(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】磁性微粒子検出システムおよび磁性微粒子の検知測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/10 20060101AFI20241226BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01R33/10
G01R33/02 K
(21)【出願番号】P 2024171491
(22)【出願日】2024-09-30
【審査請求日】2024-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】疋島 充
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-294664(JP,A)
【文献】特開2008-157786(JP,A)
【文献】特開2011-89894(JP,A)
【文献】特開2020-159871(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2024-0013129(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0034684(US,A1)
【文献】都筑 裕汰郎,小型高感度磁気センサnTメータの開発,第48回 日本磁気学会学術講演会(2024/9/24-27),24pB-4,日本,2024年09月10日,P.1-14,https://magnedesign.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/09/%EF%BC%91%EF%BC%89240924-MSJ-%E5%B0%8F%E5%9E%8B%E9%AB%98%E6%84%9F%E5%BA%A6%E7%A3%81%E6%B0%97%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5nT%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AE%E9%96%8B%E7%99%BA.pdf
【文献】疋島 充 ほか,磁気センサ nT meter による微小磁性粒子の検知,第48回 日本磁気学会学術講演会(2024/9/24-27),24pB-5,日本,2024年09月10日,p.1-10,https://magnedesign.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/09/%EF%BC%92%EF%BC%89240924-MSJ-%E7%A3%81%E6%B0%97%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%B5nTmeter%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%BE%AE%E5%B0%8F%E7%A3%81%E6%80%A7%E7%B2%92%E5%AD%90%E3%81%AE%E6%A4%9C%E5%87%BA
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01N 27/72
G01N 33/483
G01V 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料調整装置と測定用サンプルと微小磁界測定装置と磁界信号処理装置とからなる磁性微粒子検知システムにおいて、
前記試料調整装置は、非磁性の容器と、前記容器を固定する容器固定部と、前記容器の上部および底部に設置された試料調整部とを備えており、
前記容器は、円筒状またはすり鉢状の容器であって、前記容器の先端部は直径2mm以下にて底部の厚さは0.1mm以下よりなり、
前記試料調整部は、前記容器の上部にパウダーを挿入するパウダー挿入装置およびワックスを挿入するワックス挿入装置と、
前記容器の下部に前記パウダーに含まれる磁性微粒子に磁界を印加する磁界発生装置と磁界中の前記磁性微粒子を前記容器の底部に集積させるための振動発生装置とからなり、
前記測定用サンプルは、前記試料調整装置により調整されたサンプルにて前記容器の底部に集積され、前記微小磁界測定装置の測定対象物である磁性微粒子からなり、
前記微小磁界測定装置は、前記測定用サンプルの入っているパウダー容器と、前記パウダー容器を固定するパウダー容器固定部と、前記パウダー容器の下方に設置されたセンサ素子と、前記センサ素子と前記パウダー容器との位置調整を行なう位置調整部とを備えており、
前記センサ素子は、検出力1nT以下を有するnTメータよりなり、前記nTメータはnTメータ設置台に固定されており、
前記センサ素子の感磁体の大きさは、直径15μm以下、長さ2mm以下にて、しかも感磁体の先端は前記nTメータの先端部に配置されており、
前記位置調整部は、前記nTメータ設置台に固定されている前記nTメータの前記センサ素子と前記パウダー容器の底面との
平行度を調整する
平行度(傾き)調整機構と、前記センサ素子の位置をXY軸(センター)およびZ軸(距離)を調整する位置調整機構からなり、
前記磁界信号処理装置は、前記微小磁界測定装置により測定された磁気信号から磁性微粒子の大きさまたは/および含有量を計算するセンサ信号処理からなる、
ことを特徴とする磁性微粒子検知システム。
【請求項2】
パウダーに混入している磁性微粒子の検知測定方法において、
(1)第1ステップは、測定用サンプルの準備する工程からなり、
工程a)試料調整装置に
容器をセットし、
工程b)パウダーの母材から20mg以下のサンプルを採取して
前記容器に挿入し、
工程c)前記サンプルに磁界を印可するとともに超音波振動させて、前記磁性微粒子を前記容器の底部に集積し、
工程d)液状ワックスを前記容器に注入・固化して調整し、
工程e)調整した測定用サンプルの入っているパウダー容器を前記試料調整装置から取り出し、
(2)第2ステップは、前記測定用サンプルの微小磁界を検知・測定する工程からなり、
工程f)前記パウダー容器を磁界測定のためのパウダー容器固定部の固定具に固定し、
工程g)
平行度(傾き)調整機構により、前記パウダー容器の底面とnTメータの先端部のセンサ素子との
平行を出し、
工程h)位置調整機構により、前記センサ素子のXY軸(センター)は前記パウダー容器の中央に一致させ、
工程i)前記センサ素子のZ軸(距離)は、前記パウダー容器底面との距離を調整し、
工程j)前記nTメータにより、前記磁性微粒子の微小磁界を測定して測定信号を求め、
工程k)事前に作成した検量線を使って、前記パウダーに混入している前記磁性微粒子の大きさまたは/および含有量を検知・測定する、
ことを特徴とする検知測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年 食料品、電池素材において、磁性微粒子の混入・汚染が問題になっている。
これらの製品は、原料からパウダー製品に仕上げられ、その後所定の形状に加工される。パウダー製品は、ステンレス機材を使ったパイプ装置を使って製造されるが、パイプ搬送の折に異物としてステンレス磁性微粒子が混入することになる。とくにLi電池の正極材に混入した磁性微粒子は、微小でも電池使用中の発火原因となるので、汚染度1ppmオーダ程度の厳密な管理が要求されている。磁性微粒子の大きさは5μm~100μmと極めて小さく、現在磁性微粒子の検出方法の開発が進められている。
【0002】
特許文献1は、永久磁石で静磁場を形成して、被測定物である微小磁性金属異物によって乱された磁場を複数の検出コイルで検出し、その信号をSQUID磁気センサで検査する装置により、直径0.2mmの金属球を用いて測定できたことを開示している。大きなセンサ素子を有するSQUID磁気センサでは、0.2mm以下の金属異物の検出は困難といえる。
【0003】
特許文献2は、電極シートに存在する磁性異物を検査する方法で、電極シートに給電することにより特異な電流分布から発生する磁界を測定する方法を開示し、数十μm程度の金属異物の特定を開示しているが、本発明が対象としている粉末状態への異物を検知できる発明ではない。また5μm以下の磁性部粒子の検出はできない。
特許文献3は、シート状の被検査物に混入した金属異物を着磁させて検出する方法で、複数の永久磁石上を搬送させることにより金属異物を着磁させ、磁気センサで磁界を測定する方法を開示し、磁石と被測定物との間隔が10mm以下にて、直径100μmの金属異物の検出を開示しているが、本発明が対象としている粉末状態への異物を検知できる発明ではない。
【0004】
非特許文献1において、直径30μm、長さ10mmの素子を使って、50μmの磁性粒子を検出に成功したことが報告されている。
非特許文献2においては、サイズは8mm×8mm、厚み5mm のセンサを使って40μmの磁性微粒子を検出に成功したことが報告されている。本センサは磁気回路の工夫と4素子をブッリジ回路に組み上げたセンサで、磁気の感磁体を大きくして検出力を高めたものであるが、感磁体の面積が大きく30μm以下の微粒子検出は困難である。
【0005】
直径5μmの微粒子1個の重量は0.5ng程度で、それによる汚染度は、1mgのサンプルを想定すると、0.5ppmである。汚染度検出装置においては、まず磁気センサで、直径5μmの微粒子が検出できること、次に製品から1mgを取り出して、その中に存在している直径5μmの微粒子1個による汚染度0.5ppmが検出できることが必要である。現在の開発は、本目標からするとほど遠いというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-48170号公報
【文献】特開2019-75290号公報
【文献】特開2022-108554号公報
【0007】
【文献】愛知製鋼株式会社のHP News Release 2024年9月9日
【文献】TDK株式会社のHP Sensor Solution
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の課題は、汚染度1ppmオーダの検出システムを開発するためには、まず理想的条件において少なくとも直径5μmの磁性微粒子の磁界が磁性微粒子とセンサ素子を可能な限り接近した状態で測定した時に検出できることが必要である。この理想条件においては、0.5μmの磁性微粒子の検出が好ましい。現在市販されている各種nTセンサ(nTメータ)、つまりFGセンサ、MIセンサ、GSRセンサおよびtMRセンサを利用したnTセンサを使ってまずそれらを比較評価した。
【0009】
その結果、FGセンサタイプは、素子(磁性ワイヤ)の直径は3mmにて長さは30mmと大きく、100μmの磁性微粒子も検出できなかった。次に、MIセンサタイプは、素子の直径は30μmにて長さは10mmと比較的小さいので、直径30μmの磁性微粒子に対応できそうであったが、長さが10mmと大きいために直径50μmの磁性微粒子の検知が限界であった。そして、GSRセンサタイプは、素子の直径は10mmにて長さ2mmと小さく、直径10μmの磁性微粒子の検出が可能であった。
なお、tMRセンサタイプは、検知部が平面で広くその集磁効果を利用しているため、センサ素子本体と磁性微粒子との距離を極限的に設計させることができず、直径40μmの磁性微粒子検出が限界であった。本発明者らは最も優れていた市販品GSRセンサタイプのnTメータをベースに本目的のために改良をすることにした。
【0010】
第2の課題は、Li電池の正極パウダー製品材に混入した微小磁性異物を10ppm以下の汚染度のサンプルを判別検知する検知装置を開発することである。汚染されたパウダー製品からサンプルを採取し、その所定量を容器に入れて、磁性微粒子を磁化させて、そこから発せられる磁界を改良したnTセンサでもって測定し、その値から汚染度を判定するシステムを発明することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、GSRセンサタイプのnTメータを試作して、1μm~100μmの磁性微粒子から発せられる磁界を測定した。その結果、
図1に示すように、素子を小さくすればするほど、直径の小さな微粒子を検出することを発見した。ここで、
図1におけるGSR-5は、GSRセンサの素子の直径(磁性ワイヤよりなる感磁体)が5μmの例であり、GSR-10は、GSRセンサの素子の直径が10μmの例である。比較例としてMIセンサは、素子の直径は30μmである。
特に素子の直径は磁性微粒子の直径に近いことが好ましい。検出体である磁性ワイヤは、アスペクト比を200以上確保しておく必要があり、直径を大きくすると長さが長くなり、磁性ワイヤの体積は大きくなる。
【0012】
図2には、直径10μmの磁性微粒子から発する磁界を測定した結果を示す。
素子の体積が大きくなると、検出磁界が26μmから2μmへと大きく減少する。使用したnTメータは、一様磁界の測定においては同様な検出力を有するが、磁性微粒子が発する微小空間磁界を測定した場合、磁性ワイヤの大きさが重要であることがはじめて明らかになった。本発明では、nTメータの性能については、検出力1nT以下のセンサ素子の感磁体の大きさは、直径が15μm以下、長さが2mm以下とした。
【0013】
次に、GSRセンサの素子の先端と磁性微粒子との間の距離の影響を調査した。
図3に示すように、距離を0.9mmから0.1mmと小さくすると、磁性微粒子の測定限界の直径が10μmから0.5μmへと向上することが判明した。
そこで本発明では、
図7に示すように、磁性ワイヤ(センサ素子)の先端をnTメータの先端部に配置してnTメータの先端がセンサ素子の先端であるように工夫した。つまりGSR素子の端部がワイヤ端部となるようにした。次に電子回路基板の基板設計を工夫して、基板の先端部にセンサ素子が設置されるデザインとした。
【0014】
磁性微粒子よりなる異物により汚染されたパウダー母材から所定量採集して、専用の容器に挿入する。磁性微粒子とセンサ先端との距離をできるだけ接近させるために、容器の底部の厚みを0.1mm以下とした。
さらに、磁性微粒子を磁化させて、超音波振動を加えて、容器の底に集積させてから、ワックスで固定し、磁性微粒子が容器の底部に固着した測定用の測定用サンプルを作製した(
図5、
図6)。
【0015】
測定用のパウダー異物サンプルをパウダー容器固定台に固定し、その下方にnTメータ設置台を配置し、そこにnTメータを取り付けてから、GSR素子の先端部が容器の中底面部が直交するように、nTメータ設置台を傾斜させ、さらに素子の先端が、容器の中央部に来るようXY軸を調整し、さらにZ軸を調整して素子の先端が容器底部に接触するようにして、素子先端と磁性粒子の距離を0.1mm以下とする。以上の機能を有する微小磁界測定装置(
図7)を製作した。
【0016】
以上の状態で、汚染濃度0.5ppmから100ppmのサンプルからパウダー1mgを取り出し、上記方法でパウダー異物サンプルを作製し、磁界測定を行った結果、
図4に示すように、距離を0.1mmと小さくすると、汚染度0.5ppmを検出できることが分かった。直径10μmの磁性微粒子1個の重量4ngであるから、4ppmに相当する。直径5μmの磁性微粒子は0.5ngで、0.5ppmに相当する。本装置は、磁性微粒子の直径は0.5μmまで可能であり、汚染度0.5ppmの判定は十分可能であることが明らかである。
【0017】
本発明は、GSR素子の直径を15μm以下、長さを2mmとして、磁性ワイヤの端部をセンサの端部にして、容器の底部の厚みを0.1mm以下として、磁性微粒子とセンサ素子端部の距離を極力小さくすることによって、実現したものである。同時に、容器の底部に磁性粒子が集積する工夫とセンサ素子の先端が容器の底部に接触しかつ中央部に来るよう精密位置決め装置を組み合わせることによって実現したシステムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、パウダー製造中に混入する磁性微粒子による汚染度0.5ppmから100ppm程度のパウダー製品を検査することが可能となり、混入工程の特定と対策および製品の品質保証が可能になる。特にLi電池においては、磁性微粒の混入が発火原因となっており、その品質を保証する上で、本製品は重要な役割を果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】磁界に及ぼす磁性微粒子の大きさの影響を示す図である。
【
図2】磁界に及ぼす素子の体積の影響を示す図である。
【
図3】磁界に及ぼす磁性微粒子の大きさと、磁性微粒子とセンサ素子との距離の影響を示す図である。
【
図4】磁界に及ぼす磁性微粒子の濃度と、磁性微粒子とセンサ素子との距離の影響を示す図である。
【
図6】容器の底部に集積した磁性微粒子からなる測定用サンプルを示す図である
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第1実施形態の磁性微粒子検知システムは次のとおりである。
試料調整装置と測定用サンプルと微小磁界測定装置と磁界信号処理装置とからなる磁性微粒子検知システムにおいて、
前記試料調整装置は、非磁性の容器と、前記容器を固定する容器固定部と、前記容器の上部および底部に設置された試料調整部とを備えており、
前記容器は、円筒状またはすり鉢状の容器であって、前記容器の先端部は直径2mm以下にて底部の厚さは0.1mm以下よりなり、
前記試料調整部は、前記容器の上部にパウダーを挿入するパウダー挿入装置およびワックスを挿入するワックス挿入装置と、
前記容器の下部に前記パウダーに含まれる磁性微粒子に磁界を印加する磁界発生装置と磁界中の前記磁性微粒子を前記容器の底部に集積させるための振動発生装置とからなり、
前記測定用サンプルは、前記試料調整装置により調整されたサンプルにて前記容器の底部に集積され、前記微小磁界測定装置の測定対象物である磁性微粒子からなり、
前記微小磁界測定装置は、前記測定用サンプルの入っているパウダー容器と、前記パウダー容器を固定するパウダー容器固定部と、前記パウダー容器の下方に設置されたセンサ素子と、前記センサ素子と前記パウダー容器との位置調整を行なう位置調整部とを備えており、
前記センサ素子は、検出力1nT以下を有するnTメータよりなり、前記nTメータはnTメータ設置台に固定されており、
前記センサ素子の感磁体の大きさは、直径15μm以下、長さ2mm以下にて、しかも感磁体の先端は前記nTメータの先端部に配置されており、
前記位置調整部は、前記nTメータ設置台に固定されている前記nTメータの前記センサ素子と前記パウダー容器の底面との平行度を調整する平行度(傾き)調整機構と、前記センサ素子の位置をXY軸(センター)およびZ軸(距離)を調整する位置調整機構からなり、
前記磁界信号処理装置は、前記微小磁界測定装置により測定された磁気信号から磁性微粒子の大きさまたは/および含有量を計算するセンサ信号処理からなる、
ことを特徴とする。
【0021】
また、第1実施形態の装置において、各装置は非磁性素材からなることを特徴とする。
【0022】
本発明により、パウダーに混入している磁性微粒子の汚染濃度0.5ppmから1ppmが検出できる。
【0023】
第2の実施形態の検知測定方法は、次のとおりである。
パウダーに混入している磁性微粒子の検知測定方法において、
(1)第1ステップは、測定用サンプルの準備する工程からなり、
工程a)試料調整装置に容器をセットし、
工程b)パウダーの母材から20mg以下のサンプルを採取して前記容器に挿入し、
工程c)前記サンプルに磁界を印可するとともに超音波振動させて、前記磁性微粒子を前記容器の底部に集積し、
工程d)液状ワックスを前記容器に注入・固化して調整し、
工程e)調整した測定用サンプルの入っているパウダー容器を前記試料調整装置から取り出し、
(2)第2ステップは、前記測定用サンプルの微小磁界を検知・測定する工程からなり、
工程f)前記パウダー容器を磁界測定のためのパウダー容器固定部の固定具に固定し、
工程g)平行度(傾き)調整機構により、前記パウダー容器の底面とnTメータの先端部のセンサ素子との平行を出し、
工程h)位置調整機構により、前記センサ素子のXY軸(センター)は前記パウダー容器の中央に一致させ、
工程i)前記センサ素子のZ軸(距離)は、前記パウダー容器底面との距離を調整し、
工程j)前記nTメータにより、前記磁性微粒子の微小磁界を測定して測定信号を求め、
工程k)事前に作成した検量線を使って、前記パウダーに混入している前記磁性微粒子の大きさまたは/および含有量を検知・測定する、
ことを特徴とする。
また、上述の工程a)と工程b)との順序は、逆でもよい。すなわち、容器をセットした後にパウダーのサンプルを容器に挿入する。
【0024】
本発明により、簡易な工程にて精度の高い磁性微粒子の大きさを検知し、またはその含有量を測定し、さらに大きさおよび含有量を検知・測定することができる。
【0025】
次に、実施形態について
図3~
図7を用いて説明する。
パウダーに異物として混入している磁性微粒子の検出システムは、パウダー中の磁性微粒子の磁界を測定するためには、先ずパウダー中の磁性微粒子を容器の所定位置に集積・固定された測定用サンプルを作製する。次にこの測定用サンプルの微小磁界を測定し、その磁気信号を予め作成した検量線を用いて信号処理を行い、磁性微粒子の大きさや、含有量からなるパウダーの汚染濃度を得るシステムである。
以下、詳細に説明する。
【0026】
<試料調整装置1>
試料調整装置1は、
図5に示すように、非磁性の容器11と容器固定部110と試料調整部(12、13、14、15)からなる。
この装置により、パウダー中の磁性微粒子を微小磁界測定装置で測定可能な状態とする測定用サンプルを作製することができる。
【0027】
容器11は、その材質として、例えばSUS304の非磁性ステンレス鋼をはじめとする非磁性金属である。また、プラスチックやビニール系の非磁性樹脂であればよい。
その形状は、円筒状、すり鉢状、そして円筒すり鉢状(例として、
図6の容器)角錐すり鉢状からなり、その容器の先端部(底面)が直径2mm以下にて、底部の厚さは0.1mm以下である。
直径の小さなセンサ素子に対して磁性微粒子が集積するためには容器先端部の直径が2mmもあれば十分である。また、底部の厚さは、センサ素子の先端部から磁性微粒子までの距離が大きくなると検出力が低下することから、0.1mm以下とする。
容器固定部110は、容器11にパウダー等を挿入して測定用サンプルを調整している間に容器11が移動したり倒れたりしないように固定具で安定させる。
【0028】
試料調整部は、容器11の上部には、パウダー(10、100)を容器に挿入するためのパウダー挿入装置12とワックスを挿入するためのワックス挿入装置13が設置されている。
容器11に挿入するパウダーは、パウダー母材から20mg以下を採取して行なう。なお、磁性微粒子の大きさや含有量(濃度)を考慮して決めることができる。
容器11に挿入するワックスは、挿入する際には加熱して液状で流し込み、その後冷却により固化するものである。簡易的には、蝋などでよい。
【0029】
容器11の下部には、磁界発生装置14と振動発生装置15が設置されている。
磁界発生装置14は、磁界141を発生してパウダー10に混入している異物の磁性微粒子100に磁界を印加させるための装置である。印可磁界の大きさは0.1Tから0.5Tである。
振動発生装置は、パウダー10に振動を与えてパウダー中の磁化した磁性微粒子100を容器11の底部に集積させるための装置である。振動は、超音波振動などがある。
磁界発生装置14および振動発生装置15と容器11との位置関係は、容器11の下部に限定されず、
図5に示す位置でもよい。
【0030】
<測定用サンプル200>
試料調整装置1で調整された測定用サンプル200は、
図6に示すように、パウダー容器2の容器21内にパウダー20から分離して容器21の底部に集積し、微小磁界測定装置の測定対象物である磁性微粒子の集積体である。
測定サンプル200であるこの磁性微粒子の集積体は、測定作業の準備や測定中に移動しないように、パウダー20とともにワックス201により固められている。
【0031】
<微小磁界測定装置3>
微小磁界測定装置3は、
図7に示すように、測定用サンプル300の入っているパウダー容器31と、パウダー容器31を固定するパウダー容器固定部310と、センサ素子32と位置調整部33とからなる。
この装置により、測定用サンプルの磁性微粒子の1nT以下の磁界の検出が可能となる。
【0032】
パウダー容器31には、容器内にパウダーから分離し、集積した磁性微粒子の測定用サンプル300が容器の底部にワックスで固められている。その容器の底部の厚さは0.1μmである。
パウダー容器31は、測定準備や測定中に移動しないようにパウダー容器固定部310に固定されている。
【0033】
センサ素子32は、検出力1nT以下を有するnTメータ321のセンサ素子である。nTメータ321は設置台3210に固定されている。
センサ素子32は、本発明では磁性ワイヤからなる感磁体を使用し、その大きさは直径15μm以下、長さ2mm以下である。この感磁体の先端(磁性ワイヤの端部)は、
図7に示すようにnTメータ321の先端部に配置され、パウダー容器31の厚さ0.1mm以下の底部の下面に接触している。これにより測定用サンプル300(磁性体微粒子)とセンサ素子との距離は0.1mm以下が可能となり検出力が確保できる(
図3、
図4)。
【0034】
位置調整部33は、パウダー容器31の下方に設置されたセンサ素子32とパウダー容器との位置調整を行なう部位にて、並行度(傾き)調整機構とセンター・距離の位置調整機構からなる。
調整方法は、先ず、並行度(傾き)調整機構によりnTメータ設置台3210に固定されているnTメータ321のセンサ素子32の先端とパウダー容器31の底面との並行度を調整する。この調整により、測定用サンプル(磁性微粒子)300の入っているパウダー容器31の底面とセンサ素子32の先端とを隙間なく並行に接触させることができる。
次に、センター・距離の位置調整機構によりセンサ素子32の先端の位置をXY軸のセンターに調整し、Z軸の距離、すなわち底面とセンサ素子32の先端との距離を調整する。
【0035】
<磁界信号処理装置>
磁界信号処理装置(図は省略)は、微小磁界測定装置3のnTメータ321により測定用サンプル(磁性微粒子)300の微小磁界が測定された磁気信号から、事前に作成された検量線(
図3、
図4)を用いて磁性微粒子300の大きさ、含有量(濃度)を得ることができる。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
パウダー母材から15mgのサンプルを採取して、パウダー挿入装置12により、プラスチック製の円筒すり鉢状からなる厚さ0.5mmの容器11に挿入する。容器11の直径は8mm、すり鉢の先端までの長さは15mmである。容器11の先端部の直径は1.5mm、すり鉢容器の底部の厚さは0.07mmである。
パウダーを挿入した容器11を試料調整装置にセットするとともに容器固定部110に固定する。
この容器11には、パウダー10に磁性微粒子100が異物として混入したサンプルが挿入されている。
【0037】
サンプル(10および100よりなる。)に、容器11の下部に配置した磁界発生装置14により発生した0.2Tの磁界141を印加するとともに振動発生装置15により超音波振動させる。これによりサンプル内のパウダーから磁化した磁性微粒子のみが容器の底部に集積する。
次いで、ワックス挿入装置13により、液状ワックスを注入し冷却・固化する。
こうして磁性微粒子を検知・測定が可能な測定用サンプル200の入っているパウダー容器2を作る。パウダー容器2は、容器21内には底部に測定用サンプル200(磁性微粒子の集積体)があり、その上部はパウダー20のみからなり、両者はワックス201で固められている。
【0038】
次に、試料調整装置1により調整された測定用サンプル200を用いて微小磁界測定装置3により微小磁界を検知・測定し、その測定信号から磁性微粒子の大きさ、含有量を求める。
微小磁界測定装置3に備えられているnTメータの検出力は0.3nTを有し、センサ素子の感磁体(磁性ワイヤ)の大きさは直径10μm、長さ2mmである。
【0039】
微小磁界測定装置3のパウダー容器固定部310の固定具に、測定用サンプル300の入っているパウダー容器31を固定する。
位置調整部33の並行度(傾き)調整機構により、パウダー容器31の底面とnTメータの先端部のセンサ素子の先端面との並行を出す。次に位置調整機構により、センサ素子のXY軸(センター)はパウダー容器31の中央に一致させる。センサ素子のZ軸(距離)はセンサ素子の先端とパウダー容器31の底面との距離がゼロになるように調整する。これにより、測定用サンプルの磁性微粒子とセンサ素子の先端部との距離は0.07mmとなり、検出力が向上して確保される。
【0040】
nTメータ321により、磁性微粒子300の微小磁界を測定して磁気信号を検出する。この磁気信号を磁界信号処理装置により、事前に作成した検量線(
図3、
図4)を使って磁性微粒子の大きさ、含有量(濃度)を検知、測定する。
【0041】
本実施例において、磁性微粒子による汚染濃度0.5ppmが測定できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
Li電池などの正極材量パウダーに混入する磁性微粒子の除去は緊急課題となっている。本装置によって汚染度を測定し、品質保証することができる本発明は産業に応用展開することが期待されている。かつ発生工程を特定し対策することが可能となり産業上の重要性は明らかである。
【符号の説明】
【0043】
1:試料調整装置
10:パウダー
100:磁性微粒子
11:容器
110:容器固定台
12:パウダー挿入装置
13:ワックス(液状)挿入装置
14:磁界発生装置
141:磁界
15振動発生装置
2:パウダー容器
20:パウダー
200:測定用サンプル(磁性微粒子)
201:ワックス
21:容器
3:微小磁界測定装置
300:測定用サンプル(磁性微粒子)
31:パウダー容器
310:パウダー容器固定台
32:センサ素子
321:nTメータ
3210:nTメータ設置台
33:位置調整部
【要約】 (修正有)
【課題】パウダー製品に混入している磁性微粒子の大きさ、濃度を検出する。
【解決手段】本発明は、センサ素子32の先端直径を磁性微粒子のサイズ5μm~50μm並みの15μm以下とし、しかもその先端位置をnTメータ321の先端に固定し、磁性微粒子300とセンサ先端との距離を0.1mm程度とすることで、汚染濃度0.5ppmの汚染度を検出することができるシステムである。
【選択図】
図7