(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】磁気メモリ装置、及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
G11C 11/16 20060101AFI20241219BHJP
G11C 11/56 20060101ALI20241219BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20241219BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
G11C11/16 100C
G11C11/16 230
G11C11/16 240
G11C11/56 100
H10B61/00
H10N50/10 U
(21)【出願番号】P 2021008391
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】園部 義明
(72)【発明者】
【氏名】本多 周太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 好弘
(72)【発明者】
【氏名】仲村 泰明
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-063895(JP,A)
【文献】特開2006-287081(JP,A)
【文献】国際公開第2009/101827(WO,A1)
【文献】特開2012-203979(JP,A)
【文献】国際公開第2020/212443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 11/16
G11C 11/56
H10B 61/00
H10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁気メモリ素子と
前記第1磁気メモリ素子に接続された第2磁気メモリ素子と、
前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給するパルス電源と、
前記パルス電源に対する前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子の接続を切替えるスイッチと、を備え、
前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子のそれぞれは、
所定の磁化方向を維持する第1固定層と,
第1非磁性層と,
垂直磁気異方性を有する、磁化方向が可変な自由層と,
第2非磁性層と,
前記第1固定層と逆向きの磁化方向を維持する第2固定層を,順に積層し,
前記第1固定層,前記第1非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値は,前記第2固定層,前記第2非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値と異なる磁気メモリ装置。
【請求項2】
前記パルス電源から供給された電流パルスのパルス数をカウントするパルスカウンタをさらに備える請求項1に記載の磁気メモリ装置。
【請求項3】
前記第1磁気メモリ素子の前記第2固定層と前記第2磁気メモリ素子の前記第2固定層とが接続されており、
前記パルス電源の2つの出力の一方が前記第1磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されており、
前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第1磁気メモリ素子の前記第2固定層又は前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続するように、前記スイッチが接続を切替える請求項1、又は2に記載の磁気メモリ装置。
【請求項4】
データの読み出し時には、
前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されるように、前記スイッチが接続を切替え、
第1読み出し動作と、第2読み出し動作とを交互に行い、
前記第1読み出し動作と前記第2読み出し動作では、前記パルス電源が電流パルスを反対方向に流す請求項3に記載の磁気メモリ装置。
【請求項5】
データの消去時には、前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されるように、前記スイッチが接続を切替え、
データの書き込み時には、前記パルス電源の2つの出力の他方が前記
第1磁気メモリ素子の前記
第2固定層に接続されるように、前記スイッチが接続を切替えている請求項4に記載の磁気メモリ装置。
【請求項6】
前記第1磁気メモリ素子、及び前記第2磁気メモリ素子のそれぞれでは、2以上のメモリ素子が直列に接続されている請求項1~5のいずれか1項に記載の磁気メモリ装置。
【請求項7】
ニューラルネットワークの結合荷重値を記録している請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気メモリ装置。
【請求項8】
リザバー計算モデルの重みを記録している請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気メモリ装置。
【請求項9】
第1磁気メモリ素子と、
前記第1磁気メモリ素子に接続された第2磁気メモリ素子と、を備え、
前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子のそれぞれは、
所定の磁化方向を維持する第1固定層と,
第1非磁性層と,
垂直磁気異方性を有する、磁化方向が可変な自由層と,
第2非磁性層と,
前記第1固定層と逆向きの磁化方向を維持する第2固定層を,順に積層し,
前記第1固定層,前記第1非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値は,前記第2固定層,前記第2非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値と異なる磁気メモリ装置の動作方法であって、
前記動作方法は、
前記第1磁気メモリ素子の前記自由層に記録されているデータ値を前記第2磁気メモリ素子の前記自由層に転送するように、前記第1磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなるまで、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給する第1読み出しステップと、
前記第2磁気メモリ素子の前記自由層に記録されているデータ値を前記第1磁気メモリ素子の前記自由層に転送するように、前記第2磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなるまで、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給する第2読み出しステップと、を備えた磁気メモリ装置の動作方法。
【請求項10】
前記第1読み出しステップと前記第2読み出しステップの前に、
前記第1磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなり、かつ、前記第2磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなるように、前記第1磁気メモリ素子、及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給する消去ステップと、
記録するデータ値に応じたパルス数の電流パルスを前記第1磁気メモリ素子に供給して、前記第1磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向を変化させる書き込みステップと、
をさらに備えた請求項9に記載の磁気メモリ装置の動作方法。
【請求項11】
前記第1読み出しステップと前記第2読み出しステップとを交互に行う請求項9又は10に記載の磁気メモリ装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気メモリ装置、及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁化を有し磁気抵抗効果によって読み出しを行う磁気抵抗素子は、微細化に対する熱擾乱耐性が高く、次世代のメモリ等として期待されている。その構造は磁化方向が可変な自由層と、所定の磁化方向を維持する固定層と、前記自由層と固定層との間に設けられた絶縁体層を有する磁気トンネル接合(Magnetic tunnel junction: MTJ)層を備えた磁気抵抗(Magnetic resistance: MR)素子から構成される。このようなMTJ素子を基本とするSTT―MRAM(Spin Transfer Torque Magnetoresistive Random Access Memory)の実用化が行われている。STT―MRAMは2端子構造から成り立ち、書き込み電流と読み出し電流の経路が同じである。
【0003】
特許文献1には、3端子構造の磁気メモリを応用したアナログメモリ素子が開示されている。特許文献1のアナログメモリ素子では、磁気駆動層中の磁壁の位置を移動させることで、多値的な抵抗値を出力することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のSTT―MRAMやSOT―MRAM(SOT: Spin-orbit torque)においては,書き込みトルクが自由層の表面の磁化だけに影響していたため,厚膜やシリンダ構造など基板に対して垂直方向に長い強磁性金属の磁化の向きを制御できない。つまり厚膜やシリンダ構造を自由層の構造として用いることはできない問題があった。しかし,自由層の熱安定性向上・アナログビット化・多ビット化,素子構造の単純化,素子の高密度化をすべて改善できる点から基板に対して垂直方向に長い強磁性金属を自由層に用いた2端子構造から成る素子MRAMの開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の磁気メモリ装置は、第1磁気メモリ素子と、前記第1磁気メモリ素子に接続された第2磁気メモリ素子と、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給するパルス電源と、前記パルス電源に対する前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子の接続を切替えるスイッチと、を備え、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子のそれぞれは、所定の磁化方向を維持する第1固定層と,第1非磁性層と,垂直磁気異方性を有する、磁化方向が可変な自由層と,第2非磁性層と,前記第1固定層と逆向きの磁化方向を維持する第2固定層を,順に積層し,前記第1固定層,前記第1非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値は,前記第2固定層,前記第2非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値と異なる。この構成により、簡素な構成で多値データの読み出しが可能となる。
【0007】
上記の磁気メモリ装置は、前記パルス電源から供給された電流パルスのパルス数をカウントするパルスカウンタをさらに備えていてもよい。パルスカウンタのカウント値により多値データを読み出すことができる。
【0008】
上記の磁気メモリ装置において、前記第1磁気メモリ素子の前記第2固定層と前記第2磁気メモリ素子の前記第2固定層とが接続されており、前記パルス電源の2つの出力の一方が前記第1磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されており、前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第1磁気メモリ素子の前記第2固定層又は前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続するように、前記スイッチが接続を切替えるようにしてもよい。これにより、接続構成を簡素化することができる。
【0009】
上記の磁気メモリ装置において、データの読み出し時には、前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されるように、前記スイッチが接続を切替え、第1読み出し動作と、第2読み出し動作とを交互に行い、前記第1読み出し動作と前記第2読み出し動作では、前記パルス電源が電流パルスを反対方向に流すようにしてもよい。これにより、データを繰り返し読み出すことができる。
【0010】
上記の磁気メモリ装置において、データの消去時には、前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されるように、前記スイッチが接続を切替え、データの書き込み時には、前記パルス電源の2つの出力の他方が前記第2磁気メモリ素子の前記第1固定層に接続されるように、前記スイッチが接続を切替えているようにしてもよい。これにより、簡便な構成で多値データを書き込むことができる。
【0011】
上記の磁気メモリ装置において、前記第1磁気メモリ素子、及び前記第2磁気メモリ素子のそれぞれでは、2以上のメモリ素子が直列に接続されていてもよい。これにより、素子の記録容量を増加することができる。
【0012】
上記の磁気メモリ装置において、ニューラルネットワークの結合荷重値を記録していてもよい。これにより、ニューラルネットワークにおける演算を簡便かつ高速に行うことができる。
【0013】
上記の磁気メモリ装置において、リザバー計算モデルの重みを記録していてもよい。これにより、リザバー計算モデルにおける演算を簡便かつ高速に行うことができる。
【0014】
一実施形態にかかる磁気メモリ装置の動作方法は、第1磁気メモリ素子と、前記第1磁気メモリ素子に接続された第2磁気メモリ素子と、を備え、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子のそれぞれは、所定の磁化方向を維持する第1固定層と,第1非磁性層と,垂直磁気異方性を有する、磁化方向が可変な自由層と,第2非磁性層と,前記第1固定層と逆向きの磁化方向を維持する第2固定層を,順に積層し,前記第1固定層,前記第1非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値は,前記第2固定層,前記第2非磁性層及び前記自由層で構成されるMTJ素子の抵抗値と異なる磁気メモリ装置の動作方法であって、前記動作方法は、前記第1磁気メモリ素子の前記自由層に記録されているデータ値を前記第2磁気メモリ素子の前記自由層に転送するように、前記第1磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなるまで、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給する第1読み出しステップと、前記第2磁気メモリ素子の前記自由層に記録されているデータ値を前記第1磁気メモリ素子の前記自由層に転送するように、前記第2磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなるまで、前記第1磁気メモリ素子及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給する第2読み出しステップと、を備えている。これにより、簡素な構成で多値データの読み出しが可能となる。
【0015】
上記の動作方法において、前記第1読み出しステップと前記第2読み出しステップの前に、前記第1磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなり、かつ、前記第2磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向が全て同じ向きとなるように、前記第1磁気メモリ素子、及び前記第2磁気メモリ素子に駆動パルスを供給する消去ステップと、記録するデータ値に応じたパルス数の電流パルスを前記第1磁気メモリ素子に供給して、前記第1磁気メモリ素子の前記自由層の磁化方向を変化させる書き込みステップと、をさらに備えていてもよい。これにより、簡素な構成で多値データを書き込みすることができる。
【0016】
上記の動作方法において、前記第1読み出しステップと前記第2読み出しステップとを交互に行うようにしてもよい。これにより、記録されているデータ値を繰り返し読み出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡素な構成でアナログ値(もしくは多値データ)の読み出しが可能な磁気メモリ素子、及びその動作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図10】磁気メモリ装置の動作を説明する図である。
【
図11】磁気メモリ装置の動作を説明する図である。
【
図12】磁気メモリ装置におけるMTJ素子の構造と熱安定の関係を示すグラフである。
【
図13】実施の形態1にかかる磁気メモリ装置における磁壁の移動を説明するための図である。
【
図14】実施の形態1にかかる磁気メモリ装置における消去時の構成を示す図である。
【
図15】実施の形態1にかかる磁気メモリ装置における書き込み時の構成を示す図である。
【
図16】実施の形態1にかかる磁気メモリ装置における第1読み出し動作時の構成を示す図である。
【
図17】実施の形態1にかかる磁気メモリ装置における第2読み出し動作時の構成を示す図である。
【
図18】実施の形態1にかかる磁気メモリ装置の動作方法を示すフローチャートである。
【
図19】変形例にかかる磁気メモリ装置を示す図である。
【
図20】磁気メモリ装置をニューロンに適用したモデルを示す図である。
【
図21】2つの磁気メモリ素子を直列に接続した構成を示す図ある。
【
図22】磁気メモリ装置をニューロンに適用したリザバー計算モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(磁気メモリ素子の基本構成)
以下,図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は,実施の形態にかかる磁気メモリ装置の図である。
図1では,磁気メモリ素子の構造を斜視図,磁気メモリ素子と接続する回路を略図で記載している。
【0020】
図1において,磁気メモリ装置100は,磁気メモリ素子101と,コントローラ102とを備える。磁気メモリ素子101は,第1固定層111と,第1非磁性層112と,自由層113と,第2非磁性層114と,第2固定層115を備える。
図1に示すように,第1固定層111,第1非磁性層112,自由層113,第2非磁性層114,及び第2固定層115は,順に積層されている。
【0021】
第1固定層111及び第2固定層115は,磁化方向を所定の方向に維持する層である。第1固定層111及び第2固定層115としては,容易に磁化方向が変化しない材料を選択することが好ましい。すなわち,第1固定層111及び第2固定層115は,実効的な磁気異方性Kueff及び飽和磁化Msが大きく,また,磁気緩和定数αが大きい材料を選択することが好ましい。しかしながら,第1固定層111及び第2固定層115を構成する材料は,特に限定されるものではなく,諸条件により任意の材料から選択することができる。
【0022】
例えば,第1固定層111及び第2固定層115は,CoFeBを主成分とする層と,Co/Pt多層膜とから構成される。また,第1固定層111及び第2固定層115は,ホイスラー合金膜で主成分とする層と,Co/Pt多層膜とから構成されてもよい。好ましくはホイスラー合金膜を主成分とする層は,Co基フルホイスラー(Co-based full-Heusler)合金を主成分とする層である。具体的には,Co基フルホイスラー合金は,Co2FeSi,Co2MnSi,Co2FeMnSi,Co2FeAl,またはCo2CrAlとすることができる。また,Co/Pt多層膜は,大きな垂直磁気異方性を持たせるために備えられている。垂直とは積層面に垂直であり第1固定層111から第2固定層115への方向である。第1固定層111は,第1非磁性層112と接続している。第2固定層115は、第2非磁性層114と接合している。また,ホイスラー合金膜を主成分とする層は,反対側の面でCo/Pt多層膜と接合している。第1固定層111及び第2固定層115を上述のいずれかの構成とすることにより,第1固定層111及び第2固定層115は,単一の層で磁化方向を所定の方向に維持する層とすることができる。また、第1固定層111及び第2固定層115は、L10型のFePd、FePt、MnGa合金、D022型のMnGa、MnGe合金、Co/Pd多層膜、L11型のCoPd合金、又は、CoPt合金を有し、磁化容易軸が膜面垂直方向を向く強磁性体から構成されてもよい。
【0023】
また,第1固定層111及び第2固定層115は,参照層とも呼ばれる。そして,第1固定層111及び第2固定層115の磁化の向きは,互いに反対方向を向いている。
【0024】
第1非磁性層112及び第2非磁性層114は,絶縁物質を主成分とする層である。第1非磁性層112は,強磁性を有する第1固定層111及び自由層113の間に備えられる。また,第2非磁性層114は,強磁性を有する第2固定層115及び自由層113の間に備えられる。例えば,第1非磁性層112及び第2非磁性層114は,MgO等の絶縁膜から構成されている。
【0025】
なお,第1非磁性層112及び第2非磁性層114を構成する材料としては,NaCl構造を有する酸化物が好ましく,前述したMgOの他,CaO,SrO,TiO,VO,NbO等が挙げられるが,第1非磁性層112及び第2非磁性層114としての機能に支障をきたさない限り,特に限定されるものではない。例えば,第1非磁性層112及び第2非磁性層114は,スピネル型MgAl2O4なども用いることが可能である。また例えば,第1非磁性層112及び第2非磁性層114は,Cu,Cr, Ruなどの金属から構成されてもよい。
【0026】
そして,第1固定層111及び自由層113との接合面に対して垂直に電圧が印加されることにより,トンネル効果によってMTJ素子(第1固定層111,第1非磁性層112,及び自由層113)に電流が流れる。同様に第2固定層115及び自由層113との接合面に対して垂直に電圧が印加されることにより,トンネル効果によってMTJ素子(自由層113,第2非磁性層114,及び第2固定層115)に電流が流れる。
【0027】
自由層113は,膜面に垂直な方向に磁化容易軸を有し,磁化回転と磁壁移動により,磁化方向が可変である層である。自由層113は,例えば,膜面に対して垂直に磁化されており,磁壁は上方又は下方に向く。自由層113を構成する材料は,特に限定されるものではなく,諸条件により任意の材料から選択することができる。例えば,CoFeBを主成分から構成される。また,Co基フルホイスラー合金からなる層であってもよい。具体的には,Co基フルホイスラー合金は,Co2FeSi,Co2MnSi,Co2(Fe-Mn)Si,Co2FeAl,またはCo2CrAlとすることができる。また,低飽和磁化(低Ms)のMnGaGe系材料,内因性の結晶磁気異方性Kuが比較的小さいFeNi系材料も利用可能である。
【0028】
コントローラ102は自由層113の磁化を制御するために自由層113にスピン流を発生させるための電圧を印加する。また,コントローラ102は,磁気メモリ素子101の第1固定層111と第2固定層115間に磁壁移動のための電圧を印加する。また,コントローラ102は,自由層113の磁化の向き(すなわち書き込まれた情報)を読み出すために,磁気メモリ素子101の第1固定層111と第2固定層115間の電流、もしくは電圧、電気抵抗を測定する。
【0029】
以上の構成により,磁気メモリ装置100はデータを書き込み及び読み出す。次に,コントローラ102が磁気メモリ素子101に情報の書き込みを行う動作,及びコントローラ102が自由層113中の磁壁の移動を行う動作について説明する。
図2~
図9は実施の形態にかかる磁気メモリ装置の動作を説明する図である。
【0030】
まず,
図2~
図5を用いて,自由層113に上向きの磁化を書き込む例について説明する。ここで上向きとはZ軸正の向きである。
【0031】
図2は,情報を書き込む前の磁気メモリ装置100を表している。
図2において,記録部である自由層113は,下向きの磁化となっている。また,第1固定層111の磁化の向きは,下向きである。そして,第2固定層115の磁化の向きは,上向きである。この状態において,自由層113に上向きの磁化を書き込む場合,コントローラ102は,第1固定層111から第2固定層115に電流J
1を流す。
【0032】
図2から電流J
1を流した後の状態を
図3に示す。
図3では,磁気メモリ素子101に電流J
1が流れることにより,電子の流れは電流の向きと逆なので、第2固定層115から自由層113に上向きの磁気モーメントを持ったスピンが注入され,自由層113の第2非磁性層114側に上向きの磁化領域が出現する。さらに、磁気メモリ素子101に電流J
1を流すことで,上向きの磁化領域と下向きの磁化領域の境界にある磁壁が,第2非磁性層114側から第1非磁性層112側に移動する。便宜上,上向きの磁気モーメントを持ったスピンを上向きスピン,下向きの磁気モーメントを持ったスピンを下向きスピンと呼ぶ。
【0033】
図3から電流J
1を流した後の状態を
図4に示す。
図4では,磁気メモリ素子101に電流J
1が流れることにより,磁壁がさらに第1非磁性層112側に移動する。
【0034】
図4から電流J
1を流した後の状態を
図5に示す。
図5では,磁気メモリ素子101に電流J
1が流れることにより,磁壁が第1非磁性層112に到達し,自由層113全体が,上向きの磁化となる。
【0035】
このようにして,自由層113に上向きの磁化を書き込むことができる。次に,
図6~
図9を用いて,自由層113に下向きの磁化を書き込む例について説明する。
【0036】
図6は,情報を書き込む前の磁気メモリ装置100を表している。
図6において,自由層113は,上向きの磁化となっている。また,第1固定層111の磁化の向きは,下向きである。そして,第2固定層115の磁化の向きは,上向きである。この状態において,自由層113に下向きの磁化を書き込む場合,コントローラ102は,第2固定層115から第1固定層111に電流J
2を流す。
【0037】
図6から電流J
2を流した後の状態を
図7に示す。
図7では,磁気メモリ素子101に電流J
2が流れることにより,第1固定層111から自由層113に下向きのスピンが注入され,自由層113の第1非磁性層112側に下向きの磁化領域が出現する。さらに,磁気メモリ素子101に電流J
2が流れることにより,上向きの磁化領域と下向きの磁化領域の境界にある磁壁が,第1非磁性層112側から第2非磁性層114側に移動する。
【0038】
図7から電流J
2を流した後の状態を
図8に示す。
図8では,磁気メモリ素子101に電流J
2が流れることにより,磁壁がさらに第2非磁性層114側に移動する。
【0039】
図8から電流J
2を流した後の状態を
図9に示す。
図9では,磁気メモリ素子101に電流J
2が流れることにより,磁壁が第2非磁性層114に到達し,自由層113全体が,下向きの磁化となる。このようにして,自由層113に下向きの磁化を書き込むことができる。
【0040】
次にコントローラ102が磁気メモリ素子101に情報を読み出す動作について説明する。コントローラ102は磁気メモリ素子101に流れる電流の大きさにより,磁気メモリ素子101が上向きの磁化,下向きの磁化いずれの状態であるかを検出する。
図10及び
図11は,実施の形態にかかる磁気メモリ装置の動作を説明する図である。
【0041】
コントローラ102は,読み出し電流J3の値を計測する。この読み出し電流J3は書き込み電流J1,J2の両方より小さい値である。なお,読み出し電流J3の向きは,いずれであっても良い。
【0042】
まず,
図10を用いて,下向きの磁化を読み出す例について説明する。自由層113,第2非磁性層114及び第2固定層115はTMR素子を形成する。
図10において,第2固定層115の磁化の向きと,自由層113の磁化の向きは反対であるので,上側のTMR素子(後述するMR1)は反並行の磁気抵抗R1
APとなる。また,第1固定層111,第1非磁性層112及び自由層113はTMR素子を形成する。
図10において,第1固定層111の磁化の向きと,自由層113の磁化の向きは同じなので,下側のTMR素子(後述するMR2)は、並行の磁気抵抗R2
Pとなる。ここで,下向きの磁化を有する自由層113の抵抗値R
downは,R1
AP+R2
Pにほぼ等しい。
【0043】
図11を用いて,上向きの磁化を読み出す例について説明する。
図11において,第2固定層115の磁化の向きと,自由層113の磁化の向きは同じなので,上側のTMR素子(後述するMR1)は、並行の磁気抵抗R1
Pとなる。また,
図11において,第1固定層111の磁化の向きと,自由層113の磁化の向きは反対であるので,下側のTMR素子(後述するMR2)は、反並行の磁気抵抗R2
APとなる。ここで,自由層113が上向きの磁化を有するときの磁気メモリ素子101の抵抗値R
UPは,R1
P+R2
APにほぼ等しい。
【0044】
磁気メモリ素子101では,自由層113が下向きの磁化を有するときの抵抗値Rdownと上向きの磁化を有するときの抵抗値RUPが異なるので,コントローラ102は磁気メモリ素子101に固定の電圧を印加したときに流れる電流の大きさにより,磁気メモリ素子101が上向きの磁化,下向きの磁化いずれの状態であるかを検出することができる。
【0045】
次に,下向きの磁化を有する自由層113の抵抗値Rdownと上向きの磁化を有する自由層113の抵抗値RUPが異なるようにするための構成について説明する。
【0046】
MR1とMR2で磁気抵抗比(MR比)が同じと仮定すると以下の関係式が成り立つ。
ここで,MR1≡(R1AP-R1P)/R1P,MR2≡(R2AP-R2P)/R2Pとする。
αR1P=R1AP
αR2P=R2AP
α:MR比に相当する量
また,
R2PがR1Pのβ倍つまりβR1P=R2Pと仮定する。
β:R1PとR2Pの抵抗値の比
αβR1P=R2APが成り立つ。そして,上向きの磁化を有する自由層113の抵抗値RUPと下向きの磁化を有する自由層113の抵抗値Rdownの比は,以下のようになる。
RUP/Rdown=(1+αβ)/(α+β)
ここで,β≠1のときRUP/Rdown≠1となる。
【0047】
すなわち,R1Pの抵抗値とR2Pの抵抗値が異なれば,上向きの磁化を有する自由層113の抵抗値RUPと下向きの磁化を有する自由層113の抵抗値Rdownが異なることになる。その結果,コントローラ102は磁気メモリ素子101に流れる電流の大きさにより,磁気メモリ素子101が上向きの磁化,下向きの磁化いずれの状態であるかを検出することができる。
【0048】
例えば,自由層113,第2非磁性層114及び第2固定層115からなるMR1をGMR素子,第1固定層111,第1非磁性層112及び自由層113からなるMR2をTMR素子としてもよい。この場合,MR2の抵抗値が大きく,磁気抵抗値も大きい。
【0049】
図12は、実施の形態の磁気メモリ装置におけるMTJ素子の構造と熱安定の関係を示すグラフである。
図12において、縦軸は自由層113の厚みtを示し、横軸は素子の直径Dを示す。
【0050】
図12において、熱安定因子Δが大きい厚みと直径の組み合わせが自由層の構造に適している。すなわち
図12において、Δが40以上である厚みと直径の組合せが望ましい。特にΔが80以上である厚みと直径の組合せが望ましい。そして、Δが120以上である厚みと直径の組合せがもっとも望ましい。
【0051】
具体的には自由層113の高さを,前記自由層の直径で除算した比が1以上であることが望ましい。また,自由層113の高さが20nm以上であることが望ましい。であることが望ましい。また,自由層113の直径が10nm以下であることが望ましい。
【0052】
このように,実施の形態の磁気メモリ装置によれば,磁壁移動現象を用いることで,2端子構造素子で、高信頼性、たとえば-40℃~+150℃の広範囲の動作温度でも熱安定性の劣化がない磁気トンネル接合素子デバイス、ひいてはMRAM製品、DRAM代替え製品を提供することができる。実施の形態の磁気メモリ装置によれば,さらに自由層材料の低Ms(低飽和磁化)化を行うことにより、高速書き込み(数ns)、低消費電流も可能になる。また,実施の形態の磁気メモリ装置によれば,自由層(自由層)を縦長形状にすることにより形状磁気異方性を用いて、従来技術で困難であった熱安定性を確保し、素子サイズが10nm以下の高密度化が可能になる。特に-40℃~+150℃の広範囲の動作温度でも熱安定性の劣化がない磁気トンネル接合素子デバイスが実現できる。
【0053】
なお,本発明は上記実施の形態に限られたものではなく,趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば,上記実施の形態では,第1固定層111,第1非磁性層112及び自由層113はTMR素子を構成する例について説明したが,第1非磁性層112として絶縁層の代わりに非磁性金属層を積層し,GMR素子としてもよい。同様に自由層113,第2非磁性層114及び第2固定層115をGMR素子としてもよい。
【0054】
また,上記実施の形態では,
図1において,第1固定層111,第1非磁性層112,自由層113,第2非磁性層114及び第2固定層115が円柱形状で表されているが,積層される形状であればいずれであってもよい。例えば,直方体形状が積層されたものであってもよい。
【0055】
実施の形態1
上記のように磁気メモリ素子101では、素子を流れる電流に応じて磁壁(ドメインウォールともいう)が移動する。本実施の形態では磁気メモリ素子101に電流パルスを与えることで、磁気メモリ素子101を多値的な記録再生が可能なアナログメモリ素子として利用している。この点について、
図13を用いて説明する。
図13は、磁気メモリ素子101の自由層113における磁壁移動のシミュレーション結果を示す図である。
【0056】
xy平面視において、磁気メモリ素子101のサイズは10nm×10nmの正方形となっている。また、Z方向における自由層113の長さは80nmとなっている。
図13では、自由層13において、時間とともに磁壁116が移動していく様子が示されている。
【0057】
電流を流す前の初期状態における自由層13の磁化方向は、上向きとなっている。電流密度J=1.0×1012A/m2の電流が磁気メモリ素子101に流れている。電流が流れる方向は、下方向(-z方向)となっている。したがって、磁壁116が徐々に下(第1非磁性層112側)から上(第2非磁性層114側)に移動していく。13nsec後に、磁壁116が第2非磁性層114まで移動して、自由層113の磁化方向が下向きに入れ替わる。
【0058】
磁気メモリ素子101に電流パルスを流す場合、パルス数に応じて磁壁116の位置が変わる。
図13に示す例では、パルス数が増えて行くにつれて、磁壁116が上に移動している。磁気メモリ素子101に供給する電流パルスのパルス数をカウントすることで、磁気メモリ素子101をアナログメモリ素子として利用することができる。例えば、256パルスで自由層113の磁化方向が切替わるとすると、磁気メモリ素子101が8ビットのアナログメモリ素子とみなせる。
【0059】
実施の形態1に係る磁気メモリ装置1000及びその動作について、
図14~
図17を用いて説明する。
図14~
図17は、磁気メモリ装置1000の構成を示す図である。
図14は、データ記録前の消去時(初期化時)を示しており、
図15はデータ記録時(書き込み時)を示している。
図16,
図17は、読み出し時を示している。なお、読み出し時には、
図16に示す第1読み出し動作と、
図17に示す第2読み出し動作を交互に行うようにしてもよい。
【0060】
磁気メモリ装置1000は、上記した磁気メモリ素子101を2つ備えている。以下、2つの磁気メモリ素子101を第1磁気メモリ素子101a、第2磁気メモリ素子101bとして説明する。
図14、及び
図15の磁気メモリ装置1000は、パルス電源301とスイッチ302とを備えている。パルス電源301とスイッチ302はコントローラ102に対応していてもよい。
【0061】
上記の通り、第1磁気メモリ素子101aは、第1固定層111a,第1非磁性層112a,自由層113a,第2非磁性層114a及び第2固定層115aが順次積層された積層構造を有している。同様に第2磁気メモリ素子101bは、第1固定層111b,第1非磁性層112b,自由層113b。第2非磁性層114b及び第2固定層115bが順次積層された積層構造を有している。第1磁気メモリ素子101aと第2磁気メモリ素子101bとは同じ素子構成を有している。例えば、第1磁気メモリ素子101aの各層は、第2磁気メモリ素子101bの各層と同じ材料及び同じ厚さで形成されており、磁気抵抗等の特性は同じとなっている
【0062】
第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bが並んで配置されている。第1磁気メモリ素子101aの第2固定層115aは、第2磁気メモリ素子101bの第2固定層115bと接続されている。第1磁気メモリ素子101aの第1固定層111aは、パルス電源301に接続されている。第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bは、スイッチ302に接続されている。また、第2固定層115a、及び第2固定層115bはスイッチ302に接続されている。
【0063】
パルス電源301は、電流パルス(駆動パルスともいう)を発生して、第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bに供給する。具体的には、パルス電源301は、2つの出力301a、301bを有しており、電流パルスの電流方向を反転させることができる。例えば、図においてパルス電源301内に示された矢印及び配線に沿って示された矢印が電流方向を示している。パルス電源301の一方の出力301aが第1磁気メモリ素子101aの第1固定層111aに接続されている。パルス電源301の他方の出力301bは、スイッチ302に接続されている。
【0064】
スイッチ302は、パルス電源301に対する第1磁気メモリ素子101a及び第2磁気メモリ素子101bの接続を切替える。スイッチ302は、パルス電源301の出力301bが第1磁気メモリ素子101aの第2固定層115a又は第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bに接続するように、接続の切替を行う。例えば、
図14、
図16,
図17では、パルス電源301の出力301bが、スイッチ302を介して、第1固定層111bに接続されている。
図15では、パルス電源301の出力301bが、スイッチ302を介して、第2固定層115a、及び第2固定層115bに接続される。以下、消去動作、書き込み動作、読み出し動作について説明する。
【0065】
(消去動作)
図14に示す消去時(初期化時)では、パルス電源301の出力301bが、スイッチ302を介して、第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bに接続されている。そして、パルス電源301が第1磁気メモリ素子101aの第1固定層111aに電流パルスを出力する。つまり、パルス電源301の出力301aから電流パルスが供給される。
【0066】
したがって、電流パルスは、第1磁気メモリ素子101aにおいて第1固定層111aから第2固定層115aに電流パルスが流れる。さらに、電流パルスは、第1磁気メモリ素子101aの第2固定層115aから第2磁気メモリ素子101bの第2固定層115bに流れる。第2磁気メモリ素子101bにおいて第2固定層115bから第1固定層111bに電流パルスが流れる。
【0067】
ここで、第1磁気メモリ素子101aが8ビットのアナログメモリで有り、256パルスで磁化方向が完全に反対向きになるとする。第2磁気メモリ素子101bも第1磁気メモリ素子101aと同様に、8ビットのアナログメモリで有り、256パルスで磁化方向が完全に反対向きになるとする。つまり、第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bのそれぞれでは256パルスがフルスケールとなっている。第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bにおいて、フルスケールとなるパルス数は同じとなっている。もちろん、フルスケールとなるパルス数は256パルスに限られるものではない。フルスケールとなるパルス数は予め決めておけば良い。
【0068】
消去時には、パルス電源301が、フルスケールの2倍以上の電流パルスを供給する。これにより、自由層113aの磁化方向は、第1非磁性層112aから第2非磁性層114aに向かう方向(以下、上方向又は上向きという)になる。つまり、自由層113aは、全て上向きの磁化方向となる。第2磁気メモリ素子101bの磁化方向は、第2非磁性層114bから第1非磁性層112bに向かう方向(以下、下方向又は下向きという)となる。つまり、自由層113bは、全て下向きの磁化方向となる。
【0069】
第1磁気メモリ素子101aでは磁壁が第1非磁性層112aまで移動し、第2磁気メモリ素子101bでは磁壁が第2非磁性層114bまで移動することで消去が完了する。
図14の自由層113a,113bの状態は消去完了時の磁化状態である。なお、
図14等では、自由層113a、113b中に示す白抜き矢印が磁化方向を示している。また、
図14では、第1磁気メモリ素子101a、第2磁気メモリ素子101bの右側にある矢印は、スピンの流れの方向を示している。なお、スピンの流れの方向は電流方向と反対方向になるため、
図15以降では図示を省略する。
【0070】
(書き込み動作)
図15に示す書き込み時では、パルス電源301の出力301bが、スイッチ302を介して、第1磁気メモリ素子101aの第2固定層115aに接続されている。そして、パルス電源301が第1磁気メモリ素子101aの第2固定層115aに電流パルスを出力する。つまり、パルス電源301の出力301bから電流パルスが供給される。
図14に示す初期化時と、
図15に示す書き込み時では、スイッチ302の接続が反対で、かつ、電流方向が反対となっている。
【0071】
第1磁気メモリ素子101aでは、第2固定層115aから第1固定層111aに電流パルスが流れる。なお、第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bは開放されているため、第2磁気メモリ素子101bには電流パルスが流れない。
【0072】
書き込み時には、パルス電源301は、記録するデータ値に応じたパルス数だけ電流パルスを供給する。パルス電源301は、1~256個の電流パルスを供給する。第1磁気メモリ素子101aにおいて、磁壁が第2非磁性層114a側から第1非磁性層112a側に移動する。そして、自由層113a中において、パルス数に応じた位置まで磁壁が移動する。なお、第2磁気メモリ素子101bには電流パルスが流れないため、自由層113bの磁化方向は全て下向きのままとなっている。
【0073】
(第1読み出し動作)
図16に示す第1読み出し時では、パルス電源301の出力301bが、スイッチ302を介して、第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bに接続されている。そして、パルス電源301が第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bに電流パルスを出力する。つまり、パルス電源301の出力301bから電流パルスが供給される。
図14に示す消去時と、
図16に示す第1読み出し時では、スイッチ302の接続が同じで、電流方向が反対となっている。
【0074】
したがって、第2磁気メモリ素子101bにおいて第1固定層111bから第2固定層115bに電流パルスが流れる。さらに、電流パルスは、第2磁気メモリ素子101bの第2固定層115bから第1磁気メモリ素子101aの第2固定層115aに流れる。第1磁気メモリ素子101aにおいて第2固定層115aから第1固定層111aに電流パルスが流れる。
【0075】
第1読み出し時には、第1磁気メモリ素子101aにおいて、自由層113aの磁化方向が全て下方向を向くまでパルス電源301が電流パルスを供給する。つまり、自由層113aでは、磁壁が徐々に上側に移動していくとともに、自由層113bでは磁壁が下側に移動していく。そして、第1磁気メモリ素子101aにおいて、磁壁が第2非磁性層114aまで移動して、磁化方向が全て下向きとなると読み出しが完了する。
【0076】
読み出し開始時と、読み出し完了時とを比較すると、自由層113aと自由層113bとで磁化の状態が入れ替わる。つまり、
図15に示す記録時における自由層113aでの磁壁と、
図15に示す第1読み出し完了時における自由層113bでの磁壁は、同じパルス数での位置に対応している。これにより、自由層113aに記録されていた情報が、自由層113bに転送される。
【0077】
上記のように、自由層113aが下向きの磁化を有するときの抵抗値Rdownと上向きの磁化を有するときの抵抗値RUPが異なるため、第1磁気メモリ素子101aの磁化方向が下向きとなったことを検出することができる。すなわち,R1Pの抵抗値とR2Pの抵抗値が異なっている。そして,上向きの磁化を有する自由層113の抵抗値RUPと下向きの磁化を有する自由層113の抵抗値Rdownが異なることになる。その結果,コントローラ102は磁気メモリ素子101に流れる電流の大きさにより,磁気メモリ素子101が上向きの磁化,下向きの磁化いずれの状態であるかを検出することができる。
【0078】
そして、磁気メモリ装置1000は、自由層113aの磁化方向が全て下向きとなるまでに加えたパルス数をカウントする。そして、磁気メモリ装置100は、フルスケールのパルス数から、加えたパルス数を引くことで、アナログ値(もしくは多値データ)を再生することができる。
【0079】
例えば、フルスケールのパルス数が256パルスとする。第1読み出し時において、第1磁気メモリ素子101aの自由層113aの磁化方向を下向きにするまでに加えたパルス数を100パルスとする。この場合、磁気メモリ装置1000に書き込まれていたデータ値は、156(=256-100)となる。
【0080】
(第2読み出し動作)
図17に示す第2読み出し時では、パルス電源301の出力301bが、スイッチ302を介して、第2磁気メモリ素子101bの第1固定層111bに接続されている。そして、パルス電源301が第1磁気メモリ素子101aの第1固定層111aに電流パルスを出力する。つまり、パルス電源301の出力301aから電流パルスが供給される。
図17に示す第2読み出し時と、
図16に示す第1読み出し時では、スイッチ302の接続が同じで、電流方向が反対となっている。
【0081】
第2読み出し時には、第2磁気メモリ素子101bにおいて、自由層113bの磁化方向が全て下方向を向くまでパルス電源301が電流パルスを供給する。つまり、自由層113bでは、磁壁が徐々に上側に移動していくとともに、自由層113aでは磁壁が下側に移動していく。そして、第2磁気メモリ素子101bにおいて、自由層113bの磁壁が第1非磁性層112bまで移動して、磁化方向が全て下向きとなると読み出しが完了する。
【0082】
読み出し開始時と、読み出し完了時とを比較すると、自由層113aと自由層113bとで磁化の状態が入れ替わる。つまり、
図15に示す記録時における状態と
図17に示す第2読み出し完了時における状態は同じとなっている、これにより、自由層113bに記録されていた情報が、自由層113aに転送される。
【0083】
上記のように、自由層113bが下向きの磁化を有するときの抵抗値Rdownと上向きの磁化を有するときの抵抗値RUPが異なるため、第2磁気メモリ素子101bの磁化方向が下向きとなったことを検出することができる。そして、磁気メモリ装置1000は、自由層113bの磁化方向が下向きとなるまでに加えたパルス数をカウントする。そして、磁気メモリ装置100は、フルスケールのパルス数から、加えたパルス数を引くことで、アナログ値(もしくは多値データ)を再生することができる。
【0084】
そして、
図16に示す第1読み出しと
図17に示す第2読み出しを交互に行うことで、データ読み出しを繰り返し行うことができる。つまり、第1読み出し時には、第1磁気メモリ素子101aに記録されたアナログ値(もしくは多値データ)が、第2磁気メモリ素子101bに転送される。第2読み出し時には、第2磁気メモリ素子101bに記録されたアナログ値(もしくは多値データ)が、第1磁気メモリ素子101aに転送される。このようにすることで、データロス無く、データを繰り返し読み出すことができる。よって、高速読み出し可能で不揮発なメモリ装置を実現することができる。また、スイッチ302の接続切替と、パルス電源301の電流方向の切替で、初期化、書き込み、読み出しを制御することができる。よって、簡素な構成で多値データを読み出すことができる。
【0085】
第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bの磁化全体が反転するフルスケール駆動パルス数(最大パルス数:例えば256パルス)を決めておく。第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bのフルスケール駆動パルス数を同じにする。第1磁気メモリ素子101aに記録情報に対応する駆動パルス数を印加することによりアナログ値(もしくは多値データ)を記録する。読み出しは記録された磁気メモリ素子の磁化が全て反転するまで駆動パルス(電流パルス)を加える。フルスケール駆動パルスから加えたパルス数を引くことによりアナログ値(もしくは多値データ)が再生される。したがって、記録状態(アナログ状態)をデジタル(パルス数)に変換でき、SN比が大きいアナログメモリ素子が実現できる。
【0086】
本実施形態によれば、簡素な構成でアナログ値(もしくは多値データ)のデータが読み出し可能な磁気メモリ装置1000を実現することができる。磁気メモリ装置1000は、アナログCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のような製造偏差によるトランジスタの特性ばらつきなどは発生しない。さらに、磁気メモリ装置1000は、アスピン流磁化反転素子による反転制御のような複雑な構造を必要とせず、駆動バルスの制御のみで情報の消去、記録、読み出しが出来る。また、磁気メモリ装置1000は、各磁気メモリ素子が垂直方向(Z方向)に沿って形成されているため、V-NANDの製造技術を用いることで高集積化が容易である。よって、小型で大容量の不揮発メモリを実現することができる。
【0087】
以下、磁気メモリ装置1000の動作方法について、説明する。
図18は、磁気メモリ装置1000の動作方法を示すフローチャートである。
【0088】
まず、磁気メモリ装置1000が情報の記録か読み出しであるかを判定する(S101)。情報の記録である場合(S101の記録)、第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bが共に初期化されているか否かが判定される(S102)。
【0089】
第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bが初期化されていない場合(S102のNO)、第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bを初期化する(S103)。ここでは、
図14で示したように、フルスケールの2倍のパルス数の電流パルスを第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bに印加する。よって、第1磁気メモリ素子101aの磁化方向と第2磁気メモリ素子101bの磁化方向が反対向きになる。自由層113aの磁化方向が全て上向きとなり、自由層113bの磁化方向が全て下向きとなる。
【0090】
もちろん、初期化時の磁化方向は
図14に示す状態に限られるものではない。例えば、自由層113aの磁化方向が全て下向きとなり、自由層113bの磁化方向が全て上向きとなっていてもよい。この場合、書き込みと読み出し動作における電流パルスの方向を変えればよい。つまり、初期化により、自由層113aの磁化方向が全て同じ向きとなっており、かつ、自由層113bの磁化方向が自由層113aとは逆向きで全て同じ向きとすればよい。
【0091】
2つの第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bが初期化されている場合(S102のYES)、第1磁気メモリ素子101aに記録情報に対応するパルス数の電流パルスを印加する(S104)。これにより、フルスケール以下のアナログ値(もしくは多値)書き込みが完了する。これにより、自由層113aにおいて、磁壁が記録するアナログ値(もしくは多値)に応じた位置に移動する。
【0092】
一方、情報の読み出しである場合(S101の読み出し)、第2磁気メモリ素子101bの磁化方向が初期化後と同じ向きであるか否かを判定する(S111)。第2磁気メモリ素子101bの磁化方向が初期化後と同じ向きである場合(S111のYES)、第1磁気メモリ素子101aの磁化が全て反転するまで、駆動パルスを第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bに印加する(S112)。
図16に示した第1読み出し動作のように、第1磁気メモリ素子101aの情報が読み出され、第2磁気メモリ素子101bに記録情報が転送される。
【0093】
第2磁気メモリ素子101bの磁化方向が初期化後と同じ向きでない場合(S111のNO)、第2磁気メモリ素子101bの磁化が全て反転するまで、駆動パルスを第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bに印加する(S113)。
図17に示した第2読み出し動作のように、第2磁気メモリ素子101bの情報が読み出され、第1磁気メモリ素子101aに記録情報が転送される。
【0094】
図19は、変形例の構成を示す図である。実施例1では、パルス電源301と第1磁気メモリ素子101aの第1固定層111aとの間に、パルスカウンタ303が接続されている。パルスカウンタ303は、パルス電源301から出力された電流パルスのパルス数をカウントする。パルスカウンタ303がカウントとした電流パルスのカウント値に応じて、データの読み出しなどを行うことができる。よって、簡易な構成で、アナログ値(もしくは多値)のデータ書き込み及び読み出しが可能となる。
【0095】
個々の磁気メモリ装置100は、アナログニューロンの結合荷重や閾値の記憶素子、積算器として利用できることからニューラルネットワークやリザバー(Reservoir)コンピューティングモデルを構築できる。高集積のアナログメモリを実用化することにより、AI計算研究分野編成に貢献することができる。これにより、ニューラルネットワークの演算やリザバー計算モデルの演算を簡便かつ高速に行うことができる。
【0096】
実施例1
実施例1の構成について、
図20を用いて説明する。実施例1では、AI(Artificial Intelligence)モデルのニューラルネットワーク400に磁気メモリ装置1000を適用した例を模式的に示す図である。具体的には、ニューロン構造の結合荷重401の結合荷重値を磁気メモリ装置1000がそれぞれ保持する。
図19に示すパルスカウンタ303で書き込みと読み出しを制御する。
【0097】
積算器402は、前のレイヤーの出力に対して、結合荷重401の重みを掛けた積の総和を算出する。積算器402にも磁気メモリ装置1000を適用することができる。つまり、積算器402が算出した積和を磁気メモリ装置1000が記録する。さらに積算器402が求めた総和と比較される閾値を磁気メモリ装置1000が保持していてもよい。
【0098】
通常のニューラルネットワークの場合は、電圧レベルのLowまたはHighの2値のディジタルスパイクパルスでニューロン間の通信を行う。これに対して、本実施例では複数の磁気メモリ装置1000を集積化して用いることで、ニューロン間の通信を連続的なアナログ値アナログ値(もしくは多値)で通信することが可能となる。従って、アナログスパイキングニューラルネットワーク集積回路を構成できる。複数の磁気メモリ装置1000をアナログニューロンとして利用することで、多層のニューラルネットワークへの適用が可能である。これにより、ニューラルネットワークの演算を簡便かつ高速に行うことができる。
【0099】
結合荷重値や閾値を例えば256階調で表した場合、ディジタルメモリでは8ビットの幅の素子が必要とするが、本実施形態にかかる磁気メモリ装置1000を用いれば、1対の磁気メモリ素子101だけで記憶することができる。また、積算器402においても、各素子からの値をアナログ値(もしくは多値)としてそのままパルスカウントした値を磁気メモリ装置1000に保持することが可能である。
【0100】
結合荷重値は、初期値はランダムデータとして、予め準備したトレーニングパターンの理想的な出力値とニューラルネットワーク出力の誤差が小さくなるように結合荷重値(W1~Wn)をバックプロパゲーション等のアルゴリズムで学習する。そして、最適な結合荷重値を本実施形態にかかる磁気メモリ装置1000に保持する。トレーニング用の回路は、磁気メモリ装置1000を集積した回路上で構成してもよく、別のトレーニング専用回路を用いて、導出してもよい。バックプロパゲーション等のアルゴリズムがそのまま使用できる。
【0101】
また、1つの磁気メモリ素子101のフルスケールよりも大きい値を記録する場合、2以上の磁気メモリ素子101を直列に接続すれば良い。この構成について、
図21を用いて説明する。
【0102】
図21では、2つの磁気メモリ素子101a1、101a2を接続することで、第1磁気メモリ素子101aを構成している。磁気メモリ素子101a1の第1固定層111a1と磁気メモリ素子101a2の第2固定層115a2が接続されている。同様に、磁気メモリ素子101b1、101b2を接続することで、第2磁気メモリ素子101bを構成している。磁気メモリ素子101b1の第1固定層111b1と磁気メモリ素子101b2の第2固定層115b2が接続されている。
【0103】
このようにすることで、磁気メモリ装置1000の記録容量を増やすことができる。例えば、磁気メモリ素子101a1、101a2のフルスケールが256である場合、第1磁気メモリ素子101aのフルスケールは512となる。このように、第1磁気メモリ素子101aが複数の磁気メモリ素子で構成することで記録できる。
図21では、第1磁気メモリ素子101a、及び第2磁気メモリ素子101bのそれぞれにおいて、2つのメモリ素子が直列に接続されているが、3以上のメモリ素子が直列に接続されていてもよい。
【0104】
素子構成が同じ複数の磁気メモリ素子を直列接続することで、記録可能な値を大きくすることができる。同じ素子構成の磁気メモリ素子を接続するのみでよいため、簡易な構成とすることができる。また、同じ素子構成で良いため、製造ばらつきを抑制することが可能である。例えば、積算器402の階調が第1磁気メモリ素子101a、第2磁気メモリ素子101bのフルスケールを越える場合、2以上の磁気メモリ素子101を直列に接続すれば良い。
【0105】
実施例2
磁気メモリ装置1000は、リザバー計算モデルに適用可能である。
図22に、磁気メモリ装置1000をリザバー計算モデル500に適用した例を示す。入力層501のノード511、リザバー502内のノード512、出力層503のノード513の一部又は全てを磁気メモリ装置1000で構成することができる。
【0106】
上記の磁気メモリ装置1000がリザバー計算モデル500の重みを保持している。重みの計算に関しては、実施例1のニューロン構造で示したバックプロパゲーション等のアルゴリズムがそのまま使用できる。重みWin、Wres、Woutに関しても、予め準備したトレーニングパターンの(理想的な)出力値とリザバー計算モデル出力の誤差が小さくなるようにバックプロパゲーション等のアルゴリズムにより求める。そして、それぞれの値を磁気メモリ装置1000に保持する。これにより、リザザー計算モデルの演算を簡便かつ高速に行うことができる。
【0107】
アナログスパイキングニューラルネットワーク集積回路をリザバーとして用いることで、STT-MRAM(Spin Transfer Torque Magnetic Random Access Memory))やSTO(spin-torque oscillator)を用いたリザバー計算より、高集積で精度の高いアナログ値(もしくは多値)を用いた高速な計算が可能となる。磁気メモリ装置1000はAD変換器やDA変換器としても用いることができる。
【0108】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0109】
100 磁気メモリ装置
101 磁気メモリ素子
101a 第1磁気メモリ素子
101b 第2磁気メモリ素子
102 コントローラ
111 第1固定層
112 第1非磁性層
113 自由層
114 第2非磁性層
115 第2固定層
301 パルス電源
302 スイッチ
303 パルスカウンタ
1000 磁気メモリ装置