(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車内生体検出装置、無人確認システム、及び、扉閉制御システムとこれらの方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20241219BHJP
E04H 6/14 20060101ALI20241219BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241219BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20241219BHJP
G01S 13/52 20060101ALI20241219BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20241219BHJP
【FI】
E04H6/18 601G
E04H6/14 601J
A61B5/11 110
A61B5/113
G01S13/52
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2020144627
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 誠彦
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特許第3527362(JP,B2)
【文献】特表2001-525925(JP,A)
【文献】特表2012-523149(JP,A)
【文献】特開2011-246942(JP,A)
【文献】特開2019-109652(JP,A)
【文献】特開2020-094336(JP,A)
【文献】特開2005-330685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
A61B 5/06-5/22
G01S 7/00-7/42,13/00-13/95,17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にミリ波を照射して車内の生体を検出する車内生体検出装置であって、
乗降領域の内側に停車した前記車両に対し前方から前面ガラスを
通してミリ波を前記車内に照射しその反射波データを受信する車内用ミリ波センサと、
前記前面ガラスを除く前記車両の一部に対し前方からミリ波を照射して前記車両の揺れ
による反射波データを検出する車体用ミリ波センサと、
前記車両に対し、前記乗降領域の外側前方からミリ波を照射して乗降領域後方の背面の揺れ
による反射波データを検出する背面用ミリ波センサと、
前記反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号を出力する中間周波数増幅器と、
前記増幅信号から前記生体の有無を判別する判別装置と、を備え
前記中間周波数増幅器は、前記車内用ミリ波センサの前記反射波データから、前記車体用ミリ波センサ及び前記背面用ミリ波センサの反射波データを除去
し、除去後の反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して前記増幅信号を出力する、車内生体検出装置。
【請求項2】
前記判別装置は、前記増幅信号を周波数分析する周波数分析器と、
周波数分析後の呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分の出力をそれぞれの閾値と比較する比較部と、を有する、請求項1に記載の車内生体検出装置。
【請求項3】
前記車内用ミリ波センサの前記ミリ波は、前記前面ガラスに対する入射角を狭め、かつ車内全域から前記反射波データを受信するように水平方向下向きに照射される、請求項1に記載の車内生体検出装置。
【請求項4】
前記車内用ミリ波センサは、送信周波数が24GHz帯の前記ミリ波を発振する発振器と、前記ミリ波の垂直偏波を照射するパラボラアンテナを有する、請求項1に記載の車内生体検出装置。
【請求項5】
前記パラボラアンテナは、アンテナゲインが半分となる半値角が6度以上、10度以下であり、照射位置から3mにおける半値幅が300mm以上、600mm以下である、請求項4に記載の車内生体検出装置。
【請求項6】
前記車両の運転席、助手席、及びその中間に対応する水平方向3列と車種の相違に対応する高さ方向に複数列の前記車内用ミリ波センサを有する、請求項1に記載の車内生体検出装置。
【請求項7】
複数の前記車内用ミリ波センサは、相互干渉を防止するため異なる送信周波数を有する、請求項6に記載の車内生体検出装置。
【請求項8】
前記乗降領域を間に挟んで前記車内用ミリ波センサに対向する位置に、計測対象の観測視野と同等以上の範囲と面積を有する電波反射体又は電波吸収体を備える、請求項1に記載の車内生体検出装置。
【請求項9】
前記乗降領域の内側に停車する前記車両に対し、側方から前記車両の側面ガラスを通してミリ波を照射してその反射波データを受信する側方ミリ波センサを有
し、
前記中間周波数増幅器が、前記車内用ミリ波センサ及び前記側方ミリ波センサの反射波データから、前記車体用ミリ波センサ及び前記背面用ミリ波センサの反射波データを除去し、除去後の反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して前記増幅信号を出力する、請求項1に記載の車内生体検出装置。
【請求項10】
車両にミリ波を照射して車内の生体を検出する車内生体検出方法であって、
(A)車内用ミリ波センサにより、乗降領域の内側に停車した車両に対し前方から前面ガラスを通してミリ波を前記車内に照射しその反射波データを受信し、
(B)車体用ミリ波センサにより、前記前面ガラスを除く前記車両の一部に対し前方からミリ波を照射して前記車両の揺れによる反射波データを検出し、
(C)背面用ミリ波センサにより、前記車両に対し、前記乗降領域の外側前方からミリ波を照射して乗降領域後方の背面の揺れによる反射波データを検出し、
(D)前記車内用ミリ波センサの前記反射波データから、前記車体用ミリ波センサ及び前記背面用ミリ波センサの反射波データを除去し、除去後の反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号を出力し、
(E)前記増幅信号から前記生体の有無を判別する、車内生体検出方法。
【請求項11】
前記乗降領域を内部に有する乗降室の無人を検出する無人確認システムであって、
請求項1に記載の車内生体検出装置と、
前記乗降室の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出するレーザーシステムと、
前記レーザーシステム及び前記車内生体検出装置の検出データから前記乗降室内の異物を検出するデータ処理装置と、を備え、
前記データ処理装置は、前記乗降室内に前記車両及び異物が存在しないときの前記レーザーシステムの検出データである無人データを記憶し、
前記車両の入庫時に、前記車内生体検出装置により前記生体を検出せず、かつ前記レーザーシステムによる前記乗降領域を除く前記座標データが、前記無人データと同じである場合に、前記乗降室内が無人であると判断する、無人確認システム。
【請求項12】
前記データ処理装置は、前記車両の出庫時に、前記レーザーシステムによる前記座標データが、前記無人データと同じである場合に、前記乗降室内が無人であると判断する、請求項11に記載の無人確認システム。
【請求項13】
前記レーザーシステムは、前記乗降室の内壁及び床面との間に前記異物が侵入できないように設置され、かつ前記乗降領域を間に挟んで位置する複数の3次元レーザーレーダーである、請求項11に記載の無人確認システム。
【請求項14】
前記レーザーシステムは、前記乗降室の前記内側全域を俯瞰可能な位置に設置された1又は複数の3次元レーザーレーダーである、請求項11に記載の無人確認システム。
【請求項15】
前記乗降領域を内部に有する乗降室の無人を検出する無人確認方法であって、
請求項1に記載の車内生体検出装置により前記車内の前記生体の有無を判別する車内生体検出ステップと、
前記乗降室内に前記車両及び異物が存在しないときに、レーザーシステムにより前記乗降室の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データである無人データを記憶する無人データ記憶ステップと、
前記車両の入庫時に、前記レーザーシステムによる前記乗降室の内側全域の前記座標データから前記乗降領域の前記座標データを除去した周囲データを検出する入庫時データ検出ステップと、
前記周囲データが前記乗降領域を除く前記無人データと同じ場合に、周囲異物なしと判断する周囲異物検出ステップと、
前記周囲異物検出ステップで周囲異物なしと判断し、かつ前記車内生体検出ステップにより前記車内の前記生体を検出しない場合に、前記乗降室内が無人であると判断する入庫時確認ステップと、を有する無人確認方法。
【請求項16】
前記車両の出庫時に、前記レーザーシステムにより、前記乗降室の内側全域の前記座標データである全域データを検出する出庫時データ検出ステップと、
前記全域データが前記無人データと同じ場合に、全域異物なしと判断する全域異物検出ステップと、
前記全域異物検出ステップで全域異物なしと判断した場合に、前記乗降室内が無人であると判断する出庫時確認ステップと、を有する請求項15に記載の無人確認方法。
【請求項17】
請求項11に記載の無人確認システムと、
前記乗降室の入出庫扉の周辺に位置する前記異物を検出する扉周辺センサと、
前記入出庫扉を開閉する扉開閉装置と、
前記扉開閉装置を制御する扉制御装置と、を備え、
前記扉制御装置は、
(A)前記入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ前記無人確認システム及び前記扉周辺センサが前記異物を検出しないときに、前記扉開閉装置に閉動作信号を出力し、
(B)前記入出庫扉が閉動作を開始した後、前記無人確認システム及び前記扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、
(C)前記入出庫扉が全閉する前に、前記無人確認システム又は前記扉周辺センサが前記異物を検出したときに、前記扉開閉装置に開動作信号を出力する、扉閉制御システム。
【請求項18】
前記扉制御装置は、
前記入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ前記無人確認システム又は前記扉周辺センサが前記異物を検出するときは、前記無人確認システム及び前記扉周辺センサによる検出を繰り返す、請求項17に記載の扉閉制御システム。
【請求項19】
請求項17に記載の扉閉制御システムの扉閉制御方法であって、
(A)前記入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ前記無人確認システム及び前記扉周辺センサが前記異物を検出しないときに、前記扉開閉装置に閉動作信号を出力し、
(B)前記入出庫扉が閉動作を開始した後、前記無人確認システム及び前記扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、
(C)前記入出庫扉が全閉する前に、前記無人確認システム又は前記扉周辺センサが前記異物を検出したときに、前記扉開閉装置に開動作信号を出力する、扉閉制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内の生体を検出する生体検出手段と、機械式駐車装置の乗降室の無人確認手段と、入出庫扉を閉鎖する扉閉制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置(例えば、エレベータ方式、垂直循環方式、等)には、車両(例えば乗用車)が入出庫(入庫又は出庫)する乗降室と、乗降室へ車両が出入するための入出庫扉が設けられている。
機械式駐車装置が作動する際は、安全性を確保するために、車内に人や動物(以下、「生体」)が残っていないこと、及び、乗降室内に人、動物及び車両以外の物品(以下、「異物」)が残っていないことを確認し、入出庫扉を全閉する必要がある。
従来この確認は、光電センサ又は人感センサによる異物検出や、管理人による目視確認によって実施されていた。
【0003】
また、管理人が常駐しない機械式駐車装置の場合、ユーザーが入庫時又は出庫時に、乗降室内を確認して入出庫扉(以下、「扉」)を全閉する運用が実施されていた。
しかしこの場合、あるユーザーが乗降室内にいるときに、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまう可能性があった。
そこで、かかる問題を解決するために例えば特許文献1が提案されている。
【0004】
特許文献1の「機械式立体駐車場の制御方法」は、第1認証処理、第2認証処理、照合処理、及び閉扉処理を有する。第1認証処理において、車庫装置の入出庫扉を開く前に、ユーザーによる第1の認証操作に基づいてユーザーの認証を行う。第2認証処理において、入出庫扉を閉じる前にユーザーによる第2の認証操作に基づいてユーザーの認証を再度行う。照合処理において、第1認証処理と第2認証処理の認証情報が一致しているか否かを照合する。閉扉処理において、照合処理における照合結果が一致した場合にのみ入出庫扉を閉じるものである。
【0005】
また、車内にいる人又は動物を検知する手段が、特許文献2に開示されている。
特許文献2の「駐車場内人体検知装置」は、マイクロ波発振器、アンテナ、検波手段、変化成分検出手段、比較手段、及び警報手段を備える。アンテナはマイクロ波を車両に向けて送信し周囲のマイクロ波を受信する。検波手段は、受信したマイクロ波のうち車両内および車両付近で反射された反射波を検波する。変化成分検出手段は、検波手段からの信号に基づいて周囲の人の0.2~0.5Hzの呼吸による信号の変化成分を取り出す。比較手段は、変化成分検出手段の出力を所定の基準値と比較し、警報手段は、車両内または車両付近の人の存在を通報するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-26121号公報
【文献】特許第3527362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1により、あるユーザーが乗降室内にいるときに、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまうことを回避することができる。しかし、特許文献1の手段には以下の課題があった。
【0008】
(1)乗降室から車両に乗り出庫したユーザーが、扉を閉じずにそのまま自分の目的地に向かってしまう可能性がある。
その場合、他のユーザーが操作しても認証情報が一致しないため、扉を閉じることも、駐車装置を作動させることもできなくなる。この場合、扉が開いた状態のまま長時間放置され、他の利用者が使えない問題が発生する。
(2)人が運転しない自動運転車の普及に伴い、入出庫扉を人が介在せずに閉じる場合が発生する。この場合でも、上述した問題を発生させることなく、より高い安全性を確保する必要がある。
【0009】
また、特許文献2の手段は、「人の0.2~0.5Hzの呼吸による信号の変化成分」に基づき人の存在を検出するので、呼吸よりも変位量が1桁以上大きい体動があると、体動の信号成分に埋もれてしまい呼吸成分が検出できない。
また逆に、眠っている人、子供、幼児、泥酔者、重病人などの場合に、体動や呼吸による変位が小さく、ほとんど検出できない場合がある。
【0010】
上述した従来の問題点を解決するために、本願発明の発明者らは、入庫時の車以外の異物検知手段として、最初に以下の第1手段を実施した。
(1)入庫車が停車したことを判定して、その3次元データを基準に差分比較することで入庫した車両以外の異物を検出する。
しかし、この手段の場合、以下の条件などで停車の判定が安定的にできないことがわかった。
a.入庫した車両と人が同時に乗降領域に入ると、車両と人の判別が難しい。
b.停車判定後、停止位置の補正などで車両が移動することがある。
【0011】
そこで、第2手段として、点群深層学習(3次元データのAI処理)による停車判定を検討した。
この手段は、大量の点群データによりトレーニングしたモデルを使って、3Dセンサによりリアルタイムに取得した点群データの中で、車両及び異物に属する点群を自動的に認識し抽出するものである。
しかし、この手段の場合、異なる駐車場に対する大量の点群データの取得が困難である。そのため、設置するセンサ位置で取得できるデータが異なり、安定検出ができない。
また、現状の3Dセンサの点群密度は非常に荒い(粗である)。さらに、インターレースモードで遅延性があるため、対象物の特徴量を学習しにくい。
c.また、レーザーシステムでは、反射率の高いまたは低い車両の点群をほとんど取得できない。さらに、フィールド試験の結果、車両本体の乱反射による誤検出があり検出率が低下することがあった。
【0012】
次いで、第3手段として、動画のセマンティックセグメンテーション(動画AI)による停車判定を検討した。
この手段では、庫内の既設監視カメラを使って、大量の動画を撮影し、セマンティックセグメンテーション(動画AI)により人認識モデルをトレーニングする。このモデルを監視カメラに導入して、現状の3Dセンサと併用することで庫内を監視する。
しかし、この手段は、異なる駐車場の監視カメラの設置角度や位置の差が影響する。また、学習データが不十分であれば、誤認識や過認識が発生しやすい。また、駐車場環境のバリエーションが多いため、学習データが不十分となり、誤認識や過認識が発生しやすい。
【0013】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、車両の停車判定なしに、呼吸、脈拍、及び体動による信号を互いに埋没せずに検出して車内の生体を確実に検出することができる車内生体検出手段と、これを用いた無人確認手段及び扉閉制御手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、車両にミリ波を照射して車内の生体を検出する車内生体検出装置であって、
乗降領域の内側に停車した前記車両に対し前方から前面ガラスを通してミリ波を前記車内に照射しその反射波データを受信する車内用ミリ波センサと、
前記前面ガラスを除く前記車両の一部に対し前方からミリ波を照射して前記車両の揺れによる反射波データを検出する車体用ミリ波センサと、
前記車両に対し、前記乗降領域の外側前方からミリ波を照射して乗降領域後方の背面の揺れによる反射波データを検出する背面用ミリ波センサと、
前記反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号を出力する中間周波数増幅器と、
前記増幅信号から前記生体の有無を判別する判別装置と、を備え
前記中間周波数増幅器は、前記車内用ミリ波センサの前記反射波データから、前記車体用ミリ波センサ及び前記背面用ミリ波センサの反射波データを除去し、除去後の反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して前記増幅信号を出力する、車内生体検出装置が提供される。
【0015】
また本発明によれば、車両にミリ波を照射して車内の生体を検出する車内生体検出方法であって、
(A)車内用ミリ波センサにより、乗降領域の内側に停車した車両に対し前方から前面ガラスを通してミリ波を前記車内に照射しその反射波データを受信し、
(B)車体用ミリ波センサにより、前記前面ガラスを除く前記車両の一部に対し前方からミリ波を照射して前記車両の揺れによる反射波データを検出し、
(C)背面用ミリ波センサにより、前記車両に対し、前記乗降領域の外側前方からミリ波を照射して乗降領域後方の背面の揺れによる反射波データを検出し、
(D)前記車内用ミリ波センサの前記反射波データから、前記車体用ミリ波センサ及び前記背面用ミリ波センサの反射波データを除去し、除去後の反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号を出力し、
(E)前記増幅信号から前記生体の有無を判別する、車内生体検出方法が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記乗降領域を内部に有する乗降室の無人を検出する無人確認システムであって、
上記の車内生体検出装置と、
前記乗降室の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出するレーザーシステムと、
前記レーザーシステム及び前記車内生体検出装置の検出データから前記乗降室内の異物を検出するデータ処理装置と、を備え、
前記データ処理装置は、前記乗降室内に前記車両及び異物が存在しないときの前記レーザーシステムの検出データである無人データを記憶し、
前記車両の入庫時に、前記車内生体検出装置により前記生体を検出せず、かつ前記レーザーシステムによる前記乗降領域を除く前記座標データが、前記無人データと同じである場合に、前記乗降室内が無人であると判断する、無人確認システムが提供される。
【0017】
また本発明によれば、前記乗降領域を内部に有する乗降室の無人を検出する無人確認方法であって、
上記の車内生体検出装置により前記車内の前記生体の有無を判別する車内生体検出ステップと、
前記乗降室内に前記車両及び異物が存在しないときに、レーザーシステムにより前記乗降室の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データである無人データを記憶する無人データ記憶ステップと、
前記車両の入庫時に、前記レーザーシステムによる前記乗降室の内側全域の前記座標データから前記乗降領域の前記座標データを除去した周囲データを検出する入庫時データ検出ステップと、
前記周囲データが前記乗降領域を除く前記無人データと同じ場合に、周囲異物なしと判断する周囲異物検出ステップと、
前記周囲異物検出ステップで周囲異物なしと判断し、かつ前記車内生体検出ステップにより前記車内の前記生体を検出しない場合に、前記乗降室内が無人であると判断する入庫時確認ステップと、を有する無人確認方法が提供される。
【0018】
さらに本発明によれば、上記の無人確認システムと、
前記乗降室の入出庫扉の周辺に位置する前記異物を検出する扉周辺センサと、
前記入出庫扉を開閉する扉開閉装置と、
前記扉開閉装置を制御する扉制御装置と、を備え、
前記扉制御装置は、
(A)前記入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ前記無人確認システム及び前記扉周辺センサが前記異物を検出しないときに、前記扉開閉装置に閉動作信号を出力し、
(B)前記入出庫扉が閉動作を開始した後、前記無人確認システム及び前記扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、
(C)前記入出庫扉が全閉する前に、前記無人確認システム又は前記扉周辺センサが前記異物を検出したときに、前記扉開閉装置に開動作信号を出力する、扉閉制御システムが提供される。
【0019】
さらに本発明によれば、上記の扉閉制御システムの扉閉制御方法であって、
(A)前記入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ前記無人確認システム及び前記扉周辺センサが前記異物を検出しないときに、前記扉開閉装置に閉動作信号を出力し、
(B)前記入出庫扉が閉動作を開始した後、前記無人確認システム及び前記扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、
(C)前記入出庫扉が全閉する前に、前記無人確認システム又は前記扉周辺センサが前記異物を検出したときに、前記扉開閉装置に開動作信号を出力する、扉閉制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中間周波数増幅器により、反射波データのうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号を出力するので、それぞれのバイタル信号を互いに埋没せずに検出して車内の生体を確実に検出することができる。
【0021】
また本発明によれば、車内用ミリ波センサにより、乗降領域にミリ波を照射して生体を検出するので、車両の停車判定なしに、生体を検出することができる。従って、車両と人が同時に乗降領域に入った場合、或いは停車判定後に停止位置の補正などで車両が移動した場合でも、車両の停車判定は不要となる。
【0022】
また、車両の入庫時に、レーザーシステムによる乗降領域を除く座標データ(周囲データ)を無人データと比較するので、車両の反射率や乱反射の影響を受けない。
【0023】
従って、車両の車内は、車内生体検出装置により、車両の停車判定なしに、生体を検出することができる。また、車両の外側、すなわち乗降室の乗降領域を除く周囲は、レーザーシステムにより車両の反射率や乱反射の影響を受けずに、異物を検出することができる。
【0024】
これにより、車内生体検出装置により生体を検出せず、かつレーザーシステムにより異物を検出しない場合に、乗降室内が無人であると判断することで、人が介在せずに、乗降室の無人(人や動物の不在)を高い精度で確認することができる。
【0025】
また、本発明によれば、扉制御装置が、入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ無人確認システム及び扉周辺センサが異物(人、動物又は車両以外の物品)を検出しないときに、扉開閉装置に閉動作信号を出力する。
【0026】
従って、あるユーザーが乗降室内にいるときには、無人確認システム及び扉周辺センサが異物(ユーザー)を検出するので、入出庫扉の閉指令信号を受信しても閉動作信号が出力されず、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまうことを回避することができる。
【0027】
また、乗降室から車両に乗って出庫したユーザーがそのまま自分の目的地に向かってしまう場合でも、入出庫扉の閉指令信号を受信し、かつ異物を検出しないときに、閉動作信号が出力されるので、正常に扉を閉じることができる。
【0028】
また、入出庫扉が閉動作を開始した後、無人確認システム及び扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、入出庫扉が全閉する前に、室内センサ又は扉周辺センサが異物を検出したときに、扉開閉装置に開動作信号を出力する。
【0029】
従って、人が介在しない場合(例えば自動運転車)でも、人、動物及び車両以外の物品(「異物」)が乗降室内に残っていないことを確認し、機械式駐車装置の入出庫扉を安全に閉鎖することができる。
【0030】
また、扉開閉装置に開動作信号が出力され、入出庫扉が全開されるので、人が介在せずに、安全が確認されるまで扉は全開して待機する。これにより、新たな扉閉指令なしに、安全が確認された後に入出庫扉を安全に閉鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による車内生体検出装置の平面図(A)と側面図(B)である。
【
図4】本発明による無人確認システムを示す全体構成図である。
【
図5】本発明による無人確認方法の全体フロー図である。
【
図6】本発明による扉閉制御システムを示す全体構成図である。
【
図7】本発明による扉閉制御方法の全体フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0033】
図1は、本発明による車内生体検出装置10の平面図(A)と側面図(B)である。
車内生体検出装置10は、車両4にミリ波7を照射して車内の生体Fを検出する装置であり、車内用ミリ波センサ12A、中間周波数増幅器14、及び判別装置16を備える。
【0034】
図1(A)(B)に示すように、車内用ミリ波センサ12Aは、乗降領域5の内側に停車した車両4に対し前方から前面ガラス(フロントガラス)を透してミリ波7を車内に照射しその反射波データ8を受信する。
フロントガラスを透してミリ波7を照射する理由は、フロントガラスは高い視認性を求められるため、高機能な色付きガラスは採用されないからである。
乗降領域5の詳細は後述する。
【0035】
図2は、車内生体検出装置10の全体構成図である。
図2(A)において、車内用ミリ波センサ12Aは、送信周波数が24GHz帯のミリ波7を発振する発振器13aと、ミリ波7の垂直偏波を照射するパラボラアンテナ13bを有する。パラボラアンテナ13bは、電波の反射器に回転放物面を利用した椀形のアンテナである。
【0036】
24GHz帯のミリ波7を用いるのは、従来の10GHz帯のミリ波は、電波法の屋内規制により扉(又はシャッター)を開いた状態で使用できないからである。これに対し、24GHz帯(準ミリ波)は、屋内規制が無く、かつガラスに対する透過性がミリ波帯より優れている。なお、24GHz帯の準ミリ波を、本発明では単に「ミリ波7」と呼ぶ。
また、本発明のミリ波7は、24GHz帯のミリ波に限定されず、周波数帯10~300GHzの電波であってもよい。
【0037】
また、垂直偏波(TM波)を用いるのは、従来の水平偏波(TE波)と比較して、ガラスに対する透過率が大きいからである。
さらに、パラボラアンテナ13bを用いるのは、従来のパッチアンテナと比較して、空中線利得を稼ぎつつ半値角θを狭めることができるからである。
半値角θの詳細は後述する。
【0038】
図2(B)は、中間周波数増幅器14の増幅率(縦軸)と反射波データ8の周波数(横軸)との関係図である。
この図に示すように、中間周波数増幅器14は、反射波データ8のうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号9を出力する。
【0039】
人の脈拍の変位量は約0.1~0.2mm、呼吸の変位量は約10mm、体動の変位量は約100mmのオーダである。また、RCS(radar cross section)は、脈拍を1とすると、呼吸は100、体動は1000のオーダである。
そのため、脈拍のRCSに対し呼吸と体動のRCSが2~3桁のオーダで大きく、ミリ波センサの信号を利用してバイタル信号(生体信号)を検出する場合、呼吸と体動の信号成分により脈拍の信号成分が埋もれてしまう。また、脈拍信号を検出するためには高ゲインのアンプを用いて信号を増幅する必要があるが、この場合、呼吸と体動の信号によってアンプが飽和し、脈拍信号が喪失されることが予測される。
【0040】
一方、バイタル信号の周波数成分は、例えば、呼吸が約0.2~0.5Hz、脈拍が約1~2Hz、体動が約5Hz以上である。
本発明では、
図2(B)に示すように、呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅する。
【0041】
この例では、脈拍(約1~2Hz)を含む0.5Hz~5Hzの増幅率を脈拍信号の検出に必要な高いゲインG(=X)に設定する。また、呼吸に相当する約0.2~0.5Hzの増幅率をアンプが飽和せずかつ脈拍信号と同等のオーダの増幅信号が得られるようにゲインG(例えば=X-20dB)に設定する。同様に、体動に相当する5~20Hzの増幅率をアンプが飽和せずかつ脈拍信号と同等のオーダの増幅信号が得られるようにゲインG(例えば=X-40dB)に設定する。
なお、この増幅特性は、実質的にバンドパスフィルタと同義である。また、バンドパスフィルタの肩特性は急峻でなくなだらかに変化してもよい。
【0042】
上述した構成により、増幅後の呼吸、脈拍、及び体動の信号レベルを、各信号が互いに埋没せず、かつアンプが飽和しないようにすることができ、それぞれのバイタル信号を検出することができる。
【0043】
図2(A)において、判別装置16は、増幅信号9を周波数分析する周波数分析器17と、周波数分析後の呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分の出力をそれぞれの閾値と比較する比較部18と、を有する。
この構成により、呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分(例えば、約0.2~0.5Hz、約1~2Hz、約5Hz以上)をそれぞれの閾値と比較し、いずれかの出力がその閾値を超えるか否かにより、生体Fの有無を判別することができる。
【0044】
図1(B)に示すように、ミリ波7は、前面ガラスに対する入射角を狭め、かつ車内全域から反射波データ8を受信するように、好ましくは水平方向下向きに照射される。この照射角度αは、下向きに例えば5~15度であり、さらに好ましくは10度である。なお、本発明はこれに限定されず、水平であってもよい。
【0045】
また、
図1(A)に示すように、パラボラアンテナ13bは、アンテナゲインが半分となる半値角θが6度以上、10度以下であり、照射位置から3mにおける半値幅Lが300mm以上、600mm以下であるのがよい。
半値角θとは、アンテナゲインが半分となるミリ波7の広がり角である。半値角が6~10°の場合、照射位置から3mにおける半値幅L(ミリ波7の照射幅)が300mm以上、600mm以下となる。
【0046】
図3は、車内生体検出装置10の説明図である。この図において、(A)は、車両4の正面に対する配置図、(B)は車両4の側面に対する配置図である。
図3(A)において、車内生体検出装置10は、車内用ミリ波センサ12A、車体用ミリ波センサ12B、及び背面用ミリ波センサ12Cを有する。
【0047】
車体用ミリ波センサ12B、背面用ミリ波センサ12C、及び後述する側方ミリ波センサ12Dは、上述した車内用ミリ波センサ12Aと同様のミリ波センサである。
【0048】
本発明において、「ミリ波センサ」とは、ミリ波レーダー、ミリ波ドップラーセンサ、又は、ミリ波ドップラーレーダーを意味する。
「ミリ波レーダー」は、ミリ波帯の電波を使って対象物との距離、速度、角度を測定するレーダーである。
「ミリ波ドップラーセンサ」は発射したミリ波の反射波を受信し、発射した周波数と受信した周波数の差から動体を検出するドップラー効果を利用したセンサである。
「ミリ波ドップラーレーダー」とは、ドップラー効果による周波数の変移を観測することで、観測対象の相対的な移動速度と変位を観測する事のできるレーダーである。
【0049】
ミリ波センサは、ドップラー効果により生体Fを検知しかつ所定の周波数帯域を除去することにより意図しない生体検知を回避する機能を有する。
またミリ波センサは、短波長のため高い精度での検出を実現でき、最小で0.1mm単位の動きを検出することができる。そのため、生体F(人又は動物)の呼吸時における胸部の動きや、心拍による胸部の動きも検出することができる。
【0050】
図3において、車両4の運転席、助手席、及びその中間に対応する水平方向3列と車種の相違に対応する高さ方向に複数列の車内用ミリ波センサ12Aを有する。
この例で、9台の車内用ミリ波センサ12Aは、高さh1、h2、h3の位置に3つずつ幅方向に間隔を隔てて配置されている。高さh1、h2、h3は、複数の車種に対応するように設定され、幅方向の3つは、車両4の中央と運転席及び助手席に対応するように設定されている。
幅方向の3つ車内用ミリ波センサ12Aの中心間距離は、それぞれのミリ波7の隙間に生体Fが存在しえないように設定するのがよい。この中心間距離は例えば約400mmである。
【0051】
この構成により、車内用ミリ波センサ12Aの少なくとも1つが、車両4の前面ガラスを通して内部にミリ波7を照射し、車両内部の生体F(人又は動物)を検出するようになっている。
なお、車内用ミリ波センサ12Aの数量は、車両4の前方から車両4の前面ガラスを通してミリ波7を照射し、車内全体(前部座席、中間座席、後部座席)の生体F(人又は動物)を検出できる限りで、1台でも2台以上でもよい。
【0052】
また、複数(この例で9台)の車内用ミリ波センサ12Aは、相互干渉を防止するため異なる送信周波数を有することが好ましい。
例えば、24.0~24.25GHzの24GHz帯の範囲で互いに異なる送信周波数であるのがよい。
この構成により、複数の車内用ミリ波センサ12Aによる複数のミリ波7は、互いに平行に限定されず、例えば互いに交叉してもよい。
【0053】
車体用ミリ波センサ12Bは、前面ガラスを除く車両4の一部に対し前方からミリ波7を照射して車両4の揺れを検出する。
この例で、1台の車体用ミリ波センサ12Bが高さh0の中央位置に配置されている。高さh0は、複数の車種に対応するように設定され、車両4を確実に検出できるように設定されている。
【0054】
背面用ミリ波センサ12Cは、車両4に対し、乗降領域5の外側前方からミリ波7を照射して乗降領域後方の背面(例えば入出庫扉3)の揺れを検出する。
この例で、2台の背面用ミリ波センサ12Cは、乗降領域5の幅方向外側に位置し、入出庫扉3に対向する高さに設定されている。
なお、車体用ミリ波センサ12Bと背面用ミリ波センサ12Cの半値角θと照射角度αは、車内用ミリ波センサ12Aと相違してもよい。
【0055】
上述したように、ミリ波センサは、ドップラー効果により生体Fを検知することができる。しかし、ミリ波センサは、生体F(人又は動物)の呼吸時における胸部の動きや、心拍による胸部の動きも検出するほど検出感度が高いため、停車後の車両4の揺れや扉の揺動(開閉時や風等による)を誤検出することがある。
車体用ミリ波センサ12Bと背面用ミリ波センサ12Cはこの誤検出を防止するために設けられている。
【0056】
なお、乗降領域5の後方に入出庫扉3が設置されていない場合には、背面用ミリ波センサ12Cにより乗降領域5の後方に位置する壁面等の揺れを検出してもよい。また、この場合に壁面等の揺れの影響が無視できる場合には、背面用ミリ波センサ12Cを省略してもよい。
【0057】
また、
図1(B)に示すように、乗降領域5を間に挟んで車内用ミリ波センサ12Aに対向する位置に、計測対象の観測視野と同等以上の範囲と面積を有する電波反射体19a又は電波吸収体19bを備えてもよい。
電波反射体19aは、例えば金属板である。また、電波吸収体19bは、例えば、スポンジ等である。これらの電波反射体19a又は電波吸収体19bは、車両4の入出庫の障害にならないように、退避可能になっているのがよい。
かかる電波反射体19a又は電波吸収体19bを備えることにより、乗降領域5の後方の背面(例えば入出庫扉3)の揺れ等の影響を無くすことができる。
【0058】
図3(B)において、車内生体検出装置10は、さらに、乗降領域5の側方から車両4の側面ガラスを通してミリ波7を照射する側方ミリ波センサ12Dを有する。
この例で、3台の側方ミリ波センサ12Dが高さh4の位置に車両の長さ方向に間隔を隔てて配置されている。高さh4は、複数の車種の後部座席に対応するように設定されている。
なお、側方ミリ波センサ12Dの半値角θと照射角度αは、車内用ミリ波センサ12Aと相違してもよい。
この構成により、側方ミリ波センサ12Dの少なくとも1つが、車両の側面ガラスを通して内部にミリ波7を照射し、車両内部の生体F(人又は動物)を検出するようになっている。
【0059】
なお、側方ミリ波センサ12Dの数量は、乗降領域5の側方から車両の側面ガラスを通してミリ波7を照射し、後部座席の生体F(人又は動物)を検出できる限りで、1台でも2台以上でもよい。
また、側方ミリ波センサ12Dによる生体Fの検出は、後部座席に限定されず、前部座席、中間座席、又は荷物室であってもよい。
【0060】
本発明の車内生体検出方法は、上述した車内生体検出装置10を用い、車両4にミリ波7を照射して車内の生体Fを検出する方法である。車内生体検出方法は、A,B,Cの各ステップ(工程)を有する。
ステップAでは、乗降領域5の内側に停車した車両4に対し前方から前面ガラスを通してミリ波7を車内に照射しその反射波データ8を受信する。
ステップBでは、反射波データ8のうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号9を出力する。
ステップCでは、増幅信号9から生体Fの有無を判別する。
【0061】
上述した本発明の実施形態によれば、中間周波数増幅器14により、反射波データ8のうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号9を出力するので、それぞれのバイタル信号を互いに埋没せずに検出して車内の生体Fを確実に検出することができる。
【0062】
また本発明によれば、車内用ミリ波センサ12Aにより、乗降領域5にミリ波7を照射して生体Fを検出するので、車両4の停車判定なしに、生体Fを検出することができる。従って、車両4と人が同時に乗降領域5に入った場合、或いは停車判定後に停止位置の補正などで車両4が移動した場合でも、車両4の停車判定は不要となる。
【0063】
図4は、本発明による無人確認システム20を示す全体構成図である。
この図において、1は機械式駐車装置、2は乗降室、3は入出庫扉、4は車両である。機械式駐車装置1は、例えば、エレベータ方式、垂直循環方式の機械式駐車設備であるが、乗降室2を有する限りで、その他の機械式駐車装置であってもよい。
【0064】
無人確認システム20は、乗降領域5を内部に有し、車両4が入出庫する乗降室2の無人を検出するシステムである。
【0065】
乗降領域5は、車両4が停車して人が乗り降りする領域である。乗降領域5の幅、長さ、及び高さは、対象とする車両4の最大寸法よりも大きく設定されている。
例えば、対象とする車両4が中型車であり、全幅、全長、全高が1700mm、4800mm、1500mmである場合、停車位置の変動を考慮して、乗降領域5の幅、長さ、及び高さを例えば、2000mm、5100mm、2000mmに設定する。
車両4は、乗降領域5の内側に停車する。
この場合、停車した車両4の外面と乗降領域5の境界面との間に、生体Fが入れないように設定することが好ましい。生体Fとは、人や動物を意味する。
対象とする車両4が複数の車種(例えば、小型車、中型車、ワンボックス車)の場合には、各車両が乗降領域5の内側に停車できるように、乗降領域5の寸法を設定する。
また、乗降領域5を車種に応じて自動的に変化させてもよい。
【0066】
入庫する車両4は、入出庫扉3を通って外部から乗降室2の内側に入り、乗降領域5の内側に停車する。
この場合、車両4の前側を
図1で上向きに停車する。以下、
図1の上側を前方、下側を後方と呼ぶ。
入出庫扉3は乗降領域5の後方に設けられている。また入出庫扉3の開口幅は、乗降領域5の全幅より大きく設定されている。
【0067】
上述した乗降領域5の位置に車両4を載せるパレット(図示せず)が設けられることがある。この場合、パレットの平面寸法は乗降領域5と不一致であってもよい。
また、パレットが乗降室2の内側で水平移動又は水平旋回してもよい。
従って、車両4の出庫時に、車両4の前側が
図1で下向きであり、前進出庫できることが好ましい。
【0068】
図4において、無人確認システム20は、上述した車内生体検出装置10の他に、レーザーシステム22、及びデータ処理装置26を備える。
【0069】
レーザーシステム22は、乗降室2の内側全域にレーザー光6を照射してその反射位置の座標データを検出する。レーザー光6の照射は、水平走査又は3次元走査であるのがよい。
この例で、レーザーシステム22は、乗降室2の内壁及び床面との間に異物Gが侵入できないように設置され、かつ乗降領域5を間に挟んで位置する複数(この例で2台)の3次元レーザーレーダー22Aである。
この図に示すように、レーザー光6の水平走査範囲(水平走査角度)は、正面から少なくとも-45度~+45度、好ましくは-75度~+75度であるのがよい。
また3次元レーザーレーダー22Aの検出距離は、乗降室2の間口及び奥行以上(例えば8m以上)であるのがよい。
【0070】
異物Gは、生体F(人又は動物)と車両以外の物品を意味する。
なお、レーザーシステム22は、乗降室2の内側全域を俯瞰可能な位置に設置された1又は複数の3次元レーザーレーダー22Aであってもよい。
【0071】
データ処理装置26は、レーザーシステム22及び車内生体検出装置10の検出データから乗降室内の異物Gを検出する。データ処理装置26は、例えばコンピュータ(PC)であり、入力装置、出力装置、記憶装置、及び演算装置を有する。
【0072】
データ処理装置26は、乗降室内に車両4及び異物Gが存在しないときの検出データである無人データD0を記憶する。
また、データ処理装置26は、車両4の入庫時に、車内生体検出装置10により生体Fを検出せず、かつレーザーシステム22による乗降領域5を除く座標データ(周囲データD1)が、無人データD0と同じである場合に、乗降室内が無人であると判断する。
また、データ処理装置26は、車両4の出庫時に、レーザーシステム22による座標データ(全域データD2)が、無人データD0と同じである場合に、乗降室内が無人であると判断する。
【0073】
図5は、本発明による無人確認方法の全体フロー図である。
本発明による無人確認方法は、車両4が停車して人が乗り降りする乗降領域5を内部に有し、車両4が入庫又は出庫する乗降室2の無人を検出する方法である。
この図において、本発明による無人確認方法は、T1~T8の各ステップ(工程)を有する。
【0074】
無人データ記憶ステップT1では、乗降室内に車両4及び異物Gが存在しないときに、レーザーシステム22により、乗降室2の内側全域にレーザー光6を照射してその反射位置の座標データである無人データD0を記憶する。
無人データ記憶ステップT1は、車両4の入庫時と出庫時に共通であり、実際の入出庫時の前に事前に実施するのがよい。
【0075】
(入庫時)
車両4の入庫時には、ステップT2~T4を実施する。
「車両4の入庫時」とは、一般的に、車両4が外部から乗降室2に入り、乗降領域5の内側に停車(駐車)し、運転手が下りて乗降室2から退出するまでの時間帯を意味する。なお、正常には運転手が乗降室2から退出した時点で乗降室2が無人となる。また、車両4が自動運転車の場合には、車両4が外部から乗降室2に入り、乗降領域5の内側に停車(駐車)した時点で正常には乗降室2が無人(この場合、異物Gがない状態)となる。
従って、車両4の入庫時には、乗降室2が無人であっても、乗降領域5の内側に車両4が載ったままである。
【0076】
入庫時データ検出ステップT2では、車両4の入庫時に、レーザーシステム22による乗降室2の内側全域の座標データから乗降領域5の座標データを除去した周囲データD1を検出する。
周囲異物検出ステップT3では、周囲データD1が乗降領域5を除く無人データD0と同じ場合に、「周囲異物なし」と判断する。またステップT3で同じでない場合には、「周囲異物あり」と判断する。
入庫時確認ステップT4では、周囲異物検出ステップT3で周囲異物なしと判断し、かつ車内生体検出ステップT5aにより、乗降領域5にミリ波7を照射して生体Fを検出しない場合に、乗降室内が無人であると判断する。またステップT4で生体Fを検出する場合には、「生体あり」と判断する。
ステップT4で「無人」と判断することで、無人確認が完了する。次いで、ステップT2~T4を別の車両4の入庫時に繰り返す。
【0077】
ステップT3で「周囲異物あり」と判断した場合、及びステップT5a,T4で「生体あり」とした場合には、その旨を出力し、必要な動作(例えば装置の停止)を実施する。
【0078】
(出庫時)
車両4の出庫時には、ステップT6~T8を実施する。
「車両4の出庫時」とは、一般的に、乗降領域5に停車していた車両4に運転手が乗り、車両4が乗降室2から退出するまでの時間帯を意味する。なお、正常には運転手が車両4を運転して乗降室2から退出した時点で乗降室2が無人となる。また、車両4が自動運転車の場合には、乗降領域5に停車していた車両4が乗降室2から退出した時点で乗降室2が無人(この場合、異物Gがない状態)となる。
従って、車両4の出庫時には、乗降室2が無人の場合、乗降領域5の内側に車両4がなく空の状態である。
【0079】
出庫時データ検出ステップT6では、車両4の出庫時に、レーザーシステム22により、乗降室2の内側全域の座標データである全域データD2を検出する。
全域異物検出ステップT7では、全域データD2が無人データD0と同じ場合に、「全域異物なし」と判断する。またステップT7で同じでない場合には、「異物あり」と判断する。
出庫時確認ステップT8では、全域異物検出ステップT7で全域異物なしと判断した場合に、乗降室内が無人であると判断する。なお、ステップT8では車内生体検出ステップT5bを使用しないが、これを併用してもよい。
ステップT7で「無人」と判断することで、無人確認が完了する。次いで、ステップT5~T7を別の車両の出庫時に繰り返す。
【0080】
ステップT6で「異物あり」と判断した場合には、その旨を出力し、必要な動作(例えば装置の停止)を実施する。
【0081】
上述した本発明の実施形態によれば、車内生体検出装置10により、乗降領域5にミリ波7を照射して生体Fのみを検出するので、車両4の停車判定なしに、生体Fを検出することができる。従って、車両4と人が同時に乗降領域5に入った場合、或いは停車判定後に停止位置の補正などで車両4が移動した場合でも、車両4の停車判定は不要となる。
【0082】
また、車両4の入庫時に、レーザーシステム22による乗降領域5を除く座標データ(周囲データD1)を無人データD0と比較するので、車両4の反射率や乱反射の影響を受けない。
【0083】
従って、乗降領域5は、車内生体検出装置10により、車両4の停車判定なしに、生体Fを検出することができる。また、乗降室2の乗降領域5を除く周囲は、レーザーシステム22により車両4の反射率や乱反射の影響を受けずに、異物Gを検出することができる。
これにより、車内生体検出装置10により生体Fを検出せず、かつレーザーシステム22により異物Gを検出しない場合に、乗降室内が無人であると判断することで、人が介在せずに、乗降室の無人(人や動物の不在)を高い精度で確認することができる。
【0084】
図6は、本発明による扉閉制御システム100を示す全体構成図である。
本発明の扉閉制御システム100は、機械式駐車装置1の乗降室2の入出庫扉3を自動で閉鎖する装置である。
【0085】
図6において、扉閉制御システム100は、上述した無人確認システム20、扉周辺センサ30、扉開閉装置40、及び扉制御装置50を備える。
【0086】
扉周辺センサ30は、乗降室2の入出庫扉3の周辺に位置する異物Gを検出する。入出庫扉3の周辺とは、少なくとも平面視で入出庫扉3の作動範囲を含む。
扉周辺センサ30は、この例では、光電センサ32であるが、本発明はこの例に限定されず、例えばライトカーテン、2次元レーザースキャナー、3次元レーザーレーダー、画像検出装置、等を含んでもよい。
【0087】
扉開閉装置40は、入出庫扉3を開閉する。すなわち、扉開閉装置40は、入出庫扉3を駆動する駆動機構を備え、開動作信号a1を受信して入出庫扉3を開く開動作と、閉動作信号b1を受信して入出庫扉3を閉じる閉動作を実施する。また、扉開閉装置40は、入出庫扉3が全開した位置で扉開限信号a2を出力し、入出庫扉3が全閉した位置で扉閉限信号b2を出力する。
【0088】
扉制御装置50は、例えばコンピュータ(PC)であり、扉開閉装置40を制御する。扉開閉装置40と扉制御装置50は、一体の装置であってもよい。
【0089】
図7は、本発明による扉閉制御方法の全体フロー図である。この図において、扉閉制御方法は、S1~S15の各ステップ(工程)からなる。
【0090】
本発明の扉閉制御方法では、人が介在せずに、入出庫扉3が全開して車両4が乗降室2に入庫し、或いは乗降室2から出庫する。この入庫後又は出庫後に、機械式駐車装置1から入出庫扉3の閉指令信号c1が扉制御装置50に出力される。
【0091】
扉制御装置50は、閉指令信号c1を受信後、ステップS1において所定の時間の経過(a秒経過)を待ち、扉自動閉処理を開始する(ステップS2)。a秒間の経過を待つのは、車両4や人等の退室時間を確保するためである。a秒間は、例えば5~30秒間である。
車両4は、人が運転しない自動運転車でも、人が運転する通常車両でもよい。
【0092】
次いで、無人確認システム20及び扉周辺センサ30が異物Gを検出しないときに(ステップS3,S4でYES)、扉開閉装置40に閉動作信号b1(扉閉指令)を出力し(ステップS5)、閉動作(扉閉)が開始される(ステップS6)。
【0093】
入出庫扉3が閉動作を開始した後、扉制御装置50は、無人確認システム20及び扉周辺センサ30の検出信号を継続して受信する。入出庫扉3が全閉する前に、無人確認システム20又は扉周辺センサ30が異物Gを検出したときに(ステップS7,S8でNO)、扉開閉装置40に開動作信号a1を出力する。
【0094】
なおこの例では、ステップS11で閉中の検出回数を閾値m(例えば2~5回)と比較する。ステップS11で、閾値未満の場合(YES)に扉停止・反転処理をスタートし(ステップS12)、扉開指令を出力し(ステップS13)、扉開を開始し(ステップS14)、扉開限を検出する(ステップS15)。
【0095】
次いで、入出庫扉3が全開した後(ステップS15)、上述したステップS3~S8を繰り返す。
【0096】
入出庫扉3が閉動作を開始した後、無人確認システム20又は扉周辺センサ30が異物Gを検出せずに(ステップS7,S8でYES)、入出庫扉3が全閉し扉閉限を検出する(ステップS9)と、扉閉限信号b2を受信して扉閉制御が完了する。
【0097】
扉制御装置50は、ステップS3,S4で無人確認システム20又は扉周辺センサ30が異物Gを検出するときは(NO)、ステップS10において時間経過を閾値(n分)と比較する。ステップS10で閾値を超えない場合(NO)、ステップS3,S4の無人確認システム20及び扉周辺センサ30による検出を繰り返す。閾値(n分間)は、例えば5~10分間である。
【0098】
上述した本発明の実施形態によれば、扉制御装置50が、入出庫扉3の閉指令信号c1を受信し、かつ無人確認システム20及び扉周辺センサ30が異物G(人、動物又は車両4以外の物品)を検出しないときに、扉開閉装置40に閉動作信号b1を出力する。
【0099】
従って、あるユーザーが乗降室内にいるときには、無人確認システム20及び扉周辺センサ30が異物G(ユーザー)を検出する。これにより、閉指令信号c1を受信しても閉動作信号b1が出力されず、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまうことを回避することができる。
【0100】
また、乗降室2から車両4に乗って出庫したユーザーがそのまま自分の目的地に向かってしまう場合でも、入出庫扉3の閉指令信号c1を受信し、かつ異物Gを検出しないときに、閉動作信号b1が出力されるので、正常に扉を閉じることができる。
【0101】
また、入出庫扉3が閉動作を開始後、無人確認システム20及び扉周辺センサ30の検出信号を継続して受信し、入出庫扉3の全閉前に異物Gを検出したときに、扉開閉装置40に開動作信号a1を出力する。
従って、人が介在しない場合(例えば自動運転車)でも、人、動物及び車両4以外の物品(「異物G」)が乗降室内に残っていないことを確認し、機械式駐車装置1の入出庫扉3を安全に閉鎖することができる。
【0102】
また、扉開閉装置40に開動作信号a1が出力され、入出庫扉3が全開した後に、人が介在せずに、安全が確認されるまで扉を開いて待機するので、新たな閉指令なしに、安全が確認された後に入出庫扉3を安全に閉鎖することができる。
【0103】
上述したステップS1~S15は、扉閉制御が正常な場合である。以下、異常が発生する場合を説明する。
【0104】
図7のステップS10において時間経過が閾値を超えるときは(YES)、異常と判断し、異常表示をガイダンスし、異常復旧作業を実施する。
同様に、ステップS11で閉中の検出回数が閾値以上の場合(NO)も、異常と判断し、異常表示をガイダンスし、異常復旧作業を実施する。
異常復旧作業は、許可された者(例えば保守員)が原因を除去したあと、操作盤で安全確認操作を行う。
【0105】
上述した本発明の実施形態によれば、車両4の入庫又は出庫の際に、人が介在せずに、乗降室2の無人を確認し、入出庫扉3を安全に閉鎖することができる。
【0106】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
α 照射角度、θ 半値角、L 半値幅、
a1 開動作信号、a2 扉開限信号、b1 閉動作信号、
b2 扉閉限信号、c1 閉指令信号、c2 停止指令信号、
D0 無人データ、D1 周囲データ、D2 全域データ、
F 生体(人、動物)、G 異物(人、動物、車両以外の物品)、
1 機械式駐車装置、2 乗降室、3 入出庫扉、4 車両、
5 乗降領域、6 レーザー光、7 ミリ波、8 反射波データ、
9 増幅信号、10 車内生体検出装置、
12A 車内用ミリ波センサ、12B 車体用ミリ波センサ、
12C 背面用ミリ波センサ、12D 側方ミリ波センサ、
13a 発振器、13b パラボラアンテナ、14 中間周波数増幅器、
16 判別装置、17 周波数分析器、18 比較部、
19 電波反射体(又は電波吸収体)、20 無人確認システム、
22 レーザーシステム、22A 3次元レーザーレーダー、
26 データ処理装置、30 扉周辺センサ、32 光電センサ、
40 扉開閉装置、50 扉制御装置、100 扉閉制御システム