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特許7606796交通安全支援装置、携帯情報端末、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】交通安全支援装置、携帯情報端末、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024518598
(86)(22)【出願日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2023032287
【審査請求日】2024-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】319011650
【氏名又は名称】Quon Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169591
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 浩嗣
(72)【発明者】
【氏名】大熊 宏
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181570(JP,A)
【文献】特開2019-132654(JP,A)
【文献】特開2019-217978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される携帯情報端末であって、交通安全支援装置と通信可能なインターフェースと、当該移動体の位置を特定する位置特定部と、当該移動体の周囲を撮影することができるカメラと、表示部と、情報処理部とを備え、前記情報処理部は、
前記インターフェースを介して、前記交通安全支援装置に対して、前記位置特定部で特定した自身の位置情報とともに交通情報要求を逐次送信し、
前記交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の地図情報及び他の移動体の位置情報である第1移動体情報を、前記インターフェースを介して受信し、受信した地図情報に、前記第1移動体情報をマッピングして前記表示部に表示し、
前記カメラが撮影した映像における自身の周囲の状況と、前記自身の位置情報、及び前記第1移動体情報との関係から、衝突の危険度を算出し、前記危険度に応じた警告を、前記地図情報にさらにマッピングして前記表示部に表示する、
携帯情報端末。
【請求項2】
請求項1において、前記情報処理部は、
前記カメラが撮影した映像から当該移動体が走行する走行帯と方向を特定し、特定した走行帯と方向をさらに考慮して前記危険度を調整し、または危険走行として警告を発する、
携帯情報端末。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記情報処理部は、
前記交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の交通量情報を、前記インターフェースを介して受信し、受信した交通量情報をさらに算入して前記危険度を調整する、
携帯情報端末。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、前記情報処理部は、
前記交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の事故履歴を、前記インターフェースを介して受信し、受信した事故履歴をさらに算入して前記危険度を調整する、
携帯情報端末。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、前記情報処理部は、
前記カメラが撮影した映像における自身の周囲の移動体の位置を特定した第2移動体情報を、前記交通安全支援装置に前記インターフェースを介して送信する、
携帯情報端末。
【請求項6】
移動体に搭載される携帯情報端末にインストールされるプログラムであって、前記携帯情報端末は、交通安全支援装置と通信可能なインターフェースと、当該移動体の位置を特定する位置特定部と、当該移動体の周囲を撮影することができるカメラと、表示部と、情報処理部とを備え、前記プログラムは、前記情報処理部に、
前記インターフェースを介して、前記交通安全支援装置に対して、前記位置特定部で特定した自身の位置情報とともに交通情報要求を逐次送信させ、
前記交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の地図情報及び他の移動体の位置情報である第1移動体情報を、前記インターフェースを介して受信させ、受信した地図情報に、前記第1移動体情報をマッピングして前記表示部に表示させ、
前記カメラが撮影した映像における自身の周囲の状況と、前記自身の位置情報、及び前記第1移動体情報との関係から、衝突の危険度を算出させ、前記危険度に応じた警告を、前記地図情報にさらにマッピングして前記表示部に表示させる、
プログラム。
【請求項7】
請求項6において、前記プログラムは、前記情報処理部に、
前記カメラが撮影した映像から当該移動体が走行する走行帯と方向を特定し、特定した走行帯と方向をさらに考慮して前記危険度を調整させ、または危険走行として警告を発生させる、
プログラム。
【請求項8】
請求項6または請求項7において、前記プログラムは、前記情報処理部に、
前記交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の交通量情報を、前記インターフェースを介して受信させ、受信した交通量情報をさらに算入して前記危険度を調整させる、
プログラム。
【請求項9】
請求項6または請求項7において、前記プログラムは、前記情報処理部に、
前記交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の事故履歴を、前記インターフェースを介して受信させ、受信した事故履歴をさらに算入して前記危険度を調整させる、
プログラム。
【請求項10】
請求項6または請求項7において、前記プログラムは、前記情報処理部に、
前記カメラが撮影した映像における自身の周囲の移動体の位置を特定した第2移動体情報を、前記交通安全支援装置に前記インターフェースを介して送信させる、
プログラム。
【請求項11】
複数の移動体と通信可能なインターフェースと、地図情報を保持することができる記憶部と、前記複数の移動体の位置情報を含む移動体情報を前記地図情報にマッピングして逐次更新する情報処理部とを備える交通安全支援装置であって、
前記地図情報には、道路ごとに交通量情報がさらにマッピングされており、
前記インターフェースを介して、前記複数の移動体に含まれる移動体に搭載された移動体端末から位置情報を伴って交通情報要求を受信したとき、前記情報処理部は、当該移動体が走行中の道路及び進行方向で交わる道路の交通量情報及び/または当該交通量情報に基づいて算出された、当該移動体が事故に遭遇する危険度を、前記地図情報とともに表示させるために前記移動体端末に送信し、
前記交通安全支援装置は、前記交通情報要求を送信した前記移動体から進行方向を撮影した映像を、前記交通情報要求及び前記位置情報とともに前記インターフェースを介して受信し、
前記情報処理部は、前記進行方向を撮影した映像に基づいて当該移動体が走行する走行帯及び方向を特定し、
特定した方向が順方向で、走行帯が車道であるときの前記危険度に較べて、走行帯が自転車用走行帯であるときには前記危険度を低くし、走行帯が歩道であるときの前記危険度を高くし、
特定した方向が逆方向であるときには、走行帯によらず前記危険度を、特定した方向が順方向で走行帯が歩道であるときの危険度よりもさらに高くし、または、警告を促す情報を前記移動体端末に送信する、
交通安全支援装置。
【請求項12】
複数の移動体と通信可能なインターフェースと、地図情報を保持することができる記憶部と、前記複数の移動体の位置情報を含む移動体情報を前記地図情報にマッピングして逐次更新する情報処理部とを備える交通安全支援装置であって、
前記地図情報には、道路ごとに交通量情報がさらにマッピングされており、
前記インターフェースを介して、前記複数の移動体に含まれる移動体に搭載された移動体端末から位置情報を伴って交通情報要求を受信したとき、前記情報処理部は、当該移動体が走行中の道路及び進行方向で交わる道路の交通量情報及び/または当該交通量情報に基づいて算出された、当該移動体が事故に遭遇する危険度を、前記地図情報とともに表示させるために前記移動体端末に送信し、
前記交通安全支援装置は、前記交通情報要求を送信した前記移動体から当該移動体が走行する走行帯及び方向を、前記交通情報要求及び前記位置情報とともに前記インターフェースを介して受信し、
前記情報処理部は、
受信した方向が順方向で、受信した走行帯が車道であるときの前記危険度に較べて、走行帯が自転車用走行帯であるときには前記危険度を低くし、走行帯が歩道であるときの前記危険度を高くし、
特定した方向が逆方向であるときには、走行帯によらず前記危険度を、特定した方向が順方向で走行帯が歩道であるときの危険度よりもさらに高くする、
交通安全支援装置。
【請求項13】
請求項11または12において、
前記情報処理部は、日時と場所と人口を含む統計情報に基づいて、前記道路の交通量情報を、曜日および時間帯ごとに算出し、前記交通情報要求を受信した曜日及び時間帯の前記道路の交通量情報に基づいて、前記危険度を算出する、
交通安全支援装置。
【請求項14】
請求項11または12において、
前記交通安全支援装置は、前記記憶部にさらに事故履歴情報を記憶し、前記情報処理部は、前記交通情報要求を送信した前記移動体の位置情報に関連する事故履歴情報がある場合に、当該事故履歴情報に基づいて前記危険度をさらに高くし、及び/または当該事故履歴情報を、前記地図情報とともに表示させるために前記移動体端末に送信する、
交通安全支援装置。
【請求項15】
請求項11または12において、
前記交通安全支援装置は、前記インターフェースを介して他の移動体から撮影された映像を受信し、
前記情報処理部は、受信した映像から写っているさらに別の移動体の位置を特定して、前記地図情報にマッピングし、
前記情報処理部は、交通情報要求を受信したとき、当該交通情報要求を発した移動体が走行中の道路及び進行方向で交わる道路に存在する前記別の移動体の位置情報を、前記地図情報とともに表示させるために前記移動体端末に送信する、
交通安全支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通安全支援装置、その交通安全支援装置と通信可能な携帯情報端末、及びその携帯情報端末にインストールされるプログラムに関し、特に自転車の安全運転支援に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の運転者に、安全運転を促す支援システムが種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、自車の周囲の自転車、自動車等から得られる映像情報をサーバーに集約して、自車の運転者に対して、地図情報とともに他の車両や歩行者の位置情報を示して、出会い頭の衝突などの事故の予防に資する交通安全支援装置等が開示されている。
【0004】
特許文献2には、交差点や通常の通行帯の自転車専用通行帯に向けて設置されているカメラが撮影する映像を使って、自転車専用通行帯を通行しているのが自転車か、自動二輪車か、または自動車等かを、画像処理で判別した上で、適切に信号を操作し、または自動車に退去を促す警告を発するなどを行うことにより、自転車の安全を向上させる発明が開示されている。
【0005】
自動車の安全運転に関しても、これを支援するシステムが種々提案されている。
【0006】
特許文献3には、車両に搭載されて周辺を撮影するカメラからの画像情報を、俯瞰変換して予め形状が記憶された道路標識と比較して、法令や規則に反する走行状況である否かを判定して、必要に応じて警告する走行状況判定装置が開示されている。
【0007】
特許文献4には、走行環境に応じた夜間の車両走行ができるシステムが開示されている。カーナビシステムの地図データ、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機、各種センサ、VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム、登録商標)受信機、DSRC(Dedicated Short-Range Communication:狭域無線通信システム)受信機、画像カメラ等から各種の自車の走行環境を検知し、それに基づいて道路の曲直の具合、交差点の様子、事故や交通量の統計、走行地域の種別、走行道路の種別、天候状況、路面状況等の走行環境を把握し、それに基づいて自車の走行に関する支援必要度を算出し、支援必要度に応じてランプ群、警告警報装置、動力伝達系、制動系、操舵系を制御するとされる。
【0008】
特許文献5には、運転者が油断している可能性に即して警告を行うことができるとされる技術が開示されている。自車両と他車両とが接近していることを検知する接近検知モジュールと、交差点の交通量を取得する交通量取得モジュールを備えて、交通量が少ないにもかかわらず他車両との接近が検出された場合に警告するなどの技術が開示されている。交通量の取得には車車間通信が利用され、交差点を中心とするリンク(道路)上を通行する車両の数に基づいて算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開WO20/217316
【文献】特開2014-115757号公報
【文献】特開2009-122825号公報
【文献】特開2002-225619号公報
【文献】特開2017-117148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示される交通安全支援システムは、自転車の運転者に対して死角からの歩行者や他の車両の接近について警告して、出会い頭事故の予防を支援する。本発明者は、このシステムを開発する過程で、自転車の事故の危険性は、道路の交通量や混雑の程度、さらには自車の走行状態によって、著しく異なることに気付いた。一方、自転車に搭載することができる機器は、スマートフォン程度が限界であって、VICSやDSRCを利用することはできないため、利用できる情報には限りがある。
【0011】
本発明の目的は、自転車に搭載することができる携帯情報端末を使って、当該自転車の運転者に対して周囲で発生し得る事故の危険性を示し、もって自転車の関与する事故を回避することができる交通安全支援システムを提供することである。
【0012】
このような課題を解決するための手段を以下に説明するが、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施の形態によれば、下記の通りである。
【0014】
すなわち、移動体に搭載される携帯情報端末であって、交通安全支援装置と通信可能なインターフェースと、当該移動体の位置を特定する位置特定部と、当該移動体の周囲を撮影することができるカメラと、表示部と、情報処理部とを備え、情報処理部は以下のように動作する。
【0015】
インターフェースを介して、交通安全支援装置に対して、位置特定部で特定した自身の位置情報とともに交通情報要求を逐次送信する。
【0016】
交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の地図情報及び他の移動体の位置情報である第1移動体情報を受信し、受信した地図情報に第1移動体情報をマッピングして表示部に表示する。
【0017】
カメラが撮影した映像における自身の周囲の状況と、自身の位置情報、及び第1移動体情報との関係から衝突の危険度を算出し、それに応じた警告を地図情報にさらにマッピングして表示部に表示する。
【発明の効果】
【0018】
前記一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0019】
すなわち、自転車に搭載することができる携帯情報端末を使って、当該自転車の運転者に対して周囲で発生し得る事故の危険性を示し、もって自転車の関与する事故を回避することができる交通安全支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の交通安全支援装置、及び、複数の移動体に搭載され、前記交通安全支援装置と通信可能な携帯情報端末の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、移動体に搭載される携帯情報端末の表示についての模式的な説明図である。
図3図3は、移動体に搭載される携帯情報端末に表示される警告の模式的な説明図である。
図4図4は、他の移動体による別の移動体の位置を算出して地図にマッピングする機能の模式的な説明図である。
図5図5は、算出される危険度のデータ構造の一例の概念を、模式的に示す説明図である。
図6図6は、交通量及び算出される危険度のデータ構造の一例を、模式的に示す説明図である。
図7図7は、移動体に携帯情報端末と後方ユニットを取り付けた例を模式的に示す説明図である。
図8図8は、後方ユニットの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
〔1〕交通安全支援装置から受信する地図に他の移動体と衝突の危険度をマッピングして表示
本願において開示される代表的な実施の形態は、移動体に搭載される携帯情報端末(20、30)であって、交通安全支援装置(10)と通信可能なインターフェースと、当該移動体(20)の位置を特定する位置特定部(27)と、当該移動体(20)の周囲を撮影することができるカメラ(26)と、表示部(24)と、情報処理部(22)とを備え、以下のように構成される。
【0022】
前記情報処理部(22)は、以下の各動作を行う。
【0023】
前記インターフェースを介して、前記交通安全支援装置(10)に対して、前記位置特定部(27)で特定した自身の位置情報とともに交通情報要求を逐次送信する。
【0024】
前記交通情報要求に応じて、当該移動体(20)の周囲の地図情報及び他の移動体(B、V、P)の位置情報である第1移動体情報を、前記インターフェースを介して受信し、受信した地図情報に、前記第1移動体情報をマッピングして前記表示部(25)に表示する。
【0025】
前記カメラ(26)が撮影した映像における自身の周囲の状況と、前記自身の位置情報、及び前記第1移動体情報との関係から、衝突の危険度を算出し、前記危険度に応じた警告を、前記地図情報にさらにマッピングして前記表示部(25)に表示する。
【0026】
これにより、自転車に搭載することができる携帯情報端末(20)を使って、当該自転車の運転者に対して周囲で発生し得る事故の危険性を示し、もって自転車の関与する事故を回避することができる交通安全支援システムを提供することができる。即ち、上記移動体が自転車であり、搭載された移動体端末がスマートフォンであるような場合に、当該スマートフォンのディスプレーには、自身の周囲の地図に他の移動体がマッピング表示されており、自身で撮影して特定した周囲の移動体を含めて、他の移動体と自身との衝突の危険度を算出して、危険度が高い場合に地図に表示するなどして警告することができるからである。
〔2〕走行帯の特定
〔1〕の携帯情報端末(20)において、前記情報処理部(22)は、前記カメラ(26)が撮影した映像から当該移動体(BM)が走行する走行帯と方向を特定し、特定した走行帯と方向をさらに考慮して前記危険度を調整し、または危険走行として警告を発する。
【0027】
これにより、逆走など危険走行をいち早く検出して警告することができる。
〔3〕交通量を勘案した危険度算出
〔1〕または〔2〕の携帯情報端末(20)において、前記情報処理部(22)は、前記交通情報要求に応じて、当該移動体(BM)の周囲の交通量情報(4)を、前記インターフェースを介して受信し、受信した交通量情報(4)をさらに算入して前記危険度を調整する。
【0028】
これにより、衝突の危険度をより高い精度で算出することができる。
〔4〕事故履歴を勘案した危険度算出
〔1〕、〔2〕または〔3〕の携帯情報端末(20)において、前記情報処理部(12)は、前記交通情報要求に応じて、当該移動体(BM)の周囲の事故履歴(3)を、前記インターフェースを介して受信し、受信した事故履歴(3)をさらに算入して前記危険度を調整する。
【0029】
これにより、衝突の危険度をより高い精度で算出することができる。
〔5〕周囲の移動体情報を交通安全支援装置へアップロード
〔1〕から〔4〕のうちのいずれか1項の携帯情報端末(20)において、前記情報処理部(12)は、前記カメラが撮影した映像における自身の周囲の移動体の位置を特定した第2移動体情報を、前記インターフェースを介して交通安全支援装置(10)へ送信する。
【0030】
これにより、交通安全支援装置(10)は、自身が通信手段を持たない移動体に関する情報を含めて、地図情報にマッピングして管理することができる。
〔6〕移動体に搭載される携帯情報端末にインストールされるプログラム
本願において開示される代表的な実施の形態は、移動体に搭載される携帯情報端末(20、30)にインストールされるプログラムであって、以下のように構成される。
【0031】
前記携帯情報端末(20)は、交通安全支援装置(10)と通信可能なインターフェースと、当該移動体の位置を特定する位置特定部(27)と、当該移動体の周囲を撮影することができるカメラ(26)と、表示部(24)と、情報処理部(22)とを備える。前記プログラムは実行されることによって、前記情報処理部(22)に以下の各動作をさせる。
【0032】
前記インターフェースを介して、前記交通安全支援装置(10)に対して、前記位置特定部(27)で特定した自身の位置情報とともに交通情報要求を逐次送信させる。
【0033】
前記交通情報要求に応じて、当該移動体(BM)の周囲の地図情報(2)及び他の移動体の位置情報である第1移動体情報を、前記インターフェースを介して受信させ、受信した地図情報(2)に、前記第1移動体情報をマッピングして前記表示部(24)に表示させる。
【0034】
前記カメラ(26)が撮影した映像における自身の周囲の状況と、前記自身の位置情報、及び前記第1移動体情報との関係から、衝突の危険度を算出させ、前記危険度に応じた警告を、前記地図情報(2)にさらにマッピングして前記表示部(24)に表示させる。
【0035】
これにより、〔1〕と同様に、自転車に搭載することができる携帯情報端末(20)を使って、当該自転車の運転者に対して周囲で発生し得る事故の危険性を示し、もって自転車の関与する事故を回避することができる交通安全支援システムを提供することができる。
〔7〕走行帯の特定
〔6〕のプログラムは、前記情報処理部(22)に、前記カメラ(27)が撮影した映像から当該移動体(BM)が走行する走行帯と方向を特定し、特定した走行帯と方向をさらに考慮して前記危険度を調整させ、または危険走行として警告を発生させる。
【0036】
これにより、〔2〕と同様に、逆走など危険走行をいち早く検出して警告することができる。
〔8〕交通量を勘案した危険度算出
〔6〕または〔7〕のプログラムは、前記情報処理部(22)に、前記交通情報要求に応じて、当該移動体(BM)の周囲の交通量情報(4)を、前記インターフェースを介して受信させ、受信した交通量情報(4)をさらに算入して前記危険度を調整させる。
【0037】
これにより、〔3〕と同様に、衝突の危険度をより高い精度で算出することができる。
〔9〕事故履歴を勘案した危険度算出
〔6〕、〔7〕または〔8〕のプログラムは、前記情報処理部(22)に、 前記交通情報要求に応じて、当該移動体(BM)の周囲の事故履歴を、前記インターフェースを介して受信させ、受信した事故履歴をさらに算入して前記危険度を調整させる。
【0038】
これにより、〔4〕と同様に、衝突の危険度をより高い精度で算出することができる。
〔10〕周囲の移動体情報を交通安全支援装置へアップロード
〔6〕から〔9〕のうちのいずれか1項のプログラムは、前記情報処理部(22)に、前記カメラが撮影した映像における自身の周囲の移動体の位置を特定した第2移動体情報を、前記交通情報要求に前記インターフェースを介して送信させる。
【0039】
これにより、〔5〕と同様に、交通安全支援装置(10)は、自身が通信手段を持たない移動体に関する情報を含めて、地図情報(2)にマッピングして管理することができる。
〔11〕交通安全支援装置:移動体の進行方向における交通量に基づく事故危険度を算出、当該移動体に搭載される移動体端末に地図とともに表示(図1図2
本願において開示される代表的な実施の形態は、複数の移動体と通信可能なインターフェース(13)と、地図情報(2)を保持することができる記憶部(11)と、前記複数の移動体の位置情報を含む移動体情報(1)を前記地図情報(2)にマッピングして逐次更新する情報処理部(12)とを備える交通安全支援装置(10)であって、以下のように構成される。
【0040】
前記地図情報(2)には、道路ごとに交通量情報(4)がさらにマッピングされている。
【0041】
前記インターフェース(13)を介して、前記複数の移動体(B、V、P)に含まれる移動体に搭載された移動体端末から位置情報を伴って交通情報要求を受信したとき、前記情報処理部(12)は、当該移動体が走行中の道路及び進行方向で交わる道路の交通量情報(4)及び/または当該交通量情報に基づいて算出された、当該移動体が事故に遭遇する危険度を、前記地図情報(2)とともに表示させるために前記移動体端末(20)に送信する。
【0042】
これにより、自転車に搭載することができる携帯情報端末(20)を使って、当該自転車の運転者に対して周囲で発生し得る事故の危険性を示し、もって自転車の関与する事故を回避することができる交通安全支援システムを提供することができる。即ち、上記移動体が自転車であり、搭載された移動体端末がスマートフォンであるような場合であっても、重い数値演算処理などを行うことなく、危険箇所を地図上に表示することができる。少なくとも周辺の道路における交通量は、移動体端末ではなく交通安全支援装置側で管理されており、自転車の進行方向の道路における交通量にもとづく危険度が算出され、その結果だけが地図情報とともに移動体端末に返送されるからである。ここで、危険度の算出は、携帯情報端末と交通安全支援端末のどちらが行ってもよい。
〔12〕危険度は、ビッグデータを元に曜日及び時間帯ごとに算出(図5図6
〔11〕の交通安全支援装置(10)において、前記情報処理部(12)は、日時と場所と人口を含む統計情報に基づいて、前記道路の交通量情報(4)を、曜日および時間帯ごとに算出し、前記交通情報要求を受信した曜日及び時間帯の前記道路の交通量情報(4)に基づいて、前記危険度を算出する。
【0043】
これにより、情報処理端末(20)は、リアルタイムの交通量データを収集する手段を持たなくても、道路の交通量情報を推定して危険度の算出に利用することができる。
〔13〕交通情報要求を発した移動体が走行する走行帯の考慮
〔11〕または〔12〕の前記交通安全支援装置(10)は、前記交通情報要求を送信した前記移動体(20)から進行方向を撮影した映像を、前記交通情報要求及び前記位置情報とともに前記インターフェース(13)を介して受信する。前記情報処理部(12)は、前記進行方向を撮影した映像に基づいて当該移動体が走行する走行帯及び方向を特定し、特定した方向が順方向で、走行帯が車道であるときの前記危険度に較べて、走行帯が自転車用走行帯であるときには前記危険度を低くし、走行帯が歩道であるときの前記危険度を高くし、特定した方向が逆方向であるときには、前記危険度をさらに高くするか、または、警告を促す情報を前記移動体端末(20)に送信する。
【0044】
これにより、移動体の走行状況を反映し、より精度の高い危険度を算出することができ、または危険度がより高い場合には即座に当該移動体の運転者に対して警告を発することができる。
〔14〕交通情報要求を発した移動体が走行する走行帯の考慮(移動体が走行帯を特定)
〔11〕または〔12〕の交通安全支援装置(10)は、前記交通情報要求を送信した前記移動体から当該移動体が走行する走行帯及び方向を、前記交通情報要求及び前記位置情報とともに前記インターフェース(13)を介して受信し、前記情報処理部は、受信した方向が順方向で、受信した走行帯が車道であるときの前記危険度に較べて、走行帯が自転車用走行帯であるときには前記危険度を低くし、走行帯が歩道であるときの前記危険度を高くし、特定した方向が逆方向であるときには、前記危険度をさらに高くする。
【0045】
これにより、移動体の走行状況を反映し、より精度の高い危険度を算出することができる。移動体は自身の走行状況の把握を搭載した端末側で行うため、危険な走行に対する警告を迅速に発することができる。
〔15〕事故履歴の考慮
〔11〕から〔14〕のうちのいずれか1項の交通安全支援装置(10)は、前記記憶部にさらに事故履歴情報を記憶する。前記情報処理部(12)は、前記交通情報要求を送信した前記移動体の位置情報に関連する事故履歴情報(3)がある場合に、当該事故履歴情報(3)に基づいて前記危険度をさらに高くし、及び/または当該事故履歴情報(3)を、前記地図情報(2)とともに表示させるために前記移動体端末(20)に送信する。
【0046】
これにより、事故履歴をも考慮して、危険度を算出する精度をより高めることができる。
〔16〕他の移動体が撮影した映像から周囲の移動体の位置を特定して地図情報にマッピング表示
〔11〕から〔15〕のうちのいずれか1項において、前記交通安全支援装置(10)は、前記インターフェースを介して他の移動体から撮影された映像を受信する。前記情報処理部(12)は、受信した映像から写っているさらに別の移動体の位置を特定して、前記地図情報(2)にマッピングし、交通情報要求を受信したとき、当該交通情報要求を発した移動体が走行中の道路及び進行方向で交わる道路に存在する前記別の移動体の位置情報を、前記地図情報とともに表示させるために前記移動体端末に送信する。
【0047】
これにより、交通安全支援装置(10)は、交通情報要求を発した移動体に対して、周囲の別の移動体の存在を知らせることができ、もって出会い頭等の事故を減らすことができる。
【0048】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0049】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の交通安全支援装置、及び、複数の移動体に搭載され、前記交通安全支援装置と通信可能な携帯情報端末の構成例を示すブロック図である。
【0050】
交通安全支援装置10は、複数の移動体に搭載される携帯情報端末20,30と、通信ネットワーク100を介して通信することができるように構成されている。本特許出願において移動体とは、交通における移動体を指し、例えば、歩行者、自転車、車いす、自動二輪車、自動車などである。また、携帯情報端末とは、例えばスマートフォンやタブレットであって、歩行者が携行し、自転車や車いす、自動二輪車や自動車に設置され得る。また、自動車に搭載されたナビゲーションシステムやドライブレコーダ、サラウンドビューモニター等を含む運転支援装置であってもよい。なお、移動体には、携帯情報端末を携行せずまた搭載していない移動体が含まれてもよい。ここで、運転者自身の移動体BMに搭載されている携帯情報端末は携帯情報端末20、他の移動体Bに搭載されている携帯情報端末は携帯情報端末30と表す。
【0051】
通信ネットワーク100は、例えば、携帯電話通信網を介して交通安全支援装置10と通信可能とされてもよい。特に、携帯電話通信網が第5世代(5G)以降の規格に準拠していれば、広帯域であるばかりでなく低遅延であるため、交通事故の防止にはより好適である。
<交通安全支援装置の構成>
交通安全支援装置10は、インターフェース13と記憶部11と情報処理部12とを備える。より具体的には、交通安全支援装置10はインターネットなどのネットワークに接続するためのインターフェース13を備えたデータサーバであればよく、例えばクラウドサーバーを使って実現されてもよい。交通安全支援装置10の記憶部11には、移動体の位置情報を含む移動体情報1と地図情報2とが保持される。このときの移動体には、上述した通信ネットワーク100を介して交通安全支援装置10が通信することができる端末が搭載されている複数の移動体のうちの一部が含まれ、そのような端末が搭載されていない移動体やそのような端末を携行していない移動体も含まれてもよい。
【0052】
記憶部11には、複数の移動体の位置情報を含む移動体情報1、地図情報2が記憶されており、さらに、事故履歴情報3、及び交通量情報4が記憶されてもよい。各移動体は、位置情報によって地図情報2にマッピングされている。即ち、各移動体は、位置情報に基づいて地図中のどこに存在するかがわかるように対応づけされている。
【0053】
事故履歴情報3は、過去にその場所で事故が発生したことを表示するものであり、過去に事故が発生した場所の位置情報を含み、その位置情報によって地図情報2にマッピングされている。
【0054】
交通量情報4は、ある位置や領域または道路の交通量である。交通量情報4は、交通安全支援装置10が、道路ごとの、曜日、時間ごとに算出してもよい。また、交通安全支援装置10が、交通情報や人の流れを把握している事業者から入手してもよい。その場合、情報処理部12は、インターフェース13を介して外部の装置から交通量情報4を受信する。
【0055】
危険度は、移動体が交通事故に遭う可能性を表す数値であり、ある位置、領域、または道路などにおける移動人口や周辺環境などから算出される。危険度の求め方の詳細は後述する。なお、危険度は、移動体側の携帯情報端末20で算出されて利用され、交通安全支援装置10の記憶部11には記憶されないような実施形態もある。
【0056】
なお、移動体情報1や交通量情報4は、適当な周期で上書きされるなどによって消去されるとよい。交通量情報4は、定期的に受信してもよいが、イベントが行われるときや災害時などは、状況に合わせて適宜受信してもよい。
<携帯情報端末の構成>
携帯情報端末20,30は、例えばスマートフォンやタブレットであって、通信部21,31、情報処理部22,32、記憶部23,33、表示部24,34、センサ25,35、カメラ26,36、及び位置特定部27,37、インターフェース(図示せず)を備える(後述する実施形態2で引用する図5も合わせて参照)。
【0057】
通信部21,31は、インターフェースと通信ネットワーク100を介して交通安全支援装置10と通信する。情報処理部22,32は、プロセッサとメモリ等を含んで構成され、インストールされたプログラムを実行するコンピュータである。記憶部23,33は、文字通り記憶装置であり、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成されると好適である。表示部24,34は、液晶、有機ELなど如何なる媒体を使った表示デバイスでもよい。センサ25,35は、移動体の速度、加速度、角速度、方位、姿勢などの情報を測定する。カメラ26,36は、携帯情報端末20,30が移動体に取り付けられたときに進行方向の映像を撮影することができるカメラであり、位置特定部27,37は例えば全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)であり、その移動体の位置情報を緯度と経度による座標で求めることができる。
<携帯情報端末の表示>
図2は、移動体に搭載される携帯情報端末の表示についての模式的な説明図である。
【0058】
携帯情報端末20は、自身の移動体BMに取り付けられて走行するときに、例えば図2に示すように、本発明による交通安全支援の画面である交通安全支援画面70を表示する。図2の交通安全支援画面70は、車道69、歩道65及び自転車専用走行レーン64と、それらを移動する移動体である人P、自転車B、自動車Vなどが表示されている。また、交通安全支援画面70では、横断歩道66など交通安全支援に重要な情報もわかりやすく表示されている。
【0059】
携帯情報端末20が取り付けられている自分自身の移動体BMは、交通安全支援画面70では、他のマークよりも大きく表示するなど目立つ表示とされている。自分自身の移動体BMは、携帯情報端末20が撮影された映像や、位置情報の変化から、移動体BMの進行方向を推定することができ、矢印の形などで移動方向68を示すことができる。図2では、移動方向68は、矢印のシャフト部から三角形の先端のアローヘッド部に向かっていることを示している。
【0060】
危険度が、事故には至らないものの事故になってもおかしくないヒヤリハットの値となった場合、情報処理部22は、その相手の移動体(B、V、P)の表示の色を変えたり点滅させたりして平時とは異なる態様で表示部24に表示することができる。これにより、移動体の運転者は、事故の可能性があることを認識することができ、ブレーキをかけたり走行ルートを変更したりするなど、早めに危険度を下げる運転を行うことができる。
【0061】
事故履歴情報62は、過去に事故が起きた場所に表示して、運転者に注意を促す。交通混雑表示63は、渋滞などの交通混雑の状態を示しており、交通量情報4などから推定して表示する。
【0062】
図3は、移動体に搭載される携帯情報端末に表示される警告の模式的な説明図である。
【0063】
携帯情報端末20は、移動体BMの危険度がさらに高まると交通安全支援画面70上に警告表示61を表示する。図3は、情報処理部22が、カメラ26の映像を解析して、一方通行の自転車専用レーンを逆走していると判断したときの警告の表示である。警告表示61は、危険度の原因の内容に応じた表示とすることができる。
【0064】
警告表示61の表示位置は、表示部24の目立つところに認識しやすい位置とする。ここで、情報処理部22は、自身の移動体BMや表示の原因が警告表示61により隠れない位置になるように表示の位置や大きさを調整することができる。具体的には、図2に示す「逆走禁止」の表示であれば、自身の移動体61とその進行方向64と関係する自転車専用レーン64は、警告表示61の下に隠れないように、情報処理部22は、警告表示61の表示位置と大きさを調整する。これにより、自身の移動体BMの運転者は警告表示61の内容をより理解しやすくなり、速やかに回避対応をすることができる。
【0065】
運転者がブレーキをかけるなどして危険度が下がり、警告表示61が表示部24から消えた場合であっても、前述したヒヤリハットの状態であれば、情報処理部22はその警告表示61の相手である移動体(B、V、P)の色をヒヤリハットの状態に保つことができる。これにより、携帯情報端末20は、引き続き運転者に注意を促すことができる。
<携帯情報端末の動作>
図4は、他の移動体による別の移動体の位置を算出して地図にマッピングする機能の模式的な説明図である。
【0066】
携帯情報端末20は、自身の周辺の地図情報を交通安全支援装置10から受信する。また、情報処理部22は、位置特定部27の出力とセンサ25の出力から、自身の移動体BMの位置と進行方向と速度を把握することができる。
【0067】
カメラ26は、移動体BMに搭載され、進行方向の映像を撮り、この映像を情報処理部22が解析する。画像解析処理は既存の方法を用いることができる。これにより、情報処理部22は、映像に写っている移動体B、V、Pを認識する。カメラの映像と移動体BMの位置、進行方向、速度の情報から、情報処理部22は、移動体B2、B3、V1、P1の位置、進行方向、速度を把握し、地図上にマッピングする。
【0068】
ここで、図4では自身の移動体BMは交差点に向かって進んでいる。移動体BMの交差点近くでは、移動体B1、B2、B3、V1、P1もその交差点に向かって進んでいるが、それらの移動体B1、B2、B3、V1、P1は、死角となって、移動体BMからは見えない。移動体B1とB3は、携帯情報端末30を搭載しているので、自身の位置、進行方向、速度の情報を交通安全支援装置10へ送信している。また、この時に移動体B1とB3は、自身の周囲の映像から、移動体B2、V1、P1の位置、進行方向、速度の情報を把握し、交通安全支援装置10に送信することができる。交通安全支援装置10は、移動体B1とB3からの情報により、移動体B1、B2、B3、V1、P1の位置、進行方向、速度を把握することができる。自身の移動体BMは、交通安全支援装置10から地図情報を受信するとともに、これら移動体B1、B2、B3、V1、P1の位置、進行方向、速度を受信することにより、自身のカメラ26では把握できない隠れた移動体の存在を知ることができる。情報処理部22は、これらの隠れた移動体の存在も考慮して危険度を算出することができる。これにより、情報処理部22は、より精度よく危険度を算出することができる。また、情報処理部22は、移動体B1、B2、B3、V1、P1を地図上にマッピングすることにより、運転者に状況をわかりやすく伝えることができる。
【0069】
事故履歴情報62は、交通安全支援装置10に記録されている。交通安全支援装置10は、情報携帯端末20から要求された地図情報2の領域に事故履歴情報62があれば、これも地図情報2と併せて情報処理端末20に送信する。
【0070】
図5は、算出される危険度のデータ構造の一例の概念を、模式的に示す説明図である。
【0071】
図5では、移動体BMの位置と移動先の位置は、移動体ポイント67として、記号AからGで地図上に示されている。移動方向68の矢印は、移動体ポイント67の記号DからAへ移動することを示す。他の矢印も同様であり、矢印のシャフト部からアローヘッド部方向に移動体BMが移動することを示す。
【0072】
各移動体ポイント67の地図上の位置は、道路上の位置を示しており、記号AからDへの移動は歩道65、記号BからEは自転車専用レーン64、記号CからFは車道69を通っている。記号DからG、記号EからGは左折することを示す。
【0073】
移動体BMに搭載されている携帯情報端末20は、カメラ26によって撮影した周囲の映像に基づいて、危険度を算出する。ここで周囲の映像から抽出される情報は、例えば、自身が走行する走行帯(歩道、車道、自転車専用走行帯)、方向(順方向、逆走方向)、周囲の移動体の移動方向や速度、自身との距離などである。
【0074】
危険度の算出は、例えば、カメラ26によって撮影した周囲の映像に基づいて、自身の移動体BMが走行する走行帯が記号BからEに向かう自転車専用走行帯であると判断したときは、車道を走行する場合よりも危険度を小さく算出する。歩道を走行している場合には、基本的にはそれよりも危険度は大きく算出する。さらに交通安全支援装置10から送られてくる地図情報と他の移動体の情報や交通混雑等を加味して、危険度を調整する。例えば図4に示されるように、自身が歩道を走行しておりその歩道の進行方向の死角から歩いてくる歩行者Pと遭遇する可能性があるときには、危険度を大幅に大きくして事故回避行動を促す。一方、歩道を走行していても同じ経路や交差する道路に歩行者など他の移動体が存在しなければ、危険度は自転車専用走行帯を走行している場合と同程度まで小さくすることもできるであろう。
【0075】
交通安全支援装置10から送られた事故履歴情報62があれば、移動体BMに搭載されている携帯情報端末20は、それも参酌して危険度を調整することができる。例えば、自身の進行方向に事故履歴情報62があれば、危険度を増やす方向に調整する。このとき、自身の走行帯と事故の類似性を考慮しても良い。例えば、歩道を走行している場合には、歩道における自転車と歩行者の接触事故の履歴は、危険度をより大きく調整する方向に寄与するが、車道における自動車どうしの事故履歴は、危険度を若干大きく調整する程度にしか寄与しないように設定することができる。
【0076】
このように、携帯情報端末20は、位置特定部27の出力とセンサ25の出力から、自身の移動体BMの位置と進行方向と速度を把握し、周辺の移動体情報を含む地図情報を交通安全支援装置10から受信し、その上で自身のカメラ26で撮影した周囲の状況に基づいて、危険度を算出することができる。
【0077】
さらに、交通量や事故履歴に関する情報を、交通安全支援装置10から受信して、算出される危険度を調整するとより好適である。
<交通安全支援装置の動作>
交通安全支援装置10は、複数の携帯情報端末20、30との通信し、その処理を統括するサーバー機能を有する。交通情報支援装置10は、携帯情報端末20、30から地図情報2を含む交通情報が要求された場合には、地図情報2とともにその領域の移動体情報1、事故履歴情報3、交通量情報4を当該携帯情報端末に送信する。
【0078】
交通安全支援装置10は、携帯情報端末20、30から送られてきた移動体B、V、Pの位置、進行方向、速度の情報についても、地図上にマッピングして記録できる。交通安全支援装置10は、携帯情報端末20、30からの要求により、地図情報2とともに移動体B、V、Pの位置、進行方向、速度の情報を、当該携帯情報端末20、30に送信することができる。
【0079】
交通安全支援装置10は、事故履歴情報3と交通量情報4は、ネットワーク100を介して他の機関等から入手することができる。交通安全支援装置10は、交通量情報は、複数の携帯情報端末20、30からの情報から推定してもよい。交通安全支援装置10は、この事故履歴情報3と交通量情報4を記録部11に記録し、携帯情報端末20、30から要求のあった領域に該当する情報を、当該携帯情報端末に送信する。
【0080】
〔実施形態2〕
実施形態1では、カメラ26が撮影した映像の解析や、危険度の算出を携帯情報端末20が行っていたが、実施形態2では、それらの一部または双方を交通安全支援装置10が行う。
【0081】
カメラ26が撮影した映像の解析を交通安全支援装置10が行う場合、携帯情報端末20は、映像そのものを交通安全支援装置10に送ってもよい。また、携帯情報端末20がある程度の解析をおこなった後のパラメータ等を交通安全支援装置10に送ってもよい。後者の場合には、映像そのものを送信するよりもデータ量が少なくなるため、通信に要する時間を少なくすることができる。
【0082】
危険度の算出を交通安全支援装置10が行う場合、携帯情報端末20は、自身の移動体BMの位置情報、進行方向、速度等の情報を交通安全支援装置10に送信する。交通安全支援装置10の情報処理部12は、情報処理端末20から送られてきた移動体BMの位置情報、進行方向、速度等の情報と、地図上にマッピングされた他の移動体B、V、Pの位置、進行方向、速度の情報、事故履歴情報3、交通量情報4の一つまたは複数を用いて危険度を算出する。交通安全支援装置10は、算出した危険度を自身の移動体BMの位置情報等を送信してきた携帯情報端末20に送信する。
【0083】
図6は、交通量及び算出される危険度のデータ構造の一例を、模式的に示す説明図である。
【0084】
図6の表の「from」「to」は、移動ポイント67の始点と終点を表す。「移動人口」は、交通安全支援装置10から受信した移動人口の値である。「危険度」は、「from」から「to」へ移動するときの危険度を示している。すなわち、1行目は移動ポイント67の記号AからDまで移動するときのそのルートの「移動人口」は300人/hrであり、その時の危険度は50であることを示しており、2行目は移動ポイント67の記号BからEまで移動するときのそのルートの「移動人口」は100人/hrであり、その時の危険度は10であることを示している。以下の行も同様である。
【0085】
この図6に数値が示されている表は、各径路における月曜日の17:00~18:00の状況を示すものであり、この表が1時間ごとに記録部11の危険度に記録されている。これにより、各走行帯の1時間ごとの交通状況を考慮して危険度を算出することができるため、より精度の高い危険度を求めることができる。
【0086】
情報処理部22は、図6の表のように他から入手したデータを考慮して、危険度を算出することができる。交通安全支援装置10は、情報処理端末20よりも高性能な機器で構成することができるため、図6の表のような大きなデータを用いて危険度を算出することができる。
【0087】
〔実施形態3〕
実施形態3では自身の移動体BMに後方ユニットを装着した形態である。
【0088】
図7は移動体に携帯情報端末と後方ユニットを取り付けた例を模式的に示す説明図である。図8は後方ユニットの構成例を示すブロック図である。
【0089】
図7では、自身の移動体BMの前方に携帯情報端末20が設置されるとともに後方に後方ユニット50が設置されている。後方ユニット50は、図8に示すように、通信部51、画像処理部52、記憶部53、カメラ55、センサ54から構成される。
【0090】
通信部51は、前方の携帯情報端末20と通信し、カメラ55やセンサ54のデータを送ることができる。通信部51は、インターネット100に接続して通信してもよい。画像処理部52は、カメラ55が撮影した映像の解析を行うとともに、各ブロックの制御も行う。記憶部53は、カメラ55やセンサ54の出力データや、その解析結果を記録する。センサ54は、移動体の速度、加速度、方位、姿勢などの情報を測定する。カメラ55は、移動体BMの後方の映像を撮影する。撮影された映像は、画像処理部52が解析し、解析結果を前方に取り付けられた携帯情報処理端末20に送信する。携帯情報処理端末20は、後方の他の移動体B、V、Pの位置、進行方向、速度を把握することができ、危険度をより精度高く算出することができる。
【0091】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、交通安全支援装置および当該交通安全支援装置と通信可能な携帯情報端末にインストールされるプログラムに関し、特に自転車の衝突事故の回避に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 移動体情報
2 地図情報
3 事故履歴情報
4 交通量情報
10 交通安全支援装置
11 記憶部
12 情報処理部
13 インターフェース
20,30 携帯情報端末
21,31 通信部
22,32 情報処理部
23,33 記憶部
24,34 表示部
25,35 センサ
26,36 カメラ
27,37 位置特定部
50 後方ユニット
51 通信部
52 画像処理部
53 記憶部
54 センサ
55 カメラ
61 警告表示
62 事故履歴情報
63 交通混雑表示
64 自転車専用走行レーン
65 歩道
66 横断歩道
67 移動体ポイント
68 移動方向
69 車道
70 交通安全支援画面
100 通信ネットワーク
BM 自身の移動体(自転車)
B,B1,B2,B3 他者の移動体(自転車)
P,P1 他者の移動体(人)
V,V1 他者の移動体(自動車)
【要約】
移動体に搭載される携帯情報端末であって、交通安全支援装置と通信可能なインターフェースと、当該移動体の位置を特定する位置特定部と、当該移動体の周囲を撮影することができるカメラと、表示部と、情報処理部とを備え、情報処理部は以下のように動作する。インターフェースを介して、交通安全支援装置に対して、位置特定部で特定した自身の位置情報とともに交通情報要求を逐次送信する。交通情報要求に応じて、当該移動体の周囲の地図情報及び他の移動体の位置情報である第1移動体情報を受信し、受信した地図情報に第1移動体情報をマッピングして表示部に表示する。カメラが撮影した映像における自身の周囲の状況と、自身の位置情報、及び第1移動体情報との関係から衝突の危険度を算出し、それに応じた警告を地図情報にさらにマッピングして表示部に表示する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8