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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20241219BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20241219BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20241219BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241219BHJP
   H01R 13/11 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H05K1/14 H
H02M3/00 Y
H01R13/66
H02M7/48 Z
H01R13/11 302N
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021122381
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018334
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】小倉 洋
(72)【発明者】
【氏名】川北 嘉洋
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀敏
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-035860(JP,A)
【文献】特開2008-282802(JP,A)
【文献】特開2006-092076(JP,A)
【文献】特開2007-285833(JP,A)
【文献】特開2017-212165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H05K 1/14
H01R 13/66
H02M 7/48
H01R 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部品と、
第2の部品と、
前記第1の部品または前記第2の部品のいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部を有するオス型嵌合部材と、前記第1の部品または前記第2の部品の他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部及び第2の挟持部を有するメス型嵌合部材と、を前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部によって前記差込部を挟持することによって嵌合して、前記第1の部品と前記第2の部品とを電気的に接続する少なくとも1つの嵌合部材と、
少なくとも1つの前記嵌合部材の両端の電圧を計測する電圧計測部と、
前記電圧計測部が計測した電圧に基づいて、前記嵌合部材の抵抗値を推定する抵抗値推定部と、
前記抵抗値推定部が推定した抵抗値が、抵抗閾値を超えたことを条件として報知を行う報知部と、を備え
前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部の各々は、互いの対向する面に向かって凸部を形成するように屈曲する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記抵抗値推定部は、
前記電圧計測部が計測した電圧と、前記第1の部品と前記第2の部品との間に流れる電流指令値とに基づいて、前記嵌合部材の抵抗値を推定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記嵌合部材に流れる電流を計測する電流計測部を更に備えて、
前記抵抗値推定部は、
前記電圧計測部が計測した電圧と、前記電流計測部が計測した電流とに基づいて、前記嵌合部材の抵抗値を推定する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記抵抗値推定部が推定した抵抗値を時系列で記憶する抵抗値記憶部を更に備えて、
前記報知部は、
前記抵抗値記憶部が記憶した抵抗値の増加量が抵抗増加量閾値を超えたことを条件として報知を行う、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記報知部は、
前記抵抗値推定部が推定した抵抗値が、前記抵抗閾値を超えたことを条件として、前記電力変換装置を停止する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
第1の部品と、
第2の部品と、
前記第1の部品または前記第2の部品のいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部を有するオス型嵌合部材と、前記第1の部品または前記第2の部品の他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部及び第2の挟持部を有するメス型嵌合部材と、を前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部によって前記差込部を挟持することによって嵌合して、前記第1の部品と前記第2の部品とを電気的に接続する少なくとも1つの嵌合部材と、
前記嵌合部材の両端の電圧を計測する電圧計測部と、
前記電圧計測部が計測した電圧が、電圧閾値を超えたことを条件として報知を行う報知部と、を備え
前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部の各々は、互いの対向する面に向かって凸部を形成するように屈曲する、
電力変換装置。
【請求項7】
前記電圧閾値は、
前記嵌合部材が、予め決められた基準抵抗値を有すると仮定した場合に、当該嵌合部材に、前記電力変換装置に流れると推定される最大電流が流れた際の、前記嵌合部材の両端の電圧である、
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電圧計測部が計測した電圧を時系列で記憶する電圧記憶部を更に備えて、
前記報知部は、
前記電圧記憶部が記憶した電圧の増加量が電圧増加量閾値を超えたことを条件として報知を行う、
請求項6または請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記報知部は、
前記電圧計測部が計測した電圧が、前記電圧閾値を超えたことを条件として、前記電力変換装置を停止する、
請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
第1の部品と、
第2の部品と、
前記第1の部品または前記第2の部品のいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部を有するオス型嵌合部材と、前記第1の部品または前記第2の部品の他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部及び第2の挟持部を有するメス型嵌合部材と、を前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部によって前記差込部を挟持することによって嵌合して、前記第1の部品と前記第2の部品とを電気的に接続する少なくとも1つの嵌合部材と、
前記第1の部品または前記第2の部品の状態を計測する状態計測部と、
前記状態計測部が計測した前記第1の部品または前記第2の部品の状態が、部品状態閾値を超えたことを条件として報知を行う報知部と、を備え
前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部の各々は、互いの対向する面に向かって凸部を形成するように屈曲する、
電力変換装置。
【請求項11】
前記状態は、前記第1の部品または前記第2の部品の温度である、
請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記状態は、前記第1の部品または前記第2の部品の歪み量又は歪みの変化回数である、
請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記状態は、前記第1の部品または前記第2の部品の振動の振幅又は振動の回数である、
請求項10に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記状態計測部が計測した前記第1の部品または前記第2の部品の状態を、時系列で記憶する部品状態記憶部を更に備えて、
前記報知部は、
前記部品状態記憶部が記憶した部品の状態が前記部品状態閾値を超えたことを条件として報知を行う、
請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項15】
前記報知部は、
前記状態計測部が計測した前記第1の部品または前記第2の部品の状態が、前記部品状態閾値を超えたことを条件として、前記電力変換装置を停止する、
請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項16】
前記第1の挟持部及び前記第2の挟持部の各々の先端部には、間隙が設けられている、
請求項1、6、10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項17】
前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とが対向する面において、前記第1の挟持部と前記第2の挟持部は対称構造である、
請求項1、6、10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項18】
前記オス型嵌合部材及び前記メス型嵌合部材は、それぞれ金属材料により形成される、 請求項1、6、10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項19】
前記金属材料の表面領域のうちの一部又は全部の領域には、導体メッキが施されている、
請求項18に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、異なる基板間を、通電性を有する嵌合部材で接続した電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-014128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電源装置にあっては、回路に流れる大電流によって基板の温度が高温となるため、嵌合部材に線膨張係数に応じた熱歪が発生して、嵌合部材に意図しない接触抵抗が生じるおそれがあった。また、特許文献1に開示された電源装置を車両に搭載して使用する場合、機械的な振動によって、嵌合部材が摺動するおそれがある。嵌合部材が摺動を繰り返すと、接点表面の削れや酸化が促進されて、嵌合部材の接触抵抗が増加するおそれがあった。更に、電源装置の長期間の動作によって、嵌合部材が長期間高温にさらされると、嵌合部材の応力緩和による接圧低下によって接触抵抗が増加するおそれがあった。そして、嵌合部材の接触抵抗が増加すると、電源回路の電気的接続機能を損なうおそれがあった。
【0005】
特許文献1には、このような嵌合部材に起こり得る電気的な特性の変化や物理的な変化を推定することは、開示も示唆もされていない。
【0006】
本開示は、異なる回路基板を、導電性を有する嵌合部材で接続した接続構造を有する電力変換装置において、嵌合部材の電気的な特性の変化を推定することができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電力変換装置は、第1の部品と、第2の部品と、少なくとも1つの嵌合部材と、電圧計測部と、抵抗値推定部と、報知部とを備える。嵌合部材は、第1の部品または第2の部品のいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部を有するオス型嵌合部材と、第1の部品または第2の部品の他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部及び第2の挟持部を有するメス型嵌合部材と、を第1の挟持部及び第2の挟持部によって差込部を挟持することによって嵌合して、第1の部品と第2の部品とを電気的に接続する。第1の挟持部及び第2の挟持部の各々は、互いの対向する面に向かって凸部を形成するように屈曲する。電圧計測部は、少なくとも1つの嵌合部材の両端の電圧を計測する。抵抗値推定部は、電圧計測部が計測した電圧に基づいて、嵌合部材の抵抗値を推定する。報知部は、抵抗値推定部が推定した抵抗値が、抵抗閾値を超えたことを条件として報知を行う。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電力変換装置によれば、異なる回路基板を、導電性を有する嵌合部材で接続した接続構造を有する電力変換装置において、嵌合部材の電気的な特性の変化を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、電力変換回路を構成する複数の回路基板の層状構造の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、図1における嵌合部材の構成及び結合状態の一例を示す模式図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態の変形例に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施形態の変形例に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態の変形例に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、第3の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図11図11は、第3の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12図12は、第4の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図13図13は、サーミスタによって温度の計測を行う回路構成の一例を示す図である。
図14図14は、第4の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15図15は、第5の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図16図16は、歪みゲージによって歪みの計測を行う回路構成の一例を示す図である。
図17図17は、第5の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18図18は、第6の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図19図19は、第6の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示に係る電力変換装置の種々の実施の形態について説明する。
【0011】
(電力変換回路の基板構成)
まず、以下に説明する全ての実施形態に係る電力変換回路の基板構成を説明する。電力変換回路は、例えば、電気自動車などに搭載され、電源(外部電源)から供給される交流電力を所定の電圧の直流電力へ変換し、変換後の直流電力をリチウムイオンバッテリなどのバッテリへ出力する車載充電器である。このような電力変換回路は、DC/DCコンバータやインバータ等の回路構成が実装された複数の回路基板を搭載する。DC/DCコンバータは、直流電圧を別の直流電圧に変換することによって、個々の電子機器に見合った直流電圧を生成する。インバータは、直流または交流から、周波数が異なる交流を発生させる。
【0012】
図1を用いて、電力変換装置が備える電力変換回路の基板構成を説明する。図1は、電力変換回路を構成する複数の回路基板の層状構造の一例を示す概略断面図である。特に、図1は、電力変換回路1が有する複数の回路基板のうちの、第1の基板PCB1、第2の基板PCB2及び第3の基板PCB3を例示する。
【0013】
第1の基板PCB1、第2の基板PCB2、第3の基板PCB3及び第4の基板PCB4は、それぞれプリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)である。プリント回路基板は、一例として、アルミニウム合金又は銅合金を母材として形成された金属基板である。プリント回路基板のアルミニウム合金又は銅合金の一部を水冷されている架台に熱交換可能に接触させることにより、プリント回路基板に搭載された電子部品の温度上昇を抑制することができる。なお、金属を母材とするプリント回路基板を用いることにより、樹脂を母材とするプリント回路基板を用いる場合よりも冷却効率を向上することができる。
【0014】
第1の基板PCB1は、複数の一対の嵌合部材Bにより第2の基板PCB2に結合する。なお、以下の説明において、複数の一対の嵌合部材Bを、複数対の嵌合部材Bと記載する場合もある。また、一対の嵌合部材Bを嵌合部と表現する場合もある。第1の基板PCB1は、第2の基板PCB2に電気的に接続され、第2の基板PCB2から供給された電力に応じた電力をバッテリなどへ出力する。第1の基板PCB1は、第4の基板PCB4と電気的に接続されて、基板ユニットXを構成する。第1の基板PCB1の第2の基板PCB2側の面には、複数のオス型嵌合部材Bmが配置される。
【0015】
第2の基板PCB2は、複数対の嵌合部材Bにより第1の基板PCB1及び第3の基板PCB3の各々に結合する。第2の基板PCB2は、第1の基板PCB1及び第3の基板PCB3の各々に電気的に接続され、第3の基板PCB3から供給された電力に応じた電力を第1の基板PCB1へ出力する。第2の基板PCB2の第1の基板PCB1側の面と、第2の基板PCB2の第3の基板PCB3側の面には、それぞれ複数のメス型嵌合部材Bfが配置される。即ち、オス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bfとが、互いに嵌合することによって、嵌合部材Bを形成する。
【0016】
第3の基板PCB3は、複数対の嵌合部材Bにより第2の基板PCB2に結合する。第3の基板PCB3は、例えば外部電源に電気的に接続され、外部電源からの電力を入力する。第3の基板PCB3の第2の基板PCB2側の面には、複数のオス型嵌合部材Bmが配置される。
【0017】
なお、実施形態は、第1の基板PCB1及び第3の基板PCB3に複数のオス型嵌合部材Bmを配置して、第2の基板PCB2の両面に複数のメス型嵌合部材Bfを配置した場合を例示するが、これに限らない。例えば、第1の基板PCB1及び第3の基板PCB3に複数のメス型嵌合部材Bfを配置して、第2の基板PCB2の両主面に複数のオス型嵌合部材Bmを配置してもよい。
【0018】
また、例えば、第2の基板PCB2の一方の面に複数のオス型嵌合部材Bmを配置するとともに、第2の基板PCB2の他方の面に複数のメス型嵌合部材Bfを配置する構成とすることもできる。
【0019】
また、例えば、第1の基板PCB1、第2の基板PCB2及び第3の基板PCB3の各々において、1つの面に複数のオス型嵌合部材Bm及び複数のメス型嵌合部材Bfを配置する構成とすることもできる。
【0020】
また、基板ユニットXの第1の基板PCB1及び第4の基板PCB4を、実施形態に係る複数対の嵌合部材Bにより結合することもできる。つまり、嵌合部材Bによる接続構造は、基板ユニットXなどの基板ユニット内の基板間の結合に適用されてもよいし、基板ユニット間の結合に適用されてもよいし、基板ユニットと基板ユニット外の基板との間の結合に適用されてもよい。
【0021】
(嵌合部材の構成)
図2は、図1における嵌合部材の構成及び結合状態の一例を示す模式図である。図2の(a)は、オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfの構成の一例を示す。図2の(b)は、オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfの側面図の一例を示す。図2の(c)は、オス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bfとが嵌合した状態の側面図の一例を示す。図2の(d)は、オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfを簡易的に表現したシンボルの一例を示す。図2の(e)は、オス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bfとが嵌合した状態を簡易的に表現したシンボルの一例を示す。
【0022】
図2の(a)に示すように、オス型嵌合部材Bmは、導通性を有する、差し込む側のブレード状のコネクタ(Plug)である。オス型嵌合部材Bmは、略平板形状の形状を有する差込部11を備える。差込部11の先端部13は、面取りされており、先端側に向かうほど厚さが小さい。これにより、差込部11をメス型嵌合部材Bfの受入部20に差し込み易くする。差込部11の、先端部13の反対側の端部には、接続部15が設けられる。接続部15は、先端部13の反対側の端部が、間隙17により3つに分割されて形成された各々の部位である。接続部15は、差込部11に対して、互い違いに略垂直方向に曲げられて、オス型嵌合部材Bmを基板にはんだ接合する際の接合部とされる。差込部11及び接続部15は、例えば1枚の金属の板材の曲げ加工によって形成される。なお、接続部15の分割数は3つに限定されるものではなく、任意の分割数を設定可能である。例えば、差込部11の幅が大きいほど分割数を多くしてもよい。
【0023】
メス型嵌合部材Bfは、導通性を有する、差し込まれる側のコネクタ(Receptacle)である。メス型嵌合部材Bfは、受入部20に差し込まれたオス型嵌合部材Bmの差込部11を挟持する。メス型嵌合部材Bfは、例えば1枚の金属の板材の曲げ加工によって形成される。メス型嵌合部材Bfは、側面側、すなわち第1の基部26a又は第2の基部26bの側から見て、先端側が開いた略Y字状の形状を有する。
【0024】
より詳細には、メス型嵌合部材Bfは、第1の挟持部21及び第2の挟持部22を有する。第1の挟持部21及び第2の挟持部22は、互いに対向して配置される。第1の挟持部21の第2の挟持部22に対向する面と、第2の挟持部22の第1の挟持部21に対向する面とは、受入部20を形成する。つまり、第1の挟持部21及び第2の挟持部22は、受入部20を介して対向する。メス型嵌合部材Bfは、受入部20に差し込まれたオス型嵌合部材Bmの差込部11を、第1の挟持部21と第2の挟持部22とで挟持する。
【0025】
より具体的には、回路基板PCBに実装されたオス型嵌合部材Bmの差込部11は、メス型嵌合部材Bfの受入部20に挿入される。このとき、差込部11が第1の挟持部21及び第2の挟持部22に接触しながら、第1の挟持部21及び第2の挟持部22の間の間隔を押し広げるように挿入される。そして、図2の(c)に示すように、メス型嵌合部材Bfが第1の挟持部21及び第2の挟持部22の間に差し込まれたオス型嵌合部材Bmの差込部11を挟持することで、メス型嵌合部材Bfが配置された回路基板PCBaと、オス型嵌合部材Bmが配置された回路基板PCBbとが電気的に接続される。なお、メス型嵌合部材Bfにオス型嵌合部材Bmを差し込む長さ、すなわち挿入高さは、結合する基板間の距離などに応じて、適宜に設定することができる。ここで、回路基板PCBaと回路基板PCBbは、図1に示した第1の基板PCB1、第2の基板PCB2、第3の基板PCB3、第4の基板PCB4の中の異なる2枚の基板を指す。
【0026】
オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfは、それぞれ金属材料により形成される。一例として、オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfは、銅、真鍮、ニッケル、アルミニウム等の導通性を有する金属により形成される。
【0027】
また、オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfの表面のうちの一部又は全部には、導体メッキが施されている。導体メッキとしては、例えば錫メッキ、銀メッキ又は金メッキが適宜利用可能である。
【0028】
なお、オス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfを、簡易的に、図2の(d)、(e)に示すシンボルで表現することにする。図1に示したオス型嵌合部材Bm及びメス型嵌合部材Bfも、このシンボルを用いて表現したものである。
【0029】
このような構造の嵌合部材B(オス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bf)を用いて、異なる基板間を電気的に接続して、例えば車載環境で動作させた場合、電力変換回路1の動作によって発生した熱の影響や、機械的な振動や回路基板の歪みに伴うオス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bfとの接点の摺動の影響によって、前記したように、嵌合部材Bの接触抵抗が増加するおそれがある。本実施形態の電力変換装置1a(図3)は、嵌合部材Bのこのような電気的な特性の変化を推定して報知するものである。
【0030】
(電力変換装置の構成)
図3を用いて、第1の実施形態である電力変換装置1aの構成を説明する。図3は、第1の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
電力変換装置1aは、先に説明した電力変換回路1(図1)に、差動増幅器31と、演算器32aと、電力変換回路制御器33aとを付加した構成を有する。
【0032】
差動増幅器31は、電力変換回路1の異なる基板を電気的に接続する、前記した嵌合部材Bの両端の点、例えば回路基板PCBaの導通部の点Paと、回路基板PCBbの導通部の点Pbとの間に接続される。即ち、点Paと点Pbとは電気的に接続されており、回路電流Iが流れる。差動増幅器31は、点Paと点Pbとの間の電圧、即ち嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する。なお、回路基板PCBaは、本開示における第1の部品の一例である。また、回路基板PCBbは、本開示における第2の部品の一例である。さらに、差動増幅器31は、本開示における電圧計測部の一例である。
【0033】
なお、回路基板PCBaと回路基板PCBbは、電力変換回路1を構成する基板のうち、嵌合部材Bによって電気的に接続された基板であれば、いずれの基板であってもよい。例えば、回路基板PCBaを第3の基板PCB3として、回路基板PCBbを第2の基板PCB2としてもよいし、回路基板PCBaを第2の基板PCB2として、回路基板PCBbを第1の基板PCB1としてもよい。
【0034】
演算器32aは、差動増幅器31が計測した電圧eに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。なお、演算器32aは、本開示における抵抗値推定部の一例である。具体的には、演算器32aは、差動増幅器31が計測した電圧eをA/D変換することによってデジタル値に変換する。そして、演算器32aは、デジタル値に変換された電圧eと、回路基板PCBaと回路基板PCBb間に流れる電流指令値Iоとに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。嵌合部材Bの抵抗値rは、差動増幅器31が計測した電圧eを電流指令値Iоで除することによって推定される。なお、電流指令値Iоは、電力変換回路制御器33aの制御パラメータを読み取ることによって特定することができる。
【0035】
電力変換回路制御器33aは、演算器32aが推定した嵌合部材Bの抵抗値が、抵抗閾値Rthを超えたことを条件として報知を行う。報知の方法は問わないが、例えば、電力変換回路制御器33aが電力変換回路1の電流指令値をゼロに設定し、電力変換動作を停止する。抵抗閾値Rthの値は、事前の実験等の結果に基づいて、予め設定しておく。なお、電力変換回路制御器33aは、本開示における報知部の一例である。
【0036】
なお、図3において、各構成要素の実現方法は問わない。即ち、差動増幅器31と、演算器32aと、電力変換回路制御器33aとを別体で構成してもよいし、DSP(Digital Signal Processor)等の1つのICで構成してもよい。
【0037】
(第1の実施形態の電力変換装置が行う処理の流れ)
図4を用いて、電力変換装置1aが行う処理の流れを説明する。図4は、第1の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0038】
電力変換回路制御器33aが電力変換装置1aを起動する(ステップS11)。
【0039】
差動増幅器31は、嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する(ステップS12)。
【0040】
差動増幅器31は、計測した電圧eを演算器32aに送信する(ステップS13)。
【0041】
演算器32aは、差動増幅器31から電圧eを受信する(ステップS14)。
【0042】
演算器32aは、電圧eと電流指令値Iоとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する(ステップS15)。
【0043】
電力変換回路制御器33aは、抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であるかを判定する(ステップS16)。抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であると判定される(ステップS16:Yes)とステップS17に進む。一方、抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であると判定されない(ステップS16:No)とステップS12に戻る。
【0044】
ステップS16において、抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であると判定されると、電力変換回路制御器33aは、電力変換回路1の動作を停止する(ステップS17)。
【0045】
なお、電力変換装置1aは、電力変換回路制御器33aが電力変換回路1の動作を停止させた際に、その旨を示す情報を出力する、表示装置やインジケータ、ブザー等を備えてもよい。
【0046】
また、電力変換装置1aは、1つの嵌合部材Bの抵抗値rを推定しているが、複数の嵌合部材Bの抵抗値rを推定する構成であってもよい。そして、複数の嵌合部材Bの抵抗値rを推定する場合、電力変換装置1aは、推定された最も高い抵抗値rに基づいて、電力変換回路1の動作を制御するのが望ましい。
【0047】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第1の実施形態に係る電力変換装置1aは、回路基板PCBa(第1の部品)と、回路基板PCBb(第2の部品)と、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbのいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部11を有するオス型嵌合部材Bmと、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部21及び第2の挟持部22を有するメス型嵌合部材Bfと、を第1の挟持部21及び第2の挟持部22によって差込部11を挟持することによって嵌合して、回路基板PCBaと回路基板PCBbとを電気的に接続する少なくとも1つの嵌合部材Bと、少なくとも1つの嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する差動増幅器31(電圧計測部)と、差動増幅器31が計測した電圧eに基づいて、前記嵌合部材Bの抵抗値rを推定する演算器32a(抵抗値推定部)と、演算器32aが推定した抵抗値rが、抵抗閾値Rthを超えたことを条件として報知を行う電力変換回路制御器33a(報知部)と、を備える。したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化を簡単かつ確実に推定することができる。
【0048】
また、第1の実施形態に係る電力変換装置1aにおいて、演算器32a(抵抗値推定部)は、差動増幅器31(電圧計測部)が計測した電圧eと、回路基板PCBa(第1の部品)と回路基板PCBb(第2の部品)との間に流れる電流指令値Iоとに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。したがって、簡単な演算で、嵌合部材Bの抵抗値rを推定することができる。
【0049】
また、第1の実施形態に係る電力変換装置1aにおいて、電力変換回路制御器33a(報知部)は、演算器32a(抵抗値推定部)が推定した抵抗値rが、抵抗閾値Rthを超えたことを条件として、電力変換装置1aへの通電を停止する。したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化に起因する電力変換装置1aの損傷を防止することができる。
【0050】
(第1の実施形態の変形例)
図5を用いて、第1の実施形態の変形例である電力変換装置1bの構成を説明する。図5は、第1の実施形態の変形例に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。なお、電力変換装置1bの要部構成は電力変換装置1aと共通であるため、相違点のみ説明する。
【0051】
電力変換装置1bは、差動増幅器31が計測した電圧eと、嵌合部材Bを介して回路基板PCBaと回路基板PCBbとの間に流れる回路電流Iとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。
【0052】
回路電流Iは、演算器32aにおいて、嵌合部材Bを介して回路基板PCBaと回路基板PCBbとの間に形成される電流経路の中に挿入したシャント抵抗Rの両端の電圧eaを、シャント抵抗Rの抵抗値raで除することによって算出される。なお、シャント抵抗Rの両端の電圧eaは、差動増幅器35によって計測される。差動増幅器35は、本開示における電流計測部の一例である。また、図5の例では、シャント抵抗Rは回路基板PCBbの電流経路に挿入しているが、シャント抵抗Rは、回路基板PCBaの電流経路に挿入してもよい。なお、シャント抵抗Rの代わりに、カレントトランス、もしくはホールセンサ等の電流測定素子を挿入してもよい。
【0053】
更に、演算器32aは、差動増幅器31が計測した電圧eと、回路電流Iとを、それぞれA/D変換することによってデジタル値に変換する。そして、演算器32aは、デジタル値に変換された電圧eと回路電流Iとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。
【0054】
即ち、電力変換装置1bは、電流指令値Iоを利用する代わりに、実際に回路基板に流れる回路電流Iを用いて嵌合部材Bの抵抗値rを推定する点が、第1の実施形態の電力変換装置1aと異なる。
【0055】
なお、推定された抵抗値rに基づいて電力変換装置1bへの通電を制御する構成は、電力変換装置1aと共通である。
【0056】
(第1の実施形態の変形例の電力変換装置が行う処理の流れ)
図6を用いて、電力変換装置1bが行う処理の流れを説明する。図6は、第1の実施形態の変形例に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0057】
電力変換回路制御器33aが電力変換装置1bを起動する(ステップS21)。
【0058】
差動増幅器31は、嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する(ステップS22)。
【0059】
差動増幅器31は、計測した電圧eを演算器32aに送信する(ステップS23)。
【0060】
演算器32aは、差動増幅器31から電圧eを受信する(ステップS24)。
【0061】
差動増幅器35は、シャント抵抗Rの両端の電圧eaを計測する(ステップS25)。
【0062】
差動増幅器35は、計測した電圧eaを演算器32aに送信する(ステップS26)。
【0063】
演算器32aは、差動増幅器35から電圧eaを受信する(ステップS27)。
【0064】
演算器32aは、回路電流Iを算出する(ステップS28)。
【0065】
演算器32aは、電圧eと回路電流Iとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する(ステップS29)。
【0066】
電力変換回路制御器33aは、抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であるかを判定する(ステップS30)。抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であると判定される(ステップS30:Yes)とステップS31に進む。一方、抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であると判定されない(ステップS30:No)とステップS22に戻る。
【0067】
ステップS30において、抵抗値rが抵抗閾値Rth以上であると判定されると、電力変換回路制御器33aは、電力変換回路1の動作を停止する(ステップS31)。
【0068】
(第1の実施形態の変形例の作用効果)
以上説明したように、第1の実施形態の変形例に係る電力変換装置1bは、嵌合部材Bに流れる回路電流Iを計測する差動増幅器35(電流計測部)を更に備えて、演算器32a(抵抗値推定部)は、差動増幅器31(電圧計測部)が計測した電圧eと、差動増幅器35が計測した回路電流Iとに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化を簡単かつ確実に推定することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、図7を用いて、第2の実施形態である電力変換装置1cの構成を説明する。図7は、第2の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0070】
電力変換装置1cは、差動増幅器31が計測した電圧eに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。
【0071】
電力変換装置1cは、電力変換回路1と、差動増幅器31と、演算器32bと、電力変換回路制御器33bとを備える。
【0072】
演算器32bは、差動増幅器31が計測した電圧eを、A/D変換してデジタル値に変換する。
【0073】
電力変換回路制御器33bは、デジタル値に変換された電圧eが、電圧閾値ethを超えたことを条件として報知を行う。電圧閾値ethは、例えば、嵌合部材Bに流れると想定される最大電流Imaxと、嵌合部材Bに異常が発生した際に想定される抵抗値rpとの積算値として推定される、嵌合部材Bの両端の電圧である。なお、電力変換回路制御器33bは、本開示における報知手段の一例である。
【0074】
電力変換回路制御器33bは、電圧eが電圧閾値ethを超えた場合に、電力変換回路1の電流指令値をゼロに設定し、電力変換動作を停止する。
【0075】
(第2の実施形態の電力変換装置が行う処理の流れ)
図8を用いて、電力変換装置1cが行う処理の流れを説明する。図8は、第2の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
電力変換回路制御器33bが電力変換装置1cを起動する(ステップS41)。
【0077】
差動増幅器31は、嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する(ステップS42)。
【0078】
演算器32bは、差動増幅器31が計測した電圧eをデジタル値に変換して、電力変換回路制御器33bに送信する(ステップS43)。
【0079】
電力変換回路制御器33bは、デジタル値に変換された電圧eを受信する(ステップS44)。
【0080】
電力変換回路制御器33bは、電圧eが電圧閾値eth以上であるかを判定する(ステップS45)。電圧eが電圧閾値eth以上であると判定される(ステップS45:Yes)とステップS46に進む。一方、電圧eが電圧閾値eth以上であると判定されない(ステップS45:No)とステップS42に戻る。
【0081】
ステップS45において、電圧eが電圧閾値eth以上であると判定されると、電力変換回路制御器33bは、電力変換回路1の動作を停止する(ステップS46)。
【0082】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第2の実施形態に係る電力変換装置1cは、回路基板PCBa(第1の部品)と、回路基板PCBb(第2の部品)と、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbのいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部11を有するオス型嵌合部材Bmと、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部21及び第2の挟持部22を有するメス型嵌合部材Bfと、を第1の挟持部21及び第2の挟持部22によって差込部11を挟持することによって嵌合して、回路基板PCBaと回路基板PCBbとを電気的に接続する少なくとも1つの嵌合部材Bと、嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する差動増幅器31(電圧計測部)と、差動増幅器31が計測した電圧eが、電圧閾値ethを超えたことを条件として報知を行う電力変換回路制御器33b(報知部)と、を備える、したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化を簡単かつ確実に推定することができる。
【0083】
また、第2の実施形態に係る電力変換装置1cにおいて、電圧閾値ethは、嵌合部材Bが、予め決められた基準抵抗値を有すると仮定した場合に、当該嵌合部材Bに、電力変換装置1cに流れると推定される最大電流Imaxが流れた際の、嵌合部材Bの両端の電圧である。したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化を簡単かつ確実に推定することができる。
【0084】
また、第2の実施形態に係る電力変換装置1cにおいて、電力変換回路制御器33b(報知部)は、差動増幅器31(電圧計測部)が計測した電圧eが、電圧閾値ethを超えたことを条件として、電力変換装置1cを停止する。したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化に起因する電力変換装置1cの損傷を防止することができる。
【0085】
(第2の実施形態の変形例)
図9を用いて、第2の実施形態の変形例である電力変換装置1dの構成を説明する。図9は、第2の実施形態の変形例に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0086】
電力変換装置1dは、電力変換装置1cが電力変換回路制御器33bにおいてソフトウェアで行っていた電圧eと電圧閾値ethとの比較を、ハードウェアで実行する。
【0087】
電力変換装置1dは、電力変換回路1と、差動増幅器31と、差動増幅器40と、電力変換回路制御器33cとを備える。
【0088】
差動増幅器40は、電圧VREFを抵抗Raと抵抗Rbとで分圧することによって生成した、電圧閾値ethに相当する電圧と、差動増幅器31によって計測した嵌合部材Bの両端の電圧eと、を比較するコンパレータ(比較器)として作用する。差動増幅器40は、電圧閾値ethが電圧eよりも大きい場合にHighレベルを出力する。また、差動増幅器40は、電圧閾値ethが電圧eよりも小さい場合にLowレベルを出力する。
【0089】
電力変換回路制御器33cは、差動増幅器40の出力がLowレベルであることを条件として報知を行う。報知の方法は問わないが、例えば、電力変換回路1の電流指令値をゼロに設定し、電力変換動作を停止する。なお、電力変換回路制御器33cは、本開示における報知部の一例である。
【0090】
電力変換装置1dが行う処理は、前述した電力変換装置1cが行う処理をハードウェアで実現したものであって、処理の流れは電力変換装置1cと変わらないため、フローチャートを用いた説明は省略する。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、図10を用いて、第3の実施形態である電力変換装置1eの構成を説明する。図10は、第3の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0092】
電力変換装置1eは、電力変換回路1と、差動増幅器31と、演算器32cと、電力変換回路制御器33dと、記憶装置36とを備える。
【0093】
電力変換回路1と、差動増幅器31の機能は、前述した通りである。
【0094】
演算器32cは、差動増幅器31が計測した電圧eに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。なお、演算器32cは、本開示における抵抗値推定部の一例である。具体的には、演算器32aは、差動増幅器31が計測した電圧eをA/D変換することによってデジタル値に変換する。そして、演算器32cは、デジタル値に変換された電圧eと、回路基板PCBaと回路基板PCBb間に流れる電流指令値Iоとに基づいて、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する。また、演算器32cは、推定した抵抗値rを記憶装置36に記憶する。
【0095】
記憶装置36は、演算器32cが推定した抵抗値rを、当該抵抗値rが推定された時刻を特定する情報と関連付けて記憶する。記憶装置36は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリやHDD(Hard Disk Drive)等である。記憶装置36は、演算器32cや電力変換回路制御器33dと別体で構成してもよいし、DSP等の1つのICで構成してもよい。なお、記憶装置36は、本開示における抵抗値記憶部の一例である。
【0096】
電力変換回路制御器33dは、記憶装置36が記憶した抵抗値rを読み出して、抵抗値rの変化状態を分析する。具体的には、電力変換回路制御器33dは、記憶装置36が記憶した抵抗値rの増加量が、抵抗増加量閾値Rithを超えたことを条件として報知を行う。なお、抵抗値rの変化状態は、例えば、記憶装置36に記憶された所定の時間間隔の抵抗値rの差分値とする。報知の方法は問わないが、例えば、表示装置やインジケータ、ブザー等により行えばよい。また、抵抗増加量閾値Rithの値は、事前の実験等の結果に基づいて、予め設定しておく。なお、電力変換回路制御器33dは、本開示における報知部の一例である。
【0097】
(第3の実施形態の電力変換装置が行う処理の流れ)
図11を用いて、電力変換装置1eが行う処理の流れを説明する。図11は、第3の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0098】
電力変換回路制御器33dが電力変換装置1eを起動する(ステップS51)。
【0099】
差動増幅器31は、嵌合部材Bの両端の電圧eを計測する(ステップS52)。
【0100】
差動増幅器31は、計測した電圧eを演算器32cに送信する(ステップS53)。
【0101】
演算器32cは、差動増幅器31から電圧eを受信する(ステップS54)。
【0102】
演算器32cは、電圧eと電流指令値Iоとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定する(ステップS55)。
【0103】
演算器32cは、推定した抵抗値rを、当該抵抗値rを推定した時刻と関連付けて記憶装置36に記憶する(ステップS56)。
【0104】
電力変換回路制御器33dは、記憶装置36から読み出した抵抗値rの増加量が抵抗増加量閾値Rith以上であるかを判定する(ステップS57)。抵抗値rの増加量が抵抗増加量閾値Rith以上であると判定される(ステップS57:Yes)とステップS58に進む。一方、抵抗値rの増加量が抵抗増加量閾値Rith以上であると判定されない(ステップS57:No)とステップS52に戻る。
【0105】
ステップS56において、抵抗値rの増加量が抵抗増加量閾値Rith以上であると判定されると、電力変換回路制御器33dは報知を行う(ステップS58)。
【0106】
なお、第2の実施形態で説明した電力変換装置1c(図7)に対して、差動増幅器31(電圧計測部)が計測した電圧eを、当該電圧eが計測された時刻とともに記憶装置36に記憶して、記憶された電圧eの増加量が電圧増加量閾値eithを超えたことを条件として報知を行う、非図示の電力変換装置1eaを構成してもよい。なお、この場合の記憶装置36は、本開示における電圧記憶部の一例である。
【0107】
(第3の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第3の実施形態に係る電力変換装置1eは、演算器32c(抵抗値推定部)が推定した抵抗値rを時系列で記憶する記憶装置36(抵抗値記憶部)を更に備えて、電力変換回路制御器33d(報知部)は、記憶装置36が記憶した抵抗値rの増加量が抵抗増加量閾値Rithを超えたことを条件として報知を行う。したがって、嵌合部材Bの抵抗値(電気的特性)の変化を早期に検出して報知することができる。
【0108】
また、第3の実施形態に係る電力変換装置1eaは、差動増幅器31(電圧計測部)が計測した電圧eを時系列で記憶する記憶装置36(電圧記憶部)を更に備えて、電力変換回路制御器33d(報知部)は、記憶装置36が記憶した電圧eの増加量が電圧増加量閾値eithを超えたことを条件として報知を行う。したがって、嵌合部材Bの両端の電圧(電気的特性)の変化を早期に検出して報知することができる。
【0109】
(第4の実施形態)
次に、図12を用いて、第4の実施形態である電力変換装置1fの構成を説明する。図12は、第4の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0110】
電力変換装置1fは、電力変換回路1と、演算器32dと、電力変換回路制御器33aと、温度センサ37とを備える。
【0111】
電力変換回路1の機能は、前述した通りである。
【0112】
温度センサ37は、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbに設置されて、回路基板の表面温度Tを計測する。嵌合部材Bの抵抗値rが増加する場合、嵌合部材Bの表面温度Tも上昇するため、嵌合部材Bと導通している回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの表面温度Tから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定することができる。
【0113】
温度センサ37は、例えばサーミスタである。以下、温度センサ37をサーミスタ37とも呼ぶ。サーミスタ37は、温度に応じて抵抗値が変化する物質で形成されている。なお、サーミスタ37は、本開示における状態計測部の一例である。また、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの表面温度Tは、本開示における第1の部品または前記第2の部品の状態の一例である。
【0114】
図13は、サーミスタによって温度の計測を行う回路構成の一例を示す図である。図13において、回路に印加電圧Eを加えた際の出力電圧vは、式(1)で表される。
【0115】
v=E×R/(Rt+R)・・・(1)
【0116】
例えば、温度の上昇とともに抵抗値Rtがゆるやかに減少するサーミスタ37を用いた場合、図13に示す抵抗分割回路を用いることによって、計測したい温度範囲において、出力電圧Ethができるだけ線形に変化するように抵抗値R1の値を設定するのが望ましい。
【0117】
なお、サーミスタ37の代わりに、例えばダイオードを用いてもよい。ダイオードは一定電流を流している際に、その順方向電圧Vfが温度に応じて変化する特性をもつ。
【0118】
演算器32dは、図13の抵抗分圧回路から出力される出力電圧vを取得する。また、演算器32dは、取得した出力電圧vを、A/D変換することによって、デジタル値に変換する。
【0119】
電力変換回路制御器33aは、出力電圧vに対応する、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの表面温度Tが、温度閾値Tthを超えたことを条件として報知を行う。なお、電力変換回路制御器33aは、本開示における報知部の一例である。また、温度閾値Tthは、本開示における部品状態閾値の一例である。
【0120】
(第4の実施形態の電力変換装置が行う処理の流れ)
図13を用いて、電力変換装置1fが行う処理の流れを説明する。図13は、第4の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0121】
電力変換回路制御器33aが電力変換装置1fを起動する(ステップS61)。
【0122】
演算器32dは、抵抗分圧回路の出力電圧vを受信する(ステップS62)。
【0123】
演算器32dは、受信した出力電圧vから回路基板の表面温度Tを推定する(ステップS63)。
【0124】
電力変換回路制御器33aは、回路基板の表面温度Tが温度閾値Tth以上であるかを判定する(ステップS64)。回路基板の表面温度Tが温度閾値Tth以上であると判定される(ステップS64:Yes)とステップS65に進む。一方、回路基板の表面温度Tが温度閾値Tth以上であると判定されない(ステップS64:No)とステップS62に戻る。
【0125】
ステップS64において、回路基板の表面温度Tが温度閾値Tth以上であると判定されると、電力変換回路制御器33aは、電力変換回路1の動作を停止する(ステップS65)。
【0126】
(第4の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第4の実施形態に係る電力変換装置1fは、回路基板PCBa(第1の部品)と、回路基板PCBb(第2の部品)と、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbのいずれか一方に接続されて、導電性を有して略平板形状の差込部11を有するオス型嵌合部材Bmと、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの他方に接続されて、導電性を有して互いに対向して配置される第1の挟持部21及び第2の挟持部22を有するメス型嵌合部材Bfと、を第1の挟持部21及び第2の挟持部22によって差込部11を挟持することによって嵌合して、回路基板PCBaと回路基板PCBbとを電気的に接続する少なくとも1つの嵌合部材Bと、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの表面温度Tを計測する温度センサ37(状態計測部)と、温度センサ37が計測した回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの表面温度Tが、温度閾値Tth(部品状態閾値)を超えたことを条件として報知を行う電力変換回路制御器33a(報知部)と、を備える。したがって、嵌合部材Bの物理的な状態の変化に基づいて、当該嵌合部材Bの電気的な特性の変化を推定して報知することができる。
【0127】
また、第4の実施形態に係る電力変換装置1fは、回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の状態として、回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の表面温度Tを計測する。したがって、接触抵抗の増加を引き起こす嵌合部材Bの温度上昇を検出して報知することができる。
【0128】
また、第4の実施形態に係る電力変換装置1fにおいて、電力変換回路制御器33a(報知部)は、温度センサ37(状態計測部)が計測した回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の表面温度T(状態)が、温度閾値Tth(部品状態閾値)を超えたことを条件として、電力変換装置1fへの通電を停止する。したがって、嵌合部材Bの電気的な特性の変化に起因する電力変換装置1fの損傷を防止することができる。
【0129】
(第5の実施形態)
次に、図15を用いて、第5の実施形態である電力変換装置1gの構成を説明する。図15は、第5の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0130】
電力変換装置1gは、電力変換回路1と、演算器32eと、電力変換回路制御器33dと、記憶装置36と、歪みセンサ38とを備える。
【0131】
電力変換回路1の機能は、前述した通りである。
【0132】
歪みセンサ38は、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbに設置されて、回路基板の歪み量Lを計測する。回路基板に歪みが発生すると、この歪みは嵌合部材Bに伝わって、オス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bfの接触箇所の摺動を引き起こす。この摺動によって、嵌合部材Bの接触箇所の抵抗値r(接触抵抗)が増加するおそれがある。即ち、歪み量εが大きいほど、または歪みの変化回数εnが多いほど、嵌合部材Bの接触抵抗が増加する可能性が高い。したがって、嵌合部材Bと接続している回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの歪み量εと歪みの変化回数εnとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定することができる。
【0133】
歪みセンサ38は、例えば歪みゲージである。以下、歪みセンサ38を歪みゲージ38とも呼ぶ。歪みゲージは、絶縁体を介して被測定物に接着されて、被測定物の伸縮に応じて抵抗値が変化するセンサである。なお、歪みセンサ38は、本開示における状態計測部の一例である。また、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの歪み量εおよび歪みの変化回数εnは、本開示における第1の部品または前記第2の部品の状態の一例である。
【0134】
図16は、歪みゲージによって歪みの計測を行う回路構成の一例を示す図である。歪みゲージ38は、一般に、図16に示すホイートストンブリッジと呼ばれる、微小な抵抗変化の検出に適した電気回路に接続されて使用される。なお、図16において、抵抗R2、抵抗R3、抵抗R4の抵抗値は全て等しいとする。
【0135】
歪みゲージ38の抵抗値をR1、伸びまたは圧縮によって歪みゲージ38に生じた抵抗変化をΔR1、歪みゲージ38に生じた歪み量をεとすると、式(2)が成り立つ。
【0136】
ΔR1/R1=K×ε・・・(2)
【0137】
式(2)の係数Kは歪みゲージ38に固有の比例定数で、ゲージ率と呼ばれる。一般的な歪みゲージでは、Kは約2である。図16のブリッジ回路に印加電圧Eを加えた際に、歪みゲージ38の抵抗値R1が、伸びまたは圧縮によって抵抗変化ΔR1を生じた場合、ブリッジ回路の出力電圧vは、式(3)で算出される。
【0138】
v=(1/4)×(ΔR1/R1)×E・・・(3)
【0139】
式(2)と式(3)から、歪み量εは、式(4)で求められる。
【0140】
ε=4×e/(K×E)・・・(4)
【0141】
演算器32eは、図16のブリッジ回路の出力電圧vを取得する。また、演算器32eは、取得した出力電圧vをA/D変換することによって、デジタル値に変換する。また、演算器32eは、式(4)によって歪み量εを算出するとともに、歪みの変化回数εnを算出する。
【0142】
記憶装置36は、演算器32eが算出した歪み量εと、当該歪み量εを取得した時刻とを関連付けて記憶する。また、記憶装置36は、歪みの変化回数εnを記憶する。なお、記憶装置36は、本開示における部品状態記憶部の一例である。
【0143】
電力変換回路制御器33dは、記憶装置36が記憶した歪み量εと歪みの変化回数εnを読み出す。そして、電力変換回路制御器33dは、記憶した歪み量εが基準の歪み量である歪み量閾値εthよりも大きい場合、または歪みの変化回数εnが基準の回数である歪みの変化回数閾値εnthよりも多い場合に報知を行う。報知の方法は問わないが、例えば、表示装置やインジケータ、ブザー等により行えばよい。なお、電力変換回路制御器33dは、本開示における報知部の一例である。また、歪み量閾値εthおよび歪みの変化回数閾値εnthは、本開示における部品状態閾値の一例である。
【0144】
(第5の実施形態の電力変換装置が行う処理の流れ)
図15を用いて、電力変換装置1gが行う処理の流れを説明する。図15は、第5の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0145】
電力変換回路制御器33dが電力変換装置1gを起動する(ステップS71)。
【0146】
演算器32eは、ブリッジ回路の出力電圧vを受信する(ステップS72)。
【0147】
演算器32eは、受信した出力電圧vから歪み量εを算出する(ステップS73)。
【0148】
演算器32eは、歪み量εを、当該歪み量εを計測した時刻と関連付けて記憶装置36に記憶する。また、演算器32eは、歪みの変化回数εnを記憶装置36に記憶する(ステップS74)。
【0149】
電力変換回路制御器33dは、記憶装置36から読み出した歪み量εが歪み量閾値εth以上であるかを判定する(ステップS75)。歪み量εが歪み量閾値εth以上であると判定される(ステップS75:Yes)とステップS76に進む。一方、歪み量εが歪み量閾値εth以上であると判定されない(ステップS75:No)とステップS77に進む。
【0150】
ステップS75において、歪み量εが歪み量閾値εth以上であると判定されないと、電力変換回路制御器33dは、記憶装置36から読み出した歪みの変化回数εnが歪みの変化回数閾値εnth以上であるかを判定する(ステップS77)。歪みの変化回数εnが歪みの変化回数閾値εnth以上であると判定される(ステップS77:Yes)と、ステップS76に進む。一方、歪みの変化回数εnが歪みの変化回数閾値εnth以上であると判定されない(ステップS77:No)とステップS72に戻る。
【0151】
ステップS75において、歪み量εが歪み量閾値εth以上であると判定されるか、または、ステップS77において、歪みの変化回数εnが歪みの変化回数閾値εnth以上であると判定されると、電力変換回路制御器33dは報知を行う(ステップS76)。
【0152】
(第5の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第5の実施形態に係る電力変換装置1gは、回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の状態として、回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の歪み量εまたは歪みの変化回数εnを計測する。したがって、電力変換装置1gの動作中に、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbに発生する歪みによって、回路基板PCBaと回路基板PCBbとを接続する嵌合部材Bの接触抵抗が増加するのを予測することができる。
【0153】
また、第5の実施形態に係る電力変換装置1gは、状態計測部が計測した回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の歪み量εと歪みの変化回数εnとを時系列で記憶する記憶装置36(部品状態記憶部)を更に備えて、電力変換回路制御器33d(報知部)は、記憶装置36が記憶した歪み量εが歪み量閾値εthを超えたこと、または歪みの変化回数εnが歪みの変化回数閾値εnthを超えたことを条件として報知を行う。したがって、嵌合部材Bの電気的特性の変化を早期に報知することができる。
【0154】
(第6の実施形態)
次に、図18を用いて、第6の実施形態である電力変換装置1hの構成を説明する。図18は、第6の実施形態に係る電力変換装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0155】
電力変換装置1gは、電力変換回路1と、演算器32fと、電力変換回路制御器33dと、記憶装置36と、振動センサ39とを備える。
【0156】
電力変換回路1の機能は、前述した通りである。
【0157】
振動センサ39は、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbに設置されて、回路基板の振動の振幅Mを計測する。回路基板に発生した振動は嵌合部材Bに伝わり、オス型嵌合部材Bmとメス型嵌合部材Bfの接触箇所の摺動を引き起こす。この摺動によって、嵌合部材Bの接触箇所の抵抗値r(接触抵抗)が増加するおそれがある。即ち、振動の振幅Mが大きいほど、または振動の回数Mnが多いほど、嵌合部材Bの接触抵抗が増加する可能性が高い。したがって、嵌合部材Bと接続している回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの振動の振幅Mと振動の回数Mnとから、嵌合部材Bの抵抗値rを推定することができる。
【0158】
振動センサ39は、例えば加速度センサである。加速度センサは、例えば圧力を加えると、圧力に応じた電圧を発生する圧電素子(ピエゾ素子)を用いて、発生した加速度を検出する。圧力に応じて発生した電圧は、当該電圧を抵抗値が既知の抵抗に印加した際に流れる電流を計測することによって算出することができる。なお、振動センサ39は、本開示における状態計測部の一例である。また、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbの振動の振幅Mおよび振動の回数Mnは、本開示における第1の部品または前記第2の部品の状態の一例である。
【0159】
演算器32fは、振動センサ39が計測したデータ、例えば振動センサ39が出力した電圧に応じた電流を取得する。また、演算器32fは、取得した電流をA/D変換することによって、デジタル値に変換する。また、演算器32fは、振動センサ39が出力する電流の変化量に基づいて、振動の回数Mnを算出する。
【0160】
記憶装置36は、演算器32fが取得した電流値(または電流値から推定される振動の振幅M)と、当該電流値を取得した時刻とを関連付けて記憶する。また、記憶装置36は、振動の回数Mnを記憶する。なお、記憶装置36は、本開示における部品状態記憶部の一例である。
【0161】
電力変換回路制御器33dは、記憶装置36が記憶した電流値(または振動の振幅M)と振動の回数Mnを読み出す。そして、電力変換回路制御器33dは、振動の振幅Mが基準の振動の振幅である振動の振幅閾値Mthよりも大きい場合、または振動の回数Mnが基準の回数である振動の回数閾値Mnthよりも多い場合に報知を行う。報知の方法は問わないが、例えば、表示装置やインジケータ、ブザー等により行えばよい。なお、電力変換回路制御器33dは、本開示における報知部の一例である。また、振動の振幅閾値Mthおよび振動の回数閾値Mnthは、本開示における部品状態閾値の一例である。
【0162】
(第6の実施形態の電力変換装置が行う処理の流れ)
図19を用いて、電力変換装置1hが行う処理の流れを説明する。図19は、第6の実施形態に係る電力変換装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0163】
電力変換回路制御器33dが電力変換装置1hを起動する(ステップS81)。
【0164】
振動センサ39は、回路基板の振動の振動量(振動の振幅M)を計測する(ステップS82)。
【0165】
振動センサ39は、計測した振動の振幅M(振動センサ39が出力した電圧に応じた電流)を演算器32fに送信する(ステップS83)。
【0166】
演算器32fは、振動センサ39から振動の振幅M(振動センサ39が出力した電圧に応じた電流)を受信する(ステップS84)。
【0167】
演算器32fは、振動の振幅M(振動センサ39が出力した電圧に応じた電流)を、当該振動の振幅Mを計測した時刻と関連付けて記憶装置36に記憶する。また、演算器32fは、振動の回数Mnを記憶装置36に記憶する(ステップS85)。
【0168】
電力変換回路制御器33dは、記憶装置36から読み出した振動の振幅Mが振動の振幅閾値Mth以上であるかを判定する(ステップS86)。振幅Mが振動の振幅閾値Mth以上であると判定される(ステップS86:Yes)とステップS87に進む。一方、振動の振幅Mが振動の振幅閾値Mth以上であると判定されない(ステップS86:No)とステップS88に進む。
【0169】
ステップS86において、振動の振幅Mが振動の振幅閾値Mth以上であると判定されないと、電力変換回路制御器33dは、記憶装置36から読み出した振動の回数Mnが振動の回数閾値Mnth以上であるかを判定する(ステップS88)。振動の回数Mnが振動の回数閾値Mnth以上であると判定される(ステップS88:Yes)と、ステップS87に進む。一方、振動の回数Mnが振動の回数閾値Mnth以上であると判定されない(ステップS88:No)とステップS82に戻る。
【0170】
ステップS86において、振動の振幅Mが振動の振幅閾値Mth以上であると判定されるか、または、ステップS88において、振動の回数Mnが振動の回数閾値Mnth以上であると判定されると、電力変換回路制御器33dは報知を行う(ステップS87)。
【0171】
(第6の実施形態の作用効果)
以上説明したように、第6の実施形態に係る電力変換装置1hは、回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の状態として、回路基板PCBa(第1の部品)または回路基板PCBb(第2の部品)の振動の振幅Mまたは振動の回数Mnを計測する。したがって、電力変換装置1hの動作中に、回路基板PCBaまたは回路基板PCBbに発生する振動によって、回路基板PCBaと回路基板PCBbとを接続する嵌合部材Bの接触抵抗が増加するのを予測することができる。
【0172】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0173】
1…電力変換回路、1a,1b,1c,1d,1e,1ea,1f,1g,1h…電力変換装置、11…差込部、20…受入部、21…第1の挟持部、22…第2の挟持部、31…差動増幅器(電圧計測部)、32a,32c…演算器(抵抗値推定部)、32b,32d,32e…演算器、33a,33b,33c,33d…電力変換回路制御器(報知部)、35…差動増幅器(電流計測部)、36…記憶装置(抵抗値記憶部、電圧記憶部)、37…温度センサ,サーミスタ、38…歪みセンサ,歪みゲージ、39…振動センサ、40…差動増幅器、B…嵌合部材、Bf…メス型嵌合部材、Bm…オス型嵌合部材、E…印加電圧、e,ea…電圧、eith…電圧増加量閾値、eth…電圧閾値、I…回路電流、Imax…最大電流、Iо…電流指令値、M…振幅、Mn…振動の回数、Mth…振幅閾値(部品状態閾値)、Mnth…振動の回数閾値(部品状態閾値)、Pa,Pb…点、PCBa…回路基板(第1の部品)、PCBb…回路基板(第2の部品)、Ra,Rb…抵抗、Rith…抵抗増加量閾値、Rth…抵抗閾値、R…シャント抵抗、r,ra,rp…抵抗値、T…表面温度、Tth…温度閾値(部品状態閾値)、VREF…電圧、v…出力電圧、ε…歪み量、εn…歪みの変化回数、εth…歪み量閾値(部品状態閾値)、εnth…歪みの変化回数閾値(部品状態閾値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
図19