(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】放送システム、広告プレイリスト生成装置及び広告プレイリスト生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q30/0241
(21)【出願番号】P 2023001346
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313000601
【氏名又は名称】日本テレビ放送網株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一
(72)【発明者】
【氏名】合原 範行
【審査官】阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144634(JP,A)
【文献】特開2011-198052(JP,A)
【文献】特開2008-22298(JP,A)
【文献】特開2021-26446(JP,A)
【文献】特開2021-182221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告素材管理装置と広告プレイリスト生成装置とを備える放送システムであって、
前記広告素材管理装置は、
テレビ広告又はラジオ広告を含む複数の広告の広告素材と前記広告素材の広告識別情報とを関連付けて格納するデータベースを備え、
前記広告プレイリスト生成装置は、
前記広告を放送する日時を示す広告放送時間帯の所定時間前に、前記広告放送時間帯の広告枠の識別情報である広告枠識別情報を含む広告枠の広告プレイリストを要求する広告プレイリスト要求を取得する取得部と、
前記広告プレイリスト要求に応答して、前記広告プレイリスト要求に含まれている広告枠識別情報の広告枠において放送する広告の広告素材識別情報と、その広告の放送順序であるポジションと、を含む広告プレイリストであって、前記ポジションに対して保証型広告から優先的に配置し、前記広告枠に空きポジションがある場合に、落札された運用型広告を配置して前記広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成部と、
運用型広告のオークションを管理し、前記空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を広告取引システムに提示し、前記空きポジションを落札した運用型広告を、前記広告プレイリスト生成部に通知する運用型広告オークション管理部と、
を備える、放送システム。
【請求項2】
前記保証型広告は、広告枠のポジションを指定したポジション指定型広告と、所定期間の広告のインプレッション数を保証したインプレッション保証型と、を含む、
請求項1に記載の放送システム。
【請求項3】
前記広告枠情報は、前記空きポジションの広告枠に関する放送時間帯、番組、放送可能な広告素材の尺情報、及び、前記番組の視聴者に関する視聴者情報を、含む、
請求項1又は請求項2に記載の放送システム。
【請求項4】
前記広告素材管理装置は、
前記広告プレイリストを取得し、取得した広告プレイリストに記載された広告識別情報に関連付けられた広告素材をポジション順に送出する広告素材送出部を備える、
請求項3に記載の放送システム。
【請求項5】
前記広告素材管理装置は、
第1の代用広告の
第1の代用広告素材と、前記第1の代用広告素材を識別する広告素材識別情報と、を関連付けて格納するデータベースを備え、
前記広告プレイリスト生成部は、前記空きポジションに配置する広告がない場合、前記空きポジションに前記第1の代用広告を配置する、
請求項4に記載の放送システム。
【請求項6】
前記広告素材管理装置は、
第2の代用広告の
第2の代用広告素材と、前記第2の代用広告素材を識別する広告素材識別情報と、を関連付けて格納するデータベースを備え、
前記広告素材送出部は、取得した広告プレイリストに記載された広告識別情報に関連付けられた広告素材がない場合、前記広告素材の代わりに前記第2の代用広告素材を送出する、
請求項5に記載の放送システム。
【請求項7】
ひとつの広告プレイリスト生成部は、前記広告素材送出部を有する
前記広告素材管理装置からいずれかの放送局の広告プレイリスト要求を取得し、取得した広告プレイリスト要求に対応する広告プレイリストを、広告プレイリスト要求を送信した前記広告素材管理装置に送信する、
請求項6に記載の放送システム。
【請求項8】
同一放送時間帯の広告枠の広告枠識別情報は、同一番組を放送する放送局のいずれかの放送局の広告枠であるかが識別可能に付与される、
請求項7に記載の放送システム。
【請求項9】
テレビ広告又はラジオ広告を含む複数の広告を放送可能な広告放送時間帯の広告枠の広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成装置であって、
前記広告を放送する日時を示す広告放送時間帯の所定時間前に、前記広告放送時間帯の広告枠の識別情報である広告枠識別情報を含む広告枠の広告プレイリストを要求する広告プレイリスト要求を取得する取得部と、
前記広告プレイリスト要求に応答して、前記広告プレイリスト要求に含まれている広告枠識別情報の広告枠において放送する広告の広告素材識別情報と、その広告の放送順序であるポジションと、を含む広告プレイリストであって、前記ポジションに対して保証型広告から優先的に配置し、前記広告枠に空きポジションがある場合に、落札された運用型広告を配置して前記広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成部と、
運用型広告のオークションを管理し、前記空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を広告取引システムに提示し、前記空きポジションを落札した運用型広告を、前記広告プレイリスト生成部に通知する運用型広告オークション管理部と、
を備える広告プレイリスト生成装置。
【請求項10】
テレビ広告又はラジオ広告を含む複数の広告を放送可能な広告放送時間帯の広告枠の広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成方法であって、
コンピュータは、
前記広告を放送する日時を示す広告放送時間帯の所定時間前に、前記広告放送時間帯の広告枠の識別情報である広告枠識別情報を含む広告枠の広告プレイリストを要求する広告プレイリスト要求を取得する処理と、
前記広告プレイリスト要求に応答して、前記広告プレイリスト要求に含まれている広告枠識別情報の広告枠において放送する広告の広告素材識別情報と、その広告の放送順序であるポジションと、を含む広告プレイリストであって、前記ポジションに対して保証型広告から優先的に配置し、前記広告枠に空きポジションがある場合に、落札された運用型広告を配置して前記広告プレイリストを生成する処理と、
運用型広告のオークションを管理し、前記空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を広告取引システムに提示し、前記空きポジションを落札した運用型広告を、前記広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成部に通知する処理と、
を実行する広告プレイリスト生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放送システム、広告プレイリスト生成装置及び広告プレイリスト生成方法に関し、特に、広告を放送する際の広告プレイリストの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット等の広告配信においては、入札(オークション)によって決定した広告を、広告の品質や誘導先サイトの内容、ユーザーの状況などを総合的に検討して最適なタイミングで配信する運用型が主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-144319号公報
【文献】特開2022-188824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、放送広告は放送の数日前から数週間前に広告主、広告素材、広告枠等を確定し、放送前日まで広告の登録作業を行っている。このような状況において、放送中のリアルタイム情報(番組視聴状況、気候、広告の契約状況等)を活用し、放送直前まで広告を選定することができなかった。
【0005】
本発明の課題は、放送広告において、柔軟な広告運用を行うことができる放送システム、広告プレイリスト生成装置及び広告プレイリスト生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の広告の広告素材とその広告素材識別情報とが関連付けられて格納された広告素材管理装置と、複数の広告を放送可能な広告放送時間帯の広告枠の広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成装置と、を備え、広告プレイリスト生成装置は、広告放送時間帯の所定時間前に、広告放送時間帯の広告枠の識別情報で広告ある広告枠識別情報を含む広告枠の広告プレイリストを要求する広告プレイリスト要求を、広告素材管理装置から取得する取得部と、広告プレイリスト要求に応答して、広告プレイリスト要求に含まれている広告枠識別情報の広告枠において放送する広告の広告素材識別情報と、その広告の放送順序であるポジションと、を含む広告プレイリストを生成し、広告素材管理装置に送信する広告プレイリスト生成部と、運用型広告のオークションを管理する運用型広告オークション管理部と、を備え、広告プレイリスト生成部は、広告プレイリストのポジションを保証型広告から優先的に配置し、保証型広告が配置されたポジション以外の空きポジションに、落札した運用型広告を配置し、運用型広告オークション管理部は、広告プレイリストのポジションが保証型広告のみでは空きポジションが発生する場合、空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を提示し、空きポジションを落札した運用型広告を、広告プレイリスト生成部に通知する、放送システムである。
【0007】
本発明の一態様は、複数の広告を放送可能な広告放送時間帯の広告枠の広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成装置であって、広告放送時間帯の所定時間前に、広告放送時間帯の広告枠の識別情報で広告ある広告枠識別情報を含む広告枠の広告プレイリストを要求する広告プレイリスト要求を取得する取得部と、広告プレイリスト要求に応答して、広告プレイリスト要求に含まれている広告枠識別情報の広告枠において放送する広告の広告素材識別情報と、その広告の放送順序であるポジションと、を含む広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成部と、運用型広告のオークションを管理する運用型広告オークション管理部と、を備え、広告プレイリスト生成部は、広告プレイリストのポジションを保証型広告から優先的に配置し、保証型広告が配置されたポジション以外の空きポジションに、落札した運用型広告を配置し、運用型広告オークション管理部は、広告プレイリストのポジションが保証型広告のみでは空きポジションが発生する場合、空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を提示し、空きポジションを落札した運用型広告を、広告プレイリスト生成部に通知する、広告プレイリスト生成装置である。
【0008】
本発明の一態様は、複数の広告を放送可能な広告放送時間帯の広告枠の広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成方法であって、コンピュータは、広告放送時間帯の所定時間前に、広告放送時間帯の広告枠の識別情報で広告ある広告枠識別情報を含む広告枠の広告プレイリストを要求する広告プレイリスト要求を取得する取得処理と、広告プレイリスト要求に応答して、広告プレイリスト要求に含まれている広告枠識別情報の広告枠において放送する広告の広告素材識別情報と、その広告の放送順序であるポジションと、を含む広告プレイリストを生成する広告プレイリスト生成処理と、運用型広告のオークションを管理する運用型広告オークション管理処理と、を実行し、広告プレイリスト生成処理は、広告プレイリストのポジションを保証型広告から優先的に配置し、保証型広告が配置されたポジション以外の空きポジションに、落札した運用型広告を配置し、運用型広告オークション管理処理は、広告プレイリストのポジションが保証型広告のみでは空きポジションが発生する場合、空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を提示し、空きポジションを落札した運用型広告を、広告プレイリスト生成部に通知する、広告プレイリスト生成方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、放送広告において、柔軟な広告運用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は放送システムが適用されるシステムの概略を説明するための図である。
【
図3】
図3は広告プレイリストを説明するための図である。
【
図4】
図4は広告素材管理装置3のブロック図である。
【
図5】
図5は広告素材データベース(DB)42の一例を示す図である。
【
図6】
図6は広告プレイリスト生成装置4のブロック図である。
【
図7】
図7は広告枠情報データベース(DB)53の一例を示す図である。
【
図8】
図8は広告情報データベース(DB)54の一例を示す図である。
【
図9】
図9は広告プレイリスト生成装置5のフローチャートである。
【
図10】
図10は広告プレイリスト生成を説明するための図である。
【
図11】
図11は広告取引システム5におけるオークションを説明するための図である。
【
図12】
図12は広告素材管理装置3の広告素材の送出動作のフローチャートである。
【
図13】
図13は第2の実施の形態における放送システムの概略図である。
【
図14】
図14は第2の実施の形態における各放送局の広告素材管理装置3が備える広告素材データベース(DB)42の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施の形態における広告プレイリスト生成装置4が備える広告枠情報データベース(DB)53の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2の実施の形態における広告プレイリスト生成装置4が備える広告情報データベース(DB)54の一例を示す図である。
【
図17】
図17は第2の実施の形態における各放送局の広告プレイリストの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態における放送システム、広告プレイリスト生成方法について説明する。尚、以下の説明において、「放送」とは、テレビ放送、及びラジオ放送を含む概念である。また、「番組」とは、予め決められた放送時間帯で放送されるテレビ放送、及びラジオ放送の番組である。
【0012】
まず、放送広告の広告枠について説明する。
図1は広告枠を説明するための図である。
【0013】
広告枠は、商品またはサービス等の広告を放送する所定の広告放送時間帯である。各広告枠には、少なくとも放送日時及び放送局が決められている。以下では、広告枠は、テレビコマーシャル用の広告枠であることとする。ただし、これに限定されるものではなく、広告枠を利用して放送される広告は、ラジオコマーシャルであってもよい。
【0014】
広告枠には、広告枠の情報である広告枠情報が関連付けられている。広告枠情報は、各広告枠の一般的な情報であり、例えば放送局などの広告枠提供者によって付与される。また、広告枠情報は、広告枠にて広告を放送する日時(広告放送時間帯)及び放送局、を少なくとも含んでいるが、その他にも、広告枠の種類、広告枠の秒数、広告枠と対応付けられる番組名(具体的には、広告枠が放送時間内又は放送時間直近に組み込まれた番組の名称)、及び広告枠の料金(購入料金)を含んでいる。ここで、広告枠の種類とは、その広告枠と番組の放送時間との関係を示す情報であり、具体的には、「PT(パーティシペイティング・コマーシャル:番組放送時間内に設定された時間)」、及び「SB(ステーションブレイク:ある番組から次の番組へ移る間の時間)」等である。
【0015】
また、広告枠情報は、上記以外の情報を更に含んでいてもよく、例えば、放送地域(エリア情報)、放送期間、放送時間帯(1日の中で広告が放送される時間帯:Daypart)、広告枠と対応付けられる番組のジャンル及びその番組の出演者に関する情報、番組に関連するイベントの情報、並びに後述するターゲットが含まれてもよい。ただし、これらはあくまでも一例にすぎず、これらの情報に限定されるものではない。
【0016】
ひとつの広告枠は、複数の広告を放送することができる。ひとつの広告枠の中で、広告を放送する順番を広告のポジションと呼ぶ。広告のポジションは、「PIB(ポジション・イン・ブレイク)」とも呼ばれ、例えば、ひとつの広告枠の中で15秒×4本の広告が放送できる場合(ポジション数=4)、何番目に放送するかを示すものである。
【0017】
更に、広告枠は、その広告枠を一意に識別する広告枠識別情報(広告枠ID)が付与されている。この広告枠IDにより、多数の広告枠からひとつの広告枠を特定することができる。
【0018】
次に、第1の実施の形態における放送システムについて説明する。
図2は放送システムが適用されるシステムの概略を説明するための図である。
【0019】
放送システム1は、送出管理装置2と、広告素材管理装置3と、広告プレイリスト生成装置4と、を備える。
【0020】
送出管理装置2は、マスターとも呼ばれ、放送進行表(放送運行表などともいう)に従い、番組素材を送信所に送り出す装置である。
【0021】
広告素材管理装置3は、CMバンクとも呼ばれる。放送局は、放送する広告の広告素材を広告主から受け取り、それらの広告素材を、広告素材管理装置3の記憶装置に記憶させておく。広告素材管理装置3は、送出管理装置2からの広告枠IDを含む広告素材要求を受信し、その広告枠IDの広告枠で放送する広告素材をリスト化した広告プレイリストを広告プレイリスト生成装置4に要求する。この広告プレイリストの要求は、その広告枠の放送の直前(例えば、数秒程度前)に要求される。そして、広告素材管理装置3は、広告プレイリスト生成装置4から通知された広告プレイリストに記載された広告素材を読み出して、その広告素材を送出管理装置2に返却することにより、送出管理装置2から広告は放送される。
【0022】
広告プレイリスト生成装置4は、広告枠IDの広告枠の広告プレイリストを生成する装置である。広告プレイリストは、広告枠IDと関連付けられ、その広告枠で放送する広告素材を識別する広告素材識別情報(広告素材ID)と、その広告のポジションと、その広告素材の尺情報と、を含むリストである。
図3は広告プレイリストを説明するための図である。
図3はポジション数が4の広告プレイリストの例を示したものであり、ポジション順に尺情報と広告素材IDとがリスト化されている。広告プレイリスト生成装置4は、広告素材管理装置3から広告プレイリスト要求を受信し、その広告枠に放送する広告をリスト化した広告プレイリストを生成し、広告素材管理装置3に送信する。
【0023】
ここで、広告プレイリスト生成装置4が広告プレイリストを生成するために管理する広告の種類であるが、大きく分けて、保証型広告と運用型広告とがある。保証型広告は予約型広告とも呼ばれ、広告期間と広告回数とが保証されている広告である。保証型広告には、ポジション指定型とインプレッション保証型とがある。ポジション指定型は、放送する広告枠とその広告枠のポジションを指定する形態である。インプレッション保証型は、広告枠やポジションを指定することなく、所定期間内の広告回数(インプレッション数)を保証する形態である。一方、運用型広告は、広告枠やポジションを指定することなく、広告主の予算や希望条件に応じた広告枠を入札により決定する形態の広告である。
【0024】
広告プレイリスト生成装置4は、広告枠IDの広告枠の広告プレイリストに記載する(放送する)広告を、優先的に保証型広告から選択する。例えば、広告枠及びそのポジションが指定されているポジション指定型の広告を、まず選択する。広告プレイリストに空きポジションがある場合、適切なインプレッション保証型の広告を選択する。そして、保証型広告だけでは、ポジションが埋まらない場合、その空きポジションには運用型広告を選択する。ここで、運用型広告は、外部の広告取引システム5に空きポジションの広告枠に関する広告枠情報を提供し、広告枠情報による入札により決定した広告である。このようにして、広告プレイリスト生成装置4は、広告プレイリストを生成し、広告素材管理装置4に送信する。これらの広告プレイリストの生成は、広告の放送時間の直前まで行われ、生成された広告プレイリストは、広告の放送時間の直前(例えば、数秒前)に広告素材管理装置3に返却される。
【0025】
送出管理装置2と広告素材管理装置3と広告プレイリスト生成装置4とを備える放送システム1は、通常、広告放送の遅延を避けるため、放送局内に設置される。
【0026】
広告取引システム5は、広告枠を提供する広告枠提供者と、広告枠を利用する広告枠利用者との間で行われる取引を管理するシステムである。広告の取引は、まず、広告枠利用者が期間と予算、入札単価(例えば、1000視聴あたりの価格)を指定して入札を行う。それ以外にも、視聴属性、広告のリーチ最大化又は最小化、時間帯等も指定可能である。一方、広告枠提供者は、空きポジションの広告枠が発生する度にその広告枠の広告枠情報を提供する。広告枠情報と入札の条件とが合致すると、その入札の広告が落札される。尚、入札される広告の広告素材は、入札前にその広告素材の考査が行われ、広告素材管理装置3に広告素材IDが付されて記憶されている。本実施の形態では、入札と落札とは広告の放送前の短時間(数秒)で行われ、取引完了後、即時、その広告が放送されるからである。尚、これらの広告取引は、既知の広告取引システムを適用するこができる。
【0027】
次に、主な装置の構成を説明する。
【0028】
まず、広告素材管理装置3の構成を説明する。
図4は広告素材管理装置3のブロック図である。
【0029】
広告素材管理装置3は、広告素材要求受信部41と、広告素材データベース(DB)42と、広告素材送出部43と、代用広告送出部44と、を備える。
【0030】
広告素材要求受信部41は、送出管理装置2から広告素材要求を受信し、広告プレイリスト生成装置4に広告プレイリスト要求を送信する。広告素材要求は、広告の送出時刻と広告枠IDとを少なくとも含む。広告枠IDの広告枠の尺情報や番組情報を含んでも良い。広告プレイリスト要求は、広告素材要求の広告枠IDを少なくとも含むが、他の情報を含んでも良い。
【0031】
広告素材データベース(DB)42は、広告素材が記憶されたデータベースである。
図5は広告素材データベース(DB)42の一例を示す図である。
図5の広告素材データベース(DB)42は、広告素材識別情報(広告素材ID)と、広告の概要情報と、広告素材の尺時間と、広告素材の映像データと、が関連付けられて記憶されている。広告素材は、放送するにあたって公序良俗に反するもの等の考査が完了した広告素材である。広告の概要情報は、広告素材の内容等である。尺時間は、広告素材の時間である。
【0032】
広告素材データベース(DB)42に記憶される広告素材は、保証型広告及び運用型広告の広告素材のみならず、代用広告の広告素材も含む。代用広告は、第1の代用広告と第2の代用広告とがある。第1の代用広告は、広告枠のポジションの全てが保証型広告と運用型広告とにより埋まらなかった場合に、空きポジションに放送される広告である。例えば、広告枠、放送エリア等を問わない広告である。第2の代用広告は、広告プレイリストに記載された広告素材IDに対応する広告素材がない場合や、広告プレイリストが返却されない場合等に使用される緊急用の広告である。これらの第1及び第2の代用広告は、広告枠、ポジションの尺の長さ(時間)に合わせるため、複数の尺の長さの代用広告が記憶されている。
【0033】
広告素材送出部43は、広告プレイリストを受信し、広告プレイリストに記載されている広告素材IDの広告素材を広告素材データベース(DB)42から読み出し、ポジション順に送出管理装置2に送出する。広告素材送出部43は、広告プレイリストに記載されている広告素材IDに対応する広告素材がない場合、又は、所定時間内に広告プレイリストを受信できなかった場合、そのポジション情報(ポジション、尺時間等)又は広告枠の尺時間を代用広告送出部44に送信する。
【0034】
代用広告送出部44は、広告素材送出部43から広告枠のポジション情報を受信すると、そのポジションの尺時間と同じ尺時間の第2の代用広告を、広告素材データベース(DB)42から読み出し、その代用広告を広告素材送出部43に送信する。また、所定時間内に広告プレイリストを受信できなかった場合、広告枠の尺時間と同じ尺時間の第2の代用広告を、広告素材データベース(DB)42から読み出し、その代用広告を広告素材送出部43に送信する。
【0035】
次に、広告プレイリスト生成装置4について説明する。
図6は広告プレイリスト生成装置4のブロック図である。
【0036】
広告プレイリスト生成装置4は、広告プレイリスト要求取得部51と、広告枠リアルタイム情報取得部52と、広告枠情報データベース(DB)53と、広告情報データベース(DB)54と、広告プレイリスト生成部55と、空き広告枠情報提供部56と、運用型広告入札管理部57と、を備える。
【0037】
広告プレイリスト要求取得部51は、広告素材管理装置3から広告プレイリスト要求を取得し、広告プレイリスト要求に含まれている広告枠IDを、広告プレイリスト生成部55に送信する。
【0038】
広告枠リアルタイム情報取得部52は、日々、番組の視聴率、視聴層を取得し、広告枠情報データベース(DB)53を更新する。
【0039】
広告枠情報データベース(DB)53は、広告枠毎にその広告枠の情報が格納されたデータベースである。
図7は広告枠情報データベース(DB)53の一例を示す図である。
図7の例では、広告IDに関連付けられて、広告枠の放送日、放送時間帯、ポジション数、広告枠の尺時間、広告枠の番組名、その番組のジャンル、放送エリア、その番組の視聴率、視聴者数、主要視聴者層、予測インプレッション数等のリアルタイム情報が記憶されている。リアルタイム情報は、広告枠リアルタイム情報取得部52により更新される。
【0040】
広告情報データベース(DB)54は、広告主による条件や素材の指定等を含むキャンペーン情報が格納されたデータベースである。広告情報データベース(DB)54は、主に保証型広告の広告情報が記憶されている。
図8は広告情報データベース(DB)54の一例を示す図である。
図8の例では、ポジション指定型広告及びインプレッション保証型広告の広告情報が記憶されている。広告毎に、広告素材ID、広告概要、広告素材の尺時間、広告期間、放送を指定する広告枠の広告枠ID及びポジション、残インプレッション数、希望放送エリア、ターゲット、他の広告との排除条件等が関連付けられて記憶されている。
【0041】
広告プレイリスト生成部55は、広告枠情報データベース(DB)53及び広告情報データベース(DB)54を参照し、広告プレイリストを要求された広告枠の広告プレイリストを生成する。
【0042】
広告プレイリスト生成部55による広告プレイリストの生成の仕方であるが、ポジション指定型広告については、予め広告枠やポジションが契約により決定されているので、最優先で選択する。続いて、インプレッション保証型広告の選択であるが、例えば、指定された広告枠の番組のジャンル、放送エリア、その番組の視聴率、視聴者数、主要視聴者層、予測インプレッション数等のリアルタイム情報、その空きポジションの尺時間等の在庫変数と、広告のキャンペーンの期間、残インプレッション数、ターゲット等のキャンペーン変数と、する数理計画問題を解く手法を用いて、最適なインプレッション保証型広告を選択する。これらの保証型広告により、広告枠の全てのポジション又は尺が埋まらない場合は、空きポジションの発生を空き広告枠情報提供部56に通知する。また、運用型広告入札管理部57の通知から、落札により運用型広告が決定した場合は、その広告素材IDを広告プレイリストの空きポジションに配置する。
【0043】
尚、広告プレイリスト生成部55は、広告枠のポジションの全てが保証型広告と運用型広告とにより埋まらなかった場合に、空きポジションに第1の代用広告の広告素材IDを配置する。
【0044】
空き広告枠情報提供部56は、空きポジションが発生した場合、空きポジションの広告枠の情報を、広告取引システム3に配信する。
【0045】
運用型広告入札管理部57は、入札された運用型広告のうち、落札された配信広告を広告プレイリスト生成部55に通知する。
【0046】
次に、広告プレイリスト生成装置4の動作を説明する。
図9は広告プレイリスト生成装置4のフローチャートであり、
図10は広告プレイリスト生成を説明するための図である。
【0047】
広告プレイリスト要求取得部51は、広告素材管理装置3から広告プレイリスト要求を取得する(Step 100)。この広告プレイリスト要求の取得は、その広告枠の放送時間の数秒(例えば、5秒から10秒)前である。そして、広告プレイリスト要求に含まれている広告枠IDを取得し、広告プレイリスト生成部55に送信する。以下の説明では、要求された広告プレイリストの広告枠IDが“CM100”であるとする。
【0048】
広告プレイリスト生成部55は、広告枠IDに対応する広告枠情報を広告枠情報データベース(DB)53から取得し(Step 101)、広告情報を広告情報データベース(DB)54から取得する(Step 102)。ここでは、広告枠情報は
図7に示されるものであり、広告情報は
図8に示されるものであるとする。
【0049】
広告プレイリスト生成部55は、広告枠IDに対応する広告枠を指定するポジション指定型広告を、その指定するポジションに配置する(Step 103)。本例の広告枠ID“CM100”を指定する広告は、
図8の広告情報を参照すると、広告1及び広告5である。広告1の広告素材IDは“1001”であり、その指定ポジションは“ポジション1”である。広告5の広告素材IDは“1006”であり、その指定ポジションは“ポジション3”である。広告プレイリスト生成部55は、
図10に示すように、広告プレイリストのポジション1に広告1の広告素材ID“1001”を配置し、広告プレイリストのポジション3に広告5の広告素材ID“1006”を配置する。
【0050】
広告プレイリスト生成部55は、広告枠に空きポジションの確認を行う(Step 104)。広告プレイリストに空きポジションがない場合、ポジション指定型広告により広告プレイリスが完成する(Step 112)。一方、広告プレイリスト生成部55は、広告枠に空きポジションがある場合、その広告枠に最適なインプレッション保証型広告を空きポジションに配置する(Step 105)。
【0051】
本例では、広告枠ID“CM100”の広告枠には空きポジションがあるので、インプレッション保証型広告を選択する。広告プレイリスト生成部55は、既に配置しているポジション指定型広告の排除条件を確認する。本例では、広告1の排除条件は“アルコール飲料”であり、広告5の排除条件は“競合排除”である。すなわち、同一の広告枠で、“アルコール飲料”の広告と“電化製品”の広告とは、放送することはできず、それ以外の広告からインプレッション保証型広告を選択することになる。更に、広告プレイリスト生成部55は、広告枠情報のリアルタイム情報を参照し、排除条件に該当しないインプレッション保証型広告から最適な広告を選択するように計算する。例えば、
図8の例では、広告2及び広告3は排除条件に該当する広告なので使用することはできない。一方、広告4は、排除条件に該当するものではなく、残インプレッション数や、放送エリア、ターゲット等の条件を満足するものである。そこで、広告プレイリスト生成部55は、インプレッション保証型広告として広告4を選択する。そして、広告プレイリスト生成部55は、
図10に示すように、広告プレイリストのポジション2に広告4の広告素材ID“1004”を配置する。
【0052】
広告プレイリスト生成部55は、広告枠に空きポジションの確認を行う(Step 106)。広告プレイリストに空きポジションがない場合、ポジション指定型広告により広告プレイリスが完成する(Step 112)。一方、広告プレイリスト生成部55は、広告枠に空きポジションがある場合、その旨を空き広告枠情報提供部56に通知し、空き広告枠情報提供部56は空き広告枠情報を生成し、空き広告枠情報を広告取引システム5に提示する(Step 107)。本例では、
図7の広告枠ID1001の広告情報と、広告枠ID1001の広告枠に適用される排除条件、空きポジション(尺時間)等を、空き広告枠情報として生成し、広告取引システム5に提示する。
【0053】
広告取引システム5では、入札されている広告のうち、空き広告枠情報に合致し、入札額が最も高い広告が落札される。
【0054】
図11は広告取引システム5におけるオークションを説明するための図である。広告取引システム5には、空き広告枠情報として、空き広告枠の広告枠ID、放送日、放送時間帯、空きポジション数、空き時間、番組名、番組ジャンル、放送エリア、リアルタイム情報、排除条件等が開示される。一方、入札側は、入札広告識別情報、広告期間、広告ジャンル、広告素材ID、素材尺、1視聴当たりの単価、予算上限等の入札情報を登録しておく。広告取引システム5は、入札広告から「予想視聴数x入札単価」及び「予算上限」の低い金額を入札額として採用し、広告枠に適用される排除条件、空きポジション(尺時間)等の条件に合致する、最も高い入札額の入札を落札する。例えば、
図11では、予測視聴数を100万人とすると、入札広告1の入札額は800万円であり、入札広告2の入札額は700万円である。よって、入札広告1を落札(採用)とする。
【0055】
落札された広告は、即時、広告素材IDとともに、運用型広告入札管理部57に返却される。尚、広告取引システム5は、その広告枠が落札されなかった場合は、落札された広告がなかった旨を運用型広告入札管理部57に通知する。
【0056】
広告プレイリスト生成部55は、時間内に落札された運用型広告があり、その広告素材IDが通知された場合(Step 108)、
図10に示すように、その広告素材IDを空きポジションに配置する(Step 109)。広告プレイリスト生成部55は、広告枠に空きポジションの確認を行う(Step 110)。広告プレイリストに空きポジションがない場合、広告プレイリスが完成する(Step 112)。
【0057】
一方、広告プレイリスト生成部55は、運用型広告が時間内に落札されない場合(Step 108)、代用広告の広告素材IDを空きポジションに配置する(Step 111)。また、広告プレイリスト生成部55は、落札された運用型広告だけでは、広告プレイリストに空きポジションがある場合、代用広告の広告素材IDを空きポジションに配置する(Step 111)。そして、広告プレイリストを完成させる(Step 112)。
【0058】
上述の動作は、その広告枠の放送時間の直前まで行われ、数秒(例えば、1から5秒)前に、完成した広告プレイリストが広告素材管理装置3に送信される。
【0059】
続いて、広告素材管理装置3の動作を説明する。
図12は広告素材管理装置3の広告素材の送出動作のフローチャートである。
【0060】
広告素材送出部43は、広告プレイリストの受信確認を行う(Step 200)。
【0061】
広告プレイリスト要求の送信後の所定時間内に広告プレイリストを受信できなかった場合、広告プレイリスト要求をした広告枠の尺と同じ第2の代用広告(緊急用の広告枠代用広告)を送出管理装置2に送信する(Step 206)。
【0062】
一方、広告素材送出部43は、広告プレイリスト要求の送信後の所定時間内に広告プレイリストを受信できた場合、広告プレイリストのポジション順に広告素材IDに対応する広告素材が広告素材送DB42に格納されているかを確認する(Step 202)。広告素材IDに対応する広告素材が広告素材DB42にある場合(Step 203)、広告素材送出部43は、広告素材IDに関連付けられた広告素材を読み出し(Step 204)、その広告素材を送出管理装置2に送信する(Step 205)。
【0063】
一方、広告素材送出部43は、広告素材IDに対応する広告素材が広告素材DB42にない場合(Step 203)、広告素材送出部43は、代用広告送出部44に報告する。代用広告送出部44は、広告素材がない広告素材IDに代えて、該ポジションの尺時間と同じ第2の代用広告を選択し、選択した第2の代用広告の広告素材IDを広告素材送出部43に通知する(Step 207)。そして、広告素材送出部43は、広告素材IDに関連付けられた広告素材を読み出し(Step 204)、その広告素材を送出管理装置2に送信する(Step 205)。
【0064】
本実施の形態は、広告の放送直前まで、広告を適応的に選択して最適な広告を放送することができる。結果として、放送広告の柔軟な運用を行うことができる。
【0065】
更に、広告プレイリストが返却されない場合や、広告プレイリストに記載された広告素材IDに対応する広告素材の不存在等の不測の事態であっても、それらの場合は、予め用意した代用広告を放送するようにしているので、広告が放送されないことに起因する放送事故を防止することができる。
【0066】
尚、上述した例では、ひとつの広告枠の複数の広告素材の尺時間を同一ものとして説明したが、これに限られず異なるものであっても良い。この場合、広告プレイリスト生成部55は、各広告素材の尺時間を考慮して、広告を選択するようにする。
【0067】
また、上述した実施の形態では、保証型広告の例として、ポジション指定型とインプレッション保証型とを例にして説明した。しかし、広告プレイリスト生成部55は、広告プレイリストの生成の際に優先的に選択する保証型広告をポジション指定型広告のみとし、ポジション指定型の広告のみを優先的に選択するようにしても良い。そして、インプレッション保証型の広告については、契約したインプレッション量を将来の広告枠により担保することができるならば、広告提供者にとって有利な条件(広告料など)により入札された運用型広告を、インプレッション保証型の広告よりも優先的に選択するように構成しても良い。
【0068】
例えば、広告プレイリスト生成部55は、ポジション指定型の広告を選択した状態で空きポジションがある場合、空きポジションの発生を空き広告枠情報提供部56に通知する。広告枠情報提供部56は、最低落札価格を、少なくともその広告枠を利用可能なインプレッション保証型の広告の広告料よりも高いものに設定する。そして、広告プレイリスト生成部55は、運用型広告入札管理部57の通知から、落札により運用型広告が決定した場合は、その広告素材IDを広告プレイリストの空きポジションに配置する。落札対象の広告がない場合、空きポジションをインプレッション保証型の広告から選択して空きポジションを埋めるように構成する。このように構成しても、広告を適応的に選択して最適な広告を放送することができる。
【0069】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態を説明する。
第2の実施の形態は、複数の放送局で放送される広告をひとつの広告プレイリスト生成装置4が管理する例を説明する。
【0070】
現在、全国放送の広告(ネットタイムCM)は、全国放送を担当する放送局(発局)の広告素材管理装置3から送出された広告素材が番組本編と共に全国回線網により各放送局に伝送され、各放送局の送出管理装置2からその放送エリアに放送されている。このようにして、全国放送番組におけるキー局及びネットワーク局を含めて一律の広告の放送を実現している。一方、一部の放送エリアのみ広告素材が異なる広告を放送したいという広告主の要望がある。このような場合、その一部の放送エリアを管轄する放送局と発局とが事前に調整を行い、当該放送局のみ自局の広告素材管理装置3から差し替える広告素材(同じ広告主の素材違い等)を読み出して放送している。すなわち、放送局(発局)と同一の広告を放送する第1種別の放送局と、放送局(発局)と異なる広告を放送する第2種別の放送局と、が存在する。
【0071】
しかし、異なる広告素材を放送する第2種別の放送局と発局たる放送局との調整に多くの労力を必要とし、異なる広告素材を放送する第2種別の放送局はその広告枠のみ、自局の広告素材管理装置3から送出しなければならず、管理、運用面で複雑な処理が必要であった。
【0072】
そこで、第2の実施の形態は、広告プレイリスト生成装置4が各放送局の広告素材管理装置3が送出する広告素材をコントロールし、事前の調整をすることなく、各放送局の広告素材管理装置3が発局の広告と同一素材または差し替え素材による送出が行える例を説明する。
【0073】
図13は第2の実施の形態における放送システムの概略図である。
図13において、全国放送の番組を放送する放送局A(発局)であり、例えば、キー局である。放送局Bから放送局Nは、放送局A(発局)が送出する全国放送の番組を管轄するエリアに放送する放送局である。例えば、放送局Bから放送局Nは、ネットワーク局である。各放送局に設置されている広告素材管理装置3に記憶される広告素材は、基本的に共通である。広告素材管理装置3に記憶される広告は、その放送局のみしか使用されないような場合もあるが、広告は広告プレイリスト生成装置4により適応的に選択され、その広告プレイリストに記載された広告素材IDに関連付けられた広告素材が広告素材管理装置3に記憶されていないと、即時に広告の送出ができないからである。但し、各放送局に設置されている広告素材管理装置3に記憶される広告素材が全て共通である必要はなく、一部、異なるものであっても良い。
図14は第2の実施の形態における各放送局の広告素材管理装置3が備える広告素材データベース(DB)42の一例を示す図である。
図14の広告素材データベース(DB)42が
図5の広告素材データベース(DB)42と相違するところは、新たに広告素材ID“10150”の広告素材が追加されたことであり、この広告素材ID“1050”の広告素材は広告素材ID“1001”の広告素材と広告主は同一であるが、内容が異なる(商品が異なる等)広告である。
【0074】
図15は、第2の実施の形態における広告プレイリスト生成装置4が備える広告枠情報データベース(DB)53の一例を示す図である。第2の実施の形態における広告枠情報データベース(DB)53が第1の実施の形態と異なるところは、広告枠IDである。第2の実施の形態では、広告枠IDは、全国放送の番組に流れる同一の広告枠であること示す共通の情報と、各放送局を識別する情報と、を含む。例えば、広告枠ID“CM100B”の“CM100”は、全国放送の番組に流れる同一の広告枠を示し、“B”は放送局を示す。従って、広告枠ID“CM100B”は、放送局Bから全国放送の番組中に流れる広告枠を示している。
【0075】
図16は、第2の実施の形態における広告プレイリスト生成装置4が備える広告情報データベース(DB)54の一例を示す図である。第2の実施の形態における広告情報データベース(DB)54が第1の実施の形態と異なるところは、ひとつの広告について、放送エリア毎に異なる広告素材の選択できるように、広告素材のフィールドに放送局と広告素材IDとの関係が記載されている。
図16の例では、広告1について、B放送局の放送素材が広告素材ID“1050”であり、それ以外の放送局の広告素材が広告素材ID“1001”であることを示している。
【0076】
次に、第2の実施の形態における動作を説明する。
【0077】
発局たる放送局Aから全国放送の番組が放送局B-Nの送出管理装置2に伝送され、番組が各放送エリアにおいて放送される。番組の広告放送時間帯の直前(例えば、数秒前)に、各放送局A-Nの広告素材管理装置3から、広告プレイリスト生成装置4に広告プレイリスト要求が送信される。各放送局A-Nの広告素材管理装置3から送信される広告プレイリスト要求が含む広告枠IDは、“CM100A”-“CM100N”である。
【0078】
広告プレイリスト要求を受信した広告プレイリスト生成装置4は、第1の実施の形態と同様に、広告枠情報データベース(DB)53及び広告情報データベース(DB)54を参照し、広告プレイリストを要求された広告枠の広告プレイリストを生成する。本例では、広告プレイリスト生成装置4が受信した広告プレイリスト要求が含む広告枠IDは、“CM100A”-“CM100N”である。これら広告枠は同一の広告放送時間帯であるが、広告情報データベース(DB)を参照すると、“CM100B”の広告枠(放送局B)は広告素材が異なる。広告プレイリスト生成装置4の広告プレイリスト生成部55は、これを考慮し、広告1を広告プレイリストに広告素材ID記載する際に、放送局B用の広告プレイリストのポジション1にはB放送局用の放送素材である広告素材ID“1050”を記載し、それ以外の放送局用の広告プレイリストのポジション1には広告素材の広告素材ID“1001”を記載する。このようにして生成された各放送局用の広告プレイリストを、
図17に示す。そして、広告プレイリスト生成装置4は、生成した広告プレイリストを、各放送局の広告素材管理装置3に送信する。
【0079】
各放送局の広告素材管理装置3は、受信した広告プレイリストに基づいて、広告素材を送出管理装置2に送出する。
【0080】
このような構成により、全国放送番組の広告であっても、各放送局は同一の広告放送時間帯の広告枠に異なる広告を放送することができる。
【0081】
また、広告の放送直前まで広告プレイリストは作成可能なので、ある放送局の放送エリアへの広告を希望するが、他のエリアにチャンスがあれば放送したい広告を、他の放送局の放送エリアでも放送するチャンスを与えることになる。
【0082】
また、放送される広告は動画である場合が一般的であり、広告素材のデータは大きいものとなり、伝送時間を考慮すると、送出管理装置2及び広告素材管理装置3は放送局内に設けられるのが一般的である。一方、広告プレイリストはテキストデータのようなデータ量が小さいものであり、伝送による遅延は少ない。第2の実施の形態では、送出管理装置2及び広告素材管理装置3は各放送局内に設けて、広告素材の送出の遅延を最小限に抑え、広告プレイリスト生成装置4が各放送局の広告素材管理装置3に広告プレイリストを送信するように構成されているので、伝送の負担を増加することなく、各放送局が広告主等の要望に応じた広告を放送することができる。
【0083】
尚、上述した第2の実施の形態では、同一放送時間帯の広告枠を識別する広告識別情報を、各放送局が識別可能に付与したが、全国放送の番組を放送する放送局(発局)と同一広告を放送する第1種別の放送局と、放送局(発局)と異なる広告を放送する第2種別の放送局と、が識別可能に付与しても良い。
【0084】
また、広告素材管理装置3及び広告プレイリスト生成装置4の各部は、プログラムによって処理を行うコンピュータによっても構成可能である。
【0085】
以上好ましい実施の形態をあげて本発明を説明したが、全ての実施の形態の構成を備える必要はなく、適時組合せて実施することができるばかりでなく、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形し実施することが出来る。
【符号の説明】
【0086】
1 放送システム
2 送出管理装置
3 広告素材管理装置
4 広告プレイリスト生成装置
5 広告取引システム
41 広告素材要求受信部
42 広告素材データベース(DB)
43 広告素材送出部
44 代用広告送出部
51 広告プレイリスト要求取得部
52 広告枠リアルタイム情報取得部
53 広告枠情報データベース(DB)
54 広告情報データベース(DB)
55 広告プレイリスト生成部
56 空き広告枠情報提供部
57 運用型広告入札管理部