(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】液体柔軟剤組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 13/463 20060101AFI20241219BHJP
D06M 13/328 20060101ALI20241219BHJP
D06M 13/152 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
D06M13/463
D06M13/328
D06M13/152
(21)【出願番号】P 2019238659
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中村 太一
(72)【発明者】
【氏名】天谷 友彦
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-336065(JP,A)
【文献】特開2004-211230(JP,A)
【文献】特開2002-327375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00 - 19/00
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体柔軟剤組成物であって、下記(A)~(
E)成分:
(A)エステル基(-COO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)
4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル、
(C)ノニオン界面活性剤
、
(D)無機塩
、及び、
(E)カプセル化されていない香料組成物、ここで、
(1)香料組成物が、ClogP値が2~4の香料を含み、
(2)ClogP値が2~4の香料の含量が、香料組成物の総質量に対して10~50質量%であり、
(3)香料組成物の平均ClogP値が2.2~4.8である、
を含み、
(A)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して3質量%以上12質量%未満であり、
(B)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.02~1質量%であり、
(D)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.001~0.1質量%であり、
(E)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.5~1.5質量%であり、
(B)成分の(A)成分に対する質量比(B/A)が0.005~0.1であり、
(D)成分の(B)成分に対する質量比(D/B)が0.001~0.2である
ことを特徴とする、液体柔軟剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の炭化水素基の不飽和率が20質量%以上である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
下記式から求められる(A)成分のトリ体比率が10%以上50%未満である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物。
トリ体比率={トリ体の質量/(トリ体の質量+ジ体の質量+モノ体の質量+ゼロ体の質量)}×100
トリ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が3個のアミン化合物
ジ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が2個のアミン化合物
モノ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が1個のアミン化合物
ゼロ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が0個のアミン化合物
【請求項4】
(C)成分の(B)成分に対する質量比(C/B)が1~80である、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
(C)成分の(B)成分に対する質量比(C/B)が25~80である、請求項4に記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(D)成分が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内における柔軟剤の市場規模は拡大傾向にあり、なかでも消臭機能を有する柔軟剤のシェアは年々伸長している。
香りのマスキングによる感覚的消臭は種々の臭気に対して有効であるが、洗濯物を部屋干しした際に発生する臭気(部屋干し臭)に対しては、抗菌剤による生物学的消臭が併用されている(特許文献1~2)。
ダイクロサン類は、部屋干し臭に関与するグラム陰性菌に対して高い抗菌効果を奏することが知られている(特許文献3)。また、ダイクロサン類は、柔軟剤自体の保存性を高めるための防腐剤として配合されている(特許文献4~5)。
その他、ダイクロサン類と香料とを併用した柔軟剤も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-192967号公報
【文献】特開2001-192968号公報
【文献】国際公開第2013/156371号
【文献】特開2019-163559号公報
【文献】特開2002-327375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイクロサン類は水不溶性であるため、柔軟剤へ配合する際には、主基材であるカチオン界面活性剤が形成するベシクル粒子内へ取り込ませることが必要であるところ、生物学的消臭に有効な量のダイクロサン類を配合すると、室温付近で柔軟剤が分離するという課題を本発明者は見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を鋭意検討した結果、本発明者は(A)特定種類のカチオン界面活性剤と、(B)特定構造の抗菌剤と、(C)ノニオン界面活性剤とを特定比率で配合すると、部屋干し臭を抑制しつつ、柔軟剤の分離を抑制できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔7〕に関するものである。
〔1〕液体柔軟剤組成物であって、下記(A)~(C)成分:
(A)エステル基(-COO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、
(B)フェノール構造を有する抗菌性化合物、及び、
(C)ノニオン界面活性剤
を含み、
(A)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して3質量%以上12質量%未満であり、
(B)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.02~1質量%であり、
(B)成分の(A)成分に対する質量比(B/A)が0.005~0.1である
ことを特徴とする、液体柔軟剤組成物。
〔2〕(A)成分の炭化水素基の不飽和率が20質量%以上である、前記〔1〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔3〕下記式から求められる(A)成分のトリ体比率が10%以上50%未満である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の液体柔軟剤組成物。
トリ体比率={トリ体の質量/(トリ体の質量+ジ体の質量+モノ体の質量+ゼロ体の質量)}×100
トリ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が3個のアミン化合物
ジ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が2個のアミン化合物
モノ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が1個のアミン化合物
ゼロ体:炭素数10~26の炭化水素基の数が0個のアミン化合物
〔4〕(C)成分の(B)成分に対する質量比(C/B)が1~80である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔5〕更に(D)無機塩を含み、
(D)成分の含量が、液体柔軟剤組成物の総質量に対して0.001~1質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
〔6〕(D)成分の(B)成分に対する質量比(D/B)が0.001~1である、前記〔5〕に記載の液体柔軟剤組成物。
〔7〕更に(E)カプセル化されていない香料組成物を含み、
香料組成物が、ClogP値が2~4の香料を含み、
ClogP値が2~4の香料の含量が、香料組成物の総質量に対して10~50質量%である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の液体柔軟剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
後述の実施例で示されるように、本発明の液体柔軟剤組成物は、部屋干し臭の抑制(消臭)効果を奏しつつ、分離安定性を有している。したがって、本発明は従来製品にはない付加価値を有する柔軟剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
(A)成分は「エステル基(-COO-)で分断されていてもよい、炭素数10~26の炭化水素基を分子内に1~3個有するアミン化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物」である。
(A)成分はカチオン界面活性剤であり、繊維製品へ柔軟性(風合い)を付与する効果(すなわち、柔軟剤本来の機能)を液体柔軟剤組成物へ付与するために配合される。
【0009】
エステル基(-COO-)で分断されていてもよい炭化水素基の炭素数は10~26であり、17~26が好ましく、19~24がさらに好ましい。炭素数が10以上であると柔軟性付与効果が良好であり、26以下であると液体柔軟剤組成物のハンドリング性が良好である。
エステル基(-COO-)で分断されていてもよい炭化水素基は、鎖状の炭化水素基であっても、構造中に環を含む炭化水素基であってもよく、好ましくは鎖状の炭化水素基である。鎖状の炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
炭化水素基がエステル基(-COO-)で分断されていると、生分解性が向上する。
1つの炭化水素基が有するエステル基の数は1つであっても2つ以上であってもよい。すなわち、炭化水素基は、エステル基によって1ヶ所が分断されていてもよく、2ヶ所以上が分断されていてもよい。
尚、エステル基が有する炭素原子は、炭化水素基の炭素数にカウントするものとする。
炭化水素基は、通常、工業的に使用される牛脂由来の未水添脂肪酸、不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸、パーム椰子、油椰子などの植物由来の未水添脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいは不飽和部を水添もしくは部分水添して得られる脂肪酸又は脂肪酸エステル等を使用することにより導入される。
【0010】
「炭化水素基の不飽和率」は、アミン化合物を構成する炭化水素基中のアルケニル基の割合(質量%)として定義される。
不飽和率は、アミン化合物の炭化水素基をもたらす原料の配合量から計算できる。例えば原料として、(飽和炭化水素基を含む)ステアリン酸メチル25質量%と、(不飽和炭化水素基を含む)オレイン酸メチル40質量%と、(飽和炭化水素基を含む)パルミチン酸メチル35質量%とを含む脂肪酸低級アルキルエステルの混合物を用いた場合、得られるアミン化合物における炭化水素基の不飽和率は40質量%(=40/(25+40+35)×100)となる。
炭化水素基の不飽和率は特に限定されないが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。不飽和率の上限は、好ましくは80質量%、より好ましくは60質量%である。不飽和率が20質量%以上であると、より優れた分離安定性と、優れた保存後の粘度安定性とが得られる。不飽和率が80質量%以下(上限以下)であると良好な乳化分散安定性が得られる。
【0011】
アミン化合物としては、2級アミン化合物(炭化水素基の数が2個)又は3級アミン化合物(炭化水素基の数が3個)が好ましく、3級アミン化合物がより好ましい。
(A)成分は、下記式から求められるトリ体比率が10%以上50%未満であることが好ましく、12%以上40%未満であることがより好ましく、15%以上30%未満であることが特に好ましい。トリ体比率が10%以上50%未満であると、より優れた分離安定性と、優れた保存後の粘度安定性とが得られる。
トリ体比率={トリ体の質量/(トリ体の質量+ジ体の質量+モノ体の質量+ゼロ体の質量)}×100
トリ体:炭化水素基の数が3個のアミン化合物
ジ体:炭化水素基の数が2個のアミン化合物
モノ体:炭化水素基の数が1個のアミン化合物
ゼロ体:炭化水素基の数が0個のアミン化合物
【0012】
アミン化合物としては、下記一般式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0013】
[式中、R1~R3はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数10~26の炭化水素基、-CH2CH(Y)OCOR4(Yは水素原子又はCH3である。)、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OH(Yは水素原子又はCH3である)であり、R1~R3のうちの少なくとも1つは、-CH2CH(Y)OCOR4であり、R4は炭素数7~21の炭化水素基である。]
【0014】
一般式(A1)中、R1~R3における炭素数10~26の炭化水素基の炭素数は、17~26が好ましく、19~24がより好ましい。該炭化水素基は、不飽和率が38%以上である。
-CH2CH(Y)OCOR4中、Yは水素原子又はCH3であり、水素原子が特に好ましい。R4は炭素数7~21の炭化水素基、好ましくは炭素数15~19の炭化水素基である。一般式(A1)で表される化合物中にR4が複数存在するとき、該複数のR4は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
R4の炭化水素基は、炭素数8~22の脂肪酸もしくは脂肪酸メチルエステル(R4COOMe)からカルボキシ基を除いた残基(脂肪酸残基)であり、R4のもととなる脂肪酸もしくは脂肪酸メチルエステル(R4COOMe)は、飽和脂肪酸もしくは飽和脂肪酸メチルエステルでも、不飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸メチルエステルでもよく、また、直鎖脂肪酸もしくは直鎖脂肪酸メチルエステルでも、分岐脂肪酸もしくは分岐脂肪酸メチルエステルでもよい。中でも、飽和又は不飽和の直鎖脂肪酸が好ましい。柔軟処理した衣類に良好な吸水性を付与するために、R4のもととなる脂肪酸もしくは脂肪酸メチルエステルの不飽和比率は高いほど好ましい。
R4のもととなる脂肪酸として具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)などが挙げられる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸、およびリノール酸から選ばれる2種以上を所定量ずつ組み合わせて用いるのが好ましい。この場合、炭素数16~18のものの割合は、繊維や衣類に対する柔軟性付与の観点から80質量%以上とし、炭素数20の脂肪酸が2質量%未満、炭素数21~22の脂肪酸が1質量%未満とするのが好ましい。
【0015】
一般式(A1)において、R1~R3のうち少なくとも1つ、好ましくは2つが-CH2CH(Y)OCOR4である。
R1~R3のうち、1つ又は2つが-CH2CH(Y)OCOR4である場合、残りの2つ又は1つは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OHであり、炭素数1~4のアルキル基、-CH2CH(Y)OHであることが好ましい。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。-CH2CH(Y)OHにおけるYは、-CH2CH(Y)OCOR4中のYと同様である。
【0016】
一般式(A1)で表される化合物の好ましい例として、下記一般式(A1-2)~(A1-6)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0017】
〔((A1-2)~(A1-6)の各式中、R9はそれぞれ独立に、炭素数7~21、好ましくは15~17の炭化水素基である。〕
R9における炭素数7~21の炭化水素基としては、前記一般式(A1)のR4における炭素数7~21の炭化水素基と同様のものが挙げられる。なお、式中にR9が複数存在するとき、該複数のR9は互いに同一であってもよく、それぞれ異なっていても構わない。
【0018】
(A)成分は、アミン化合物の塩であってもよい。
塩は、アミン化合物を酸で中和して得られる。中和に用いる酸は有機酸でも無機酸でもよく、例えば塩酸、硫酸や、メチル硫酸等が挙げられる。アミン化合物の中和は、公知の方法により実施できる。
【0019】
(A)成分は、アミン化合物の4級化物であってもよい。
4級化物は、アミン化合物に4級化剤を反応させて得られる。アミン化合物の4級化に用いる4級化剤としては、例えば、塩化メチル等のハロゲン化アルキルや、ジメチル硫酸等のジアルキル硫酸などが挙げられる。これらの4級化剤をアミン化合物と反応させると、アミン化合物の窒素原子に4級化剤のアルキル基が導入され、4級アンモニウムイオンとハロゲンイオン又はモノアルキル硫酸イオンとの塩が形成される。4級化剤により導入されるアルキル基は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。アミン化合物の4級化は、公知の方法により実施できる。
【0020】
(A)成分としては、
一般式(A1)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、
一般式(A1-2)~(A1-6)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、
一般式(A1-4)~(A1-6)で表される化合物、その塩及びその4級化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
特に、一般式(A1-4)で表される化合物の4級化物と、(A1-5)で表される化合物の4級化物と、(A1-6)で表される化合物の4級化物とを併用することが好ましい。
一般式(A1)及び(A1-2)~(A1-6)で表される化合物、その塩及びその4級化物は、市販品でもよく、公知の方法により製造したものであってもよい。
例えば、一般式(A1-2)で表される化合物(以下「化合物(A1-2)」という)と、一般式(A1-3)で表される化合物(以下「化合物(A1-3)」という)とを含む組成物は、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)などの脂肪酸組成物、または該脂肪酸組成物における脂肪酸を該脂肪酸のメチルエステルに置き換えた脂肪酸メチルエステル組成物と、メチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、柔軟性付与を良好にする観点から、「化合物(A1-2)/化合物(A1-3)」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。その際、柔軟性付与の観点から「化合物(A1-2)の4級化物/化合物(A1-3)の4級化物」で表される存在比率が、質量比で99/1~50/50となるように合成することが好ましい。
【0021】
一般式(A1-4)で表される化合物(以下「化合物(A1-4)」という)と、一般式(A1-5)で表される化合物(以下「化合物(A1-5)」という)と、一般式(A1-6)で表される化合物(以下「化合物(A1-6)」という)とを含む組成物は、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10~60)や、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10~60)などの脂肪酸組成物または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、化合物(A1-4)、(A1-5)及び(A1-6)の合計質量に対する個々の成分の含有比率は、柔軟性付与の観点から、化合物(A1-4)が1~60質量%、化合物(A1-5)が5~98質量%、化合物(A1-6)が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-4)が30~60質量%、化合物(A1-5)が10~55質量%、化合物(A1-6)が5~35質量%であることがより好ましい。
また、その4級化物を用いる場合には、4級化反応を十分に進行させる点で、4級化剤としてジメチル硫酸を用いることがより好ましい。化合物(A1-4)、(A1-5)及び(A1-6)の各4級化物の存在比率は、柔軟性付与の観点から質量比で、化合物(A1-4)の4級化物が1~60質量%、化合物(A1-5)の4級化物が5~98質量%、化合物(A1-6)の4級化物が0.1~40質量%であることが好ましく、化合物(A1-4)の4級化物が30~60質量%、化合物(A1-5)の4級化物が10~55質量%、化合物(A1-6)の4級化物が5~35質量%であることがより好ましい。
なお、化合物(A1-4)、(A1-5)及び(A1-6)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、「4級化物/4級化されていないエステルアミン」の比率は70/30~99/1の質量比率の範囲内であることが好ましい。
【0022】
(A)成分は、アシル基中に水酸基を有してもよい。水酸基を有するアシル基が存在することで、液体柔軟剤の粘度を減粘できる。減粘させる場合、アシル基中に水酸基を有するアシル基の割合が0.1~5%の範囲であることが好ましい。
(A)成分は、1種類のアミン化合物、その塩又はその4級化物を単独で用いてもよく、2種類以上からなる混合物、例えば、一般式(A1-4)~(A1-6)で表される化合物の混合物として用いてもよい。
【0023】
(A)成分の配合量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、3質量%以上12質量%未満、好ましくは8質量%以上11.5質量%である。3質量%以上であると十分な柔軟性付与効果が得られ、12質量%未満であると良好な使用性を可能にする柔軟剤粘度が得られる。
【0024】
〔(B)成分:フェノール構造を有する抗菌性化合物〕
(B)成分は、洗濯後の繊維製品に抗菌性を付与して、微生物に由来する異臭(特に、部屋干し臭)を抑制するために配合する。
「フェノール構造」とは、芳香族炭化水素核の水素原子の1つ以上が、ヒドロキシ基で置換された構造をいう。
【0025】
(B)成分としては、抗菌剤として公知のフェノール誘導体又はヒドロキシジフェニル化合物が挙げられる。具体例としては、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)、o-ベンジル-p-クロロフェノール(クロロフェン)、イソプロピルメチルフェノールや、パラクロロメタキシレノールなどが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシジフェニル化合物が好ましく、具体的にはトリクロサン、ダイクロサン及びクロロフェンが好ましい。
【0026】
(B)成分としては、繊維への吸着量が高く配合効果が高い点から、下記一般式(3)で表される2-ヒドロキシジフェニル化合物(以下、「化合物(3)」ともいう。)が好ましい。
【0027】
【0028】
(一般式(3)中、
Xは、酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、
Yは、それぞれ独立に塩素原子又は臭素原子であり、
Zは、SO2H、NO2、又は炭素数1~4のアルキル基であり、
a、b、cは、それぞれ独立に0又は1~3の整数であり、
dは、0又は1であり、
mは、0又は1であり、
nは、0又は1である。)
なお、-(Y)bは、ベンゼン環の水素原子のb個がYに置換されていることを意味する。-(Y)c、-(Z)d、-(OH)m及び-(OH)nについても同様である。
【0029】
化合物(3)としては、Xが酸素原子又はメチレン基であり、Yが塩素原子又は臭素原子であり、mが0であり、nが0又は1であり、aが1であり、bが0、1又は2であり、cが0、1又は2であり、かつdが0である化合物がより好ましい。
【0030】
好ましい化合物(3)の具体例としては、
モノクロロヒドロキシジフェニルエーテル(Xが酸素原子であり、aが1であり、Yが塩素原子であり、b又はcの一方が1で他方が0であり、dが0であり、mが0であり、nが0である化合物)、
ジクロロヒドロキシジフェニルエーテル(Xが酸素原子であり、aが1であり、Yが塩素原子であり、bが1であり、cが1であり、dが0であり、mが0であり、nが0である化合物)、
トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル(Xが酸素原子であり、aが1であり、Yが塩素原子であり、b又はcの一方が1で他方が2であり、dが0であり、mが0であり、nが0である化合物)や、
ベンジルクロロフェノール(Xがメチレン基であり、aが1であり、Yが塩素原子であり、bが0であり、cが1であり、dが0であり、mが0であり、nが0である化合物)が挙げられる。
【0031】
化合物(3)としては、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール(慣用名:トリクロサン)、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)、o-ベンジル-p-クロロフェノール(慣用名:クロロフェン)であり、4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテル(慣用名:ダイクロサン)が特に好ましい。
【0032】
(B)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であるか、又は調製可能である。
【0033】
(B)成分は、単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0034】
(B)成分の配合量は、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.02~1質量、好ましくは0.03~0.8質量%、より好ましくは0.05~0.5質量%である。0.02質量%以上であると十分な抗菌性付与効果が得られ、1質量%未満であると良好な分離安定性が得られる。
【0035】
〔(C)成分:ノニオン界面活性剤〕
(C)成分は、液体柔軟剤組成物の分離安定性、凍結復元性や、カプセル香料(任意成分)の分散安定性を向上するために配合する。
(C)成分としては、例えば、多価アルコール、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを使用できる。
(C)成分の具体例としては、
グリセリンまたはペンタエリスリトールに炭素数10~22の脂肪酸がエステル結合したグリセリン脂肪酸エステルまたはペンタエリスリトール;
炭素数10~22のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル;
ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(該アルキルの炭素数1~3)エステル;
エチレンオキシドの平均付加モル数が10~100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン;
炭素数8~18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド;や
エチレンオキシドの平均付加モル数が10~100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。
なかでも、炭素数10~18のアルキル基を有し、EOの平均付加モル数が20~100モル(好ましくは30~80モル、更に好ましくは40~60)のポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。EOの平均付加モル数が20~100モルであると、より優れた分離安定性と、良好な使用性を可能にする柔軟剤粘度とが得られる。
【0036】
(C)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0037】
(C)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0038】
(C)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、例えば0.5~5質量%、好ましくは1~4質量%、より好ましくは1.5~3質量%である。(C)成分の含量が0.5質量%以上であると、より向上した凍結復元性に加えて高温安定性が得られ、5質量%以下であると、より良好な分離安定性が得られる。
【0039】
〔各成分の配合比率〕
(B)成分の(A)成分に対する質量比(B/A)は、0.005~0.1、好ましくは0.005~0.05、より好ましくは0.005~0.03である。この質量比で配合すると、液体柔軟剤組成物の優れた分離安定性が得られる。これは、B/Aが0.1を超える場合には(A)成分と(C)成分とから構成されるベシクルへの(B)成分の取込量増大によりベシクル粒子径が過度に大きくなり液体柔軟剤組成物が分離しやすくなり、一方、B/Aが0.005未満である場合にはベシクルへの(B)成分の取込量減少によりベシクル粒子径が小さくなりベシクルの体積分率が低下して液体柔軟剤組成物が分離しやすくなるところ、前記の質量比で配合することでベシクル粒子径の過剰な増大やベシクルの体積分率低下が抑制されるためであると考えられる。但し、本発明は前記理論により限定されるものではない。
【0040】
(C)成分の(B)成分に対する質量比(C/B)は、好ましくは1~80、より好ましくは2~50である。この質量比で配合すると、液体柔軟剤組成物の優れた分離安定性が得られる。これは「(A)成分と(C)成分とから構成されるベシクルへの(B)成分の取り込みが過度に増大し、ベシクルの排除体積が増大して、液体柔軟剤組成物が凝集し分離しやすくなること」が前記質量比では抑制されるためであると考えられる。但し、本発明は前記理論により限定されるものではない。
【0041】
〔任意成分〕
液体柔軟剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記(A)~(C)の必須成分以外の下記の任意成分を配合してもよい。
〔(D)成分:無機塩〕
【0042】
(D)成分は、液体柔軟剤組成物の使用性をより向上するために配合する。
(D)成分の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウムや、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、配合効果に優れる塩化カルシウム、塩化マグネシウム及びクエン酸ナトリウムが好ましく、塩化カルシウムが更に好ましい。
【0043】
(D)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0044】
(D)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0045】
(D)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、例えば0.001~1質量%、好ましくは0.01~0.1質量%である。(D)成分の含量が0.001質量%以上であると高い配合効果が得られ、1質量%以下であると、より良好な分離安定性が得られる。
【0046】
(D)成分の(B)成分に対する質量比(D/B)は、好ましくは0.001~1、より好ましくは0.005~0.5である。この質量比で配合すると、液体柔軟剤組成物のより優れた分離安定性が得られる。これは「(A)成分と(C)成分とから構成されるベシクルの排除体積が過度に減少し、ベシクルからの離水量(バルク水分量)が増大して、液体柔軟剤組成物が凝集し分離しやすくなること」が前記質量比では抑制されるためであると考えられる。但し、本発明は前記理論により限定されるものではない。
【0047】
〔(E)成分:カプセル化されていない香料組成物(フリー香料組成物)〕
(E)成分は、後述のカプセル化香料((G)成分)に芯物質として含まれる香料組成物とは別の、カプセルに内包されていない香料組成物(以下、「フリー香料組成物」ともいう)である。
(E)成分は、その香気によるマスキング効果によって液体柔軟剤組成物の消臭効果を向上するために配合する。
フリー香料組成物は、ClogP値が2~4の香料を含む。
ClogP値とは、化学物質について、1-オクタノール中及び水中の平衡濃度の比を表す1-オクタノール/水分配係数Pを、底10に対する対数logPの形態で表した値である。
ClogP値は、f値法(疎水性フラグメント定数法)により、化合物の化学構造をその構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数・f値を積算して求めることができる(例えば、Clog 3 Reference Manual DaylightSoftware 4.34,Albert Leo,David Weininger, Version 1,March 1994 参照)。
一般に、香料はClogP値が大きいほど疎水的であることから、ClogP値が小さい香料成分を多く含む香料組成物は、ClogP値が大きい香料成分を多く含む香料組成物よりも親水的な香料組成物であるといえる。
ClogP値が2~4である香料のリストを以下に示す。
【0048】
ClogP値が2~4の香料の含量は、フリー香料組成物の総質量に対して、好ましくは10~50質量%である。ClogP値が2~4の香料の含量が10~50質量%であると、液体柔軟剤組成物の分離安定性が更に向上する。
ClogP値が2~4の香料は1種類でもよく、2種類以上であってもよいが、好ましくは2種類以上である。
【0049】
ClogP値が2~4の香料の化学構造は特に制限されない。香料のClogP値が液体柔軟剤組成物の分離安定性に影響すると考える理由を以下に述べる。
疎水性物質である香料は、液体柔軟剤組成物中、カチオン界面活性剤((A)成分)とノニオン界面活性剤((C)成分)とから形成されるベシクル内の疎水場に取り込まれている。香料の取り込み量が多くなり、ベシクル粒子径が増大すると、増粘し、ベシクルの体積分率も増加するため、液体柔軟剤組成物は分離しにくくなる。しかし、ベシクル粒子径の増大が更に進行してベシクル粒子間の距離が近くなると、ベシクル粒子の凝集性が高くなり、液体柔軟剤組成物は分離しやすくなる。この現象は、香料の化学構造に依存せず、ClogPという物性に大きく依存することを、本発明者は複数の検証実験に基づき確認している。更に本発明者の検討によれば、ClogP値が2~4の香料はベシクル粒子中へ取り込まれやすく、上述の現象による液体柔軟剤組成物の分離安定性悪化が起こりやすい。
以上より、液体柔軟剤組成物の分離安定性は、香料のClogP値により影響されると考えるが、本発明は前記理論により限定されるものではない。
【0050】
フリー香料組成物に含まれるClogP値が2~4ではない1種以上の香料は、液体柔軟剤で一般的に使用されている香料成分から適宜選択できる。具体例としては、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料や、動物性香料などが挙げられる。
【0051】
フリー香料組成物に含まれる全ての香料のClogP値から算出される平均ClogP値は、好ましくは1~6、より好ましくは2~5である。平均ClogP値が前記範囲であると、柔軟剤組成物の保存安定性がより良好になる。
【0052】
フリー香料組成物には、液体柔軟剤で一般的に使用される溶剤を配合してもよい。香料用溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト-5(1,2-ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA-2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA-4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)や、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
溶剤の配合量は、フリー香料組成物の総質量に対して、例えば0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%である。
【0053】
フリー香料組成物には、液体柔軟剤で一般的に使用される酸化防止剤を配合してもよい。香料用酸化防止剤としては、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)、t-ブチル-p-ヒドロキシアニソール(BHA)、p-メトキシフェノール、β-ナフトール、フェニル-α-ナフチルアミン、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、γ-オリザノール、ビタミンE(α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、クェルセチンや、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。好ましくは3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)である。
酸化防止剤の配合量は、フリー香料組成物の総質量に対して、例えば0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%である。
【0054】
(E)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.1~2質量%、好ましくは0.5~1.5質量%である。(E)成分の含量が0.1質量%以上であると優れたマスキング効果が得られる。(E)成分の含量が2質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の分離安定性をより良好に維持できる。
【0055】
〔(F)成分:防腐剤〕
(F)成分は、主に、液体柔軟剤組成物自体の防腐力や殺菌力を強化して、長期保存中の防腐性を保つために配合する。
(F)成分としては、液体柔軟剤分野で公知の防腐剤を特に制限なく使用できる。具体例としては、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
イソチアゾロン系の有機硫黄化合物の例としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-ブチル-3-イソチアゾロン、2-ベンジル-3-イソチアゾロン、2-フェニル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4,5-ジクロロイソチアゾロン、5-クロロ-2-メチル-3-イソチアゾロン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや、これらの混合物などが挙げられる。好ましくは、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び/又は2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンであり、更に好ましくは5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの混合物であり、特に好ましくは約77%の5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと約23%の2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンとの水溶性混合物(例えば、イソチアゾロン液。具体的には、ダウケミカル社製のケーソンCG-ICP)である。
ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物の例としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オンなどが挙げられ、類縁化合物としてジチオ-2,2-ビス(ベンズメチルアミド)なども使用できる。中でも、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンが特に好ましく、具体的には、クラリアント(株)製のニッパサイド、(株)ロンザ製のプロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL、プロキセルLV、プロキセルCRL、プロキセルNBZ、プロキセルAMや、プロキセルB20などが挙げられる。
安息香酸類の例としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルや、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0056】
(F)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0057】
(F)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0058】
(F)成分の含量は配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%である。含量が0.0001質量%以上であると、防腐剤の配合効果が十分に得られ、1質量%以下であると、液体柔軟剤組成物の高い保存安定性を十分に維持できる。
【0059】
〔(G)成分:カプセル化香料〕
(G)成分は、その香気によるマスキング効果によって液体柔軟剤組成物の消臭効果を向上するために配合する。
カプセル化香料は、芯物質と、当該芯物質を覆う壁物質とから構成される。
【0060】
芯物質は、香料組成物を含んでいる。
香料組成物としては、液体柔軟剤分野で用いられているものを特に制限なく使用可能であり、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、衣類用柔軟剤や衣類用の洗剤等に一般的に使用されるエッセンシャルオイル、アブソリュート、並びに、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エーテル類、アセタール類、ケタール類及びニトリル類等の合成香水成分等が挙げられる。
香料組成物に配合される好ましい香料成分の例は、特表2010-520928号公報に記載されており、例えば、Agrumex、Aldron、Ambrettolide、Ambroxan、ケイ皮酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、Boisambrene、セドロール、酢酸セドリル、Celestolide/Crysolide、Cetalox、シトロネリルエトキサレート、Fixal、Fixolide、Galaxolide、Guaiacwood Acetate、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、ヘキシルケイ皮アルデヒド、サリチル酸ヘキシル、IsoE Super、安息香酸リナリル、ケイ皮酸リナリル、フェニル酢酸リナリル、Javanol、メチルセドリルケトン、Moskene、Musk、Musk Ketone、Musk Tibetine、Musk Xylol、Myraldyl Acetate、酢酸ネロリジル、Novalide、Okoumal、カプリル酸パラクレシル、フェニル酢酸パラクレシル、Phantolid、ケイ皮酸フェニルエチル、サリチル酸フェニルエチル、Rose Crystals、Rosone、Sandela、テトラデカニトリル、Thibetolide、Traseolide、Trimofix O、2-メチルピラジン、アセトアルデヒドフェニルエチルプロピルアセタール、アセトフェノン、アルコールC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子および1つのヒドロキシル官能を有するすべての物質を含む)、アルコールC8、アルデヒドC6(以下において、表記法Cnは、n個の炭素原子および1つのアルデヒド官能を有するすべての異性体を包含する)、アルデヒドC7、アルデヒドC8、アルデヒドC9、ノネニルアルデヒド(nonenylic aldehyde)、グリコール酸アリルアミル、カプロン酸アリル、酪酸アミル、アルデヒドアニシック(anisique)、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアセトン、ベンジルアルコール、酪酸ベンジル、ギ酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、ベンジルメチルエーテル、プロピオン酸ベンジル、Bergamyl Acetate、酢酸ブチル、樟脳、3-メチル-5-プロピル-2-シクロヘキセノン、ケイ皮アルデヒド、シス-3-ヘキセノール、酢酸シス-3-ヘキセニル、ギ酸シス-3-ヘキセニル、イソ酪酸シス-3-ヘキセニル、プロピオン酸シス-3-ヘキセニル、チグリン酸シス-3-ヘキセニル、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルニトリル、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、クミンアルデヒド、シクラールC、酢酸(シクロヘキシルオキシ)-2-プロペニルエステル、ダマセノン、アルファ-ダマスコン、ベータ-ダマスコン、ギ酸デカヒドロベータ-ナフチル、マロン酸ジエチル、ジヒドロジャスモン、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジヒドロテルピネオール、アントラニル酸ジメチル、ジメチルベンジルカルビノール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、ジメチルオクテノン、ジメトール(Dimetol)、ジミルセトール、エストラゴール、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、ヘプタン酸エチル、エチルリナロール、サリチル酸エチル、酪酸エチル2-メチル、オイカリプトール、オイゲノール、酢酸フェンキル、フェンキルアルコール、4-フェニル-2,4,6-トリメチル1,3-ジオキサン、2-オクチン酸メチル、4-イソプロピルシクロヘキサノール、2-sec-ブチルシクロヘキサノン、酢酸スチルアリル、ゲラニルニトリル、酢酸ヘキシル、アルファ-イオノン、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、イソ-シクロシトラール、ジヒドロイソジャスモン、イソ-メントン、イソ-ペンチレート、イソ-プレゴール、シスジャスモン、左旋性カルボン、フェニルアセトアルデヒドグリセリルアセタール、カルビン(carbinic)酸3-ヘキセニルメチルエーテル、1-メチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン、リナロール、リナロールオキシド、ペンタン酸2-エチルエチルエステル、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、メントール、メントン、メチルアセトフェノン、メチルアミルケトン、安息香酸メチル、アルファ-メチルケイ皮アルデヒド、メチルヘプテノン、メチルヘキシルケトン、メチルパラクレゾール、酢酸メチルフェニル、サリチル酸メチル、ネラール、ネロール、4-tert-ペンチル-シクロヘキサノン、パラ-クレゾール、酢酸パラ-クレシル、パラ-t-ブチルシクロヘキサノン、パラ-トルイルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、酢酸フェニルエチル、フェニルエチルアルコール、酪酸フェニルエチル、ギ酸フェニルエチル、イソ酪酸フェニルエチル、プロピオン酸フェニルエチル、酢酸フェニルプロピル、フェニルプロピルアルデヒド、テトラヒドロ-2,4-ジメチル-4-ペンチル-フラン、4-メチル-2-(2-メチル-1-プロペニル)テトラヒドロピラン、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、プロピオン酸スチルアリル、スチレン、4-メチルフェニルアセトアルデヒド、テルピネオール、テルピノレン、テトラヒドロ-リナロール、テトラヒドロ-ミルセノール、トランス-2-ヘキセナール、酢酸ベルジルやViridine等が挙げられる。
香料組成物には、1種類の香料成分を配合してもよく、2種類以上の香料成分を配合してもよい。
なお、(G)成分の香料組成物と、前記(E)成分の香料組成物とは同一であってよく、異なっていてもよい。(G)成分として揮発性の高い香料成分を用い、(E)成分として揮発性の低い香料成分を用いると、香りの持続効果をより高めることができる。
【0061】
壁物質としては、液体柔軟剤分野で香料のカプセル化材料として一般的に用いられているものを特に制限はなく用いることができる。例えば、壁物質は高分子物質から構成され、具体的には、ゼラチンや寒天等の天然系高分子、油脂やワックス等の油性膜形成物質、ポリアクリル酸系、ポリビニル系、ポリメタクリル酸系、メラミン系、ウレタン系等の合成高分子物質などを挙げることができ、それら1種を単独又は2種以上を適宜併用することができる。
カプセル化香料が破壊された際の発香性の観点から、壁物質は、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂或いは尿素-ホルムアルデヒド樹脂からなるアミノプラストポリマー、ポリアクリル酸系或いはポリメタクリル酸系ポリマーであることが好ましい。特開2010-520928号公報に記載されているようなアミノプラストポリマーが特に好ましい。具体的には、ポリアミン由来の部分/芳香族ポリフェノール由来の部分/メチレン単位、ジメトキシメチレン及びジメトキシメチレンを有するアルキレンおよびアルキレンオキシ部分からなるターポリマーであることが好ましい。
【0062】
(G)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0063】
(G)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0064】
(G)成分の含量((G)成分中の香料の量としての含量)は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、香料の量として、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
【0065】
〔(H)成分:非イオン性グルカン〕
(H)成分は、重量平均分子量が1万から200万の範囲にある非イオン性グルカンである。(H)成分は液体柔軟剤組成物の安定性の更なる向上や、繊維製品へ消臭性や防臭性を付与するために配合する。
グルカンとは、D-グルコピラノースの縮重合体であり、デンプン、グリコーゲン、デキストリン、セルロース等を含む。C1位の立体配置によりα-グルカンとβ-グルカンに分けられ、また、グリコシド結合の位置により1→3、1→4、1→6結合が区別される。
非イオン性グルカンは直鎖でも分岐鎖でもよい。また、非イオン性グルカンは鎖状構造でもよく、更に環状構造を有していてもよい。
(H)成分の具体例としては、高分子デキストリン(三和澱粉工業株式会社。商品名:サンデック#30)や、環状構造を有し、かつ分岐構造を有する非イオン性グルカン(例えば、環状構造保有分岐状グルカン(特開2012-120471号公報に記載)、高度分岐環状デキストリン(グリコ栄養食品株式会社製。商品名:クラスターデキストリン))等が挙げられる。
【0066】
尚、(H)成分としてのグルカンは非イオン性の化合物であり、グルカンの一部が変性されたカチオン性を有するカチオン化デンプンやカチオン化セルロース等は(H)成分に該当しない。
環状構造を有し、かつ分岐構造を有する非イオン性グルカンは、特開平8-134104号に記載される方法や、Takataら、Carbohydrate Research、295、91-101、1996に記載の方法等により製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
高度分岐環状デキストリンとは、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から10000の範囲にあるグルカンであって、ここで、内分岐環状構造部分とは、α-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、外分岐構造部分とは、該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である、グルカンである。
高度分岐環状デキストリンは、重量平均分子量が3万から100万程度であり、分子内に環状構造を1つ有し、さらにその環状部分に多数のグルカン鎖が結合した重量平均重合度2500程度のデキストリンを主に含む。
高度分岐環状デキストリンの内分岐環状構造部分は10~100個程度のグルコースで構成されており、この内分岐環状構造部分に、非環状の多数の分岐グルカン鎖からなる外分岐構造部分が結合している。
【0068】
高度分岐環状デキストリンの重合度は、例えば50~5000の範囲にある。
高度分岐環状デキストリンの内分岐環状構造部分の重合度は、例えば10~100の範囲である。
高度分岐環状デキストリンの外分岐構造部分の重合度は、例えば40以上である。
高度分岐環状デキストリンの外分岐構造部分の各単位鎖の重合度は、例えば平均で10~20である。
【0069】
高度分岐環状デキストリンは、例えば、デンプンを原料として、ブランチングエンザイムという酵素を作用させて製造される。原料であるデンプンは、グルコースがα-1、4-グルコシド結合によって直鎖状に結合したアミロースと、α-1,6-グルコシド結合によって複雑に分岐した構造をもつアミロペクチンからなり、アミロペクチンは、クラスター構造が多数連結された巨大分子である。使用酵素であるブランチングエンザイムは、動植物、微生物に広く分布するグルカン鎖転移酵素であり、アミロペクチンのクラスター構造の継ぎ目部分に作用し、これを環状化する反応を触媒する。
より詳細には、高度分岐環状デキストリンは、特開平8-134104に記載の、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する、重合度が50から10000の範囲にあるグルカンである。本明細書において、高度分岐環状デキストリンは、特開平8-134104の記載を参酌して理解され得る。
【0070】
環状構造保有分岐状グルカンとは、環状構造と、α-1,6結合およびα-1,4結合に基づく少なくとも1つの分岐状構造とを有し、その環状構造を構成する糖鎖中に少なくとも1つのα-1,6結合が存在している構造を有するグルカンである。
環状構造保有分岐状グルカンの分岐頻度は、例えば8%以上である。環状構造保有分岐状グルカンの分岐頻度は、α-1,6分岐の割合によって示される。α-1,6分岐の割合は例えば約10%以上、約11%以上、約12%以上、約13%以上、約14%以上、約15%以上、約16%以上、約17%以上、約20%以上などであり得る。α-1,6分岐の割合に上限はないが、例えば、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下などであり得る。
分岐頻度は、以下の式によって計算される:
分岐頻度(%)={(分岐数)/(分子全体のグルコース単位数)}×100
【0071】
環状構造保有分岐状グルカンの重量平均分子量は、好ましくは約3万以上であり、さらに好ましくは約5万以上であり、特に好ましくは約10万以上であり、また、好ましくは約50万以下であり、さらに好ましくは約30万以下であり、特に好ましくは約20万以下である。
環状構造保有分岐状グルカン中の環状構造部分の平均重合度は、好ましくは約10以上であり、より好ましくは約15以上であり、さらに好ましくは約20以上であり、また、好ましくは約500以下であり、より好ましくは約300以下であり、さらに好ましくは約100以下である。
環状構造保有分岐状グルカン中の分岐構造部分の平均重合度は、好ましくは約40以上であり、より好ましくは約100以上であり、さらに好ましくは約300以上であり、さらにより好ましくは約500以上であり、また、好ましくは約4×103以下であり、より好ましくは約3×103以下であり、さらに好ましくは約2×103以下であり、さらにより好ましくは約1×103以下である。
【0072】
環状構造保有分岐状グルカンの環状構造部分のα-1,6-グルコシド結合は少なくとも1個あればよく、例えば1個以上、5個以上、10個以上などであり得、例えば約200個以下、約50個以下、約30個以下、約15個以下、約10個以下などであり得る。
環状構造保有分岐状グルカンは、1種類の重合度のものを単独で用いてもよいし、種々の重合度のものの混合物として用いてもよい。好ましくは、環状構造保有分岐状グルカンの重合度は、最大の重合度のものと最小の重合度のものとの重合度の比が約100以下、より好ましくは約50以下、さらにより好ましくは約10以下である。
環状構造保有分岐状グルカンは、好ましくは、分岐グルカン構造の一部が環を形成している。ここで、環状構造部分とはα-1,4-グルコシド結合とα-1,6-グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして分岐構造部分とは、該環状構造部分に結合した非環状構造部分である。この分岐構造部分の各単位鎖の重合度は、好ましくは約2以上であり、より好ましくは約4以上であり、さらに好ましくは約6以上であり、また、好ましくは約20以下であり、より好ましくは18以下であり、さらに好ましくは15以下である。
【0073】
環状構造保有分岐状グルカンの平均重合度は、好ましくは約50以上であり、より好ましくは約70以上であり、さらに好ましくは約100以上であり、最も好ましくは約150以上であり、また、好ましくは約5×103以下であり、より好ましくは約4×103以下であり、さらに好ましくは約3×103以下であり、最も好ましくは約2×103以下である。
環状構造保有分岐状グルカンの分岐の数(すなわち、α-1,6-グルコシド結合の数)は、好ましくは約10個以上であり、より好ましくは約15個以上であり、さらに好ましくは約20個以上であり、また、好ましくは約1000個以下であり、より好ましくは約800個以下であり、さらに好ましくは約500個以下である。
環状構造保有分岐状グルカンにおいては、α-1,6-グルコシド結合の数に対するα-1,4-グルコシド結合の数の比(「α-1,6-グルコシド結合の数」:「α-1,4-グルコシド結合の数」)は、好ましくは1:3~1:13であり、より好ましくは1:4~1:12であり、さらに好ましくは1:5~1:10であり、さらに好ましくは1:5~1:9である。
環状構造保有分岐状グルカンは、
i)基質である分岐状グルカンにブランチングエンザイムを作用させ、次いで4-α-グルカノトランスフェラーゼを作用させるか;
ii)基質である分岐状グルカンに4-α-グルカノトランスフェラーゼを作用させ、次いでブランチングエンザイムを作用させるか;または
iii)基質である分岐状グルカンにブランチングエンザイムおよび4-α-グルカノトランスフェラーゼを同時に作用させる
ことにより製造される。
より詳細には、環状構造保有分岐状グルカンは、特開2012-120471号に記載のものである。本明細書において、環状構造保有分岐状グルカンは、特開2012-120471号の記載を参酌して理解され得る。
【0074】
(H)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0075】
(H)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0076】
(H)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、0.01~5質量%、好ましくは0.05~3質量%、更に好ましくは0.2~2質量%である。
【0077】
〔(I)成分:(B)成分以外の抗菌性化合物〕
(I)成分は、液体柔軟剤組成物の保存性を高めるために配合する。
(I)成分としては、液体柔軟剤分野において公知の成分を特に制限なく使用できる。具体例としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、8-オキシキノリン、ビグアニド系化合物(例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド)、塩酸クロロヘキシジンや、ポリリジン等が挙げられる。これらの中でも、塩化ベンザルコニウム、ビグアニド系化合物や、塩酸クロロヘキシジンが好ましい。
【0078】
(I)成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能である、又は、調製可能である。
【0079】
(I)成分は単一種類を使用してもよく、複数種類を併用してもよい。
【0080】
(I)成分の含量は、配合目的を達成できる限り特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは0.001~5質量%である。
【0081】
〔水〕
液体柔軟剤組成物は、好ましくは水を含む水性組成物である。
水としては、水道水、イオン交換水、純水や、蒸留水等を使用できる。なかでもイオン交換水が好適である。
水の含量は特に限定されないが、液体柔軟剤組成物の総質量に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。含量が50質量%以上であると、ハンドリング性がより良好となる。
【0082】
〔液体柔軟剤組成物のpH〕
液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(A)成分の分子中に含まれるエステル基の加水分解を抑制する観点から、25℃におけるpHを1~6の範囲に調整することが好ましく、2~4の範囲に調整することがより好ましい。pH調整剤として、任意の無機または有機の酸およびアルカリを使用することができる。
【0083】
〔液体柔軟剤組成物の粘度〕
液体柔軟剤組成物の粘度は、その使用性を損なわない限り特に限定されないが、25℃における粘度が800mPa・s未満であることが好ましい。保存経日による粘度上昇を考慮すると、製造直後の液体柔軟剤組成物の25℃における粘度が500mPa・s未満であるのがより好ましく、300mPa・s未満であるのがさらに好ましい。このような範囲にあると、洗濯機への投入の際のハンドリング性等の使用性が良好である。
液体柔軟剤組成物の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定できる。
【0084】
〔製造方法〕
液体柔軟剤組成物は、公知の方法、例えば主剤としてカチオン界面活性剤を用いる従来の液体柔軟剤組成物の製造方法と同様の方法により製造できる。
例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分を含む油相と、(F)成分を含む水相とを、(A)成分の融点以上の温度条件下で混合して乳化物を調製し、その後、得られた乳化物に必要に応じて他の成分((D)成分、(G)成分、(H)成分、(I)成分など)を添加、混合することにより製造することができる。
尚、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分及び(I)成分の添加については、上記記載の添加方法に限定されない。
【0085】
〔液体柔軟剤組成物の使用方法〕
液体柔軟剤組成物を用いた繊維製品の処理方法は特に制限されず、従来の液体柔軟剤と同様に使用できる。例えば、洗濯のすすぎの段階ですすぎ水に液体柔軟剤組成物を溶解させて処理を行う、又はたらいのような容器中で液体柔軟剤組成物を水に溶解させ、更に繊維製品を入れて浸漬処理する方法がある。いずれも場合も適度な濃度に希釈して使用するが、浴比(繊維製品に対する処理液の重量比)は3~100倍、特に5~50倍であることが好ましい。具体的には、全使用水量に対して、(A)成分の濃度が好ましくは0.01ppm~1000ppm、さらに好ましくは0.1ppm~300ppmとなるような量で使用される。
液体柔軟剤組成物で処理可能な繊維製品の種類は特に限定されず、例えば、衣類、カーテン、ソファー、カーペット、タオル、ハンカチ、シーツや、マクラカバー等が挙げられる。その素材も、綿や絹、ウール等の天然繊維でもよいし、ポリエステル等の化学繊維でもよい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において、各成分の配合量はすべて質量%(指定のある場合を除き、純分換算)を示す。
【0087】
〔(A)成分:カチオン界面活性剤〕
下記のA-1又はA-3を使用した。
A-1:カチオン界面活性剤(特開2018-59242号公報の実施例で使用した第4級アンモニウム塩組成物(A-3))。A-1は、一般式(A1-4)、(A1-5)及び(A1-6)で表される化合物(各式中、R9は炭素数15~17のアルキル基及びアルケニル基である)をジメチル硫酸で4級化したものを含む組成物である。A-1の炭化水素基の不飽和率は40質量%であった。また、A-1のトリ体比率は20%であった。
A-3:カチオン界面活性剤(特表2013-525617号公報の実施例Iに記載の化合物)。A-3のトリ体は0%であった。
【0088】
〔(B)成分:フェノール構造を有する抗菌性化合物〕
下記のB-1~B-2を使用した。
B-1:ダイクロサン(TINOSAN HP100(4,4’-ジクロロ-2-ヒドロキシジフェニルエーテルの水溶液)、BASF製)。B-1は、一般式(3)(式中、Xは酸素原子であり、aは1であり、Yは塩素原子であり、bは1であり、cは1であり、dは0であり、mが0であり、nが0である)で表される化合物である。
B-2:トリクロサン(IRGASAN DP300(5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノールの水溶液)、BASF製)。B-2は、一般式(3)(式中、Xは酸素原子であり、aは1であり、Yは塩素原子であり、bは2であり、cは1であり、dは0であり、mが0であり、nが0である)で表される化合物である。
【0089】
〔(C)成分:ノニオン界面活性剤〕
下記のC-1~C-2を使用した。
C-1:ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテルEO60モル(一級イソトリデシルアルコール(C13)の平均EO60モル付加物に相当)
C-2:ポリオキシエチレンラウリルエーテルEO20モル(ラウリルアルコール(C12)の平均EO20モル付加物に相当)
【0090】
〔(D)成分:無機塩〕
下記のD-1を使用した。
D-1:塩化カルシウム(供給者:トクヤマ。商品名:粒状塩化カルシウム)。
【0091】
〔(E)成分:カプセル化されていない香料組成物〕
下記のE-1~E-4を使用した。
【0092】
〔(F)成分:防腐剤〕
下記のF-1~F-2を使用した。
F-1:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(BIT) (商品名:Nipacide BIT 20(クラリアントジャパン株式会社)
F-2:イソチアゾロン液(ダウ・ケミカル日本株式会社 商品名:ケーソンCG-ICP)
【0093】
〔(G)成分:カプセル化香料〕
下記のG-1を使用した。
G-1:カプセル化香料(供給者:ジボダン株式会社。商品名:GreenBreeze)
【0094】
〔(H)成分:非イオン性グルカン〕
下記のH-1を使用した。
H-1:高度分岐環状デキストリン(グリコ栄養食品株式会社製。商品名:クラスターデキストリン)
【0095】
〔液体柔軟剤組成物の調製方法〕
後記の表1に示す組成を有する液体柔軟剤組成物を調製した。表1中、各成分の数値の単位は、液体柔軟剤組成物の総質量に対する質量%である。
表1中の「B/A」は(B)成分の(A)成分に対する質量比を示す。
表1中の「C/B」は(C)成分の(B)成分に対する質量比を示す。
表1中の「D/B」は(D)成分の(B)成分に対する質量比を示す。
【0096】
液体柔軟剤組成物を、ガラス容器(内径100mm、高さ150mm)と攪拌機(アジターSJ型、島津製作所製)とを用い、次の手順により調製した。
まず、(A)成分、(B)成分、(C)成分の一部及び(E)成分を混合攪拌して油相混合物を得た。
一方、(F)成分をバランス用イオン交換水に溶解して水相混合物を得た。バランス用イオン交換水の質量は、980gから油相混合物と(C)成分の残部と、(G)成分との合計量を差し引いた残部に相当した。
次に(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。水相混合物の分割比率は30:70(質量比)とし、攪拌は回転速度1,000rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。
しかる後、(C)成分の残部、(D)成分、(G)成分及び(H)成分を添加し、必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学)又は水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学)を適量添加してpH3.0(25℃)に調整し、更に全体質量が1,000gになるようにイオン交換水を添加して、目的の液体柔軟剤組成物を得た。製造直後の各液体柔軟剤組成物の粘度(25℃)は10~500mPa・sの範囲であった。
【0097】
〔液体柔軟剤組成物の評価〕
調製した液体柔軟剤組成物の「部屋干し臭の抑制効果」と「分離安定性」を評価した。
【0098】
〔部屋干し臭の抑制効果〕
1.評価用布の前処理
評価用布(市販の綿タオル)を、二槽式洗濯機(三菱電機製CW-C30A1-H)を用いて、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で3回前処理した(洗剤標準使用量、浴比30倍、45℃の水道水、洗浄10分間→注水すすぎ10分間を2回)。
【0099】
2.洗浄及び柔軟処理
前処理後の評価用布を30代男性に1日使用してもらったものを試験布とした。試験布を、二槽式洗濯機(三菱電機製CW-C30A1-H)を用いて、市販洗剤「トッププラチナクリア」(ライオン社製)で10分間洗浄し(標準使用量、標準コース、浴比20倍、25℃の水道水使用)、1回目のすすぎ(3分間)を行い、続く2回目のすすぎ時に液体柔軟剤組成物にて3分間の柔軟処理(試験布1kgに対して、液体柔軟剤組成物5mL、浴比20倍、25℃の水道水使用)を行った。柔軟処理を行わなかったものを対照とした。洗浄処理後及び各すすぎ処理後に脱水を1分間行った。柔軟処理後、濡れた状態の試験布を室内(30℃、100%RH)で6時間放置(部屋干し)した。
【0100】
3.抑制効果の評価
部屋干し後の試験布の臭いを、官能一対比較による以下の評価基準に従い評価した。評価は、専門パネラー10名で行った。
<評価基準>
+2:対照よりもはっきりと良好である。
+1:対照よりもやや良好である。
0:対照とほぼ同じである。
-1:対照の方がやや良好である。
-2:対照の方がはっきりと良好である。
液体柔軟剤組成物の部屋干し臭抑制効果を、専門パネラー10名の平均点(小数点第1位まで算出)に基づき、下記判定基準に従って判定した。結果を表1の「部屋干し臭」欄に示す。○又は◎を商品価値上合格であると判定した。
<判定基準>
◎:1.5点以上2.0点以下
○:1.0点以上1.5点未満
△:0.5点以上1.0点未満
×:0点以上0.5点未満
【0101】
〔分離安定性の評価〕
液体柔軟剤組成物80mLを、軽量PSガラスビン(PS-No.11、田沼硝子工業所製)に入れて密栓したものを評価サンプルとした。評価サンプルを25℃で6ヶ月保管した。保管後の評価サンプルの状態を以下の評価基準に従い目視評価した。評価は、専門パネラー8名で行った。結果を表1の「分離安定性」欄に示す。○、◎又は◎◎を商品価値上合格であると評価した。
<評価基準>
◎◎:保存前のサンプルと比較して、同等
◎:上層に極僅かに半透明層が確認できる
○:上層に僅かに半透明層が確認できる
△:上層に明らかに半透明層が確認できる
×:上層に明らかに透明層が確認できる
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、柔軟剤分野で利用可能である。
【0103】