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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】空気電池用水分管理システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20241219BHJP
   H01M 50/609 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M50/609
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020173981
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065408
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】泉 博章
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-244731(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M12/00-16/00
H01M50/60-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される空気電池の電解液の水分量が所定の水分量下限閾値よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部と、
前記空気電池に水分を供給可能とする水分供給装置と
を備える空気電池用水分管理システムであって、
前記水分量が前記水分量下限閾値よりも小さいと前記水分量判定部が判定し、かつ前記水分供給装置が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置を、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部と、
前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給するように制御する供給制御部と、を備え
前記水分供給装置が、前記空気電池に水分を供給可能とする第1水分供給機構を有し、
前記第1水分供給機構が、水分を生成可能とする水分生成部と、前記水分生成部により生成される水分を前記空気電池に送給可能とする水分送給部とを有し、
前記第1水分供給機構の水分生成部が前記車両の熱交換器となっている空気電池用水分管理システム。
【請求項2】
車両に搭載される空気電池の電解液の水分量が所定の水分量下限閾値よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部と、
前記空気電池に水分を供給可能とする水分供給装置と
を備える空気電池用水分管理システムであって、
前記水分量が前記水分量下限閾値よりも小さいと前記水分量判定部が判定し、かつ前記水分供給装置が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置を、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部と、
前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給するように制御する供給制御部と、を備え
前記水分供給装置が、前記空気電池に水分を供給可能とする第1水分供給機構と、前記空気電池に水分を供給可能であり、かつ前記第1水分供給機構とは別体である第2水分供給機構と、を有し、
前記水分供給装置の停止状態が、前記第1及び第2水分供給機構が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態となっており、
前記空気電池用水分管理システムは、前記第1及び第2水分供給機構が前記停止状態にある場合にて、それぞれ前記第1及び第2水分供給機構から前記空気電池に供給される水分の流量である第1及び第2流量を、前記空気電池又は前記水分供給装置の状態に応じた起動設定条件に基づいて設定可能とする起動用流量設定部を備え、
前記供給制御部が、それぞれ前記起動用流量設定部によって設定された第1及び第2流量の起動設定値に基づいて前記第1及び第2水分供給機構から前記空気電池に水分を供給するように制御する、空気電池用水分管理システム。
【請求項3】
車両に搭載される空気電池の電解液の水分量が所定の水分量下限閾値よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部と、
前記空気電池に水分を供給可能とする水分供給装置と
を備える空気電池用水分管理システムであって、
前記水分量が前記水分量下限閾値よりも小さいと前記水分量判定部が判定し、かつ前記水分供給装置が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置を、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部と、
前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給するように制御する供給制御部と、を備え
前記水分量判定部は、前記空気電池の電解液の水分量が所定の水分量上限閾値よりも大きいか否かを判定可能とし、
前記供給制御部は、前記水分量が前記水分量上限閾値よりも大きいと前記水分量判定部が判断した場合に、前記水分供給装置を前記停止状態とするように制御する、空気電池用水分管理システム。
【請求項4】
前記水分供給装置が、前記空気電池に水分を供給可能とする第1水分供給機構を有している、請求項に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項5】
前記第1水分供給機構が、水分を生成可能とする水分生成部と、前記水分生成部により生成される水分を前記空気電池に送給可能とする水分送給部とを有し、
前記第1水分供給機構の水分生成部が前記車両の熱交換器となっている、請求項2又は4に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項6】
前記水分供給装置が、前記空気電池に水分を供給可能であり、かつ前記第1水分供給機構とは別体である第2水分供給機構を有しており、
前記水分供給装置の停止状態が、前記第1及び第2水分供給機構が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態となっている、請求項又は4に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項7】
前記第1及び第2水分供給機構が前記停止状態にある場合にて、それぞれ前記第1及び第2水分供給機構から前記空気電池に供給される水分の流量である第1及び第2流量を、前記空気電池又は前記水分供給装置の状態に応じた起動設定条件に基づいて設定可能とする起動用流量設定部を備え、
前記供給制御部が、それぞれ前記起動用流量設定部によって設定された第1及び第2流量の起動設定値に基づいて前記第1及び第2水分供給機構から前記空気電池に水分を供給するように制御する、請求項に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項8】
前記第2水分供給機構の水分に含まれる不純物が前記第1水分供給機構の水分に含まれる不純物よりも少なくなっている場合、前記起動用流量設定部は、前記第2流量の起動設定値を前記第1流量の起動設定値よりも大きくする、請求項2又は7に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項9】
前記供給制御部は、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを前記報知装置が報知した後に、前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給することを開始するように制御する、請求項のいずれか一項に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項10】
前記報知制御部は、前記水分供給装置が前記停止状態にある場合に、前記水分供給装置を前記停止状態から、前記空気電池に水分を供給する稼働状態にするように起動する前に、前記水分供給装置の起動を報知するように前記報知装置を制御する、請求項1~9のいずれか一項に記載の空気電池用水分管理システム。
【請求項11】
前記空気電池の正極に取り入れられる空気の量を調節可能とするように開閉可能である可動フィンが設けられており、
前記空気電池用水分管理システムは、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを前記報知装置が報知した後に前記可動フィンを閉じるように制御する空気取入制御部を備えている、請求項1~10のいずれか一項に記載の空気電池用水分管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される空気電池の電解液の水分を管理可能とする空気電池用水分管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気電池の実用化に向けてその開発が進められている。空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、かつ負極活物質として金属又は化合物を用いる。そのため、空気電池は、正極に空気を取り入れるように構成される。また、空気電池においては、正極及び負極間にてイオンの移動を可能とするために電解液が用いられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-046785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空気電池においては、正極に取り入れられる空気によって電解液が乾燥するおそれがある。さらに電解液の乾燥が進むと、空気電池の充放電性能が低下するおそれがある。
【0005】
このような実情を鑑みると、空気電池の電解液の乾燥を防ぎ、かつ空気電池の充放電性能の低下を抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するために、一態様に係る空気電池用水分管理システムは、車両に搭載される空気電池の電解液の水分量が所定の水分量下限閾値よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部と、前記空気電池に水分を供給可能とする水分供給装置とを備える空気電池用水分管理システムであって、前記水分量が前記水分量下限閾値よりも小さいと前記水分量判定部が判定し、かつ前記水分供給装置が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置を、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部と、前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給するように制御する供給制御部と、を備え、前記水分供給装置が、前記空気電池に水分を供給可能とする第1水分供給機構を有し、前記第1水分供給機構が、水分を生成可能とする水分生成部と、前記水分生成部により生成される水分を前記空気電池に送給可能とする水分送給部とを有し、前記第1水分供給機構の水分生成部が前記車両の熱交換器となっている。
別の態様に係る空気電池用水分管理システムは、車両に搭載される空気電池の電解液の水分量が所定の水分量下限閾値よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部と、前記空気電池に水分を供給可能とする水分供給装置とを備える空気電池用水分管理システムであって、前記水分量が前記水分量下限閾値よりも小さいと前記水分量判定部が判定し、かつ前記水分供給装置が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置を、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部と、前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給するように制御する供給制御部と、を備え、前記水分供給装置が、前記空気電池に水分を供給可能とする第1水分供給機構と、前記空気電池に水分を供給可能であり、かつ前記第1水分供給機構とは別体である第2水分供給機構と、を有し、前記水分供給装置の停止状態が、前記第1及び第2水分供給機構が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態となっており、前記空気電池用水分管理システムは、前記第1及び第2水分供給機構が前記停止状態にある場合にて、それぞれ前記第1及び第2水分供給機構から前記空気電池に供給される水分の流量である第1及び第2流量を、前記空気電池又は前記水分供給装置の状態に応じた起動設定条件に基づいて設定可能とする起動用流量設定部を備え、前記供給制御部が、それぞれ前記起動用流量設定部によって設定された第1及び第2流量の起動設定値に基づいて前記第1及び第2水分供給機構から前記空気電池に水分を供給するように制御する。
別の態様に係る空気電池用水分管理システムは、車両に搭載される空気電池の電解液の水分量が所定の水分量下限閾値よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部と、前記空気電池に水分を供給可能とする水分供給装置とを備える空気電池用水分管理システムであって、前記水分量が前記水分量下限閾値よりも小さいと前記水分量判定部が判定し、かつ前記水分供給装置が前記空気電池への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置を、前記空気電池が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部と、前記水分供給装置を、前記空気電池に水分を供給するように制御する供給制御部と、を備え、前記水分量判定部は、前記空気電池の電解液の水分量が所定の水分量上限閾値よりも大きいか否かを判定可能とし、前記供給制御部は、前記水分量が前記水分量上限閾値よりも大きいと前記水分量判定部が判断した場合に、前記水分供給装置を前記停止状態とするように制御する。
【発明の効果】
【0007】
一態様に係る空気電池用水分管理システムにおいては、空気電池の電解液の乾燥を防ぐことができ、かつ空気電池の充放電性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る空気電池用水分管理システムを含む車両を示す模式図である。
図2図2(a)は、第1実施形態に係る空気電池用水分管理システムにおける空気電池を、開放状態の可動フィンを有する空気取入機構と共に模式的に示す断面図である。図2(b)は、第1実施形態に係る空気電池用水分管理システムにおける空気電池を、閉鎖状態の可動フィンを有する空気取入機構と共に模式的に示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る空気電池における電解液の水分管理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図4図4(a)は、第2実施形態に係る空気電池用水分管理システムにおける空気電池を、収容容器及び開放状態の可動フィンと共に模式的に示す断面図である。図4(b)は、第2実施形態に係る空気電池用水分管理システムにおける空気電池を、収容容器及び閉鎖状態の可動フィンと共に模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1及び第2実施形態に係る空気電池用水分管理システムを、それを搭載した車両と共に以下に説明する。各実施形態において空気電池用水分管理システム(以下、必要に応じて、単に「水分管理システム」という)を搭載する車両は、自動車となっている。しかしながら、水分管理システムを搭載する車両は、自動車以外の車両とすることもできる。
【0010】
「第1実施形態」
第1実施形態に係る水分管理システムを、それを搭載した車両と共に説明する。
【0011】
「水分管理システム及び車両の概略的な構成」
図1及び図2を参照して、本実施形態に係る水分管理システム20及び車両の概略的な構成を説明する。すなわち、水分管理システム20及び車両は、概略的には次のように構成される。図1及び図2に示すように、車両は、空気電池1を搭載している。空気電池1は、水溶液系電解液2と、有機電解液3とを含む。なお、本明細書において、単に「電解液」と呼ばれる用語は、「水溶液系電解液」を指すものとする。図1に示すように、車両はまた、その乗員に種々の情報を報知可能とする報知装置10を有する。
【0012】
図1に示すように、水分管理システム20は、空気電池1の電解液2の水分量が所定の水分量下限閾値p1よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部21を有する。水分管理システム20は、空気電池1に水分を供給可能とする水分供給装置30を有する。水分管理システム20は、水分量が水分量下限閾値p1よりも小さいと水分量判定部21が判定し、かつ水分供給装置30が空気電池1への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置10を、空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部22を有する。
【0013】
さらに、水分管理システム20及び車両は、概略的には次のように構成することができる。図1に示すように、水分管理システム20は、水分供給装置30を、空気電池1に水分を供給するように制御する供給制御部23を有する。水分供給装置30は、空気電池1に水分を供給可能とする第1水分供給機構31を有する。第1水分供給機構31は、水分を生成可能とする水分生成部31aを有する。第1水分供給機構31はまた、水分生成部31aにより生成される水分を空気電池1に送給可能とする水分送給部31bを有する。水分生成部31aは、車両に搭載される熱交換器となっている。
【0014】
水分供給装置30はまた、空気電池1に水分を供給可能であり、かつ第1水分供給機構31とは別体である第2水分供給機構32を有する。水分供給装置30の停止状態は、第1及び第2水分供給機構31,32が空気電池1への水分の供給を停止した停止状態となる。
【0015】
水分管理システム20は、第1及び第2水分供給機構31,32が停止状態にある場合にて、それぞれ第1及び第2水分供給機構31,32から空気電池1に供給される水分の流量である第1及び第2流量を、空気電池1又は水分供給装置30の状態に応じた起動設定条件に基づいて設定可能とする起動用流量設定部24を有する。供給制御部23は、起動用流量設定部24によって設定された第1及び第2流量の起動設定値q1,q2に基づいて、それぞれ第1及び第2水分供給機構31,32から空気電池1に水分を供給するように制御する。水分供給装置30において、第2水分供給機構32の水分に含まれる不純物が第1水分供給機構31の水分に含まれる不純物よりも少なくなっている場合、起動用流量設定部24は、第2流量の起動設定値q2を第1流量の起動設定値q1よりも大きくする。
【0016】
供給制御部23は、上述のように空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知装置10が報知した後に、水分供給装置30を、空気電池1に水分を供給することを開始するように制御する。
【0017】
水分量判定部21は、空気電池1の電解液2の水分量が所定の水分量上限閾値p2よりも大きいか否かを判定可能とする。供給制御部23は、水分量が水分量上限閾値p2よりも大きいと水分量判定部21が判断した場合に、水分供給装置30を停止状態とするように制御する。
【0018】
報知制御部22は、水分供給装置30が停止状態にある場合に、水分供給装置30を停止状態から、空気電池1に水分を供給する稼働状態にするように起動する前に、水分供給装置30の起動を報知するように報知装置10を制御する。
【0019】
特に、図2(a)及び図2(b)を参照すると、車両は、空気電池1の正極4に取り入れられる空気の量を調節可能とするように開閉可能である可動フィン41を有する。図1及び図2(b)を参照すると、水分管理システム20は、上述のように空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知装置10が報知した後に可動フィン41を閉じるように制御する空気取入制御部25を有する。
【0020】
「空気電池の詳細な構成」
ここで、図1及び図2を参照して、空気電池1の詳細な構成を説明する。すなわち、空気電池1は、詳細には次のように構成することができる。図1及び図2に示すように、空気電池1は、正極4と対極する負極5をさらに有する。正極4及び負極5は、互いに間隔を空けて配置され、かつ互いに対向する。
【0021】
空気電池1は、正極4及び負極5間の空間に配置される隔離体6を有する。隔離体6は、負極5からのイオンが通過可能となるように構成される。このような隔離体6は、固体電解質から構成することができる。例えば、隔離体6の固体電解質は、ガラスセラミックとすることができる。しかしながら、隔離体の固体電解質は、これに限定されない。
【0022】
隔離体6は、正極4及び負極5の対向方向にて、正極4及び負極5間に位置する。正極4及び隔離体6間に形成される正極側空間1aには、水溶液系電解液2が充填されている。負極5及び隔離体6間に形成される負極側空間1bには、有機電解液3が充填されている。
【0023】
さらに、空気電池1は、正極4及び負極5の対向方向にて、正極4に対して隔離体6とは反対側に位置し、かつ正極4と隣接する正極集電体7を有する。正極集電体7は、通気性を有する。空気電池1は、正極4及び負極5の対向方向にて、負極5に対して隔離体6とは反対側に位置し、かつ負極5と隣接する負極集電体8を有する。正極及び負極集電体7,8には車両の電気回路Dが接続されて、空気電池1の電力が電気回路Dに供給されるようになっている。
【0024】
ここで、水溶液系電解液2は、1種類又は複数種類の電解質を水に溶解させたものとすることができる。例えば、水溶液系電解液2に用いられる電解質としては、LiCl(塩化リチウム)、LiOH(水酸化リチウム)、LiNO(硝酸リチウム)、CHCOOLi(酢酸リチウム)等のリチウム塩が挙げられる。しかしながら、水溶液系電解液は、これに限定されない。
【0025】
有機電解液3は、炭酸エステル系、エーテル系等の有機溶媒又はその混合溶媒に、電解質を添加したものとすることができる。例えば、有機電解液3に用いられる有機溶媒は、PC(プロピレンカーボネート)、EC(エチレンカーボネート)、DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)等の炭酸エステル系の有機溶媒とすることができる。例えば、有機電解液3に用いられる有機溶媒は、DME(1.2-ジメトキシエタン)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系の有機溶媒とすることができる。
【0026】
例えば、有機電解液3の電解質は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロほう酸リチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)等とすることができる。
【0027】
しかしながら、有機電解液は、これらに限定されない。空気電池においては、有機電解液の代わりに、リチウム塩をポリマーに分散させた固体電解質を用いることができる。空気電池においては、有機電解液の代わりに、リチウム塩を溶解した有機電解液をポリマーに膨潤させたゲル電解質を用いることもできる。
【0028】
例えば、このような固体電解質又はゲル電解質に用いられるリチウム塩としては、LiPF、LiClO、LiBF、LiTFSI(LiN(SOCF)、LiFSI(LiN(SOF))、LiBOB(ビスオキサラトホウ酸リチウム)等を挙げることができる。例えば、ゲル電解質のホストとなるポリマーとしては、PEO(ポリエチレンオキシド)、PPO(ポリプロピレンオキシド)、PVA(ポリビニルアルコール)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEO-PMA(ポリエチレンオキシド修飾ポリメタクリレートの架橋体)、PVdF(ポリフッ化ビリニデン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PAA(ポリアクリル酸)、PVdF-HFP(ポリフッ化ビリニデンとヘキサフロオロプロピレンとの共重合体)等を挙げることができる。
【0029】
正極4は、正極活物質として空気中の酸素を用いるように構成される。例えば、正極4は、触媒活性を示す材料を導電助剤、バインダー(結着剤)等として機能し得るカーボンブラック等と混合したもの、又は触媒活性を示す材料をカーボンブラック等に担持したものを、正極集電体7に担持するように構成することができる。例えば、触媒活性を示す材料としては、白金、金、イリジウム、ルテニウム等の貴金属、その酸化物、二酸化マンガン等が挙げられる。
【0030】
正極集電体7は、導電性及びガス拡散性を有するように構成される。例えば、正極集電体7は、カーボン紙、カーボンクロス、カーボン不織布、多孔質ニッケル(ニッケルの金属発泡体)、多孔質アルミニウム(アルミの金属発泡体)、金属メッシュ等を用いて構成することができる。カーボン紙、カーボンクロス、及びカーボン不織布は、それぞれ、カーボンファイバーから構成される紙、織物、及び不織布である。金属メッシュは、ニッケル、チタン、ステンレス等のように、高い耐腐食性を有する金属を用いて構成することができる。例えば、正極4側の構造体は、メッシュ状の正極集電体7に、触媒、導電助剤、バインダー等から構成される正極4を圧着するように構成することができる。
【0031】
負極5は、負極活物質として金属又は化合物を用いるように構成される。例えば、負極活物質の金属としては、リチウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等、又はその合金が挙げられる。負極集電体8は、略板形状等に形成することができる。負極集電体8は、銅、ニッケル等、又はその合金を用いて構成することができる。負極5は、負極集電体8と当接するように配置される。
【0032】
「報知装置10の詳細な構成」
図1を参照すると、報知装置10は、詳細には次のように構成することができる。報知装置10は、乗員により目視可能な情報を表示可能とする表示出力部11を有する。表示出力部11は、車両の室内に設置されるディスプレイ、計器パネル、ランプ等とすることができる。
【0033】
報知装置10は、音声情報を出力可能とする音声出力部12を有する。音声出力部12は、車両の室内に設置されるスピーカ等とすることができる。しかしながら、報知装置は、これらに限定されない。例えば、報知装置は、表示出力部及び音声出力部を有するスマートフォン等の携帯端末とすることができる。
【0034】
「水分管理システムの詳細な構成」
図1及び図2を参照すると、水分管理システム20は、詳細には次のように構成することができる。図1に示すように、水分管理システム20の水分供給装置30において、第1水分供給機構31の水分生成部31aが熱交換器である場合は、この熱交換器は、車両に搭載される空調機Cに含まれる。
【0035】
第1水分供給機構31の水分供給部31bは、その水分生成部31aから空気電池1の正極側空間1aまで延びる配管31cを有する。配管31cは、樹脂製又はシリコーン製とすることができるが、特に、配管31cは、樹脂製であると好ましい。例えば、配管31cに用いられる樹脂は、PVC(塩化ビニル樹脂)、CR(クロロピレンゴム)、TPX(メチルベンテン樹脂)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン樹脂)、PTFE(ポリトラフルオロエチレン)等のように、塩基性条件下でも耐性を有する樹脂とすることができる。例えば、配管31cは、キャピラリーホースとすることができる。水分供給部31bはまた、水分を水分生成部31aから配管31cを通って空気電池1の正極側空間1aまで送るように加圧可能とするポンプ31dを有する。
【0036】
第2水分供給機構32は、水分を貯蔵可能に構成される水分貯蔵部32aを有する。例えば、水分貯蔵部32aは、車両のラジエータのサブタンクとすることができる。第2水分供給機構32は、水分貯蔵部32aの水分を空気電池1に送給可能とする水分送給部32bを有する。
【0037】
第2水分供給機構32の水分供給部32bは、その水分貯蔵部32aから空気電池1の正極側空間1aまで延びる配管32cを有する。この配管32cは、樹脂製又はシリコーン製とすることができるが、特に、配管32cは、樹脂製であると好ましい。例えば、この配管32cに用いられる樹脂としては、水分供給部32bはまた、第1水分供給機構31の配管31cと同様の種類の樹脂が挙げられる。例えば、配管32cもまた、キャピラリーホースとすることができる。水分を水分貯蔵部32aから配管32cを通って空気電池1の正極側空間1aまで送るように加圧可能とするポンプ32dを有する。
【0038】
しかしながら、第2水分供給機構は、これらに限定されない。水分貯蔵部は、ラジエータのサブタンク以外のタンクとすることができる。第2水分供給機構はまた、燃料電池システムすることもできる。この場合、第2水分供給機構は、水分貯蔵部の代わりに、水分を生成可能とする水分生成部を有する。
【0039】
ここで、水分供給装置30の水分は、固体、液体、又は気体の状態にある物質となっている。特に、水分供給装置30の水分は、氷、水、又は水蒸気とすることができる。第1水分供給機構31の水分が水であり、かつ第1水分供給機構31の水分生成部31aが熱交換器である場合は、熱交換器によって生成される水は、車両の空調機Cの稼働時に生成されるドレン水とすることができる。
【0040】
これに対して、第2水分供給機構32の水分が水であり、かつ第2水分供給機構32の水分貯蔵部32aがラジエータのサブタンクである場合、このサブタンクには、ラジエータの冷却液としての水を貯蔵することができる。この場合、第2水分供給機構32の水分の不純物は、第1水分供給機構31の水分の不純物よりも少なくなり得る。特に、上述のように第2水分供給機構が燃料電池システムである場合、第2水分供給機構の水分の不純物は、第1水分供給機構の水分の不純物よりも顕著に少なくすることができる。
【0041】
図1及び図2に示すように、水分管理システム20は、正極4及び負極5の対向方向にて、正極集電体7に対して正極4とは反対側に位置する空気取入機構40を有する。空気取入機構40は、正極4及び負極5の対向方向にて正極集電体7に隣接する。図2(a)及び図2(b)を参照すると、空気取入機構40は、正極集電体7を通って正極4に空気を流入可能とする開放状態と、かかる空気の流入を遮断した閉鎖状態とに切り換え可能に構成される。空気取入機構40は、少なくとも1つの可動フィン41を有する。空気取入機構40の開放状態及び閉鎖状態の切換は、少なくとも1つの可動フィン41の開閉によってもたらすことができる。
【0042】
図1に示すように、水分管理システム20は、正極側空間1aの電解液2の水分量を測定可能に構成される正極水分測定部51を有する。正極水分測定部51は、正極側空間1aの湿度を測定可能とする湿度計とすることができる。水分管理システム20は、正極側空間1aの温度を測定可能に構成される正極温度測定部52を有する。正極温度測定部52は、温度計とすることができる。
【0043】
水分管理システム20は、第1水分供給機構31の水分生成部31aの水分量を測定可能とするように構成される第1水分測定部53を有する。第1水分測定部53は、水分生成部31aの湿度を測定可能とする湿度計とすることができる。水分管理システム20は、水分生成部31aの水分の温度を測定可能に構成される第1温度測定部54を有する。第1温度測定部54は、温度計とすることができる。
【0044】
水分管理システム20は、第2水分供給機構32の水分貯蔵部32aの水分量を測定可能とするように構成される第2水分測定部55を有する。第2水分測定部55は、水分貯蔵部32aの液体の水位を測定可能とする水位センサとすることができる。水分管理システム20は、水分貯蔵部32aの水分の温度を測定可能に構成される第2温度測定部56を有する。第2温度測定部56は、温度計とすることができる。
【0045】
水分管理システム20は、報知装置10、水分供給装置30、空気取入機構40等の制御に用いられる制御装置20aを有する。制御装置20aは、水分量判定部21、報知制御部22、供給制御部23、起動用流量設定部24、及び空気取入制御部25を含む。
【0046】
「制御装置の詳細な構成」
図1を参照すると、制御装置20aは、詳細には次のように構成することができる。制御装置20aは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、入力インターフェース、出力インターフェース等の電子部品と、かかる電子部品を配置した電気回路とを含むように構成することができる。ROMは、各種制御定数、各種マップ、各種計算式、各種制御を実行するためのプログラム等を記憶することができる。しかしながら、制御装置は、これに限定されない。
【0047】
制御装置20aの水分量判定部21は、正極水分測定部51により測定される水分量の測定値pが水分量下限閾値p1よりも小さいか否かを判定可能とする。水分量判定部21は、水分量の測定値pが水分量上限閾値p2よりも大きいか否かを判定可能とする。空気取入制御部25は、空気電池1の正極4に取り入れられる空気の量を調節可能とするように可動フィン41の開閉量を調節可能に構成される。
【0048】
制御装置20aは、水分供給装置30が停止状態にあるか否かを判定可能とする供給判定部26をさらに有する。さらに、供給判定部26は、第1水分供給機構31が停止状態にあるか否かを判定可能とし、かつ第2水分供給機構32が停止状態にあるか否かを判定可能とする。
【0049】
報知制御部22は、水分量の測定値pが水分量下限閾値p1よりも小さいと水分量判定部21が判定し、かつ水分供給装置30が停止状態にあると供給判定部26が判定した場合に、報知装置10を、空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する。この制御において、報知装置10の表示出力部11が、ディスプレイ又は計器パネルである場合、空気電池1が発電できない状態を表す文字情報、記号情報、イラスト情報等を表示することができる。表示出力部11が、ランプである場合、点滅を繰り返すことができる。報知装置10の音声出力部12は、空気電池1が発電できない状態を表す声情報を出力することができる。音声出力部12は、所定のリズムパターンで鳴らされる音情報を出力することもできる。
【0050】
起動用流量設定部24は、第1及び第2水分供給機構31,32が停止状態にあると供給判定部26が判定した場合にて、空気電池1又は水分供給装置30の状態に応じた起動設定条件に基づいて第1及び第2流量を設定する。この起動設定条件は、次の第1~第3起動設定条件のいずれか1つとすることができる。
【0051】
(1)第1起動設定条件は、正極水分測定部51及び正極温度測定部52によりそれぞれ測定される湿度及び温度の測定値から第1及び第2流量をそれぞれ取得可能とするマップ、計算式等とすることができる。
【0052】
(2)第2起動設定条件は、第1水分測定部53及び第2水分測定部55によりそれぞれ測定される湿度の測定値、並びに第1温度測定部54及び第2温度測定部56によりそれぞれ測定される温度の測定値から第1及び第2流量をそれぞれ取得可能とするマップ、計算式等とすることができる。
【0053】
(3)第3起動設定条件は、第2水分供給機構32の水分に含まれる不純物が第1水分供給機構31の水分に含まれる不純物よりも少なくなっている場合、第2流量の起動設定値q2を第1流量の起動設定値q1よりも大きくし、特に、第1流量の起動設定値q1を約0リットル毎分とし、かつ第2流量の起動設定値q2を約0リットル毎分よりも大きくする一方で、第2水分供給機構32の水分に含まれる不純物が第1水分供給機構31の水分に含まれる不純物以上である場合、第2流量の起動設定値q2を第1流量の起動設定値q1以下とし、特に、第1流量の起動設定値q1を約0リットル毎分よりも大きくし、かつ第2流量の起動設定値q2を約0リットル毎分とする。
【0054】
第3起動設定条件において、第1流量の起動設定値q1を約0リットル毎分とし、かつ第2流量の起動設定値q2を約0リットル毎分よりも大きくする状態では、第1水分供給機構31、特に、その水分生成部31a及び水分送給部31bの稼働を停止することができる。第3起動設定条件において、第1流量の起動設定値q1を約0リットル毎分よりも大きくし、かつ第2流量の起動設定値q2を約0リットル毎分とする状態では、第2水分供給機構32、特に、その水分送給部32bの稼働を停止することができる。
【0055】
上述のように供給制御部23は、空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知装置10が報知した後に水分供給装置30が停止状態にあると供給判定部26が判定したが判定した場合に、水分供給装置30を、起動用流量設定部24により設定される第1及び第2流量の起動設定値q1,q2に基づいて、それぞれ第1及び第2水分供給機構31,32から空気電池1に水分を供給することを開始するように制御することができる。
【0056】
上述のように、報知制御部22は、水分供給装置30が停止状態にあると供給判定部26が判定した場合に、第1水分供給機構31又は第2水分供給機構32又は第1及び第2水分供給機構31,32の両方を停止状態から稼働状態にするように起動する前に、この起動を報知するように報知装置10を制御する。この制御において、報知装置10の表示出力部11が、ディスプレイ又は計器パネルである場合、第1水分供給機構31又は第2水分供給機構32又は第1及び第2水分供給機構31,32の両方の起動を表す文字情報、記号情報、イラスト情報等を表示することができる。表示出力部11が、ランプである場合、点滅を繰り返すことができる。報知装置10の音声出力部12は、第1水分供給機構31又は第2水分供給機構32又は第1及び第2水分供給機構31,32の両方の起動を表す声情報を出力することができる。音声出力部12は、所定のリズムパターンで鳴らされる音情報を出力することもできる。
【0057】
「空気電池における電解液の水分管理方法」
図3を参照して、本実施形態に係る空気電池1における電解液2の水分管理方法の一例を以下に説明する。最初に、水分供給装置30が停止状態にあるか否かを判定する(ステップS1)。水分供給装置30が停止状態にある場合(YES)、空気電池1における電解液2の水分量の測定値pが水分量下限閾値p1よりも小さいか否かを判定する(ステップS2)。
【0058】
水分量の測定値pが水分量下限閾値p1よりも小さい場合(YES)、空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知装置10が報知する(ステップS3)。可動フィン41を閉じる(ステップS4)。起動設定条件に基づいて、水分供給装置30の第1及び第2水分供給機構31,32から空気電池1に供給される水分の流量である第1及び第2流量を設定する(ステップS5)。
【0059】
水分量の測定値pが水分量下限閾値p1以上である場合もまた(NO)、起動設定条件に基づいて、第1及び第2流量を設定する(ステップS5)。水分供給装置30を起動する前に、報知装置10がこの起動を報知する(ステップS6)。第1及び第2流量の起動設定値q1,q2に基づいて、それぞれ第1及び第2水分供給機構31,32から空気電池1に水分を供給することを開始する(ステップS7)。水分供給装置30が稼働状態となっている(ステップS8)。
【0060】
ステップS1において、水分供給装置30が停止状態にない場合(NO)、水分供給装置30が稼働状態となっている(ステップS8)。空気電池1における電解液2の水分量の測定値pが水分量上限閾値p2よりも大きいか否かを判定する(ステップS9)。水分量の測定値pが水分量上限閾値p2よりも大きい場合(YES)、水分供給装置30を停止状態とする(ステップS10)。水分量の測定値pが水分量上限閾値p2以下である場合(NO)、水分供給装置30が稼働状態となっている(ステップS8)。
【0061】
以上、本実施形態に係る水分管理システム20は、車両に搭載される空気電池1の電解液2の水分量が所定の水分量下限閾値p1よりも小さいか否かを判定可能とする水分量判定部21と、前記空気電池1に水分を供給可能とする水分供給装置30とを備える水分管理システム20であって、前記水分量が前記水分量下限閾値p1よりも小さいと前記水分量判定部21が判定し、かつ前記水分供給装置30が前記空気電池1への水分の供給を停止した停止状態にある場合に、報知装置10を、前記空気電池1が発電できない状態に近付いていることを報知するように制御する報知制御部22を備えている。
【0062】
このような水分管理システム20においては、例えば、水分量判定部21が空気電池1の充放電性能が十分に発揮できないように電解液2の水分が少なくなる直前の状態(以下、「乾燥劣化直前状態」という)を判定できるように水分量下限閾値p1を設定すれば、水分量下限閾値p1に基づいて、乾燥劣化直前状態で、水分供給装置30が電解液2に水分を即座に供給できない状況、すなわち、自動的に電解液2の水分を増加させる手段が尽きた状況であっても、ユーザが、このような状況を即座に知ることができる。その結果、ユーザが、電解液2の水分不足に起因して空気電池1の充放電性能が十分に発揮できなくなることを防ぐための対策を早い段階で実施することができる。よって、空気電池1の電解液2の乾燥を防ぐことができ、かつ空気電池1の充放電性能の低下を抑制することができる。
【0063】
本実施形態に係る水分管理システム20は、前記水分供給装置30を、前記空気電池1に水分を供給するように制御する供給制御部23を備えている。本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記水分供給装置30が、前記空気電池1に水分を供給可能とする第1水分供給機構31を有している。本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記第1水分供給機構31が、水分を生成可能とする水分生成部31aと、前記水分生成部31aにより生成される水分を前記空気電池1に送給可能とする水分送給部31bとを有し、前記第1水分供給機構31の水分生成部31aが前記車両の熱交換器となっている。
【0064】
このような水分管理システム20においては、第1水分供給機構31によって、空気電池1の充放電性能の低下を抑制するように電解液2に水分を供給することができ、さらには、第1水分供給機構31の熱交換器によって生成される水分を用いることができる。そのため、水分供給装置30の水分が不足することを抑制でき、かつ水分供給装置30から水分を供給できない状態の発生を抑制できる。よって、空気電池1の電解液2の乾燥を防ぐことができ、かつ空気電池1の充放電性能の低下を抑制することができる。
【0065】
本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記水分供給装置30が、前記空気電池1に水分を供給可能であり、かつ前記第1水分供給機構31とは別体である第2水分供給機構32を有しており、前記水分供給装置30の停止状態が、前記第1及び第2水分供給機構31,32が前記空気電池1への水分の供給を停止した停止状態となっている。
【0066】
このような水分管理システム20においては、第1水分供給機構31に加えて第2水分供給機構32によって、空気電池1の充放電性能の低下を確実に抑制するように電解液2に水分を確実に供給することができる。また、乾燥劣化直前状態で、第1及び第2水分供給機構31,32が電解液2に水分を即座に供給できない状況、すなわち、自動的に電解液2の水分を増加させる手段が尽きた状況であっても、ユーザが、このような状況を即座かつ詳細に知ることができる。その結果、ユーザが、電解液2の水分不足に起因して空気電池1の充放電性能が十分に発揮できなくなることを防ぐための適切な対策を早い段階で実施することができる。
【0067】
本実施形態に係る水分管理システム20は、前記第1及び第2水分供給機構31,32が前記停止状態にある場合にて、それぞれ前記第1及び第2水分供給機構31,32から前記空気電池1に供給される水分の流量である第1及び第2流量を、前記空気電池1又は前記水分供給装置30の状態に応じた起動設定条件に基づいて設定可能とする起動用流量設定部24を備え、前記供給制御部23が、それぞれ前記起動用流量設定部24によって設定された第1及び第2流量の起動設定値q1,q2に基づいて前記第1及び第2水分供給機構31,32から前記空気電池1に水分を供給するように制御する。そのため、起動用流量設定部24によって適切に設定された第1及び第2流量に従って、電解液2に効率的に水分を供給することができる。
【0068】
本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記第2水分供給機構32の水分に含まれる不純物が前記第1水分供給機構31の水分に含まれる不純物よりも少なくなっている場合、前記起動用流量設定部24は、前記第2流量の起動設定値q2を前記第1流量の起動設定値q1よりも大きくする。
【0069】
このような水分管理システム20においては、第1水分供給機構31の水分よりも不純物が少ない第2水分供給機構32の水分を空気電池1に供給するので、電解液2への不純物の混入を抑制することができ、その結果、空気電池1の充放電性能の低下を効率的に抑制することができる。
【0070】
本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記供給制御部23は、前記空気電池1が発電できない状態に近付いていることを前記報知装置10が報知した後に、前記水分供給装置30を、前記空気電池1に水分を供給することを開始するように制御する。
【0071】
このような水分管理システム20においては、乾燥劣化直前状態で、水分供給装置30が電解液2に水分を供給できない状況であっても、即座に水分供給装置30によって電解液2に水分を供給できる状況となるようにフォローされ、かつ即座に乾燥劣化直前状態から脱却できる。
【0072】
本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記水分量判定部21が、前記空気電池1の電解液2の水分量が所定の水分量上限閾値p2よりも大きいか否かを判定可能とし、前記供給制御部23は、前記水分量が前記水分量上限閾値p2よりも大きいと前記水分量判定部21が判断した場合に、前記水分供給装置30を前記停止状態とするように制御する。
【0073】
このような水分管理システム20においては、電解液2への過剰な水分供給に起因して空気電池1の燃料、例えば、水素が必要以上に消費されることを防ぐことができる。よって、空気電池1の充放電性能の低下を抑制することができる。特に、水分供給装置30の第1水分供給機構31が熱交換器を有し、かつ熱交換器が車両の空調機Cに用いられている場合、空調機Cが車両の室内に必要以上の風を送るのを防ぐことができる。よって、空気電池1の電解液2の乾燥を防ぐことを可能とし、かつ空気電池1の充放電性能の低下を抑制可能としつつも、ユーザビリティの低下を防止できる。
【0074】
本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記報知制御部22は、前記水分供給装置30が前記停止状態にある場合に、前記水分供給装置30を前記停止状態から、前記空気電池1に水分を供給する稼働状態にするように起動する前に、前記水分供給装置30の起動を報知するように前記報知装置10を制御する。
【0075】
このような水分管理システム20においては、水分供給装置30が、停止状態から稼働状態となるように強制的に起動させられることがある。特に、水分供給装置30の第1水分供給機構31が熱交換器を有し、かつ熱交換器が車両の空調機Cに用いられている場合、空調機Cが、突然に車両の室内に風を送るように強制的に起動させられることがある。このような場合であっても、ユーザは、報知装置10の報知によって、水分供給装置30、特に、空調機Cの強制的な起動を事前に知ることができ、その結果、ユーザがこのような起動によって驚かされるのを防ぐことができる。よって、空気電池1の電解液2の乾燥を防ぐことを可能とし、かつ空気電池1の充放電性能の低下を抑制可能としつつも、ユーザビリティの低下を防止できる。
【0076】
本実施形態に係る水分管理システム20においては、前記空気電池1の正極4に取り入れられる空気の量を調節可能とするように開閉可能である可動フィン41が設けられており、前記水分管理システム20は、前記空気電池1が発電できない状態に近付いていることを前記報知装置10が報知した後に前記可動フィン41を閉じるように制御する空気取入制御部25を備えている。
【0077】
このような水分管理システム20においては、乾燥劣化直前状態で、水分供給装置30が電解液2に水分を供給できない状況で、開放された可動フィン41を通って空気電池1に供給される空気に起因して電解液2が乾燥するのを防ぐことができる。
【0078】
「第2実施形態」
第2実施形態に係る水分管理システムを、それを搭載した車両と共に説明する。
【0079】
図4を参照すると、本実施形態に係る水分管理システムは、上述した空気取入機構40の代わりに、以下に述べる空気取入機構60及びハウジング70を含む点を除いて、第1実施形態に係る水分管理システム20とは同様に構成される。なお、本実施形態において、水分管理システムの全体は、特に図示しない。
【0080】
空気取入機構60は、正極4及び負極5の対向方向にて、正極集電体7に対して正極4とは反対側に位置する。空気取入機構60は、正極4及び負極5の対向方向にて、正極集電体7と間隔を空けている。ハウジング70は、空気電池1を取り囲むように形成される。ハウジング70には、正極4及び負極5の対向方向にて正極集電体7と対向するように貫通する開口71が形成されている。空気は、この開口71を通ってハウジング70の内部に流入することができる。
【0081】
ハウジング70の開口71には、空気取入機構60が設置される。空気取入機構60は、開口71を通ってハウジング70の内部に空気を流入可能とする開放状態と、かかる空気の流入を遮断した閉鎖状態とに切り換え可能に構成される。空気取入機構60は、少なくとも1つの可動フィン61を有する。空気取入機構60の開放状態及び閉鎖状態の切換は、少なくとも1つの可動フィン61の開閉によってもたらすことができる。
【0082】
さらに、本実施形態においては、第1実施形態と同様に空気電池1における電解液2の水分管理方法を実施することができる。本実施形態に係る水分管理システムは、第1実施形態に係る水分管理システム20と同様の効果を得ることができる。
【0083】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…空気電池、2…水溶液系電解液(電解液)、4…正極
10…報知装置
20…水分管理システム、21…水分量判定部、22…報知制御部、23…供給制御部
24…起動用流量設定部、25…空気取入制御部
30…水分供給装置、31…第1水分供給機構、31a…水分生成部、31b…水分送給部、32…第2水分供給機構、32a…水分貯蔵部、32b…水分供給部
41,61…可動フィン
p1…水分量下限閾値、p2…水分量上限閾値、q1…第1流量の起動設定値、q2…第2流量の起動設定値
図1
図2
図3
図4