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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両内装用編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/00 20060101AFI20241219BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20241219BHJP
   B60R 13/04 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
D04B1/00 A
D04B1/00 B
B60N2/58
B60R13/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022082870
(22)【出願日】2022-05-20
(65)【公開番号】P2023170815
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】510206039
【氏名又は名称】スミノエ テイジン テクノ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 治朗
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-074993(JP,U)
【文献】特開2019-052391(JP,A)
【文献】特開2001-214346(JP,A)
【文献】特開2009-120980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/
B60N 2/
B60R 13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャカード編み組織を有する丸編地であって、
前記丸編地は第1組織、第2組織及び第3組織を含んでなり、
前記第1組織と前記第2組織は表面ニット目と裏面タック目を有し、
前記第1組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は三~六針以内であり、
前記第2組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は一針以内であり、
前記第1組織の表面ニット目と前記第2組織の表面ニット目が同じ針に掛る倍編み組織を含み、
前記倍編み組織の比率(%)が10%~40%の範囲であり、
前記第3組織は表面ニット目と裏面ニット目からなり、
前記第1組織と前記第2組織による凸部を有し、
前記第1組織はウエルトを有し、
前記ウエルトは、前記第1組織の裏面タック目と前記第1組織の裏面タック目の間に連続二個以下であることを特徴とする車両内装用編地。
【請求項2】
前記丸編地はさらに第4組織を含んでなり、
前記第4組織は裏面ニット目からなり、
前記丸編地の裏糸となり、
前記第3組織と前記第4組織による凹部を有する請求項1に記載の車両内装用編地。
【請求項3】
前記第2組織はさらにウエルトを有する請求項1又は2に記載の車両内装用編地。
【請求項4】
前記第1組織及び/又は前記第2組織を構成する糸に、無染色糸と原着糸の混繊糸を含み、
前記糸の総繊度が84T~660Tである請求項1又は2に記載の車両内装用編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸感のある立体的な構造の組織を有し、しかも優れた意匠性を備えた車両内装用編地に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なダブルジャージにおける編地組織として、タック組織、ブリスター組織、リブ組織、メッシュ組織などがある。その中でも車両内装用編地としては、地厚感が有り編地表面の耐摩耗性などの物性面が安定していることからタック組織とブリスター組織の編地が広く用いられている。タック組織は編地の表裏を繋ぐ接結する部分がある。すなわち、編地の表面から裏面に渡る糸がタック組織で構成され、表面の組織が均一で平滑な組織である。また、ブリスター組織は編地の表裏の糸、及び組織が分離された構造、すなわち、編地の表裏の間に空間が生じる袋状組織であり、しっかりとした厚みと凹凸感を表現できる組織である。
【0003】
例えば、特許文献1にはクッション性と圧縮弾性回復性に優れ、機械強度にも強い座席シート材のタック組織の編地を提供できる技術が開示されている。しかしながら、この編地の組織は鹿の子調やストライプ調と言った小紋的幾何柄には適するものの、均等な無地調の編地しか構成できず意匠性に乏しい表現しかできないという問題があった。この問題を解決するために製編後にプリント加工やエンボス加工などを施すことが行われ、製造コストの増加の要因になっていた。
【0004】
また、例えば、特許文献2には特定の裏糸を用いた編地に熱処理を施し浮き出し効果を生じるブリスター組織の編地の製造方法が開示されている。しかしながら、この編地の組織は浮き出し効果が得られるものの、高い耐久性が求められる車両内装の用途としては耐摩耗性が劣るという問題があった。この問題を解決するために製編後に編地の強度を向上させるための薬剤を多量に使用する後加工を施す必要があり、製造コストの増加の要因になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001ー214346号公報
【文献】特開昭56ー123470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、従来のタック組織は無地丸編機でしか製編できなかった。一方、従来のブリスター組織はタック組織よりも耐摩耗性が劣る組織であったが、ジャカード丸編機で製編可能であった。より詳しくは、従来、製編の際には糸の張力を保持し易いため、裏面タック目に対峙するように表面ニット目を配置、すなわち、裏面タック目1つに対して表面ニット目1つの割合で均等に配置するのが一般的であったが、従来のタック組織を含め鋭意検討した結果、コンピュータージャカード選針機構を利用し上記課題を解決する製編可能な意匠自由度の高い編組織を見出し本発明に至った。
【0007】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであり、意匠性に優れ、凹凸感のある立体的な構造の組織を有し、しかも耐摩耗性に優れる車両内装用編地を提供することを目的とする。より詳しくは、製編後にプリント加工やエンボス加工などの加飾が不可欠でないうえに、編地の強度向上のための薬剤の使用量を低減できる車両内装用編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]ジャカード編み組織を有する丸編地であって、前記丸編地は第1組織、第2組織及び第3組織を含んでなり、前記第1組織と前記第2組織は表面ニット目と裏面タック目を有し、前記第1組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は三~六針以内であり、前記第2組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は一針以内であり、前記第1組織の表面ニット目と前記第2組織の表面ニット目が同じ針に掛る倍編み組織を含み、前記倍編み組織の比率(%)が10%~40%の範囲であり、前記第3組織は表面ニット目と裏面ニット目からなり、前記第1組織と前記第2組織による凸部を有し、前記第1組織はウエルトを有し、前記ウエルトは、前記第1組織の裏面タック目と前記第1組織の裏面タック目の間に連続二個以下であることを特徴とする車両内装用編地。
【0010】
[2]前記丸編地はさらに第4組織を含んでなり、前記第4組織は裏面ニット目からなり、前記丸編地の裏糸となり、前記第3組織と前記第4組織による凹部を有する前項1に記載の車両内装用編地。
【0011】
[3]前記第2組織はさらにウエルトを有する前項1又は2に記載の車両内装用編地。
【0012】
[4]前記第1組織及び/又は前記第2組織を構成する糸に、無染色糸と原着糸の混繊糸を含み、前記糸の総繊度が84T~660Tである前項1又は2に記載の車両内装用編地。
【発明の効果】
【0013】
[1]の発明では、意匠性に優れ、凹凸感のある立体的な構造の組織を有し、しかも耐摩耗性に優れた車両内装用編地を提供することができる。より詳しくは、製編後にプリント加工やエンボス加工などの加飾が不可欠でないうえに、編地の強度向上のための薬剤の使用量を低減できる車両内装用編地を提供することができる。
【0014】
[2]の発明では、前記第4組織は裏編みとなり目付が増加し地厚となることで、編地強度がより向上した車両内装用編地を提供することができる。このように編地強度がより向上することで、編地の強度向上のための薬剤の使用量をさらに低減できる。
【0015】
[3]の発明では、優れた意匠性を発揮するとともに目落ち疵(欠点)のない、すなわち安定した品質を確保し製編可能な車両内装用編地を提供することができる。
【0016】
[4]の発明では、耐摩耗性に優れた組織に加え、凹凸感のある立体的な編地に少なくとも無染色糸と原着糸の混繊糸を含むので、一段と優れた多色感のある意匠性を発揮することができる車両内装用編地を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る車両内装用編地の一実施形態の断面を説明する模式図である。
図2】本発明に係る車両内装用編地の実施例1の編組織図である。
図3】本発明に係る車両内装用編地の実施例2の編組織図である。
図4】比較例1の編組織図である(タック組織)。
図5】比較例2の編組織図である(ブリスター組織)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る車両内装用編地の一実施形態の断面を説明する模式図であり、編地におけるニット目N、タック目T、倍編みDBL、ウエルトWについて説明する。図1において上側がダイヤル針で編地の裏面、下側がシリンダー針で編地の表面となり、第1組織1、第2組織2と第3組織3を合せた編地の説明図である。ニット目Nについて編地の裏面、表面を付して表現する場合、編地の裏面のニット目Nが裏面ニット目N、編地の表面のニット目Nが表面ニット目Nである。タック目Tについても同様である。図1から分かるように、いずれのニット目Nも自身でループを形成することでしっかり前のコースの糸と結びついて組織される。一方、裏面タック目T、表面タック目Tのいずれのタック目Tも自身でループを形成するものでなく他のループに引っ掛かることで組織される。また、同一の針に複数のニット目Nが形成される針の所が倍編みDBLの組織であり、ニット目Nもタック目Tも形成していない針の所がウエルトWである。これらの構成を特定の範囲で組み合わせ、さらに、第1組織1と第2組織2においてはニット目Nと隣のニット目Nとの間を六針以内とし、ニット目Nとニット目Nが同じ針に掛る倍編みDBLの組織を含めることで課題を解決した。
【0019】
図2~5は編地の組織を記号化した組織図である。図では一般的に製編を図示する時に用いるカッコ内の記号で表記している。すなわち、ニット目は(○)、タック目は(・)、ニット目又はタック目が無い場合ウエルト(-)の記号を用いている。図の中で下側に編地の表面を編むシリンダー針を、上側に編地の裏面を編むダイヤル針を配置している。そして、シリンダー針とダイヤル針に上述のニット目(○)、タック目(・)、ウエルト(-)の記号を表記し、これらの記号を線で繋ぎ、各組織の糸の動きを表している。また、図の中のo1、o2は、どのダイヤル針とシリンダー針の間かを示すために表記している。
【0020】
本発明の一実施形態について図1~3をもとに詳細に説明する。図1に示すように本発明に係る車両内装用編地は、ジャカード編み組織を有する丸編地であって、前記丸編地は第1組織、第2組織及び第3組織を含んでなり、前記第1組織と前記第2組織は表面ニット目と裏面タック目を有し、前記第1組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は三~六針以内であり、前記第2組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は一針以内であり、前記第1組織の表面ニット目と前記第2組織の表面ニット目が同じ針に掛る倍編み組織を含み、前記倍編み組織の比率(%)が10%~40%の範囲であり、前記第3組織は表面ニット目と裏面ニット目からなり、前記第1組織と前記第2組織による凸部を有し、前記第1組織はウエルトを有し、前記ウエルトは、前記第1組織の裏面タック目と前記第1組織の裏面タック目の間に連続二個以下であることを特徴とする。このような構成を採用することで、意匠性に優れ、凹凸感のある立体的な構造の組織を有し、しかも耐摩耗性に優れ、製編後にプリント加工やエンボス加工などの加飾が不可欠でないうえに、編地の強度向上のための薬剤の使用量を低減できる。

【0021】
図2は本発明に係る車両内装用編地の一実施形態である編組織図である。D1~D24はダイヤル針、C1~C24はシリンダー針を示す。図2に示す第1組織と第2組織において(・)で示すDa~Dlはダイヤル針側が前記丸編地の裏面なので裏面タック目で、前記第1組織において(○)で示すCa~Cgはシリンダー針側が前記丸編地の表面なので表面ニット目である。同様に前記第2組織において(○)で示すCa~Cpは表面ニット目である。第3組織において(○)で示すDa~Dlは裏面ニット目で、前記第3組織において(○)で示すCa~Cdは表面ニット目である。なお、前記第1組織のW1、W2を付した(-)はウエルトで、順に裏面タック目Dh~Diに渡るウエルトと裏面タック目Di~Djに渡るウエルトである。さらに、例えば表面ニット目と裏面ニット目を繋ぐ場合、線は下から上に繋がり、前記丸編地の表面から裏面へと糸が繋がっていることを表している。
【0022】
図2に示す第1組織と第2組織では裏面タック目Da~Dlが一針飛びで均等に配置されている。そして、前記第1組織と前記第2組織の表面ニット目は、隣同士が最大でも六針以内に配置されている。すなわち、前記第1組織では表面ニット目Ca~Cbの間で三針(図では三針の意でN3と記す。以下同様)、以下順に表面ニット目Cb~Ccの間で一針、表面ニット目Cc~Cdの間で四針(N4)、表面ニット目Cd~Ceの間で五針(N5)、表面ニット目Ce~Cfの間で三針(N3)であり、隣同士が最大でも六針以内に配置された組織である。また、前記第2組織では、隣同士が最大でも表面ニット目Ca~Cbの間で一針以内に配置された組織である。
【0023】
図2における第1組織の表面ニット目が、隣同士が最大でも六針以内であるCd~Ce間で五針(N5)の場合について詳しく説明する。シリンダー針C14、C15、C16、C17、C18の五針分は表面ニット目がなく、対峙する第1組織の裏面タック目Dh、Di、Djがダイヤル針に引っ掛かる形となり、シリンダー針には表面ニット目はないが、前記裏面タック目Dh~Diに渡るウエルトW1と前記裏面タック目Di~Djに渡るウエルトW2は連続2回までなので製編が可能である。逆に連続2回を超えると前記丸編地の組織を構成する糸の張力が製編の際に低下してしまい、編組織から糸が外れて編地の目落ち疵(欠点)が発生するなどの不具合の要因となる。
【0024】
続いて、前記不具合の要因に関わる前記表面ニット目のでない間隔、前記裏面タック目の数、前記裏面ウエルトの数について検討した結果、前記表面ニット目の隣同士を六針以内とすることで、前記丸編地の組織を構成する糸の張力を十分保持することができる編地となる。具体的に検証した内容は、20ゲージのコンピュータジャカード丸編機を使用し、シリンダー針によりニット目がでない間隔、ダイヤル針でタック目の数、ウエルトの数、そして製編可能か否かの順で説明すると、三針(N3)、ニ個、一個、製編可能、四針(N4)、三個、ニ個、製編可能、五針(N5)、三個、ニ個、製編可能、六針(N6)、三個、ニ個、製編可能、七針(N7)、四個、三個、製編不可能、八針(N8)、四個、三個、製編不可能であった。したがって、隣同士が六針以内で前記第1組織と前記第2組織の前記表面ニット目を任意の不規則な配置にすることができることから、均一で単調でない自由度の高い意匠性に優れた編地となる。
【0025】
また、前記第1組織の表面ニット目と前記第2組織の表面ニット目が同じ針に掛る倍編み組織を含む。前記倍編み組織は、例えば図2に示すように前記第1組織の表面ニット目Cdと前記第2組織の表面ニット目Chが同じ針に掛り、同様に前記第1組織の表面ニット目Ceと前記第2組織の表面ニット目Cmが同じ針に掛る配置の組織である。1つのシリンダー針にニ個のニット目が配置されることで、双方のニット目のループが小さくなり倍編みでないニット目に比べておよそ半分の大きさのループがニ個編まれた状態となる。つまり、前記第1組織と前記第2組織は、2倍に編まれた組織を含んでいる。なお、ループの大きさがおよそ半分なので、この2倍に編まれた箇所は目立ちにくく、意匠上明らかな規則性を感じてしまうことはない。また、特に限定されないが、シリンダー針の隣同士が六針離れた組織では、この六針離れた表面ニット目の両方が倍編みであるのが好ましい。
【0026】
図2に示すように第1組織の表面ニット目Cdから前記第1組織の表面ニット目Ceまでの間が五針(N5)、前記第1組織の表面ニット目Ccから前記第1組織の表面ニット目Cd間も四針(N4)、前記第1組織の表面ニット目Ceから前記第1組織の表面ニット目Cfまでの間が三針(N3)であり、離れた表面ニット目に倍編み組織を含めることが好ましく、十分に製編することができる。さらに、離れた両端のシリンダー針C13とC19による倍編み組織を含めることがより好ましい。すなわち、前記第1組織の表面ニット目Cdと前記第2組織の表面ニット目Chが倍編みで、前記第1組織の表面ニット目Ceと前記第2組織の表面ニット目Cmも倍編みとなり、十分に製編することができる。
【0027】
また、前記倍編み組織を前記第1組織と前記第2組織に含めることで表面ニット目が増え、前記丸編地の表面と裏面を繋ぐ箇所が増えることから、前記丸編地の組織を固定する箇所が増えるので前記丸編地の強度が向上する。なお、前記第1組織と前記第2組織当りの倍編組織比率(%)は、10%~40%の範囲が好ましく、本発明の丸編地全組織、例えば第1組織~第3組織以上の組織当りの倍編組織比率(%)は、5%~15%の範囲が好ましい。こうして、車両内装用編地に求められる摩耗性能の向上に貢献することができる。
【0028】
また、前記第3組織は表面ニット目と裏面ニット目からなり、前記第1組織と前記第2組織による凸部を有する。例えば、図2では第3組織のダイヤル針で編んだDa~Dlの裏面ニット目とシリンダー針で編んだCa~Cdの表面ニット目で構成し、前記第1組織と前記第2組織の両方ともダイヤル針で編んだDa~Dlの裏面タック目と前記第1組織のシリンダー針で編んだCa~Cgの表面ニット目と前記第2組織のシリンダー針で編んだCa~Cpの表面ニット目で構成している。このような構成においてダイヤル針と対峙するシリンダー針の両方がニット目の場合、互いに編地を構成する糸が引き寄せあうことで図2に示す第3組織の裏面ニット目Dbと表面ニット目Ca間o2が、第1組織の裏面タック目Daと表面ニット目Ca間o1より短くなりダイヤル針とシリンダー針間の距離が短くなる。一方、ダイヤル針と対峙するシリンダー針の一方のみニット目とする場合、すなわちタック目と対峙する側がニット目になる場合、互いに編地を構成する糸が引き寄せあう張力はニット目とニット目の場合より弱く、糸長は相対的に長くなり、ダイヤル針とシリンダー針間の距離が長くなる。こうして、前記丸編地の表面に前記第1組織と前記第2組織には凸部が形成され、前記第3組織には凹部が形成され、意匠性に優れた凹凸感のある立体的な車両内装用編地となる。
【0029】
前記丸編地はさらに第4組織を含んでなり、前記第4組織は裏面ニット目からなり、前記丸編地の裏糸となり、前記第3組織と前記第4組織による凹部を有するのが好ましい。このような構成を採用することで、前記第4組織は裏面ニット目からなる裏編みとなり目付が増加し地厚となることで、編地強度がより向上する。このように編地強度がより向上することで、編地の強度向上のための薬剤の使用量をさらに低減できる。
【0030】
前記第3組織と前記第4組織による凹部は、ダイヤルー針と対峙するシリンダー針の両方ともニット目となる場合、互いに編地を構成する糸が引っ張り合うことで、糸長が相対的に短くなり、ダイヤル針とシリンダー針間の距離が短くなることで形成される。すなわち、距離が短くなったところが凹部である。
【0031】
前記第1組織及び前記第2組織はさらにウエルトを有し、前記ウエルトは、前記第1組織の裏面タック目と前記第1組織の裏面タック目の間に連続ニ個以下が好ましい。このような構成を採用することで、優れた意匠性を発揮するとともに目落ち疵(欠点)が発生する恐れのない編地とすることができる。
【0032】
図2では第1組織の裏面タック目Dhと裏面タック目Djの間に位置するウエルトW1とウエルトW2が連続してニ個配置されている。タック目は、糸をしっかりと組織するニット目と異なり糸を引っ掛けておいて後のニット目でタック目をしっかり組織することでようやく完成する。編地においてニット目だけが編地を組織するもので、一方のタック目やウエルトは、それ自身だけでは組織にはならない。したがって、ウエルトが三個以上続いてタック目で引っ掛かったままだとニット目がないのでしっかり組織できないため、糸の張力が弱くなる。すなわち、前記ウエルトが連続ニ個を超えると、糸の張力が弱くなるので糸が針から目落ちしてしまう恐れが高くなり目落ち疵(欠点)の発生や、さらに弱くなるとそもそも製編自体ができなる恐れがあるので好ましくない。
【0033】
前記第1組織及び/又は前記第2組織を構成する糸としては、無染色糸と原着糸の混繊糸を含み、前記糸の総繊度が84T~660Tであるのが好ましい。このような構成を採用することで、耐摩耗性に優れた組織に加え、凹凸感のある立体的な編地に少なくとも無染色糸と原着糸の混繊糸を含むので、一段と優れた多色感のある意匠性を発揮することができる。
【0034】
本発明の丸編地を製編する糸は特に限定されず、例えば無染色糸、チーズ染め、スペースダイ、綛染め等による糸染め糸、原着糸等を挙げることができる。前記無染色糸は、染料や顔料等による色の付いていない糸の意味で用いる。また、前記原着糸は、例えば顔料などを混練した紡糸ペレットを溶融紡糸することで得られる。原着糸用の顔料としては、例えばフタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン系などの有機顔料及び酸化チタン、酸化鉄、群青、カーボンブラックなどの無機顔料を挙げることができる。これらの顔料により又は組み合わせることにより種々の色彩・色相の原着糸が得られる。
【0035】
また、前記糸を構成する繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の合成繊維、木綿、レーヨン繊維等を挙げることができる。また、これらを適宜組み合せた混繊糸でもよい。なお、前記ポリエステルマルチフィラメントはブライト、セミダル、フルダルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0036】
前記混繊糸は、前記無染色糸と前記原着糸を引き揃えてインターレースでエアー交絡を施すことで得られる。前記混繊糸の総繊度が84T~660Tの範囲が好ましい。
【0037】
表1に示す表面密度は編地の表面の密度でインチ当たりのニット目の個数であり、本発明に係る車両内装用編地の性能を担保するための編地の密度と厚みが得られることから、20~40ウェル、かつ20~40コースの範囲が好ましい。また、編地の重量は、本発明に係る車両内装用編地の性能を担保するための編地の密度と厚みが得られることから、200g/m~600g/mの範囲が好ましい。
【0038】
また、製編後の編地は、例えば液流染色、ウインス染色、捺染など公知の加工を施してもよいが、廃液による水質汚染の問題をはじめ産業上水資源の使用量が増大になるなど、環境負荷への影響が大きいことから好ましくない。すなわち、持続的成長可能な社会を目指すうえで環境負荷の低減は必須といってよく環境配慮型の製品として、本発明に係る車両内装用編地は、このような加工を施さなくとも優れた意匠性を発揮することができる。
【0039】
次に、本発明に係る車両内装用編地の製造方法について説明する。
【0040】
編機として、例えば20ゲージのコンピュータジャカード機構を備えた丸編機を使用し、第1組織、第2組織及び第3組織を含む編組織として、前記第1組織と前記第2組織に表面ニット目と裏面タック目を配置し、前記第1組織及び前記第2組織の表面ニット目と隣の表面ニット目との間は六針以内に配置し、前記第1組織の表面ニット目と前記第2組織の表面ニット目が同じ針に掛る倍編み組織を設け、前記第3組織に表面ニット目と裏面ニット目からなる組織により製編する工程を含むことで、前記第1組織と前記第2組織による凸部を有する車両内装用編地が得られる。
【0041】
得られた車両内装用編地は、意匠性に優れた凹凸感のある立体的で、耐摩耗性に優れることから、製編後にプリント加工やエンボス加工などの加飾が不可欠でないうえに、編地の強度向上のための薬剤の使用量を低減できる車両内装用編地の製造方法である。
【0042】
さらに、前記丸編地に第4組織を含む編組織として、前記第4組織に裏面ニット目からなる前記丸編地の裏糸とする組織により製編するのが好ましい。こうして、前記第3組織と前記第4組織による凹部を有する車両内装用編地が得られる。
【0043】
得られた車両内装用編地は、優れた意匠性を保ちながら裏編みとして目付を増加せることで、編地の強度が向上している。このように編地強度が向上することで前記第1組織~第3組織を構成する糸の単糸繊度を細くして風合いを向上させることもできるうえに、編地強度の向上のための薬剤の使用量を低減できる。さらに、前記第4組織を含むので前記丸編地の総繊度が増し厚みが増えることから、車両内装材として例えば座席シートの表皮に用いた際には、座席シートの仕上がり性を向上させることができる車両内装用編地の製造方法である。
【0044】
前記第1組織及び前記第2組織はウエルトを前記第1組織の裏面タック目と前記第1組織の裏面タック目の間に連続二個以下とする組織により製編するのが好ましい。
【0045】
得られた車両内装用編地は、優れた意匠性を発揮するとともに目落ち疵による欠点のない安定した品質を確保しながら製編可能な車両内装用編地の製造方法である。
【0046】
前記第1組織及び/又は前記第2組織を構成する糸に、無染色糸と原着糸の混繊糸を含み、前記糸の総繊度が84T~660Tの範囲が好ましい。
【0047】
得られた車両内装用編地は、凹凸感のある立体的な編地で多様な色彩を発揮し、一段と優れた意匠性を有する編地である。このような構成を採用することで、耐摩耗性に優れた組織に加え、編地の強度が向上した車両内装用編地の製造方法となる。
【実施例
【0048】
次に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例のものに特に限定されるものではない。また、表1に使用した糸の構成、倍編組織率(%)等を示し、本発明の編地の組織を凹凸タック組織と表記した。表2に評価結果を示す。なお、繊度を表すTとdtexは同じ意味で用いている。
【0049】
また、丸編機には、柄出し装置の違いによる、すなわちカムによる選針機構を備えた無地丸編機とコンピュータによる選針機構のジャカード丸編機の主に2種類がある。詳しくは、無地丸編機では選針を針が通過するニットカム、タックカム、ウエルトカムの3種類のみを用いて行うカムの配列で実現する機構を備え、一方のコンピュータジャカード丸編機はカムの配列でなくコンピュータ制御で選針する機構を備える丸編機である。本発明の車両内装用編地は、無地丸編機では製編できない編組織を含んでおり、コンピュータジャカード丸編機で製編することができる。
【0050】
<実施例1>
20ゲージのコンピュータジャカード丸編機を使用し、第1組織の糸として167dtex/48f/2ポリエステル繊維無染色糸、第2組織の糸としてポリエステル繊維無染色糸とポリエステル繊維黒原着糸の混繊糸(総繊度330dtex/120f/1)、第3組織の糸としてポリエステル繊維無染色糸とポリエステル繊維黒原着糸の混繊糸(総繊度250dtex/108f/1)と167dtex/48f/1ポリエステル繊維黒原着糸の縞立てとし、図2に示した編組織図に基づいて製編し編地を得た。なお、倍編組織率(%)は、第1組織~第2組織当り27.5%、全組織で8.9%の編組織であった。得られた編地を温度135℃で釜リラックス加工処理した後、温度160℃×5分間乾燥した。続いて、温度160℃×5分間ヒートセットを施して、表面密度29ウェル/25.4 mm、30コース/25.4 mm、重量260g/m、厚み1.14mmの車両内装用編地を得た。得られた車両内装用編地の評価結果は、意匠自由度が「有」、凹凸感が「有」、テーバー摩耗試験が「4―5級」で合格、面ファスナー式スクラッチ試験が「3ー4級」で合格であった。したがって、総合評価は合格あった。
【0051】
<実施例2>
実施例1において、さらに第4組織を含む組織とした。すなわち、図3に示した編組織図に基づいて、第4組織の糸として167dtex/48f/1ポリエステル繊維無染色糸を使用し、裏目ニット目を均等に配置した以外は実施例1と同様にして車両内装用編地を得た。なお、第4組織以外は実施例1と同じ編組織のため、倍編組織率(%)は実施例1と同様で第1組織~第2組織当り27.5%、全組織で8.9%の編組織であった。表面密度29ウェル/25.4 mm、30コース/25.4 mm、重量313g/m、厚み1.14mmであった。得られた車両内装用編地の評価結果は、意匠自由度が「有」、凹凸感が「有」、テーバー摩耗試験が「4―5級」で合格、面ファスナー式スクラッチ試験が「3ー4級」で合格であった。したがって、総合評価は合格あった。
【0052】
<実施例3>
実施例2において、倍編組織率(%)27.5%の編組織に替えて、19.5%の編組織にした以外は実施例2と同様にして車両内装用編地を得た。なお、倍編組織率(%)は、第1組織~第2組織当り19.5%、全組織で6.7%の編組織であった。表面密度29ウェル/25.4 mm、30コース/25.4 mm、重量308g/m、厚み1.14mmであった。得られた車両内装用編地の評価結果は、意匠自由度が「有」、凹凸感が「有」、テーバー摩耗試験が「4級」で合格、面ファスナー式スクラッチ試験が「3ー4級」で合格であった。したがって、総合評価は合格あった。
【0053】
<実施例4>
実施例2の第1組織~第3組織の糸に替えて第1組織の糸として167dtex/48f/3ポリエステル繊維カラー原着糸、第2組織の糸として167dtex/48f/2ポリエステル繊維カラー原着糸、第3組織の糸として167dtex/48f/1ポリエステル繊維黒原着糸を使用し、倍編組織率(%)27.5%の編組織に替えて、18.1%の編組織にした以外は実施例2と同様にして車両内装用編地を得た。なお、倍編組織率(%)は、第1組織~第2組織当り18.1%、全組織で6.2%の編組織であった。表面密度33ウェル/25.4 mm、29コース/25.4 mm、重量392g/m、厚み1.16mmであった。得られた車両内装用編地の評価結果は、意匠自由度が「有」、凹凸感が「有」、テーバー摩耗試験が「3―4級」で合格、面ファスナー式スクラッチ試験が「3ー4級」で合格あった。したがって、総合評価は合格あった。
【0054】
【表1】
【0055】
<比較例1>
実施例2の20ゲージのコンピュータジャカード丸編機に替えて20ゲージの無地丸編機を使用し、実施例2の第1組織~第3組織の糸に替えて第1組織の糸としてポリエステル繊維無染色糸とポリエステル繊維黒原着糸の混繊糸(総繊度277dtex/84f/1)、第2組織の糸として330dtex/96f/1ポリエステル繊維カラー原着糸、第3組織の糸として110dtex/36f/1ポリエステル繊維無染色糸を使用し、図4に示した編組織図(タック組織)に基づいて製編した以外は実施例2と同様にして編地を得た。
【0056】
図4の編組織について、最初に編地の表面を構成する第1組織、第1組織-2、第2組織及び第2組織-2について説明する。第1組織はシリンダ-針の奇数列のニット目Ca、Cb、Cc、Cdで構成され、第2組織はシリンダ-針の偶数列のニット目Ca、Cb、Cc、Cdで構成されている。第1組織-2は、シリンダ-針の奇数列に替えて偶数列にした以外は第1組織と同様にシリンダ-針の偶数列のニット目Ca、Cb、Cc、Cdで構成され、第2組織-2は、シリンダ-針の偶数列に替えて奇数列にした以外は第2組織と同様にシリンダ-針の奇数列のニット目Ca、Cb、Cc、Cdで構成されている。次に、編地の裏面を構成する第3組織、第3組織-2、第4組織及び第4組織-2について説明する。第3組織はダイヤル針の奇数列のニット目Da、Db、Dc、Ddで構成され、シリンダ-針の奇数列のCa、Cb、Cc、Cdにタック目を構成することで編地の表裏を接結させている。第3組織-2は、第3組織の奇数列に替えて偶数列にした以外は第3組織と同様にダイヤル針の偶数列のニット目Da、Db、Dc、Ddで構成され、シリンダ-針の偶数列のCa、Cb、Cc、Cdにタック目を構成することで編地の表裏を接結させている。第4組織は奇数列のニット目Da、Db、Dc、Ddで構成されている。第4組織-2は、第4組織の奇数列に替えて偶数列にした以外は第4組織と同様にダイヤル針の偶数列のニット目Da、Db、Dc、Ddで構成されている。
【0057】
なお、このようにタック組織を用いた丸編地は、第3組織と第3組織-2において、例えばタック目Caが対峙するDaにニット目を配置することで糸の張力を保持し、タック目1つに対してニット目1つの割合で均等に配置して編組織を完成させている。逆に均等に配置しない場合は製編の際に糸の張力が低下してしまい、編組織から糸が外れて編地の目落ち疵(欠点)が発生する恐れがある。一方、丸編地の表面と裏面を繋ぐためにタック目を構成することで、表面を構成する第3組織の糸が表面に露出することなく製編できるので、表面と裏面とが異なる糸を用いた組織でありながら表面と裏面が接結され、編地表面の耐摩耗性を向上させることができる組織であるが、均等な無地調の製編のため、編地の柄においては意匠性の乏しい表現しかできない。図4に示した編組織図(タック組織)は均一な無地調柄なので、ジャカード丸編機、無地丸編機のいずれの編機でも製編できるが、無地丸編機での製編が妥当である。
【0058】
比較例1の編組織は第1組織と第2組織のダイヤル針を1針ずつのタック目で均等に配置し、第1組織と第2組織のシリンダー針もニット目で均等に配置し、倍編みは含まれない編組織であった。表面密度35ウェル/25.4 mm、32コース/25.4 mm、重量344g/m、厚み0.93mmであった。得られた編地の評価結果は、意匠自由度が「無」、凹凸感が「無」、テーバー摩耗試験が「4級」で合格、面ファスナー式スクラッチ試験が「4級」で合格であった。したがって、総合評価は不合格であった。
【0059】
<比較例2>
実施例4の第1組織~第2組織の糸に替えて第1組織の糸として167dtex/48f/2ポリエステル繊維無染色糸、第2組織の糸としてポリエステル繊維無染色糸とポリエステル繊維黒原着糸の混繊糸(総繊度167dtex/48f/2)を使用し、図5に示した編組織図(ブリスター組織)に基づいて製編した以外は実施例4と同様にして編地を得た。
【0060】
図5の編組織について、最初に編地の表面を構成する第1組織と第2組織について説明する。第1組織はシリンダ-針のニット目Ca~Cfで構成され、第2組織はシリンダ-針のニット目Ca~Ceで構成され、いずれもシリンダー針のみで構成されているのでダイヤル針の側に糸が出現することはない。次に、編地の裏面を構成する第3組織と第4組織について説明する。第3組織はシリンダ-針のニット目Ca~Cfとダイヤル針のニット目Da~Djで構成され、第4組織はシリンダ-針のニット目Ca、Cbとダイヤル針のニット目Da~Djで構成されているので、糸が編地の表面と裏面に出現するとともに表面と裏面を接結している。第3組織と第4組織は、編地の表面側から見た時に第1組織と第2組織からなる表面に比べて低い位置にあるため凹部を形成している。すなわち、編地の裏面に近い位置にある編組織である。したがって、第1組織と第2組織は、編地の表面から見た時に凸部を形成している。すなわち、編地の表面に近い位置にある編組織である。
【0061】
なお、このようにブリスター組織を用いた丸編地は、凹凸感のある編地となるが、第1組織と第2組織がシリンダー針のみに存在し、ダイヤル針と接結しないので、編地表面の耐摩耗性がタック組織に比べると劣ることから、製編後の編地に樹脂等の薬剤を多量に付与する加工を施す必要があり、製品コストを押し上げる要因になっている。一方、ブリスター組織は、均等な無地調の製編ではなくジャカード柄表現などの多様な意匠を表現することができる。これは、ダイヤル針とシリンダー針ともニット目で構成されており、ニット目をランダムな配置にした場合であっても製編の際に糸の張力が低下することがないので、編地の目落ち疵(欠点)が発生する恐れがないことから、ジャカード丸編機を用い自由度の高い柄を表現することができる。図5に示した編組織図(ブリスター組織)はジャカード丸編機、無地丸編機のいずれの編機でも製編できる。
【0062】
なお、編組織は第1組織と第2組織のダイヤル針を1針ずつのニット目で均等に配置し、倍編みは含まれない編組織であった。表面密度29ウェル/25.4 mm、33コース/25.4 mm、重量345g/m、厚み1.12mmであった。得られた車両内装用編地の評価結果は、意匠自由度が「有」、凹凸感が「有」、テーバー摩耗試験が「3ー4級」で合格、面ファスナー式スクラッチ試験が「2―3級」で不合格であった。したがって、総合評価は不合格であった。
【0063】
【表2】
【0064】
上記のようにして得られた各編地について次の各評価法に基づいて評価し、すべてを同時に満たすものを総合評価で合格とした。
【0065】
表2から明らかなように、本発明に係る実施例1~4の車両内装用編地はいずれも総合評価は合格であり、意匠性に優れ、凹凸感のある立体的な構造の組織を有し、しかも耐摩耗性に優れた車両内装用編地であった。
【0066】
一方、比較例1の編地はテーバー摩耗試験、面ファスナー式スクラッチ試験とも合格であったが、意匠自由度が無く、従来のタック組織のため凹凸感も無いことから総合評価は不合格であった。また、比較例2の編地は意匠自由度が有り、従来のブリスター組織のため凹凸感も有り、テーバー摩耗も合格であるものの、面ファスナー式スクラッチ試験が不合格であることから総合評価は不合格であった。
【0067】
<意匠自由度>
編地の意匠自由度について次の観点から目視により官能評価した。なお、その際色数は除外した。組織的な柄表現が大きく見え、ジャカード柄の表現ができているとものは「有」とし、柄感が小さく、小紋柄若しくは無地調に見えるものは「無」とした。
【0068】
<凹凸感>
編地のテクスチャーについて次の観点から目視により官能評価した。なお、その際色数は除外した。組織的な凹凸柄の表現ができているものは「有」とし、平滑で均一な表現・表情に見えるものは「無」とした。
【0069】
<テーバー摩耗試験法>
JIS L1096G-2010に規定されるテーバー摩耗試験機を用いて次の条件にて試験を行い、各試験片表面の摩耗程度を目視で調べ、編地の表面の外観の変化を次の判定基準に従って評価した。判定「3級」以上を合格とした。使用摩耗輪No:CS-10、荷重:4.9N、試験回転数:1000回、回転摩擦速度:約70rpm/min。
(判定基準)
「5級」…異常なし。
「4級」…やや損傷している。
「3級」…糸が切断している。
「2級」…糸が切断し地が見えかけている。
「1級」…糸が擦り切れて地が露出している。
【0070】
<面ファスナー式スクラッチ試験法>
JIS L0849-2004に規定する摩擦試験機I形を用い、摩擦子として、面ファスナーを巻き付けた摩擦子であって摩擦面が面ファスナーの表面(フックあり)になっているものを使用した。摩擦子を荷重8.0Nで150mm間を毎分60回往復の速度で10回往復させた。各試験片表面の毛羽立ちの程度を目視で調べ、編地の表面の外観の変化を次の判定基準に従って評価した。判定「3級」以上を合格とした。
(判定基準)
「5級」…毛羽立ちの発生が全く認められない。
「4級」…毛羽立ちの発生はあるが、繊維は切れていない。
「3級」…毛羽立ちの発生はあるが目立ちにくく、繊維が切れているが目立ちにくい。
「2級」…毛羽立ちの発生が目立ち、繊維が切れて目立つ。
「1級」…毛羽立ちが著しく目立ち、繊維が切れて著しく目立つ、又は破れている。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る車両内装用編地は、凹凸感のある立体的な構造の組織を有し、しかも優れた意匠性を備え、車両内装の主にシートやドアに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・第1組織
2・・・第2組織
3・・・第3組織
N・・・ニット目
T・・・タック目
DBL・・・倍編み
W・・・ウエルト
D1~D24・・・ダイヤル針番号
C1~C24・・・シリンダー針番号
Da~Dl・・・裏面ニット目又は裏面タック目
Ca~Cp・・・表面ニット目又は表面タック目
W1、W2・・・ウエルト
o1、o2・・・ダイヤル針とシリンダー針の間
図1
図2
図3
図4
図5