(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】スマートリング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20241219BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20241219BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/02 310D
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2024152773
(22)【出願日】2024-09-05
【審査請求日】2024-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523458531
【氏名又は名称】WhiteLab株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英之
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特許第7481775(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第109085885(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2024/0164716(US,A1)
【文献】特開2014-190814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2024/0012365(US,A1)
【文献】特表2017-506376(JP,A)
【文献】国際公開第2016/123216(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/123206(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110477882(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/0538
A61B 5/06 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指に装着して使用されるスマートリングであって、
半径方向外側を向く受光面を有し、かつ、円周方向に
略360度連続する単一セルで構成される略リング状のソーラパネルと、
前記ソーラパネルの半径方向内側に、前記ソーラパネルの前記円周方向に沿って配置されており、装着者の生体情報を取得するセンサ部と、前記センサ部が取得した情報を無線送信する送信部と、を有し、前記ソーラパネルが発電した電力により動作する基板部と、を有
し、
前記ソーラパネルの前記単一セルは、長手方向の長さが、短手方向の長さの10~100倍であり短手方向の長さが略一定である帯状形状の単一セルであり、指への装着時において、前記単一セルによるリング形状の内周側を装着者の指が通る状態となるスマートリング。
【請求項2】
前記ソーラパネルは、前記受光面が受ける光量が発電可能なしきい値を超えている限りにおいて、受光量が不均一であったり受光量が変化したりしても、
前記ソーラパネ
ルの発電電圧は略一定に保たれる請求項1に記載のスマートリング。
【請求項3】
前記ソーラパネルの前記受光面への光を透過する光透過部を有し、前記ソーラパネルおよび前記基板部を収容する略リング状の収容部が内部に形成してあり、前記ソーラパネルおよび前記基板部を覆う筐体部をさらに有し、
前記基板部は略リング状であり、
前記収容部には共に略リング状である前記ソーラパネルおよび前記基板部が同心円状に配置される請求項1に記載のスマートリング。
【請求項4】
前記筐体部は樹脂で構成されており、前記収容部は、前記筐体部により密封されており、
外表面が前記筐体部の樹脂のみで構成される請求項
3に記載のスマートリング。
【請求項5】
前記基板部は、フレキシブルプリント基板を有する請求項1に記載のスマートリング。
【請求項6】
前記ソーラパネルは柔軟性を有し、前記ソーラパネルは前記フレキシブルプリント基板に対して直接的に実装してある請求項
5に記載のスマートリング。
【請求項7】
前記基板部は、前記ソーラパネルによる発電された電気を蓄えるコンデンサおよび/またはキャパシタと、前記コンデンサおよび/またはキャパシタから前記センサ部および前記送信部への電力供給を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記コンデンサおよび/またはキャパシタに蓄えられる電気量が、前記センサ部による生体情報の取得および前記送信部による情報の無線送信を含む一連の動作を行うことができる第1の値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部に前記一連の動作を行わせ、
前記制御部は、前記一連の動作を行わせたのち、前記コンデンサおよび/またはキャパシタに蓄えられる電気量が前記第1の値を超えたことを再び検知するまでの間、前記センサ部および前記送信部に給電しない請求項1に記載のスマートリング。
【請求項8】
前記送信部は、情報の送信のみを行い、受信を行わない請求項1に記載のスマートリング。
【請求項9】
前記センサ部は、体温を測定する体温センサと、体の動きを測定する体動センサと、血中酸素飽和度を測定するSpO
2センサと、心拍を測定する心拍センサと、心電を測定する心電センサと、脈拍を測定する脈拍センサと、血圧を測定する血圧センサと、脳波を測定する脳波センサのうち少なくとも一つを有する請求項1に記載のスマートリング。
【請求項10】
前記制御部を構成する第1のICは、前記送信部を構成する第2のICとは別体であり、前記送信部のON・OFFは前記制御部からの給電・給電停止により直接的に制御される請求項
7に記載のスマートリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラパネルを有するスマートリングに関する。
【背景技術】
【0002】
身体に装着して用い、装着者の体温や血中酸素濃度、体の動きなどを測定し、測定結果をスマートフォンなどに通信する各種のスマートデバイスが提案されている。スマートデバイスの中でも、特に指輪型のスマートリングは、装着時における装着者の負担が軽いという特徴を有するため、たとえば寝ている間なども含めて長期間連続的に装着可能なスマートデバイスとして期待されている。
【0003】
一方で、スマートリングのようなウェアラブルデバイスでは、光、熱、振動エネルギーなどを用いて発電する発電部を有するものも提案されており、発電部を有するスマートリングは、外部からの給電が無くても、長時間駆動することが可能である。特に、ソーラパネルを有する発電部は、実用的な発電量を、比較的低コストで得られるため、ウェアラブルデバイスの発電部として有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7481775号明細書
【文献】国際公開第2016/123216号公報
【文献】国際公開第2016/123206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、指輪型のウェアラブルデバイスであるスマートリングに従来のソーラパネルを用いる場合には、限られた受光面積および発電量において、装着者の手の向きの変化などの影響を受けて発電量が変化しやすく、また、発電電圧が不安定でロスが大きいという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、発電電圧が安定しておりロスが少ないソーラパネルを用いるスマートリングに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスマートリングは、
指に装着して使用されるスマートリングであって、
半径方向外側を向く受光面を有し、かつ、円周方向に270~360度連続する単一セルで構成される略リング状のソーラパネルと、
前記ソーラパネルの半径方向内側に、前記ソーラパネルの前記円周方向に沿って配置されており、前記装着者の生体情報を取得するセンサ部と、前記センサ部が取得した情報を無線送信する送信部と、を有し、前記ソーラパネルが発電した電力により動作する基板部と、を有する。
【0008】
本発明に係るスマートリングは、半径方向外側を向く受光面を有し、かつ、円周方向に270~360度連続する単一セルで構成される略リング状のソーラパネルを有するため、発電電圧が相対的に安定しておりロスが少ない。すなわちソーラパネルが単一セルで構成されるため、発電可能な光量である限りにおいて、受光面が受光する光量が変化しても、ソーラパネルの発電電圧は略一定に保たれるため、電圧変動による電力ロスを低減できる。また、円周方向に270~360度連続する単一セルであるため、装着者の手の向きが変化してスマートリングに対する光源の方向が変化した場合にでも、受光面が受けるトータルの光量の変化が抑制され、スマートリングの姿勢の変化による発電量の変動を抑制することができる。また、ソーラパネルの内側において円周方向に沿って基板部を配置することにより、ソーラパネルの受光を阻害することなく基板部をコンパクトに配置できる。
【0009】
また、たとえば、前記ソーラパネルの前記受光面は、前記円周方向に300~360度連続することが好ましい。
【0010】
すなわち、スマートリングが有するソーラパネルは、円周方向に270~360度連続する単一セルの受光面を有していれば足りるが、円周方向に300~360度連続する単一セルの受光面を有していることがスマートリングの姿勢の変化による発電量の変動を抑制する観点からさらに好ましい。なお、スマートリングが有するソーラパネルが、円周方向に略360度連続する単一セルの受光面を有していることは、スマートリングの姿勢の変化による発電量の変動を抑制する観点からは、理想的である。
【0011】
また、たとえば、本発明に係るスマートリングは、前記ソーラパネルの前記受光面への光を透過する光透過部を有し、前記ソーラパネルおよび前記基板部を収容する略リング状の収容部が内部に形成してあり、前記ソーラパネルおよび前記基板部を覆う筐体部を有してもよい。
【0012】
このようなスマートリングは、ソーラパネルおよび基板部を内部に収容する略リング状の収容部が内部に形成してある筐体部を用いることで、筐体部が、ソーラパネルおよび基板部を、衝撃や水滴などから好適に保護できる。
【0013】
また、たとえば、前記筐体部は樹脂で構成されていてもよく、前記収容部は、前記筐体部により密封されていてもよく、
外表面が前記筐体部の樹脂のみで構成されていてもよい。
【0014】
このようなスマートリングは、筐体部が好適な耐久性を奏するとともに、収容部内のソーラパネルや基板が、外部環境からより好適に保護される。また、外表面が筐体部の樹脂のみで構成されているスマートリングは、収容部から配線部分等が引き出されていないため、収容部の密封性を高めることができ、高い防水性など、より好適な耐環境性を奏することが可能である。
【0015】
また、たとえば、前記基板部は、フレキシブルプリント基板を有してもよい。
【0016】
基板部がフレキシブルプリント基板を有することにより、このようなスマートリングは製造が容易であり、また、半径方向の厚みを薄くすることが可能である。
【0017】
また、たとえば、前記ソーラパネルは柔軟性を有し、前記ソーラパネルは前記フレキシブルプリント基板に対して直接的に実装してあってもよい。
【0018】
このようなソーラパネルおよび基板部を有するスマートリングは、配線がシンプルで組み立てが容易であるとともに、収容部の形状に沿ってソーラパネルおよび基板部を曲げて組み立てることができるため、小型化の観点および歩留まり向上の観点で有利である。
【0019】
また、たとえば、前記基板部は、前記ソーラパネルによる発電された電気を蓄えるコンデンサおよび/またはキャパシタと、前記コンデンサおよび/またはキャパシタから前記センサ部および前記送信部への電力供給を制御する制御部と、を有してもよく、
前記制御部は、前記コンデンサおよび/またはキャパシタに蓄えられる電気量が、前記センサ部による生体情報の取得および前記送信部による情報の無線送信を含む一連の動作を行うことができる第1の値を超えたことを検知し、前記センサ部および前記送信部に前記一連の動作を行わせてもよく、
前記制御部は、前記一連の動作を行わせたのち、前記コンデンサおよび/またはキャパシタに蓄えられる電気量が前記第1の値を超えたことを再び検知するまでの間、前記センサ部および前記送信部に給電しなくてもよい。
【0020】
このような制御部等を有する基板部は、基板部での電力消費を効果的に抑制することが可能であり、低電力で耐久性の高いスマートリングを実現できる。
【0021】
また、たとえば、前記送信部は、情報の送信のみを行い、受信を行わないものであってもよい。
【0022】
送信部は、送信専用であることにより、基板部での電力消費を効果的に抑制できる。ただし、設定機能などを基板部に持たせるために、送信部が送信と受信の両方ができるものであってもよい。
【0023】
また、たとえば、前記センサ部は、体温を測定する体温センサと、体の動きを測定する体動センサと、血中酸素飽和度を測定するSpO2センサと、心拍を測定する心拍センサと、心電を測定する心電センサと、脈拍を測定する脈拍センサと、血圧を測定する血圧センサと、脳波を測定する脳波センサのうち少なくとも一つを有してもよい。
【0024】
スマートリングが有するセンサ部としては、特に限定されないが、体温センサ部、体動センサ部、SpO2センサ部、心拍センサ部、心電センサ部、脈拍センサ部および脳波センサ部などが、指輪型のスマートリングに搭載するセンサ部として好適である。
【0025】
また、たとえば、前記制御部を構成する第1のICは、前記送信部を構成する第2のICとは別体であり、前記送信部のON・OFFは前記制御部からの給電・給電停止により直接的に制御されてもよい。
【0026】
このような送信部を有するスマートリングは、より低電力で動作させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るスマートリングの外観図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスマートリングの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すスマートリングの円周方向に直交する断面による断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すスマートリングの幅方向に直交する断面による断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すスマートリングの概略回路図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すスマートリングが有するソーラパネルの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の第1実施形態に係るスマートリング10の外観図である。
図1に示すように、スマートリング10は、円環状の外形状を有する。スマートリング10は、一般的には、リング内周10aに装着者の手の指を通し、装着者の手の指に装着して使用される。リングの内径は10.0~30.0mm程度、リングの幅(軸方向の長さ)は2.0~20mm程度、リングの厚み(半径方向の幅)は1.0~10mm程度である。なお、
図1に示すスマートリング10の外形状は、略一定のリング幅およびリング厚みで円周方向D1(
図4参照)に360度連続するリング形状であるが、スマートリング10の外形状としては
図1に示す形状のみには限定されない。たとえば、他の実施形態に係るスマートリングの外形状としては、リング幅やリング厚みが円周方向D1で変化するものや、1か所の途切れ部分がある略リング形状のものなどが挙げられる。
【0029】
図2は、
図1に示すスマートリング10の分解斜視図である。
図1および
図2に示すように、スマートリング10は、筐体部12と、ソーラパネル20と、基板部30とを有する。
図3は、スマートリング10の円周方向D1に直交する断面による断面図であり、
図4は、スマートリング10の幅方向に直交する(円周方向D1に沿う)断面による断面図である。
図2および
図3に示すように、ソーラパネル20は略リング状であり、半径方向外側D2(
図4参照)を向く受光面22を有し、かつ、円周方向D1に270~360度連続する単一セルで構成される。
【0030】
図6は、筐体部12の収容部13に収容される前のソーラパネル20を示す斜視図である。
図6(a)は、ソーラパネル20を受光面22側から見た斜視図であり、
図6(b)は、ソーラパネルを受光面22の反対面である内側面23から見た斜視図である。
図1~
図4および
図6との比較から理解できるように、ソーラパネル20は柔軟性を有しており、収容部13に収容される前の状態において、帯状の外形状を有する。柔軟性を有するソーラパネル20としては、たとえばアモルファスシリコンを有するソーラパネルや、ペロブスカイト結晶構造を有するソーラパネルなどが挙げられるが、ソーラパネル20の材質は特に限定されない。
【0031】
図6に示すソーラパネル20は、長手方向に沿って略一定の曲率で曲げられることで、
図2に示すような略リング状の状態で、筐体部12の収容部13に収容される。ソーラパネル20は、
図2および
図4に示すように、円周方向D1に270~360度連続する単一セルで構成される。すなわち、
図6に示すソーラパネル20は、長手方向の長さL1が、短手方向の長さL2の10~100倍程度の帯状形状であり、かつ、面方向に関してセルが分割されておらず、単一セルの平面視サイズおよび形状もソーラパネル20と同様である。すなわち、ソーラパネル20が有する単一セルは、長手方向の長さL1が短手方向の長さL2の10~100倍程度の帯状形状である。
【0032】
ここで、仮にソーラパネルが複数のセルで構成されている場合、受光量のばらつきなどにより一部のセルのみが発電する状態が生じ得るため、ソーラパネルによって生じる電圧が受光状態に影響を受けて安定せず、発電した電力をロスしやすいという問題がある。一方、
図2および
図6に示すように、単一セルで構成されるソーラパネル20は、受光面22が受ける光量が発電可能なしきい値を超えている限りにおいて、受光量が不均一であったり受光量が変化したりしても、ソーラパネル20の発電電圧は略一定に保たれる。
【0033】
また、スマートリング10が有するソーラパネル20は、
図2に示すように、円周方向D1の全周に渡って、または、円周方向D1の広い範囲で、受光面22が配置されている。そのため、ソーラパネル20は、装着者の手の向きが変化してスマートリング10に対する光源の方向が変化した場合にでも、受光面22が受けるトータルの光量の変化が抑制され、スマートリング10の姿勢の変化に伴う発電量の変動および電圧変動を抑制することができる。また、ソーラパネル20の受光面22を、スマートリング10の円周方向D1の略全周に渡って配置することで、受光面積を広くしてソーラパネル20の発電量を向上させることができる。
【0034】
ソーラパネル20は、円周方向D1に270~360度連続する単一セルの受光面22を有していれば十分な効果が得られるが、円周方向D1に300~360度連続する単一セルの受光面を有していることがスマートリング10の姿勢の変化等による発電量の変動を抑制する観点からさらに好ましい。なお、スマートリング10が有するソーラパネル20が、円周方向D1に略360度連続する単一セルの受光面22を有していることは、スマートリング10の姿勢の変化による発電量の変動を抑制する観点からは、理想的である。
【0035】
図2~
図4に示すように、基板部30は、ソーラパネル20の半径方向内側D3に、ソーラパネル20の円周方向D1に沿って配置されている。
図2に示すように、基板部30は、装着者の生体情報を取得するセンサ部としての温度センサ32と、温度センサ32が取得した情報を無線送信する送信部としてのBLE送信器33と、温度センサ32やBLE送信器33が実装されるフレキシブルプリント基板31と、を有する。
【0036】
図5は、基板部30およびソーラパネル20等を有するスマートリング10の概略回路図である。
図2および
図5に示すように、基板部30は、上述した温度センサ32、BLE送信器33、フレキシブルプリント基板31の他に、キャパシタ34、制御部35、レギュレータ36、CPU37、アンテナ38等を有する。
【0037】
図2に示すように、基板部30は、フレキシブルプリント基板(FPC)31を有することが、スマートリング10の半径方向の厚みを薄くする観点や、略リング状の収容部13に配置しやすくする観点から好ましい。ただし、基板部30は、リジット基板などを、フレキシブルプリント基板31に換えて有していてもよい。
【0038】
図2および
図6に示すように、ソーラパネル20の内側面23には端子24が形成されており、柔軟性を有するソーラパネル20は、温度センサ32、BLE送信器33およびキャパシタ34等と同様に、フレキシブルプリント基板31に対して直接的に実装してある。柔軟なソーラパネル20がフレキシブルプリント基板31に直接的に実装してあることで、このようなスマートリング10は、配線がシンプルで組み立てが容易であるとともに、収容部13の形状に沿ってソーラパネル20および基板部30を曲げて組み立てることができるため、小型化の観点および歩留まり向上の観点で有利である。
【0039】
なお、
図2に示す基板部30では、フレキシブルプリント基板31における半径方向外側の面にBLE送信器33、キャパシタ34、制御部35等が実装されているが、これとは異なり、フレキシブルプリント基板31における半径方向外側の面には、ソーラパネル20のみが実装されていてもよい。これにより、フレキシブルプリント基板31とソーラパネル20の密着性を高め、スマートリング10の小型化に資する。なお、フレキシブルプリント基板31における半径方向外側の面にソーラパネル20のみを実装する場合において、他のBLE送信器33、キャパシタ34、制御部35等は、フレキシブルプリント基板31における半径方向内側の面に実装されてもよく、または、フレキシブルプリント基板31に内蔵されてもよい。
【0040】
図5に示すように、基板部30はキャパシタ34を有しており、キャパシタ34は、ソーラパネル20が発電した電気を蓄える。キャパシタ34としては、電解コンデンサ、セラミックコンデンサ、電気二重層キャパシタなどが挙げられ、キャパシタ等と呼ばれる容量の比較的大きいものであってもよく、コンデンサ等と呼ばれる比較的容量の小さいものであってもよい。なお、スマートリング10は、ソーラパネル20で発電した電気を蓄える手段として、化学変化を伴う化学電池を用いていない。これにより、スマートリング10の耐環境性を高め、寿命を延長することが可能であるとともに、過電流等から化学電池を保護する保護回路等を省略して、小型化を図ることが可能である。
【0041】
図5に示すように、基板部30はキャパシタ34から温度センサ32やBLE送信器33への電力供給を制御する制御部35を有する。制御部35は、たとえばDCDCコンバータやコンパレータ等を有しており、キャパシタ34に蓄えられる電気量が所定値を超えているか否かを判断するとともに、キャパシタ34に蓄えられる電気を所定の電圧に変換し、温度センサ32やBLE送信器33へ給電を行う。
【0042】
たとえば、制御部35は、コンデンサおよび/またはキャパシタ34に蓄えられる電気量が、温度センサ32による生体情報の取得およびBLE送信器33による情報の無線送信を含む一連の動作を行うことができる第1の値を超えたことを検知し、温度センサ32およびBLE送信器33に一連の動作を行わせることができる。また、たとえば、制御部35は、温度センサ32およびBLE送信器33に一連の動作を行わせたのち、コンデンサおよび/またはキャパシタ34に蓄えられる電気量が第1の値を超えたことを再び検知するまでの間、温度センサ32およびBLE送信器33に給電しない。このような制御部35を有するスマートリング10は、水晶デバイスのような時間計測素子を有しなくても、シンプルな回路で、生体情報の取得および送信動作を、周期的に行うことが可能である。また、このような制御部35を有するスマートリング10は、消費電力を効果的に抑制できるため、ソーラパネル20の小型化およびスマートリング10の小型化の観点で有利である。
【0043】
図5に示すように、基板部30は、装着者の体温情報を取得する温度センサ32を有する。温度センサ32には、ソーラパネル20で発電され、キャパシタ34で蓄えられる電気が、制御部35およびレギュレータ(降圧器)36を介して送られる。温度センサ32は、たとえば、皮膚の表面温度を抵抗変化等により検出するサーミスタを有するものや、皮膚表面から生じる赤外線を集光して温度を検出するものなどが挙げられる。
【0044】
図5に示す例では、温度センサ32の駆動電圧がCPU37およびBLE送信器33より低いために、温度センサ32と制御部35との間にレギュレータ36を配置しているが、温度センサ32の駆動電圧がCPU37およびBLE送信器33と同じである場合は、レギュレータ36は不要である。なお、温度センサ32の駆動電圧が、CPU37およびBLE送信器33より高い場合には、温度センサ32と制御部35との間にレギュレータ(昇圧器)が配置される。温度センサ32によって取得された情報(温度の検出信号)は、CPU37を介してBLE送信器33に伝えられる。
【0045】
図5に示すスマートリング10では、装着者の生体情報を取得するセンサ部として装着者の体温等を測定する温度センサ32を有するが、スマートリング10が有するセンサ部としては、温度センサ32のみには限定されない。たとえば、スマートリングは、体温を測定する体温センサと、体の動きを測定する体動センサと、血中酸素飽和度を測定するSpO
2センサと、心拍を測定する心拍センサと、心電を測定する心電センサと、脈拍を測定する脈拍センサと、血圧を測定する血圧センサと、脳波を測定する脳波センサとうち少なくとも一つを、センサ部として有することができる。また、スマートリング10のセンサ部は、装着者の身体活動に関する1種類の情報を取得するものであってもよいが、複数のセンサ部を組み合わせ、装着者の身体活動に関する複数種類の情報を取得可能であってもよい。
【0046】
CPU37は、温度センサ32の出力信号を、BLE送信器33で送信に適した信号形式に変換し、BLE送信器33へ伝える。送信部としてのBLE送信器33は、スマートリング10で取得した生体情報の送信先である外部機器に対する所定の通信プロトコルを確立する。また、BLE送信器33は、温度センサ32から伝えられる信号を、アンテナ38を介して所定の周波数帯の信号として無線送信する。スマートリング10が情報を送信する外部機器としては、たとえばスマートフォンのような携帯型情報端末や、パーソナルコンピュータや、スマートリング専用の受信端末などが挙げられるが、特に限定されない。また、スマートリング10の基板部30が有する送信部としては、BLE送信器33のようにBluetooh(登録商標)として規格化される2.4GHz帯で情報を送信するもののみには限定されず、Wi-fi(登録商標)等として規格化される2.4GHz帯、5GHz帯、60GHz帯で情報を送信するものが他の例として挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
送信部であるBLE送信器33は、情報の送信のみを行い、受信を行わない。スマートリング10の送信部が送信専用であり、スマートリングが情報の受信ができない仕様とすることにより、基板部30での電力消費を効果的に抑制できる。ただし、スマートリング10のユーザ設定機能などを基板部30に持たせるために、基板部30の送信部が、送信と受信の両方ができる仕様であってもよい。
【0048】
また、基板部30において、制御部35を構成する第1のICは、送信部としてのBLE送信器33を構成する第2のICとは別体であり、BLE送信器33のON・OFFは、制御部35からの給電・給電停止により直接的に制御されてもよい。一般的に、無線通信機器を継続的に動作させる場合には、累積の電力消費量が多くなる傾向がある。しかし、スマートリング10では、BLE送信器33のON・OFFを、制御部35による給電・給電停止により直接的に制御することで消費電力を効果的に減少させ、小型のソーラパネル20によって得られる小さな電気量で、スマートリング10を継続的および/または間欠的に動作させることができる。なお、
図5に示す温度センサ32についても、BLE送信器33と同様に、制御部35からの給電・給電停止により直接的にON・OFF制御されることにより、同様の消費電力抑制効果を得られる。
【0049】
図3および
図4に示すように、スマートリング10の筐体部12は、ソーラパネル20および基板部30の周りを覆っている。すなわち、筐体部12の内部には、ソーラパネル20および基板部30を内部に収容する略リング状の収容部13が形成してある。
図3に示すように、筐体部12の円周方向D1に直交する断面形状は矩形リング状であり、収容部13の断面形状は矩形である。
【0050】
図3に示すように、スマートリング10の筐体部12は、ソーラパネル20の受光面22への光を透過する光透過部12aを有する。光透過部12aは、筐体部12における半径方向外側D2の面である筐体外側部で構成される。
図3および
図4に示すように、筐体部12は、光透過部12aを構成する筐体外側部と、半径方向内側D3の面である筐体内側部12bと、光透過部12aと筐体内側部12bとを半径方向に沿って接続する筐体側面12c、12dとを有する。
【0051】
筐体部12の光透過部12aの材質としては、たとえばアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等など、光を透過する硬質な樹脂やガラスなど材料や、ケイ素(シリコン)樹脂やゴムのような軟質な材料などが挙げられるが、特に限定されない。
図1~
図4に示す筐体部12は、光透過部12a以外の材質も光透過部12aと同様であり、筐体部12における光透過部12aと他の部分とは、一体に形成されている。
【0052】
また、
図3および
図4に示す筐体部12は樹脂で構成されており、ソーラパネル20および基板部30を収容する収容部13は、筐体部12により密封されている。また、スマートリング10の外表面は、筐体部12の樹脂のみで構成されており、樹脂以外の金属などが露出している部分がない。このようなスマートリング10は、筐体部12が好適な耐久性を奏するとともに、収容部13内のソーラパネル20や基板部30が、外部環境から好適に保護される。また、スマートリング10の外表面が筐体部12の樹脂のみで構成されていることにより、外表面に基板部30からの配線などが引き出されておらず、収容部13の密封性をより高めることができる。したがって、スマートリング10は、高い防水性など、より好適な耐環境性を奏することが可能である。なお、筐体部12は、光透過部12aを構成する筐体外側部を含む部分と、筐体内側部12bを含む部分とを別々に成形したのち、両者の間にソーラパネル20と基板部30とを挟んで接合されることにより組み立てられたものであってもよいが、ソーラパネル20と基板部30とが筐体部12の樹脂によって外側から覆われるようにインサート成形されたものであってもよい。
【0053】
以上のように、スマートリング10は、半径方向外側D2を向く受光面22を有し、かつ、円周方向D1に270~360度連続する単一セルで構成される略リング状のソーラパネル20を有するため、発電電圧が従来のソーラパネル型のスマートリングに比較して非常に安定しており、発電された電気をキャパシタ34に蓄える際に生じるロスを軽減することができる。また、スマートリング10は、円周方向D1の広い範囲で受光面22が配置されているため、装着者の手の向きが変化してスマートリング10に対する光源の方向が変化した場合にでも、ソーラパネル20の受光面22が受けるトータルの光量の変化が抑制され、スマートリング10の姿勢の変化に伴う発電量の変動および電圧変動を抑制することができる。
【0054】
なお、スマートリング10は、
図6に示すように、長手方向の長さL1が、短手方向の長さL2の10~100倍程度の帯状形状であり、かつ、受光面22の面方向に関してセルが分割されておらず単一セルであるソーラパネル20(太陽電池モジュール)を用いて製造される。
【0055】
図6に示すような帯状形状のソーラパネル20は、たとえば、内側面23に形成される端子24を介して基板部30に実装され、受光面22が半径方向外側D2を向くように円周方向D1に沿って曲げられた状態で、基板部30と一緒に筐体部12における収容部13の内部に封止される。
図6に示す帯状形状の単一セルであるソーラパネル20は、特にスマートリング10の発電部として特に好適であるが、ソーラパネル20の用途としてはスマートリング10のみには限定されず、リング状の筐体部分を有する他の通信端末用の発電部として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…スマートリング
10a…リング内周
12…筐体部
12a…光透過部
12b…筐体内側部
12c、12d…筐体側面
13…収容部
20…ソーラパネル
L1…長手方向長さ
L2…短手方向長さ
22…受光面
23…内側面
24…端子
D1…円周方向
D2…半径方向外側
D3…半径方向内側
30…基板部
31…フレキシブルプリント基板
32…温度センサ
33…BLE送信器
38…アンテナ
34…キャパシタ
35…制御部
36…レギュレータ
37…CPU
【要約】
【課題】発電電圧が安定しておりロスが少ないソーラパネルを用いるスマートリング。
【解決手段】 装着者の手の指に装着して使用されるスマートリングであって、半径方向外側を向く受光面を有し、かつ、円周方向に270~360度連続する単一セルで構成される略リング状のソーラパネルと、前記ソーラパネルの半径方向内側に、前記ソーラパネルの前記円周方向に沿って配置されており、前記装着者の生体情報を取得するセンサ部と、前記センサ部が取得した情報を無線送信する送信部と、を有し、前記ソーラパネルが発電した電力により動作する基板部と、前記ソーラパネルの前記受光面への光を透過する光透過部を有し、前記ソーラパネルおよび前記基板部を収容する略リング状の収容部が内部に形成してあり、前記ソーラパネルおよび前記基板部を覆う筐体部と、を有するスマートリング。
【選択図】
図1