(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】水濾過方法及び水濾過システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20230101AFI20241219BHJP
B01D 29/01 20060101ALI20241219BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20241219BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20241219BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20241219BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20241219BHJP
【FI】
C02F1/50 531C
C02F1/50 520B
C02F1/50 540B
C02F1/50 550C
C02F1/50 550H
B01D29/04 530A
B01D29/08 540A
B01D29/10 530A
B01D21/01 101Z
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2022141848
(22)【出願日】2022-09-07
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2022083704
(32)【優先日】2022-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】315018554
【氏名又は名称】株式会社スリーエス
(73)【特許権者】
【識別番号】522203042
【氏名又は名称】株式会社NOTIS Lab.
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 邦善
(72)【発明者】
【氏名】森田 繁吉
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-044993(JP,A)
【文献】国際公開第86/007048(WO,A1)
【文献】特開2009-072747(JP,A)
【文献】特開2013-017964(JP,A)
【文献】特開2016-123929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/50-1/54
B01D21/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非飲料水を供給する工程と、
岩石から抽出して得られた硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムを含む岩石抽出液を、前記非飲料水に供給する工程と、
前記岩石抽出液が付加されたことにより前記非飲料水中に凝集された凝集物を、所定時間循環させて濾過し、準飲料水に変換する工程と、
循環されて濾過された前記準飲料水にファインバブルを供給する工程と、
前記ファインバブルが供給された前記準飲料水を、
ろ過精度(濾過粒度)0.5-0.2μmのフィルターで濾過する工程と、
を備える水濾過方法。
【請求項2】
前記岩石抽出液は、前記硫黄、前記鉄、前記アルミニウム、前記マグネシウム及び前記カリウムのそれぞれの濃度が、66,000-100,000mg/L、10,000--16,000mg/L、3,300-6,200mg/L、1,900-4,800mg/L、及び2,000-2,900mg/Lであり、
前記非飲料水に付加する工程は、前記非飲料水に対して0.01
体積%から0.02
体積%の割合で前記岩石抽出液を供給する、請求項1に記載の水濾過方法。
【請求項3】
前記硫黄、前記鉄、前記アルミニウム、前記マグネシウム及び前記カリウムの質量比率が、約32:5:2:1:1である請求項1又は請求項2に記載の水濾過方法。
【請求項4】
非飲料水に含まれるゴミを濾過する第1フィルターと、
前記濾過された非飲料水に、岩石から抽出して得られた硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムを含む岩石抽出液を供給する供給するミネラル供給装置と、
前記岩石抽出液が供給された非飲料水を貯める一次タンクと、
前記岩石抽出液が付加されたことにより前記非飲料水中に凝集された凝集物を濾過し、準飲料水に変換する第2フィルターと、
前記準飲料水にファインバブルを供給するバブル供給装置と、
前記ファインバブルが供給された前記準飲料水を、
ろ過精度(濾過粒度)0.5―0.2μmのメッシュで濾過し、
飲料水に変換する第3フィルターと、
を備える水濾過システム。
【請求項5】
前記一次タンクと前記第2フィルターとの間で前記非飲料水を所定時間循環させ、準飲料水に変換する流路と、
前記準飲料水を貯める二次タンクと、
を備える請求項4に記載の水濾過システム。
【請求項6】
前記岩石抽出液は、前記硫黄、前記鉄、前記アルミニウム、前記マグネシウム及び前記カリウムのそれぞれの濃度が、66,000-100,000mg/L、10,000--16,000mg/L、3,300-6,200mg/L、1,900-4,800mg/L、及び2,000-2,900mg/Lであり、
前記ミネラル供給装置は、前記非飲料水に対して0.01
体積%から0.02
体積%の割合で前記岩石抽出液を供給する、請求項4又は請求項5に記載の水濾過システム。
【請求項7】
前記一次タンクは、前記非飲料水を貯める上限を検出する上限センサと、前記非飲料水を貯める下限を検出する下限センサとを含み、
前記上限センサの上限検出に基づいて、前記濾過された非飲料水の供給を停止し、
前記下限センサの下限検出に基づいて、前記濾過された非飲料水の供給を開始する、
請求項4又は請求項5に記載の水濾過システム。
【請求項8】
前記二次タンクは、前記準飲料水を貯める上限を検出する上限センサと、前記準飲料水を貯める下限を検出する下限センサとを含み、
前記上限センサの上限検出に基づいて、前記準飲料水の供給を停止し、
前記下限センサの下限検出に基づいて、
前記飲料水の供給を停止する、
請求項5に記載の水濾過システム。
【請求項9】
前記流路は、二方分岐部と該二方分岐部の一方から前記一次タンクに接続する第1流路と前記二方分岐部の他方から前記二次タンクに接続する第2流路を含み、
前記第1流路と前記第2流路とにそれぞれ開閉バルブが配置されている、
請求項5に記載の水濾過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水もしくは泥水を濾過してする水濾過方法及び水濾過システムに関する。特に災害時に雨水もしくは泥水を飲料水等に使用できるように雨水等に混入している微生物等を殺菌して、飲料水を確保する水濾過方法及び水濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水に混入している微生物等を殺菌するために、塩素等を利用する方法が知られている。また、塩素を使用しても殺菌できない、耐塩素性病原微生物をUF膜を利用して除去する水濾過システムも存在する。特許文献1は、災害時に電源の確保をして、飲料水を流出する水濾過システムが提案されている。
【0003】
しかし、特許文献1に開示された水濾過システムは、塩素を投与して殺菌したり、複数の沈殿槽を設けたりして、構造が複雑で、災害用の水濾過システムには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、雨水等の非飲料水に存在する細菌等に対してミネラルを添加して細菌等を除菌するとともに、有機物を凝集物として濾過することである。さらにファインバブルでさらに微粒子等を凝集化させてその凝集物を濾過して、飲料水を効率的に供給することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の水濾過方法は、非飲料水を供給する工程と、岩石から抽出して得られた硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムを含む岩石抽出液を、非飲料水に供給する工程と、岩石抽出液が付加されたことにより非飲料水中に凝集された凝集物を、所定時間循環させて濾過し、準飲料水に変換する工程と、循環されて濾過された準飲料水にファインバブルを供給する工程と、ファインバブルが供給された準飲料水を、0.5-0.2μmのフィルターで濾過する工程と、を備える。
【0007】
非飲料水に付加する工程は、非飲料水に対して0.05%から0.5%の割合で岩石抽出液を供給することが好ましい。
硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムの質量比率が、約32:5:2:1:1であることが好ましい。
【0008】
本実施形態の水濾過システムは、非飲料水に含まれるゴミを濾過する第1フィルターと、濾過された非飲料水に、岩石から抽出して得られた硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムを含む岩石抽出液を供給する供給するミネラル供給装置と、岩石抽出液が供給された非飲料水を貯める一次タンクと、岩石抽出液が付加されたことにより非飲料水中に凝集された凝集物を濾過する第2フィルターと、二次タンクからの準飲料水にファインバブルを供給するバブル供給装置と、ファインバブルが供給された準飲料水を、0.5-0.2μmのメッシュで濾過し、飲料水に変換する第3フィルターと、を備える。
【0009】
さらに水濾過システムは、一次タンクと第2フィルターとの間で非飲料水を所定時間循環させ準飲料水に変換する流路と、準飲料水を貯める二次タンクと、を備えてもよい。また水濾過システムは、ミネラル供給装置の入口又は出口に配置され、濾過された非飲料水の流量を計る流量計を備えてもよく、ミネラル供給装置は、非飲料水に対して0.05%から0.5%の割合で岩石抽出液を供給することが好ましい。
【0010】
水濾過システムの一次タンクは、非飲料水を貯める上限を検出する上限センサと、非飲料水を貯める下限を検出する下限センサとを含み、上限センサの上限検出に基づいて、濾過された非飲料水の供給を停止し、下限センサの下限検出に基づいて濾過された非飲料水の供給を開始することが好ましい。
【0011】
水濾過システムの二次タンクは、準飲料水を貯める上限を検出する上限センサと、準飲料水を貯める下限を検出する下限センサとを含み、上限センサの上限検出に基づいて、準飲料水の供給を停止し、下限センサの下限検出に基づいて飲料栖の供給を停止することが好ましい。
【0012】
水濾過システムの流路は、二方分岐部と該二方分岐部の一方から一次タンクに接続する第1流路と二方分岐部の他方から二次タンクに接続する第2流路を含み、第1流路と第2流路とにそれぞれ開閉バルブが配置されている構成が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、雨水、湖水、泥水等を飲料水にして供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る水濾過システムの一例を示す概念図である。
【
図2】水濾過システムの水濾過方法を示すフローチャートである。
【
図3】水濾過システムの水濾過方法を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る水濾過システムの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る水濾過システムについて説明する。なお、説明に用いる
図1及び
図4は発明を理解できる程度に概略的に示してあり、大きさ等が誇張されている箇所もある。
【0016】
<全体構成1>
図1は、第1実施形態に係る水濾過システム50を示す概念図である。
図1に示されていないが、特に災害時に、川水、湖水、雨水もしくは泥水等(以下、非飲料水)を飲料水として濾過する水濾過システム50である。後述するポンプ及び制御装置等は、不図示の太陽光発電もしくは風力発電で得られた電力で稼働し、又は太陽光発電もしくは風力発電で得られた電力を蓄えたリチウムイオンバッテリBTからの電力で駆動する構成である。しかしながら、これら太陽光発電等又はバッテリBTの電力ではなく、電源線をAC100V又は200Vに接続して、水濾過システム50が稼働するようにしてもよい。
【0017】
<岩石抽出液の供給工程1>
非飲料水タンク10は、湖水もしくは雨水等を貯めるタンクである。例えば川水をポンプP1で直接吸水できる環境であれば、非飲料水タンク10は設けられなくても良い。非飲料水タンク10の底には配管C1が接続されており、その配管C1には、配管C1を開閉する電磁バルブV1及び非飲料水を下流に送るポンプP1が接続されている。さらに配管C1にはゴミフィルターFL1が配置されている。
【0018】
ゴミフィルターFL1は、ポンプP1で河川から直接、又は非飲料水タンク10からの非飲料水に含まれている、ゴミ(虫、落ち葉、プラスチックゴミ等)を濾過するものである。例えば、ゴミフィルターFL1は100-200メッシュ(ろ過精度もしくは濾過粒度)約200μmm-70μm)のものが使用されることが好ましい。具体的には、市販のディスクフィルター又はスクリーンフィルター(不純物を取り除く灌水フィルター)が使用されることが好ましい。ゴミフィルターFL1フィルターは、使用頻度に応じて定期的に交換もしくは清掃されることが好ましい。第1実施形態では、1つのゴミフィルターFL1が配置されているが、上流側に100メッシュ(ろ過精度約200μm)のゴミフィルターを配置し、その下流側に200メッシュ(ろ過精度70μm)のゴミフィルターを配置してもよい。
【0019】
配管C1にはゴミフィルターFL1の下流にミネラル供給装置MDIが配置されている。ミネラル供給装置MDIは、ゴミが取り除かれた非飲料水に、以下の説明される岩石抽出液(ミネラル成分を含む)を供給するものである。第1実施形態のミネラル供給装置MDIは、不図示の岩石抽出液用を貯蔵するタンクを有し、流量計FMで計測された流量に基づいて不図示のバルブを開いて、岩石抽出液を非飲料水に供給する。
【0020】
具体的には、非飲料水に岩石抽出液が供給されることで、岩石抽出液のミネラルが非飲料水に含まれる遊離塩素、有機塩素化合物、その他の有機物を凝集し凝集物を生成するとともに、大腸菌もしくはサルモネラ菌等の細菌を殺菌する。岩石抽出液の供給により生成される凝集物は、粒径が2μm-30μm程度である。
【0021】
第1実施形態では、ミネラル供給装置MDIは、流量計FMで計測された流量に基づいて、バルブを開いて、岩石抽出液を非飲料水に供給する方式であったが、他の方式、例えば、ベンチュリー方式もしくは流量比例式混入器を用いても良い。ベンチュリー方式の場合には、配管C1に断面積の縮小領域と拡大領域を有するベンチュリー管を配置し、その縮小領域の上流側に、岩石抽出液のノズルを有することによって、岩石抽出液が負圧でノズルを介して非飲料水に供給される。また流量比例式混入器としては、株式会社サンポールのドサトロン(商標名)を用いても良い。
【0022】
<<岩石抽出液>>
岩石抽出液は、岩石を粉砕し、この岩石の粉砕物を無機酸で溶かし、100~150℃で8~12時間熱処理した後、クエン酸緩衝液などによりpHを調整し、ろ過により沈殿物を除去することにより得ることができる。岩石抽出液は、岩石から抽出されるため、微量元素の抽出元としては一次的であり、海洋深層水または動植物などの生物由来の抽出元に比して、極めて容易かつ多種多量な微量元素をより確実に抽出できる。また、クエン酸緩衝液により調整されることにより、元来、水に溶けにくい微量元素の集合体が水溶性になり、使用しやすくなる。さらに、無機酸の分量を増加させることにより熱処理の温度を高くすることができ、岩石に含まれる微量元素をより含有バランス通りにより確実かつ効率的に抽出することができる。
【0023】
岩石としては、緑泥石、緑簾石、緑閃石を主要構成物とする緑色岩、及び/又は石英斑岩あるいは花崗斑岩の1種である麦飯石が好適である。この緑色岩からは、硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、チタン、リン、ナトリウム、マンガン、カルシウム等の微量元素(ミネラル)が抽出される。麦飯石からは、ケイ素、アルミニウム、鉄、マグネしシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、リン、マンガン等の微量元素(ミネラル)が抽出される。また、緑色岩もしくは麦飯石の取れた場所、抽出方法や抽出条件等によって、岩石抽出液の微量元素は、料として少ないが表1に示されない他の微量元素も含んでいる。緑色岩、及び/又は麦飯石から抽出された岩石抽出液の微量元素は、表1に示す通りである。
【0024】
【表1】
緑色岩もしくは麦飯石の組み合わせや、取れた場所、抽出方法や抽出条件等によって含まれる各微量元素の量が変動する。
【0025】
本明細書において岩石抽出液は、5000倍から10000倍に希釈化するように非飲料水に供給される。つまり岩石抽出液が非飲料水に対して0.01体積%から0.02体積%の割合である。岩石抽出液のうち特に有効な微量元素は、硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムと考えられる。そして硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム及びカリウムの微量元素の質量比率(割合)は、約32:5:2:1:1である。さらに岩石抽出液は、硫黄、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、チタン、リン、ナトリウム、マンガン及びカルシウムを含むことが好ましいと考えられる。
【0026】
<<細菌に対する殺菌効果試験>>
検体である岩石抽出液(イオン化した希釈液)に試験菌液を接種後(以下「試験液」という。)、所定時間後に試験液中の生菌数を測定した。また,あらかじめ予備試験(中和条件の確認)を行い、岩石抽出液(イオン化した希釈液)の影響を受けずに生菌数を測定できる条件を確認した。
【0027】
試験菌液は、a.カンピロバクター、b.大腸菌、c.緑膿菌、d.サルモネラ菌、e.赤痢菌、f.黄色ブドウ球菌、g.化膿連鎖球菌、h.コレラ菌、i.腸炎ビブリオを使用した。以下の表2に詳細な試験条件の詳細を示す。
【表2】
【0028】
検体である岩石抽出液は125倍に精製水で希釈した。試験菌液a.からe.及びg.の対照は精製水であり、試験菌液f.及びh.の対照は生理食塩水であり、試験菌液i.の対照は3%塩化ナトリウム溶液である。
【0029】
試験結果
9種類の試験菌液は、検体(125倍に希釈した岩石抽出液)によって、時間経過とともに生菌数が劇的に減少した。一方、9種類の試験菌液は、対照では時間経過しても、生菌数がほぼ同じか多少減少しているに過ぎない。このため、実施形態の岩石抽出液の希釈物は、各種細菌に対して殺菌効果があると認められる。例えば、肺炎球菌、結核菌、ジフテリア菌又はレジオネラ菌等にも殺菌効果があると推測される。
【0030】
<岩石抽出液による凝縮物の濾過工程1>
岩石抽出液が供給された非飲料水は、一次タンク20に貯えられる。岩石抽出液が供給された非飲料水は、一次タンク20で充分に混ぜ合わされる。一次タンク内20内に撹拌機が設けられても良い。非飲料水が配管等で流れている状態(流水状態)では、岩石抽出液が凝集物を生成しにくいため、一次タンク20でゆっくりとした流速で岩石抽出液と非飲料水が混ぜ合わされる。
【0031】
一次タンク20は、タンク内に非飲料水がどれだけ貯えられているかを検出するため、上限を検出する上限センサusと下限を検出する下限センサlsを有している。上限センサ/下限センサの代わりに、一次タンク20内に貯えられている非飲料水を計量する計量センサを有していてもよい。
【0032】
一次タンク20の底には配管C2が接続されており、その配管C2には、非飲料水を下流に送るポンプP2が接続されている。さらに配管C2には凝集物フィルターFL2が配置されている。また凝集物フィルターFL2の下流には、二方分岐部D2が配置される。二方分岐部の一方は一次タンク20に接続される第1流路C2と、二方分岐部D2の他方から二次タンク30に接続する第2流路C3とが配置されている。第1流路C2には流路を開閉する電磁バルブV2が配置され、第2流路C3には流路を開閉する電磁バルブV3が配置されている。
【0033】
凝集物フィルターFL2は、一次タンク20に貯められた非飲料水に含まれている主に凝集物を濾過するものである。上述したように非飲料水に含まれる有機塩素化合物、その他の有機物等が、岩石抽出液のミネラル成分により凝集されて凝集物を生成する。つまり、一次タンク20に貯えられた非飲料水は凝集物を含んでいる。このため凝集物フィルターFL2は、例えば、1000-3500メッシュ(ろ過精度もしくは濾過粒度約40μm-2μm)のものが使用されることが好ましい。第1実施形態では、1つの凝集物フィルターFL2が配置されているが、上流側に1000メッシュ(ろ過精度約40μm)の凝集物フィルターを配置し、その下流側に3500メッシュ(ろ過精度2μm)の凝集物フィルターを配置してもよい。また、凝集物フィルターFL2は、濾材に砂(硅砂)を使用するサンドフィルターであってもよい。砂の粒径が100μmから300μmであれば、濾過粒度約40μm-2μmと同等になる。サンドフィルターは水を逆流させることで洗浄可能である。
【0034】
一次タンク20の非飲料水の凝集物を濾過する際には、コントローラCONは、ポンプP2を稼働させ、電磁バルブV2を開状態に、電磁バルブV3を閉状態にして、非飲料水を一次タンクから凝集物フィルターFL2へ何度も循環させる。循環させることで、岩石抽出液のミネラル成分と非飲料水が攪拌されて凝集物が生成されるとともに、小さな凝集物が大きな凝集物に成長させられる。そしてその凝集物が凝集物フィルターFL2で濾過される。一次タンクの大きさ、配管C2を流れる流量、凝集物フィルターFL2の性能等によって変動するが、一次タンク20から凝集物フィルターFL2へ循環は、時間にして20分から1時間ほど実施することが好ましい。所定時間循環された非飲料水は、凝集物を含まない準飲料水に変換される。
【0035】
本明細書において、準飲料水とは、大腸菌等が殺菌された水であり、且つ不要な有機物等による凝集物が取り除かれた水である。このため人が飲料水として飲んでよい水である。本明細書においては、後述するファインバブル発生装置FBをつかって、さらに液中に含まれる物質・微粒子を凝集させて凝集物を取り除いている。このため、ファインバブル発生装置FBを通過する前の水と通過した後の水とを区別するため、ファインバブル発生装置FBを通過する前の水を準飲料水と、ファインバブル発生装置FBを通過した後の水を飲料水と呼んでいる。
【0036】
<ファインバブルによる凝縮物の濾過工程1>
一次タンク20から凝集物フィルターFL2への所定時間の循環で生成された準飲料水は、二次タンク30に送られ二次タンク30で貯められる。二次タンク30に準飲料水を貯めるため、電磁バルブV2が弊状態になり、電磁バルブV3が開状態になった状態でポンプP2が稼働する。
【0037】
二次タンク30は、タンク内に非飲料水がどれだけ貯えられているかを検出するため、上限を検出する上限センサusと下限を検出する下限センサlsを有している。上限センサ/下限センサの代わりに、二次タンク30内に貯えられている非飲料水を計量する計量センサを有していてもよい。
【0038】
二次タンク30の底には配管C4が接続されており、その配管C4には、準飲料水を下流に送るポンプP3が接続されている。さらに配管C4にはファインバブル発生装置FBが配置され、その下流に凝集物フィルターFL3が配置されている。
【0039】
ファインバブル発生装置FBは、例えばエジェクター式であれば、ブロアから送気管を介して空気を送気して準飲料水と空気とをミキシングして空気を混合溶解させてファインバブルを生成する。ファインバブルは、平均径1000nm以下であり、200-700nm、好ましくは、400から500nmの大きさに形成した超微細気泡である。ファインバブル発生装置FBは、スタティックミキサーを有するが、その種類は多種多様である。このスタティックミキサーは空気と準飲料水とを攪拌してファインバブルを準飲料水に溶け込ませることができる。
【0040】
ファインバブル発生装置FBは、ベンチュリー式であってもよい。断面積の縮小領域及び拡大領域を有するベンチュリー管を配置し、ポンプP3によって、配管C4からベンチュリー管へ準飲料水が供給される。ベンチュリー管へ供給された準飲料水が、縮小領域を通過すると、急激な減圧によって、準飲料水に溶存している気体が膨張した気泡が生じ、続いて生じる急激な圧力回復によって気泡は微細に粉砕されてファインバブルが発生する。また特に説明しないが、ファインバブル発生装置FBは、旋回液流式、加圧溶解式、又はスタティックミキサー式であってもよい。
【0041】
ファインバブルは、準飲料水に含まれる物質・微粒子に対して凝集作用を発揮する。すでに、岩石抽出液による凝縮物の濾過工程で、有機物等の凝集物が取り除かれている準飲料水であるが、凝集物フィルターFL2で取り切れなかった濾過粒度2μm以下の凝集物もしくは微粒子を、凝集させ凝集物を生成する。
【0042】
凝集物フィルターFL3は、ファインバブルで生成された凝集物を濾過するものである。準飲料水は、人が飲料水として飲んでよい水であるが、凝集物フィルターFL3は、さらに微細な凝集物または微粒子を取り除くことができる。凝集物フィルターFL3は、例えば、ポリプロピレン繊維からなる糸巻式カートリッジフィルターであり、ろ過精度もしくは濾過粒度約0.5μm-0.2μmである。第1実施形態では、1つの凝集物フィルターFL3が配置されているが、上流側にろ過精度約0.5μmのカートリッジフィルターを配置し、その下流側にろ過精度0.2μmのカートリッジフィルターを配置してもよい。また、凝集物フィルターFL3は、メンブレンフィルターその他のフィルターであってもよい。また、1つの凝集物フィルターFL3の下流に、活性炭フィルターを配置してもよい。
【0043】
凝集物フィルターFL3を通過した飲料水は、ろ過精度もしくは濾過粒度約0.5μm-0.2μmより大きな凝集物もしくは微粒子を含んでおらず、飲料用又は料理用に使用することができる。特に、第1実施形態の水濾過システムは、災害時において、雨水、湖水、川水等の非飲料水から飲料水を生成することができる。
【0044】
<水濾過方法>
次に、
図2及び
図3のフローチャートを使って、水濾過システムの水濾過方法を説明する。
図1に示されているように、コントローラCONは、各ポンプ(P1、P2、P3)、各センサ(us、ls)、各バルブ(V1,V2,V3)、ミネラル供給装置MDI、ファインバブル発生装置FBに信号の送受信ができるように接続されている。またコントローラCON、各ポンプ等、バルブ等には、リチウムイオンバッテリBTから電力が供給され、それらは駆動される。またコントローラCONは、不図示の端末から、飲料水の給水/停止要求を受信できるように構成されている。
【0045】
図2に示されるように、飲料水の給水要求をコントローラCONが受信する(S20)と、二次タンク30に供給する準飲料水があるか否かを判断する。つまり、二次タンク30の下限センサlsが下限を検知した信号がコントローラCONに送信されているかを判断する。下限を検出した信号が送られていなければ(S21 NO)、ステップS34に進み、下限を検出した信号が送られていれば(S21 YES)、ステップS22に進む。
【0046】
一次タンク20の下限センサlsが下限を検知しているか否かが判断される。下限が検知されている場合、その信号がコントローラCONに送信され(S22 YES)、ステップS23に進む。下限が検知されていない場合、その信号がコントローラCONに送信され(S22 NO)、ステップS27に進む。
【0047】
コントローラCONは、バルブV1にバルブV1を開く信号を送信するとともに、ポンプP1の稼働信号を送信する(S23)。すると、非飲料水タンク10から非飲料水が配管C1を介して一次タンク20側に送られる。その際に、非飲料水に含まれるゴミ等はゴミフィルターFL1で濾過される。
【0048】
配管C1に非飲料水が流れることで、流量計FMは非飲料水の流量を計測して、その値をコントローラCONに送信し、コントローラCONは、ミネラル供給装置MDIに岩石抽出液を供給するように指令する(S24)。この供給の指令は、岩石抽出液が非飲料水に対して5000倍から10000倍に希釈化するような指令である。つまり岩石抽出液が非飲料水に対して0.01体積%から0.02体積%の割合である。
【0049】
一次タンク20には、徐々に岩石抽出液が供給された非飲料水が貯められていく。そして、一次タンク20の上限センサusが上限を検知していなかったら(S25 NO)、そのまま非飲料水の供給が続き、一次タンク20の上限センサusが上限を検知したら(S25 YES)、その信号がコントローラCONに送信され、コントローラCONは、バルブV1にバルブV1を閉じる信号を送信するとともに、ポンプP1の停止信号を送信する(S26)。
【0050】
次に、岩石抽出液による凝縮物の濾過工程に移る。コントローラCONは、バルブV2を開く信号及びバルブV3を閉じる信号を送信するとともに、ポンプP2の稼働信号を送信する(S27)。一次タンク20に貯められた非飲料水は凝集物を含んでいるが、凝集物フィルターFL2を循環することで、徐々に準飲料水に変換される(S28)。循環時間は、一次タンク20の容量、ポンプP2の能力などによって変動する。例えば循環時間は20分から1時間程度である。コントローラCONには、循環時間が予め設定されている。
【0051】
所定の循環時間が経過していなければ(S29 NO)、非飲料水は循環させられ続け、所定の循環時間が経過すれば(S29 YES)、コントローラCONは、バルブV2を閉める信号を送信するとともに、ポンプP2の停止信号を送信する(S30)。
【0052】
次に、ファインバブルによる凝縮物の濾過工程に移る。
まず、コントローラCONはバルブV3を開く信号を送信するとともに、ポンプP2を稼働する(S31)。これにより準飲料水が二次タンク30に貯められていく。そして二次タンクの上限センサusが上限を検知するまで(S32 NO)、準飲料水が二次タンク30に貯められていく。二次タンクの上限センサusが上限を検知すると(S32 YES)、その上限信号がコントローラCONに送信される。
【0053】
コントローラCONは、準飲料水が二次タンク30に上限まで貯められたため、バルブV3を閉める信号を送信するとともに、ポンプP2の停止信号を送信する(S33)。
【0054】
次にコントローラCONは、ファインバブルによる凝縮物を濾過するため、バブル発生装置FB及びポンプP3を稼働させる信号を送信する(S34)。これにより、凝集物フィルターFL3はで凝集物が濾過された飲料水が供給されることになる。二次タンク30の下限センサlsが下限を検出していなければ(S35 NO)、ステップS34に進み、二次タンク30の下限センサlsが下限を検出した信号が送られていれば(S35 YES)、ステップS36に進む。
【0055】
コントローラCONは、二次タンク30内の準飲料水が下限まで減ったので、バブル発生装置FB及びポンプP3を停止させる信号を送信する(S36)。また二次タンク30の下限センサlsが下限を検出していない状態でも、飲料水の停止要求をコントローラCONが受信した場合(S37)には、バブル発生装置FB及びポンプP3を停止させる信号を送信する(S36)。
【0056】
<全体構成2>
図4は、第2実施形態に係る水濾過システム150を示す概念図である。第1実施形態と同じ構成については同じ符号が付してある。同じ構成については詳しい説明を省略している。
図4に示されていないが、特に災害時に、川水、湖水、雨水もしくは泥水等(以下、非飲料水)を飲料水として濾過する水濾過システム150である。後述するポンプ及び制御装置等は、不図示の太陽光発電もしくは風力発電等で得られた電力で稼働し、又は太陽光発電もしくは風力発電で得られた電力を蓄えたリチウムイオンバッテリBTからの電力で駆動する構成である。
【0057】
<岩石抽出液の供給工程2>
非飲料水タンク10は、第1実施形態の非飲料水タンクと同じく、湖水もしくは雨水等を貯めるタンクである。例えば川水をポンプP1で直接吸水できる環境であれば、非飲料水タンク10は設けられなくても良い。非飲料水タンク10の底には配管C1が接続されており、その配管C1には、配管C1を開閉する電磁バルブV1及び非飲料水を下流に送るポンプP1が接続されている。第2実施形態では、ポンプP1で非飲料水タンク10から凝集物フィルターFL3までに対して圧力をかける。さらに配管C1にはゴミフィルターFL1が配置されている。第2実施形態のゴミフィルターFL1も、第1実施形態のゴミフィルターFL1と同じである。
【0058】
配管C1にはゴミフィルターFL1の下流にミネラル供給装置MDI、例えば流量比例式混入器が配置されている。第2実施形態のミネラル供給装置MDIは、不図示の岩石抽出液用を貯蔵するタンクを有し、流量に基づいて岩石抽出液を非飲料水に供給する。
【0059】
<岩石抽出液による凝縮物の濾過工程2>
岩石抽出液が供給された非飲料水は、一次タンク120に貯えられる。岩石抽出液が供給された非飲料水は、一次タンク20で充分に混ぜ合わされる。一次タンク120でゆっくりとした流速で岩石抽出液と非飲料水が混ぜ合わされる。
【0060】
第2実施形態の一次タンク120は、第1実施形態の一次タンク20とは異なり、上限センサus及び下限センサlsは設けられていない。また第2実施形態の一次タンク120は供給された水量と排出する水量とがほぼ同じになる構造であり、一次タンク120内で所定時間、非飲料水が貯まった状態で循環する機能を有している。
【0061】
凝集物フィルターFL12は、一次タンク120で凝集された凝集物を濾過するものである。凝集物フィルターFL12は、例えば、1000―3500メッシュ(濾過粒度約40μm-2μm)のものが使用されることが好ましい。凝集物フィルターFL12を通過した水は、凝集物を含まない準飲料水に変換される。第1実施形態では凝集物フィルターFL2は、例えばサンドフィルターを例に挙げているが、第2実施形態の凝集物フィルターFL12では、例えば中空糸膜フィルタを使用している。第2実施形態の凝集物フィルターFL12には、凝集物の排出用のバルブV12と準飲料水を下流に流すバルブV13が配置されている。通常は、バルブV12が閉状態でバルブV13が開状態である。
【0062】
第2実施形態の中空糸膜フィルタFL12に凝集物が蓄積する時期になると、コントローラCONは、バルブV12を開状態にし,バルブV13を閉状態にして、非飲料水と共に凝集物を排出容器D12に排出する。
【0063】
<ファインバブルによる凝縮物の濾過工程2>
一次タンク120から凝集物フィルターFL2を通過した準飲料水は、さらに配管C4にはファインバブル発生装置FBが配置され、その下流に凝集物フィルターFL3が配置されている。ファインバブル発生装置FBは、第1実施形態と同じである。
【0064】
凝集物フィルターFL3は、ファインバブルで生成された凝集物を濾過するものである。凝集物フィルターFL3は、さらに微細な凝集物または微粒子を取り除くことができる。また、1つの凝集物フィルターFL3の下流に、活性炭フィルターを配置してもよい。凝集物フィルターFL3を通過した飲料水は、濾過粒度約0.5μm-0.2μmより大きな凝集物もしくは微粒子を含んでおらず、飲料用又は料理用に使用することができる。
【0065】
本明細書では、主に災害用の水濾過システム及び水濾過方法について説明したが、災害用に特化しているのではなく、例えばホテルの調理場用に雨水を利用した水濾過システムを配置してもよいし、マンション・戸建ての飲料水用に、雨水を利用した水濾過システムを配置してもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 … 非飲料水タンク、 20,120 … 一次タンク、 30 … 二次タンク
50,150 … 水濾過システム
BT … リチウムイオンバッテリ
CON … コントローラ
FB … ファインバブル発生装置
FL1 … ゴミフィルター(第1フィルター)、
FL2,FL12 … 凝縮物フィルター(第2フィルター)
FL3 … 凝縮物フィルター(第3フィルター)
FM … 流量計
MDI … ミネラル供給装置
P1,P2,P3… ポンプ
V1,V2,V3,V12,V13 … 電磁バルブ
us … 上限センサ、 ls … 下限センサ