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特許7606757マイクロ流体デバイスおよび細胞培養のための使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイスおよび細胞培養のための使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20241219BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20241219BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N15/87 Z
C12M3/00 Z
C12Q1/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021567975
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 AU2020050473
(87)【国際公開番号】W WO2020227772
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】2019901630
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】501401308
【氏名又は名称】ニューサウス イノヴェイションズ プロプライエタリィ リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ノードン、ロバート、アーネスト
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、オズモンド、ツン、イン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528232(JP,A)
【文献】国際公開第2011/035185(WO,A2)
【文献】特表平09-501324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0340631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
C12N15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養用の多層マイクロ流体バイオリアクターであって、当該多層マイクロ流体バイオリアクターは、ヘッダー層を有し、ベース層を有し、かつ、前記ヘッダー層と前記ベース層との間に流体透過性流れ層を有し:
(a)前記流れ層は上面および下面を有し、かつ、前記上面は、細胞の保持のための1つ以上の溝を有し;
(b)前記ベース層は、前記流れ層を横切る気体交換のための気体流経路を提供しており;かつ、
(c)前記ヘッダー層は、前記流れ層上面を覆う流れチャンネルを定めるように構成されており、かつ、前記ヘッダー層は:
(i)第1入口ポートを有し;
(ii)第1出口ポートを有し;
(iii)1つ以上の第1流体入口を有し、前記の1つ以上の第1流体入口は、前記第1入口ポートと前記流れチャンネルとの間の流体連通を提供しており
iv)1つ以上の第1流体出口を有し、前記の1つ以上の第1流体出口は、前記流れチャンネルと前記第1出口ポートとの間の流体連通を提供しており;
(v)第2出口ポートを有し;かつ、
(vi)1つ以上の第2流体出口を有し、前記の1つ以上の第2流体出口は、前記流れチャンネルと前記第2出口ポートとの間の流体連通を提供しており;
前記の1つ以上の第1流体入口および前記の1つ以上の第1流体出口は前記ヘッダー層に位置し、前記の1つ以上の第1流体入口から前記流れチャンネルに入る流体が、前記の1つ以上の第1流体出口に向かって第1流れ方向に移動するようになっており、前記第1流れ方向は、前記の1つ以上の溝を横切って、そこで受け取られる細胞の破壊を最小化させ
前記の1つ以上の第2流体出口は前記ヘッダー層に位置し、前記第2出口ポートを通って前記流れチャンネルから出る流体が、前記の1つ以上の第2流体出口に向かって第2流れ方向に流れるようになっており、前記第2流れ方向は前記の1つ以上の溝に沿っており;かつ、
前記第1流れ方向および前記第2流れ方向が実質的に直交している、
前記多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項2】
前記ヘッダー層がさらに:
- 第2入口ポートを有し;かつ、
- 1つ以上の第2流体入口を有し、前記の1つ以上の第2流体入口は、前記第2入口ポートと前記流れチャンネルとの間の流体連通を提供しており;
前記の1つ以上の第2流体入口から前記流体チャンネルに入る流体が前記第2流れ方向に前記の1つ以上の第2流体出口に向かって流れるように、前記の1つ以上の第2流体入口は、前記の1つ以上の溝の長手方向寸法と実質的に直交する前記ヘッダー層の寸法に沿って位置している、
請求項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項3】
前記第2入口ポートが、1つ以上の媒体源から流体を受け取り、かつ、前記ヘッダー層が、1つ以上の第2流体チャンネルを有し、前記の1つ以上の第2流体チャンネルは、前記第2入口ポートの中に入る前記の1つ以上の媒体源からの前記流体を受け取るためのものである、請求項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項4】
前記の1つ以上の第2流体チャンネルが、前記ヘッダー層、前記流れ層および前記ベース層を通って同一直線上に延びて、当該多層マイクロ流体バイオリアクターを通る鉛直方向チャンネルを形成している、請求項3に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項5】
さらに、前記流れチャンネルを第1流れチャンネルおよび第2流れチャンネルへと分離する選択透過性膜を有し、前記選択透過性膜は、低分子量代謝物の交換を提供する、請求項1~のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項6】
さらに補助ヘッダー層を有し、前記選択透過性膜が前記ヘッダー層と前記補助ヘッダー層との間にあり、そのことによってその間に前記第2流れチャンネルを形成しており、前記補助ヘッダー層は:
(i)補助入口ポートであって、前記第2流れチャンネルと流体連通している前記補助入口ポートおよび
(ii)補助出口ポートであって、前記第2流れチャンネルと流体連通している前記補助出口ポート;
の一方または両方を有し、
前記選択透過性膜が、前記補助入口ポートに入る低分子量流体代謝物の交換および前記補助出口ポートを通る低分子量流体代謝物の除去の一方または両方を提供する、
請求項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項7】
前記の1つ以上の溝が、前記の1つ以上の溝における細胞の非特異的結合を制限するように機能化されている、請求項1~のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項8】
前記の1つ以上の溝が、その上に固定化された捕捉試薬を有し、該捕捉試薬は細胞を選択的に捕捉する、請求項1~のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項9】
前記の1つ以上の溝が、前記の1つ以上の溝における細胞の非特異的結合を制限するポリマーで機能化されている、請求項1~のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項10】
少なくとも1つのさらなる多層マイクロ流体バイオリアクターを含む積み重ねにおける配置用に構成されており、各多層マイクロ流体バイオリアクターは1つ以上の貫通ポートを有し、前記の1つ以上の貫通ポートは、前記ヘッダー層、前記ベース層および前記流れ層のそれぞれを通って同一直線上に延びており、かつ、前記の少なくとも1つのさらなる多層マイクロ流体バイオリアクターの対応貫通ポートとの流体連通を提供る、請求項1~のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項11】
さらに1つ以上の位置合わせ造作部を有し、前記の1つ以上の位置合わせ造作部は、積み重ねられた配置にて少なくとも1つのさらなる多層マイクロ流体バイオリアクターを位置決めするためのものである、請求項10に記載の多層マイクロ流体バイオリアクター。
【請求項12】
バイオリアクター細胞培養システムであって、当該バイオリアクター細胞培養システムは:
(a)少なくとも1つの積み重ねにて配置された、複数の請求項1~11のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクターを有し;
(b)コントローラを有し、前記コントローラは、前記コントローラのメモリに格納された細胞培養プロトコルにしたがって1つ以上の流体ポンプの動作を個別に制御するように構成されており、前記の1つ以上の流体ポンプは、前記の少なくとも1つの積み重ねを通って同一直線上に提供された1つ以上の貫通ポートへと流体を送達し、前記の送達された流体は、前記の格納された細胞培養プロトコルにしたがって前記の少なくとも1つの積み重ねにおける各マイクロ流体バイオリアクターの前記流れチャンネルの中に入る、
前記バイオリアクター細胞培養システム。
【請求項13】
(a)前記の少なくとも1つの積み重ねの下にある、実質的に剛性であるベース板;および、
(b)前記の少なくとも1つの積み重ねを覆うように配置された、実質的に剛性であるカバー板;
の一方または両方を有し、
前記ベース板および前記カバー板はそれぞれ、前記の少なくとも1つの積み重ねに構造的支持を付与る、
請求項12に記載のバイオリアクター細胞培養システム。
【請求項14】
前記の実質的に剛性であるカバー板が複数の開口部を有し、前記の複数の開口部は、前記の1つ以上の積み重ねにおける貫通ポートと1つ以上の流体源および/または廃棄物リザーバーとの間の流体連通を提供している、請求項13に記載のバイオリアクター細胞培養システム。
【請求項15】
前記コントローラが、積み重ねて配置された前記の個別の多層マイクロ流体バイオリアクターの前記の1つ以上の溝から細胞抽出貫通ポートを通しての細胞の抽出を引き起こすように動作可能であり、前記細胞抽出貫通ポートは、前記の多層マイクロ流体バイオリアクターの積み重ねを通って同一直線上に延びており、かつ、前記の個別の多層マイクロ流体バイオリアクターにおける前記第2出口ポートと流体連通してる、請求項1214のいずれか一項に記載のバイオリアクター細胞培養システム。
【請求項16】
さらにカップリングを有し、前記カップリングは、前記のマイクロ流体バイオリアクターの1つ以上の積み重ねからの抽出された細胞の非汚染収集のためのレセプタクルを受け取るためのものである、請求項15に記載のバイオリアクター細胞培養システム。
【請求項17】
複数の多層マイクロ流体バイオリアクターを有する多層バイオリアクターシートであり、前記多層マイクロ流体バイオリアクターはそれぞれ、培養チャンバーを有し、前記培養チャンバーは、1つ以上の溝と1つ以上の貫通ポートを含有しており、前記の1つ以上の貫通ポートは、前記の1つ以上の溝を横切るような第1流れ方向および前記の1つ以上の溝に沿う第2流れ方向の流体の流れを提供しており、前記第1流れ方向および前記第2流れ方向は実質的に直交しており、かつ、前記の1つ以上の貫通ポートは、当該多層バイオリアクターシートの前記層を通して同一直線上に提供されている、前記多層バイオリアクターシート。
【請求項18】
各多層バイオリアクターシートが、少なくとも1枚のその他の多層バイオリアクターシートを有するシートスタックへの配置用に構成されており、前記シートスタックにおける各多層バイオリアクターシートにおける貫通ポートが同一直線上に延びて、各多層バイオリアクターシートにおける個別の多層マイクロ流体バイオリアクターの前記培養チャンバーとの流体連通を提供している、請求項17に記載の多層バイオリアクターシート。
【請求項19】
請求項18に記載のシートスタックに配置された1枚以上の多層バイオリアクターシートとともに使用するためのバイオリアクター細胞培養システムであって、当該システムは:
(a)コントローラを有し、前記コントローラは、前記コントローラのメモリに格納された細胞培養プロトコルにしたがって1つ以上の流体ポンプの動作を個別に制御するためのものであり;
(b)シートスタックヘッダーを有し、前記シートスタックヘッダーは、前記の格納された細胞培養プロトコルにしたがって、当該バイオリアクター細胞培養システムにおける少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーと、前記の少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーへの流れ、または、前記の少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーからの流れを必要とする前記シートスタックにおける多数の貫通ポートとの間の流体カップリングを提供しており;かつ、
(c)1つ以上の流体ポンプを有し、前記の1つ以上の流体ポンプは、前記の格納された細胞培養プロトコルにしたがって、前記多層マイクロ流体バイオリアクターの個別の培養チャンバーへと前記貫通ポートを介して流体を送達する、
前記バイオリアクター細胞培養システム。
【請求項20】
細胞培養、細胞トランスフェクション/形質導入または細胞選択のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層マイクロ流体バイオリアクターまたは請求項12~16または19のいずれか一項に記載のバイオリアクター細胞培養システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2019年5月13日付けで出願のオーストラリア国仮特許出願第2019901630(その内容は、この参照によって本明細書に組み込まれたものと見做されるべきである)からの優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、マイクロ流体バイオリアクターおよび細胞培養における使用のための方法に関する。それはとりわけ、高密度細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターであって、多数の細胞培養プロセスを単一のデバイスへと統合することを可能にする前記高密度細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターに関するが、該高密度細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターのみに関するわけではない。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
細胞および遺伝子治療は、患者の血液から抽出された細胞の改変を伴い、かつ、単回の治療でのいくつかの癌および遺伝子疾患の治療法を提供し得る。細胞および遺伝子治療は臨床的概念証明から規制当局の承認および製品認可へと前進するので、大きな障害は患者固有の治療のスケールアウトであろう。米国および欧州連合における細胞および遺伝子治療の市場は、1年に200,000の患者固有の治療を超えて成長すると見積もられる。治療遺伝子でヒト細胞を改変するための現行の方法は、以下のステップを含む:a)ヒト血液由来の血液幹または免疫細胞の精製;b)ウイルスまたは非ウイルス送達システムを用いた標的細胞への治療DNAまたはRNAの導入;c)ウイルスの侵入および安定的なゲノムの組み込みを促進するための数日間の組織培養による形質導入された細胞の有糸分裂活性。レンチウイルスベクターは、それらの相対的安全性、細胞に対する最小限の有毒性および高い遺伝子移入率のために、臨床試験用に最もよく用いられるベクターのうちの1つである。伝統的なプロセスは、手動のフラスコベースの培養プロセスを利用する大規模な集中製造施設への多額の投資を伴う。これらのプロセスは複雑かつ労働集約的であるだけでなく、それらはオペレータのエラーが起こりやすく、かつ、オープンフラスコの使用に起因する汚染リスクを抱える。さらに、これらのプロセスは、容易に臨床治療用に調整されない。
【0004】
組織培養において細胞を培養する現行の方法は、拡大化の欠如に起因して、または、好ましくない酸素勾配に起因する、増殖し得る(can be grоwn;成長し得る)細胞の数に対する制限に起因して、非効率的であり得る(とりわけ、肝細胞のような酸素要求量が高い細胞タイプについて)。これらの規模が制限された製造プロセスは、扱いにくく、かつ、法外な費用がかかる。さらに、既知の組織培養装置は、流体剪断応力を通る大量の媒体の流れにおける非付着性細胞の喪失を通して非効率的であり得る(とりわけ、ヒト胚性細胞のような剪断応力に対する耐久性が低い細胞タイプについて)。このことは、最大潅流量に対する制限を通して細胞が増殖し得る密度を限定し得る。
【0005】
上記問題のうちの1つ以上を克服もしくは改善すること、または、少なくとも有用な代替案を提供することが望ましい。
【0006】
書類、行為、材料、デバイス、論文などへの参照を含む本明細書に含まれる本発明の背景の説明は、本発明の文脈を説明するために含まれる。このことは、参照された材料のいずれかが請求項のいずれかの優先日において公開されていたこと、既知であったこと、もしくは、共通の一般知識の一部であったことの自白または示唆と見做されるべきではない。
【発明の概要】
【0007】
一態様から見ると、本開示は、細胞培養用多層マイクロ流体バイオリアクターを提供し、当該細胞培養用多層マイクロ流体バイオリアクターは、ヘッダー層を有し、ベース層を有し、かつ、ヘッダー層とベース層との間に流体透過性流れ層を有する。流れ層は上面および下面を有し、かつ、上面は細胞の保持のための1つ以上の溝を有する。ベース層は、流れ層を横切る気体交換のための気体流経路を提供する。ヘッダー層は、流れ層上面を覆う流れチャンネルを定めるように構成され、かつ、ヘッダー層は、(i)第1入口ポート;(ii)第1出口ポート;(iii)第1入口ポートと流れチャンネルとの間の流体連通を提供する、1つ以上の第1流体入口;および(iv)流れチャンネルと第1出口ポートとの間の流体連通を提供する、1つ以上の第1流体出口を有する。1つ以上の流体入口および1つ以上の流体出口はヘッダーに位置し、1つ以上の流体入口から流れチャンネルに入る流体が、1つ以上の流体出口へと向かう第1流れ方向に移動するようになっており、第1流れ方向は、少なくとも1つの溝を横切って、そこで受け取られる細胞の破壊を最小化させる。かかる配置構成では、細胞および媒体は、第1入口ポートに入り、かつ、溝を横切って流れ、交差する流れ方向である第1流れ方向に第1出口ポートにおいて外に出てもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、ヘッダー層はさらに、第2出口ポートを有し、かつ、1つ以上の第2流体出口を有し、該1つ以上の第2流体出口は、流れチャンネルと第2出口ポートとの間の流体連通を提供する。1つ以上の第2流体出口はヘッダーに位置し、第2出口ポートを通って流れチャンネルの外に出る流体(1つ以上の溝に保持された細胞を含有していてもよい)が、1つ以上の第2流体出口に向かって第2流れ方向に流れるようになっており、第2流れ方向は1つ以上の溝に沿う。すなわち、第2流体出口は、溝と直交して走る流れチャンネルの縁部に沿って位置する。したがって、第2流体出口は溝の端部に配置されて、細胞および媒体が第2流れ方向に第2出口ポートにおいて外に出ることを可能にしてもよい。典型的には、第1流れ方向および第2流れ方向は、実質的に直交する。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つ以上の溝は、1つ以上の溝における細胞の非特異的結合を制限するように機能化されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の溝は、1つ以上の溝における細胞の非特異的結合を制限するポリマーで機能化されている。これらのポリマーは、共有結合的に基板に物理吸着してもよく、結合してもよい。それらは、ポリエチレングリコール(PEG)またはプルロニック127のようなPEGコポリマーを含む。表面を不動態化するためのその他のポリマーとしては、炭水化物ポリマー(デキストラン)または両性イオン防汚ポリマーが挙げられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、ヘッダー層はさらに、第2入口ポートを有し、かつ、1つ以上の第2流体入口を有し、1つ以上の第2流体入口は、該第2入口ポートと流れチャンネルとの間の流体連通を提供する。1つ以上の第2流体入口は、1つ以上の第2流体入口から流れチャンネルに入る流体が第2流れ方向に1つ以上の第2出口に向かって流れるように、1つ以上の溝の長手方向寸法と実質的に直交する流れチャンネルの寸法に沿って位置する。かかる配置構成は、第1方向の交差方向の流れ(例えば、媒体の潅流および細胞の播種用)、および、第2方向の長手方向の流れ(例えば、細胞の抽出用)の両方を可能にする。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2入口ポートは1つ以上の媒体源から流体を受け取り、かつ、ヘッダーは、第2入口ポートの中に入る流体媒体を受け取るための1つ以上の第2流体チャンネルを有する。好ましくは、第2流体チャンネルは、ヘッダー層、流れ層およびベース層を通って同一直線上に延びて、当該多層マイクロ流体バイオリアクターを通る鉛直方向チャンネルを形成する。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1入口ポートは1つ以上の媒体源から流体(新しい細胞および培地(culture medium;培養培地・培養媒体)の一方または両方のような)を受け取り、かつ、ヘッダーは、第1入口ポートの中に入る流体媒体を受け取るための1つ以上の第1流体チャンネルを有する。好ましくは、第1流体チャンネルは、ヘッダー層、流れ層およびベース層を通って同一直線上に延びて、当該多層マイクロ流体バイオリアクターを通る鉛直方向チャンネルを形成する。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該多層マイクロ流体バイオリアクターはさらに、流れチャンネルを第1流れチャンネルと第2流れチャンネルに分離する選択透過性膜を有し、該選択透過性膜は、低分子量代謝物の交換を提供する。かかる配置構成では、当該多層マイクロ流体バイオリアクターはさらに、補助ヘッダーを有していてもよく、流体透過性膜はヘッダーと補助ヘッダーとの間にあり、そのことによってその間に第2流れチャンネルを形成する。補助ヘッダーは、(i)第2流れチャンネルと流体連通する補助入口ポートを有し;かつ、任意選択的には(ii)第2流れチャンネルと流体連通する補助出口ポートを有する。選択透過性膜は、第2入口ポートの中に入る低分子量流体代謝物の交換を提供し、かつ、任意選択的には、補助出口ポートを通る低分子量流体代謝物の除去を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、ヘッダーは複数の構造的ポストを有し、該複数の構造的ポストは、流れ層上面に当接したままであるように構成される。代替的/追加的には、ベース層は、(i)流れ層下面に当接したままであるように構成された複数の構造的ポスト、および、(ii)壁もしくは複数の壁部の一方または両方を有していてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、当該多層マイクロ流体バイオリアクターは、流れチャンネルにおける流れを調整するための1つ以上の流れ抵抗体を有する。流れ抵抗体は、当該バイオリアクターの任意の便宜な箇所に配置されてもよく、かつ、それらが調整する流れの上流に配置されても下流に配置されてもよい。典型的には、1つ以上の流れ抵抗体は、曲がりくねった流れ経路(その長さが抵抗の量を決定する)の形態でヘッダー層に提供される。
【0016】
いくつかの実施形態では、当該多層マイクロ流体バイオリアクターは、少なくとも1つのさらなる多層マイクロ流体バイオリアクターを含む積み重ねの配置構成のために構成される。積み重ねの各多層マイクロ流体バイオリアクターは1つ以上の貫通ポートを有し、該1つ以上の貫通ポートは、典型的には使用時に鉛直方向にヘッダー層、ベース層および流れ層のそれぞれを通って同一直線上に延び、かつ、少なくとも1つのさらなる多層マイクロ流体バイオリアクターの対応貫通ポートとの流体連通を提供する。いくつかのかかる配置構成では、積み重ねの配置構成における少なくとも1つのさらなる多層マイクロ流体バイオリアクターの位置決めのために、1つ以上の位置合わせ造作部が提供される。
【0017】
別の態様から見ると、本開示は、少なくとも1つ積み重ねられて配置された本明細書に開示されるような複数の多層マイクロ流体バイオリアクターとともに使用するためのバイオリアクター細胞培養システムを提供する。当該システムはコントローラを有し、該コントローラは、コントローラのメモリに格納された細胞培養プロトコルにしたがって1つ以上の流体ポンプの動作を個別に制御するように構成され、1つ以上の流体ポンプは、少なくとも1つの積み重ねを通して同一直線上に提供された1つ以上の貫通ポートへと流体を送達し、送達された流体は、格納された細胞培養プロトコルにしたがって少なくとも1つの積み重ねにおける各マイクロ流体バイオリアクターの流れチャンバーの中に入る。
【0018】
いくつかの実施形態では、コントローラは、コントローラメモリと通信可能に連結されたプロセッサおよびユーザインターフェースを有し、メモリは、1つ以上の細胞培養プロトコルを実行するための指令を格納し、かつ、該指令は、プロセッサによって遂行されるときには、前記コントローラが、当該バイオリアクター細胞培養システムを動作させて前記の1つ以上の細胞培養プロトコルを実行することを引き起こす。プロセッサは、直接的または例えばクラウドベースのサーバーを介して遠隔的に、並行して多数の細胞培養プロセスを制御するように構成可能であってもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、当該バイオリアクター細胞培養システムは、(a)少なくとも1つの積み重ねの下にある、実質的に剛性であるベース板;および、(b)少なくとも1つの積み重ねを覆うように配置された、実質的に剛性であるカバー板の一方または両方を有する。理想的には、ベース板およびカバー板はそれぞれ、少なくとも1つの積み重ねに構造的支持を付与する。
【0020】
いくつかの実施形態では、実質的に剛性であるカバー板は、1つ以上の積み重ねにおける貫通ポートと1つ以上の流体源および/または廃棄物リザーバーとの間の流体連通を提供する、複数の開口部を有する。カバー板を通して、多数の積み重ねからのポートが、必要とされる流体源および/または廃棄物リザーバーへの接続のために共通のチャンネルへと集まってもよい。
【0021】
典型的には、当該バイオリアクター細胞培養システムは、1つ以上の流体源と流体連通した1つ以上のポンプを有し、該1つ以上のポンプは、1つ以上の細胞培養プロトコルにしたがって個別のカバー板開口部へと流体を送達するようにコントローラによって動作する。
【0022】
いくつかの実施形態では、当該バイオリアクター細胞培養システムは、積み重ねられた配置構成において多層マイクロ流体バイオリアクターを位置合わせするための1つ以上のガイド造作部を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、コントローラは、細胞抽出貫通ポートを通して、積み重ねて配置された個別の多層マイクロ流体バイオリアクターの1つ以上の溝からの細胞の回収を引き起こすように動作可能であり、該細胞抽出貫通ポートは、多層マイクロ流体バイオリアクターの積み重ねを通って同一直線上に(典型的には、使用時、鉛直方向に)延び、かつ、個別の多層マイクロ流体バイオリアクターにおける第2出口ポートと流体連通する。マイクロ流体バイオリアクターの1つ以上の積み重ねから抽出された細胞の非汚染収集のためのレセプタクルを受け取るためのカップリングもまた、提供されてもよい。
【0024】
別の態様から見ると、本開示は、複数の多層マイクロ流体バイオリアクターを有する多層バイオリアクターシートを提供する。多層マイクロ流体バイオリアクターはそれぞれ、培養チャンバーを有し、該培養チャンバーは、1つ以上の溝と、該1つ以上の溝を横切るように流体の流れを提供する1つ以上の貫通ポートを含有し、該1つ以上の貫通ポートは、当該多層バイオリアクターシートの層を通って同一直線上に提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、各多層バイオリアクターシートは、少なくとも1枚のその他の多層バイオリアクターシートを有するシートスタックへの配置のために構成されており、シートスタックにおける各多層バイオリアクターシートにおける貫通ポートは、同一直線上に、典型的には使用時に鉛直方向に延び、各多層バイオリアクターシートにおける個別の多層マイクロ流体バイオリアクターの培養チャンバーとの流体連通を提供する。
【0026】
別の態様から見ると、本開示は、本明細書に記載のシートスタックに配置された1枚以上の多層バイオリアクターシートとともに使用するためのバイオリアクター細胞培養システムに関し、当該システムは:(a)コントローラを有し、該コントローラは、コントローラのメモリに格納された細胞培養プロトコルにしたがって1つ以上の流体ポンプの動作を個別に制御するためのものであり;(b)シートスタックヘッダーを有し、該シートスタックヘッダーは、格納された細胞培養プロトコルにしたがって、当該バイオリアクター細胞培養システムにおける少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーと、該少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーへの流れ、または、少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーからの流れを必要とするシートスタックにおける多数の貫通ポートとの間に流体カップリングを提供し;かつ、(c)1つ以上の流体ポンプを有し、該1つ以上の流体ポンプは、格納された細胞培養プロトコルにしたがって、貫通ポートを介して多層マイクロ流体バイオリアクターの個別の培養チャンバーへと流体を送達する。
【0027】
本明細書には、1つ以上の多層マイクロ流体バイオリアクターとともに使用するためのバイオリアクター細胞培養システムもまた開示されており、当該システムは:コントローラを有し、該コントローラは、コントローラのメモリに格納された細胞培養プロトコルにしたがって、1つ以上の流体ポンプの動作を個別に制御するためのものであり;カップリングヘッダーを有し、該カップリングヘッダーは、格納された細胞培養プロトコルにしたがって、当該バイオリアクター細胞培養システムにおける少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーと、該少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーへの流れ、または、少なくとも1つの流体もしくは廃棄物リザーバーからの流れを必要とする1つ以上の多層マイクロ流体バイオリアクターの貫通ポートとの間に流体カップリングを提供し;かつ、1つ以上の流体ポンプを有し、該1つ以上の流体ポンプは、格納された細胞培養プロトコルにしたがって、1つ以上の多層マイクロ流体バイオリアクターの流体ポートを介して流体を送達し;当該システムは、1つ以上の多層マイクロ流体バイオリアクターとともに使用するために構成されており、該1つ以上の多層マイクロ流体バイオリアクターは、1つ以上の溝と、該1つ以上の溝を横切るように流体の流れを提供する1つ以上の貫通ポートを有する。
【0028】
本明細書に記載の種々の態様はそれぞれ、1つ以上のその他の態様の文脈で記載された特徴、修正および代替物を組み込んでもよいことが理解されるべきである。例えば、開示された方法のプロセスが、本明細書で開示されたバイオリアクターの実施形態の特徴を組み込んでもよく、かつ、かかるバイオリアクターの特徴が、その他の場所で開示された方法のプロセスの実行を提供してもよい。効率化のため、かかる特徴、修正および代替物は、すべての態様について繰り返し開示されていないが、当業者であれば、いくつかの態様について開示された特徴、修正および代替物のかかる組み合わせが、その他の態様にも同様に当てはまり、かつ、本開示の主題の範囲内にあり、かつ、本開示の主題の一部を形成することを把握するであろう。
【0029】
本開示はまた、細胞を培養する方法を提供し、当該方法は:
マイクロ流体デバイスを提供することを有し、該マイクロ流体デバイスは基板を有し、該基板は実質的に平行である溝のアレイを有し;
溝のうちの1つ以上に細胞を導入することを有し;
溝を横切る第1流れ方向に溝アレイを覆うように培地の流れを提供することを有し;かつ、
例えば細胞生存、増殖または分化を支持するための条件下で細胞を培養することを有する。
【0030】
有利なことに、溝を横切る第1流れ方向に培地の流れ(交差方向の流れ)を提供することは、細胞生存率を維持し、細胞増殖および/または細胞分化を支持しながら、1つ以上の溝における細胞の保持を可能にする。
【0031】
培地の流れは細胞の数に依拠し、かつ、1日に100万個の細胞当たり0.2~5mL(例えば、1日に100万個の細胞当たり少なくとも0.3、少なくとも0.4mL、少なくとも0.5mL、少なくとも0.6mL、少なくとも0.7mL、少なくとも0.8mL、少なくとも0.9mL、少なくとも1mL、少なくとも1.1mL、少なくとも1.2mL、少なくとも1.3mL、少なくとも1.4mL、少なくとも1.5mL、少なくとも1.6mL、少なくとも1.7mL、少なくとも1.8mL、少なくとも1.9mL、少なくとも2mL、少なくとも2.5mL、少なくとも3mL、少なくとも3.5mL、少なくとも4mL、少なくとも4.5mL、少なくとも5mL)と同等の流量にて提供されてもよい。1つの例では、流量は、1日に100万個の細胞当たり0.5~1.5mL(例えば、1日に100万個の細胞当たり1mL)と同等である。
【0032】
1つの実施形態では、デバイスは、培地入口ポートおよび培地出口ポートを有して構成され得、かつ、平均入口速度は、例えば0.18~0.3mm/分または0.2~0.27mm/分(例えば、約0.22mm/分または0.23mm/分)に設定される。細胞が分割および増加する(expand;増殖する)につれて、入口速度は上昇し得る。1つの例では、入口速度は、細胞培養3日目において、少なくとも40~60%(例えば、50%)だけ上昇する。
【0033】
いくつかの実施形態では、細胞は、第1流れ方向に溝アレイを覆うような流れによって1つ以上の溝へと導入される。別の実施形態、または、さらなる実施形態では、細胞は、1つ以上の溝に沿う第2流れ方向の流れによって1つ以上の溝へと導入される。
【0034】
1つの例では、デバイスは、細胞入口ポートおよび細胞出口ポートを有して構成され得る。細胞は、細胞入口ポートからの流れによってデバイスへと導入され、かつ、静条件下(例えば、出口ポートが閉じている場合)または流れ条件下(例えば、出口ポートが開いており、媒体がデバイスから流出することを可能にする場合)で1つ以上の溝に沈着することが可能とされてもよい(沈降によって)。
【0035】
当業者であれば、デバイスに導入または搭載されるべき細胞の数がデバイスの性能に基づいて変化するであろうことを把握するであろう。1つの例では、1×10~1×1010個の細胞が、例えば50~200mLに搭載されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、細胞は、1~14日間(例えば、1~10日間、1~7日間、1~5日間、1~3日間または1~2日間)、培養される。
【0037】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、抽出媒体(extractiоn medium;抽出培地)の流れを提供して、例えば溝から細胞を変位させ、かつ、細胞回収/採取を促進するように剪断応力を増大させることによって、培養された細胞を採取することを有する。概して、流量を増大させることは、溝の基部に沿う剪断力の増大に起因して抽出の性能を高めるであろう。例えば、抽出媒体の流れは、少なくとも0.1ダイン/cm、少なくとも0.2ダイン/cm、少なくとも0.3ダイン/cm、少なくとも0.4ダイン/cm、少なくとも0.5ダイン/cm、少なくとも0.6ダイン/cm、少なくとも0.7ダイン/cm、少なくとも0.8ダイン/cm、少なくとも0.9ダイン/cm、少なくとも1ダイン/cm2(例えば、約0.8ダイン/cm)の剪断応力にて提供され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、細胞は、第1流れ方向に溝アレイを覆うような流れによって採取される。別の実施形態、または、さらなる実施形態では、細胞は、1つ以上の溝に沿う第2流れ方向の流れによって採取される。有利なことに、第2流れ方向の流れは、細胞生存率および/または収率を増大させるであろう。
【0039】
1つの実施形態では、デバイスは、細胞抽出媒体入口ポートおよび細胞抽出媒体出口ポートを有して構成され得、かつ、平均抽出媒体入口速度は、例えば、少なくとも10mm/分、少なくとも15mm/分、少なくとも20mm/分、少なくとも25mm/分、少なくとも30mm/分、少なくとも35mm/分、少なくとも40mm/分、少なくとも45mm/分、少なくとも50mm/分、少なくとも55mm/分、少なくとも60mm/分、少なくと65mm/分、少なくとも70mm/分、少なくとも75mm/分、少なくとも80mm/分、少なくとも85mm/分、少なくとも90mm/分、少なくとも95mm/分、少なくとも100mm/分、少なくとも105mm/分、少なくとも110mm/分、少なくとも115mm/分、少なくとも120mm/分、少なくとも125mm/分、少なくとも130mm/分、少なくとも135mm/分、少なくとも140mm/分、少なくとも145mm/分、または、少なくとも150mm/分に設定される。例えば、10~200mm/分または10~150mm/分(例えば、約70mm/分、約71mm/分、約72mm/分、約73mm/分、約74mm/分、約75mm/分、約76mm/分、約77mm/分、約78mm/分、約79mm/分または約80mm/分)。
【0040】
本発明はまた、細胞をトランスフェクト/形質導入する方法を提供し、当該方法は:
マイクロ流体デバイスを提供することを有し、該マイクロ流体デバイスは基板を有し、該基板は実質的に平行な溝のアレイを有し;
溝のうちの1つ以上に細胞を導入することを有し;
溝を横切る第1流れ方向に溝アレイを覆うような少なくとも1つの外因性分子の流れを提供することを有し;かつ、
細胞を外因性分子でトランスフェクト/形質導入する条件下で細胞および少なくとも1つの外因性分子をインキュベートすることを有する。
【0041】
有利なことに、溝アレイを横切る第1流れ方向の少なくとも1つの外因性分子(例えば、ウイルスベクター)の流れ(交差方向の流れ)を提供することは、1つ以上の溝における細胞の保持を可能にする一方で、その中に受け入れられた細胞に外因性分子を送達する。当該方法は、現行のシステムを用いて拡散制約を克服することによって、提供される外因性分子(例えば、ウイルスベクター)の有意な減少をもたらし得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、細胞は、第1流れ方向に溝アレイを覆うような流れによって1つ以上の溝へと導入される。
【0043】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、媒体の流れを提供して溝から過剰な外因性分子を洗い落とすことを有する。別の実施形態、または、さらなる実施形態では、当該方法は、培地の流れを提供することを有する。いくつかの実施形態では、培地の流れは第1流れ方向である。
【0044】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、外因性分子を提供する前に細胞を培養して、例えば、標的細胞の数を増加させること、および/または、細胞を活性化させて1つ以上の抗原(例えば、細胞表面受容体)を発現させて、例えばウイルスベクターの取り込みを促進することを有する。
【0045】
別の実施形態、または、さらなる実施形態では、当該方法は、トランスフェクト/形質導入された細胞を培養すること(例えば、トランスフェクト/形質導入された細胞の数を増加させること)を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、抽出媒体の流れを提供することによって、トランスフェクト/形質導入された細胞を採取することを有する。いくつかの実施形態では、抽出媒体は、第2流れ方向の(すなわち、溝に沿う)流れによって提供される。
【0047】
典型的には、第1流れ方向および第2流れ方向は、そうである必要はないが、実質的に直交している。
【0048】
本開示は、また、サンプルから細胞を選択する方法を提供し、当該方法は:
マイクロ流体デバイスを提供することを有し、該マイクロ流体デバイスは基板を有し、該基板は実質的に平行である溝のアレイを有し、溝はその上に固定化された捕捉試薬を有し、該捕捉試薬は細胞を選択的に捕捉し;かつ、
固定化された捕捉試薬で細胞を選択的に捕捉するための条件下で、1つ以上の溝に沿った流れによって1つ以上の溝に細胞を導入することを有する。
【0049】
1つの例では、デバイスは、細胞入口ポートおよび細胞出口ポートを有して構成され得、かつ、平均入口速度は、例えば、少なくとも5~110mm/分、少なくとも5~50mm/分、5~25mm/分(例えば、約20mm/分、約21mm/分、または約22mm/分)に設定される。
【0050】
1つの例、または、さらなる例では、細胞の流れは、約0.2ダイン/cmの剪断応力にて提供され得る。1つの例、または、さらなる例では、細胞の流れは、例えば、少なくとも0.05~1.14ダイン/cm2、少なくとも0.05~0.52ダイン/cm2、少なくとも0.05~0.26ダイン/cm2(例えば、約0.21ダイン/cm2、0.22ダイン/cm2、0.23ダイン/cm2に設定された剪断応力にて提供され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、捕捉試薬を溝に固定化することを有する。例えば、当該方法は:
溝への流れによって細胞捕捉試薬(例えば、抗体)を提供することを有し;かつ、
捕捉試薬が溝の表面に結合することを可能にするのに十分な時間、溝アレイを細胞捕捉試薬でインキュベートすることを有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、捕捉試薬は、溝を横切る横断方向に溝アレイを覆うような流れによって提供される。
【0053】
1つの例では、デバイスは、捕捉試薬入口ポートおよび捕捉試薬出口ポートを有して構成され得、かつ、平均入口速度は、例えば、少なくとも0.001~30mm/分、少なくとも5~30mm/分、少なくとも5~20mm/分、少なくとも5~10mm/分(例えば、約5mm/分、約6mm/分、約7mm/分または約8mm/分)に設定される。
【0054】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、溝の表面上で反応基をブロックすることを有する。例えば、当該方法は:
溝への流れによってブロッキング試薬(例えば、プルロニックF-127)を提供することを有し;かつ、
溝アレイをブロッキング試薬で十分な時間インキュベートして、反応基をブロックし、例えば、細胞が溝に非特異的に保持されるのを防ぐことを有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、ブロッキング試薬は、溝を横切る流れ(交差方向の流れ)によって提供される。
【0056】
1つの例では、デバイスは、ブロッキング試薬入口ポートおよびブロッキング試薬出口ポートを有して構成され得、かつ、平均入口速度は、例えば、少なくとも0.001~30mm/分、少なくとも5~30mm/分、少なくとも5~20mm/分、少なくとも5~10mm/分(例えば、約3mm/分、約4mm/分または約5mm/分)に設定される。
【0057】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、抽出流体の流れを提供することによって、非結合細胞を採取することを有する。いくつかの実施形態では、抽出流体は、溝に沿う流れによって提供される。抽出流体は、細胞培地であってもよい。
【0058】
1つの実施形態、または、さらなる実施形態では、当該方法はさらに、非結合細胞を溝から洗い落とすための媒体の流れを提供することを有する。いくつかの実施形態では、洗浄媒体(wash medium;洗浄培地)は、溝に沿う流れによって提供される。代替的な実施形態、または、さらなる実施形態では、洗浄媒体は、溝を横切る方向に溝アレイを覆うような流れによって提供される。
【0059】
1つの実施形態、または、さらなる実施形態では、当該方法はさらに、培地の流れを提供して、例えば、細胞生存率を維持するか、または、細胞を増殖させることを有する。いくつかの実施形態では、培地は、溝に沿う流れによって提供される。代替的な実施形態、または、さらなる実施形態では、培地は、溝を横切る方向に溝アレイを覆うような流れによって提供される。1つの実施形態では、当該方法はさらに、抽出媒体の流れを提供することによって、トランスフェクト/形質導入された細胞を採取することを有する。いくつかの実施形態では、抽出媒体は、溝に沿う流れによって提供される。
【0060】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、例えばパパインまたはノイラミニダーゼを用いて、捕捉試薬から結合細胞を遊離させて、抗体捕捉試薬から結合細胞を放出することを有する。かかる試薬は、溝に沿う流れ、または、溝を横切る流れによって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、遊離された細胞を培養することを有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、細胞を外因性分子でトランスフェクト/形質導入することを有する。いくつかの実施形態では、例えば、結合細胞の遊離に続いて、外因性分子は、溝を横切る流れ方向の流れによって提供される。細胞が結合していれば、外因性分子は、溝に沿う流れによって提供され得ることが把握されるであろう。
【0062】
いくつかの実施形態では、第1流れ方向は、1つ以上の溝の長手方向寸法と実質的に直交している。
【0063】
有利には、本開示の方法は、細胞選択(例えば、抗体を使用して)、遺伝子形質導入および細胞増加の統合を可能にする。
【0064】
いくつかの実施形態では、基板は気体透過性であり、かつ、デバイスは、基板を横切る気体の交換のための1つ以上の気体流経路を含む。1つの実施形態では、1つ以上の気体流経路は、気体透過性基板の下にある。有利なことに、この構成は高密度の細胞培養を可能にし、現在のシステムでの拡散の制限を克服する。
【0065】
いくつかの実施形態では、1つ以上の気体流経路が外部の気体供給源に接続されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示の方法はさらに、例えば、細胞をデバイスに導入する前に、1つ以上の気体経路を気体で満たすことを有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示の方法はさらに、デバイスへ培地を注入することを有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示の方法はさらに、デバイスを加圧して、拡散によって閉じ込められた気泡を除去することを有する。このことは、流体と気体経路との間の気体圧力差によって駆動される。
【0069】
本明細書には、細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターも開示され、当該細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターは:流れ層を有し、該流れ層は少なくとも1枚の流体流れ膜を有し、該少なくとも1枚の流体流れ膜は少なくとも1つの溝を有し、該少なくとも1つの溝は、培養された細胞の保持のために構成され、かつ、流体の軸方向の流れに垂直に位置し;ヘッダーを有し、該ヘッダーは、少なくとも1つの流れ層の上層を覆うように流体の流れを方向付け、かつ、少なくとも1つの流れ層と流体連通した少なくとも1つの流体入口を有し、かつ、少なくとも1つの流れ層と流体連通した少なくとも1つの流体出口を有し;かつ、底層を有し、該底層はヘッダーにシールされ、かつ、培養細胞の底側を覆うように流体の流れを方向付けるように構成されている。
【0070】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの入口は、新しい細胞媒体(cell media;細胞培地)用の少なくとも1つの細胞媒体入口と、使用済み細胞媒体用の少なくとも1つの細胞媒体出口と、新しい気体用の少なくとも1つの気体入口と、少なくとも1つの排出される気体用の気体出口とを有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、当該細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターはまた、細胞抽出/注入ポートを有し、該細胞抽出/注入ポートは、少なくとも1つの流体入口に流体接続され、かつ、媒体および細胞の注入または取り込みのために構成されている。
【0072】
いくつかの実施形態では、少なくとも1枚の流体流れ膜は、気体交換用に構成された疎水性膜と、低分子量代謝物の交換用の透析膜とを有する。いくつかの実施形態では、用語「低分子量」は、老廃物(アンモニア、乳酸塩)または代謝基質(グルコース、アミノ酸)などの実質的に10,000ダルトン未満の分子を意味する。
【0073】
いくつかの実施形態では、ヘッダーおよび底層における流体流量は、独立して制御され得る。このようにして、媒体の消費が最少化されて、コスト効率が改善され、かつ、増殖効率が最大化されて細胞収率が改善され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、流体流れ膜は半透性溝付き基板を有し、該半透性溝付き基板は、流体の軸方向の流れに垂直に位置する灌流培養の最中の非付着性細胞タイプの捕捉、ならびに、気体および代謝物の交換のためのものである。半透性溝付き基板は、気体交換に用いられる表面修飾疎水性膜(ポリジメチルシロキサン(PDMS)から製造)の間にシールされてもよい。いくつかの実施形態では、透析膜などの選択透過性膜(例えば、再生セルロース、ポリスルホンまたはポリビニルピロリドン(PVP)を含むポリマーブレンドが、老廃物(アンモニア、乳酸塩)または代謝栄養素(グルコース、アミノ酸など)のような低分子量代謝物を、流れチャンネルと交換するために提供されてもよく、その結果、細胞を高密度(たとえば、標準的な組織フラスコ培養の100倍)で増殖させ得る。
【0075】
本明細書には、並列に流体接続された、上記に記載の細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターを複数有する、製造プラントもまた開示される。
【0076】
以下のステップを有する培養された細胞の製造方法もまた、開示され、該ステップは:培養された細胞の懸濁液を、上記の細胞培養用マイクロ流体バイオリアクターに導入するステップと、バイオリアクターを通過した細胞媒体および酸素において細胞を培養するステップである。
【0077】
本明細書に記載の特徴のいずれかは、本発明の範囲内で本明細書に記載のその他の特徴のいずれか1つ以上と任意の組み合わせで組み合わされ得る。
【0078】
本開示の実施形態は、細胞治療および遺伝子治療の送達のために用いるための、スケーラブルな細胞製造プロセスのための多層マイクロ流体バイオリアクターの設計およびプロセスに関する。本開示の実施形態は、臨床治療のためにコスト効率よく調整され得る閉鎖系内での細胞選択、遺伝子移入および培養増加の自動化を提供する。溝付きの半透性基板は、灌流培養法を用いて細胞を捕捉し、かつ、増殖させ得る;マイクロ流体の幾何学的形状は、細胞増加培養のために溝を覆うように流れを方向付け、かつ、典型的には、細胞採取または細胞選択のために溝に沿うように流れを方向付ける;細胞選択(モノクローナル抗体を使用)、遺伝子形質導入および細胞増加プロセスの統合は、マイクロ流体設計の実施形態を用いて可能とされる。本開示の実施形態は、細胞培地における哺乳動物細胞の高密度かつ自動化された増殖のために最適化された多層マイクロ流体バイオリアクターを提供する。
【0079】
本発明はここで、添付の図面を参照して、いっそう詳細に説明されるであろう。図示された実施形態は単なる例であり、本明細書に添付の請求の範囲で定められる本発明の範囲を限定するものと見做されるべきではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、1つの実施形態による多層マイクロ流体バイオリアクターの分解概略図であり、第1流れ方向Aの流体の交差方向の流れ(交差方向の流れ)を示している。
図2図2は、図1のバイオリアクターの断面概略図である。
図3図3は、第1流れ方向Aの流れ、および、第2流れ方向Bの流れ(長手方向の流れ)を提供するバイオリアクターの分解概略図である。
図4図4は、本開示のある実施形態による、バイオリアクターヘッダー層の下面(下側)を示している。
図5図5は、図4におけるヘッダー層の右下隅の拡大等角図である。
図6図6は、選択透過性膜を有し、かつ、交差方向の流れが存在するバイオリアクターの分解概略図である。
図7図7は、図6におけるデバイスの断面概略図である。
図8図8は、選択透過性膜を有し、かつ、交差方向の流れ、および、長手方向の流れが存在するバイオリアクターの分解図である。
図9図9は、本開示の別の実施形態によるバイオリアクターの分解図である。
図10図10は、図9におけるベース層の右下隅の拡大等角図である。
図11A図11Aおよび図11Bはそれぞれ、分解図および組み立てられた図で、積み重ねて配置された複数のバイオリアクターを示している。
図11B図11Aおよび図11Bはそれぞれ、分解図および組み立てられた図で、積み重ねて配置された複数のバイオリアクターを示している。
図12A図12Aから図12Cは、本開示のある実施形態による、カバー板の等角図、上面図および側面図である。
図12B図12Aから図12Cは、本開示のある実施形態による、カバー板の等角図、上面図および側面図である。
図12C図12Aから図12Cは、本開示のある実施形態による、カバー板の等角図、上面図および側面図である。
図13図13は、1つの例による、流れ、酸素およびグルコースをモデル化するシミュレーション出力である。
図14図14は、1つの例による、24~250秒にわたる溝への細胞沈着をモデル化するシミュレーション出力である。
図15図15は、1つの例によるレンチウイルスの輸送をモデル化するシミュレーション出力である。
図16図16は、1つの例による流れ抵抗体の較正からのデータを示している。
図17A図17は、流れが左側の入口から入り、かつ、溝を覆うように移動するとき(図17A)、または、流れが上方の入口から入り、溝に沿って移動するとき(図17B)のシミュレートされた三次元の流れを示している。
図17B図17は、流れが左側の入口から入り、かつ、溝を覆うように移動するとき(図17A)、または、流れが上方の入口から入り、溝に沿って移動するとき(図17B)のシミュレートされた三次元の流れを示している。
図18】本開示のある実施形態による、複数のバイオリアクターを含有する多層シートの平面図である。
図19A図19は、ある実施形態によるバイオリアクターの概略図であり、それぞれ細胞搭載のための、増加のための媒体灌流のための、および、細胞抽出のための弁制御を示している。
図19B図19は、ある実施形態によるバイオリアクターの概略図であり、それぞれ細胞搭載のための、増加のための媒体灌流のための、および、細胞抽出のための弁制御を示している。
図19C図19は、ある実施形態によるバイオリアクターの概略図であり、それぞれ細胞搭載のための、増加のための媒体灌流のための、および、細胞抽出のための弁制御を示している。
図20図20は、本開示のバイオリアクターの溝におけるRaji H2B-GFP細胞の増殖を示している。
図21図21は、溝を交差する方向の流れの灌流を伴うRaji H2B-GFPの増加を示している。
図22図22は、交差方向の流れによるRaji H2B GFP細胞の不完全な回収を示している。
図23図23は、本開示のある実施形態による、バイオリアクターにおけるTF1a-H2B-GFPの増加を示している。TF1a-H2B-GFP細胞の蛍光画像は、14日間にわたる増加を示している。
図24図24は、GFPでのJurkat細胞の形質導入、および、その後の増加のための本開示のバイオリアクターの使用を示している。
図25図25は、Jurkat細胞におけるGFPの発現を示すフローサイトメトリーを示している;コントロール(左)、形質導入と増加後(右)。
図26図26は、Jurkat細胞のウイルス形質導入のための弁および媒体リザーバーを含む、図19に示されるようなバイオリアクターを示している。
図27図27は、図26に示されるようなバイオリアクターとともに用いられるマイクロ流体回路を示している。
図28図28は、プルロニックF127界面活性剤の構造を示している。
図29図29は、長手方向の流れの最中の溝におけるCD3+細胞の選択的結合に対する基板化学の効果を示す、図29A)抗CD3moAbの物理吸着に先行するプルロニックF127、図29B)プルロニックF127処理なしの抗CD3moAb、図29C)抗CD3moAbの物理吸着後のプルロニックF127。
図30図30は、CD3+またはCD34+細胞の特異的捕捉を示している。
図31図31は、細胞の脱離および培養に対する細胞遊離酵素(ノイラミニダーゼ)の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0081】
最初に図1を参照すると、本開示のある実施形態による細胞培養用多層マイクロ流体バイオリアクター(「バイオリアクター」)100の分解概略図が示されている。バイオリアクター100は、ヘッダー層200、ベース層400、および、ヘッダー層とベース層との間に配置された流体透過性流れ層300とを有する。
【0082】
流れ層300は、上面310および下面320を有し、かつ、上面は、細胞50(図2)を保持するために流れ層上面に溝アレイを形成する、少なくとも1つの、かつ、典型的にはいくつかの溝312を有する。ベース層400は、直接的(例えば、流れ層300を取り囲むベース層フランジに結合することによって)、または、バイオリアクターの3つの層のそれぞれを一緒に結合することによって間接的に、ヘッダー層200にシールされている。ベース層400は、気体透過性流れ層300を横切る気体交換のための気体流経路410を提供する。呼吸気体(空気+10%CO)は、気体入口ポート430を通って気体流経路410に入り、かつ、呼気気体は、気体出口ポート440を通って逃げる。
【0083】
流れ層300は気体透過性であるため、気体流経路410内の気体は、溝付き層を通って灌流し、そこでそれらは、流れチャンネル60において保持された細胞50と交換される。さらに、流れチャンネル60を通って循環する媒体内に含有される気体もまた、細胞50によって取り込まれる。
【0084】
ヘッダー層200は第1入口ポート210を有し、該第1入口ポート210は、ヘッダー300の下面320と流れ層の上面との間に形成された流れチャンネル60に1つ以上の第1流体入口212を供給する。したがって、溝312は、細胞50が沈着および増殖する媒体チャンバーの床を形成する。典型的には、第1入口ポート210は、第1入口212を通る細胞および培地の送達を容易にする。流れチャンネル60の反対側に配置された1つ以上の第1流体出口222は、廃流体の除去を容易にするために提供される第1出口ポート220との流体連通を提供する。いくつかの実施形態では、細胞採取はまた、出口ポート220を介して起こってもよい。
【0085】
第1流体入口212および第1流体出口222は、流れチャンネル60に入る流体が流体入口から流体出口に向かって第1流れ方向Aに移動するようにヘッダーに位置し、流れが溝312を横切るように方向付けられるようになっている。この交差する流れの方向は、溝312のうちの1つ以上に細胞を搭載するために用いられ得る。細胞は、流れによって流れチャンネル60に導入され、かつ、流動条件下でさえ、細胞および周囲の流体の密度の差に起因する沈降によって、1つ以上の溝に沈着する。細胞は低剪断応力の領域に沈着し、かつ、流動条件下でさえ、沈着力と流体力によってそこに保持される。細胞培地は、溝312の上部を横切るように提供されて、細胞代謝のための栄養素および増殖因子を提供し、かつ、細胞を変位させることなく、そこに保持された細胞によって生成された老廃物を除去し得る。
【0086】
流量は、溝312への細胞の輸送および沈着を調節する。1つの例では、交差方向の流量は、交差方向の流れによって導入された細胞が、流体入口近くの1つ以上の溝312に沈着するようなものである。当業者であれば、細胞沈着がまた、細胞サイズおよび細胞密度、ならびに、それらが運搬される流体の特性の関数であることを把握するであろう。同様に、溝内の細胞保持は、細胞濃度および流量によって制御される。レイノルズ数とデバイスの幾何学的形状(例えば、溝の深さ)もまた、細胞の保持に影響を与えるであろう。レイノルズ数は、交差方向の流速に正比例し、かつ、板間隔に反比例する。交差方向の流れの最中、デバイスにおける細胞の保持は、溝の基部での流れの再循環の量に依拠し、これは、流体力学的シミュレーションによって決定され得る。細胞が増加して溝を満たすと、それらは溝から変位し、流れチャンネル60を横切って流れ、溝アレイが満たされるまで、沈降によって隣接する溝に沈着する。
【0087】
図1および2に示される配置構成では、流れは方向A、または、流れ層300における溝312の長手方向寸法を横切る「交差方向の流れ」である。典型的には、この交差方向の流れは、溝312の長手方向寸法と直交(90°)するが、交差方向の流れを用いて細胞および培地を送達するという有益な効果を達成するためには、交差方向の流れは正確に直交する必要はないことも考慮される。ある実施形態では、交差方向の流れの角度は、溝の長手方向寸法に対して約75°から90°の範囲にあり、好ましくは約80°から90°、より好ましくは約85°から90°である。ある実施形態では、交差方向の流れは、溝の長手方向寸法に対して約90°である。
【0088】
図3は、本開示の別の実施形態によるバイオリアクター100の分解概略図であり、該別の実施形態は、第1流れ方向Aの流れ(交差方向の流れ)、および、溝312の長手方向寸法に対応する第2流れ方向Bの流れ(長手方向の流れ)を提供する。ここで、ヘッダー層200は追加的に、1つ以上の第2流体入口332を流れチャンネル60に供給する第2入口ポート330を有する。1つ以上の第2流体出口342は、第2流体入口332に対して流れチャンネル60の反対側に配置され、かつ、流れチャンネルから細胞を除去するために提供された第2出口ポート340との流体連通を提供する。図3に示される実施形態では、第1入口ポート210は、細胞および培地を含有する流体を流れチャンネル60に送達し、廃棄物は、第1出口ポート220を介して除去され、かつ、細胞抽出流体(本明細書では「抽出媒体」ともいう)は、第2流体入口ポート330を介して送達されて、第2の流体出口342および第2流体出口ポート340を通した除去のために溝312に沿って培養された細胞を洗い落とす。しかしながら、第2入口330ポートが提供される必要はなく、かつ、第1流体入口ポート210は追加的に、第2の流体出口342および第2の流体出口ポート340を通して除去するために溝312に沿って培養された細胞を洗い落とすための細胞抽出流体を送達してもよいことが理解されるべきである。両方の配置構成において、第2の流体出口ポート340を介した細胞の除去は、長手方向の流れ方向Bの溝312に沿っており、第2の流体出口342を通して除去するために、細胞を溝から効率的に変位させることが可能にする。
【0089】
明確化のために、交差方向の流れ、および、長手方向の流れの両方を示すさらなる実施形態が図4に提示され、図4はヘッダー層200の下面または下側を示している。第2出口ポート340は、1つ以上の第2流体出口342を介して流れチャンネル60と流体連通している。図示された実施形態では、第2流体出口342の対が結合して流体流路を形成し、該流体流路は次に、すべての流体出口342を第2の出口ポート340に最終的に接続する分岐配置において隣接する一対の流体出口からの流体流路に結合する。この配置構成では、第2の流れ方向Bの溝312に沿う流れ(長手方向の流れ)によって細胞50の除去を達成することが可能である。図3に示される実施形態と同様の様式で、細胞および培地を含有する流体は、第1入口ポート210を通って入ってもよく、細胞は、方向Aに流された流れチャンネルにおける培養媒体とともに溝312を横切り、かつ、溝312に入るように伝播する。細胞培養プロセスの終わりに、細胞が第2出口ポート340を通して除去されてもよく、培養された細胞が溝312に沿って第2出口ポート340へと変位するようになっている。溝312に沿う層流は、保持された細胞50を第2出口ポート340に向かって変位させ、その結果、それらは、バイオリアクターからの除去のためにシールされたレセプタクルに収集され得る。
【0090】
当業者によって理解されるように、本明細書で「入口ポート」および「出口ポート」の文脈で用いられる用語「ポート」は、広く、流れチャンネル60に対する流体の流出または流入を提供する流路の一部として解釈されるべきである。例えば、第1流体入口ポート210は、チューブなど(図示せず)による第1流体源との直接的な流体カップによる流体の流入を提供するアパーチャ(図1)として提供されてもよい。代替的には、第1の流体入口ポート210は、第1の貫通孔381,382と流体連通した、いっそう間接的な流体経路による流体の流入を提供する流体流路における接合部(図4)として提供されてもよい。
【0091】
また、図3には、流れチャンネル60との流体連通を提供する1つ以上の第2流体入口332と流体連通した第2入口ポート330が示されている。1つ以上の第2流体入口332は、1つ以上の第2流体入口332から流れチャンネル60に入る流体が、2流体方向Bに1つ以上の第2流体出口342に向かって流れるように、1つ以上の溝312の長手方向寸法と直交するヘッダーの寸法に沿って位置する。ヘッダー層の下側の右下隅(図4)の拡大等角図が図5に示され、図5は、第2入口ポート330からの流体流れチャンネルの分岐の6つの層を示しており、最終的に第2流体入口332を介して、流れチャンネル60へと開口している。同様に、図5は、層状接合部によって接続されて流体連通した第1流体出口222を示しており、第1流体出口222は、最終的に第1出口ポート220への共通の流体経路を提供する、ツリー構造を形成する。
【0092】
また、図4および5には、いくつかの実施形態において、ヘッダー200の下側に提供される構造的ポスト250が示されている。構造的ポスト250は、基板上で流れ層上面310に当接したままであるように構成されており、該基板は、溝312を取り囲み、かつ、溝312の間にまたがっている。特定の実施形態では、ヘッダー層200、流れ層300およびベース層400のうちの1つ以上が、シリコーンゴム(PDMS)などのエラストマー材料から製造されてもよい。構造的ポスト250は、使用の最中に流れチャンネル60および溝312の開存性を確保するための構造的支持を与えるために、ヘッダー200の設計に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、ヘッダー層200および/またはベース層400は、使用の最中に流れチャンネル60および溝312の開存性を確保するために、いっそう大きい剛性を提供し、したがって必要とされる構造的ポストが少なくて済む、熱可塑性材料から製造されてもよい。適切な熱可塑性材料としては、いくつか名前を示すと、環状オレフィンコポリマー(例えば、Zeonor(登録商標)1060R)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスチレン、およびポリカーボネートが挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0093】
本開示の別の実施形態が図6の概略図に提示されており、該別の実施形態はさらに、選択透過性膜500を有し、該選択透過性膜500は流れチャンネル60を2つの平行な流れチャンネルへと機能的に分離し、該2つの平行な流れチャンネルを横切って低分子量代謝物が交換され得る。いくつかの実施形態では、選択透過性膜500は、透析膜または同様の膜材料から製造されてもよい。適切な膜材料としては、再生セルロース、ポリスルホンおよびポリビニルピロリドン(PVP)を含むポリマーブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、選択透過性膜500は、20kD未満、いっそう好ましくは15kD未満、さらにいっそう好ましくは10kD未満の分子量を有する分子を交換するのに適した細孔サイズを有する透析膜を有する。この配置構成では、選択透過性膜500は、補助ヘッダー700とヘッダー200を分離し、第2流れチャンネル70を形成する。細胞は、第1入口ポート210を介して流れチャンネル60に入り、かつ、溝312に沈着する。流体(典型的には、分子量が10kD未満の栄養素を含む基本媒体(base medium;基本培地))は、補助入口ポート730を介して第2流れチャンネル70に入り、かつ、補助出口ポート740を介して外に出るが、この場合、10kD未満の分子は、膜500を横切るように拡散し、溝312における細胞への栄養素送達のために流れチャンネル60に入る。溝312における細胞によって生成された代謝廃棄物分子は、膜500を横切るように拡散し、流れチャンネル70に入り、かつ、補助出口ポート740を介して外に出る。一方、増殖媒体(grоwth medium;成長媒体・増殖培地・成長培地)は、第1入口ポート210を介して流れチャンネル60に入る。老廃物は、第1出口ポート220を介して流れチャンネル60から除去される。いくつかの実施形態では、すべての老廃物が第1出口ポート220を通って外に出てもよいので、補助出口740が提供される必要はない。しかしながら、このことは細胞の損傷につながる可能性があり、したがって望ましくない場合がある。図1の実施形態のように、図6は、方向Aにおける細胞および媒体の交差方向の流れを提供する。貫通孔381は、細胞を送達するための鉛直方向チャンネルを提供する;貫通孔391は、細胞を除去するための鉛直方向チャンネルを提供する。貫通孔481,483は、気体の送達および除去のための鉛直方向チャンネルを提供する。図7は、図6におけるデバイスの断面図を提供する。
【0094】
選択透過性膜500の提供と関連付けられる利点は、第2流れチャンネル70への流体の送達が、流れチャンネル60への流体の送達とは別個に制御され得ることであり、このことは、チャンネル70およびチャンネル60における異なる流量(例えば、増殖媒体よりも高い基本媒体の流量)を可能にする。このことは、必要とされる増殖媒体の量を減らし、結果としてコストの節約をもたらし得る。
【0095】
図8は、選択透過性膜500を有するさらに別の実施形態を示しており、該さらに別の実施形態では、交差する流れの方向Aでの細胞および培地の送達、ならびに、長手方向の流れの方向Bでの細胞の除去の両方が存在する。なぜなら、ヘッダー200が第2出口ポート340を有し、該第2出口ポート340が流れ方向Bの溝312に沿う細胞の長手方向の流れを提供するからである。図示された実施形態では、第2入口ポート330もまた、細胞およびバイオリアクター100を用いた細胞培養プロトコルに必要とされるその他の試薬の送達のために提供され、その例は本明細書に提供される。図6から8における実施形態では、ヘッダー層200(流れ層200の上面310および透過性層500の下面と一緒になって、流れチャンネル60を定める)の全厚を通して形成された隙間があることが留意されるべきである。貫通孔381は、細胞の送達のための鉛直方向チャンネルを提供し、貫通孔383は、細胞の除去のための鉛直方向チャンネルを提供し、かつ、貫通孔481,483は、気体の送達および除去のための鉛直方向チャンネルを提供する。
【0096】
特に、図1、3、6および8は、気体入力チャンネル481および気体出力チャンネル483を、気体流路410への呼吸気体の送達および呼気気体の除去のために、ヘッダー層200および流れ層300を通る鉛直方向チャンネルを形成する貫通孔として示している。いくつかの実施形態では、バイオリアクターにおける各入口ポートへの流体の送達および各出口ポートからの流体の除去のための鉛直方向チャンネルを形成する貫通孔が提供され、各貫通孔は、バイオリアクター100の3つの層すべてを通って同一直線上に延び、かつ、各流体出口は、対応するチャンネルと流体連通する。
【0097】
図9は、別の実施形態によるバイオリアクター100の分解図であり、該別の実施形態は、ヘッダー層200、流れ層300およびベース層400を組み込んでいる。見えないが、ヘッダー200の特徴は、図4に関連して説明した特徴に対応する。流れ層300におけるブロック312は、方向Bに延びる細長い平行な溝を表す。ベース層400は、気体流経路410を供給する、気体入口430および気体出口440を含む。さらに、多数の貫通孔が示されている。図示された実施形態では、貫通孔381,382は、細胞および培地をそれぞれ第1入口ポート210に送達するための鉛直方向チャンネルを提供する(ただし、図6から8のように、それらは、代替的には別個の入口ポートを介して送達されてもよい)。貫通孔383および384は、細胞および抽出流体をそれぞれ第2入口ポート340に送達するための鉛直方向チャンネルを提供する(ただし、それらもまた、別個の入口ポートを介して送達されてもよい)。貫通孔391および392はそれぞれ、細胞の抽出および呼気媒体の除去のための鉛直方向チャンネルを提供する。
【0098】
図10は、図9からのベース層400の右下隅の拡大等角図である。この図は、ベース層400における構造的ポスト450を示しており、該構造的ポスト450は、構造的支持を付与し、かつ、使用の最中に気体流路410の開存性を確保するために、流れ層300の下面320に当接したままであるように構成されている。さらに、曲がりくねった壁460が、曲がりくねった経路における気体の流れを、気体入口ポート430から気体出口ポート440へと方向付ける。しかしながら、壁460は、壁部分またはセクションにて提供されてもよく、気体が単に気体入口ポート430から気体出口ポートへと流れるのであればまったく提供される必要がないことが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、代替的/追加的には、バイオリアクターの寸法および/または材料が、流体流路の崩壊が低いようなものである場合には、構造的ポスト450は省略されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、バイオリアクターはさらに、バイオリアクター(ヘッダー200または補助ヘッダー700)の上層に、舌または突起(図示せず)を有し、該舌または突起は、ベース層400の底面における対応する溝またはノッチと協働する(その逆もまた同様である)。
【0100】
マイクロ流体デバイスは、特に細胞沈着および細胞分離プロセスのために、流れの非常に正確な制御を必要とする。空気圧的に制御された流れは、シリンジポンプやローラーポンプよりも望ましい。なぜなら、流量は流体の圧縮率ではなく、流れ抵抗体の液圧的抵抗に依拠するからである。したがって、いくつかの実施形態では、灌流の量を支配するために、流れ抵抗体が流体経路に組み込まれる。図4に最もよく示されているように、流れ抵抗体371は、鉛直方向チャンネル381から第1入口ポート210へ、さらに第1流体入口212を介して流れチャンネル60へと、典型的には細胞を含有する流体の流量を調節する。流れ抵抗体372は、鉛直方向チャンネル382から第1入口ポート210へ、さらに第1流体入口212を介して流れチャンネル60へと、典型的には培地を含有する流体の流量を調節する。流れ抵抗体373(その長さのために流れ抵抗体371とほぼ同等の抵抗を提供する)は、鉛直方向チャンネル383および384からの流量を調節し、典型的にはそれぞれ細胞および抽出流体を含む流体を、第2入口ポート330に、さらに第2流体入口332を介して流れチャンネル60に送達する。
【0101】
本明細書の実施形態に示される流れ抵抗体の性質および位置は、単なる例であることが理解されるべきである。流れ抵抗体は、典型的にはヘッダー層200に組み込まれるが、それらの位置は、流れチャンネル60の上流であっても下流であってもよく、かつ、それらの配置構成は、図示されているように曲がりくねっっていてもよく、細長くてもよく、もしくは、コイル状であり、ヘッダー基板に沿うように、もしくは、ヘッダー基板の周りを回るように方向付けられてもよく、または、当業者によって理解されるような他の配置構成であってもよい。場合によっては、1つ以上の流れ抵抗体の性質および位置は、少なくとも部分的に、基板層(そこからバイオリアクター100が構築される)の占有面積のサイズおよび寸法、ならびに/または、製造の制約によって決定されてもよい。
【0102】
図11aおよび11bは、それぞれ、分解図および組み立てられた図であり、積み重ね600にて配置された複数のバイオリアクター100を示している。積み重ねは、積み重ねに構造的支持を与えるために、実質的に剛性であるベース板610および実質的に剛性であるカバー板620を含む。好ましい実施形態では、ポスト(図示せず)などのガイド造作部が、複数のバイオリアクターを通して提供される同一直線上のポストチャンネル(図示せず)を通って延び、貫通孔(個別のバイオリアクターの流体入力チャンネル381,382,383,384、流体出力チャンネル391,392、気体入力チャンネル481および気体出力チャンネル483を形成する)における流れの位置合わせと開存性を確保する。図11aおよび11bは、図9に示される3層設計を有する20の多層マイクロ流体バイオリアクター100の積み重ねを示している。単一の多層マイクロ流体バイオリアクターからの層200、300および400が分解図に示されている(図11a)。有利なことに、20のバイオリアクターはすべて、細胞培養プロセスに必要とされる各流体に共通の流体源によって供給される。しかしながら、バイオリアクターの積み重ねは、単一のバイオリアクター、または、例えば、5、10、20、30、50、60、70、80、90、100もしくは数100のバイオリアクターを有し得ることが理解されるべきである。
【0103】
図11aおよび11bに示される実施形態は、結集した末梢血単核細胞において典型的には1%の頻度で発生するCD34+細胞を選択するために用いられてもよい。例えば、2×10個の細胞を溝に沈着させ、かつ、層当たり200個の溝で、約3.5×10個の細胞/mlの密度で溝で増殖させ得る。1つの例では、それぞれ25×3層の4つの積み重ねを利用して、1010個の細胞を精製し、かつ、1%CD34+細胞分画から1010個の細胞を増殖させ得る(×100増殖)。
【0104】
いくつかの実施形態では、バイオリアクター100は、それぞれが複数のバイオリアクターを含有する多層シートにて製造される。図18に示される実施形態では、4つのバイオリアクター100の流れ層は、単一のA5サイズのPDMSシートで形成された。流れ層シートは、対応するヘッダー層シートおよびベース層シートと組み立てられ、かつ、結合されて4つの個別のバイオリアクターを有する多層シートが形成され得る。多数のバイオリアクターは、製造者によって決定されてもよいレイアウトおよびシートサイズにしたがって、または、材料の設計もしくは消費を最適化するために、シート上に配置されてもよい。シートが切断されて個々の多層バイオリアクターが形成されてもよく、多層シート自体が積み重ねられてシートスタックが形成されてもよい。積み重ねにおける各シートにおける各バイオリアクターは、同一直線上に提供された貫通ポートを有し、該貫通ポートは、積み重ねが組み立てられるときには、鉛直方向に延びて、積み重ね600に関連して述べた様式でバイオリアクターのうちの個々のものに流体を送達する。
【0105】
有利なことに、バイオリアクターは、流体入力および流体出力チャンネルを形成する鉛直方向の孔を通して並列に接続されるので、積み重ねにおける個々のバイオリアクターはそれぞれ、必要とされる流体のそれぞれの単一の供給源によって供給され得、かつ、廃棄物は、積み重ねにおけるすべてのバイオリアクターから、単一の廃棄物レセプタクルへと収集され得る。シートスタックにおける隣接するバイオリアクターにおいて対応する流体入口および出口は、適切に配置されたマニホルドによって流体的に連結されてもよいが、それでも、必要とされる流体のそれぞれの単一の供給源および単一の廃棄物レセプタクルのみを必要とする。
【0106】
図12aから12cは、積み重ね600を流体源および/または廃棄物リザーバーに結合するためのチューブを受け入れるために上面610に複数の開口部を有するカバー板620の例をさらに詳細に示している。図示された実施形態では、細胞は、開口部681をチューブ(図示せず)と接続することによって、単一のバッグ、容器、フラスコ、または、その他のレセプタクルから積み重ねにおけるすべてのバイオリアクターへと送達されてもよく、該チューブは次に、流体入力チャンネル381を通して各バイオリアクターに供給する。培地は、開口部682をチューブ(図示せず)と接続することによって、単一のバッグ、容器フラスコ、または、その他のレセプタクルから積み重ねにおけるすべてのバイオリアクターへと送達されてもよく、該チューブは次に、流体入力チャンネル382を通して各バイオリアクターに供給する。細胞分離を必要とするプロトコルでは、開口部683をチューブ(図示せず)と接続することによって、積み重ねにおけるすべてのバイオリアクターへと送達されてもよく、該チューブは次に、流体入力チャンネル383を通して各バイオリアクターに供給する。抽出流体は、開口部684をチューブ(図示せず)と接続することによって、供給源(単一のバッグ、容器、フラスコなど)から積み重ねにおけるすべてのバイオリアクターへと送達されてもよく、該チューブは次に、流体入力チャンネル384を通して各バイオリアクターに供給する。酸素などの呼吸気体は、各バイオリアクターにおける気体流路410への供給のための気体入力チャンネルを通して、圧力下で、大気への開放接続によって、または、ポンプを使用して大気もしくはキャニスターからの気体を駆動させることによって、開口部641を通して供給されてもよい。
【0107】
好ましい実施形態では、図11aおよび11bに示されるタイプの1つ以上の積み重ね600が、バイオリアクター細胞培養システムに組み込まれる。理想的には、当該細胞培養システムは、積み重ね、および、流体源を含有するハウジングを有し、該流体源は、細胞培養プロトコルを実行するために必要な試薬を含有する複数の試薬バッグまたは容器の形態であり、かつ、カバー板620のようなマニホルドを通して積み重ねに流体的に連結される。当該システムは、コントローラメモリと通信可能に連結されたプロセッサを有するコントローラと、理想的にはハウジングに組み込まれるユーザインターフェースとを含み、該ユーザインターフェースは、当該システムのオペレータにアクセス可能なタッチスクリーンおよび/またはディスプレイならびにキーパッドを有していてもよい。メモリは、1つ以上の細胞培養プロトコルを実行するための指令を格納し、かつ、該指令は、プロセッサによって遂行されるときには、コントローラが当該バイオリアクター細胞培養システムを動作させて、1つ以上の細胞培養プロトコルを実行することを引き起こす。
【0108】
ハウジングの内部には、1つ以上の流体源と連通している1つ以上の流体ポンプがある。ポンプはコントローラによって動作し、流体線の弁の開閉を制御することにより、コントローラのメモリに格納された細胞培養プロトコルにしたがって、個々のカバー板の開口部へと流体を送達する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、バイオリアクター入力に連結された圧力源を独立して調節するように構成されたマイクロコントローラを有する。
【0109】
ユーザインターフェースは、1つ以上の細胞培養プロトコルをメモリから選択するために、または、メモリに入力するために、オペレータから1つ以上の入力を受け取る。各培養プロトコルは、メモリに格納された対応する指令のセットを有し、該指令は、プロセッサによって遂行されるときには、コントローラが、選択/入力されたプロトコルにしたがって当該システムのポンプ、および、その他のコンポーネントを動作させることを引き起こす。
【0110】
例えば、コントローラは、細胞抽出チャンネルを通した個別のバイオリアクターの溝からの細胞の抽出を引き起こすように動作可能であり、該細胞抽出チャンネルは、積み重ねを通って同一直線上に延び、かつ、個別のバイオリアクターにおける第2出口ポートと流体連通している。理想的には、ハウジングは、抽出された細胞の非汚染収集のための抽出チャンネルに連結された、バッグ、フラスコまたはバイアルなどのレセプタクルを受け入れるためのプラットフォームまたは領域を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、コントローラは、Wi-Fiまたはイーサネット接続を介したインターネット接続を有し、該インターネット接続は、データへのアクセス、プロトコルの修正および制御ならびにリモートソフトウェア更新のためのプロセッサへのリモートアクセスを可能にする。さらに、コントローラは、スキャナー、または、その他のデバイスと動作可能に連結されて、患者材料の安全な追跡および各患者のプロトコルのカスタマイズのために、バーコードまたは電子タグなどの識別子をサンプルから自動的に読み取るか、または、受け取ってもよい。
【0112】
溝アレイの1つ以上の溝への細胞沈着
本開示は、溝アレイの1つ以上の溝に細胞を導入することを有する方法を提供する。細胞は、溝を横切るような流れ(溝の長手方向の寸法と直交する交差方向の流れ)または溝に沿う流れ(長手方向の流れ)によって導入され得る。細胞は、流動または静的条件下での細胞と周囲の流体の密度の差により、沈降によって沈着する。細胞を溝アレイに導入する前に、デバイスは、それが満たされるまで、最初に培地(交差方向の流れ、および/または、長手方向の流れ)をデバイスに流すことによって注入され得る。デバイスへ導入される前に、細胞は、体液(例えば、血液)、処理された、もしくは、部分的に処理された体液(例えば、血小板および/もしくは血清を除去するために処理された血液)に存在するか、または、適切な流体媒体(例えば、培地)に再懸濁されていてもよい。
【0113】
デバイスは、細胞入口ポートおよび細胞出口ポートを有して構成され得る。静的条件下で細胞を1つ以上の溝に沈着させる場合、入口ポートからの流れによる細胞の播種に続いて、出口ポートが閉じられるであろう。
【0114】
細胞は、原核細胞であってもよく、真核細胞であってもよい。細胞は、単細胞生物由来であってもよく、多細胞生物由来であってもよい。場合によっては、細胞は遺伝子操作されている(例えば、細胞はキメラ細胞であってもよい)。細胞は、細菌、真菌、植物細胞、または動物細胞などであってもよい。細胞は、ヒトまたは非ヒトの動物もしくは哺乳動物に由来してもよい。例えば、細胞が動物由来である場合、細胞は、心臓細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、肝細胞、軟骨細胞、神経細胞、骨細胞、骨芽細胞、筋肉細胞、血液細胞、内皮細胞、幹細胞、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、好塩基球、マスト細胞、好酸球)などであってもよい。場合によっては、細胞は癌細胞である。細胞は、非付着性細胞株(例えば、L1.2、マウス免疫B;Jurkat、ヒトCD4T;Ramos、ヒト免疫B)または付着性細胞株(GPE86、マウス胚性線維芽細胞)、ならびに、初代細胞であってもよい。好ましい実施形態では、細胞は、初代免疫細胞または幹細胞などの初代細胞である。1つの実施形態では、細胞は、初代免疫細胞(例えば、T細胞)である。1つの実施形態では、細胞は非付着性であり、かつ、培養方法は、懸濁状態の細胞を培養するためのものである。別の実施形態では、細胞は付着性であり、培養方法は、懸濁状態で付着性細胞を培養するためのものである。
【0115】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫細胞」は、疾患および異物から身体を防御する免疫系の細胞を指す。免疫細胞の非限定的な例としては、骨髄由来樹状細胞などの樹状細胞と;B細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞などのリンパ球と;マクロファージとが挙げられる。免疫細胞は、いくつかの実施形態では、適切な対象からの骨髄、脾臓、または血液由来であってもよい。例えば、免疫細胞は、ヒトまたはサル、類人猿、牛、羊、山羊、馬、ロバ、ラマ、ウサギ、ブタ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、犬、猫などの非ヒト哺乳動物から生じてもよい。好ましい実施形態では、免疫細胞はT細胞、好ましくはヒトT細胞である。
【0116】
本明細書で用いられる場合、用語「幹細胞」は、自己複製および多系統分化の両方が可能なクローン化可能細胞を指す。それらの起源に基づいて、幹細胞は胚性幹細胞(ESC)または出生後幹細胞/体性幹細胞/成体幹細胞(ASC)のいずれかに分類される。
【0117】
胚性幹細胞(ESC)は、胚盤胞と呼ばれる2~11日齢の胚に由来し得る。それらは全能性であり、生殖細胞を含むあらゆるタイプの細胞に分化することが可能である。ESCは、無期限に未分化状態で伝播および維持され得るため、不死であると考えられる。
【0118】
成体幹細胞(ASC)は、ほとんどの成体組織に見られる。それらは多能性であり、複数の細胞タイプに分化することができるが、すべての細胞タイプに分化することはできない。それらの起源に依拠して、AASCはさらに、造血幹細胞(HSC)と間葉系幹細胞(MSC)として分類され得る。HSCは、臍帯血または末梢血のいずれかから取得され得る。MSCは、胎児の中胚葉層に由来し、かつ、成人では、骨髄幹細胞(BMSC)、辺縁幹細胞、肝幹細胞、皮膚幹細胞などの種々の組織に存在するものである。
【0119】
幹細胞はまた、成人の歯髄組織、乳歯の歯髄組織、歯根膜、頂端乳頭および頬粘膜を含む口腔顔面組織から単離される。
【0120】
HSCは、無期限の自己複製が可能な長期サブセットと、定められた間隔で自己複製する短期サブセットに分割され得る。HSCは、非自己複製オリゴリネージ前駆細胞を生じさせ、該非自己複製オリゴリネージ前駆細胞は次に、分化能がいっそう制限された子孫を生じさせ、最終的には、骨髄組織(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、樹状細胞)、赤血球系(赤血球)、巨核球(血小板)およびリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む機能的に成熟した細胞が生じさせる。
【0121】
細胞培養
細胞は、生存率および/または細胞増殖を維持する条件下で、例えば1~14日間培養され得る。増殖は、細胞分裂(有糸分裂)または分化などのその他のプロセスによって特徴付けられ得、その最中に細胞は、生物全体の組織または器官に類似した機能が可能な特定のタイプに変化し得る。
【0122】
培養の最中、細胞培地は、細胞代謝のために1つ以上の溝に保持された細胞に栄養素および増殖因子を提供するために、かつ、細胞によって生成された老廃物を除去するために、溝アレイの上部を横切るように提供される。
【0123】
1つの例では、培地は、溝アレイを横切るように連続的に流れる。このタイプの流れは、本明細書では「連続的な流れ」と呼ばれる。連続的な流れは、まさに連続的である。媒体は、途切れることなく連続的にポンピングされ、結果として栄養素と増殖因子の連続的な流れをもたらす。代替的には、培地は、振動流または拍動流によって提供されてもよい。振動流とは、平均速度がゼロの振動流を指す。拍動流は、平均速度がゼロ以外の定常流に重ね合わされた振動流である。
【0124】
流体が本明細書に開示される多層マイクロ流体バイオリアクターの流れチャンネルを通って流れるとき、流体の速度および粘度に依拠して、2つのタイプの流れのいずれかが起こるであろう:層流または乱流。1つの例では、細胞培地は、層流にて溝アレイを横切るように灌流した。層流は、乱流になる閾値を下回る低速で発生する傾向がある。乱流は、乱気流または流体粒子の小さなパケットによって特徴付けられる非定常流レジームであり、横方向の混合をもたらす。非科学的な用語では、層流は滑らかである一方で、乱流は荒い。典型的には、本発明の方法において有用なデバイスにおける流れは、レイノルズ数が低い(典型的には10未満)ために層流である。
【0125】
デバイスは、細胞培地入口ポートおよび細胞培地出口ポートを有して構成され得る。媒体は、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、液圧またはオンチップマイクロポンプによって、入口ポートから溝を横切るように灌流され得る。媒体灌流は、増殖因子およびタンパク質の制御された供給、ならびに、細胞への流体誘発力の調節された曝露を提供する。
【0126】
2つの灌流モードが存在する:シングルパス灌流および再循環灌流である。シングルパス灌流では、細胞培地は溝アレイを横切るように灌流されて、出口ポートに接続された廃棄物容器を流し、その最中、灌流された増殖因子、細胞代謝物および分泌因子が細胞に短期間曝露される。再循環灌流中、媒体、細胞代謝物および分泌因子は、溝アレイを横切るように再循環されて、いっそう長期間細胞に曝露される。
【0127】
本明細書で用いられる場合、「培地」は、細胞の増殖を支持するように設計された媒体を指す。細胞培地は概して、適切なエネルギー源および細胞周期を調節する化合物を有する(しばしば基本媒体または基礎媒体(basal medium;基礎培地)と呼ばれる)。典型的な培地は、アミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、および、任意選択的には、増殖因子、ホルモンおよび/または付着因子の補体物で構成されている。培養物は、重要な栄養素(グルコースなど)を1回以上補充され得る。いくつかの実施形態では、培地は、例えば細胞を改変するために、例えば増殖因子、形質導入エンハンサーを補充される。いくつかの実施形態では、培地の2つの流れがあり、そのうちの一方は典型的には基本培地成分を含有し、かつ、他方は典型的には高価値の栄養素/サプリメントを有する増殖媒体成分を含有する。栄養素に加えて、媒体はまた、pHと浸透圧の維持にも役立つ。いくつかの実施形態では、当業者は、培養される細胞が培地および細胞培養の条件を決定することを把握するであろう。適切な細胞培地および培養条件(好気性、嫌気性、温度、pH)の選択は、当業者の日常的な技能の範囲内である。
【0128】
は、散布、膜拡散および媒体灌流によって培養物に供給され得る。後者の方法では、媒体は培養システムに入る前に酸素化チャンバーを通して灌流されて、Oの一定の補充を確実にしてもよい。典型的には、培養物に隣接する低酸素状態を回避するために、酸素の連続的な補充が必要とされる。このことは、高細胞密度培養で特に懸念される。
【0129】
1つの例では、溝のアレイを有する基板は、気体透過性であり、かつ、デバイスは、気体と流体連通している気体透過性基板の下に1つ以上の気体流路を有する。例えば、細胞が(1つ以上の溝に)既に培養されている気体透過性基板の直下(1つまたは複数の溝内)に1つ以上の気体流路を含めることは、細胞と所望の大気との間のいっそう良好な気体交換を提供するであろう。それはまた、気液界面の必要性を排除する。
【0130】
1つの例では、バイオリアクターは、専用のCOインキュベーター内に配置される。通常、哺乳類の細胞培養では、インキュベーターにおけるCOレベルが酸素レベルを定める。インキュベーターにおける温度ならびにCOおよび湿度のレベルを制御することは、培養される細胞の健康と増殖にとって重要である。哺乳類細胞株と初代細胞の大部分では、最適な増殖温度は37℃である。約95%の加湿雰囲気が、培養物の乾燥を回避させる。COは典型的には、pHを調整するための媒体バッファーシステムの一部として必要とされる。最も一般的に用いられるCO-重炭酸塩緩衝システムは、5~10%COのチャンバー雰囲気に依拠し、7.2~7.4のpHを提供する。
【0131】
別の例では、デバイスは、気体供給源に接続された入口ポートおよび出口ポートを有して構成されている。Oの連続的な流れは、気体交換が媒体を通してのみ起こる伝統的な単層培養システムよりも有利であろう。
【0132】
マイクロ流体細胞培養システムでは、基板の気体透過性、および、それらの溶解度より低い圧力での気体の溶解に起因して、システムでの注入、細胞懸濁液搭載および媒体灌流プロセスの最中に気泡が生じるであろう。泡は、マイクロチャンネルの閉塞や細胞への剪断損傷につながるマイクロスケールの細胞培養に有害である可能性がある。
【0133】
1つの例では、圧力差が気体透過性基板を横切るように加えられ、該圧力差は、気体を駆動させて流れチャンネルから気体チャンネルに浸透させる。
【0134】
細胞トランスフェクション/形質導入
本開示はまた、外因性分子を細胞に導入する方法を提供する。本明細書で用いられる場合、「外因性」分子は、通常は細胞に存在しないが、細胞内に導入されてもよい分子を指す。「通常、細胞に存在」することは、細胞の特定の発達段階と環境条件によって決定される。例えば、組織/器官の胚発育中にのみ存在する分子は、前記組織/器官の成体細胞に関して外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘発された分子は、熱ショックを受けていない細胞に関しては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能バージョンもしくは正常に機能する内因性分子の機能不全バージョン、または、異なる細胞区画で、もしくは、内因性レベルよりも高いレベルで発現される内因性分子を有し得る。
【0135】
外因性分子は、化学合成によって生成された小分子、もしくは、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、それらの任意の修飾誘導体などの巨大分子、または、上記分子のうちの1つ以上を有する任意の複合体であってもよい。
【0136】
真核細胞への核酸の意図的な送達または導入は、典型的には「トランスフェクション」と呼ばれる。トランスフェクションはまた、その他の方法および細胞タイプを指してもよいが、その他の用語がしばしば好まれる。形質転換は典型的には、細菌および植物細胞を含む非動物真核細胞における非ウイルス性DNA移送を説明するために用いられる。遺伝物質(スーパーコイル状のプラスミドDNAもしくはsiRNA構築物など)または抗体などのタンパク質でさえ、「トランスフェクト」されてもよい。本明細書で用いられる場合、「トランスフェクション」は概して、細菌および非動物真核細胞を含む細胞への分子の非ウイルス性送達に関する。
【0137】
外因性分子を細胞に導入するための方法は、当業者に知られており、かつ、脂質媒介性移送(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子衝突、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性移送およびウイルスベクター媒介性移送が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明は、遺伝子構築物の操作または移送のためのベクターの使用を含む。ベクターは、外来遺伝物質を人工的に運搬するために用いられ得る核酸分子(好ましくはDNA分子)である;別の細胞に移され、そこで複製または発現され得る。外来DNAを含有するベクターは「組換えベクター」と呼ばれる。ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド、染色体外要素、ミニ染色体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
ベクターは概して、挿入物(導入遺伝子)およびベクターの「バックボーン」として役立ついっそう大きい配列からなるDNA配列である。遺伝情報を別の細胞に移すベクターの目的は、典型的には、標的細胞において挿入物を単離し、増大させ、または、発現させることである。標的細胞における導入遺伝子の発現のために特別に設計されたベクターは「発現ベクター」と呼ばれ、かつ、概して導入遺伝子の発現を駆動させるプロモーター配列を有する。適切なベクターの選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0140】
本明細書で用いられる場合、用語「プロモーター」は、その最も広い文脈で解釈されるべきであり、かつ、正確な転写開始に必要とされる、TATAボックスまたはイニシエーター要素を含むゲノム遺伝子の転写調節配列を含み、例えば、発生および/または外部刺激に応答して、または組織特異的な様式で、核酸の発現を変化させる追加の調節要素(例えば、上流の活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサーおよびサイレンサー)を含んでも、含まなくともよい。本文脈において、用語「プロモーター」はまた、組換え合成もしくは融合核酸、または、それが動作可能にリンクされている核酸の発現を付与、活性化または増強する誘導体を説明するために用いられる。例示的なプロモーターは、発現をさらに増強し、かつ/または、前記核酸の空間的発現、かつ/もしくは、時間的発現を変更するために、1つ以上の特定の調節要素の追加のコピーを含有し得る。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「動作可能にリンクされる」は、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように、核酸に対してプロモーターを位置決めすることを意味する。プロモーターは、例えば内部リボソーム侵入部位を通して、多数の核酸に動作可能にリンクされ得る。
【0142】
本明細書で用いられる場合、「ウイルス」は、宿主細胞なしでは増殖または複製し得ない感染性エンティティーの大きなグループのいずれかを指す。ウイルスは典型的には、遺伝物質のRNAまたはDNAコアを取り囲むタンパク質コートを含有するが、半透膜は含まず、かつ、生細胞においてのみ増殖および増大することが可能である。ウイルスとしては、ウイルスゲノムの全部または一部を含むベクターが、かかる粒子の生成のために適切な細胞または細胞株に形質導入されたときなどに形成されるものが挙げられる。結果として生じるウイルス粒子は、様々な用途を有し、該用途は、核酸を細胞に移すことを含むがこれに限定されない。したがって、ウイルスはパッケージ化されたウイルスゲノムである。ウイルスは、単一の粒子、粒子のストック、またはウイルスゲノムを指し得る。
【0143】
本明細書で用いられる場合、ウイルスベクターは、ウイルス起源の少なくとも1つの要素を含み、かつ、ウイルスベクター粒子またはウイルスにパッケージ化され得る核酸ベクター構築物を指す。本明細書におけるウイルスベクターへの言及は、それがタンパク質コート内にパッケージ化されている場合、ウイルスと交換可能に使用される。ウイルスベクター粒子またはウイルスは、DNA、RNA、または、その他の核酸を細胞に移す目的で用いられ得る。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、ワクシニアベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター(例えば、HSV)、バキュロウイルスベクター、サイトメガロウイルス(CMV)ベクター、パピローマウイルスベクター、シミアンウイルス(SV40)ベクター、シンドビスベクター、セムリキ森林ウイルスベクター、ファージベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスベクターは典型的には、外因性遺伝子に動作可能にリンクされて(ビヒクルまたはシャトルとして)外因性遺伝子を細胞に移す、操作されたウイルスを含む。
【0144】
ウイルスベクターまたはウイルス粒子が使用され、目的の遺伝物質を細胞に移すとき、この技術は「形質導入」と呼ばれる。したがって、概して、細胞を「形質導入」することは、ウイルスベクターまたはウイルス粒子を用いて遺伝物質を細胞に移すことである。
【0145】
本明細書で用いられる場合、核酸分子としては、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)が挙げられ、一本鎖または二本鎖であり得;線形、分岐、または円形であり得;かつ、任意の長さのものであり得る。核酸としては、二本鎖を形成することが可能なもの、および、三本鎖を形成する核酸が挙げられる。核酸としてはまた、DNAもしくはRNAの類似体または誘導体も挙げられる。類似体は、改変されたバックボーン(例えば、リン酸糖バックボーン類似体)、ペントース糖または核酸塩基(例えば、普遍的な塩基、ゼノ核酸)のうちの1つまたは複数を有していてもよい。例としては、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノオリゴマー、ロック核酸(LNA)ならびにグリコール核酸(GNA)およびスレオース核酸(TNA)が挙げられる。核酸は、例えば、ポリペプチド、調節RNA(例えば、マイクロRNA、短い干渉RNA(siRNA)、ガイドRNA(gRNA)、およびアンチセンス)、リボザイムならびに小ヘアピンなどの遺伝子産物をコードし得る。
【0146】
交差方向の流れ、および/または、長手方向の流れによる細胞の導入と同時に、または、その後に、外因性分子(例えば、ベクター)がデバイスに導入されてもよい。外因性分子(例えば、ベクター)は、本明細書に記載の培養方法による細胞増加に続いて、デバイスに導入されてもよい。外因性分子は、トランスフェクション/形質導入を助長する媒体へと供給され得、例えば、細胞への侵入を支援、助長または促進し得、リポソーム製剤、リポフェクチン、または、ウイルス形質導入を支持する培地を含む。細胞への侵入を支援、助長または促進する培地である。いくつかの方法では、細胞は、ウイルスベクターの添加前に活性化され、例えば、T細胞は、IL-7およびIL-15などのサイトカインと組み合わせたCD3およびCD28特異的抗体を介したTCR活性化経路の刺激によって活性化されてもよい。
【0147】
当該方法は、静的(例えば、単一搭載)もしくは流れトランスフェクション/形質導入、または、それらの組み合わせを含んでいてもよい。流れ形質導入法としては、外因性分子(例えば、ベクター)がトランスフェクション/形質導入期間全体にわたってデバイスを通して連続的に灌流される連続灌流、または、例えば蠕動ポンプを用いてウイルスベクターがデバイスを通して再循環されてもよい再循環灌流が挙げられてもよいが、これらに限定されない。別の例では、外因性分子が搭載され、静的条件下でインキュベートすることが可能とされるときに、逐次灌流が用いられる。短縮されたトランスフェクション/形質導入期間の後、外因性分子の新しいストックがデバイスに搭載されて、いっそう多くの外因性分子が追加され、かつ、細胞培地の栄養素/増殖因子が補充され得る。
【0148】
トランスフェクション/形質導入に続いて、細胞は、本明細書に記載の培養方法によって増加してもよい。トランスフェクト/形質導入された細胞の増加は、適切な薬剤耐性マーカーがトランスフェクト/形質導入されたDNAに含まれているときには、薬剤選択によって達成されてもよい。かかる実施形態では、トランスフェクト/形質導入された細胞を増加させるために、薬剤を含有する選択的な媒体が用いられる。
【0149】
細胞選択
本開示はまた、溝に固定化された捕捉または結合試薬を用いて細胞を選択する方法を提供する。捕捉試薬として、抗体が用いられてもよい。抗体は、特定の表面抗原の発現または系統特異的抗原の発現の欠如にそれぞれに基づいて溝に沿って流れるため、それらは細胞を積極的または消極的に選択するために用いられ得る。例えば、当該方法は、抗CD34抗体を用いた積極的選択によってCD34+造血幹/前駆細胞を選択または濃縮するために用いられ得る。別の例では、当該方法は、抗T細胞抗体(例えば、CD2、CD3、CD4/CD8、T細胞受容体α/β)を用いてT細胞を選択または濃縮するために用いられ得る。捕捉された細胞は、例えば、タンパク質分解酵素キモパパインまたはノイラミニダーゼを用いて抗体から遊離され得る。続いて、細胞は、本明細書に開示される培養方法によって増加してもよく、かつ/または、本明細書に開示される方法によって形質導入/トランスフェクトされてもよい。
【0150】
抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。好ましくは、抗体調製物は親和性精製されている。特に有用な抗体は、固体表面に吸着された後も反応的なままであり、かつ、完全に乾燥したときには構造的完全性を保持し、かつ、再水和するときには反応的である。
【0151】
抗体は、当業者に知られている日常的な方法を用いて、溝アレイに固定化され得る。「固定化された」結合パートナーとは、溝に恒久的または半恒久的に吸着し、埋め込まれ、または、付着した結合パートナーを指す。
【0152】
いくつかの実施形態において、当該方法は、細胞をデバイスに導入する前に、抗体を溝に固定化することを有する。例えば、抗体は、交差方向の流れ、および/または、長手方向の流れによって木立に提供され、かつ、静的または流動条件下でそれに吸着するようにインキュベートするために残されてもよい。いくつかの実施形態では、溝の表面上の反応基は、捕捉試薬の固定化に続いてブロックされる。生体分子の非特異的吸着を防ぐ任意のコーティングが使用され得る。これらのコーティングは概して、水に結合するポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはプルロニック127などのPEGコポリマー)である。用いられ得るその他のポリマーとしては、炭水化物ポリマー(デキストラン)または双性イオン防汚ポリマーが挙げられる。
【0153】
本明細書で用いられる場合、用語「特異的に結合する」は、細胞上のその他のリガンドまたはサンプル中に存在する成分に優先する、細胞上の所定のリガンドとの特定の捕捉試薬優先的相互作用を指す。例えば、所定のリガンドに特異的に結合する特定の結合剤は、適切な条件下で、サンプルにおけるその他の成分との任意の非特異的相互作用のものよりも観察可能な量または程度で、所定のリガンドに結合する。適切な条件は、所定の特定の結合剤と所定のリガンドとの間の相互作用を可能にするものである。これらの条件としては、pH、温度、濃度、溶媒、インキュベーション時間などが挙げられ、かつ、所定の特定の結合剤およびリガンド対との間で異なってもよいが、当業者によって容易に決定されるであろう。
【0154】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、インタクト免疫グロブリン分子および抗原のエピトープに結合することが可能な免疫グロブリン分子の断片を指す。
【0155】
抗体は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)またはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)であり得る。クラスは、それらが含有する重鎖のタイプによって区別される。IgG分子はγ鎖として知られる重鎖を有し;IgMはμ鎖を有し;IgAはα鎖を有し;IgEはε鎖を有し;かつ、IgDはδ鎖を有する。
【0156】
抗体は、1つの重鎖タイプ(例えば、μ、δ、γ、α、またはε)と1つの軽鎖タイプ(例えば、λまたはκ)との関連付けによって形成され得る。従来の抗体の基本(モノマー)ユニットは、ジスルフィド結合によって一緒に接続された2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖からなる4つのポリペプチドユニットであり、かつ、軽鎖(HCおよびLC)はまた、安定化のための分子内ジスルフィド結合を含有する。軽鎖はいっそう短く、重鎖よりも分子量が低い。抗体の一般的な形状はYであり、Yの中心に可撓性のヒンジ(ドメイン間)領域がある。各ポリペプチド鎖は、定常領域および可変領域を有する。
【0157】
軽鎖可変領域の一般的な表記法はVLであり、かつ、軽鎖定常領域の一般的な表記法はCLである。表記法は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)についても同様であり、CH1、CH2、およびCH3は、重鎖の異なる定常領域ドメインを示す。フラグメント結晶化可能(Fc)領域には、重鎖(CH)由来の定常領域のみを含有するが、フラグメント抗原結合領域(Fab)には、重鎖と軽鎖(VHおよびCL)の両方の定常ドメインと可変ドメインの両方を含む。フラグメント可変領域FV領域には、2つの可変ドメインのみを含有する。
【0158】
本明細書で用いられる場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および/または重鎖の部分を指し、かつ、例えばCDRのアミノ酸配列を含む;すなわち、CDR1、CDR2、CDR3およびフレームワーク領域(FR)。例えば、可変領域は、3つまたは4つのFR(たとえば、FR1、FR2、FR3および任意選択的にはFR4)と3つのCDRを有する。VHは重鎖の可変領域を指す。VLは軽鎖の可変領域を指す。
【0159】
本明細書で用いられる場合、用語「相補性決定領域」(同義語CDR;すなわち、CDR1、CDR2、およびCDR3)は、その存在が特定の抗原結合への主要な寄与因子である抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は典型的には、CDR1、CDR2およびCDR3として識別される3つのCDR領域を有する。1つの例では、CDRおよびFRに割り当てられたアミノ酸位置は、Kabat Sequences оf Proteins оf Immunological Interest(免疫学的に重要性のあるタンパク質のカバット配列),国立衛生研究所,メリーランド州ベセスダ,1987および1991(本明細書では「Kabatナンバリングシステム」とも呼ばれる)にしたがって定められる。Kabatのナンバリングシステムによると、VH FRおよびCDRは次のように位置する:残基1-30(FR1)、31-35(CDR1)、36-49(FR2)、50-65(CDR2)、66-94(FR3)、95-102(CDR3)および103-113(FR4)。Kabatのナンバリングシステムによると、VL FRおよびCDRは次のように配置される:残基1~23(FR1)、24~34(CDR1)、35~49(FR2)、50~56(CDR2)、57~88(FR3)、89-97(CDR3)および98-107(FR4)。
【0160】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
【0161】
本明細書で用いられる用語「インタクト抗体」は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有する全体または全長の抗体を指す。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)、または、そのアミノ酸配列変異体であってもよい。
【0162】
抗体は、原子価において異なり得る。いくつかの免疫グロブリンは、J鎖を介したFcドメインの結合を通してマルチマーを形成し得る。
【0163】
抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換えであり得る。
【0164】
本明細書で用いられる用語「ポリクローナル抗体」は、異なる決定基(エピトープ)に対して方向付けられた抗体の混合集団を指す。修飾語「ポリクローナル」は、抗体集団の特徴を示し、かつ、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるポリクローナル抗体は、宿主(例えば、山羊)への播種または感染によって病原体全体または単離された抗原を導入されて、病原体または抗原に対する抗体を作製するように宿主を誘導するように作製されてもよい。
【0165】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体または前記抗体の集団を指す。集団を構成する個々の抗体は、少量で存在してもよい、考え得る天然に発生する突然変異を除いて、本質的に同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、かつ、単一の抗原部位に対して方向付けられる。さらに、典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して方向付けられた異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して方向付けられる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、かつ、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature(1975)256:495によって最初に説明されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、組換えDNA法によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えばClackson et al.,Nature(1991)352:624-628およびMarks et al.,J.Mol.Biol.(1991)222:581-597に記載された技術を用いて、または、本技術分野で知られているその他の方法によって、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0166】
抗体の「抗原結合フラグメント」は、インタクト抗体の1つ以上の可変領域を有する。F(ab’)2、Fab、Fab’、Fvなどの免疫グロブリン分子のフラグメントは、還元剤とプロテアーゼを用いて免疫グロブリンタンパク質構造の特定の部分を消化または切断して、免疫グロブリン分子から選択的に切断され得る。免疫グロブリン分子のフラグメントも組換えで作製され得る。
【0167】
これらの抗体フラグメント(それらが由来する抗体の抗原(例えば、ポリペプチド抗原)に選択的に結合するいくらかの能力を保持する)は、本技術分野で周知の方法(例えば、Harlow and Lane、前出)を用いて作製され得、かつ、以下のようにさらに説明される。
【0168】
Fabフラグメントは、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントからなり、かつ、抗体分子全体を酵素パパインで消化することによって生成され、インタクト軽鎖および重鎖の一部からなるフラグメントが産出され得る。
【0169】
抗体分子のFab’フラグメントは、抗体分子全体をペプシンで処理し、続いて還元することにより、インタクト軽鎖および重鎖の一部からなる分子を産出することによって得られ得る。この様式で処理された抗体分子当たり、2つのFab’フラグメントが得られる。
【0170】
抗体の(Fab’)2フラグメントは、抗体分子全体を酵素ペプシンで処理することにより、その後の還元なしに得られ得る。(Fab’)2フラグメントは、2つのFab’フラグメントの二量体であり、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持されている。
【0171】
Fvフラグメントは、2本の鎖として表される軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定められる。
【0172】
本明細書で用いられる場合、「組換え抗体」は、組換え手段によって調製され、発現し、作成され、または、単離される抗体を指し、例えば、(a)免疫グロブリン遺伝子(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子)またはそれから調製されたハイブリドーマに対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体;(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体;(c)組換え抗体ライブラリーから単離された抗体;および、(d)免疫グロブリン遺伝子配列をその他のDNA配列にスプライシングすることを伴うその他の手段によって調製され、発現し、作成され、または、単離された抗体である。
【0173】
組換え抗体は、任意のフォーマットで製造され得る。完全な抗原結合部位を保持する最小の抗原結合フラグメントは、Fvフラグメントであり、これは全部が可変(V)領域からなる。可溶性かつ可撓性であるアミノ酸ペプチドリンカーが、分子の安定化のためにV領域をscFv(単鎖フラグメント可変)フラグメントに接続するために用いられるか、または、定常(C)ドメインがV領域に追加されて、Fabフラグメント(フラグメント、抗原結合)が生成される。scFvとFabは広く用いられているフラグメントであり、原核生物の宿主において容易に生成され得る。その他の抗体フォーマットとしては、ジスルフィド結合で安定化されたscFv(ds-scFv)、単鎖Fab(scFab)、ならびに、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体のような二量体および多量体抗体フォーマット、または、オリゴマー化ドメインにリンクされたscFvからなる異なるフォーマットを有するミニ抗体(miniAb)が挙げられる。最小のフラグメントは、ラクダの重鎖抗体と単一ドメイン抗体(sdAb)のVHH/Vである。
【0174】
本明細書で用いられる用語「抗体」はまた、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、合成ヒト化抗体およびキメラ抗体を包含する。
【0175】
選択に続いて、細胞は、本明細書に記載の培養方法によって増加してもよい。トランスフェクト/形質導入された細胞の増加は、適切な薬剤耐性マーカーがトランスフェクト/形質導入されたDNAに含まれているときには、薬剤選択によって達成されてもよい。かかる実施形態では、トランスフェクト/形質導入された細胞を増加させるために、薬剤を含有する選択的な媒体が用いられる。
【0176】
細胞採取
本開示の方法は、採取ステップを有していてもよく、該採取ステップは、抽出媒体の交差方向の流れ、および/または、長手方向の流れを提供して、細胞を溝から流れへと変位させること、ならびに、収集および使用のために細胞をデバイスの外へと変位させることを有する。
【0177】
抽出媒体の交差方向の流れは、特に細胞の継続的な供給が必要とされる実験室用途において有用性を有するであろうが、長手方向流れの抽出はいっそう効率的であり、したがって、いっそう大規模な細胞培養システムにおいて好適である。
【0178】
本開示の実施形態によるマイクロ流体バイオリアクター100の設計をガイドするために、数値シミュレーションが用いられた。計算流体力学、物質移動および化学反応で一般的に用いられるCOMSOL Multiphysicsが、a)細胞の輸送とマイクロ溝への沈着;b)グルコースと酸素の取り込み;および。c)レンチウイルスベクターの細胞への輸送をモデル化するために用いられた。
【0179】
実施例1:高密度増殖のための流れ、酸素、およびグルコース濃度のシミュレーション
流体力学および物質移動をシミュレートして、デバイスの幾何学的形状、半透膜の特性および流量を考慮して、細胞が高密度細胞増殖に十分な栄養素を有するか否かを試験するために、COMSOL Multiphysicsが用いられた。流れ層は、酸素透過性のポリジメチルシロキサン(PDMS)から製造された。酸素とグルコースの物質移動のシミュレーションのパラメータが、表1に示される。
【0180】
【表1】
【0181】
酸素およびグルコース濃度がシミュレートされて、細胞がマイクロ溝内で組織密度(10~10個の細胞/ml)にて増殖し得ることが確立された。図13に示す2Dシミュレーションの幾何学的形状は、溝付き基板上を覆うような交差方向の流れが存在するPDMS多層バイオリアクターを通る断面図である。シミュレーションは、酸素が気体透過性の溝付き膜の下側とデバイスの上部で0.2バールにあると仮定している。板間隔は100μmであった。溝の深さ、幅、ピッチはそれぞれ、200μm、150μmおよび200μmであった。溝の基部における細胞濃度は、10個の細胞/mlであり、かつ、細胞は各溝の底の80%を満たしていると仮定された。入口媒体流速は、左から右に0.05mm/sであった(流線は白線で示されている)(図13A)。
【0182】
流れの分離は、溝を横切るような層流を示す流線によって示されるように、濃厚細胞塊と媒体との間の境界で起こった。バイオマスに浸透した媒体は、ごくわずかであった。予想通り、静液圧はチャンネルに沿って直線的に減少した。
【0183】
グルコースおよび酸素の濃度が、図13Cおよび13Dに示されている。各溝の下部80%の体積におけるバイオマスによるグルコースと酸素の特異的取り込み量は、細胞株測定に基づいた(グルコース特異的取り込み量=0.73e-17[mol/s/細胞]、酸素特異的取り込み量=2.6e-17[mol/s/細胞])。グルコース供給濃度は10mMであった。グルコース濃度が4mMを超えたままである限り、細胞は生存したままである。グルコースは、流れチャンネルを横切って下流で消耗された(0.15mM/mm)。各溝内には、グルコース勾配も存在した。グルコース濃度は、各溝の基部で約0.2mMだけ消耗された。
【0184】
酸素(空気中の20%の体積分率)が、平行板の溝境界の上部および下部の境界から細胞に供給された(図13D)。酸素は、水への溶解度が比較的低いため(37℃で0.25mM)、最も希少な代謝物である。シミュレーションは、細胞への酸素輸送が、水より6.7倍高い酸素溶解度を有する流れ層にPDMSなどの酸素透過性材料を用いることによって増強されることを示した。安定した酸素濃度プロファイルは、3~4番目の溝によって下流で確立された。それはバイオマスの中心で最低であった(0.11mM)。骨髄細胞は、典型的には5%atm(約5mM)で増殖し、したがって、低酸素がこのモデルにおける細胞増殖を制限する可能性は低い。
【0185】
このシミュレーションは、デバイスが、標準的なフラスコまたはバッグ培養よりも約1000倍高い10~10個の細胞/mlで増殖した細胞の酸素およびグルコース要件を供給し得ることを実証している。
【0186】
図17は、流れが左側の入口から入り、かつ、木立を移動するとき(図17a)、または、流れが上部の入口から入り、溝に沿って移動するとき(図17b)にシミュレートされた三次元の流れを示している。流れが溝を横切るとき(図17a)、粒子は溝の長手方向の寸法と直交する円形の経路を有する流線に追従するため、渦流によって閉じ込められるであろう。流れが溝と同じ方向に方向付けられるとき、溝内の粒子は、溝の壁(図17b)と平行な流線に追従し、下部出口を介して外に出る。図17はまた、同じ入口流体速度については、上部入口から流入する流れが、左側の入口から流入する流れと比較して、溝内でいっそう高い流体速度を生成することも示している。溝の基部における壁剪断応力もまた、このシミュレーション方法を使用して見積もられた。細胞が22mm/分の平均上部入口流速で抗体によって選択的に捕捉されたことを以下に示している。この流れは、溝の基部において0.0218Paの壁剪断応力を生成した。
【0187】
実施例2:溝への細胞沈着のシミュレーション
細胞は、1.05~1.1の比重を有し、かつ、培地中に沈降する。溝への細胞の沈降は、入口流体速度が4.8μm/分であり、かつ、細胞沈降速度が4.2μm/sである層流混合モデルを用いてモデル化された。図14は、沈降距離がたった200ミクロンであるため、沈降を用いて最初の5つの溝に短時間(約200秒)でほとんどの細胞が沈着したことを示している。一旦細胞が溝基板に沈着すると、それらは培養プロセスの最中にそこで保持され、細胞がデバイスから流出することなく媒体の交換を可能にする。細胞を高い生存率に維持するための培地の典型的な灌流量は、約1ml/100万個の細胞/日である。溝付き基板への細胞沈着についてのシミュレーションパラメータが、以下の表2に示されている。
【0188】
【表2】
【0189】
シミュレーションはまた、モデルによって用いられた幾何学的形状では、溝への入口での流れの分離のために、チャンネルを横切るように方向付けられた流れ(交差方向の流れ)によって溝から細胞を回収することができなかったことを示した(図17A)。
【0190】
実施例3:溝付き基板に沈着した細胞によるウイルス取り込みのマイクロ流体輸送のシミュレーション
本開示によって対処される、対処が求められる別の問題は、細胞の表面への遺伝子ベクターの輸送のゆっくりとした割合である。ウイルスベクターの拡散の割合は約2×10-8cm/秒である。拡散時間は距離の2乗に対応するため、ウイルス粒子が1mm拡散するのに140時間かかるが、50ミクロンを拡散するのに30分しかからない。ウイルスの細胞への輸送を増大させるための現行の方法は、臨床規模で自動化することが困難な遠心分離(スピノキュレーション)を利用する。しかしながら、マイクロ流体システムでは、拡散距離は劇的に減少している。溝の底にある細胞単層へのレンチウイルスの輸送の割合をシミュレートするために、COMSOL Multiphysicsが用いられた(図15)。溝付き基板上の細胞へのウイルス輸送のシミュレーションのためのシミュレーションパラメータが、表3に示されている。深さ100μmの溝と比較して、深さ50μmの浅い溝を用いると、ウイルスの細胞への輸送が増強された。なぜなら、溝の深さが100μmのときに流れの分離が起こり(図15の左のグラフ)、ウイルスの単層への輸送が妨げられたからである。マイクロ溝の基部にある渦は、その流れが主たる流れチャンネルの流量よりも約10倍低いため、拡散バリアを導入した。このシミュレーションは、ウイルスの細胞への移送に最適な溝の深さを選択する必要があることを実証している。
【0191】
【表3】
【0192】
実施例4:PDMS(シリコーンゴム)マイクロ溝バイオリアクターの製造
ネガ型を製造するために、標準的なフォトリソグラフィーが用いられた。流れ層の設計は、高解像度(2400dpi、50μm造作部)のA4ポジ型リソグラフィーフィルム(Rose Graphics)または石英フォトマスク(1μm造作部、Bandwidth Foundry、シドニー大学)上に、シリコンウエハ上にスピンコートされたネガティブフォトレジスト(KMPR1050、MMRC Pty Ltd)上に印刷されて接触した設計とともに印刷された。フォトマスクをUV光で位置合わせし、かつ、露出させるために、マスクアライナが用いられた。
【0193】
ネガシリコンウエハ型がソフトエンボス加工によって複製されて、補助ZEONOR(登録商標)1060R熱可塑性(Zeon Asia Pty Ltd、シンガポール)ネガ型が作成され、該ネガ型は、シリコン原盤と比較していっそう大きい耐久性を有し、かつ、同一の形状を有する多数のデバイスを作製するために再び用いられ得た。ZEONOR(登録商標)1060R熱可塑性型をホットエンボス加工するために、シリコン原盤のPDMS(SYLGARD(商標)184、The Dow Chemical Company)型が用いられた、
【0194】
実験室のプロトタイプでは、3層PDMSデバイスが、位置合わせポストを備えた3D印刷ツールで位置合わせされ、かつ、クリーンルーム内で、空気プラズマで結合された。次にこれが、構造的支持、取り扱いの容易さおよびオートクレーブ性のためにガラス板に結合された。
【0195】
実施例5:設計
図1に対応する一般的な設計は、細胞播種および採取のための別個のポート、ならびに、媒体を供給するためのポートを有する。媒体流量は、細胞播種と採取に必要な流量よりもはるかに低いため、媒体ポートは、流量を減らすために流れ抵抗体に接続されている。小規模設計(4×106セル)の寸法が、表4に示されている。
【0196】
【表4】
【0197】
増殖量を25倍(10個の細胞)増加させる大規模設計の寸法が、表5に示されている。この数の細胞を増殖するのに50~100mlの組織培養フラスコが必要であることを考慮すると、デバイスは非常にコンパクトである。
【0198】
【表5】
【0199】
図19における実施形態を参照すると、バイオリアクターは、交差方向の流れ、および、長手方向の流れの両方を提供し、細胞搭載、細胞増加および細胞抽出の状態を達成するための多数の弁および媒体リザーバーを提供する。細胞搭載(図19A)の場合、細胞入口1381および媒体灌流出口1392は開いているが、細胞抽出入口1330、細胞抽出出口1391および媒体灌流入口1382は閉じている。細胞増加(図19B)の場合、増殖媒体は、媒体灌流入口1382を介して媒体リザーバーに灌流され、かつ、媒体灌流出口1392は開いており、かつ、細胞入口1381、細胞抽出入口1330および細胞抽出出口1391は閉じている。細胞抽出(図19C)の場合、細胞抽出入口1330および細胞抽出出口1391は開いており、かつ、細胞入口1381、媒体灌流入口1382および媒体灌流出口1392は閉じている。
【0200】
表6は、図18に示されるように、4つのバイオリアクターが単一のA5シート上に提供される本開示のある実施形態による別の多層バイオリアクターのパラメータを提供する。
【0201】
【表6】
【0202】
表7は、本開示の実施形態による自動バイオリアクター細胞培養システムによって利用されてもよい、使い捨ての大規模ユニットを形成する24枚のバイオリアクターシート(図18)の積み重ねにおいて使用するためのさらに別の多層バイオリアクターのパラメータを提供する。
【0203】
【表7】
【0204】
実施例6:流れ抵抗体の較正
図16に示されるように、ヘッダー200上で流れ抵抗体を用いる流れ制御が、第1の入口ポート210を通した細胞源からの細胞搭載、第2の入口ポート330を通した細胞抽出流体送達、および、培地の供給源から第1の入口ポート210に送達される培地に対して、正確かつ再現可能であることを検証するために、較正された液圧抵抗体が用いられた。圧力源と流れセンサーはそれぞれ、XenoWorks(登録商標)Digital Microinjector(Sutter Instrument)およびFM-ECO-Micro-1X、1分当たり1~80μL(CorSolutions、Ithica、NY)であった。流量は、デジタル圧力源を設定することによって制御された。流路は、3方向手動弁またはチューブクランプを用いて閉じられた。
【0205】
実施例7:マイクロ溝バイオリアクターを用いた細胞沈着、増殖、回収の実証
非接着性B細胞株Raji-H2B-GFPを増殖させるために、バイオリアクター設計(10個の細胞の容量を有する)が用いられた。およそ8×10個のRaji H2B-GFP細胞が、交差方向の流れの沈着によってバイオリアクターに搭載され、かつ、17日間にわたってバイオリアクターを満たすように増加した。最初の5~10個の溝に細胞を沈着させるため、図21でシミュレートされた同様の流れレジームが用いられた(図21の1日目を参照。統合されたGFP蛍光図20からの増殖の割合を追跡するために、タイムラプス蛍光顕微鏡が用いられた。細胞が急増するにつれて、それらは下流の溝に溢れ出す。この増殖パターンは、図20に示されている。細胞の数が増えるにつれて、流量が増加した。媒体灌流流量は、約1ml/100万個の細胞/日に設定され、マイクロ溝による細胞保持には十分に低いが、細胞の増殖と急増を支持するには十分に高かった。
【0206】
細胞は、17日目に合流するまで増殖し、溝付き基板全体を満たし、細胞はデバイスの出口から出て行った。17日目に増加した細胞を完全に採取することはできなかった(30.9×10個の細胞が出口で回収され、67.5%の生存率であった、図22)。最大流量は7.2ml/日であったため、灌流速度が細胞の増加に追いつかず、生存率が低下した(すなわち、50~100ml/日であるべきであった。図22を参照)。
【0207】
この実験から、溝付き基板(溝の深さ80μm、幅150μm、間隔100μm)の合流した細胞密度は、170万個の細胞/cmであったと見積もられる。細胞は、約3億5000万個の細胞/mlの密度で溝の中で増殖する。したがって、(60mm×15mm)デバイスが、1500万個の細胞まで増殖させると予測される。
【0208】
本発明者らは、細胞の回収および生存率を増大させるために、双方向溝バイオリアクターを開発した。細胞は、交差方向の流れ、または、長手方向の流れを用いた溝への沈着によって搭載され得た。本発明者らはまた、マイクロ流体培養灌流流量がデバイスによって支持される細胞の数に遅れないように、培養領域の長さを4分の1に短縮した。
【0209】
Jurkat、Raji、Nalm6、TF1a細胞株が、双方向流れデバイスにおいて増殖した(図23)。交差方向の流れを用いて、約1×10個の細胞が200μLに搭載された(500万個の細胞/mL)。搭載効率は、約80%であった。細胞は、長手方向の流れによって14日目に採取された(87%の生存率で12.2×10個、図23を参照)。増加プロトコルの概要が、表8に示されている。
【0210】
【表8】
【0211】
実施例8:透過性溝バイオリアクターを用いた細胞選択、遺伝子移入および細胞増加のマイクロ流体統合
a)溝に結合したモノクローナル抗体を用いた標的細胞の選択、b)捕捉された標的細胞の遺伝子形質導入、および(c)多数の並列に接続されたマイクロ流体デバイスを含有する単一のカートリッジ内での形質導入された細胞の培養増加を実行するために、溝マイクロバイオリアクターが用いられてもよい。これらのプロセスのシーケンスは、次のように弁と圧力源の空気圧制御によって自動化され得る。
【0212】
細胞播種は、バイオリアクターに接続された液圧ラインを介した外部細胞貯蔵リザーバーからの細胞入力を介して達成され、細胞移送は、使用済み細胞溶液を受け入れるための開いた細胞廃棄物出口とともに、圧力源を介して外部細胞リザーバーに接続された空気圧ラインからの空気圧で達成される。
【0213】
標的細胞の濃縮は、外部細胞リザーバーからの開放細胞入力と、バイオリアクターに流体接続された細胞洗浄リザーバーからの細胞洗浄入口の開口部とを介して、細胞洗浄リザーバーからの細胞洗浄入力と一緒に液圧ラインを介して、流れ記録計に接続された液圧ラインと、使用済み細胞洗浄出口リザーバーの開口部とを介して達成される。
【0214】
遺伝子移入は、ベクターリザーバーからバイオリアクターへのベクターの入力を介して、ベクターの流れとの液圧ラインを介して、ベクターリザーバーに接続された空気圧ラインおよび圧力源を介して達成される;さらに、ベクター流れ液圧ラインが開かれ、過剰なベクターがバイオリアクターから流れることを可能にする。
【0215】
細胞培養増加は、バイオリアクターにおける培養細胞への新しい培地の供給を介して、空気および二酸化炭素の入力ならびに廃棄物増殖媒体の出力と一緒にバイオリアクターの上部および底部への液圧供給ラインを介して、細胞採取用の細胞出力ラインを用いて緩い細胞の流れをモニタリングするためにバイオマスセンサーに接続された媒体廃棄物ラインおよびリザーバーを介して達成される。
【0216】
細胞採取は、流れ読み取り機を介した外部供給源からのバイオリアクターへの細胞洗浄の入力、および、細胞出力ラインを介した採取された細胞の出力で達成される。
【0217】
実施例9:Jurkat細胞のウイルス形質導入
この実験は、マーカーとしての緑色蛍光タンパク質(GFP)の送達のためにレンチウイルスベクターを用いた、細胞へのJurkat細胞の形質導入を説明している。Jurkat細胞は、GFPを発現するhrSINレンチウイルスベクターで形質導入された。Phoenix ECOパッケージング細胞株から生成されたベクターが、表9に示すプロトコルにしたがってウイルス形質導入に用いられた。
【0218】
【表9】
【0219】
次の24時間にわたる連続的な形質導入のために、流量が減じた細胞培地を置換するために、ウイルス培地(VCM)がシステムに流された。次に、形質導入された細胞は、灌流培養によって後に続く数日間にわたって増加した。増加後、細胞は採取され、かつ、フローサイトメトリーで分析された。図24は、播種時と、形質導入後2日目と、形質導入3日後の5日目における双方向の流れのバイオリアクターの広視野顕微鏡写真を示している。採取時に、Jurkat細胞の94%がGFPを発現した(図25、表10)。形質導入効率を増強するために用いられる剤であるレトロネクチンが、例えば溝に沿う流れによって、形質導入前にデバイスに導入され得る。
【0220】
図26は、この実験で用いられたバイオリアクターデバイスを示している。細胞搭載入口とウイルス含有媒体(VCM)入口は、細胞およびVCMの流れをマイクロ溝の配向に対して垂直に方向付ける。流れは、VCM出口においてデバイスから出る。形質導入効率を増強するために用いられる剤であるレトロネクチンが、例えば、レトロネクチン入口ポートおよびレトロネクチン出口ポートを用いて、マイクロ溝の配向に平行な流れによって、形質導入前にデバイスに導入され得る。しかしながら、効率的な形質導入のために、レトロネクチンは必要なかった。レトロネクチン入口ポートおよびレトロネクチン出口ポートはまた、マイクロ溝の配向に平行な流れによる細胞採取にも用いられた。
【0221】
【表10】
【0222】
図27は、レトロネクチン、細胞、およびVCMを搭載するために、マイクロ流体バイオリアクターデバイスが、加圧して密封された容器にどのように接続されたかを示している。各容器内の圧力ヘッドを調整することによって流量を制御するために、XenoWorks(登録商標)Digital Microinjectorが用いられた。ウイルス形質導入を実行するために、以下の方法ステップが用いられた:
1.約100万個の細胞がマイクロ流体デバイスに搭載された。200μLの細胞懸濁液(@5×10個のJurkat細胞/ml)が、20分間かけて、+125hPaの圧力ヘッドを用いて、フィブロネクチンなしでデバイスに搭載された。
2.次に、1mlの解凍したVCM(GFPを送達するレンチウイルス)が、1時間かけて、+500hPaにてマイクロ流体デバイスに注入された。
3.次に、マイクロ流体デバイスとリザーバーが、組織培養インキュベーターに一晩移された。VCMの流量は、+40hPaの圧力ヘッドを用いて、一晩減少した。
4.翌日、蛍光顕微鏡を用いてマイクロ流体デバイスが撮像されて、細胞内のGFPの発現を定量化された。
【0223】
この実験は、ウイルスを濃縮するために遠心分離およびレトロネクチンの使用を伴わない、閉鎖系におけるJurkat細胞のレンチウイルス形質導入を実証している。
【0224】
実施例10:細胞分離
標的細胞が溝と同じ方向に方向付けられた流れ(長手方向方向の流れ)で溝の基部に沿って転がるときにそれらを捕捉するために、物理的に吸着されたモノクローナル抗体が用いられた。プルロニックF127は、抗原陰性細胞の非特異的吸着を減らすために用いられた。細胞分離の性能を評価するために、1:1の割合の蛍光細胞株の混合物が用いられた。
【0225】
プルロニックF127は、非特異的タンパク質結合を低減する界面活性剤であり、かつ、マイクロ流体タンパク質アッセイに特に効果的であった。それは、疎水性PDMSに強く結合する-CH3基で修飾されたポリエチレングリコール巨大分子である(図28)。本発明者らは、抗原陰性細胞の非特異的結合に対するプルロニックF127の効果を評価した。細胞混合物は、1:1の割合(1ml当たり50000個の細胞)のJurkat-H2B mCherry(CD3陽性、CD34陰性)およびTF1a-H2B-GFP(CD3陰性、CD34陽性)であった。
【0226】
CD3細胞は、4℃で一晩吸着することにより、マイクロ流体バイオリアクター内に抗CD3moAb(4D3、50μg/ml)を物理的に吸着させることによって選択された。細胞の捕捉は、2時間、溝に沿う1:1の割合のCD3+:CD3-細胞混合物の連続的な流れによって観察された。細胞捕捉後の細胞生存率を判定するために、細胞は、交差方向の流れの灌流培養によって、in situで培養された。いっそう詳細なプロトコルは、表11に示されている。
【0227】
【表11-1】
【0228】
【表11-2】
【0229】
抗CD3 moAb吸着の前に、プルロニック127でコーティングされたデバイスは、Jurkat-H2B-mCherry(CD3+)にもTF1a H2B GFP(CD3-)にも結合しなかった(図29A)。抗CD3 moAbのみでコーティングされたモジュールを用いると、CD3+細胞(Jurkat-H2B-mCherry)の結合が強くなった(図29B)。吸着された抗CD3 moAbの選択性は、抗体結合後にプルロニックで非特異的細胞結合をブロックすることによって増強された(図29C)。我々はまた、結合細胞が24時間で脱離しかつ、灌流培養で増加できることも示した。
【0230】
本発明者らは、双方向の流れのマイクロ流体バイオリアクターを用いて、遺伝子移入および培養増加を統合する小規模の実現可能性を実証した。
【0231】
実施例11
本発明者らは、溝の基部に沿う流れが存在するときには、細胞がそれらの表面抗原に結合するモノクローナル抗体によって捕捉されることを示した。溝に沿う平均流速は、21.5mm/分だった。Comsolシミュレーションは、溝の基部での流体剪断応力が0.2ダイン/cmであることを示した。
【0232】
本発明者らは、酵素ノイラミニダーゼを用いて、捕捉された細胞の遊離、および、その後の標的細胞の増加を実証した。
【0233】
疎水性ポリスチレン組織培養皿は、CD3またはCD34抗原に結合するモノクローナル抗体(moAb)を物理的に吸着され、続いて界面活性剤プルロニックF127で処理された。CD34+(TF1a-GFP)とCD3+(Jurkat Cherry)の1:1混合物が、非結合細胞を採取する前に、オービタルシェーカー上の皿の上で160RMPにて30分間インキュベートされた。図30は、抗CD3 MoAbまたは抗CD34 MoAbが、結合したCD3+(黒いバー)またはCD34+細胞(白いバー)をそれぞれ濃縮したことを示している。未処理のポリスチレン皿への細胞の非特異的結合は、プルロニックF127によってブロックされた。
【0234】
結合したCD3+細胞およびCD34+細胞は、組織培養において増加した(それぞれ、白の対角線を有する黒または黒の対角線を有する白)が、我々は、細胞を基板か遊離させることによって増加および収率が増大することを示す。
【0235】
酵素ノイラミニダーゼは、結合したCD3+またはCD34+細胞を切断し、5日間の培養後に増加のレベルを増大させた(図30)。
【0236】
これらの実験では、細胞は、軌道剪断なしで処理されたポリスチレン上でインキュベートされた。概して、結合したCD3+(黒いバー)とCD34+細胞(白いバー)の濃縮レベルは、軌道の振盪なしで低かった(図30図31を対比して参照)。酵素ノイラミニダーゼは抗体結合細胞を脱離させ、かつ、結合細胞を比較的少なく残した(対角線のあるバー)。酵素によって遊離した細胞(白い点描バー、CD34+細胞;黒い点描バー、CD3+細胞)は、結合した細胞(黒い水平線を有する白、CD34+細胞、水平の白線を有する黒、CD3+細胞)よりも良好に増殖した。したがって、流体の剪断と酵素の遊離は、生存細胞の純度と収率を増大させる。
【0237】
本開示の実施形態は、ヒト細胞および遺伝子治療で使用するための、遺伝子改変細胞を含む細胞を製造するための多層マイクロ流体バイオリアクターを提供する。本開示の実施形態は、既存の占有面積の大きい機械(多くの場合、フラスコまたはバッグに基づくものであり、かつ、熟練したスタッフおよび複雑な多ステップの手順を必要とし、結果として法外に高額な治療費をもたらし、かつ、アクセス可能性を制限し、かつ、人生を変えるような、疾患を治癒する治療を取り上げる)に対して、実行可能かつ経済的な代替案を提供する。
【0238】
いくつかの実施形態では、細胞のいっそう大規模な製造のためのマイクロ流体プロセッサを形成するために、典型的には積層された積み重ねにおける多層シートを利用して、個々のバイオリアクターが並行して接続されている。典型的には、マイクロ流体プロセッサの積み重ねは使い捨てである(患者毎に単回の使用)。大規模な細胞製造は、いくつかの実施形態では、1つ以上のマイクロ流体バイオリアクターまたはバイオリアクターの積み重ねをバイオリアクター細胞培養システムに搭載することによって自動化され得、システムは、気体および流体の流れ、温度、湿度、タイミング、フラスコに基づく細胞培養システムに伴う汚染や人為的ミスのリスクを排除する閉鎖系でのサンプルの取り扱いなどのパラメータを調節するように動作可能なコントローラを有する。
【0239】
実験室用途は、必要な数の細胞を生成するために単層または少数の多層マイクロ流体バイオリアクターを必要とするであろうが、プロセッサ制御コンポーネントを利用する大規模生産は、細胞の大規模生産のためのプロトコルの自動化を可能にし、該プロトコルは、患者間で可変であってもよく、かつ、臨床ニーズにしたがって決定されてもよい。交差方向の流れ、および、多くの実施形態では長手方向の流れを提供する能力と併せて、溝付き流れ層の幾何学的形状は、様々な細胞培養プロセス中の溝内の細胞保持および培養された細胞の効率的な除去の制御を提供する。
【0240】
幾何学的形状は、必要な細胞培養対象、処理される細胞の数、播種物中の細胞存在比率および製造される細胞の数にしたがって修正および調整されてもよい。COMSOL Multiphysicsなどのソフトウェアパッケージを用いたシミュレーションが、かかる幾何学的形状の高速かつ信頼性の高いシミュレーションを可能にする。有利なことに、COMSOL Multiphysicsなどの製品を用いてシミュレートされたモデルは、設計や境界条件の効果をシミュレートするように修正され得、かつ、異なる細胞培養プロセスの溝の幾何学的形状をガイドするために用いられ得る。このようにして、本開示の実施形態によるバイオリアクターは、細胞分離、選択、形質導入、トランスフェクション、増加、または、これらの組み合わせなどの異なるプロセスに「調整」され得る。一旦所望のプロセスでの幾何学的形状が決定されると、個々のバイオリアクターを並列に、典型的には、積み重ねで接続され得、かつ、必要な培地源に接続された単一の流体ラインが、貫通孔を介して個々の入口に共通の供給を提供し、各入力に供給する鉛直方向の流体流れチャンネルを提供し、かつ、廃棄物の出力と抽出された細胞の出口経路をそれぞれ提供する。
【0241】
細胞生産のスケールアップおよびスケールアウトのための以前のアプローチは、それぞれ、バイオリアクターシステムの容量および数を増加させることを伴っていた。このことは、物理的(酸素移送や混合時間などの熱および物質移送)、生化学的(媒体組成およびレオロジー)ならびにプロセスステップ(細胞単離、遺伝子移入、培養増加を含む)が臨床用量によって異なるため、費用がかかり、かつ、複雑である。細胞の生成物とプロセスは各患者に特異的であるため、さらなる複雑性が生じる;修正されるのは、患者または組織適合ドナーの細胞である。以前の実験方法とサプライチェーンを用いて何千ものカスタマイズされた細胞製品を製造するロジスティクスは、以前は克服できなかった課題を提示する。本開示の実施形態は、複数のプロセスステップが実行され得るように、独自のマイクロ流体の幾何学的形状を半透性基板に組み込むことによって、これらのニーズに対処する。この独自の配置構成はまた、いっそう良好な細胞操作、高い細胞密度を提供し、かつ、媒体の消費と細胞生産の時間枠を大幅に削減する。
【0242】
本開示は、試薬および媒体交換ステップの自動化を提供し、細胞の継代(ピペッティング)および遠心分離、または詰まりがちな濾過デバイスなどの面倒な手動の方法に取って代わる。開示されている方法、デバイスおよびシステムは、複雑な「生産ライン」プロセス(細胞選択/遺伝子移入/増加)を、単一の(ただしスケーラブルな)マイクロ流体バイオリアクターデバイスと、試薬と細胞の流れを方向付けるプログラム可能なコントローラとに置き換える。本発明はまた、細胞および遺伝子治療のための細胞製造の組織適合(自家または同種異系)「スケールアウト」の費用に対処する。
【0243】
大規模な細胞生産を提供する実施形態では、並列の流れ抵抗性ネットワークは、各マイクロ流体サブユニットへの流れが同一であり、かつ、例えば、供給チャンネルの幾何学的形状または流れチャンネルの幾何学的形状によって影響を受けないことを保証する。有利なことに、流量および媒体成分を含む同じ動作および生産パラメータが、小規模(単一のマイクロ流体バイオリアクター)および大規模(並列に接続された複数のマイクロ流体バイオリアクター)システムに配備される。このプロセスは、小規模で安価に最適化され、かつ、増殖する細胞の数が増加した場合に最適化プロセスを繰り返す必要がなく、並列複製によって調整される。
【0244】
有利なことに、マイクロ流体抵抗性並列ネットワークの使用は、マルチユニットプロセッサまたは積み重ねにおける各マイクロ流体バイオリアクターへの同一の流れを保証するが、大規模システムにおける個々の積み重ねは、個々の患者のニーズが必要であるプロトコルにしたがって、細胞の並列処理のためのコントローラの制御下で個別に設定可能であってもよい。試験中の予想外の観察は、交差方向の流れを用いると、細胞は増殖段階の最中(および細胞沈着の最中)に連続的な下流の溝を満たし、かつ、必要ではないが出口で連続的に採取され得ることであった。この利点は、バッチ処理(バッグまたは攪拌バイオリアクター)を用いて伝統的に行われていた既存の大規模生産には存在しない。
【0245】
用語「有する(comprise)」、「有する(comprises)」、「有した(comprised)」または「有している(comprising)」が本明細書(請求の範囲を含む)で用いられる場合、それらは、記載された特徴、整数、ステップまたはコンポーネントの存在を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つ以上のその他の特徴、整数、ステップもしくはコンポーネント、または、それらのグループの存在を排除するものではない。
【0246】
本明細書に添付の請求の範囲において定められた本発明の範囲から逸脱することなく、前述の部分に様々な修正、追加および/または変更がなされてもよいことが理解されるべきである。
【0247】
本願に基づいて、または、本出願からの優先権を主張して、様々な国で将来の特許出願が出願されるであろう。以下の請求の範囲は例としてのみ提供されており、かつ、任意のかかる将来の出願において請求されるであろうものの範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。1つもしくは複数の発明をさらに定め、または、再び定めるために、後日、特徴が請求の範囲に追加されてもよく、請求の範囲から省略されてもよい。
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