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特許7606791ポリウレア樹脂組成物製造原料、ポリウレア樹脂組成物、及び塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリウレア樹脂組成物製造原料、ポリウレア樹脂組成物、及び塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/02 20060101AFI20241219BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20241219BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241219BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09D175/02
B05D1/28
B05D7/24 302S
C08G18/09
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024061754
(22)【出願日】2024-04-05
【審査請求日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2023207817
(32)【優先日】2023-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】坂下 昌平
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-026829(JP,A)
【文献】特開2011-001397(JP,A)
【文献】特開平11-130834(JP,A)
【文献】特開2017-206680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0272252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C09D
B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含み、下記条件(1)~(4)を全て満足するポリウレア樹脂組成物製造原料(ただし、ブロック化(ポリ)イソシアネート化合物と1級アミノ基を含むポリアミンとを含むもの、脂環族イソシアネート末端プレポリマー5重量%~80重量%と脂肪族ポリイソシアネート変性体95重量%~20重量%とを含む脂肪族ポリイソシアネート及びアスパラギン酸エステル骨格を有する第2級脂環族ジアミンを含むものを除く)
(1)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の残留粘度が1,500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
(2)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の粘度が1,500mPa・s以上30,000mPa・s以下、かつ混合して30分後の粘度が100,000mPa・s以下である。
(3)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の動粘性係数が1,200m2/s以上30,000m2/s以下である。
(4)ポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーが30mN/m以上63mN/m以下である。
【請求項2】
更に、ポリオール化合物(c)を含む、請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
【請求項3】
更に、塩基性無機化合物、pH調整剤、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、紫外線吸収剤、表面調整剤、消泡剤、チキソトロピー付与剤、着色料、分散剤、充填剤、及び希釈剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
【請求項4】
前記硬化物の抗張積が150N/mm以上である、請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
【請求項5】
前記硬化物は、10%硫酸水溶液に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下である、請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
【請求項6】
前記硬化物は、飽和水酸化カルシウム水溶液に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下である、請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
【請求項7】
厚みが0.7mmである前記硬化物を、コンクリートに積層したときの付着強さが1.5N/mm2以上である、請求項1に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物。
【請求項9】
請求項に記載のポリウレア樹脂組成物を含有する塗料。
【請求項10】
請求項に記載の塗料から得られる塗膜。
【請求項11】
請求項に記載の塗料を塗布する塗装方法であって、前記塗料を塗布する方法が、刷毛塗り、ローラー塗装、又はこて塗りである、塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレア樹脂組成物製造原料、ポリウレア樹脂組成物、及び塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレア樹脂は、各種物性に優れる点から、老朽化した建築物や躯体に対する補強材料、また、地震をはじめとした天災への耐久性を付与する材料として利用されている。
【0003】
ポリウレア樹脂の原料となるポリイソシアネート成分とポリアミン成分は、反応が極めて速いため、ポリウレア樹脂組成物の塗工においては、これら2つの原料を、衝突混合型の吹付装置を用いて混合し、吹付塗工されるのが一般的である。
【0004】
一方、閉鎖空間や複雑形状への塗工などにおいては、吹付装置の利用ができないため、手作業で塗布(以下、「手塗り」ともいう。)することができ、塗面の状態(壁面や湿潤面など)に左右されず、作業性に優れたポリウレア樹脂組成物の開発が望まれている。
【0005】
ポリウレア樹脂組成物を手塗りすることについて、言及している文献としては、例えば、以下の文献が挙げられる。
特許文献1には、固体のポリウレア樹脂原料を特定の可塑剤と有機溶剤によって希釈することで、手塗りが可能になることが記載されている。
特許文献2には、特定構造のイソシアネートプレポリマーと芳香族アミンとを含むウレア樹脂組成物が記載されている。
特許文献3には、特定構造のアスパラギン酸エステル化合物と特定構造のイソシアネート化合物を組み合わせることで、原料の混合直後の粘度が低いポリアスパラティック塗料組成物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5044879号
【文献】特開2009-91414号公報
【文献】特開2022-66853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~3に記載のポリウレア樹脂組成物は、土木建築用途などの広い面積に手塗りで塗工する場合において、十分な硬化時間を有するものではない。
【0008】
また、手塗りによる塗工は、吹付けによる塗工に比べて厚みの調節がしやすく、均一な塗膜を作製しやすいことから、塗膜外観の意匠性ついて、吹付けによる塗工よりも高いレベルが求められている。このような背景から、壁面に塗工した際に液垂れし難く(耐タレ性を有し)、塗工時に泡が消えやすく(塗膜の破泡性に優れる)、外観が良好な塗膜を形成し得るポリウレア樹脂組成物が求められている。また、手塗りに適した硬化時間を有するポリウレア樹脂組成物において、基材(特にコンクリート基材)との密着性に優れる塗膜を形成できるものは開発されていなかった。
【0009】
本発明は、手塗りに適した硬化時間を有し、耐タレ性、及び塗膜の破泡性に優れる塗料を得ることができ、さらに基材との密着性に優れる硬化物を形成できるポリウレア樹脂組成物製造原料、及びポリウレア樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ポリウレア樹脂組成物を用いて手塗りで塗工する場合には、ポリウレア樹脂組成物製造原料を混合して得られるポリウレア樹脂組成物の粘度と可使時間(ポットライフ)を設計するだけでは不十分であり、全ての成分の混合直後における、残留粘度、粘度、及び動粘性係数を特定範囲に調整すると共に、ポリウレア樹脂組成物の硬化物表面の表面自由エネルギーを特定範囲に調整することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
<1> ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含み、下記条件(1)~(4)を全て満足するポリウレア樹脂組成物製造原料。
(1)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の残留粘度が1,500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
(2)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の粘度が1,500mPa・s以上30,000mPa・s以下、かつ混合して30分後の粘度が100,000mPa・s以下である。
(3)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の動粘性係数が1,200m2/s以上30,000m2/s以下である。
(4)ポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーが30mN/m以上63mN/m以下である。
<2> 前記硬化物の抗張積が150N/mm以上である、<1>に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
<3> 前記硬化物は、10%硫酸水溶液に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下である、<1>又は<2>に記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
<4> 前記硬化物は、飽和水酸化カルシウム水溶液に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下である、<1>~<3>のいずれかに記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
<5> 厚みが0.7mmである前記硬化物を、コンクリートに積層したときの付着強さが1.5N/mm2以上である、<1>~<4>のいずれかに記載のポリウレア樹脂組成物製造原料。
<6> <1>~<5>のいずれかに記載のポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物。
<7> <6>に記載のポリウレア樹脂組成物を含有する塗料。
<8> <7>に記載の塗料から得られる塗膜。
<9> <7>に記載の塗料を塗布する塗装方法であって、前記塗料を塗布する方法が、刷毛塗り、ローラー塗装、又はこて塗りである、塗装方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物は、土木建築用途などの広い面積に手塗りで塗工する場合でも十分な硬化時間を有するため、手塗りでの作業性に非常に優れるものである。また、本発明のポリウレア樹脂組成物は、耐タレ性に優れる(液垂れし難い)ため、壁面へ塗工しやすく、厚みの均一性に優れる塗膜を形成することができる。さらに、本発明のポリウレア樹脂組成物は、塗工時に泡が消えやすく破泡性に優れるため、外観に優れる塗膜を形成することができる。さらに、本発明のポリウレア樹脂組成物から得られた硬化物は、基材との密着性、耐水性、耐薬品性、及び物理強度に優れるため、基材を視覚的及び物理的に長期間維持し、保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ポリウレア樹脂組成物製造原料
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含み、下記条件(1)~(4)を全て満足するものである。
(1)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の残留粘度が1,500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
(2)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の粘度が1,500mPa・s以上30,000mPa・s以下、かつ混合して30分後の粘度が100,000mPa・s以下である。
(3)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の動粘性係数が1,200m2/s以上30,000m2/s以下である。
(4)ポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーが30mN/m以上63mN/m以下である。
【0014】
(ポリイソシアネート化合物)
本発明に用いられるポリイソシアネート化合物(a)は、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、その形態は、モノマー、オリゴマー、及びポリマーの何れであってもよい。ポリイソシアネート化合物(a)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、多環式脂肪族ポリイソシアネート、芳香環含有脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及びこれらの誘導体(例えば、前記ポリイソシアネートとポリアミン又はポリオールとを反応させて得られるイソシアネート末端プレポリマー、アロファネート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、及びイソシアヌレート変性体など)が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0015】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、及びトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0016】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニルジイソシアネート、及びこれらのイソシアヌレート体等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0017】
多環式脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,5(6)-ジイソシアネートメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-イソシアネートメチルー5(6)-イソシアネートエチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートプロピルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートブチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートペンチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5(6)-ジイソシアネートエチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5(6)-ジイソシアネートプロピルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5(6)-ジイソシアネートブチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5(6)-ジイソシアネートペンチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5(6)-ジイソシアネートメチルビシクロ[2,2,2]オクタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートエチルビシクロ[2,2,2]オクタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートプロピルビシクロ[2,2,2]オクタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートブチルビシクロ[2,2,2]オクタン、2-イソシアネートメチル-5(6)-イソシアネートペンチルビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5(6)-ジイソシアネートエチルビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5(6)-ジイソシアネートプロピルビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5(6)-ジイソシアネートブチルビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5(6)-ジイソシアネートペンチルビシクロ[2,2,1]オクタン、3(4),8(9)-ジイソシアネートメチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4)-イソシアネートメチル-8(9)-イソシアネートエチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4)-イソシアネートメチル-8(9)-イソシアネートプロピルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4)-イソシアネートメチル-8(9)-イソシアネートブチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4)-イソシアネートメチル-8(9)-イソシアネートペンチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4),8(9)-ジイソシアネートエチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4),8(9)-ジイソシアネートプロピルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4),8(9)-ジイソシアネートブチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4),8(9)-ジイソシアネートペンチルトリシクロ[5,2,1,02,6]デカン、3(4),7(8)-ジイソシアネートメチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4)-イソシアネートメチルー7(8)-イソシアネートエチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4)-イソシアネートメチルー7(8)-イソシアネートプロピルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4)-イソシアネートメチルー7(8)-イソシアネートブチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4)-イソシアネートメチルー7(8)-イソシアネートペンチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4),7(8)-ジイソシアネートエチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4),7(8)-ジイソシアネートプロピルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、3(4),7(8)-ジイソシアネートブチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン、及び3(4),7(8)-ジイソシアネートペンチルビシクロ[4,3,01,6]ノナン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0018】
芳香環含有脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、及びテトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0019】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1-クロロ-2,4-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-メトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、2,2’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、及び4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0020】
ポリイソシアネート化合物(a)は、イソシアネート基含有率が、好ましくは3~45NCO%、より好ましくは5~40NCO%である。ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基含有率を前記範囲内にすることにより、手塗りに適した硬化時間が得られると共に、基材との密着性、耐水性、耐薬品性、及び物理強度に優れる硬化物(塗膜)が得られる。
【0021】
(ポリアミン化合物)
本発明に用いられるポリアミン化合物(b)は、1分子中に2つ以上のアミノ基を有する化合物であり、その形態は、モノマー、オリゴマー、及びポリマーの何れであってもよい。ポリアミン化合物(b)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香環含有脂肪族アミン、脂環式ポリアミン、複素環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、核置換アルキル基を有する芳香族ポリアミン、核置換電子求引基を有する芳香族ポリアミン、第2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン、ポリアミドポリアミン、ポリエーテルポリアミン、シアノエチル化ポリアミン、及びヒドラジン類などが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、アルキレンジアミン〔例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、及びヘキサメチレンジアミンなど〕、ポリアルキレンポリアミン〔例えば、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミンなど〕、これらのアルキル又はヒドロキシアルキル置換体〔例えば、ジアルキルアミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、及びメチルイミノビスプロピルアミンなど〕、テトラエチル=2,2’-[(2-メチルペンタン-1,5-ジイル)ジイミノ]ジスクシナート、テトラエチル=2,2’-{[メチレンビス(シクロヘキサン-4,1-ジイル)]ビス(アザンジイル)}ジスクシナート、及びテトラエチル=2,2’-{[メチレンビス(2-メチルシクロヘキサン-4,1-ジイル)]ビス(アザンジイル)}ジスクシナート等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0023】
芳香環含有脂肪族アミンとしては、例えば、キシリレンジアミン、及びテトラクロル-p-キシリレンジアミン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
脂環式ポリアミンとしては、例えば、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、及び4,4'-メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
複素環式ポリアミンとしては、例えば、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ジアミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0026】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、1,2-、1,3-及び1,4-フェニレンジアミン、2,4'-及び4,4'-ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン[ポリフェニルポリメチレンポリアミン]、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン、2,6-ジアミノピリジン、m-アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン-4,4',4''トリアミン、ナフチレンジアミン、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)、及びポリ(1,4-ブタンジオール)ビス(4-アミノ安息香酸)等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
核置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-及びi-プロピル、ブチルなどのアルキル基)を有する芳香族ポリアミンとしては、例えば、2,4-及び2,6-トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタン、4,4'-ビス(o-トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3-ジメチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジメチル-2,6-ジアミノベンゼン、1,4-ジエチル-2,5-ジアミノベンゼン、1,4-ジイソプロピル-2,5-ジアミノベンゼン、1,4-ジブチル-2,5-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノメシチレン、1,3,5-トリエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1,3,5-トリイソプロピル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン、2,3-ジメチル-1,4-ジアミノナフタレン、2,6-ジメチル-1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジイソプロピル-1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジブチル-1,5-ジアミノナフタレン、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン、3,3',5,5'-テトライソプロピルベンジジン、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラエチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトライソプロピル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラブチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,5-ジエチル-3'-メチル-2',4-ジアミノジフェニルメタン、3,5-ジイソプロピル-3'-メチル-2',4-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジエチル-2,2'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチルジフェニルメタン、3,3',5,5'-テトラエチル-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3',5,5'-テトライソプロピル-4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3',5,5'-テトラエチル-4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3',5,5'-テトライソプロピル-4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
核置換電子求引基(例えば、Cl、Br、I、及びFなどのハロゲン;メトキシ、及びエトキシなどのアルコキシ基;ニトロ基など)を有する芳香族ポリアミンとしては、例えば、メチレンビス-o-クロロアニリン、4-クロロ-o-フェニレンジアミン、2-クロル-1,4-フェニレンジアミン、3,3-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3-アミノ-4-クロロアニリン、4-ブロモ-1,3-フェニレンジアミン、2,5-ジクロル-1,4-フェニレンジアミン、5-ニトロ-1,3-フェニレンジアミン、3-ジメトキシ-4-アミノアニリン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-5,5'-ジブロモ-ジフェニルメタン、3,3'-ジクロロベンジジン、3,3'-ジメトキシベンジジン、ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)オキシド、ビス(4-アミノ-2-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-2-クロロフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-メトキシフェニル)デカン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(4-アミノフェニル)テルリド、ビス(4-アミノフェニル)セレニド、ビス(4-アミノ-3-メトキシフェニル)ジスルフィド、4,4'-メチレンビス(2-ヨードアニリン)、4,4'-メチレンビス(2-ブロモアニリン)、4,4'-メチレンビス(2-フルオロアニリン)、及び4-アミノフェニル-2-クロロアニリン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0029】
第2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン[上記芳香族ポリアミンの-NH2の一部または全部が-NH-R'(R'はアルキル基、例えば、メチル、及びエチルなどの低級アルキル基)で置き換ったもの]としては、例えば、4,4'-ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、及び1-メチル-2-メチルアミノ-4-アミノベンゼン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0030】
ポリアミドポリアミンとしては、例えば、ジカルボン酸とポリアミンとの縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0031】
ポリエーテルポリアミンとしては、例えば、ポリエーテルポリオールのシアノエチル化物の水素化物等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0032】
シアノエチル化ポリアミンとしては、例えば、アクリロニトリルとポリアミン(上記アルキレンジアミン、及びポリアルキレンポリアミンなど)との付加反応により得られるシアノエチル化ポリアミン(例えば、ビスシアノエチルジエチレントリアミン)等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0033】
ヒドラジン類としては、例えば、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジヒドラジド(例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジドなど)、グアニジン(例えば、ブチルグアニジン、1-シアノグアニジンなど)、及びジシアンジアミド等が挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料において、ポリイソシアネート化合物(a)のイソシアネート基と、ポリアミン化合物(b)のアミノ基とのモル比(イソシアネート基/アミノ基)は、0.6~1.5であることが好ましく、0.8~1.2であることがより好ましい。モル比(イソシアネート基/アミノ基)を前記範囲内にすることにより、手塗りに適した硬化時間が得られると共に、基材との密着性、耐水性、耐薬品性、及び物理強度に優れる硬化物(塗膜)が得られる。
【0035】
(ポリオール化合物)
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、更にポリオール化合物(c)を含んでいてもよい。
【0036】
ポリオール化合物(c)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオールなどの2価のアルキルアルコール;グリセリンなどの3価のアルキルアルコール;ジグリセリン、エリスリトール、ソルビトールなどの4価以上のアルキルアルコール;ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオール、アミンのアルキレンオキサイド付加物などのオリゴマー及びポリマー(末端のモノマー成分が脂肪族アルコールであるもの)などが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0037】
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料において、ポリオール化合物(c)の使用量は、後述する条件(1)~(4)を全て満足する範囲内で適宜調整すればよいが、アミノ基とヒドロキシ基の総和に対して、好ましくは50mol%以下となる量であり、より好ましくは20mol%以下となる量である。
【0038】
(触媒)
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、得られる硬化物(塗膜)の物性を向上させたり、可使時間や硬化温度を調節したりするために、触媒を含んでいてもよい。
【0039】
触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、2-ジメチルアミノエチルエーテル、ジアザビシクロウンデセン、N-メチルモルホリンなどの3級アミン;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ラウレート、3-ジアセトキシテトラブチルスタノキサン、オクテン酸錫、塩化錫、三塩化錫ブチル、三塩化ビスマス、オクテン酸ビスマス、テトラキス(2一エチルヘキシル)チタネート、テトラブトキシチタン、アセト酢酸の金属塩などの金属系触媒;テトラメチルアンモニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩;塩酸、硫酸、酢酸、コハク酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸性化合物などが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。触媒の使用量は、後述する条件(1)~(4)を全て満足する範囲内で適宜調整すればよい。
【0040】
(添加剤)
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
【0041】
添加剤としては、例えば、塩基性無機化合物、pH調整剤、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、紫外線吸収剤、表面調整剤、消泡剤、チキソトロピー付与剤、着色料、分散剤、充填剤、希釈剤などが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上併用してもよい。添加剤の使用量は、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0042】
<ポリウレア樹脂組成物製造原料の物性>
(残留粘度)
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、下記条件(1)を満足するものである。
(1)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の残留粘度が1,500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。残留粘度が1,500mPa・s未満の場合には、ポリウレア樹脂組成物製造原料を混合して得られるポリウレア樹脂組成物は、塗工時の破泡性及び耐タレ性に劣るものとなる。一方、残留粘度が20,000mPa・sを超える場合には、ポリウレア樹脂組成物製造原料を混合して得られるポリウレア樹脂組成物は、十分な硬化時間を有するものではなかったり、塗工に必要な力が大きすぎるため、手塗りに不適なものとなる。残留粘度は、手塗りにより適した硬化時間を有するポリウレア樹脂組成物を得る観点、塗工時の破泡性及び耐タレ性に優れるポリウレア樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1,750mPa・s以上17,500mPa・s以下、より好ましくは2,000mPa・s以上15,000mPa・s以下である。本発明において、残留粘度は、下記測定方法により得られる値である。50mL容のガラス製ビーカーに、成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を、全量が15mLになるように加え、薬さじで15秒混合する。そして、B型粘度計を用いて、混合して30秒後の温度25℃における粘度を、回転数を変えて3点測定する。なお、B型粘度計のスピンドルは、粘度が1,000mPa・sを超える場合はLV-4を用い、1,000mPa・s以下の場合はSC4-18を用いる。また、回転数は、0.3rpm、0.6rpm、1.5rpm、3rpm、6rpm、12rpm、30rpm、及び60rpmのうち、B型粘度計の測定上限に近いものから順に3点採用する。回転数とスピンドル形状から、ずり速度D及びずり応力σを求め、x軸をずり速度D、y軸をずり応力σとしてプロットし、最小二乗法によって直線回帰を行って得られる直線の傾きを2乗した値を求め、得られた値を残留粘度η∞(mPa・s)とする。
【0043】
残留粘度を前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)、ポリアミン化合物(b)、及びポリオール化合物(c)の分子量を調節したり、前記化合物に置換基を導入して対称性を調節したり、充填剤、希釈剤、及び粘性付与剤などの添加剤を適量添加すること等が挙げられる。なお、前記化合物に置換基を導入して対称性を調節する場合、一般的に、置換基が嵩高く対称性が崩れるほど残留粘度は低下し、置換基が小さく対称性が高いほど残留粘度は高くなる傾向がある。
【0044】
(粘度)
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、下記条件(2)を満足するものである。
(2)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の粘度が1,500mPa・s以上30,000mPa・s以下、かつ混合して30分後の粘度が100,000mPa・s以下である。混合して30秒後の粘度が1,500mPa・s未満の場合には、ポリウレア樹脂組成物製造原料を混合して得られるポリウレア樹脂組成物は、塗工時の耐タレ性に劣るものとなる。一方、混合して30秒後の粘度が30,000mPa・sを超える場合、及び混合して30分後の粘度が100,000mPa・sを超える場合には、ポリウレア樹脂組成物製造原料を混合して得られるポリウレア樹脂組成物は、十分な硬化時間を有するものではないため、手塗りに不適なものとなる。混合して30秒後の粘度は、手塗りにより適した硬化時間を有するポリウレア樹脂組成物を得る観点、塗工時の耐タレ性に優れるポリウレア樹脂組成物を得る観点から、好ましくは1,750mPa・s以上27,500mPa・s以下、より好ましくは2,000mPa・s以上25,000mPa・s以下である。また、混合して30分後の粘度は、手塗りにより適した硬化時間を有するポリウレア樹脂組成物を得る観点から、好ましくは90,000mPa・s以下、より好ましくは80,000mPa・s以下である。本発明において、混合して30秒後及び30分後の粘度は、下記測定方法により得られる値である。50mL容のガラス製ビーカーに、成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を、全量が15mLになるように加え、薬さじで15秒混合する。そして、B型粘度計を用いて、混合して30秒後及び30分後の温度25℃における粘度を測定する。なお、B型粘度計のスピンドルは、粘度が1,000mPa・sを超える場合はLV-4を用い、1,000mPa・s以下の場合はSC4-18を用いる。
【0045】
混合して30秒後及び30分後の粘度を前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)、ポリアミン化合物(b)、及びポリオール化合物(c)の分子量を調節したり、充填剤、希釈剤、及び粘性付与剤などの添加剤を適量添加すること等が挙げられる。
【0046】
(動粘性係数)
本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、下記条件(3)を満足するものである。
(3)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の動粘性係数が1,200m2/s以上30,000m2/s以下である。混合して30秒後の動粘性係数が1,200m2/s未満の場合には、ポリウレア樹脂組成物製造原料を混合して得られるポリウレア樹脂組成物は、塗工時の破泡性に劣るものとなったり、ポリウレア樹脂組成物から得られる硬化物(塗膜)が、基材との密着性に劣るものとなる。一方、混合して30秒後の動粘性係数が30,000m2/sを超える場合には、ポリウレア樹脂組成物から得られる硬化物(塗膜)が、基材との密着性に劣るものとなったり、均一性に劣るものとなる。混合して30秒後の動粘性係数は、好ましくは1,500m2/s以上27,000m2/s以下である。本発明において、混合して30秒後の動粘性係数は、下記測定方法により得られる値である。50mL容のガラス製ビーカーに、成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を、全量が15mLになるように加え、薬さじで15秒混合する。そして、B型粘度計を用いて、混合して30秒後の温度25℃における粘度η(Pa・s)を測定する。なお、B型粘度計のスピンドルは、粘度が1,000mPa・sを超える場合はLV-4を用い、1,000mPa・s以下の場合はSC4-18を用いる。また、ピクノメーターを用いて、25℃の環境下で、成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を混合した混合物の密度ρ(kg/m3)を求める。そして、下記式により動粘性係数を求める。
動粘性係数ν(m2/s)=η(Pa・s)/ρ(kg/m3
【0047】
混合して30秒後の動粘性係数を前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)、ポリアミン化合物(b)、及びポリオール化合物(c)にハロゲン基等を導入して密度を増加させたり、充填剤、希釈剤、及び粘性付与剤などの添加剤を適量添加すること等が挙げられる。
【0048】
2.ポリウレア樹脂組成物
本発明のポリウレア樹脂組成物は、本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるものである。本発明のポリウレア樹脂組成物は、少なくとも成分(A)と成分(B)とを混合することにより得ることができる。混合方法は公知の方法を採用することができる。また、必要に応じて、ポリオール化合物(c)、触媒、及び添加剤などの他の任意成分を混合してもよい。ポリオール化合物(c)、触媒、及び添加剤などの他の任意成分は、予め成分(A)及び/又は成分(B)に配合してもよく、あるいは成分(A)及び成分(B)と同時に混合してもよい。
【0049】
3.塗料
本発明の塗料は、本発明のポリウレア樹脂組成物を含むものであり、土木建築用途などの広い面積に手塗りで塗工する場合でも十分な硬化時間を有するため、手塗りでの作業性に非常に優れるものである。また、本発明の塗料は、耐タレ性に優れる(液垂れし難い)ため、壁面へ塗工しやすく、厚みの均一性に優れる塗膜を形成することができる。さらに、本発明の塗料は、塗工時に泡が消えやすく破泡性に優れるため、外観に優れる塗膜を形成することができる。
【0050】
4.硬化物
本発明の硬化物(塗膜)は、本発明のポリウレア樹脂組成物を硬化させて得られるものであり、下記の物性を有する。
【0051】
(表面自由エネルギー)
本発明の硬化物は、表面自由エネルギーが30mN/m以上63mN/m以下であり、好ましくは32mN/m以上60mN/m以下である。ポリウレア樹脂組成物製造原料の残留粘度、粘度、動粘性係数が特定範囲であると共に、硬化物の表面自由エネルギーが前記範囲であることにより、硬化物が形成される際の破泡性が向上し、基材との密着性、物理強度、耐水性、及び耐薬品性に優れる硬化物が得られる。本発明において、硬化物の表面自由エネルギーは、下記測定方法により得られる値である。成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を混合した混合物を、厚さ1mm、長さ15cm、幅10cmの金枠に流し込み、25℃で48時間静置してポリウレア樹脂の硬化板を作製する。その後、硬化板の表面自由エネルギーをJIS K 6768:1999(プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法)に基づいて、ぬれ張力測定のための試験用混合液を用いて、温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気で測定する。
【0052】
硬化物の表面自由エネルギーを前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)やポリアミン化合物(b)の極性モノマーの量を調節したり、原料のモノマー又はプレポリマーの分子量を調節したり、充填剤、希釈剤、界面活性剤、及び粘性付与剤などの添加剤を加えたり、アルコールやカルボン酸などのその他の成分を含有させることによって調節することができる。なお、モノマーやその他の成分に極性成分が多いほど、また、モノマー又はプレポリマーの分子量が小さいほど、表面自由エネルギーは高くなる傾向にある。
【0053】
(抗張積)
本発明の硬化物は、基材との密着性に優れる観点から、抗張積が150N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは200N/mm以上である。本発明において、硬化物の抗張積は、下記測定方法により得られる値である。成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を混合した混合物60gを、厚さ1mm、長さ15cm、幅10cmの金枠に流し込み、25℃で48時間静置してポリウレア樹脂の硬化板を作製する。作製した硬化板をダンベル状2号形に打ち抜いて試験片を得る。試験機を用いて、25℃の環境下で試験片の引張強さ(N/mm2)及び破断時伸び(mm)を求め、下記式により抗張積(N/mm)を求める。なお、測定数は5、試験片のつかみ距離は70mm、引張速度は5mm/分にて測定を行う。5回の測定で得られた抗張積の平均値を採用する。
抗張積(N/mm)=引張強さ(N/mm2)×破断時伸び(mm)
【0054】
硬化物の抗張積を前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)やポリアミン化合物(b)の極性モノマーの量を調節したり、原料のモノマー又はプレポリマーの分子量、柔軟成分量、及び側鎖官能基の有無を調節したり、充填剤、希釈剤、界面活性剤、及び粘性付与剤などの添加剤の量を調節したり、アルコールやカルボン酸などのその他の成分を含有させることによって調節すること等が挙げられる。
【0055】
(重量減少率)
本発明の硬化物は、耐水性に優れる観点から、水に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下である。また、本発明の硬化物は、耐薬品性に優れる観点から、10%硫酸水溶液に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下である。また、本発明の硬化物は、耐薬品性に優れる観点から、飽和水酸化カルシウム水溶液に50℃で30日浸漬した後の重量減少率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下である。本発明において、硬化物の重量減少率は、下記測定方法により得られる値である。成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を混合した混合物10gを、厚さ1mm、長さ5cm、幅5cmの金枠に流し込み、25℃で48時間静置して厚さ1mmのポリウレア樹脂の硬化板を作製する。作製した硬化板を、水(50℃)、10%硫酸水溶液(50℃)、又は飽和水酸化カルシウム水溶液(50℃)に30日浸漬する。浸漬後、硬化板を水洗したのち150℃で2時間乾燥させる。そして、下記式により重量減少率を求める。
重量減少率(%)=(浸漬後の硬化板の重量/浸漬前の硬化板の重量)×100
【0056】
硬化物の重量減少率を前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)やポリアミン化合物(b)の極性モノマーの量を調節したり、原料のモノマー又はプレポリマーの分子量、柔軟成分量、側鎖官能基の有無、及び親水性・疎水性のバランスを調節したり、充填剤、希釈剤、界面活性剤、及び粘性付与剤などの添加剤の量を調節すること等が挙げられる。
【0057】
(付着強さ)
本発明の硬化物は、基材との密着性に優れる観点から、厚みが0.7mmである硬化物を、コンクリートに積層したときの付着強さが1.5N/mm2以上であることが好ましく、より好ましくは2.0N/mm2以上である。本発明において、付着強さは、下記測定方法により得られる値である。JIS A 1171:2016(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に記載の「7.4接着強さ試験」に準じて測定する。具体的には、7cm×7cm×2cmのコンクリートブロックを用意する。成分(A)と成分(B)とを含む全ての成分を混合した混合物を、コンクリートブロックの面積49cm2の面に塗布し、25℃で48時間静置して試験片(硬化膜の厚み0.7mm)を作製する。4cm四方の引張り用ジグにエポキシ接着剤を塗布し、試験片のポリウレア塗装面に貼り付けて25℃で24時間静置する。その後、4cm四方のポリウレア塗膜となるようにカッターナイフで引張り用ジグの周囲に切れ込みを入れ、試験片に下部引張り用ジグを鋼製当て板を介して取り付けた。そして、毎分2,000Nの荷重速度で試験片の鉛直方向に載荷して最大荷重を求める。試験片の接着強さを下記式により求める。5個の試験片の接着強さの平均値を小数点以下1桁に丸めて得られた値を付着強さとする。
付着強さ(N/mm2)=最大荷重(N)/1600(mm2
【0058】
前記付着強さを前記範囲にするための方法としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(a)やポリアミン化合物(b)の極性モノマーの量を調節したり、原料のモノマー又はプレポリマーの分子量、柔軟成分量、及び側鎖官能基の有無を調節したり、充填剤、希釈剤、界面活性剤、及び粘性付与剤などの添加剤の量を調節すること等が挙げられる。
【0059】
5.塗装方法
本発明の塗料は、十分な硬化時間を有するため、塗料を塗布する方法としては公知の方法を特に制限なく用いることができる。塗料を塗布する方法は、塗膜の厚みや被塗布物の形状などによって適宜選択すればよく、例えば、浸漬塗装(どぶ漬け、ディッピング塗装)、ワイヤーバー、ベーカー式アプリケーター、グラビアロール、ポッティング、刷毛塗り、ローラー塗装、及びこて塗りなどの方法が挙げられる。また、3Dプリンター等により3次元的に硬化物(塗膜)を形成することも可能である。本発明の塗料は、土木建築用途などの広い面積に手塗りで塗工する場合でも十分な硬化時間を有するため、刷毛塗り、ローラー塗装、又はこて塗りにより塗布することが好ましい。
【0060】
本発明の塗料は、常温で反応性を有するため、加熱は通常必要ないが、硬化を早めるために加熱してもよい。硬化温度は、施工方法や硬化時間から適宜決めることができるが、安全性の観点から、好ましくは40~80℃である。
【0061】
本発明の塗料の加熱装置としては、塗料の粘度や被塗布物の形状などに鑑みて、公知のものを使用することができる。加熱装置としては、例えば、加熱ローラー、ローラーヒーター、ポリイミドヒーター、赤外線放射ヒーター、空気高温加熱器、ヒートガン、ドライヤー、乾燥炉、焼付炉、恒温乾燥機、及び恒温炉などが挙げられる。
【0062】
硬化時間は、塗料、加熱装置、硬化工程の特性を鑑みて適宜選択すればよいが、生産性の観点から24時間未満が好ましく、12時間未満がより好ましく、8時間未満がさらに好ましい。硬化時間を調節するために、前記触媒を用いてもよい。
【0063】
塗膜の厚みは、目的とする物性や基材の材料などにより適宜選択することができるが、通常、経済性と物性の観点から10~10,000μmが好ましく、50~8,000μmがより好ましく、100~5,000μmがさらに好ましい。また、前記厚みを得るための方法として、一度に塗布してもよく、複数回に分けて重ね塗りをしてもよい。
【0064】
6.用途
本発明のポリウレア樹脂組成物は、手塗りでの塗工作業が可能な粘度、可使時間、硬化時間を有し、さらに耐タレ性、塗膜の破泡性、作業性、基材との密着性、物理強度に優れるものである。本発明のポリウレア樹脂組成物の用途としては、例えば、塗り床、ライニング、屋上防水、外壁塗装、橋梁床版防水、防水塗料、防食塗料、鋼管・金属管・タンク内外の保護塗料、建築物の補強・補修、樹脂部品・金属部品の保護、ため池などが挙げられる。
【0065】
本発明のポリウレア樹脂組成物は、繊維(長繊維、短繊維いずれも含む)、不織布(長繊維、短繊維いずれも含む)、布、金網、メッシュ、パンチングメタルなどの平面体と複合化することもできる。複合化の方法は公知の方法を採用することができる。前記平面体と複合化する際の塗布量は、目的とする物性や基材の材料などにより適宜調整すればよいが、経済性と物性の観点から、0.01~5kg/m2が好ましく、0.03~4kg/m2がより好ましく、0.05~3kg/m2がさらに好ましい。
【0066】
また、本発明のポリウレア樹脂組成物は、金枠に流し込んで、成形体を製造することもできる。
【実施例
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。実施例及び比較例における各種物性の評価方法は、下記のとおりである。
【0068】
(1)粘度
B型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORIES,INC.社製、BROOKFIELD DIAL VISCOMETER Model LVT)を用い、温度25℃における回転粘度(mPa・s)を測定した。50mL容のガラス製ビーカーに、ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を、全量が15mLになるように加えた。その後、金属製の薬さじを用いて素早く15秒混合した。そして、混合して30秒後及び30分後の温度25℃における粘度を測定した。なお、B型粘度計のスピンドルは、粘度が1,000mPa・sを超える場合はLV-4を用い、1,000mPa・s以下の場合はSC4-18を用いた。
【0069】
(2)塗膜の破泡性
1L容の金属缶に、ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を、全量が500gになるように投入し、ペイントミキサーで400rpmで30秒間混合した。得られた混合液を、長さ210mm×先部幅75mm×尻部幅80mmの角ごてを用いてコンクリート板に塗布厚みが1mmになるように塗布した。塗膜を目視で確認し、塗工時に破泡し均一な塗膜が得られるものを○、破泡せず塗膜中に泡が残ったものを×として評価した。なお、混合液、コンクリート板、確認時の温度はいずれも25℃である。
【0070】
(3)残留粘度
前記(1)粘度と同様の操作を行い、混合して30秒後の温度25℃における粘度を回転数を変えて3点測定した。なお、B型粘度計のスピンドルは、粘度が1,000mPa・sを超える場合はLV-4を用い、1,000mPa・s以下の場合はSC4-18を用いた。また、回転数は、B型粘度計の測定上限に近いものから順に3点採用した。回転数とスピンドル形状から、ずり速度D及びずり応力σを求め、x軸をずり速度D、y軸をずり応力としてプロットし、最小二乗法によって直線回帰を行って得られる直線の傾きを2乗した値を求め、得られた値を残留粘度η∞(mPa・s)とした。
【0071】
(4)動粘性係数
前記(1)粘度と同様の操作を行い、混合して30秒後の温度25℃における粘度η(Pa・s)を測定した。また、ピクノメーターを用いて、25℃の環境下で、ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を混合した混合物の密度ρ(kg/m3)を測定した。そして、下記式により動粘性係数を求めた。
動粘性係数ν(m2/s)=η(Pa・s)/ρ(kg/m3
【0072】
(5)表面自由エネルギー
ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を混合した混合物を、厚さ1mm、長さ15cm、幅10cmの金枠に流し込み、25℃で48時間静置してポリウレア樹脂の硬化板を作製した。その後、硬化板の表面自由エネルギーをJIS K 6768:1999(プラスチック-フィルム及びシート-ぬれ張力試験方法)に基づいて、ぬれ張力測定のための試験用混合液を用いて、温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気で測定した。
【0073】
(6)引張強さ、破断時伸び、抗張積
ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を全量が60gになるよう金属製の薬さじを用いて素早く混合し、得られた混合物を厚さ1mm、長さ15cm、幅10cmの金枠に流し込み、25℃48時間静置して厚さ1mmのポリウレア樹脂の硬化板を作製した。作製した硬化板をダンベル状2号形に打ち抜いて試験片を得た。25℃の環境下で卓上型精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS-X)を用いて試験片の引張強さ(N/mm2)及び破断時伸び(mm)を求め、下記式により抗張積(N/mm)を求めた。なお、測定数は5、試験片のつかみ距離は70mm、引張速度は5mm/分にて測定を行った。5回の測定で得られた抗張積の平均値を採用した。
抗張積(N/mm)=引張強さ(N/mm2)×破断時伸び(mm)
【0074】
(7)浸せき試験(耐水性、耐薬品性)
ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を全量が10gになるよう金属製の薬さじを用いて素早く混合し、得られた混合物を厚さ1mm、長さ5cm、幅5cmの金枠に流し込み、25℃48時間静置して厚さ1mmのポリウレア樹脂の硬化板を作製した。作製した硬化板を、水(50℃)、10%硫酸水溶液(50℃)、又は飽和水酸化カルシウム水溶液(50℃)に30日浸漬した。浸漬後、硬化板を水洗したのち150℃で2時間乾燥させた。そして、下記式により重量減少率を求めた。
重量減少率(%)=(浸漬後の硬化板の重量/浸漬前の硬化板の重量)×100
【0075】
(8)密着性
JIS A 1171:2016(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に記載の「7.4接着強さ試験」に準じて測定した。7cm×7cm×2cmのコンクリートブロックを用意した。ポリイソシアネート化合物(a)とポリアミン化合物(b)とを含む全ての成分を混合した混合物を、コンクリートブロックの面積49cm2の面に塗布し、25℃で48時間静置して試験片(硬化膜の厚み0.7mm)を作製した。4cm四方の引張り用ジグにエポキシ接着剤を塗布し、試験片のポリウレア塗装面に貼り付けて25℃で24時間静置した。その後、4cm四方のポリウレア塗膜となるようにカッターナイフで引張り用ジグの周囲に切れ込みを入れ、試験片に下部引張り用ジグを鋼製当て板を介して取り付けた。そして、毎分2,000Nの荷重速度で試験片の鉛直方向に載荷して最大荷重を求めた。試験片の接着強さを下記式により求めた。5個の試験片の接着強さの平均値を小数点以下1桁に丸めて得られた値を付着強さとした。
付着強さ(N/mm2)=最大荷重(N)/1600(mm2
実用上、1.0N/mm2以上の付着強さが必要であり、1.5N/mm2以上の付着強さが好ましい。
【0076】
(9)耐タレ性
20cm×20cm×1cmのガラス板の一辺にサグテスター(BEVS社製)を平行になるように置き、全量15gになるよう金属製の薬さじを用いて素早く混合したポリウレア樹脂組成物をサグテスター上部から流し込んだ。サグテスターを軽く下に押し付けながら均等な速さで直線的に動かし、100μmから500μmまで、100μm刻みの厚みで塗膜を作製した。その後、すぐに塗膜の厚い方を下にしてガラス板を垂直に立て、塗料の流れ(たるみ)が生じるか否かで耐タレ性を判断した。400μm以上の塗膜でたるみが生じない場合を○、生じた場合を×とした。
【0077】
<ポリイソシアネート化合物(a)>
ポリイソシアネート化合物(a)として、下記のものを使用した。
A1:コロネート2785(東ソー社製、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系イソシアネート、19.2NCO%、動粘度1,800mm2/s)
A2:イソホロンジイソシアネート(IPDI、東京化成工業社製、脂環式イソシアネート、37.8NCO%、動粘度9mm2/s)
A3:分子量3,000のポリオキシプロピレントリオール1.2質量部と、分子量1,000のポリオキシプロピレンジオール72質量部に、37質量部の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(NCO/OH比=2.03)を反応させて得た、NCO基含有率5.2質量%のプレポリマー
A4:分子量2,000のポリテトラメチレングリコール284質量部と、ジエチレングリコール15質量部に、100質量部のトルエンジイソシアネート(TDI、異性体混合物)(NCO/OH比=2.03)を反応させて得た、NCO基含有率6.1%のプレポリマー
【0078】
<ポリアミン化合物(b)>
ポリアミン化合物(b)として、下記のものを使用した。
B1:エラスマー250P(クミアイ化学工業社製、芳香族ポリアミン、アミン価221mgKOH/g)
B2:エラスマー650P(クミアイ化学工業社製、芳香族ポリアミン、アミン価126mgKOH/g)
B3:FeisparticF420(Feiyang社製、脂肪族ポリアミン、アミン価203mgKOH/g)
B4:Unilink4200(DorfKetal社製、芳香族ポリアミン、アミン価361mgKOH/g)
B5: 100質量部の前記A3に、39質量部のトリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート)(NH2/NCO比=2.0)を反応させて得た、アミン価70mgKOH/gのプレポリマー
B6:数平均分子量2,000のアクリレート両末端水素化ポリブタジエン(日本曹達社製、TEAI-1000)100質量部にエチレンジアミン6質量部(NH2/アクリレート比=2.0)を反応させて得た、アミン価106mgKOH/gのプレポリマー
B7:ジエチルトルエンジアミン(東京化成工業社製、芳香族ポリアミン、アミン価629.5mgKOH/g)
B8:Primacure P-25i(Arxada社製、塩素化ジエチルトルエンジアミン、アミン価527mgKOH/g)
【0079】
その他の成分(ポリオール化合物及び添加剤)として、下記のものを使用した。
G700:グリセリン-プロピレンオキサイド付加物(ADEKA社製、水酸基価224mgKOH/g)
231:有機系粘性付与剤(楠本化成社製、ディスパロンPFA-231)
P-3:充填剤(日本タルク株式会社製、タルクP-3)
TiO2:充填剤(東京化成工業社製、二酸化チタン)
cHex:希釈剤(東京化成工業社製、シクロヘキサン)
MS4A:脱水剤(レゾナックユニバーサル社製、モレキュラーシーブ4A粉末)
【0080】
実施例1
100g容のガラス製ビーカーにポリイソシアネート化合物としてA1を28質量部、ポリアミン化合物としてB1を32質量部、添加剤としてcHexを1.2質量部加え、薬さじで素早く均一な見た目になるまで撹拌し、ポリウレア樹脂組成物を得た(以下の実施例においても、イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0となるようにポリアミン化合物の添加量を調節した。)。その後、前記(1)~(9)の評価を行った。使用した原料と評価結果を表1~3に記載した。
【0081】
実施例2
実施例1において、ポリアミン化合物をB2に、添加剤を1.2質量部の231に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0082】
実施例3
実施例1において、ポリアミン化合物をB3に、添加剤を9質量部のP-3に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0083】
実施例4
実施例1において、ポリイソシアネート化合物をA2に、ポリアミン化合物をB4に、添加剤を6質量部のMS4Aに変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0084】
実施例5
実施例4において、ポリアミン化合物をB5に、添加剤を1.2質量部のcHexに変更し、ポリオール化合物としてG700を12.5質量部加えた以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0、ヒドロキシ基量/アミノ基量=0.25)。評価結果を表1~3に記載した。
【0085】
実施例6
実施例4において、ポリアミン化合物をB6に、添加剤を1.2質量部の231および6質量部のTiO2に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0086】
実施例7
実施例1において、ポリイソシアネート化合物をA3に、ポリアミン化合物をB7に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0087】
実施例8
実施例7において、ポリアミン化合物をB8に変更し、ポリオール化合物としてG700を1.7質量部加え、添加剤を加えなかった以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0、ヒドロキシ基量/アミノ基量=0.25)。評価結果を表1~3に記載した。
【0088】
実施例9
実施例7において、ポリアミン化合物をB2に、添加剤を9質量部のP-3と6質量部のMS4Aに変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0089】
実施例10
実施例1において、ポリイソシアネート化合物をA4に、ポリアミン化合物をB2に、添加剤を1.2質量部の231に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0090】
実施例11
実施例10において、ポリアミン化合物をB3に、添加剤を1.2質量部の231と9質量部のP-3に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0091】
実施例12
実施例10において、ポリアミン化合物をB6に、添加剤を1.2質量部のcHexに変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0092】
実施例13
実施例1において、cHexを加えなかった以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た。ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0093】
実施例14
実施例1において、cHexの代わりに10質量部のG700を加えた以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0094】
実施例15
実施例1において、cHexの代わりに1.2質量部の231を加えた以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0095】
実施例16
実施例1において、cHexの代わりに9質量部のP-3を加えた以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0096】
実施例17
実施例1において、cHexの代わりに6質量部のMS4Aを加えた以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0097】
比較例1
ポリイソシアネート化合物としては、分子量3,000のポリオキシプロピレントリオール17質量部と、分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール68質量部に、15質量部のトリレンジイソシアネート(2,4-異性体80質量%)(NCO/OH比=2.03)を反応させ、NCO基含有率3.6質量%のプレポリマーを用いた。以後、このプレポリマーをPP1と称することがある。
ポリアミン化合物としては、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)7.30質量部を溶融したものを、分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール21.04質量部に溶解してなる溶融混合液を用いた。
添加剤として、大豆油をメタノールでエステル交換したモノカルボン酸メチルエステル混合物(20℃における粘度7.9mPa・s)12.7質量部、炭酸カルシウム55質量部、顔料ペースト3質量部および2-エチルヘキサン酸鉛(鉛含有量24質量%)1質量部を混合したものを用いた。これらを薬さじで素早く均一な見た目になるまで撹拌して、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/アミノ基量=1/1、イソシアネート基/(ヒドロキシ基+アミノ基)=1.1}。評価結果を表1~3に記載した。
【0098】
比較例2
ポリイソシアネート化合物として、エクセノール2020(旭硝子株式会社、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量2000、2官能、水酸基価56)を50質量部、エクセノール903(旭硝子株式会社、商品名、グリセリン系ポリオール、分子量1500、3官能、水酸基価109)を10質量部混合し、ミリオネートMT(日本ポリウレタン株式会社、商品名、4,4′-MDI、NCO基含有率:33.6質量%)を40質量部加え、60℃で3時間混合攪拌し、プレポリマーとしたものを用いた(NCO基含有率:10.5質量%)。以後、このプレポリマーをPP2と称することがある。
ポリアミン化合物として、エラスマー1000P(イハラケミカル株式会社、商品名、アミン価90.6)を155質量部用いた。これらを薬さじで素早く均一な見た目になるまで撹拌して、ポリウレア樹脂組成物を得た。評価結果を表1~3に記載した。
【0099】
比較例3
ポリイソシアネート化合物として、撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDIを100質量部、及びイソブタノール0.12質量部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃で2時間保持した。そこに、イソシアヌレート化反応触媒トリメチル-2-メチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドをイソブタノールで5質量%に希釈した溶液0.08質量部を添加し、イソシアヌレート化反応を行ない、転化率が20質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を160℃で1時間保持した。冷却した反応液を濾過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応HDIを除去した。NCO含有量23.2質量%、25℃における粘度が470mPa・s、数平均分子量540、イソシアネート基平均数3.0、HDIモノマー質量濃度0.1質量%のポリイソシアネート組成物を用いた。以後、このプレポリマーをPP3と称することがある。
ポリアミン化合物として、アスパラギン酸エステル化合物である商品名「AmicureIC-221」(Evonik社製、アミン価188mgKOH/樹脂g、粘度450mPa.s(25℃測定代表値))50質量部、及び商品名「AmicureIC-321」(Evonik社製、アミン価190mgKOH/樹脂g、粘度450mPa.s(25℃測定代表値))50質量部、添加剤として、シリコン系表面調整剤(商品名「Tegowet250」、Evonik社製)0.17質量部、アクリル系表面調整剤(商品名「BYK-361N」、BYK社製)0.84質量部、ポリマー系消泡剤(商品名「TegoAirex944」、Evonik社製)0.84質量部、並びに、脱水剤(商品名「Molecularsieves4A-Powder」、ユニオン昭和社製)1.67質量部を、事前にブレンドして混合物を得た。得られた混合物と、67質量部のポリイソシアネート組成物PP3とを、ポリイソシアネート組成物(B)のイソシアネート基に対するアスパラギン酸エステル化合物(A)のアミノ基のモル比が10/11となるように配合し、薬さじで素早く均一な見た目になるまで撹拌し、ポリウレア樹脂組成物を得た。評価結果を表1~3に記載した。
【0100】
比較例4
100g容のガラス製ビーカーにポリアミン化合物としてB1を17.9質量部、CUA-4(クミアイ化学工業社製、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾアート))を11.1質量部加え、60℃に加熱し撹拌し均一な溶液を得た。ここにポリイソシアネート化合物としてA1を30.9質量部加え(活性水素当量=1.0)、薬さじで素早く均一な見た目になるまで撹拌し、ポリウレア樹脂組成物を得た。その結果を表1~3に記載した。
【0101】
比較例5
添加剤である231の添加量を6質量部とした以外は、実施例2と同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0102】
比較例6
ポリイソシアネート化合物としてA3を44.7質量部、ポリアミン化合物としてB3を15.3質量部用い、薬さじで素早く均一な見た目になるまで攪拌して、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0103】
比較例7
実施例15において、添加剤である231の添加量を6質量部に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0104】
比較例8
実施例16において、添加剤であるP-3の添加量を30質量部に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0105】
比較例9
実施例17において、添加剤であるMS4Aの添加量を30質量部に変更した以外は同様の操作を行って、ポリウレア樹脂組成物を得た(イソシアネート基量/(ヒドロキシ基量+アミノ基量)=1.0)。評価結果を表1~3に記載した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
(考察)
実施例1~17のポリウレア樹脂組成物製造原料は、全ての成分の混合直後(混合して30秒後)の残留粘度、混合直後と混合30分経過後の粘度、混合直後の動粘性係数が本発明の範囲であるとともに、硬化物(塗膜)としたときの表面自由エネルギーが本発明の範囲であるため、手塗りに適した硬化時間を有し、耐タレ性、及び塗膜の破泡性に優れるポリウレア樹脂組成物を得ることができ、さらに基材との密着性に優れる硬化物を形成できるものであった。
【0110】
比較例1のポリウレア樹脂組成物製造原料は、粘度特性は本発明の範囲を満足するものであり、手塗りに適した硬化時間を有するものであるが、硬化物(塗膜)としたときの表面自由エネルギーが本発明の範囲を外れているため、耐水性、耐薬品性、基材との密着性に劣っていた。
【0111】
比較例2のポリウレア樹脂組成物製造原料は、30分経過後の粘度が大きいことから、手塗り特性に劣り、基材との密着性に劣っていた。
【0112】
比較例3のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合直後の残留粘度と粘度が小さく、30分経過後の粘度が大きく、動粘性係数が低いものであることから、耐タレ性、手塗り特性、破泡性、基材との密着性に劣るものであった。
【0113】
比較例4のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合直後の残留粘度、混合直後と混合30分経過後の粘度が大きいことから、手塗りに不適であり、耐タレ性や基材との密着性に劣るものであった。
【0114】
比較例5のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合直後と30分経過後の粘度、混合直後の動粘性係数が大きいことから、手塗りに不適であり、基材との密着性に劣るものであった。
【0115】
比較例6のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合30分経過後に硬化し、粘度の測定ができなかった。また、硬化物(塗膜)としたときの表面自由エネルギーが本発明の範囲を外れており、基材との密着性、破泡性に劣るものであった。
【0116】
比較例7のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合直後と30分経過後の粘度、混合直後の動粘性係数が大きいことから、手塗りに不適であり、基材との密着性に劣るものであった。
【0117】
比較例8のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合直後の残留粘度、混合直後と30分経過後の粘度、混合直後の動粘性係数が大きいことから、手塗に不適であり、混合30分経過後には粘度の測定上限を超過し粘度の測定ができなかった。さらに、基材との密着性にも劣り、浸漬試験後の塗膜は不均一に溶出が起こり耐薬品性に劣っていた。
【0118】
比較例9のポリウレア樹脂組成物製造原料は、混合直後の残留粘度、混合直後と30分経過後の粘度、混合直後の動粘性係数が大きいことから、手塗に不適であり、混合30分経過後には粘度の測定上限を超過し粘度の測定ができなかった。さらに、基材との密着性にも劣り、浸漬試験後の塗膜は不均一に溶出が起こり耐薬品性に劣っていた。
【要約】
【課題】本発明は、手塗りに適した硬化時間を有し、耐タレ性、及び塗膜の破泡性に優れる塗料を得ることができ、さらに基材との密着性に優れる硬化物を形成できるポリウレア樹脂組成物製造原料、及びポリウレア樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリウレア樹脂組成物製造原料は、ポリイソシアネート化合物(a)を含有する成分(A)と、ポリアミン化合物(b)を含有する成分(B)とを含み、下記条件(1)~(4)を全て満足することを特徴とする。
(1)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の残留粘度が1,500mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
(2)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の粘度が1,500mPa・s以上30,000mPa・s以下、かつ混合して30分後の粘度が100,000mPa・s以下である。
(3)成分(A)と成分(B)とを含む、全ての成分を混合して30秒後の動粘性係数が1,200m2/s以上30,000m2/s以下である。
(4)ポリウレア樹脂組成物製造原料から得られるポリウレア樹脂組成物の硬化物の表面自由エネルギーが30mN/m以上63mN/m以下である。
【選択図】なし