(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241219BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20241219BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B6/00 550C
A61B6/00 550D
A61B6/46 506B
A61B5/055 374
A61B5/055 380
(21)【出願番号】P 2021529211
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026482
(87)【国際公開番号】W WO2021002478
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019125444
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019152401
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517441952
【氏名又は名称】ラドウィスプ プライベート リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516216335
【氏名又は名称】株式会社メディオット
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 武彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 典史
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-187723(JP,A)
【文献】特許第6483875(JP,B1)
【文献】特開2008-125616(JP,A)
【文献】特開2017-196410(JP,A)
【文献】特開2005-185387(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016113(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
前記各フレーム画像間の画素値に基づいて、前記各フレーム画像間の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数を算出する処理と、
前記各フレーム画像間の画像の変化をフーリエ変換する処理と、
前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、
前記臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記臓器に特有の周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、
前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、
前記逆フーリエ変換後の各画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項2】
人間の臓器の画像を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算する処理をさらに含み、
前記フーリエ変換する処理は、前記各フレーム画像における前記各ブロック領域の画像の変化をフーリエ変換することを特徴とする請求項1記載の診断支援プログラム。
【請求項3】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
前記各フレーム画像間の画素値に基づいて、前記各フレーム画像間の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数を算出する処理と、
前記画像中の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記画像中の臓器に特有の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理と、
前記ディジタルフィルタで抽出された画素を含む画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項4】
臓器の画像を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算する処理と、をさらに含み、
前記画像中の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記画像中の臓器に特有の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理は、前記ブロック領域毎にディジタルフィルタで抽出することを特徴とする請求項3記載の診断支援プログラム。
【請求項5】
前記各フレーム画像間の画素値に基づいて、前記各フレーム画像間の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数の変化率を算出する処理と、
前記臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記臓器に特有の周波数の変化率に対応する色彩を選定する処理と、
前記画素値の変化率に前記選定した色彩を付して前記画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1記載の診断支援プログラム。
【請求項6】
臓器の画像を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化率を計算する処理と、をさらに含み、
前記臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記臓器に特有の周波数の変化率に対応する色彩を選定する処理は、前記ブロック領域毎に色彩を選定することを特徴とする請求項5記載の診断支援プログラム。
【請求項7】
前記ブロック領域は、ボロノイ分割の手法を用いて形成される
請求項2,4,6のいずれかに記載の診断支援プログラム。
【請求項8】
人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
前記各フレーム画像間の画素値に基づいて、前記各フレーム画像間の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数を算出する処理と、
前記取得したすべてのフレーム画像について、解析範囲を定義する処理と、
解析範囲を複数の領域に分割する処理と、
前記分割された各領域について、周期的な
動きを示す波形の一部または周波数の指標に基づいて、前記各領域を分類する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項9】
複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、前記各フレーム画像の画素値の変化を計算する
請求項1から請求項8のいずれかに記載の診断支援プログラム。
【請求項10】
複数のフレーム画像を複数のグループに分類し、各グループに属する複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出することを特徴とする請求項9に記載の診断支援プログラム。
【請求項11】
隣接するフレームであるかどうかを問わず、前記各フレーム画像間で、前記臓器を示す画素の相対的位置関係を維持した状態で、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算することを特徴とする請求項2、請求項4または請求項6記載の診断支援プログラム。
【請求項12】
X線によって撮影されたフレーム画像中、特定の領域の透過度から、変化した透過度を一定の形に戻す処理をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項9、請求項
10、請求項
11のいずれかに記載の診断支援プログラム。
【請求項13】
MRIによって撮影されたフレーム画像中、MRIの磁場が不均一である領域の信号値を補正し、磁場が均一であった場合に得られる画像に変換する処理をさらに含むことを特徴とする請求項1から請求項9、請求項
10、請求項
11のいずれかに記載の診断支援プログラム。
【請求項14】
隣接するフレームであるかどうかを問わず、前記各フレーム画像間で、前記臓器全体の変化の態様から変化率を算出し、算出した変化率に基づいて、前記ブロック領域の画像の変化を計算することを特徴とする請求項2、請求項4または請求項6記載の診断支援プログラム。
【請求項15】
前記変化率は、前記臓器におけるブロック領域の位置に応じて変化し、または前記臓器全体で一定であることを特徴とする請求項
14記載の診断支援プログラム。
【請求項16】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
前記各フレーム画像間の画素値に基づいて、前記各フレーム画像間の臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、
前記各フレーム画像間の画像の変化をフーリエ変換する処理と、
前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器の動きの周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、
前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、
前記逆フーリエ変換後の各画像を出力する処理と、
前記臓器の大きさが最大となるときの最大外縁を設定する処理と、
前記臓器の大きさが最小となるときの最小外縁を設定する処理と、
前記最大外縁および前記最小外縁を用いて、各画像におけるその他の大きさの臓器の外縁の係数を算出する処理と、
前記各画像の臓器の外縁の係数に対応する波形および前記波形の制御点をグラフ上に表示する処理と、
前記制御点の位置を変動させることによって、各画像の係数を変化させる処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項17】
前記グラフ上に、前記臓器の画像の画素平均値を表示することを特徴とする請求項
16記載の診断支援プログラム。
【請求項18】
前記臓器の画像を前記グラフと並置して表示することを特徴とする請求項
16または請求項
17記載の診断支援プログラム。
【請求項19】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
前記各フレーム画像における人間の臓器の画像を複数のブロック領域に分割する処理と、
前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算する処理と、
前記各ブロック領域の変化値をフーリエ変換する処理と、
周波数成分の構成比に基づいて、各領域を色分けする処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項20】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数を算出する処理と、
前記各フレーム画像間の画像の変化をフーリエ変換する処理と、
前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記臓器に特有の周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、
前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、
前記逆フーリエ変換後の各画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項21】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数を算出する処理と、
前記画像中の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記画像中の臓器に特有の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理と、
前記ディジタルフィルタで抽出された画素を含む画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項22】
人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、
複数のフレーム画像を取得する処理と、
特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数を算出する処理と、
前記各フレーム画像間の臓器
に特有の周期的な
動きを示す波形の一部、または前記各フレーム画像間の臓器に特有の周波数に基づいて、前記取得したすべてのフレーム画像について、解析範囲を定義する処理と、
前記解析範囲において、前記各フレーム画像間の変化率を算出する処理と、
前記各フレーム画像間の変化率に対応する色彩を選定する処理と、
前記選定した色彩を付して前記画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする診断支援プログラム。
【請求項23】
いずれかのフレーム画像と任意の間隔で選択された他のフレーム画像との差分若しくは比を算出する処理と、
前記算出された差分または比を用いて、前記各フレーム画像について設定された解析範囲を可視化する処理と、
を備えることを特徴とする請求項8記載の診断支援プログラム。
【請求項24】
前記各フレーム画像内の画素値を相対値または対数値として算出する処理と、
前記相対値若しくは対数値として表示されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として表示され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、
前記算出された比を可視化する処理と、を備え、
肺野の濃度変化または血管の位置関係に基づいて、一つ以上のフレーム画像の肺野領域の画素値を算出することを特徴とする請求項8記載の診断支援プログラム。
【請求項25】
いずれかのフレーム画像と任意の間隔で選択された他のフレーム画像との差分若しくは比を算出する処理と、
前記算出された差分または比を用いて、前記各フレーム画像について設定された解析範囲を可視化する処理と、
を備え、
アーティファクトを除外したフレーム画像の画素値を算出することを特徴とする請求項8記載の診断支援プログラム。
【請求項26】
前記各フレーム画像内の画素値を相対値または対数値として算出する処理と、
前記相対値若しくは対数値として表示されたいずれかのフレーム画像と前記相対値若しくは対数値として表示され任意の間隔で選択された他のフレーム画像との比を算出する処理と、
前記算出された比を可視化する処理と、
を備え、
アーティファクトを除外したフレーム画像の画素値を算出することを特徴とする請求項8記載の診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の画像を解析し、解析結果を表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心疾患死亡率が増加傾向にあり、有用で簡便な診断技術の必要性が高まっている。MRI診断技術は、急速な進歩を遂げており、短時間で多岐に渉る心臓の検査を行なうことができるようになっていることから、心臓領域の画像診断において、MRIの重要性が増している。「心臓MRI」では、「シネMRI」、「パーフージョン」、「遅延造影」、「BB(Black Blood)」法などの検査が行なわれている。特に、シネMRIは、超音波検査やSPECT検査等と比較して、観察範囲の制限がなく、任意の断面の観察が可能であり、再現性に優れているという特徴がある。このため、多くの医療施設において、一般的に撮像されている。シネMRIでは、例えば、心電図同期法を用いて、左心室全体を、「約10スライス/20フェーズ」のデータ収集を行なう。最近では、「Steady State法」を用い、血液と心筋との高いコントラストを得ることができるようになっている。また、「心機能解析」においても、MRIによる心機能の評価は、CTやLVG(左心室造影)、SPECTと比較しても、正確な値が得られ、必要性が高まっている。
【0003】
このように、心臓MRIは臨床的に有用であり、特に、シネMRIは、多くの医療施設で撮像されているのであるが、ソフトウェアを用いて画像が解析されることは少なかった。その理由は、従来の心機能解析に用いられるソフトウェアは、心筋の内外膜側の輪郭を抽出したり、修正したりするために、煩雑な操作が必要であったからであると言われている。また、心筋内外膜側の輪郭トレースに関しても、操作者個人の影響を受けやすいことから、解析結果の再現性についても課題とされてきた。さらに、心臓MRIが普及し、複数のメーカから提供されるMRI装置を使用する医療施設が増えている状況において、各社でシーケンスの名称が異なることから、データの扱いが容易ではないという課題も生じている。
【0004】
このような課題を解決するため、煩雑な心筋輪郭のトレースの労力を軽減するために、その精度を向上させ、仮に意図しないトレースがなされた場合であっても、自動的に補間処理を行なうことで、修正作業の軽減を可能とするソフトウェアが提供されている。このソフトウェアでは、MRI心機能解析のビューワにおいて、画像を並べて表示し、フリック操作をすることによって、ストレスの少ない画像観察が可能とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://www.zio.co.jp/ziostation2/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載されている技術のように、単にMRI画像を並べて表示するだけでは、医師が病態を把握することは容易ではない。このため、心臓の状態に即した画像を表示することが望ましい。すなわち、被写体である人体の心臓を把握し、心臓の波形若しくは周波数、または画像の変化傾向に基づいて、実際の動きを示す画像を表示することが望ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、臓器の動きを表示することが可能な診断支援プログラムを提供することを目的とする。より具体的には、計測しようとしている新たな対象のデータに対し、既に取得している波の形およびHzに対する一致率やその他の不一致率を数値化することによって、診断の補助となる数値を算出し、さらに、これらの数値を画像化することにより、診断の補助となる画像を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本願は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像間の臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記臓器の状態を特徴づける周期的な変化をフーリエ変換する処理と、前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器の動きの周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、前記逆フーリエ変換後の各画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
(2)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算する処理と、前記各フレーム画像における各ブロック領域の画像の変化をフーリエ変換する処理と、前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器の動きの周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像間の臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記画像中の臓器の状態を特徴づける周期的な変化の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理と、前記ディジタルフィルタで抽出された画素を含む画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
(4)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、臓器の画像を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算する処理と、前記ブロック領域毎に、前記画像中の臓器の動きの周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理と、をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
(5)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像間の臓器の状態を特徴づける周期的な変化率を算出する処理と、前記臓器の状態を特徴づける周期的な変化率に対応する色彩を選定する処理と、前記画素値の変化率に前記選定した色彩を付して前記画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
(6)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、臓器の画像を複数のブロック領域に分割し、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化率を計算する処理と、前記ブロック領域毎に、前記画素値の変化率に対応する色彩を選定する処理と、をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
(7)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記取得したすべてのフレーム画像について、解析範囲を定義する処理と、解析範囲をボロノイ分割の手法を用いて複数の領域に分割する処理と、前記分割された各領域について、周期的な変化に対して行われるいずれかの演算を実行する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0015】
(8)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人体の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記取得したすべてのフレーム画像について、解析範囲を定義する処理と、解析範囲を複数の領域に分割する処理と、前記分割された各領域について、周期的な変化の指標に基づいて、前記各領域を分類する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0016】
(9)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記臓器の状態を特徴づける周期的な変化をフーリエ変換する処理と、前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器の動きの周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、前記逆フーリエ変換後の各画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0017】
(10)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記画像中の臓器の状態を特徴づける周期的な変化の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理と、前記ディジタルフィルタで抽出された画素を含む画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
(11)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記臓器の状態を特徴づける周期的な変化率に対応する色彩を選定する処理と、前記画素値の変化率に前記選定した色彩を付して前記画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
(12)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、複数のフレーム画像を複数のグループに分類し、各グループに属する複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出することを特徴とする。
【0020】
(13)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、隣接するフレームであるかどうかを問わず、前記各フレーム画像間で、前記臓器を示す画素の相対的位置関係を維持した状態で、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算することを特徴とする。
【0021】
(14)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、X線によって撮影されたフレーム画像中、特定の領域の透過度から、変化した透過度を一定の形に戻す処理をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
(15)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、MRIによって撮影されたフレーム画像中、MRIの磁場が不均一である領域の信号値を補正し、磁場が均一であった場合に得られる画像に変換する処理をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
(16)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、隣接するフレームであるかどうかを問わず、前記各フレーム画像間で、前記臓器全体の変化の態様から変化率を算出し、算出した変化率に基づいて、前記特定のブロック領域の画像の変化を計算することを特徴とする。
【0024】
(17)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムにおいて、前記変化率は、前記臓器におけるブロック領域の位置に応じて変化し、または前記臓器全体で一定であることを特徴とする。
【0025】
(18)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、前記臓器の大きさが最大となるときの最大外縁を設定する処理と、前記臓器の大きさが最小となるときの最小外縁を設定する処理と、前記最大外縁および前記最小外縁を用いて、各画像におけるその他の大きさの臓器の外縁の係数を算出する処理と、前記各画像の臓器の外縁の係数に対応する波形および前記波形の制御点をグラフ上に表示する処理と、を含み、前記制御点の位置を変動させることによって、各画像の係数を変化させることを特徴とする。
【0026】
(19)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、前記グラフ上に、前記臓器の画像の画素平均値を表示することを特徴とする。
【0027】
(20)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、前記臓器の画像を前記グラフと並置して表示することを特徴とする。
【0028】
(21)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、前記各フレーム画像における人間の臓器の画像を複数のブロック領域に分割する処理と、前記各フレーム画像におけるブロック領域の画像の変化を計算する処理と、前記各ブロック領域の変化値をフーリエ変換する処理と、周波数成分の構成比に基づいて、各領域を色分けする処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0029】
(22)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記臓器の状態を特徴づける周期的な変化をフーリエ変換する処理と、前記フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器の動きの周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する処理と、前記一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換する処理と、前記逆フーリエ変換後の各画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0030】
(23)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記画像中の臓器の状態を特徴づける周期的な変化の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出する処理と、前記ディジタルフィルタで抽出された画素を含む画像を出力する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0031】
(24)また、本発明の一態様に係る診断支援プログラムは、人間の臓器の画像を解析し、解析結果を表示する診断支援プログラムであって、複数のフレーム画像を取得する処理と、特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する処理と、前記臓器の状態を特徴づける周期的な変化率に対応する色彩を選定する処理と、前記画素値の変化率に前記選定した色彩を付して前記画像をディスプレイに表示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、被写体である人体の心臓を把握し、心臓の波形若しくは周波数、または画像の変化傾向に基づいて、実際の動きを示す画像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態に係る診断支援システムの概略構成を示す図である。
【
図3A】特定ブロックの「intensity」変化と、それをフーリエ解析した結果を示す図である。
【
図3B】心拍に近い周波数成分を抜き出したフーリエ変換結果と、これを逆フーリエ変換して心拍に近い周波数成分の「intensity」変化を示す図である。
【
図3C】フーリエ変換後に得られたスペクトルのうち、ある一定の帯域を抽出する例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る画像処理の概要を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る画像処理の概要を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る画像処理の概要を示すフローチャートである。
【
図7A】人体の左肺を正面から表した模式図である。
【
図7B】人体の左肺を左側面から表した模式図である。
【
図8A】人体の左肺を正面から表した模式図である。
【
図8B】人体の左肺を左側面から表した模式図である。
【
図9A】人体の左肺を正面から表した模式図である。
【
図9B】人体の左肺を左側面から表した模式図である。
【
図10A】人体の左肺を正面から表した模式図である。
【
図10B】人体の左肺を左側面から表した模式図である。
【
図11】本発明における肺野検出方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明者らは、従来、臓器(例えば、心臓の心筋)の動き方を可視化する技術が実用化されていない点に着目し、臓器の動きのみならず、臓器の動きのずれや動いていない場所を表現することによって、医師の診断を支援することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、従来、心臓の画像処理技術では、フィルタリング処理がうまく適用できていなかったことから、心臓の画像に対し、狙った周波数を取り出すフィルタをかけて、見えにくかったものを見えるようにした。これにより、従来は、診断に熟練性を要したものが簡略化されると共に、動画像を定性化し表示内容に客観性を出すことが可能となった。本明細書では、臓器として、心臓を例に取って説明するが、本発明は、心臓に限定されるわけではなく、各種の臓器、血管にも適用可能であることはいうまでもない。
【0035】
本願発明では、心筋の動きが一定であることを前提とし、被験者の以前の画像との比較で判断したり、解析対象となる範囲と心筋全体を平均化したものとの比較で判断したり、正常画像との比較で判断したり、年齢的サンプルとの比較で判断したりすることが可能である。
【0036】
まず、本発明の基本的な概念について説明する。本発明では、人体における臓器の状態を特徴づける周期的な変化、例えば、心臓の断面積、表面積及び体積において、一定の周期で反復するように捉えられる動きに対し、全体若しくはある部分的な範囲について、時間軸における一定の反復若しくは一定の運き(ルーチーン)を、波として捉え、計測する。波の計測結果については、(ア)波の形態自体、若しくは、(イ)波の間隔(周波数:Hz)を用いる。
【0037】
心臓の画像では、同時期に同じようにリンクされる波が存在し得る。例えば、心拍であれば、以下の近似を概念することができる。
(ある大雑把な範囲のdensity変化の平均)≒(心拍)≒(心臓の変化)≒(心電図)≒(心臓の表面積及び体積の変化)
【0038】
本発明では、例えば、心臓に関し、局所心室壁の変形(壁厚拡張、壁厚収縮)に焦点を当てて解析することが可能であり、収縮期のthickness、拡張期のthickness、壁運動(外膜および内膜)を捉えて、周期的に表すことが可能である。さらに、心臓において、「(2×後壁壁厚)/(左室拡張末期径)」から求められる「relative wall thickness(RWT)」や、「(拡張末期容積-収縮末期容積)/(拡張末期容積)」から求められる「駆出率」を捉えて、周期的に表すことが可能である。
【0039】
本発明では、これらのいずれかのデータ、またはこれらを組み合わせたデータを用いて、より精度の高い画像の抽出を可能とする。この際、何度も相互的に計算することもある。その際、再度、結果に対するアーティファクト(artifact)を除外し、新しいデータ抽出波形や最初のベースとなるデータ波形、その他のモダリティなどの波形、周囲、複数回の波形から抽出して、機能の抽出を行なう。その際、回数は一回でも複数回でも良い。
【0040】
ここで、ベースデータを作る際、複数のモダリティ(例えば、ある一定のdensity、volumetryより構成される変化量、心臓の動きなど)、または、心拍などの複数回の波形測定により、お互いの成分抽出を補足し合い、精度を高めていく。これにより、アーティファクトの軽減、ライン(line)などのある一定の予想をもとに精度を高めることが可能となる。
【0041】
ここで、「density」とは、「密度」と訳されるが、画像においては、特定の領域における画素の「吸収値」を意味する。例えば、CTでは、空気は「-1000」、骨は「1000」、水は「0」として用いられている。
【0042】
本明細書では、「density」と「intensity」とを区別して用いる。「density」は、上述したように、吸収値を意味し、XPやXP動画の元画において、空気の透過性が高く、透過性の高い部分を白であることを数値にし、空気を「-1000」、水を「0」、骨を「1000」として表示するものとする。一方、「intensity」は、「density」から相対的に変化したもの、例えば、normalizedして濃度の幅、信号の程度に“変換”して表示したものとする。すなわち、「intensity」は、画像において、明暗や強調度などの相対的な値である。XP画像の吸収値を直接扱っている間は、「density」または「densityの変化(Δdensity)」として表す。そして、これを画像表現上の都合で、上記のような変換を行なって、「intensity」として表す。例えば、0から255の256階調にカラー表示する場合は、「intensity」となる。このような用語の区別は、XPやCTの場合にあてはまる。
【0043】
一方、MRIの場合は、空気を「-1000」、水を「0」、骨を「1000」と定めようとしても、MRIの画素値、測定機械の種類、測定時の人の体調、体つき、測定時間によって、値が非常に変化してしまうという事情があり、また、T1強調像などMRIの信号の採り方についても、その施設、測定機械の種類によって様々であり、一定ではない。このため、MRIの場合は、XPやCTの場合のような「density」定義ができない。このため、MRIでは、最初に描出する段階から、相対値を取り扱うこととしており、最初から「intensity」として表現する。そして、その処理する信号も「intensity」である。
【0044】
以上により、マスターデータを得ることが可能となる。上記マスターデータに対し、計測したい新たな対象について、上記マスターデータの波形、波のHzのある一定の幅、範囲で抽出する。例えば、心拍抽出のみや、血管抽出程度の枠組みとしての幅、範囲で抽出する。なお、この波形、Hzの幅に関しては、他の機能における波形要素、ノイズなどのartifact、他の同調性があると思われる他のmodalityの波形、複数回行なう再現性など用いて、相対的に、また、統計をもとに総合的に判断される。そこに調整、経験が必要となる(機械学習を適用することも可能である)。これは、幅、範囲を広げると他の機能の要素が入り始める一方、狭すぎると機能自体の要素がそぎ落とされてしまうので、そのレンジに関しては、調整が必要となるからである。例えば、複数回のデータがあると、レンジ、Hzと測定一致幅などが規定しやすい。また、お互いの成分抽出による軸、幅、範囲およびHzの揺らぎ、幅を推定することも可能である。すなわち、複数回の重ね合わせによって、Hzの軸設定が平均化、分散によって軸、幅、範囲、Hzの最適レンジ(range)が計算される。その際に他の行動のHz(ノイズ)が抽出され、その波があればそれが入らない程度についても相対的に計測していく場合がある。
【0045】
次に、その計測したい新たな対象のデータに対し、元々捉えられていた波の形、Hzに対する一致率やその他不一致率を数値化することで診断の補助となる数値を算定する。例えば、脈拍計、聴診の雑音排除と共に、マスターの病気の波形合致率を測定し、病気波形の一致率を算定することで診断補助器に応用することが可能となる。本明細書では、画素値の同調一致率を用いることができる場合について説明する。
【0046】
[同調一致率について]
本明細書では、画像変化の傾向を、同調一致率として説明する。例えば、心筋の領域を検出し、複数のブロック領域に分割し、各フレーム画像におけるブロック領域の平均density(画素値x)を算出する。そして、平均density(画素値x)の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像におけるブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出する。一方、心筋の最小位置から最大位置の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の心筋の変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出する。
【0047】
ここで、y’=x’若しくはy=ax(aは心筋の振幅の数値やdensityの数値の係数)となる場合は、完全一致である。しかし、完全一致の場合のみが有意義な値であるわけではなく、ある一定の幅を持った値を抽出すべきである。そこで、本発明の一態様では、対数(log)を用いて、一定の幅を以下のように定める。すなわち、y=xの割合(%)で計算すると、同調の完全一致は「log y’/x’=0」である。さらに、同調一致率の範囲が狭いもの(数式的に狭い)範囲を抽出する場合は、例えば、0に近い範囲で「log y’/x’=-0.05~+0.05」と定め、同調一致率の範囲が広いもの(数式的に広い)範囲のであれば例えば0に近い範囲で「log y’/x’=-0.5~+0.5」と定める。この範囲が狭いものであればあるほど、また、その範囲内で一致する数値が高いほど、一致率が高いといえる。画素のピクセルごとにこの比の値を求めて個数をカウントすると、健康な人の場合は、完全一致の場合をピークとした正規分布が得られる。これに対し、疾患を有する人の場合は、この比の値の分布が崩れることとなる。なお、上記のように、対数を用いて幅を定める手法は、あくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0048】
すなわち、本発明は、(ある大雑把な範囲のdensity変化の平均)≒(心拍)≒(心臓の変化)≒(心電図)≒(心臓の表面積及び体積の変化)として、“画像抽出”を行なうものであり、対数を用いる手法以外の手法も適用可能である。このような手法により、周波数同調性画像を表示することが可能となる。
【0049】
血管の場合は、一連の心臓の収縮(y)に呼応して生じる一連のdensityの変化(x(心筋における一波形))において、そのままの形でわずかな時間の遅れ(位相の変化)が存在するため、y=a’(x-t)と表される。完全一致の場合は、t=0であるため、y=x、またはy=a’xである。ここで、同調一致率の範囲が狭いもの(数式的に狭い)範囲を抽出する場合は、例えば、0に近い範囲で「log y’/x’=-0.05~+0.05」と定め、同調一致率の範囲が広いもの(数式的に広い)範囲のであれば例えば0に近い範囲で「log y’/x’=-0.5~+0.5」と定める。この範囲が狭いものであればあるほど、また、その範囲内で一致する数値が高いほど、一致率が高いといえる。
【0050】
その他の血管の場合は、上記の「心臓に呼応する部分」が除外され、肺門からプロットした中枢側のdensityを用いても良い。末梢の血管の場合も同様に取り扱うことができる。
【0051】
さらに、循環器についても本発明を適用することができ、例えば、心臓のdensityの変化が、肺門部~末梢肺野への血流のdensityの変化に直接関連し、一連の心臓のdensityの変化や肺門部のdensityの変化は、一種の変換を受けてそのまま伝播される。それは、心臓のdensityの変化と肺門部のdensityの変化の関係より若干の位相の差を得て生じると考えられる。また、肺門部などのdensityの変化が、そのまま肺野の血流へのdensityの変化に関連するので、そのままの率で反映したもの(y≒xの一致率の関係)で同調性を表現することも可能である。また、頸部血管系においても、同様に、近傍の中枢の心臓血管でプロットしたdensityの変化が、直接関連し、またはわずかな位相を伴って関連していると考えられる。そして、そのdensityが、背景に応じて変動し、伝搬するときにはdensityの変化の様が伝わるとして、同調一致率として考察することが可能となる。
【0052】
ここで、1枚の画像の変化量と1枚の画像の変化率のそれぞれにおいて、心臓のdensityから変化量を1としたときの相対的な値(Standard Differential Signal Density/Intensity)として表示しようとすると、(1)画像1枚ごとの差の画像で、1枚ごとに1とした時の画像(通常想定)、(2)1枚ごとの差の画像でdensity(変化量や変化率)を足した心拍を1としたときの割合、さらに、(3)複数回の撮影におけるそれぞれの心拍におけるdensity総量を1としてその割合、について、それぞれ、変化量、変化率の描出を行なうことができる。
【0053】
また、MRなどの3Dの場合であるが、心拍のintensity(MRの場合)やdensity(CTの場合)を合計した値(その際はそれを1としたとき)、そのintensityやdensityの差は心拍(安静時や負荷時でも)の「peak flow volume data」に換算でき、その値をそのintensityやdensityの割合を出すことによって、少なくともMRIやCTなどでの「3D×time」の計算する場合に、心臓における実測動作量、動作率を換算することができる。同様に、1回心拍出量を入力することで、肺野の「flow」における「capillary phase」における分布が、肺血流末梢量の分布、容量に換算する推定値を提示することも可能である。
【0054】
すなわち、(ある大雑把な範囲のdensity変化の平均)≒(心拍)≒(心臓の変化)≒(心電図)≒(心臓の表面積及び体積の変化)が成り立ち、10%や20%の1枚の変化量だけを取り出す場合は、(すべての枚数)×(その時間の変化量)を計算することによって、推定値を算出することが可能である。
【0055】
そして、計測したい新たな対象のデータに対し、元々捉えられていた波の形、Hzに対する一致率やその他不一致率を画像化することにより、診断の補助となる画像を算定する。例えば、通常の嚥下と患者の嚥下の違いを可視化し、今まで行なっていた動作と現在行なっている動作との相違を表す。例えば、歩く足の運び方、スイングの変化、相違などである。
【0056】
その抽出変化量を可視化して、画像に描出する。これが、以下に説明する心機能解析、血管(血流)解析である。そして、心筋の変化率を可視化する。その際に、再度結果に対するアーティファクトを除外し、新しいデータ抽出波形や最初のベースとなるデータ波形、その他のモダリティなどの波形、周囲、複数回の波形から抽出して、機能の抽出を行なう場合もある。アーティファクトを除外する手法は、後述する。
【0057】
また、上記抽出したもの以外から抽出した変化成分を除外したものでも特徴量を把握する場合がある。例えば、腹部腸管の動きを把握する際、腹部から呼吸の影響と血管の影響を除外して、腹部腸管の動きの抽出を図る。
【0058】
また、その抽出による変化率より、ある一定の撮影時間がかかる画像(CT,MRI,特殊レントゲン撮影、PET/シンチグラフィーなど)に補正をかけて、より明瞭で正確な画像を提供する。例えば、上行大動脈心臓補正、心臓形態補正、気管支のブレの補正、胸郭周囲の評価、息止めできない状態での撮影(患者撮影に数分かかる場合もある)に有効となる。
【0059】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る診断支援システムの概略構成を示す図である。この診断支援システムは、コンピュータに診断支援プログラムを実行させることにより特定の機能を発揮する。基本モジュール1は、心機能解析部3、血流解析部5、その他の血流解析部7、フーリエ解析部9、波形解析部10および視覚化・数値化部11から構成されている。基本モジュール1は、入力インタフェース13を介してデータベース15から画像データを取得する。データベース15には、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)による画像が格納されている。基本モジュール1から出力された画像信号は、出力インタフェース17を介してディスプレイ19に表示される。次に、本実施形態に係る基本モジュールの機能について説明する。なお、入力画像については、データベース15に限定されるわけではなく、入力インタフェース13を介して他の外部装置から画像を入力したり、主導により入力することも可能である。
【0060】
[動的部位検出の精緻化]
肺野、胸郭、心臓などの動的部位のコントラストは、ラインに沿って一様でない場合がある。その場合はノイズ除去に使用する閾値を変更して、複数回検出処理を行なうことによって、動的部位の形状をより正確に検出することができる。例えば、左肺において、横隔膜のラインのコントラストは、人体内部にいくに従って弱くなる傾向がある。また、心尖部・心基部は動きが小さく、心臓中央部では動きが大きくなるという事情もある。このような場合、ノイズ除去に利用した閾値の設定を変えたり、画素値に異なる係数を乗算することによって、横隔膜の左半分の残りの部分や、心臓の動きの大きい部位や小さい部位を検出することができる。この処理を複数回繰り返すことによって、横隔膜全体の形状を検出したり、心臓全体の形状を検出することが可能となる。このように、本手法によって、横隔膜の位置だけでなく、胸郭や心臓、動的部位の形状について線や面の変化率や変化量を数値化することも可能となり、新たな診断に役立てることができる。
【0061】
このように検出された横隔膜や心臓の位置または形状を診断に利用することが可能となる。すなわち、横隔膜や心臓の座標をグラフ化し、上述したように計算された曲線(局面)、若しくは直線を用いて、胸郭、横隔膜や心臓の座標の計算をし、また、心拍や血管拍、肺野の「density」などを、周期に対応した位置、座標としてグラフ化したりすることが可能である。このような手法は、呼吸や心拍動と連動する動的部位についても適用可能である。
【0062】
このような手法により、吸気、呼気、および収縮期や拡張期でのHzだけでなく、横隔膜または呼吸と連動する動的部位の周波数や心臓の動的部位の周波数(Hz)が変化した場合、その変化に応じた周波数帯域で計測できるようになる。そして、BPF(band pass filter)のスペクトル抽出の際に、一定の範囲において、呼吸や心臓それぞれの状態に応じてBBFを据えること、呼吸や心臓それぞれの「reconstructionphase」でBPFの位置の軸が変動し、最適な状態が生じえること、それを合わせた変動性のBPFを作成することが可能となる。これにより、呼吸が遅くなったり、止めたとき(Hz=0)のように、呼吸のリズムの変動があったり、心臓の一時的な細動(極端な高周波数)や止まった時(Hz=0)があっても、それに応じた画像を提供することが可能となる。
【0063】
また、呼吸要素(呼気または吸気の全部または一部を含む呼吸の要素)が呼気または吸気の全体に占める割合に基づいて、呼気または吸気の全体の周波数を計算するようにしても良い。同様に心臓の動的要素(収縮期または拡張期の全部または一部を含む心臓動的要素)が心臓の収縮期や拡張期、また心臓の一回拍動、計測全体の拍動に占める割合に基づいて、収縮期または拡張期、周波数要素やその他全体の周波数を計算するようにしてもよい。なお、横隔膜や心臓の検出において、複数回施行し、信号または波形が安定しているものを選択するようにしても良い。以上により、検出した横隔膜や心臓の位置若しくは形状、または呼吸と連動する動的部位の位置若しくは形状から、呼吸要素や心拍動要素の少なくとも一つの周波数を計算したり、心拍を現す周波数を計算することが可能となる。横隔膜や心臓、または動的部位の位置または形状が把握できると、呼吸要素や心拍動要素の周波数や心拍を把握することが可能となる。この手法によれば、波形の一部を区切ったとしても、その後の波形を追跡することができる。このため、呼吸要素や心拍動要素の周波数が途中で変わっても、元々の呼吸要素や心拍動要素を追従することが可能である。また、心臓の拍動などが突然変わることがあるが、心血管、心血管波形に関する臓器についても同様に適用することが可能となる。
【0064】
[肺野検出]
本発明では、上記の「動的部位検出の精緻化」の一態様として、肺野検出の精緻化を図ることが可能である。この処理では、最大肺野と最小肺野を設定した後、その値を用いてその他の肺野を計算する。
図11は、本発明における肺野検出方法の一例を示す図である。この方法では、「B-spline曲線」を用いて、「各画像の係数」を表す。
図11では、波形Xが、「肺野を示す各画像Lの係数」を表しており、左から右の方向へ、1枚目の画像の係数、2枚目の画像の係数...となっている。
図11中の制御点Yを動かすと「各画像の係数」が滑らかに変化する。本発明では、このように、係数のグラフを直接編集することが可能となっている。
図11において、「灰色の折れ線Z」は「各画像の画素平均値」を表す。至適条件で撮影すると、肺野の大きさの変化と画素平均値の変化が一致する。ここで、この画素平均値をカーブフィッティングで平滑化して、直接「係数」として用いることもできる。心臓、その他心血管の周波数に携わる臓器についても同様に適用することが可能となる。
【0065】
[心機能解析]
図2は、心臓の概略構成を示す断面図である。「心機能」とは、一般的に「血液を体内に循環させる左心室のポンプ機能である」とされている。「虚血性心疾患」、特に、「心筋梗塞」では、患者の予後を推定する上で、心機能解析は重要である。例えば、左室駆出率(EF)の値が低下すると、心臓のポンプとしての出力が低下し、全身に十分な血液を送出することができなくなる。他に、心機能として、左室拡張末期容積(EDV)、左室収縮末期容積(ESV)、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、心係数(CI)がある。心筋の局所的評価としては、
図2Aの軸線Aと直交する平面による断面である
図2Bおよび
図2Cに示すように、壁厚、壁運動、壁厚変化率等を示した「Bull's eye map」が用いられている。この「Bull's eye map」は、心尖部の断面を円の中央に配置し、その外側へ同心円状に短軸断層像を順に並べ、心基部の断面を最も外側に配置するように表示された画像である。
【0066】
本実施形態では、「Bull's eye map」を用いると共に、以下の指標に基づいて心臓の動きの周期を解析する。すなわち、心臓領域内のある一定領域におけるdensity/intensityを用いて、心臓の動きの周期を解析する。また、X線(その他CT、MRIなどの複数種類のモダリティ)の透過性が高い部位で測定されるある一定のvolume density/intensityで構成される範囲、スパイログラムなどの他の測定方法から得られるデータや外部入力情報を用いても良い。なお、一心拍毎の解析結果を比較し、複数のデータから傾向を解析して、データの確度を高めることが望ましい。また、心臓の縁を特定し、この心臓の縁の変化に基づいて、周波数を取得することも可能である。さらに、肺野の辺縁を特定し、この辺縁の動きから周波数を取得することも可能である。
【0067】
[血管拍解析]
本実施形態では、以下の指標に基づいて血管拍を解析する。すなわち、心電図や脈拍計等の他のモダリティの計測結果、または肺輪郭から心臓・肺門位置・主要血管を特定し、各部位のdensity/intensityの変化を用いて血管拍を解析する。また、マニュアルで画像上にプロットし、対象部位のdensity/intensityの変化を解析しても良い。そして、心拍または血管拍から得られる心拍要素を用いることも可能である。なお、一拍毎の解析結果を比較し、複数のデータから傾向を解析して、データの確度を高めることが望ましい。また、各部位のdensity/intensityの抽出は、複数回実施したり、一定の範囲に対して行うことで精度を高めることが可能となる。また、心血管拍周波数もしくは周波数帯を入力する方法もある。
【0068】
[心臓領域の同定]
データベース(DICOM)から画像を抽出し、上記の心機能解析結果を用いて、心臓領域(特に心筋)を自動検出する。次に、心筋を複数のブロック領域に分けて、各ブロック領域の変化を計算する。ここで、撮影速度に応じてブロック領域の大きさを定めても良い。撮影速度が遅い場合は、あるフレーム画像の次のフレーム画像で対応する部位が特定しにくくなるため、ブロック領域を大きくする。一方、撮影速度が速い場合は、単位時間当たりのフレーム画像数が多いため、ブロック領域が小さくても追従することが可能となる。また、心臓の動きの周期のうちどのタイミングを選ぶかに応じて、ブロック領域の大きさを計算しても良い。ここで、心筋の領域のずれを補正することが必要になる場合がある。その際には、心臓の動きを同定し、また、心臓の輪郭の相対位置を把握し、その動きに基づいて相対的に評価する。なお、ブロック領域が小さすぎると、画像のちらつきが発生する場合がある。これを防止するため、ブロック領域は一定の大きさを有する必要がある。
【0069】
[ブロック領域の作成]
次に、心筋を複数のブロック領域に分ける手法について説明する。
図2Bおよび
図2Cは、心筋を、心臓の中心から放射状に分割する手法を示す図である。心臓の領域は、心臓の動きおよび血管の位置関係を同定し、心臓の輪郭の相対的位置を把握し、その動きに基づいて相対的に評価すべきものである。このため、本願発明では、心臓の輪郭を自動検出した後、心筋の領域を複数のブロック領域に分割し、各ブロック領域に含まれる画像の変化の値(画素値)を平均化する。その結果、心臓の形態が時間の経過によって変化しても、注目する領域の経時的変化を追跡することが可能となる。
【0070】
一方、心臓の領域を特定することなくブロック領域に分割すると、心臓の経時的変化により、注目領域が心臓の領域から外れ、意味のない画像となってしまう。また、心拍もしくは周波数帯を入力する方法もある。なお、これらの手法は、三次元立体画像にも適用可能である。3Dの立体画像におけるピクセルを一定にすることによって、3Dについても領域分割の計算ができる。なお、このような相対的位置の動きに基づく相対的な評価は、隣接するフレーム画像間でそれぞれ行なっても良いし、2枚ごと、3枚ごとというように、整数倍ごとに行なっても良い。また、数枚を一まとまりにして、このまとまり毎に処理を行なっても良い。
【0071】
図7Aは、人体の左肺を正面から表した模式図であり、
図7Bは、人体の左肺を左側面から表した模式図である。
図7Aおよび
図7Bは、どちらも吸気、すなわち、息を吸った状態の肺を表している。
図8Aは、人体の左肺を正面から表した模式図であり、
図8Bは、人体の左肺を左側面から表した模式図である。
図8Aおよび
図8Bは、どちらも呼気、すなわち、息を吐いた状態の肺を表している。これらの図に示されるように、呼吸の際、肺野の形態は大きく変化するが、横隔膜側の肺野の変化率は大きく、横隔膜と反対側の肺野の変化率は小さい。本発明では、この変化率に応じて肺野内の各領域の位置を変化させる。これにより、肺野領域内における各領域の相対的位置関係に基づく相対的な評価を行なうことが可能となる。なお、肺野の変化率(例えば、平均変化率)に基づいて、肺野領域内に一定の変化率で相対的位置関係を表すこともできるし、横隔膜からの距離に応じて肺野領域内で変化率を適応的に変化させても良い。このように、肺野領域における変動率を用いることによって、呼吸周期と同期する画像を表示することが可能となる。
【0072】
図9Aは、人体の左肺を正面から表した模式図であり、
図9Bは、人体の左肺を左側面から表した模式図である。
図9Aおよび
図9Bは、どちらも吸気、すなわち、息を吸った状態の肺を表している。
図10Aは、人体の左肺を正面から表した模式図であり、
図10Bは、人体の左肺を左側面から表した模式図である。
図10Aおよび
図10Bは、どちらも呼気、すなわち、息を吐いた状態の肺を表している。例えば、
図9Aおよび
図9Bに示すように、吸気の状態で、肺野領域内のある場所にマーカーP1をプロットしたとする。マーカーP1は、二次元座標で定められる固定点であるとすると、呼気の状態であっても座標は変わらないため、
図10Aおよび
図10Bに示すように、マーカーP1は同じ位置に存在する。一方、本発明では、上記のように、肺野領域全体に対する相対的位置関係で評価するため、呼気の状態では、マーカーP1の位置ではなく、マーカーP2の位置に移動することになる。このときのベクトルを用いて、吸気の際にプロットした点と、呼気の際の移動先を特定した点とを評価することも可能である。
【0073】
領域を分割する場合は、ボロノイ分割(ティーセン分割)を適用することが可能である。このボロノイ分割とは、
図2Dに示すように、「隣り合う母点間を結ぶ直線に垂直二等分線を引き、各母点の最近隣領域を分割する手法」である。このようなボロノイ分割を適用することによって、計算時間を短縮させることが可能となる。さらに、隣り合う母点間を結ぶ直線を引く場合に、解析対象に応じて、重みづけをしても良い。例えば、肺の動脈の領域を分割する際に、太いところは重みづけを高くし、細いところでは重みづけを低くするようにしても良い。これにより、処理負担の軽減と共に、解析対象に応じた分割をすることが可能となる。なお、分割されて生じた複数のブロック領域については、画素値の変化(周期的な変化)等の指標に基づいて、分類する処理を行なっても良い。
【0074】
このように領域を複数のブロック領域に分割した後、各ブロック領域と、心臓等の動的部位との相対位置に基づいて、各ブロック領域の画像の変化を計算する。ここで、ピクセルとしてのmass自体の範囲のみを一つの単位として信号の差分をとるだけでなく、massより小さな範囲、若しくはmassより大きく、周囲を囲むような大きな範囲において、信号の差分をとるようにしても良い。さらに、横隔膜近傍などでは上下方向の範囲のみを大きくしたり、他の動的部位では左右方向の範囲のみを大きくしたり、範囲の形状を変形させたり、ピクセルの領域を連結させたりしても良い。また、一つの差分または複数の差分を計算した後、全体の肺野や心臓の形態に合わせて再度massの形態を規定し直すことが望ましい。例えば、画像の1枚目から2枚目に対して処理を行なった後、さらに、2枚目の画像でもう一度massの形態を形に合わせて作成し、2枚目から3枚目と比較するようにしても良い。
【0075】
以上の説明では、臓器の動きを考慮した「相対的位置関係」について説明したが、本発明は、これに限定されるわけではなく、複数のフレーム画像内の「各画素の絶対的位置関係」を維持した状態で画像処理をすることも可能である。「各画素の絶対的位置関係」とは、フレーム画像上に二次元座標軸を定義したときに、その二次元座標軸に基づいて特定される座標を有する画素同士の関係のことである。すなわち、注目画素を不変として画素処理をする手法となる。「各画素の絶対的位置関係」を維持した状態での処理は、複数のフレーム画像を前提とするが、フレーム画像の枚数は特定されない。複数のフレーム画像を複数のグループに分類して、各グループに均等の枚数のフレーム画像を含めても良いし、各グループで異なる枚数のフレーム画像を含めても良い。
【0076】
すなわち、複数のフレーム画像を複数のグループに分類し、各グループに属する複数のフレーム画像内の各画素の絶対的位置関係を維持した状態で、臓器の画素値の変化、臓器の中心から外縁までの距離の変化、または臓器の体積の変化を算出する。これにより、画素値が多少変化したとしても均等な画素値として取り扱うことができ、データ量の削減、処理工程の削減を図ることが可能となる。
【0077】
さらに、相対的位置関係ではなく、絶対的位置関係でもない位置関係が観念し得る。すなわち、特定のフレーム画像内で特定の座標を有する点Pを定め、次以降のフレーム画像内で上記特定の点とは異なる座標を有する他の点Qを定めることができるが、この場合、ベクトルPQの大きさは臓器の動きに対して小さいものとする。さらに、点Qに対して、次以降のフレームで点Qとはわずかに異なる座標を有する他の点Rを定める。この操作を繰り返すことによって、特定の点Pに対してわずかなずれを有する他の点を、フレーム画像毎に抽出し、本実施形態を適用する。具体的には、複数のフレーム画像を取得し、特定のフレーム画像内の各画素に対して、次以降のフレーム画像内で前記各画素とは異なる座標を有する画素を抽出し、臓器の状態を特徴づける周期的な変化を算出する。
【0078】
そして、臓器の状態を特徴づける周期的な変化をフーリエ変換し、フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、臓器の動きの周波数に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出し、一定の帯域から抽出したスペクトルに対して逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換後の各画像を出力する。また、画像中の臓器の状態を特徴づける周期的な変化の周波数に対応して変化する画素をディジタルフィルタで抽出し、ディジタルフィルタで抽出された画素を含む画像を出力しても良い。また、臓器の状態を特徴づける周期的な変化率に対応する色彩を選定し、画素値の変化率に前記選定した色彩を付して画像をディスプレイに表示しても良い。これにより、臓器の動きを表現することが可能となる。
【0079】
次に、アーティファクトを排除して画像データを補間する。すなわち、解析範囲内に骨などが含まれるとノイズとして表れてしまうため、ノイズカットフィルタを用いてノイズを除去することが望ましい。X線画像においては、通例では、空気を-1000とし、骨を1000としているため、透過性が高い部分は画素値が低く、黒く表示され、透過性の低い部分は、画素値が高く、白く表示される。例えば、画素値を256階調で表す場合、黒は0で白は255となる。
【0080】
心臓の領域内で、血管や骨が存在する位置は、X線が透過し難いため、X線画像の画素値が高くなり、X線画像は白くなる。その他CT、MRIにおいても同様のことが言える。ここで、上記の心機能解析の結果から、一心拍あたりの波形に基づいて、同一位相の値を用いてデータを補間し、アーティファクトを排除することが可能となる。また、「座標が異なること」、「画素値が極端に変動すること」、「周波数やdensityが異常に高くなること」を検出した場合に、それらに対してカットオフを行ない、残りの得られた画像に対して、例えば、最小二乗法等を用いて連続的で滑らかな波の形を同定することによって、心臓の動きのHz計算、心筋の領域の調節に使用できるようにしても良い。また、画像を重ね合わせる場合、(1)前後で片方の画像を取得した取得比較画像をその座標のまま重ねる場合と、(2)前後片方の画像をbaseに取得した後、画像を相対的に拡張してその相対的位置情報をbaseに重ねる方法とがある。以上のような手法によって、心臓の領域の形態を修正したり、ブロック領域の画像の変化を修正したりすることが可能となる。
【0081】
ここで、時間軸における「reconstruction」について説明する。例えば、15f/sの吸気時間が2秒の場合、30+1枚の画像が得られる。その場合、10%ずつの「reconstruction」は、単純に3枚ずつ重ね合わせれば実施できる。その際、例えば、0.1秒が10%で、その画像が0.07秒と0.12秒の写真しか取得していない場合は、0.1秒の「reconstruction」が必要となる。その場合、10%前後の画像の中間の値(両者の平均)値を与えて「reconstruction」を行なう。また、時間軸で捉え、その時間の割合で係数を変えても良い。例えば、時間軸の差があって、0.1秒の撮影の値がなく、0.07秒と0.12秒の撮影時間があるときは、「(その0.07秒の値)×2/5+(0.12秒の値)×3/5」と計算し直して、「reconstruction」を行なうことができる。なお、「Maximum Differential Intensity Projection」の0~100%を含み、10%から20%の「reconstruction」や、10%から40%の「reconstruction」など、厚みを持たせて計算することが望ましい。このように、撮影していない部分についても、1心拍割合での「reconstruction」を行なうことが可能である。なお、本発明は、心臓、血流その他これらと連動する一連の動きに対しても同様に「reconstruction」を行なうことが可能である。
【0082】
[フーリエ解析]
上記のように解析した心臓の動きの周期および血管拍周期に基づいて、各ブロック領域のdensity/intensityの値や、また、その変化量について、フーリエ解析を実施する。
図3Aは、特定ブロックのintensity変化と、それをフーリエ解析した結果を示す図である。
図3Bは、心拍に近い周波数成分を抜き出したフーリエ変換結果と、これをフーリエ逆変換して心拍に近い周波数成分のintensity変化を示す図である。例えば、特定ブロックのintensity変化をフーリエ変換(フーリエ解析)すると、
図3Aに示すような結果が得られる。そして、
図3Aに示した周波数成分から、心拍に近い周波数成分を抜き出すと、
図3Bの紙面に対して右側に示すような結果が得られる。これをフーリエ逆変換することによって、
図3Bの紙面に対して左側に示すように、心拍の変化に同調したintensity変化を得ることができる。
【0083】
ここで、周波数成分からなるスペクトルに対してフーリエ逆変換を行なう際に、心拍や血流のdensityから特定される周波数要素(心拍、心血管拍周波数)と、スペクトルの帯域(BPFを用いても良い)とを両方を加味し、または、そのどちらかの要素に基づいてフーリエ逆変換を行なうようにしても良い。
【0084】
なお、フーリエ変換を実行する際には、短時間で計算ができるように、AR法(Autoregressive Moving average model)を用いることが可能である。AR法では、自己回帰移動平均モデルにおいて、ユールウォーカー方程式(Yule-walker equiation)やカルマンフィルタを用いる方法があり、そこで導きだされるユールウォーカー推定値(Yule-walker estimates)、PARCOR法、最小二乗法を用いて、計算を補足することができる。これにより、より早く、リアルタイムに近い画像を取得したり、計算の補助やアーティファクト(artifact)の補正を行なたりすることが可能となる。このようなフーリエ解析により、各ブロック領域における画像の性質を抜き出して表示することが可能となる。
【0085】
ここで、各フレーム画像における各ブロック領域の画像の変化をフーリエ変換し、フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、心臓の動きの周期に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出することができる。
図3Cは、フーリエ変換後に得られたスペクトルのうち、ある一定の帯域を抽出する例を示す図である。合成波のスペクトルの周波数fは、合成元となる各周波数f
1(心拍成分)、f
2(病的血流成分)との間に、「1/f=1/f
1+1/f
2」という関係が成り立っており、スペクトルを抽出する際に、以下の方法を採ることが可能である。
【0086】
(1)心拍のスペクトル比率が高い部分を抽出する。
(2)心拍/病的血流に対応するスペクトルのピークとその近辺の複数の合成波のピークの中間で区切り、スペクトルを抽出する。
(3)心拍/病的血流に対応するスペクトルのピークとその近辺の複数の合成波のスペクトルの谷の部分で区切り、スペクトルを抽出する。
(4)心拍成分(血流成分)から、ある一定の帯域幅に含まれるスペクトルを抽出しても良い。この場合、複数のスペクトルが重なったスペクトルが得られるが、各成分を分離することで、各スペクトルを復元することが可能となる。
【0087】
上述したように、本発明では、固定的なBPFを用いているわけではなく、心臓の動きの周期に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出する。さらに、本願発明では、フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、フレーム画像から得られる心臓の動き以外の周波数(例えば、また、各部位のdensity/intensity、心拍または血管拍から得られる心拍要素)、またはオペレータによって外部から入力された周波数に対応するスペクトル(例えば、スペクトルモデル)を含む一定の帯域内のスペクトルを抽出することも可能である。
【0088】
ここで、合成波のスペクトルの成分は2つの成分(心拍、病的血流)のみであれば50%+50%となり、3つの成分の場合は、1/3ずつの配分となる。このため、心拍成分のスペクトルが何%、病的血流成分のスペクトルが何%と、スペクトルの成分およびその高さからある程度、合成波のスペクトルを計算することができる。その割合(%)が高いところでスペクトルを抽出することが可能である。すなわち、病的血流成分/心拍成分と合成波成分との割合を計算し、病的血流成分/心拍成分の高いスペクトル値を計算して抽出する。なお、横隔膜の同定等において、心拍や心臓血管の周波数を取得したdataから、Hz(周波数)が比較的一定になる部位、すなわち、Hzの変化が少ない領域に対応するスペクトルやその重ね合わせのみを抽出する場合もある。また、スペクトルの帯域を定める場合、Hzの変化が生じたrangeおよびその周囲の領域でスペクトルの帯域を定める場合もある。以上により、心臓の動きの周期や血管拍周期に完全一致する場合のみならず、考慮した方が良いスペクトルも抽出することができ、画像診断に寄与することが可能となる。
【0089】
なお、「心拍」や「呼吸」は、特定の周波数帯域に含まれることが知られている。このため、呼吸の場合は、例えば、「0~0.5Hz(呼吸数0~30回/分)」、循環器の場合は、例えば、「0.6~2.5(心拍/脈拍数36~150回/分)Hz」というフィルタを用いて、予めこのフィルタで呼吸周波数や循環器の周波数を特定していくことも可能である。これにより、周波数同調性画像を表示することが可能となる。これは、心臓のdensity変化を取得する際に、呼吸(肺)のdensity変化を拾ってしまったり、肺のdensity変化を取得する際に、心臓のdensity変化を拾ってしまったりする場合があるからである。
【0090】
[波形解析]
心臓、血管、脳波、その他検査にて一定の波形として認識されるものについて波形解析を行なう。足の動きなど、一定の状態で繰り返される動作を含む。また、繰り返し行なわれる動作のHzを重ねて同じ傾向があるのかどうかを解析する。波形データを比較し、2つのデータの一致率を算出する。そして、フーリエ解析後のデータを比較する。
【0091】
[ディジタルフィルタ]
なお、上述したフーリエ解析の代わりに、ディジタルフィルタを用いることも可能である。ディジタルフィルタは、信号の周波数成分を調整するために、信号の周波数成分を抽出する数学のアルゴリズムである「高速フーリエ変換および逆高速フーリエ変換」に基づいて、時間領域と周波数領域との変換を行なうものである。これにより、上述したフーリエ解析と同様の効果を得ることが可能となる。
【0092】
[視覚化・数値化]
上記のように解析した結果を、視覚化および数値化する。standard uptakeとして、計測された心臓の領域全体のdensity/intensityから平均値を1として相対的/対数的に値を表示することがある。また、血流の方向だけを採用するため、特定方向への変化を切り出すことがある。これにより、意味のある方法のデータだけを取り出すことが可能となる。心臓の領域の同定結果を用いて、解析範囲の変化に追従して疑似カラー化を行なう。すなわち、フェーズに合わせた特定の形(最小、最大、平均、中央値)に沿って、各個人(被写体)の解析結果を相対的な領域に当てはめる。また、複数の解析結果を比較できる特定の形状・フェーズに変形させる。
【0093】
さらに、「標準心臓」を作成する際、上記心臓の動きの解析の結果を用いて、心臓(心筋)内の相対的な位置関係を計算する。なお、「標準心臓」は、複数の患者の心臓の外郭ライン、densityなどを総合的に平均化したラインを用いて作成する。なお、この考え方は、心臓に限らず、肺(標準肺)や他の臓器(標準臓器)に適用することが可能である。例えば、「臓器モデル」を、年齢別、性別、国別、疾患の程度による別に作成することが可能である。
【0094】
また、以上のような心臓の画素値の変化の他、心臓の中心から心筋までの距離(
図2Bおよび
図2Cに示す距離L)の変化を算出してフーリエ解析を行なうことも可能であり、さらに、心臓の体積の変化を算出してフーリエ解析を行なうことも可能である。
【0095】
「標準心臓」が作成できると、上述したように、同調性、一致率、不一致率を数値化して提示することが可能となる(周波数同調性画像の表示)。また、正常な状態からの逸脱が表示できる。本実施形態によれば、フーリエ解析を実行することにより、新しい病気の可能性の発見、普通の自分との比較、手と足との比較や、反対側の手および足との比較が可能となる。さらに、足の動かし方、嚥下などでどこがおかしいのかを同調性の数値化で把握することが可能となる。また、病気の状態の人が一定時間経過後に変化しているかどうかを判断し、また、変化している場合は、変化の前後を比較することが可能となる。
【0096】
[心臓の描画]
本明細書では、ベジエ曲線および直線の組み合わせを用いて心臓の輪郭を仮に描画し、合致性が高くなるように、心臓を調整する手法を採用する。例えば、心臓の輪郭を4本のベジェ曲線と1本の直線で表現すると、心臓の輪郭上の5点と、制御点4点を求めることで、心臓の輪郭を描画することが可能になる。点の位置をずらして、複数の心臓の輪郭を描画し、“輪郭内のdensityの合計値が最大になる”、“輪郭線の内側と外側の数ピクセルのdensity合計の差分が最大になる”等の条件を用いて合致性を評価することで、心臓の輪郭を精度高く検出することができるようになる。なお、古典的な二値化による輪郭抽出により、外縁に近い点を抽出し、最小二乗法等を利用して、ベジェ曲線の制御点位置を調整することも可能である。なお、以上の手法は、心臓に限定されるわけではなく、「臓器の検出」として、他の臓器にも適用可能である。また、平面的な画像のみならず、立体的な画像(3D画像)についても適用可能である。曲面の方程式を定義し、その制御点を設定することによって、複数の曲面で囲まれた対象物を臓器と推定することが可能となる。
【0097】
[フーリエ解析を用いた心機能解析]
次に、本実施形態に係るフーリエ解析を用いた心機能解析について説明する。
図4は、本実施形態に係る心機能解析の概要を示すフローチャートである。基本モジュール1がデータベース15からDICOMの画像を抽出する(ステップS1)。ここでは、少なくとも、一心拍内に含まれる複数のフレーム画像を取得する。次に、取得した各フレーム画像において、少なくとも心筋のある一定領域における画素値の変化、例えば、密度(density/intensity)の変化を用いて、心臓の動きの周期を特定する(ステップS2)。次に、心臓(心筋)の領域を検出し(ステップS3)、検出した心筋を複数のブロック領域に分割する(ステップS4)。ここでは、上述したように、ボロノイ分割(ティーセン分割)を用いて、心筋を心臓の中心から放射状に分割する。そして、各フレーム画像における各ブロック領域の画素値の変化を計算する(ステップS5)。ここでは、各ブロック領域内での変化の値を平均化し、1つのデータとして表現する。
【0098】
なお、ピクセルをある程度曖昧に表示し、ぼやけた状態にして全体を表示することも可能である。特に、血管の場合、高い信号値の間に低い信号の信号が混在するが、高い信号値のみを大雑把に把握することができれば、全体として曖昧であっても構わない。例えば、血流の場合、閾値以上の信号のみを抜き出してもよい。具体的には、次の表の数字を1ピクセルとして真ん中の数値を取得する場合、真ん中の数値が占める割合を取得し、1ピクセル内で平均化すると、隣接する画素との間で滑らかに表現することができる。
【表1】
【0099】
なお、各ブロック領域内での変化の値について、カットオフによるノイズ除去を行なっても良い。次に、各ブロック領域のdensity/intensityの値や、また、その変化量について、上記心臓の動きの周期に基づいて、フーリエ解析を実施する(ステップS6)。これにより、各ブロック領域における画像の性質を抜き出して表示することが可能となる。
【0100】
ここで、フーリエ変換後に得られるスペクトルのうち、心臓の周期に対応するスペクトルを含む一定の帯域内のスペクトルを抽出することができる。ここで、合成波のスペクトルの周波数fは、合成元となる各周波数f1、f2との間に、「1/f=1/f1+1/f2」という関係が成り立っており、スペクトルを抽出する際に、以下の方法を採ることが可能である。
【0101】
(1)心臓の動きのスペクトル比率が高い部分を抽出する。
(2)心拍/血流に対応するスペクトルのピークとその近辺の複数の合成波のピークの中間で区切り、スペクトルを抽出する。
(3)心拍/血流に対応するスペクトルのピークとその近辺の複数の合成波のスペクトルの谷の部分で区切り、スペクトルを抽出する。
【0102】
ここで、合成波のスペクトルの成分は2つの成分(心拍、血流)のみであれば50%+50%となり、3つの成分の場合は、1/3ずつの配分となる。このため、心拍成分のスペクトルが何%、血流成分のスペクトルが何%と、スペクトルの成分およびその高さからある程度、合成波のスペクトルを計算することができる。その割合(%)が高いところでスペクトルを抽出することが可能である。すなわち、血流成分/心拍成分と合成波成分との割合を計算し、血流成分/心拍成分の高いスペクトル値を計算して抽出する。
【0103】
次に、フーリエ解析により得られた結果について、ノイズ除去を行なう(ステップS7)。ここでは、上述したようなカットオフや、アーティファクト(artifact)の除去を行なうことができる。以上のステップS5からステップS7の動作を1回以上行ない、完了するかどうかを判断する(ステップS8)。完了しない場合は、ステップS5に遷移し、完了する場合は、フーリエ解析により得られた結果を、疑似カラー画像としてディスプレイに表示する(ステップS9)。なお、白黒画像を表示しても良い。このように、複数のサイクルを繰り返すことによって、データの確度を高める場合もある。これにより、所望の動画を表示することが可能となる。また、ディスプレイに表示された画像を修正することで、所望の動画を得るようにしても良い。
【0104】
なお、以上のようなステップS4、S5における心筋の分割処理の他、ステップS4、S5の代わりに、心臓の中心から心筋までの距離の変化を算出してフーリエ解析を行なうことも可能である。さらに、ステップS4、S5の代わりに、心臓の体積の変化を算出してフーリエ解析を行なうことも可能である。
【0105】
[ディジタルフィルタを用いた心機能解析]
次に、本実施形態に係るディジタルフィルタを用いた機能解析について説明する。
図5は、本実施形態に係る心機能解析の概要を示すフローチャートである。ステップS1からステップS5までと、ステップS7からステップS9までは、上述した「フーリエ解析を用いた心機能解析」と同様であるため、説明を省略する。
図5のステップT1において、ディジタルフィルタ処理を行なう(ステップT1)。ディジタルフィルタは、信号の周波数成分を調整するために、信号の周波数成分を抽出する数学のアルゴリズムである「高速フーリエ変換および逆高速フーリエ変換」に基づいて、時間領域と周波数領域との変換を行なうものである。これにより、上述したフーリエ解析と同様の効果を得ることが可能となる。
【0106】
[同調一致率を用いた心機能解析]
次に、本実施形態に係る同調一致率を用いた心機能解析について説明する。
図6は、本実施形態に係る心機能解析の概要を示すフローチャートである。ステップS1からステップS5までと、ステップS7からステップS9までは、上述した「フーリエ解析を用いた心機能解析」と同様であるため、説明を省略する。
図6のステップR1において、同調一致率の解析を行なう(ステップR1)。すなわち、心臓(心筋)の領域を検出し(ステップS3)、心筋を複数のブロック領域に分割した後(ステップS4)、各フレーム画像におけるブロック領域の平均density(画素値x)を算出し、平均density(画素値x)の最小値から最大値の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像におけるブロック領域の平均画素値の割合(x’)を算出する(ステップS5)。一方、心臓の表面積(または体積)の最小から最大の変化幅(0%~100%)に対する各フレーム画像の心臓の変化(y)の割合(y’)との比の値(x’/y’)を算出する(ステップS5)。これらを用いて、比の値(x’/y’)が予め定められた一定の範囲内にあるブロック領域のみを抽出することができる(ステップR1)。
【0107】
ここで、y’=x’若しくはy=ax(aは心臓の表面積または体積の振幅の数値やdensityの数値の係数)となる場合は、完全一致である。しかし、完全一致の場合のみが有意義な値であるわけではなく、ある一定の幅を持った値を抽出すべきである。そこで、本発明の一態様では、対数(log)を用いて、一定の幅を以下のように定める。すなわち、y=xの割合(%)で計算すると、同調の完全一致は「log y’/x'=0」である。さらに、同調一致率の範囲が狭いもの(数式的に狭い)範囲を抽出する場合は、例えば、0に近い範囲で「log y’/x’=-0.05~+0.05」と定め、同調一致率の範囲が広いもの(数式的に広い)範囲のであれば例えば0に近い範囲で「log y’/x’=-0.5~+0.5」と定める。この範囲が狭いものであればあるほど、また、その範囲内で一致する数値が高いほど、一致率が高いといえる。画素のピクセルごとにこの比の値を求めて個数をカウントすると、健康な人の心臓の場合は、完全一致の場合をピークとした正規分布が得られる。これに対し、疾患を有する人の場合は、この比の値の分布が崩れることとなる。なお、上記のように、対数を用いていての幅を定める手法は、あくまでも一例であり、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明は、(ある大雑把な範囲のdensity変化の平均)≒(心拍)≒(心臓の変化)≒(心電図)≒(心臓の表面積及び体積の変化)として、“画像抽出”を行なうものであり、対数を用いる手法以外の手法も適用可能である。
【0108】
なお、3Dで考える場合、心拍、心臓の表面積または体積、心拍出量、中枢の血流量を別の装置で測定することによって、それらの割合からそれぞれの区域において「部分的心臓の表面積」、「部分的心臓の体積」、「血流割合」を測定することが可能となる。これらの定量測定として、他のmodalityなどで心臓の表面積、心臓の体積、心拍出量、中枢側の血流の測定が可能となった場合、一フレームの分量やその割合、領域の変化量割合より推定機能量を推定することが可能になる。すなわち、心機能解析の場合は、心臓の動きから心臓の体積の推定が可能となり、血流解析の場合は、心拍出量から肺血流量の推定や、中枢側の血流量(割合)から描出される分岐血管における推定血流量(割合)の推定が可能となる。
【0109】
また、上記のように、取得したdatabaseは、すべてを計算できればより精度の高い判断が可能であるが、コンピュータ解析を実行する上では時間を要する場合がある。そのため、ある一定の枚数(phase)だけを抜き出し、計算を行なうようにすることもできる。例えば、取得した画像の先頭からではなく、後半、すなわち、最後までではない中間より後方を中心とした画像で自動的に取得する(手動にて取得しても良い)。それにより、患者の撮影の際、初回で生じた緊張状態における撮影をカットすることでより安定的な画像を抽出し易くなる。また、取得した、画像(例えば300枚の画像)をそのまま計算するのではなく、最初に計測した心臓の位置などで「心臓の動き」の変わり目を選択し、その後計算することもできる。これにより、動画標識などを繰り返してみる必要がある場合、連続して心拍しているような画像標識が可能となる。こちらは画像標識で計算してもよい。なお、心臓(心筋)の領域の同定の際に、一部分だけ手動にて形を変えたり、グラフ標識を一部だけ手動にて変化させたりした場合においても、ノイズカットおよび最小二乗法にてグラフを補正することが望ましい。
【0110】
以上説明したように、本実施形態によれば、X線動画装置で人体の画像を評価することが可能となる。デジタルデータを取得できれば、現存施設装置で概ね良好に計算可能であり、導入費用が安価で済む。例えば、Flat panel detectorを用いたX線動画装置において、被写体の検査を簡便に済ませることが可能となる。心機能解析においては、心筋梗塞のスクリーニングが可能となる。例えば、Flat panel detectorを用いたX線動画装置においては、CTを行なう前に本実施形態に係る診断支援プログラムを実行することによって、無駄な検査を除外することができる。また、検査が簡便であるため、緊急性の高い疾患を早期に発見し、優先的に対応することが可能となる。なお、現時点における撮影方法では、CT、MRIなどの他のmodalityでは、いくつかの課題があるが、これを解決できれば、各領域の細かい診断が可能となる。
【0111】
また、各種の血管、例えば、頸部血流狭小化のスクリーニングにも適用可能であり、また、大血管の血流評価やスクリーニングにも適用可能である。さらに、術前、術後の性状の把握にも適用可能である。さらに、心臓の動きの周期および血流周期をフーリエ解析し、腹部のX線画像において、心臓の動きの波形および血流の波形を除去することで、残りの生体運動の異変、例えば、腸管イレウスなどが観察可能となる。
【0112】
なお、最初に取得した画像が、ある程度高精細である場合は、画素数が多いため、計算時間に時間がかかることもある。その場合、一定のピクセル数に画像を減らしてから計算しても良い。例えば、「4000×4000」のピクセルを実際には「1028×1028」にしてから計算することで計算時間を抑えることが可能である。
【0113】
また、従来は、判断しようとする対象画像のコントラストの幅を手動で調節していた。または、判断しようとする対象画像を一定の基準に基づいて相対的に描出する方法が採られていた。しかし、解析対象(例えば、肺野)の枠の認識をもって厳密に行なっているわけではなかった。本発明における心臓の領域の検出および骨のdensity(ある一定の範囲の透過性が低いところをカット)のfilteringを行なうことによって、残りの領域の内部の透過性の幅が、心臓の領域を認識する幅に厳密に限定されることとなる。これにより、心臓の領域を検出する際、判断する者、例えば、医師や技師などが見る際、判断しやすい透過性の調整がより厳密にされるようになる。また、coloringの評価にちょうどよい透過性の調整が、より厳密にされるようになる。
【0114】
また、XPやCTでは、被ばく低減のため、X線透過を体の状態に合わせて変化させており、撮影の際に、肺の動きに応じて透過度を変えてしまう場合がある。また、MRIでも、特定の方向への磁場の変化などにより、ある一定の不均一な信号で撮影されることになる。それらに対し、周囲の「back ground」の透過度から変化した透過度を一定の形に戻す計算を特定臓器の透過度に合わせたり、磁場の全体的な変化の不均一性を、均一に補正することで信号値をある一定の補正をかけたりすることにより、特定臓器の「density/intensity」の変化をより精密に測定することができる。また、撮影条件での数値変化より、臓器ごとの特性から透過度数を変化させ、特定臓器の「density/intensity」の変化をより精密に補正することにより、より正確な変化量を算出することができるようになる。
【0115】
本発明では、intensityの平均値や変化などを計算することがあるが、レントゲンやCTなどから得られるデータ(intensity)には、「ガンマ補正(Gamma correction)」がかかっている場合があり、densityが正しく反映されていない場合がある。このガンマ補正とは、ディスプレイに表示される画像などの彩度や明るさを修正するための処理のことである。通常、コンピュータでは、入力された信号に応じて、ディスプレイに画像が表示されるが、ディスプレイの特性によっては、表示される明るさや彩度が異なる。そのため、それらの誤差を補正するために、ガンマ補正が用いられる。ガンマ補正は、ディスプレイに入出力される際の信号の相対関係と色のデータを調節することによって、自然に近い表示を行なう。しかしながら、ガンマ補正後の画像は、本来の画像ではなくなっているため、本発明に係る画像処理を施す際に不都合が生じる場合がある。そこで、ガンマ補正後の画像に対して、「ガンマ逆補正」、すなわち、ガンマ補正値に対応する逆のフィルタをかけることによって、ガンマ補正前の画像を得る。これにより、ガンマ補正前の画像を得ることが可能となり、本発明に係る画像処理を適切に行うことが可能となる。
【0116】
また、本発明ではガンマ補正に限らず、その他の画像処理を施された画像を元に戻してから処理に供することがある。例えば人体外の空間など、撮影中にdensityが不変である領域の画素値変化から、その画像に対して行われた画像処理を類推し、その画素値変化を一定にする関数を全画素に適用する。これにより、元の画像に近い画像を得ることが可能となり、本発明に係る画像処理を適切に行うことが可能となる。
【0117】
また、本発明では、重ね合わせ画像から個別画像を復元することが可能である。従来から、「レントゲン差分画像技術」が知られている。この技術では、検診などで撮影された同じ患者の「過去と現在のレントゲン画像」を重ね合わせ、過去から現在で変化している部分、すなわち、異常と想定される部分を強調する。これにより、例えば、早期にがんを発見することが可能となる。重ね合わせの手法としては、複数の画像が「1枚目、2枚目、3枚目、4枚目…」と撮影された際に、例えば、「1枚目、2枚目、3枚目」を「1枚目の重ね合わせ画像」とし、「2枚目、3枚目、4枚目」を「2枚目の重ね合わせ画像」とし、「3枚目、4枚目、5枚目」を「3枚目の重ね合わせ画像」とする方法がある。このような重ね合わせ画像は、複数の画像が重なっている部分は、画素値が高くなり、重なっていないところ部分は画素値が低くなる。このような重ね合わせ画像は、臓器の輪郭がぼやける場合があるため、これを元の各画像に復元することが望ましい。本発明によれば、臓器の輪郭を特定することができるため、重ね合わせ画像から元のオリジナル画像を復元することが可能となる。
【0118】
また、本発明では、臓器における各領域の周波数の違いを画像化することが可能である。すなわち、周期的な動きをする臓器において、各領域毎の変化値をフーリエ変換し、周波数成分の構成比に基づいて色分けをする等の重みづけを行い、領域毎の特徴を示すことができる。例えば、各領域でピークとなる周波数成分を特定し、各領域を色分けすることが可能である。また、各領域において、特定の周波数帯域内で各周波数成分が占める割合を特定し、その割合に応じて各領域を色分けすることも可能である。さらに、特定の領域において、基準となる周波数構成比が、例えば、「10Hzが50%、20Hzが50%」である場合に、その基準となる周波数構成比からの逸脱率を可視化することも可能である。これにより、例えば、心臓については、周波数のスペクトル分布を色分け表示をすることによって、正しい動きをしているのか、それとも、正しくない動きをしているのかを一目で把握することが可能となる。
【符号の説明】
【0119】
1 基本モジュール
3 心機能解析部
5 血流解析部
7 その他の血流解析部
9 フーリエ解析部
10 波形解析部
11 視覚化・数値化部
13 入力インタフェース
15 データベース
17 出力インタフェース
19 ディスプレイ