(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ダブルスキン構造、ダブルスキン構造改修システムおよびダブルスキン構造改修方法
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20241219BHJP
E06B 3/67 20060101ALI20241219BHJP
E06B 1/56 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E06B7/02
E06B3/67 Z
E06B3/67 A
E06B1/56 A
(21)【出願番号】P 2020132587
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-303755(JP,A)
【文献】特開2005-003348(JP,A)
【文献】特開2016-180533(JP,A)
【文献】特開2017-218760(JP,A)
【文献】特開2020-70965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/10
E06B 3/66-3/67
E06B 1/56
F24F 7/08
E04B 2/56
E04B 2/88-2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体の室外側に設けられる室外ガラスパネルと、
前記枠体の室内側に設けられる室内ガラスパネルと、
前記室外ガラスパネルと前記室内ガラスパネルの間に形成される内部空間と、
前記内部空間の上部に配置される、前記内部空間内の空気の流れを制御する上換気ユニットと、
前記内部空間の下部に配置される、前記内部空間内の空気の流れを制御する下換気ユニットと、
前記内部空間を室外側内部空間と室内側内部空間とに分割するブラインドと、
を備え、
室外と前記内部空間とを連通させることなく、日射熱を室内空間に取り込む集熱モードと、前記室内空間の熱を前記室外に排出する熱排出モードとを切替可能であ
り、
前記ブラインドを境として、前記室外側内部空間と前記室内側内部空間に逆流する空気の流れを発生可能である、ダブルスキン構造。
【請求項2】
前記上換気ユニットは、上筐体と、前記上筐体に形成された室内空間に連通する上室内連通口と、前記上筐体に形成された前記内部空間に連通する上内部空間連通口と、前記上筐体内に配置された前記内部空間内の空気の流れを制御する上ファンと、を備え、
前記下換気ユニットは、下筐体と、前記下筐体に形成された前記室内空間に連通する下室内連通口と、前記下筐体に形成された前記内部空間に連通する下内部空間連通口と、前記下筐体内に配置された前記内部空間内の空気の流れを制御する下ファンと、を備え、
前記集熱モードと前記熱排出モードとの切替は、前記上室内連通口と、前記下室内連通口と、前記上ファンと、前記下ファンとの組み合わせにより行われる、請求項1に記載のダブルスキン構造。
【請求項3】
前記上換気ユニットは、前記上室内連通口を開閉可能な上シャッター部材をさらに備え、
前記下換気ユニットは、前記下室内連通口を開閉可能な下シャッター部材をさらに備える、請求項2に記載のダブルスキン構造。
【請求項4】
前記室内ガラスパネルは、開閉可能に構成される、請求項1から3のいずれかに記載のダブルスキン構造。
【請求項5】
枠体と、前記枠体の室外側に設けられる室外ガラスパネルと、を備えるシングルスキン構造をダブルスキン構造に改修するシステムであって、
前記枠体の室内側に設けられる室内ガラスパネルであって、前記室外ガラスパネルと前記室内ガラスパネルの間に内部空間を形成する室内ガラスパネルと、
前記内部空間の上部に配置される、前記内部空間内の空気の流れを制御する上換気ユニットと、
前記内部空間の下部に配置される、前記内部空間内の空気の流れを制御する下換気ユニットと、
を備え、
室外と前記内部空間とを連通させることなく、日射熱を室内空間に取り込む集熱モードと、前記室内空間の熱を前記室外に排出する熱排出モードとを切替可能である、ダブルスキン構造改修システム。
【請求項6】
枠体と、前記枠体の室外側に設けられる室外ガラスパネルと、を備えるシングルスキン構造をダブルスキン構造に改修する方法であって、
前記枠体の室内側に室内ガラスパネルを設けて、前記室外ガラスパネルと前記室内ガラスパネルの間に内部空間を形成することと、
前記内部空間の上部に前記内部空間内の空気の流れを制御する上換気ユニットを配置することと、
前記内部空間の下部に前記内部空間内の空気の流れを制御する下換気ユニットを配置することと、
を備え、
室外と前記内部空間とを連通させることなく、日射熱を室内空間に取り込む集熱モードと、前記室内空間の熱を前記室外に排出する熱排出モードとを切替可能に構成する、ダブルスキン構造改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のダブルスキン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インナースキンと称される室内ガラスパネルと、アウタースキンと称される室外ガラスパネルと備え、該室内ガラスパネルと室外ガラスパネルの間に空気層を設けたダブルスキン構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ダブルスキン構造では、冬期には空気層が断熱層として機能するため、室内側の暖房効率を向上することができる。一方、夏期には空気層内の空気を換気することにより、直射日光により暖められたガラスパネルや空気層内に配置されたブラインド等からの放射による空気層の温度上昇を緩和することができ、これらの熱が室内へ流れることを抑制することが可能となることから、室内側の冷房効率を向上することができる。
【0004】
ダブルスキン構造では、通常、空気層内の空気を換気するために、空気層の上下に室外に連通した換気口が設けられる。空気層内で暖められた空気には浮力が生じるため、上下の換気口間で空気を流通させて空気層内の熱を室外に排熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば既存の建物をダブルスキン構造に改修する場合、室外に連通した換気口を設けることが難しい場合がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、簡易的なダブルスキン構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のダブルスキン構造は、枠体と、枠体の室外側に設けられる室外ガラスパネルと、枠体の室内側に設けられる室内ガラスパネルと、室外ガラスパネルと室内ガラスパネルの間に形成される内部空間と、内部空間の上部に配置される、内部空間内の空気の流れを制御する上換気ユニットと、内部空間の下部に配置される、内部空間内の空気の流れを制御する下換気ユニットと、を備える。
【0009】
本発明の別の態様は、枠体と、枠体の室外側に設けられる室外ガラスパネルと、を備えるシングルスキン構造をダブルスキン構造に改修するダブルスキン構造改修システムである。このシステムは、枠体の室内側に設けられる室内ガラスパネルであって、室外ガラスパネルと室内ガラスパネルの間に内部空間を形成する室内ガラスパネルと、内部空間の上部に配置される、内部空間内の空気の流れを制御する上換気ユニットと、内部空間の下部に配置される、内部空間内の空気の流れを制御する下換気ユニットと、を備える。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、枠体と、枠体の室外側に設けられる室外ガラスパネルと、を備えるシングルスキン構造をダブルスキン構造に改修するダブルスキン構造改修方法である。この方法は、枠体の室内側に室内ガラスパネルを設けて、室外ガラスパネルと室内ガラスパネルの間に内部空間を形成することと、内部空間の上部に内部空間内の空気の流れを制御する上換気ユニットを配置することと、内部空間の下部に内部空間内の空気の流れを制御する下換気ユニットを配置することと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易的なダブルスキン構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るダブルスキン構造の概略斜視図である。
【
図2】実施形態に係るダブルスキン構造の概略分解斜視図である。
【
図3】第1実施例に係るダブルスキン構造および動作モードを説明するための図である。
【
図4】第1実施例に係るダブルスキン構造の別の動作モードを説明するための図である。
【
図5】第2実施例に係るダブルスキン構造および動作モードを説明するための図である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、第2実施例に係るダブルスキン構造および動作モードを説明するための図である。
【
図7】第2実施例に係るダブルスキン構造の別の動作モードを説明するための図である。
【
図8】
図8(a)~(c)は、第2実施例に係るダブルスキン構造の別の動作モードを説明するための図である。
【
図9】第3実施例に係るダブルスキン構造および動作モードを説明するための図である。
【
図10】
図10(a)~(c)は、第3実施例に係るダブルスキン構造および動作モードを説明するための図である。
【
図11】第3実施例に係るダブルスキン構造の別の動作モードを説明するための図である。
【
図12】
図12(a)~(c)は、第3実施例に係るダブルスキン構造の別の動作モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るダブルスキン構造10の概略斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係るダブルスキン構造10の概略分解斜視図である。
【0015】
ダブルスキン構造10は、枠体12と、枠体12の室外側に設けられる室外ガラスパネル14と、枠体12の室内側に設けられる室内ガラスパネル16と、室外ガラスパネル14と室内ガラスパネル16の間に形成される内部空間18と、内部空間18の上部に配置される上換気ユニット20と、内部空間18の下部に配置される下換気ユニット22と、を備える。ある実施形態では、ダブルスキン構造10は、内部空間18にブラインド24を備えてもよい。
【0016】
図1に示すように、室内ガラスパネル16は、枠体12に対して開閉可能に構成されている。このように室内ガラスパネル16を開閉可能とすることにより、ダブルスキン構造10における各構成要素のメンテナンスが容易となる。
【0017】
枠体12は、縦方向に延びる2つの方立26,28と、横方向に延びる無目29,30とを含む。
【0018】
上換気ユニット20は、上部の無目29の下面上に支持される。下換気ユニット22は、下部の無目30の上面上に支持される。上換気ユニット20および下換気ユニット22は、内部空間18内の空気の流れを制御するためのユニットである。
【0019】
以下、ダブルスキン構造の実施例を示す。
図3は、第1実施例に係るダブルスキン構造100の概略断面図である。
図3に示すダブルスキン構造100では、内部空間18内にブラインドは配置されていない。
【0020】
上換気ユニット20は、上筐体32を備える。上筐体32は、中空の直方体形状を有する筐体である。上筐体32の室内側の側面には、室内空間に連通する上室内連通口34が形成されている。上筐体32の下面には、内部空間18に連通する上内部空間連通口36が形成されている。
図3に示すように、上筐体32内における上室内連通口34と上内部空間連通口36との間には、内部空間18内の空気の流れを制御する上ファン38が配置されている。上ファン38は、軸流ファンであってよい。上換気ユニット20はさらに、上室内連通口34を開閉可能な上シャッター部材35をさらに備える。
【0021】
下換気ユニット22は、下筐体40を備える。下筐体40は、中空の直方体形状を有する筐体である。下筐体40の室内側の側面には、室内空間に連通する下室内連通口42が形成されている。下筐体40の上面には、内部空間18に連通する下内部空間連通口44が形成されている。
図3に示すように、下筐体40内における下室内連通口42と下内部空間連通口44との間には、内部空間18内の空気の流れを制御する下ファン46が配置されている。下ファン46は、軸流ファンであってよい。下換気ユニット22はさらに、下室内連通口42を開閉可能な下シャッター部材43をさらに備える。
【0022】
上記のように構成されたダブルスキン構造100によれば、一般的なダブルスキン構造のように内部空間(空気層)と室外との間で換気を行うことはできないものの、室内空間との間で換気を行うことのできる簡易的なダブルスキン構造を実現できる。
【0023】
ダブルスキン構造100は、既存の建物に後付けで適用することが可能である。既存の建物が、枠体12の室外側に室外ガラスパネル14が設けられたシングルスキン構造を有している場合、枠体12の室内側に室内ガラスパネル16を設けて、室外ガラスパネル14と室内ガラスパネル16の間に内部空間18を形成する。そして、内部空間18の上部に上換気ユニット20を配置し、内部空間18の下部に下換気ユニット22を配置する。内部空間18にブラインド24を配置してもよい。
【0024】
上述したように、既存の建物では、室外に連通する換気口を設けることは大がかりな工事が必要になり、ダブルスキン構造に改修することは容易ではない。しかしながら、ダブルスキン構造100によれば、既存の建物のシングルスキン構造に室内ガラスパネル16、上換気ユニット20および下換気ユニット22を後付けで取り付けることで、簡易的なダブルスキン構造に比較的容易に改修することができる。
【0025】
図3は、ダブルスキン構造100の一つの動作モードを示している。
図3に示す動作モードは、日射熱を室内に取り込む動作モード(「集熱モード」と称する)であり、冬期の日中(例えば外気温θo=5~10℃、室内温度θi=22~26℃、内部空間18の温度θc=30~35℃)に適した動作モードである。
【0026】
この集熱モードにおいて、下換気ユニット22では、下室内連通口42が開いた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。下ファン46は、下室内連通口42を介して室内空間の下方から空気を吸い込み、下内部空間連通口44を介して内部空間18に空気を排出するように駆動される。一方、上換気ユニット20では、上室内連通口34が開いた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。上ファン38は、上内部空間連通口36を介して内部空間18から空気を吸い込み、上室内連通口34を介して室内空間の上方に空気を排出するように駆動される。
【0027】
このように上換気ユニット20および下換気ユニット22を動作させたとき、
図3に示すように、室内空間の下方の冷気が下換気ユニット22により誘引され、内部空間18に排出される。内部空間18内に排出された冷気は、内部空間18内を下方から上方に流れる間に、日射光を透過し吸収した室外ガラスパネル14および室内ガラスパネル16からの放射や対流熱伝達などにより内部空間18が暖められ、上換気ユニット20により暖気として室内空間に供給される。集熱モードは、このようにして日射熱を室内空間に取り込むことができるので、補助暖房としての効果を有する。
【0028】
冬期の日中には、断熱性を高める動作モード(「断熱モード」と称する)も可能である。この断熱モードにおいて、下換気ユニット22では、下室内連通口42が閉じた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。同様に、上換気ユニット20では、上室内連通口34が閉じた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。
【0029】
図4は、ダブルスキン構造100の別の動作モードを説明するための図である。
図4に示す動作モードは、室内空間の熱を室外に排出する動作モード(「熱排出モード」と称する)であり、夏期などの夜間(例えば外気温θo=24~26℃、室内温度θi=28~30℃、内部空間18の温度θc=26~28℃)に適した動作モードである。
【0030】
この熱排出モードにおいて、上換気ユニット20では、上室内連通口34が開いた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。上ファン38は、上室内連通口34を介して室内空間の上方から空気を吸い込み、上内部空間連通口36を介して内部空間18に空気を排出するように駆動される。一方、下換気ユニット22では、下室内連通口42が開いた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。下ファン46は、下内部空間連通口44を介して内部空間18から空気を吸い込み、下室内連通口42を介して室内空間の下方に空気を排出するように駆動される。
【0031】
このように上換気ユニット20および下換気ユニット22を動作させたとき、
図4に示すように、室内空間の上方の暖気が上換気ユニット20により誘引され、内部空間18に排出される。内部空間18内に排出された暖気は、内部空間18内を上方から下方に流れる間に、室外ガラスパネル14および内部空間18の気体との熱交換により冷却され、下換気ユニット22により冷気として室内空間の下方に供給される。
【0032】
夏期などの夜間に室内空間の熱負荷が増大した状態で翌日朝を迎えると、室内空間を冷却するには大きな負荷がかかる。そこで、夜間の間(θo<θc<θiのとき)に内部空間18で熱交換を行い、室内空間を予め冷却しておくことにより、冷却の負荷を低減することができる。この熱排出モードでは、外気を導入していないため、余分な湿度などを取得することがないという利点がある。
【0033】
次に、
図5および
図6(a)~(c)を参照して、内部空間18にブラインド24が配置された第2実施例に係るダブルスキン構造200の動作モードを説明する。
図5は、第2実施例に係るダブルスキン構造200の概略断面図である。
図6(a)は、下方から上換気ユニット20を見た概略図である。
図6(b)は、室内側から見たダブルスキン構造200の概略正面図である。
図6(c)は、上方から下換気ユニット22を見た概略図である。
【0034】
このダブルスキン構造200では、内部空間18内にブラインド24が配置されており、内部空間18は、ブラインド24により、室内側内部空間18aと室外側内部空間18bとに分割される。室内側内部空間18aは、室内ガラスパネル16とブラインド24との間の空間であり、室外側内部空間18bは、室外ガラスパネル14とブラインド24との間の空間である。
【0035】
図6(a)に示すように、上換気ユニット20の上筐体32内の空間は、2つの隔壁60により複数の空間に分離されている。中央の空間62の筐体下面には、室内側内部空間18aと連通する上室内側内部空間連通口36cと、室外側内部空間18bと連通する上室外側内部空間連通口36dが形成されている。室内側から見て中央の空間62の右の空間63の筐体下面には、室内側内部空間18aと連通する上室内側内部空間連通口36aが形成されており、筐体の室内側側面には、上室内連通口34aが形成されている。室内側から見て中央の空間62の左の空間64の筐体下面には、室外側内部空間18bと連通する上室外側内部空間連通口36bが形成されており、筐体の室内側側面には、上室内連通口34bが形成されている。また、この左の空間64には、上ファン38が配置されている。
【0036】
図6(c)に示すように、下換気ユニット22の上筐体32内の空間は、2つの隔壁66により複数の空間に分離されている。中央の空間68の筐体上面には、室内側内部空間18aと連通する下室内側内部空間連通口44cと、室外側内部空間18bと連通する下室外側内部空間連通口44dが形成されている。室内側から見て中央の空間68の右の空間67の筐体上面には、室内側内部空間18aと連通する下室内側内部空間連通口44aが形成されており、筐体の室内側側面には、下室内連通口42aが形成されている。室内側から見て中央の空間68の左の空間64の筐体上面には、室外側内部空間18bと連通する下室外側内部空間連通口44bが形成されており、筐体の室内側側面には、下室内連通口42bが形成されている。また、この左の空間69には、下ファン46が配置されている。
【0037】
図5および
図6(a)~(c)は、ダブルスキン構造200の集熱モードを示している。集熱モードにおいて、下換気ユニット22では、下室内連通口42a、42bが開いた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。また、下換気ユニット22では、下室外側内部空間連通口44bを介して室外側内部空間18bから空気を吸い込み、下室内連通口42bから室内に空気を排出するように下ファン46が駆動される。一方、上換気ユニット20では、上室内連通口34a、34bが閉じた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。また、上換気ユニット20では、上ファン38は駆動されない。
【0038】
このように上換気ユニット20および下換気ユニット22を動作させたとき、
図5および
図6(a)~(c)に示すように、室内空間の下方の冷気が下換気ユニット22の右側の下室内連通口42aを介して誘引され、下室内側内部空間連通口44aから室内側内部空間18aに排出される。室内側内部空間18a内に排出された冷気は、室内側内部空間18a内を下方から上方に流れる間に、日射光を透過し吸収した室内ガラスパネル16およびブラインド24からの放射や対流熱伝達などにより内部空間18aが暖められる。その後、空気は、上換気ユニット20の中央の上室内側内部空間連通口36cから空間62に入り、上室外側内部空間連通口36dを介して室外側内部空間18bに流れ込む。室外側内部空間18bに流れ込んだ空気は、室外側内部空間18bを上方から下方に流れる間に、日射光を透過し吸収した室外ガラスパネル14およびブラインド24からの放射や対流熱伝達などにより内部空間18bがさらに暖められ、下換気ユニット22の左の下室内連通口42bから暖気として室内空間に放出される。
【0039】
このように、ブラインド24を内部空間18に配置したダブルスキン構造200の集熱モードでは、暖気を室内空間の下方に放出できる。室内空間の下方に床仕上げ材(システムフロア)50が配置される場合、床仕上げ材50に微細な隙間(ファブリック素材)があれば、暖気を床仕上げ材50を介して室内に供給できる。さらに、床仕上げ材50にPCM(潜熱蓄熱材)を用いれば、熱を溜めておくことができ、必要な時間帯(例えば夕方以降太陽光が無くなる時間帯)に熱放出を行うことができる。
【0040】
図7および
図8(a)~(c)は、第2実施例に係るダブルスキン構造200の別の動作モードを説明するための図である。
図7および
図8は、夏期などの夜間(例えば外気温θo=24~26℃、室内温度θi=28~30℃、内部空間18の温度θc=26~28℃)に適した熱排出モードを示している。
【0041】
この熱排出モードにおいて、上換気ユニット20では、上室内連通口34a,34bが開いた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。また、上換気ユニット20では、上室外側内部空間連通口36dを介して室外側内部空間18bから空気を吸い込み、上室内連通口34bから室内に空気を排出するように上ファン38が駆動される。一方、下換気ユニット22では、下室内連通口42a、42bが閉じた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。また、下換気ユニット22では、下ファン46は駆動されない。
【0042】
このように上換気ユニット20および下換気ユニット22を動作させたとき、
図7および
図8(a)~(c)に示すように、室内空間の上方の暖気が上換気ユニット20の右側の上室内連通口34aを介して誘引され、上室内側内部空間連通口36aから室内側内部空間18aに排出される。室内側内部空間18a内に排出された暖気は、室内側内部空間18a内を上方から下方に流れる間に、室内ガラスパネル16およびブラインド24との熱交換により冷却される。その後、空気は、下換気ユニット22の中央の下室内側内部空間連通口44cから空間68に入り、下室外側内部空間連通口44dを介して室外側内部空間18bに流れ込む。室外側内部空間18bに流れ込んだ空気は、室外側内部空間18bを下方から上方に流れる間に、室外ガラスパネル14およびブラインド24との熱交換によりさらに冷却され、上換気ユニット20の左の上室内連通口34bから冷気として室内空間に放出される。このように、ダブルスキン構造200の熱排出モードによれば、室内空間の熱を室外に排出できる。さらに、このダブルスキン構造200の熱排出モードによれば、内部空間18内の空気が天井付近に排出され、この排出された空気は、天井に設けられた排気口(図示せず)に吸い込まれる。このような空気の流れにより、内部空間18内の熱を排熱することができる。
【0043】
次に、
図9および
図10(a)~(c)を参照して、第3実施例に係るダブルスキン構造300の動作モードを説明する。
図9は、第3実施例に係るダブルスキン構造300の概略断面図である。
図10(a)は、下方から上換気ユニット20を見た概略図である。
図10(b)は、室内側から見たダブルスキン構造300の概略正面図である。
図10(c)は、上方から下換気ユニット22を見た概略図である。このダブルスキン構造300は、空気の流れ方が第2実施例に係るダブルスキン構造200と異なる。
【0044】
図10(a)に示すように、上換気ユニット20の上筐体32内の空間は、2つの隔壁60により複数の空間に分離されている。中央の空間62の筐体下面には、室内側内部空間18aと連通する上室内側内部空間連通口36cと、室外側内部空間18bと連通する上室外側内部空間連通口36dが形成されている。室内側から見て中央の空間62の右の空間63の筐体下面には、室外側内部空間18bと連通する室外側内部空間連通口336aが形成されており、筐体の室内側側面には、上室内連通口34aが形成されている。室内側から見て中央の空間62の左の空間64の筐体下面には、室内側内部空間18aと連通する室内側内部空間連通口336bが形成されており、筐体の室内側側面には、上室内連通口34bが形成されている。また、この左の空間64には、上ファン38が配置されている。
【0045】
図10(c)に示すように、下換気ユニット22の上筐体32内の空間は、2つの隔壁66により複数の空間に分離されている。中央の空間68の筐体上面には、室内側内部空間18aと連通する下室内側内部空間連通口44cと、室外側内部空間18bと連通する下室外側内部空間連通口44dが形成されている。室内側から見て中央の空間68の右の空間67の筐体上面には、室外側内部空間18bと連通する室外側内部空間連通口344aが形成されており、筐体の室内側側面には、下室内連通口42aが形成されている。室内側から見て中央の空間68の左の空間69の筐体上面には、室外側内部空間18bと連通する室外側内部空間連通口344bが形成されており、筐体の室内側側面には、下室内連通口42bが形成されている。また、この左の空間69には、下ファン46が配置されている。
【0046】
図9および
図10(a)~(c)は、ダブルスキン構造300の集熱モードを示している。集熱モードにおいて、下換気ユニット22では、下室内連通口42a、42bが開いた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。また、下換気ユニット22では、室外側内部空間連通口344aを介して室内側内部空間18aから空気を吸い込み、下室内連通口42bから室内に空気を排出するように下ファン46が駆動される。一方、上換気ユニット20では、上室内連通口34a、34bが閉じた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。また、上換気ユニット20では、上ファン38は駆動されない。
【0047】
このように上換気ユニット20および下換気ユニット22を動作させたとき、
図9および
図10(a)~(c)に示すように、室内空間の下方の冷気が下換気ユニット22の右側の下室内連通口42aを介して誘引され、室外側内部空間連通口344aから室外側内部空間18bに排出される。室外側内部空間18b内に排出された冷気は、室外側内部空間18b内を下方から上方に流れる間に、日射熱を吸収した室内ガラスパネル16およびブラインド24との熱交換により暖められる。その後、空気は、上換気ユニット20の中央の上室外側内部空間連通口36dから空間62に入り、上室内側内部空間連通口36cを介して室内側内部空間18aに流れ込む。室内側内部空間18aに流れ込んだ空気は、室内側内部空間18aを上方から下方に流れる間に、日射熱を吸収した室外ガラスパネル14およびブラインド24との熱交換によりさらに暖められ、下換気ユニット22の左の下室内連通口42bから暖気として室内空間に放出される。このように、ダブルスキン構造300の集熱モードにおいても、暖気を室内空間の下方に放出できる。
【0048】
図11および
図12は、第3実施例に係るダブルスキン構造300の別の動作モードを説明するための図である。
図7および
図8は、夏期などの夜間(例えば外気温θo=15~20℃、室内温度θi=27~30℃、内部空間18の温度θc=22~25℃)に適した熱排出モードを示している。
【0049】
この熱排出モードにおいて、上換気ユニット20では、上室内連通口34a,34bが開いた状態となるように上シャッター部材35が駆動される。また、上換気ユニット20では、室内側内部空間連通口336bを介して室内側内部空間18aから空気を吸い込み、上室内連通口34bから室内に空気を排出するように上ファン38が駆動される。一方、下換気ユニット22では、下室内連通口42a、42bが閉じた状態となるように下シャッター部材43が駆動される。また、下換気ユニット22では、下ファン46は駆動されない。
【0050】
このように上換気ユニット20および下換気ユニット22を動作させたとき、
図11および
図12(a)~(c)に示すように、室内空間の上方の暖気が上換気ユニット20の右側の上室内連通口34aを介して誘引され、室外側内部空間連通口336aから室外側内部空間18bに排出される。室外側内部空間18b内に排出された暖気は、室外側内部空間18b内を上方から下方に流れる間に、室内ガラスパネル16およびブラインド24との熱交換により冷却される。その後、空気は、下換気ユニット22の中央の下室外側内部空間連通口44dから空間68に入り、下室内側内部空間連通口44cを介して室内側内部空間18aに流れ込む。室内側内部空間18aに流れ込んだ空気は、室内側内部空間18aを下方から上方に流れる間に、室外ガラスパネル14およびブラインド24との熱交換によりさらに冷却され、上換気ユニット20の左の上室内連通口34bから冷気として室内空間に放出される。このように、ダブルスキン構造300の熱排出モードによっても、室内空間の熱を室外に排出できる。
【0051】
以上述べたように、本開示のダブルスキン構造によれば、既存の建物のシングルスキン構造に室内ガラスパネル16、上換気ユニット20および下換気ユニット22を後付けで取り付けることで、シングルスキン構造を簡易的なダブルスキン構造に比較的容易に改修することができる。また、本開示のダブルスキン構造は、上述の実施例で説明したように、様々な動作モードで空気の流れをつくることが可能であり、快適な室内環境を提供することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0053】
10,100,200,300 ダブルスキン構造、 12 枠体、 14 室外ガラスパネル、 16 室内ガラスパネル、 18 内部空間、 20 上換気ユニット、 22 下換気ユニット、 24 ブラインド、 32 上筐体、 38 上ファン、 40 下筐体、 46 下ファン。