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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】酸性消臭組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/01 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020040077
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137482
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】大島 務
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】市村 由美子
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-336337(JP,A)
【文献】特開2011-021195(JP,A)
【文献】特開2006-167202(JP,A)
【文献】特開2004-089358(JP,A)
【文献】特開2014-009349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機酸、無機酸、有機酸塩、及び無機酸塩からなる群より少なくとも有機酸を含んで選択される1種又は2種以上と、
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、及びアルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上と
を少なくとも水に混合してなり、
前記有機酸は、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、2-メチルリンゴ酸、イソクエン酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、2-メチルマロン酸、及びジグリコール酸からなる群より選択される1種又は2種以上であり、
前記有機酸塩は、前記有機酸の金属塩であり、
前記有機酸の配合量が5重量%以上であり、
下記式(I)で定義されるδが1.5~50である酸性消臭組成物。
(数1)
δ=[(A)成分の重量%]/[(B)成分の重量%] (I)
【請求項2】
(A)有機酸、無機酸、有機酸塩、及び無機酸塩からなる群より少なくとも有機酸を含んで選択される1種又は2種以上と、
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、及びアルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上と
を少なくとも水に混合してなり、
前記有機酸は、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、2-メチルリンゴ酸、イソクエン酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、2-メチルマロン酸、及びジグリコール酸からなる群より選択される1種又は2種以上であり、
前記有機酸塩は、前記有機酸の金属塩であり、
pHが1.5~3.5であり、
下記式(I)で定義されるδが1.5~50である酸性消臭組成物。
(数1)
δ=[(A)成分の重量%]/[(B)成分の重量%] (I)
【請求項3】
水で10~1000倍に希釈して使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸性消臭組成物。
【請求項4】
記有機酸の配合量が5重量%以上であることを特徴とする請求項2に記載の酸性消臭組成物。
【請求項5】
前記有機酸の配合量が10重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の酸性消臭組成物。
【請求項6】
前記(A)成分は、有機酸及び有機酸塩であり、
前記(B)成分は、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、及びアルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の酸性消臭組成物。
【請求項7】
前記有機酸は、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、2-メチルリンゴ酸、及びイソクエン酸からなる群より選択される1種又は2種以上であり、
前記有機酸塩は、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、グリコール酸塩、2-ヒドロキシ酪酸塩、3-ヒドロキシ酪酸塩、グリセリン酸塩、酒石酸塩、2-メチルリンゴ酸塩、及びイソクエン酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の酸性消臭組成物。
【請求項8】
トイレ用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の酸性消臭組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果に優れる酸性消臭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
使用時に水で希釈する製品は大量に輸送する際や、保管する際において省スペース化を実現できることから、除菌、洗浄、消臭等の様々な分野で利用されている(特許文献1、2)。また、消臭剤は硫化水素、メルカプタン類等の酸性物質を消臭可能な塩基性消臭剤や、アンモニアやアミン類等の塩基性物質を消臭可能な酸性消臭剤等が知られている。なかでも、酸性消臭剤を水で希釈して使用する製品の場合、希釈前の原液が強い酸性となるため、その保管安定性が課題とされていた。さらに、実際に希釈して使用した際に、界面活性剤や他の成分の変質等により、対象悪臭成分に対する十分な消臭効果が得られないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-2337号公報
【文献】特開2016-169378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果に優れた酸性消臭剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、(A)有機酸、無機酸、有機酸塩、無機酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上と、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、アルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上と、を水に混合してなる酸性消臭組成物である。
【0006】
また本発明は、上記構成の酸性消臭剤組成物において、前記酸性消臭組成物のpHは0.5~4.5であることを特徴としている。
【0007】
また本発明は、上記構成の酸性消臭剤組成物において、水で10~1000倍に希釈して使用されることを特徴としている。
【0008】
また本発明は、上記構成の酸性消臭剤組成物において、前記(A)成分は、下記式(I)で定義されるδが0.3~250であることを特徴としている。
(数1)
δ=[(A)成分の重量%]/[(B)成分の重量%] (I)
【0009】
また本発明は、上記構成の酸性消臭剤組成物において、前記(A)成分は、ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩であることを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の酸性消臭剤組成物において、トイレ用であることを特徴としている。
【0011】
本発明の第1の構成によれば、(A)有機酸、無機酸、有機酸塩、無機酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上と、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、アルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上と、を水に混合することにより、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果に優れた酸性消臭組成物となる。
【0012】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の酸性消臭組成物のpHを0.5~4.5とすることにより、pHが0.5未満の強酸性の酸性消臭組成物や、pHが4.5を上回る弱酸性の酸性消臭組成物に比べて、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果に優れた酸性消臭組成物となる。
【0013】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の酸性消臭組成物において、水で10~1000倍に希釈して使用されることにより、より経済的に優れた酸性消臭組成物となる。
【0014】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の酸性消臭組成物において、下記式(I)で定義されるδが0.3~250とすることにより、対象悪臭成分の消臭効果により優れた酸性消臭組成物となる。
(数2)
δ=[(A)成分の重量%]/[(B)成分の重量%] (I)
【0015】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の酸性消臭組成物において、(A)成分として、ヒドロキシカルボン酸を用いることにより、対象悪臭成分の消臭効果により優れた酸性消臭組成物となる。
【0016】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の酸性消臭組成物において、トイレ用であることにより、トイレで問題となる、し尿から発生するアンモニア臭を、より効果的に消臭することができる酸性消臭組成物となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の酸性消臭組成物について詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具現化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
本発明の酸性消臭組成物は、(A)有機酸、無機酸、有機酸塩、無機酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上と、(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、アルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上と、を水に混合して水溶液としたものである。
【0019】
本発明の酸性消臭組成物に配合される(A)成分は、有機酸、無機酸、有機酸塩、無機酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上であれば、特に限定されない。また、酸性消臭組成物中の(A)成分の配合量は、特に限定されないが、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果に優れるため、1~45重量%が好ましく、3~40重量%がより好ましく、6~30重量%であることがさらに好ましく、10~20重量%であることがとりわけ好ましい。(A)成分の配合量が1重量%未満であると、悪臭成分の消臭効果が低下するおそれがあり、(A)成分の配合量が45重量%を上回ると、高温条件下もしくは低温条件下における保管安定性が低下するおそれがある。
【0020】
(A)成分のうち、有機酸及び/又は無機酸の配合量は、特に限定されないが、対象悪臭成分の消臭効果に優れるため、1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。また、有機酸塩及び/又は無機酸塩の配合量は、特に限定されないが、対象悪臭成分の消臭効果が優れることに加えて、塩素ガスの発生を抑制するので、1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましい。
【0021】
有機酸としては、特に限定されないが、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、2-メチルリンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、マロン酸、2-メチルマロン酸、アゼライン酸、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、テトラメチルコハク酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘプタンジカルボン酸、1,2-シクロオクタンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、グリシン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸等の脂肪族有機酸、エチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジェンコール酸等のアミノポリカルボン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、パラヒドロキシ安息香酸及びサリチル酸等の芳香族有機酸等が挙げられる。これら有機酸のなかでも、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、酒石酸、2-メチルリンゴ酸、イソクエン酸、パラヒドロキシ安息香酸及びサリチル酸等のヒドロキシカルボン酸が酸性消臭剤組成物の保管安定性の面から好ましく、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸は食品添加物にも指定されており、安全性の面でより好ましい。これらの有機酸は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。なお、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も有機酸に含まれる。
【0022】
無機酸としては、特に限定されないが、塩酸、硫酸、スルファミン酸等が挙げられる。これらの無機酸は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0023】
有機酸塩としては、特に限定されないが、有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の金属塩が挙げられ、具体的には、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸三カリウム一水和物等のクエン酸塩、乳酸ナトリウム等の乳酸塩、DL-リンゴ酸二ナトリウム1/2水和物等のリンゴ酸塩、グリコール酸ナトリウム等のグリコール酸塩、ヒドロキシ酪酸カリウム等のヒドロキシ酪酸塩、DL-2-ヒドロキシ酪酸ナトリウム等の2-ヒドロキシ酪酸塩、3-ヒドロキシ酪酸ナトリウム等の3-ヒドロキシ酪酸塩、D-グリセリン酸ナトリウム等のグリセリン酸塩、酒石酸ナトリウム等の酒石酸塩、D-2-メチルリンゴ酸二ナトリウム等の2-メチルリンゴ酸塩、DL-イソクエン酸三ナトリウム等のイソクエン酸塩、安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩、酢酸ナトリウム等の酢酸塩、コハク酸二ナトリウム等のコハク酸塩、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸塩、プロピオン酸ナトリウム等のプロピオン酸塩、酪酸ナトリウム等の酪酸塩、吉草酸ナトリウム等の吉草酸塩、カプロン酸カリウム等のカプロン酸塩、フタル酸水素カリウム等のフタル酸塩、シュウ酸カリウム一水和物等のシュウ酸塩、マロン酸二ナトリウム等のマロン酸塩、アジピン酸二ナトリウム等のアジピン酸塩、グルタル酸二ナトリウム等のグルタル酸塩、マレイン酸二ナトリウム等のマレイン酸塩、フマル酸一ナトリウム等のフマル酸塩等、パラヒドロキシ安息香酸ナトリウム等のパラヒドロキシ安息香酸、サリチル酸カリウム等のサリチル酸塩等が挙げられる。これら有機酸塩のなかでも、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、グリコール酸塩、2-ヒドロキシ酪酸塩、3-ヒドロキシ酪酸塩、グリセリン酸塩、酒石酸塩、2-メチルリンゴ酸塩、イソクエン酸塩、パラヒドロキシ安息香酸塩及びサリチル酸塩等のヒドロキシカルボン酸塩が好ましく、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩がより好ましい。これらの有機酸塩は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。なお、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物も有機酸塩に含まれる。
【0024】
無機酸塩としては、特に限定されないが、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩等が挙げられる。これらの無機酸塩は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0025】
本発明の酸性消臭組成物に配合される(B)成分は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、アルキルアミンオキシド等の界面活性剤である。これらの界面活性剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。酸性消臭組成物中の(B)成分の配合量は、特に限定されないが、酸性消臭組成物の保管安定性と、製造コストに優れるため、0.12~30重量%であることが好ましく、0.15~10重量%であることがより好ましく、0.30~5重量%であることがさらに好ましく、0.50~3重量%であることがとりわけ好ましい。(B)成分の配合量が0.12重量%未満であると、高温条件下もしくは低温条件下における保管安定性が低下するおそれがあり、(B)成分の配合量が30重量%を上回ると、製造コストが高くなるため、(B)成分の配合量に見合った効果が得られないおそれがある。
【0026】
(B)成分のうち、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、特に限定されないが、平均酸化エチレン付加モル数が15~65のものが好ましく、25~55のものがより好ましく、35~45のものがさらに好ましい。具体的には、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油等が挙げられ、ブラウノンRCW-20(青木油脂工業株式会社製)、ブラウノンRCW-40(青木油脂工業株式会社製)、ブラウノンRCW-50(青木油脂工業株式会社製)、ブラウノンRCW-60(青木油脂工業株式会社製)、エマレックスHC-60(日本エマルジョン株式会社製)、ニッコールHCО-60(日光ケミカルズ株式会社製)を使用することができる。これら、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のうち、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油が好ましい。
【0027】
(B)成分のうち、オレフィンスルホン酸もしくはその塩としては、特に限定されないが、炭素数10~20であり、二重結合は内部でも末端でも良い。オレフィンスルホン酸またはオレフィンスルホン酸塩であり、前記オレフィンスルホン酸塩における「対塩基」としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。具体的には、α-オレフィンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸カリウム等が挙げられ、より具体的には、α-テトラデセンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、リポランLJ-441(ライオン株式会社製)、リポランLJ-440(ライオン株式会社製)、KリポランPJ-400CJ(ライオン株式会社製)等を使用することができる。
【0028】
(B)成分のうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩としては、特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であり、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩における「対塩基」としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。これらのうち、平均酸化エチレン付加モル数が1~30モルのものが好ましく、また、アルキル基は、直鎖又は分岐鎖の何れでもよく、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは8~22である。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸マグネシウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ジエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸モノエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸トリエタノールアミン及びポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられ、シノリンSPE-1350(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1100(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1150(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1200K(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1200N(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1250(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1300(新日本理化株式会社製)、シノリンSPE-1300N(新日本理化株式会社製)、エマール270J(花王株式会社製)、エマール327(花王株式会社製)等を使用することができる。これらポリオキシエチレンアルキル硫酸またはその塩の中でも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンもしくはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムが好ましい。
【0029】
(B)成分のうち、アミノ酢酸ベタインとしては、特に限定されないが、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油アルキルメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられ、MITAINE L(ミウォン商事株式会社製)等を使用することができる。これらアミノ酢酸ベタインの中でも、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが好ましい。
【0030】
(B)成分のうち、アミドプロピルベタインとしては、特に限定されないが、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、MITAINE LPB(N)(ミウォン商事株式会社製)等を使用することができる。これらアミドプロピルベタインの中でも、ラウリン酸アミドプロピルベタインが好ましい。
【0031】
(B)成分のうち、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテインとしては、特に限定されないが、コカミドプロピルヒドロキシスルテイン、エルカミドプロピルヒドロキシスルテイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルテイン、ミリスタミドプロピルヒドロキシスルテイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルテイン、タロウアミドプロピルヒドロキシスルテイン等が挙げられ、MIRATAINE CBS(ソルベイ日華株式会社製)等を使用することができる。これらアルキルアミドプロピルヒドロキシスルテインの中でも、コカミドプロピルヒドロキシスルテインが好ましい。
【0032】
(B)成分のうち、アルキルアミンオキシドとしては特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド等が挙げられる。アルキルジメチルアミンオキシドとしては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、オレイルジメチルアミンオキシド等が挙げられ、カデナックス DM12D-W(C)(ライオン株式会社製)、カデナックス DMC-W(ライオン株式会社製)等を使用することができる。これらアルキルアミンオキシドの中でも、ヤシアルキルジメチルアミンオキシドが好ましい。
【0033】
本発明の酸性消臭組成物は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0034】
本発明の酸性消臭組成物のpHは、0.5~4.5とすることが好ましく、1.0~4.0とすることがより好ましく、1.5~3.5とすることがさらに好ましい。これにより、pHが0.5未満の強酸性の酸性消臭組成物や、pHが4.5を上回る弱酸性の酸性消臭組成物に比べて、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果に優れた酸性消臭組成物となる。
【0035】
本発明の酸性消臭組成物は、原液のままで消臭に使用することもできるが、水で10~1000倍に希釈して使用されることが好ましい。これにより、より経済的に優れた酸性消臭組成物となる。希釈に使用する水は、特に限定されないが、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0036】
本発明の酸性消臭組成物は、(A)成分と(B)成分が、下記式(I)で定義されるδが0.3~250を満たすように配合されており、δが1.0~150を満たすように配合されていることが好ましく、δが1.5~100を満たすように配合されていることがより好ましく、δが5~50を満たすように配合されていることがさらに好ましい。δが上記範囲を満たすことにより、保管安定性に優れ、対象悪臭成分の消臭効果がより一層優れるものとなる。
(数3)
δ=[(A)成分の重量%]/[(B)成分の重量%] (I)
【0037】
本発明の酸性消臭組成物は、さらに、(C)成分として色素を配合することができる。色素の種類は特に限定されないが、食用色素や法定色素等が挙げられ、青色色素、赤色色素、黄色色素、緑色色素等が挙げられる。青色色素としては、青色1号、青色2号等が挙げられ、赤色色素としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色103号、赤色104号、赤色105号、赤色106号等が挙げられ、黄色色素としては黄色4号、黄色5号、黄色203号等が挙げられ、緑色色素としては、緑色3号等が挙げられる。本発明の酸性消臭組成物は、これらの色素を配合しても色素が沈殿などを生じることなく、保管安定性に優れ、使用感に優れた酸性消臭組成物となる。これら色素の中でも、発色の良さや溶解性に優れることにより、青色1号、赤色106号、黄色203号が好ましい。
【0038】
本発明の酸性消臭組成物は、その他成分として、殺虫剤、忌避剤、抗菌剤、ウイルス不活性化剤、防藻剤、防カビ剤、防錆剤、溶剤、キレート剤、香料、消臭成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、殺虫効果、忌避効果、抗菌効果、ウイルス不活性化効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしても良い。
【0039】
こうして得られた本発明の酸性消臭組成物は、原液もしくは水で10~1000倍に希釈された希釈液を、トイレ、浴室やキッチンの排水溝、タイル目地、プール等の悪臭が発生しやすい場所、糞便で汚染された場所、糞便の入ったゴミ箱等に塗布あるいはスプレーすることで悪臭を効果的に消臭することができ、特にアンモニア臭やアミン臭が問題となる一般家庭用トイレや簡易トイレ等のトイレで使用することに適している。一般家庭用トイレとしては、水洗トイレや汲み取り式トイレ等が挙げられる。簡易トイレとしては、各種工事現場等での仮設トイレや仮設水洗トイレ、公衆トイレ、電車・列車、船舶、長距離バス等に設置されているトイレ等が挙げられ、その他、所定期間利用予定のユニットハウスに備えたトイレ、災害発生時に使用されるトイレ、介護用のポータブルトイレ等が挙げられるが、これらに何ら限定されない。なかでも、簡易トイレに使用することに適しており、特にタンク式トイレに使用することが適している。例えば、タンク式トイレに備えられた洗浄水タンクに添加し、水で10~1000倍程度に希釈して使用することや、タンク式トイレに備えられた汚物タンクに予め投入して使用することができる。
【0040】
また、本発明の酸性消臭組成物の消臭対象は、特に限定されないが、メチルメルカプタン、硫化水素等の酸性悪臭成分や、アミン類やアンモニア類等の塩基性悪臭成分が挙げられるが、特にアミン類やアンモニア類等の塩基性悪臭成分を効果的に消臭することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術範囲に含まれる。以下、実施例により本発明の効果について更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0042】
[試験液の調製]
(A)クエン酸一水和物、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、(B)MITAINE L(有効成分;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、有効成分濃度30%、ミウォン商事株式会社製)、MITAINE LPB(有効成分;ラウリルアミドプロピルジメチルベタイン、有効成分濃度35%、ミウォン商事株式会社製)、MIRATAINE CBS(有効成分;コカミドプロピルヒドロキシサルテイン、有効成分濃度44%、ソルベイ日華株式会社製)、カデナックスDMC-W(有効成分;ヤシアルキルアミンオキシド、有効成分濃度30%、ライオン株式会社製)、ブラウノンRCW-40(有効成分;ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、有効成分濃度100%、青木油脂工業株式会社製)、シノリンSPE-1350(有効成分;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効成分濃度70%、新日本理化株式会社製)、リポランLJ-441(有効成分;α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、有効成分濃度37%、ライオン株式会社製)(C)青色1号、赤色106号、黄色203号を表1、表2に示す配合割合(重量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として本発明の酸性消臭組成物(本発明1~22)を得た。
【0043】
(A)クエン酸一水和物、クエン酸ナトリウム、(B)DKS NL DASH408(有効成分;ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、有効成分濃度100%、第一工業製薬株式会社製)、ブラウノンEL-1507(有効成分;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、有効成分濃度100%、青木油脂工業株式会社製)、LAS(有効成分;直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、有効成分濃度28.5%、日油株式会社製)、モノゲンY-500T(有効成分;ラウリル硫酸ナトリウム、有効成分濃度100%、第一工業製薬株式会社製)、(C)青色1号を表3に示す配合割合(重量%)で配合し、精製水を加えて100重量%として比較例の酸性消臭組成物(比較例1~4)を得た。
【0044】
[試験例1:酸性消臭組成物の保管安定性試験(50℃)]
本発明1~22及び比較例1~4の酸性消臭組成物を、それぞれ透明ガラス瓶に入れ、50℃の恒温槽に放置した。1週間後、恒温槽から取り出し、液外観を目視にて観察した。液外観を以下の基準で評価した。(試験結果を表1~3に記載する。)
〇:異常なし
△:わずかに白濁、分離または沈殿を生じる
×:白濁、分離または沈殿を生じる
【0045】
[試験例2:酸性消臭組成物の保管安定性試験(0℃)]
本発明1~22及び比較例1~4の酸性消臭組成物を、それぞれ透明ガラス瓶に入れ、0℃の恒温槽に放置した。1週間後、恒温槽から取り出し、液外観を目視にて観察した。液外観を以下の基準で評価した。(試験結果を表1~3に記載する。)
〇:異常なし
△:わずかに白濁、分離または沈殿を生じる
×:白濁、分離または沈殿を生じる
【0046】
[試験例3:色調の安定性試験]
本発明1~22の酸性消臭組成物を、それぞれ透明ガラス瓶に入れ、室温に放置した。1週間後、液外観を目視にて観察した。液外観を以下の基準で評価した。(試験結果を表1~2に記載する。)
◎:異常なし
〇:ほとんど変色が生じない
×:変色を生じる
【0047】
[試験例4:希釈液の消臭効果試験(アンモニア)]
本発明1~22及び比較例1~4の酸性消臭組成物を、それぞれ水で100倍希釈した。三角フラスコに、各希釈液1mLと悪臭溶液(1v/v%アンモニア水溶液)10μLを入れ、蓋をして放置した。10分後、フラスコ内のアンモニア濃度を検知管(株式会社ガステック製)で測定した。希釈液の代わりにイオン交換水1mL入れたときの悪臭濃度をコントロールとし、消臭率を求めた。(試験結果を表1~3に記載する。)
◎:消臭率98%以上
〇:消臭率90~98%
△:消臭率60~90%
×:消臭率60%未満
【0048】
試験例1、2及び4の結果から、本発明1~22の酸性消臭組成物はいずれも、原液の低温(0℃)及び高温(50℃)条件下での保管安定性と希釈液の消臭効果に優れることが確認された。なかでも、本発明1~3、5~7、11、13及び16~21は、希釈液の消臭効果において、さらに優れたものであることが確認された。また、試験例3の結果から、(B)成分がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテインからなる群より選択される1種又は2種以上である本発明1~6及び8~22では色調の安定性においても優れたものであった。
【0049】
一方、(B)成分がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレフィンスルホン酸またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルテイン、アルキルアミンオキシドからなる群より選択される1種又は2種以上ではない比較例1~4は、高温条件下での保管安定性(比較例1、2)、あるいは、低温条件下での保管安定性(比較例3、4)の点で好ましくないことが確認された。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
[試験例5:酸性消臭組成物の消臭効果試験(アンモニア)]
三角フラスコに、本発明1もしくは本発明14の酸性消臭組成物1mLと悪臭溶液(1v/v%アンモニア水溶液)10μLを入れ、蓋をして放置した。10分後、フラスコ内のアンモニア濃度を検知管(株式会社ガステック製)で測定した。希釈液の代わりにイオン交換水1mL入れたときの悪臭濃度をコントロールとし、消臭率を求めた。
試験の結果、本発明1及び本発明14のいずれにおいても、アンモニアに対する消臭率が98%以上であり、優れた消臭効果を確認することができた。
【0054】
本発明の酸性消臭組成物は、低温条件下及び高温条件下のいずれにおいても保管安定性に優れ、希釈液としても優れた消臭効果を有するため、非常に有用な酸性消臭組成物である。