(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】突然変異体VSV細胞外ドメインポリペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/145 20060101AFI20241219BHJP
C12N 15/47 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241219BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241219BHJP
A61K 35/766 20150101ALI20241219BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241219BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K14/145 ZNA
C12N15/47
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/62 Z
A61K38/16
A61K31/7088
A61K35/766
A61K35/12
A61P35/00
A61K48/00
(21)【出願番号】P 2022502322
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2020057144
(87)【国際公開番号】W WO2020187850
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アルベルティーニ オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】ロー エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーダン イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス フランク
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/050738(WO,A1)
【文献】特表2010-503660(JP,A)
【文献】AMMAYAPPAN, Arun et al.,Journal of Virology,2013年12月,Vol. 87, No. 24,pp. 13543-13555,DOI: 10.1128/JVI.02240-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
A61K 35/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む突然変異体ポリペプチドであって、前記細胞外ドメインが、下記:
a)配列番号2の422位および22位に位置する任意のアミノ酸残基;または
b)配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422位および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基
からなる群から選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つの置換を有する、配列番号2に記載のアミノ酸配列、または
配列番号4、6、8、又は10に記載のアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも
90%の同一性を有するアミノ酸配列を含
み、
ここで、
前記配列番号2の422位に位置する任意のアミノ酸残基、又は配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基の置換は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群から選択される疎水性アミノ酸への置換であり、且つ
前記配列番号2の22位に位置する任意のアミノ酸残基、又は配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンのアスパラギンへの置換である、
前記突然変異体ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号17~71からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項1
に記載の突然変異体ポリペプチド。
【請求項3】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む突然変異体ポリペプチドであって、前記細胞外ドメインが、下記:
a)配列番号2の422位および22位に位置する任意のアミノ酸残基;または
b)配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422位および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基
からなる群から選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つの置換を含み、且つ
配列番号2の8、47、209、および354位に位置するアミノ酸残基、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の8、47、209、および354位に相当する位置に位置するアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つの置換をさらに含む、
配列番号2に記載のアミノ酸配列、または配列番号4、6、8、又は10に記載のアミノ酸配列、または配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、
前記配列番号2の422位に位置する任意のアミノ酸残基、又は配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基の置換は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンからなる群から選択される疎水性アミノ酸への置換であり、且つ
前記配列番号2の22位に位置する任意のアミノ酸残基、又は配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基の置換は、ヒスチジンのアスパラギンへの置換である、
前記突然変異体ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質とを含む融合ポリペプチドであって、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入されているか、あるいは配列番号2の192~202、240~257、347~353、364~366、もしくは376~379位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間に挿入されている、融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、細胞受容体のリガンドの少なくとも一部である、請求項
4に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、または請求項
4もしくは請求項
5に記載の融合ポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項7】
少なくとも1つの、請求項
6に記載の核酸を含むか、あるいは請求項1~
3のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、または請求項
4もしくは請求項
5に記載の融合ポリペプチドを発現するベクター。
【請求項8】
ウイルスベクターである、請求項
7に記載のベクター。
【請求項9】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、または請求項
4もしくは請求項
5に記載の融合ポリペプチドを含有するか、またはこれを発現するか、あるいは請求項
6に記載の核酸分子を含有するか、あるいは請求項
7~
8のいずれか1項に記載のベクターを含有する宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、請求項
4もしくは請求項
5に記載の融合ポリペプチド、請求項
6に記載の核酸分子、請求項
7~
8のいずれか1項に記載のベクター、請求項
9に記載の宿主細胞、またはこれらの任意の組合せを含む組成物。
【請求項11】
薬物としての使用のための、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
がんを処置するための使用、遺伝子治療のための使用、または免疫療法のための使用のための、請求項
10に記載の組成物。
【請求項13】
カーゴを、選択された細胞型にin vivoで選択的に送達するための、または対象における前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特にがん細胞などの死滅させられるべき細胞にターゲティングするための使用のための、請求項
10に記載の組成物。
【請求項14】
カーゴを、選択された細胞型にin vitroで選択的に送達するための、または前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特にがん細胞などの死滅させられるべき細胞にターゲティングするための、in vitroにおける請求項
10に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性が改善されたウイルスの分野にあり、より特定すると、特性が改善されたVSVウイルス、特に、腫瘍溶解がん療法、遺伝子治療、免疫療法、およびカーゴの、選び出された細胞型への選択的送達における使用のための分野における発明であり、水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む突然変異体ポリペプチドであって、前記細胞外ドメインが、下記:
a)配列番号2の421位~429位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基;または
b)配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~429位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基
からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を有する、配列番号2に明示されたアミノ酸配列、または配列番号2に明示されたアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、突然変異体ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス(Rhabdovirus)科のベシクロウイルス(Vesiculovirus)属に属する、エンベロープ型のマイナス鎖RNAウイルスである。VSVは、昆虫、ウシ、ウマ、およびブタに感染しうるアルボウイルスである。哺乳動物において、VSVは、正常細胞を温存しながら、腫瘍細胞に感染し、これらを死滅させるその能力をもつので、がんを処置するために有望な腫瘍溶解性ウイルスである(Barber. Oncogene 24, 7710-7719 (2005);Fernandez et al. J. Virol. 76, 895-904 (2002);Hastie et al. Virus Res. 176, 16-32 (2013))。
VSVゲノムは、11kbの一本鎖マイナスセンスRNAからなる(
図1A)。VSVゲノムは、5つの構造タンパク質をコードする、5つの遺伝子を含有し、それらのうちの1つは、特に、膜貫通糖タンパク質である糖タンパク質Gをコードする(
図1Aおよび1B)。糖タンパク質Gは、感染早期に、鍵となる役割を果たす(Albertini et al. Viruses 4, 117-139 (2012))。まず、その細胞受容体(LDL-RまたはLDL-Rファミリーのメンバー)と相互作用することにより、糖タンパク質Gは、ウイルスの付着を可能とする。次いで、ビリオンのエンドサイトーシスの後で、糖タンパク質Gは、エンドソームの内部の酸性化により誘導される、融合前形態から融合後形態へのコンフォメーション変化を受ける。この構造的転移は、ウイルス膜とエンドソーム膜との融合を触媒する。
【0003】
糖タンパク質Gは、VSVの指向性の一因となる唯一のタンパク質である。この指向性は、LDL-Rファミリーメンバーの遍在的性格に起因して、広範であり、VSVが、多くの細胞型に侵入することを可能とする。例えば、VSV糖タンパク質Gが、多くのレトロウイルスベクターを偽型化するのに使用されるのは、このためである。しかしながら、この広範な指向性にもかかわらず、いくつかの細胞型は、VSV受容体の発現レベルが低度であるに過ぎないか、またはVSV受容体を保有しない(休眠T細胞、B細胞、およびCD341細胞など)(Amirache. Blood 123, 1422-4 (2014))。
よって、指向性が変更された改変VSVウイルスが必要とされている。このような改変VSVウイルスであれば、天然VSV受容体を保有しない細胞型に感染するであろう。
この問題を克服するために、本発明者らは、VSV糖タンパク質Gのアミノ酸配列内に、所与の受容体を特異的に認識するターゲティング部分(ナノボディーなど)の配列の挿入を可能とする部位を同定しようと努めた。特に、この挿入は、糖タンパク質Gの膜融合特性に干渉すべきでない。
本発明者らは、いくつかの挿入部位について解析し、アミノ末端部位が、ナノボディーの挿入を許容することを裏付けた。結果として得られる初期キメラ(
図2に正確に記載される、GNano)は、適正にフォールディングされ、細胞膜へと輸送された。初期キメラは、その融合特性を保持していた(それにもかかわらず、弱毒化されていた)。
【発明の概要】
【0004】
本発明の文脈において、次いで、本発明者らは、野生型糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、GNano(初期キメラ)をコードする遺伝子で置きかえられた、組換えVSVを構築した。しかし、この初期組換えVSVウイルスの増幅は、極めて困難であり、BSR細胞内の、24時間後にわたる増幅の後で、極めて低度の感染力価、約1.8.106pfu/mlが得られただけであった。このような低力価は、治療を意図するターゲティング型VSVウイルスの産業的作製に適合しない。
次いで、本発明者らは、その増幅を改善する突然変異を選択するために、この組換えウイルスの、BSR細胞上における、何代かにわたる継代を実施した。10継代の後、ウイルス集団のゲノムに対するシーケンシングは、22位におけるヒスチジン残基の、アスパラギンへの変化(H22N置換)、および422位におけるセリン残基の、イソロイシンへの変化(S422I置換)を結果としてもたらす、糖タンパク質のヌクレオチド配列内における2つの突然変異を含有する変異体による、この集団への漸進的侵入を示した。この最適化の後に得られる、組換えウイルスの力価は、約108pfu/mlであった。
【0005】
こうして、驚くべきことに、本発明者らは、組換えウイルス(GNano H22N S422Iまたは改善型キメラ;
図2を参照されたい)が、BSR細胞内で、24時間にわたる増幅の後(実施例1を参照されたい)に、約10
8pfu/mlで作製されることを、2種の突然変異の組合せ(H22NおよびS422I)が可能とすることを見出した。
さらに、本発明者らはまた、置換S422Iが、置換H407Aにより完全に消失させられるG融合特性をレスキューすることが可能であることも見出した。この文脈で、本発明者らは、S422Iが、LDL-R CRドメインの認識を改善する(融合後状態への構造的転移は、CRドメイン結合性部位を破壊する)ことを示すことにより、S422Iが、Gのフォールディングを容易とし、Gの融合前形態を安定化させることを裏付けた。
GNano H22Nの文脈では、本発明者らはまた、置換S422F、S422M、S422L、またはS422Vが、S422Iと類似の表現型を有することも裏付けた。
【0006】
本発明者らはまた、H22N置換、および/またはS422I置換、S422F置換、S422M置換、S422L置換、もしくはS422V置換の存在下で、VSV Indiana Gシグナルペプチド、ジペプチドリンカー、抗GFPナノボディー、GGGGSGGGGS(配列番号81)リンカー、ならびに置換S422I、S422F、S422M、S422L、およびS422Vのうちの1つを伴うVSV Indiana G細胞外ドメインからなる融合ポリペプチドを発現する組換えVSVが、5.5~6.3の間の低pHへ曝露された場合に、野生型VSV Indianaと同様に、合胞体を形成することが可能であることも検証した。これはまた、422位における疎水性残基の存在が、pH依存性構造的転移の調節において鍵となり、Gのフォールディングを容易とし、N末端の細胞外ドメインにナノボディーを挿入された、Gの融合ポリペプチドの融合前形態を安定化させる(実施例3を参照されたい)ことも示唆する。これはまた、本発明者らにより解明された、VSV G細胞外ドメインの結晶構造によっても確認される。実際、本発明者らは、驚くべきことに、C末端部分(残基407~残基429、より特定すると、残基421~残基429に位置する領域、なおより特定すると、残基421~残基425の領域)は、大部分が、融合ドメインと相互作用するので、融合前複合体の安定化に寄与することを示した。結晶構造は、S422残基の、疎水性残基(I、F、M、L、またはVなど)による補償的置換が、疎水性相互作用を介して、ベータ-ヘアピン構造(したがって、融合前状態)を安定化させる(実施例4を参照されたい)ことを、さらに明らかにした。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなり、前記細胞外ドメインが、下記:
a)配列番号2の421位~429位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2の421位~425位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2の422および22位に位置する任意のアミノ酸残基;または
b)配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~429位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~425位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基
からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を有する、配列番号2に明示されたアミノ酸配列、または配列番号2に明示されたアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる突然変異体ポリペプチドに関する。
【0008】
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質とを含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる融合ポリペプチドであって、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、
a)突然変異体ポリペプチドのN末端、
b)配列番号2の192~202位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
c)配列番号2の240~257位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
d)配列番号2の347~353位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
e)配列番号2の364~366位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
f)配列番号2の376~379位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間
に挿入されており、
好ましくは、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入されているか、または配列番号2の351および352位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置におけるアミノ酸の間に挿入されている、融合ポリペプチドにも関する。
【0009】
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸分子にも関する。
本発明はまた、少なくとも1つの、本発明に従う核酸を含むか、または本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドを発現するベクターにも関する。
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドを含有するか、またはこれらを発現するか、または本発明に従う核酸分子を含有するか、または本発明に従うベクター(特に、VSVベクター)を含有する宿主細胞にも関する。
【0010】
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチド、本発明に従う核酸分子、本発明に従うベクター、本発明に従う宿主細胞、またはこれらの任意の組合せを含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物にも関する。
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチド、本発明に従う核酸分子、本発明に従うベクター、本発明に従う宿主細胞、本発明に従う組成物、またはこれらの任意の組合せの治療的使用にも関する。
【0011】
本発明はまた、対象において、前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドにアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特に、がん細胞など、死滅させられる細胞へとターゲティングするための使用のための、本発明に従う突然変異体ポリペプチド、または本発明に従う融合ポリペプチドにも関する。
本発明はまた、前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特に、がん細胞など、死滅させられる細胞へとターゲティングするための、本発明に従う突然変異体ポリペプチド、または本発明に従う融合ポリペプチドの、in vitroにおける使用にも関する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む突然変異体ポリペプチドであって、前記細胞外ドメインが、下記a)またはb)からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を有する、配列番号2に明示されたアミノ酸配列、または配列番号2に明示されたアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記突然変異体ポリペプチド:
a)配列番号2の421位~429位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2の421位~425位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2の422位および22位に位置する任意のアミノ酸残基;または
b)配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置から429位に相当する位置までに位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置から25位に相当する位置までに位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置から425位に相当する位置までに位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置から25位に相当する位置までに位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422位および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基。
〔2〕a)配列番号2の421位~429位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基が、疎水性アミノ酸、好ましくは、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、およびトリプトファン(W)、より好ましくは、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、およびフェニルアラニン(F)、さらにより好ましくは、イソロイシン(I)からなる群から選択される、疎水性アミノ酸により置換され;かつ/または
b)配列番号2の17位~25位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基が、極性アミノ酸、好ましくは、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、システイン(C)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、セリン(S)、より好ましくは、アスパラギン(N)からなる群から選択される、極性アミノ酸により置換されている、
前記〔1〕に記載の突然変異体ポリペプチド。
〔3〕配列番号17~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、前記〔1〕または前記〔2〕に記載の突然変異体ポリペプチド。
〔4〕配列番号2の8、47、209、および354位に位置するアミノ酸残基、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の8、47、209、および354位に相当する位置に位置するアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換をさらに含み、好ましくは、配列番号2の47位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換、配列番号2の354位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換、または配列番号2の47および354位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における2つの置換をさらに含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド。
〔5〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質とを含む融合ポリペプチドであって、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入されているか、あるいは配列番号2の192~202、240~257、347~353、364~366、もしくは376~379位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間に挿入されており、好ましくは、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入されているか、または配列番号2の351および352位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置におけるアミノ酸の間に挿入されている、融合ポリペプチド。
〔6〕前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、細胞受容体のリガンドの少なくとも一部、好ましくは、抗体またはナノボディーなどの機能的抗体断片、例えば、抗HER2抗体、抗MUC18抗体、抗PD-1抗体、抗EGFR抗体、抗CD20抗体、もしくは抗CD52抗体、またはナノボディーなどの機能的抗体断片である、前記〔5〕に記載の融合ポリペプチド。
〔7〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、または前記〔5〕もしくは前記〔6〕に記載の融合ポリペプチドをコードする核酸分子。
〔8〕少なくとも1つの、前記〔7〕に記載の核酸を含むか、あるいは前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、または前記〔5〕もしくは前記〔6〕に記載の融合ポリペプチドを発現するベクター。
〔9〕ウイルスベクター、好ましくは、VSVベクターであり、より好ましくは、前記ウイルスベクターが、感染性ウイルス粒子の形態にある、前記〔8〕に記載のベクター。
〔10〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、または前記〔5〕もしくは前記〔6〕に記載の融合ポリペプチドを含有するか、またはこれを発現するか、あるいは前記〔7〕に記載の核酸分子を含有するか、あるいは前記〔8〕~〔9〕のいずれか1項に記載のベクターを含有する宿主細胞。
〔11〕前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の突然変異体ポリペプチド、前記〔5〕もしくは前記〔6〕に記載の融合ポリペプチド、前記〔7〕に記載の核酸分子、前記〔8〕~〔9〕のいずれか1項に記載のベクター、前記〔10〕に記載の宿主細胞、またはこれらの任意の組合せを含む組成物。
〔12〕薬物としての使用のための、前記〔11〕に記載の組成物。
〔13〕がんを処置するための使用、遺伝子治療のための使用、または免疫療法のための使用のための、前記〔11〕に記載の組成物。
〔14〕カーゴを、選択された細胞型にin vivoで選択的に送達するための、または対象における前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特にがん細胞などの死滅させられるべき細胞にターゲティングするための使用のための、前記〔11〕に記載の組成物。
〔15〕カーゴを、選択された細胞型にin vitroで選択的に送達するための、または前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特にがん細胞などの死滅させられるべき細胞にターゲティングするための、in vitroにおける前記〔11〕に記載の組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】A.VSVゲノムが、負の極性を有する、単一のRNA分子であり、5つの構造タンパク質である、N(ヌクレオタンパク質)、P(リンタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)、G(糖タンパク質)、およびL(大型のRNA依存性RNAポリメラーゼ)をコードすることを示す図である。B.VSVが、エンベロープウイルスであり、糖タンパク質Gが、ウイルスの外部にある、唯一のタンパク質であることを示す図である。糖タンパク質Gは、ウイルスの侵入(受容体との相互作用および膜との融合)ステップに関与する。
【
図2】初期キメラ(GNano)および改善型キメラ(GNano H22N S422I)についての概略図である。選択された突然変異を表示する(SP:VSV糖タンパク質Gのシグナルペプチド、Nano:ナノボディー、G:VSVの糖タンパク質G)。さらなるインサート(ジペプチドであるQF、およびGGGGSGGGGS(配列番号81)の配列を有するリンカー)もまた表示する。
【
図3A】Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する、VSVのIndiana株(配列番号2)およびMaraba株(配列番号4)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列についての、最適グローバルアライメントを示す図である。配列番号2の17~25および421~429位、ならびに相当する配列番号4の位置を(また、17~25および421~429位も)枠囲いする。好ましい置換位置(配列番号2および配列番号4の両方の、22および422位)をさらに枠囲いする。使用されたデフォルトパラメータを表示する。得られた同一性百分率(「同一性」)、類似性百分率(「類似性」)、および類似性スコア(「スコア」)を表示する。
【
図3B】Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する、VSVのIndiana株(配列番号2)およびCocal株(配列番号6)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列についての、最適グローバルアライメントを示す図である。配列番号2の17~25および421~429位、ならびに相当する配列番号6の位置を(また、17~25および421~429位も)枠囲いする。好ましい置換位置(配列番号2および配列番号6の両方の、22および422位)をさらに枠囲いする。使用されたデフォルトパラメータを表示する。得られた同一性百分率(「同一性」)、類似性百分率(「類似性」)、および類似性スコア(「スコア」)を表示する。
【
図3C】Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する、VSVのIndiana株(配列番号2)およびMorreton株(配列番号8)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列についての、最適グローバルアライメントを示す図である。配列番号2の17~25および421~429位、ならびに相当する配列番号8の位置を(また、17~25および421~429位も)枠囲いする。好ましい置換位置(配列番号2および配列番号8の両方の、22および422位)をさらに枠囲いする。使用されたデフォルトパラメータを表示する。得られた同一性百分率(「同一性」)、類似性百分率(「類似性」)、および類似性スコア(「スコア」)を表示する。
【
図3D】Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する、VSVのIndiana株(配列番号2)およびAlagoa株(配列番号10)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列についての、最適グローバルアライメントを示す図である。配列番号2の17~25および421~429位、ならびに相当する配列番号10の位置を(また、17~25および421~429位も)枠囲いする。好ましい置換位置(配列番号2および配列番号10の両方の、22および422位)をさらに枠囲いする。使用されたデフォルトパラメータを表示する。得られた同一性百分率(「同一性」)、類似性百分率(「類似性」)、および類似性スコア(「スコア」)を表示する。
【
図3E】Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する、VSV Indiana株(配列番号2)およびNew Jersey株(配列番号12)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列についての、最適グローバルアライメントを示す図である。配列番号2の17~25および421~429位、ならびに相当する配列番号12の位置(17~25および428~436位)を枠囲いする。好ましい置換位置(配列番号2の22および422位、ならびに配列番号12の22および429位)をさらに枠囲いする。使用されたデフォルトパラメータを表示する。得られた同一性百分率(「同一性」)、類似性百分率(「類似性」)、および類似性スコア(「スコア」)を表示する。
【
図3F】Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する、VSVのIndiana株(配列番号2)およびCarajas株(配列番号14)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列についての、最適グローバルアライメントを示す図である。配列番号2の17~25および421~429位、ならびに相当する配列番号14の位置(17~25および425~433位)を枠囲いする。好ましい置換位置(配列番号2の22および422位、ならびに配列番号14の22および426位)をさらに枠囲いする。使用されたデフォルトパラメータを表示する。得られた同一性百分率(「同一性」)、類似性百分率(「類似性」)、および類似性スコア(「スコア」)を表示する。
【
図4】Clustal Omega(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)、およびESPript(http://espript.ibcp.fr/ESPript/ESPript/esp_userguide.php)を使用して生成した、VSVのIndiana株(配列番号2)、Maraba株(配列番号4)、Cocal株(配列番号6)、Morreton株(配列番号8)、Alagoa株(配列番号10)、New Jersey株(配列番号12)、およびCarajas株(配列番号14)の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、アミノ酸配列の多重配列アライメントを示す図である。厳密に保存的なアミノ酸(全ての株について同一である)は、グレーの地に、白色で記載する。枠囲いの領域は、高度に類似する残基に対応する。下方に表示されるコンセンサス配列(類似性スコア>0.7)は、大文字は、同一配列であり、小文字は、コンセンサスレベルが>0.5であり、!は、IVのうちのいずれかであり、$は、LMのうちのいずれかであり、%は、FYのうちのいずれかであり、#は、NDQEBZのうちのいずれかである、MultAlinによる基準を使用して生成した。
【
図5】VSV Indiana Gの、融合前プロモーター内のヒスチジンクラスターを示す図である。ヒスチジン407の、アラニンへの突然変異は、Gの融合特性を消失させる。
【
図6】上図:HEK293T細胞の表面における、WT糖タンパク質および突然変異体糖タンパク質の発現、ならびに蛍光GST-CR2(アミノ末端にGSTを融合したCR2)への結合についてのフローサイトメトリー解析を示す図である。トランスフェクションの24時間後に、4℃で、1時間、抗Gモノクローナル抗体である、8G5F11を、生細胞上で直接使用して、WT Gおよび突然変異体Gの細胞表面発現について評価した。次いで、細胞を、抗マウスAlexa Fluor 488、および表示のGST-CR2
ATTO550と共に、同時にインキュベートした。GST-CRタンパク質に結合することが、なおも可能なG構築物をトランスフェクトされた細胞は、ATTO550染料に起因する、赤色の蛍光を呈した。突然変異体である、R354Aは、CRドメインに結合することが不可能な突然変異体である。下図:突然変異体の糖タンパク質である、G-H407AおよびG.H407A/S422Iの表面発現についてのフローサイトメトリー解析を示す図である。表面Gタンパク質の発現は、モノクローナル抗体である、8G5F11(KeraFAST)、およびAlexa Fluor 488へとコンジュゲートさせた、ヤギ抗マウスIgG二次抗体により検出した。フローサイトメトリーにより、合計10,000個の細胞をカウントした。各フレーム内で、黒色の曲線は、非トランスフェクト細胞の蛍光に対応し、青色の曲線は、WT Gをコードする、pCAGGSプラスミドをトランスフェクトされた細胞の蛍光に対応し、赤色の曲線は、表示の突然変異体をコードする、pCAGGSプラスミドをトランスフェクトされた細胞の蛍光に対応する。各フレーム内で、突然変異体Gの表面発現を、WT Gに対する百分率として表す。
【
図7】細胞間融合アッセイ:VSV G Indiana WT、および最適化(すなわち、残基H22の、Nへの突然変異、および残基S422の、I、F、M、L、またはVへの突然変異)の後におけるVSV GNanoの融合活性を示す図である。
【
図8】VSV G1-440(VSV G Indiana WTの残基1~440)の結晶構造、および残基S422の環境を示す図である。(A)G1-440の融合前三量体の結晶構造を示す図である。鎖は、残基432までトレースされる。残基410~432は、ダークグレーとする。(B)セグメント410~432の構造を示す図である。2つの拡大図による、セグメント410~432の詳細な構成、および融合ドメインとのその相互作用である。(C)Gの融合前状態における、残基S422の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の文脈で、本発明者らは、驚くべきことに、シグナルペプチドと、VSV Indiana糖タンパク質Gの細胞外ドメインとの間に挿入されたナノボディーを含む、組換えVSVウイルスが、その融合特性および感染性を保持する一方で、増幅が極めて困難であり、したがってその産業的使用は可能でないことを見出した。本発明者らは、さらに驚くべきことに、VSV Indiana糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、22位または422位における、少なくとも1つの置換の挿入が、融合特性および感染性を保持しながら、組換えウイルスの増幅を劇的に増大させるので、その産業的使用を可能とすること(実施例1を参照されたい)を見出した。本発明者らはまた、422位における疎水性残基の存在が、pH依存性構造的転移の調節において鍵となり、Gのフォールディングを容易とし、N末端の細胞外ドメインにナノボディーを挿入された、Gの融合ポリペプチドの融合前形態を安定化させる(実施例2、3、および4を参照されたい)ことを示す結果も得た。
【0014】
作製が改善された突然変異体ポリペプチド
したがって、まず、本発明は、水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなり、前記細胞外ドメインが、下記:
a)配列番号2の421位~429位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2の421位~425位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2の422および22位に位置する任意のアミノ酸残基;または
b)配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~429位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~425位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基
からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を有する、配列番号2に明示されたアミノ酸配列、または配列番号2に明示されたアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる突然変異体ポリペプチドに関する。
好ましい実施形態では、本発明の突然変異体ポリペプチドは、単離ポリペプチド、および/または天然に存在しないポリペプチドである。
【0015】
参照配列および置換のための位置
突然変異体ポリペプチドは、シグナルペプチドを伴わない、糖タンパク質Gのアミノ酸配列に対応する、水疱性口内炎ウイルス(VSV)株の糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づく。本記載では、参照VSV株は、Indiana株である。VSV Indiana株の、糖タンパク質Gのアミノ酸配列は、配列番号1に明示される通りである。VSV Indiana株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2に明示される通りであり、配列番号1のアミノ酸17~511に対応し、配列番号1のアミノ酸1~16は、シグナルペプチドに対応する。好ましい実施形態では、本発明に従う突然変異体ポリペプチドは、VSV Indiana株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来するので、配列番号2の421位~429位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2の421位~425位に位置する任意のアミノ酸残基、および17位~25位に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2の422および22位に位置する任意のアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を伴う、配列番号2に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる。
【0016】
しかし、本発明に従う突然変異体ポリペプチドはまた、Indiana株以外のVSV株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する場合もあり、それが、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~429位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~425位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を伴う、配列番号2に明示されたアミノ酸配列との、少なくとも50%の同一性、好ましくは、少なくとも55%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%の同一性、より好ましくは、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも78%の同一性、少なくとも79%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも81%の同一性、少なくとも82%の同一性、少なくとも83%の同一性、少なくとも84%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも86%の同一性、少なくとも87%の同一性、少なくとも88%の同一性、少なくとも89%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、またはなお少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなるという条件下で、さらなる突然変異を含む場合もある。
【0017】
この場合、配列番号2および初期のアミノ酸配列(例えば、この配列が、最適グローバルアライメントの後において、配列番号2と、少なくとも50%の同一性、または上記で規定された、他の任意の、好ましい、最小の百分率の同一性を有するという条件下における、Indiana株以外のVSV株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列)の最適グローバルアライメントがなされ、初期のアミノ酸配列は、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~429位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の421位に相当する位置~425位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、および配列番号2の17位に相当する位置~25位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基、より好ましくは、配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の422および22位に相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換を有する。
【0018】
本発明の開示の文脈で言及される同一性パーセントは、比較される配列の最適グローバルアライメントに基づき、すなわち、Needleman and Wunsch (1970)のアルゴリズムなど、当業者に周知の、任意のアルゴリズムを使用して、それらの全長にわたり、それらの全体においてなされた、配列の最適アライメントに基づき決定される。この配列の比較は、当業者に周知の、任意のソフトウェア、例えば、Emboss Needleソフトウェアを使用して実施されうる。Emboss Needleソフトウェアは、例えば、https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/で入手可能である。このソフトウェアは、2つのインプット配列を読み取り、それらの最適グローバル配列アライメントを、ファイルへと書き出す。Emboss Needleソフトウェアは、Needleman-Wunschアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列の最適アライメント(ギャップを含む)を、それらの全長に沿って見出す。アルゴリズムは、全ての可能なアライメントを探索し、最良のアライメントを選び出すことにより、アライメントが、最適であることを確認するのに、動的プログラミング法を使用する。評定行列は、あらゆる可能な残基またはヌクレオチドのマッチについての値を含有するリードである。Needleは、アライメントのスコアが、評定行列から取り出されるマッチの合計であって、アライメントされた配列内の、ギャップの生起および伸長から生じるペナルティーを差し引いたマッチの合計に等しい場合の、可能な最大スコアを伴うアライメントを見出す。置換行列、ならびにギャップの生起および伸長のペナルティーは、ユーザー指定である。本発明の文脈において、最適グローバルアライメントを得るために、Emboss Needleソフトウェアは、デフォルトパラメータにより、すなわち、10.0とした「Gap open」パラメータ、0.5とした「Gap extend」パラメータ、「false」とした「End gap penalty」パラメータ、10.0とした「End gap open」パラメータ、および「Blosum 62」行列を使用して使用されうる。2つのアミノ酸配列を入力する場合、Emboss Needleソフトウェアは、最適グローバルアライメントの他、アライメントを特徴付ける、いくつかの値を出力する。
・「同一性」とは、同一性百分率、すなわち、報告されるアライメント領域(全長中に、任意のギャップを含む)にわたる、2つの配列の間の同一なマッチの百分率であり;
・「類似性」とは、類似性百分率、すなわち、報告されるアライメント領域(全長中に、任意のギャップを含む)にわたる、2つの配列の間のマッチの百分率であり;
・「スコア」とは、ソフトウェアにより、全ての被験グローバルアライメント(すなわち、両方の配列全長にわたる)について得られる、最良のスコアに対応する、アライメントの全スコアである。
このスコアは、アライメントされる同一なアミノ酸だけでなく、また、タンパク質の機能を大きくは変更しないことが予想される保存的置換も考慮して、配列番号2と、別の初期配列との間のスコアの値が高値であるほど、この初期配列と配列番号2との間の類似性が大きいので、「類似性スコア」と称されうる。
【0019】
配列番号2と、別の初期配列との間で、最適グローバルアライメントが得られると、同一性百分率と、配列番号2の特異的位置に相当する位置とを規定する。特に、配列番号2のN位に相当する位置とは、配列番号2のN位とアライメントされた、他の初期配列の位置である。
【0020】
Indiana株以外のVSV株の例はまた、Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株など、7種の血清型も含む。これらの株およびIndiana株の、全長糖タンパク質Gおよび糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、非突然変異(野生型)アミノ酸配列を、下記の表1に提示する。
【0021】
【0022】
Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の各々と対比した、VSV Indiana株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、非突然変異アミノ酸配列の最適グローバルアライメントを、
図3A~3Fに提示する。これらの最適グローバルアライメントに基づき、同一性百分率、類似性スコア(Emboss Needleソフトウェアを、上記で規定されたデフォルトパラメータで使用して得られる)、ならびに配列番号2の17~25位、および421~429位(VSV Indiana糖タンパク質Gの細胞外ドメイン)に相当する、VSVのMaraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列内の位置が決定されうる。これらを、下記の表2に列挙する。
【0023】
【0024】
図3A~3Fのアライメントはまた、2つのアミノ酸配列間で同一なアミノ酸に加えて、一部の置換は、保存的であり、細胞外ドメインの機能を確保することも示す。最適グローバルアライメントの後における、2つの配列の類似性スコアを計算する場合に、特に、Emboss Needleソフトウェアを、デフォルトパラメータで使用する場合に、このような保存的置換の存在が考慮される。
【0025】
したがって、配列番号2と異なる初期配列が使用される場合、配列番号2との、少なくとも50%(または上記で規定された、他の任意の、最小の同一性百分率)の同一性に加えて、初期の配列は、配列番号2の、それ自身との類似性スコアが、2693であることが既知であるので、好ましくは、少なくとも1400、より好ましくは、少なくとも1500、少なくとも1600、少なくとも1700、少なくとも1800、なおより好ましくは、少なくとも1900、少なくとも2000、少なくとも2100、少なくとも2200、またはなお少なくとも2300、の最適グローバルアライメントの後における(好ましくは、Emboss Needleソフトウェアを、上記で規定されたデフォルトパラメータで使用する)類似性スコアを有する。
【0026】
VSVのIndiana株、Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、アミノ酸の多重配列アライメントを、
図4に提示する。
図4から明らかな通り、どのような特異的株であれ、VSVの、糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、全てのアミノ酸配列は、保存的アミノ酸および保存的ドメイン(すなわち、配列番号2と、他のアライメントされたアミノ酸配列との間で同一なアミノ酸またはドメイン)を含有する。
【0027】
特に、配列番号2の17~25位は、17~18、21、および23~25位において、保存的アミノ酸を含有する。VSVのIndiana株、Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列の、17~25位のコンセンサス配列は、VPX1X2YX3YCP(配列番号15)[配列中、
・X1は、セリン(S)、ヒスチジン(H)、リシン(K)、プロリン(P)、およびアラニン(A)から選択され、
・X2は、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)、トレオニン(T)、グリシン(G)、およびセリン(S)から選択され、
・X3は、ヒスチジン(H)、アスパラギン(N)、アルギニン(R)、およびグルタミン(Q)から選択される]
として規定されうる。
【0028】
同様に、配列番号2の421~429位は、421および426~429位に、保存的アミノ酸を含有する。VSVのIndiana株、Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列の、421~429位のコンセンサス配列は、EX4X5X6X7GDTG(配列番号16)[配列中、
・X4は、セリン(S)、バリン(V)、およびトレオニン(T)から選択され、
・X5は、ロイシン(L)およびイソロイシン(I)から選択され、
・X6は、フェニルアラニン(F)およびチロシン(Y)から選択され、
・X7は、フェニルアラニン(F)およびチロシン(Y)から選択される]
として規定されうる。
【0029】
したがって、好ましい実施形態では、本発明に従う突然変異体ポリペプチドは、
a)配列番号2に明示されたアミノ酸配列、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後において、配列番号2に明示されたアミノ酸配列と、少なくとも50%の同一性を有する配列、ならびに
b)配列である、VPX1X2YX3YCP(配列番号15)、およびEX4X5X6X7GDTG(配列番号16)
[配列中、
i)X4~X7のうちの1つ(配列番号2の422~425位に対応する)、好ましくは、X4(配列番号2の422位に対応する);
ii)X1~X3のうちの1つ(配列番号2の19~20および22位に対応する)、好ましくは、X3(配列番号2の22位に対応する);または
iii)X1~X3のうちの1つ(配列番号2の19~20および22位に対応する)、およびX4~X7のうちの1つ(配列番号2の422~425位に対応する)、好ましくは、X3およびX4(配列番号2の222および422位に対応する)
が置換されている]
の、2つのドメインを含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる。
【0030】
さらに、VSVの、Indiana株、Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインの、全てのアミノ酸配列内で保存的なアミノ酸は、配列番号2の、1、4、6~7、12、14、17~18、21、23~25、27、29、31、33、46~4755~56、58~60、64、66~69、71~75、77、79、81~82、87、91~92、96、102、107~111、114~116、119、121、127、130、132、134、137~139、141、143、145、151、153、158、160、162~165、167、177、199、204、206~208、210、212、219、221、224、228、231、236~237、241、253、259、262、268、271~272、274~277、279~281、283~285、287~290、299、301、304、307~311、313~314、316~318、320~321、323、325~326、330、332、338、345、349、354、356~357、360、362、368~372、374、376、379、381、383~384、388、390、393、395、407~408、413、421、426~429、431~434、436、439~443、445、447、456、467、487、および489~490位に対応する。以下では、これらの位置を、「保存的位置」と称する。
【0031】
したがって、本発明に従う突然変異ポリペプチドについての一部の実施形態では、配列番号2との最適グローバルアライメントの後において、配列番号2に明示されたアミノ酸配列と、少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列は、上記で規定された保存的位置において、配列番号2と同じアミノ酸を有する。
細胞外ドメインが、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)に結合する能力を変更する(下記の「さらなる任意の突然変異」と題する節を参照されたい)ことが所望される場合、保存的な47および354位が例外とされうる。この場合、配列番号2との最適グローバルアライメントの後において、配列番号2に明示されたアミノ酸配列と、少なくとも50%(または上記で開示された、他の任意の、最小の同一性%)の同一性を有するアミノ酸配列は、配列番号2の47および/または354位における、可能なさらなる置換を除き、上記で規定された保存的位置において、配列番号2と同じアミノ酸を有しうる。
【0032】
置換のためのアミノ酸の種類
本発明に従う突然変異体ポリペプチド内の置換アミノ酸は、置換の位置に応じて、元のアミノ酸と異なる、任意のアミノ酸から選択されうるが、一部の特定の種類のアミノ酸が好ましい。
特に、本発明に従う突然変異体ポリペプチドが、配列番号2の421位~429位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基における置換を含む場合、元のアミノ酸は、好ましくは、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、およびトリプトファン(W)、より好ましくは、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、およびフェニルアラニン(F)、なおより好ましくは、イソロイシン(I)からなる群から選択される、好ましくは、疎水性アミノ酸により置換されている。実際、本発明者らは、配列番号2の421位~429位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基内の、疎水性アミノ酸の存在が、糖タンパク質Gの融合前コンフォメーションの安定化を結果としてもたらすことを示した。
【0033】
本発明に従う突然変異体ポリペプチドが、配列番号2の17位~25位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基における置換を含む場合、元のアミノ酸は、好ましくは、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、システイン(C)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、セリン(S)、より好ましくは、アスパラギン(N)からなる群から選択される、好ましくは、極性アミノ酸により置換されている。実際、配列番号2の17位~25位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基内の、極性アミノ酸の存在が、糖タンパク質Gの融合前コンフォメーションの安定化を結果としてもたらすことが考えられる。
【0034】
本発明に従う突然変異体ポリペプチドが、配列番号2の17位~25位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基における置換を含み、また、配列番号2の421位~429位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する任意のアミノ酸残基における置換も含む場合、
a)配列番号2の17位~25位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する元のアミノ酸は、好ましくは、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、システイン(C)、チロシン(Y)、トレオニン(T)、セリン(S)、より好ましくは、アスパラギン(N)からなる群から選択される、好ましくは、極性アミノ酸により置換され;
b)配列番号2の421位~429位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に位置する元のアミノ酸は、好ましくは、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、およびトリプトファン(W)、より好ましくは、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、およびフェニルアラニン(F)、なおより好ましくは、イソロイシン(I)からなる群から選択される、好ましくは、疎水性アミノ酸により置換されている(
図7)。
【0035】
好ましい突然変異体ポリペプチド
本発明に従う、一部の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV Indiana株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号17に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号18に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号19に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
d)422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号20に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
e)422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号21に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
f)422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号22に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
g)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号23に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
h)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号24に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
i)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号25に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
j)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号26に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
k)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、セリン(S)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号2に対応する、配列番号27に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
l)上記のa)~k)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号1の1~16位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0036】
VSV Indiana株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づく、最も好ましい突然変異体ポリペプチドは、422位において、少なくとも1つの置換を含む突然変異体ポリペプチド(配列番号18~27、またはこれらのアミノ酸配列のうちの1つを含み、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号1の1~16位に対応するシグナルペプチドをさらに含む突然変異体ポリペプチド)である。
【0037】
VSV Indiana糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号17~27を、下記の表3に提示する。
【表3】
【0038】
本発明に従う、他の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV Maraba株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号28に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号29に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号30に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
d)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号31に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
e)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号32に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
f)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号33に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
g)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号34に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
h)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号35に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
i)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号36に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
j)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号37に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
k)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号4に対応する、配列番号38に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
l)上記のa)~k)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号3の1~16位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0039】
VSV Maraba株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づく、最も好ましい突然変異体ポリペプチドは、422位において、少なくとも1つの置換を含む突然変異体ポリペプチド(配列番号29~38、またはこれらのアミノ酸配列のうちの1つを含み、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号3の1~16位に対応するシグナルペプチドをさらに含む突然変異体ポリペプチド)である。
【0040】
VSV Maraba糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号28~38を、下記の表4に提示する。
【表4】
【0041】
本発明に従う、他の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV Cocal株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号39に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号40に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号41に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
d)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号42に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
e)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号43に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
f)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号44に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
g)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号45に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
h)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号46に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
i)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号47に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
j)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号48に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
k)22位における、ヒスチジン(H)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号6に対応する、配列番号49に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
l)上記のa)~k)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号5の1~17位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0042】
VSV Cocal株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づく、最も好ましい突然変異体ポリペプチドは、422位において、少なくとも1つの置換を含む突然変異体ポリペプチド(配列番号40~49、またはこれらのアミノ酸配列のうちの1つを含み、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号5の1~17位に対応するシグナルペプチドをさらに含む突然変異体ポリペプチド)である。
【0043】
VSV Cocal糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号39~49を、下記の表5に提示する。
【表5】
【0044】
本発明に従う、他の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV Morreton株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)22位における、グルタミン(Q)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号50に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号51に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号52に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
d)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号53に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
e)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号54に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
f)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号55に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
g)22位における、グルタミン(Q)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号56に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
h)22位における、グルタミン(Q)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号57に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
i)22位における、グルタミン(Q)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号58に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
j)22位における、グルタミン(Q)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号59に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
k)22位における、グルタミン(Q)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号8に対応する、配列番号60に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
l)上記のa)~k)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号7の1~17位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0045】
VSV Morreton株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づく、最も好ましい突然変異体ポリペプチドは、422位において、少なくとも1つの置換を含む突然変異体ポリペプチド(配列番号51~60、またはこれらのアミノ酸配列のうちの1つを含み、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号7の1~17位に対応するシグナルペプチドをさらに含む突然変異体ポリペプチド)である。
【0046】
VSV Morreton糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号50~60を、下記の表6に提示する。
【表6】
【0047】
本発明に従う、他の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV Alagoa株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)22位における、アルギニン(R)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号61に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号62に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号63に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
d)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号64に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
e)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号65に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
f)422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号66に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
g)22位における、アルギニン(R)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号67に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
h)22位における、アルギニン(R)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号68に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
i)22位における、アルギニン(R)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号69に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
j)22位における、アルギニン(R)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号70に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
k)22位における、アルギニン(R)アミノ酸残基の、アスパラギン(N)アミノ酸残基による置換、および422位における、トレオニン(T)アミノ酸残基の、バリン(V)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号10に対応する、配列番号71に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
l)上記のa)~k)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号9の1~17位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0048】
VSV Alagoa株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づく、最も好ましい突然変異体ポリペプチドは、422位において、少なくとも1つの置換を含む突然変異体ポリペプチド(配列番号62~71、またはこれらのアミノ酸配列のうちの1つを含み、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号9の1~17位に対応するシグナルペプチドをさらに含む突然変異体ポリペプチド)である。
【0049】
VSV Alagoa糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号61~71を、下記の表7に提示する。
【表7】
【0050】
本発明に従う、他の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV New Jersey株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)429位における、バリン(V)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号12に対応する、配列番号72に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)429位における、バリン(V)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号12に対応する、配列番号73に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)429位における、バリン(V)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号12に対応する、配列番号74に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
d)429位における、バリン(V)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号12に対応する、配列番号75に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
e)上記のa)~d)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号11の1~16位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0051】
VSV New Jersey糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号号72~75を、下記の表8に提示する。
【表8】
【0052】
本発明に従う、他の好ましい突然変異体ポリペプチドは、VSV Carajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に基づき、
a)426位における、バリン(V)アミノ酸残基の、イソロイシン(I)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号14に対応する、配列番号76に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
b)426位における、バリン(V)アミノ酸残基の、ロイシン(L)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号14に対応する、配列番号77に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
c)426位における、バリン(V)アミノ酸残基の、フェニルアラニン(F)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号14に対応する、配列番号78に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;
d)426位における、バリン(V)アミノ酸残基の、メチオニン(M)アミノ酸残基による置換を伴う、配列番号14に対応する、配列番号79に明示されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる、突然変異体ポリペプチド;ならびに
e)上記のa)~d)のうちのいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなり、N末端におけるシグナルペプチド、好ましくは、配列番号13の1~21位に対応するシグナルペプチドをさらに含む、突然変異体ポリペプチド
から選択されうる。
【0053】
VSV Carajas糖タンパク質Gの細胞外ドメインに由来する好ましい突然変異体ポリペプチドのアミノ酸配列である、配列番号76~79を、下記の表9に提示する。
【表9】
したがって、本発明の突然変異体ポリペプチドは、配列番号17~79からなる群から選択され、好ましくは、配列番号17~72および配列番号74~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を有利に含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる。
【0054】
さらなる任意の突然変異
本発明に従う突然変異体ポリペプチドは、VSV株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列に由来するので、配列番号2に明示されたアミノ酸配列、または上記で規定されたアミノ酸残基の、少なくとも1つの置換を伴う、配列番号2に明示されたアミノ酸配列との、少なくとも50%の同一性(もしくは上記で開示された、他の任意の、最小の同一性%)を有するアミノ酸配列を含むか、またはこれから本質的になるか、またはこれからなる。
【0055】
本発明に従う突然変異体ポリペプチドは、配列番号2のさらなる位置、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における相当の位置における、1つまたは複数の(1つ、2つ、またはこれを超える数など)さらなる置換をさらに含有しうる。
細胞外ドメインの機能を変更することが所望される場合に、1つまたは複数の、可能なさらなる置換は、保存的であることが好ましいとは、置換アミノ酸が、元のアミノ酸の構造と同様な構造を有するので、ポリペプチドの生物学的活性を変化させる可能性は小さいことを意味する。このような保存的置換の例を、下記の表10に提示する。
【0056】
【0057】
加えて、上記で説明された通り、
図4に提示されたアライメントは、配列番号2の、1、4、6~7、12、14、17~18、21、23~25、27、29、31、33、46~47、55~56、58~60、64、66~69、71~75、77、79、81~82、87、91~92、96、102、107~111、114~116、119、121、127、130、132、134、137~139、141、143、145、151、153、158、160、162~165、167、177、199、204、206~208、210、212、219、221、224、228、231、236~237、241、253、259、262、268、271~272、274~277、279~281、283~285、287~290、299、301、304、307~311、313~314、316~318、320~321、323、325~326、330、332、338、345、349、354、356~357、360、362、368~372、374、376、379、381、383~384、388、390、393、395、407~408、413、421、426~429、431~434、436、439~443、445、447、456、467、487、および489~490位が、VSVのIndiana株、Maraba株、Cocal株、Morreton株、Alagoa株、New Jersey株、およびCarajas株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインのアミノ酸配列内で保存的であることを示す。保存的アミノ酸位置は、機能の保存と関連することが多く、配列番号2との最適グローバルアライメントの後において、配列番号2に明示されたアミノ酸配列と、少なくとも50%の同一性(または上記で開示された、他の任意の、最小の同一性%)を有するアミノ酸配列を含む、本発明に従う突然変異体ポリペプチドは、細胞外ドメインの機能を変更しないことが所望される場合、上記で規定された、全ての保存的位置など、上記で規定された保存的位置のうちの1つまたは複数において、好ましくは、配列番号2と同じアミノ酸を有する。
【0058】
しかし、場合によって、第PCT/EP2018/075824号下でなされた出願、およびNikolic et al. Nat Commun. 2018 Mar 12;9(1):1029において記載されている通り、例えば、細胞外ドメインが、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)に結合する能力を変更するために、細胞外ドメインの機能を変更することが所望されることがある。これは、LDL膜受容体と相互作用することが不可能な細胞外ドメインを発現するVSVの指向性の変更を可能とする。
したがって、本発明の実施形態では、本発明に従う突然変異体ポリペプチドは、配列番号2の8、47、209、および354位に位置するアミノ酸残基、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、配列番号2の8、47、209、および354位に相当する位置に位置するアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基のうちの少なくとも1つの置換をさらに含む。
8位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換のために、元のアミノ酸は、好ましくは、ヒスチジン(H)、グルタミン(Q)、またはチロシン(Y)を除き、任意のアミノ酸により置換され、より好ましくは、元のアミノ酸は、アラニン(A)により置換されている。
【0059】
配列番号2の47位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換のために、元のアミノ酸は、好ましくは、リシン(K)またはアルギニン(R)を除き、任意のアミノ酸により置換され、より好ましくは、元のアミノ酸は、アラニン(A)またはグルタミン(Q)により置換されている。
209位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換のために、元のアミノ酸は、好ましくは、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)を除き、任意のアミノ酸により置換され、より好ましくは、元のアミノ酸は、アラニン(A)により置換されている。
354位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換のために、元のアミノ酸は、好ましくは、リシン(K)またはアルギニン(R)を除き、任意のアミノ酸により置換され、より好ましくは、元のアミノ酸は、アラニン(A)またはグルタミン(Q)により置換されている。
【0060】
配列番号2の47および354位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置は、LDL膜受容体と相互作用することが不可能な細胞外ドメインを得るために好ましい。したがって、本発明に従う突然変異体ポリペプチドが、LDL膜受容体と相互作用することが不可能であることが所望される場合、突然変異体ポリペプチドは、好ましくは、配列番号2の47位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換、配列番号2の354位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における置換、または配列番号2の47および354位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置における、2つの置換をさらに含む。より好ましくは、47および/または354位における置換は、好ましくは、上記の通りに規定された置換である。
【0061】
融合ポリペプチド
本発明はまた、本発明の突然変異体ポリペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質とを含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる融合ポリペプチドであって、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、
a)突然変異体ポリペプチドのN末端、
b)配列番号2の192~202位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
c)配列番号2の240~257位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
d)配列番号2の347~353位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
e)配列番号2の364~366位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間、
f)配列番号2の376~379位、または配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置に対応する領域内に位置する、任意の2つの連続アミノ酸の間
に挿入されており、
好ましくは、前記さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入されているか、または配列番号2の351および352位、もしくは配列番号2との最適グローバルアライメントの後における、相当する位置におけるアミノ酸の間に挿入されている、融合ポリペプチドにも関する。
【0062】
さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、多様な機能を有しうるが、とりわけ、組換えVSVウイルスを、特異的標的細胞へとターゲティングするために使用されうる。この場合、標的細胞の細胞外表面に発現される抗原に特異的に結合することが可能な、任意のさらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が使用されうる。特に、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、細胞受容体のリガンドの、少なくとも一部を含みうる。
標的細胞が、その表面において、(受容体-リガンド)対の構成要素のうちの1つを発現する場合(例えば、EGF-EGFR、TNFa-TNFaR、PD1-PDL1、またはPDL2など)(細胞表面において発現される分子は、一般に、コグネイトの受容体またはリガンドを有するので、生じることが多い)、(受容体-リガンド)対の第2の構成要素(すなわち、標的細胞表面抗原の、天然の受容体またはリガンド)のうちの少なくとも一部(そのコグネイトの受容体またはリガンドに、なおも結合することが可能であるという条件下で)が使用されうる。
【0063】
代替的に、抗体、機能的抗体断片も使用されうる。
「抗体」または「免疫グロブリン」とは、所与の抗原についての、少なくとも1つの結合性ドメインと、Fc受容体(FcR)に結合することが可能なFc断片を含む定常ドメインとを含む分子を意味する。ヒトおよびマウスなど、大半の哺乳動物では、抗体は、4つのポリペプチド鎖:分子へと、可撓性をもたらす、変動数のジスルフィド架橋により一体に結合させた、2つの重鎖と、2つの軽鎖とからなる。各軽鎖は、定常ドメイン(CL)と、可変ドメイン(VL)とからなり;重鎖は、抗体のアイソタイプに従う、可変ドメイン(VH)と、3つまたは4つの定常ドメイン(CH1~CH3またはCH1~CH4)とからなる。ラクダおよびラマなど、少数の希少な哺乳動物では、抗体は、各重鎖が、可変ドメイン(VH)と、定常領域とを含む、2つの重鎖だけからなる。
可変ドメインが、抗原認識に関与するのに対し、定常ドメインは、抗体の生物学的特性、薬物動態特性、およびエフェクター特性に関与する。
【0064】
「機能的抗体断片」とは、抗原結合性ドメインを保持し、したがって、元の抗体と同じ抗原特異性を有する抗体断片を意味する。大半の哺乳動物では、このような機能的抗体断片は、断片である、Fv、ScFv、Fab、F(ab’)2、Fab’、およびscFv-Fcを含む。抗体が、各重鎖が、可変ドメイン(VHHと称される)および定常領域を含む、2つの重鎖だけからなる、ラクダおよびラマの場合、このような機能的な抗体は、ナノボディーとしてもまた公知の、VHH断片に対応する。
本発明の文脈において、本発明に従う突然変異ポリペプチドの機能を変更しないために、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、好ましくは、ペプチド、または比較的短いポリペプチド(好ましくは、200アミノ酸未満)であろう。結果として、抗体または機能的抗体断片が、選択された種類の、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である場合、機能的抗体断片が、好ましくは、使用されるであろう。本発明の文脈において、任意の適切な機能的抗体断片が使用されうる場合、その小さなサイズ、球形、およびロバストネスのために、ナノボディー(またはVHH断片)が、好ましくは、使用されるであろう。
【0065】
ターゲティングされる細胞に応じて、細胞表面においてターゲティングされる抗原は、変動するであろう。例えば、本発明に従う突然変異体ポリペプチドを発現する組換えVSVウイルスが、腫瘍溶解性ウイルスと共に使用される場合、本発明に従う突然変異ポリペプチドは、上記で記載された通り、G細胞外ドメインを、がん細胞抗原へとターゲティングする抗体または機能的抗体断片(特に、ナノボディー)と融合されうる。例えば、抗HER2抗体もしくは抗MUC18抗体もしくは抗EGFR抗体もしくは抗CD20抗体もしくは抗CD52抗体、または機能的抗体断片(特に、ナノボディー)が使用されうる。別の文脈では、このような阻害性免疫チェックポイントを発現する免疫細胞をターゲティングすることが所望される場合、阻害性免疫チェックポイント(PD1、もしくはそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2、またはCTLA4など)をターゲティングする抗体または機能的抗体断片(特に、ナノボディー)が使用されうる。また、このような阻害性免疫チェックポイントを発現する免疫細胞をターゲティングすることが所望される場合にも、阻害性免疫チェックポイント(PD1、もしくはそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2、またはCTLA4など)をターゲティングする抗体または機能的抗体断片(特に、ナノボディー)が使用されうる。同様に、B細胞をターゲティングすることが所望される場合は、Bリンパ球抗原であるCD19をターゲティングする抗体または機能的抗体断片(特に、ナノボディー)が使用されうる。GFPへと方向付けられた、例示的なナノボディーは、配列番号80(VQLVESGGALVQPGGSLRLSCAASGFPVNRYSMRWYRQAPGKEREWVAGMSSAGDRSSYEDSVKGRFTISRDDARNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVNVGFEYWGQGTQVTVSS)のアミノ酸配列を有する。
【0066】
さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)を、本発明に従う突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入する場合、突然変異体ポリペプチドのN末端へと、直接融合される場合もあり、リンカーペプチドにより、突然変異体ポリペプチドのN末端から隔てられる場合もあり、好ましくは、第1のリンカーペプチドにより、突然変異体ポリペプチドのN末端から隔てられる。
典型的に、リンカーは、グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アラニン(A)、プロリン(P)、および/またはフェニルアラニン(F)などのアミノ酸残基から構成される、1~30アミノ酸長のペプチドである。本発明の文脈において好ましいリンカーは、2~15のアミノ酸を含むが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12アミノ酸が好ましい。
【0067】
さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)と、本発明に従う突然変異ポリペプチドとの間の、第1のリンカーペプチドは、2~15アミノ酸長、好ましくは、4~12または6~10アミノ酸長であり、とりわけ、8アミノ酸長である。代替的に、または組み合わせて、そのアミノ酸配列は、好ましくは、グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アラニン(A)、プロリン(P)、およびフェニルアラニン(F)から選択され、より好ましくは、グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、およびアラニン(A)、またはグリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、またはグリシン(G)、セリン(S)、およびアラニン(A)から選択され、なおより好ましくは、グリシン(G)およびセリン(S)から選択されるアミノ酸から構成される。好ましい実施形態では、第1のリンカーペプチドは、グリシン(G)およびセリン(S)から選択される、6~10のアミノ酸から構成され、とりわけ、GGGGSGGGGS(配列番号81)のアミノ酸配列を有するリンカーペプチドでありうる。
【0068】
さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)を、本発明に従う突然変異体ポリペプチドのN末端に挿入する場合、融合ポリペプチドは、融合ポリペプチドを、ウイルスエンベロープ(融合ポリペプチドが、ウイルスにより発現される場合)、または細胞膜(融合ポリペプチドが、宿主細胞により発現される場合)へとアドレスするために、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)のN末端に、シグナルペプチドをさらに含みうる。
【0069】
この場合、本発明に従う融合ポリペプチドは、N末端から、C末端へと、シグナルペプチド、任意に、第2のリンカーペプチド、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)、任意に、第1のリンカーペプチド、および本発明に従う突然変異ポリペプチドを含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる。この融合ポリペプチド内では、第1のリンカーペプチドは、存在する場合、上記で記載された通りである。第2のリンカーペプチド(シグナルペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)との間における)は、存在する場合、2~15アミノ酸長、好ましくは、2~6アミノ酸長、2~4アミノ酸長であり、とりわけ、2または3アミノ酸長である。代替的に、または組み合わせて、そのアミノ酸配列は、好ましくは、グリシン(G)、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アラニン(A)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)から選択され、より好ましくは、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、およびフェニルアラニン(F)から選択され、特に、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、およびグルタミン(Q)、またはグルタミン(Q)およびセリン(S)、またはグルタミン(Q)およびフェニルアラニン(F)から選択されるアミノ酸から構成される。好ましい実施形態では、第2のリンカーペプチドは、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、およびフェニルアラニン(F)から選択され、特に、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、およびグルタミン(Q)、またはグルタミン(Q)およびセリン(S)、またはグルタミン(Q)およびフェニルアラニン(F)から選択される、2~4のアミノ酸から構成され、とりわけ、アミノ酸配列である、QFまたはQSでありうる。
好ましい実施形態では、本発明に従う融合ポリペプチドは、第1のリンカーペプチドまたは第2のリンカーペプチドを含み、より好ましくは、第1のリンカーペプチドおよび第2のリンカーペプチドの両方を含む。
【0070】
本発明に従う融合ポリペプチドが、第1のリンカーペプチドおよび第2のリンカーペプチドの両方を含む場合、
・第1のリンカーペプチド(さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)と、本発明に従う突然変異ポリペプチドとの間における)は、好ましくは、グリシン(G)およびセリン(S)から選択される、6~10のアミノ酸から構成され、とりわけ、GGGGSGGGGS(配列番号81)のアミノ酸配列を有するリンカーペプチドであることが可能であり;
・第2のリンカーペプチド(シグナルペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)との間における)は、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、およびフェニルアラニン(F)から選択され、特に、セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、およびグルタミン(Q)、またはグルタミン(Q)およびセリン(S)、またはグルタミン(Q)およびフェニルアラニン(F)から選択される、好ましくは、2~4のアミノ酸から構成され、とりわけ、アミノ酸配列である、QFまたはQSを有するリンカーペプチドでありうる。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明に従う融合ポリペプチドが、第1のリンカーペプチドおよび第2のリンカーペプチドの両方を含む場合、第1のリンカーペプチド(さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)と、本発明に従う突然変異ポリペプチドとの間における)は、アミノ酸配列であるGGGGSGGGGS(配列番号81)を有し、第2のリンカーペプチド(シグナルペプチドと、さらなるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(好ましくは、ナノボディーなどの機能的抗体断片)との間における)は、アミノ酸配列である、QFまたはQSを有する。
【0072】
例示的な、好ましい融合ポリペプチドは、配列番号82(MKCLLYLAFLFIGVNCQSVQLVESGGALVQPGGSLRLSCAASGFPVNRYSMRWYRQAPGKEREWVAGMSSAGDRSSYEDSVKGRFTISRDDARNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCNVNVGFEYWGQGTQVTVSSGGGGSGGGGSKFTIVFPHNQKGNWKNVPSNYNYCPSSSDLNWHNDLIGTALQVKMPKSHKAIQADGWMCHASKWVTTCDFRWYGPKYITHSIRSFTPSVEQCKESIEQTKQGTWLNPGFPPQSCGYATVTDAEAVIVQVTPHHVLVDEYTGEWVDSQFINGKCSNYICPTVHNSTTWHSDYKVKGLCDSNLISMDITFFSEDGELSSLGKEGTGFRSNYFAYETGGKACKMQYCKHWGVRLPSGVWFEMADKDLFAAARFPECPEGSSISAPSQTSVDVSLIQDVERILDYSLCQETWSKIRAGLPISPVDLSYLAPKNPGTGPAFTIINGTLKYFETRYIRVDIAAPILSRMVGMISGTTTERELWDDWAPYEDVEIGPNGVLRTSSGYKFPLYMIGHGMLDSDLHLSSKAQVFEHPHIQDAASQLPDDEILFFGDTGLSKNPIELVEGWFSSWKSSIASFFFIIGLIIGLFLVLRVGIHLCIKLKHTKKRQIYTDIEMNRLGK)の配列を有する。
【0073】
核酸分子
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする核酸分子にも関する。
遺伝子コードの縮重のために、特定のアミノ酸配列をコードする、全ての異なる核酸配列は、本発明の範囲内にある。
【0074】
特に、本発明に従う核酸の配列は、宿主細胞のまたは任意の他の産生宿主内のその発現を促進するように最適化されうる。実際、一般に、同義コドンと呼ばれる、同じアミノ酸(メチオニンおよびトリプトファンを除く)をコードする、何らかの3のヌクレオチドの組合せが存在する。しかし、これらの組合せのうちの一部は、一般に、細胞または所与の生物により、優先的に使用される(これは、遺伝子コードの使用バイアスと称される)。この優先は、とりわけ、細胞が由来する産生生物に依存する。この帰結として、1種または複数種の生物に由来するタンパク質が、異種生物またはこのような異種生物の細胞において産生される場合、主に、好ましい、異種生物のコドンを使用するように、タンパク質をコードする核酸配列を修飾することが有用でありうる。データは、異なる種による、好ましいコドンの使用に関する文献において入手可能であり、当業者は、所与のタンパク質の、異種生物または異種生物の細胞における発現を、どのようにして最適化するのかについて、熟知している。
【0075】
好ましい核酸分子は、VSV Indiana株の、糖タンパク質Gの細胞外ドメインをコードする、天然のヌクレオチド配列(配列番号83)、上記で規定された置換を作出するための、1つまたは複数のヌクレオチドにおける突然変異に基づく核酸分子を含む。好ましい核酸分子は、より正確には、下記の表11で規定される、配列番号83~配列番号86から選択されるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む。
【0076】
【表11】
本発明に従う核酸分子は、コードされる、本発明に従う突然変異ポリペプチドまたは融合ポリペプチドのクローニングおよび/または発現の他、そのフォールディングおよび安定性を改善することを目的とする、任意の修飾をさらに含有しうる。
【0077】
ベクター
本発明はまた、少なくとも1つの、本発明に従う核酸を含むか、または本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドを発現するベクターにも関する。
このようなベクターは、前記核酸配列の発現に必要なエレメントを含み、とりわけ、プロモーター、転写開始コドン、転写終結配列、および適切な転写調節的配列を含む。これらのエレメントは、発現に使用される宿主に従い変動し、当業者により、それらの一般的知見に基づき、容易に選択される。
【0078】
本発明の文脈において、「ベクター」という用語は、プラスミドベクターおよびウイルスベクターを含むものとして、広義に理解されなければならない。本発明の文脈で適切なベクターは、限定せずに述べると、細菌(例えば、大腸菌(E.coli)、BCG、またはリステリア属(Listeria))など、原核宿主細胞内の発現のための、バクテリオファージベクター、プラスミドベクター、またはコスミドベクター;酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、メタノール資化酵母(Pichia pastoris))内の発現のためのベクター;昆虫細胞系(例えば、Sf9細胞)内の発現のための、バキュロウイルスベクターの他;高等真核生物の細胞または対象における発現のための、プラスミドベクターおよびウイルスベクターを含む。典型的に、このようなベクターは、市販されている(例えば、Invitrogen、Stratagene、Amersham Biosciences、Promegaなどにおいて)か、またはAmerican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、Md.)などの寄託機関から入手可能であるか、またはそれらの配列、構成、および当業者がそれらを適用することを可能とする作製法について記載する、多数の刊行物の対象となっている。
【0079】
本明細書で使用される、「プラスミドベクター」とは、複製可能なDNA構築物を指す。通例、プラスミドベクターは、プラスミドベクターを保有する宿主細胞が、対応する選択用薬物の存在下で、陽性選択または陰性選択されることを可能とする、選択用マーカー遺伝子を含有する。当技術分野では、様々な陽性選択用マーカー遺伝子および陰性選択用マーカー遺伝子が公知である。例示を目的として述べると、抗生剤耐性遺伝子が、対応する抗生剤の存在下で、宿主細胞が選択されることを可能とする、陽性選択用マーカー遺伝子として使用されうる。適切なプラスミドベクターが市販されている。
【0080】
本明細書で使用される、「ウイルスベクター」という用語は、ウイルスゲノムの、少なくとも1つのエレメントを含む核酸ベクターを指し、ウイルス粒子内へと、またはウイルス粒子へとパッケージングされうる。「ウイルス」、「ビリオン」、「ウイルス粒子」、および「ウイルスベクター粒子」という用語は、核酸ベクターが、ウイルス粒子の作出を可能とする、適切な条件に従い、適切な細胞または細胞系へと形質導入される場合に形成されるウイルス粒子を指すように、互換的に使用される。本発明の文脈で、「ウイルスベクター」という用語は、核酸ベクター(例えば、DNAウイルスベクター)の他、作出される、そのウイルス粒子を含むものとして、広義に理解されなければならない。「感染性」という用語は、ウイルスベクターが、宿主細胞または対象に感染し、これらに侵入する能力を指す。
ウイルスベクターは、好ましくは、少なくとも1つの、本発明に従う核酸を含むか、または本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドを発現する水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクターでありうる。
【0081】
VSVは、ラブドウイルス科のベシクロウイルス属に属する、エンベロープ型のマイナス鎖RNAウイルスである。VSVのマイナス鎖RNAゲノムは、5つの構造タンパク質をコードし、3’から5’へと、リーダー領域、ヌクレオタンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、ポリメラーゼタンパク質(L)のための遺伝子、およびトレーラー領域を含む。したがって、本発明に従う、突然変異VSVベクターは、天然の野生型糖タンパク質Gをコードする、天然の野生型配列を、本発明に従う突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードする、本発明に従う核酸配列で置きかえることにより得られうる。突然変異VSVベクターを作出するための標準的技法が、この目的で使用されうる。特に、逆遺伝学が、組換えウイルスの回収に使用されうる。
VSVゲノムの他の領域(リーダー領域、ヌクレオタンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)、ポリメラーゼタンパク質(L)をコードする遺伝子、およびトレーラー領域)に関して、突然変異VSVベクターは、任意の適切な天然配列または人工配列を含有しうる。特に、多様なIndiana分離株(Rodriguez et al. J Gen Virol. 2002 Oct;83(Pt 10):2475-83)およびNew Jersey分離株(Velazquez-Salinas et al. Genome Announc. 2017 Sep 14;5(37))の完全ゲノムの配列は、当技術分野で公知である。加えて、多様なVSV株は、American Type Culture Collection(ATCC)の、参照番号VR-1238、VR-1239、VR-159、およびVR-1415~VR-1421の下でも入手可能である。
【0082】
ある実施形態では、ベクター、および、好ましくは、本発明に従うVSVベクターが、好ましくは、腫瘍溶解性でありうることは、それが、がん細胞に優先的に感染し、これらを死滅させることを意味する。前出で列挙された、全てのVSV株(Indiana、Maraba、Cocal、Morreton、Alagoa、New Jersey、およびCarajas)は、潜在的に、腫瘍溶解性であり、したがって、使用されうる。
代替的に、または組み合わせて、ベクター、および、好ましくは、本発明に従うVSVベクターはまた、遺伝子治療、免疫療法、およびカーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のためにも使用されうる。
遺伝子治療のために使用される場合、ベクター、および、好ましくは、本発明に従うVSVベクターは、この活性について欠損している細胞内で、この遺伝子の活性を回復させるために、治療目的の遺伝子をさらにコードする。
免疫療法のために使用される場合、ベクター、および、好ましくは、本発明に従うVSVベクターは、少なくとも1つの、目的の抗原、および/またはサイトカイン、アジュバント、免疫チェックポイントモジュレーター、サイトカインをターゲティングする抗体など、免疫応答の調節に関与する分子をさらにコードする。
【0083】
カーゴの、非刺激のT細胞、B細胞、および造血細胞など、選び出された細胞型への送達が意図される場合、組換え突然変異糖タンパク質は、治療用分子マーカーまたは任意の薬物を含有するVLPの表面に挿入されうる。
好ましい実施形態に従い、本発明に従うウイルスベクター(特に、VSVベクター)は、感染性ウイルス粒子の形態にある。典型的に、このようなウイルス粒子は、(i)本発明のウイルスベクターを、適切な産生細胞へと導入するステップ、(ii)前記感染性ウイルス粒子の産生を可能とする、適切な条件下で、前記産生細胞を培養するステップ、(iii)産生されたウイルス粒子を、前記産生細胞の培養物から回収するステップ、および(iv)任意に、前記回収されたウイルス粒子を精製するステップを含むプロセスにより産生される。
【0084】
宿主細胞
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチドを含有するか、またはこれを発現するか、または本発明に従う核酸分子を含有するか、または本発明に従うベクター(特に、VSVベクター)を含有する宿主細胞にも関する。
宿主細胞が、本発明に従うベクター(特に、VSVベクター)を含有する場合、宿主細胞は、好ましくは、BSR細胞(BHK-21:ベビーハムスター腎臓細胞のクローン;ATCC CCL-10)、BHK-21細胞(ATCC CCL-10)、またはVero細胞(ATCC CCL-81)など、VSVの複製に適する真核細胞である。
組成物
本発明はまた、本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチド、本発明に従う核酸分子、本発明に従うベクター、本発明に従う宿主細胞、またはこれらの任意の組合せを含むか、またはこれらから本質的になるか、またはこれらからなる組成物にも関する。
【0085】
好ましくは、組成物は、治療有効量の活性薬剤(本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは融合ポリペプチド、本発明に従う核酸分子、本発明に従うベクター、本発明に従う宿主細胞、またはこれらの任意の組合せ)と、1つまたは複数の、薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物である。
本明細書で使用される、「薬学的に許容されるビヒクル」は、対象における、特に、ヒトにおける投与に適合性である、任意の担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、吸収遅延剤、ならびに全てのこれらなどを含むことが意図される。
本明細書で使用される、「治療有効量」とは、意図される使用に十分な用量である。
組成物は、好ましくは、本発明に従うベクターを含み、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む。
【0086】
治療的使用/in vivoにおける使用
本発明はまた、薬物としての使用のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクターを含む組成物)にも関する。
本発明はまた、がんを処置するための使用のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクターを含む組成物)にも関する。
【0087】
本発明はまた、がんを処置するための薬物の製造のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクターを含む組成物)の使用にも関する。
本発明はまた、がんを処置するための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクターを含む組成物)の使用にも関する。
本発明はまた、それを必要とする対象における、がんを処置するための方法であって、前記対象へと、治療有効量の、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクター、好ましくは、本発明に従う腫瘍溶解性VSVベクターを含む組成物)を投与するステップを含む方法にも関する。
【0088】
VSVウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスであるので、前立腺がん、乳がん、膵臓がん、および黒色腫を含む、多様な種類のがんの処置において使用されうる(Bishnoi. Viruses 10, (2018))。
本発明はまた、遺伝子治療または免疫療法(特に、ワクチンとしての)における使用のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)にも関する。
本発明はまた、遺伝子治療または免疫療法(特に、ワクチンとしての)のための薬物の製造のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)の使用にも関する。
本発明はまた、遺伝子治療または免疫療法(特に、ワクチンとしての)のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)の使用にも関する。
【0089】
本発明はまた、それを必要とする対象における、遺伝子治療法または免疫療法であって、前記対象へと、治療有効量の、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)を投与するステップを含む遺伝子治療法または免疫療法にも関する。
遺伝子治療または免疫療法において使用される、本発明に従うベクター(および、特に、本発明に従うVSVベクター)は、好ましくは、上記の「ベクター」節で開示された通りである。
遺伝子治療は、欠損細胞内の欠損遺伝子活性を補正することが必要であるたびに使用されうる。
免疫療法は、がん、感染性疾患、および炎症性疾患(特に、自己免疫疾患)を含む、多様な種類の疾患の処置のために使用されうる。
本発明はまた、in vivoにおける、カーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のための使用のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)にも関する。
【0090】
本発明はまた、in vivoにおける、カーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のための薬物の製造のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)の使用にも関する。
本発明はまた、in vivoにおける、カーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のための、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)の使用にも関する。
本発明はまた、それを必要とする対象のin vivoにおける、カーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のための方法であって、前記対象へと、治療有効量の、本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、または本発明に従う(医薬)組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)を投与するステップを含む方法にも関する。
【0091】
in vivoにおける、カーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のために使用される、本発明に従うベクター(および、特に、本発明に従うVSVベクター)は、好ましくは、上記の「ベクター」節で開示された通りである。
本発明はまた、対象において、前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特に、死滅させられる細胞(がん細胞など)、または非刺激のT細胞、B細胞、および造血細胞へとターゲティングするための使用のための、本発明に従う突然変異体ポリペプチドもしくは本発明に従う融合ポリペプチド、または本発明に従うベクター、または本発明に従う宿主細胞、または本発明に従う組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)、またはこれらの組合せにも関する。
【0092】
in vitroにおける使用
本発明はまた、カーゴの、非刺激のT細胞、B細胞、および造血細胞など、選び出された細胞型への選択的送達のための、本発明に従う突然変異体ポリペプチド、もしくは本発明に従う融合ポリペプチド、もしくは本発明に従うベクター(特に、本発明に従うVSVベクター)、もしくは本発明に従う宿主細胞、もしくは本発明に従う組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)、またはこれらの組合せの、in vitroにおける使用にも関する。
in vitroにおける、カーゴの、選び出された細胞型への選択的送達のために使用される、本発明に従うベクター(および、特に、本発明に従うVSVベクター)は、好ましくは、上記の「ベクター」節で開示された通りである。
本発明はまた、前記突然変異体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドがアンカリングされている脂質膜を、特異的標的、例えば、細胞、特に、死滅させられる細胞(がん細胞など)、または非刺激のT細胞、B細胞、および造血細胞へとターゲティングするための、本発明に従う突然変異体ポリペプチド、もしくは本発明に従う融合ポリペプチド、もしくは本発明に従うベクター、もしくは本発明に従う宿主細胞、もしくは本発明に従う組成物(特に、本発明に従うベクターを含む組成物であり、より特定すると、本発明に従うVSVベクターを含む組成物)、またはこれらの組合せの、in vitroにおける使用にも関する。
以下の例は、本発明を例示することだけを意図する。
【実施例】
【0093】
(実施例1)
抗GFPターゲティングGタンパク質を発現する組換えVSVウイルスを作製するための、Indiana VSV G内の突然変異であるH22NおよびS422Iの選択
材料および方法
GNano(初期キメラ)の構築
GNano構築物は、pCAGGSプラスミド内にクローニングされたVSV G遺伝子(Indiana株)から出発して創出した。Gibsonアセンブリー法を使用して、多様な位置にナノボディーを挿入した、所望のGNanoコード配列を含有するpCAGGSプラスミドを作出した。EcoRI制限酵素を使用して、空ベクターであるpCAGGSを直鎖化した。次いで、重複部分を伴う、3種のPCR産物を作出した。産物Iは、ナノボディーの挿入部位の前におけるG断片である。産物IIは、ナノボディー遺伝子である。産物IIIは、挿入部位の後におけるG断片である。PCR産物と、直鎖化ベクターとを組み合わせ、Gibson Assembly(登録商標)Master Mix(NEB)を伴うインキュベーションにより接続した。
【0094】
BSR細胞内の、組換えVSVウイルスの獲得および増幅
組換えVSVは、Schnell et al. J. virol. 1996において記載されている通りに得た。wt VSV Gの代わりに、突然変異体GNanoを伴う、11,161ヌクレオチド(nt)のプラス鎖全長VSV RNA配列を発現するプラスミドである、pVSVFL(+)-GNanoは、pVSVFL(+)上に存在する、2つの固有の制限部位である、G遺伝子の5’側の非コード配列内のMluIと、G遺伝子と、L遺伝子との間に導入される配列内に存在するNheIとを使用して作出した。BSR細胞に、moiを10として、ワクシニアウイルスを感染させた。1時間後に、10μg/mlのAraC(Sigma)の存在下で、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を使用して、それぞれ、Nタンパク質、Pタンパク質、Lタンパク質、およびGタンパク質をコードするプラスミドである、pBS-N、pBS-P、pBS-L、およびpcDNA3.1-Gに加えて、pVSVFL(+)-GNanoプラスミドを、細胞にトランスフェクトした。プラスミドおよび量は、5μgのpVSVFL(+)_GNano、2.5μgのpBS-N、2μgのpBS-P、1μgのpCDNA3.1-G、および0.5μgのpBS-Lの通りであった。5%のCO2中、37℃におけるインキュベーションの48時間後に、トランスフェクトされた細胞からの上清を回収し、細胞溶解物に由来する破砕物を、遠心分離によりペレット化した。上清を、0.2μmのフィルターを介して濾過して、ワクシニアウイルスを除去し、この濾液2.5mlを、直径3.5cmのプレート内の、BSR細胞約106個へと添加した。24時間後、組換えVSVを含有する上清を、遠心分離により清澄化させ、さらなる使用のために、-80℃で保管した。
【0095】
得られた組換えVSV上清の、pfu/ml単位の力価は、結晶バイオレット着色法を使用して、感染の24時間後に、各ホイール内で、プラークをカウントすることを介する、6ウェルプレート内の、BSR細胞上のプラークアッセイにより決定した。
次いで、採取された組換えウイルスを、直径6cmの細胞プレート上で、BSR細胞3×106個に、moiを0.1として感染させることにより増幅した。この新たな上清を、プラークアッセイで滴定し、さらなる使用のために、-80℃で保管した。
高力価を得るよう、組換えウイルスの増殖速度を増大させやすい突然変異の出現を優先させるために、直径6cmのプレート内のBSR細胞3×106個に、10,000pfuを感染させた。その後、BSR細胞上で、ウイルス上清を、10代にわたり継代培養した。力価は、ここでもまた、プラークアッセイを使用して推定した。
【0096】
プラークアッセイによる滴定
前日に、BSR細胞106個を、6枚のホイールプレートに播種して、翌日、約90%のコンフルエンシーの単層を確認した。次いで、細胞に、10倍の系列希釈液200μLを、室温で、1時間にわたり感染させた。感染後、固定化培地を、ホイール内の、0.8%のアガロースを含有する接種物へと直接添加して、細胞を重層化させた。
オーバーレイの添加後、プレートを、5%のCO2中、37℃で、24時間にわたりインキュベートする。ウイルス力価を決定するために、プラーク5~100個を含有するウェル内のプラークをカウントする。ウイルス力価は、pfu/ml=(平均プラーク数)/(希釈率×プレートへと添加される希釈液の容量)の通りに決定される。
ウイルス集団内の、G遺伝子のシーケンシング
直径6cmのプレート上のBSR細胞3×106個に、MOIを3として感染させ、TRIzol(Invitrogen)を使用して、全RNA抽出を行った。次いで、全ウイルスmRNAに特異的なプライマーである、TTTTTTTTTTTTCAT(配列番号87)を使用するRT-PCRを、全RNA抽出物に対して実施した。次いで、VSVG遺伝子を、PCRにより増幅し、得られたPCR産物を、シーケンシングへと送り、補償的突然変異を同定した。
【0097】
結果
野生型糖タンパク質Gをコードする遺伝子が、GNano(VSV Indiana Gタンパク質のシグナルペプチド、2アミノ酸のQFリンカー、配列番号80の配列を有する抗GFPナノボディー、10アミノ酸のリンカーである、GGGGSGGGGS(配列番号81)、および野生型VSV Indiana Gタンパク質細胞外ドメイン(配列番号2)、からなる、初期キメラ;
図2の上図を参照されたい)をコードする遺伝子で置きかえられた、組換えVSVウイルスを構築した。しかし、この初期組換えVSVウイルスの増幅は、極めて困難であり、BSR細胞内の、24時間にわたる増幅の後で、極めて低度の感染力価、約8.10
4pfu/mlが得られただけであった。このような低力価は、治療を意図するターゲティング型VSVウイルスの、産業的作製に適合しない。
次いで、その増幅を改善する突然変異を選択するために、この組換えウイルスの、BSR細胞上における、何代かにわたる継代を実施した。10継代の後、ウイルス集団のゲノムに対するシーケンシングは、
・22位におけるヒスチジン残基の、アスパラギンへの変化(H22N置換)、および
・422位におけるセリン残基の、イソロイシンへの変化(S422I置換)
を結果としてもたらす、糖タンパク質のヌクレオチド配列内における2つの突然変異を含有する変異体による、この集団への漸進的侵入を示した。
【0098】
この最適化の後に得られる、組換えウイルスの力価は、約10
8pfu/mlであった。
したがって、結果として得られる改善型キメラ(突然変異型GNano;
図2の下図を参照されたい)は、BSR細胞内で、24時間後に、治療を意図する、ターゲティング型VSVウイルスの、産業的作製に適合する、高度の増幅を示す。
感染の24時間後に、BSR細胞内で得られた力価を、下記の表12に提示する。
【表12】
【0099】
グルタミンおよびフェニルアラニン(QF)からなり、VSV糖タンパク質Gのシグナルペプチドと、挿入されているナノボディーとの間に配置されたジペプチドリンカーをコードする配列内では、約50%の場合において、その後、第3の突然変異が現れたことは、注目に値する。この突然変異は、フェニルアラニンの、セリンへの置きかえ(QF→QS;データは示さない)をもたらした。
この第3の突然変異は、動態およびウイルス力価に対して、効果を及ぼさなかったことが重要である(データは示さない)。実際、3つの突然変異を有する、組換えウイルスの力価は、やはり、約108pfu/mlであった。したがって、この第3の突然変異は、BSR細胞内の、組換えウイルスの増幅の改善に影響を及ぼさなかった。
結論
VSV Indiana糖タンパク質Gの細胞外ドメイン内の、突然変異である、H22NおよびS422Iの挿入は、驚くべきことに、GFPターゲティング型糖タンパク質G(抗GFPナノボディーの挿入による)を含む組換えVSVウイルスを増幅する能力の、劇的な増大を結果としてもたらした。
【0100】
(実施例2)
その役割を説明する別の文脈では、Indiana VSV G内の突然変異である、S422Iもまた選択した
pH感受性分子スイッチの役割を果たすヒスチジンを同定しようとする試みにおいて、本発明者らは、G細胞外ドメインのヒスチジンを、アラニンで置きかえた。
特に、プロモーターの融合前形態にある、VSV Indiana G内には、4つのヒスチジン(H60、H162、H407)のクラスターが存在する(
図5)。本発明者らは、これらのヒスチジンのプロトン化が、陽性電荷のクラスターを創出し、これが、局所的な斥力を誘導し、これが、構造的転移を誘発するという仮説を立てた。
材料および方法
プラスミドおよびクローニング
点突然変異は、pCAGGSプラスミド内にクローニングされたVSV G遺伝子(Indiana Mudd-Summer株)から出発して創出した。略述すると、所望される突然変異を含有するフォワードプライマーおよびリバースプライマーを、G遺伝子を挟むプライマーのうちの1つと、個別に組み合わせて、2つのPCR産物を作出した。これらの2つG遺伝子断片は、突然変異を含有する領域内で重複するが、Gibsonアセンブリー反応キット(New England Biolabs)を使用して、これらを、pCAGGS直鎖化ベクターへとアセンブルした(EcoRIにより)。
【0101】
細胞および抗体
BHK-21細胞(ベビーハムスター腎細胞;ATCC CCL-10)、およびHEK-293T細胞(サルウイルス40T抗原[SV40T]を発現するヒト胎児腎細胞;ATCC CRL-3216)のクローンである、BSRを、8%のウシ胎仔血清(FCS)を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。G細胞外ドメインに対して方向付けられたマウスモノクローナル抗体は、KeraFAST製であった(8G5F11)。
トランスフェクション
融合アッセイおよび間接的免疫蛍光法のために、6ウェルプレート内、70%コンフルエンシーで増殖させたBSR細胞に、リン酸カルシウム法(ウェル1つ当たり5μgの適切なプラスミド)によりトランスフェクトした。偽型ウイルス作製のために、HEK-293細胞を、10cmのディッシュ内で増殖させ、これらに、6μgの適切なプラスミドを介して、ポリエチレンイミン(PEI;Sigma-Aldrich)をトランスフェクトした。
【0102】
細胞表面における発現
細胞表面上の、Gタンパク質の発現を定量するために、6ウェルディッシュ上に、70%のコンフルエンシーで播種されたHEK-293細胞に、上記で記載された通りにトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、1mMのEDTA-PBSへと掻爬するのに続き、600gで、5分間にわたる遠心分離により、細胞を回収した。細胞を、PBS中に、1:2,000の希釈率の、マウスモノクローナル抗G細胞外ドメイン抗体(8G5F11;KeraFAST)と共に、氷上で、1時間にわたりインキュベートした。細胞を、PBS中で、2回にわたり洗浄し、パラホルムアルデヒド中、4℃で固定し、ヤギ抗マウスAlexa Fluor 488(Invitrogen)の、1:100希釈液と共に、氷上で、1時間にわたりと共にインキュベートし、PBS中ですすいだ。0.5mMのEDTA-PBS 500ml中の再懸濁の後、BD Accuri C6蛍光活性化細胞分取装置(FACS)を使用するフローサイトメトリーにより、各集団に由来する細胞10,000個の蛍光を決定した。フローサイトメトリーにより、Gを発現するトランスフェクト細胞の平均値蛍光強度(MFI)を定量した。トランスフェクト細胞の相対細胞表面発現は、(突然変異体についてのMFI)/(WTについてのMFI)の通りに決定した。各突然変異体について、
図6の下図に示される百分率は、3つの独立の実験の平均である。
【0103】
結果
突然変異H407Aは、Gの融合特性を、完全に消失させる。この突然変異は、ウイルスに致死性である。したがって、組換えウイルス(VSV G H407A)を、自発的に発生させることはできない。本発明者らは、その増殖のために、補完性戦略を用いた。
略述すると、組換えVSVの回収は、トランスフェクトされたプラスミドからの、トランスにおける、機能的なWT VSV Gタンパク質の発現により裏書きされた。ウイルスゲノムから発現される、融合欠損VSV Gだけを含有するウイルス粒子を作出するために、上清中に存在するウイルスを、トランスにおける補完性VSV Gプラスミドを欠く細胞内で増幅した。独立クローンについての配列解析は、それらのうちの1つが、セリン422のイソロイシンによる置きかえ(二重突然変異体である、VSV G H407A S422Iをもたらす)を結果としてもたらす、2つの顕著に異なる補償的突然変異を明らかにした。
結論
VSV G H407Aの特徴の、VSV G H407A/S422Iの特徴との比較は、突然変異である、H407Aの文脈では、S422Iが、VSV Gの輸送効率、およびLDL-R CR2ドメインの可溶性形態によるGの認識を改善することを明らかにした(
図6)。これは、突然変異である、H407Aの文脈では、突然変異である、S422I(あるいはS422F、S422M、S422L、もしくはS422V、または他のVSV株のG細胞外ドメインの相当する位置における、相当の置換などの同様な置換)が、Gのフォールディングを容易とし、融合前形態を安定化させる(構造的転移は、CRドメイン結合性部位を破壊するので)ことを強く示唆する。
【0104】
(実施例3)
細胞間融合アッセイ。VSV Indiana WT G糖タンパク質の融合特性の、VSV Indiana GNano最適化糖タンパク質との比較
材料および方法
細胞間融合アッセイ
ガラス製のカバースリップ上に、70%のコンフルエンシーで播種されたBSR細胞に、野生型(WT)Gまたは突然変異体GをコードするpCAGGSプラスミド、およびGFP(細胞質マーカー)へと融合した、狂犬病ウイルスのリンタンパク質をコードするP-GFPプラスミドを共トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、多様なpH値(5.0~6.5)の融合緩衝液(DMEM+10mMのMES)と共に、37℃で、10分間にわたりインキュベートした。次いで、細胞を、1回洗浄し、pH7.4に緩衝された、DMEM+10mMのHEPES-NaOH、1%のBSAと共に、37℃で、1時間にわたりインキュベートした。細胞を、1倍濃度のPBS中に4%のパラホルムアルデヒドで、15分間にわたり固定した。細胞核を、DAPIで染色し、合胞体の形成を、20倍のレンズを伴う、Zeiss Axio vert 200蛍光顕微鏡で解析した。
【0105】
結果
VSV G Indiana WTおよびVSV GNanoの、最適化(すなわち、残基H22の、Nへの突然変異、および残基S422の、I、F、M、L、またはVへの突然変異)の後における融合特性を、細胞間融合アッセイにおいて解析した。このために、BSR細胞に、VSV G(WTまたは突然変異体)、およびP-GFP(合胞体の容易な観察を可能とする、もっぱら細胞質内のタンパク質)を発現するpCAGGSプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、10分間にわたり、表示のpHへと調整されたDMEMへと曝露し、次いで、これを、pH7.4のDMEMで置きかえた。次いで、固定の前に、細胞を、37℃で、1時間にわたり保持した。
野生型Gタンパク質を発現する細胞は、5.5~6.3の間の低pHへと曝露したところ、大型の合胞体を形成した(
図7)。最適化後のGNanoを発現する細胞は、全て、低pHへと曝露したところ、合胞体を形成することが可能であった(
図7)。
結論
結果は、422位における疎水性残基の存在が、pH依存性構造的転移の調節において鍵となるという事実と符合する。これは、突然変異である、S422I(あるいはS422F、S422M、S422L、もしくはS422V、または他のVSV株のG細胞外ドメインに相当する位置における、相当の置換)が、Gのフォールディングを容易とし、GNanoの融合前形態を安定化させることを強く示唆する。
【0106】
(実施例4)
VSV GのC末端部分は、細胞外ドメインの、その融合前状態へのロッキングに寄与する
結果
WT Indiana VSV G細胞外ドメイン(残基1~440を含むG
1-440)の構造は、2.1Åの分解能で決定した。細胞外ドメインは、その三量体の融合前コンフォメーションで結晶化させ、その構造を、2.1Åの分解能で決定した(
図8)。ポリペプチド鎖は、残基432までトレースすることができた。G
1-440のC末端部分は、アルファ-ヘリックス(残基409~416)に続く、Pro 418と、Glu 421との間のベータ-ターン、および短いベータ-ヘアピン構造(残基422~432)で終わるキンク領域から作られている。ヘアピン構造は、両方のセグメントの主鎖の間の水素結合、ならびに残基H80およびE421の側鎖の間の水素結合を介して、VSV G融合ドメインのベータ-シートの鎖である、79~84と相互作用する。
【0107】
結論
VSV G細胞外ドメインの、このX線構造は、C末端部分(残基407~残基425)は、大部分が、融合ドメインと相互作用するので、融合前複合体の安定化に寄与することを明らかにする。本発明に特に重要であるのは、この融合前構造では、残基S422が、F424およびL430の方へと向かっているという事実である。したがって、補償的突然変異であるS422Iは、I422と、残基F424およびL430との疎水性相互作用を介して、ベータ-ヘアピン構造(したがって、融合前状態)を安定化させる。これはまた、S422の、他の疎水性残基(L、M、V、またはF)による置きかえが、なぜ、同じ(すなわち、融合前コンフォメーションを安定化させる)効果を有するのかも説明した。
【0108】
【配列表】