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特許7606823重合性化合物及びそれを用いた液晶組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】重合性化合物及びそれを用いた液晶組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/738 20060101AFI20241219BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20241219BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20241219BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20241219BHJP
   C08F 20/20 20060101ALI20241219BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07C69/738 Z CSP
C07C69/54 B
C07C69/54 A
C09K19/38
C09K19/54 Z
C08F20/20
G02F1/1337 520
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020089362
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183569
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514007391
【氏名又は名称】石家庄▲誠▼志永▲華顕▼示材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHIJIAZHUANG CHENGZHI YONGHUA DISPLAY MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.606, East Huai’an Road, Shijiazhuang, Hebei, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 典幸
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111139085(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104710990(CN,A)
【文献】特開2006-241461(JP,A)
【文献】国際公開第2018/192565(WO,A1)
【文献】特開2003-268025(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121321(WO,A1)
【文献】Tetrahedron Letters,2020年03月17日,61(19),151837
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/738
C07C 69/54
C09K 19/38
C09K 19/54
C08F 20/20
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(Y)で表される化合物であって、
【化1】
(式中、Ry1及びRy2は、それぞれ独立してメチルを表し、
y1は、単結合、(☆)-OCH-、又は、(☆)-OCOC-であり、
y2は、単結合、-CHO-(※)、又は、-CCOO-(※)であり、
m及びnが1又は2の場合、前記(☆)はMy1への結合点を表し、前記(※)はMy2への結合点を表し、
y1及びZy2は、それぞれ独立して単結合、-C-、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COO-CRa=CH-COO-、-COO-CRa=CH-OCO-、-OCO-CRa=CH-COO-、-OCO-CRa=CH-OCO-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CHOCO-、-COOCH-、-OCOCH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)を表し、
一般式(Y)中のMy1及びMy2が、それぞれ独立して
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基及び
(c) ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はLy1で置換されても良く、
一般式(Y)中のPy1及びPy2が、それぞれ独立して以下の一般式(P-1)~一般式(P-14)
【化2】
(式中、黒点はZy1又はZy2への結合手を表す。)で表される群より選ばれる置換基を表し、
一般式(Y)において、m及びnはそれぞれ独立して1又は2の整数を表すが、ここでm+nの合計の数は2~4である、化合物。
【請求項2】
一般式(Y)中のPy1及びPy2が、一般式(P-1)又は一般式(P-2)で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物を一種又は二種以上含有する液晶組成物。
【請求項4】
前記一般式(Y)で表される化合物とは構造の異なる重合性化合物Aを1種又は2種以上含有する、請求項3記載の液晶組成物。
【請求項5】
前記重合性化合物Aとして、一般式(P):
【化3】
(上記一般式(P)中、Rp1は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基又は-Spp2-Pp2を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
p1及びPp2はそれぞれ独立して、一般式(Pp1-1)から式(Pp1-9):
【化4】
(式中、Rp11及びRp12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し、Wp11は単結合、-O-、-COO-、炭素原子数1~5のアルキレン基を表し、tp11は、0、1又は2を表すが、分子内にRp11、Rp12、Wp11及び/又はtp11が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良い。)のいずれかを表し、
Spp1及びSpp2はそれぞれ独立して、単結合又はスペーサ基を表し、
p1及びZp2はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-C-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CO-NRZP1-、-NRZP1-CO-、-SCH-、-CHS-、-CH=CRZP1-COO-、-CH=CRZP1-OCO-、-COO-CRZP1=CH-、-OCO-CRZP1=CH-、-COO-CRZP1=CH-COO-、-COO-CRZP1=CH-OCO-、-OCO-CRZP1=CH-COO-、-OCO-CRZP1=CH-OCO-、-(CH-COO-、-(CH-OCO-、-OCO-(CH-、-(C=O)-O-(CH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、zはそれぞれ独立して1~4の整数を表し、RZP1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表すが、分子内にRZP1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良い。なお、式中の*はSpp1又はSpp2への結合点を表す。)
を表し、Ap1及びAp2はそれぞれ独立して、
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレンジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基又はアントラセン-2,6-ジイル基(これら基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、
p3は上記の基(a)、基(b)及び基(c)、ならびに単結合からなる群より選ばれる基を表し、
上記の基(a)、基(b)及び基(c)は、それぞれ独立して、この基中に存在する水素原子は、シアノ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素原子数1~8のアルケニル基又は-Spp2-Pp2で置換されていても良く、
p1は、0、1、2又は3を表し、分子内にZp1、Ap2、Spp2及び/又はPp2が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良いが、mp1が0であり且つAp1がナフタレンジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基又はアントラセン-2,6-ジイル基以外の基である場合は、Ap3は単結合以外の基を表す。)
で表される重合性化合物Aを1種又は2種以上含有する請求項4記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたアクティブマトリックス駆動用液晶表示素子。
【請求項8】
請求項3~5のいずれか1項に記載の液晶組成物を用いたPSAモード、PSVAモード、PS-IPSモード又はPS-FFSモード用液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電率異方性Δεが負の値を示す液晶組成物を用いた液晶表示素子は、PSAやPSVA型の液晶TVや液晶モニター等が普及しており、これに好適な液晶組成物として、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4または特許文献5等で様々な重合性化合物とこれを含有する液晶組成物が開示されている。
【0003】
しかしながら、これまで常用されていた重合性化合物含有液晶組成物の特性では、4Kや8Kといった高精細な液晶TVには不十分である。具体的には、4Kや8Kの液晶表示素子は、高精細の画素が必要になり、配線や遮光部の領域が増えることでかなりのUV光がカットされる。このため、PSA型やPSVA型の液晶表示素子の製造におけるUV照射工程で、重合性化合物が十分に重合せず多くの重合性化合物が残存してしまう。これによりチルト形成が不十分となり応答速度の悪化や配向性悪化による残像、また、残存した重合性化合物が、駆動時に徐々に重合してチルトが変化することで焼き付き(IS)という表示不良が確認されている。
【0004】
以上のことから、高精細の液晶テレビや液晶モニター等のPSAまたはPSVA型の液晶表示素子には、従来の技術とは一線を画す極めて高い特性が要求されており、従来よりも弱いまたは少ないUV光で安定的に製造できるような液晶組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-216747号公報
【文献】特許第4803320号公報
【文献】特許第6008065号公報
【文献】特許第6233550号公報
【文献】特許第5743132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、重合速度が十分に速く、また、より短い紫外線照射時間でプレチルト角を形成できる重合性化合物を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、プレチルト角の変化による表示不良が無いか、あるいは極めて少なく、十分なプレチルト角を有し、応答性能に優れるPSA型又はPSVA型液晶表示素子を製造するための重合性化合物を提供すること、及び、該重合性化合物を含む液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本願発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(Y)
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、
y1及びRy2は、それぞれ独立して炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
y1及びSy2は、それぞれ独立して単結合又は炭素原子数1~12個のアルキレン基であり、該アルキレン基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキレン基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
y1及びZy2は、それぞれ独立して単結合、-C-、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COO-CRa=CH-COO-、-COO-CRa=CH-OCO-、-OCO-CRa=CH-COO-、-OCO-CRa=CH-OCO-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CHOCO-、-COOCH-、-OCOCH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)を表し、
y1及びMy2は、それぞれ独立して2価の芳香族基、2価の環脂肪族基、2価の複素環式化合物基、2価の縮合環又は2価の縮合多環を表し、これらの環構造中の水素原子はLy1で置換されてもよく、Ly1はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
m及びnはそれぞれ独立して0~3の整数を表すが、ここでm+nの合計の数は1~6であり、
y1及びPy2は重合性基を表す。)
で表される化合物を提供し、併せて当該化合物を含有する液晶組成物及び表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る重合性化合物は、重合性化合物の重合速度とプレチルト角の形成が十分に速く、液晶組成物との相溶性が高く、液晶組成物の保存安定性、長期信頼性を損なうことなく、かつ簡便に製造可能である。本発明に係る重合性化合物を用いた液晶組成物を用いると、長期にわたり優れた表示品質を示す液晶表示素子の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物は、重合性基及びβジカルボニル骨格を有することを特徴とする。ここで、本明細書においては、開始剤化合物のうち、重合性基を有する開始剤化合物を「重合性開始剤化合物」と称し、重合性基を有さない開始剤化合物を「非重合性開始剤化合物」と称して区別するものとする。また、開始剤化合物のうち、分子構造内にβジカルボニル骨格を有する開始剤化合物を「βジカルボニル系開始剤化合物」と称し、βジカルボニル骨格を有さない開始剤化合物を「非βジカルボニル系開始剤化合物」と称して区別するものとする。すなわち、本発明における一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物は、重合性基及びβジカルボニル骨格の両方を有することから、「重合性βジカルボニル系開始剤化合物」と称することができる。
【0013】
なお、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物を含め、重合性開始剤化合物は後述する重合性化合物には含まれないものとする。
【0014】
近年、4Kや8KといったPSA型液晶表示素子では高精細の画素が必要になっている。このため、配線や遮光部の領域が増えることでかなりのUV光がカットされてしまい、従来と同様のUV照射工程では、チルト形成が不十分となる、重合性化合物が十分に重合せず、多くの重合性化合物が残存するなどの問題が生じてしまう。また、これにより、応答速度の悪化や配向性悪化による残像の発生、また、残存した重合性化合物が、駆動時に徐々に重合してチルトが変化することで発生する焼き付き(IS)といった表示不良が確認されている。
【0015】
本発明の重合性開始剤化合物によれば、適度に速い重合速度であることと、短いUV照射時間で目的のプレチルト角を付与することができる。更に、適度に速い重合速度であると、重合性化合物の残留量を少なくできる。そのため、PSA型液晶表示素子製造の生産効率を向上できる。ここで、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物は、βジカルボニル構造が重合開始剤部位として機能することに加え、液晶メソゲン構造を有するため溶解性が高く液晶化合物との相溶性に優れる。このため、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物は、少ない含有量で従来の非重合性開始剤化合物と同等の効果を発揮することができ、また、液晶組成物から析出しにくいことから、従来の開始剤化合物よりも多くの量を添加することが可能となり、速い速度での十分な重合を達成することができる。
【0016】
また、本発明の液晶組成物によれば、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物を含有することで、適度に速い速度で十分に重合可能であり、UV照射時間を短縮することが可能であることから、UV照射による液晶組成物の劣化及び電圧保持率(VHR)の低下を抑制することができる。詳述すれば、従来液晶組成物に汎用される開始剤化合物は、重合機能(すなわち重合性基)を有していないが、このような非重合性開始剤化合物は、重合速度を速くする効果がある一方で、該化合物の残存部位が液晶層内に分散(拡散)するため、イオン伝導原となってVHRを低下させてしまう。一方、上記一般式(Y)で表される重合性化合物は、重合部(重合性基)を有しているので、紫外線照射により一般式(Y)で表される重合性化合物が重合体(ポリマー)を形成し、UV処理後に本ポリマを基板界面に固着させる事が出来る。これにより、パネル駆動時でも、一般式(Y)で表される重合性化合物のポリマが基板に固定される。これにより、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物自体がイオン伝導原にならずにVHRの向上が可能となる。
【0017】
上記の効果は、重合性化合物を含む場合において顕著に発揮することができる。高分子安定化技術を用いて液晶表示素子を製造する場合、重合性化合物を含む液晶組成物に紫外線を照射して重合性化合物を重合させ、素子の基板界面に重合性化合物の重合体からなる高分子層を形成する工程を含む。本発明の液晶組成物が重合性化合物を含む場合、上記工程において一般式(Y)で表される重合性化合物のβジカルボニル構造が重合開始剤として機能することにより、液晶組成物内の重合が適度に速い速度で進行するため、短いUV照射時間でプレチルト角を形成できる。更に、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物の重合性基が重合性化合物の一部と反応し、その結果、一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物が、重合性化合物の重合により形成される高分子層に取り込まれると推量される。このように高分子層に取り込まれた一般式(Y)で表される重合性開始剤化合物は、高分子層に固定されることでイオン伝導原として働かなくなるため、非重合性開始剤化合物を用いた場合と比較してVHRの低下をより効果的に抑制することができると推量される。
【0018】
一般式(Y)においてRy1及びRy2は、それぞれ独立して炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
y1及びSy2は、それぞれ独立して単結合又は炭素原子数1~12個のアルキレン基であり、該アルキレン基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキレン基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
y1及びZy2は、それぞれ独立して単結合、-C-、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COO-CRa=CH-COO-、-COO-CRa=CH-OCO-、-OCO-CRa=CH-COO-、-OCO-CRa=CH-OCO-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CHOCO-、-COOCH-、-OCOCH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)で表し、
y1及びMy2は、それぞれ独立して2価の芳香族基、2価の環脂肪族基、2価の複素環式化合物基、2価の縮合環又は2価の縮合多環を表し、これらの環構造中の水素原子はLy1で置換されてもよく、Ly1はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
m及びnはそれぞれ独立して0~3の整数を表すが、ここでm+nの合計の数は1~6であり、
y1及びPy2は重合性基を表す。)
で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
y1及びRy2は、好ましくはそれぞれ独立して炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-又は-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、より好ましくはそれぞれ独立して炭素原子数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-又は-OCO-、-OCOO-又は-O-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、さらに好ましくはそれぞれ独立して炭素原子数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。
【0020】
y1及びSy2は、好ましくはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1~6個のアルキレン基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていても良く、該アルキレン基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、より好ましくはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1~4個のアルキレン基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていても良く、該アルキレン基中の-CH-は-CH=CH-、-CO-、-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、さらに好ましくはそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1~4個のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の-CH-は-CH=CH-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、とりわけ好ましいのは単結合、-CHCH-、-CHO-、-OCH-、-COO-又は-OCO-である。
【0021】
y1及びZy2は、好ましくはそれぞれ独立して単結合、-C-、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COO-CRa=CH-COO-、-COO-CRa=CH-OCO-、-OCO-CRa=CH-COO-、-OCO-CRa=CH-OCO-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CHOCO-、-COOCH-、-OCOCH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)であり、より好ましくは単結合、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COO-CRa=CH-COO-、-COO-CRa=CH-OCO-、-OCO-CRa=CH-COO-、-OCO-CRa=CH-OCO-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)であり、さらに好ましくは単結合、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)であり、とりわけ好ましいのは単結合、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCHCHO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-又は-C≡C-である。
【0022】
y1及びMy2は、それぞれ独立して2価の芳香族基、2価の環脂肪族基、2価の複素環式化合物基、2価の縮合環又は2価の縮合多環を表すが、
【0023】
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)
【0024】
(b) 1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
【0025】
(c) ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
【0026】
からなる群より選ばれる基であることが好ましい。また、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はLy1で置換されていることも好ましい。
【0027】
また、My1及びMy2は、上記の基(a)、基(b)及び基(c)のうち、1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基又はナフタレン-2,6-ジイル基であることがより好ましく、これらの基はLy1で置換されていることも好ましい。
【0028】
y1はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~30の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、好ましくはフッ素原子、シアノ基、炭素原子数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、より好ましくはフッ素原子、炭素原子数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-COO-、-OCO-又は-O-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、さらに好ましくはフッ素原子、炭素原子数1~4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0029】
y1及びPy2は、好ましくはそれぞれ独立して以下の一般式(P-1)~一般式(P-14)
【0030】
【化2】
【0031】
(式中、黒点はZy1又はZy2への結合手を表す。)で表される群より選ばれる置換基を表すが、より好ましくは、(P-1)、(P-2)、(P-4)、(P-5)、(P-7)、(P-9)、(P-11)、(P-12)、及び(P-13)を表し、さらに好ましくは、(P-1)、(P-2)、(P-7)、(P-12)、及び(P-13)を表し、とりわけ好ましいのは(P-1)、(P-2)である。
【0032】
m及びnはそれぞれ独立して0~2の整数を表すことが好ましく、1~2の整数を表すことがさらに好ましい。m+nの合計は1~6であることが好ましく、1~4であることがより好ましく、2~4であることが特に好ましい。
【0033】
一般式(Y)で表される構造としては、好ましくは下記の式(Y-A)が挙げられる。
【0034】
【化3】
【0035】
(式中、Ry1a及びRy2aは、それぞれ独立して炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-又は-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
y1a及びSy2aは、それぞれ独立して単結合又は炭素原子数1~6個のアルキレン基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子、塩素原子又はシアノ基で置換されていても良く、該アルキレン基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-O-、-NH-又は-S-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
y1a及びZy2aは、それぞれ独立して単結合、-C-、-C-、-OCH-、-CHO-、-COO-、-OCO-、-OCHCHO-、-CH=CRa-COO-、-CH=CRa-OCO-、-COO-CRa=CH-、-OCO-CRa=CH-、-COOC-、-OCOC-、-COCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、Raはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表す)を表し、
y1a及びMy2aは、それぞれ独立して
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基であり、これらの環構造中の水素原子はLy1aで置換されてもよく、Ly1aはフッ素原子、シアノ基、炭素原子数1~6の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、該アルキル基中の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、該アルキル基中の-CH-は-CH=CH-、-C≡C-、-CO-、-COO-、-OCO-又は-O-で置換されてもよいが2個以上の-O-が連続して隣り合うことはなく、
ma及びnaはそれぞれ独立して0~3の整数を表すが、ここでm+nの合計の数は1~4であり、
y1a及びPy2aは上記の一般式(P-1)~一般式(P-14)で表される基を表す。)
【0036】
また、一般式(Y)で表される構造としては、下記の式(Y-A1)~式(Y-A8)で表される構造も好ましい。
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
(式中、Ryi1及びRyi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Syi1及びSyi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zyi1及びZyi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Myi1及びMyi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、Pyi1及びPyi2は一般式(Y)におけるPy1及びPy2とそれぞれ同じ意味を表し、mi及びniは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表す。)
【0041】
本発明に係る一般式(Y)で表される重合性化合物として、具体的には、一般式(Y-1-1)から一般式(Y-16-33)で表される化合物が好ましい。
【0042】
【化7】

【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【化15】
【0051】
【化16】
【0052】
【化17】
【0053】
【化18】
【0054】
【化19】
【0055】
【化20】
【0056】
【化21】
【0057】
【化22】
【0058】
【化23】
【0059】
【化24】
【0060】
【化25】
【0061】
【化26】
【0062】
【化27】
【0063】
【化28】
【0064】
【化29】
【0065】
【化30】
【0066】
【化31】
【0067】
【化32】
【0068】
【化33】
【0069】
【化34】
【0070】
【化35】
【0071】
【化36】
【0072】
【化37】
【0073】
【化38】
【0074】
一般式(Y)で表される化合物を1種又は2種以上含有する組成物は、室温において液晶相を有することが好ましい。一般式(Y)で表される化合物は、組成物中に下限値として、0.005%以上含有することが好ましく、0.01%以上含有することが好ましく、0.02%以上含有することが好ましく、0.03%以上含有することが好ましく、0.05%以上含有することが好ましく、0.07%以上含有することが好ましく、0.1%以上含有することが好ましく、0.15%以上含有することが好ましく、0.2%以上含有することが好ましく、0.25%以上含有することが好ましく、0.3%以上含有することが好ましく、0.5%以上含有することが好ましく、1%以上含有することが好ましい。また、上限値として5%以下含有することが好ましく、3%以下含有することが好ましく、1%以下含有することが好ましく、0.5%以下含有することが好ましく、0.45%以下含有することが好ましく、0.4%以下含有することが好ましく、0.35%以下含有することが好ましく、0.3%以下含有することが好ましく、0.25%以下含有することが好ましく、0.2%以下含有することが好ましく、0.15%以下含有することが好ましく、0.1%以下含有することが好ましく、0.07%以下含有することが好ましく、0.05%以下含有することが好ましく、0.03%以下含有することが好ましい。
【0075】
より具体的には、0.01から5質量%含有することが好ましく、0.01から0.3質量%であることが好ましく、0.02から0.3質量%であることが更に好ましく、0.05から0.25質量%であることが特に好ましい。更に詳述すると、低温における析出の抑制を重視する場合にはその含有量は0.01から0.1質量%が好ましい。
【0076】
一般式(Y)で表される化合物を含有する組成物は、一般式(Y)で表される化合物以外に、液晶相を有する化合物を含有してもよいし、液晶相を有さない化合物を含有してもよい。
【0077】
本発明において、一般式(Y)で表される化合物は、以下のようにして製造することができる。勿論本発明の趣旨及び適用範囲は、これら製造例により制限されるものではない。
【0078】
(化合物の製造方法-1)
【0079】
【化39】
【0080】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表す。)
【0081】
一般式(S-1)で表される化合物の水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により重合性基としてメタクリロイル基を有する目的物の一般式(Y)-1の化合物を得ることができる。
【0082】
(化合物の製造方法-2)
【0083】
【化40】
【0084】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、Rs1は炭素数1~6のアルキル基を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0085】
一般式(S-2)で表される化合物を還元することにより、一般式(S-3)で表される化合物を得ることができる。還元剤としては、例えば水素化ジイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。あるいは、一般式(S-2)で表される化合物を還元してアルコールとし、続いて酸化してアルデヒドとすることにより、一般式(S-3)で表される化合物を得ることも出来る。この場合、還元剤としては、例えば水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。また、酸化剤としてはクロロクロム酸ピリジニウム、塩化オキサリルなどが挙げられる。一般式(S-6)で表される化合物は、一般式(S-3)で表される化合物を一般式(S-4)及び(S-5)で表される化合物と反応させることにより得ることができる(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素を表す。)。反応例として例えば、一般式(S-4)及び(S-5)で表される化合物に対して塩基を反応させてリンイリドとした後、一般式(S-3)で表される化合物と反応させるヴィティヒ反応が挙げられる。この際、塩基としては、例えばt-ブトキシカリウムなどが挙げられる。更にPgがベンジル基の場合は、5%パラジウムカーボン存在下で接触水素還元により、一般式(S-7)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-8)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により重合性基としてアクリロイル基を有する目的物の一般式(Y)-2を得ることができる。
【0086】
(化合物の製造方法-3)
【0087】
【化41】
【0088】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0089】
一般式(S-9)で表される化合物を一般式(S-10)及び(S-11)で表される化合物と反応させることにより一般式(S-12)の化合物を得ることができる。反応例として例えば、一般式(S-9)の水酸基に対して塩化p-トルエンスルホニル、塩化メチルスルホニルなどを反応させて脱離基とした後、塩基の存在下で(S-10)及び(S-11)と反応させるウィリアムソン反応が挙げられる。塩基としては例えば炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが挙げられる。また、水酸基をアゾカルボン酸エステルとトリフェニルホスフィンで活性化し、アルコールと反応させる光延反応が挙げられる。アゾカルボン酸エステルとしては例えばアゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピルなどが挙げられる。更にPgがベンジル基の場合は、5%パラジウムカーボン存在下で接触水素還元により、一般式(S-13)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により重合性基としてメタクリロイル基を有する目的物の一般式(Y)-3を得ることができる。
【0090】
(化合物の製造方法-4)
【0091】
【化42】
【0092】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0093】
一般式(S-14)で表される化合物を一般式(S-10)及び(S-11)で表される化合物と反応させることにより一般式(S-15)で表される化合物を得ることができる。反応例として例えば、一般式(S-14)のカルボキシル基に対してハロゲン化剤を作用させて酸ハロゲン化物とした後、一般式(S-10)及び(S-11)で表される化合物と反応させ、(S-15)で表される化合物を得る。ハロゲン化剤としては例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リンなどが挙げられる。また、ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたカルボキシル基とアルコールとのエステル化反応が挙げられる。更にPgがベンジル基の場合、製法3と同様にして、接触水素還元を行うことにより、一般式(S-16)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により重合性基としてメタクリロイル基を有する目的物の一般式(Y)-4を得ることができる。
【0094】
(化合物の製造方法-5)
【0095】
【化43】
【0096】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0097】
一般式(S-17)で表される化合物を一般式(S-18)及び(S-19)で表される化合物と反応させることにより一般式(S-20)で表される化合物を得ることができる。反応例として例えば、一般式(S-17)で表される化合物の水素を塩基で引き抜き、エノラートとした後、一般式(S-18)及び(S-19)の化合物と反応させるマイケル付加反応などにより、一般式(S-20)を得ることができる。塩基としては例えば、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセンなどが挙げられる。更にPgがベンジル基の場合、製法3と同様にして、接触水素還元を行うことにより、一般式(S-21)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により重合性基としてメタクリロイル基を有する目的物の一般式(Y)-5を得ることができる。
【0098】
(化合物の製造方法-6)
【0099】
【化44】
【0100】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、Rs1は炭素数1~6のアルキル基を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0101】
製法2と同様にして、一般式(S-22)で表される化合物を還元することにより、一般式(S-23)で表される化合物を得ることができる。あるいは、製法2と同様にして、一般式(S-22)で表される化合物を還元してアルコールとし、続いて酸化してアルデヒドとすることにより、一般式(S-23)で表される化合物を得ることも出来る。一般式(S-24)で表される化合物は、製法2と同様にして、一般式(S-23)で表される化合物を一般式(S-4)で表される化合物と反応させることにより得ることができる(式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素を表す。)。更にPgがベンジル基の場合は、製法2と同様にして、接触水素還元することにより、一般式(S-25)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により、一般式(S-26)で表される化合物を得ることができる。一般式(S-26)で表される化合物を、製法5と同様にして、一般式(S-19)で表される化合物と反応させることにより、一般式(S-27)で表される化合物を得ることができる。更に、Pgがテトラヒドロピラニル基の場合、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-28)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により目的物の一般式(Y)-6を得ることができる。
【0102】
(化合物の製造方法-7)
【0103】
【化45】
【0104】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)製法3と同様にして、一般式(S-29)で表される化合物を一般式(S-10)で表される化合物と反応させることにより一般式(S-30)の化合物を得ることができる。更にPgがベンジル基の場合は、製法3と同様にして、接触水素還元することにより、一般式(S-31)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により一般式(S-32)で表される化合物を得ることができる。一般式(S-32)で表される化合物を、製法5と同様にして、一般式(S-19)で表される化合物と反応させることにより、一般式(S-33)で表される化合物を得ることができる。更に、Pgがテトラヒドロピラニル基の場合、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-34)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により目的物の一般式(Y)-7を得ることができる。
【0105】
(化合物の製造方法-8)
【0106】
【化46】
【0107】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0108】
製法4と同様にして、一般式(S-35)で表される化合物を一般式(S-10)で表される化合物と反応させることにより一般式(S-36)で表される化合物を得ることができる。更にPgがベンジル基の場合、製法3と同様にして、接触水素還元を行うことにより、一般式(S-37)で表される水酸基含有化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により一般式(S-38)で表される化合物を得ることができる。一般式(S-38)で表される化合物を、製法5と同様にして、一般式(S-19)で表される化合物と反応させることにより、一般式(S-39)で表される化合物を得ることができる。更に、Pgがテトラヒドロピラニル基の場合、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-40)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により目的物の一般式(Y)-8を得ることができる。
【0109】
(化合物の製造方法-9)
【0110】
【化47】
【0111】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0112】
一般式(S-25)で表される化合物を、製法5と同様にして、一般式(S-19)で表される化合物と反応させることにより、一般式(S-41)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により、一般式(S-42)で表される化合物を得ることができる。更に、Pgがテトラヒドロピラニル基の場合、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-43)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により目的物の一般式(Y)-9を得ることができる。
【0113】
(化合物の製造方法-10)
【0114】
【化48】
【0115】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0116】
一般式(S-31)で表される化合物を、製法5と同様にして、一般式(S-19)で表される化合物と反応させることにより、一般式(S-44)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により、一般式(S-45)で表される化合物を得ることができる。更に、Pgがテトラヒドロピラニル基の場合、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-46)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により目的物の一般式(Y)-10を得ることができる。
【0117】
(化合物の製造方法-11)
【0118】
【化49】
【0119】
(式中、Ri1及びRi2は一般式(Y)におけるRy1及びRy2とそれぞれ同じ意味を表し、Si1及びSi2は一般式(Y)におけるSy1及びSy2とそれぞれ同じ意味を表し、Zi1及びZi2は一般式(Y)におけるZy1及びZy2とそれぞれ同じ意味を表し、Mi1及びMi2は一般式(Y)におけるMy1及びMy2とそれぞれ同じ意味を表し、mx及びnxは一般式(Y)におけるm及びnとそれぞれ同じ意味を表し、-OPgは保護基Pgによって保護された水酸基を表す。)
【0120】
一般式(S-37)で表される化合物を、製法5と同様にして、一般式(S-19)で表される化合物と反応させることにより、一般式(S-47)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とアクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により、一般式(S-48)で表される化合物を得ることができる。更に、Pgがテトラヒドロピラニル基の場合、希塩酸などを用いた酸性条件下で脱アセタール反応を行うことにより、(S-49)で表される化合物を得ることができる。次いで生成した水酸基とメタクリル酸エチルとの錫触媒を用いたエステル交換反応により目的物の一般式(Y)-11を得ることができる。
【0121】
前記各工程において記載した以外の反応条件として、例えば実験化学講座(日本化学会編、丸善株式会社発行)、Organic Syntheses(A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)、Beilstein Handbook of Organic Chemistry(Beilstein-Institut fuer Literatur der Organischen Chemie、Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.K)、Fiesers’ Reagents for Organic Synthesis(John Wiley & Sons,Inc.)等の文献に記載のもの又はSciFinder(Chemical Abstracts Service,American Chemical Society)、Reaxys(Elsevier Ltd.)等のデータベースに収載のものが挙げられる。
【0122】
また、各工程において適宜反応溶媒を用いることができる。溶媒の具体例としてはエタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、水等が挙げられる。有機溶媒及び水の二相系で反応を行う場合、相間移動触媒を添加することも可能である。相間移動触媒の具体例としてはベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0123】
また、各工程において必要に応じて精製を行うことができる。精製方法としてはクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華、再沈殿、吸着、分液処理等が挙げられる。精製剤の具体例としてはシリカゲル、NHシリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【0124】
(液晶組成物)
【0125】
一般式(Y)で表される化合物は液晶組成物に添加することができる。液晶組成物に対し本発明の一般式(Y)で表される化合物を1種又は2種以上添加してもよく、一般式(Y)で表される化合物に加えて、液晶組成物に用いられる公知の重合性化合物、酸化防止剤等を更に含有していてもよい。
【0126】
2種以上の液晶分子を混合して使用する場合には、種々の組み合わせが可能であるが、少なくとも1種類は以下の一般式(II)を含み、液晶組成物の誘電率異方性が正の場合は、更に以下の一般式(IIIa)、(IIIb)又は(IIIc)を含み、液晶組成物の誘電率異方性が負の場合は、以下の一般式(IVa)、(IVb)又は(IVc)で表される化合物を含有しても良い。
【0127】
一般式(II)で表される化合物を以下に示す。
【0128】
【化50】
【0129】
(式中、R21及びR22はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、
21、M22及びM23はお互い独立して
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)、2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基及び
(c) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、
oは0、1又は2を表し、
21及びL22はお互い独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-を表し、L22が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、M23が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良い。)
【0130】
一般式(II)で表される化合物において、R21及びR22はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されたもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されたものも含む。)が好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から5のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数3から6のアルケニルオキシ基がより好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数1から5のアルコキシ基が特に好ましい。
【0131】
21、M22及びM23はお互い独立してトランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個のCH基が酸素原子に置換されているものを含む)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個以上のCH基は窒素原子に置換されているものを含む)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基が好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基、1,4-フェニレン基又は1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基が特に好ましい。oは0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましい。L21及びL22はお互い独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-又は-CHO-がより好ましく、単結合又は-CHCH-が更に好ましい。
【0132】
上記の選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
【0133】
更に詳述すると、一般式(II)は具体的な構造として以下の一般式(II-A)から一般式(II-P)からなる群で表される化合物が好ましい。
【0134】
【化51】
【0135】
(式中、R23及びR24はそれぞれ独立的に炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシ基、炭素数2から10のアルケニル基又は炭素数3から10のアルケニルオキシ基を表す。)
【0136】
23及びR24はそれぞれ独立的に炭素数1から10のアルキル基、炭素数1から10のアルコキシ基又は炭素数2から10のアルケニル基がより好ましく、炭素数1から5のアルキル基又は炭素数1から10のアルコキシ基が更に好ましい。また、応答速度を高める観点からは炭素数1から5のアルケニル基が好ましい。
【0137】
一般式(II-A)から一般式(II-P)で表される化合物中、一般式(II-A)、一般式(II-B)、一般式(II-C)、一般式(II-E)、一般式(II-H)、 一般式(II-I)、一般式(II-I)又は一般式(II-K)で表される化合物が好ましく、一般式(II-A)、一般式(II-C)、一般式(II-E)、一般式(II-H)又は一般式(II-I)で表される化合物が更に好ましい。
【0138】
本願発明では一般式(II)で表される化合物を少なくとも1種を含有するが、1種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましく、一般式(II)で表される化合物の含有率の下限値は5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることが更に好ましく、30質量%であることが特に好ましく、上限値としては80質量%が好ましく、70質量%が更に好ましく、60質量%が更に好ましい。
【0139】
液晶組成物の誘電率異方性が正の場合は、更に一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)
【0140】
【化52】
【0141】
(式中、R31、R32及びR33はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、
31、M32、M33、M34、M35、M36、M37及びM38はお互い独立して、
(d) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(e) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい)、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基及び、
(f) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(d)、基(e)又は基(f)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、
31、L32、L33、L34、L35、L36、L37及びL38はお互い独立して単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、M32、M34、M35、M37、M38、L31、L33、L35、L36及び/又はL38が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、
31、X32、X33、X34、X35、X36及びX37はお互い独立して水素原子又はフッ素原子を表し、
31、Y32及びY33はお互い独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基又はジフルオロメトキシ基を表し、
p、q、r、s及びtはお互い独立して、0、1又は2を表すが、q+r及びs+tは2以下である。)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。
【0142】
一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)で表される化合物において、R31、R32及びR33はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基、炭素数1~15の直鎖状アルキル基又は炭素数2~15のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されているもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されているものも含む。)が好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ基又は炭素数2~10アルケニル基がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基が特に好ましい。
【0143】
31、M32、M33、M34、M35、M36、M37及びM38はお互い独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられているものも含む。)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられているものも含む)、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基で表す基(各々の基はそれぞれ水素原子がシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されているものも含む。)が好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基が特に好ましい。
【0144】
31、L32、L33、L34、L35、L36、L37及びL38はお互い独立して単結合、-OCO-、-COO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CHCH-、-(CH-又は-C≡C-がより好ましく、単結合又は-CHCH-が特に好ましい。X31、X32、X33、X34、X35、X36及びX37はお互い独立して水素原子又はフッ素原子をし、Y31、Y32及びY33はお互い独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオシアナト基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基又は炭素原子数1~12のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基又は炭素原子数1~12のアルキル基を表すことが好ましく、フッ素原子を表すことが特に好ましい。p、q、r、s及びtはお互い独立して、0、1又は2を表すが、q+r及びs+tは2以下を表す。
【0145】
上記の選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
【0146】
具体的には以下の一般式(IIIa-1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0147】
【化53】
【0148】
(式中、R34は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L39及びL40はそれぞれ独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、M38は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、X32は水素原子又はフッ素原子を表し、pは0又は1を表し、Y34はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)
【0149】
更に具体的には以下の一般式(IIIa-2a)~一般式(IIIa-4d)
【0150】
【化54】
【0151】
【化55】
【0152】
【化56】
【0153】
(式中、R34は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、X31及びX32はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、Y31はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)で表される構造が好ましく、
【0154】
【化57】
【0155】
(式中、R34は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、Y31はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)で表される構造も好ましい。
【0156】
一般式(IIIb)は具体的な構造として以下の一般式
【0157】
【化58】
【0158】
【化59】
【0159】
【化60】
【0160】
(式中、R35は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、Y35はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)で表される構造が好ましく、
【0161】
一般式(IIIc)は具体的な構造として以下の一般式
【0162】
【化61】
【0163】
【化62】
【0164】
【化63】
【0165】
(式中、R36は炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、Y36はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はトリフルオロメトキシ基を表す。)で表される構造が好ましい。
【0166】
一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有するが、1種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましく、一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)で表される化合物からなる群の含有率の下限値は5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることが好ましく、上限値は80質量%が好ましく、70質量%が好ましく、60質量%が好ましく、50質量%が更に好ましい。
【0167】
液晶組成物の誘電率異方性が負の場合は、更に一般式(IVa)、一般式(IVb)及び一般式(IVc)
【0168】
【化64】
【0169】
(式中R41、R42、R43、R44、R45及び、R46はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されていても良く、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、
41、M42、M43、M44、M45、M46、M47、M48及びM49はお互い独立して、
(g) トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられてもよい)、
(h) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は窒素原子に置き換えられてもよい)及び、
(i) 1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(g)、基(h)又は基(i)に含まれる水素原子はそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されていても良く、
41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48及びL49はお互い独立して単結合、-COO-、-OCO-、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、M42、M43、M45、M46、M48、M49、L41、L43、L44、L46、L47及び/又はL49が複数存在する場合は、それらは同一でも良く異なっていても良く、
41、X42、X43、X44、X45、X46、X47及びX48はお互い独立して水素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はフッ素原子を表すが、X41及びX42の何れか一つはフッ素原子を表し、X43、X44及びX45の何れか一つはフッ素原子を表し、X46、X47及びX48の何れか一つはフッ素原子を表すが、X46及びX47は同時にフッ素原子を表すことはなく、X46及びX48は同時にフッ素原子を表すことはなく、Gはメチレン基又は-O-を表し、
u、v、w、x、y及びzはお互い独立して、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下である。)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を含有することが好ましい。
【0170】
また、一般式(IVa)、一般式(IVb)及び一般式(IVc)で表される化合物において、R41、R42、R43、R44、R45及びR46はお互い独立して炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基、炭素数1~15の直鎖状アルキル基又は炭素数2~15のアルケニル基(これらの基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置換されているもの、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されているものも含む。)が好ましく、炭素数1~10の直鎖状アルキル基、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ基又は炭素数2~10アルケニル基がより好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基又は炭素数1~8のアルコキシ基が特に好ましい。M41、M42、M43、M44、M45、M46、M47、M48及びM49はお互い独立して、トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は隣接していない2個以上のメチレン基は-O-又は-S-に置き換えられているものも含む。)、1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられているものも含む)、1,4-シクロヘキセニレン基、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及びデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基で表す基(各々の基に含まれる水素原子がそれぞれシアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又は塩素原子で置換されているものも含む。)が好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基、1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基又は2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン基がより好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基が更に好ましく、トランス-1,4-シクロへキシレン基が特に好ましい。L41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48及びL49はお互い独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCO-、-COO-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-が好ましく、単結合、-CHCH-、-OCH-又は-CHO-がより好ましい。X41、X42、X43、X44、X45、X46及びX47はお互い独立して水素原子又はフッ素原子を表し、Gはメチレン基又は-O-を表し、u、v、w、x、y及びzはお互い独立して、0、1又は2を表すが、u+v、w+x及びy+zは2以下で表す。
【0171】
上記の選択肢の組み合わせにより形成される構造のうち、-CH=CH-CH=CH-、-C≡C-C≡C-及び-CH=CH-C≡C-は化学的な安定性から好ましくない。またこれら構造中の水素原子がフッ素原子に置き換わったものも同様に好ましくない。また酸素同士が結合する構造、硫黄原子同士が結合する構造及び硫黄原子と酸素原子が結合する構造となることも同様に好ましくない。また窒素原子同士が結合する構造、窒素原子と酸素原子が結合する構造及び窒素原子と硫黄原子が結合する構造も同様に好ましくない。
【0172】
一般式(IVa)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVa-1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0173】
【化65】
【0174】
(式中、R47及びR48はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L50、L51及びL52はそれぞれ独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、M50は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、u及びvはそれぞれ独立して0又は1を表す。)
【0175】
更に具体的には以下の一般式(IVa-2a)~一般式(IVa-3i)
【0176】
【化66】
【0177】
【化67】
【0178】
(式中、R47及びR48はそれぞれ独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましく、R47及びR48がそれぞれ独立して炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1~8のアルコキシル基が更に好ましい。
【0179】
一般式(IVb)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVb-1)で示される構造を表すことが好ましい。
【0180】
【化68】
【0181】
(式中、R49及びR50はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L52、L53及びL54はそれぞれ独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、M51、M52及びM53は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、w1及びx1は独立して0、1又は2を表すが、w1+x1は2以下を表す。)
【0182】
更に具体的には以下の一般式(IVb-2a)~(IVb-3l)
【0183】
【化69】
【0184】
【化70】
【0185】
(式中、R49及びR50はそれぞれ独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)で表される構造が好ましい。
【0186】
一般式(IVc)で表される化合物において、具体的には以下の一般式(IVc-1a)及び一般式(IVc-1b)で示される構造を表すことが好ましい。
【0187】
【化71】
【0188】
(式中、R51及びR52はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表し、L56、L57及びL58はそれぞれ独立して単結合、-CHCH-、-(CH-、-OCH-、-CHO-、-OCF-、-CFO-又は-C≡C-を表し、M54、M55及びM56は1,4-フェニレン基又はトランス-1,4-シクロヘキシレン基を表し、y1及びz1は独立して0、1又は2を表すが、y1+z1は2以下を表す。)
【0189】
更に具体的には以下の一般式(IVc-2a)~(IVc-2g)
【0190】
【化72】
【0191】
(式中、R51及びR52はお互い独立して炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシル基又は炭素原子数2~8のアルケニル基を表す。)
【0192】
第三成分として使用する一般式(IIIa)、一般式(IIIb)及び一般式(IIIc)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物又は一般式(IVa)、一般式(IVb)及び一般式(IVc)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有するが、2種~10種含有することが好ましく、2種~8種含有することが特に好ましく、含有率の下限値が5質量%であることが好ましく、10質量%であることがより好ましく、20質量%であることがより好ましく、上限値が80質量%であることが好ましく、70質量%であることが好ましく、60質量%であることが好ましく、50質量%であることが好ましい。
【0193】
本願発明の重合性化合物を含む液晶組成物において、Δnは0.08~0.25の範囲であることが好ましい。
【0194】
本願発明の重合性化合物を含む液晶組成物において、Δεは液晶表示素子の表示モードによって、正又は負のΔεを有するものを用いることができる。VAモードの液晶表示素子においては、負のΔεを有する液晶組成物を使用する。その場合のΔεは、-1以下が好ましく、-2以下がより好ましい。
【0195】
本願発明の重合性化合物を含む液晶組成物は、広い液晶相温度範囲(液晶相下限温度と液晶相上限温度の差の絶対値)を有するが、液晶相温度範囲が100℃以上であることが好ましく、120℃以上がより好ましい。また、液晶相上限温度は70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましい。更に、液晶相下限温度は-20℃以下であることが好ましく、-30℃以下がより好ましい。本願発明の液晶組成物は、上記の化合物以外に、STN液晶用のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよい。
【0196】
本発明では、本発明の重合性開始剤化合物のみでも良いが、液晶の配向安定性を向上させるにはさらにメソゲン構造を有する重合性化合物を併用することが好ましい。重合性化合物は、液晶組成物に用いられる公知の重合性化合物であってよい。重合性化合物の例としては、一般式(P)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0197】
【化73】
【0198】
(上記一般式(P)中、Rp1は、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基又は-Spp2-Pp2を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の-CH-はそれぞれ独立して-CH=CH-、-C≡C-、-O-、-CO-、-COO-又は-OCO-によって置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立して、シアノ基、フッ素原子又は塩素原子で置換されていても良く、
p1及びPp2はそれぞれ独立して、一般式(Pp1-1)から式(Pp1-9):
【0199】
【化74】
【0200】
(式中、Rp11及びRp12はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基を表し、Wp11は単結合、-O-、-COO-、炭素原子数1~5のアルキレン基を表し、tp11は、0、1又は2を表すが、分子内にRp11、Rp12、Wp11及び/又はtp11が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良い。)のいずれかを表し、
Spp1及びSpp2はそれぞれ独立して、単結合又はスペーサ基を表し、
p1及びZp2はそれぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-CH-、-OCH-、-CHO-、-CO-、-C-、-COO-、-OCO-、-OCOOCH-、-CHOCOO-、-OCHCHO-、-CO-NRZP1-、-NRZP1-CO-、-SCH-、-CHS-、-CH=CRZP1-COO-、-CH=CRZP1-OCO-、-COO-CRZP1=CH-、-OCO-CRZP1=CH-、-COO-CRZP1=CH-COO-、-COO-CRZP1=CH-OCO-、-OCO-CRZP1=CH-COO-、-OCO-CRZP1=CH-OCO-、-(CH-COO-、-(CH-OCO-、-OCO-(CH-、-(C=O)-O-(CH-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF-、-CFO-、-OCF-、-CFCH-、-CHCF-、-CFCF-又は-C≡C-(式中、zはそれぞれ独立して1~4の整数を表し、RZP1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表すが、分子内にRZP1が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良い。なお、式中の*はSpp1又はSpp2への結合点を表す。)
を表し、
p1及びAp2はそれぞれ独立して、
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH-又は隣接していない2個以上の-CH-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレンジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンジイル基、デカヒドロナフタレンジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基又はアントラセン-2,6-ジイル基(これら基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、
p3は上記の基(a)、基(b)及び基(c)、ならびに単結合からなる群より選ばれる基を表し、
上記の基(a)、基(b)及び基(c)は、それぞれ独立して、この基中に存在する水素原子は、シアノ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素原子数1~8のアルケニル基又は-Spp2-Pp2で置換されていても良く、
p1は、0、1、2又は3を表し、分子内にZp1、Ap2、Spp2及び/又はPp2が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていても良いが、
p1が0であり且つAp1がナフタレンジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基又はアントラセン-2,6-ジイル基以外の基である場合は、Ap3は単結合以外の基を表す。)
一般式(P)で表される重合性液晶化合物の具体的な例として(P-2-1)~(P-2-25)に表す。ここでa、bは、2~10の整数を表す。
【0201】
【化75】
【0202】
【化76】
【0203】
【化77】
【0204】
また本願発明の重合性化合物を含有する液晶組成物は、光重合開始剤が存在しない場合でも重合は進行するが、重合を促進するために光重合開始剤を含有しても良い。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。特にアセトフェノン類、ベンジルケタール類が好ましく、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「オムニラッド184」、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン「オムニラッド1173」、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モリホリノプロパン-1「オムニラッド907」、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン「オムニラッド369」)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン「オムニラッド379」、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルフォスフィンオキサイド「オムニラッドTPO」、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニル-フォスフィンオキサイド「オムニラッド819」(IGM Resins株式会社製)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)],2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン「イルガキュア651」、エタノン「イルガキュアOXE01」)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)「イルガキュアOXE02」、「イルガキュアOXE04」(BASF株式会社製)、「アデカアークルズNCI-831」、「アデカアークルズNCI-930」、「アデカアークルズN-1919」(ADEKA社製)、2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアDETX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬社製「カヤキュアEPA」)との混合物、イソプロピルチオキサントン(ワ-ドプレキンソップ社製「カンタキュア-ITX」)とp-ジメチルアミノ安息香酸エチルとの混合物、「エサキュア ONE」、「エサキュアKIP150」、「エサキュアKIP160」、「エサキュア1001M」、「エサキュアA198」、「エサキュアKIP IT」、「エサキュアKTO46」、「エサキュアTZT」(lamberti株式会社製)、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアPBZ」、「ベンゾフェノン」(LAMBSON社製)等が挙げられる。さらに、光カチオン開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物などが挙げられる。
【0205】
本願発明の重合性化合物を含む液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、さらに他の安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等や下記(AD-1)~(AD-11)等のヒンダードフェノール類、本発明以外のヒンダードアミン類が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005~1質量%の範囲が好ましく、0.02~0.5質量%が更に好ましく、0.03~0.1質量%が特に好ましい。安定剤の具体的構造を下記の(AD-1)~(AD-11)に示す。
【0206】
【化78】
【0207】
【化79】
【0208】
(液晶表示素子)
【0209】
本実施形態の液晶組成物は、液晶表示素子に適用される。液晶表示素子は、アクティブマトリックス駆動用液晶表示素子であってよい。液晶表示素子は、PSA型、PSVA型、VA型、IPS型、FFS型又はECB型の液晶表示素子であってよく、好ましくはPSA型、PSVA型の液晶表示素子である。
【実施例
【0210】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。化合物の純度はGC又はUPLCによって分析した。化合物および反応溶媒の略称は以下の通りである:テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、炭酸カリウム(K2CO3)、トリエチルアミン(NEt3)、4,4-ジメチルアミノ-ピリジン(DMAP)、酸化ジブチル錫(Bu2SnO)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(Pd(PPh3)4)、5%パラジウムカーボン(Pd/C)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)
【0211】
(実施例1)化合物(RM-1)の製造
【0212】
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器にアクリル酸(4‘-((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)20g、アセチルアセトン5.9g、DBU4.5g、THF200mLを加え、室温で3時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチル300mlを加え有機層を水、飽和食塩水で洗浄し溶媒を留去した。その後、アルミナカラムによる精製を行い、溶媒を留去した後、テトラヒドロフラン100mlに溶解させ、室温で2Nの塩酸20mlを加え6時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル200ml加え、水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去した。その後、トルエン中で分散洗浄を行った後、シリカゲルカラムで精製を行い化合物(1) 27.1gを得た。
【0213】
【化80】
【0214】
窒素雰囲気下、撹拌装置、温度計、冷却管、ディーンスターク管を備えた反応容器に、上記化合物(1) 10g、メタクリル酸エチル 5g、酸化ジブチル錫 200mg、THF 150mLを加えて4時間加熱還流し、エステル交換反応を行った。反応終了後、水、飽和食塩水で有機層を洗浄し、溶媒を留去した。その後、トルエン中で分散洗浄を行った後、アミノシリカゲルカラムによる精製を行い、目的化合物(RM-1) 8.7gを得た。
【0215】
【化81】
【0216】
GC-MS:m/z 717
融点:144℃
H-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:2.04-2.07(m,6H),2.22(s,6H),2.37-2.54(m,8H),5.75-5.77(m,2H),6.34-6.37(m,2H),7.13-7.27(m,8H),7.53-7.56(m,8H)
【0217】
(実施例2)化合物(RM-2)の製造
【0218】
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に上記化合物(1) 10g、トリエチルアミン 4.3g、アクリル酸クロリド 4.5g、ジクロロメタン 100mL加えて室温で4時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム溶液、水、飽和食塩水で有機層を洗浄し溶媒を留去し、濃縮物をアルミナカラムにより精製し、目的化合物(RM-2) 9.1gを得た。
【0219】
【化82】
【0220】
GC-MS:m/z 689
融点:144℃
H-NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:2.21(s,6H),2.38-2.52(m,8H),6.00(m,1H),6.03(m,1H),6.30-6.40(m,2H),6.59(m,1H),6.64(m,1H)7.12-7.22(m,8H),7.50-7.59(m,8H)
【0221】
実施例1と同様な反応、及び必要に応じて公知の方法に準拠した方法を用いて、下記の合成ルートにより実施例3~9を製造した。
【0222】
(実施例3)化合物(RM-3)の製造
【0223】
【化83】
【0224】
GC-MS:m/z 772
【0225】
(実施例4)化合物(RM-4)の製造
【0226】
【化84】
【0227】
GC-MS:m/z 804
【0228】
(実施例5)化合物(RM-5)の製造
【0229】
【化85】
【0230】
GC-MS:m/z 632
【0231】
(実施例6)化合物(RM-6)の製造
【0232】
【化86】
【0233】
GC-MS:m/z 420
【0234】
(実施例7)化合物(RM-7)の製造
【0235】
【化87】
【0236】
GC-MS:m/z 572
【0237】
(実施例8)化合物(RM-8)の製造
【0238】
【化88】
【0239】
GC-MS:m/z 750
【0240】
(実施例9)化合物(RM-9)の製造
【0241】
【化89】
【0242】
GC-MS:m/z 750
【0243】
<液晶組成物の調整・評価>
以下の実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
(側鎖)
-n -C2n+1 炭素数nの直鎖状のアルキル基
n- C2n+1- 炭素数nの直鎖状のアルキル基
-On -OC2n+1 炭素数nの直鎖状のアルコキシ基
nO- C2n+1O- 炭素数nの直鎖状のアルコキシ基
-V -CH=CH
V- CH=CH-
-V1 -CH=CH-CH
1V- CH-CH=CH-
-F -F
-OCF3 -OCF
【0244】
(連結基)
-1O- -CH-O-
-O1- -O-CH
-2- -CH-CH
-COO- -COO-
-OCO- -OCO-
- 単結合
【0245】
(環構造)
【0246】
【化90】
【0247】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
ni :ネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
Δn :20℃における屈折率異方性
η :20℃における粘度(mPa・s)
γ :20℃における回転粘性(mPa・s)
Δε :20℃における誘電率異方性
33 :20℃における弾性定数K33(pN)
【0248】
(液晶表示素子の製造方法)
【0249】
まず、垂直配向を誘起するポリイミド配向膜を塗布しラビング処理したITO付き基板を含むセルギャップ3.5μmの液晶セルに、後述する重合性化合物含有液晶組成物を真空注入法で注入した。
【0250】
その後、重合性化合物含有液晶組成物を注入した液晶セルに、蛍光UVランプを用いて、90分間紫外線を照射し液晶表示素子を得た。このとき、中心波長313nmの条件で測定した照度が3mW/cmになるように蛍光UVランプを調整した。
【0251】
(重合性化合物残留量の評価方法)
【0252】
上述の照射条件で、紫外線を150秒照射した後の液晶表示素子中の重合性化合物の残留量[ppm]を測定した。この重合性化合物の残留量の測定方法を説明する。まず試験管に分解した液晶表示素子とアセトニトリルを入れ、振とうしてろ過し、液晶組成物、重合物、未反応の重合性化合物を含む溶出成分のアセトニトリル溶液を得た。これを高速液体クロマトグラフで分析し、各成分のピーク面積を算出した。指標とする液晶化合物のピーク面積と未反応の重合性化合物のピーク面積比及び当初添加した重合性化合物の量から重合性化合物の残留量を決定した。なお、重合性化合物の残留量の検出限界は100ppmであった。
【0253】
(プレチルト角の評価方法)
【0254】
まず、重合性化合物含有液晶組成物を注入した液晶セルのプレチルト角を測定し、プレチルト角(紫外線照射前)とした。この液晶セルに周波数100Hzで電圧を10V印加しながら上述の照射条件で紫外線を150秒照射した。その後、プレチルト角を測定し、プレチルト角(紫外線照射後)とした。測定したプレチルト角(紫外線照射前)からプレチルト角(紫外線照射後)を引いた値を紫外線照射によるプレチルト角変化量[°]とした。プレチルト角は、シンテック製OPTIPROを用いて測定した。
【0255】
(VHRの評価方法)
【0256】
重合性化合物含有液晶組成物を注入した液晶セルに、上述の照射条件で紫外線を60分照射し、1V、0.6Hz、60℃の条件でVHRを測定した。その値が95%以上のものをA、95%未満90%以上のものをB、90%未満~80%以上のものをC、80%未満のものをDとした。
【0257】
(液晶組成物の調製と評価結果)
【0258】
LC-001~LC-008の液晶組成物を調製し、その物性値を測定した。液晶組成物の構成とその物性値の結果は表1のとおりであった。
【0259】
【表1】
【0260】
(比較例1~12)
比較例1及び2として、液晶組成物(LC-001)及び(LC-002)に対し、重合性化合物(RM-R1)をそれぞれ3000ppm添加し液晶組成物を作成した。また、比較例3~10として、液晶組成物(LC-001)~(LC-008)のそれぞれに対し、重合性化合物(RM-R1)2700ppm及び開始剤化合物(R-1)300ppmを添加し液晶組成物を作成した。また、比較例11及び12として、液晶組成物(LC-001)及び(LC-002)のそれぞれに対し、重合性化合物(RM-R1)2700ppm及び重合性開始剤化合物(R-2)300ppmを添加した液晶組成物を作成した。これら液晶組成物を各々液晶セルに注入し、上記の各種評価を行った。比較例1~12の評価結果を表2に示す。
【0261】
【化91】
【0262】
(実施例10~37)
【0263】
実施例10~18として、液晶組成物(LC-001)に対し上記重合性化合物(RM-R1)2700ppmを加え、さらに実施例1~9で得られた重合性開始剤化合物(RM-1)~(RM-9)を各々300ppm添加して液晶組成物を作成した。また、実施例19~27として、液晶組成物(LC-002)に対し上記重合性化合物(RM-R1)2700ppmを加え、さらに上記重合性開始剤化合物(RM-1)~(RM-9)を各々300ppm添加して液晶組成物を作成した。また、実施例28~33として、液晶組成物(LC-003)~(LC-008)に対し、上記重合性化合物(RM-R1)2700ppm及び上記重合性開始剤化合物(RM-1)を300ppm添加して液晶組成物を作成した。また、実施例34~37として、液晶組成物(LC-001)及び(LC-002)に対し、上記重合性化合物(RM-R1)3000ppm、及び、上記重合性開始剤化合物(RM-1)又は(RM-2)を1000ppm添加し、液晶組成物を作成した。また、実施例38~41として、液晶組成物(LC-001)及び(LC-002)に対し、上記重合性化合物(RM-R2)又は(RM-R3)2700ppm、及び、上記重合性開始剤化合物(RM-1)を300ppm添加し、液晶組成物を作成した。これら液晶組成物を各々液晶セルに注入し、上記の各種評価を行った。実施例10~41の評価結果を表2に示す。
【0264】
【表2】
【0265】
本発明の重合性開始剤化合物含有液晶組成物である実施例10~41は、紫外線照射後の重合性化合物の残量が比較例1~12よりも少なく、重合性化合物の重合速度が十分に速いことが分かった。また、紫外線照射によるプレチルト角変化量が比較例1~12よりも大きい値を示し、プレチルト角が短い時間で形成できることがわかった。また、紫外線照射後のVHRが十分に高いことを確認した。
【0266】
この結果から、本願発明の化合物は、応答液晶組成物の信頼性を損なうことなく、重合速度が十分に速く、また、より短い紫外線照射時間でプレチルト角を形成できる効果があることが分かる。