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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】多層滑り軸受けエレメント
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/02 20060101AFI20241219BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20241219BHJP
   F16C 33/14 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 9/04 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 9/01 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 9/10 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 9/05 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20241219BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C22C9/02
F16C33/12 A
F16C33/14 Z
C22C9/04
C22C9/01
C22C9/10
C22C9/05
C22C9/00
C23C26/00 B
C22C9/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020082239
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2020183580
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】A50412/2019
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】315015564
【氏名又は名称】ミバ・グライトラーガー・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エーベルハルト
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス シュナグル
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-001448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/00 -9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料から成る多層滑り軸受けエレメント(1)であって、前記複合材料が支持金属層(3)、さらなる層(4)を有しており、前記さらなる層(4)が、無鉛の銅ベース合金から成る鋳造用合金から形成されており、前記銅ベース合金中に硫化物含有析出物(10)が含有されている形式のものにおいて、
前記銅ベース合金が0.1重量%~3重量%の硫黄と、0.01重量%~4重量%の鉄と、0重量%~2重量%のリンと、亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロム、インジウムから成る第1群からの、合計で0.1重量%~49重量%の少なくとも1種の元素であって、亜鉛の比率が0重量%~45重量%であり、錫の比率が0重量%~40重量%であり、アルミニウムの比率が0重量%~15重量%であり、マンガンの比率が0重量%~10重量%であり、ニッケルの比率が0重量%~10重量%であり、ケイ素の比率が0.01重量%~7重量%であり、クロムの比率が0重量%~2重量%であり、そしてインジウムの比率が0重量%~10重量%である、前記第1群からの少なくとも1種の元素と、
それぞれの比率が0重量%~1.5重量%である銀、マグネシウム、コバルト、チタン、ジルコニウム、砒素、リチウム、イットリウム、カルシウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、アンチモン、セレン、テルル、ビスマス、ニオブ、パラジウムから成る第2群からの少なくとも1種の元素であって、前記第2群の元素の総比率が0重量%~2重量%である、前記第2群からの少なくとも1種の元素と、を含有し、
そして100重量%までの残部を、銅、並びに元素の製造に由来する不純物が形成していることを特徴とする、多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項2】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が亜鉛又は錫を含有していることを特徴とする、請求項1に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項3】
亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロムから成る前記第1群からの元素の総比率が0.5重量%~15重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項4】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%の亜鉛を含有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項5】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~10重量%のスズを含有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項6】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~7.5重量%のアルミニウムを含有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項7】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%のマンガンを含有していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項8】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%のニッケルを含有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項9】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~3重量%のケイ素を含有していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項10】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~1.5重量%のクロムを含有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項11】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.3重量%~0.8重量%の硫黄を含有していることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項12】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~0.1重量%のリンを含有していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項13】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.3重量%~1.5重量%の鉄を含有していることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項14】
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が、0.001重量%~1.5重量%のホウ素を含有していることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【請求項15】
前記硫化物含有析出物(10)が前記さらなる層(4)全体の内部に均質に分布された状態で存在している、請求項1から14までのいずれか1項に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料から成る多層滑り軸受けであって、前記複合材料が支持金属層、さらなる層、特に滑り層、並びに場合によっては前記支持金属層と前記さらなる層との間の中間層を有しており、前記さらなる層が、無鉛の銅ベース合金から成る鋳造用合金から形成されており、前記銅ベース合金中に硫化物含有析出物が含有されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業のための支持金属層と滑り層とを有する複合材料から成る多層滑り軸受けにおいて、鉛青銅が以前から使用されている。それというのも、鉛青銅は、鉛析出物によって良好なトライボロジー挙動を有するからである。さらに、鋳造技術によるその製造はプロセス技術的な観点から極めて堅牢である。それというのも、冶金的なミクロ偏析、及びこれに伴う空洞形成が鉛によって阻止されるか又は補償されるからである。しかしながら、環境上の理由から、有鉛青銅は避けなければならない。このために既に、滑り層合金の種々のアプローチが従来技術において存在する。例えば、真鍮又は青銅を基材とする鋳造用合金の場合、合金添加物、例えばクロム、マンガン、ジルコニウム、又はアルミニウムによって、摩擦特性を改善し、具体的には焼き付き傾向を低減しようとしている。
【0003】
銅合金中に硫黄を使用することは、いくつかの文献、例えば特許文献1(国際公開第2010/137483号)、特許文献2(米国特許出願公開第2012082588号明細書)、特許文献3(米国特許出願公開第2012/121455号明細書)、特許文献4(独国実用新案第20 2016 101 661号明細書)、又は特許文献5(国際公開第2007/126006号)に既に記載されている。硫黄は主として丹銅合金(Rotgusslegierungen、赤真鍮)(CuSnZn-マトリックス)の切削特性を改善するために使用される。さらに、前記文献においては、改善されたトライボロジー特性が報告されている。しかしながら、幅広い凝固範囲を有するという、前述の丹銅合金の、またさらなる合金元素との組み合わせにおける基礎的な特性が、いくつかの点でその使用の妨げとなる。特に鋳造品質は1つの問題点である。合金CuSn7Zn2の場合の例えば約150℃の広い凝固範囲は、顕著な収縮ポロシティの原因となる。収縮ポロシティはこれとともに、とりわけ鋳造用合金としての使用時に材料中の欠陥個所を生じさせる。亜鉛含有率が低い場合には、さらに、液相と固相との間の密度差がより大きくなる。このことは、収縮ポロシティの問題をなおも先鋭化する。展伸用合金として使用する場合でさえ、鋳造物のポロシティは高い変形度を介して部分的にしか閉じることができない。両方の事例において、相応して増大する品質問題、これを原因として多大になる検査の手間、及びさらなる結果として相応に多くなる廃棄物数を計算に入れなければならない。ますます重要性が高まる後続の被覆プロセス、例えばガルバニック被覆又はポリマー被覆の結果も同様に損なわれる。無鉛の銅合金が、際立ったトライボロジー特性を有する今日の鉛青銅に取って代わることになると、このような被覆体は、例えばとりわけ滑り軸受け材料として使用する場合にますます重要になる。
【0004】
さらに、ポロシティが発生することに基づき展伸用合金として有利に使用する場合、このような合金を大抵の場合には変形工程後に再結晶するように焼き鈍すことにより、内部応力及びその結果生じる高い材料硬度を低下させ、もしくは変形後には僅かな残留変形可能性を再び高める。剛性を高める大抵の合金元素、もしくは耐食性を改善する元素は、再結晶温度を高くするという欠点を有する。本発明による合金の所期の特性のために挙げられる硫黄添加は同等の作用を有している。これにより必要となる高い焼き鈍し温度において、銅合金はとりわけ、長い処理時間との組み合わせにおいて粒子を粗大化する傾向がある。粒子粗大化はマトリックス材料を弱くする。具体的には、高度な加工硬化(Kaltverfestigung)において際立つ材料の場合、このことは、粒子が粗大化されるか、又は再結晶化が不充分にしか行われず残留樹枝状結晶のまま残るという問題を招く。このことは、過度に粗い組織と同様の不都合な影響を、材料の機械特性に及ぼす。さらに、焼き鈍し温度が高い場合には、鋼支持層の剛性は通常焼き鈍し状態の値に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/137483号
【文献】米国特許出願公開第2012082588号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/121455号明細書
【文献】独国実用新案第20 2016 101 661号明細書
【文献】国際公開第2007/126006号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、銅を基材とする無鉛の硫黄含有鋳造用合金をさらなる層として有する滑り軸受けエレメントであって、前記さらなる層において、合金に及ぼされる硫黄の部分的に不都合な影響が低減される、滑り軸受けエレメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、冒頭で述べた多層滑り軸受けエレメントにおいて、前記銅ベース合金が0.1重量%~3重量%の硫黄と、0.01重量%~4重量%の鉄と、0重量%、特に0.001重量%~2重量%のリンと、亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロム、及びインジウムから成る第1群からの、合計で0.1重量%~49重量%の少なくとも1種の元素であって、亜鉛の比率が0重量%~45重量%であり、錫の比率が0重量%~40重量%であり、アルミニウムの比率が0重量%~15重量%であり、マンガンの比率が0重量%~10重量%であり、ニッケルの比率が0重量%~10重量%であり、ケイ素の比率が0重量%~10重量%であり、クロムの比率が0重量%~2重量%であり、そしてインジウムの比率が0重量%~10重量%である、前記第1群からの少なくとも1種の元素と、それぞれの比率が0重量%~1.5重量%である銀、マグネシウム、コバルト、チタン、ジルコニウム、砒素、リチウム、イットリウム、カルシウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、アンチモン、セレン、テルル、ビスマス、ニオブ、パラジウムから成る第2群からの少なくとも1種の元素であって、前記第2群の元素の総比率が0重量%~2重量%である、前記第2群からの少なくとも1種の元素と、を含有し、そして100重量%までの残部を、銅、並びに元素の製造に由来する不純物が形成していること、によって解決される。
【発明の効果】
【0008】
この場合の利点は、これから形成された低合金型の銅ベース合金が、硫黄の添加により、良好な鋳造性において際立つことである。これにより、通常ならば制限された範囲でしか適していない滑り軸受けにおいて合金を使用することができる。さらに、硫黄によって形成される硫化銅は凝固時に結晶化核として作用し、ひいては粒子微細化作用を有する。さらに、このような材料を付加的な被覆なしに働かせることができる。さらに、加工性を改善することができる。それというのも硫化物はチップブレーカーとして作用するからである。このような改善された加工性は、粗さ値及び欠陥個所が低減された、改善された表面品質をもたらす。これにより、さらなる結果として、数多くの被覆体、例えばガルバニック被覆体、PCD又はポリマー被覆体の品質に好都合な影響を与えることができる。換言すれば、これにより銅ベース合金の被覆性を改善することができる。
【0009】
銅ベース合金は硫黄並びに少量の鉄及びリンの組み合わせを含んでいる。リンは同材料の溶融冶金加工時のように、先ず第一に脱酸素剤として使用される。鉄添加物と組み合わされた銅ベース合金中の過剰のリンによって、粒子微細化作用を達成することができる。これにより、銅及び残りの合金元素を有する金属間相(主として硫化物相)の均一の微細な分布を達成することができる。鉄とリンとの組み合わせにより、既に溶融物中にリン化鉄が生じることができる。これにより、鋼基体との結合にとって有害なリンの一部を結合させ得るだけでなく、このような金属間相によって、再結晶化焼き鈍しプロセス時に、粒子粗大化の傾向を低減することもできる。これにより、銅ベース合金の機械特性を改善することができる。さらに、このようなリン化鉄相によって、その高い硬度に基づき、上記銅ベース合金の不均質性を高めることができる。これによりトライボロジー特性に好都合な影響を与えることができる。
【0010】
硫化銅の他に生じる金属間FeS相によって、無鉛の銅ベース軸受け合金の焼き付き傾向を低減することができる。銅ベース合金のこれにより達成し得るトライボロジー作用は、硫化銅(主としてCu2S)及び硫化鉄(FeS)の組み合わせにおいて見ることができる。
【0011】
銅ベース合金に硫黄を添加することにより、銅の再結晶温度を高くすることができ、いわゆる銅の水素病(Wasserstoffkrankheit)の被りやすさを低減することができ、短く破断する切り屑を形成しながら改善された切り屑破断を行うことによる機械加工性、加工工具に及ぼす摩耗阻止作用、ひいては工具の高められた耐用寿命、及びその結果としての表面品質を改善することができる。
【0012】
鉄の添加により、粒子微細化作用を介して、硫黄析出物の分布を改善することができる。微細な分布及び硫化鉄の形成によって、トライボロジー特性を高めることができる。5重量%を上回る鉄を添加すると、液相温度を高める他に、著しく硬度を高める作用を有し、また結果的に変形性を悪化させる。少量のリンの添加とともに、溶融物中に直接にリン化鉄(Fe2P)が形成される。このことは鋼との結合ゾーン内のものとは逆に、ここでは望ましい。上記相は、一方では、再結晶化能力にそれ自体不都合な影響を及ぼすことなしに、焼き鈍し処理時の粒子成長を制限することができ、これにより特に、このような熱間処理時のプロセス実施が著しく容易になり、他方では、リン化鉄の銅マトリックス内への取り込みは、このような合金の耐摩耗性に好都合な影響を与える。
【0013】
リチウムは酸素及び水素に対する親和性に基づき、銅合金中で脱酸素剤として、そして水素を除去するために使用することができる。リチウムはすなわち、リン量と少なくとも大部分が置き換わることができ、これにより、リンの過度に高い含量、そしてこれにより生じる脆弱相に基づく、例えば軸受け合金を鋼基体と結合する複合鋳造法における前述の問題点を回避することができる。前記脆弱相は材料複合体の正に結合ゾーンに形成され、完全な分離までの発達に応じて付着強度に影響を及ぼす。脱酸化剤としてのリチウムは、より多量に添加しても、鋼基体からの鉄との金属間相を決して形成することはない。リチウムを使用することにより、リン添加量を最小限に低減し、もしくは完全に省くこともでき、これにより脆弱相の形成もなくなり、もしくは目的に合わせて僅かなリン含量を調節することができる。消費されたリチウムは低密度の液状スラグを形成し、ひいては浮遊することができる。これにより、さらなる酸素の侵入、及びこれに続く合金元素の燃焼から溶融物を保護することができる。
【0014】
念のためにここで述べておくが、溶融物の脱酸素のために消費されるリチウムの量はもちろん溶融物中の酸素の比率に合わせられる。従って当業者であれば、実際の酸素比率に適合させる上で必要な場合に、相応の過剰のリチウムを添加することができる。
【0015】
硫黄含有丹銅合金に相当する組成物を製造する場合には、ジルコニウム又はカルシウム(両方とも脱硫作用を示す)の代わりにリチウムを粒子微細化剤として使用することができる。ジルコニウムはやはり粒子微細化剤として作用しはするものの、硫黄と反応し、これによりその作用は低減される。
【0016】
イットリウムを添加することにより、無鉛の銅ベース合金の耐食性を改善することができる。0.1重量%の量比率は、酸化による重量増加をほぼ50%だけ低下させる。低減された酸化傾向は、滑り軸受けの運転時における軸受け材料とのポリマー被覆体の結合を安定化させ、ひいては運転確実性を高めることができる。
【0017】
トライボロジー的に有効な相を増大させるために、セレン及び/又はテルルを添加することができる。
【0018】
インジウムは銅中の高い溶解度(>10重量%)を有している。これは金属間相を形成し、析出硬化のために使用することができる。インジウムの利点は、銅ベース合金が長時間の時効硬化作用を介して温度上昇時(例えば滑り軸受けの運転時)にその最終硬度に達するまで、急冷後に軸受け材料が改善された適合能力を有することにある。
【0019】
有利には低い錫含量によって、銅ベース合金の著しい硬度増大を回避することができる。前記量範囲内で、合金内の硫化物分布により良好な影響を与えることができる。錫含量の減少によって、組織の粒子構造が目立たなくされ、大きな構造を有する粒子が発生するような合金が形成される。
【0020】
亜鉛含量によって、析出された硫化物のより良好に規定された球形状を達成することができる。
【0021】
上記量比率のケイ素は、合金の鋳造性及び脱酸素化に関して有利であり得る。
【0022】
銅ベース合金内のアルミニウム添加は、高い温度における腐食傾向を回避する。上記量比率において、β混合結晶形成が高い確実性を持って回避される。
【0023】
マンガンによって、耐熱性を高めることができる。さらにマンガン含有合金によって、腐食防止層の改善された回復を達成することができる。
【0024】
ニッケルは硫黄と一緒に硫化ニッケルを形成し、硫化ニッケルは全体的な相数を増大させることができる。さらに、ニッケルによって銅ベース合金の腐食安定性を改善することができる。Cu-Ni合金の弾性率はニッケル添加とともに線形に上昇する。
【0025】
クロムによって銅ベース合金の再結晶温度及び耐熱性を改善することができる。
【0026】
多層滑り軸受けエレメントの有利な実施態様によれば、前記さらなる層の前記銅ベース合金が亜鉛又は錫を含有していてよい。銅ベース合金の両元素の組み合わせを回避することによって、これにより銅ベース合金の凝固範囲を狭くすることができるので、合金の鋳造特性を著しく改善することができる。
【0027】
銅ベース合金の前記特性をさらに改善するために、本発明の下記実施態様のうちの少なくとも1つを提供することができる。すなわち、
- 亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロムから成る前記第1群からの元素の総比率が0.5重量%~15重量%であり、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%の亜鉛を含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~10重量%のスズを含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~7.5重量%のアルミニウムを含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%のマンガンを含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%、特に0.01重量%~2重量%のニッケルを含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~7重量%、特に0.01重量%~3重量%のケイ素を含有しており、且つ/又は、
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~1.5重量%、特に0.01重量%~1重量%のクロムを含有しており、且つ/又は、
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.3重量%~0.8重量%の硫黄を含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.01重量%~0.1重量%のリンを含有しており、且つ/又は
- 前記さらなる層の前記銅ベース合金が0.3重量%~1.5重量%の鉄を含有している。
【0028】
多層滑り軸受けエレメントの別の実施態様によれば、前記さらなる層の前記銅ベース合金が付加的に、0.001重量%~1.5重量%、特に0.001重量%~1重量%のホウ素を含有していてよい。これにより、粒界のより高密度の構造を得ることができる。銅合金はこれにより、改善された強度(高められた粒界強度)と延性とを有する。さらに、合金は亀裂のおそれが減じられることを示す。これにより、前記さらなる層内の組織は亀裂強度がより高くなる。さらに、ホウ素も溶融物の脱酸素に関して好都合であり、そして場合によっては鉄と一緒に粒子微細化剤として作用する。
【0029】
別の実施態様によれば、前記硫化物含有析出物が前記さらなる層全体の内部に均質に分布された状態で存在していてよく、これにより、前記さらなる層はつまり断面全体にわたってほぼ同じ特性を有する。
【0030】
しかしながら、多層滑り軸受けエレメントの別の実施態様によれば、前記硫化物含有析出物が前記さらなる層の前記銅ベース合金の部分層内部にのみ形成されていてもよい。従って前記層自体には、より広幅の特性スペクトルを付与することができるので、場合によっては、多層滑り軸受けエレメントは層の数を減らすことによって、より単純に構成することができる。
【0031】
このための1実施態様によれば、前記部分層が、前記さらなる層の全層厚の5%~85%である層厚を有していてよい。部分層の層厚の比率が全層厚の5%よりも小さいと、前記さらなる層は、多層滑り軸受けエレメントのさらなる層としての、特に滑り層としてのその任務をもはや所望の規模では果たすことができない。しかし前記さらなる層は、その場合には、慣らし運転層としての特性をなおも有することができる。これに対して、全層厚の85%を上回る層厚の場合、個別層の数を減らすことにより得られる利益よりも、部分層を形成するための手間が多大になる。
【0032】
添加された硫黄は銅ベース合金の別の成分と反応して硫化物を形成する。本発明の別の実施態様によれば、前記硫化物含有析出物が少なくとも50面積%は、硫化銅と硫化鉄との混合物から成っていてよい。これにより、銅ベース合金の自己潤滑挙動を改善することができる。
【0033】
このような効果をさらに改善するために、多層滑り軸受けエレメントの別の実施態様によれば、硫化銅と硫化鉄との混合物における硫化銅の比率が少なくとも60面積%であってよい。
【0034】
本発明をよりよく理解するために、下記の図面に基づいて本発明を詳述する。
【0035】
図面はそれぞれ著しく単純化された概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、多層滑り軸受けエレメントの側面図である。
図2図2は、多層滑り軸受けエレメントの1実施態様の滑り層を断面して示す側方部分図である。
図3図3は、多層滑り軸受けエレメントの別の実施態様の滑り層を断面して示す側方部分図である。
図4図4は、多層滑り軸受けエレメントの別の実施態様の滑り層を断面して示す側方部分図である。
図5図5は、多層滑り軸受けエレメントの1実施態様の滑り層を断面して示す側方部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
最初に書き留めておくが、種々異なるものとして記載される実施形態において、同一部分には同一参照符号もしくは同一構成部分符号を付す。説明全体に含まれる開示内容は、同一参照符号もしくは同一構成部分符号を有する同一部分に相応して転用することができる。また、説明において選択された位置に関する記述、例えば上、下、側方などは、直接に説明され図示された図面に関するものであり、そして位置が変化したときには、これらの位置に関する記述は相応して新しい位置に転用することができる。
【0038】
図1には、複合材料から成る多層滑り軸受けエレメント1、特にラジアル滑り軸受けエレメントが側面図で示されている。
【0039】
多層滑り軸受けエレメント1は、特に燃焼機関内に使用するため、又は軸を支承するために設けられている。しかし、多層滑り軸受けエレメントは他の用途のために、例えば風力発電所、特に風力発電所伝動装置内で、例えば遊星歯車支承領域内の遊星歯車ピンの被覆体において、又はこの被覆体として、(やはり歯車を支承するための)歯車の内側被覆体として、圧縮機、蒸気タービン、及びガスタービン内の工業用滑り軸受けとして、又は鉄道車両のための滑り軸受けの一部、などとして使用することもできる。
【0040】
多層滑り軸受けエレメント1は滑り軸受けエレメント本体2を有している。滑り軸受けエレメント本体2は支持金属層3と、その上に配置されたさらなる層4とを有しており、もしくは、支持金属層3と、支持金属層に結合されたさらなる層4とから成っている。
【0041】
破線で示唆された図1から判るように、滑り軸受けエレメント本体2は、1つ又は2つ以上の付加的な層、例えば、前記さらなる層4と支持金属層3との間に配置された軸受け金属層5、及び/又は前記さらなる層4上の慣らし運転層6を有することもできる。多層滑り軸受けエレメント1の層のうちの少なくとも2つの層の間には、少なくとも1つの拡散阻止層及び/又は少なくとも1つの結合層が配置されていてもよい。
【0042】
このような種類の多層滑り軸受けエレメント1の基本的構造は従来技術において知られているので、層構造の詳細に関しては関連文献を参照されたい。
【0043】
同様に、支持金属層3、軸受け金属層5、慣らし運転層6、少なくとも1つの拡散阻止層、及び少なくとも1つの結合層を構成し得る、使用される材料も従来技術において知られているので、これに関しては関連文献を参照されたい。一例を挙げるならば、支持金属層3は鋼から形成することができ、軸受け金属層5は、5重量%の錫及び残部の銅を有する銅合金から形成することができ、慣らし運転層は錫、鉛、又はビスマス、又は少なくとも1種の添加剤を含有する合成ポリマー又はPVD被覆体から形成することができ、拡散阻止層は例えば銅又はニッケルから形成することができる。
【0044】
半割シェル状の多層滑り軸受けエレメント1は、少なくとも1つのさらなる滑り軸受けエレメント7(構成的構造に応じて2つ以上のさらなる滑り軸受けエレメント7が設けられていてもよい)と一緒に1つの滑り軸受け8を形成する。組み付け状態において下側に位置する滑り軸受けエレメントは、本発明による多層滑り軸受けエレメント1によって形成されていると有利である。しかし、前記少なくとも1つのさらなる滑り軸受けエレメント7のうちの少なくとも1つが、多層滑り軸受けエレメント1によって形成されていてもよく、或いは滑り軸受け8全体が、本発明による少なくとも2つの多層滑り軸受けエレメント1から形成されていてもよい。
【0045】
さらに、図1において破線で示唆されているように、滑り軸受けエレメント1が滑り軸受けブシュとして形成されていてもよい。このような事例では、多層滑り軸受けエレメント1は同時に滑り軸受け8である。
【0046】
さらに、前記さらなる層4が直接被覆体、例えばコネクティングロッドアイの半径方向内側の被覆体を形成することが可能である。この場合、被覆されるべき構造部分、すなわち例えばコネクティングロッドは、支持金属層3を形成する。
【0047】
さらに、多層滑り軸受けエレメント1もしくは滑り軸受け8はスラストワッシャ、カラー軸受けなどの形態で形成されていてもよい。
【0048】
さらなる層4は特に滑り層9として形成されている。このために、図2には、このような滑り層9の第1実施態様が示されている。
【0049】
滑り層9は、銅ベース合金から成る鋳造用合金から成っている。
【0050】
銅ベース合金は、銅、硫黄、鉄、リンの他に、亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロム、インジウムから成る第1群からの、合計で0.1重量%~49重量%の少なくとも1種の元素と、銀、マグネシウム、コバルト、チタン、ジルコニウム、砒素、リチウム、イットリウム、カルシウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、アンチモン、セレン、テルル、ビスマス、ニオブ、パラジウムから成る第2群からの少なくとも1種の元素であって、前記第2群の元素の総比率が0重量%~2重量%である、前記第2群からの少なくとも1種の元素と、を有する。
【0051】
場合によっては、前記さらなる層4の銅ベース合金は付加的にホウ素を含有することができる。
【0052】
銅ベース合金は無鉛である。無鉛とは、含有される鉛が最大0.1重量%の範囲内であり得ることを意味する。
【0053】
銅ベース合金中の個々の元素の主要な作用は従来技術において知られているので、これに関してはそれを参照されたい。さらに、合金元素の効果についての前記解説を参照されたい。
【0054】
銅ベース合金における個々の元素の可能な比率を表1に纏める。表1における比率に関するパーセント表示は、明示的に他に断りがない限り、明細書全体におけるのと同様に、重量%として理解されるべきである。
【0055】
いずれの銅ベース合金においても、不可避的な不純物を除いて、銅は100重量%までの残部を形成する。
【0056】
【表1-1】
【表1-2】
【0057】
表1における量範囲に関する表示は、この表示によりそれぞれの限界範囲及び中間範囲も主張されているように理解されなければならない。例えばSの比率はそれぞれ重量%で、0.1~3、0.2~1.5、0.3~0.8、0.1~0.2、0.1~1.5、0.1~0.3、0.1~0.8、0.2~0.3、0.2~0.8、0.3~3、0.3~1.5、0.8~3、及び0.8~1.5であってよい。相応のことが表1のさらなる元素についても当てはまる。
【0058】
亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロムを含む、又はこれらから成る第1群からの元素の総比率は、好ましくは最大7重量%、特に最大5重量%である。例えば第1群からの元素の総比率は0.5重量%~15重量%であってもよい。
【0059】
錫及び亜鉛が銅ベース合金中に一緒には含有されていないと、すなわち銅ベース合金が錫又は亜鉛を含有しているとさらに有利である。
【0060】
図2から判るように、滑り層9内には硫化物含有析出物10が含有されている。このような硫化物含有析出物10は、銅ベース合金の少なくとも1種の金属合金成分と硫黄との反応によって生じさせられている。混合硫化物も可能である。
【0061】
次に述べる方法から明らかなように、銅ベース合金の硫化物含有析出物10は、本発明の範囲に含まれ得るとしても、そのようなものとしては添加されておらず、これらの析出物10は少なくとも1種の合金成分から、合金の製造中に溶融物中の還元反応の結果として生成される。
【0062】
銅ベース合金中の硫化物含有析出物10の比率は1面積%~20面積%、特に2面積%~15面積%であると有利である。比率が24面積%を上回ると、含有される硫黄が粒界において不都合に目立つようになるおそれがある。比率が1面積%よりも低いと、効果がなおも観察されるものの、その規模は満足できるものではなくなる。面積%という表示は、それぞれ滑り層9の長手方向断面図の面積全体に対するものである。
【0063】
滑り層9は全層厚11を有している。全層厚11は特に100μm~2500μm、有利には150μm~700μmである。
【0064】
図2から明らかなように、硫化物含有析出物10はこの実施態様では、滑り層9の全層厚11にわたって、ひいては滑り層9全体内で、すなわち滑り層の全体積内で均質に分布された状態で配置されているので有利である。
【0065】
「均質」という表現は、滑り層9のそれぞれ2つの異なる体積領域の硫化物含有析出物10の数の差が12%以下、特に9%以下であることを意味する。100%を有する基準値として、滑り層9の1つの体積領域内の硫化物含有析出物10の数が用いられる。これは、滑り層9の全体積内の析出物10の総数を、全体積が含む体積領域の数によって割り算した値から計算される。
【0066】
しかしながら、硫化物含有析出物10の配置もしくは形成は、図3から明らかなように、滑り層9の部分層12の内部の領域にのみ制限されることも可能である。硫化物含有析出物10は、このような部分層12の内部に、特に専ら内部に配置されている。このような部分層12内部には、硫化物含有析出物10は有利にはやはり均質に分布された状態で配置されている。「均質」の概念は、「滑り層」が「部分層」によって置き換えられた前記定義の意味において理解されるべきである。
【0067】
さらに1実施態様によれば、部分層12の層厚13は前記さらなる層4、すなわちこの実施例では滑り層9の全層厚11の5%~85%、特に10%~50%であってよい。
【0068】
部分層12は、好ましくは滑り層9の一方の側に形成され、ひいては好ましくは多層滑り軸受けエレメント1の表面14、特に滑り面を形成している。
【0069】
しかしながら、部分層12に関する図4に示されているように、硫化物含有析出物10の数は、滑り層9の銅ベース合金の表面14から支持金属層3へ向かって減少することも可能である。このような勾配は滑り層9内に全体的に、すなわち部分層12内だけではなしに形成されていてよい。硫化物含有析出物10はこの場合図2の意味において、滑り層9の全体積内に存在している。
【0070】
念のために述べておくが、図面には、それぞれ場合によっては多層滑り軸受けエレメント1のそれ自体独立した実施形態が示されている。同一部分には、参照符号もしくは構成部分符号が用いられる。不要な繰り返しを避けるために、図面全体に関する詳細な説明が示唆されもしくは参照される。
【0071】
滑り層9もしくは滑り層9の部分層12内の硫化物含有析出物10の数を支持金属層3へ向かって低減することにより、滑り層9内の硬度勾配を調節することができる
【0072】
滑り層9もしくは滑り層9の部分層12内の硫化物含有析出物10の数を滑り層9の銅ベース合金の表面14から支持金属層3へ向かって徐々に増大させること、もしくは大まかに変化させることも可能である。
【0073】
大まかに言えば、硫化物含有析出物10は最大60μm、特に0.1μm~30μmの最大粒径15(図2及び3)を有している。最大粒径15は10μm~25μmであることが好ましい。最大粒径15は、粒子が有する最大寸法を意味する。
【0074】
残りの組織の粒子サイズは2μm~500μm、特に2μm~40μmであってよい。より大きい粒子は滑り層9と、そのすぐ下に配置された、多層滑り軸受けエレメント1の層との結合ゾーンにのみ発生すると有利である。樹枝状鋳造組織の特定の事例では、粒子サイズは全層厚に相当することもできる。
【0075】
硫化物含有析出物10の粒径15は滑り層9の全体積にわたってほぼ一定のままであること、すなわち析出物10の最大粒径が20%以下、特に15%以下だけ異なっていることが可能である。
【0076】
他方において、多層滑り軸受けエレメント1のさらなる実施態様によれば、図5に示されているように、硫化物含有析出物10の最大粒径15は、銅ベース合金の表面14から支持金属層3へ向かって徐々に低減してよい。硫化物含有析出物10の粒径15は、表面14の領域内の析出物10の粒径15を基準として0.1%~80%の範囲から、特に0.1%~70%の範囲から選択された値だけ低減することができる。
【0077】
しかしながら、硫化物含有析出物10の最大粒径15は、銅ベース合金の表面14から支持金属層3へ向かって徐々に増大させること、もしくは大まかに変化させることも可能である。硫化物含有析出物10の粒径15は、表面14の領域内の硫化物含有析出物10の粒径15を基準として0.1%~80%の範囲から、特に0.1%~70%の範囲から選択された値だけ増大させることができる。
【0078】
硫化物含有析出物10の外的形状は少なくともほぼ球形、少なくともほぼ楕円形もしくは卵形、球根状、棒状(すなわち細長い)、少なくともほぼ立方体状などであってよく、或いは完全に不規則であってよい。有利には、硫化物含有析出物10は少なくともほぼ円形、もしくは少なくともほぼ球形、もしくは少なくともほぼ楕円形に形成されている。
【0079】
既に述べたように、析出物10は硫化物の性質を有する。硫化物含有析出物10は主として硫化銅及び/又は硫化鉄から成っていてよい。硫化物の全比率におけるこのような混合物の比率は少なくとも50面積%、特に少なくとも70面積%、好ましくは少なくとも80面積%である。このような硫化物の他に、銅ベース合金内には既に前述したように、さらに他の硫化物、例えば硫化亜鉛も存在する。
【0080】
硫化亜鉛は硫化銅粒子内の少なくとも1つの不連続な領域内部に形成されていてよい。1~5つのこのような不連続領域が硫化銅粒子内部に形成されていてよい。換言すれば、硫化亜鉛は硫化銅粒子内に不均質に分布された状態で含有されていてよい。
【0081】
合金は硫化銅と硫化鉄とから成る混合物を含有することもできる。硫化銅と硫化鉄とから成るこのような混合物内部では、硫化銅の比率は少なくとも60面積%、特に少なくとも75面積%であってよい。
【0082】
硫黄添加作用をより良好に活用する、硫化物相(硫化物含有析出物10)のできる限り微細な分布を前記さらなる層4内に達成するために、微細なマトリックス組織を形成するべきである。このことは一方では高い冷却速度を介して、他方では冶金学的な粒子微細化を介して行うことができる。
【0083】
硫黄含有合金の場合、粒子微細化性の合金元素の多くが付加的に硫黄に対する高い親和性を有し、このような元素によって一部望ましくない化合物が発生し、これらの化合物が次いでスラグ化する傾向があることが判っている。銅合金の場合、具体的にはジルコニウムに言及しなければならない。ジルコニウムは極めて良好な粒子微細剤として作用し得るものの、強い脱硫作用をも有している。銅中の粒子微細化のためのさらなる元素は例えばカルシウムであるが、しかし鋼業界ではその脱硫作用が知られている。基本的には、硫黄比率、温度挙動、添加時点を介して脱硫を阻止することができる。
【0084】
銅合金のために知られている多くの粒子微細化剤は、酸素に対して高い親和性を有し、ひいては脱酸素化されていない溶融物中に存在する酸素と反応してその作用を失うことになる。
【0085】
銅合金を脱酸素化するために、リン銅の形態を成す脱酸素化剤としてリンを添加することが知られている。脱酸素化により、特に溶融物の流れ特性が改善される。これに加えて、合金添加された硫黄が溶融物中の酸素によって燃焼するのを防ぐ。既に述べたように、複合鋳造時におけるリンの過度に高い残留含量は、結合ゾーン内の脆弱相形成(リン化鉄)のリスクを高める。正確な添加量は、実際の溶融物の酸素活性に基づいて、化学量論比を介して計算することができる。しかしながら、使用される合金の活性の測定は使い捨ての測定ヘッドを用いてのみ可能であり、そして常に測定不確実性を伴う。数100kgの僅かな溶融物量の場合、このような測定は経済的ではない。さらに、測定自体による酸素及び水素の損失は注目すべき欠点である。
【0086】
前記銅合金中にリチウムを使用することは、いくつかの利点をもたらす。リチウムは際立った脱酸素化作用を有する。こうして得られた僅かな残留酸素含量は、合金元素の硫黄、及び酸素親和性の他の元素が燃焼するのを防ぐ。酸素を除去する他に、リチウムは水素と結合する(LiH,LiOH)特性をも有している。これにより、リチウム添加物はまた溶融物中の水素含量を低下させる。リチウムはその反応相手と一緒に、溶融物上に液状のスラグを形成し、そしてさらなる酸素及び水素が溶融物に侵入するのを阻止する。さらに、リチウムはそれ自体が粒子微細化作用を有しており、これにより水素中の硫化物の微細な分布を保証する。
【0087】
多層滑り軸受けエレメント1を製造するために、第1の工程では、少なくとも2つの層から半製品を製造することができる。このために、最も簡単な事例では、特に平らな金属ストリップ、又は特に平らな金属薄板上に、銅ベース合金をキャスティングすることができる。
【0088】
金属ストリップ又は金属薄板は、支持金属層3を形成する。平らな金属ストリップ又は金属薄板が使用される事例に関しては、従来技術においてそれ自体知られているように、これらは後の方法工程においてさらに、それぞれの多層滑り軸受けエレメント1に変形させられる。
【0089】
既に前述したように、多層滑り軸受けエレメント1は3つ以上の層を有することもできる。このような場合には、銅ベース合金は、支持金属層3を有する複合材料のそれぞれ最も上側の層上にキャスティングすることができ、或いはさらなる、特に二層型の複合材料を先ず製造し、続いてこの二層複合材料を支持金属層3又は支持金属層3を有する複合材料と、例えばローラ被覆により、場合によっては結合フォイルを中間に配置した状態で結合する。
【0090】
金属ストリップもしくは金属薄板上に、又は複合材料の1つの層上に銅ベース合金をキャスティングすることは、例えば水平型ベルト鋳造によって行うことができる。
【0091】
しかしながら、銅ベース合金が第1工程において例えば連続鋳造又はインゴット鋳造によって製造され、硬化された銅ベース合金をその後に初めて、多層滑り軸受けエレメント1の前記さらなる層のうちの少なくとも1つ、特に支持金属層3に、例えばローラ被覆によって結合されることも可能である。
【0092】
別の実施態様によれば、多層滑り軸受けエレメント1が遠心鋳造法によって、又は重力鋳造法によって製造されることが可能である。
【0093】
構成部分、例えばコネクティングロッドアイの直接被覆も可能である。粉末被覆法を用いることもできる。
【0094】
銅ベース合金は焼結法に従って、多層滑り軸受けエレメント1又は構成部分のそれぞれ下側の層上に被着することもできる。
【0095】
滑り層9の製造のために使用される出発混合物中の成分の比率は、表1の表示に相応して選択される。
【0096】
溶融物から成る合金の鋳造は、滑り軸受けの当業者に基本的には知られているので、温度などのようなパラメータについては、関連の従来技術を参照されたい。合金の鋳造は好ましくは保護ガス雰囲気下で行われる。
【0097】
凝固済の溶融物の冷却は、油によってほぼ300℃の温度まで行い、そしてその後、水及び/又は空気によって少なくともほぼ室温まで行われることが好ましい。しかしながら、別の形で冷却されてもよい。鋳造後に合金もしくは複合材料の強制冷却が行われることも好ましい。
【0098】
場合によっては例えば半割シェル形状への変形を行い、場合によっては仕上げ加工、例えばファインボーリング、被覆などを行った後、多層滑り軸受けエレメント1が完成する。このような最終加工工程は、滑り軸受けの当業者に知られているので、これについては関連の文献を参照されたい。
【0099】
方法の1実施態様によれば、銅ベース合金には鋳造後に変形、特に圧延が施される。最大80%、特に20%~80%の変形度が用いられる。
【0100】
変形後、特に圧延後には、銅ベース合金には熱処理を施すことができる。熱処理は概ね200℃~700℃の温度で行うことができる。熱処理は還元性雰囲気内で、例えばフォーミングガス下で行うことができる。さらに、熱処理は2時間から20時間までの時間にわたって実施することができる。層4内に存在する微細なリン化鉄粒子によって、熱処理中に著しい粒子粗大化が生じることはない。
【0101】
前記さらなる層4を滑り層9として形成するほかに、前記さらなる層は、多層滑り軸受けエレメント1内の別の層、例えば、滑り層と支持金属層との間に配置される軸受け金属層、又は滑り層上に配置される慣らし運転層を形成することもできる。
【0102】
実施される試験のいくつかを以下に再現する。
【0103】
大まかに言えば、表2に示された銅ベース合金のための組成物は、下記方法に従って製造された。
【0104】
寸法が220mm幅及び4mm厚の鋼から成る支持金属層3上に銅ベース合金をベルト鋳造によってキャスティングした。予熱された鋼は1070℃の温度及び2.5m/minの速度を有した。鋼上へ約1130℃の温度を有する鋳造用合金をキャスティングする。鋼を油冷却によって下方から約350℃まで冷却し、その後、水でさらに冷却することにより、鋳造用合金が一緒に凝固するようにする。このような複合体に圧延によって40%の厚さ減少を施した。その後、この材料を保護ガス雰囲気下で7時間にわたって525℃で熱処理し、次いで半割シェル形状に変形させた。
【0105】
合金組成に応じて、材料の熱処理は例えば450℃、特に500℃で10時間にわたって、ないしは630℃、特に610℃で6時間にわたって実施することもできる。
【0106】
これにより、滑り層9の層厚が1mmよりも小さい半割シェル形状を成す二層滑り軸受けエレメントが生じる。
【0107】
下記表2に関して念のために述べるならば、組成に関する表示全体が重量%であることが理解されるべきであり、そして100重量%までの残部をそれぞれ銅が形成する。金属の、製造に起因する通常の不純物は特には示されていない。これは、表1において再現された個々の合金成分の前記量範囲の枠内にある実施例にすぎない。銅ベース合金の個々の成分もしくは元素に関して、表1に示された範囲全体に実施例が割り当てられていない場合、このことは、このような元素に関して表2に再現された項目毎の比率への制限がないことを意味する。表2に示された元素に関する量表示は、銅ベース合金を製造するために使用された量表示である。
【0108】
第2群の合金元素を有する合金に関しては、2種の「ベース合金(Basislegierungen)」だけを常に使用した。しかしながら、このことはこのような元素の添加物がこの「ベース合金」の記載の組成に制限されることを意味するものではない。
【0109】
さらに、「ベース合金」の第2群の合金元素のうちの1種だけをそれぞれ常に添加合金した。しかし言うまでもなく、本発明の枠内で、第2群のこのような合金元素のうちの2種以上を有する組成も可能である。
【0110】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【0111】
焼き付き傾向試験に従って、このような銅ベース合金の焼き付き傾向を見極めた。焼き付き傾向試験は表2の実施例に相応する全ての多層滑り軸受けエレメント1に施した。CuPb22Snから成る周知の合金の多層滑り軸受けエレメントに対して測定値を標準化した。このような合金を焼き付き負荷100%で定義した。これと比較すると、表2に示された合金は70%~105%の値を有した。これは無鉛であることを考慮すると、極めて良好な値であるだけでなく、有鉛合金をも凌ぐ。
【0112】
さらなる試験において、ホウ素の添加によって、銅ベース合金の硬度を、溶融物の冷却と協働して所定の限界内で調節し得ることを確認できた。例えば急冷時に支持金属層3の鋼との境界領域内にホウ素相を析出することができる。これにより、前記さらなる層4から支持金属層3への移行部の機械特性の変化を調節することができる。これに対して、前記冷却と比較してより低速に溶融物を冷却することにより、銅ベース合金をより軟質に調節することができる。これの代わりに又はこれに加えて、銅ベース合金中のホウ素の量比率を介して、支持金属層3の鋼との境界領域内のこのようなホウ素相の析出に影響を与えることもできる。もちろん、ホウ素相は前記さらなる層全体内に含有されていてもよい。
【0113】
このような実施態様によって、銅ベース合金を製造する(前記さらなる層4の下側に配置される層上にキャスティングする)ことにより、すなわち銅ベース合金の凝固中及び凝固により既に、前記さらなる層4内、そしてさらなる結果として多層滑り軸受けエレメント1内に硬度勾配を形成することができる。すなわち、このような硬度勾配を形成するためにさらなる後処理は必要でない。
【0114】
硬度勾配によって、硬度は結合ゾーン、すなわち支持金属層3の鋼との境界領域、又はさらなる層4の下側に配置された層から、前記さらなる層4の(半径方向で)反対側の表面へ向かって低減する。これにより、滑り面の領域内には、低い硬度が存在することができる。低い硬度は前記さらなる層4のより良好な適合性をもたらす。他方において、結合ゾーン内の、これと比較して高い硬度により、支持金属層3、又は前記さらなる層4の下側に配置された層への変動の激しい硬度移行を回避することができる。これにより、機械的応力をより良好に回避もしくは低減することができる。このことは、多層滑り軸受けエレメント1の耐久性もしくは耐用寿命を改善する。
【0115】
ホウ素相の濃度はすなわち前記さらなる層4の(半径方向)内側の表面から、支持金属層3、又は多層滑り軸受けエレメント1の前記さらなる層4の下側に配置された層へ向かって増大する。ホウ素相の濃度は、支持金属層3、又は多層滑り軸受けエレメント1の前記さらなる層4の下側に配置された層への移行部の結合ゾーン内で最大である。
【0116】
前記さらなる層4内の硬度勾配を形成するために、銅ベース合金を支持金属層3上へ、又は前記さらなる層4の下側に配置された層上へ遠心鋳造法によって被着すると有利である。しかし、別の方法、例えばベルト鋳造法も可能である。
【0117】
ホウ素相は主として鉄-ホウ素相である。しかしながら銅ベース合金の合金元素を含む他のホウ素相を形成することもできる。ホウ素相は概ね銅ベース合金の別の領域内に発生してもよい。
【0118】
多層滑り軸受けエレメント1において、トライボロジー的に好都合な層をさらに改造することができる。例えば最上層内に硫化物デポを組み込むことができる。このようなデポを形成するとホウ素が支持的に作用する。
【0119】
本発明はさらに、多層滑り軸受けエレメント1を製造する方法であって、このために、支持金属層3及びさらなる層4、特に滑り層9、並びに場合によっては前記支持金属層3と前記さらなる層4との間の中間層を有する複合材料を製造する、多層滑り軸受けエレメント1を製造する方法に関する。前記さらなる層4は、無鉛の銅ベース合金から成る鋳造用合金から形成され、前記銅ベース合金中に硫化物含有析出物10が含有されている。鋳造用合金を製造するために、前記銅ベース合金が0.1重量%~3重量%の硫黄と、0.01重量%~4重量%の鉄と、0重量%、特に0.001重量%~2重量%のリンと、亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロム、インジウムから成る第1群からの、合計で0.1重量%~49重量%の少なくとも1種の元素であって、亜鉛の比率が0重量%~45重量%であり、錫の比率が0重量%~40重量%であり、アルミニウムの比率が0重量%~15重量%であり、マンガンの比率が0重量%~10重量%であり、ニッケルの比率が0重量%~10重量%であり、ケイ素の比率が0重量%~10重量%であり、クロムの比率が0重量%~2重量%であり、そしてインジウムの比率が0重量%~10重量%である、前記第1群からの少なくとも1種の元素と、それぞれの比率が0重量%~1.5重量%である銀、マグネシウム、インジウム、コバルト、チタン、ジルコニウム、砒素、リチウム、イットリウム、カルシウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、アンチモン、セレン、テルル、ビスマス、ニオブ、パラジウムから成る第2群からの少なくとも1種の元素であって、前記第2群の元素の総比率が0重量%~2重量%である、前記第2群からの少なくとも1種の元素と、を使用する。100重量%までの残部を、銅、並びに元素の製造に由来する不純物が形成する。
【0120】
鋳造用合金を製造するために、前記表1において挙げられたさらなる量表示を用いることもできる。
【0121】
実施例は可能な実施態様を示し、もしくは記述する。ここで念のために述べておくが、個々の実施態様の相互の多様な組み合わせも可能である。
【0122】
なお最後に形式的なことであるが、多層滑り軸受けエレメント1もしくは前記さらなる層4の構造をより良く理解するために、多層滑り軸受けエレメントは必ずしも一定の尺度では示されていない。
なお、本開示の態様には以下のものも含まれる。
〔態様1〕
複合材料から成る多層滑り軸受けエレメント(1)であって、前記複合材料が支持金属層(3)、さらなる層(4)、特に滑り層(9)、並びに場合によっては前記支持金属層(3)と前記さらなる層(4)との間の中間層を有しており、前記さらなる層(4)が、無鉛の銅ベース合金から成る鋳造用合金から形成されており、前記銅ベース合金中に硫化物含有析出物(10)が含有されている形式のものにおいて、
前記銅ベース合金が0.1重量%~3重量%の硫黄と、0.01重量%~4重量%の鉄と、0重量%、特に0.001重量%~2重量%のリンと、亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロム、インジウムから成る第1群からの、合計で0.1重量%~49重量%の少なくとも1種の元素であって、亜鉛の比率が0重量%~45重量%であり、錫の比率が0重量%~40重量%であり、アルミニウムの比率が0重量%~15重量%であり、マンガンの比率が0重量%~10重量%であり、ニッケルの比率が0重量%~10重量%であり、ケイ素の比率が0重量%~10重量%であり、クロムの比率が0重量%~2重量%であり、そしてインジウムの比率が0重量%~10重量%である、前記第1群からの少なくとも1種の元素と、
それぞれの比率が0重量%~1.5重量%である銀、マグネシウム、インジウム、コバルト、チタン、ジルコニウム、砒素、リチウム、イットリウム、カルシウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、アンチモン、セレン、テルル、ビスマス、ニオブ、パラジウムから成る第2群からの少なくとも1種の元素であって、前記第2群の元素の総比率が0重量%~2重量%である、前記第2群からの少なくとも1種の元素と、を含有し、
そして100重量%までの残部を、銅、並びに元素の製造に由来する不純物が形成していることを特徴とする、多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様2〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が亜鉛又は錫を含有していることを特徴とする、態様1に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様3〕
亜鉛、錫、アルミニウム、マンガン、ニッケル、ケイ素、クロムから成る前記第1群からの元素の総比率が0.5重量%~15重量%であることを特徴とする、態様1又は2に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様4〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%の亜鉛を含有していることを特徴とする、態様1から3までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様5〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~10重量%のスズを含有していることを特徴とする、態様1から4までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様6〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~7.5重量%のアルミニウムを含有していることを特徴とする、態様1から5までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様7〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%のマンガンを含有していることを特徴とする、態様1から6までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様8〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~5重量%、特に0.01重量%~2重量%のニッケルを含有していることを特徴とする、態様1から7までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様9〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~7重量%、特に0.01重量%~3重量%のケイ素を含有していることを特徴とする、態様1から8までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様10〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~1.5重量%、特に0.01重量%~1重量%のクロムを含有していることを特徴とする、態様1から9までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様11〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.3重量%~0.8重量%の硫黄を含有していることを特徴とする、態様1から10までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様12〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.01重量%~0.1重量%のリンを含有していることを特徴とする、態様1から11までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様13〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が0.3重量%~1.5重量%の鉄を含有していることを特徴とする、態様1から12までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様14〕
前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金が付加的に、0.001重量%~1.5重量%、特に0.001重量%~1重量%のホウ素を含有していることを特徴とする、態様1から13までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様15〕
前記硫化物含有析出物(10)が前記さらなる層(4)全体の内部に均質に分布された状態で存在している、態様1から14までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様16〕
前記硫化物含有析出物(10)が前記さらなる層(4)の前記銅ベース合金の部分層(12)内部にのみ形成されている、態様1から14までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様17〕
前記部分層(12)が、前記さらなる層(4)の全層厚(11)の5%~85%である層厚(13)を有している、態様16に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様18〕
前記硫化物含有析出物が少なくとも50面積%は、硫化銅と硫化鉄との混合物から成っている、態様1から17までのいずれか1つに記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔態様19〕
硫化銅と硫化鉄との前記混合物における硫化銅の比率が少なくとも60面積%である、態様18に記載の多層滑り軸受けエレメント(1)。
〔符号の説明〕
【符号の説明】
【0123】
1 多層滑り軸受けエレメント
2 滑り軸受けエレメント本体
3 支持金属層
4 層
5 軸受け金属層
6 慣らし運転層
7 滑り軸受けエレメント
8 滑り軸受け
9 滑り層
10 析出物
11 全層厚
12 部分層
13 層厚
14 表面
15 粒径
図1
図2
図3
図4
図5