(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エソメプラゾール顆粒ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20241219BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241219BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P1/04
A61K9/16
A61K47/14
A61K47/10
A61K47/38
(21)【出願番号】P 2020103122
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】安田 将之
(72)【発明者】
【氏名】中村 真美
(72)【発明者】
【氏名】松田 築
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099567(JP,A)
【文献】特開平10-330253(JP,A)
【文献】特表2002-532425(JP,A)
【文献】特表2012-514648(JP,A)
【文献】特表2013-510128(JP,A)
【文献】特表2018-521137(JP,A)
【文献】特表平08-500109(JP,A)
【文献】国際公開第00/035448(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/080970(WO,A2)
【文献】国際公開第94/004133(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/054930(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/012935(WO,A1)
【文献】米国特許第05910319(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0146615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エソメプラゾール類を含む粒状核部と、この粒状核部を被覆するコート部とで形成されている顆粒であって、
前記エソメプラゾール類がエソメプラゾールあるいはその塩および/または水和物であり、前記コート部が、腸溶層と、この腸溶層を被覆し、モノステアリン酸グリセリンおよびオキシアルキレン基を有する界面活性剤を含み、かつ腸溶性ポリマーを実質的に含まない最外層とを含む顆粒。
【請求項2】
エソメプラゾール類がエソメプラゾールマグネシウム水和物である請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記モノステアリン酸グリセリンの割合が、前記最外層100質量部に対して30~60質量部である請求項1または2に記載の顆粒。
【請求項4】
前記最外層がヒプロメロースをさらに含み、このヒプロメロースの割合が、前記最外層100質量部に対して10~60質量部である請求項1~3のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項5】
前記オキシアルキレン基を有する界面活性剤がポリソルベート80である請求項1~4のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項6】
前記オキシアルキレン基を有する界面活性剤の割合が、前記モノステアリン酸グリセリン100質量部に対して1~30質量部である請求項1~5のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の顆粒を含むカプセル剤。
【請求項8】
エソメプラゾールあるいはその塩および/または水和物であるエソメプラゾール類を含む粒状核部を形成する粒状核部形成工程と、
前記粒状核部を被覆するコート部を形成するコート部形成工程とを含む顆粒の製造方法であって、
前記コート部形成工程が、腸溶層を形成する腸溶層形成工程と、前記腸溶層の外側に、モノステアリン酸グリセリンおよびオキシアルキレン基を有する界面活性剤を含み、かつ腸溶性ポリマーを実質的に含まない最外層を形成する最外層形成工程とを含む製造方法。
【請求項9】
エソメプラゾールあるいはその塩および/または水和物であるエソメプラゾール類を含む粒状核部を形成する粒状核部形成工程と、
前記粒状核部を被覆するコート部を形成するコート部形成工程とを含む方法で得られた顆粒をカプセルに充填するカプセル剤の製造方法であって、
前記コート部形成工程が、腸溶層を形成する腸溶層形成工程と、前記腸溶層の外側に、モノステアリン酸グリセリン
およびオキシアルキレン基を有する界面活性剤を含み、かつ腸溶性ポリマーを実質的に含まない最外層を形成する最外層形成工程とを含む製造方法。
【請求項10】
エソメプラゾールあるいはその塩および/または水和物であるエソメプラゾール類を含む粒状核部と、この粒状核部を被覆するコート部とで形成され、かつ前記コート部が腸溶層を含む顆粒において、カプセル充填時における充填量のばらつきを抑制する方法であって、
前記腸溶層の外側に、モノステアリン酸グリセリン
およびオキシアルキレン基を有する界面活性剤を含み、かつ腸溶性ポリマーを実質的に含まない最外層を形成することにより、前記充填量のばらつきを抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトンポンプインヒビターとして作用するエソメプラゾールを有効成分とする顆粒ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトンポンプインヒビターとして作用するエソメプラゾールは、ラセミ体であるオメプラゾールを光学分割したS-エナンチオマー[または(-)-エナンチオマー]であるが、酸に弱いため、経口投与される経口製剤では腸溶性の高分子でコーティングする必要がある。
【0003】
特表2002-532425号公報(特許文献1)には、エソメプラゾールのラセミ体であるオメプラゾールや、オメプラゾールの類縁体であるランソプラゾールを含む経口投与用医薬剤形が開示されており、オメプラゾールを含むコア材料を、分離層でコーティングし、さらに腸溶性コーティングしたペレットを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびMg-ステアレートからなる組成物でオーバーコーティングされたペレットと、賦形剤とで形成された錠剤、ランソプラゾールを含むコア材料を、分離層でコーティングし、さらに腸溶性コーティングしたペレットを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびMg-ステアレートからなるオーバーコーティングされたペレットと、ミソプロストールからなるペレットと、微結晶セルロースと、架橋ポリビニルピロリドンと、ナトリウムステアリルフマレートとで形成された錠剤などが調製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1などの腸溶層がコーティングされた経口製剤では、経口製剤の製造においてハンドリング性が低い。特に、エソメプラゾール経口製剤としてカプセル剤を調製する際に、カプセル充填時における充填量のばらつきが激しい。
【0006】
従って、本発明の目的は、経口製剤を調製する際の取り扱い性に優れるエソメプラゾール含有顆粒ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、腸溶層がコーティングされたエソメプラゾール含有粒状核部を、多価アルコール脂肪酸エステルを含む最外層で被覆することにより、経口製剤を調製する際の取り扱い性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の顆粒(エソメプラゾール顆粒)は、エソメプラゾール類を含む粒状核部と、この粒状核部を被覆するコート部とで形成されている顆粒であって、前記コート部が、腸溶層と、この腸溶層を被覆し、かつ多価アルコール脂肪酸エステルを含む最外層とを含む。前記エソメプラゾール類は、エソメプラゾールマグネシウム水和物であってもよい。前記最外層は腸溶性ポリマーを実質的に含まないのが好ましい。前記多価アルコール脂肪酸エステルはモノステアリン酸グリセリンであってもよい。前記多価アルコール脂肪酸エステルの割合は、前記最外層100質量部に対して30~60質量部であってもよい。前記最外層はオキシアルキレン基を有する界面活性剤をさらに含んでいてもよい。前記最外層はヒプロメロースをさらに含み、このヒプロメロースの割合は、前記最外層100質量部に対して10~60質量部であってもよい。前記オキシアルキレン基を有する界面活性剤はポリソルベート80であってもよい。前記オキシアルキレン基を有する界面活性剤の割合は、前記多価アルコール脂肪酸エステル100質量部に対して1~30質量部であってもよい。
【0009】
本発明には、前記顆粒を含むカプセル剤も含まれる。
【0010】
本発明には、エソメプラゾール類を含む粒状核部を形成する粒状核部形成工程と、前記粒状核部を被覆するコート部を形成するコート部形成工程とを含む顆粒の製造方法であって、前記コート部形成工程が、腸溶層を形成する腸溶層形成工程と、前記腸溶層の外側に多価アルコール脂肪酸エステルを含む最外層を形成する最外層形成工程とを含む製造方法も含まれる。
【0011】
本発明には、エソメプラゾール類を含む粒状核部と、この粒状核部を被覆するコート部とで形成され、かつ前記コート部が腸溶層を含む顆粒において、カプセル充填時における充填量ばらつきを抑制する方法であって、前腸溶層の外側に、多価アルコール脂肪酸エステルを含む最外層を形成することにより、前記充填量ばらつきを抑制する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、腸溶層がコーティングされたエソメプラゾール含有粒状核部が、多価アルコール脂肪酸エステルを含む最外層で被覆されているため、顆粒に帯電する静電気を低減できるためか、経口製剤を調製する際の取り扱い性(例えば、設備への顆粒の付着を低減することにより作業性)を向上でき、特に、カプセル剤の充填における充填量ばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1および参考例1で得られたエソメプラゾール顆粒の静電気付着性の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[粒状核部]
本発明の顆粒(エソメプラゾール顆粒)は、中心部に粒状核部を含む。この粒状核部は、有効成分または活性成分として、エソメプラゾールを含んでいればよいが、球状核部中でのエソメプラゾールの形態としては、エソメプラゾールの他、塩および/または溶媒和物であってもよい。
【0015】
塩としては、薬学的に許容できる塩であれば、特に限定されないが、通常、塩基との塩である。塩基としては、例えば、無機塩基[例えば、アンモニア;アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)、他の金属(亜鉛、アルミニウムなど)など]、有機塩基(例えば、メチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類;ポリアミン類;エタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、ピコリンなどの環状アミン類)などが挙げられる。これらの塩基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩基のうち、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属が好ましく、マグネシウムなどのアルカリ土類金属が特に好ましい。
【0016】
溶媒和物を形成する溶媒としては、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどのC1-4アルカノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテルなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエンなど)、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。溶媒和物としては、水和物が好ましく、三水和物が特に好ましい。
【0017】
これらのうち、エソメプラゾールの形態は、エソメプラゾールの塩および/または水和物の形態が好ましく、通常、エソメプラゾール塩の水和物(エソメプラゾールマグネシウムの三水和物など)の形態である。
【0018】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、エソメプラゾールあるいはその塩および/または溶媒和物、すなわちエソメプラゾール、エソメプラゾール塩、エソメプラゾール溶媒和物およびエソメプラゾール塩の溶媒和物からなる群より選択された少なくとも1種を総称してエソメプラゾール類と称する。
【0019】
エソメプラゾール類は、非結晶体であってもよく、結晶体であってもよい。結晶体の形状としては、例えば、板状結晶、針状結晶、柱状結晶、骸晶、対称な樹枝状結晶、非対称な樹枝状結晶、球晶などが挙げられる。粒状核部をエソメプラゾール類単独で形成する場合、製剤設計性を向上できる点から、結晶体が好ましく、球晶が特に好ましい。
【0020】
この粒状核部は、エソメプラゾール類を含み、粒状であれば特に限定されず、エソメプラゾール類単独で形成された粒状核部であってもよいが、生産性などの点から、エソメプラゾール類と他の成分との複合体で形成された粒状核部、例えば、他の成分を含む核粒子とエソメプラゾールを含むコーティング層とで形成された粒状核部が好ましい。
【0021】
エソメプラゾール類の割合は、粒状核部100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば20質量部以上、好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上であり、最も好ましくは50質量部以上である。粒状核部が前記複合体で形成されている場合、エソメプラゾール類の割合は、粒状核部100質量部に対して10~90質量部であってもよく、例えば20~80質量部、好ましくは30~70質量部、さらに好ましくは40~60質量部である。エソメプラゾール類を上記の割合にすることで、粒状核部の粒径が大きくなりすぎることを防ぎ、製剤化した際に服用しやすいサイズとすることができる。
【0022】
粒状核部の形状としては、例えば、球状、楕円体状、多面体状、板状、繊維状などが挙げられる。これらのうち、略球状や真球状などの球状が好ましい。
【0023】
複合体で形成された粒状核部(特に、球状核部)としては、例えば、エソメプラゾール類を含む組成物で球状賦形剤の表面を被覆した複合体などが挙げられる。
【0024】
球状賦形剤としては、慣用の製剤用球形核粒子を利用できる。球状賦形剤を構成する賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、白糖、粉末還元麦芽糖水飴などの糖類;ソルビトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴(マルチトール)、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、ブドウ糖を醗酵させた4炭糖(例えば、エリスリトールなど)などの糖アルコール;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、酸化デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムなどのデンプン類;微結晶セルロース、結晶セルロース、粉末セルロースなどのセルロース類;メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)などのアルキルセルロースなどが挙げられる。これらの球状賦形剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、乳糖、白糖などの糖類、マンニトールなどの糖アルコール、デンプンなどのデンプン類、結晶セルロースなどのセルロース類が好ましく、白糖などの糖類とデンプンなどのデンプン類との組み合わせが特に好ましい。
【0025】
球状賦形剤の割合は、粒状核部100質量部に対して、例えば5~70質量部、好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは20~50質量部、最も好ましくは30~40質量部である。球状賦形剤を上記の割合とすることで、顆粒の粒径が大きくなりすぎることを防ぐことができる。
【0026】
球状賦形剤を被覆する組成物は、エソメプラゾール類に加えて結合剤をさらに含んでいてもよい。
【0027】
結合剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン類(ポビドン、酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体など)、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸共重合体など)、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルなどの合成高分子;カルボキシメチルセルロース(カルメロースまたはCMC)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)などのセルロースエーテル類;酢酸セルロースなどのセルロースエステル類などが挙げられる。これらの結合剤は、粒状核部の構造に応じてコーティング剤として利用してもよい。
【0028】
これらの結合剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヒプロメロースなどのヒドロキシC2-4アルキルC1-2アルキルセルロースが好ましく、ヒプロメロースが特に好ましい。
【0029】
ヒプロメロースの2質量%水溶液(20℃)の粘度は、例えば3~20mPa・s、好ましくは4~15mPa・s、さらに好ましくは5~10mPa・sである。
【0030】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、前記粘度は、日本薬局方に準拠した方法で測定できる。
【0031】
結合剤の割合は、粒状核部100質量部に対して、例えば5~100質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは5~30質量部、最も好ましくは10~20質量部である。結合剤を上記割合とすることで、顆粒の粒径が大きくなりすぎることを防ぎつつ、エソメプラゾール類を球状賦形剤表面に被覆させることができる。
【0032】
前記組成物は、エソメプラゾール類および結合剤に加えて、他の添加剤として慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0033】
慣用の添加剤としては、例えば、非球状賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスコルビン酸、ステビア、カンゾウ粗エキス、単シロップなど)、着香剤または清涼化剤(ヨーグルトミクロン、ペパーミントミクロン、メントール、ジンジャーオイルなど)、抗酸化剤[ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など]、防腐剤または保存剤(安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル類など)、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。
【0034】
非球状賦形剤としては、前記球状賦形剤と同一の材質である非球状賦形剤などが挙げられる。
【0035】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、クロスポビドンコポリマーなどの架橋ポリビニルピロリドン類;カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)などのセルロースエーテル類;寒天、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビンガム、アラビアガム、トラガントガム、プルラン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ペクチン、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ゼラチン、カゼイン、ダイズタンパク質などのタンパク質類;タルク、軽質無水ケイ酸などの無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸類;ベントナイト、合成ヒドロタルサイト、カオリンなどの鉱物類などが挙げられる。
【0036】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウムなどの脂肪酸またはその金属塩;タルクなどの鉱物類;含水二酸化ケイ素(含水無水ケイ酸)、二酸化ケイ素などの酸化ケイ素;ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン;硬化油、カカオ脂などの油脂類;ミツロウ、サラシミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン、パラフィン、ワセリンなどのワックス類などが挙げられる。
【0037】
可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの親水性可塑剤;トリアセチン、クエン酸トリエチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、ラウリル酸、ステアリルアルコール、セタノールなどの脂溶性可塑剤などが挙げられる。
【0038】
界面活性剤としては、例えば、重量平均分子量300~6000のポリエチレングリコールなどのマクロゴール類;プルロニック、ポロクサマーなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリソルベート80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート類);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化油;モノステアリン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル;ラウリル硫酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。
【0039】
pH調整剤としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸;酢酸、クエン酸などの有機酸;水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩基;アミン類などの有機塩基などが挙げられる。
【0040】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、ベンガラ、ウコン抽出液、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、カロチン液、タール色素、カラメルなどが挙げられる。
【0041】
これら慣用の添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。慣用の添加剤の割合は、粒状核部100質量部に対して50質量部以下(例えば0.1~50質量部)であってもよく、例えば30質量部以下、好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下であってもよい。
【0042】
粒状核部が球状核部である場合、球状核部の形状は、球状であれば、特に限定されず、球形度(真球度)は0.6以上(例えば0.6~0.99程度)であってもよく、例えば0.7以上(例えば0.7~0.98)、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、最も好ましくは0.95以上である。上記球形度とすることで、均一なコート部を形成することができる。
【0043】
粒状核部(特に、球状核部)の中心粒径(D50)は、用途に応じて適宜選択できるが、500μm以下(例えば100~500μm)であってもよく、例えば100~470μm、好ましくは150~450μm、さらに好ましくは200~420μm、最も好ましくは250~400μmである。粒状核部の中心粒径をこの範囲にすることにより、カプセル充填時の充填量ばらつきを抑制し、かつカプセルのサイズが大きくなりすぎないようにすることができる。
【0044】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、中心粒径(D50)などの粒子径は、レーザー回折式粒度分布計を用いて体積基準で測定できる。D50は、粒子径分布の小粒子側から累積50体積%となる粒子の粒径を意味する。
【0045】
[中間層]
本発明の顆粒は、前記粒状核部を被覆するコート部をさらに含む。このコート部は、腸溶層とこの腸溶層を被覆する最外層とを含んでいればよく、粒状核部を腸溶層で被覆してもよいが、粒状核部を中間層で被覆するのが好ましい。前記腸溶層に含まれる腸溶性ポリマーは、カルボキシル基などの官能基を有しているため、腸溶層と粒状核部との間に中間層(遮蔽層)を介在させることにより、粒状核部のエソメプラゾール類が前記官能基によって薬効が低下するのを抑制できる。
【0046】
中間層は、賦形剤を含む。賦形剤としては、例えば、前記粒状核部の項で例示された球状賦形剤および非球状賦形剤などが挙げられる。前記賦形剤のうち、タルクなどのケイ酸塩が好ましい。
【0047】
賦形剤の割合は、中間層100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば30~95質量部、好ましくは50~90質量部、さらに好ましくは60~85質量部、最も好ましくは70~80質量部である。賦形剤を上記割合とすることで、中間層のバリア性が向上し、製剤中の有効成分の安定性を向上させることができる。
【0048】
中間層は、賦形剤に加えて、コーティング剤をさらに含んでいてもよい。コーティング剤としては、前記粒状核部の項で例示されたコーティング剤(結合剤)などが挙げられる。前記コーティング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記コーティング剤のうち、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2-4アルキルセルロースが好ましい。
【0049】
コーティング剤の割合は、中間層100質量部に対して、例えば3~50質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部、最も好ましくは15~25質量部である。コーティング剤の割合をこの範囲にすることにより、顆粒サイズが大きくなることによるカプセルサイズの大型化を防ぎ、かつ腸溶層との配合性が良好ではない薬物が腸溶層と接触することを妨げ、薬物の安定性を向上することができる。
【0050】
中間層は、賦形剤および結合剤に加えて、滑沢剤をさらに含んでいてもよい。滑沢剤としては、前記粒状核部の項で例示された滑沢剤などが挙げられる。前記滑沢剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記滑沢剤のうち、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩が好ましい。
【0051】
滑沢剤の割合は、中間層100質量部に対して、例えば1~20質量部、好ましくは2~10質量部、さらに好ましくは3~8質量部である。
【0052】
中間層は、賦形剤、結合剤および滑沢剤に加えて、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、前記粒状核部の項で慣用添加剤として例示された崩壊剤、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、着香剤または清涼化剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、中間層100質量部に対して、例えば10質量部以下(例えば0.1~10質量部)であり、好ましくは5質量部以下である。
【0053】
中間層の割合は、粒状核部100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは20~80質量部、さらに好ましくは30~70質量部、最も好ましくは40~60質量部である。中間層を上記割合とすることで、顆粒の粒径が大きくなりすぎることを防ぎつつ、中間層に十分なバリア性を持たせることができる。
【0054】
中間層の平均厚みは、例えば10~100μm、好ましくは15~60μm、さらに好ましくは20~40μmである。中間層を上記厚みとすることで、顆粒の粒径が大きくなりすぎることを防ぎつつ、中間層に十分なバリア性を持たせることができる。
【0055】
[腸溶層]
腸溶層(腸溶性コーティング層)は、前記粒状核部または前記中間層を被覆する層であって、胃液に対して溶解せず、かつ腸液に対して溶解するために、腸溶性ポリマーを含む。
【0056】
腸溶性ポリマーとしては、慣用の腸溶性ポリマーを利用できる。慣用の腸溶性ポリマーとしては、例えば、セルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCF)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどのセルロース誘導体;メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(メタクリル酸コポリマーLD)、メタクリル酸-アクリル酸n-ブチル共重合体、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸コポリマーL,S)などの(メタ)アクリル系ポリマー;ポリビニルアセテートフタレートなどが挙げられる。これらの腸溶性ポリマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、メタクリル酸コポリマーLD、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル共重合体などの(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。
【0057】
腸溶性ポリマーの割合は、腸溶層100質量部に対して10質量部以上であってもよく、例えば30~95質量部、好ましくは50~93質量部、さらに好ましくは70~92質量部、最も好ましくは80~90質量部である。腸溶性ポリマーを上記割合とすることで、消化管における酸性環境での薬物放出と有効成分の酸分解を抑制することができる。
【0058】
腸溶層は、腸溶性ポリマーに加えて、可塑剤をさらに含んでいてもよい。可塑剤としては、前記粒状核部の項で例示された可塑剤などが挙げられる。前記可塑剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記可塑剤のうち、クエン酸トリエチルなどの脂溶性可塑剤が好ましい。
【0059】
可塑剤の割合は、腸溶層100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは3~30質量部、さらに好ましくは5~20質量部、最も好ましくは7~10質量部である。可塑剤を上記割合とすることで、消化管における酸性環境での薬物放出と有効成分の酸分解を抑制することができる。腸溶層は、腸溶性ポリマーおよび可塑剤に加えて、多価アルコール脂肪酸エステルをさらに含んでいてもよい。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの多価アルコール脂肪酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
これらのうち、モノステアリン酸グリセリンなどのモノグリセリンC8-24脂肪酸エステルが好ましく、モノグリセリンC12-20脂肪酸エステルがさらに好ましく、モノステアリン酸グリセリンが特に好ましい。
【0061】
多価アルコール脂肪酸エステルの割合は、腸溶層100質量部に対して、例えば0.5~15質量部、好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは2~8質量部、最も好ましくは3~5質量部である。多価アルコール脂肪酸エステルを上記割合とすることにより、均一な腸溶層を形成することができる。
【0062】
腸溶層は、腸溶性ポリマー、可塑剤および多価アルコール脂肪酸エステルに加えて、オキシアルキレン基を有する界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
【0063】
オキシアルキレン基を有する界面活性剤としては、例えば、重量平均分子量300~6000のポリエチレングリコールなどのマクロゴール類;プルロニック、ポロクサマーなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール;ポリソルベート80などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート類);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化油などが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
これらの界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ポリソルベート80が特に好ましい。
【0065】
オキシアルキレン基を有する界面活性剤の割合は、腸溶層100質量部に対して、例えば0.01~5質量部、好ましくは0.05~3質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部、最も好ましくは0.2~1質量部である。前記界面活性剤を上記割合とすることにより、均一な腸溶層を形成することができる。
【0066】
腸溶層は、腸溶性ポリマー、可塑剤、多価アルコール脂肪酸エステルおよびオキシアルキレン基を有する界面活性剤に加えて、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、前記粒状核部の項で慣用の添加剤として例示された球状および非球状賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤(多価アルコール脂肪酸エステルおよびオキシアルキレン基を有する界面活性剤を除く)、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、着香剤または清涼化剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、中間層100質量部に対して、例えば10質量部以下(例えば0.1~10質量部)であり、好ましくは5質量部以下である。
【0067】
腸溶層の割合は、粒状核部100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは30~150質量部、さらに好ましくは50~100質量部、最も好ましくは60~80質量部である。腸溶層を上記割合とすることにより、消化管における酸性環境での薬物放出と有効成分の酸分解を抑制することができる。
【0068】
腸溶層の平均厚み(複数層の組み合わせの場合、各層の平均厚み)は、例えば5~80μm、好ましくは10~70μm、さらに好ましくは20~60μmである。
【0069】
[最外層]
最外層(オーバーコート層)は、前記腸溶層を被覆する層であって、顆粒に帯電する静電気を低減させるためか、経口製剤を調製する際の取り扱い性を向上させるために、多価アルコール脂肪酸エステルを含む。
【0070】
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、前記腸溶層の項で例示された多価アルコール脂肪酸エステルを利用できる。前記多価アルコール脂肪酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
前記多価アルコール脂肪酸エステルのうち、モノステアリン酸グリセリンなどのモノグリセリンC8-24脂肪酸エステルが好ましく、モノグリセリンC12-20脂肪酸エステルがさらに好ましく、モノステアリン酸グリセリンが特に好ましい。
【0072】
多価アルコール脂肪酸エステル(特に、モノステアリン酸グリセリン)の割合は、最外層100質量部に対して10~90質量部であってもよく、例えば20~80質量部、好ましくは30~60質量部、さらに好ましくは40~55質量部である。多価アルコール脂肪酸エステルの割合が少なすぎると、経口製剤調製における取り扱い性が低下する虞があり、多すぎると、オーバーコート層の機械的特性が低下する虞がある。
【0073】
最外層は、多価アルコール脂肪酸エステルに加えて、オキシアルキレン基を有する界面活性剤をさらに含むのが好ましい。最外層において、前記多価アルコール脂肪酸エステルとオキシアルキレン基を有する界面活性剤とを組み合わせると、最外層における多価アルコール脂肪酸エステルの均一性が向上して前記取り扱い性を向上でき、特に、カプセル充填時における充填量のばらつきも高度に抑制できる。
【0074】
オキシアルキレン基を有する界面活性剤としては、前記腸溶層の項で例示されたオキシアルキレン基を有する界面活性剤を利用できる。前記界面活性剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0075】
前記界面活性剤のうち、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ポリソルベート80が特に好ましい。
【0076】
オキシアルキレン基を有する界面活性剤(特に、ポリソルベート80)の割合は、最外層100質量部に対して1~20質量部であってもよく、例えば2~10質量部、好ましくは3~8質量部、さらに好ましくは4~7質量部である。オキシアルキレン基を有する界面活性剤(特に、ポリソルベート80)の割合は、多価アルコール脂肪酸エステル100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは5~15質量部である。オキシアルキレン基を有する界面活性剤の割合が少なすぎると、前記取り扱い性が低下する虞があり、多すぎても前記取り扱い性が低下する虞がある。
【0077】
最外層は、多価アルコール脂肪酸エステルおよびオキシアルキレン基を有する界面活性剤に加えて、コーティング剤をさらに含んでいてもよい。
【0078】
コーティング剤としては、前記粒状核部の項で例示されたコーティング剤(結合剤)などを利用できる。前記コーティング剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0079】
前記コーティング剤のうち、セルロースエーテル類が好ましく、ヒドロキシアルキルセルロースがさらに好ましく、ヒドロキシC2-4アルキルC1-2アルキルセルロースがより好ましく、ヒプロメロースが最も好ましい。
【0080】
ヒプロメロースの2質量%水溶液の粘度(20℃)は、例えば1~5mPa・s、好ましくは2~4mPa・s、さらに好ましくは2.5~3.5mPa・sである。
【0081】
コーティング剤(特に、ヒプロメロース)の割合は、最外層100質量部に対して3~80質量部であってもよく、例えば5~70質量部、好ましくは10~60質量部、さらに好ましくは30~55質量部である。コーティング剤を上記割合とすることにより最外層の機械的特性と前記取り扱い性が向上する。
【0082】
最外層は、多価アルコール脂肪酸エステル、オキシアルキレン基を有する界面活性剤および結合剤に加えて、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、前記粒状核部の項で慣用の添加剤として例示された球状および非球状賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤(多価アルコール脂肪酸エステルおよびオキシアルキレン基を有する界面活性剤を除く)、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、着香剤または清涼化剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の合計割合は、最外層100質量部に対して、例えば10質量部以下(例えば0.1~10質量部)であり、好ましくは5質量部以下である。
【0083】
最外層は、前記取り扱い性を向上させる点から、腸溶性ポリマーを実質的に含まないのが好ましく、腸溶性ポリマーを含まないのが特に好ましい。腸溶性ポリマーが含まれると、顆粒が静電気を帯び易くなるため、前記取り扱い性が低下する虞がある。
【0084】
最外層の割合は、粒状核部100質量部に対して、例えば0.5~20質量部、好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは2~10質量部、最も好ましくは3~7質量部である。最外層の割合が少なすぎると、前記取り扱い性が低下する虞があり、逆に多すぎると、顆粒の粒径が大きくなり、製剤化したときのサイズが大きくなりすぎてしまう虞がある。
【0085】
最外層の平均厚み(複数層の組み合わせの場合、各層の平均厚み)は、例えば0.1~30μm、好ましくは0.5~25μm、さらに好ましくは1~20μmである。
【0086】
[エソメプラゾール顆粒の特性および製造方法]
本発明のエソメプラゾール顆粒は、静電気力が小さく、経口製剤を調製する際の取り扱い性を向上できる。前記エソメプラゾール顆粒の静電気力(クーロン力)は、20℃および60%RHの条件において、1.2nC/g以下であってもよく、好ましくは1nC/g以下、さらに好ましくは0.8nC/g以下、最も好ましくは0.5nC/g以下である。静電気力が大きすぎると、前記取り扱い性が低下する虞がある。
【0087】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、静電気力は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0088】
本発明のエソメプラゾール顆粒は、前記取り扱い性に優れるため、カプセル剤の充填における充填量ばらつきを抑制できる。前記エソメプラゾール顆粒は、カプセル剤の充填における充填量ばらつきについて、製剤均一性の判定値が15%以下であり、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。
【0089】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、充填量ばらつきについては、後述する実施例に記載の方法で測定でき、製剤均一性の判定値については、日本薬局方の「製剤均一性試験法」に従って測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0090】
本発明のエソメプラゾール顆粒の形状としては、例えば、球状、楕円体状、多面体状、板状、繊維状などが挙げられる。これらのうち、略球状や真球状などの球状が好ましい。球状である場合、球形度(真球度)は0.6以上(例えば0.6~0.99程度)であってもよく、例えば0.7以上(例えば0.7~0.98)、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、最も好ましくは0.95以上である。
【0091】
本発明のエソメプラゾール顆粒の中心粒径(D50)は、例えば450~700μm、好ましくは500~650μm、さらに好ましくは520~620μm、最も好ましくは550~600μmである。上記粒径とすることで、本発明の効果が向上し、かつ服用しやすい製剤サイズとすることができる。
【0092】
本発明のエソメプラゾール顆粒は、粒状核部をコート部で被覆することにより製造できる。
【0093】
粒状核部の調製方法は、粒状核部の種類に応じて適宜選択でき、慣用の方法であってもよい。粒状核部が球状核部である場合、球状賦形剤に対して、エソメプラゾール類を含む組成物を慣用のコーティング方法でコーティングする方法であってもよい。慣用のコーティング方法としては、例えば、塗布、噴霧、含浸・浸漬、パンコーティング、流動層コーティング、転動コーティング、転動流動コーティングなどが挙げられる。これらのうち、流動層コーティング、転動流動コーティングが好ましく、転動流動コーティングが特に好ましい。
【0094】
コート部のコーティング方法としても、前記慣用の方法を利用でき、流動層コーティング、転動流動コーティングが好ましく、転動流動コーティングが特に好ましい。コート部は、層毎に異なるコーティング方法でコーティングしてもよく、全ての層を同一の方法でコーティングしてもよい。生産性などの点から、全ての層を同一のコーティング方法でコーティングするのが好ましく、全ての層を転動流動コーティングするのが特に好ましい。
【0095】
[経口製剤]
本発明の経口製剤は、前記エソメプラゾール顆粒を含んでいればよく、各種の経口製剤に対して利用できる。経口製剤としては、例えば、丸剤、液剤、散剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤などが挙げられる。これらのうち、取り扱い性の向上効果が大きい点から、カプセル剤が好ましい。カプセル剤は、ヒプロメロースカプセルなどの慣用のカプセルに前記エソメプラゾール顆粒が充填された形態であってもよい。
【0096】
カプセル剤の製造方法としても、慣用の製造方法を利用でき、エソメプラゾール顆粒を慣用のカプセル充填機を用いてカプセルに充填する方法を利用できる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例において評価した方法を以下に示す。
【0098】
[評価方法]
(粒径分布)
粒径分布(D50)は、電子顕微鏡を用いて実測することにより算出した。
【0099】
(静電気力)
クーロンメーター(春日電機(株)製「型番:NK-1001A」)を用いて、エソメプラゾール顆粒の静電気力を測定した。
【0100】
(静電気付着性)
エソメプラゾール顆粒をポリエチレン製袋に入れた際の袋への付着性を目視で確認した。
【0101】
(充填性)
日本薬局方の製剤均一性試験法に従って、カプセルへの充填性を評価した。製剤均一性試験は、1錠当たりの有効成分量のばらつきを評価する試験方法であり、判定値の求め方を以下に示す。なお、判定基準は、基本的には判定値が15.0%以下であれば合格であり、判定値の数値が小さいほど、有効成分のばらつきが少ないことを示唆している。
【0102】
【0103】
実施例1
[エソメプラゾール顆粒の調製]
エソメプラゾール顆粒は以下の手順で調製した。使用した原料の1顆粒当たりの質量は表1に示す。
【0104】
(球状核部の調製)
1)白糖・デンプン球状顆粒(Colorcon社製、商品名「SUGULETS(登録商標)Sugar Spheres PF001-J)を転動流動層造粒乾燥機(パウレック社製、商品名「流動層造粒乾燥機MP-10」)に投入した。
【0105】
2)精製水とエタノール(日本アルコール産業社製、規格含量99.5体積%)とを混和し、混和液にエソメプラゾールマグネシウム水和物およびヒプロメロース(信越化学工業社製、商品名「TC-5R」)を溶解・分散させ、この液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥した。
【0106】
3)乾燥品を30M篩および42M篩で分級し、30M篩を通過し、42M篩に残存した粒子を球状核部とした。
【0107】
(中間層の被覆工程)
1)球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。
【0108】
2)精製水とエタノールとを混和し、混和液にヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、商品名「HPC-L」)を溶解させた後、タルク(日本タルク社製、商品名「MICRO ACE P-3」)およびステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製、グレード「植物性(太平)」)を分散させ、分散液を調製した。
【0109】
3)分散液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥した。
【0110】
4)乾燥品とタルクとを混合し、混合末を22M篩および42M篩で分級し、22M篩を通過し、42M篩に残存した粒子を中間層被覆粒子として調製した。
【0111】
(腸溶層の被覆工程)
1)中間層被覆粒子を転動流動層造粒乾燥機に入れた。
【0112】
2)ポリソルベート80(三洋化成工業社製、商品名「ポリソルベート80」)およびモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン社製、商品名「モノステアリン酸グリセリンP-100 10K」)を精製水に分散させて40℃以下に冷却した分散液に、メタクリル酸コポリマーLD(Evonik社製、商品名「オイドラギットL30D-55」)およびクエン酸トリエチル(森村商事社製、商品名「シトロフレックス2(SC-60)」)を混和し、200M篩でろ過した液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、さらに40℃に冷却した。
【0113】
3)冷却品を40℃以下に冷却した後、22M篩および42M篩で分級し、22M篩を通過し、42M篩に残存した粒子を腸溶層被覆粒子として調製した。
【0114】
(最外層の被覆工程)
1)腸溶層被覆粒子を転動流動層造粒乾燥機に投入した。
【0115】
2)精製水にヒプロメロース(信越化学工業社製、商品名「TC-5E」)を溶解し、溶解液を調製した。
【0116】
3)別途、ポリソルベート80およびモノステアリン酸グリセリンを精製水に分散させて40℃以下に冷却し、分散液を調製した。
【0117】
4)前記溶解液と前記分散液とを混和し、この液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、さらに40℃以下に冷却した。
【0118】
5)冷却品を22M篩および42M篩で分級し、22M篩を通過し、42M篩に残存した粒子をエソメプラゾール顆粒とした。得られたエソメプラゾール顆粒の中心粒径(D50)は570μm、カールフイッシャー(KF)値は3%であった。
【0119】
[カプセル剤の調製]
カプセル充填機(レイボルド(株)製「ADAPTA100」)を用いて、得られたエソメプラゾール顆粒を、ヒプロメロースカプセル(クオリカプス(株)製「QUALI-V、5号S-ロック」)に充填し、カプセル剤を調製した。
【0120】
参考例1
エソメプラゾール顆粒として、最外層を被覆しない腸溶層被覆粒子を用いた。
【0121】
【0122】
実施例1および参考例1で得られたエソメプラゾール顆粒の静電気力を測定した結果、実施例1の静電気力が0.34nC/gであったのに対して、参考例1の静電気力は1.44nC/gであり、実施例1の4倍以上の高い値を示した。
【0123】
実施例1および参考例1で得られたエソメプラゾール顆粒の静電気付着性を目視確認したところ、
図1の写真からも明らかなように、参考例1では、ポリエチレン製袋に、多くの顆粒が付着しているのに対して、実施例1では、殆ど付着しなかった。
【0124】
すなわち、腸溶層被覆粒子を最外層で被覆することにより、静電気力が低下し、静電気付着性も大きく軽減した。
【0125】
実施例1では、約12万カプセルを調製したが、実施例1のエソメプラゾール顆粒の充填性に関する評価を表2に示す。なお、表2において、充填量ばらつきは、1カプセルあたりの充填量をn=10で測定し、充填量ばらつきを算出した。また、充填初期、中期および後期はそれぞれ、工程の約10%付近、約50%付近および約90%付近を意味する。
【0126】
【0127】
表2の結果から明らかなように、最外層を形成した実施例1のエソメプラゾール顆粒の充填性は、ばらつきが少なく、判定値も最大許容限度値の15.0%を大きく下回る良好な結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のエソメプラゾール顆粒は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症、Zollinger-Ellison症候群の治療薬;非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍または十二指腸潰瘍の再発抑制の治療薬;胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃MALTリンパ腫・特発性血小板減少性紫斑病・早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ除菌の補助薬として利用でき、なかでも、経口製剤として利用するのが好ましく、カプセル剤として利用するのが特に好ましい。