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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】振動抑制構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20241219BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20241219BHJP
   F16M 7/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16F15/04 B
F16F1/12 N
F16F1/12 F
F16M7/00 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022027856
(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公開番号】P2023124218
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000224994
【氏名又は名称】特許機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 辰也
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 章雄
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067109(JP,A)
【文献】実開昭63-026785(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00-15/36
F16F 1/00-6/00
F16M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置部と、
装置が配置される装置側ベースと、
前記設置部と前記装置側ベースとの間に設けられ、前記装置側の荷重を支持するコイルスプリングと、
前記コイルスプリングの前記装置側の端部と接続するばね座と、
前記設置部側から前記装置側へと延びる軸部材と、
前記軸部材の外周と前記装置側ベースとに接続し、減衰機能を有する弾性体と、
前記ばね座と前記装置側ベースとの相対移動を抑制する移動抑制部材と、
を備え、
前記移動抑制部材は、
前記装置側ベースと前記ばね座との間に配置されるベース移動抑制部材と、
前記ばね座と前記コイルスプリングの前記端部との間に配置されるスプリング移動抑制部材と、を含み、
前記ベース移動抑制部材および前記スプリング移動抑制部材は、減衰機能を有する弾性部材である、
振動抑制構造。
【請求項2】
前記弾性体、前記ベース移動抑制部材および前記スプリング移動抑制部材は、同一の弾性部材であり、
前記ばね座に一体に成型されている、請求項1に記載の振動抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、機械室等に設置される装置に生じる振動抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機のファンなど、モータを用いた装置は、モータの振動を周囲の構造に伝えないために、バネやゴムなどからなる吸振体などの振動抑制装置が用いられる。この振動抑制装置は、鉛直方向の振動を減衰させるのみならず、モータの駆動によるスラスト方向の移動が生じる場合には、モータの駆動によって生じるスラスト力を緩和する必要がある。
【0003】
そのような、スラスト力を緩和する構造としては、例えば、特開2009-092034(特許文献1)に、気密弾性層をファン室仕切板とベルマウスとの間に設けることで、スラスト荷重を分散させることが開示されている。この構造においては、防振架台の下に設けられた吸振体が、鉛直方向の防振を目的として、用いられている。
【0004】
鉛直方向の防振を目的とした吸振体については、減衰要素としてのゴムとバネ要素としてのコイルスプリングとを組み合わせた構造が種々用いられており、例えば、特開平5-99143号公報(特許文献2)には、冷蔵庫や空調機に搭載する圧縮機の防振支持装置に関し、下ゴムと上ゴムの間に介設されたコイルスプリングが、下ゴムの嵌合部と上ゴムの嵌合部との間に嵌合させて、台板に圧縮機を指示させる構造が開示されている。この構造においては、十分な防振効果を得るのみならず、圧縮機の自重の変化によってコイルスプリングのサージング周波数が変化することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-92034号公報
【文献】特開平5-99143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、構造物については機械室などの省スペース化が望まれるようになり、たとえば空調機器等に用いられるエアーハンドリングユニットでは、直接ダクトとファンを接続するなどのコンパクト化が進められている。そのため、吸振体などの振動抑制構造については、ストッパー機構を別途採用することなく、スラスト力への対策を講じる必要も新たな課題として生じることとなった。
【0007】
本技術の目的は、設置部と装置側ベースと間に配置される振動抑制構造に関し、当該構造のコンパクト化を図りながら、主としてスラスト方向の振動を抑制する、振動抑制構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術に係る振動抑制構造は、設置部と、装置が配置される装置側ベースと、上記設置部と上記装置側ベースとの間に設けられ、上記装置側の荷重を支持するコイルスプリングと、上記コイルスプリングの上記装置側の端部と接続するばね座と、上記設置部側から上記装置側へと延びる軸部材と、上記軸部材の外周と上記装置側ベースとに接続し、減衰機能を有する弾性体と、上記ばね座と上記装置側ベースとの相対移動を抑制する移動抑制部材と、を備える。
【0009】
他の形態においては、上記移動抑制部材は、上記装置側ベースと上記ばね座との間に配置されるベース移動抑制部材と、上記ばね座と上記コイルスプリングの上記端部との間に配置されるスプリング移動抑制部材と、を含み、上記ベース移動抑制部材および上記スプリング移動抑制部材は、減衰機能を有する弾性部材である。
【0010】
他の形態においては、上記弾性体、上記ベース移動抑制部材および上記スプリング移動抑制部材は、同一の弾性部材であり、上記ばね座に一体に成型されている。
【発明の効果】
【0011】
本技術によれば、コンパクト化を図りながら、スラスト力の緩和をすることができ、スラスト方向を含めた振動抑制が可能な、振動抑制構造の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態の振動抑制構造が採用される装置全体構成を示す模式図である。
図2】実施の形態の振動抑制構造を示す縦断面図である。
図3】設置部の上面と装置側ベースの下面との間の最小距離の状態時の縦断面図である。
図4図2中のIVで囲まれた領域の部分拡大図である。
図5】他の実施の形態の振動抑制構造を示す縦断面図である。
図6】さらに他の実施の形態の振動抑制構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本技術の各実施の形態について説明する。同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0014】
以下に説明する各実施の形態において、個数、量、寸法などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量、寸法などに限定されない。以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは、当初から予定されていることである。
【0015】
本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0016】
以下に用いる図面中、Xで示す矢印の方向は鉛直方向を示し、Yで示す矢印の方向は水平方向を示すものとする。
【0017】
(振動抑制構造1)
図1および図2を参照して、本実施の形態における振動抑制構造1について説明する。図1は、実施の形態の振動抑制構造1が採用される装置全体構成を示す模式図、図2は、振動抑制構造1を示す縦断面図である。以下の説明では、振動抑制構造1が適用される箇所として、機械室等に設置される空調設備用のエアーハンドリング装置を一例として採用しているが、この振動抑制構造1は、エアーハンドリング装置への適用に限定されるものでなく、スラスト方向に力が発生し、同様の振動抑制に対する作用効果が求められる装置への適用が意図される。
【0018】
図1を参照して、空調設備用のエアーハンドリング装置は、筐体800の内部には、ベース100、補助ベース200、モータ300、ファン400、およびキャンバス500が収容されている。
【0019】
ベース100および補助ベース200の上にモータ300が載置されている。モータ300の回転軸にはファン400が固定されている。モータ300の駆動によりファン400が回転する。ファン400の回転により、キャンバス500を介してエアーが送り出される。キャンバス500から送り出されたエアーは、短ダクト600を介して外部の空調設備700に送り出される。
【0020】
モータ300によるファン400の回転に伴い、様々な方向への振動が発生する。エアーハンドリング装置では、モータ300の振動と共に、ファン400の回転による吸引または排出により、スラスト(水平)方向への力が発生する。従来の振動対策である吸振体では、このスラスト方向への力によって、ファン400の軸方向での前方または後方への沈み込みや移動が生じたりするために、振動抑制のための弾性体に破損が生じやすかった。本実施の形態の振動抑制構造1は、このスラスト方向への力を抑制乃至緩和することができるので、振動を効果的に抑制することを可能としている。
【0021】
ベース100と筐体800との間には、本実施の形態の振動抑制構造1が設けられている。側面視においては、2箇所に設けられているが、平面視においては、4箇所またはそれ以上の箇所に、求められる振動抑制の要求に応じて、複数個の振動抑制構造1が配置される。振動抑制構造1の数量は適宜選択される。
【0022】
振動抑制構造1の下側は、振動を抑制する目的となる振動発生源となる装置の設置対象位置の設置部に固定されるものであり、筐体800との固定、基礎となる設置面Bとの固定、または、筐体800および設置面Bの両方への固定のいずれであってもよい。以下の説明においては、設置部への固定と称するものとする。
【0023】
図2を参照して、本実施の形態の振動抑制構造1の詳細構造について説明する。この振動抑制構造1は、設置部14と装置側ベース12との間に設けられている。装置側ベース12は防振の対象となる装置と接続していて、装置側ベース12には、ベース100、補助ベース200、モータ300等の装置が配置される。本実施の形態では、装置側ベース12は、ベース100に設けられている。
【0024】
設置部14と装置側ベース12との間には、設置部14側から装置側へと延びる軸部材11が設けられている。軸部材11は、表面に雄ネジ(S1)が設けられたボルト部材である。本実施の形態では、軸部材11は、M12(SS400)が用いられているが、装置がスラスト方向に移動する際の荷重を支持可能な軸部材を用いることができる。設置部14には貫通孔14hが設けられている。装置側ベース12には貫通孔12hが設けられている。軸部材11は、貫通孔14hおよび貫通孔12hを貫通している。
【0025】
設置部14と装置側ベース12との間には、装置側の荷重を支持するコイルスプリング13が設けられている。コイルスプリング13は、両側に下端部13t2と上端部13t1とが設けられ、それぞれ下部ばね座20と上部ばね座15とを介して、装置側から設置部側への荷重を支持している。コイルスプリング13は、装置側の荷重によって、線材を適宜選択することができ、丸線材を螺旋状に冷間成型により製造されたものを用いることができる。
【0026】
コイルスプリング13には下端部13t2と上端部13t1とに亘る中空部が内側に形成されており、軸部材11は、このコイルスプリング13の中を貫通している。コイルスプリング13の中空部の内径は、軸部材11の外径よりも大きく、固定用ロングナット19と弾性体22とを、コイルスプリング13の内側に収容できる大きさであればよく、弾性体22とコイルスプリング13とは当接していてもよい。設置部14に設けられた貫通孔14hの開口径(φD1)は、軸部材11の軸外径を略同じ寸法に設けられている。開口径(φD1)が軸部材11の軸外径と略同じ寸法となることで、軸部材11が設置部14に対して相対移動することが抑制されるようにされている。貫通孔12hの開口径(φD2)は、軸部材11の軸外径よりも大きく設けられている。開口径(φD2)が軸部材11の軸外径よりも大きいことにより、装置側ベース12に防振対象となる装置が設置された際に、装置側ベース12が、当該装置の自重などの荷重によって生じる、軸部材11に対しての装置側ベース12の相対移動を阻害しないようにされている。
【0027】
コイルスプリング13の下端部13t2と設置部14の上面14aとの間には、円形の下部ばね座20が設けられている。下部ばね座20は、円形の平板部20aと、平板部20aの外周部において上方に起立する環状の壁部20bとを含む。下部ばね座20は、コイルスプリング13から受ける下方への力を、設置部14に対して均等に分散する。壁部20bは、コイルスプリング13の下端部13t2に当接し、下端部13t2の横方向への移動を抑制する。下部ばね座20が設けられることにより、防振対象となる装置の自重などの荷重によって生じる、装置側ベース12の軸部材11に対する相対移動が生じた場合に、コイルスプリング13の下端部13t2が設置部14に対して所定の位置からずれることが抑制される。
【0028】
コイルスプリング13の上端部13t1と装置側ベース12の下面12aとの間には、円形の上部ばね座15が設けられている。上部ばね座15の詳細構造は、追って説明する。上部ばね座15は、円形の平板部15aと、平板部15aの外周部において下方に垂下する環状の壁部15bとを含む。
【0029】
上部ばね座15は、コイルスプリング13から受ける上方への力を、装置側ベース12に対して均等に分散する。上部ばね座15が設けられることによって、装置側ベース12の設置部14側の面が振動等によって損傷することを防止することができる。壁部15bは、コイルスプリング13の上端部13t1に当接し、上端部13t1の横方向への移動を抑制する。上部ばね座15は、中心部に軸部材11が貫通する開口部が設けられている。上部ばね座15は、中心部において、弾性体22と接続している。弾性体22には、軸部材11を貫通させる貫通孔22hが設けられている。上部ばね座15の中心部に設けられた開口部は、弾性体22の貫通孔22hと略同軸とすることができる。
【0030】
装置側ベース12を挟んで上部ばね座15の上方には、座金付きゴムブッシュ18が設けられている。座金付きゴムブッシュ18は、円形の座金18a、座金18aと略同じ外径の本体部18b、および、本体部18bから下方に延び、本体部18bよりも小径の延長部18cを含む。座金付きゴムブッシュ18の中央部には、軸部材11を貫通させる貫通孔18hが設けられている。なお、座金18aと、本体部18bおよび延長部18cを有するゴムブッシュ部とは別体であってもよく、ゴムブッシュ部は装置側ベース12を弾性的に支持できるものであればよい。
【0031】
座金18a、本体部18bおよび延長部18cは、一体に成形されている。本体部18bおよび延長部18cは、同一のゴム部材(エラストマ)から構成されている。延長部18cは、装置側ベース12の貫通孔12hに嵌まり込んでいる。延長部18cの下端18eは、上部ばね座15の弾性体22の上面22uに当接している(図4参照)。
【0032】
コイルスプリング13の内部において、軸部材11の下方には、固定用ロングナット19が装着されている。固定用ロングナット19の軸部材11の軸方向に沿った長さ(H11)は、軸部材11を設置部14に固定するために必要な強度や後述のストッパー機能を発揮し得る所望の長さであるとよい。
【0033】
軸部材11の下部側11bには、平座金25およびばね座金24が嵌め入れられ、六角ナット(一種)23により上方に向けて締め付けられている。固定用ロングナット19の下端19bと六角ナット(一種)23により、設置部14および下部ばね座20が締め付け固定された状態となる。平座金25、ばね座金24および六角ナット(一種)23は、軸部材11の設置部14に対する下端側固定部として機能し、軸部材11が設置部14から離脱することを抑制する。
【0034】
軸部材11の上部側11uには、上記した座金付きゴムブッシュ18が嵌め入れられ、コイルスプリング13の付勢力に対抗して、六角ナット(三種)17および六角ナット(一種)16により下方に向けて締め付けられた状態となる。
【0035】
設置部14の上面14aと装置側ベース12の下面12aとの間の距離(H1)は、振動抑制構造1に求められるコイルスプリング13の支持力に応じて決定される。具体的には、六角ナット(三種)17および六角ナット(一種)16による座金付きゴムブッシュ18の固定位置によってコイルスプリング13の圧縮長さが決定される。
【0036】
図3を参照して、設置部14の上面14aと装置側ベース12の下面12aとの間の最小距離(H2)の状態時の縦断面を図示する。軸部材11の軸方向に、装置側から設置部に向けて最大荷重が発生した場合においては、設置部14の上面14aと装置側ベース12の下面12aとの間が、最小距離(H2)となる。最小距離(H2)の状態においては、弾性体22の下端22eが、固定用ロングナット19の上端19aに当接した状態となるように設定されている。設置部14に装置が積載され、振動やスラスト力の発生によって、装置側から設置部に向けて更に荷重が負荷された場合に、弾性体22の下端22eが、固定用ロングナット19の上端19aに当接し、設置部14の更なる相対移動を抑制する。弾性体22の下端22eは、ストッパーとして機能する。この最小距離H2の状態においても、コイルスプリング13はさらに圧縮することが可能であり、振動抑制構造1としての機能を備える。
【0037】
次に、図4を参照して、図2中のIVで囲まれた領域の詳細構造について説明する。図4は、図2中のIVで囲まれた領域の部分拡大図である。
【0038】
弾性体22は、装置側ベース12側に位置する円柱状の本体上部22aと、この本体上部22aから下方向かって延び、本体上部22aよりも小径円柱状の本体下部22bとを含む。本体上部22aと本体下部22bとは、応力集中を避けるために所定の曲率半径を有する曲面部22rにより両者の外面が連続的に接続されている。
【0039】
本体上部22aは、図3においては、中央に空間部を有する円環状であり、内周面が軸部材11に接触している。本体上部22aの外周面は、コイルスプリング13の内周と接触しているが、軸部材11の振動を減衰することができれば、コイルスプリング13の内周と接触しなくてもよい。弾性体22の本体下部22bは、軸部材11の軸方向に延び、軸方向に貫通して本体上部22aの空間部と連通する空間部を有している。弾性体22の貫通孔22hは、本体下部22bの空間部と本体上部22aの空間部とを含む。本体下部22bの内周面は、軸部材11の外周面と接触し、軸部材11の軸方向において本体上部22aを弾性的に支持している。本体下部22bの下面には、ストッパーとして機能する下端22eが設けられている。
【0040】
本体上部22aは、上部ばね座15の平板部15aの設置側面と、上部ばね座15から入力された振動を減衰可能に接続している。弾性体22は、本体上部22aの上側面の中央側から装置側ベース12側に向って延びる円筒状の突部を有し、当該突部の外周面が上部ばね座15の中心部に設けられた開口部の内周端面と当接し、さらに、当該突部の装置側ベース12側に、後述のベース移動抑制部材22cが接続する。
【0041】
ここで、上部ばね座15の平板部15aに着目する。装置側ベース12の下面12aと平板部15aとの間には、ベース移動抑制部材22cが設けられている。平板部15aとコイルスプリング13の上端部13t1との間には、スプリング移動抑制部材22dが設けられている。ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dはいずれも、本体上部22aから半径方向外方に向かって延びるように、本体上部22aに対して一体的に設けられている。図4の実施態様例においては、本体上部22aとベース移動抑制部材22cとが一体化されているが、別体として設けることができる。
【0042】
弾性体22を構成する、本体上部22a、本体下部22b、ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dは、同一の弾性部材であり、上部ばね座15に一体に成形されている。弾性体22の弾性部材には、合成ゴムが用いられる。ベース移動抑制部材22cは、装置側ベース12と上部ばね座15との相対移動を抑制することができればよく、本実施形態においてはゴム部材を用いているが、接着剤であっても摩擦面であってもよく、上部ばね座と一体化していてもよい。また、スプリング移動抑制部材22dは、上部ばね座15とコイルスプリング13との相対移動を抑制することができればよく、本実施形態においてはゴム部材を用いているが、摩擦面であってもよく、上部ばね座と一体化していてもよい。
【0043】
ここで、装置側ベース12に設置された装置から、所定の振動周波数(たとえば60Hz)を有する大きなスラスト力(図中矢印X方向)が加わった場合には、装置側ベース12の下面12aと平板部15aとの間、および、平板部15aとコイルスプリング13の上端部13t1との間にも、大きなスラスト力(図中矢印X方向)が加わることになる。
【0044】
ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dが設けられていない場合には、装置側ベース12の下面12aと平板部15aとの間には横ずれが発生する。その結果、振動終了後には、元の位置に復元することなく、装置側ベース12が横方向にずれた状態のままとなる。
【0045】
さらに、軸部材11が、装置側ベース12に設けられた貫通孔12hに位置する座金付きゴムブッシュ18の延長部18cに当接し続け、延長部18cの破損、さらには、軸部材11が貫通孔12hに直接当接し、軸部材11が破損するおそれもある(防振性能の低下)。また、平板部15aとコイルスプリング13の上端部13t1との間にスラスト方向のずれが生じる場合には、コイルスプリング13と平板部15aとの間に摩擦が生じ、異音の原因となる懸念もある。
【0046】
他方、本実施の形態の構成においては、軸部材11の外周面と弾性体22の貫通孔22hとが接続し、さらに、装置側ベース12の下面12aと弾性体22の上面22uとが接続している。本実施形態において、弾性体22は、貫通孔22hの内周面が軸部材11の外周面と接触している。軸部材11が水平方向に相対移動した場合には、弾性体22の外周面が弾性体22の貫通孔22hの内周面を押圧し、軸部材11の水平方向の荷重が弾性体22の減衰機能により緩和される。これにより、弾性体22は、減衰機能を有することから、スラスト力を緩和させる機能を発揮する。弾性体22は、例えば合成ゴムを用いることができる。
【0047】
さらに、装置側ベース12の下面12aと平板部15aとの間には、上部ばね座15と前記装置側ベース12との相対移動を抑制する移動抑制部材であるベース移動抑制部材22cが設けられている。平板部15aとコイルスプリング13の上端部13t1との間には、スプリング移動抑制部材22dが設けられている。この構成を採用することで、ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dが滑り防止の効果を発揮し、装置側ベース12の下面12aと平板部15aとの間、および、平板部15aとコイルスプリング13の上端部13t1との間に生じた横ずれが抑制される。振動の終了後には、装置側ベース12を初期位置に復元させることが可能となる。
【0048】
このように、ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dは、上部ばね座15と装置側ベース12との相対移動を抑制する移動抑制部材としての機能を発揮することとなる。
【0049】
この振動抑制構造1によれば、上部ばね座15の内部設けた移動抑制部材を採用することのみで、上部ばね座15と装置側ベース12との相対移動を抑制することが可能となる。その結果、ストッパー機構を別途採用することなく、移動抑制部材のコンパクト化を図り、主としてスラスト方向の振動抑制を効果的に実現可能とする。
【0050】
図5を参照して、他の実施の形態の振動抑制構造について説明する。図5は、他の実施の形態の振動抑制構造を示す縦断面図である。上記実施の形態では、ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dが、弾性体22の本体上部22aに対して一体的に設けられる構成を示したが、図5に示すように、ベース移動抑制部材22cおよびスプリング移動抑制部材22dを本体上部22aとは別部材とすることも可能である。
【0051】
図6を参照して、さらに他の実施の形態の振動抑制構造について説明する。図6は、他の実施の形態の振動抑制構造を示す縦断面図である。上記した実施の形態では、上部ばね座15の内部に振動抑制部材を設けた構造について説明したが、下部ばね座20にも、同様に振動抑制構造を採用することが可能である。
【0052】
図6に示すように、設置部14の上面14aと平板部20aとの間に、ベース移動抑制部材22cを設け、平板部20aとコイルスプリング13の下端部13t2との間に、スプリング移動抑制部材22dを設けることで、下部ばね座20と設置部14との相対移動を抑制する移動抑制部材を構成することができる。
【0053】
なお、上述した振動抑制構造は、駆動によってスラスト方向に移動する装置から発生する振動を抑制するだけでなく、地震等により発生する振動対策に適用することも期待できる。
【0054】
以上、本技術の各実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 振動抑制構造、11 軸部材、11b 下部側、11u 上部側、12 装置側ベース、12a 下面、12h,14h,18h,22h 貫通孔、13 コイルスプリング、13t1 上端部、13t2 下端部、14 設置部、14a,22u 上面、15 上部ばね座、15a,20a 平板部、15b,20b 壁部、18 座金付きゴムブッシュ、18a 座金、18b 本体部、18c 延長部、18e,19b,22e 下端、19 固定用ロングナット、19a 上端、20 下部ばね座、22 弾性体、22a 本体上部、22b 本体下部、22c ベース移動抑制部材、22d スプリング移動抑制部材、22r 曲面部、24 ばね座金、25 平座金、100 ベース、200 補助ベース、300 モータ、400 ファン、500 キャンバス、600 短ダクト、700 空調設備、800 筐体、B 設置面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6