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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】巾木
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/04 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E04F19/04 101G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020106063
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000562
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-06-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)公開1 ▲1▼配布日:2019年7月19日 ▲2▼配布場所:埼玉県川口市東内野419-4 ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者が中川純一(屋号:バーデツィアーデザイン)に対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (2)公開2 ▲1▼配布日:2019年8月6日 ▲2▼配布場所:株式会社イクタ(愛知県瀬戸市坊金町117番地) ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者が株式会社イクタに対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (3)公開3 ▲1▼配布日:2019年8月26日 ▲2▼配布場所:株式会社夢工房(神奈川県横浜市都筑区仲町台1-3-7ヤマヒョウB館201) ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者が株式会社夢工房に対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (4)公開4 ▲1▼配布日:2019年8月22日 ▲2▼配布場所:株式会社ファン・ライフカンパニー(群馬県沼田市白沢町上古語父1365-1) ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者が株式会社ファン・ライフカンパニーに対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (5)公開5 ▲1▼配布日:2019年8月16日 ▲2▼配布場所:ポラスガーデンヒルズ株式会社(千葉県松戸市西馬橋幸町52) ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者がポラスガーデンヒルズ株式会社に対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (6)公開6 ▲1▼配布日:2019年12月23日 ▲2▼配布場所:株式会社ユニテ(埼玉県草加市青柳1-1-17) ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者が株式会社ユニテに対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (7)公開7 ▲1▼配布日:2020年4月6日 ▲2▼配布場所:有限会社アリヤス設計(埼玉県さいたま市見沼区深作5-61-3) ▲3▼公開者:株式会社山田特殊技研DICE ▲4▼配布した物の内容:公開者が有限会社アリヤス設計に対して、山田英徳が発明した巾木が記載されたパンフレットを配布した。
(73)【特許権者】
【識別番号】520041264
【氏名又は名称】株式会社山田特殊技研DICE
(74)【代理人】
【識別番号】230121016
【弁護士】
【氏名又は名称】小笠原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 英徳
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00587170(GB,A)
【文献】特開2006-316445(JP,A)
【文献】特開2016-037783(JP,A)
【文献】実開昭59-021345(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0107174(US,A1)
【文献】米国特許第04622791(US,A)
【文献】英国特許出願公開第02379676(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第02090717(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/00-19/10
E04B 1/684
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材と壁材との境界部分に配置される巾木であって、
前記壁材の裏面側に位置し立壁状に構成された裏側立壁部と、
前記壁材の表面側に位置し立壁状に構成されるとともに、その上部から下部に向かって前記裏側立壁部の方向に傾斜するように構成された表側立壁部と、
前記裏側立壁部と前記表側立壁部とを連結するように構成された連結部と、
を含み、
前記表側立壁部は、その上部の少なくとも一部が前記裏側立壁部の方向に曲面を有するように屈曲して構成された、前記連結部とは異なる表側立壁上端部を含む巾木。
【請求項2】
前記巾木は押出加工可能な材料によって形成された、請求項1に記載の巾木。
【請求項3】
前記材料は、金属材料、合成樹脂材料及びそれらの組み合わせの少なくとも一つから選択される、請求項2に記載の巾木。
【請求項4】
前記材料はアルミニウムである、請求項2又は3に記載の巾木。
【請求項5】
前記壁材は前記表側立壁上端部に載置される、請求項1~4に記載の巾木。
【請求項6】
床材と壁材との境界部分に配置される巾木であって、
前記壁材の裏面側に位置し立壁状に構成された裏側立壁部と、
前記壁材の表面側に位置し立壁状に構成されるとともに、その上部から下部に向かって前記裏側立壁部の方向に傾斜するように構成された表側立壁部と、
前記裏側立壁部と前記表側立壁部とを連結するように構成された連結部と、
を含み、
前記連結部は前記床材に固定するための固定具を位置決めするように構成された位置決め部を含む巾木。
【請求項7】
床材と壁材との境界部分に配置される巾木であって、
前記壁材の裏面側に位置し立壁状に構成された裏側立壁部と、
前記壁材の表面側に位置し立壁状に構成されるとともに、その上部から下部に向かって前記裏側立壁部の方向に傾斜するように構成された表側立壁部と、
前記裏側立壁部と前記表側立壁部とを連結するように構成された連結部と、
を含み、
前記連結部は前記床材に固定するための固定具を挿入するように構成された固定穴部を含む巾木。
【請求項8】
前記表側立壁部の上端と前記裏側立壁部の上端とによって壁材側開口を形成するとともに、前記表側立壁部の下端と前記裏側立壁部の下端とによって床材側開口を形成し、
前記壁材側開口及び前記床材側開口を介して前記固定具が前記床材に固定される、
請求項6又は7に記載の巾木。
【請求項9】
床材と壁材との境界部分に配置され、前記壁材が載置される巾木であって、
前記壁材の裏面側に位置し、前記床材から上方に延びる裏面部と、
前記壁材の表面側に位置し、前記床材に対して垂直方向に延びるとともに、その上部から下部に向かって前記裏面部の方向に傾斜するように構成された表面部と、
前記裏面部と前記表面部の間に形成され、固定部材によって固定されるように構成された被固定部と、
を含巾木。
【請求項10】
前記巾木は前記壁材の表面を被覆しないように構成された、請求項1~9のいずれか一項に記載の巾木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床材と壁材との間に施工される巾木に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、床材と壁材との間の取り合い部分に、美観の向上などの目的で設置される巾木が知られていた。例えば、特許文献1には、巾木本体と巾木本体の下部に構成され嵌合突条が嵌合可能な嵌合溝が設けられた不陸調整部材とによって、壁面と床面との当接面に生じうる隙間を塞ぐ能力に優れた巾木が記載されている。このような巾木においては、巾木本体と不陸調整部材との間に目地を設ける必要がないので、床面に部分的な不陸や沈下が発生しても美観を損ねるおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-41761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、より美観に優れた巾木を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、「床材と壁材との境界部分に配置される巾木であって、前記壁材の裏面側に位置し立壁状に構成された裏側立壁部と、前記壁材の表面側に位置し立壁状に構成されるとともに、その上部から下部に向かって前記裏側立壁部の方向に傾斜するように構成された表側立壁部と、前記裏側立壁部と前記表側立壁部とを連結するように構成された連結部と、を含む巾木」が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、より美観に優れた巾木を提供することができる。
【0007】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、または上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る巾木1が配置された例を示す断面図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の全体の構成を示す斜視図である。
図3図3は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の平面図である。
図4図4は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の断面図である。
図5図5は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の施工行程の例を示すフロー図である。
図6図6は、本開示の第2実施形態に係る巾木100の全体の構成を示す斜視図である。
図7図7は、本開示の第2実施形態に係る巾木100の平面図である。
図8図8は、本開示の第2実施形態に係る巾木100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0010】
<第1実施形態>
1.巾木1の配置の例
本開示の第1実施形態に係る巾木1は、主に、床材3と壁材4との境界部分に配置される。図1は、本開示の第1実施形態に係る巾木1が配置された例を示す断面図である。図1によると、主に垂直方向に施工された通し柱や管柱などの柱材2に対して、水平方向に床材3が施工される。巾木1は、後側面の少なくとも一部が柱材2に接し、下部が床材3に当接するように配置されている。このとき、巾木1は、床材3に対してネジ又は釘などの固定具5によって固定されている。そして、巾木1の上部に壁材4が載置されるとともに、壁材4が柱材2に接着されている。
【0011】
このように、巾木1は、壁材4と床材3との間に形成された境界部分に配置される。このとき、巾木1は壁材4の表面側に接着剤などを用いて張り付けることによって固定するのではなく、床材3に対して固定され、壁材4は固定された巾木1の上に載置されるだけである。したがって、巾木1は、壁材4の表面側(家屋などの室内空間側)を被覆することなく配置可能である。また、巾木1は、上記のとおり壁材4の表面側を被覆する費用はないため、巾木1の垂直方向の幅(高さ)をより小さくすることが可能である。よって、巾木1は、壁材4と床材3との間に形成された境界部分を被覆し気密性を保ちつつ、より美観の向上を図ることが可能となる。
【0012】
2.巾木1の全体構成
図2は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の全体の構成を示す斜視図である。図2によれば、巾木1は、壁材4の下面長手方向に沿うように、水平方向に伸延した直棒状の形状を有する。なお、図2の例では、上記のとおり巾木1を直棒状に形成しているが、必ずしも直棒状にする必要はない。例えば、巾木1は、全体に湾曲した弓形形状や、少なくとも一部が屈曲した屈曲形状など、いかなる形状であってもよい。すなわち、巾木1は、壁材4の下面長手方向に沿う形状であればいずれの形状であってもよい。
【0013】
巾木1は、図1の断面図にも示されたように、壁材4の裏面4b側に位置し柱材2の側面長手方向に沿って立壁状に形成された裏側立壁部20と、壁材の表面4a側に位置し柱材2の側面長手方向に沿って立壁状に形成された表側立壁部10と、裏側立壁部20と表側立壁部10とを連結する連結部30とを含む。図2の例では、裏側立壁部20は床材3によって形成される床面に対して略垂直方向に伸延した形状を有する。また、表側立壁部10はその上部が裏側立壁部20の方向に屈曲するとともに、その上部から下部に向かって裏側立壁部20の方向に傾斜する傾斜面を有する。また、連結部30は、裏側立壁部20と表側立壁部10の略中央付近で両者を連結する。
【0014】
巾木1は、アルミニウム、チタン、ステンレス、亜鉛引き鋼板などの金属材料、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成樹脂材料、石、木、タイル及びそれらの組み合わせなど、様々な材料を用いることが可能である。ここで、巾木1は、図1及び図4などで示されている通り、全体として壁材4の下面長手方向に沿う形状をし、表側立壁部10に傾斜面と屈曲部が形成されている。したがって、巾木1の材料としては、加工・成形方法の観点から押出加工・成形が可能な材料を用いるのが好ましい。すなわち、巾木1の材料としては、金属材料又は合成樹脂材料が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
【0015】
巾木1は、押出加工、引抜加工、圧延加工、曲げ加工、プレス加工、射出成型、ブロー成型、プレス成型、圧縮成形など、用いる材料に応じた様々な加工・成形方法によって形成することが可能である。ここで、巾木1は、図1及び図4などで示されている通り、全体として壁材4の下面長手方向に沿う形状をし、表側立壁部10に傾斜面と屈曲部が形成されている。したがって、加工・成型精度や容易さの観点から、押出加工・成型が好ましい。特に、巾木1は、材料としてアルミニウムを用い押出加工によって表側立壁部10、裏側立壁部20及び連結部30の各部が一体的に加工・成型することが可能である。
【0016】
なお、特に図示はしないが、巾木1は、上記材料に加えて、化粧シート、防腐剤、防錆剤、塗料など、その目的に応じて、種々のシートや材料を組み合わせて用いてもよい。また、上記のとおり、巾木1は壁材4の下面長手方向に沿う方向に棒状に形成されているが、その長さは壁材4の下面長手方向の長さに合わせて任意の長さに加工することが可能である。
【0017】
図3は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の平面図である。図3によれば、巾木1は、表側立壁部10、裏側立壁部20及び連結部30は、それぞれ、壁材4の下面長手方向に沿う方向に、横長に伸延した形状を有する。また、連結部30は、巾木1を床材3に対して固定するための固定具を挿入するための複数の固定穴部32-1~32-nと、当該固定具を固定穴部32-1~32-n以外の場所に打ち付ける際に位置決めするための位置決め部として機能する溝部31とを含む。
【0018】
固定穴部32-1~32-nは巾木1の長手方向に沿って等間隔に配置され、各固定穴部32-1~32-nは固定具を挿入可能なように連結部30の厚さ方向に貫通した貫通孔として形成されている。なお、固定穴部32-1~32-nは、巾木1の長手方向の長さに応じて適宜設ければよく、巾木1に対して1個でもよく複数個あってもよい。また、その間隔も必ずしも等間隔である必要はなく、例えば固定強度の観点から、巾木1の中心に向かうにしたがって間隔が狭くなるように配置してもよい。
【0019】
溝部31は巾木1の長手方向に沿って連結部30の上面側に、V字状に形成されている。このような溝部31は、固定具を任意の位置で床材3に対して打ち込むときの位置決めに用いられる。なお、溝部31は、巾木1の一端から他端に向かって直線状に形成しているが、必ずしも直線状に形成する必要はない。例えば等間隔の点状に形成してもよい。また、その断面形状もV字状に形成する必要はなく、凸状、凹状、U字状などの様々な形状に形成することが可能である。また、溝部31は位置決め用に用いているものであるため必ずしも形成する必要はない。
【0020】
3.巾木1の断面構成
図4は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の断面図である。具体的には、図4は、図3に示された巾木1のA-A’断面を示す図である。図4によると、床材3によって形成される床面に対して略垂直に裏側立壁部20が形成されている。裏側立壁部20は、その下端22a付近の一部が表側立壁部10方向(すなわち、壁材4の表面4a方向)に屈曲するように形成された裏側立壁下端部22と、裏側立壁下端部22に接続され床面に対して略垂直に形成された裏側立壁本体部21とを有する。このうち、裏側立壁下端部22は、その下面側で床面に接触することによって、巾木1を床面上に配置することが可能となる。また、裏側立壁本体部21は、その上端23aで壁材4の下面と当接することで、壁材4を巾木1上に載置することが可能となる。
【0021】
また、裏側立壁部20を構成する裏側立壁本体部21は、床面に対して垂直な方向に、高さH1となるように形成される。この高さH1は、壁材4と床材3の境界部分に形成される空間の大きさに合わせて適宜調整することが可能である。高さH1の一例としては、5.0mm~120.0mm、好ましくは10.0mm~50.0mm、より好ましくは12.0mm~20.0mmである。また、裏側立壁部20は、その上端23aから下端22aにかけて一様な幅W2で形成された略板状の形状を有する。裏側立壁部20の短手方向の幅W2は、加工精度や強度の観点から、0.5mm~10.0mm、好ましくは0.8mm~5.0mm、より好ましくは1.0mm~2.5mmである。
【0022】
図4によると、床材3によって形成される床面に対して所定の角度θだけ傾斜するように表側立壁部10が形成されている。より具体的には、当該表側立壁部10は、その表側表面と床面とがなす角度が所定の角度θとなるように形成されている。すなわち、表側立壁部10の上部から下部に向かって角度θ分だけ裏側立壁部20の方向に傾斜する。この角度θは、45°~80°、好ましくは50°~70°である。
【0023】
また、表側立壁部10は、その下端12a付近の一部が裏側立壁部20方向(すなわち、壁材4の裏面4b方向)に屈曲するように形成された表側立壁下端部12と、一端が表側立壁下端部12に接続され傾斜面状に形成された表側立壁本体部11と、上部の少なくとも一部が裏側立壁部20方向(すなわち壁材4の裏面4b方向)に屈曲して形成された表側立壁上端部13と、表側立壁本体部11の他端と表側立壁上端部13とを接続する屈曲部14とを有する。
【0024】
このうち、表側立壁下端部12は、その下面側で床面に接触することによって、巾木1を床面上に配置することが可能となる。表側立壁本体部11は、その表面側が床面に対して角度θで傾斜した傾斜面を有する。このように、傾斜面を有することによって巾木1を視覚的に目立ちづらくすることが可能である。表側立壁上端部13は、その上面側で壁材4の下面と当接することで、壁材4を巾木1上に載置することが可能である。屈曲部14は、少なくとも表面側が曲面C1を有する。これは、表側立壁部10のうち少なくとも屈曲部14は、壁材4の表面4aから室内空間方向に突出するように配置されるため、この突出した部分にヒトや家具などの他の物体が接触して傷つく恐れがあったり、塵や埃などが積層してしまう恐れがある。そのため、突出した屈曲部14の表面を曲面C1のように形成することで、それらを防止することが可能となる。
【0025】
また、表側立壁部10は、その上端13aから下端12aにかけて一様な幅W3で形成された略板状の形状を有する。表側立壁部10の短手方向の幅W3は、加工精度や強度の観点から、0.5mm~10.0mm、好ましくは0.8mm~5.0mm、より好ましくは1.0mm~2.5mmである。
【0026】
図4によると、裏側立壁部20及び表側立壁部10を連結するように、床面に略平行な方向に連結部30が形成されている。連結部30の一端は、裏側立壁本体部21の略中央付近に、他端は表側立壁本体部11の略中央付近に結合する。また、連結部30は、図3に示した通り、固定穴部32及び位置決め部として機能する溝部31を含む。このうち、固定穴部32は、連結部30の上面から下面にかけて貫通した貫通孔として形成されている。溝部31は、連結部30の上面側に深さが1mm以下で断面がV字状になるように形成されている。
【0027】
また、連結部30は、一端から他端にかけて一様な幅W1で形成された略板状の形状を有する。連結部30の短手方向の幅W3は、固定具で床材3に固定される際の強度の観点から、0.5mm~20.0mm、好ましくは0.8mm~10.0mm、より好ましくは1.0mm~3.0mmである。特に、本実施形態においては、裏側立壁部20や表側立壁部10よりも肉厚に形成されている。
【0028】
ここで、巾木1は、少なくとも一部に裏側立壁部20の上端23a及び表側立壁部10の上端13aが互いに離隔して壁材側開口O1が形成されている。また、少なくとも一部に裏側立壁部20の下端22a及び表側立壁部10の下端12aが互いに離隔して床材側開口O2が形成されている。これは、壁材側開口O1を介して固定具が上方から固定穴部32に挿入され、次いで床材側開口O2を介して床材3に固定具が挿入され固定されるためである。すなわち、連結部30の固定穴部32、壁材側開口O1及び床材側開口O2は、床面に対して垂直な方向に互いに少なくとも一部が重なる位置に形成される。また、その開口幅も、固定具の太さに応じて調整される。
【0029】
4.施工工程
図5は、本開示の第1実施形態に係る巾木1の施工行程の例を示すフロー図である。具体的には、例えば家屋などの構造建築物において、柱材2、床材3、壁材4などを含む他の部材とともに巾木1が施工される工程の一例を示す図である。図5によると、配筋やコンクリートの流し込みなどの基礎工事を経て土台の施工などが終わると、その土台の上に柱材2を含む枠組みのくみ上げを行う柱材施工工程が行われる(S100)。次に、くみ上げられた柱材2の間に床材3を施工し床面を形成する床材施工工程が行われる(S200)。次に、施工された床材3と柱材2に沿って、本実施形態に係る巾木1を所定の位置に配置し、固定具を用いて床材3に固定する巾木施工工程が行われる(S300)。次に、施工された巾木1と柱材2に沿って巾木1の上面に壁材4を載置し、その壁材4を柱材2に接着剤、ネジ、釘などによって固定する壁材施工工程が行われる(S400)。これによって、本実施形態に係る巾木1が施工される。
【0030】
ここで、例えば背景技術に示す特許文献に記載された巾木などのように、壁材の前面側に被覆するように配置される巾木を用いる場合には、壁材施工工程が終了したのちに巾木施工工程を実施する必要がある。しかし、本実施形態における巾木1は、壁材4の表面4aを被覆することなく施工することが可能であるため、図5に示す通り、壁材施行工程の前に巾木施工工程を実施することが可能となる。
【0031】
なお、図5においては、床面や壁面のクロス貼りなどの内装工事や屋根工事、防水処理などの外壁工事などの行程については省略しているが、当然それらを適宜のタイミングで行ことが可能である。また、図5に示す工程は単なる一例であって構造建築物に応じた最適な工程で適宜巾木1の施工をすることが可能である。
【0032】
以上、本実施形態においては、巾木1の表側立壁部10をその上部から下部にかけて裏側立壁部20の方向に傾斜するように形成するとともに、巾木1の上面側に壁材4を載置するようにした。これによって、より美観に優れた巾木を提供することが可能となる。また、表側立壁部10の屈曲部14は曲面C1を有する。これによって、美観を向上するとともに、他の物体の接触による損傷や、塵や埃などの積層を防止することが可能となる。さらに、巾木1は、アルミニウムなどの材料を押出加工することによって、表側立壁部10の傾斜面や屈曲部14の曲面C1の形成が可能となる。
【0033】
<第2実施形態>
第1実施形態では、巾木1は壁材4の下面長手方向に沿って直棒状に形成した場合について説明した。第2実施形態では、壁面のコーナー部分に適用可能な少なくとも一か所が屈曲し略L字状に形成された巾木100について説明する。なお、本実施形態は、以下で具体的に説明する点を除いて、第1実施形態における構成、工程、処理と同様である。したがって、それらの事項の詳細な説明は省略する。
【0034】
図6は、本開示の第2実施形態に係る巾木100の全体の構成を示す斜視図である。図6によれば、巾木100は、壁材の下面長手方向に沿うように形成されるが、壁面のコーナー部分の角形状に沿うように、略L字状の形状を有する。なお、壁面のコーナー部分の形状には入隅と出隅があり、図6の例は出隅用の巾木の例を示すが、当然入隅用に巾木を形成することも可能である。
【0035】
巾木100は、壁材の裏面側に位置し柱材の側面長手方向に沿って立壁状に形成された裏側立壁部120と、壁材の表面側に位置し柱材の側面長手方向に沿って立壁状に形成された表側立壁部110と、裏側立壁部120と表側立壁部110とを連結する連結部130とを含む。
【0036】
図7は、本開示の第2実施形態に係る巾木100の平面図である。図7によれば、巾木100は、表側立壁部110、裏側立壁部120及び連結部130は、それぞれ、壁材4の下面長手方向に沿う方向に、横長に伸延した形状を有する。また、連結部30は、巾木1を床材3に対して固定するための固定具を挿入するための複数の固定穴部132-1及び132-2と、当該固定具を固定穴部132-1及び132-2以外の場所に打ち付ける際に位置決めするための位置決め部として機能する溝部131とを含む。なお、本実施形態では2個の固定穴部132-1及び132-2が含まれているが、当然1個でもよいし、3個以上であってもよい。
【0037】
ここで、巾木100は、少なくとも一か所が屈曲した略L字状に形成されている。このような巾木100においては、一対の巾木部材100a及び100bの一端同士をトメ加工することによって形成される。したがって、巾木100は、巾木部材100aの一端に形成されたトメ加工面150aと、巾木部材100bの一端に形成されたトメ加工面150bとを対向するように当接し固定するための固定部材140を有する。すなわち、巾木部材100aと巾木部材100bは、略L字状に形成される巾木100の形状に対応してL字状に形成された固定部材140を用いて、互いに固定されることによって巾木100を形成する。
【0038】
なお、本実施形態においては、一か所で屈曲した形状を例に挙げているが、トメ加工によって巾木部材を複数個つなぎ合わせて複数個所で屈曲した形状にすることも可能である。また、巾木100はトメ加工を利用して屈曲形状を形成しているが、他の加工方法によって屈曲形状を実現してもよい。また、トメ加工などによって屈曲された屈曲部分は、少なくとも室内空間側に突出する表面側を曲面に加工してもよい。このようにすることで他の物体との接触による損傷を軽減することができる。
【0039】
図8は、本開示の第2実施形態に係る巾木100の断面図である。具体的には、図8は、図7に示された巾木100のB-B’断面を示す図である。図8によると、巾木100は、床材によって形成される床面に対して略垂直に形成される裏側立壁部120と、床材によって形成される床面に対して所定の角度だけ傾斜するように形成される表側立壁部110と、裏側立壁部20及び表側立壁部10を連結するように床面に略平行な方向に形成される連結部130とを含む。
【0040】
連結部130には、その上面に、図7で示すように、巾木部材100aの一端と巾木部材100bの一端同士を接合するための固定部材140が設置されている。当該固定部材140は、連結部130の上面に対して接着剤やネジ、釘などによって固定される。なお、本実施形態では連結部130の上面に固定部材140を固定したが、固定する位置は連結部の下面、表側立壁部110、裏側立壁部120又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0041】
以上、本実施形態においては、巾木100の表側立壁部110をその上部から下部にかけて裏側立壁部120の方向に傾斜するように形成するとともに、巾木100の上面側に壁材を載置するようにした。これによって、より美観に優れた巾木を提供することが可能となる。また、表側立壁部110の屈曲部は曲面を有する。これによって、美観を向上するとともに、他の物体の接触による損傷や、塵や埃などの積層を防止することが可能となる。さらに、巾木100は、アルミニウムなどの材料を押出加工することによって、表側立壁部110の傾斜面や屈曲部の曲面の形成が可能となる。
【0042】
<その他>
各実施形態で説明した各要素を適宜組み合わせるか、それらを置き換えてシステムを構成することも可能である。
【0043】
また、本開示において、巾木1又は巾木100は、床材に対して固定具を用いて固定されている。しかし、これに限らず接着剤などを用いて固定してもよい。さらに、上記のように接着剤で固定する場合や、施工時に固定具用の穴を形成する場合など、固定具を挿入する固定穴部32は必ずしもあらかじめ形成する必要はない。
【0044】
また、本開示において、巾木1又は巾木100は、柱材、床材及び壁材を有する構造建築物に対して用いられている。このような構造建築物は、典型的には家屋などの木構造建築物が挙げられるが、当然これに限らない。本開示に係る巾木は、木構造建築物以外にも、鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造、コンクリート充填鋼管構造などの様々構造建築物にも同様に適用することが可能である。つまり、本開示に係る巾木1又は巾木100とともに用いられる壁材、床材、柱材は、木材に限らず鉄骨など様々なものを用いることが可能である。
【0045】
さらに、本開示に係る巾木1又は巾木100は、上記のような構造建築物の内部で用いられ、床材上に配置されるパーティションや造作壁などの壁材などにも用いることが可能である。
[付記1]
床材と壁材との境界部分に配置される巾木であって、
前記壁材の裏面側に位置し立壁状に構成された裏側立壁部と、
前記壁材の表面側に位置し立壁状に構成されるとともに、その上部から下部に向かって前記裏側立壁部の方向に傾斜するように構成された表側立壁部と、
前記裏側立壁部と前記表側立壁部とを連結するように構成された連結部と、
を含む巾木。
[付記2]
前記巾木は押出加工可能な材料によって形成された、付記1に記載の巾木。
[付記3]
前記材料は、金属材料、合成樹脂材料及びそれらの組み合わせの少なくとも一つから選択される、付記2に記載の巾木。
[付記4]
前記材料はアルミニウムである、付記2又は3に記載の巾木。
[付記5]
前記表側立壁部は、その上部の少なくとも一部が前記裏側立壁部の方向に曲面を有するように屈曲して構成された表側立壁上端部を含む、付記1~4のいずれかひとつに記載の巾木。
[付記6]
前記壁材は前記表側立壁上端部に載置される、付記5に記載の巾木。
[付記7]
前記連結部は前記床材に固定するための固定具を位置決めするように構成された位置決め部を含む、付記1~6のいずれかひとつに記載の巾木。
[付記8]
前記連結部は前記床材に固定するための固定具を挿入するように構成された固定穴部を含む、付記1~6のいずれかひとつに記載の巾木。
[付記9]
前記表側立壁部の上端と前記裏側立壁部の上端とによって壁材側開口を形成するとともに、前記表側立壁部の下端と前記裏側立壁部の下端とによって床材側開口を形成し、
前記壁材側開口及び前記床材側開口を介して前記固定具が前記床材に固定される、
付記7又は8に記載の巾木。
[付記10]
前記表側立壁部はその上部の少なくとも一部が前記壁材の表面から突出するように構成された、付記1~9のいずれかひとつに記載の巾木。
[付記11]
前記表側立壁部の前記突出した部分が曲面として構成された、付記10に記載の巾木。
[付記12]
前記巾木は前記壁材の表面を被覆しないように構成された、付記1~11のいずれかひとつに記載の巾木。
【符号の説明】
【0046】
1 :巾木
2 :柱材
3 :床材
4 :壁材
4a :表面
4b :裏面
5 :固定具
10 :表側立壁部
11 :表側立壁本体部
12 :表側立壁下端部
12a :下端
13 :表側立壁上端部
13a :上端
14 :屈曲部
20 :裏側立壁部
21 :裏側立壁本体部
22 :裏側立壁下端部
22a :下端
23a :上端
30 :連結部
31 :溝部
32 :固定穴部
32-1 :固定穴部
100 :巾木
100a :巾木部材
100b :巾木部材
110 :表側立壁部
120 :裏側立壁部
130 :連結部
131 :溝部
132-1 :固定穴部
140 :固定部材
150a :トメ加工面
150b :トメ加工面
C1 :曲面
H1 :高さ
O1 :壁材側開口
O2 :床材側開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8