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特許7606788多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法
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  • 特許-多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20241219BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G08G3/02 A
G09B29/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024017734
(22)【出願日】2024-02-08
(65)【公開番号】P2024113679
(43)【公開日】2024-08-22
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】202310089893.0
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515352847
【氏名又は名称】大連海事大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】呂 紅光
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】傅 春達
(72)【発明者】
【氏名】郭 士▲イー▼
(72)【発明者】
【氏名】張 国慶
(72)【発明者】
【氏名】張 顕庫
(72)【発明者】
【氏名】尹 勇
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-146778(JP,A)
【文献】特開2000-099750(JP,A)
【文献】特開平9-230933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得ることと、
障害物を多角形で表現し、前記多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築することと、
パラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整することと、
異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得ることと、を含み、
前記の障害物を多角形で表現し、前記多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築するというステップは、
単一の障害物を表現した多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得ることと、
元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を平滑化することと、
最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得ることと、
異なる距離が外に拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築することと、
を含み、
前記の最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得るというステップは、
偏移してから得られた多角形の頂点を反時計回りに逐次並べることと、
任意の点から初めて、線型補間に従って当該点と次の点の間において所定の距離の間隔で一つの点を追加することと、
多角形の全ての頂点に対してデータ補間を行い、障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得ることと、
を含み、
前記のパラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整するというステップは、
ベクトル電子海図で得られた障害物の属性に従って異なる障害物を分類することと、
ポテンシャル場の影響範囲の臨界点の最大偏移距離を安全距離とし、障害物の危険度に応じて異なる安全距離を設定することと、
を含むことを特徴とする多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【請求項2】
前記の所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得るというステップは、
海域の電子海図を選択し、電子海図中のベクトルデータを処理して水深、陸域及び障害物の精確なデータを得ることと、
電子海図中のデータに存在する共線点を取除くことで電子海図のデータを単純化することと、
障害物を多角形で表現することと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【請求項3】
前記の単一の障害物を表現した多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得るというステップは、
多角形の頂点に応じて多角形を分割して、多角形を構成する一連の線分を得ることと、
多角形を構成する線分とプリセットされた偏移距離に応じて、線分を外向きに偏移させて、偏移した平行な線分を得ることと、
偏移した平行な線分を延長して交差させて偏移した多角形を得ることと、
を含むことを特徴とする請求項に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【請求項4】
前記の元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を平滑化するというステップは、
偏移した線分を延べて交差させる必要がある平行な線分の端点を円弧で接続することと、
円弧を線分で近似して表すことと、
元の線分の延長線を円弧に近似する線分に置き換えることと、
を含むことを特徴とする請求項に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【請求項5】
前記の異なる距離が外拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築するというステップは、
偏移されていない元の多角形領域に対してポテンシャル場値1.0を割り当てることと、
異なる偏移距離を通して得られた多角形領域に対して、偏移距離が大きいほどポテンシャル場値が低くなるという原則に従って値を逐次割り当てることと、
最大偏移距離によって得られた多角形ポテンシャル場値を0.0と割り当ててポテンシャル場の影響範囲の臨界点とすることと、
ポテンシャル場値が異なる多角形区域に対してポテンシャル場値を基準として線補間を行い、障害物のポテンシャル場を構築することと、
を含むことを特徴とする請求項に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【請求項6】
前記の異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得るというステップは、
所定の海域にある全ての障害物に対してポテンシャル場モデルを構築することと、
その中の一点のポテンシャル場値を、異なる障害物のポテンシャル場の当該点におけるポテンシャル場値の合計とすることと、
異なる障害物によって形成されたポテンシャル場を重ね合わせて、最終の障害物のポテンシャル場モデルを形成することと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物衝突回避の技術分野に関し、具体的に言えば、特に多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の衝突回避は、通常、環境モデリングと衝突回避アルゴリズムという2つの部分に分けられる。環境モデリングでは、様々な障害物や到達できる領域を空間的に描写することができ、それの長所と短所が衝突回避アルゴリズムの処理に必要なデータの量と最終的な効果に直接影響する。現在、船舶の衝突回避分野における環境モデリングの研究は、主に障害物を単純にし、つまり障害物を単純な多角形に簡略化する方法を採用することで行われる。例えば、特許文献1(CN114387822A)には、障害物を単純な楕円や六角形等に簡略化し、船舶の回避に必要な領域を格子状にし、到達できる領域と障害物領域を白黒色で区別することが記載されている。特許文献2(CN110196598A)でも同じく、環境マップを格子状にし、その上、安全距離を障害物膨化の方法で定量化するが、膨化した障害物の形状が円形等の単純な多角形となっており、複雑な多角形を処理する能力に欠けている。
【0003】
実際の航行では、船舶はより沢山でより複雑な障害物に直面することになり、既存の環境モデリング方法では障害物を迅速且つ正確に描写し難くなる上に、異なる属性の障害物を区別し兼ねる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第114387822号明細書
【文献】中国特許出願公開第110196598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、既存の環境モデリング方法により障害物を迅速且つ正確に描写し難くなる上に、異なる属性の障害物を区別し兼ねるという技術的問題に鑑みてなされたものであり、障害物を迅速且つ正確に描写できる上に異なる障害物の特性に応じて安全範囲を調整できる環境ポテンシャル場モデルの構築方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的手段は以下のとおりである。
【0007】
本発明の一態様の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法は、
所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得ることと、
障害物の多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築することと、
パラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整することと、
異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得ることと、を含む。
【0008】
更に、所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得るというステップは、具体的に、
海域の電子海図を選択し、電子海図中のベクトルデータを処理して水深、陸域及び障害物の精確なデータを得ることと、
電子海図中のデータを単純化してそれに存在する共線点を取除くことと、
障害物を多角形で表現することと、を含む。
【0009】
更に、障害物の多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築するというステップは、具体的に、
単一の障害物の多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得ることと、
元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を最適化することと、
最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得ることと、
異なる距離が外拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築することと、を含む。
【0010】
更に、単一の障害物の多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得るというステップは、具体的に、
多角形の頂点に応じて多角形を分割して、多角形を構成する一連の線分を得ることと、
多角形を構成する線分とプリセットされた偏移距離に応じて、線分を外向きに偏移させて、偏移した平行な線分を得ることと、
偏移した平行な線分を交差させて偏移した多角形を得ることと、を含む。
【0011】
更に、元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を最適化するというステップは、具体的に、
偏移した線分を延べて交差させる必要がある平行な線分の端点を円弧で接続することと、
円弧を線分で近似して表すことと、
元の線分の延長線を円弧に近似する線分に置き換えることと、を含む。
【0012】
更に、最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得るというステップは、具体的に、
偏移してから得られた多角形の頂点を反時計回りに逐次並べることと、
任意の点から初めて、線性補間に従って当該点と次の点の間において所定の距離の間隔で一つの点を追加することと、
多角形の全ての頂点に対してデータ補間を行い、障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得ることと、を含む。
【0013】
更に、異なる距離が外拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築するというステップは、具体的に、
偏移されていない元の多角形領域に対してポテンシャル場値1.0を割り当てることと、
異なる偏移距離を通して得られた多角形領域に対して、偏移距離が大きいほどポテンシャル場値が低くなるという原則に従って値を逐次割り当てることと、
最大偏移距離によって得られた多角形ポテンシャル場値を0.0と割り当ててポテンシャル場の影響範囲の臨界点とすることと、
ポテンシャル場値が異なる多角形区域に対してポテンシャル場値を基準として線性補間を行い、障害物のポテンシャル場を構築することと、を含む。
【0014】
更に、パラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整するというステップは、具体的に、
ベクトル電子海図で得られた障害物の属性に従って異なる障害物を分類することと、
ポテンシャル場の影響範囲の臨界点の最大偏移距離を安全距離とし、障害物の危険度に応じて異なる安全距離を設定することと、を含む。
【0015】
更に、異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得るというステップは、具体的に、
所定の海域にある全ての障害物に対してポテンシャル場モデルを構築することと、
その中の一点のポテンシャル場値を、異なる障害物のポテンシャル場の当該点におけるポテンシャル場値の合計とすることと、
異なる障害物によって形成されたポテンシャル場を重ね合わせて、最終の障害物のポテンシャル場モデルを形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、従来技術に比べて次の有益な効果を備える。
【0017】
1.本発明によって提供される多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法は、ベクトル電子海図のデータと組み合わせることで、ベクトル電子海図にある大量の精確な障害物についての情報を獲得することができる。
【0018】
2.本発明による多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法は、障害物の多角形に対して外向きに等距離で展開することで障害物のポテンシャル場モデルを迅速且つ精確に構築でき、多角形の偏移後の頂点を平滑化し、離散データを補間する等の操作を採用して構築されたポテンシャル場モデルを元の障害物の形状にさらに近づけることを可能とする。
【0019】
3.本発明による多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法は、ベクトル電子海図にある障害物についての情報に従って、異なる種類の障害物の安全範囲を自動的に調整し、これにより航海の現実にもっと近づくことができ、構築されたモデルが異なる状況での船舶の衝突回避の需要を満たして船舶の航行の安全性を確保できる。
【0020】
本発明は、以上の理由に基づき、船舶の衝突回避の分野への応用を広めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例又は従来技術における技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下、実施例又は従来技術の記述に必要とされる添付の図面を簡単に紹介するが、下記の添付の図面が本発明の一部の実施例であり、当業者であれば、創造的労動を行わずに更にこれらの添付の図面によって他の添付の図面を得るのができることはいうまでもない。
【0022】
図1】本発明に係る方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例に係る多角形外向き等距離外拡がり法の概略図である。
図3】本発明の実施例に係る多角形頂点平滑化の概略図である。
図4】本発明の実施例に係る簡単な障害物のポテンシャル場モデルである。
図5】本発明の実施例に係る複雑な凹多角形のポテンシャル場モデルである。
図6】本発明の実施例に係る障害物のポテンシャル場の異なる影響範囲を示す。
図7】本発明の実施例に係る障害物のポテンシャル場モデルの重ね合わせられた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
相互に違反しない限り、本発明における実施例及び実施例における特徴を互に組み合わせてもよいのを説明する必要がある。以下、図面を参照して実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施例の目的、技術手段及びメリットをより明らかにするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的手段を明らか且つ完全に説明し、説明される実施例が全ての実施例ではなく、本発明の一部の実施例に過ぎないことはいうまでもない。以下の少なくとも1つの例示的実施例に対する説明は実際に説明するためのものに過ぎなく、決して本発明及びその応用や使用に何の制限も加えない。当業者が本発明における実施例に基づいて創造的労動を行うことなく得た他の実施例は、全て本発明が保護する範囲に含まれるものとする。
【0025】
本明細書で使用される技術用語は具体的な実施形態を記述するためのものに過ぎず、本発明による例示的実施形態を限定する意図がないことに注意されたい。例えば、文脈に別に明記しない限り、本明細書で使用される単数形態に複数形態をも含む意図があり、なお、本明細書で技術用語の「含有する」及び/又は「含む」を使用する時に、特徴、工程、操作、デバイス、アセンブリ及び/又はそれらの組合せが存在するのを示すことも理解されたい。
【0026】
別に具体的に説明しない限り、これらの実施例に記載の部材と工程の相対的配置、数式及び数値は本発明の範囲を限定するものではない。また、説明の便宜上、図面に示す各部分のサイズは実際の比例関係に基づいて描かれたものではないことを理解すべきである。当業者に既知の技術、方法及びデバイスについての詳細な検討を省略する場合があるが、適切な場合に、前記技術、方法及びデバイスを受験明細書の一部と見なすべきである。本明細書に示して検討する全ての例において、全ての具体的値は限定するものではなく、例示的なものと解釈すべきである。従って、例示的実施例の他の例は異なる値を有してもよい。類似する符号と文字は下記の図面において類似項目を示すため、ある項目が1つの図面で定義されると、その以降の図面でそれについて更に検討する必要がないことに注意されたい。
【0027】
本発明の記述では、「前、後、上、下、左、右」、「横方向、縱方向、垂直、水平」及び「頂、底」等の方位詞で示す方位又は位置関係は一般に図面に基づいて示す方位又は位置関係であり、その目的はただ本発明を容易に記述し記述を簡単化することにあり、反対に説明しない限り、これらの方位詞は示される装置又は素子が必ず所定の方位を有し又は所定の方位で構成され操作されることを明示、暗示しないため、本発明の保護範囲を限定するものと理解してはならなく、方位詞の「内、外」は各部材自身の輪郭に対する内外を指すことを理解されたい。
【0028】
説明の便宜上、本明細書では、例えば図に示すデバイス又は特徴と他のデバイス又は特徴との空間位置関係を記述するために、例えば、「…の上」、「…の上方」、「…の上面」、「上の」等の空間相対技術用語を用いてよい。空間相対技術用語は、図に記載の方位以外、デバイスの使用又は操作での異なる方位をも含むのを意図することを理解すべきである。例えば、図面におけるデバイスを反対に配置した場合に、「他のデバイス又は構造の上方」又は「他のデバイス又は構造の上」と記述したデバイスはその後で「他のデバイス又は構造の下方」又は「他のデバイス又は構造の下」と位置決めされる。従って、例示的技術用語の「…の上方」は「…の上方」及び「…の下方」といった2種の方位を含むことが可能である。このデバイスを他の異なる方式で位置決めすることもでき(90度回転させ又は他の方位に位置させる)、そしてここで使用する空間相対記載を対応的に解釈する。
【0029】
なお、「第1」、「第2」等の用語を用いて部品を限定する目的は、ただ対応する部品を区別しやすくすることにあり、特に断らない限り、上記用語は特別な意味がないため、本発明の保護範囲を限定するものと理解してはならないことを説明すべきである。
【0030】
図1に示したように、本発明による多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法は、
S1、所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行い、モデル化される環境における障害物の分布を得ることと、
S2、障害物の多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築することと、
S3、パラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整することと、
S4、異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得ることと、を含む。
【0031】
本発明を具体的に実施する場合、それの好ましい実施形態としては、所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得るというステップS1が、次のサブステップを含む。
【0032】
S11、海域の電子海図を選択し、電子海図中のベクトルデータを処理して水深、陸域及び障害物の精確なデータを得る。本実施例では、ベクトル電子海図を環境モデリングのデータソースとして用い、電子海図に対して解析、読み取り及び保存を行う。電子海図ファイル中の特徴オブジェクトを特徴に変換し、空間オブジェクトを特徴に対応する空間幾何対象に変換する。
【0033】
S12、電子海図中のデータを単純化してそれに存在する共線点を取除く。本実施例では、電子海図から海洋環境情報を取得してから、その中の情報を単純化してその中の不要なノードを取り除いてから、障害物を多角形で表現することも必要である。
【0034】
S13、障害物を多角形で表現する。多角形の任意の頂点を起点として反時計回りに線形テーブルに逐次記入し、点情報が線情報になってから、面情報に合成される。
【0035】
本発明を具体的に実施する場合、それの好ましい実施形態としては、障害物の多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築するというステップS2が、次のサブステップを含む。
【0036】
S21、単一の障害物の多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得る。外拡がりは、自動衝突回避と経路計画の分野で緩衝区を構築するための一般的な方法である。等距離外拡がり法は、図2に示したように、障害物の多角形領域の各辺を全て外向きに一定の距離移動して新しい多角形を形成することである。本実施例では、当該ステップが次のサブステップを含む。
【0037】
S211、多角形の頂点に応じて多角形を分割して、多角形を構成する一連の線分を得る。例えば、A(x,y)、B(x,y)の座標がわかっている場合、外拡がり距離がlに設定されると、これらの既知の条件により外拡がった後の点の座標を求解する。求解の方向をAからBに設定する場合、その方向の逆正接値が次のように表される。
【数1】
【0038】
逆正接値から座標点Aの座標変換量(Δx=l×cosα、Δy=l×sinα)を算出して、点Aに対応する2つの外拡がり点の座標値をC(x+Δx,y+Δy)、C(x-Δx,y-Δy)とそれぞれ求解する。座標点Bの計算方法はそれと類似する。
【0039】
S212、多角形を構成する線分とプリセットされた偏移距離に応じて、線分を外向きに偏移させて、偏移した平行な線分を得る。上記の方法によって2本の外拡がった後の線分を得ることができるが、線分同士が交差していない場合や、交差している場合があるため、得られた線分に対して交点処理を行う必要がある。
【0040】
S213、偏移した平行な線分を交差させて偏移した多角形を得る。直線Lの既知の点の座標を(x,y)、(x,y)に設定し、直線Lの既知の点の座標を(x33,y)、(x,y)に設定する場合、それらの直線勾配をそれぞれ算出する。
【数2】
【0041】
2本の直線が平行でない場合、それらの交点座標を次のように算出する。
【数3】
【0042】
上記の式を用いて、外拡がった線分の交点の座標を求解することができる。得られた交点を逐次接続して偏移した後の多角形を得る。
【0043】
S22、元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を最適化する。多角形が外拡がる場合は、2辺の夾角が小さいほど新しく生成された頂点の偏移量が大きくなるため、図3に示したように、頂点が大きく偏移する際に頂点を平滑化して元の多角形に近づける必要がある。このステップは、次のサブステップを含む。
【0044】
S221、偏移した線分を延べて交差させる必要がある平行な線分の端点を円弧で接続する。
【0045】
S222、円弧を線分で近似して表す。
【0046】
S223、元の線分の延長線を円弧に近似する線分に置き換える。
【0047】
S23、最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得る。多角形が外広がって得られた離散データ点が不均一に分布する等の場合、元のデータをポテンシャル場モデルの構築に直接使用すれば、大きな誤差が発生する可能性があり、更なる処理を行う必要がある。このステップは、次のサブステップを含む。
【0048】
S231、偏移してから得られた多角形の頂点を反時計回りに逐次並べる。
【0049】
S232、任意の点から初めて、線性補間に従って当該点と次の点の間において所定の距離の間隔で一つの点を追加する。
【0050】
S233、多角形の全ての頂点に対してデータ補間を行い、障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得る。
【0051】
S24、異なる距離が外拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築する。図4図5に示したように、このステップは次のサブステップを含む。
【0052】
S241、偏移されていない元の多角形領域に対してポテンシャル場値1.0を割り当てる。
【0053】
S242、異なる偏移距離を通して得られた多角形領域に対して、偏移距離が大きいほどポテンシャル場値が低くなるという原則に従って値を逐次割り当てる。
【0054】
S243、最大偏移距離によって得られた多角形ポテンシャル場値を0.0と割り当ててポテンシャル場の影響範囲の臨界点とする。
【0055】
S244、ポテンシャル場値が異なる多角形区域に対してポテンシャル場値を基準として線性補間を行い、障害物のポテンシャル場を構築する。
【0056】
本発明を具体的に実施する場合、それの好ましい実施形態としては、ステップS3において、パラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整する。航行中に危険属性が異なる障害物に遭遇して明礁や小さな島と大きな安全距離を維持する必要があるが、方位浮標等とは大きな安全距離を維持する必要はない場合、図6に示したように、パラメータを設定し、異なる障害物の特性に応じて安全範囲を調整する必要があり、パラメータの設定は航海の実際の状況に準拠する必要がある。上記パラメータを設定し、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整するというステップS3は、次のサブステップを含む。
【0057】
S31、ベクトル電子海図で得られた障害物の属性に従って異なる障害物を分類する。
【0058】
S32、ポテンシャル場の影響範囲の臨界点の最大偏移距離を安全距離とし、障害物の危険度に応じて異なる安全距離を設定する。小さな島や岩礁などの障害物の場合は、障害物のポテンシャル場が緩やかになり影響範囲が広がるが、方位浮標等の障害物の場合は、障害物のポテンシャル場が大幅に変動し影響範囲が小さい。
【0059】
本発明を具体的に実施する場合、それの好ましい実施形態としては、図7に示したように、異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得るというステップS4が、次のサブステップを含む。
【0060】
S41、所定の海域にある全ての障害物に対してポテンシャル場モデルを構築する。
【0061】
S42、その中の一点のポテンシャル場値を、異なる障害物のポテンシャル場の当該点におけるポテンシャル場値の合計とする。
【0062】
S43、異なる障害物よって形成されたポテンシャル場を重ね合わせて、最終の障害物のポテンシャル場モデルを形成する。
【0063】
最後に以下のことを説明すべきである。以上の各実施例は本発明の技術的手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、上述した各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、上述した各実施例に記載の技術的手段を修正するか、その術的特徴の一部又は全部に同等な取り替えを実施することも可能であり、これらの修正や取り替えによって、対応する技術的手段の本質が本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱しないことは当業者に自明である。
【0064】
(付記)
(付記1)
所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得ることと、
障害物の多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築することと、
パラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整することと、
異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得ることと、
を含むことを特徴とする多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0065】
(付記2)
前記の所定の海域の電子海図のデータを取得し、電子海図のデータに対して抽出を行って、モデル化される環境における障害物の分布を得るというステップは、
海域の電子海図を選択し、電子海図中のベクトルデータを処理して水深、陸域及び障害物の精確なデータを得ることと、
電子海図中のデータを単純化してそれに存在する共線点を取除くことと、
障害物を多角形で表現することと、
を含むことを特徴とする付記1に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0066】
(付記3)
前記の障害物の多角形に対してポテンシャル場を等距離外拡がり法で構築するというステップは、
単一の障害物の多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得ることと、
元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を最適化することと、
最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得ることと、
異なる距離が外拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築することと、
を含むことを特徴とする付記1に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0067】
(付記4)
前記の単一の障害物の多角形に対して、等距離偏移アルゴリズムに従って多角形の輪廓を外向きに偏移させて、偏移した多角形を得るというステップは、
多角形の頂点に応じて多角形を分割して、多角形を構成する一連の線分を得ることと、
多角形を構成する線分とプリセットされた偏移距離に応じて、線分を外向きに偏移させて、偏移した平行な線分を得ることと、
偏移した平行な線分を交差させて偏移した多角形を得ることと、
を含むことを特徴とする付記3に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0068】
(付記5)
前記の元の形状に近づくように偏移により得られた多角形の頂点を最適化するというステップは、
偏移した線分を延べて交差させる必要がある平行な線分の端点を円弧で接続することと、
円弧を線分で近似して表すことと、
元の線分の延長線を円弧に近似する線分に置き換えることと、
を含むことを特徴とする付記3に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0069】
(付記6)
前記の最適化された多角形に対して離散データ補間処理を行って障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得るというステップは、
偏移してから得られた多角形の頂点を反時計回りに逐次並べることと、
任意の点から初めて、線性補間に従って当該点と次の点の間において所定の距離の間隔で一つの点を追加することと、
多角形の全ての頂点に対してデータ補間を行い、障害物のポテンシャル場モデルの構築に適するデータを得ることと、
を含むことを特徴とする付記3に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0070】
(付記7)
前記の異なる距離が外拡がって得られた多角形領域に対して、適切なポテンシャル場値を割り当てて障害物のポテンシャル場モデルを構築するというステップは、
偏移されていない元の多角形領域に対してポテンシャル場値1.0を割り当てることと、
異なる偏移距離を通して得られた多角形領域に対して、偏移距離が大きいほどポテンシャル場値が低くなるという原則に従って値を逐次割り当てることと、
最大偏移距離によって得られた多角形ポテンシャル場値を0.0と割り当ててポテンシャル場の影響範囲の臨界点とすることと、
ポテンシャル場値が異なる多角形区域に対してポテンシャル場値を基準として線性補間を行い、障害物のポテンシャル場を構築することと、
を含むことを特徴とする付記3に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0071】
(付記8)
前記のパラメータを設定して、異なる属性を有する障害物の安全範囲を自動的に調整するというステップは、
ベクトル電子海図で得られた障害物の属性に従って異なる障害物を分類することと、
ポテンシャル場の影響範囲の臨界点の最大偏移距離を安全距離とし、障害物の危険度に応じて異なる安全距離を設定することと、
を含むことを特徴とする付記1に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
【0072】
(付記9)
前記の異なる障害物のポテンシャル場モデルを重ね合わせて、完全な障害物のポテンシャル場モデルを得るというステップは、
所定の海域にある全ての障害物に対してポテンシャル場モデルを構築することと、
その中の一点のポテンシャル場値を、異なる障害物のポテンシャル場の当該点におけるポテンシャル場値の合計とすることと、
異なる障害物によって形成されたポテンシャル場を重ね合わせて、最終の障害物のポテンシャル場モデルを形成することと、
を含むことを特徴とする付記1に記載の多角形外向き等距離外拡がり法に基づく環境ポテンシャル場モデルの構築方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7