(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20241219BHJP
B65B 57/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01M3/26 H
B65B57/02 F
(21)【出願番号】P 2023080205
(22)【出願日】2023-05-15
【審査請求日】2024-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511011621
【氏名又は名称】株式会社A・R・P
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 孝
(72)【発明者】
【氏名】荏原 良之
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0104664(US,A1)
【文献】特表平07-506182(JP,A)
【文献】特開平01-153428(JP,A)
【文献】特表平07-506181(JP,A)
【文献】特開2020-142819(JP,A)
【文献】特開2003-065881(JP,A)
【文献】特開2003-149073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/26
B65B 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体である対象物の封止状態を検査する検査装置であって、
前記対象物からの反発力を検知する複数の圧力検知部を有する測定部と、
前記対象物を
搬送方向へ一定速度で連続搬送するベルトコンベアと、
前記測定部による検知結果に基づき前記対象物の封止状態を判別する演算部と、
を備え、
前記測定部は、
前記ベルトコンベアとの間隔を第1間隔に設定する第1プレートを有し、前記対象物が前記ベルトコンベアと前記第1プレートとの間を通過する際の前記対象物からの反発力を第1検知圧力として検知する第1圧力検知部と、
前記ベルトコンベアとの間隔を前記第1間隔よりも狭い第2間隔に設定する第2プレートを有し、前記対象物が前記ベルトコンベアと前記第2プレートとの間を通過する際の前記対象物からの反発力を第2検知圧力として検知する第2圧力検知部と、
前記第1圧力検知部の前記搬送方向の上手側に設けられ、前記ベルトコンベアとの間隔を前記搬送方向の下手側に向かって前記第1間隔よりも広い間隔から前記第1間隔まで徐々に狭くする傾斜部分を有する呼び込みプレートと、
前記第1圧力検知部と前記第2圧力検知部との間に設けられ、前記ベルトコンベアとの間隔を前記搬送方向の下手側に向かって前記第1間隔から前記第2間隔に徐々に狭くする傾斜部分を有し、前記第1圧力検知部の前記搬送方向の下手側から前記第2圧力検知部にかけて搬送中の前記対象物へ継続して一定の押圧力を印加する押圧プレートと、
を有し、
前記演算部は、前記
ベルトコンベアによる前記対象物の前記呼び込みプレートから前記第1圧力検知、前記押圧プレート、前記第2圧力検知部への連続搬送において前記第1検知圧力と前記第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき前記対象物の封止状態を判別する、検査装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記第1検知圧力のピーク値を基準値として、前記第2検知圧力のピーク値が前記基準値を越えている場合、前記対象物の封止状態は良好であると判別し、
前記第2検知圧力のピーク値が前記基準値以下の場合、前記対象物の封止状態は良好ではないと判別する、
請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の検査装置を用いた検査方法であって、
前記ベルトコンベアによって前記対象物を前記呼び込みプレートから前記第1圧力検知、前記押圧プレート、前記第2圧力検知部へ連続搬送させる工程と、
前記対象物の連続搬送において前記第1圧力検知部で検知した前記第1検知圧力と、前記第2圧力検知部で検知した前記第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき前記対象物の封止状態を判別する工程と、
を備えた検査方法。
【請求項4】
前記対象物の封止状態を判別する工程は、
前記第1検知圧力のピーク値を基準値として、前記第2検知圧力のピーク値が前記基準値を越えている場合、前記対象物の封止状態は良好であると判別し、
前記第2検知圧力のピーク値が前記基準値以下の場合、前記対象物の封止状態は良好ではないと判別することを含む、
請求項3記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関し、より詳しくは、袋体を搬送しながら封止状態や気体漏れを検査する検査装置および検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密封された袋体の検査として、袋体からの気体の漏れを検査するリーク検査が行われる。特許文献1には、搬送しながら連続して収容体の含気検査を行う装置が開示される。この含気検査装置は、密封された袋状の収容体を搬送する搬送手段と、搬送手段の搬送面からの高さが収容体の基準厚みと同じ高さに配置され、搬送される収容体と接触させるための接触部と、接触部を収容体が通過するときに接触部にかかる反発力を測定する測定手段と、反発力に基づいて、収容体の含気状態を判別する判別手段と、を有する。
【0003】
特許文献2には、食品の包装袋において、封入した気体の内容量の変動に関わらずシール不良の検出可能な包装シール不良検出装置が開示される。この包装シール不良検出装置は、連続した同一面上を搬送される包装袋に対して荷重をかける押圧手段と、押圧手段の押圧時における包装袋の高さ計測手段とを、少なくとも2箇所に設け、計測手段により測定した変位を高さの差分と初期高さとの比に換算し、当該高さの差分と初期高さとの比を予め設定した判定閾値と比較して良否判定する処理部を備える。
【0004】
特許文献3には、袋包装物のシール不良及びピンホールの検出装置が開示される。この袋包装物のシール不良及びピンホールの検出装置は、所定ストロークの間欠送りを行うベルトコンベアと、最上流側の袋包装物を除いた任意の少なくとも三個の袋包装物に対して水平に押圧する複数の押圧板と、それぞれの袋包装物の厚さに関係する電気信号を出力する一対の変位センサーと、一対の変位センサーの二つの電気信号の両デジタル値を減算し、しきい値と比較する制御回路とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2023-020461号公報
【文献】特開2003-149073号公報
【文献】特開平01-012240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査対象となる袋体には同じ商品であっても包装状態に固体差が発生している。このような商品を対象物としてシール状態やリークの検査を行う場合、可能な限り数多くの対象物について効率良く、かつ正確に検査できることが望まれる。
【0007】
本発明は、対象物の封止状態を効率良く、かつ正確に検査することができる検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、袋体である対象物の封止状態を検査する検査装置であって、対象物からの反発力を検知する複数の圧力検知部を有する測定部と、測定部と対象物との相対位置を変化させる移動部と、測定部による検知結果に基づき対象物の封止状態を判別する演算部と、を備え、測定部は、対象物からの反発力を第1検知圧力として検知する第1圧力検知部と、対象物からの反発力を第2検知圧力として検知する第2圧力検知部と、を有し、演算部は、移動部による相対位置の連続した変化において所定の間隔で検知される第1検知圧力と第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき対象物の封止状態を判別する、検査装置である。
【0009】
このような構成によれば、移動部によって測定部と対象物との相対位置を変化させながら、測定部によって対象物からの反発力を第1圧力検知部および第2圧力検知部で検知する。これらで検知した第1検知圧力と第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき対象物の封止状態が判別される。
【0010】
上記検査装置において、演算部は、第1検知圧力のピーク値が予め設定された基準値を越えており、かつ第2検知圧力のピーク値が前記基準値を越えている場合、対象物の封止状態を第1状態であると判別し、第1検知圧力のピーク値が前記基準値を越えており、かつ第2検知圧力のピーク値が前記基準値以下の場合、対象物の封止状態を第2状態であると判別し、第1検知圧力のピーク値が前記基準値以下の場合、対象物の封止状態を第3状態であると判別するようにしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、測定部と対象物との相対位置が変化する間に検知した第1検知圧力と第2検知圧力とのそれぞれのピーク値と、所定の基準値との比較によって、対象物の封止状態が判別される。
【0012】
上記検査装置において、移動部によって測定部と対象物との相対位置を変化させる間、移動部と第1圧力検知部との間隔は、移動部と第2圧力検知部との間隔と同じに設けられていてもよい。このように、移動部と第1圧力検知部との間隔、および移動部と第2圧力検知部との間隔が同じに設けられることで、第1検知圧力と第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき対象物の封止状態が安定して判別される。
【0013】
上記検査装置において、測定部は、第1圧力検知部と第2圧力検知部との間に設けられ、対象物へ押圧力を印加する押圧部を有していてもよい。これにより、対象物が第1圧力検知部から第2圧力検知部へ移動する間も対象物へ押圧力が継続的に印加される。
【0014】
上記検査装置において、移動部によって測定部と対象物との相対位置を変化させる間、移動部と第2圧力検知部との間隔は、移動部と第1圧力検知部との間隔よりも狭く設けられていてもよい。これにより、第1圧力検知部よりも第2圧力検知部のほうが強い反発力によって圧力検知を行うことになり、対象物の封止状態が明確に判別される。
【0015】
本発明の他の一態様は、袋体である対象物の封止状態を検査する検査方法であって、対象物からの反発力を検知する測定部と、対象物との相対位置を変化させる工程と、測定部と対象物との相対位置を連続して変化させながら測定部によって対象物からの反発力である第1検知圧力を検知する工程と、第1検知圧力を検知した後、移動部によって相対位置を連続して変化させながら測定部によって対象物からの反発力である第2検知圧力を検知する工程と、第1検知圧力と第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき対象物の封止状態を判別する工程とを備えた検査方法である。
【0016】
このような構成によれば、測定部と対象物との相対位置を変化させながら、測定部によって対象物からの反発力が所定の間隔で検知される。そして、これらで検知した第1検知圧力と第2検知圧力とのピーク値の変化に基づき対象物の封止状態が判別される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象物の封止状態を効率良く、かつ正確に検査することができる検査装置および検査方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る検査装置を例示する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る検査装置を例示する正面図である。
【
図3】本実施形態に係る検査装置の測定部を例示する正面図である。
【
図4】本実施形態に係る検査装置の動作を例示する模式図である。
【
図5】(a)から(c)は、第1検知圧力および第2検知圧力の変化を表す図である。
【
図6】本実施形態に係る検査方法を例示するフローチャートである。
【
図7】封止状態の判別方法を例示するフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る検査装置の他の例について説明する模式図である。
【
図9】(a)および(b)は、検査装置の他の例による対象物の封止状態の判別について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0020】
(検査装置)
図1は、本実施形態に係る検査装置を例示する斜視図である。
図2は、本実施形態に係る検査装置を例示する正面図である。
図3は、本実施形態に係る検査装置の測定部を例示する正面図である。
【0021】
本実施形態に係る検査装置1は、袋体である対象物Wのシール状態やリークを検査する装置である。検査の対象物Wは、商品を袋に詰めて開口をシールした袋製品である。例えば、食品、液体、ゲル状物、化粧品などの各種の商品を袋に詰めて密封したものが検査の対象物Wとなる。検査装置1は、このような袋体である対象物Wのシール状態(シールの密着性)や、シールからの漏洩やピンホールなどによる気体漏れといったリーク性を検査する。本実施形態では、対象物Wのシール状態やリーク性を総称して「封止状態」と言うことにする。
【0022】
本実施形態に係る検査装置1は、対象物Wからの反発力を検知する複数の圧力検知部11を有する測定部10と、測定部10と対象物Wとの相対位置を変化させる移動部20と、測定部10による検知結果に基づき対象物Wの封止状態を判別する演算部30と、を備える。
【0023】
検査装置1の測定部10は、少なくとも2つの圧力検知部11を有する。本実施形態に係る検査装置1では、2つの圧力検知部11(第1圧力検知部11A、第2圧力検知部11B)を有する。第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11Bを区別せずに総称するときは「圧力検知部11」と言うことにする。
【0024】
圧力検知部11には、例えばロードセルが用いられる。ロードセルは、圧力による歪みを電子信号に変換して出力する素子である。ロードセルによって圧力に応じた電気信号を得ることができる。第1圧力検知部11Aと第2圧力検知部11Bとは、測定部10と対象物Wとの相対位置の変化の方向である第1方向D1に所定の間隔で並置される。第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11Bのそれぞれには電動移動機構15が設けられていてもよい。電動移動機構15によって第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11Bのそれぞれと対象物Wとの距離が独立して設定される。
【0025】
移動部20は、例えばベルトコンベアBである。移動部20は、測定部10と対象物Wとの相対位置を第1方向D1に連続的に移動させる。移動部20がベルトコンベアBの場合、ベルトコンベアBで対象物Wを第1方向D1に一定速度で連続移動させる。ベルトコンベアBの対象物Wの載置側に測定部10を配置しておくことで、ベルトコンベアBによって搬送される対象物Wと測定部10との相対位置が第1方向D1に連続的に変化するよう構成される。
【0026】
なお、移動部20はベルトコンベアBに限定されず、トレイ式移動機構でもよいしロボットアームなどで対象物Wを保持して移動させる機構でもよい。また、移動部20は測定部10を移動させる機構であってもよい。例えば、対象物Wの位置を固定しておき、位置固定された対象物Wに対して測定部10が移動する機構でもよいし、対象物Wおよび測定部10の双方を移動させる機構であってもよい。
【0027】
移動部20によって測定部10と対象物Wとの相対位置が第1方向D1に変化する間に、測定部10は対象物Wからの反発力に基づく圧力を検知する。例えば、移動部20がベルトコンベアBの場合、測定部10はベルトコンベアBと圧力検知部11との間を対象物Wが通過するときに対象物Wから受ける反発力を圧力検知部11(例えば、ロードセル)で圧力値として検知する。
【0028】
演算部30は、専用のハードウェアで構成されていてもよいし、コンピュータおよびコンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されていてもよい。演算部30は、第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11Bのそれぞれから出力される信号を受けて、対象物Wの封止状態を判別するための信号処理を行う。第1圧力検知部11Aは、対象物Wから反発力に基づく圧力を第1検知圧力として検知し、第1検知圧力に応じた電気信号(第1検知信号)を出力する。第2圧力検知部11Bは、対象物Wから反発力に基づく圧力を第2検知圧力として検知し、第2検知圧力に応じた電気信号(第2検知信号)を出力する。
【0029】
移動部20による測定部10と対象物Wとの相対位置の連続した変化において、第1検知圧力に応じた第1検知信号と、第2検知圧力に応じた第2検知信号とは、例えば一定の間隔で演算部30に送られる。演算部30は、検知される第1検知圧力に応じた第1検知信号と、第2検知圧力に応じた第2検知信号とのピーク値の変化に基づき対象物Wの封止状態を判別する演算を行う。
【0030】
移動部20がベルトコンベアBの場合、ベルトコンベアBの搬送方法(第1方向D1)の上手側に第1圧力検知部11Aが配置され、第1圧力検知部11Aよりも搬送方向の下手側に第2圧力検知部11Bが配置される。ベルトコンベアBの対象物Wの載置面と第1圧力検知部11Aとの間隔、およびベルトコンベアBの対象物Wの載置面と第2圧力検知部11Bとの間隔は同じに設けられる。
【0031】
第1圧力検知部11Aの搬送方向の上手側には呼び込みプレート16を配置しておくことが好ましい。ベルトコンベアで搬送されてきた対象物Wは呼び込みプレート16によって第1圧力検知部11Aの検知高さに合わせられる。
【0032】
また、搬送方向(第1方向D1)において第1圧力検知部11Aと第2圧力検知部11Bとの間には押圧部17が設けられていることが好ましい。これにより、対象物Wが第1圧力検知部11Aから第2圧力検知部へ移動する間も押圧部17から対象物Wへ押圧力を継続的に印加できるようになる。
【0033】
(検査装置の動作)
図4は、本実施形態に係る検査装置の動作を例示する模式図である。
ここでは、移動部20としてベルトコンベアが用いられる例を説明する。対象物Wである袋体は内容物を密閉包装したものである。袋体の中には内容物とともに空気などの気体が封入されている。検査装置1は、移動部20であるベルトコンベアに対象物Wを載置して第1方向D1に一定速度で移動していく。
【0034】
ベルトコンベアで搬送されてきた対象物Wは呼び込みプレート16によって第1圧力検知部11Aの検知高さに合わせられる。呼び込みプレート16を通過した対象物Wは第1圧力検知部11Aの下を通過する。対象物Wが第1圧力検知部11Aの下を通過する際、第1圧力検知部11Aは対象物Wからの反発力を受ける。第1圧力検知部11Aは、この対象物Wから反発力に応じた圧力を第1検知圧力として検知し、第1検知圧力に応じた第1検知信号を出力する。
【0035】
第1圧力検知部11Aの下を通過した対象物Wは、次に、第2圧力検知部11Bへ進む。第1圧力検知部11Aと第2圧力検知部11Bとの間に押圧部17が設けられていると、第1圧力検知部11Aの位置を通過して第2圧力検知部11Bへ到達するまでの間、対象物Wは押圧部17から押圧力を継続に受けることになる。
【0036】
押圧部17を通過した対象物Wは第2圧力検知部11Bの下を通過する。対象物Wが第2圧力検知部11Bの下を通過する際、第2圧力検知部11Bは対象物Wからの反発力を受ける。第2圧力検知部11Bは、この対象物Wから反発力に応じた圧力を第2検知圧力として検知し、第2検知圧力に応じた第2検知信号を出力する。
【0037】
図5(a)から(c)は、第1検知圧力および第2検知圧力の変化を表す図である。
図5の横軸は時間(対象物Wと測定部10との相対位置が変化する時間)を表し、縦軸は圧力(圧力検知部11で検知する圧力)を表す。
対象物Wと測定部10との相対位置の変化によって、第1検知圧力および第2検知圧力は
図5(a)から(c)のように変化する。すなわち、対象物Wと測定部10との相対位置が変化し、先ずは第1圧力検知部11Aで検知した第1検知圧力が現れ、次に第2圧力検知部11Bで検知した第2検知圧力が現れる。
【0038】
演算部30は、このように対象物Wと測定部10との相対位置が変化する時間に応じて検知される第1検知圧力と第2検知圧力との変化に基づき、対象物Wの封止状態を判別する演算を行う。
【0039】
図5(a)には、封止状態が良好な対象物Wの第1検知圧力および第2検知圧力が示される。
図5(b)には、封止状態が不良(リークあり)な対象物Wの第1検知圧力および第2検知圧力が示される。
図5(c)には、シール状態が弱い対象物Wの第1検知圧力および第2検知圧力が示される。
このように、対象物Wの封止状態によって第1検知圧力および第2検知圧力の変化に違いが現れる。演算部30は、この第1検知圧力および第2検知圧力の変化の違いによって対象物Wの封止状態を判別する演算を行う。
【0040】
例えば、対象物Wの封止状態が良好な場合、第1圧力検知部11Aで検知される対象物Wからの反発力に基づく第1検知圧力のピーク値P1は所定の基準値R1を超えるとともに、第2圧力検知部11Bで検知される対象物Wからの反発力に基づく第2検知圧力のピーク値P2も所定の基準値R1を超えることになる。すなわち、対象物Wの封止状態が正常であれば、第1圧力検知部11Aで押圧されてもリークは発生せずに所定の反発力が得られ、さらに次の第2圧力検知部11Bで押圧されても所定の反発力を維持した状態となる。したがって、対象物Wの封止状態が正常であれば、時間差で検知される第1検知圧力および第2検知圧力の両方のピーク値P1、P2とも所定の基準値R1を越えることになる(
図5(a)参照)。
【0041】
一方、対象物Wの封止状態が不良(リークあり)な場合、第1圧力検知部11Aで検知される対象物Wからの反発力に基づく第1検知圧力のピーク値P1は所定の基準値R1を越えず、第2圧力検知部11Bで検知される対象物Wからの反発力に基づく第2検知圧力のピーク値P2も所定の基準値R1を超えないことになる。すなわち、対象物Wの封止状態が不良であれば、第1圧力検知部11Aで押圧された際にリークによって反発力が失われ、さらに次の第2圧力検知部11Bで押圧されることでさらにリークが発生して反発力がより失われる状態となる。したがって、対象物Wの封止状態が不良であれば、時間差で検知される第1検知圧力および第2検知圧力の両方のピーク値P1、P2とも所定の基準値R1を越えないことになる(
図5(b)参照)。
【0042】
また、対象物Wのシール状態が弱い場合、第1圧力検知部11Aで検知される対象物Wからの反発力に基づく第1検知圧力のピーク値P1は所定の基準値R1を超えるとともに、第2圧力検知部11Bで検知される対象物Wからの反発力に基づく第2検知圧力のピーク値P2は所定の基準値R1を越えないことになる。すなわち、対象物Wのシール状態が弱い場合、第1圧力検知部11Aで押圧されてもリークは発生せずに所定の反発力が得られる。しかし、シール状態が弱いと、押圧力によって対象物Wのシールの弱い部分が僅かに剥がれる。ここでシールは僅かに剥がれてもリークは発生していない場合、第1シールが剥がれた分だけ容積が増えるため反発力は弱くなる。したがって、対象物Wのシール状態が弱い場合、時間差で検知される圧力のうち先に検知される第1検知圧力のピーク値P1は所定の基準値R1を超えるが、次に検知される第2検知圧力のピーク値P2は所定の基準値R1を越えないことになる(
図5(c)参照)。
【0043】
上記の対象物Wの封止状態と第1検知圧力および第2検知圧力の変化との関係は一例であり、これに限定されない。例えば、演算部30は、第1検知圧力のピーク値P1と第2検知圧力のピーク値P2との割合によって対象物Wの封止状態を判別してもよいし、第1検知圧力の時間変化の形状(波形形状)と、第2検知圧力の時間変化の形状(波形形状)とに基づき、対象物Wの封止状態を判別してもよい。判別に用いる波形形状は、波形の立ち上がり部分の傾斜、立ち下がり部分の傾斜、波形の微分値、2次微分値、積分値、半値幅などを用いることができる。さらに、これらの組合せによって対象物Wの封止状態を判別してもよい。
【0044】
また、演算部30は、第1検知圧力のピーク値P1に応じて基準値R1を変更するようにしてもよい。例えば、第1検知圧力のピーク値P1が高いほど基準値R1を低く設定する。第1検知圧力のピーク値P1が高いということは対象物Wに密封された気体の圧力が高いことを示す。対象物Wに密封された気体の圧力が高いほど、第1圧力検知部11Aから第2圧力検知部11Bに至るまでの間の押圧力でシール部分に負荷が掛かりやすい。このため、正常なシール状態でも、対象物Wに密封された気体の圧力が高いほど第1検知圧力のピーク値P1に比べて第2検知圧力のピーク値P2は下がりやすい。このため、第1検知圧力のピーク値P1が高いほど基準値R1を低く設定することで、誤判別を抑制することができる。なお、この基準値R1の機動的な変更は一例である。
【0045】
さらにまた、演算部30は、第1検知圧力の時間変化および第2検知圧力の時間変化と対象物Wの封止状態との相関関係を学習モデルとした人工知能によって対象物Wの封止状態を判別するようにしてもよい。例えば、先に説明した波形形状をデータ化して、第1検知圧力および第2検知圧力の波形形状の変化と対象物Wの封止状態との相関関係を機械学習させ、この学習モデルに基づき対象物Wの封止状態を判別することができる。
【0046】
(検査方法)
次に、本実施形態に係る検査方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る検査方法を例示するフローチャートである。
図7は、封止状態の判別方法を例示するフローチャートである。
先ず、
図6のステップS101に示すように、測定部10と対象物Wとの相対位置を変化させる。移動部20がベルトコンベアBの場合、ベルトコンベアBによって対象物Wを第1方向D1に搬送する。
【0047】
次に、
図6のステップS102に示すように、第1圧力検知部11Aで圧力検知を行う。すなわち、測定部10と対象物Wとの相対位置が第1方向D1に移動している状態で、対象物Wからの反発力を第1圧力検知部11Aで検知する。第1圧力検知部11Aは、対象物Wからの反発力を第1検知圧力として検知する。
【0048】
次に、
図6のステップS103に示すように、第2圧力検知部11Bで圧力検知を行う。すなわち、測定部10と対象物Wとの相対位置が第1方向D1に移動している状態で、第1圧力検知部11Aでの圧力検知を行った後、続けて対象物Wからの反発力を第2圧力検知部11Bで検知する。第2圧力検知部11Bは、対象物Wからの反発力を第2検知圧力として検知する。
【0049】
次に、
図6のステップS104に示すように、封止状態の判別を行う。封止状態の判別は演算部30によって行われる。ステップS104に示す封止状態の判別の一例が
図7のフローチャートに示される。先ず、
図7のステップS1041に示すように、第1検知圧力のピーク値P1は基準値R1を超えているか否かを判断する。第1検知圧力のピーク値P1が基準値R1を超えている場合にはステップS1042へ進む。
【0050】
ステップS1042では、第2検知圧力のピーク値P2が基準値R1を越えているか否かを判断する。第2検知圧力のピーク値P2が基準値R1を超えている場合には、対象物Wの封止状態は第1状態であると判別される。
【0051】
ステップS1042の判断で第2検知圧力のピーク値P2が基準値R1を超えていない場合、対象物Wの封止状態は第2状態であると判別される。一方、ステップS1041の判断で第1検知圧力のピーク値P1が基準値R1を超えていないと判断された場合には、対象物Wの封止状態は第3状態であると判別される。
【0052】
ここで、対象物Wの封止状態の第1状態は、例えば良好な密閉状態である。対象物Wの封止状態の第2状態は、例えばリークは発生していないがシールが弱い状態である。対象物Wの封止状態の第3状態は、例えばリークが発生している状態である。この第1~第3状態と対象物Wの封止状態との関係は一例であり、第1基準および第2基準の設定によって第1~第3状態と対象物Wの封止状態との関係は変更可能である。
【0053】
このように、本実施形態に係る検査方法では、測定部10と対象物Wとの相対位置を変化させながら、対象物Wからの反発力を第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11Bで連続的に検知し、これらで検知した第1検知圧力と第2検知圧力とのピーク値P1、P2の変化に基づき対象物Wの封止状態を判別することができる。移動部20としてベルトコンベアBを用いて複数の対象物Wを連続搬送しながら測定部10で圧力検知を行うことで、各対象物Wの封止状態を連続して判別していくことができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る検査方法において、第1検知圧力および第2検知圧力を用いた対象物Wの封止状態の判別は上記に限定されない。例えば、第1検知圧力のピーク値P1と第2検知圧力のピーク値P2との割合によって対象物Wの封止状態を判別してもよいし、第1検知圧力の時間変化の形状(波形形状)と、第2検知圧力の時間変化の形状(波形形状)とに基づき、対象物Wの封止状態を判別してもよい。判別に用いる波形形状は、波形の立ち上がり部分の傾斜、立ち下がり部分の傾斜、波形の微分値、2次微分値、積分値、半値幅などを用いることができる。さらに、これらの組合せによって対象物Wの封止状態を判別してもよい。
【0055】
また、上記検査方法において、第1検知圧力のピーク値P1に応じて基準値R1を変更するようにしてもよい。例えば、第1検知圧力のピーク値P1が高いほど基準値R1を低く設定する。第1検知圧力のピーク値P1が高いということは対象物Wに密封された気体の圧力が高いことを示す。対象物Wに密封された気体の圧力が高いほど、第1圧力検知部11Aから第2圧力検知部11Bに至るまでの間の押圧力でシール部分に負荷が掛かりやすい。このため、正常なシール状態でも、対象物Wに密封された気体の圧力が高いほど第1検知圧力のピーク値P1に比べて第2検知圧力のピーク値P2は下がりやすい。このため、第1検知圧力のピーク値P1が高いほど基準値R1を低く設定することで、誤判別を抑制することができる。なお、この基準値R1の機動的な変更は一例である。
【0056】
さらにまた、上記検査方法において、第1検知圧力の時間変化および第2検知圧力の時間変化と対象物Wの封止状態との相関関係を学習モデルとした人工知能によって対象物Wの封止状態を判別するようにしてもよい。例えば、先に説明した波形形状をデータ化して、第1検知圧力および第2検知圧力の波形形状の変化と対象物Wの封止状態との相関関係を機械学習させ、この学習モデルに基づき対象物Wの封止状態を判別することができる。
【0057】
(検査装置の他の例)
図8は、本実施形態に係る検査装置の他の例について説明する模式図である。
図8に示す検査装置1Bにおいては、移動部20によって測定部10と対象物Wとの相対位置を変化させる間、移動部20と第2圧力検知部11Bとの間隔h2が、移動部20と第1圧力検知部11Aとの間隔h1よりも狭く設けられている。
【0058】
例えば、移動部20がベルトコンベアBの場合、ベルトコンベアBの搬送方法(第1方向D1)の上手側に第1圧力検知部11Aが配置され、第1圧力検知部11Aよりも搬送方向の下手側に第2圧力検知部11Bが配置される。第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11Bのそれぞれには電動移動機構15が設けられていてもよい。この電動移動機構15が設けられている場合、第1圧力検知部11Aおよび第2圧力検知部11BのベルトコンベアBとの間隔を独立して対象物Wの厚さ(高さ)に合わせて調整可能となる。
【0059】
検査装置1Bでは、例えば電動移動機構15によって第1圧力検知部11AとベルトコンベアBとの間隔h1が設定され、第2圧力検知部11BとベルトコンベアBとの間隔h2が設定される。この設定において、第2圧力検知部11BとベルトコンベアBとの間隔h2が、第1圧力検知部11AとベルトコンベアBとの間隔h1よりも狭くなるように設定される。これに対応して、呼び込みプレート16におけるベルトコンベアBとの間隔は、間隔h1と同等に設定される。また、第1圧力検知部11Aと第2圧力検知部11Bとの間に設けられる押圧部17は、搬送方法(第1方向D1)の上手側では間隔h1であり、下手側に向かって徐々に間隔h2になるよう傾斜部分を有する。
【0060】
この検査装置1Bで対象物Wの検査を行うと、ベルトコンベアBによって搬送される対象物Wは、第1圧力検知部11Aで間隔h1の高さに押圧され、この押圧による反発力を第1検知圧力として第1圧力検知部11Aで検知する。第1圧力検知部11Aを通過した対象物Wは、押圧部17を通過することで間隔h2に高さに押圧され、この押圧による反発力を第2検知圧力として第2圧力検知部11Bで検知する。
【0061】
このように、検査装置1Bでは、第1圧力検知部11Aで設定された間隔h1よりも第2圧力検知部11Bで設定された間隔h2のほうが狭いため、第1圧力検知部11Aよりも第2圧力検知部11Bのほうが強い反発力によって圧力検知を行うことになる。したがって、対象物Wの封止状態を、いわゆる加速試験を行うように短時間で明確に判別しやすくなる。
【0062】
図9(a)および(b)は、検査装置の他の例による対象物の封止状態の判別について説明する図である。
図9(a)には、封止状態が良好な対象物Wの第1検知圧力および第2検知圧力が示される。
図9(b)には、封止状態が良好ではない対象物Wの第1検知圧力および第2検知圧力が示される。
封止状態が良好な対象物Wの場合、第2圧力検知部11Bで検知される第2検知圧力のピーク値P2は、第1圧力検知部11Aで検知される第1検知圧力のピーク値P1よりも高くなる(
図9(a)参照)。つまり、第1圧力検知部11Aで設定される間隔h1より第2圧力検知部11Bで設定される間隔h2のほうが狭いため、押圧しても封止状態(反発力)が変わらない良好な対象物Wであれば、第1検知圧力のピーク値P1よりも第2検知圧力のピーク値P2のほうが高くなる。したがって、第1検知圧力のピーク値P1を基準値Rpとして、第2検知圧力のピーク値P2が基準値Rp(=ピーク値P1)を越えている場合、対象物Wの封止状態は良好であると判別される。
【0063】
一方、封止状態が良好ではない(シールが弱い、またはリークしている)対象物Wの場合、第2圧力検知部11Bで検知される第2検知圧力のピーク値P2は、第1圧力検知部11Aで検知される第1検知圧力のピーク値P1以下になる(
図9(b)参照)。つまり、第1圧力検知部11Aで設定される間隔h1より第2圧力検知部11Bで設定される間隔h2のほうが狭いため、対象物Wのシールが弱い、またはリークが発生していると、第1圧力検知部11Aで押圧された際にシールの僅かな剥がれやリークによって反発力が低下することになる。したがって、第1検知圧力のピーク値P1を基準値Rpとして、第2検知圧力のピーク値P2が基準値Rp(=ピーク値P1)以下の場合、対象物Wの封止状態は良好ではないと判別される。
【0064】
なお、第1検知圧力および第2検知圧力を用いた対象物Wの封止状態の判別は上記以外であってもよい。
【0065】
以上説明したように、実施形態に係る検査装置1、1Bおよび検査方法によれば、対象物Wの封止状態を効率良く、かつ正確に検査することが可能となる。
【0066】
なお、上記に本実施形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記では2つの圧力検知部11で検知した圧力によって対象物Wの封止状態を判別したが、3つ以上の圧力検知部11で検知した圧力によって対象物Wの封止状態を判別してもよい。また、前述の各実施形態またはその変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
1,1B…検査装置
10…測定部
11…圧力検知部
11A…第1圧力検知部
11B…第2圧力検知部
15…電動移動機構
16…呼び込みプレート
17…押圧部
20…移動部
30…演算部
B…ベルトコンベア
D1…第1方向
h1,h2…間隔
P1,P2…ピーク値
R1,Rp…基準値
W…対象物