(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】筋肉疲労改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/48 20060101AFI20241219BHJP
A61K 36/46 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20241219BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241219BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241219BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20241219BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20241219BHJP
A61P 21/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K36/48
A61K36/46
A61P43/00 107
A61K8/9789
A61Q19/00
A61K9/06
A23L33/105
A23G3/34
A23L2/00 F
A23L2/52
A61P21/00
(21)【出願番号】P 2020204234
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平川 真志
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】山羽 宏行
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-016003(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0125994(KR,A)
【文献】特開2008-162897(JP,A)
【文献】特表2015-522083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158143(US,A1)
【文献】Afr. J. Microbiol. Res.,2009年,3, [5],p.287-291
【文献】体力化学,2016年,65, [1],p.128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/48
A61K 36/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする筋細胞におけるカルノシン産生促進剤。
【請求項2】
チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする筋細胞におけるカルノシン分解抑制剤。
【請求項3】
チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする筋細胞におけるイオンポンプ活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする筋細胞におけるカルノシン合成促進剤、筋細胞におけるカルノシン分解抑制剤、筋細胞におけるイオンポンプ活性化剤、及び筋肉疲労を改善又は予防するための組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筋肉疲労とは、筋肉の運動によって引き起こされる、筋収縮時の筋張力の低下現象のことをいい、中枢神経系から筋肉に至る多くの過程が関与する。筋肉疲労を引き起こす原因としては、乳酸由来の水素イオンの増加によるpHの乱れ、筋細胞外のカリウムイオンの増加などが知られている(非特許文献1)。
【0003】
カルノシンは、ヒト等の哺乳動物において、筋肉や神経組織に高濃度に存在しているペプチドである。カルノシンの作用としては、プロトンバッファーリング作用等が知られており、生体内で様々な機能を発揮しているが、血清や組織中に存在するカルノシン分解酵素によってカルノシンが分解されることが、カルノシンの機能発揮の妨げとなっている。筋肉では、運動による乳酸の蓄積と連動して、水素イオンが生成され、酸-塩基のバランスが崩れると疲労状態となるが、カルノシンは筋肉中の酸と塩基のバランスを保ち、筋肉疲労を抑制する役割を果たす(非特許文献2)。
【0004】
イオンポンプは細胞膜において細胞内外のイオン輸送を行うタンパク質である。Na,K-ATPaseは細胞の形質膜に存在し、ATPの加水分解エネルギーを用いてナトリウムイオンとカリウムイオンの能動輸送を行う。筋細胞においては、細胞内のATP1分子の加水分解に伴って、3分子のナトリウムイオンを細胞内から細胞外へ、2分子のカリウムイオンを細胞外から細胞内へ輸送することによりナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度勾配を調節し、細胞の興奮性を維持する機能を果たす。筋細胞外にカリウムイオンが蓄積すると細胞の興奮性が維持されず、筋収縮が妨げられることで筋肉は疲労状態となることが知られているが、イオンポンプの働きによって細胞外のカリウムイオンが細胞内に取り込まれることで筋肉疲労は解消されると考えられる(非特許文献3)。
【0005】
従って、筋肉疲労の改善又は予防の為には、筋肉中のカルノシン量を増加させること及びイオンポンプの活性化が重要である。今までに、筋肉疲労改善剤として、ロンガンの果実と大豆を納豆菌で発酵させて得られた発酵物を有効成分とする筋肉疲労回復剤(特許文献1)等が知られている。
【0006】
今までに、チョウマメの抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗酸化剤(特許文献2)、パキシリン刺激剤(特許文献3)等が知られている。また、アルペンローゼの抽出物を用いた毛髪増殖を誘導するための方法(特許文献4)、しわ防止用皮膚外用組成物(特許文献5)等が知られている。しかしながら、チョウマメ又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする、筋細胞におけるカルノシン産生促進剤、筋細胞におけるカルノシン分解抑制剤、筋細胞におけるイオンポンプ活性化剤、筋肉疲労を改善又は予防するための組成物については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-008016
【文献】特開2007-16003
【文献】特表2013-515054
【文献】特表2015-522083
【文献】特表2015-178464
【非特許文献】
【0008】
【文献】片山憲史:筋疲労,体力科学,43,309~317,1994
【文献】Nutrients.,2(1):75-98,2010
【文献】J.Appl.Physiol.,104:288-295,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決する課題は、カルノシン産生を高める、カルノシン分解を抑制する及びイオンポンプを活性化する植物由来成分を見出し、作用点が明確であり、且つ優れた筋肉疲労を改善又は予防するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題の解決に向け鋭意検討を行った結果、チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物が筋細胞における優れたカルノシン産生促進効果、カルノシン分解抑制効果及びイオンポンプ活性化効果を有することを見出した。更に、本発明者らは、チョウマメ又はアルペンローゼの抽出物を含有する組成物に、優れた筋肉疲労を改善又は予防する効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする、筋細胞におけるカルノシン産生促進剤、筋細胞におけるカルノシン分解抑制剤、筋細胞におけるイオンポンプ活性化剤及び筋肉疲労を改善又は予防するための組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物は、筋細胞におけるカルノシン産生促進効果、カルノシン分解抑制効果及びイオンポンプ活性化効果に優れていた。また、この抽出物を含有することを特徴とする筋肉疲労を改善又は予防するための組成物は、安全で、筋肉疲労改善及び予防効果に優れていた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における筋細胞とは、動物体の種々の筋肉を由来とする細胞種であり、骨格筋、平滑筋及び心筋等を由来とするものを含む。
【0014】
本発明におけるカルノシンは、β―アラニンとヒスチジンとで構成されるジペプチドであり、β―アラニルヒスチジンとも呼ばれる。カルノシンには、D体(D-カルノシン)、L体(L-カルノシン)及びDL体(DL-カルノシン)が存在し、本発明においてはいずれも含まれる。生体内におけるカルノシン産生に関わる因子としては、カルノシン合成酵素(carnosine synthase 1)が知られている。カルノシン分解に関わる因子としては、カルノシン分解酵素(carnosine dipeptidase 1及びcarnosine dipeptidase 2)が知られている。
【0015】
本発明におけるイオンポンプは、Na,K-ATPaseのことを指し、Na-ポンプ或いはNa,K-ポンプとも呼ばれる。Na,K-ATPaseは、触媒機能を持つαサブユニットと糖タンパク質のβサブユニットから構成される。また、組織によってはγサブユニットも含む3種類のサブユニットから構成されている。αサブユニットは4種(ATPase Na+/K+ transporting subunit alpha 1、ATPase Na+/K+ transporting subunit alpha 2、ATPase Na+/K+ transporting subunit alpha 3、及びATPase Na+/K+ transporting subunit alpha 4)、βサブユニットは3種(ATPase Na+/K+ transporting subunit beta 1、ATPase Na+/K+ transporting subunit beta 2及びATPase Na+/K+ transporting subunit beta 3)、γサブユニットは1種(FXYD domain containing ion transport regulator 2)のアイソフォームがそれぞれ知られているが、本発明においてはいずれのアイソフォームから構成されるイオンポンプも含まれる。
【0016】
本発明における筋肉疲労とは、運動によって引き起こされる筋力を生み出す能力自体の低下、もしくはこれらの能力が破綻することを防ぐために生じる筋力の抑制のことである。また、激しい運動によって生じる筋肉痛や、急な運動によって生じる腕や足のだるさ、長時間一定の姿勢をとることによる肩こり、腰痛も含む。
【0017】
本発明に用いるチョウマメは、マメ目マメ科チョウマメ属の植物であり、学名:Clitoria ternateaである。原産は東南アジアであり、熱帯・亜熱帯地域に分布している。チョウマメはつる性の一年草で、良く伸びると長さ5メートルにもなる。小葉は楕円形、5個から9個の奇数羽状複葉をなす。別名でクリトリア、蝴蝶花、藍胡蝶、バタフライ・ピー、アンチャンとも呼ばれる。
【0018】
本発明におけるチョウマメの抽出物には、チョウマメの植物体が用いられ、部位としては、花、豆果、葉、根等の植物体の一部又は全草から抽出したものを利用することができる。植物を組織培養したカルスを用いても良い。好ましくは、「チョウマメ花エキスBG-50」(香栄興業)が市販されているので、それを用いても良い。
【0019】
本発明に用いるアルペンローゼは、ツツジ目ツツジ科ツツジ属の植物であり、学名:Rhododendron ferrugineumである。アルペンローゼはスイスアルプス植物の一つであり、ヨーロッパ・アルプスやピレネー山脈、ジュラ山脈に分布し、1600-2200メートルの亜高山地帯で生育する。アルペンローゼは多年生の常緑低木で、特徴的な濃いピンクから紫の雌雄同体の花と濃い緑色の楕円形の葉がある。
【0020】
本発明におけるアルペンローゼの抽出物には、アルペンローゼの植物体が用いられる。植物を組織培養したカルスを用いても良い。好ましくは、「アルパインローズ アクティブ」(エイチ・ホルスタイン)が市販されているので、それを用いることができる。
【0021】
本発明に用いるチョウマメ及びアルペンローゼの抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温抽出したものであっても良い。また、抽出には、植物体をそのまま使用しても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行っても良い。抽出溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は一種でも二種以上を混合して用いても良い。特に好ましい抽出溶媒としては、水-1,3-ブチレングリコール系の混合極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えばチョウマメ及びアルペンローゼの植物体(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であれば良いが、抽出後に濃縮を行ったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類や抽出時の圧力等によって適宜選択できる。
【0022】
チョウマメ及びアルペンローゼの抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良いが、必要に応じて、本発明の効果を奏する範囲で、濃縮(減圧濃縮、膜濃縮等による濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いても良い。更には、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0023】
本発明は、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内で、医薬品、医薬部外品、化粧品又は食品等に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、美白剤、キレート剤、賦形剤、皮膜剤、甘味料、酸味料等の成分が含有されていても良い。
【0024】
本発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、軟膏、パップ剤、錠菓、カプセル剤、点眼剤、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅、チョコレート、ガム、飴、飲料、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤、坐剤、注射用溶液等が挙げられる。
【0025】
外用の場合、本発明に用いる上記抽出物の含有量は、固形物に換算して0.0001重量%以上が好ましく、0.001~10重量%がより好ましい。更に、0.01~5重量%が最も好ましい。0.0001重量%未満では十分な効果は望みにくい。10重量%を越えると、効果の増強は認められにくく不経済である。
【0026】
内用の場合、摂取量は年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なる。通常、成人1人当たりの1日の摂取量としては、5mg以上が好ましく、10mg~5gがより好ましい。更に、20mg~2gが最も好ましい。
【0027】
次に本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。製造例に示す%とは重量%を、処方例に示す含有量の部とは重量部を示す。
【実施例】
【0028】
本発明のチョウマメの抽出物は、製造例として下記の抽出を行うことができる。
【0029】
(製造例1)チョウマメの50%1,3-ブチレングリコール抽出物の調製
チョウマメの花の乾燥物5gを100mLの50%1,3-ブチレングリコール水溶液に室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過してチョウマメの50%1,3-ブチレングリコール抽出物を89.8g得た。
【0030】
(製造例2)チョウマメの熱水抽出物の調製
チョウマメの花の乾燥物5gに50mLの水を加え、95~100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してチョウマメの熱水抽出物を1.3g得た。
【0031】
(製造例3)チョウマメの50%エタノール抽出物の調製
チョウマメの地上部の乾燥物5gを50mLの50%エタノール水溶液に室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してチョウマメの50%エタノール抽出物を1.18g得た。
【0032】
(製造例4)チョウマメのエタノール抽出物の調製
チョウマメの地上部の乾燥物5gを50mLのエタノールに室温で7日間浸漬し抽出を行った。得られた抽出液を濾過した後、エバポレーターで濃縮乾固してチョウマメのエタノール抽出物を1.15g得た。
【0033】
(処方例1) 軟膏
処方 含有量(部)
1.チョウマメの50%1,3-ブチレングリコール抽出物(製造例1)0.5
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6~8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0034】
(処方例2) 軟膏
処方 含有量(部)
1.アルペンローゼの抽出物(エイチ・ホルスタイン) 0.5
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6~8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0035】
(処方例3) クリーム
処方 含有量(部)
1.チョウマメの50%エタノール抽出物(製造例3) 0.1
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.1,3-ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0036】
(処方例4) クリーム
処方 含有量(部)
1.アルペンローゼ抽出物(エイチ・ホルスタイン) 0.1
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.1,3-ブチレングリコール 8.5
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0037】
(処方例5) 化粧水
処方 含有量(部)
1.チョウマメの熱水抽出物(製造例2) 0.1
2.1,3-ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~6及び11と、成分7~10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0038】
(処方例6) 乳液
処方 含有量(部)
1.チョウマメのエタノール抽出物(製造例4) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分10~13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、更に30℃まで冷却して製品とする。
【0039】
(処方例7) ゲル剤
処方 含有量(部)
1.チョウマメの50%1,3-ブチレングリコール抽出物(製造例1)0.05
2.アルペンローゼ抽出物(エイチ・ホルスタイン) 0.05
3.エタノール 5.0
4.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
5.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.1
6.香料 適量
7.1,3-ブチレングリコール 5.0
8.グリセリン 5.0
9.キサンタンガム 0.1
10.カルボキシビニルポリマー 0.2
11.水酸化カリウム 0.2
12.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分3~6と、成分1、2及び7~12をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
【0040】
(処方例8) パック
処方 含有量(部)
1.チョウマメの熱水抽出物(製造例2) 0.05
2.アルペンローゼの抽出物(エイチ・ホルスタイン) 0.05
3.ポリビニルアルコール 12.0
4.エタノール 5.0
5.1,3-ブチレングリコール 8.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
7.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
8.クエン酸 0.1
9.クエン酸ナトリウム 0.3
10.香料 適量
11.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分1~11を均一に溶解し製品とする。
【0041】
(処方例9) ファンデーション
処方 含有量(部)
1.チョウマメの50%エタノール抽出物(製造例3) 0.1
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
10.ベントナイト 0.5
11.プロピレングリコール 4.0
12.トリエタノールアミン 1.1
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.二酸化チタン 8.0
15.タルク 4.0
16.ベンガラ 1.0
17.黄酸化鉄 2.0
18.香料 適量
19.精製水にて全量を100とする
[製造方法]成分2~8を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分19に成分9を良く膨潤させ、続いて、成分1及び10~13を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分14~17を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この油相に水相をかき混ぜながら加え、乳化する。その後、冷却し、45℃で成分18を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0042】
(処方例10) 浴用剤
処方 含有量(部)
1.チョウマメのエタノール抽出物(製造例4) 0.1
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号(1) 適量
4.香料 適量
5.硫酸ナトリウムにて全量を100とする
[製造方法]成分1~5を均一に混合し製品とする。
【0043】
(処方例11) 散剤
処方 含有量(部)
1.チョウマメの熱水抽出物(製造例2) 1.0
2.乾燥コーンスターチ 39.0
3.微結晶セルロース 60.0
[製造方法]成分1~3を混合し、散剤とする。
【0044】
(処方例12) 錠剤
処方 含有量(部)
1.チョウマメのエタノール抽出物(製造例4) 5.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
[製造方法]成分1~4を混合し、次いで成分5の水溶液を結合剤として加えて顆粒成型する。成型した顆粒に成分6を加えて打錠する。1錠0.52gとする。
【0045】
(処方例13) 錠菓
処方 含有量(部)
1.チョウマメのエタノール抽出物(製造例4) 2.0
2.乾燥コーンスターチ 49.8
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.0
6.香料 0.1
7.精製水 0.1
[製造方法]成分1~4及び7を混合し、顆粒成型する。成型した顆粒に成分5及び6を加えて打錠する。1粒1.0gとする。
【0046】
(処方例14) 飲料
処方 含有量(部)
1.チョウマメの熱水抽出物(製造例2) 0.05
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水 94.8
[製造方法]成分2及び3を少量の水に溶解する。次いで、成分1、4及び5を加えて混合する。
【0047】
次に、本発明の効果を詳細に説明するため、実験例を挙げる。
【0048】
実験例1 筋細胞におけるカルノシン産生及び分解に及ぼすチョウマメ及びアルペンローゼの抽出物の影響
Carns1(carnosine synthase 1)はカルノシンの合成に関わる酵素であり、発現が上昇することでカルノシン産生が促進される。Cndp2(carnosine dipeptidase 2)はカルノシンの分解に関わる酵素であり、発現が低下することでカルノシン量が増加する。そこで、筋細胞におけるカルノシン産生及び分解に及ぼすチョウマメ及びアルペンローゼの抽出物の影響を調べるために、Carns1及びCndp2mRNA発現量の測定を行った。筋肉由来株化細胞(C2C12)を6well plateに播種し、10%FBSを含むDMEM培地にて、37℃、5%CO2条件下で培養した。セミコンフルエントな状態になったところで、最終濃度が固形分濃度として20、200μg/mLになるように調製して1%FBSを含むDMEM培地に溶解させたチョウマメ抽出物(製造例1)又はアルペンローゼ抽出物(エイチ・ホルスタイン)を添加した。添加から24時間後に総RNAの抽出を行った。細胞からの総RNAの抽出はRNAiso Plus(タカラバイオ)を用いて行い、総RNA量は分光光度計(NanoDrop)を用いて260nmにおける吸光度により求めた。mRNA発現量の測定は、細胞から抽出した総RNAを基にしてリアルタイムRT-PCR法により行った。リアルタイムRT-PCR法には、High Capacity RNA-to-cDNA Kit(Applied Biosystems)及びSYBR Select Master Mix(Applied Biosystems)を用いた。即ち、500ngの総RNAを逆転写反応後、PCR反応(95℃:15秒間、60℃:60秒間、40cycles)を行った。その他の操作は定められた方法に従い、Carns1及びCndp2mRNAの発現量を、内部標準であるGapdhのmRNAの発現量に対する割合として求めた。Carns1及びCndp2発現変化は、コントロール(試料未添加)群のCarns1及びCndp2mRNAの発現量に対する試料添加群のCarns1及びCndp2mRNAの発現量の比率として算出した。尚、各遺伝子の発現量の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0049】
Carns1用のプライマーセット
CTTCCTGAGACCCAGGATCG(配列番号1)
AAAGGAGCATGTTTCCAGGG(配列番号2)
Cndp2用のプライマーセット
GCAGTATTCCTGTGACCTTGAC(配列番号3)
TTCTATGTAGTTGAGCCTGTTGAG(配列番号4)
Gapdh用のプライマーセット
TGGAGAAACCTGCCAAGTATG(配列番号5)
CCCTCAGATGCCTGCTTCA(配列番号6)
【0050】
Carns1mRNA発現量の測定結果を表1に示す。筋細胞におけるCarns1mRNA発現量は、チョウマメ及びアルペンローゼの抽出物により増加した。尚、チョウマメの抽出物(製造例2、3及び4)にも同等の効果が認められた。
【0051】
【0052】
Cndp2mRNA発現量の測定結果を表2に示す。筋細胞におけるCndp2mRNA発現量は、チョウマメ及びアルペンローゼの抽出物により減少した。尚、チョウマメの抽出物(製造例2、3及び4)にも同等の効果が認められた。
【0053】
【0054】
従って、チョウマメ及びアルペンローゼの抽出物は、筋細胞におけるカルノシン産生を促進し、カルノシン分解を抑制した。
【0055】
実験例2 筋細胞における酸化ストレスによるイオンポンプ発現低下に及ぼすチョウマメの抽出物の影響
Atp1a2(ATPase Na+/K+ transporting subunit alpha 2)はNa,K-ATPaseを構成するタンパク質であり、発現が低下することでイオンポンプの働きが抑制される。そこで、筋細胞における酸化ストレスによるイオンポンプ発現低下に及ぼすチョウマメの抽出物の影響を調べるために、Atp1a2mRNA発現量の測定を行った。筋肉由来株化細胞(C2C12)を6well plateに播種し、10%FBSを含むDMEM培地にて、37℃、5%CO2条件下で培養した。セミコンフルエントな状態になったところで、最終濃度が100μMとなるよう調製した過酸化水素及び最終濃度が固形分濃度として20μg/mLになるように調製して1%FBSを含むDMEM培地に溶解させたチョウマメ抽出物(製造例1)を添加した。添加から24時間後に総RNAの抽出を行った。実験例1に記載の方法に従い、Atp1a2mRNAの発現量を、内部標準であるGapdhのmRNAの発現量に対する割合として求めた。過酸化水素のみを添加した群及び過酸化水素と試料を添加した群のAtp1a2mRNAの発現変化について、コントロール(過酸化水素及び試料未添加)群のAtp1a2mRNAの発現量に対する比率として算出した。その後、これらの発現量変化率から、試料添加による酸化ストレスによるAtp1a2mRNAの発現量減少の改善率を求めた。尚、Gapdhの発現量の測定に使用したプライマーは実験例1と同様であり、Atp1a2の発現量の測定に使用したプライマーは次の通りである。
【0056】
Atp1a2用のプライマーセット
TTCCCCTACAGTCTCCTCATCTTC(配列番号7)
TGCCCCTCGTTCTTCCTTT(配列番号8)
【0057】
その結果、筋細胞におけるAtp1a2mRNA発現量は、過酸化水素添加による酸化ストレスの影響で減少したが、チョウマメ抽出物の添加により酸化ストレスによるAtp1a2mRNA発現量の減少が12%改善した。尚、チョウマメの抽出物(製造例2、3及び4)にも同等の効果が認められた。
【0058】
従って、チョウマメの抽出物は筋細胞における酸化ストレスによるイオンポンプの働きの低下を改善した。
【0059】
実験例3 筋細胞におけるイオンポンプ発現に及ぼすアルペンローゼの抽出物の影響
Atp1a2(ATPase Na+/K+ transporting subunit alpha 2)はNa,K-ATPaseを構成するタンパク質であり、発現が上昇することでイオンポンプの働きが促進される。そこで、筋細胞におけるイオンポンプ発現に及ぼすアルペンローゼ抽出物の影響を調べるために、Atp1a2mRNA発現量の測定を行った。筋肉由来株化細胞(C2C12)を6well plateに播種し、10%FBSを含むDMEM培地にて、37℃、5%CO2条件下で培養した。セミコンフルエントな状態になったところで、最終濃度が固形分濃度として20、200μg/mLになるように調製して1%FBSを含むDMEM培地に溶解させたアルペンローゼ抽出物(エイチ・ホルスタイン)を添加した。添加から24時間後に総RNAの抽出を行った。実験例1に記載の方法に従い、Atp1a2mRNAの発現量を、内部標準であるGapdhのmRNAの発現量に対する割合として求めた。Atp1a2発現変化は、コントロール(試料未添加)群のAtp1a2mRNAの発現量に対する試料添加群のAtp1a2mRNAの発現量の比率として算出した。尚、各遺伝子の発現量の測定に使用したプライマーは実験例1及び2と同様である。
【0060】
Atp1a2mRNA発現量の測定結果を表3に示す。筋細胞におけるAtp1a2mRNA発現量は、アルペンローゼ抽出物により増加した。
【0061】
【0062】
従って、アルペンローゼ抽出物は、筋細胞におけるイオンポンプの働きを活性化した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に関わる、チョウマメ及び/又はアルペンローゼの抽出物を含有することを特徴とする筋細胞におけるカルノシン合成促進剤、筋細胞におけるカルノシン分解抑制剤、筋細胞におけるイオンポンプ活性化剤、及び筋肉疲労を改善又は予防するための組成物は、各剤の目的に対して優れた改善効果を発揮する。従って、筋肉疲労の改善又は予防を目的とする医薬品、医薬部外品、化粧品及び食品を提供することができる。
【配列表】