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特許7606842シャント抵抗装置、および電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】シャント抵抗装置、および電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/00 20060101AFI20241219BHJP
   G01R 15/00 20060101ALI20241219BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01C13/00 J
G01R15/00 500
H01C1/142
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020164803
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056841
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100092406
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】平沢 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松原 周平
(72)【発明者】
【氏名】西澤 克秀
(72)【発明者】
【氏名】仲村 圭史
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132386(JP,A)
【文献】特開2012-227360(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063928(WO,A1)
【文献】特表2013-536424(JP,A)
【文献】特表2016-503176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 13/00
G01R 15/00
H01C 1/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出用のシャント抵抗装置であって、
第1表面および前記第1表面の反対側の面である第2表面を有する板状の抵抗体と、
導電性金属材からなる端子部材と、を備え、
前記端子部材は、
前記第1表面に連結された本体部と、
前記本体部の側部に形成された突出部と、を備え、
前記本体部と前記突出部は、同一の材料から一体に形成され、
前記本体部は、前記抵抗体の前記第1表面に連結された本体部側第1面を有し、
前記突出部は、前記端子部材の厚さ方向において、前記本体部側第1面と同一平面の突出部側第1面と、前記突出部側第1面の反対側の面である突出部側第2面を有しており、
前記抵抗体と前記本体部は、厚さ方向に積層され、
前記突出部には、前記抵抗体における電位差を検出するための配線が接続され、かつ前記突出部は、前記抵抗体とは重ならない位置に位置している、シャント抵抗装置。
【請求項2】
前記突出部には、前記突出部の側面から延びるスリットが形成されている、請求項に記載のシャント抵抗装置。
【請求項3】
電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法であって、
前記シャント抵抗装置は、
第1表面および前記第1表面の反対側の面である第2表面を有する板状の抵抗体と、
導電性金属材からなり、前記第1表面に連結された本体部と、前記本体部の側部に形成された突出部を備えた端子部材と、を備え、
前記本体部と前記突出部は、同一の材料から一体に形成され、
前記本体部は、前記抵抗体の前記第1表面に連結された本体部側第1面を有し、
前記突出部は、前記端子部材の厚さ方向において、前記本体部側第1面と同一平面の突出部側第1面と、前記突出部側第1面の反対側の面である突出部側第2面を有しており、
前記抵抗体と前記本体部は、厚さ方向に積層され、
前記突出部には、前記抵抗体における電位差を検出するための配線が接続され、かつ前記突出部は、前記抵抗体とは重ならない位置に位置し、
前記突出部にスリットを形成することにより前記シャント抵抗装置の抵抗値および/または抵抗温度係数を調整する電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャンパー素子、シャント抵抗装置、および電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプリント基板等の回路基板に実装する部品として、ジャンパー素子が用いられている。ジャンパー素子は、回路基板において、配線を跨ぐ必要がある場合や、設計時に必要とされた電子部品が不要となった場合に実装ランド間を短絡させる目的や、部品と配線パターンを接続する等の目的で使用されている。
【0003】
一方、電流を抵抗体に流し、その両端の電圧から電流の大きさを検出するシャント抵抗器が回路基板に実装する部品として用いられている。シャント抵抗器は、電流検出用途に広く用いられている。
【0004】
一例として、特許文献1には、電極と抵抗体を積層したシャント抵抗器とその実装構造が開示されている。特許文献1に記載のシャント抵抗器は、円板状の抵抗体と、抵抗体の両面に形成された2つの電極を備えている。2つの電極のうちの一方の電極は、配線(パッド)に接続されており、他方の電極には第1のボンディングワイヤーが接続されている。配線(パッド)には、第2のボンディングワイヤーが接続されており、シャント抵抗器における電圧降下が第1および第2のボンディングワイヤーによって取り出される。第1のボンディングワイヤーと第2のボンディングワイヤーとの間の電位差をシャント抵抗器を流れる電流で除すことにより、シャント抵抗器の抵抗値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-170478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のシャント抵抗器では、第1のボンディングワイヤーに接続された電極は、電位分布を有しており、第1のボンディングワイヤーの接続位置がずれることで、検出される電圧や、検出される抵抗値や、シャント抵抗器の抵抗温度係数(T.C.R.)が変化することがある。抵抗温度係数は、温度による抵抗値の変化の割合を示す指標である。
【0007】
一態様は上記の点に鑑みてなされたものであり、電流検出用のシャント抵抗装置を構成するためのジャンパー素子であって、ジャンパー素子に接続される電圧検出用の配線の接続位置によるシャント抵抗装置の特性のばらつきを抑制することができるジャンパー素子を提供することを目的とする。さらに、本発明は、電圧検出用の配線の接続位置による特性のばらつきを抑制することができる電流検出用のシャント抵抗装置、およびそのようなシャント抵抗装置の特性調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、電流検出用のシャント抵抗装置を構成するためのジャンパー素子であって、前記ジャンパー素子は、導電性金属材からなり、前記ジャンパー素子は、前記シャント抵抗装置の一部を構成する抵抗体に連結可能な本体部と、前記本体部の側部に形成された突出部と、を備え、前記突出部は、前記抵抗体とは重ならない位置に位置している、ジャンパー素子が提供される。
【0009】
一態様では、前記本体部は、前記抵抗体に連結可能な本体部側第1面を有し、前記突出部は、前記ジャンパー素子の厚さ方向において、前記本体部側第1面と同じ側にある突出部側第1面と、前記突出部側第1面の反対側の面である突出部側第2面を有している。
【0010】
一態様では、前記突出部には、前記突出部の側面から延びるスリットが形成されている。
【0011】
一態様では、電流検出用のシャント抵抗装置であって、第1表面および前記第1表面の反対側の面である第2表面を有する板状の抵抗体と、導電性金属材からなる端子部材と、を備え、前記端子部材は、前記第1表面に連結された本体部と、前記本体部の側部に形成された突出部と、を備え、前記突出部は、前記抵抗体とは重ならない位置に位置している、シャント抵抗器が提供される。
【0012】
一態様では、前記突出部には、前記突出部の側面から延びるスリットが形成されている。
【0013】
一態様では、前記シャント抵抗装は、前記抵抗体における電位差を検出するための一対の配線をさらに備え、前記一対の配線の一方は、前記突出部に接続されている。
【0014】
一態様では、電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法であって、前記シャント抵抗装置は、第1表面および前記第1表面の反対側の面である第2表面を有する板状の抵抗体と、導電性金属材からなり、前記第1表面に連結された本体部と、前記本体部の側部に形成された突出部を備えた端子部材と、を備え、前記突出部にスリットを形成することにより前記シャント抵抗装置の抵抗値および/または抵抗温度係数を調整する電流検出用シャント抵抗装置の特性調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、突出部における電位分布は、高い均一性を有している。結果として、突出部における電圧検出用の配線の接続位置によるシャント抵抗装置の特性のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、電流検出用のシャント抵抗装置の一実施形態を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すシャント抵抗装置を裏側から見たときの斜視図であり、図1(c)は、図1(a)に示すシャント抵抗装置の側面図である。
図2図1(a)乃至図1(c)に示すシャント抵抗器の分解斜視図である。
図3図3(a)は、シャント抵抗装置の他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示すシャント抵抗装置の側面図である。
図4図3(a)および図3(b)に示すシャント抵抗装置からシャント抵抗器を取り除いた状態を示す斜視図である。
図5図5(a)は、ジャンパー素子が突出部を有さない場合における、本体部の抵抗体の真上に位置する部分の電位分布を示す図であり、図5(b)は、図5(a)のシミュレーション条件を説明するための図である。
図6】ジャンパー素子に複数の電圧検出用の配線が接続された状態を示す図である。
図7図7(a)は、図1および図2を参照して説明したシャント抵抗器の本体部の抵抗体の真上に位置する部分および突出部における電位分布を示す図であり、図7(b)は、図7(a)のシミュレーション条件を説明するための図である。
図8】シャント抵抗器の抵抗値およびT.C.R.の測定位置を説明するための図である。
図9】シャント抵抗器の抵抗値の測定位置による変化を示すグラフである。
図10】シャント抵抗器のT.C.R.の測定位置による変化を示すグラフである。
図11】シャント抵抗器の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図12】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図13】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図14】シャント抵抗器のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図15図11乃至図13に示すシャント抵抗器の抵抗値の測定位置による変化を示すグラフである。
図16図11乃至図13に示すシャント抵抗器のT.C.R.の測定位置による変化を示すグラフである
図17】シャント抵抗装置のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図18図17のシャント抵抗器を模式的に示す斜視図である。
図19】シャント抵抗装置のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図20図19に示すシャント抵抗装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本明細書において、シャント抵抗装置は、少なくともシャント抵抗器を含む電流検出用の装置と定義される。シャント抵抗装置の例として、シャント抵抗器そのものや、回路基板等に実装されることでシャント抵抗器と同等物を構成したもの、シャント抵抗器に各種配線が接続され実装した状態(シャント抵抗器の実装構造)が挙げられる。
【0018】
図1(a)は、電流検出用のシャント抵抗装置の一実施形態を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示すシャント抵抗装置を裏側から見たときの斜視図であり、図1(c)は、図1(a)に示すシャント抵抗装置の側面図である。図1(a)乃至図1(c)に示すように、シャント抵抗装置は、シャント抵抗器1を備えている。言い換えれば、本実施形態のシャント抵抗装置は、シャント抵抗器1そのものである。シャント抵抗器1は、所定の厚みと幅を有する板状(薄板状)の抵抗体5と、導電性金属材からなる板状(薄板状)の電極6と、導電性金属材からなるジャンパー素子(端子部材ともいう)10を備えている。
【0019】
抵抗体5の材料の一例として、Cu-Mg-Ni系合金などの低抵抗合金材が挙げられる。電極6およびジャンパー素子10の材料の一例として、高導電性金属である銅(Cu)が挙げられる。
【0020】
抵抗体5は、第1表面5aと、第1表面5aの反対側の面である第2表面5bを有している。ジャンパー素子10は、抵抗体5の第1表面5aに接続(または、連結)されており、電極6は、抵抗体5の第2表面5bに接続されている。すなわち、電極6、抵抗体5、およびジャンパー素子10は、この順にシャント抵抗器1の厚さ方向に積層されている。シャント抵抗器1の厚さ方向は、第1方向および第2方向の両方に垂直な方向である。第1方向は、シャント抵抗器1の長さ方向である。第2方向は、シャント抵抗器1の幅方向であり、第1方向に垂直な方向である。
【0021】
ジャンパー素子10は、板状の本体部11と、本体部11の側部に形成された突出部12と、本体部11の本体部側第1面11aに形成された端子部14を備えている。本体部11、突出部12、および端子部14は、同一の材料から一体に形成されている。抵抗体5は、本体部11の本体部側第1面11aに接続(または、連結)されている。
【0022】
図2は、図1(a)乃至図1(c)に示すシャント抵抗器1の分解斜視図である。一実施形態では、抵抗体5の第1表面5aおよび第2表面5bは、ジャンパー素子10および電極6に、加圧溶接などの溶接や、はんだ、金属ナノ粒子(銀ナノ粒子を用いた銀ペーストや、銅ナノ粒子を用いた銅ペースト)による接合などの手段により、それぞれ接続(接合)される。端子部14および電極6には、はんだ実装を可能とするために、Snめっき等の表面処理が施されている。
【0023】
端子部14と、抵抗体5とは、第1方向において互いに離間している。同様に、端子部14と、電極6とは、第1方向において互いに離間している。言い換えれば、第1方向は、抵抗体5と端子部14が配列する方向とも言うことができる。
【0024】
上述のように、突出部12は、本体部11の側部に形成されている。具体的には、突出部12は、本体部11の側面11cに形成されており、側面11cから第2方向に突出している。側面11cは第1方向に平行な面である。突出部12は、抵抗体5とは重ならない位置に位置している。言い換えれば、突出部12は、シャント抵抗器1の厚さ方向において、抵抗体5とは重ならない位置に位置しており、抵抗体5とは直接接触していない。より具体的には、突出部12は、抵抗体5の第1表面5aを上、第2表面5bを下としたとき、本体部11の抵抗体5の真上に位置する部分に形成されている。一実施形態では、突出部12は、第2方向に平行な本体部11の側面に形成されていてもよい。
【0025】
突出部12は、ジャンパー素子10の厚さ方向(すなわち、ジャンパー素子10の厚さ方向)において、本体部側第1面11aと同じ側にある突出部側第1面12aを有している。具体的には、本体部側第1面11aおよび突出部側第1面12aは、同一平面上にある。本体部11は、本体部側第1面11aの反対側の面である本体部側第2面11bを有しており、突出部12は、突出部側第1面12aの反対側の面である突出部側第2面12bを有している。具体的には、本体部側第2面11bと、突出部側第2面12bとは、同一平面上にある。
【0026】
図3(a)は、シャント抵抗装置の他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示すシャント抵抗装置の側面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態のシャント抵抗装置は、シャント抵抗器1の実装構造である。図3(a)および図3(b)に示すように、シャント抵抗装置は、シャント抵抗器1が実装される配線パターン21,22と、抵抗体5における電位差(第1表面5aと、第2表面5bとの間に発生する電位差)を検出するための一対の配線24,25をさらに備えている。配線24,25は、電圧検出端子として機能する。
【0027】
配線パターン21,22は、図示しないプリント基板などの回路基板に実装されており、配線パターン21,22は、互いに離間して配置されている。端子部14および電極6は、はんだなどにより配線パターン21および配線パターン22にそれぞれ接続(接合)されており、配線パターン21、シャント抵抗器1、および配線パターン22により電流経路が構成される。
【0028】
図4は、図3(a)および図3(b)に示すシャント抵抗装置からシャント抵抗器1を取り除いた状態を示す斜視図である。図4に示すように、シャント抵抗器1は、図の点線で囲われた領域28に実装される。図4に示すように、配線パターン22からは引出線23が引き出されている。引出線23は、配線パターン22から配線パターン21に向かって延びた後、折れ曲がって第2方向に延びている。配線24は、引出線23に接続されており、配線25は、突出部12の突出部側第2面12bに接続されている。
【0029】
一実施形態では、配線24,25は、ボンディングワイヤであり、配線24,25は、ワイヤボンディングにより、引出線23および突出部側第2面12bにそれぞれ接続される。引出線23および突出部12は、ボンディングパッドとして機能する。引出線23および突出部側第2面12bには、ワイヤボンディングを可能とするために、Ni-Pめっきなどの表面処理が施される。
【0030】
本実施形態によれば、配線24,25から、シャント抵抗器1を流れる被測定電流によって生じる配線24と、配線25との間の電位差(すなわち、抵抗体5における電位差)を測定することができる。本実施形態では、抵抗体5における電位差は、電圧測定用IC等で構成される電圧計26で測定される。なお、電圧計26への電圧信号の入力を配線24と配線25により行う例を示したが、引出線23を直接電圧計26に接続してもよい。その場合、引出線23と配線25が電位差を検出するための一対の配線として機能する。
【0031】
図5(a)は、ジャンパー素子10が突出部12を有さない場合における、本体部11の抵抗体5の真上に位置する部分の電位分布を示す図である。図5(a)は、電位分布のシミュレーション結果を示すコンター図である。図5(b)は、図5(a)のシミュレーション条件を説明するための図である。本体部11の抵抗体5の真上に位置する部分16は、図5(b)においてドットで示された部分である。図5(b)に示すように、シャント抵抗器1の端子部14および電極6は、導電性のランド34,36にそれぞれ接続されており、ランド34からシャント抵抗器1を経由してランド36に所定の電流が流される。
【0032】
図5(a)に示すように、領域16には電位分布が生じている。したがって、ジャンパー素子10が突出部12を有さず、本体部11に直接配線を接続して抵抗体5の電圧を取り出す場合、配線の接続位置によって、検出される電圧(抵抗体5における電位差)や、検出される抵抗値や、シャント抵抗器1の抵抗温度係数(T.C.R.)が変化することがある。
【0033】
また、図6に示すように、長期使用時の配線の劣化や断線に備えるため、ジャンパー素子10に複数の電圧検出用の配線32(図6では2本の配線32)を接続することがある。この場合でも、各配線32の接続位置によって取り出される電位が異なるため、複数の配線32のうちのいずれかの配線32が断線すると検出される抵抗値や抵抗温度係数(T.C.R.)が変化することがある。
【0034】
図7(a)は、図1および図2を参照して説明したシャント抵抗器1の本体部11の抵抗体5の真上に位置する部分および突出部12における電位分布を示す図である。図7(a)は、電位分布のシミュレーション結果を示すコンター図である。図7(b)は、図7(a)のシミュレーション条件を説明するための図である。シミュレーションの対象17は、本体部11の抵抗体5の真上に位置する部分および突出部12であり、図7(b)においてドットで示された部分である。特に説明しないシミュレーション条件は、図5(a)および図5(b)を参照して説明した条件と同じである。
【0035】
図7(a)に示すように、突出部12の電位分布は、本体部11の突出部12に隣接する部分の電位が、突出部12に広がるように、略一様になる。すなわち、突出部12における電位分布は、高い均一性を有している。したがって、突出部12に電圧検出用の配線を接続して抵抗体5の電圧を取り出すことにより、配線の接続位置による、検出電圧や、検出抵抗値や、シャント抵抗装置の抵抗温度係数(T.C.R.)の変化を抑制することができる。結果として、突出部12における電圧検出用の配線の接続位置によるシャント抵抗装置の特性のばらつきを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態では、本体部11における電位分布は、第1方向(図1(a)参照)に顕著に広がっている。したがって、突出部12の位置をずらすことで、検出される抵抗値やT.C.R.を変化させることができる。
【0037】
図8は、シャント抵抗器1の抵抗値およびT.C.R.の測定位置を説明するための図であり、図9は、シャント抵抗器1の抵抗値の測定位置による変化を示すグラフであり、図10は、シャント抵抗器1のT.C.R.の測定位置による変化を示すグラフである。
【0038】
本実施形態では、端子部14および電極6は、ランド34,36にそれぞれ接続されている。図9および図10は、ランド34からシャント抵抗器1を経由してランド36に所定の電流を流したときの、ランド36と同電位の任意の基準点と図8に示す直線A,B上の一点(以下、測定位置という)との間の抵抗値およびその測定位置におけるシャント抵抗器1のT.C.R.のシミュレーション結果をそれぞれ示している。本実施形態では、シャント抵抗器1の設定抵抗値(すなわち、理想的な抵抗値)は、100μΩである。
【0039】
図9および図10の横軸は、第1方向における抵抗値およびT.C.R.の測定位置を示し、図9の縦軸は、各測定位置における抵抗値を示し、図10の縦軸は、各測定位置におけるT.C.R.を示している。図9および図10において、実線で表された線は、直線Aにおける抵抗値およびT.C.R.を示し、破線で表された線は、直線Bにおける抵抗値およびT.C.R.を示している。
【0040】
直線Aおよび直線Bは、本体部側第2面11b上および突出部側第2面12b上を第1方向にそれぞれ延びる仮想直線である。図8に示す直線L1,L2,L3,L4は、第1方向における0mm、1.5mm、3.0mm、5.0mmの位置を示している。図8に示す本体部11および突出部12のサイズは、一例であり、シャント抵抗器1およびシャント抵抗器1の各構成要素のサイズは、本実施形態に限定されない。
【0041】
図9および図10に示すように、直線Bにおける抵抗値およびT.C.R.の変化は、直線Aにおける抵抗値およびT.C.R.の変化と比べて大幅に少ない。すなわち、直線B上では、測定位置にかかわらず略一様な抵抗値およびT.C.R.が得られることをシミュレーション結果は示している。結果として、突出部12における電圧検出用の配線の接続位置によるシャント抵抗器1の特性のばらつき(すなわち、シャント抵抗装置の特性のばらつき)を抑制することができる。
【0042】
図11は、シャント抵抗器1の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態では、突出部12の第1方向の長さは、抵抗体5の第1方向の長さと同じである。
【0043】
図12は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態のジャンパー素子10は、突出部12に形成されたスリット13を有している。スリット13は細長い切り欠きである。具体的には、スリット13は、突出部12の本体部11に接続された側面12cから側面12cの反対側の面である側面12dに向かって延びている。側面12cは、シャント抵抗器1の外側を向いた側面であり、側面12dは、シャント抵抗器1の内側(第1方向において端子部14が配置されている方向)を向いた側面である。
【0044】
本実施形態では、スリット13は、突出部12の付け根部分に形成されている。言い換えれば、スリット13は、本体部11と突出部12の間に形成されている。スリット13の位置は、スリット13が突出部12の本体部11に接続された側面12cから延びる限りにおいて本実施形態に限定されない。
【0045】
図13は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図12を参照して説明した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態は、スリット13が、突出部12の本体部11に接続された側面12dから側面12cに向かって延びている点で、図12に示す実施形態と異なっている。スリット13の位置は、スリット13が突出部12の本体部11に接続された側面12dから延びる限りにおいて本実施形態に限定されない。
【0046】
図14は、シャント抵抗器1のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図12および図13を参照して説明した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態は、側面12cから側面12dに向かって延びるスリット13aと、側面12dから側面12cに向かって延びるスリット13bが突出部12に形成されている点で図12および図13に示す実施形態と異なっている。特に説明しないスリット13a,13bの構成は、図12および図13を参照して説明したスリット13と同じである。図11乃至図14を参照して説明した実施形態は、図3および図4を参照して説明した実施形態にも適用することができる。
【0047】
図15は、図11乃至図13に示すシャント抵抗器1の抵抗値の測定位置による変化を示すグラフであり、図16は、図11乃至図13に示すシャント抵抗器1のT.C.R.の測定位置による変化を示すグラフである。図15および図16は、任意の基準点と図11乃至図13に示す直線C,D,E,F上の一点(以下、測定位置という)との間の抵抗値およびその測定位置におけるシャント抵抗器1のT.C.R.のシミュレーション結果をそれぞれ示している。シミュレーション条件は、図8乃至図10を参照して説明した条件と同じである。
【0048】
直線Cおよび直線Dは、図11に示すシャント抵抗器1の本体部側第2面11b上および突出部側第2面12b上を第1方向にそれぞれ延びる仮想直線であり、直線E,Fは、図12および図13に示すシャント抵抗器1の突出部側第2面12b上を第1方向にそれぞれ延びる仮想直線である。図12および図13に示すスリット13の深さ(第1方向の長さ)は、2.5mmである。直線L1,L2,L4は、第1方向における0mm、1.5mm、5.0mmの位置をそれぞれ示している。図11乃至図13に示す本体部11および突出部12のサイズは、一例であり、シャント抵抗器1およびシャント抵抗器1の各構成要素のサイズは、本実施形態に限定されない。
【0049】
図15および図16の横軸は、第1方向における抵抗値およびT.C.R.の測定位置を示し、図15の縦軸は、各測定位置における抵抗値を示し、図16の縦軸は、各測定位置におけるT.C.R.を示している。図15および図16において、実線で表された線は、直線Cにおける抵抗値およびT.C.R.を示し、太い破線で表された線は、直線Dにおける抵抗値およびT.C.R.を示し、一点鎖線で表された線は、直線Eにおける抵抗値およびT.C.R.を示し、細い破線で表された線は、直線Fにおける抵抗値およびT.C.R.を示している。
【0050】
図15および図16に示すように、直線E,Fにおいては、測定位置によって、抵抗値およびT.C.R.の値がほとんど変化しない。また、側面12c側からスリット13を入れた場合は、抵抗値およびT.C.R.の値が増加し、側面12d側からスリット13を入れた場合は、抵抗値およびT.C.R.の値が減少する。これは、図7(a)に示すように、側面12d側の電位は、側面12c側の電位よりも高くなり、本体部11の突出部12に隣接する部分の電位が、突出部12に広がるためである。
【0051】
すなわち、図12のスリット13の深さを浅い方向に変化させると、スリット13の外側(第2方向において本体部11の反対側)における突出部側第2面12b上を測定位置としたときの抵抗値およびT.C.R.を図15に示す値よりも小さくする(直線D上を測定位置としたときの抵抗値およびT.C.R.に近付ける)ことができ、図13のスリット13の深さを浅い方向に変化させると、スリット13の外側における突出部側第2面12b上を測定位置としたときの抵抗値およびT.C.R.を図15に示す値よりも大きくする(直線D上を測定位置としたときの抵抗値およびT.C.R.に近付ける)ことができる。
【0052】
したがって、上述したスリット13を突出部12に形成することにより、突出部12の電位分布がより均一になる。したがって、スリット13を形成することによりシャント抵抗装置の特性、すなわちシャント抵抗装置の抵抗値および/またはT.C.R.を調整することができる。具体的には、スリット13を入れる方向や、深さを調整することで、突出部側第2面12b上を測定位置としたときのシャント抵抗装置の特性、すなわちシャント抵抗装置の抵抗値および/またはT.C.R.を調整することができる。
【0053】
一実施形態では、ジャンパー素子10とシャント抵抗器とは予め別体として形成され、実装時に一体として固定されてもよい。
【0054】
図17は、シャント抵抗装置のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態のシャント抵抗装置は、シャント抵抗器8と、シャント抵抗器8に接続されたジャンパー素子10を備えている。本実施形態では、シャント抵抗器8とジャンパー素子10とは予め別体として形成されている。特に説明しないジャンパー素子10の詳細は、上述した実施形態と同じである。本実施形態の本体部11の本体部側第1面11aは、シャント抵抗器8の一部を構成する抵抗体5に連結可能である。具体的には、本体部11は、後述する電極7を介して抵抗体5に接続(または連結)可能である。
【0055】
図18は、図17のシャント抵抗器8を模式的に示す斜視図である。特に説明しないシャント抵抗器8の構成は、シャント抵抗器1と同じであるのでその重複する説明を省略する。シャント抵抗器8は、ジャンパー素子10の代わりに導電性金属材からなる板状(薄板状)の電極7を備えている点で、シャント抵抗器1と異なっている。
【0056】
電極7の材料の一例として、高導電性金属である銅(Cu)が挙げられる。電極7は、抵抗体5の第1表面5aに接続されており、電極6、抵抗体5、および電極7は、この順にシャント抵抗器8の厚さ方向に積層されている。図17に示す実施形態では、ジャンパー素子10は、電極7に接続されている。具体的には、ジャンパー素子10の本体部11は、抵抗体5の第1表面5aに連結されている。より具体的には、ジャンパー素子10の本体部11の本体部側第1面11aは、電極7を介して抵抗体5の第1表面5aに接続(または連結)されている。端子部14と、シャント抵抗器8とは、第1方向において互いに離間している。
【0057】
本実施形態においても、突出部12は、抵抗体5とは重ならない位置に位置している。言い換えれば、突出部12は、シャント抵抗装置の厚さ方向において、抵抗体5とは重ならない位置に位置しており、シャント抵抗器8とは直接接触しない。一実施形態では、ジャンパー素子10の本体部側第1面11aは、電極7に、加圧溶接などの溶接や、はんだ、金属ナノ粒子(銀ナノ粒子を用いた銀ペーストや、銅ナノ粒子を用いた銅ペースト)による接合などの手段により、電極7に接続(接合)される。
【0058】
図19は、シャント抵抗装置のさらに他の実施形態を模式的に示す斜視図であり、図20は、図19に示すシャント抵抗装置の分解斜視図である。特に説明しない本実施形態の詳細は、図3および図4を参照して説明した実施形態と同じであるのでその重複する説明を省略する。本実施形態は、図17および図18を参照して説明したシャント抵抗装置が配線パターン21,22に実装されている点で図3および図4に示す実施形態と異なっている。本実施形態では、まず、シャント抵抗器8が配線パターン22に実装され、その上にジャンパー素子10が搭載され、端子部14が、配線パターン21に接続される。本実施形態では、配線パターン21、ジャンパー素子10、シャント抵抗器8、および配線パターン22により電流経路が構成される。
【0059】
図17乃至図20を参照して説明した実施形態においても、図11乃至図14を参照して説明した実施形態を適用することができる。図17乃至図20を参照して説明した実施形態においても、図7乃至図16を参照して説明した効果と同様の効果を奏することができる。図17乃至図20を参照して説明した実施形態においても、スリット13を入れる方向や、深さを調整することで、突出部側第2面12b上を測定位置としたときのシャント抵抗装置の特性、すなわちシャント抵抗装置の抵抗値および/またはT.C.R.を調整することができる。
【0060】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 シャント抵抗器
5 抵抗体
5a 第1表面
5b 第2表面
6 電極
7 電極
8 シャント抵抗器
10 ジャンパー素子
11 本体部
11a 本体部側第1面
11b 本体部側第2面
11c 側面
12 突出部
12a 突出部側第1面
12b 突出部側第2面
12c,12d 側面
13,13a,13b スリット
14 端子部
21 配線パターン
22 配線パターン
23 引出線
24 配線
25 配線
32 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20