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特許7606793放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法
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  • 特許-放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法 図1A
  • 特許-放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法 図1B
  • 特許-放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法 図1C
  • 特許-放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/08 20060101AFI20241219BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20241219BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241219BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G21F1/08
G21F1/10
B22F1/00 N
B22F3/11 B
C22C1/08 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024120809
(22)【出願日】2024-07-26
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515243372
【氏名又は名称】アドバンスコンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】林 睦夫
(72)【発明者】
【氏名】服部 淳一
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 修平
(72)【発明者】
【氏名】一尾 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】落合 翔梧
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-121590(JP,A)
【文献】特開2014-194405(JP,A)
【文献】特開2015-010015(JP,A)
【文献】特開2004-323291(JP,A)
【文献】特許第4426293(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00-7/06
B22F 1/00
B22F 3/11
C22C 1/08
C04B 41/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線遮蔽効果がある粉体が複合化されてなる該粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体であって、
酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体と、粉末状ではないシリカ系バインダーとを含有してなる混合物からなる成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の全部に、溶融した、融点が200℃以上900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかが含浸・充填されて固化して複合化されてなる構成の、或いは、該多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の少なくとも25体積%以上に、液状の有機無機封孔剤が含浸されて固化して複合化されてなる構成のものであり、且つ、
前記粉末状ではないシリカ系バインダーが、液状シリコーン樹脂又はシリコーン樹脂を有機溶媒に溶解してなるシリコーン樹脂溶液及び900℃以下の温度で加熱硬化してなるシリカと有機物からなるシリカアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである液状のシリカ系バインダーであって、前記放射線遮蔽粉体が分解されることのない温度で前記成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)を形成できる特性のものであることを特徴とする放射線遮蔽機能を有する複合体。
【請求項2】
記混合物は、前記放射線遮蔽粉体100質量部に対して、前記液状のシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量部添加されてなるものである請求項1に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体。
【請求項3】
前記液状有機無機封孔剤が、前記多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙内に有機無機封孔剤の固化物及び/又は有機無機封孔剤の加熱処理物として存在しており、該有機無機封孔剤の固化物及び/又は該有機無機封孔剤の加熱処理物が、含浸される前における多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙100体積%のうちの25体積%以上を占めてなり、且つ、含浸後におけるプリフォーム全体を100体積%とした場合に、5体積%以上を前記有機無機封孔剤の固化物及び/又は有機無機封孔剤の加熱処理物が占める請求項1に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体。
【請求項4】
前記液状の有機無機封孔剤が、粘度が50mPa・s以下の低粘性で、且つ、不揮発成分を30質量%以上含有してなる、
メチルシリケートSi(OCH或いは該メチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状メチルシリケート化合物、
エチルシリケートSi(OC或いは該エチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状エチルシリケート化合物、
シロキサン結合を有し、不揮発成分が30質量%以上になるように調整されたシリコーン樹脂或いはその誘導体、
アルコキシシラン誘導体であって、空気中の水分と反応して縮合反応して、シリコーン酸素有機物(Si-O-R)を生成する液状のアルコキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1又は3に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体。
【請求項5】
溶融した、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかをマトリックスとし、放射線遮蔽効果がある粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体を調製するための複合体の製造方法であって、
酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程、該工程で使用する前記粉末状ではないシリカ系バインダーが、液状シリコーン樹脂又はシリコーン樹脂を有機溶媒に溶解してなるシリコーン樹脂溶液及び900℃以下の温度で加熱硬化してなるシリカと有機物からなるシリカアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである液状のシリカ系バインダーであり、及び、
該工程で得た多孔質成型体(プリフォーム)に、300℃以上、900℃以下の温度で溶融した、融点が200℃以上、900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかの溶湯を鋳造して、20MPa以上、200MPa以下の高圧で、前記多孔質成型体(プリフォーム)内に前記溶湯の含浸をさせる目的で3分間~15分間保持した後に、前記溶湯が含浸した状態の複合体を15分間以内に取り出して冷却して、該複合体中の放射線遮蔽粉体の分解を抑制する工程、を有することを特徴とする放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【請求項6】
放射線遮蔽効果がある粉体が複合化されてなる該粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる複合体を調製する放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法であって、
酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程、
該多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程で得た多孔質成型体(プリフォーム)の空隙に、不揮発成分を30質量%以上含有した粘度が50mPa・s以下である液状の有機無機封孔剤を、真空含浸させた後、或いは、真空含浸後に加圧して10気圧以下の圧力で含浸させた後、200℃以上、900℃以下の温度に加熱して、前記液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物を、前記多孔質成型体(プリフォーム)の空隙100体積%対して25体積%以上残存させて、前記放射線遮蔽粉体と液状の前記有機無機封孔剤に由来する成分と複合化する複合化工程、を有することを特徴とする放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【請求項7】
前記液状の有機無機封孔剤が、粘度が50mPa・s以下の低粘性で、且つ、不揮発成分を30質量%以上含有してなる、
メチルシリケートSi(OCH或いは該メチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状メチルシリケート化合物、
エチルシリケートSi(OC或いは該エチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状エチルシリケート化合物、
シロキサン結合を有し、不揮発成分が30質量%以上になるように調整されたシリコーン樹脂或いはその誘導体、
アルコキシシラン誘導体であって、空気中の水分と反応して縮合反応して、シリコーン酸素有機物(Si-O-R)を生成する液状のアルコキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項6に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【請求項8】
記混合物は、前記放射線遮蔽粉体100質量部に対して、前記液状のシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量部添加されてなるものである請求項5又は6に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【請求項9】
さらに、前記多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程で、前記放射線遮蔽粉体にアルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末を加えて、該アルミニウム金属粉末又はアルミニウム合金粉末又は該セラミックス粉末と前記放射線遮蔽粉体との合計を100質量%とした場合に、前記粉末状ではないシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量%添加して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する請求項5に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線遮蔽機能を有する複合体及び放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法に関する。詳しくは、放射線遮蔽効果がある特定の無機質粉末又は金属粉末である、酸化ガドリニウム(Gd)粉末、炭化ホウ素(BC)粉末、酸化ホウ素(B)粉末、ホウ素(B)粉末、硫酸バリウム(BaSO)粉末、酸化ストロンチウム(SrO)粉末、タングステン(W)粉末、酸化タングステン(W)粉末、タングステンカーバイド(WC)粉末、モリブデン(Mo)粉末、酸化モリブデン(MoO)粉末、鉄(Fe)粉末、酸化鉄(Fe)粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末(以下、これらをまとめて放射線遮蔽粉体群とも呼ぶ)から選ばれる少なくともいずれかを含む多孔質のプリフォームの空隙に、融点が200℃以上900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかの溶湯を含浸させて固化してなる複合体、或いは、液状の有機無機封孔剤を含浸させて加熱処理して固化して複合化してなる放射線遮蔽機能を有する複合体(以下、これらを単に複合体とも呼ぶ)及びその製造方法に関する。特に、本発明は、上記に挙げた放射線遮蔽粉体の分解が抑制された状態で放射線遮蔽粉体が複合化されてなる複合体の実現を可能にできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、医療機器や医療設備で生じるX線、放射線を考慮して、放射線を遮蔽する遮蔽物材が使用されている。また、原子力産業では、未使用の核燃料の取扱や保管のため、容器や装置にX線、ガンマ線、中性子線等の放射線を遮蔽する材料が使用されている。放射線遮蔽材料には、放射線を遮蔽すると共に核連鎖反応を防止するため放熱性が良好な遮蔽材料が求められる。放射線遮蔽材料としては、例えば、鉛(Pb)やタングステン(W)等の金属を使用するのが一般的であるが、近年、特に、放射線遮蔽効果が求められる構造部材に対して、軽量で、高放熱性で、且つ、放射線遮蔽効果の大きい放射線遮蔽材料が求められるようになってきている。
【0003】
従来の放射線遮蔽材料は、金属鉛や金属タングステンを使用するのが一般的である。しかし、これらの材料は比重が大きく、比重が大きい材料で作製された構造物材はかなり重くなるため、その使用範囲は限られていた。下記に挙げるように、軽量な放射線遮蔽効果がある構造体を作製するため、放射線遮蔽効果があって比重が小さいBC粉末やBaSO粉末を樹脂又は金属と複合化した材料が提案されている。しかし、構造体中における、これらの放射線遮蔽効果がある粉末の含有量が低く、その応用範囲が限定されるという問題点があった。
【0004】
特許文献1では、下記のようなBCを含有してなるアルミニウム放射線遮蔽体を製造する方法が提案されている。具体的には、炭化ホウ素(BC)粉末とアルミニウム粉末からなる混合粉末の圧粉体を作製し、真空焼結、HIP、ホットプレスで焼結温度が10~50℃の低い温度で焼結し、BCとアルミニウムをなじませてから加熱溶解して鋳造した放射線遮蔽体が提案されている。この方法では、放射線遮蔽体中のBCの含有量は0.5~5質量%以下の範囲に限られており、それ以上の含有量では鋳造溶湯の粘性が高くなり鋳造が困難とされている。従って、放射線遮蔽効果がより大きい、BCの含有量が5v%を超える放射線遮蔽体を製造するのが困難であった。
【0005】
また、特許文献2には、炭化ホウ素(BC)粒子と、ホウ酸アルミニウムウイスカーの混合物に無機バインダーなどを添加して成形し、成形物をアルゴン雰囲気中で、1250℃で4時間の高温条件で焼結してプリフォームを作製し、該プリフォームにアルミニウム合金の溶湯を高圧で含浸して放射線遮蔽複合体を作製することが開示されている。この方法では、炭化ホウ素とセラミックスウイスカーとを混合すること、また、1100~1400℃の高い温度で焼結することでアルミニウムの高圧含浸に耐えるプリフォームを作製して、アルミニウム合金の溶湯を含浸し、複合体を作製している。この方法は、プリフォームを高温で作製しなければならないのでコストが高く、さらに、炭化ホウ素の含有量が1~15w%しか含有できないという問題点があり、放射線遮蔽複合体中の炭化ホウ素の含有率を高くできなかった。
【0006】
また、特許文献3には、炭化ホウ素(BC)に代表されるホウ素含有セラミック粉末と、アルミニウムを含んでなる金属粉末の混合物から作製されたプリフォームの頂部に、580℃~610℃で溶融するアルミニウム合金の固体片を置き、該固体片が溶融する溶浸温度に加熱して1分間~24時間かけて溶浸して、複合体を得ることが開示されている。本発明者らの検討によれば、この方法では、プリフォームにアルミニウム合金を自然含浸(溶浸)させているので長時間反応させる必要があり、また、空気中に不安定なAlができるのと、プリフォームへの含浸が100%行かない場合があり、緻密で安定した放射線遮蔽複合体を得ることができなかった。
【0007】
また、特許文献4では、炭化ホウ素粉末、アルミニウム合金粉末の混合粉、或いは、その混合圧粉体を所定の温度まで加熱して保持し、半溶融状態にある条件下で鍛造成形又は圧延成形して複合体を製造する方法が提案されている。本発明者らの検討によれば、この方法では、高温で成形するので面積が大きな複合体や肉厚の複合体を製造することができなかった。また、この技術では半溶融の状態で強制的に鍛造するので、放射線遮蔽粉体とアルミニミウム合金が不均一になったり、10mm以上の肉厚な製品が製造できないという問題があった。
【0008】
また、特許文献5では、ボロンを含むアルミニウム合金の素地にボロン繊維を複合化させた容器用材料が提案されている。しかし、ボロン繊維含有率が未だ低く、また、ボロン繊維が高価であるので使用範囲が限られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-20828号公報
【文献】特開2003-121590号公報
【文献】特許第4426293号公報
【文献】特開昭60-096746号公報
【文献】特開平10-319183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に挙げたように、従来技術の放射線遮蔽材料は、放射線遮蔽粉体に、金属鉛や金属タングステンを使用する場合は重量が大きくなったり、或いは、炭化ホウ素(BC)や硫酸バリウム(BaSO)に代表される粉末等を用いた場合のいずれの複合体においても、放射線遮蔽効果がある粉末の含有量が低く、また、高い含有量を実現することができていなかった。また、従来技術として、石膏やゴム、或いは樹脂に放射線遮蔽粉末を混合させた素材の提案がされている。しかし、ゴムをマトリックスとして使用した素材の場合は、有機物なので200℃以上の長時間の使用が困難とされている。また、石膏をマトリックスとした素材の場合は、100℃以上の温度で長時間使用すると石膏の脱水分解反応が起こり、高温での長時間使用ができないという問題があった。
【0011】
上記した従来技術の実情に対して、本発明者らは、BC粉末やBaSO粉末、またはその他の、酸化ガドリニウム、酸化ストロンチウム、酸化鉄等の放射線遮蔽粉体の含有率が高い材料(素材)の含有量を低含有率から高含有率までコントロールでき、しかも高温で使用できる材料を調製できる方法が開発されれば、構造部材(構造体)、放射線関連機械の部品としての放射線遮蔽応用範囲が、格段に増えると考えた。また、比重が10以上と大きいタングステン粉末やモリブデン粉末等の放射線遮蔽粉体であっても、放射線遮蔽効果が安定して発揮できる程度の含有量で他の材料と複合化させ、複合体として軽量な材料にすることができれば、用途によっては使用できるので使用範囲が格段に増えると考えた。
【0012】
本発明者らは、従来技術の実情に対して、実用性の高い放射線遮蔽機能を有する複合体材料として、下記の特性を有するものが待望されているとの認識をもった。すなわち、高強度で放射線遮蔽粉体の含有率が高い、特に、含有率が3v%以上、好ましくは60v%以上、さらに好ましくは85v%までのものであって、肉厚が5mm以上、好ましくは10mm以上で、放射線遮蔽効果が大きく、軽量、大型構造体にも使用できる複合体、建築用壁材、機械の保護構造体、さらには、いずれも熱伝導が大きい、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金(以下、これらを「アルミニウム等」と呼ぶ場合もある)との複合体が待望されているとの認識をもった。なお、低融点金属は亜鉛、錫及び鉛以外であっても本発明の目的を損なわない金属であれば、使用することも可能である。本明細書では、体積%のことを「v%」とも表記し、質量%のことを「w%」とも表記する。
【0013】
従って、本発明の目的は、放射線遮蔽機能を有する粉末(放射線遮蔽粉体)を高い含有率で含む放射線遮蔽効果が大きい新規な構成の複合体を開発することである。また、本発明の目的は、放射線遮蔽粉体が、例えば、3v%~85v%の低含有率から高含有率まで用途に応じてコントロールされた多様な複合体であって、建築用又は機械を構成する部品や部材などの構造体に必要な程度の強度を持つ複合体を開発することである。さらに、本発明の目的は、耐熱性があり熱伝導が大きいアルミニウム金属粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末との複合体で、アルミニウム金属又はアルミニウム合金の溶湯をマトリックスとする、放射線遮蔽粉体との優れた複合体を提供できる新たな技術を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明では、下記の放射線遮蔽機能を有する複合体を提供する。
[1]放射線遮蔽効果がある粉体が複合化されてなる該粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体であって、
酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体と、粉末状ではないシリカ系バインダーとを含有してなる混合物からなる成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の全部に、溶融した、融点が200℃以上900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかが含浸・充填されて固化して複合化されてなる構成の、或いは、該多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の少なくとも25体積%以上に、液状の有機無機封孔剤が含浸されて固化して複合化されてなる構成のものであり、且つ、
前記粉末状ではないシリカ系バインダーが、前記放射線遮蔽粉体が分解されることのない温度で前記成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)を形成できる特性のものであることを特徴とする放射線遮蔽機能を有する複合体。
【0015】
上記の放射線遮蔽機能を有する複合体の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[2]前記粉末状ではないシリカ系バインダーが、水ガラス(ケイ酸ソーダ)、コロイダルシリカ、液状シリコーン樹脂又はシリコーン樹脂を有機溶媒に溶解してなるシリコーン樹脂溶液及び900℃以下の温度で加熱硬化してなるシリカと有機物からなるシリカアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである液状のシリカ系バインダーであり、前記混合物は、前記放射線遮蔽粉体100質量部に対して、前記液状のシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量部添加されてなるものである上記[1]に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体。
【0016】
[3]前記液状有機無機封孔剤が、前記多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙内に有機無機封孔剤の固化物及び/又は有機無機封孔剤の加熱処理物として存在しており、該有機無機封孔剤の固化物及び/又は該有機無機封孔剤の加熱処理物が、含浸される前における多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙100体積%のうちの25体積%以上を占めてなり、且つ、含浸後におけるプリフォーム全体を100体積%とした場合に、5体積%以上を前記有機無機封孔剤の固化物及び/又は有機無機封孔剤の加熱処理物が占める上記[1]又は[2]に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体。
【0017】
[4]前記液状の有機無機封孔剤が、粘度が50mPa・s以下の低粘性で、且つ、不揮発成分を30質量%以上含有してなる、
メチルシリケートSi(OCH或いは該メチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状メチルシリケート化合物、
エチルシリケートSi(OC或いは該エチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状エチルシリケート化合物、
シロキサン結合を有し、不揮発成分が30質量%以上になるように調整されたシリコーン樹脂或いはその誘導体、
アルコキシシラン誘導体であって、空気中の水分と反応して縮合反応して、シリコーン酸素有機物(Si-O-R)を生成する液状のアルコキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、上記[1]~[3]のいずれか1に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体。
【0018】
本発明は、別の実施形態として下記の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法を提供する。
[5]溶融した、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかをマトリックスとし、放射線遮蔽効果がある粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体を調製するための複合体の製造方法であって、
酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程、及び、
該工程で得た多孔質成型体(プリフォーム)に、300℃以上、900℃以下の温度で溶融した、融点が200℃以上、900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかの溶湯を鋳造して、20MPa以上、200MPa以下の高圧で、前記多孔質成型体(プリフォーム)内に前記溶湯の含浸をさせる目的で3分間~15分間保持した後に、前記溶湯が含浸した状態の複合体を15分間以内に取り出して冷却して、該複合体中の放射線遮蔽粉体の分解を抑制する工程、を有することを特徴とする放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【0019】
[6]放射線遮蔽効果がある粉体が複合化されてなる該粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる複合体を調製する放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法であって、
酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程、
該多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程で得た多孔質成型体(プリフォーム)の空隙に、不揮発成分を30質量%以上含有した粘度が50mPa・s以下である液状の有機無機封孔剤を、真空含浸させた後、或いは、真空含浸後に加圧して10気圧以下の圧力で含浸させた後、200℃以上、900℃以下の温度に加熱して、前記液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物を、前記多孔質成型体(プリフォーム)の空隙100体積%対して25体積%以上残存させて、前記放射線遮蔽粉体と液状の前記有機無機封孔剤に由来する成分と複合化する複合化工程、を有することを特徴とする放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【0020】
上記の[5]又は[6]の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[7]前記液状の有機無機封孔剤が、粘度が50mPa・s以下の低粘性で、且つ、不揮発成分を30質量%以上含有してなる、
メチルシリケートSi(OCH或いは該メチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状メチルシリケート化合物、
エチルシリケートSi(OC或いは該エチルシリケートが一部加水分解してなる2量体、4量体のオリゴマーとし、不揮発成分が30質量%以上になるように調整された液状エチルシリケート化合物、
シロキサン結合を有し、不揮発成分が30質量%以上になるように調整されたシリコーン樹脂或いはその誘導体、
アルコキシシラン誘導体であって、空気中の水分と反応して縮合反応して、シリコーン酸素有機物(Si-O-R)を生成する液状のアルコキシシラン化合物からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、上記[6]に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【0021】
[8]前記粉末状ではないシリカ系バインダーが、水ガラス(ケイ酸ソーダ)、コロイダルシリカ、液状シリコーン樹脂又はシリコーン樹脂を有機溶媒に溶解してなるシリコーン樹脂溶液及び900℃以下の温度で加熱硬化してなるシリカと有機物からなるシリカアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである液状のシリカ系バインダーであり、前記混合物は、前記放射線遮蔽粉体100質量部に対して、前記液状のシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量部添加されてなるものである上記[5]~[7]のいずれか1に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【0022】
[9]さらに、前記多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程で、前記放射線遮蔽粉体にアルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末を加えて、該アルミニウム金属粉末又はアルミニウム合金粉末又は該セラミックス粉末と前記放射線遮蔽粉体との合計を100質量%とした場合に、前記粉末状ではないシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量%添加して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する上記[5]又は[8]に記載の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
従来、放射線遮蔽粉末を含む構造体は、アルミニウム、ゴム、樹脂に放射線遮蔽粉末を混合して複合体として製造するのが一般的であった。これに対し、本発明によれば、低充填率から高充填率にコントロールされた放射線遮蔽粉末を含む成型体(プリフォーム)を用いてなる点を同様の構成とし、該成型体(プリフォーム)の空隙の全部にアルミニウム等の溶湯が含浸されて固化した状態で複合化されてなる構成の放射線遮蔽機能を有する複合体、或いは、上記成型体(プリフォーム)の空隙の少なくとも25体積%以上に、液状の有機無機封孔剤が含浸して固化して複合化されてなる構成の放射線遮蔽機能を有する複合体が安定して提供される。また、本発明の各製造方法を複合体の使用目的に合わせて適用し、上記した2種類の構成を巧みに利用することで、例えば、放射線遮蔽粉体が低充填率から高充填率にコントロールされ、且つ、目的に合った強度を示す優れた放射線遮蔽機能を有する、所望する特性に適合した実用価値の高い各種の複合体を安定して得ることができる。本発明の技術の特徴は、以下の通りである。
【0024】
本発明の第1の特徴は、本発明で規定する、酸化ガドリニウム(Gd)粉末、炭化ホウ素(BC)粉末、酸化ホウ素(B)粉末、ホウ素(B)粉末、硫酸バリウム(BaSO)粉末、酸化ストロンチウム(SrO)粉末、タングステン(W)粉末、酸化タングステン(W)粉末、タングステンカーバイド(WC)粉末、モリブデン(Mo)粉末、酸化モリブデン(MoO)粉末、鉄(Fe)粉末、酸化鉄(Fe)粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる機能性や特性が異なる多くの放射線遮蔽粉体群から、使用目的等に応じて適宜に選択した1種類又は2種類以上の放射線遮蔽粉体を用いることができる点が挙げられる。すなわち、本発明によれば、単独又は色々な組み合わせの放射線遮蔽粉体から構成されてなる多様な放射線遮蔽複合体の提供が可能になる。
【0025】
本発明の複合体を構成する放射線遮蔽粉体群の内、例えば、ホウ素を含む炭化ホウ素は中性子線に対して、また、タングステン又はタングステンカーバイドはγ線及びX線に対して、バリウムを含む硫酸バリウムはX線、γ線に対して、それぞれ放射線の遮蔽効果があると言われている。これに対し、本発明によれば、下記に挙げるように、放射線遮蔽機能が異なる多様な構成の複合体の提供が実現可能になる。すなわち、本発明で規定する特定の放射線遮蔽粉体群の各粉末単体と、アルミニウム等の溶湯或いは液状の有機無機封孔剤を含浸させて固化してなる複合体だけでなく、例えば、炭化ホウ素とタングステン、炭化ホウ素と硫酸バリウムの2種類、必要に応じて炭化ホウ素とタングステン、硫酸バリウムの3種類の放射線遮蔽粉体と、アルミニウム等の溶湯或いは液状の有機無機封孔剤を含浸させて固化してなる複合体の提供が可能になる。このように、本発明によれば、本発明で規定する放射線遮蔽粉体を適宜に選択することで、X線、γ線と中性子線を同時に遮蔽することができる複合体の提供も可能になる。
【0026】
本発明の第2の特徴として、例えば、上記に挙げた種々の放射線遮蔽粉体の粒度や配合の調整、また、必要に応じてアルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉体を添加することで、放射線遮蔽粉体の体積率が3v%~85v%まで自由にコンロールされてなる放射線遮蔽機能を有する複合体の提供が可能であることが挙げられる。本発明によれば、特に、高い遮蔽効果が求められる50v%以上の放射線遮蔽粉体の充填率(体積率)を実現した放射線遮蔽機能を有する複合体からなる構造体の製造が可能になる。
【0027】
本発明の第3の特徴としては、本発明によって提供される放射線遮蔽機能を有する複合体を、下記の異なる2種類の構成のものにできる点が挙げられる。まず、いずれの構成の場合も、本発明で規定する放射線遮蔽粉体群から選択される1種又は2種類以上の放射線遮蔽粉体と、粉末状ではないシリカ系バインダーとを含有してなる混合物からなる成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)を用いる。そして、該多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の全部に、溶融した、融点が200℃以上、900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金の少なくともいずれかの溶湯が含浸・充填されて固化して複合化されてなる構成の、アルミニウム等をマトリックスとした放射線遮蔽粉体を高い含有率で有する複合体を提供することができる。また、上記した多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の少なくとも25体積%以上に、液状の有機無機封孔剤を含浸させた後、200℃以上、900℃以下の温度に加熱することで、前記液状の有機無機封孔剤が固化して複合化されてなる、放射線遮蔽粉体を高い含有率で有する別の構成の複合体を提供することができる。
【0028】
さらに、上記したいずれの構成の複合体の場合も、プリフォームを作製する際に用いる粉末状ではないシリカ系バインダーが、複合化に用いる放射線遮蔽粉体が分解されることのない温度で、プリフォームを形成できる特性のものであることで、下記の効果が得られる。すなわち、このように構成されてなることで、本発明の放射線遮蔽機能を有する複合体は、本発明で規定する放射線遮蔽粉体が、アルミニウム等又は有機無機封孔剤で結合されてなる強度が高いものになり、加えて使用した放射線遮蔽粉体が分解されることがなく、300℃以上の高温度でも使用できるものになる。以下、本発明の明細書でいう「溶融したアルミニウム」或いは「アルミニウム溶湯」とは、溶融したアルミニウム金属を代表例として記載しものである。すなわち、本発明の明細書では、「溶融したアルミニウム」或いは「アルミニウム溶湯」の語を、溶融したアルミニウム金属のみならず、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金(例えば、錫や鉛を主成分とした低融点合金のはんだ類や、亜鉛合金等)の溶湯も含む意味で記載している。本発明の明細書で「アルミニウム溶湯」と表現している中の、低融点金属又は該低融点合金は、融点が200℃以上のものを意味している。また、本発明では、融点が300℃以上である低融点金属又は該低融点合金を用いることが好ましい。すなわち、本発明者らの検討によれば、融点が300℃未満である低融点金属又は低融点合金を用いた場合は、その用途によっては得られる複合体の耐熱性が十分でない場合があるので好ましくない。
【0029】
本発明の第4の特徴は、本発明者らの検討によれば、放射線遮蔽粉体と複合化する際の溶湯として高温で溶融したアルミニウム金属或いはアルミニウム合金を用いた場合には、下記の課題があったが、この点の問題が解決できた点が挙げられる。本発明によれば、例えば、アルミニウムとの反応で空気中の水分との分解反応を示すAlが生成する炭化ホウ素や、溶融したアルミニウムとの高温での反応によるAl、BaOとSOへの分解反応が生じる硫酸バリウムや、900℃超の温度で、酸化劣化、熱分解、不安定物質の生成が生じる、硫酸ストロンチウム、タングステン、鉄粉末、ホウ酸アルミニウムのような放射線遮蔽粉体であっても原料として利用することができ、安定して300℃以上の温度でも使用可能な複合体を製造することができる。したがって、本発明で規定した通りの多種多様な放射線遮蔽粉体の利用が可能になるので、本発明によれば、複合体の応用範囲を格段に広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1は、第一の製造方法で行う、プリフォーム2にアルミニウム溶湯1で鋳造する様子を示す模式図である。
図1A】プレス機10の金型内に加熱したプリフォーム2を設置し、アルミニウム溶湯1を注ぐことを示す模式図である。
図1B】高圧プレスの上パンチ5と下パンチ4でプリフォーム2にアルミニウム溶湯1を鋳造後、含浸させる様子を示す模式図である。
図1C】冷却後、下パンチ4を押し上げて含浸したアルミニウム溶湯が固化した状態の複合体3を取り出す様子を示す模式図である。
図2】第二の製造方法で行う、プリフォーム2の空隙に液状の有機無機封孔剤32を含浸させる際に使用する減圧圧力容器30の概略を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明を構成する放射線遮蔽機能を有する複合体は、放射線遮蔽効果がある粉体が複合化されてなる該粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体であって、前記放射線遮蔽効果がある、酸化ガドリニウム(Gd)粉末、炭化ホウ素(BC)粉末、酸化ホウ素(B)粉末、ホウ素(B)粉末、硫酸バリウム(BaSO)粉末、酸化ストロンチウム(SrO)粉末、タングステン(W)粉末、酸化タングステン(W)粉末、タングステンカーバイド(WC)粉末、モリブデン(Mo)粉末、酸化モリブデン(MoO)粉末、鉄(Fe)粉末、酸化鉄(Fe)粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の放射線遮蔽粉体と、粉末状ではないシリカ系バインダーとを含有してなる混合物からなる成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の全部に、溶融したアルミニウムが含浸・充填されて固化して複合化されてなる構成のもの、或いは、該多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙の少なくとも25体積%以上に、液状の有機無機封孔剤が含浸されて固化して複合化されてなる構成のものであり、且つ、前記粉末状ではないシリカ系バインダーが、前記放射線遮蔽粉体が分解されることのない温度で前記成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)(以下、単にプリフォームとも呼ぶ)を形成できる特性のものであることを特徴とする。
【0033】
上記した構成の本発明の放射線遮蔽機能を有する複合体は、例えば、以下に挙げる第一の手段或いは第二の手段からなる本発明の製造方法によって、放射線遮蔽粉体の分解を抑制しながら安定した複合体が得られるので、先に挙げた本発明の種々の効果が得られる使用目的に合致した良好な品質の複合体を、簡便に安定して調製することができる。
【0034】
上記した特定の構成からなるプリフォームの空隙の全部に、「溶融したアルミニウム」が含浸・充填されて固化して複合化されてなる構成の本発明の放射線遮蔽機能を有する複合体は、下記の本発明の第一の製造方法によって簡便に安定して調製することができる。なお、先に述べた通り、「溶融したアルミニウム」、「アルミニウム溶湯」は、融点が200℃以上、好ましくは300℃以上、900℃以下である、アルミニウム金属、アルミニウム合金、低融点金属及び低融点合金の少なくともいずれかの溶湯を意味している。
【0035】
本発明の第一の製造方法は、アルミニウムをマトリックスとし、放射線遮蔽効果がある粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体を調製するための複合体の製造方法であって、酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程、及び、該工程で得たプリフォームに、300℃以上、900℃以下の温度でアルミニウム溶湯を鋳造して、20MPa以上、200MPa以下の高圧で、前記プリフォーム内に前記アルミニウム溶湯を含浸させる目的で3分間~15分間、例えば、3~5分間程度保持した後に、前記アルミニウム溶湯が含浸した状態の複合体を直ちに取り出して冷却して、該複合体中の放射線遮蔽粉体の分解、Al等の不安定物質の生成を抑制する工程、を有することを特徴とする。
【0036】
本発明の第一の製造方法では、さらに、前記プリフォームを作製する工程で、前記放射線遮蔽粉体に、アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末を加えて、該アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又は該セラミックス粉末と前記放射線遮蔽粉体との合計を100質量%とした場合に、前記粉末状ではないシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量%添加してプリフォームを作製することもできる。このように構成することで、アルミニウム又はアルミニウム合金をマトリックスとし、放射線遮蔽効果がある粉体を合計で3体積%以上85体積%以下の範囲内で適宜にコントロールして含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体の調製を、より容易にすることができる。この点については後述する。
【0037】
上記した特定の構成からなるプリフォームの空隙の少なくとも25体積%以上に、液状の有機無機封孔剤が含浸されて固化して複合化されてなる構成の本発明の放射線遮蔽機能を有する複合体は、下記の本発明の第二の製造方法によって簡便に安定して調製することができる。
【0038】
本発明の第二の製造方法は、放射線遮蔽効果がある粉体が複合化されてなる該粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる複合体を調製する放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法であって、酸化ガドリニウム粉末、炭化ホウ素粉末、酸化ホウ素粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム粉末、酸化ストロンチウム粉末、タングステン粉末、酸化タングステン粉末、タングステンカーバイド粉末、モリブデン粉末、酸化モリブデン粉末、鉄粉末、酸化鉄粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上の前記放射線遮蔽効果がある粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程、該プリフォームを作製する工程で得たプリフォームの空隙に、不揮発成分を30質量%以上含有した粘度が50mPa・s以下である液状の有機無機封孔剤を、真空含浸させた後、或いは、真空含浸後に加圧して10気圧以下の圧力で含浸させた後、300℃以上、900℃以下の温度に加熱して、前記液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物を、前記プリフォームの空隙100体積%対して25体積%以上残存させて、前記放射線遮蔽粉体と液状の前記有機無機封孔剤に由来する成分と複合化する複合化工程、を有することを特徴とする。
【0039】
<多孔質成型体(プリフォーム)の作製工程>
以下に、上記した第一及び第二の、本発明の放射線遮蔽機能を有する複合体の製造方法の詳細についてそれぞれ説明する。上記に記載した通り、第一及び第二の製造方法を構成する、多孔質成型体(プリフォーム)を作製する工程は同様である。したがって、まず、プリフォームを作製する工程について説明する。
【0040】
[原料の放射線遮蔽粉体等]
プリフォームを作製するための原材料に使用する放射線遮蔽粉体として、本発明では、酸化ガドリニウム(Gd)粉末、炭化ホウ素(BC)粉末、酸化ホウ素(B)粉末、ホウ素粉末、硫酸バリウム(BaSO)粉末、酸化ストロンチウム(SrO)粉末、タングステン(W)粉末、酸化タングステン(W)粉末、タングステンカーバイド(WC)粉末、モリブデン(Mo)粉末、酸化モリブデン(MoO)粉末、鉄(Fe)粉末、酸化鉄(Fe)粉末及び酸化鉄を主成分とするフェライト粉末からなる群から選択された1種類又は2種類以上を使用する。従来技術では、放射線遮蔽粉体として鉛粉末や酸化鉛粉末を単味で使用するのが一般的である。しかし、本発明では、これらの放射線遮蔽粉体の利用は、構造体(複合体)として重量が大きくなるのと、環境への影響に配慮することに加え、これらの材料は融点が低く、本発明の複合体を効果的に得るために有用な本発明の製造方法には不向きであるので使用しない。
【0041】
本発明では、上記に挙げた放射線遮蔽粉体に加えて複合体における放射線遮蔽粉体の充填率を下げるため、アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末を添加することができる。このようにすることで、本発明の複合体を構成する放射線遮蔽粉体の充填率(体積率)を広範な状態に自在にコントロールすることが可能になる。この場合には、本発明の製造方法を構成する多孔質成型体(プリフォーム)の作製工程において、本発明で規定する特定の放射線遮蔽粉体に、さらに必要に応じてアルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末を加え、これら粉末の合計体積100v%に、前記粉末状ではないシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量%(w%)を添加してプリフォームを作製する。その製法は、アルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末を必要に応じて使用すること以外は本発明の複合体の製造方法と同様である。このため下記の説明では、上記した任意の構成を含めてプリフォームを作製する方法について説明する。
【0042】
本発明の製造方法で用いる放射線遮蔽粉体及び、必要に応じて使用するアルミニウム粉末又はアルミニウム合金粉末又はセラミックス粉末(以下、「アルミニウム粉末等」とも呼ぶ)の平均粒径は、0.3μm以上500μm以下であることが好ましい。平均粒径を0.3μm以上にする理由は、それよりも小さい平均粒径の材料では、粒子同士が凝集し易く、凝集した状態のいわゆるダマになり易く、また、2種類以上の粉末を用いた場合に均一混合が困難になる恐れがあるので好ましくない。加えて、上記した粉体(粉末)に添加するシリカ系バインダーを均一混合しにくくなるといった傾向もある。また、平均粒径が0.3μm未満の粉末を使用した場合は、プレス成形、CIP成形、鋳込み成形等で成形して得られたプリフォームにおける粉末の充填率が低くなる傾向があるので、本発明を特徴づける放射線遮蔽粉体の体積率(Vf)が高いプリフォームを作製することができなくなる恐れがある。一方、500μmを超える大きい粉末を使用した場合も粉末の充填性に劣り、平均粒径が小さ過ぎる粉末を使用した場合と同様にVfの高いプリフォームを作製できなくなる恐れがある。また、本発明者らの検討によれば、上記したような粗い粒子は表面積が小さいので、放射線遮蔽粉体及び必要に応じて使用するアルミニウム粉末等に添加するシリカ系バインダーによるバイダー効果が低く、強固なプリフォームを作製することができなくなるので、この点でも好ましくない。
【0043】
本発明における放射線遮蔽粉体及び必要に応じて使用するアルミニウム粉末等の「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(メジアン径)である。
【0044】
放射線遮蔽粉体の種類、粒度によっても異なるが、本発明者らの検討によれば、本発明の製造方法を構成するプリフォームの作製工程で通常得られるプリフォームの体積率(Vf)は、50v%前後になるのが一般的である。本発明者らの検討によれば、プリフォーム中の放射線遮蔽粉体の体積率Vfを大きくする場合は、大きい平均粒径の粒子と小さい平均粒径の粒子を配合して、大きい粒子の間に小さな粒子が入るように配合することが好ましい。また、本発明において、放射線遮蔽粉体の2種類以上を配合する場合は、互いに平均粒径が異なる同じ種類の放射線遮蔽粉体同士の配合であっても、種類の異なる放射線遮蔽粉体同士の配合であってもよい。本発明において必要なVfのプリフォームを作製したい場合は、予めテスト配合を行ってプリフォームの嵩比重から計算して、プリフォームの作製に用いる粒子の配合を決定すればよい。本発明者らの検討によれば、本発明の製造方法で製造することで、粒子の適宜に行う配合によりVfが85v%までのプリフォームを作製することが可能であり、その結果、これまでの従来技術では製造することができなかった、放射線遮蔽粉体の含有率が高い複合体の提供が実現可能になる。
【0045】
放射線遮蔽機能を有する複合体の使用では、様々な状況が考えられる。例えば、放射線遮蔽機能を有する構造体中の放射線遮蔽粉体の体積率(Vf)が高い方が、放射線遮蔽効果が大きい。しかし、用途によってはVfが低くてもよい場合や、また、生産コストを考慮して放射線遮蔽粉体のVfを下げる場合も考えられる。これに対し、本発明の製造方法の、必要に応じてアルミニウム粉末等を使用するとした構成の実施形態によれば、本発明で規定する特定の放射線遮蔽粉体にアルミニウム粉末等を必要量添加するという極めて簡便な手段で、作製したプリフォーム中の放射線遮蔽粉体の含有量を適宜に、より広範な範囲にコントロールすることができる。例えば、放射線遮蔽粉体のVfが50v%のプリフォームには、次の工程でアルミニウム溶湯が50v%含浸することになる。これに対して、例えば、アルミニウム粉末を添加して形成されてなるプリフォームを使用すると、プリフォーム中のアルミニウムと、後工程で含浸させた、アルミニウム金属又はアルミニウム合金又は特定の低融点金属又は特定の低融点合金の溶湯(本発明の明細書で表記する「アルミニウム溶湯」)との全量が複合体中のアルミニウムの量になるので、該複合体で作製した放射線遮蔽機能を有する構造体中のアルミニウムの量を多くすることができる。すなわち、アルミニウム粉末等をプリフォームに添加することにより放射線遮蔽機能を有する構造体中の体積率Vfを自由にコントロールすることが可能になる。
【0046】
上記したように、例えば、特定の放射線遮蔽粉体の大きい粒子と小さい粒子を併用する配合の採用や、必要に応じて行うアルミニウム粉末等の添加などの手段を適宜に用いることで、本発明の製造方法によれば、放射線遮蔽粉体のVf(充填率)が3v%~85v%である広範囲に配合量がコントロールされた、放射線遮蔽粉体とアルミニウム溶湯からなる複合体の製作を簡便にすることができる。本発明者らの検討によれば、放射線遮蔽粉体の含有率が3v%未満の複合体では、放射線遮蔽効果が低くなり過ぎるので実用的ではない。また、本発明者らの検討によれば、従来技術では、粒子の配合及び様々な成形法を駆使したとしてもVfが85v%以上を実現することは難しい。
【0047】
[プリフォームを作製する工程]
本発明の製造方法を構成するプリフォームを作製する工程では、まず、下記のようにしてプリフォームの形成材料を用意する。本発明で規定する先に説明した特定の放射線遮蔽粉体群の中から1種類或いは2種類以上の粉末を選択し、必要に応じて添加したアルミニウム粉末等を、ボールミルやパドル式撹拌機等で十分に撹拌混合する。例えば、放射線遮蔽粉体として比重の異なるタングステン粉末(比重:19.3)と、炭化ホウ素粉末(比重:2.52)を用い、必要に応じてアルミニウム粉末(比重:2.7)を混合する場合は、比重の違いによる分離を防ぐため、混合容器全体が回転するV型混合機やドラム缶回転混合機を使用することが好ましい。
【0048】
次に、上記した本発明で規定する放射線遮蔽粉体と必要に応じて使用するアルミニウム粉末等の混合粉末に、粉末状ではないシリカ系バインダーを加えて混合してなる混合物を成形した後に、得られた成型体を300℃以上、900℃以下の温度で焼成して多孔質成型体(プリフォーム)を作製する。以下、これらの構成について説明する。
【0049】
(粉末状ではないシリカ系バインダー)
本発明を構成する粉末状ではないシリカ系バインダーとしては、例えば、水ガラス(ケイ酸ソーダ)、コロイダルシリカ、液状シリコーン樹脂又はシリコーン樹脂を有機溶媒に溶解してなるシリコーン樹脂溶液及び900℃以下の温度で加熱硬化してなるシリカと有機物からなるシリカアルコキシドからなる群から選ばれる少なくともいずれかである液状のシリカ系バインダー(以下、「液状のシリカ系バインダー」とも呼ぶ)であることが適当である。これらの液状のシリカ系バインダーは、使用する放射線遮蔽粉体等の量に応じて必要量を添加する。
【0050】
本発明で使用する上記したような液状のシリカ系バインダーの添加量は、SiOに換算して、必要に応じてアルミニウム粉末等を含む放射線遮蔽粉体の混合物粉末の100質量部に対して、例えば、0.5~10質量部程度の量で添加することが適当である。本発明者らの検討によれば、0.5質量部未満の量では、バインダーとしての強度発揮が小さいので好ましくない。一方、10質量部を超えた量でもバインダーとしての機能を発揮するが、放射線遮蔽粉体の相対含有率が低くなるのでこれ以上添加する必要がない。
【0051】
上記したエチルシリケート等の液状のシリカ系バインダーは、シリカ(Si)と有機物の化合物であり、熱分解して超微粉SiOになる。水ガラスは、水に溶解したケイ酸ナトリウムで加熱すると超微粉SiOバイダーとなる。コロイダルシリカとしては、数十mμ(nm)以下の極微細なシリカ粒子が水又は有機溶媒にコロイドして分散しているものを使用することが好ましい。これらのシリカ系バインダーを使用する理由は、次の工程で使用するプリフォームを強固にするためである。
【0052】
低温で熱分解してSiOに変化するシリカを含む、エチルシリケートやシリコーン樹脂、同様に低温でSiOを生成する、水ガラス又は溶媒に分散された超微細なSiOのコロイダルシリカを使用することにより、バインダーと放射線遮蔽粉体とを均一に混合することができる。本発明者らの検討によれば、これらのシリカ系バインダーは、超微粉であること、また、本発明の製造方法の工程で、分子レベルでプリフォーム中に均一に混合した状態からアモルファス(非結晶)の状態を経て、均一なまま超微粉SiOが生成するので強固なプリフォームを作製することができる。
【0053】
次の工程では、上記で用意したプリフォームの原材料である混合粉末を、成形・焼成してプリフォームを作製する。本発明において重要なことは、本発明の複合体を製造する過程で、本発明で目的とする機能が損なわれないようにするために、放射線遮蔽粉体の分解が生じないようにすることである。このため、本発明の製造方法では、成形・焼成してプリフォームを作製する際の焼成温度を900℃以下の低温にする必要がある。これに対し本発明に使用する上記した液状のシリカ系バインダーはいずれも、900℃以下でも十分にバインダーとしての効果を発揮する。ここで、通常のセラミックスの製造工程でシリカ系バインダー使用する場合は、サブミクロンから数μmのシリカ粉末を使用するのが一般的である。そして、従来技術では、バインダーにシリカ粉末を使用する場合は、得られるプリフォームの強度を発揮させるため、1100℃以上の温度で焼成してプリフォームを作製する必要がある。しかし、本発明の複合体の技術に、上記した従来技術を応用することはできない。本発明の製造方法では、成形・焼成してプリフォームを作製する際や、作製したプリフォームにアルミニウム溶湯を含浸させる場合等において、放射線遮蔽粉体の分解が生じないようにする必要があるため、900℃以下の低温でなければならない。この点については、後述する。
【0054】
本発明の製造方法では、上記したアルミニウム粉体等を含んでもよい1種類又は2種類以上の均一に混合した放射線遮蔽粉体に、上記したような液状のシリカ系バインダーを少量ずつ添加する。この際に使用する混合機は、高速剪断力で高速で撹拌するヘンシェルミキサーや、細い針金が鳥かご状の回転体を具備した撹拌機を使用することが好ましい。また、上記液状のシリカ系バインダーの添加の際に、必要に応じて、PVA、PVB等の有機バイダーを本発明の目的を損なわない範囲で適量添加してもよい。
【0055】
次に、上記のようにして液状のシリカ系バインダーを添加して均一に混合して得られた耐放射線遮蔽粉体を有する混合物を用いて、一般的なプレス成形、タッピング成形、CIP成形などの方法で成型体を作製する。
【0056】
本発明の製造方法では、上記のようにして得られた成型体を300℃~900℃の温度で加熱焼成して、硬化してプリフォームを作製する。本発明者らの検討によれば、300℃未満の温度ではシリカ系バインダーの効果が発揮できず、強固なプリフォームを製作することができない。一方、300℃以上の温度であれば、添加した液状のシリカ系バインダーの効果が発揮されて強固なプリフォームを作製できる。また、以下の理由により、本発明の製造方法では900℃以下の温度で焼成してプリフォームを作製する必要がある。
【0057】
例えば、放射線遮蔽粉体として炭化ホウ素(BC)を使用した場合は、空気中の高温下で、BOとCOに分解する恐れがあるので、900℃以下の温度で焼成する必要がある。また、プリフォームの形成材料に炭化ホウ素(BC)を使用した際に、必要に応じてアルミニウム粉末等を添加した場合は、高温で、一部炭化ホウ素とアルミニウムから生成したAlが下記の分解反応を起こすことがある。下記分解反応で生じるAlは不安定で、空気中の水分と反応して、Al(OH)とCHに分解する。しかし、複合体中にAlが残存するのは好ましくない。
C+Al→Al+B
【0058】
また、放射線遮蔽粉体として硫酸バリウム使用した場合は、BaSOは高温になるとBaOとSOに分解するので、この場合も高温で焼成することは好ましくない。また、下記のような分解反応を起こす場合もあるので、900℃超の高温で焼成することは好ましくない。
Al+BaSO→BaO+Al+SO(ガス)
【0059】
放射線遮蔽粉体としてタングステン(W)を使用した場合は、タングステンは、空気中で高温になるとWOとなり、シリカ系バインダーを添加した効果が損なわれるので好ましくない。本発明者らの検討によれば、上記した一連の反応を押さえるため、成型体の焼成温度は900℃以下の温度にすることが好ましい。このようにすることにで、分解、酸化が抑えられ安定した放射線遮蔽粉末のプリフォームの製造が可能になる。
【0060】
<複合体の作製工程>
次に、上記のようにして作製した多孔質成型体(プリフォーム)の空隙に、本発明の第一の製造方法では、空隙の全部に、溶融したアルミニウム溶湯を高圧で含浸・充填して固化することで複合化して放射線遮蔽機能を有する複合体を製造する。また、本発明の第二の製造方法では、プリフォームの空隙の一部或いは全部に液状の有機無機封孔剤を真空含浸させた後、或いは、真空含浸後に加圧して含浸させた後、300℃以上、900℃以下の温度に加熱して固化して複合化されてなる構成の放射線遮蔽機能を有する複合体を製造する。以下、本発明の第一の製造方法及び本発明の第二の製造方法における複合体の作製工程について、それぞれ説明する。
【0061】
[第一の製造方法]
本発明の第一の製造方法では、アルミニウムをマトリックスとし、放射線遮蔽効果がある粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体を調製する。具体的には、先に説明したようにして作製したプリフォームを用い、該プリフォームに、300℃以上、900℃以下の温度で、アルミニウム金属、アルミニウム合金、亜鉛、錫及び鉛からなる群から選ばれる低融点金属又は該低融点金属とそれ以外の金属との低融点合金等の溶湯(本願明細書では、これらの溶湯を含むものをアルミニウム金属及びアルミニウム合金を代表して「アルミニウム溶湯」とも呼んでいる)を鋳造して、20MPa以上、200MPa以下の高圧で、前記プリフォームの空隙全体に前記アルミニウム溶湯を含浸させる目的で3分間~15分間、例えば、3~5分間程度保持して、その後、アルミニウム溶湯を含浸させ始めてから15分間以内で直ちに取り出して冷却して複合体を得る。より具体的には、下記のような手順で複合化させる。
【0062】
含浸するアルミニウム溶湯の温度は、それぞれの金属が溶ける温度以上、通常、各金属の融点よりも約50℃~150℃高い温度にする。例えば、アルミニウム金属又はアルミニウム合金の場合は700℃~800℃程度の温度とする。また、低融点合金を用いる場合では、はんだ合金の場合は350℃~500℃程度の温度とし、亜鉛合金の場合は450℃~550℃程度の温度とすることが適当である。どの金属の溶湯を用いる場合も、本発明においては、前記したようにして作製したプリフォームの空隙に、900℃以下の溶湯を含浸させるようにすることが必要である。
【0063】
まず、アルミニウム溶湯の含浸に供するため、先に作製したプリフォームを、300℃以上、900℃以下の温度で予熱する。プリフォームの予熱温度が300℃未満の低い温度の場合は、次に説明するアルミニウム溶湯を鋳造・含浸させる工程で、含浸させたアルミニウム溶湯が速く冷却固化してしまい、プリフォームの空隙全体に含浸させることが難しくなるので好ましくない。本発明者らの検討によれば、プリフォームの予熱温度が300℃以上の温度であればアルミニウム溶湯はプリフォームの空隙全体に含浸する。しかし、900℃を超える予熱温度では、例えば、放射線遮蔽粉体である炭化ホウ素と、アルミニウム溶湯の含浸に供したアルミニウムが反応してAlが生成することが生じたり、BaSOが分解反応を起こしたりする場合があるので好ましくない。
【0064】
次に、上記のようにして予熱したプリフォームへアルミニウム溶湯を含浸して複合化させる工程について、図1を参照して説明する。具体的には、以下の順序で、先に説明したようにして作製したプリフォームにアルミニウム溶湯の含浸を行って、複合化させる。
【0065】
(1)図1Aに示したように、予めバーナー等で約200℃~300℃で予熱したプレス金型10の下パンチ4に、300℃~900℃で予熱したプリフォーム2を載せる。次に、300℃~900℃の温度に溶解したアルミニウム溶湯1を、プレス金型10に鋳造する。アルミニウム金属又はアルミニウム合金を用いる場合であれば、好ましくは700℃~900℃の温度の溶湯を用いる。
(2)次に、図1Bに示したように、プレス機10の上パンチ5を載せて荷重をかける。アルミニウム溶湯1の圧力が20Mpa~200Mpaになるように、プレス機10の上パンチ5に荷重をかけてプリフォーム2の多孔(空隙)にアルミニウム溶湯1を含浸させる。この際、プリフォーム2の空隙内にアルミニウム溶湯1を含浸させる目的で3分間~15分間、荷重をかけた状態を保持する。
(3)次に、図1Cに示したように、プリフォーム2に含浸後直ちに(具体的には、アルミニウム溶湯の含浸をし始めてから15分以内程度後に)、下パンチ4の下部から突き上げて、アルミニウム溶湯1が含浸した状態の複合体3を直ちに取り出す。そして、できるだけ短時間で複合体3を冷却して、含浸したアルミニウム溶湯1を固化させる。
【0066】
下記に、上記した一連の多孔質成型体であるプリフォーム2へのアルミニウム溶湯1の含浸プロセスにおいて注意すべき点を説明する。まず、アルミニウム金属又はアルミニウム合金を用いる場合においては、鋳造温度が600℃未満では、アルミニウム溶湯が短時間で硬化してプリフォームの空隙全体に含浸しないことがあるので好ましくない。一方、鋳造温度が900℃を超える温度では、先に説明したように、例えば、放射線遮蔽粉体の炭化ホウ素(BC)が分解してAlが生成したり、放射線遮蔽粉体に硫酸バリウム(BaSO)を用いた場合であれば、BaSOが熱分解することがあるので好ましくない。
【0067】
本発明の第一の製造方法では、アルミニウム溶湯の含浸の圧力は、20MPa以上、200MPa以下とする。20MPa未満では、圧力が低すぎてプリフォームの空隙全体にアルミニウム溶湯が含浸しない場合があるので好ましくない。20MPa以上、200Mpa以下で十分含浸するので200MPaを超える圧力で加圧する必要はない。本発明者らの検討によれば、例えば、100Mpa程度の圧力でも良好な含浸ができる。
【0068】
高圧含浸して得た複合体は、3分間、好ましくは5分間程度保持した後、少なくとも、アルミニウム溶湯を含浸させ始めてから15分間以内で金型から取り出すようにする。アルミニウム溶湯をプリフォームの空隙に高圧含浸して得た複合体を、15分間を超えて長時間金型に保持すると、例えば、炭化ホウ素とアルミニウムが反応してAlが生成する場合があったり、BaSOが分解することがあり、本発明の規定に反する複合体になるので避けなければならない。
【0069】
上記の説明では、図1に示したように高圧のプレス機で、アルミニウム溶湯を多孔質成型体(プリフォーム)に高圧含浸させる方法を例示した。しかし、本発明はこれに限定されず、アルミニウム溶湯が20MPa以上でプリフォーム内に鋳造充填できる構成のものであればよく、例えば、ダイキャストマシン、スクウイーズキャストマシン等を使用してもよい。なお、冷却した複合体は、周囲をアルミニウムが取り囲んでいるので機械加工で除去して複合体を取り出す。以上で説明した本発明の第一の製造方法によれば、放射線遮蔽粉体のVfが3%~85v%を含有してなる安定で緻密な放射線遮蔽機能を有する複合体を作製することができる。
【0070】
[第二の製造方法]
本発明の第二の製造方法では、液状の有機無機封孔剤に起因する固化物が、先に説明したようにして得たプリフォームの空隙100体積%対して25体積%以上存在した状態で複合化されてなる、放射線遮蔽効果がある粉体を合計で3体積%以上、85体積%以下の範囲内で含有してなる放射線遮蔽機能を有する複合体を調製する。
【0071】
(液状の有機無機封孔剤)
本発明の第二の製造方法では、第二の製造方法を特徴づける液状の有機無機封孔剤として、粘度が50mPa・s以下の低粘性で、且つ、不揮発成分を30質量%以上含有してなる、例えば、下記に挙げるような3種の液状の化合物を用いることが好ましい。
(1)第1種
アルコールSi結合を有する液状のエチルシリケート〔Si(OC〕又は該エチルシリケートの一部が加水分解して2量体、4量体になった液状のオリゴマー、同様な、メチルシリケート〔Si(OCH〕等の液状のアルコキシド及びその一部が加水分解した液状のオリゴマー等の、不揮発成分が30質量%以上になるように調整されたアルコキシド化合物。
【0072】
(2)第2種
下記一般式のシロキサン結合を主鎖とする液状のシリコーン或いはその誘導体、溶媒で希釈溶解した不揮発成分が30質量%以上になるように調整されたシリコーン或いはその誘導体。一般式中のRは、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、アセチル基等の有機基である。具体的には、例えば、シリコーンオイルや、有機溶剤に溶かしたシリコーン接着剤などの液状の化合物を用いることができる。
【0073】
(3)第3種
アルコキシシラン誘導体であって、下記の反応式に示すように、空気中の水分と反応して縮合反応して、シリコーン酸素有機物(Si-O-R)を生成してなる液状のアルコキシシラン化合物。例えば、特許第3816354号公報に記載の一液常温硬化型封孔剤等の化合物を使用することができる。このようなものとしては、例えば、パーミエイト(登録商標、ディ・アンド・ディ社製)などの市販品を使用することができる。
【0074】
【0075】
(複合化の方法)
本発明の第二の製造方法では、放射線遮蔽粉体を原材料に用いて、先に説明したようにして作製されたプリフォームの空隙に、液状の有機無機封孔剤に起因する固化物が100体積%対して25体積%以上存在してなる、放射線遮蔽機能を有する複合体が得られる。具体的な手順としては、多孔質成型体(プリフォーム)の空隙に、不揮発成分を30質量%以上含有した粘度が50mPa・s以下である液状の有機無機封孔剤を、真空含浸させた後、或いは、真空含浸後に加圧して10気圧以下の圧力で含浸させた後、300℃以上、900℃以下の温度に加熱して、前記液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物を、プリフォームの空隙全体を100体積%とした場合に、空隙全体の25体積%(1/4)以上に残存させるようにして放射線遮蔽粉体と液状の有機無機封孔剤に由来する成分とを複合化させている。すなわち、プリフォームに占める空隙全体の割合は15v%~40v%程度であるので、有機無機封止剤に由来する成分は、その内の1/4以上、すなわち4v%~10v%以上、空隙内に残存したものになる。換言すれば、得られる複合体は、プリフォームを構成する放射線遮蔽粉体を含む混合物の焼成物が60v%~85v%と高い割合を占め、有機無機封止剤に由来する成分が4v%~10v%以上を占め、残部が空隙である構成のものになる。なお、放射線遮蔽粉体に混合させる液状のシリカ系バインダーの量は、本発明では、放射線遮蔽粉体100質量部に対して、液状のシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量部程度添加させることが好ましいとしていることから、構成する放射線遮蔽粉体の割合が高い複合体を得ることができる。これらの点は、第一の製造方法で得た複合体の場合も同様である。
【0076】
本発明の第二の製造方法で用いる先に例示したような液状の有機無機封孔剤は、プリフォームに含浸し易いように粘度が50mPa・s以下の低粘性のものを用いる。粘度が50mPa・s超では、有機無機封孔剤がプリフォーム細部に含浸しにくくなるので、強固な複合体が得られない恐れがある。また、液状の有機無機封孔剤は、該封孔剤100w%に対して、不揮発分を30w%以上含有していることが肝要である。本発明の第二の製造方法では、有機無機封孔剤を、プリフォームの空隙全体100v%に対して少なくとも25v%存在するように空隙内に含浸させた後、200℃~900℃に加熱して、放射線遮蔽粉体と有機無機封孔剤とを複合化させている。すなわち、上記した温度で加熱することで、プリフォームの空隙内に含浸された液状の有機無機封孔剤は、いずれも固体である、液状の有機無機封孔剤の固化物或いは該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物となって、プリフォームの空隙内に残存することになる。
【0077】
先に説明したようにして複合体を作製した本発明の製造方法に用いるプリフォームは、プリフォーム全体の100v%に対して、空隙が約15~40v%程度存在する多孔質体となる。したがって、液状の有機無機封孔剤をプリフォームに含浸させて、その後、加熱処理するとした本発明の第二の製造方法で得られる複合体は、液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物が、プリフォームの空隙全体を100v%とした場合に、その内の25v%以上を占める割合で存在する複合体となる。このことは、本発明の第二の製造方法で得られる複合体は、プリフォームの空隙の一部(25v%以上)或いは全部に液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物が固定された構成の複合体であることを意味している。
【0078】
本発明者らの検討によれば、本発明の第二の製造方法で得られる複合体における液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物の占める量が、プリフォームの空隙全体100v%に対して25v%未満の場合は、強固で実用性に優れる放射線遮蔽機能を有する複合体にすることができない。また、本発明の第二の製造方法で得られる複合体の好ましい構成としては、上記に加えてプリフォーム全体100v%に対して、空隙内に残存させた液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物の量を約5v%以上とすることが挙げられる。例えば、プリフォームに占める空隙の割合が20v%の場合、その25%(1/4)、すなわちプリフォームの100v%に対しては5v%が有機無機封孔剤となる。上記した例の場合、プリフォームを構成する放射線遮蔽粉体を含む混合物の焼成物は80v%を占める。先に述べたように、プリフォームを作製する際における放射線遮蔽粉体に混合させる液状のシリカ系バインダーの量は、放射線遮蔽粉体100質量部に対して液状のシリカ系バインダーをSiO換算で0.5~10質量部程度添加させることが好ましいとしている。したがって、上記した例の複合体を構成する放射線遮蔽粉体とシリカ系バインダー及び有機無機封孔剤の全量は、70~79.5v%と高い比率を示すものになり強固な複合体となる。
【0079】
本発明の第二の製造方法では、プリフォームを作成する際に必要になるシリカ系バインダーと、得られたプリフォームに含浸させる液状の有機無機封孔剤が、同じ化合物であってもよい。しかし、プリフォームの空隙に含浸させる際に使用する液状の有機無機封孔剤は、プリフォームに含浸させて、最終的にプリフォーム内の空隙に含浸した封孔剤が固化した状態で残存させる必要があるので、粘度が50mPa・s以下の低粘性で、不揮発分が30w%以上含有されているものであることが必要になる。よって、これらの要件を満たすシリカ系バインダーであれば共用することも可能である。
【0080】
先に述べたように、本発明の第二の製造方法では、液状の有機無機封孔剤を含浸させた状態のプリフォームを、200℃以上、900℃以下の温度で加熱処理する。この場合の加熱温度を200℃以上としたのは、下記の理由による。加熱する温度を200℃以上とすることで、液状の有機無機封孔剤として用いた化合物における、シロキサン結合、エチルシリケートのオリゴマー又はシリコーン酸素有機物(Si-O-R)を生成する液状のアルコキシシラン化合物などを加熱分解させて、シリカ系バインダー又はSi-OR系有機無機バイダーとして機能させ、これによりプリフォームを強固にするためである。また、加熱する温度を900℃以下の温度にしたのは、プリフォームを構成しているBCやBaSO等を含む放射線遮蔽効果がある粉体を分解又は酸化させないようにするためである。
【0081】
本発明の第二の製造方法の手順の概略について図2を参照して説明する。図2中の30は、本発明の第二の製造方法で使用する減圧圧力容器である。減圧圧力容器30内に設置した室内容器34の中に、空隙に有機無機封孔剤31を含浸させる前の状態のプリフォーム32を設置する。減圧圧力容器30の開閉治具33を閉め、減圧圧力容器30に設けた減圧口36から真空ポンプ(不図示)を用いて減圧圧力容器30内を減圧する。減圧して減圧圧力容器30内がほぼゼロ気圧になったところへ、有機無機封孔剤31を、有機無機封孔剤投入容器35から、室内容器34中に少しずつ投入する。その際、有機無機封孔剤31の投入量は、プリフォーム32に有機無機封孔剤31が全体に含浸し、さらに、プリフォーム32全体が浸される量を予め予測しておく。
【0082】
上記のようにして有機無機封孔剤31を投入後、約5~10分間程度真空を保ち、有機無機封孔剤31をプリフォーム32の空隙に真空含浸させる。含浸終了後、次に、徐々に大気開放して、減圧圧力容器30内に空気を導入する。減圧圧力容器30内が大気になってから、次に、加圧口37から、コンプレッサー等(不図示)からの圧縮空気で10気圧程度に減圧した空気を徐々に導入し、4気圧程度加圧後、約5~10分間キープして、有機無機封孔剤31をプリフォーム32内に含浸させる。
【0083】
その後、減圧圧力容器30の圧縮空気を徐々に開放し、大気圧になってから、空隙内に液状の有機無機封孔剤の固化物及び/又は該液状の有機無機封孔剤の加熱処理物が固定されたプリフォームを取り出し、徐々に乾燥、300~400℃に加熱し、放射線遮蔽機能を有する複合体を得る。
【実施例
【0084】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。放射線遮蔽粉体に、粉末状ではないシリカ系バインダーを含有してなる混合物からなる成形・焼成物である多孔質の成型体(プリフォーム)の空隙に、アルミニウム溶湯を含浸させて複合化する方法と、有機無機封孔剤を含浸させて複合化する2つの製造方法についての実施例及び比較例を用いて、具体的に本発明を説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。文中、%とあるのは特に断らない限り体積%である。遮蔽効果の測定に放射線を扱う必要がある特殊事情から、実施例1~実施例3の複合体について、外部の測定機関に放射線遮蔽率の測定を依頼した。外部機関によって測定された放射線遮蔽率の値は従来の素材よりも高い値を示した。
【0085】
<プリフォームにアルミニウム溶湯を含浸する方法の例>
[実施例1]
平均粒径が16μmのBC粉末#800(同人産業社製)450gを、V型混合機で30分間混合した。混合した粉体に液状のバインダーとしてエチルシリケートを5g加え、それら全部を、粉体に剪断力がかかるヘンシェルミキサーに入れて15分間高速撹拌して均一に混合した。得られた混合粉を100mm×100mmの金型に入れ、上蓋をかけ160kgf/cmの圧力でプレス成形を行った。この成型体を焼成炉に入れて、50℃/時間の昇温速度で400℃まで上げ、その後400℃で3時間保持して焼成し、その後、自然冷却した。得られた焼結体(プリフォーム)は、100mm×100mm×35mmの形状を有し、その重量は449gあった。炭化ホウ素(BC)の真比重2.51から計算して、このプリフォームは、嵩比重が1.31で、炭化ホウ素の充填率(Vf)は52%、空隙が48%のプリフォームであった。このプリフォームを昇温速度100℃/時間で昇温し、500℃で保持して次に行う高圧プレスによるアルミニウム含浸のため、加熱した状態で待機した。
【0086】
高圧プレス機に配備されている内径300φの金型をバーナーで約250℃まで加熱した。そして、加熱状態で待機させていたプリフォームをプレス機の金型に入れ、800℃で溶解したアルミニウムの溶湯を金型内に注ぎ、下記のようにして高圧鋳造した。図1A及び図1Bに示したように、800℃で溶解したアルミニウム溶湯1を、プリフォーム2を入れた前記金型内に注いだ後、直ちにプレス機10の上パンチ5を下ろして、アルミニウム溶湯1の圧力が70MPaになるように上パンチ5に荷重をかけた。先述したように金型の内径が300φなので、プレス機10の荷重としては約500tに該当する。
【0087】
上記荷重を掛けたまま5分間保持した後、上パンチ5を外し、直ちに下パンチ4を突き上げて含浸体(複合体)3をプレス機の上側まで持ち上げて(図1C参照)、自然冷却を行った。そして、取り扱いができるように冷却がされた後、複合体3の周りを取り囲んでいる固化したアルミニウムを機械加工で除去して複合体3を取り出した。
【0088】
取り出した複合体の比重を測定したところ2.61であった。この値は、プリフォームの空隙にアルミニウムが完全に含浸した計算値とほぼ一致したので、上記で取出したものは、BCとアルミニウムの緻密な複合体であると結論した。比重が2.52の軽い炭化ホウ素の含有率(体積充填率率)が52v%と高含有率であったことで、比重が2.61の軽い複合体を製作することができた。また、得られた複合体の一部を切り取って表面のX線回折測定を行ったところ、BCが分解したことで生じるAlの生成については確認できなかった。
【0089】
上記で得られたBCの体積充填率(Vf)52v%、厚み35mmの素材について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。その結果、カリホルニウム(Cf)の同位体の中性子線Cf252の遮蔽効果は61%であり、高い値を示した。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061に基づいて曲げ試験を行った結果、183Mpaと高強度であった。これらのことは、本実施例で得られた複合体は、原料に用いた、軽量で且つ放射線遮蔽効果に優れるBC粉末が分解することなくそのままの状態で複合化されて、BC粉末の持つ特性を効果的に併せ持つ有用な素材であることを示している。
【0090】
[実施例2]
平均粒径が70μmのBC粉末#180(同人産業社製)230gと、実施例1で使用したと同様の平均粒径が16μmのBC粉末#800を260gとを用い、V型混合機で30分間混合した。混合した粉末に液状のバインダーとしてエチルシリケートを15g加えて、実施例1と同様にヘンシェルミキサーで15分間混合した。
【0091】
得られた混合原料を実施例1で行ったと同様な方法でプレス成形及び焼成して、100mm×100mm×26mmの形状で、嵩比重が1.66で、BCの充填率Vfが66%、空隙率34v%のプリフォームを製作した。得られたプリフォームを、実施例1で行ったと同様な方法で高圧プレス機の金型内に入れてアルミニウム溶湯を高圧含浸させた。その後、実施例1と同じ方法で自然冷却し、複合体周辺の固化したアルミニウムを除去した。
【0092】
この複合体の比重は2.57であり、プリフォームの空隙にアルミニウムが含浸した場合の計算値とほぼ一致しており、BCとアルミニウムからなる緻密な複合体であった。また、実施例1で行ったと同じ方法で複合体の表面のX線回折を行った。その結果、実施例1の場合と同様に、Al等の生成は観察できなかった。上記したように、平均粒径の異なるBC粉末を組み合わせて原料として使用することで、BC粉末の充填率が実施例1の場合よりも高い66v%の複合体が製作できた。また、BCの充填率が高いにもかかわらず比重が2.57の軽い複合体を製作することができた。
【0093】
上記で得られたBCの体積充填率(Vf)66v%、厚み26mmの素材について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。その結果、カリホルニウム(Cf)の同位体の中性子線Cf252の遮蔽効果は31%であり、高い値を示した。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、193Mpaと高強度であった。これらのことは、本実施例で得られた複合体は、原料に用いた、軽量で且つ放射線遮蔽効果に優れるBC粉末が分解することなくそのままの状態で複合化されて、BC粉末の持つ特性を効果的に併せ持つ有用な素材であることを示している。
【0094】
[実施例3]
平均粒径が15μmの硫酸バリウム(BaSO)粉末であるA-200(商品名、竹原化学工業社製)820gを、実施例1と同様な方法で均一に混合した。液状のバインダーとして、溶解可能なシリコーン樹脂KR-200(信越化学社製)をエタノールに溶解して、質量基準で20w%濃度に調製されたシリコーン系の樹脂溶液を用いた。そして、調製したシリコーン系の樹脂溶液の内の50gを、混合したBaSO粉末に加え、実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌した。
【0095】
実施例1と同じ方法及び手順で作製したプリフォームは、100mm×100mm×28mmの形状を有し、嵩比重が2.92で、BaSOの充填率が65v%であった。次に実施例1と同様の方法で、アルミニウム溶湯を上記プリフォームに高圧含浸し加工して、複合体を取り出した。複合体の比重は3.86であり、その値は計算値(理論値)とほぼ一致しており、BaSOとアルミニウムからなる緻密な複合体であることが確認された。
【0096】
上記で得られたBaSOの体積充填率(Vf)65v%、厚み28mmの素材について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。その結果、セシウム(Cs)のガンマ線Cs137の射影率は35%、X線150Kvの遮蔽率は99.5%と高い値を示した。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、193Mpaと高強度であった。これらのことは、本実施例で得られた複合体は、原料に用いた、軽量で且つ放射線遮蔽効果に優れるBaSO粉末が分解することなくそのままの状態で複合化されて、BaSO粉末の持つ特性を効果的に併せ持つ有用な素材であることを示している。
【0097】
[実施例4]
平均粒径が16μmのBC粉末#800(同人産業社製)250gと、平均粒径が18μmのアルミニウム粉末であるWA-100(山石金属社製)270gを原料粉とし、実施例1と同様の方法で均一に混合した。これにバインダーとして液状のエチルシリケート(コルコート社製)10gを加えて、実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌した。
【0098】
実施例1と同じ方法及び手順で作製したプリフォームは、100mm×100mm×33mmの形状を有し、嵩比重が1.30で、BC粉末とアルミニウム粉末(Al粉末)の合計の充填率が50v%であった。次に、実施例1と同じ方法でアルミニウム溶湯を上記プリフォームに高圧含浸し加工して、複合体を取り出した。本実施例の複合体の比重は2.65であり、プリフォームの空隙の全てにアルミニウム溶湯が含浸した計算値とほぼ一致した。
【0099】
2種類の原料粉のBC粉末とAl粉末の体積比率はほぼ1:1であるので、上記プリフォーム中の約50v%はアルミニウム粉末である。したがって、得られた複合体中におけるアルミニウムの量は、プリフォームに含浸したアルミニウムとの合計で75v%であるので、複合体の構成は、アルミニウム粉末が75v%、残りの25v%がBC粉末である。上記のことから、プリフォームの原材料にアルミニウム粉末を適宜な量で混合することで、放射線遮蔽粉体の濃度をコントロールすることが可能であることが確認できた。しかも、上記の場合、プリフォームの原材料にBC粉末を用いたことで、比重が2.65の軽い複合体を製作することができた。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、182Mpaと高強度であった。
【0100】
[実施例5]
平均粒径が15μmのBaSO粉末であるA-200(商品名、竹原化学工業社製)を280gと、平均粒径が18μmのアルミニウム粉末WA-100(山石金属社製)を395gに、実施例3で用いたと同様の、シリコーン樹脂KR-200をエタノールに溶解した20w%溶液を50g加えて、プリフォームの原材料にした。該原材料は、実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌した。
【0101】
その後、実施例1と同じ方法及び手順で作製したプリフォームは、100mm×100mm×38mmの形状を有し、嵩比重が1.77であり、BaSO粉末とAl粉末の合計充填率(Vf)が55v%であった。
【0102】
次に、上記で得たプリフォームに実施例1と同じ方法でアルミニウム溶湯を高圧含浸し、加工して複合体を取り出した。調製した複合体の比重は2.99であり、緻密体の計算値とほぼ一致した。本実施例の複合体は、プリフォーム中の70v%がアルミニウム粉末であったので、含浸したアルミニウムとの合計で複合体中のアルミニウムは84v%であり、残りの16v%がBaSO粉末である複合体であった。このように、本実施例の複合体は、実施例4の複合体と同じく、プリフォームの原材料にアルミニウム粉末を混合することで、複合体中の放射線遮蔽粉体である硫酸バリウム粉末の濃度をコントロールすることを可能にした例である。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、212Mpaと高強度であった。
【0103】
[実施例6]
平均粒径が16μmのBC粉末#800(同人産業社製)270gと、平均粒径が15μmのBaSO粉末であるA-200(商品名、竹原化学工業社製)495gを原料粉とし、実施例1と同様の方法で均一混合した。これにバインダーとして液状のエチルシリケート(コルコート社製)15gを加え、実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌した。
【0104】
その後、実施例1と同じ方法及び手順で作製したプリフォームは、100mm×100mm×38mmの形状を有し、嵩比重が2.00であり、BCとBaSO粉末の合計の充填率(Vf)が57v%であった。
【0105】
次に、実施例1と同じ方法でアルミニウム溶湯を含浸し加工して、複合体を取り出した。調製した複合体の比重は3.16であり、プリフォームにアルミニウム溶湯が含浸した計算値とほぼ一致した。得られた複合体は、BCが28.5v%で、BaSOが28.5v%で、アルミニウムは43v%であった。本実施例に示したように、本発明の製造方法により2種類の放射線遮蔽粉体を含む複合体が製造できることが確認された。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、199Mpaと高強度であった。
【0106】
[実施例7]
平均粒径が16μmのBC粉末#800(同人産業社製)380gと、平均粒径が3μmのタングステン金属粉末W-4(日本新金属社製)1270gとを用い、実施例1で行ったと同じ方法で均一混合した。その際、バインダーとして水ガラス4号(富士化学社製)を水で希釈して用い、SiO分に換算して16gとなる量を加えて実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌した。そして、実施例1と同じ方法及び手順でプリフォームを作製した。プリフォームは100mm×100mm×32mmの形状を有し、その嵩比重は5.18であり、BCとタングステンWの合計充填率(Vf)は68%であった。
【0107】
次に、実施例1と同じ方法でアルミニウム溶湯を高圧含浸し、加工して複合体を取り出した。複合体の比重は6.04であり、プリフォームにアルミニウム溶湯が含浸した計算値とほぼ一致した。得られた複合体は、BCが48.5v%であり、タングステンが20.4v%であり、アルミニウムが32v%の複合体であった。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、192Mpaと高強度であった。
【0108】
本実施例に示したように、実施例6の場合と同じく、本発明の方法により2種類の放射線遮蔽粉体を含む複合体が製造できた。また、本実施例の複合体は、タングステンを20.4v%含有してなるものであるが、比重が6.04であり、タングステン単味の比重19.5よりもかなり軽い複合体を製作することができた。
【0109】
[実施例8]
実施例1と同じ平均粒径が16μmのBC粉末#800(同人産業社製)を使用し、同様な方法でエチルシリケートバインダーを添加、混合、成形、焼成して100mm×100mm×35mmで嵩比重が同じく1.31、炭化ホウ素の充填率(Vf)が52%、空隙が48v%のプリフォームを作成した。該プリフォームを加熱して400℃の温度で待機した。
【0110】
実施例1と同様な方法で250℃に加熱した内径300mmφの金型に該プリフォームを入れ、500℃で溶融した低融点合金(亜鉛合金:ZDC2 比重6.8)を鋳造し、70Mpa(プレスの荷重として500t)で高圧含浸し、10分保持後直ちに冷却し、室温まで冷却して複合体を取り出した。該複合体の比重は4.18で低融点の亜鉛合金がほぼ100%含浸した複合材であった。BCの発生による分解反応もなかった。また、本実施例の複合体についてJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った結果、223Mpaと高強度であった。
【0111】
[比較例1、2]
実施例1で使用したと同じBC粉末を使用して混合し、このうちの450g(正味体積182ml)に、平均粒径が1.2μmの微粉のシリカ粉末(山森土本製作所社製)2gと、3gの水を加えて、実施例1で行ったと同じように金型に挿入し、プレス成形を行い、成型体を400℃又は800℃の異なる温度でそれぞれ焼成し、冷却した。得られた成型体は、いずれの焼成温度の場合も両方共にプリフォームの強度がなく、ハンドリングができず、アルミニウム溶湯の高圧含浸に供することができなかった。
【0112】
[比較例3、4]
実施例1で使用したと同じBC粉末を使用して混合し、このうちの450g(正味体積182ml)に、平均粒径が22nm(22mμ)のレオシールQS-9(トクヤマ社製)の微粉シリカ粉末を4gと、64gの水を加え、実施例1で行ったと同じように作製した混合粉末を金型に挿入し、プレス成形を行った。プレス成形して得た成型体を、400℃又は800℃の異なる温度でそれぞれ焼成し、冷却した。焼成後の成型体は、いずれの焼成温度の場合も両方共にプリフォームの強度がなく、ハンドリングができず、アルミニウム溶湯の高圧含浸に供することができなかった。
【0113】
[比較例5]
実施例1で行ったと同じ方法でBCのプリフォームを作製し、得られたプリフォームを金型内に入れて、実施例1と同様にアルミニウム溶湯を用い900℃で鋳造した。本比較例では、その後、900℃の温度で20分間保持した後、実施例1と同じ方法で複合体を作製した。複合体の表面を加工したところ表面が黒ずんでいたので一部を削り出し、X線回折で調べた。その結果、主原料のBC以外に、2θ=31.8°、35.8°、40.1°、55°に、Alの小さなピークが認められた。このことから、本比較例の複合体の場合は、複合体のプレス型内で高温の状態で長時間に保つと、プリフォームの原材料のBCが一部分解した状態になり、良好な状態の複合体にならないことが確認できた。
【0114】
[比較例6]
実施例5で使用したと同様の、平均粒径が15μmのBaSO粉末であるA-200(商品名、竹原化学工業社製)890gを、実施例1同様な方法で均一に混合した。そして、実施例3で用いたと同様の、シリコーン樹脂KR-200をエタノールに溶解した20w%溶液を50g加えて、実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌した。
【0115】
実施例1と同じ方法及び手順で作製したプリフォームは、100mm×100mm×33mmの形状を有し、BaSOの充填率が60v%であった。次に、実施例1と同じ方法で金型にセットし、950℃のアルミニウム溶湯を含浸し加工して、複合体を取り出した。表面を加工し目視で観察したところ、ポアが多かった。その理由は、BaSOが高温で加熱するとBaOとSOに分解したためと思われる。
【0116】
表1に、実施例1~8及び比較例1~6におけるプリフォームの調製条件と、得られた実施例1~8及び比較例5、6の各複合体の特性及び評価をまとめて示した。表1中に、分解の「有」「無」とあるのは、各複合体を構成する放射線遮蔽粉末に分解が認められたか否かを示している。
【0117】
【0118】
<プリフォームに有機無機封孔剤を含浸する方法の例>
次に、本発明の第二の製造方法の、多孔質成型体(プリフォーム)の空隙に特殊な液状の有機無機封孔剤を含浸させて放射線遮蔽複合体を製造する方法について、実施例及び比較例を挙げて説明する。以下の実施例の複合体について曲げ試験を実施しているのは、下記の理由による。プリフォームの空隙に液状の有機無機封孔剤を含浸させた場合は、プリフォームの空隙内に有機無機封孔剤由来の成分が残存する。ここで、プリフォーム)の空隙に液状の有機無機封孔剤を含浸させた構成の複合体の場合は、先に説明したアルミニウムの溶湯を含浸させた場合のように必ずしもプリフォームの空隙の全てに含浸させる必要はなく、一部空隙が残存した状態でもよい。本発明者らの検討によれば、このような構成においても、液状の有機無機封孔剤を含浸される前におけるプリフォームの空隙100体積%のうちの25体積%以上を液状の有機無機封孔剤が占める構成のものであれば、得られる複合体は十分な強度を有するものになり、壁材や天井材等の建築材料として利用することができる。換言すれば、得られる複合体について曲げ試験を行って、その強度を確認すれば、プリフォームの空隙内に有機無機封孔剤の固化物及び/又は有機無機封孔剤の加熱処理物が十分な量で残存したものであることが確認できることになる。以下に示した通り、実施例の複合体は十分な強度を有しており、本発明で規定する構成のものであることがわかる。
【0119】
[実施例9]
先に説明した実施例1と同様な種類の材料構成で、平均粒径が16μmのBC粉末#800(同人産業社製)270gを使用して、同じ方法で混合、成形、焼成、冷却して、100mm×100mm×20mmの形状を有する、262gの重量のプリフォームを作成した。得られたプリフォームは、炭化ホウ素(BC)の真比重2.51から計算して嵩比重が1.31であり、炭化ホウ素の充填率(Vf)が52v%、空隙が48v%であった。
【0120】
有機無機封孔剤として、粘度が15.5mPa・s、比重が1.15でシロキサン結合を有する、不揮発分が85w%のパーミエイトHS-200(商品名、ディ・アンド・ディ社製、以下単にパーミエイトと呼ぶ)を用いた。図2に概略図を示したような減圧圧力容器30を用いて、下記のようにしてプリフォーム32に液状の有機無機封孔剤31であるパーミエイトを含浸させた。減圧圧力容器30内に配置させた室内容器34内に、上記で得たプリフォーム32を入れて浮かないように重石(不図示)を乗せた状態にして、室内容器34内に有機無機封孔剤投入容器35を介してパーミエイトを入れて、プリフォーム全体がパーミエイトに浸るようにした。
【0121】
減圧口36を介して真空ポンプ(不図示)で、減圧圧力容器30全体を真空に引き10分間保持した。その後、真空を開放して減圧圧力容器30内を常圧に戻した後、この減圧圧力容器30に、コンプレッサー(不図示)からの7気圧の空気を減圧装置(不図示)で4気圧に減圧し、減圧圧力容器30内にゆっくり導入し減圧圧力容器の全体を4気圧に加圧し、5分間保持してパーミエイトをプリフォーム32内に加圧含浸した。
【0122】
その後、減圧圧力容器30を大気圧に戻した後プリフォーム32を室内容器34から取り出し、一昼夜自然放置した。その後、50℃/時間で昇温し、400℃で3時間加熱処理をして放射線遮蔽機能を有する複合体を作製した。この素材(複合体)の比重を測定した結果から該複合体は、BCが52v%、有機無機封孔剤が30v%(プリフォームの空隙の内の62.5v%)、その空隙が18v%の素材であった。得られた素材(複合体)の比重は表2中にまとめて示した。
【0123】
上記で得たBC粉末の体積充填率(Vf)52v%、厚み20mmの素材(複合体)について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。カリホルニウム(Cf)の同位体の中性子線Cf252の遮蔽率を測定した結果、遮蔽率は30%であり、高い値を示した。20mmの厚みでこれだけの中性子線遮蔽率を示した遮蔽材は例がない。この結果は、本実施例で得られた複合体は、原料に用いた、軽量で且つ放射線遮蔽効果に優れるBC粉末が分解することなく、そのままの状態で複合化されて、BC粉末の持つ特性を効果的に併せ持つ有用な素材であることを示している。一方、上記で得た複合体から、3mm×4mm×40mmの曲げ強度を測定するための試験片を作成してJIS-R1061の基づいて曲げ試験を行った。その結果、25Mpaの強度を得た。この値は、同じ方法で測定した石膏ボード、コンクリート板の約5~10倍であることから、外壁材、放射線保存容器には十分使用できる素材であることが確認できた。
【0124】
[実施例10]
先に実施例2の配合で使用した平均粒径が70μmのBC粉末#180(同人産業社製)230gと、平均粒径が16μmのBC粉末#800を100gとを用い、実施例2と同じ方法で100mm×100mm×20mmの成型体を作成した。この成型体を実施例1と同じように400℃で焼成した結果、重量が235g、嵩比重が1.66のプリフォームを得た。得られたプリフォームは、BCの体積充填率(Vf)が約66v%、空隙が32v%であった。この得られたプリフォームを用いて実施例8と同じようにしてパーミエイトを真空含浸させて400℃で加熱処理することにより、BCが66v%、パーミエイト(有機無機封孔剤)が19v%(プリフォームの空隙の内の59.4v%)、空隙が15%の放射線遮蔽材を得た。
【0125】
上記で得たBC粉末の体積充填率(Vf)66v%、厚み20mmの素材(複合体)について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。カリホルニウム(Cf)の同位体の中性子線Cf252の遮蔽率を測定した結果、遮蔽率は34%であり、高い値を示した。また、実施例8と同じように曲げ試験片を作成し、曲げ強度を測定したところ、41Mpaと高い値を示した。
【0126】
[実施例11]
実施例3と同様な配合で、平均粒径が15μmの硫酸バリウム(BaSO)粉末であるA-200(商品名、竹原化学工業社製)240gを用い、実施例1と同様な方法で均一に混合した。バインダーとして、溶解可能なシリコーン樹脂KR-200(信越化学社製)をエタノールに溶解して、質量基準で20w%濃度に調製されたシリコーン系の樹脂溶液を用いた。そして、調製したシリコーン系の樹脂溶液の内の15gを、混合したBaSO粉末に加え、実施例1と同様にしてヘンシェルミキサーで高速撹拌して混合粉を得た。
【0127】
上記で得た混合粉を60mmφの金型に入れ、160kg/cmの圧力でプレス成形し、これを実施例1と同じように400℃で加熱して、60mmφ×27.8mm厚の円板形状で、重さが235gのプリフォームを作成した。得られたプリフォームの嵩比重は2.95であり、BaSOが65v%で、空隙が35v%であった。
【0128】
次に、上記で得たプリフォームに液状の有機無機封孔剤を用い、下記のようにして複合体を得た。液状の有機無機封孔剤として、SiO換算で40w%を含有するコルコート社製のエチルシリケートオリゴマーを容器に入れ、上記で得たプリフォームを浸漬し、真空及び4気圧の加圧によりエチルシリケートをプリフォームに含浸させた。そして、液状の有機無機封孔剤を含浸させた含浸体を容器から取り出し、48時間空気中に放置して、400℃で3時間加熱処理して、BaSOが65v%、エチルシリケートから生成したSiOの不揮発分が10v%(プリフォームの空隙の内の28.6v%)、残部が23v%である放射線遮蔽機能を有する複合体を得た。
【0129】
上記で得たBaSO粉末の体積充填率(Vf)65v%、厚み27.8mmの素材(複合体)について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。その結果、セシウム(Cs)のガンマ線Cs137の射影率は36%、X線150Kvの遮蔽率は99.7%と高い値を示した。また、実施例1と同じ要領で曲げ試験片を作成し、曲げ強度を測定したところ、28Mpaと高い値を示し、構造体として十分に利用できる素材であることが確認された。
【0130】
[実施例12]
平均粒径が16μmのBC粉末を54g、平均粒径15μmのBaSO粉末であるA-200(商品名)110gに、液状のバインダーとしてエチルシリケート7gを添加して実施例1と同じように原料混合、プレス成形した後、400℃で焼成して、重さが165gの、60mmφ×30mmの形状で嵩比重が1.93であるプリフォームを得た。得られたプリフォームは、BCが29v%、BaSOが29v%、空隙が42v%であった。
【0131】
図2に示したような減圧圧力容器30と、有機無機封孔剤31として液状のエチルシリケートを用い実施例8と同じようにして、上記で得たプリフォーム32を、エチルシリケートの液体に浸漬し、真空含浸した後、400℃で加熱処理して放射線遮蔽機能を有する複合体を得た。得られた複合体は、BCが29v%、BaSOが29v%、エチルシリケートのSiOの不揮発分が17v%(プリフォームの空隙の内の40.4v%)、空隙が25v%であった。
【0132】
上記で得られたBC粉末、BaSO粉末と、液状の有機無機封孔剤を含んでなる素材(複合体)について、外部の測定機関に依頼して放射線遮蔽効果についての測定を行った。その結果、セシウム(Cs)のガンマ線Cs137の射影率は25%、X線150Kvの遮蔽率は98%と高い値を示した。また、他の実施例と同じ要領で曲げ試験片を作成し、曲げ強度を測定したところ、32Mpaと高い値を示し、構造体として工業的に十分に利用できる素材であることが確認された。
【0133】
表2に、実施例9~12の複合体の形成に用いたプリフォームを構成する特定粉末の実施形態と、プリフォームの空隙内及び複合体内の有機無機封孔剤の量と、放射線遮蔽効果をまとめて示した。
【0134】
[比較例7~10]
表2に示した構成の実施例9~12の複合体を調製する際に用いた、液状の有機無機封孔剤を含浸させて複合化させていない状態の、それぞれのプリフォームを用い、試験片を作成して実施例と同様に曲げ強度の測定を行った。そして得られた測定結果を表3にまとめて示した。比較のために、実施例9~12の各複合体における曲げ強度の倍率を括弧内に示した。表3に示したように、プリフォームに有機無機封孔剤を複合化させた実施例の複合体の場合は、比較例の素材と比べて曲げ強度を格段に向上させることができることが確認された。
【0135】
【0136】
[比較例11]
実施例9で調製したと同様の、嵩比重が1.31で、BCの充填率(Vf)が52v%、空隙が48v%のプリフォームを用い、下記のようにして有機無機封孔剤との複合化を行って比較例11の複合体を得た。液状の有機無機封孔剤として実施例9で使用したと同様の粘度が15.5mPa・s、比重が1.15でシロキサン結合を有する、不揮発分が85w%のパーミエイトHS-200を用い、これをエタノールで希釈して不揮発分を20w%に調整して用いた。そして、実施例9と同様の手順で液状の有機無機封孔剤を含浸させた後、加熱処理して複合化した素材を得た。重量測定を行った結果から該素材は、BCが52v%、有機無機封孔剤が8v%(プリフォームの空隙の内の16.0v%)、空隙が36v%の素材であった。この素材についても実施例と同様の方法で曲げ強度を測定したところ、曲げ強度が11MPaで高強度ではなかった。その理由は、プリフォームの空隙に占める有機無機複合剤の量が低いことに起因すると考えられる。
【0137】
[比較例12]
実施例11で調製したと同様の、嵩比重が2.95で、BaSOの充填率(Vf)が65v%で、空隙が35v%のプリフォームを用い、下記のようにして有機無機封孔剤との複合化を行って比較例12の複合体を得た。液状の有機無機封孔剤として、実施例11で用いた液状のエチルシリケートオリゴマー溶液を水で希釈してSiOの不揮発分が10w%溶液となるように調整して用いた。そして、実施例11と同様な操作でプリフォームに液状の有機無機封孔剤を含浸させた後、加熱処理して複合化した素材を得た。重量測定を行った結果から該素材は、BaSOが65v%、エチルシリケートから生成したSiOの不揮発分が4v%(プリフォームの空隙の内の11v%)、空隙の残部が31v%の素材であった。この素材についても実施例と同様の方法で曲げ強度を測定したところ、曲げ強度が9MPaであり、強度が低かった。
【0138】
[比較例13]
実施例9で調製したと同様の、嵩比重が1.31で、BCの充填率(Vf)が52v%、空隙が48v%のプリフォームを用い、下記のようにして有機無機封孔剤との複合化を行って比較例13の複合体を得た。液状の有機無機封孔剤として、不揮発分40w%でエタノールに溶解した粘度が150mPa.mのシリコーン樹脂KR220l(商品名、信越化学社製)溶液を用いた。該シリコーン樹脂溶液を実施例9で行ったと同じ操作でプリフォームに含浸し、加熱処理して複合化した素材を得た。得られた素材は、BCのVfが52v%で、シリコーン樹脂から生成したSiOの不揮発分が3v%(プリフォームの空隙の内の6.2v%)、空隙が45v%であった。この素材についても実施例と同様の方法で曲げ強度を測定したところ、曲げ強度が6MPaであり、強度が低かった。その理由は、粘性(粘度)が高いシリコーン樹脂溶液がプリフォームに十分含浸せず、有機無機封孔剤の含浸量が低かったためと考えられる。
【0139】
【符号の説明】
【0140】
1:アルミニウム溶湯
2:プリフォーム
3:アルミニウム溶湯が含浸した複合体
4:下パンチ
5:上パンチ
10:プレス金型
30:減圧圧力容器
31:有機無機封孔剤
32:プリフォーム
33:減圧圧力容器の開閉治具
34:室内容器
35:有機無機封孔剤投入容器
36:減圧口
37:加圧口
38:圧力計
【要約】
【課題】放射線遮蔽機能を有する粉末を高い含有率で含む新規な構成の複合体の開発。
【解決手段】放射線遮蔽粉体を合計で3~85%の範囲で含有してなる、酸化ガドリニウム、炭化ホウ素、酸化ホウ素、ホウ素、硫酸バリウム、酸化ストロンチウム、タングステン、酸化タングステン、タングステンカーバイド、モリブデン、酸化モリブデン、鉄粉末、酸化鉄粉末及びフェライト粉末から選ばれた1種以上の放射線遮蔽粉体と、液状のシリカ系バインダーとを含む混合物からなるプリフォームの空隙の全部に、溶融したアルミニウムが含浸・充填されて固化して複合化されてなるもの、或いは、該プリフォームの空隙の25%以上に、液状の有機無機封孔剤が含浸されて固化して複合化されてなるものであり、且つ、液状のシリカ系バインダーが、放射線遮蔽粉体が分解されることのない温度でプリフォームを形成できる特性のものである放射線遮蔽機能を有する複合体及びその製造方法。
【選択図】なし
図1A
図1B
図1C
図2