインを固定し、ゲイン調整をしない場合の基本計測値を示す説明図である。
【
図12】同実施形態に係る荷重検出装置による出力ゲインを小さくする場合の計測値を示す説明図である。
【
図13】同実施形態に係る荷重検出装置による励起側ゲイン及び計測側ゲインの調整による出力ゲインの調整をした例を示す説明図である。
【
図14】同実施形態に係る荷重検出装置のゲイン調整方法によるゲインフィードフォワード調整処理を示すフローチャートである。
【
図15】同実施形態に係る荷重検出装置のゲイン調整方法によるゼロ点オフセット処理を示すフローチャートである。
【
図16】同実施形態に係る荷重検出装置による出力ゲインの調整及びゼロ点オフセット処理を実施した場合の計測値を示す説明図である。
【
図17】変形例の6分力検出器におけるひずみゲージの配置を示す模式図である。
【
図18】二軸せん断ひずみゲージのゲージパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<<1.本開示の実施の形態の概要>>
<1-1.本開示の背景の詳述>
はじめに、本開示の技術が創出された背景を説明する。なお、以下に説明する背景は、本開示の技術を適用可能なロードセルの構成の一態様を示すものに過ぎず、本開示を適用可能なロードセルは、以下に例示される構成のロードセルに限定されるものではない。
【0013】
自動車等の車両の車輪に加えられる荷重として、車両の前後方向(以下、「x軸方向」ともいう)、車幅方向(以下、「y軸方向」ともいう)及び高さ方向(以下、「z軸方向」ともいう)方向に加えられる荷重(Fx,Fy,Fz)と、x軸、y軸及びz軸それぞれの軸周りのモーメント(Mx,My,Mz)とを検出する6分力検出器が知られている。このような6分力検出器は、分力の方向によってひずみゲージの感度に差が生じやすい。
【0014】
また、車輪に加えられる荷重の最大値が大きいこともあり、上記の6分力検出器では、出力の大きいひずみゲージが用いられる。このため、6分力検出器の出力範囲は広く、荷重検出装置の計測範囲を超えるおそれがある。これに対応するため、ロードセルの出力を増幅させるゲインを小さくする必要があるが、単にゲインの設定を小さくしてしまうと、6分力検出器からの出力が小さい場合には計測精度が低下することになる。反対に、6分力検出器からの出力が小さい方に合わせてゲインの設定を大きくしてしまうと、6分力検出器からの出力が大きい場合には、荷重検出装置の計測範囲を超えることになる。
【0015】
本開示の技術は、このような背景の下、ロードセルの出力範囲が広い場合であっても、ロードセルの出力に合わせてゲインを自動で設定し、荷重検出装置の計測範囲内で荷重を精度よく検出することが可能な荷重検出装置及び荷重検出装置のゲイン調整方法並びにコンピュータプログラムを記録した記録媒体を提供するものである。
【0016】
<1-2.本開示の実施の形態の特徴>
(1-2-1)本開示の実施の形態は、
ひずみゲージを接続したブリッジ回路を有するロードセルから出力される差動信号に基づいて測定対象に加えられる荷重を検出する荷重検出装置において、
前記ロードセルへ伝送する励起信号を増幅させる励起側差動増幅回路と、
前記ロードセルから出力される第1差動信号を増幅させる計測側差動増幅回路と、
前記励起側差動増幅回路及び前記計測側差動増幅回路を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記計測側差動増幅回路から出力される第2差動信号に基づいて計測される計測値が所定範囲内となるように前記励起側差動増幅回路による励起側ゲイン及び前記計測側差動増幅回路による計測側ゲインの少なくともいずれか一方のゲインを調整して出力ゲインを調整するゲイン調整処理を実行する、構成を有している。
【0017】
なお、本開示の実施の形態は、ロードセルの出力に合わせてゲインを自動で設定する荷重検出装置のゲイン調整方法、そのようなゲイン調整処理を制御装置に実行させるコンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを記録した記録媒体としても実現可能である。
【0018】
この構成により、荷重検出装置による計測値が大きくなるときに出力ゲインを小さくし、荷重検出装置による計測値が小さくなるときに出力ゲインを大きくすることができ、ユーザ等による調整によらずに自動で出力ゲインを調整することができる。特に、励起側ゲイン及び計測側ゲインの少なくともいずれか一方のゲインを調整して出力ゲインを調整することにより、計測値を所定範囲に調整しつつ、計測される荷重の解像度を調整することができる。したがって、出力範囲の広いロードセルを用いる場合であっても、荷重の検出精度を高めることができる。
【0019】
なお、「励起側ゲイン」は、励起側差動増幅回路によるゲインを示し、「計測側ゲイン」は、計測側差動増幅回路によるゲインをいう。また、「出力ゲイン」は、「励起側ゲイン」と「計測側ゲイン」とを乗じたトータルのゲインをいう。
【0020】
また、本明細書において、制御装置により設定される励起側ゲイン及び計測側ゲインの値をそれぞれ「励起側ゲイン設定値」及び「計測側ゲイン設定値」という。また、「励起側ゲイン設定値」と「計測側ゲイン設定値」とを乗じたトータルのゲインを「出力ゲイン設定値」という。
【0021】
また、「励起信号」、「第1差動信号」及び「第2差動信号」はそれぞれ電圧信号を示し、「計測値」は電圧値を示す。
【0022】
(1-2-2)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、前記励起側ゲインとして所定間隔で設定された複数の励起側ゲイン候補値、及び、前記計測側ゲインとして所定間隔で設定された複数の計測側ゲイン候補値のなかからそれぞれ前記励起側ゲイン及び前記計測側ゲインを選択し、前記出力ゲインを設定してもよい。
【0023】
この構成により、それぞれあらかじめ設定された励起側ゲイン候補値及び計測側ゲイン候補値の組み合わせにより、ブリッジ回路からの出力を増幅させる出力ゲインが設定され、出力ゲインを調整するための制御装置の負荷を軽減することができる。また、励起側ゲイン及び計測側ゲインをそれぞれ調整することにより、計測値の範囲と計測される荷重の解像度とのバランスを取りつつ、出力ゲインを調整することができる。
【0024】
なお、「励起側ゲイン候補値」は、あらかじめ設定された励起側ゲインの設定値の候補を示し、「計測側ゲイン候補値」は、あらかじめ設定された計測側ゲインの設定値の候補を示す。また、「出力ゲイン候補値」は、「励起側ゲイン候補値」と「計測側ゲイン候補値」とを乗じたトータルのゲインの値をいう。
【0025】
(1-2-3)また、本開示の実施の形態において、
前記荷重検出装置は、車両のタイヤに作用する複数の分力を検出する装置であり、
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
現在時刻より前の所定期間内に前記車両が走行状態であり、かつ、当該所定期間内の前記計測値の最大値である最大計測値が、前記荷重検出装置が計測可能な所定の計測可能最大値未満の場合に、
現在設定されている前記出力ゲインに応じて定められた、前記計測値を保障可能な許容最大計測値に対する前記最大計測値の比である第1の比が、現在設定されている前記出力ゲインに対する1段階小さい前記出力ゲインの比である第2の比よりも小さいか否かを判定し、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が所定の第1時間以上継続した場合に前記出力ゲインを大きくしてもよい。
【0026】
この構成により、出力ゲインを大きくしても直近の最大計測値が許容最大計測値を超えない状態が所定の第1時間以上継続した場合に出力ゲインが大きくされるため、計測値が許容最大計測値を超えるおそれを低減することができる。これにより、計測値が許容最大計測値を超えない範囲でブリッジ回路からの出力が増幅され、荷重の検出精度を高めることができる。
【0027】
なお、「計測可能最大値」は、荷重検出装置に備えられた機器や素子の特性から定められる、計測精度を保証し得る計測値の最大値を示す。また、「許容最大計測値」は、設定される出力ゲインに応じて任意に定められる計測値の最大値を示す。
【0028】
(1-2-4)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が前記所定の第1時間以上継続する前であっても、
前記車両が減速状態にあり、前記車両に対して所定方向に作用する加速度に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記所定方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第1閾値未満である状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを大きくしてもよい。
【0029】
この構成により、出力ゲインを大きくしても直近の最大計測値が許容最大計測値を超えない状態が所定の第1時間以上継続する前であっても、車両の走行状態から、計測値が許容最大計測値を超える状況ではないと判断できる場合には、速やかに出力ゲインを大きくすることができる。これにより、計測値が許容最大計測値を超えない範囲でブリッジ回路からの出力が増幅され、荷重の検出精度を高めることができる。
【0030】
なお、「重力加速度を基準とする第1閾値」は、重力加速度に対して任意に設定された係数を乗じて得られる値であって、車両運動上、タイヤの限界に近い走行をしていないことを簡易的に示す演算値である。例えばタイヤと路面間の摩擦係数を推定できていたり、路面状態を事前に推定できていたりする場合には、車両がスリップする限界を時々刻々と推定できることがあるが、そのときの荷重(N)に基づいて係数を動的に算出することにより、車両がスリップする限界を推定することが可能となる。
【0031】
(1-2-5)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が前記所定の第1時間以上継続する前であっても、
前記車両が減速状態にあり、前記車両に対して車幅方向に作用する横方向加速度及び遠心力の加速度の和に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記車幅方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第1閾値未満である状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを大きくしてもよい。
【0032】
この構成により、車両に対して横方向加速度が発生する走行状態において、速やかに出力ゲインを大きくすることができる。
【0033】
(1-2-6)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記第1の比が前記第2の比よりも小さい状態が前記所定の第1時間以上継続する前であっても、
前記車両の直進走行時に前記車両が減速状態にあり、前記車両に対して前後方向に作用する前後加速度の絶対値に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記前後方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第1閾値未満である状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを大きくしてもよい。
【0034】
この構成により、車両に対して前後加速度が発生する走行状態において、速やかに出力ゲインを大きくすることができる。
【0035】
(1-2-7)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
前記所定期間内に前記車両が走行状態であり、かつ、当該所定期間内の前記最大計測値が前記所定の計測可能最大値以上である場合に、前記出力ゲインを小さくしてもよい。
【0036】
この構成により、直近の最大計測値が許容最大計測値以上の場合に出力ゲインが小さくされるため、計測値が許容最大計測値を超えるおそれが少ない間は出力ゲインが大きく維持され、荷重の検出精度を高めることができる。
【0037】
(1-2-8)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
前記車両に対して所定方向に作用する加速度に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記所定方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第2閾値を超える状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを小さくしてもよい。
【0038】
この構成により、車両の走行状態から、計測値が許容最大計測値を超える可能性が大きい状況にあると判断できる場合には、速やかに出力ゲインを小さくすることができる。これにより、計測値が許容最大計測値を超えないよう出力ゲインが調整され、荷重の検出精度を高めることができる。
【0039】
なお、「重力加速度を基準とする第2閾値」は、重力加速度に対して任意に設定された係数を乗じて得られる値であって、車両運動上、タイヤの限界に近い走行をしていることを簡易的に示す演算値である。例えばタイヤと路面間の摩擦係数を推定できていたり、路面状態を事前に推定できていたりする場合には、車両がスリップする限界を時々刻々と推定できることがあるが、そのときの荷重(N)に基づいて係数を動的に算出することにより、車両がスリップする限界を推定することが可能となる。
【0040】
(1-2-9)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記車両が加速状態にあり、前記車両に対して車幅方向に作用する横方向加速度及び遠心力の加速度の和に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記車幅方向に作用する横力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第2閾値を超える状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを小さくしてもよい。
【0041】
この構成により、車両に対して横方向加速度が発生する走行状態において、速やかに出力ゲインを小さくすることができる。
【0042】
(1-2-10)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記車両の直進走行が継続する場合、前記車両に対して前後方向に作用する前後加速度の絶対値に前記車両の重量を乗じた値、又は、それぞれの前記タイヤに対して前記前後方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が前記第2閾値を超える状態が前記所定期間継続した場合に、前記出力ゲインを小さくしてもよい。
【0043】
この構成により、車両に対して前後加速度が発生する走行状態において、速やかに出力ゲインを小さくすることができる。
【0044】
(1-2-11)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記ゲイン調整処理において、
前記励起側ゲインを大きくすることができるか否かを判定し、
前記励起側ゲインを大きくすることができる場合、前記計測側ゲインよりも前記励起側ゲインを優先的に大きくしてもよい。
【0045】
この構成により、計測される荷重の解像度を低下させることなくブリッジ回路の出力を増幅させることができる。これにより、荷重の検出精度を低下さることなくブリッジ回路の出力を増大させることができる。
【0046】
(1-2-12)また、本開示の実施の形態において、
前記制御装置は、
前記ひずみゲージに負荷がかかっておらず、かつ、適正姿勢で保持されているか否かを判定し、
前記ひずみゲージに負荷がかかっておらず、かつ、適正姿勢で保持されている場合に、前記計測値のゼロ点オフセット処理を実行してもよい。
【0047】
この構成により、制御装置が、ひずみゲージに対して荷重が加えられていない状態と判定したときに、自動で計測値のゼロ点オフセット処理が実行され、荷重の検出精度をさらに高めることができる。
【0048】
<<2.本開示の実施の形態の詳細>>
<2-1.ロードセル(6分力検出器)の構成例>
続いて、本開示の実施の形態に係る荷重検出装置を適用可能なロードセルの構成例を説明する。
【0049】
本実施形態では、ロードセルの一態様として、車両の車輪に加えられる6分力(Fx,Fy,Fz、Mx,My,Mz)を検出可能な6分力検出器に本開示の技術を適用した例を説明する。本実施形態に係るロードセルは、車輪に加えられる6分力を検出する6分力検出器であって、サスペンション装置に取り付けられて自動車等の車両の車輪を回転可能に支持するハブベアリングユニットに組み込まれている。
【0050】
図1は、6分力検出器を含むハブベアリングユニットを、車軸を含む平面で切断した断面図を示す。
図1において、右側が車幅方向外側を示し、左側が車幅方向内側を示している。なお、
図1に示すハブベアリングユニットの構成はあくまでも一例にすぎず、
図1に示した構成に限定されるものではない。
【0051】
ハブベアリングユニット100は、ハブ110、外筒120、内筒130、転動体140、基部150及び6分力検出器1を備えて構成されている。ハブ110は、リム及びタイヤからなる図示しない車輪のリムディスク部分が締結される部材である。ハブ110は、筒状部111、フランジ部112、カラー部113等を一体に形成して構成されている。
【0052】
筒状部111は、車輪の回転中心軸(車軸)と同心の円筒状に形成されている。筒状部111は、内筒130、感受体10、基部150の内径側に挿入されている。筒状部111の内周面部における車幅方向外側の領域には、図示しないドライブシャフトのスプライン軸部と嵌合するスプライン穴111aが形成されている。フランジ部112は、筒状部111の車幅方向外側の端部から、外径側に鍔状に張り出して形成された円盤状の部分である。フランジ部112の車幅方向外側の面部は、リムディスクが締結される基部として機能する。フランジ部112には、ハブボルトが挿入される開口112aが、所定のピッチ円径上に例えば5個程度、周方向に等間隔に形成されている。カラー部113は、フランジ部112の車幅方向外側の面部から突出した車軸と同心の円筒状の部分である。カラー部113は、リムディスクの中央部に形成された円形開口であるセンターボアと嵌合し、車輪の取付精度を向上させる。
【0053】
外筒120、内筒130、転動体140は、共働して車輪を回転可能に支持する転がり軸受(ハブベアリング)を構成する。外筒120は、筒状部121、フランジ部122等を一体に形成して構成されている。筒状部121は、車軸と同心の円筒状の部分である。筒状部121の内周面には、転動体140を案内する軌道面が形成されている。筒状部121の車幅方向内側の端部は、内筒130の筒状部131の車幅方向内側の端部に対して、車幅方向内側へ張り出して形成されている。
【0054】
フランジ部122は、筒状部121の車幅方向外側の端部から外径側に鍔状に張り出して形成されている。フランジ部122は、ハブ110のフランジ部112が締結固定される部分である。フランジ部122の車幅方向外側の面部は、ハブ110のフランジ部112の車幅方向内側の面部と当接する。フランジ部122は、ハブ110の開口112aと同心に形成されたネジ穴122aを有する。ネジ穴122aには、車輪の固定に用いられる図示しないハブボルトが締結される。
【0055】
内筒130は、筒状部131、フランジ部132等を一体に形成して構成されている。筒状部131は、車軸と同心の円筒状の部材であって、外筒120の筒状部121の内径側に挿入されている。筒状部131の外周面と、外筒120の筒状部121の内周面との間には、所定の間隔が設けられている。筒状部131の外周面には、転動体140を案内する軌道面が形成されている。フランジ部132は、筒状部131の車幅方向外側の端部から内径側に張り出して形成されている。フランジ部132は、感受体10の第1フランジ12の車幅方向外側の端部を保持するものである。転動体140は、外筒120と内筒130の軌道面の間に組み込まれた軸受である。転動体140は、外筒120と内筒130との間で転動体140の位置決めを行う保持器141及び保持器142とともに、外筒120と内筒130との間に組み込まれている。
【0056】
基部150は、サスペンション装置の図示しないアップライト(ハブナックル)にハブベアリングユニット100を締結固定する部分である。基部150は、筒状部151、フランジ部152、凹部153、突出部154等を一体に形成して構成されている。筒状部151は、車軸と同心の円筒状の部材であって、ハブ110の筒状部111の車幅方向内側の端部が挿入されている。ハブ110の筒状部111の外周面は、筒状部151の内周面と径方向に所定の間隔を隔てて対向して配置されている。
【0057】
フランジ部152は、筒状部151の車幅方向外側の端部から外径側に鍔状に張り出して形成されている。フランジ部152は、基部150を図示しないアップライトに締結する締結面部である。フランジ部152には、アップライトへの締結に用いられる複数のボルトが挿入される図示しない開口が周方向に分布して複数形成されている。フランジ部152の内部には、感受体10の円筒部11の外周面が配置される空間部内から、フランジ部152の外周縁部にかけて、ひずみゲージに接続された配線などが配置される貫通孔152bが形成されている。
【0058】
凹部153は、基部150の内周面のうち、軸方向においてフランジ部152に相当する領域の内径を段状に拡大して形成された部分である。凹部153は、感受体10の第2フランジ13を保持する部分である。突出部154は、フランジ部152の径方向における中間部分から、車幅方向外側へ突出して形成された円筒状の部分である。突出部154の外周面は、外筒120の筒状部121の車幅方向内側の端部における内周面と径方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
【0059】
6分力検出器1は、車輪に作用する直交3軸方向の荷重及び直交3軸回りのモーメントを検出可能なロードセルである。6分力検出器1は、実質的に円筒状に形成された感受体10及びこの感受体10に設けられた複数のひずみゲージ及びこのひずみゲージを含むブリッジ回路を有して構成されている。
【0060】
感受体(センサコア)10は、円筒部11、第1フランジ12、第2フランジ13等を有して形成されている。円筒部11は、所定の軸方向長さにわたって内径及び外径が実質的に一定である円筒状に形成された部分であって、後述する複数のひずみゲージが貼付(接着)される部分である。第1フランジ12は、円筒部11の車幅方向外側の端部に設けられ、円筒部11に対して外径側及び内径側にそれぞれ張り出して形成された部分である。第1フランジ12は、外周面が内筒130の筒状部131の車幅方向外側の端部近傍における内周面と当接し、端面がフランジ部132の車幅方向内側の面部に突き当たった状態で、内筒130に固定されている。
【0061】
第2フランジ13は、円筒部11の車幅方向内側の端部に設けられ、円筒部11に対して外径側及び内径側にそれぞれ張り出して形成された部分である。第2フランジ13は、その外周面及び端面が基部150の凹部153内に嵌め込まれた状態で基部150に固定される。このような構成によって、車輪に作用する力は、実質的に全て感受体10を経由して基部150との間で伝達されるようになっている。
【0062】
6分力検出器1は、上述した感受体10の円筒部11に設けられるひずみゲージを含むブリッジ回路をそれぞれ有するFx検出系、Fy検出系、Fz検出系、Mx検出系、My検出系、Mz検出系をそれぞれ有する。Fx検出系は、感受体10の円筒部11に作用する径方向(x軸方向)の力Fxを検出する。Fz検出系は、感受体10の円筒部11に作用するx軸方向と直交する方向の径方向(z軸方向)の力Fzを検出する。Fy検出系は、感受体10の円筒部11に作用する軸方向(y軸方向)の力Fyを検出する。Mx検出系は、感受体10の円筒部11に作用するx軸回りのモーメントMxを検出する。Mz検出系は、感受体10の円筒部11に作用するz軸回りのモーメントMzを検出する。My検出系は、感受体10の円筒部11に作用するy軸回りのモーメントMyを検出する。
【0063】
上述したFx検出系、Fy検出系、Fz検出系、Mx検出系、My検出系、Mz検出系は、それぞれ4つのひずみゲージを含むブリッジ回路を有して構成されている。
図2は、6分力検出器1におけるひずみゲージの配置を示す模式図である。
図3は、6分力検出器1におけるFx検出系のひずみゲージの配置及びブリッジ回路の構成を示す図であり、各力検出系(Fx検出系、Fy検出系、Fz検出系)及び各モーメント検出系(Mx検出系、My検出系、Mz検出系)のひずみゲージの配置及びブリッジ回路の構成の代表例を示す。
【0064】
図2及び
図3に示すように、Fx検出系は、ひずみゲージ21~24を有して構成されている。ひずみゲージ21~24は、単軸のひずみゲージであって、その検出方向が円筒部11の中心軸方向と平行となるように、円筒部11の外周面に貼付されている。ひずみゲージ21は、円筒部11の外周面における第1フランジ12側の領
域に配置されている。ひずみゲージ22は、ひずみゲージ21を通りかつ円筒部11の軸方向と平行な直線上に配置され、円筒部11の外周面における第2フランジ13側の領
域に配置されている。ひずみゲージ23は、ひずみゲージ22からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ22に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。ひずみゲージ24は、ひずみゲージ21からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ21に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。
【0065】
図3に示すように、Fx検出系のブリッジ回路は、ホイートストンブリッジ回路として構成され、ひずみゲージ21~24をループ状に順次接続し、ひずみゲージ22とひずみゲージ23との間、及び、ひずみゲージ21とひずみゲージ24との間に電源の正極、負極をそれぞれ接続する。ブリッジ回路は、ひずみゲージ21とひずみゲージ22との間
の端子、及び、ひずみゲージ23とひずみゲージ24との間の
端子の電位差を出力として抽出する。ブリッジ回路の構成は、後で詳しく説明する。
【0066】
Fy検出系は、ひずみゲージ41~44を有して構成されている。ひずみゲージ41~44は、単軸のひずみゲージであって、その検出方向が円筒部11の中心軸方向と平行となるように、円筒部11の外周面に貼付されている。ひずみゲージ41は、Fx検出系のひずみゲージ21、22の中間に配置されている。ひずみゲージ42,43,44は、それぞれひずみゲージ41に対して、円筒部11の中心軸回りの位相が、90度、180度、270度ずれた位置に配置されている。Fy検出系のブリッジ回路は、
図3に示したFx検出径のひずみゲージ21~24をひずみゲージ41~44に置き換える点以外、同一の構成を有する。
【0067】
Fz検出系は、ひずみゲージ31~34を有して構成されている。ひずみゲージ31~34は、単軸のひずみゲージであって、その検出方向が円筒部11の中心軸方向と平行となるように、円筒部11の外周面に貼付されている。ひずみゲージ31は、Fx検出系のひずみゲージ21に対して、円筒部11の中心軸回りに90度ずらして配置されている。ひずみゲージ32は、Fx検出系のひずみゲージ22に対して、円筒部11の中心軸回りに90度ずらして配置されている。ひずみゲージ31とひずみゲージ32とは、円筒部11の軸方向と平行な同一直線上に配置されている。ひずみゲージ33は、ひずみゲージ32からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ32に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。ひずみゲージ34は、ひずみゲージ31からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ31に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。Fz検出系のブリッジ回路は、
図3に示したFx検出
系のひずみゲージ21~24をひずみゲージ31~34に置き換える点以外、同一の構成を有する。
【0068】
Mx検出系は、ひずみゲージ51~54を有して構成されている。ひずみゲージ51~54は、単軸のひずみゲージであって、その検出方向が円筒部11の中心軸方向と平行となるように、円筒部11の外周面に貼付されている。ひずみゲージ51は、Fz検出系のひずみゲージ31に対して、円筒部11の中心軸方向に隣接して配置されている。ひずみゲージ52は、Fz検出系のひずみゲージ32に対して、円筒部11の中心軸方向に隣接して配置されている。ひずみゲージ51とひずみゲージ52とは、円筒部11の軸方向と平行な同一直線上に配置されている。ひずみゲージ53は、ひずみゲージ52からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ52に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。ひずみゲージ54は、ひずみゲージ51からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ51に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。Mx検出系のブリッジ回路は、
図3に示したFx検出
系のひずみゲージ21~24をひずみゲージ51~54に置き換える点以外、同一の構成を有する。
【0069】
My検出系は、ひずみゲージ71~74を有して構成されている。ひずみゲージ71~74は、せん断形のひずみゲージであって、その検出方向が円筒部11の周方向となるように、円筒部11の外周面に貼付されている。ひずみゲージ71は、Fy検出系のひずみゲージ41、42の中間に配置されている。ひずみゲージ72は、Fy検出系のひずみゲージ42,44の中間に配置されている。ひずみゲージ73,74は、それぞれひずみゲージ72,71に対して、円筒部11の中心軸対称となる位置に配置されている。My検出系のブリッジ回路は、
図3に示したFx検出
系のひずみゲージ21~24をひずみゲージ
71~74に置き換える点以外、同一の構成を有する。
【0070】
Mz検出系は、ひずみゲージ61~64を有して構成されている。ひずみゲージ61~64は、単軸のひずみゲージであって、その検出方向が円筒部11の中心軸方向と平行となるように、円筒部11の外周面に貼付されている。ひずみゲージ61は、Fx検出系のひずみゲージ21に対して、円筒部11の中心軸方向に隣接して配置されている。ひずみゲージ62は、Fx検出系のひずみゲージ22に対して、円筒部11の中心軸方向に隣接して配置されている。ひずみゲージ61とひずみゲージ62とは、円筒部11の軸方向と平行な同一直線上に配置されている。ひずみゲージ63は、ひずみゲージ62からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ62に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。ひずみゲージ64は、ひずみゲージ61からみて円筒部11の中心軸回りに180度ずらした位置(ひずみゲージ61に対して円筒部11の中心軸対称な位置)に配置されている。Mz検出系のブリッジ回路は、
図3に示したFx検出
系のひずみゲージ21~24をひずみゲージ61~64に置き換える点以外、同一の構成を有する。
【0071】
<2-2.ブリッジ回路>
続いて、
図3に示したFx検出系のブリッジ回路を例にとって、各力検出系及び各モーメント検出系のブリッジ回路の構成例を具体的に説明する。
【0072】
図3に示したFx検出系のブリッジ回路80は、第1端子81、第2端子82、第3端子83及び第4端子84の四つの端子と、四つのひずみゲージ21,22,23,24とを有する。ひずみゲージ
22は、第1端子81と第2端子82との間に設けられ、ひずみゲージ
21は、第2端子82と第4端子84との間に設けられる。ひずみゲージ
23は、第1端子81と第3端子83との間に設けられ、ひずみゲージ
24は、第3端子83と第4端子84との間に設けられる。 第1端子81、ひずみゲージ21、第2端子82、ひずみゲージ22及び第4端子84を通る電流経路が第1の経路86を構成する。また、第1端子81、ひずみゲージ24、第3端子83、ひずみゲージ23及び第4端子84を通る電流経路が第2の経路87を構成する。
【0073】
ひずみゲージ21,22,23,24は、歪み量に応じて抵抗値が変化する抵抗素子である。本実施形態において、ひずみゲージは、ゲージ率が4以上の材料を用いて構成されている。例えばひずみゲージは、Cr-N薄膜により構成されてもよい。ひずみゲージのゲージ率が4以上であれば、車輪に加えられる荷重を検出する6分力検出器1として望まれる出力を得ることができる。ただし、ひずみゲージは、Cr-N薄膜に限られない。
【0074】
ブリッジ回路80では、起歪体に荷重が加わることにより、各ひずみゲージ21,22,23,24に歪みが生じ、その歪み量に応じて各ひずみゲージ21,22,23,24の抵抗値が変化する。ブリッジ回路80は、第1の経路86の第2端子82と、第2の経路87の第3端子83との電位差に応じた差動信号(第1差動信号)を出力する。
【0075】
なお、ブリッジ回路80の任意の位置に、ブリッジ回路80の抵抗値の初期バランスのずれを調整するための抵抗素子や、温度特性を補償するための抵抗素子が接続されていてもよい。
【0076】
<2-3.荷重検出装置の実施の形態の詳細>
続いて、本実施形態の荷重検出装置の実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の説明において、ロードセル1の各力検出系及び各モーメント検出系のブリッジ回路の第1端子から第4端子を、
図3に示すブリッジ回路80の第1端子81、第2端子82、第3端子83及び第4端子84として表記して説明する。
【0077】
図4は、本実施形態の荷重検出装置の構成例を機能的に示したブロック図である。
本実施形態の荷重検出装置200は、ロードセル(6分力検出器)1と、測定回路160と、CAN(Controller Area Network)通信ドライバ183とを備えている。ロードセル1の各力検出系及び各モーメント検出系のブリッジ回路80と測定回路
160とは、それぞれコネクタを介して接続されてもよい。
【0078】
測定回路160は、励起側差動増幅回路161、計測側差動増幅回路163、ロックインアンプ165及び制御装置180を備えている。制御装置180は、CAN通信ドライバ183を介して、車両に搭載された複数の制御装置が接続される通信バスであるCANバス191に接続されている。
【0079】
励起側差動増幅回路161は、励起信号を生成し、当該励起信号を増幅させてロードセル1へ伝送する機能を有する。励起側差動増幅回路161は、例えば従来公知の正弦波発振器、ゲイン切替差動アンプ及び励起ドライバ差動アンプ等を備えて構成される。励起側差動増幅回路161は、制御装置180により駆動の制御が行われ、所定周波数、位相及び振幅の正弦波の電気信号(励起信号)を生成するとともに設定されたゲイン(励起側ゲイン)で励起信号を増幅し、ロードセル1の各ブリッジ回路80の第1端子81及び第4端子84へ励起信号を伝送する。
【0080】
計測側差動増幅回路163は、ロードセル1から出力される第1差動信号を取得し、第1差動信号を増幅させて出力する機能を有する。計測側差動増幅回路163は、例えば従来公知の差動計装アンプ、ゲイン切替差動アンプ及びA/Dコンバータ等を備えて構成される。計測側差動増幅回路163は、制御装置180により駆動の制御が行われ、取得した第1差動信号を設定されたゲイン(計測側ゲイン)で増幅し、ロックインアンプ165へ第2差動信号を出力する。
【0081】
なお、制御装置180の駆動指令にしたがってブリッジ回路へ伝送する励起信号を生成し、励起信号を増幅させることができる構成である限り、励起側差動増幅回路161の構成は特に限定されるものではない。同様に、制御装置180の駆動指令にしたがってブリッジ回路から出力される第1差動信号を増幅させることができる構成である限り、計測側差動増幅回路163の構成は特に限定されるものではない。また、励起側差動増幅回路161及び計測側差動増幅回路163のいずれか一方又は両方に、信号の周波数や位相、振幅等を補正する機能を有する種々の素子が備えられていてもよい。
【0082】
ロックインアンプ165は、計測側差動増幅回路163から出力される第2差動信号から、励起信号の周波数及び位相に対応する信号を抽出する。抽出された信号は、計測値を示すデータとして制御装置180へ出力される。ロックインアンプ165についても、従来公知のロックインアンプにより構成されてよい。
【0083】
制御装置180は、一つ又は複数のプロセッサと、当該プロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリとを備え、測定回路160の制御を実行する。また、制御装置180は、ロックインアンプ165から入力される計測値と、出力ゲインとに基づいて、ロードセル1に加えられた荷重を算出する。制御装置180は、励起側差動増幅回路161及び計測側差動増幅回路163に対して指令信号を出力する。本実施形態において、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインを設定し、ロックインアンプ165から入力される計測値が許容最大計測値を超えないように出力ゲインを調整する。
【0084】
特に、制御装置180は、ロックインアンプ165から入力される計測値の履歴に基づいて、計測値が許容最大計測値未満に収まるように励起側ゲイン及び計測側ゲインの少なくとも一方を調整する処理(ゲインフィードバック調整処理)を実行する。また、制御装置180は、CAN通信ドライバ183を介して車両の走行状態の情報を取得し、取得した走行状態の情報に基づいて、計測値が許容最大計測値未満に収まるように出力ゲインを調整する処理(ゲインフィードフォワード調整処理)を実行する。
【0085】
本実施形態では、励起側ゲイン及び計測側ゲインそれぞれ、所定間隔で複数のゲイン候補値が設定され、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインそれぞれについてゲイン設定値を決定し、出力ゲインを調整する。例えば励起側ゲインが5倍(増幅率500%)まで設定可能であり、計測側ゲインが4倍(増幅率400%)まで設定可能である場合、出力ゲインは最大20倍(増幅率2,000%)まで調整可能となる。
【0086】
励起側ゲイン及び計測側ゲインで出力ゲインを調整できるように構成されていることで、計測値を所望の範囲に調整しつつ、計測される荷重の解像度を最適化することができる。例えばフルレンジが0-100mVで、演算により0.1mVの精度で計測可能な荷重検出装置があるとすると、0-5000Nの物理量を検出するにあたり、0-10mVの出力が計測される場合と、0-100mVの出力が計測される場合とを比較すると、前者では50N刻みで荷重を検出することができ、後者では5N刻みで荷重を計測することができる。したがって、計測値の最大値を、出力ゲインの設定値に応じた許容最大計測値に近づけつつ、より最適な解像度に調整することができる。
【0087】
より具体的には、励起側でゲインを調整する場合、励起側ゲインを2倍にすることにより、ブリッジ回路の出力は2倍になる。ただし、励起側ゲインを2倍にした場合、ブリッジ回路の出力は2倍になるものの計測される荷重の解像度は低下しない。一方、計測側でゲインを調整する場合、第1差動信号を2倍に増幅するか4倍に増幅するかによって、計測される荷重の解像度自体を調整することができる。例えば計測側ゲインを2倍にした場合、第2差動信号の出力は第1差動信号に比べて2倍となる一方、計測される荷重の解像度が2分の1となる。したがって、励起側ゲイン及び計測側ゲインで出力ゲインを調整できるように構成されていることで、計測値を所望の範囲に調整しつつ、計測される荷重の解像度を最適化することができる。
【0088】
また、本実施形態では、制御装置180は、CAN通信ドライバ183を介して車両の走行状態の情報を取得し、所定のオフセット処理条件が成立している場合に、ロードセル1のゼロ点オフセット処理を実行するように構成されている。上記の6分力検出器のように車両に搭載されるロードセル1の場合、加えられる荷重に対して本来計測されるべき計測値に対する実際の計測値の差であるオフセット量は、熱履歴や機械的応力履歴などにより常に変化し得る。制御装置180は、このようなオフセット量が過大となることを防ぐために、車両の走行状態の情報から、ゼロ点オフセット処理を実行可能なオフセット処理条件が成立しているか否かを判定し、ゼロ点オフセット処理条件の成立時にゼロ点オフセット処理を実行する。これにより、荷重の検出精度をさらに高めることができる。
【0089】
<2-4.荷重検出装置の動作>
続いて、6分力検出器1を用いて車両のタイヤに加えられる分力を検出する荷重検出装置を例にとって、本実施形態に係る荷重検出装置の動作の一例を説明する。
【0090】
(2-4-1.事前設定処理)
制御装置180は、ゲイン調整処理やゼロ点オフセット処理の実行に必要な条件を設定する事前設定処理を実行する。事前設定処理は、基本的には荷重検出装置200を最初に使用する前に実行されればよいが、ロードセル1や測定回路160の修理、点検又は交換作業を行った際に、再度実行されてもよい。
【0091】
図5は、事前設定処理を示すフローチャートである。
事前設定処理において、制御装置180は、荷重検出装置200の仕様を示すデータを参照し(ステップS1)、測定回路160を構成する各要素の仕様に基づいて出力ゲイン最大値Gain_max、計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_x)を設定する(ステップS3)。仕様データは、TEDS(Transducer Electronic Data Sheet)とも呼ばれるデータシートであってもよい。
【0092】
設定可能な励起側ゲイン及び計測側ゲインの値(励起側ゲイン候補値及び計測側ゲイン候補値)は、あらかじめ所定間隔で複数設定されており、制御装置180は、設定可能な出力ゲインの最大値Gain_maxを算出し、記録する。また、制御装置180は、測定回路160が計測可能な最大値(計測可能最大値)S_max_sysのデータを読み出し、記録する。また、制御装置180は、出力ゲインGainに応じて測定回路160が計測精度を保証する計測値の最大値である許容最大計測値S_max_def(gain_x)のデータを読み出し、記録する。
【0093】
(2-4-2.ゲインフィードバック調整処理)
図6は、計測された計測値の履歴に基づくゲイン調整処理(ゲインフィードバック調整処理)を示すフローチャートである。ゲインフィードバック調整処理は、車両のシステムの起動中、常時実行されてよいが、タイヤに加えられる分力を用いた特定の制御の実行中に実行されるように構成されていてもよい。
【0094】
まず、制御装置180は、CAN通信ドライバ183を介して、車両状態情報を取得する(ステップS11)。車両状態情報は、車両が走行中であるか否か、及び、車両の加減速度やヨーレートを判定し得る情報を含む。車両状態情報は、車速、加減速度、アクセル操作量及びブレーキ操作量の情報を含んでもよいが、これらの情報に限定されるものではない。例えば車両状態情報は、車両が走行中であることを示すステータス情報を含んでもよい。
【0095】
次いで、制御装置180は、車両状態情報に基づいて、現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が走行状態であったか否かを判定する(ステップS13)。例えば制御装置180は、当該期間に、車速が0km/hを超える正の値であること、加減速度が0でないこと又はアクセル操作量が正の値であることの少なくともいずれかの条件を満たすときに、現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が走行状態であったと判定する。T秒の値は、例えば5~20秒の範囲内で任意に設定されてよい。
【0096】
現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が走行状態ではなかった場合(S13/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS25)。具体的に、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインをそれぞれ現在の励起側ゲイン設定値及び計測側ゲイン設定値で維持する。この場合、車両が停止状態にあり、車両の走行に伴ってタイヤに加えられる分力の変化はないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS11に戻る。
【0097】
一方、現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が走行状態であった場合(S13/Yes)、制御装置180は、現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間(t-T~t)の最大計測値S_max_tを取得する(ステップS15)。つまり、制御装置180は、すでに経過した所定期間において計測された計測値Sの最大値(最大計測値)S_max_tを取得する。
【0098】
次いで、制御装置180は、取得した最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys未満であるか否かを判定する(ステップS17)。つまり、制御装置180は、車両が走行状態にあった所定期間内に計測された最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys未満であるか否かを判定する。最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys以上である場合(S17/No)、制御装置180は、出力ゲインGainの設定を、現在の出力ゲイン設定値Gain_nowから1段階小さい値Gain_now-1とする(ステップS27)。
【0099】
具体的に、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインのいずれか一方を1段階小さくし、出力ゲインGainを小さくする。これにより、計測されていた最大計測値S_max_tを計測可能最大値S_max_sysに近づけ、同じような走行状態が継続される場合に計測される計測値Sが計測可能最大値S_max_sysを超えるおそれを低減することができる。特に、励起側ゲインを維持し、計測側ゲインを小さくすることにより、計測値Sの範囲を小さくしつつ、計測する荷重の解像度を高めることができる。
【0100】
一方、最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys未満である場合(S17/Yes)、制御装置180は、現在設定されている出力ゲインGainに応じて定められた許容最大計測値S_max_def(gain_now)に対する最大計測値S_max_tの比である第1の比が、現在設定されている出力ゲインGain_nowに対する1段階小さい出力ゲインGain_now-1の比である第2の比よりも小さいか否かを判定する(ステップS19)。このステップS19では、出力ゲインを1段階大きくしても、計測された最大計測値S_max_tが許容最大計測値S_max_def(gain_now)を超えないこと、つまり出力ゲインを1段階大きくする余裕があるか否かが判別される。この余裕代を設計値として設定する目的で、各出力ゲインGainの設定値許容最大計測値S_max_def(gain_x)があらかじめ設定される。
【0101】
なお、後述する車両状態情報に基づくゲインフィードフォワード調整処理は1つの車両ごとに行われるが、上記最大計測値S_max_tと許容最大計測値S_max_def(gain_x)の比較は、その車両の分力成分毎に行われる。
【0102】
ステップS19が否定判定の場合(S19/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS25)。この場合、出力ゲインGainを大きくすると計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがあることから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS11に戻る。
【0103】
一方、ステップS19が肯定判定の場合(S19/Yes)、制御装置180は、ステップS19の条件を満たす状態となってから第1時間N1(秒)保持されたか否かを判定する(ステップS21)。第1時間N1は、出力ゲインを1段階大きくする余裕がある状態が安定的に継続していると判断し得る任意の時間に設定されてよい。なお、ステップS19の条件が成立していることを示す情報は、後述のゲインフィードフォワード調整処理で用いられる。このため、ステップS19の条件が成立していることを示すフラグを立てるなどして、参照可能とされる。
【0104】
ステップS19の条件を満たす状態となってから第1時間N1保持されていない場合(S21/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS25)。この場合、出力ゲインGainを大きくしても計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがないと判断できないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS11に戻る。
【0105】
一方、ステップS19の条件を満たす状態となってから第1時間N1保持された場合(S21/Yes)、制御装置180は、出力ゲインGainの設定を、現在の出力ゲイン設定値Gain_nowから1段階大きい値Gain_now+1とする(ステップS23)。
【0106】
具体的に、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインのいずれか一方を1段階大きくし、出力ゲインGainを大きくする。これにより、計測値Sが、調整後の出力ゲイン(Gain_now+1)に応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えないように計測値Sを大きくすることができる。このとき、励起側ゲインを優先的に大きくしてもよい。
【0107】
図7は、出力ゲインGainを大きくする際の励起側ゲイン及び計測側ゲインの設定処理を示すフローチャートである。
制御装置180は、現在設定されている励起側ゲイン設定値を読み出し、励起側ゲインを大きくすることができるか否かを判定する(ステップS31)。具体的に、制御装置180は、現在設定されている励起側ゲイン設定値が、あらかじめ所定間隔で設定された複数の励起側ゲイン候補値の最大の値であるか否かを判定し、励起側ゲイン設定値が励起側ゲイン候補値の最大値でない場合に励起側ゲインを大きくすることができると判定する。
【0108】
励起側ゲインを大きくすることができると判定された場合(S31/Yes)、制御装置180は、励起側ゲインを優先的に大きくすることで出力ゲインGainを大きくする(ステップS33)。一方、励起側ゲインを大きくすることができると判定されない場合(S31/No)、制御装置180は、計測側ゲインを大きくすることで出力ゲインGainを大きくする(ステップS35)。このように、励起側ゲインを優先的に大きくすることにより、計測される荷重の解像度を低下させることなく、計測値Sを大きくすることができる。
【0109】
制御装置180は、以上説明した各ステップの処理を所定のサンプリング周期で繰り返し実行する。制御装置180は、ロードセル1のブリッジ回路からの出力範囲が広い場合であっても、実際の計測値Sの履歴に基づいて、計測された最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_now)未満に収まるように出力ゲインGainを設定する。これにより、計測値Sが計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えないようにブリッジ回路の出力が増幅され、荷重の計測精度を高くすることができる。
【0110】
(2-4-3.ゲインフィードバック調整処理の変形例)
変形例に係るゲインフィードバック調整処理では、出力ゲインGainを大きくする際の出力ゲインGainの設定方法が、
図6に示したゲインフィードバック調整処理の例と異なっている。
【0111】
図8は、ゲインフィードバック調整処理の変形例を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、
図6に示したフローチャートにおけるステップS19~ステップS21の処理が、ステップS18~ステップS22の処理に置き換えられている。
【0112】
変形例では、ステップS17において、最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys未満であると判定された場合(S17/Yes)、制御装置180は、最大計測値S_max_tに対応する、出力ゲインGainの調整をしない場合(Gain=1)の基本計測値ms_max_oriを算出する(ステップS18)。具体的に、制御装置180は、最大計測値S_max_tを現在設定されている出力ゲイン設定値Gain_nowで割ることにより基本計測値ms_max_oriを算出する。
【0113】
次いで、制御装置180は、出力ゲイン候補値のなかから、基本計測値ms_max_oriに出力ゲインGain_xを乗じて得られる値S_maxが、出力ゲインGainに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)未満となる最大の出力ゲインGain_Mを算出する(ステップS20)。
【0114】
次いで、制御装置180は、求められた出力ゲインGain_Mが、現在設定されている出力ゲイン設定値Gain_nowよりも小さいか否かを判定する(ステップS22)。出力ゲインGain_Mが出力ゲイン設定値Gain_nowよりも小さいと判定されない場合(S22/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS25)。この場合、出力ゲインGainを大きくすることができないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS11に戻る。
【0115】
一方、出力ゲインGain_Mが出力ゲイン設定値Gain_nowよりも小さいと判定された場合(S22/Yes)、制御装置180は、出力ゲインGainの設定を、現在の出力ゲイン設定値Gain_nowから1段階大きい値Gain_now+1とする(ステップS23)。このとき、制御装置180は、出力ゲインGainを複数段階以上大きくしてもよいが、出力ゲインGainの増大率が大きすぎると、車両の走行状態が変化し、タイヤに加えられる荷重が急上昇した場合に、計測値Sが簡単に許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがある。このため、1段階あるいは2段階ずつ等、少しずつ出力ゲインGainを大きくすることが好ましい。
【0116】
以上説明した変形例に係るゲインフィードバック調整処理であっても、上記のゲインフィードバック調整処理と同様の効果を得ることができる。
【0117】
(2-4-4.ゲインフィードバック調整処理の作用)
図9~
図10は、ゲインフィードバック調整処理により、出力ゲインを大きくする例を示す説明図である。
図9及び
図10は、いずれもカーブを旋回する車両のタイヤに加えられる車幅方向の分力Fyの計測値を示している。
図9は、出力ゲインGainが2で固定され、ブリッジ回路の出力のゲイン調整をしない場合での計測値(基本計測値)msを示している。また、
図10は、ブリッジ回路の出力のゲイン調整をした場合での計測値Sを示す。この例において、計測可能最大値S_max_sysは1.50mVであるものとする。
【0118】
図9に示す例では、ゲイン調整をしない場合において、計測開始から8秒後までの期間(第1期間)では基本計測値msが0.00-0.05mVの間で変動している。また、計測開始から8秒後から23秒後までの期間(第2期間)では基本計測値msが0.00-0.20mVの間で変動している。また、23秒後以降の期間(第3期間)では基本計測値msが0.00-0.70mVの間で変動している。これは、各期間で車両の走行状態が変化し、タイヤに加えられる荷重が変化していることを示している。
【0119】
ゲイン調整をしない場合、基本計測値msが計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_x)を大きく下回っているため、ブリッジ回路の出力を増幅することで計測値Sの範囲を大きい側へ変化させ、荷重の検出精度を高める余地がある。
【0120】
これに対して、
図10に示す例では、計測開始時に出力ゲインGainが5に設定され、第1期間では、計測値Sが0.00-0.10mVの間で変動する。第1期間の計測値Sは、計測可能最大値S_max_sysを大きく下回り、かつ、出力ゲインGainに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_5)未満の状態が継続している。したがって、制御装置180は、出力ゲインGainを2倍にしている。
【0121】
このため、第2期間の計測値Sは増幅され、0.00-0.25mVの間で変動している。第2期間の基本計測値msは、車両の走行状態の変化により、第1期間に比べて変動幅が大きいものの、第2期間の計測値Sは、計測可能最大値S_max_sysを大きく下回り、かつ、出力ゲインGainに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_10)未満の状態が継続している。したがって、制御装置180は、出力ゲインGainをさらに2倍にしている。
【0122】
このため、第3期間の計測値Sはさらに増幅され、0.00-1.40mVの間で変動している。第3期間の基本計測値msは、車両の走行状態の変化により、第2期間に比べて変動幅が大きくなっており、第2期間の計測値Sの最大値が計測可能最大値S_max_sysに近づけられている。これにより、より大きい計測値Sに基づいて荷重を検出することができ、荷重の検出精度を高くすることができる。
【0123】
図11~
図12は、ゲインフィードバック調整処理により、出力ゲインを小さくする例を示す説明図である。
図11及び
図12は、いずれも車両の減速時にタイヤに加えられる車両前後方向の分力Fxの計測値を示している。
図11は、出力ゲインGainが10で固定され、ブリッジ回路の出力のゲイン調整をしない場合での計測値(基本計測値)msを示し、
図12は、ブリッジ回路の出力のゲイン調整をした場合での計測値Sを示す。この例において、計測可能最大値S_max_sysは1.50mVであるものとする。
【0124】
図11に示す例では、ゲイン調整をしない場合において、計測開始から8秒後までの期間(第1期間)では基本計測値msが0.05-0.35mVの間で変動している。また、計測開始から8秒後から23秒後までの期間(第2期間)では基本計測値msが0.20-1.10mVの間で変動している。また、23秒後以降の期間(第3期間)では基本計測値msが0.20-1.80mVの間で変動している。これは、各期間で車両の走行状態が変化し、タイヤに加えられる荷重が変化していることを示している。
【0125】
ゲイン調整をしない場合、基本計測値msが時間の経過とともに上昇し、第2期間において許容最大計測値S_max_def(gain_10)を超え、計測開始から32秒後に計測可能最大値S_max_sysを超えている。
【0126】
これに対して、
図12に示す例では、計測開始時に出力ゲインGainが20に設定され、第1期間では、計測値Sが0.10-0.75mVの間で変動する。第1期間の計測値Sは、計測可能最大値S_max_sysを大きく下回るものの、出力ゲインGainに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_20)を超えている。したがって、制御装置180は、出力ゲインGainを0.5倍にし、
図11の場合と同じ出力ゲインGainとしている。
【0127】
このため、第2期間の計測値Sは、0.20-1.10mVの間で変動している。ただし、第2期間の基本計測値msについては、車両の走行状態の変化により、第1期間に比べて計測値Sの範囲が大きくなっているため、出力ゲインGainを小さくしたものの、計測値Sは、出力ゲインGainに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_10)を超えている。したがって、制御装置180は、出力ゲインGainをさらに0.5倍にしている。
【0128】
このため、第3期間の計測値Sは小さく抑えられ、0.10-0.75mVの間で変動している。第3期間の基本計測値msは、計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_5)を超えていたが、出力ゲインGainを小さくしたことにより、計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_5)を下回る値となっている。これにより、計測値Sの精度が保証され、計測精度を高めることができる。
【0129】
(2-4-5.励起側ゲイン及び計測側ゲインによる出力ゲインの調整)
図13は、励起側ゲイン及び計測
側ゲインを調整することで出力ゲインを調整することを示す説明図である。
図13は、励起側ゲインGain_u及び計測側ゲインGain_dにより決定される出力ゲインGainと、基本計測値msを当該出力ゲインGainで増幅した計測値Sであって、不整地の道路を走行する車両のタイヤに加えられる車幅方向の分力Fyの計測値Sとを示す。
【0130】
計測開始から8秒後までの期間では、励起側ゲインGain_u及び計測側ゲインGain_dがともに1に設定され、トータルの出力ゲインGainが1に設定されている。また、8秒後から13秒後までの期間では、計測側ゲインGain_dが1で維持される一方、励起側ゲインGain_uが2.5へと大きくされ、トータルの出力ゲインGainが2.5へと大きくなっている。また、13秒後から22秒後までの期間では、励起側ゲインGain_uが2.5で維持される一方、計測側ゲインGain_dが4へと大きくされ、トータルの出力ゲインGainが10へと大きくされている。さらに、22秒後以降の期間では、励起側ゲインGain_uが5へと大きくされる一方、励起側ゲインGain_uが2へと小さくされ、トータルの出力ゲインGainが10に維持されている。これにより、出力ゲインGainの設定にしたがって基本計測値msが増幅され、計測値Sの範囲が変更される。
【0131】
6分力検出器1では、3つの力検出系(Fx,Fy,Fz)及び3つのモーメント検出系(Mx,My,Mz)のブリッジ回路からそれぞれ差動信号が出力されるが、ブリッジ回路からの出力が不足する分力がある場合、ノイズ成分及び許容最大計測値の調整のために励起側ゲインと計測側ゲインとを調整することが有効である。この場合、トータルの出力ゲインGainが同じであっても、励起側ゲインGain_uを大きくする余裕がある場合には、計測側ゲインGain_dではなく励起側ゲインGain_uを優先的に大きくすることによって、計測値Sの範囲を狙った範囲としつつ、計測される荷重の解像度の低下を少なくした出力ゲインGainとすることができる。
【0132】
上述の
図13の例では、計測開始から22秒後に、制御装置180は、トータルの出力ゲインGainを10に維持しつつ、励起側ゲインGain_uを5へと大きくする一方、励起側ゲインGain_uを2へと小さくしている。これにより、計測値Sの範囲を維持しつつ、計測される荷重の解像度を高めることができる。
【0133】
(2-4-6.ゲインフィードフォワード調整処理)
図14は、車両の走行状態の情報に基づくゲイン調整処理(ゲインフィードフォワード調整処理)を示すフローチャートである。ゲインフィードフォワード調整処理は、車両のシステムの起動中、常時実行されてよいが、タイヤに加えられる分力を用いた特定の制御の実行中に実行されるように構成されていてもよい。また、以下に説明するゲインフィードフォワード調整処理は、ゲインフィードバック調整処理で用いられる情報を利用して実行されるようになっており、ゲインフィードバック調整処理と並行して実行される。
【0134】
まず、制御装置180は、CAN通信ドライバ183を介して、車両状態情報を取得する(ステップS41)。このステップS41の処理内容は、上述のゲインフィードバック調整処理のステップS11と同じであり、ステップS11とステップS41とは一つの処理であってよい。
【0135】
次いで、制御装置180は、車両状態情報に基づいて、現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が減速状態であったか否かを判定する(ステップS43)。例えば制御装置180は、車両状態情報に含まれる車両の加速度が負の値であった場合に、車両が減速状態であったと判定する。ただし、車両が減速状態であったことを判定する方法は、上記の例に限定されない。
【0136】
現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が減速状態ではなかった場合(S43/No)、現在時刻tよりもT秒前の時刻から現在時刻tまでの間に車両が加速状態であったか否かを判定する(ステップS55)。例えば制御装置180は、車両状態情報に含まれる車両の加速度が正の値であった場合に、車両が加速状態であったと判定する。ただし、車両が加速状態であったことを判定する方法は、上記の例に限定されない。
【0137】
ステップS43が肯定判定の場合(S43/Yes)、制御装置180は、出力ゲインGainを大きくするか否かを判定する処理を実行する(ステップS45~ステップS49)。一方、ステップS55が肯定判定の場合(S55/Yes)、制御装置180は、出力ゲインGainを小さくするか否かを判定する処理を実行する(ステップS57~ステップS59)。一方、ステップS43及びステップS55がいずれも否定判定の場合(S43/NoかつS55/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS53)。具体的に、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインをそれぞれ現在の励起側ゲイン設定値及び計測側ゲイン設定値で維持する。この場合、ゲインフィードフォワード調整処理による出力ゲインGainの調整が困難であるため、本ルーチンの処理を終了し、ステップS41に戻る。
【0138】
ステップS43が肯定判定の場合(S43/Yes)、制御装置180は、車両に対して所定方向に作用する加速度に車両の重量を乗じた値、又は、それぞれのタイヤに対して所定方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第1閾値未満であるか否かを判定する(ステップS45)。ステップS45は、車両の走行状態が、タイヤに対して加えられる荷重が小さい走行状態であるか否かを判別する処理であり、ゲイン調整をしない状態での基本計測値msが小さい値となることを予測するために実行される。
【0139】
図14に示すフローチャートのステップS45では、制御装置180は、車両に対して車幅方向の加速度が生じ得る走行状態において、車両に対して車幅方向に作用する横方向加速度G_lat及び遠心力の加速度v*ωの和に車両の重量Mを乗じた値の絶対値abs[M*(G_lat+v*ω)
]、又は、それぞれのタイヤに対して車幅方向に作用する分力Fyの和ΣFyの絶対値abs(ΣFy)、のいずれか一方又は両方が重力加速度gを基準とする第1閾値kmin*M*g未満であるか否かを判定する。これは、タイヤに対して車幅方向に荷重が加えられる状況において、タイヤに対して車幅方向に加えられる荷重が小さいか否かを判定する処理である。
【0140】
車両に対して車幅方向の加速度が生じ得る走行状態であるか否かは、例えば舵角センサにより検出される操舵角の情報に基づいて判定することができる。また、横方向加速度G_lat及び遠心力の加速度v*ωは、それぞれ加速度センサ及びヨーレートセンサのセンサ値の情報に基づいて求められる。第1閾値kmin*M*gの係数kminは、車両運動上、タイヤの限界に近い走行をしていないことを簡易的に判定可能とするために、0~1の範囲であらかじめ設定される正の値の設定値である。また、車両の重量Mについても、車両状態情報とともに取得されてよい。横方向加速度G_lat及び遠心力の加速度v*ωの和に車両の重量Mを乗じた値の絶対値abs[M*(G_lat+v*ω)]、又は、それぞれのタイヤに対して車幅方向に作用する分力Fyの和ΣFyの絶対値abs(ΣFy)のうちのいずれかが第1閾値kmin*M*g未満であるか否かを判定してもよい。ただし、両方が第1閾値kmin*M*g未満であるか否かを判定することで、判定結果の信頼度を高めることができる。
【0141】
なお、車両が直進状態である場合、タイヤに対して車幅方向に荷重が加えられる状況ではない。この場合、制御装置180は、タイヤに対して前後方向に加えられる荷重が小さいか否かを判定してもよい。具体的に、制御装置180は、車両が直進走行時に減速状態となっている場合に、車両に対して前後方向に作用する前後加速度G_longiの絶対値abs(G_longi)に車両の重量Mを乗じた値abs[M*G_longi]、又は、それぞれのタイヤに対して前後方向に作用する分力Fxの和ΣFxの絶対値abs(ΣFx)、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第1閾値kmin*M*g未満であるか否かを判定する。
【0142】
車両が直進走行中であるか否かは、例えば舵角センサにより検出される操舵角の情報に基づいて判定することができる。また、前後加速度G_longiは、加速度センサのセンサ値の情報に基づいて求められる。タイヤに対して前後方向に加えられる荷重を判定するための第1閾値kmin*M*gと、タイヤに対して車幅方向に加えられる荷重を判定するための第1閾値kmin*M*gとは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、前後加速度G_longiに車両の重量Mを乗じた値の絶対値abs[M*G_longi]、又は、それぞれのタイヤに対して前後方向に作用する分力Fxの和ΣFxの絶対値abs(ΣFx)のうちのいずれかが第1閾値kmin*M*g未満であるか否かを判定してもよい。ただし、両方が第1閾値kmin*M*g未満であるか否かを判定することで、判定結果の信頼度を高めることができる。
【0143】
ステップS45が否定判定の場合(S45/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS53)。この場合、出力ゲインGainを大きくすると計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがないと判断できないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS41に戻る。
【0144】
一方、ステップS45が肯定判定の場合(S45/Yes)、制御装置180は、ステップS45の条件を満たす状態となってから第2時間N2(秒)保持されたか否かを判定する(ステップS47)。第2時間N2の値は、ゲインフィードバック調整処理のステップS21で用いられる第1時間N1の値よりも小さい値に設定される。ステップS45の条件を満たす状態となってから第2時間N2保持されていない場合(S47/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS53)。この場合においても、出力ゲインGainを大きくしても計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがないと判断できないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS41に戻る。
【0145】
一方、ステップS45の条件を満たす状態となってから第2時間N2保持された場合(S47/Yes)、制御装置180は、ゲインフィードバック調整処理のステップS19の条件が成立しているか否か(ステップS19が肯定判定か否か)を判定する(ステップS49)。例えば制御装置180は、ステップS19の条件が成立していることを示すフラグが立てられているか否かを判定する。
【0146】
ステップS19の条件が成立していない場合(S49/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS53)。この場合においても、出力ゲインGainを大きくしても計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがないと判断できないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS41に戻る。
【0147】
一方、ステップS19の条件が成立している場合(S49/Yes)、制御装置180は、出力ゲインGainの設定を、現在の出力ゲイン設定値Gain_nowから1段階大きい値Gain_now+1とする(ステップS51)。具体的に、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインのいずれか一方を1段階大きくし、出力ゲインGainを大きくする。このとき、
図7に示したように、励起側ゲインを優先的に大きくしてもよい。ステップS47で用いる第2時間N2が、ステップS21で用いる第1時間N1よりも短く設定されていることから、ステップS19の条件である第1の比が第2の比よりも小さい状態が第1時間N1以上継続する前であっても、車両の走行状態から、計測値が許容最大計測値を超える状況ではないと判断できる場合には、速やかに出力ゲインを大きくすることができる。
【0148】
一方、上記のステップS55が肯定判定の場合(S55/Yes)、制御装置180は、車両に対して所定方向に作用する加速度に車両の重量を乗じた値、又は、それぞれのタイヤに対して所定方向に作用する分力の和の値、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第2閾値を超えているか否かを判定する(ステップS57)。ステップS57は、車両の走行状態が、タイヤに対して加えられる荷重が大きい走行状態であるか否かを判別する処理であり、ゲイン調整をしない状態での基本計測値msが大きい値となることを予測するために実行される。
【0149】
図14に示すフローチャートのステップS57では、制御装置180は、車両に対して車幅方向の加速度が生じ得る走行状態において、車両に対して車幅方向に作用する横方向加速度G_lat及び遠心力の加速度v*ωの和に車両の重量Mを乗じた値の絶対値abs[M*(G_lat+v*ω)
]、又は、それぞれのタイヤに対して車幅方向に作用する分力Fyの和ΣFyの絶対値abs(ΣFy)のいずれか一方又は両方が重力加速度gを基準とする第2閾値kmax*M*gを超えるか否かを判定する。これは、タイヤに対して車幅方向に荷重が加えられる状況において、タイヤに対して車幅方向に加えられる荷重が大きいか否かを判定する処理である。
【0150】
第2閾値kmax*M*gの係数kmaxは、車両運動上、タイヤの限界に近い走行をしていることを簡易的に判定可能とするために、0~1の範囲であらかじめ設定される正の値の設定値である。横方向加速度G_lat及び遠心力の加速度v*ωの和に車両の重量Mを乗じた値の絶対値abs[M*(G_lat+v*ω)]、又は、それぞれのタイヤに対して車幅方向に作用する分力Fyの和ΣFyの絶対値abs(ΣFy)のうちのいずれかが第2閾値kmax*M*gを超えているか否かを判定してもよい。ただし、両方が第2閾値kmax*M*gを超えているか否かを判定することで、判定結果の信頼度を高めることができる。
【0151】
なお、車両が直進状態である場合、タイヤに対して車幅方向に荷重が加えられる状況ではない。この場合、制御装置180は、タイヤに対して前後方向に加えられる荷重が大きいか否かを判定してもよい。具体的に、制御装置180は、車両が直進走行時に加速状態となっている場合に、車両に対して前後方向に作用する前後加速度G_longiの絶対値abs(G_longi)に車両の重量Mを乗じた値abs[M*G_longi]、又は、それぞれのタイヤに対して前後方向に作用する分力Fxの和ΣFxの絶対値abs(ΣFx)、のいずれか一方又は両方が重力加速度を基準とする第2閾値kmax*M*gを超えているか否かを判定する。
【0152】
タイヤに対して前後方向に加えられる荷重を判定するための第2閾値kmax*M*gと、タイヤに対して車幅方向に加えられる荷重を判定するための第2閾値kmax*M*gとは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、前後加速度G_longiに車両の重量Mを乗じた値の絶対値abs[M*G_longi]、又は、それぞれのタイヤに対して前後方向に作用する分力Fxの和ΣFxの絶対値abs(ΣFx)のうちのいずれかが第2閾値kmax*M*gを超えるか否かを判定してもよい。ただし、両方が第2閾値kmax*M*gを超えているか否かを判定することで、判定結果の信頼度を高めることができる。
【0153】
ステップS57が否定判定の場合(S57/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS53)。この場合、出力ゲインGainを大きくすると計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがないと判断できないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS41に戻る。
【0154】
一方、ステップS57が肯定判定の場合(S57/Yes)、制御装置180は、ステップS57の条件を満たす状態となってから第2時間N2(秒)保持されたか否かを判定する(ステップS59)。第2時間N2の値は、ゲインフィードバック調整処理のステップS21で用いられる第1時間N1の値よりも小さい値に設定される。ステップS57の条件を満たす状態となってから第2時間N2保持されていない場合(S59/No)、制御装置180は、出力ゲインGainを現在の出力ゲイン設定値Gain_nowで維持する(ステップS53)。この場合においても、出力ゲインGainを大きくしても計測値Sが出力ゲインに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えるおそれがないと判断できないことから、出力ゲインGainを調整することなく本ルーチンの処理を終了し、ステップS41に戻る。
【0155】
一方、ステップS57の条件を満たす状態となってから第2時間N2保持された場合(S59/Yes)、制御装置180は、出力ゲインGainの設定を、現在の出力ゲイン設定値Gain_nowから1段階小さい値Gain_now-1とする(ステップS61)。なお、ステップS47で用いる第2時間N2とステップS59で用いる第2時間N2とを異ならせてもよい。
【0156】
具体的に、制御装置180は、励起側ゲイン及び計測側ゲインのいずれか一方を1段階小さくし、出力ゲインGainを小さくする。これにより、計測されていた最大計測値S_max_tを計測可能最大値S_max_sysに近づけ、同じような走行状態が継続される場合に計測される計測値Sが計測可能最大値S_max_sysを超えるおそれを低減することができる。特に、励起側ゲインを維持し、計測側ゲインを小さくすることにより、計測値Sの範囲を小さくしつつ、計測する荷重の解像度を高めることができる。
【0157】
制御装置180は、以上説明した各ステップの処理を所定のサンプリング周期で繰り返し実行する。制御装置180は、ロードセル1のブリッジ回路からの出力範囲が広い場合であっても、車両の走行状態に基づいて、計測された最大計測値S_max_tが計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_now)未満に収まるように出力ゲインGainを設定する。これにより、計測値Sが計測可能最大値S_max_sys及び許容最大計測値S_max_def(gain_x)を超えないようにブリッジ回路の出力が増幅され、荷重の計測精度を高くすることができる。
【0158】
(2-4-7.ゼロ点オフセット処理)
図15は、ゼロ点オフセット処理の例を示すフローチャートである。ゼロ点オフセット処理は、車両のシステムの起動中、常時実行されてよいが、タイヤに加えられる分力を用いた特定の制御の実行中に実行されるように構成されていてもよい。
【0159】
まず、制御装置180は、CAN通信ドライバ183を介して、車両状態情報を取得する(ステップS71)。このステップS51の処理内容は、上述のゲインフィードバック調整処理のステップS11あるいはゲインフィードフォワード調整処理のステップS41と同じであり、ステップS11、ステップS41及びステップS51は一つの処理であってよい。
【0160】
次いで、制御装置180は、取得した車両状態情報に基づいて、ゼロ点オフセット処理の実行が可能な条件であるオフセット処理条件が成立しているか否かを判定する(ステップS73)。オフセット処理条件は、ロードセル1に対して荷重が加えられることのない状態を判定するための条件であり、例えば車両に対して前後方向及び車幅方向の加速度が生じていないことが判定できればよい。具体的に、制御装置180は、車両が停止した状態であり、かつ、車両が傾いていない状態である場合に、オフセット処理条件が成立していると判定してもよい。車両が停止しているか否かは、車速センサのセンサ値の情報、あるいは、車両の停車状態を示すステータス情報に基づいて判定することができる。また、車両が傾いていないことは、傾斜センサのセンサ値の情報に基づいて判定することができる。
【0161】
オフセット処理条件が成立していない場合(S73/No)、制御装置180は、そのまま本ルーチンを終了してステップS71に戻る。一方、オフセット処理条件が成立している場合(S73/Yes)、制御装置180は、ゼロ点オフセット処理を実行する(ステップS75)。ゼロ点オフセット処理は、従来公知の手法により実行されてよい。例えばオフセット処理条件が成立している状態で検出される計測値にマイナス1を乗じた値をオフセット補正値として記録する。オフセット補正値は、ロックインアンプ165から入力される計測値Sに加算され、計測値Sがオフセット量相当分補正される。なお、ゼロ点オフセット処理の内容は上記の例に限定されるものではない。
【0162】
(2-4-8.ゼロ点オフセット処理の作用)
図16は、
図11に示した、ブリッジ回路の出力のゲイン調整をしない場合での計測値(基本計測値)ms(破線)を、
図12に示した例と同じパターンでゲイン調整する際に、途中でゼロ点オフセット処理を実行した例を示す。
【0163】
図16に示す例では、計測開始時に出力ゲインGainが20に設定され、第1期間では、計測値Sが0.10-0.75mVの間で変動する。第1期間の計測値Sは、計測可能最大値S_max_sysを大きく下回るものの、出力ゲインGainに応じた許容最大計測値S_max_def(gain_20)を超えている。したがって、制御装置180は、出力ゲインGainを0.5倍にし、
図11の場合と同じ出力ゲインGainとしている。このため、計測開始から8秒後から12秒後までは
図12の場合と同様に計測値Sが変化している。
【0164】
ただし、
図16に示す例では、計測開始から13秒後にゼロ点オフセット処理が実行され、その時点の計測値Sがゼロにされる。その
後、計測値
Sは、
図12で示した出力ゲインGainの調整をした場合の計測値Sから、オフセット補正値分小さい側へとスライドした値で推移している。このように、ゼロ点オフセット処理を実行することで、計測値Sの精度がさらに保証され、計測精度をより高めることができる。
【0165】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0166】
例えば上記実施形態では、単軸のひずみゲージが用いられたロードセルの例を説明したが、本開示の技術を適用可能なロードセルはかかる例に限定されない。例えば
図17及び
図18に示す二軸せん断ひずみゲージが用いられたロードセルであっても本開示の技術を適用することができる。
【0167】
具体的に、
図17は、変形例の6分力検出器におけるひずみゲージの配置を示す模式図であり、
図18は、二軸せん断ひずみゲージのゲージパターンを示す説明図である。
図17に示した6分力検出器は、上述したFx検出系のひずみゲージ21~24及びFz検出系のひずみゲージ31~34に代えて、以下に説明するFx検出系のせん断ひずみゲージ271,272及びFz検出系のせん断ひずみゲージ275,277を設けたものである。
図18には、一例としてせん断ひずみゲージ271を示すが、せん断ひずみゲージ272,275,277も実質的に同様のゲージパターンを有する。
【0168】
せん断ひずみゲージ271は、いわゆる矢型2軸(2極)に構成されている。せん断ひずみゲージ271は、Cr-N薄膜等からなる第1検出部271a及び第2検出部271bを、絶縁体の薄膜である共通の絶縁層271c上に形成したものである。第1検出部271a及び第2検出部271bは、それぞれ検出方向に沿って平行に配置された複数の直線部を順次直列に接続して構成されている。第1検出部271a及び第2検出部271bは、直線部が伸縮する方向(検出方向)のひずみに応じて電気抵抗が変化しやすいように設定されている。第1検出部271a及び第2検出部271bの検出方向は、実質的に直交するように配置されている。せん断ひずみゲージ271は、第1検出部271a及び第2検出部271bの検出方向が、円筒部250の中心軸方向に対してそれぞれ45°反対方向に傾斜するように円筒部250の外周面に取り付けられる。なお、せん断ひずみゲージ272,275,277も同様に円筒部250の外周面に取り付けられる。
【0169】
図17に示すように、せん断ひずみゲージ271,272,275,277は、円筒部250の中心軸方向における中央部の外周面に貼付されている。Fx検出系のせん断ひずみゲージ271は、Mx検出系のひずみゲージ251,252の中間に配置されている。Fx検出系のせん断ひずみゲージ272は、Mx検出系のひずみゲージ253,254の中間(せん断ひずみゲージ271と中心軸対象となる位置)に配置されている。Fz検出系のせん断ひずみゲージ275は、Mz検出系のひずみゲージ261,262の中間に配置されている。Fz検出系のせん断ひずみゲージ277は、Mz検出系のひずみゲージ263,264の中間(せん断ひずみゲージ275と中心軸対象となる位置)に配置されている。
【0170】
また、Fy検出系のひずみゲージ281~284、My検出系のひずみゲージ291~294は、Fx検出系のひずみゲージ271,272及びFz検出系のひずみゲージ275,277との干渉を避けるため、中心軸回りにおける位置をずらして配置されている。例えば、
図17に示すように、せん断ひずみゲージ271、ひずみゲージ282、ひずみゲージ292、せん断ひずみゲージ277、ひずみゲージ284、ひずみゲージ294、せん断ひずみゲージ272、ひずみゲージ283、ひずみゲージ293、せん断ひずみゲージ275、ひずみゲージ281及びひずみゲージ291を、円筒部250の周方向に沿って、中心軸回りの角度を30°間隔でずらした位置に順次配置する構成とすることができる。
【0171】
Fx検出系のせん断ひずみゲージ271,272がそれぞれ有する第1検出部及び第2検出部は、
図3に示したブリッジ回路と同様のブリッジ回路を構成する。このブリッジ回路は、
円筒部250へ入力されるFx方向分力に応じた出力を発生する。同様に、Fz検出系のせん断ひずみゲージ275,277がそれぞれ有する第1検出部及び第2検出部は、
図3に示したブリッジ回路と同様のブリッジ回路を構成する。このブリッジ回路は、
円筒部250へ入力されるFz方向分力に応じた出力を発生する。
【0172】
このように構成される二軸せん断ひずみゲージを用いたロードセルであっても本開示の技術を適用することができ、上記実施形態により得られる効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0173】
1:ロードセル、21・22・23・24:ひずみゲージ、80:ブリッジ回路、81:第1端子、82:第2端子、83:第3端子、84:第4端子、160:測定回路、161:励起側差動増幅回路、163:計測側差動増幅回路、165:ロックインアンプ、180:制御装置、183:CAN通信ドライバ、191:CANバス、200:荷重検出装置