(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アフィニティ精製のための免疫グロブリン結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 14/31 20060101AFI20241219BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07K14/31
C07K1/22 ZNA
C12N15/31
(21)【出願番号】P 2023501045
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021069564
(87)【国際公開番号】W WO2022013272
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513311653
【氏名又は名称】ナフィゴ プロテインズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Navigo Proteins GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ニック,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ボボロフスキー,ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】カール,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハウプト,ウルリッヒ
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/152318(WO,A1)
【文献】米国特許第07709209(US,B2)
【文献】米国特許第09051375(US,B2)
【文献】国際公開第2019/093439(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/31
C07K 1/22
C12N 15/31
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の免疫グロブリン(Ig)結合ドメインを含むIg結合タンパク質であって、少なくとも1つのIg結合ドメインが、配列番号1に対して少なくとも93%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、配列番号1の8位のアミノ酸が、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)、
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、又はチロシン(Y)であり、前記Ig結合タンパク質が、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間、安定している、Ig結合タンパク質。
【請求項2】
配列番号1の8位のアミノ酸が、イソロイシン(I)又はチロシン(Y)である、請求項1に記載のIg結合タンパク質。
【請求項3】
配列番号1の14位のアミノ酸(複数可)が、ヒスチジン(H)である、請求項1に記載のIg結合タンパク質。
【請求項4】
配列番号1の29位のアミノ酸(複数可)が、リジン(K)である、請求項1~3のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質。
【請求項5】
少なくとも1つのドメインが、配列番号4~9、20~
22、25、26、
41、43、45、47、及び49のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質。
【請求項6】
IgG
1、IgG
2、IgG
4、IgM、IgA、Ig断片、Fc断片、Fab断片、Ig領域を含む融合タンパク質、及びIg領域を含むコンジュゲートに結合する、請求項1~5のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質。
【請求項7】
互いにつなげられた2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのドメインを含む、請求項1~6のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質。
【請求項8】
ホモマルチマー又はヘテロマルチマーである、請求項7に記載のIg結合タンパク質。
【請求項9】
2つのIg結合ドメインを含み、1つのIg結合ドメインが配列番号43のIg結合タンパク質に対応する、請求項7に記載のIg結合タンパク質。
【請求項10】
Ig結合タンパク質が、配列番号37、配列番号50、又は配列番号51の配列を含むダイマーである、請求項7に記載のIg結合タンパク質。
【請求項11】
固体担体に固定される、請求項1~10のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質。
【請求項12】
アフィニティ分離マトリックスに連結された請求項1~10のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質を含むアフィニティ分離マトリックス。
【請求項13】
Ig結合タンパク質への親和性を有する任意のタンパク質のアフィニティ精製のための、請求項1~10のいずれか1つに記載のIg結合タンパク質の使用、又は請求項12に記載のアフィニティ分離マトリックスの使用。
【請求項14】
a)Ig配列を含むタンパク質を含有する液体を提供すること;
b)請求項12に記載の前記アフィニティ分離マトリックスに連結された請求項1~10のいずれか1つに記載の少なくとも1つのIg結合タンパク質を含む請求項12に記載のアフィニティ分離マトリックスを提供すること;
c)Ig配列を含むタンパク質への、請求項1~10のいずれか1つに記載の前記少なくとも1つのIg結合タンパク質の結合を可能にする条件下で、前記アフィニティ分離マトリックスを前記液体と接触させること;及び
d)Ig配列を含む前記タンパク質を前記アフィニティ分離マトリックスから溶出し、それにより前記免疫グロブリンを含有する溶離液を得ること、
を備える、Ig配列を含むタンパク質のアフィニティ精製の方法。
【請求項15】
ステップ(d)において、前記Ig配列を含む前記タンパク質の95%より多くが、pH3.7以上で、請求項1~10のいずれか1つに記載の前記Ig結合タンパク質を含む前記アフィニティ分離マトリックスから溶出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(d)において、前記Ig配列を含む前記タンパク質の95%より多くが、pH4.5以上で、請求項1~10のいずれか1つに記載の前記Ig結合タンパク質を含む前記アフィニティ分離マトリックスから溶出される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(e)前記アフィニティ分離マトリックスをアルカリ浄化液で浄化する追加的ステップを備える、請求項14~16のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1のIg結合タンパク質又は機能的に類似するタンパク質の4又は6又は8位に対応する分枝状側鎖を有する高疎水性アミノ酸(Iso、Leu、Val)、又は芳香族アミノ酸(Tyr、Phe、又はTrp)を有する1つ又は複数のドメインを含む免疫グロブリン(Ig)結合タンパク質に関する。該新規タンパク質は、抗体(免疫グロブリン)の高効率精製法のための優れた特性を有し、例えば該タンパク質は、高い結合容量及び高い化学的安定性を有する。本発明はさらに、本発明のIg結合タンパク質を含むアフィニティマトリックスに関する。本発明はまた、免疫グロブリンのアフィニティ精製のためのこれらのIg結合タンパク質又はアフィニティマトリックスの使用、及び本発明のIg結合タンパク質を用いたアフィニティ精製の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの生物工学的及び医薬的適用は、抗体を含有する試料からの混入物の除去を必要とする。抗体を捕捉及び精製するための確立された手順が、免疫グロブリンの選択的リガンドとしての黄色ブドウ球菌由来の細菌細胞表面プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィーである(例えば、Huseらによるレビュー、J.Biochem.Biophys.Methods 51,2002:217-231を参照)。野生型プロテインAは、IgG分子のFc領域に高い親和性及び選択性で結合する。アルカリ安定性などの特性が改善されたプロテインAのバリアントが、抗体を精製するために利用可能であり、プロテインAリガンドを含む様々なクロマトグラフィーマトリックスが、市販されている。しかし、現在利用可能なプロテインAを基にしたクロマトグラフィーマトリックスは、アルカリ条件への暴露後に免疫グロブリンへの結合容量の損失を示し、4未満のpHでの溶出条件を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗体又はFc含有融合タンパク質のためのほとんどの大規模生成工程は、アフィニティ精製のためにプロテインAを利用する。しかし、アフィニティクロマトグラフィーにおけるプロテインA適用の限界により、免疫グロブリンのアフィニティ精製を容易にするために、免疫グロブリンに特異的に結合する改善された特性を有する新規Ig結合タンパク質を提供することが、当該技術分野で必要とされている。Ig結合タンパク質を含むクロマトグラフィーマトリックスの価値を最大限に探究するためには、アフィニティリガンドマトリックスを複数回使用することが望ましい。マトリックスの残存混入物の消毒及び除去のために、クロマトグラフィーサイクルの間に徹底した浄化手順が必要となる。この手順では、高濃度のNaOHを含むアルカリ溶液をアフィニティリガンドマトリックスに適用することが、一般的実践である。野生型プロテインAドメインは、長期間のそのような過酷なアルカリ条件に耐えることができず、免疫グロブリンへの結合容量を急速に損失する。さらに、アフィニティリガンドマトリックスの反復使用のためには、過酷な酸性条件下での浄化ステップが必要となる。
【0004】
したがって、Ig配列を含むタンパク質、例えば抗体に結合することが可能な新規タンパク質を得ること、及び免疫グロブリンのアフィニティ精製に適用される過酷な浄化条件に耐えること、が可能な新規タンパク質を得ることが、この分野で引き続き必要とされる。
【0005】
本発明は、免疫グロブリンのアフィニティ精製に特にうまく適合するIg結合タンパク質を提供する。詳細には、本発明のIg結合タンパク質は、複数の利点を有する。本発明のIg結合タンパク質の1つの顕著な利点は、高い力学的結合容量と共に、Ig結合容量を低減しない長期間(2日より長いなど)の高pHでの改善された安定性である。さらに、本発明の新規タンパク質は、弱酸性溶出条件が必要となる抗体のアフィニティ精製に特に有用となる。
【0006】
上記概要は、本発明により解決された全ての問題を必ずしも記載していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、アフィニティ精製に適したIg結合タンパク質を提供することである。
【0008】
[1]これは、1つ又は複数の免疫グロブリン(Ig)結合ドメインを含むIg結合タンパク質で実現され、少なくとも1つのIg結合ドメインは、配列番号1(cs26)に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、配列番号1の4、6、又は8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又は芳香族アミノ酸である。Ig結合タンパク質は、アルカリ安定性である(0.5M NaOHで少なくとも20時間)。様々な態様において、Ig結合タンパク質は、1つ又は複数のIg結合ドメインを含んでおり、少なくとも1つのIg結合ドメインは、配列番号1に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)又は芳香族アミノ酸であり、該Ig結合タンパク質は、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間安定している。
【0009】
[2](a)配列番号1の8位に対応する該アミノ酸が、イソロイシン(I)若しくはチロシン(Y)であり、好ましくは配列番号1の8位に対応する該アミノ酸が、イソロイシン(I)であるか、又は(b)配列番号1の4位に対応する該アミノ酸が、トリプトファン(W)若しくはフェニルアラニン(F)であるか、又は(c)配列番号1の6位に対応する該アミノ酸が、イソロイシン(I)、トリプトファン(W)、若しくはチロシン(Y)、若しくはロイシン(L)である、
項目[1]によるIg結合タンパク質。
【0010】
[3]配列番号1の10、14、16、17、18又は28位に対応する1つ又は複数のアミノ酸(複数可)が、好ましくは14又は28位の、ヒスチジン(H)、又はアスパラギン酸塩(D)若しくはグルタミン酸塩(E)から選択される酸性アミノ酸の群から選択される、項目[1]又は[2]によるIg結合タンパク質。様々な態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号1(cs26)に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有していて、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸が、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又はバリン(V)又は芳香族アミノ酸であり、配列番号1の14位に対応する該アミノ酸が、ヒスチジンである。様々な態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号1(cs26)に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有していて、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸が、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又はバリン(V)又は芳香族アミノ酸であり、配列番号1の14位に対応する該アミノ酸が、ヒスチジン(H)であり、配列番号1の29位に対応するアミノ酸が、リシン(K)である。好ましくは、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸が、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又は芳香族アミノ酸であり、該芳香族アミノ酸は、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、又はチロシン(Y)のいずれかであってもよい。より好ましくは配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)又はロイシン(L)であり、より好ましくは配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)である。様々な態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号1の43又は46位に対応する位置にシステイン(C)残基を有してもよい。
【0011】
[4]配列番号1の29位に対応する該アミノ酸が、リシン(K)である、項目[1]~[3]のいずれか1つによるIg結合タンパク質。
【0012】
[5]該少なくとも1つのドメインが、配列番号4~36及び40~49のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、又はそれからなる、項目[1]~[4]のいずれか1つによるIg結合タンパク質。様々な態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号4~9、20~36、及び40~49のいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号4~36、40~49のいずれかに対して少なくとも89.5%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
[6]IgG1、IgG2、IgG4、IgM、IgA、Ig断片、Fc断片、Fab断片、Ig領域を含む融合タンパク質、及びIg領域を含むコンジュゲートの1つ又は複数に結合する、項目[1]~[5]のいずれか1つによるIg結合タンパク質。様々な態様において、該Ig結合タンパク質は、Fc領域を含むタンパク質に結合している、又はFc断片に結合している。
【0014】
[7]互いにつなげられた2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのドメインを含む、項目[1]~[6]のいずれか1つによるIg結合タンパク質。
【0015】
[8]ホモマルチマー又はヘテロマルチマーである、項目[7]によるIg結合タンパク質。幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号37、配列番号50、又は配列番号51の配列を含むダイマーである。
【0016】
[9]固体担体に固定される、項目[1]~[8]のいずれか1つによるIg結合タンパク質。幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号1の43又は46位に対応する位置でシステイン(C)による固体担体に固定される。
【0017】
[10]アルカリ条件下で、場合により0.5M NaOHで少なくとも20時間安定している、項目[1]~[9]のいずれか1つによるIg結合タンパク質。
【0018】
[11]前記アフィニティ分離マトリックスに連結された、項目[1]~[10]のいずれか1つのIg結合タンパク質を含む前記アフィニティ分離マトリックス。
【0019】
[12]該Ig結合タンパク質への親和性を有する任意のタンパク質のアフィニティ精製のための、項目[1]~[10]のいずれか1つのIg結合タンパク質の使用又は項目[11]のアフィニティ分離マトリックスの使用。
【0020】
[13]a)Ig配列を含むタンパク質を含有する液体を提供すること;
b)項目[11]のアフィニティ分離マトリックスに連結された項目[1]~[10]のいずれか1つの少なくとも1つのIg結合タンパク質を含む項目[11]によるアフィニティ分離マトリックスを提供すること;
c)Ig配列を含むタンパク質への、項目[1]~[10]のいずれか1つによる該少なくとも1つのIg結合タンパク質の結合を可能にする条件下で、前記アフィニティ分離マトリックスを該液体と接触させること;及び
d)Ig配列を含む前記タンパク質を前記アフィニティ精製マトリックスから溶出し、それにより前記免疫グロブリンを含有する溶離液を得ること、
を含む、Ig配列を含むタンパク質のアフィニティ精製の方法。
【0021】
[14]ステップ(d)において、該Ig配列を含む該タンパク質の95%より多くが、pH3.7以上で項目[1]~[10]のいずれかによるIg結合タンパク質を含む該アフィニティ分離マトリックスから溶出される、項目[13]による方法。様々な態様において、ステップ(d)において、該Ig配列を含む該タンパク質の95%より多くが、pH4.5で項目[1]~[10]のいずれかによるIg結合タンパク質を含む該アフィニティ分離マトリックスから溶出される。
【0022】
[15]場合により、該Ig結合タンパク質の少なくとも90%が0.5M NaOHでの少なくとも20時間のインキュベーション後にIg結合活性を保持する、該アフィニティ精製マトリックスをアルカリ浄化液で浄化する追加的ステップ(e)を含む、項目[13]~[14]のいずれかによる方法。
【0023】
[16]本発明は、配列番号1(cs26)に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する免疫グロブリン(Ig)結合ドメインを提供し、配列番号1の4、6、又は8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又は芳香族アミノ酸である。好ましくは該免疫グロブリン(Ig)結合ドメインは、配列番号1(cs26)に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質であり、又は該Igタンパク質に対応し、配列番号1の4、6、又は8位に対応する該アミノ酸は、先の項目[1]のもとで記載された通り、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又は芳香族アミノ酸である。
【0024】
本発明の概要は、本発明の全ての特色を必ずしも記載していない。他の態様は、続く詳細な記載のレビューから明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】新規Ig結合タンパク質のアミノ酸配列。最上行の数は、Ig結合タンパク質内の対応するアミノ酸位置である。
【
図2】0.5M NaOHとの20時間のインキュベーション後にPraesto Epoxy85樹脂(35℃で18時間連結)に連結されたIg結合タンパク質の苛性安定性(caustic stability)。6mg GammmanormでのSBC決定。三番目のヘリックス内に配置されたシステイン(43Cの位置)を介してバリアント及び親物質を樹脂に連結。バリアント8I、8V、8F、8W、8L、及び8Yは、親分子(cs26)に比較して、アルカリ条件での長期インキュベーション後の残存活性の有意な改善を示す。
【
図3】0.5M NaOHとの20時間のインキュベーション後にPraesto Epoxy85樹脂(35℃で18時間連結)に連結されたIg結合タンパク質の苛性安定性(caustic stability)。6mg GammmanormでのSBC決定。三番目のヘリックス内に配置されたシステイン(43Cの位置)を介してバリアント及び親物質を樹脂に連結。バリアント4F及び4Wは、親分子(cs26)に比較して、アルカリ条件での長期インキュベーション後に改善された残存活性を示す。
【
図4】0.5M NaOHとの20時間のインキュベーション後にPraesto Epoxy85樹脂(35℃で18時間連結)に連結されたIg結合タンパク質の苛性安定性(caustic stability)。6mg GammmanormでのSBC決定。三番目のヘリックス内に配置されたシステイン(43Cの位置)を介してバリアント及び親物質を樹脂に連結。バリアント6F、6I、6L、6V、6W、6Y、6Rは、親分子(cs26)と比較して、アルカリ条件での長期インキュベーション後に改善された残存活性を示す。
【
図5】アフィニティリガンド(配列番号51)からのベリムマブの溶出プロファイル。抗体は、固定されたアフィニティリガンド(配列番号51)を有するカラムに注入され、pH6.0から2.0への直線的pH勾配で溶出された。溶出ピーク最大値のpHが、リードアウトとして用いられた。
【
図6】アフィニティリガンド配列番号51のDBC10%決定。ベリムマブが、10%の標的ブレークスルーまで、固定されたアフィニティリガンド配列番号51(図の「ID51」)を有する樹脂にロードされた。ベリムマブの溶出は、pH4.8で実施され、その後、pH1.7でCIPを実施した。クロマトグラムは、pH4.8で結合されたベリムマブの完全な溶出を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明が、以下に詳細に記載される前に、本明細書に記載された個々の方法論、プロトコル及び試薬は、変動し得るため、本発明がこれらに限定されないことが、理解されなければならない。同じく、本明細書で用いられた技術が個々の態様を記載することのみを目的としていて、本発明の範囲を限定せず、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定され得ることが、理解されなければならない。他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語が、本発明が属する技術分野の当業者により慣例的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0027】
好ましくは本明細書で用いられる用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)”,Leuenberger,H.G.W,Nagel,b.and Kolbl,H.eds.(1995),Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerlandに提供された定義と一致している。
【0028】
以下の本明細書及び特許請求の範囲全体で、他に文脈で要求されない限り、言語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる」などの変形例は、述べられた部材、整数若しくはステップ、又は部材、整数若しくはステップの群の包含を示唆し、任意の他の部材、整数若しくはステップ、又は手段、整数若しくはステップの群の除外を示唆しないことが、理解されよう。
【0029】
本発明の記載及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈で他に明確に示されない限り、互換的に用いられ、複数形も含むものとし、それぞれの意味に含まれるものとする。同じく本明細書で用いられる「及び/又は」は、列挙された項目の1つ又は複数のあらゆる可能な組み合わせと、代わり(「又は」)で解釈される場合には組み合わせの欠如をいい、それを包含する。
【0030】
本明細書で用いられる用語「約」は、明確に列挙された量及びそれから±10%の偏差を包含する。より好ましくは5%の偏差が、用語「約」により包含される。
【0031】
複数の文献(例えば、特許、特許出願、科学文献、製造業者の仕様書ほか)が、本明細書の本文を通して引用される。本明細書内のいずれも、先行の発明によってそのような開示を以前の日付にする権利を本発明が与えないことの承認と解釈されてはならない。本明細書で引用された文献の幾つかは、「参照により取り込まれる」ことを特徴とする。そのような取り込まれた参照の定義又は技術と、本明細書に列挙された定義又は技術の間に矛盾がある場合、本明細書の本文が優先する。
【0032】
本明細書で参照される全ての配列は、全ての内容及び開示と共に本明細書の一部である添付の配列表に開示される。
【0033】
本発明の文脈において、用語「Ig結合タンパク質」又は「免疫グロブリン結合タンパク質」は、免疫グロブリンに特異的に結合することが可能なタンパク質を記載するために用いられる。さらに、本発明の文脈において、用語「Ig結合ドメイン」又は「免疫グロブリン結合ドメイン」は、免疫グロブリンに特異的に結合することが可能なタンパク質を記載するために用いられる。本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、本明細書では時には本発明のリガンドと称される。本明細書で理解される「免疫グロブリン」又は「Ig」は、例えばヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG4、マウスIgG、ラットIgG、ヤギIgG、ウシIgG、モルモットIgG、ウサギIgGなどの哺乳動物IgG;ヒトIgM、ヒトIgA;並びにFc領域(「Fc断片」又は「Fc」とも称される)を含む免疫グロブリン断片、及び/又はFab領域(「Fab断片」又は「Fab」とも称される)を含む免疫グロブリン断片を包含し得るが、必ずしもこれらに限定されない。Ig結合タンパク質は、免疫グロブリン全体に、そしてFc領域を含むIg断片及び/又はFab領域を含むIg断片に結合することが可能である。本明細書で理解される定義「免疫グロブリン」は、免疫グロブリンを含む融合タンパク質、Fc領域を含む免疫グロブリンの断片(Fc断片)、Fab領域を含む免疫グロブリンの断片(Fab断片)、Fc領域を含む免疫グロブリンの断片を含む融合タンパク質、Fab領域を含む免疫グロブリンの断片を含む融合タンパク質、Ig又はFc領域を含むIg断片(Fc断片)を含むコンジュゲート、及びFab領域を含むIg断片(Fab断片)を含むコンジュゲートを包含する。
【0034】
当業者に察知される通り、用語「免疫グロブリン」及び「抗体」は、本明細書では互換的に用いられ得る。したがって用語「免疫グロブリン」に関係して本明細書で開示された任意の定義が、用語「抗体」に適用される。
【0035】
本発明による用語「結合」は、好ましくは特異的結合に関する。「特異的結合」は、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインが別の非免疫グロブリンターゲットへの結合に比較して特異的である免疫グロブリンにより強力に結合することを意味する。
【0036】
用語「結合活性」は、免疫グロブリンに結合する本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの能力をいう。例えば結合活性は、アルカリ処理の前及び/又は後に決定され得る。用語(免疫グロブリン)「結合活性」及び「結合容量」は、本明細書では互換的に用いられ得る。結合活性は、Ig結合タンパク質について、又はマトリックスに連結されたIg結合タンパク質について、即ち固定されたIg結合タンパク質について決定され得る。同じく結合活性は、Ig結合ドメインについて、又はマトリックスに連結されたIg結合ドメインについて、即ち固定されたIg結合ドメインについて決定され得る。用語「人工」は、天然由来でない物体をいい、即ち該用語は、ヒトにより生成又は修飾された物体をいう。例えば人により(例えば、遺伝子操作による、シャトリング法による、又は化学反応による、などで実験室において)作製された、又は意図的に修飾されたポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は、人工である。
【0037】
用語「解離定数」又は「KD」は、特異的結合親和性を定義する。本明細書で用いられる用語「KD」(通常は「mol/L」で、時には「M」と略されて測定される)は、第一のタンパク質と第二のタンパク質の個々の相互作用の解離平衡定数をいうものとする。本発明の文脈では、用語KDは、特にIg結合タンパク質又はIg結合ドメインと免疫グロブリンとの結合親和性を記載するために用いられる。本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、少なくとも500nM以下、又は好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM以下、より好ましくは10nM以下の免疫グロブリンに対する解離定数KDを有するなら、免疫グロブリンに結合すると見なされる。
【0038】
用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、ペプチド結合によりつなげられた2つ以上のアミノ酸の任意の直線状分子鎖をいい、生成物の具体的長さに言及しない。したがって「ペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」又は2つ以上のアミノ酸の鎖をいうために用いられる任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、又はそれと互換的に用いられ得る。用語「ポリペプチド」はまた、非限定的にグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、タンパク質分解、切断、非天然由来アミノ酸による修飾、及び当該技術分野で周知の類似の修飾をはじめとし、ポリペプチドの翻訳後修飾の生成物をいうものとする。したがって、2つ以上のタンパク質ドメインを含むIg結合タンパク質も、用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」の定義に該当する。
【0039】
用語「アルカリ安定性のある」又は「アルカリ安定性」又は「苛性安定性のある」又は「苛性安定性」(本明細書では「cs」とも略される)は、本明細書では互換的に用いられ得、免疫グロブリンに結合する能力を著しく損失することなく、アルカリ条件に耐える、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの能力をいう場合がある。この分野の当業者は、例えば実施例に記載される通り、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを、例えば水酸化ナトリウム溶液、と共にインキュベートし、続いて当業者に知られる日常的実験により、例えばクロマトグラフィーアプローチにより、免疫グロブリンへの結合容量又は結合活性をテストすることにより、アルカリ安定性を容易にテストすることができる。アルカリ安定性は、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを表面プラズモン共鳴(SPR)センサーチップに連結させること、並びにアルカリ溶液への暴露前及び後に免疫グロブリンへの結合容量又は結合活性をアッセイすること、により決定されてもよい。アルカリ処理は、例えば0.5M NaOH中で長期間、例えば少なくとも20時間、実施され得る。
【0040】
本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメイン、及び本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを含むマトリックスは、「上昇された」又は「改善された」アルカリ安定性を呈し、つまり前記Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを組み込んだ分子及びマトリックスは、参照に比べてアルカリ条件下で長期間、安定している。様々な態様において、該参照は、配列番号1~3の任意の1つの配列、好ましくは配列番号3の配列(cs26 43C)を有する親分子cs26であってもよい。様々な他の態様において、該参照は、置換D8E(Asp8Glu)を有する配列番号1~3のいずれかの親分子cs26、好ましくは置換D8E(Asp8Glu)を有する配列番号3の親分子cs26であってもよい。
【0041】
本明細書で用いられる用語「バリアント」は、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失又は挿入により別のアミノ酸配列と異なるIg結合タンパク質又はIg結合ドメインのアミノ酸配列を包含する。これらの修飾は、人により実行された遺伝子操作により、又は化学合成若しくは化学反応により、作製されてもよい。
【0042】
本明細書で用いられる用語「コンジュゲート」は、第二のタンパク質又は非タンパク質部分など他の物質に化学的に付着された少なくとも1つの第一のタンパク質を含む、又はそれから本質的になる分子に関する。
【0043】
用語「修飾」又は「アミノ酸修飾」は、別のアミノ酸による、ポリペプチド配列内の特定の位置にあるアミノ酸の交換、欠失、又は挿入をいう。当業者は、公知の遺伝子コード、並びに組換え及び合成DNA技術があれば、アミノ酸バリアントをコードするDNAを即座に構築することができる。
【0044】
用語「置換」又は「アミノ酸置換」は、別のアミノ酸によるポリペプチド配列内の個々の位置でのアミノ酸の交換をいう。用語「欠失」又は「アミノ酸欠失」は、ポリペプチド配列内の個々の位置でのアミノ酸の除去をいう。
【0045】
用語「挿入」又は「アミノ酸挿入」は、ポリペプチド配列へのアミノ酸の付加をいう。
【0046】
本記載全体を通して、アミノ酸残基の位置番号は、例えば配列番号1の中の、位置番号に対応して称される。
【0047】
用語「アミノ酸配列同一性」は、2つ以上のタンパク質のアミノ酸配列の同一性(又は相違)の定量的比較をいう。参照ポリペプチド配列に比べた「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」又は「パーセント同一の」又は「パーセント同一性」は、最大限のパーセント配列同一性を実現するために、必要に応じて配列をアライメントしてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一である配列内のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。様々な態様において、用語「配列同一性」は、デフォルトギャップ加重を利用したプログラムGAP又はBESTFITなどにより最適にアライメントされた時に、2つの(ヌクレオチド又は)アミノ酸配列が、少なくとも70%の配列同一性、又は少なくとも80%の配列同一性、又は少なくとも85%の配列同一性、又は少なくとも90%の配列同一性、又は少なくとも95%若しくはより多くの配列同一性を共有することを意味する。
【0048】
配列同一性を決定するために、クエリータンパク質の配列がアライメントされて、参照タンパク質の配列に比較される。配列アライメント及び配列比較アルゴリズムのための方法は、当該技術分野で周知である。例えば参照アミノ酸配列に比べた任意ポリペプチドのアミノ酸配列同一性の度合いを決定するために、SIMローカル類似性プログラムが、好ましくは用いられる。多重アライメント解析のために、好ましくは当業者に知られるClustalWが、用いられる。
【0049】
配列同一性の度合いは、一般に未修飾配列の全長に比べて計算される。本明細書で用いられる、2つのポリペプチド配列の文脈の語句「パーセント同一の」又は「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」又は「パーセント同一性」は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いた測定で、又は視覚的検証により、最大対応のための比較及びアライメントされた場合に、幾つかの態様で少なくとも89.5%、幾つかの態様で少なくとも91%、幾つかの態様で少なくとも92%、幾つかの態様で少なくとも93%、幾つかの態様で少なくとも94%、幾つかの態様で少なくとも95%、幾つかの態様で少なくとも96%、幾つかの態様で少なくとも97%、幾つかの態様で少なくとも98%、及び幾つかの態様で少なくとも100%のアミノ酸残基同一性を有する2つ以上の配列又は部分配列をいう。明瞭さの理由で、例えば少なくとも89.5%の同一性を有する配列は、89.5%より高い同一性を有する全ての配列、例えば少なくとも89.6%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸同一性を有する態様を包含する。
【0050】
パーセント同一性は、幾つかの態様において、少なくとも52残基の領域にわたり、幾つかの態様において少なくとも53残基の領域にわたり、幾つかの態様において少なくとも54残基の領域にわたり、幾つかの態様において少なくとも55残基の領域にわたり、幾つかの態様において少なくとも56残基の領域にわたり、幾つかの態様において少なくとも57残基の領域にわたり、幾つかの態様において少なくとも58残基の領域にわたり、存在する。
【0051】
用語「融合された」は、ポリペプチド成分又は単位が直接、若しくはペプチドリンカーを介する、のどちらかでペプチド結合によりつなげられていることを意味する。様々な態様において、用語「融合された」は、ポリペプチド成分又は単位が、例えば化学的コンジュゲーションを通して、非ペプチドリンカーによりつなげられていることを意味し得る。
【0052】
用語「融合タンパク質」は、少なくとも1つの第二のタンパク質に遺伝子的に接続された少なくとも1つの第一のタンパク質を含むタンパク質に関する。融合タンパク質は、元々別のタンパク質をコードした2つ以上の遺伝子の接続を通して作製される。したがって融合タンパク質は、単一の直鎖状ポリペプチドとして発現された同一又は異なるタンパク質のマルチマーを含んでもよい。様々な態様において、融合タンパク質は、例えば化学的コンジュゲーションを通して、非ペプチドリンカーを介した2つ以上のポリペプチドの接続を通して作製される。様々な態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインのダイマーは、「融合タンパク質」と見なされてもよい。
【0053】
本明細書で用いられる用語「リンカー」は、最も広い意味では、少なくとも2つの他の分子を共有結合で接続する分子をいう。本発明の典型的な態様において、「リンカー」は、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを少なくとも1つのさらなるIg結合タンパク質又はIg結合ドメインと連結する部分、即ち、2つのタンパク質ドメインを互いにつないでダイマー又はマルチマーを作製している部分として理解されなければならない。好ましい態様において、「リンカー」は、ペプチドリンカーであり、即ち、2つの結合タンパク質又は結合ドメインをつなぐ部分は、1つの単一アミノ酸又は2つ以上のアミノ酸を含むペプチドになる。様々な態様において、本発明のダイマー又はマルチマーは、2つ以上のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを互いに接続するリンカーを含んでもよい。
【0054】
用語「クロマトグラフィー」は、移動相及び固定相を用いて、試料中の1つの型の分子(例えば、免疫グロブリン)を別の分子(例えば、混入物又は他の免疫グロブリン)から分離する分離技術をいう。液体移動相は、分子の混合物を含有し、これらを、固定相(固体マトリックスなど)を横切って、又は通過して輸送する。移動相の異なる分子と固定相との差別的な相互作用により、移動相中の分子が、分離され得る。
【0055】
用語「アフィニティクロマトグラフィー」は、固定相に連結されたリガンドが移動相(試料)中の分子(即ち、免疫グロブリン)と相互作用する、即ち、該リガンドが精製される分子への特異的な結合親和性又は結合容量を有する、クロマトグラフィーの特異的様式をいう。本発明の文脈で理解される通り、アフィニティクロマトグラフィーは、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインなどのクロマトグラフィーリガンドを含む固定相への、免疫グロブリンを含有する(液体)試料の付加を含む。
【0056】
用語「固体担体」又は「固体マトリックス」は、本明細書では互換的に用いられ、様々な態様において、固定相に用いられる。
【0057】
本明細書で互換的に用いられる用語「アフィニティマトリックス」又は「アフィニティ分離マトリックス」又は「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」は、アフィニティリガンド、例えば本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインが付着されるマトリックス、例えばクロマトグラフィーマトリックスをいう。リガンド(例えば、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメイン)は、混合物(液体試料中)から精製又は除去されるべき該当する分子(例えば、先に定義された免疫グロブリン)に特異的に結合することが可能である。当業者に察知される通り、用語「アフィニティマトリックス」又は「アフィニティ分離マトリックス」又は「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」は、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを用いることによる、該当する分子(詳細には免疫グロブリン)の分離を記載している。したがって用語「アフィニティマトリックス」又は「アフィニティ分離マトリックス」又は「アフィニティクロマトグラフィーマトリックス」又は「分離マトリックス」は、本明細書では互換的に用いられてもよい。
【0058】
本明細書で用いられる用語「アフィニティ精製」は、先に定義された該当する免疫グロブリンを、マトリックスに固定されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインに結合させることにより、液体(試料)から先に定義された該当する免疫グロブリンを精製する方法をいう。それにより、該当する免疫グロブリン以外の混合物の全ての他の成分が、除去される。様々な態様において、混合物の前記他の成分としては、例えば該当しない他の免疫グロブリンを挙げることができる。さらなるステップにおいて、該当する免疫グロブリンは、精製された形態で溶出される。用語「アフィニティ精製」又は「アフィニティクロマトグラフィー精製」又は「アフィニティ分離」又は「アフィニティクロマトグラフィー分離」は、本明細書では互換的に用いられ得る。
【0059】
発明の態様
ここに、本発明をさらに記載する。以下の一節において、本発明の異なる態様が、より詳細に定義される。以下に定義される各態様は、反することが明確に示されない限り、任意の他の態様と組み合わせられてもよい。詳細には、好ましい、又は有利であるとして示された任意の特色が、好ましい又は有利であるとして示された任意の他の特色又は複数の特色と組み合わせられてもよい。
【0060】
本発明は、配列番号1(cs26)に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応するIg結合ドメインを提供し、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)又は芳香族アミノ酸であり、該芳香族アミノ酸は、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)、又はチロシン(Y)であってもよい。好ましくは配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)又はロイシン(L)であり、より好ましくは配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)である。様々な態様において、配列番号1の14位に対応する該アミノ酸は、ヒスチジン(H)であり、そして/又は配列番号1の29位に対応する該アミノ酸は、リシン(K)である。該Ig結合ドメインはさらに、配列番号1の43又は46位に対応する位置にシステイン(C)残基を有してもよい。該Ig結合ドメインは、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間安定している。本明細書の他の箇所に記載される通り、本発明のIg結合タンパク質は、1つ又は複数のそのようなIg結合ドメインを含む。
【0061】
一態様において、該Ig結合タンパク質は、1つ又は複数のドメインを含み、少なくとも1つのドメインは、配列番号1の4、6、又は8位に対応する1つ又は複数のアミノ酸にアミノ酸置換を含み、又はそれから本質的になり、又はそれからなり、配列番号1の4、6、又は8位に対応するアミノ酸の該置換は、Iso(I)、Leu(l)、Tyr(Y)、Phe(F)、Val(V)、又はTrp(W)の群から選択されるアミノ酸であり、該Ig結合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも80%同一である。
【0062】
一態様において、該Igタンパク質は、1つ又は複数のドメインを含み、該少なくとも1つのドメインは、分枝状側鎖を有する高疎水性アミノ酸(Iso、Leu、Val)、又は芳香族アミノ酸(Tyr、Phe、又はTrp)の群から選択される配列番号1の8位に対応するアミノ酸でのアミノ酸置換を含み、該Ig結合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも80%同一である。幾つかの態様において、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、イソロイシン(I)又はチロシン(Y)である。幾つかの好ましい態様において、配列番号1(又は機能的に均等なタンパク質)の8位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)である。様々な態様において、配列番号1の8位に対応する位置のイソロイシン(I)は、該Ig結合容量及び苛性安定性を改善する。さらに、配列番号1(又は機能的に均等なタンパク質)の8位に対応する位置のイソロイシン(I)は、該タンパク質の発現を改善し得る。アフィニティクロマトグラフィーでの使用に適した高い結合容量及び苛性安定性を有する本発明のIg結合リガンドについては、8位のアミノ酸がアルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、又はアラニン(A)の任意の1つから選択されないことが、重要である(
図2参照)。本発明は、配列番号1の8位の置換を越える、そしてD8E(Asp8Glu)の置換を越える改善された苛性安定性を実証する。したがって本発明の様々な態様において、配列番号1の8位に対応する該アミノ酸は、グルタミン酸(E)でない。
【0063】
幾つかの態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、以下の(1)~(3)から選択される:(1)8番目の位置のアミノ酸残基がIle、Leu、Val、又は芳香族アミノ酸により置換されている、配列番号1に対応するアミノ酸配列を含むタンパク質;(2)8番目の位置以外の位置の1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加をさらに有する、(1)に指定されたアミノ酸配列を含むタンパク質;(3)(1)に指定されたアミノ酸配列と少なくとも80%又はより多くの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、但し、8番目の位置の(1)に指定されたアミノ酸置換が(3)でさらに変異されないことを条件とする。
【0064】
本発明はさらに、分枝状側鎖を有する高疎水性アミノ酸(Iso、Leu)又は芳香族アミノ酸(Tyr、Phe、又はTrp)の群から選択される配列番号1の4位に対応する位置にアミノ酸置換を含むIgタンパク質を提供し、該Ig結合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも80%同一である。好ましい態様において、配列番号1の4位に対応するアミノ酸は、トリプトファン(W)又はフェニルアラニン(F)である。配列番号1の4位に対応する位置のW又はFなどの芳香族アミノ酸は、アフィニティクロマトグラフィーのリガンドの結合容量及び苛性安定性を改善する。アフィニティクロマトグラフィーにおける使用に適した高い結合容量及び苛性安定性を有するIg結合リガンドについては、4位のアミノ酸がアルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、アラニン(A)、又はバリン(V)から選択されないことが、重要である(
図3参照)。
【0065】
幾つかの態様において、本発明のタンパク質は、以下の(1)~(3)から選択される:(1)4位に対応するアミノ酸残基がIle、Leu、又は芳香族アミノ酸により置換されている、配列番号1に対応するアミノ酸配列を含むタンパク質;(2)4位以外の位置の1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加をさらに有する、(1)に指定されたアミノ酸配列を含むタンパク質;(3)(1)に指定されたアミノ酸配列と少なくとも80%又はより多くの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、但し、4番目の位置の(1)に指定されたアミノ酸置換が(3)でさらに変異されないことを条件とする。
【0066】
本発明はさらに、Iso、Leu、Tyr、Phe、又はTrpの群から選択される配列番号1の6位に対応する位置にアミノ酸置換を含むIgタンパク質を提供し、該Ig結合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも80%同一である。好ましい態様において、配列番号1の6位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)、トリプトファン(W)、又はチロシン(Y)、又はロイシン(L)である。配列番号1の6位に対応する位置のTrp(W)若しくはTyr(Y)などの芳香族アミノ酸、又はIso(I)若しくはLeu(l)から選択されるアミノ酸は、アフィニティクロマトグラフィーのリガンドの結合容量及び苛性安定性を改善する。アフィニティクロマトグラフィーにおける使用に適した高い結合容量及び苛性安定性を有するIg結合リガンドについては、6位のアミノ酸がバリン(V)、セリン(S)、又はアラニン(A)から選択されないことが、重要である(
図4参照)。
【0067】
幾つかの態様において、本発明のタンパク質は、以下の(1)~(3)から選択される:(1)6位に対応するアミノ酸残基がIle、Leu、又は芳香族アミノ酸により置換されている、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質;(2)6位以外の位置の1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換及び/又は付加をさらに有する、(1)に指定されたアミノ酸配列を含むタンパク質;(3)(1)に指定されたアミノ酸配列と少なくとも80%又はより多くの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、但し、6番目の位置の(1)に指定されたアミノ酸置換が(3)でさらに変異されないことを条件とする。
【0068】
本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインの驚くべき利点が、Ig結合特性を損失することのない、高pH(pH13以上)などの極端な条件の下での安定性である。本明細書に記載されたIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、Ig結合特性を損なうことなく長期間のアルカリ安定性を実証する(
図2、3、4及び実施例参照)。さらにそれらは、Ig結合特性を有意に損失することなく低pHで安定している。アルカリ安定性の特色は、例えばマトリックスが複数回用いられるように、マトリックス上の混入物を除去するために高いNaOH濃度のアルカリ溶液を用いた浄化手順を含むクロマトグラフィーアプローチにとって特に重要である。Ig結合タンパク質は、高い苛性安定性に加え、実施例に示される通り高い連結効率を示す。
【0069】
さらに、アフィニティクロマトグラフィーにおける重要なステップは、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインに結合される該当するタンパク質、詳細には該当する免疫グロブリンの溶出である。このステップは通常、低pHで実行される。本発明のアフィニティリガンドは、この処置の後にIgへの結合特性を損失せず、一方で該当するタンパク質の溶出は、低pHで可能である。
【0070】
一部の状況では、pH4.3以上など3.7より高く、例えばpH5.5までの間のアフィニティリガンドからの抗体(免疫グロブリン)の溶出のための条件を有することが、重要である。本発明のリガンドの特徴を改善するために、さらなる修飾が、先に記載されたリガンドに施され得る。幾つかの態様において、配列番号1の10、14、16、17、18、又は28位に対応する1つ又は複数のアミノ酸(複数可)は、ヒスチジン(H)、又はアスパラギン酸塩(D)若しくはグルタミン酸塩(E)から選択される酸性アミノ酸の群から選択される。幾つかの態様において、配列番号1の14位に対応するアミノ酸は、Hである。幾つかの態様において、配列番号1の16位に対応するアミノ酸は、Hである。他の態様において、配列番号1の28位に対応するアミノ酸は、Hである。幾つかの態様において、配列番号1の28位に対応するアミノ酸は、Eである。他の態様において、配列番号1の9位に対応するアミノ酸は、Hである。幾つかの態様において、配列番号1の10位に対応するアミノ酸は、Hである。配列番号1の10、14、16、17、18、又は28位に対応する位置にHis(H)、Asp(D)、又はGlu(E)を有する本発明のリガンドは、Fc結合親和性を弱めて、4.0、又はpH4.3より高くpH5.5までのpHで、該当する結合されたIgタンパク質の溶出を可能にする。
【0071】
驚くべきことに、配列番号1の14位に対応する位置のヒスチジン(H)、又は配列番号1の16位に対応する位置のヒスチジン(H)を含む本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインが、弱いpH条件(pH5.5まで)での固定されたリガンドからの該当するIg分子の溶出に特に適することが、見出された(表3参照)。この特色は、溶出ステップがpH3.7より高い弱酸性条件で、詳細にはpH4.0からpH5.5以下の範囲内で、実行されなければならない、分離マトリックスを用いた免疫グロブリン、詳細にはFc領域を有するIgを単離するのに特に有用である。
【0072】
幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインは、以下の(1)~(3)から選択される:(1)8番目の位置に対応するアミノ酸残基がIle、Leu、Val、又は芳香族アミノ酸である、配列番号1に対応するアミノ酸配列を含むタンパク質;(2)10番目、14番目、16番目、17番目、18番目、又は28番目の位置に対応するアミノ酸残基がHis、Asp、又はGluであり、好ましくは14位に対応するアミノ酸がHisであるか、16位に対応するアミノ酸がHisであるか、10位に対応するアミノ酸がAsp若しくはHisであるか、17位に対応するアミノ酸がHisであるか、18位に対応するアミノ酸がGluであるか、又は28位に対応するアミノ酸がHis若しくはGluであり、より好ましくは14位に対応するアミノ酸がHisである、(1)に指定されたアミノ酸配列を含むタンパク質;(3)(1)に指定されたアミノ酸配列と少なくとも80%又はより多くの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、但し、8番目の位置に対応する(1)に指定されたアミノ酸及び10番目、14番目、16番目、17番目、18番目、又は28番目の位置に対応する(2)のアミノ酸が(3)でさらに変異されないことを条件とする。
【0073】
さらなる修飾は、アフィニティクロマトグラフィーのための特定の特性を修飾するためにタンパク質に導入され得る。例えばシステインは、C末端に付加され得る。あるいはシステインは、マトリックスへの効率的連結を可能にするためにタンパク質のヘリックス3の中の位置に、例えば43位又は46位に導入され得る。
【0074】
別の態様において、Igの結合を低下させるため(Fab-VH3結合を排除することによる)、そしてより高いpH値での溶出特性を改善するために、29位に対応する位置が交換されていてもよい。幾つかの態様において、配列番号1の29位に対応するアミノ酸は、Lys(K)である。幾つかの態様において、本発明の得られたリガンドは、配列番号1に対して少なくとも80%の同一性を有する。
【0075】
幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインは、以下の(1)~(3)から選択される:
(1)8番目の位置に対応するアミノ酸残基がIle、Leu、Val、又は芳香族アミノ酸である、配列番号1に対応するアミノ酸配列を含むタンパク質;
(2)10番目、14番目、16番目、17番目、18番目、又は28番目の位置に対応するアミノ酸残基がHis、Asp、又はGluであり、好ましくは14位に対応するアミノ酸がHisであるか、16位に対応するアミノ酸がHisであるか、10位に対応するアミノ酸がAsp若しくはHisであるか、17位に対応するアミノ酸がHisであるか、18位に対応するアミノ酸がGluであるか、又は28位に対応するアミノ酸がHis若しくはGluであり、より好ましくは14位に対応するアミノ酸がHisである、(1)に指定されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(3)29番目の位置に対応するアミノ酸残基がLysである、(1)に指定されたアミノ酸配列を含むタンパク質;
(4)(1)に指定されたアミノ酸配列と少なくとも80%又はより多くの配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質、但し、(1)、(2)、及び(3)に指定されたアミノ酸が(4)でさらに変異されないことを条件とする。
【0076】
好ましいIg結合ドメイン
様々な態様において、該Ig結合ドメインは、配列番号4~36及び40~49のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも89.5%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸を含む、又はそれからなる。様々な態様において、該Ig結合ドメインは、配列番号4~36及び40~49のいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号4~36及び40~49のいずれかに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸を含む、又はそれから本質的になる、又はそれからなる。
【0077】
好ましいIg結合タンパク質
幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質は、1つ又は複数のドメインを含み、少なくとも1つのドメインは、配列番号4~36及び40~49のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも89.5%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸を含む、又はそれからなる。幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質は、1つ又は複数のドメインを含み、少なくとも1つのドメインは、配列番号4~36及び40~49のいずれかのアミノ酸配列、又は配列番号4~36及び40~49のいずれかに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸を含む、又はそれから本質的になる、又はそれからなる。
【0078】
免疫グロブリンへの親和性
本明細書に記載された全てのIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、好ましくは200nM未満の、又は100nM未満の、より好ましくは10nM以下の解離定数KDで免疫グロブリンに結合する。幾つかの態様において、該Igタンパク質又はIg結合ドメインは、好ましくは200nM未満の、又は100nM未満の、より好ましくは10nM以下の解離定数KDでIgG1、IgG2、IgG4、IgM、IgA、Ig断片、Fc断片、Fab断片、Ig領域を含む融合タンパク質、及びIg領域を含むコンジュゲートに結合する。Ig結合タンパク質又はドメインの結合親和性又は結合容量を決定するため、即ち解離定数KDを決定するための方法は、当業者に知られており、例えば当該技術分野で知られる以下の方法から、選択され得る:表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく技術、結合平衡除外法(KinExAアッセイ)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、酵素免疫測定法(ELISA)、フローサイトメトリー、等量滴定熱測定(ITC)、分析超遠心分離、放射免疫測定法(RIA又はIRMA)及び増感化学発光(ECL)。該方法の幾つかは、実施例にさらに記載される。典型的には解離定数KDは、20℃、25℃、又は30℃で決定される。他に具体的に示されなければ、本明細書に列挙されたKD値は、表面プラズモン共鳴分光法により22℃±3℃で決定される。一態様において、該Ig結合タンパク質は、0.1nM~100nMの間、好ましくは0.1nM~50nMの間の範囲の、ヒトIgG1に対する解離定数KDを有する。
【0079】
Ig結合タンパク質の高いアルカリ安定性
本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、驚くべきことに、高い動的結合容量(DBC)に加え、実施例及び図面に示される通り、特に良好なアルカリ安定性を提供する。該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性は、Ig結合活性の損失を比較することにより決定される。幾つかの態様において、該アルカリ液は、0.1~1.0MのNaOH又はKOH、好ましくは0.25~0.5MのNaOH又はKOHを含む。本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインの高いアルカリ安定性により、13より高いpHのアルカリ液が、固定された本発明のIg結合タンパク質又は固定された本発明のIg結合ドメインを有するアフィニティマトリックスを浄化するために用いられ得る。幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性は、0.5M NaOH中での少なくとも20時間のインキュベーションの後にIg結合活性の損失を比較することにより決定される(
図2、
図3、
図4及び実施例参照)。幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性は、アルカリ溶液中での非常に長いインキュベーション、例えば0.5M NaOH中での少なくとも2日間(少なくとも48時間)のインキュベーションの後にIg結合活性の損失を比較し(実施例参照)、本明細書に記載されたIg結合タンパク質の並外れた安定性を反映させることにより、決定される。
【0080】
本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、アルカリ条件下で、詳細には0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間安定している。様々な態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、アルカリ条件下で、詳細には0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも24時間安定している。好ましい態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、アルカリ条件下で、詳細には0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも48時間、より好ましくは少なくとも50時間、安定している。
【0081】
本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、免疫グロブリンのためのアルカリ安定性リガンドである。本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、0.5M NaOHへの少なくとも20時間の暴露の後に、免疫グロブリンのための結合容量(又は結合親和性)を保持する。本明細書にさらに記載される通り、本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、本明細書に記載されたアルカリ条件への暴露の後に、免疫グロブリンのための少なくとも85%又は少なくとも90%の結合容量を保持する。さらに好ましい態様において、本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、アルカリ条件へ(0.5M NaOHへの少なくとも20又は24時間)の暴露の後に、好ましくは0.5M NaOHへの少なくとも48時間の暴露後、より好ましくは0.5M NaOHへの少なくとも50時間の暴露後に、免疫グロブリンのための少なくとも94%の結合容量を保持する。様々な態様において、本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、固体担体に、好ましくはアフィニティ分離マトリックスの固体担体に固定された場合、先に記載された通り免疫グロブリンのための結合容量を保持する。
【0082】
本明細書にさらに記載される通り、本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインは、典型的には室温のアルカリ条件下で安定している。室温という用語は、15℃~25℃の間の温度、より具体的には20℃~25℃の間の温度を包含し得る。様々な態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、22℃±3℃のアルカリ条件下で安定している。
【0083】
様々な態様において、先に記載されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性は、固体担体に、好ましくはアフィニティ分離マトリックスの固体担体に固定されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性を意味する。こうして様々な態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性は、固体担体に、好ましくはアフィニティ分離マトリックスの固体担体に固定された場合のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインのIg結合活性又はIg結合容量の損失を比較することにより決定される。こうして他の態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのアルカリ安定性は、固体担体に固定された場合の長時間のアルカリ処理の後に、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのIg結合活性を参照タンパク質に比較することにより決定される(
図2、3、4参照)。
【0084】
本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの免疫グロブリンのための結合容量又は結合親和性は、当該技術で周知の方法、詳細には本明細書の他の箇所に記載される解離定数KDを決定するための方法を利用して当業者により評価され得る。様々な態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの免疫グロブリンのための結合容量又は結合親和性は、同じく本明細書の他の箇所に記載される通り、表面プラズモン共鳴(SPR)分光法を利用して決定される。他の態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの免疫グロブリンのための結合容量又は結合親和性は、本明細書の他の箇所に記載される通り、結合平衡除外法(KinExAアッセイ)又は酵素免疫測定法(ELISA)を用いて決定される。
【0085】
本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの免疫グロブリンのための結合容量又は結合親和性は、本明細書に記載されたアルカリ条件への暴露の前及び後に、各候補リガンドについて評定され得る。
【0086】
マルチマー
一態様において、該Ig結合タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つの互いにつなげられたIg結合ドメインを含み、即ちIg結合タンパク質は、例えばモノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、ペンタマー、又はヘキサマーであり得る。マルチマーは、2つ、3つ、4つ、又はより多くの結合ドメインを含んでもよい。本発明のマルチマーは、一般には当業者に周知の組換えDNA技術により、人工的に作製された融合タンパク質である。
【0087】
幾つかの態様において、該マルチマーは、ホモマルチマーであり、例えばIg結合タンパク質のIg結合ドメインの全てのアミノ酸配列が、同一である。幾つかの態様において、該マルチマーは、ヘテロマルチマーであり、例えば少なくとも1つのIg結合ドメインが、Ig結合タンパク質内の他のIg結合ドメインと異なるアミノ酸配列を有する。
【0088】
マルチマーは、2つ以上のIg結合ドメインを含んでいてもよく、前記Ig結合ドメインは、好ましくは先に記載されたアミノ酸配列を含む、又はそれから本質的になる。幾つかの態様において、該マルチマーは、ダイマーである。本発明は、配列番号4~36及び40~49のいずれかのモノマーを含むダイマーを提供する。様々な態様において、本発明のIg結合タンパク質は、2つのIg結合ドメインを含むダイマーであり、該2つのIg結合ドメインのそれぞれは、配列番号4~36及び40~49のいずれか1つに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、該ダイマーIg結合タンパク質は、アルカリ条件下で安定している。好ましい態様において、本発明のIg結合タンパク質は、2つのIg結合ドメインを含むダイマーであり、該2つのIg結合ドメインのそれぞれは、配列番号4~9、20~36及び40~49のいずれか1つに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、配列番号4~9、20~36及び40~49の8位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)又はロイシン(L)又はバリン(V)又は芳香族アミノ酸(Y、F、又はW)であり、該ダイマーIg結合タンパク質は、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間安定している。より好ましい態様において、本発明のダイマーIg結合タンパク質は、配列番号4~5、20~36及び40~49のいずれか1つに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応するIg結合ドメインを含み、配列番号4~5、20~36及び40~49の8位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)であり、該ダイマーIg結合タンパク質は、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間安定している。より好ましい態様において、本発明のダイマーIg結合タンパク質は、配列番号4~5、20~36及び40~49のいずれか1つに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応するIg結合ドメインを含み、配列番号4~5、20~36及び40~49の8位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)であり、該ダイマーIg結合タンパク質は、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間安定しており、該ダイマーIg結合タンパク質は、少なくとも4.0のpHという穏やかな溶出条件下で標的の溶出を可能にする。様々な態様において、2つのIg結合ドメインを含むダイマーのN末端Ig結合ドメインは、それぞれ配列番号1又は配列番号4~36及び40~49のいずれかの43又は46位に対応する位置のシステイン(C)を有する。
【0089】
さらなる好ましい態様において、本発明のIg結合タンパク質は、2つのIg結合ドメインを含み、一方のIg結合ドメインは、配列番号4に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、他方のIg結合ドメインは、配列番号5に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応する。好ましくは配列番号5に基づくドメインは、配列番号4に基づくドメインの上流に配置される。さらなる特に好ましい態様において、本発明のIg結合タンパク質は、2つのIg結合ドメインを含み、一方のIg結合ドメインは、配列番号43に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応し、他方のIg結合ドメインは、配列番号46に対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するIg結合タンパク質に対応する。好ましくは配列番号46に基づくドメインは、配列番号43に基づくドメインの上流に配置される。
【0090】
幾つかの具体的態様において、該Ig結合タンパク質は、配列番号37、配列番号50、又は配列番号51の配列を含むダイマーである。
【0091】
リンカー
様々な態様において、該1つ又は複数のIg結合ドメインは、互いに直接つなげられている。他の態様において、該1つ又は複数のIg結合ドメインは、1つ又は複数のリンカーにより互いにつなげられている。これらの典型的態様において好ましいのは、ペプチドリンカーである。これは、ペプチドリンカーが1つ又は複数のアミノ酸、例えば第一のIg結合ドメインを第二のIg結合ドメインと連結させるアミノ酸配列であることを意味する。該ペプチドリンカーは、第一のIg結合ドメイン及び第二のIg結合ドメインに、ドメインのC末端とN末端の間のペプチド結合により連結され、それにより単一の直鎖状ポリペプチド鎖を作製する。リンカーの長さ及び組成は、アミノ酸を少なくとも1つ、そして約30までの間で変動し得る。より具体的にはペプチドリンカーは、1~30アミノ酸の間、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30アミノ酸の長さを有する。ペプチドリンカーのアミノ酸配列が苛性条件及びプロテアーゼに対して安定していることが、好ましい。リンカーは、Ig結合タンパク質中のドメインの立体配座を不安定にしてはならない。グリシン及びセリンなどの小さなアミノ酸を含む、又はそれからなるリンカーは、周知である。リンカーは、グリシンリッチであり得る(例えば、リンカー内の残基の50%より多くがグリシン残基であり得る)。同じく好ましいのは、さらなるアミノ酸を含むリンカーである。本発明の他の態様は、アラニン、プロリン、及びセリンからなるリンカーを含む。タンパク質の融合のための他のリンカーが、当該技術分野で知られており、用いられ得る。幾つかの態様において、Ig結合タンパク質のマルチマーは、Ig結合ドメインを連結する1つ又は複数のリンカーを含み、該リンカーは、同一又は異なる。
【0092】
非Ig結合タンパク質
幾つかの態様において、先に記載されたIg結合タンパク質はさらに、開示されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインと全く異なる少なくとも1つのさらなるポリペプチドを含む。様々な態様において、本明細書に開示されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインと全く異なるさらなるポリペプチドは、非Ig結合タンパク質、例えば非限定的に免疫グロブリンのFc部分に結合しないタンパク質であってもよい。したがって幾つかの態様は、本明細書に開示されたその1つ又は2つ又はより多くのIg結合タンパク質(複数可)と、1つ又は2つ又はより多くの非Ig結合ポリペプチド(複数可)と、を含む融合タンパク質を包含する。幾つかの態様において、融合タンパク質は、1つ(又はより多くの)非Ig結合タンパク質(複数可)に融合された本明細書に開示された1つ(又はより多くの)Ig結合タンパク質(複数可)及び/又は1つ(又はより多くの)Ig結合ドメイン(複数可)を含んでもよい。
【0093】
幾つかの態様において、非Ig結合タンパク質は、配列番号38又は配列番号39に対して少なくとも89.5%、又は少なくとも91%、又は少なくとも93%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも98%又は100%の同一性を有する。配列番号39は、非Ig結合タンパク質である。配列番号39は、配列番号1と同じ塩基性足場を有するが、配列番号1内に修飾D8I、F13D、Y14K、I31R、l42Aを有し、それらが配列番号39の非Ig結合特性に導く。8位のイソロイシンへの修飾は、非Ig結合タンパク質中の高い安定性、例えばアルカリ条件下での高い安定性などの改善された生化学的特性をもたらす。したがって8位に対応する位置のイソロイシンは、機能(即ち、Ig結合タンパク質又は非Ig結合タンパク質)にかかわらず、配列番号1内に存在する類似の三重らせん構造を有するタンパク質のより高い安定性をもたらす。したがって本発明はさらに、1つ又は複数のドメインを含むタンパク質を含み、少なくとも1つのドメインは、配列番号1(cs26)に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有するタンパク質に対応し、配列番号1の8位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)である。幾つかの態様において、該タンパク質は、1つ又は複数のドメインを含み、少なくとも1つのドメインは、配列番号1(cs26)に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有するタンパク質に対応し、配列番号1の8位に対応するアミノ酸は、イソロイシン(I)であり、アルカリ条件下で安定している。
【0094】
上記にしたがって、本発明は、配列番号1に対して少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも89.5%の同一性を有するアミノ酸配列を含む非免疫グロブリン(Ig)結合タンパク質を提供し、該非Ig結合タンパク質は、
(i)配列番号1の8位に対応する位置の、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)又は芳香族アミノ酸(Tyr、Phe、又はTrp)の任意の1つ、好ましくはイソロイシン(I)、ロイシン(L)、又は芳香族アミノ酸(Y、F、W)の任意の1つ、より好ましくはイソロイシン(I)又はロイシン(L)、より好ましくはイソロイシン(I)から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号1の13位に対応する位置のアスパラギン酸塩(D);
(iii)配列番号1の14位に対応する位置のリシン(K)又はセリン(S);
(iv)配列番号1の31位に対応する位置のアルギニン(R);及び
(v)配列番号1の42位に対応する位置のアラニン(A)又はロイシン(L)、
を含む。幾つかの態様において、該非Ig結合タンパク質は、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間、安定している。
【0095】
本発明はさらに、配列番号38又は配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも89.5%、又は少なくとも91%、又は少なくとも93%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも98%又は100%の配列同一性を有する非Ig結合タンパク質を提供し、該非Ig結合タンパク質は、
(i)配列番号38又は39の8位に対応する位置の、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、バリン(V)又は芳香族アミノ酸(Tyr、Phe、又はTrp)の任意の1つ、好ましくはイソロイシン(I)、ロイシン(L)、又は芳香族アミノ酸(Y、F、W)の任意の1つ、より好ましくはイソロイシン(I)又はロイシン(L)、より好ましくはイソロイシン(I)から選択されるアミノ酸;
(ii)配列番号38又は39の13位に対応する位置のアスパラギン酸塩(D);
(iii)配列番号38又は39の14位に対応する位置のリシン(K)又はセリン(S);
(iv)配列番号38又は39の31位に対応する位置のアルギニン(R);及び
(v)配列番号38又は39の42位に対応する位置のアラニン(A)又はロイシン(L)、
を含む。幾つかの態様において、該非Ig結合タンパク質は、0.5M NaOHのアルカリ条件下で少なくとも20時間、安定している。
【0096】
アフィニティ分離マトリックス
別の態様において、本発明は、これまでの態様のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを含むアフィニティ分離マトリックスを対象とする。
【0097】
好ましい態様において、該アフィニティ分離マトリックスは、固体担体である。該アフィニティ分離マトリックスは、先に記載された少なくとも1つのIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを含む。
【0098】
アフィニティマトリックスは、免疫グロブリンの分離に有用であり、浄化工程の間に適用される高いアルカリ条件の後であっても、該Ig結合特性を保持しなければならない。マトリックスのそのような浄化は、マトリックスの長期反復使用にとって肝要である。
【0099】
アフィニティクロマトグラフィーのための固体担体マトリックスは、当該技術分野で知られており、例えばアガロース及びアガロースの安定化誘導体(例えば、Praesto(登録商標)Pure、Praesto(登録商標)Jetted A50、Mabselect(登録商標)、PrismA(登録商標)、セファロース6B、CaptivA(登録商標)、rPROTEIN A セファロースFast Flowほか)、セルロース又はセルロース誘導体、制御された多孔質ガラス(controlled pore glass)(例えば、ProSep(登録商標)vA樹脂)、モノリス(例えば、CIM(登録商標)モノリス)、シリカ、酸化ジルコニウム(例えば、CMジルコニア又はCPG(登録商標))、酸化チタン、又は合成ポリマー(例えば、Poros 50A又はPoros MabCapture(登録商標)A樹脂などのポリスチレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、単分散ポリアクリレート樹脂(例えば、UniMab(商標)、UniMab(商標)Pro)、ポリアクリル酸ヒドロキシアルキル、ポリメタクリル酸ヒドロキシアルキル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドほか)、及び様々な組成物のヒドロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。特定の態様において、該担体は、多糖などのポリヒドロキシポリマーを含む。担体に適した多糖の例としては、寒天、アガロース、デキストラン、デンプン、セルロース、プルランほか、及びこれらの安定化バリアントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
固体担体マトリックスの形式は、任意の適切な周知の種類であり得る。本明細書に記載されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを連結するためのそのような固体担体マトリックスは、例えば以下のものの1つを含み得る:カラム、キャピラリー、粒子、膜、フィルター、モノリス、繊維、パッド、ゲル、スライド、プレート、カセット、又はクロマトグラフィーで慣例的に用いられて当業者に知られる任意の他の形式。
【0101】
一態様において、該マトリックスは、ビーズ、例えばセファロース又はアガロースビーズ又は単分散ポリアクリレートビーズとしても知られる実質的に球形の粒子で構成される。適切な粒子サイズは、10~100μmなど、20~80μmなど、40~70μmなど、5~500μmの径範囲内であってもよい。粒子形態のマトリックスが、充填層として、又は膨張層を含む懸濁形態で用いられ得る。
【0102】
代わりの態様において、該固体担体マトリックスは、膜、例えばヒドロゲル膜である。幾つかの態様において、該アフィニティ精製は、一態様のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインが共有結合されたマトリックスとしての膜を含む。固体担体はまた、カートリッジ内の膜の形態であり得る。
【0103】
幾つかの態様において、該アフィニティ精製は、一態様のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインが共有結合された固体担体マトリックスを含有するクロマトグラフィーカラムを含む。
【0104】
固体担体への固定
本発明の態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインは、固体担体にコンジュゲートされる。本発明の幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインは、N及び/又はC末端に追加的アミノ酸残基を含んでもよい。本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、従来の連結技術を介して適切な固体担体マトリックスに付着されてもよい。固体担体へのタンパク質リガンドの固定のための方法は、この分野で周知であり、標準的技術及び器具を用いてこの分野の当業者により容易に実施される。幾つかの態様において、該連結は、例えば複数のリシンを介した、マルチポイントカップリング(multipoint coupling)、又は例えばシステインを介した、シングルポイントカップリング(single point coupling)であってもよい。
【0105】
幾つかの態様において、該アルカリ安定性Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインは、固相(マトリックス)への共有結合での付着のための付着部位を含む。部位特異的付着部位は、固相の反応基、又は固相と該タンパク質の間のリンカーとの特異的化学反応を可能にするシステイン又はリシンなどの天然アミノ酸を含む。
【0106】
幾つかの態様において、該付着部位は、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのC又はN末端に直接であってもよい。幾つかの態様において、単一のシステインが、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインの部位特異的固定のためにC末端に配置される。C末端システインを有することの利点は、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインの連結がシステインチオールと担体上の求電子基の反応を通して実現されて、チオエーテル架橋の連結をもたらし得ることである。これは、連結されたタンパク質の優れた可動性を提供して、結合容量の増加を提供する。
【0107】
他の態様において、該付着部位は、例えば配列番号1の43位又は46位に対応する位置の、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインの三番目のヘリックスの中に配置されてもよい。
【0108】
他の態様において、N又はC末端と付着部位の間にリンカーが存在してもよい。本発明の幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインは、末端システインと共に、3~20アミノ酸、好ましくは4~10アミノ酸のN又はC末端アミノ酸配列を含んでもよい。末端付着部位のためのアミノ酸は、プロリン、グリシン、アラニン、及びセリンの群から選択されて、連結のためにC末端に単一のシステインを有してもよい。
【0109】
本発明の幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインはまた、N及び/若しくはC末端に追加的アミノ酸残基、例えばN末端のリーダー配列、及び/又はN若しくはC末端にタグを有する、若しくは有さない連結配列を含んでもよい。
【0110】
Ig結合タンパク質の使用
一態様において、本発明は、免疫グロブリン又はそのバリアントのアフィニティ精製のための、一態様のIg結合タンパク質若しくはIg結合ドメイン、又は一態様のアフィニティマトリックスの使用を対象とし、即ち、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーに使用される。幾つかの態様において、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインは、本発明の一態様に記載された通り固体担体に固定される。
【0111】
免疫グロブリンのアフィニティ精製の方法
一態様において、本発明は、免疫グロブリンのアフィニティ精製の方法を対象とし、該方法は、以下のステップ:
(a)IgG1、IgG2、IgG4、IgM、IgA、Ig断片、Fc断片、又はFab断片(先に定義された通り融合タンパク質又はコンジュゲートを含む)などのIgを含有する液体(試料)を提供するステップと;
(b)アフィニティ分離マトリックスに固定された、先に記載された固定Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを含む前記アフィニティ分離マトリックスを提供するステップと;
(c)Igへの、先に記載された少なくとも1つのIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの結合を可能にする条件下で、前記液体を前記アフィニティ分離マトリックスと接触させるステップと;
(d)前記マトリックスから前記Igを溶出し、それにより前記Igを含有する溶離液を得るステップと、
を含む。
【0112】
幾つかの態様において、アフィニティ精製の該方法はさらに、アフィニティ分離マトリックスからそれに非特異的に結合された一部又は全ての分子を除去するのに十分な条件下で、ステップ(c)と(d)の間で実行された1つ又は複数の洗浄ステップを含んでもよい。非特異的結合は、少なくとも1つのIg結合タンパク質又はIg結合ドメインとIgの間の相互作用を含まない任意の結合を意味する。
【0113】
開示された使用及び方法に適したアフィニティ分離マトリックスは、先に記載されていて、当業者に知られた態様によるそれらのマトリックスである。
【0114】
幾つかの態様において、ステップ(d)におけるIg結合タンパク質又はIg結合ドメイン(を含むマトリックス)からの免疫グロブリンの溶出は、pHの変化及び/又は塩濃度の変化を通して実行される。一般に、アフィニティ精製の方法を実施するための適切な条件は、当業者に周知である。幾つかの態様において、開示されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを含むアフィニティ精製の開示された使用又は方法は、3.7以上のpH(例えば、約pH4.0、約pH4.5、約pH5.0、又は約pH5.5)でIg含有タンパク質の少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%の溶出を提供し得る。本発明のIg結合タンパク質及びIg結合ドメインの高い安定性により、pH3.7以上の溶液が、Igタンパク質の溶出に用いられ得る(実施例参照)。
【0115】
幾つかの態様において、アフィニティ精製の方法のステップ(d)において、Ig配列を含むタンパク質(例えば、抗体)の95%より多くが、先に記載された通りの固定されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを含むマトリックスからpH3.7以上(約pH5.5まで)で溶出される。幾つかの態様において、該アフィニティマトリックスの効率的浄化のためのさらなるステップ(e)が、好ましくは、例えば13~14のpHの、アルカリ液を用いることにより、添加される。特定の態様において、該浄化液は、0.1~1.0M NaOH又はKOH、好ましくは0.25~0.5M NaOH又はKOHを含む。本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの高いアルカリ安定性により、そのような強アルカリ溶液が、浄化目的で用いられ得る。アフィニティ精製マトリックスをアルカリ浄化液で浄化した後、幾つかの態様において、Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインの少なくとも88%が、0.5M NaOHで少なくとも48時間インキュベートされた場合にIg結合活性を有する。幾つかの態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインのIg結合容量は、例えば0.5M NaOH中での少なくとも20時間のインキュベーションの後に残存するIg結合容量により決定される通り、アルカリ条件下でのインキュベーション前のIg結合容量の少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は100%である。
【0116】
本発明はさらに、(a)免疫グロブリンを含む液体試料を、複数のIg結合タンパク質又はIg結合ドメイン(固体担体に連結された)を含む分離マトリックスと接触させるステップと;(b)該分離マトリックスをpH3.7より高い(5.5までの)pHの洗浄液で洗浄するステップと;(c)分離マトリックスから該免疫グロブリンを溶出するステップと;(d)該免疫グロブリンを得るステップと、を含む、免疫グロブリンを単離する方法を提供する。
【0117】
核酸分子
一態様において、本発明は、先に開示されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインをコードする核酸分子、好ましくは単離された核酸分子を対象とする。一態様において、本発明は、核酸分子を含むベクターを対象とする。ベクターは、宿主細胞に情報をコードするタンパク質を移行させるために用いられ得る任意の分子又は物体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ、又はウイルス)を意味する。一態様において、該ベクターは、発現ベクターである。
【0118】
一態様において、本発明は、先に開示された核酸又はベクターを含む発現系、例えば原核宿主細胞、例えば大腸菌、又は真核宿主、例えば酵母サッカロマイセス・セレビシエ又はピキア・パストリス又はCHO細胞などの哺乳動物細胞を対象とする。
【0119】
Ig結合タンパク質の生成のための方法
一態様において、本発明は、本発明のIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの生成のための方法であって、(a)前記Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを得るために該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインの発現のための適切な条件下で一態様の宿主細胞を培養するステップと;(b)場合により、前記Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを単離するステップと、を含む、方法を対象とする。原核又は真核宿主を培養するための適切な条件は、当業者に周知である。
【0120】
本発明のIg結合分子は、平易な有機合成方策、固相の支援による合成技術又は市販の自動合成装置によるなど、多くの従来の技術及び周知の技術のいずれかにより調製されてもよい。その一方でそれらはまた、従来の組換え技術のみにより、又は従来の合成技術と組み合わせて、調製されてもよい。
【0121】
本発明の一態様は、先に詳述された本発明によるIg結合タンパク質又はIg結合ドメインの調製のための方法を対象とし、前記方法は、以下のステップ:(a)先に定義されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインをコードする核酸を調製するステップと;(b)前記核酸を発現ベクターに導入するステップと;(c)前記発現ベクターを宿主細胞に導入するステップと;(d)該宿主細胞を培養するステップと;(e)Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインが発現される培養条件下に該宿主細胞を供ステップと、それにより(e)先に記載されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを生成するステップと;(f)場合により、ステップ(e)で生成されたIg結合タンパク質又はIg結合ドメインを単離するステップと;(g)場合により、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインを先に記載された固体マトリックスにコンジュゲートするステップと、を含む。本発明のさらなる態様において、該Ig結合タンパク質又はIg結合ドメインの生成は、無細胞インビトロ転写/翻訳により実施される。
【実施例】
【0122】
以下の実施例は、本発明のさらなる例示のために提供される。しかし本発明は、それに限定されず、以下の実施例は単に、上記を基にして本発明の実行可能性を示している。
【0123】
実施例1.本発明のIg結合タンパク質の作製
修飾は、個々のアミノ酸残基の部位飽和突然変異により配列番号1(cs26)に導入された。以下の交換:8I、8F、8Y、8W、8L、8V、6I、6Y、6W、6L、4I、4F、4W、4Y、4Lが、アフィニティクロマトグラフィーにおける特性のために導入及び分析され;43位は、マトリックスへの連結のためにC(システイン)に交換された。
【0124】
実施例2.Ig結合タンパク質の発現
BL21(DE3)コンピテント細胞が、Ig結合タンパク質(例えば、203524及び203550)をコードした発現プラスミドで形質転換された。細胞が選択寒天プレート(カナマイシン)に播種され、21℃で2日間又は37℃で一晩のどちらかでインキュベートされた。前培養物が、50μg/mlカナマイシンを補充された50ml 2xYT培地中の単一コロニーから接種され、250mL三角フラスコ内で、従来のオービタルシェーカを用いて210rpmにて37℃で17時間培養された。OD600のリードアウトは、3.5~6の範囲内でなければならない。主な培養物が、1L肉厚三角フラスコ内で50μg/mlカナマイシン及び微量元素(Studier 2005参照)を補充された300mlスーパーリッチ培地(2%グルコース、5%酵母エキス、0.89%グリセロール、0.76%ラクトース、250mM MOPS、202mM TRIS、10mM MgSO4、pH7.4、消泡剤SE15からなる改変H15培地)中の、開始OD600を0.3に調製された先の一夜培養物から接種された。培養物を低周波共振音響ミキサー(RAMbio)に移して、37℃及び20×gでインキュベートされた。エアレーションが、Oxy-Pumpストッパーにより容易に行われた。組換えタンパク質発現が、グルコースを代謝すること、そして続いてラクトースを細胞に進入させることにより誘導された。細胞が一晩、およそ18時間成育され、最終的なOD600が約35~55に達した。回収前にOD600が測定され、0.6/OD600に調整された試料が取り出されてペレット化され、-20で凍結された。バイオマスを回収するために、細胞が20℃及び12000×gで20分間遠心分離された。ペレットが計量された(湿重量)。細胞は、処理の前に-20℃で貯蔵された。
【0125】
実施例3:Ig結合タンパク質の発現及び溶解度のSDS-PAGE分析
試料を90μlの抽出緩衝液(0.2mg/mlリゾチーム、0.5x BugBuster、6mM MgSO4、6mM MgCl2、15U/mL Benzonaseを補充されたPBS)に再懸濁されて、Thermomixer内で850rpm、室温での15分間撹拌、続く-80℃での15分間インキュベートにより可溶化された。解凍した後、可溶性タンパク質が、遠心分離(16000×g、2分間、室温)により不溶性タンパク質から分離された。上清が取り出され(可溶性画分)、ペレット(不溶性画分)が同量の尿素緩衝液(8M尿素、0.2M Tris、20mM EDTA、pH7.0)に再懸濁された。35μlが可溶性画分及び不溶性画分の両方から採取されて、10μlの5×試料緩衝液及び5μlの0.5M DTTが添加された。試料が95℃で5分間煮沸された。最後に、それらの試料の5μlがNuPage Novex 4~12% Bis-Tris SDSゲルに導入され、製造業者の推奨にしたがって泳動されて、クーマシーで染色された。結果:高レベルの発現が、選択された期間内に最適化条件下で見出された。発現されたIg結合タンパク質は全て、SDS-PAGEにしたがって100%可溶性であった。
【0126】
実施例4:Ig結合タンパク質の精製
Ig結合タンパク質が、大腸菌の可溶性画分で発現された。細胞が細胞破壊緩衝液に再懸濁されて、超音波細胞破壊システム(Sonopuls HD2200、Bandelin)により溶解された。精製ステップが、AKTAvantシステム(Ge Healthcare)を用いたIEC Sepharose SP-HP(GE Healthcare)により、製造業者の使用説明書に従って、pH3.0のクエン酸緩衝液(20mMクエン酸、1mM EDTA、pH3.0)を用いて実施された。10カラム容量での直線勾配で塩化ナトリウム濃度を1Mに上昇させることにより、純粋なタンパク質画分が溶出された。クエン酸緩衝液pH6.0(20mMクエン酸、150mM NaCl、1mM EDTA、pH6.0)を用いて、製造業者の使用説明書にしたがったサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex75)により、さらなる(Furth)精製が実施された。結果:バリアント8I及び6Lの純度は、SE-HPLCの後は95%より高く、RP-HPLCの後は90%より高かった。
【0127】
実施例5:Ig結合タンパク質は高い親和性でIgGに結合する(SPR)
CM5センサーチップ(Ge Healthcare)が、表面プラズモン共鳴(SPR)ランニング緩衝液と平衡にされた。EDCとNHSの混合物を通過させて反応性エステル基を産することにより、表面が露出したカルボン酸基が活性化された。700~1500RUオンリガンドがフローセルに固定され、オフリガンドが別のフローセルに固定された。リガンド固定後のエタノールアミンの注射で、非共有結合のIg結合タンパク質が除去される。リガンド結合により、タンパク質の分析物が表面に蓄積されて、屈折率が上昇した。屈折率のこの変化が、実時間で測定され、応答又は共鳴単位(RU)として時間に対してプロットされた。分析物が、適切な流速(μl/分)で系列希釈のチップに導入された。各ランの後に、チップ表面が再生緩衝液で再生されて、ランニング緩衝液で平衡にされた。対照試料が、マトリックスに導入された。再生及び再平衡化が、先に述べられた通り実施された。結合試験が、25℃でのBiacore(登録商標)3000(GE Healthcare)の使用により実行され;データ評価が、Langmuir 1:1モデル(RI=0)の使用により、製造業者に提供されたBIAevaluation 3.0ソフトウエアを介して操作された。評価された解離定数(KD)は、表1のセツキシマブ(IgG1)、ナタリズマブ(IgG4)、及びパニツムマブ(IgG2)のIg結合タンパク質のオフターゲット及びKD値に対して標準化された。
【0128】
【0129】
実施例6.アガロースを基にしたクロマトグラフィービーズPraesto(商標)Pure85に連結されたIg結合タンパク質 - 連結効率、DBC10%、溶出
DBS10%:精製されたIg結合タンパク質が、製造業者の使用説明書にしたがってアガロースを基にしたクロマトグラフィービーズ(Praesto(商標)Pure85、Purolite;Cat.No.PR01265-164)に連結された(連結条件:pH9.5、3時間、35℃、4.1M NaSO4、エタノールアミンで一晩ブロッキング)。連結された樹脂が、Super Compact5/50カラム(Gotec GmbH)に充填された。ポリクローナルヒトIgG Gammanorm(登録商標)(Ocatpharm)が、IgG試料(濃度2.2mg/ml)として用いられた。ポリクローナルhIgG試料が、固定されたIg結合タンパク質を含むマトリックスに飽和量で導入された。結果:バリアント8I(203550)は、親バリアント(203447)への比較でわずかに増加されたDBC10%を示す。
【0130】
マトリックスからの免疫グロブリンの溶出:マトリックスが、100mM酢酸緩衝液、pH3.7で洗浄され、その後、0.1Mリン酸、pH1.7で洗浄されて、固定されたIg結合タンパク質に結合されたhIgG(ロード:2.2mg/mL Gammanorm、滞留時間6分) を溶出した。結果:親分子が固定された場合の96%に比較して、テストされた全てのバリアントについては、抗体の99%より多くが溶出された(例えば、D8I、D6L);表2参照。
【0131】
実施例7.エポキシ活性化マトリックスに連結されたIg結合タンパク質のアルカリ安定性
カラムが、0.5M NaOHと共に室温(22℃±3℃)で0時間及び20時間インキュベートされた。固定されたタンパク質のIg結合活性が、0.5M NaOHとのインキュベーション後に分析された。結果が、
図2、
図3及び
図4に示される。固定された25mg/mlバリアント6L(203524)及び8I(203550)並びに対照を有するPraesto85エポキシ樹脂が、0.5M NaOHと共に室温(22℃±3℃)で50時間インキュベートされた。結果:強アルカリ溶液中で2日より長く経た後であっても、バリアント8I及び6Lは、それぞれ94.4%及び88.5%の、Igへの残存結合容量を示した。50時間のアルカリ処理の後の残存Ig結合容量は、親物質(配列番号3の苛性安定性Ig結合タンパク質;CID203447)(83%の、Igへの残存結合容量)に比較して改善されている。表2の結果を参照されたい。
【0132】
【0133】
実施例8.固定されたリガンドからのhIgGの溶出
pH勾配での溶出pHの決定。PBS pH7.3中の1mg/ml hIgG(Gammanorm)が、カラムに注入された;接触時間:6分。カラムが、0.1Mクエン酸塩pH6.0で洗浄された。固定されたリガンドに結合されたhIgGが、pH6.0-2.0のpH勾配形態を介して溶出された。溶出された主な画分のpHが、決定された(ピーク最大値)。cs26でのピーク最大値pH3.7に比較して、全てのバリアントがpH4.2及びpH5.2の範囲内でピーク最大値を示すことが、表3で示される。
【0134】
【0135】
高pH(pH4.5)での溶出。マトリックスが50mM酢酸緩衝液、pH4.5で洗浄され、その後、100mM酢酸で洗浄されて、固定されたアフィニティリガンド(バリアント)に結合されたhIgG(ロード:2.2mg/mL Gammanorm、滞留時間6分)を溶出した。全てのリガンドがpH4.5でcs26に比較してより有意に高いパーセンテージの回収抗体を示すことが、表4で示される。
【0136】
【0137】
実施例9:IgGのアフィニティ精製のリガンドとしての配列番号51の特徴づけ
実験は、異なる手順がここで言及されない限り、先に記載された通り実施された。
【0138】
純度:配列番号51のアフィニティリガンドの純度が、RP HPLC後に100%であった。タンパク質が、220nm吸収により検出された。
【0139】
hIgG1への親和性:アフィニティリガンド配列番号51の分析のために、モノクローナル抗体セツキシマブ(IgG1)及びベリムマブ(IgG1)が、標的として用いられた。IgGセツキシマブのための配列番号51のKDは、40.8nMであり、IgG1ベリムマブでは47.4nMであった。
【0140】
結合容量:結合容量が、IgG1試料で決定された。滞留時間6分で10%の標的ブレークスルーまで、抗体がアフィニティリガンド配列番号51に連結された樹脂に注入された。ロードされた抗体が定量され、動的結合容量DBC10%として計算された。cs26に比較した2.2mg/mlベリムマブでの滞留時間6分でのDBC10%は、cs26に比較して104.1%であった。
【0141】
苛性安定性:19.6mg/ml 配列番号51が固定された(pH=10.5及び2.05MのNa2SO4で連結)Praesto85エポキシ樹脂が、0.5M NaOHと共に室温(22℃±3℃)で24時間インキュベートされた。強アルカリ溶液中での24時間後であっても、配列番号51は、Igへの結合容量の低減を示さなかった(99%)。
【0142】
溶出pH:ピーク最大値の溶出pHが、先に記載された通り決定された。配列番号51は、cs26(pH3.5)に比較してGammanorm及びベリムマブで高い溶出pH(pH5.0)を示した。表5参照。
【0143】
【0144】
段階的溶出:段階的溶出が、pH4.8での標的溶出について分析された。リガンド(配列番号51)からの標的(Gammanorm又はベリムマブ)の残存溶出が、pH1.7の100mMリン酸CIPの後に分析された(回収)。標的タンパク質が、pH4.8で配列番号51のリガンドからほぼ完全に溶出された。表6参照。
【0145】
【配列表】