(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20241219BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241219BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241219BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q17/00
A61K36/23
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2020191484
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞田 歩美
(72)【発明者】
【氏名】川上 怜子
(72)【発明者】
【氏名】宮地 克真
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】野場 翔太
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-206225(JP,A)
【文献】特表2003-514002(JP,A)
【文献】特開平06-048934(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0123576(US,A1)
【文献】Oaskin Bio, Canada,Eye Care with Organic Oak Extract,Mintel GNPD [online],2019年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6582805, [検索日:2024.07.25], 表題部分,成分,製品のバリエーション
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 1/00-43/00
A61K 36/06-36/9068
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニスの抽出物を有効成分として含有する、上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体発現促進剤。
【請求項2】
前記上皮系細胞又は間葉系細胞が、皮膚組織内に存在するものである、請求項
1に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎動物(特に哺乳動物)の組織は、傷害若しくは疾患、又は加齢等に伴い細胞・臓器の損傷が起こった場合、再生系が働き、細胞・臓器の損傷を回復しようとする。この作用に、当該組織に備わる幹細胞が大きな役割を果たしている。幹細胞は自己複製能と、様々な細胞・臓器に分化する多能性を有しており、この性質により細胞・臓器の損傷部を補うことで組織の再生や、恒常性維持が行われている。このような幹細胞を応用した、次世代の医療である再生医療に期待が集まっている。
【0003】
哺乳動物における幹細胞研究で最も進んでいる組織は骨髄である。骨髄には生体の造血幹細胞が存在しており、造血幹細胞は自身と同じ細胞を生み出す自己複製能とあらゆる血球細胞に分化する多分化能とを有する細胞である。よって、造血幹細胞の移植により、血球細胞を再構築することが可能であることから、血液疾患や免疫不全症等の治療手段として、造血幹細胞の移植が行われている。しかしながら、造血幹細胞は加齢と共に増殖能、分化能が低下することが報告されており(非特許文献1)、造血幹細胞を移植しても血球系の再構築ができないという事態もある。
【0004】
また、これらの幹細胞のうちのいくつかは、加齢と共に減少することが知られており、各組織の恒常性維持のために幹細胞の減少を防ぐ技術の研究が積極的になされている(非特許文献2)。近年、幹細胞の能力(多能性)を、臓器や組織の再生へ応用するため、細胞移植治療や組織工学(再生医療や再生美容)の分野において幹細胞を生体組織から分離した後に培養し増殖させる技術の開発が進められている(非特許文献3、4)。すなわち幹細胞を活性化させることは、組織の再生を促すうえで非常に重要である。幹細胞を活性化する因子としてはEGF(Epidermal Growth Factor)やFGF1(Fibroblast Growth Factor 1)などの成長因子が知られており、幹細胞だけでなく様々な細胞の増殖にも寄与している。これらの成長因子は細胞膜表面上の成長因子受容体に結合することで下流のシグナルを活性化し、細胞を賦活化している。賦活化した細胞は増殖などを介して、積極的な組織の再生を促進する。
【0005】
これまでに成長因子の発現を促進させる技術については幾つかの報告があり、例えば、
特許文献1には、イチョウなどの数種の植物抽出物を有効成分として含有するインスリン様成長因子-1(IGF-1)発現促進剤が記載されている。しかしながら、成長因子受容体の発現を促進させる方法は未だ開発されていない。成長因子の発現を制御するのでなく、成長因子受容体の発現を促進することができれば、より持続的な細胞賦活化効果及び組織再生効果が期待できる。
【0006】
アニス(学名:Pimpinella anisum L.)は、セリ科(Apiaceae)に属する一年草で、その種子(植物学上は果実にあたる)は、アネトールなどの精油成分を含み、消化促進作用があることが知られている。また、アニスは香辛料として料理の香りづけや臭い消しなどに用いられている。アニス抽出物は、これまでコレラ毒素産生阻害剤(特許文献2)、美白剤(特許文献3)、エストロゲン剤(非特許文献5)に用いることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-256270号公報
【文献】特開2011-105715号公報
【文献】特開2005-139070号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Age-associated characteristics of murine hematopoietic stem cells.J.Exp.Med.2000 Nov 6;192(9):1273-80.
【文献】長谷川靖司,Aesthetic Dermatology, 2013年, Vol. 23, pp. 1-11
【文献】馬渕 洋 他, 日本再生医療学会誌, 2007年, Vol. 6, pp. 263-268
【文献】北川 全 他, 日本再生医療学会誌, 2008年,Vol. 7, pp. 14-18
【文献】Fennel and anise as estrogenic agents. Journal of Ethnopharmacology, 01 1980 Dec;2(4):337-344
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記実情に鑑み、成長因子の結合によって活性化し、細胞の増殖や分化を制御する役割を有する成長因子受容体の発現を促進する物質を見出し、当該物質を用いて持続性に優れた細胞賦活化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アニスの抽出物が、上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体の発現及び当該細胞の増殖を促進する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)アニスの抽出物を有効成分として含有する、上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体発現促進剤。
(2)アニスの抽出物を有効成分として含有する、上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤。
(3)前記上皮系細胞又は間葉系細胞が、皮膚組織内に存在するものである、(1)又は(2)に記載の剤。
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の剤を含む、皮膚外用組成物。
(5)前記皮膚外用組成物が、化粧品、医薬品、又は医薬部外品である、(4)に記載の皮膚外用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体の発現を促進し、当該細胞の増殖を促進することのできる上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤が提供される。本発明の上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤は、加齢によるシワやたるみ、脱毛や薄毛などの皮膚や頭髪の障害や劣化の予防、改善又は治療に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.成長因子受容体発現促進剤又は細胞賦活化剤
本発明に係る上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体発現促進剤、上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤は、アニスの抽出物を有効成分として含有する。
【0014】
本発明に用いるアニス(学名:Pimpinella anisum L.)は、セリ科(Apiaceae)に属する一年草である。本発明において、アニスの抽出物とは、その種子(植物上は果実にあたる)、花、茎、葉、根、芽等の植物体の一部又は植物体全体(全草)、あるいはそれらの混合物の抽出物をいうが、抽出材料としては、種子が好ましい。また、抽出には、これらの植物体をそのまま使用してもよく、乾燥、粉砕、破砕、細切等の処理を行ってもよい。
【0015】
アニスから抽出物を得るための抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出方法であっても良いし、常温や冷温抽出方法であっても良い。抽出に使用する溶媒としては、例えば、水若しくは熱水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン、スクワラン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)等が挙げられる。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良い。また、上記抽出溶媒に酸やアルカリを添加して、pH調整した溶媒を使用することもできる。
【0016】
溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば上記アニス種子(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行なったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、10~100℃、好ましくは30~90℃で、30分~24時間、好ましくは1~10時間を例示することができる。より具体的には、アニス種子に水を加え、95~100℃における熱水抽出を行うことで、アニスの抽出物を得ることができる。あるいは、アニス種子に低級アルコール(例えば、エタノール等)、液状多価アルコール(例えば、1,3-ブチレングリコール等)、又は炭化水素類(例えば、ヘキサン等)を添加し、常温(例えば15~35℃)で抽出を行うことで、アニスの抽出物を得ることができる。
【0017】
溶媒抽出後、得られた溶媒相自体をアニスの抽出物とすることができる。あるいは、必要に応じて、得られた溶媒相を、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮などによる濃縮)、希釈、濾過等の処理及び活性炭等による脱色、脱臭処理等に供して、得られた生成物をアニスの抽出物とすることができる。また、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥処理に供し、得られた乾燥物をアニスの抽出物として用いてもよい。
【0018】
本発明において、上皮系細胞又は間葉系細胞は、分化細胞のみならず、その前駆細胞や幹細胞を包含する。上皮系細胞とは体表面や体腔を覆う役割を有する細胞をいい、例えば、皮膚、毛根、角膜、鼻腔、咽頭、気道、口腔、食道、消化管(胃、小腸、大腸)等の上皮組織に存在する細胞であれば特に限定はされないが、皮膚組織に存在する細胞が好ましく、具体的には、表皮細胞(主として表皮角化細胞(ケラチノサイト))、表皮幹細胞、バルジ領域の毛包細胞、毛包幹細胞、外毛根鞘細胞、内毛根鞘細胞、脂肪細胞等が挙げられる。また、間葉系細胞としては、真皮細胞、線維芽細胞、毛乳頭細胞等が挙げられる。
【0019】
本発明において、「成長因子受容体」とは、上皮系細胞又は間葉系細胞の細胞膜表面上において発現し、細胞の増殖や分化を制御する成長因子を認識し、シグナル伝達を行う受容体をいう。成長因子を分泌する細胞と受容体を有する細胞が、同一細胞であっても(作用形式:オートクリン)、異なる細胞(作用形式:エンドクリン、パラクリン)であってもよい。成長因子受容体としては、例えば、上皮成長因子受容体(EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR:Fibroblast Growth Factor Receptor)、インスリン様成長因子受容体(IGFR:Insulin-like Growth Factor Receptor)、トランスフォーミング細胞成長因子受容体(Transforming Growth Factor Receptor)、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR:Vascular Endothelial Growth Factor Receptor)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR:Hepatocyte Growth Factor Receptor)等が含まれる。より具体的には、EGFRとしては、ErbB1(HER-1)、ErbB2(HER-2)、ErbB3(HER-3)が挙げられ、FGFRとしては、FGFR-1(Flg、N-Sam)、FGFR-2(Bek、K-Sam、KGFR)、FGFR-3が挙げられる。
【0020】
本発明において、「細胞賦活化」とは、細胞の増殖又は活性を維持又は亢進させることを意味し、細胞賦活化剤は、抗老化剤と同義である。
【0021】
本発明に係る上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体発現促進剤、上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤におけるアニスの抽出物の含有量は、抽出物の性状(抽出液、濃縮物、又は乾燥物)により異なり、特に限定されないが、例えば、当該薬剤全量に対して、0.00001~10重量%であることが好ましく、0.0001~1重量%であることがより好ましい。
【0022】
また、アニスの抽出物は、上皮系細胞又は間葉系細胞を再生医療に使用するために培養する際に、当該細胞を賦活化するための培地添加剤としても使用することができる。上皮系細胞又は間葉系細胞は、初代培養細胞、継代培養細胞又は凍結細胞のいずれであってもよい。
【0023】
2.皮膚外用組成物
本発明の上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体の発現促進剤、上皮系細胞又は間葉系細胞の賦活化剤(以下、「本発明の剤」という)は、そのまま使用することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに化粧品、医薬品、医薬部外品などの組成物に配合することができる。特に、皮膚外用組成物に配合して提供することが好ましい。
【0024】
本発明の剤は、上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体の発現を促進し、当該細胞を賦活化することができるので、当該剤を含む皮膚外用組成物は、上記の上皮系細胞又は間葉系細胞の機能(増殖能又は分化能など)が低下することに起因する疾患又は病態を治療、改善、及び予防するのに有効である。例えば、表皮角化細胞(ケラチノサイト)又はその幹細胞の機能低下が起因となる疾患又は病態としては、アトピー性皮膚炎、乾癬(紅斑、鱗屑、落屑を伴う)、熱傷や創傷の治癒の遅れ、肌荒れ、乾燥肌、敏感肌、角質肥厚、シミ、くすみ、毛穴のひらきなどが挙げられ、真皮線維芽細胞又はその幹細胞の機能低下が起因となる疾患又は病態としては、例えば、シワ、タルミ、ほうれい線(鼻唇溝)、マリオネットライン、ハリや弾力の低下、潤いやツヤの不足、ごわつき、くすみ、日光弾性線維症、強皮症、線維肉腫、色素性乾皮症、皮膚組織球腫、線状皮膚萎縮症(皮膚線条)、褥瘡、瘢痕、母斑、肝斑などが挙げられる。
【0025】
また、皮膚外用組成物には、頭皮や毛髪に使用するのに適した製剤形態に製剤化した毛髪用組成物もまた包含される。当該毛髪用組成物は、脱毛症の予防及び/又は改善のために使用することができる。ここで、「脱毛症の予防及び/又は改善」には、脱毛や薄毛の発生の阻止、脱毛や薄毛の程度(本数や範囲)の改善、脱毛や薄毛の進行速度の低下、脱毛や薄毛に伴う毛髪の光沢や弾性の減少の抑制などが含まれる。また、脱毛症の予防及び/又は改善効果は、頭髪に直接な作用機序を示す場合と頭部における経皮的な作用機序を示す場合の両方を含む。また、本発明において、脱毛症として、例えば、加齢、疾患、紫外線や過労などの種々のストレスなどにより、毛髪の一部又は全部が抜けて、頭皮の一部又は全体が透けて見える症状をいう。脱毛症には、例えば、男性型脱毛症(AGA)、びまん性脱毛症(FAGA)、円形脱毛症、老人性脱毛症、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、産後(分娩後)脱毛症、機械性(圧迫性若しくは牽引性)脱毛症、先天性脱毛症、火傷又は外傷後の脱毛症、抗がん剤による薬剤性脱毛症、瘢痕性脱毛症(毛孔性扁平苔癬、紅斑性狼瘡、禿髪性毛包炎、頭部乳頭状皮膚炎等)、トリコチロマニア(抜毛症)などが含まれるが、これらに限定はされない。
【0026】
本発明の皮膚外用組成物は、抗老化用化粧品とすることが特に好ましい。ここで、「抗老化」とは、加齢や光老化のみならず、乾燥、紫外線、過度な皮膚洗浄、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、生活習慣(睡眠や喫煙習慣)といった様々な内的因子又は外的因子による皮膚細胞の機能や活性の低下を抑制し、キメが整い、ハリやツヤのある若々しく健康な肌状態に導くことをいう。具体的には、表皮細胞、真皮細胞、毛乳頭細胞やそれらの幹細胞の機能(増殖能、分化能)の低下を抑制することによって、乾燥肌や荒れ肌、皮膚のシワ、タルミ、くすみ、ハリの低下、硬化、脱毛等を予防又は改善することをいう。
【0027】
本発明の剤を化粧品や医薬部外品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水-油二層系、又は水-油-粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該化粧品や医薬部外品は、本発明の剤とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
【0028】
化粧品や医薬部外品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、頭皮用ローション、頭皮用クリーム、ヘアトニック、育毛剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の剤を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて賦形剤、増粘剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、保存剤、分散剤、乳化剤、ゲル化剤、色素、香料等を用いることができる。本発明の医薬品に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤(パップ剤、プラスター剤)などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。本発明の医薬品を上記の各形態で提供する場合、通常当業者に用いられる製法、たとえば日本薬局方の製剤総則[2]製剤各条に示された製法等により製造することができる。
【0030】
本発明の化粧品、医薬品、医薬部外品における本発明の剤の含有量は特に限定されないが、製剤(組成物)全重量に対して、アニスの抽出物の乾燥物に換算して、0.001~30重量%が好ましく、0.01~10重量%がより好ましい。上記の量はあくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果などを考慮して適宜設定・調整すればよい。また、製剤化における有効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加してもよく、作業性を考えて適宜選択すればよい。
【実施例】
【0031】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特記していない場合は、実施例に示す%とは重量%を示す。
【0032】
[実施例1]アニスの抽出物の製造例
以下に、アニスを用いた溶媒抽出物の製造例を示す。
【0033】
(製造例1)アニス種子の熱水抽出物の調製
アニス種子10gに200mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して、アニス種子の熱水抽出物を1.9g得た。
【0034】
(製造例2)アニス種子の50%エタノール抽出物の調製
アニス種子10gに200mLの50%エタノールを加え、室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固することで、アニス種子の50%エタノール抽出物を1.6g得た。
【0035】
(製造例3)アニス種子のエタノール抽出物の調製
アニス種子10gに200mLのエタノールを加え、室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固することで、アニス種子のエタノール抽出物を0.4g得た。
【0036】
(製造例4)アニス種子のヘキサン抽出物の調製
アニス種子10gに200mLのヘキサンを加え、室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固することで、アニス種子のヘキサン抽出物を0.3g得た。
【0037】
(製造例5)アニス種子の1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
アニス種子10gを200mLの1,3-ブチレングリコールに室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過して、アニス種子の1,3-ブチレングリコール抽出物を1.91g得た。
【0038】
[実施例2]アニスの抽出物の皮膚細胞賦活化効果の評価
実施例1において製造したアニス種子の各抽出物の皮膚細胞賦活化効果を、上皮系細胞又は間葉系細胞における成長因子受容体発現促進効果及び当該細胞の増殖促進効果に基づき評価した。
【0039】
(実験例1)アニス種子の抽出物の表皮幹細胞における成長因子受容体発現促進効果の評価
表皮由来細胞として市販の正常ヒト成人表皮角化細胞(クラボウ社製)を用い、特開2017-055721号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:Genbank number: Nucleotide NM_002507.3; Protein NP_002498.1)を指標として表皮幹細胞を分離した。Humedia-KG2培地(クラボウ社製)で維持した上記表皮幹細胞を5×103個となるように96ウェルプレート(Greiner社製)に播種した。24時間培養した後、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)の最終濃度が100μg/mLとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞を4%PFA/PBSで固定し、0.2%Triton-X-100(wako社製)/PBSを用いて透過処理を行った後、抗EGFR抗体(Gene Tex社製)及び蛍光標識2次抗体で処理し、免疫染色を行った。また、DAPI染色により個々の細胞の核を標識した。その後、蛍光顕微鏡及び画像解析ソフトウエア(ImageJ)を用いて、細胞あたりの上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor:EGFR)の発現量(EGFR蛍光強度/細胞数)を算出した。被験物質未添加時のEGFR発現量をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、相対EGFR発現量を解析した。
【0040】
(実験例2)アニス種子の抽出物の表皮細胞における成長因子受容体発現促進効果の評価
表皮由来細胞として市販の正常ヒト成人表皮角化細胞(クラボウ社製)を用い、特開2017-055721号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:Genbank number: Nucleotide NM_002507.3; Protein NP_002498.1)を指標として表皮幹細胞を分離した。その際、表皮幹細胞として分離されなかった細胞を表皮細胞として、Humedia-KG2培地(クラボウ社製)で5×103個となるように96ウェルプレート(Greiner社製)に播種した。24時間培養した後、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)の最終濃度が100μg/mLとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞を4%PFA/PBSで固定し、0.2%Triton-X-100(wako社製)/PBSを用いて透過処理を行った後、抗EGFR抗体(Gene Tex社製)及び蛍光標識2次抗体で処理し、免疫染色を行った。また、DAPI染色により個々の細胞の核を標識した。その後、蛍光顕微鏡及び画像解析ソフトウエア(ImageJ)を用いて、細胞あたりの上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)の発現量(EGFR蛍光強度/細胞数)を算出した。被験物質未添加時のEGFR発現量をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、相対EGFR発現量を解析した。
【0041】
実験例1及び実験例2で得られた結果を下記表1に示す。
【0042】
【0043】
表1に示すように、アニス種子の抽出物(製造例1~5)は、上皮系細胞(表皮幹細胞及び表皮細胞)におけるEGFR発現の促進効果を有することが認められた。特に表皮幹細胞におけるEGFR発現の促進効果が顕著であった。
【0044】
(実験例3)アニス種子の抽出物の真皮幹細胞における成長因子受容体発現促進効果の評価
真皮由来細胞として市販のヒト皮膚線維芽細胞(東洋紡株式会社製)を用い、特開2017-093383号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:Genbank number: Nucleotide NM_002507.3; Protein NP_002498.1)を指標として真皮幹細胞を分離した。15%FBS含有αMEM培地(Thermo社製)で維持した真皮幹細胞を4×103個となるように96ウェルプレート(Greiner社製)に播種した。24時間培養した後、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)の最終濃度が100μg/mLとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞を4%PFA/PBSで固定し、0.2%Triton-X-100(wako社製)/PBSを用いて透過処理を行った後、抗FGFR1抗体(Gene Tex社製)及び蛍光標識2次抗体で処理し、免疫染色を行った。また、DAPI染色により個々の細胞の核を標識した。その後、蛍光顕微鏡及び画像解析ソフトウエア(ImageJ)を用いて、細胞あたりの線維芽細胞成長因子受容体1(fibroblast growth factor receptor 1:FGFR1)の発現量(FGFR1蛍光強度/細胞数)を算出した。被験物質未添加時のFGFR1発現量をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、相対FGFR1発現量を解析した。
【0045】
(実験例4)アニス種子の抽出物の真皮線維芽細胞における成長因子受容体発現促進効果の評価
真皮由来細胞として市販のヒト皮膚線維芽細胞(東洋紡株式会社製)を用い、特開2017-093383号公報に記載の方法に準じて、NGFR(nerve growth factor receptor:Genbank number: Nucleotide NM_002507.3; Protein NP_002498.1)を指標として真皮幹細胞を分離した。その際、真皮幹細胞として分離されなかった細胞を真皮線維芽細胞として10%FBS含有DMEM培地(ナカライ社製)で4×103個となるように96ウェルプレート(Greiner社製)に播種した。24時間培養した後、被験物質(実施例1で製造したアニスの各抽出物)の最終濃度が100μg/mLとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞を4%PFA/PBSで固定し、0.2%Triton-X-100(wako社製)/PBSを用いて透過処理を行った後、抗FGFR1抗体(Gene Tex社製)及び蛍光標識2次抗体で処理し、免疫染色を行った。また、DAPI染色により個々の細胞の核を標識した。その後、蛍光顕微鏡及び画像解析ソフトウエア(ImageJ)を用いて、細胞あたりの線維芽細胞成長因子受容体1(fibroblast growth factor receptor 1:FGFR1)の発現量(FGFR1蛍光強度/細胞数)を算出した。被験物質未添加時のFGFR1発現量をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、相対FGFR1発現量を解析した。
【0046】
(実験例5)アニス種子の抽出物の毛乳頭細胞における成長因子受容体発現促進効果の評価
ヒトの毛髪を毛抜きで採取し、メス等を用いて毛包組織の毛乳頭を含む組織を回収した。PBS(-)にて洗浄した後、ピンセット等を用いて毛母に包まれている毛乳頭を摘出した。摘出した毛乳頭を培養プレートにスクラッチし、その後、10%FBS含有DMEM培地(ナカライ社製)を用いてコンフルエントになるまで維持した。コンフルエントになった細胞を回収し、同培養プレートに再び播種し、その後生着し、増殖している細胞を毛乳頭細胞として以下の試験に用いた。
【0047】
上記の毛乳頭細胞を4×103個となるように96ウェルプレート(Greiner社製)に播種した。24時間培養した後、被験物質(実施例1で製造したアニスの各抽出物)の最終濃度が100μg/mLとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞を4%PFA/PBSで固定し、0.2%Triton-X-100(wako社製)/PBSを用いて透過処理を行った後、抗FGFR1抗体(Gene Tex社製)及び蛍光標識2次抗体で処理し、免疫染色を行った。また、DAPI染色により個々の細胞の核を標識した。その後、蛍光顕微鏡及び画像解析ソフトウエア(ImageJ)を用いて、細胞あたりの線維芽細胞成長因子受容体1(Fibroblast Growth Factor Receptor 1:FGFR1)の発現量(FGFR1蛍光強度/細胞数)を算出した。被験物質未添加時のFGFR1発現量をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の相対FGFR1発現量を解析した。
【0048】
実験例3~5で得られた結果を下記表2に示す。
【0049】
【0050】
表2に示すように、アニス種子の抽出物(製造例1~5)は、間葉系細胞(真皮幹細胞、線維芽細胞、及び毛乳頭細胞)におけるFGFR1発現の促進効果を有することが認められた。特に真皮幹細胞におけるFGFR1発現の促進効果が顕著であった。
【0051】
(実験例6)アニス種子の抽出物の表皮幹細胞に対する細胞増殖促進効果の評価
実験例1で用いた表皮幹細胞を、キットに付属のEGFを添加していないHumedia-KG2培地(クラボウ社製)で細胞数が5×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)を最終濃度が100μg/mLとなるように、また、EGFを添加する場合は最終濃度が10μMとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて洗浄し、Cell Counting Kit-8(同仁堂社製):DMEM(ナカライ社製)=10:1の培地に入れ替え、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。細胞数は、450nmの吸光度値から、650nmの吸光度値を引いた値にて算出し、試料未添加の細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、表皮幹細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0052】
(実験例7)アニス種子の抽出物の表皮細胞に対する細胞増殖促進効果の評価
実験例2で用いた表皮細胞を、キットに付属のEGFを添加していないHumedia-KG2培地(クラボウ社製)で細胞数が5×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)を最終濃度が100μg/mLとなるように、また、EGFを添加する場合は最終濃度が10μMとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて洗浄し、Cell Counting Kit-8(同仁堂社製):DMEM(ナカライ社製)=10:1の培地に入れ替え、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。細胞数は、450nmの吸光度値から、650nmの吸光度値を引いた値にて算出し、試料未添加の細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、表皮細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0053】
実験例6及び実験例7で得られた結果を下記表3に示す。
【0054】
【0055】
表3に示すように、アニス種子の抽出物(製造例1~5)は、EGFの存在下(EGF(+))において上皮系細胞(表皮幹細胞、表皮細胞)に対して優れた増殖促進効果を有することが認められた。EGFの非存在下(EGF(-))では当該効果がないことから、アニス種子の抽出物による上記細胞の増殖促進効果は、成長因子の発現促進によるものではなく、成長因子受容体の発現促進によるものと考えられた。
【0056】
(実験例8)アニス種子の抽出物の真皮幹細胞に対する細胞増殖促進効果の評価
実験例3で用いた真皮幹細胞を、1%FBS含有αMEM培地(Thermo社製)で細胞数が3×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)を最終濃度が100μg/mLとなるように、また、FGFを添加する場合は最終濃度が10μMとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて洗浄し、Cell Counting Kit-8(同仁堂社製):DMEM(ナカライ社製)=10:1の培地に入れ替え、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。細胞数は、450nmの吸光度値から、650nmの吸光度値を引いた値にて算出し、試料未添加の細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、真皮幹細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0057】
(実験例9)アニス種子の抽出物の真皮線維芽細胞に対する細胞増殖促進効果の評価
実験例4で用いた真皮線維芽細胞を、1%FBS含有DMEM培地(ナカライ社製)で細胞数が3×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)を最終濃度が100μg/mLとなるように、また、FGFを添加する場合は最終濃度が10μMとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて洗浄し、Cell Counting Kit-8(同仁堂社製):DMEM(ナカライ社製)=10:1の培地に入れ替え、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。細胞数は、450nmの吸光度値から、650nmの吸光度値を引いた値にて算出し、試料未添加の細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、真皮線維芽細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0058】
(実験例10)アニス種子の抽出物の毛乳頭細胞に対する細胞増殖促進効果の評価
実験例5で用いた毛乳頭細胞を、1%FBS含有DMEM培地(ナカライ社製)で細胞数が3×103個となるように96ウェルプレート(Falcon社製)に播種した。次に、被験物質(実施例1で製造したアニス種子の各抽出物)を最終濃度が100μg/mLとなるように、また、FGFを添加する場合は最終濃度が10μMとなるように添加し、24時間培養した。培養終了後、細胞をPBS(-)にて洗浄し、Cell Counting Kit-8(同仁堂社製):DMEM(ナカライ社製)=10:1の培地に入れ替え、2時間培養した後、マイクロプレートリーダーを用いて450nm及び650nmにおける吸光度を測定した。細胞数は、450nmの吸光度値から、650nmの吸光度値を引いた値にて算出し、試料未添加の細胞数をコントロールとし、コントロールを100(%)とした場合の、被験物質添加時の細胞数の増減(%)を算出し、毛乳頭細胞増殖促進効果の評価を行った。
【0059】
実験例8~10で得られた結果を下記表4に示す。
【0060】
【0061】
表4に示すように、アニス種子の抽出物(製造例1~5)は、FGFの存在下(FGF(+))において間葉系細胞(真皮幹細胞、線維芽細胞、及び毛乳頭細胞)に対して増殖促進効果を有することが認められた。FGFの非存在下(FGF(-))では当該効果がないことから、アニス種子の抽出物による上記細胞の増殖促進効果は、成長因子の発現促進によるものではなく、成長因子受容体の活性化によるものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、抗老化用の化粧品、医薬部外品、医薬品の製造分野、及び再生医療、再生美容、抗加齢等の組織再生や恒常性維持の分野において有用である。