IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

<>
  • 特許-吸水性樹脂組成物およびその製造方法 図1
  • 特許-吸水性樹脂組成物およびその製造方法 図2
  • 特許-吸水性樹脂組成物およびその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】吸水性樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/18 20060101AFI20241219BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241219BHJP
   C08F 251/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08L 51/02 20060101ALI20241219BHJP
   C08J 3/16 20060101ALI20241219BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C08F2/18
C08F2/44 C ZBP
C08F251/00
C08L51/02
C08J3/16 CEY
C08L101/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020199626
(22)【出願日】2020-12-01
(65)【公開番号】P2022087609
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田島 峻一
(72)【発明者】
【氏名】松本 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤野 眞一
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 邦彦
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-320410(JP,A)
【文献】特開平04-227710(JP,A)
【文献】特開平02-003405(JP,A)
【文献】特開昭62-252408(JP,A)
【文献】特表2010-502415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F251/00 -283/00
C08F283/02 -289/00
C08F291/00 -297/08
C08J 3/00 - 2/28
C08J 99/00
C08L101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖類とポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
(A)アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体、内部架橋剤および多糖類を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含む油相中に懸濁させて重合を行う重合工程、または
(B)アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含むとともに多糖類を分散させた油相中に懸濁させて重合を行う重合工程、または
(C)炭化水素分散媒を含むとともに、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を分散させた油相中に、多糖類を懸濁させて重合を行う重合工程、を含み、
前記多糖類の体積平均粒子径が、150μm以下であり、
得られる吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径が200~700μmであり、得られる吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径より添加する前記多糖類の質量平均粒子径が小さい、
吸水性樹脂組成物の製造方法(但し、単量体水溶液に疎水性溶剤を含有する形態を除く)
【請求項2】
前記多糖類の使用量が、前記アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の使用量に対して10質量%以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記多糖類は、デンプン、セルロースおよびそれらの変性物から選択される、請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記多糖類の溶解度が20℃のイオン交換水1リットルに対して30g未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記単量体水溶液は、前記アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の濃度が35質量%以上である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥前の固形分率が50~80質量%である、請求項1~のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体が、1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
さらに表面架橋工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記多糖類の体積平均粒子径が、1μm~100μmの範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記重合工程にて得られた含水ゲルの水分および分散媒を除去して、得られる吸水性樹脂組成物の含水量を調整する乾燥工程を含み、前記乾燥工程における乾燥温度が80~180℃である、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記重合工程において、前記油相中に界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステルを混合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体を、炭化水素分散媒を含む油相中で、逆相懸濁重合することにより得られる、1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂組成物であって、質量平均粒子径が200~700μmであり、多糖類を10質量%以上含み、
以下の式:
ダメージ付与後の微粉発生割合[質量%]=(DT後の粒子径150μm以下の粒子質量の全体質量に対する質量百分率[質量%])-(DT前の粒子径150μm以下の粒子質量の全体質量に対する質量百分率[質量%])
によって算出される、ダメージ付与後の微粉発生割合が0~5.0質量%であり、
ここで、前記式中「DT後」はダメージテスト後、「DT前」はダメージテスト前を意味し、
ダメージテストとは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、吸水性樹脂組成物30gと直径6mmのガラスビーズ10gとを入れ、分散機(No.488試験用分散機/株式会社東洋精機製作所製)に設置し、次いで、800(cycle/min)(CPM)で分散機を振とうさせ、40分間経過後、停止させ、その後、目開き2mmのJIS標準篩を用いて、吸水性樹脂組成物とガラスビーズを分離する操作である、
吸水性樹脂組成物(但し、多孔質の吸水性樹脂組成物を除く)
【請求項13】
多糖類を25質量%以上含む、請求項12に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項14】
黄色度が15以下である、請求項12または13に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項15】
ショ糖脂肪酸エステルを含有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の吸水性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水性樹脂組成物およびその製造方法に関し、特に多糖類を含む吸水性樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、水膨潤性水不溶性の架橋重合体であり、紙おむつ、生理用ナプキン、成人向け失禁用製品(失禁パッド)、ペット用シート等の衛生用品、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な吸水性物品において利用されている。
【0003】
また近年、地球環境への負荷低減、資源保護、カーボンニュートラル、SDGs(持続可能な開発目標)等の観点に基づき、さらには生分解性を備えることが好ましいことから、一般に、石油等の枯渇性エネルギー資源に替えて、現生生物体構成物質である再生可能な動植物由来の有機性資源である、いわゆるサステナブル(持続可能な)原料を利用しようとする動きが活発化している。そして、吸水性樹脂の分野においても、サステナブル原料として天然物由来の多糖類を少なくとも一部に用いる研究が進められている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、例えばアクリル酸ナトリウムとデンプンとをグラフト重合してなるデンプングラフトポリアクリル酸ナトリウムが吸水性樹脂として市販されていることが記載されている。特許文献1には、デンプングラフトポリアクリル酸ナトリウムからなる吸水性樹脂の製造方法が記載されている。非特許文献2には、市販のアクリル酸系の吸水性樹脂の原料として、任意にデンプンおよびポリビニルアルコール等のグラフト成分が使用されること、重合方法として水溶液重合および逆相懸濁重合が使用されること、ならびに吸水性樹脂の要求性能として、吸水倍率、加圧下吸水倍率、吸水速度、可溶分等が所定範囲内であること、および吸水性樹脂中の粒子径が150μm以下および100μm以下の微粉の割合が少ないことが記載されている。
【0005】
特許文献2~3には、吸水性樹脂の製造において、単量体に親水性高分子等を添加しうることが記載され、親水性高分子の一例としてデンプン、セルロース、それらの誘導体、水溶性ポリアクリル酸(塩)等が記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、逆相懸濁重合を、β-1,3-グルカン類0.001~5重量%(対単量体)の共存下に行う高吸水性樹脂の製造方法が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、親水性単量体を溶液中で重合する親水性重合体の製造方法において、単量体溶液にデンプン等の親水性高分子を混合して分散させた後、単量体を重合する製造方法が記載されている。
【0008】
また、特許文献6には、吸水性樹脂の任意の製造工程にデンプン化合物を添加する吸水性樹脂組成物の製造方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献7には、デンプンのグラフト重合体またはセルロースのグラフト重合体は耐熱性が低いため、これらの重合体の含水ゲルの乾燥方法として水溶液重合後に100~180℃で10分以内の薄膜乾燥を用いる吸水性樹脂の製造方法が記載されている。
【0010】
また、逆相懸濁重合において、吸水性樹脂の微粉の低減または粒子径の制御を目的として、特許文献8には、ポリアクリル酸(塩)およびヒドロキシエチルセルロース等の増粘剤を単量体に添加する吸水性樹脂の製造方法が記載されている。特許文献9には、逆相懸濁重合後の吸水性樹脂を疎水性分散溶媒中で造粒する方法が記載されている。特許文献10および11には、2段重合による逆相懸濁重合での凝集方法(造粒方法)が記載されている。特許文献12には逆相懸濁重合による、非球状の凝集した吸水性樹脂の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US4,076,663
【文献】特開2003-88551号公報
【文献】特開2003-88554号公報
【文献】特開平8-120014号公報
【文献】特開2007-191708号公報
【文献】特表2009-528412号公報
【文献】特開昭54-53165号公報
【文献】特開平02-191604号公報
【文献】特開昭62-132936号公報
【文献】国際公開第2007/123188号
【文献】国際公開第2012/033025号
【文献】特開平11-005808号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】日本薬局方外医薬品成分規格(1989)1319~1320頁
【文献】Modern Superabsorbent Polymer Technology(1998)、69~117頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述のような従来技術は、低コストで、生産性が高く、且つ、操作性の良い簡便な方法で多糖類を含有する吸水性樹脂組成物を得るという点、および着色が少なく、且つ、微粉が少ない吸水性樹脂組成物を得るという点で十分ではなかった。
【0014】
例えばアクリル酸ナトリウムとデンプンとのグラフト重合は、デンプンの水溶液が必要であり、そのためのデンプンの糊化(α化)工程が煩雑である。また、α化デンプン水溶液が高粘度であり、十分な糊化のためには比較的多量の水を必要とする。そのため、低濃度での重合が必要であることに起因して、乾燥コストがかかる上に低生産性であった。
【0015】
また、単量体を水溶液中で重合する吸水性樹脂の製造方法は、重合ゲルを粉砕して得られる含水ゲル粒子を乾燥するために多量の水を除去する必要があるため、高温が必要であり、高温によるデンプン由来の着色を抑制するのは困難であった。逆に、着色を抑制するために乾燥温度を低温にすると、乾燥時間が長くなり低生産性であった。また特許文献7に記載の薄膜乾燥では生産性が低い上に、鱗片状の吸水性樹脂が得られるため、吸水性樹脂微粉が多量に副生する問題があった。
【0016】
一方、逆相懸濁重合においては、単量体溶液にβ-1,3-グルカン類およびデンプン化合物等の多糖類を添加する吸水性樹脂の製造方法も知られているが、多糖類の添加量が少なく、多糖類を単量体溶液に溶解させて重合を行う方法であった。
【0017】
また、逆相懸濁重合では粒度の細かい吸水性樹脂の微粒子(微粉)が得られることが多く、吸水性樹脂の微粉の低減または粒子径の制御を目的として、造粒工程や多段階の重合による凝集工程等追加の工程が必要であった。
【0018】
それゆえ、サステナブル原料として多糖類を少なくとも一部に用いても、低コストで、生産性が高く、操作性の良い簡便な方法で、着色および微粉が少ない吸水性樹脂組成物を得ることができる製造方法が求められている。
【0019】
即ち、本発明の一態様は、サステナブル原料として多糖類を少なくとも一部に用いても、低コストで、生産性が高く、操作性の良い簡便な方法で、着色および微粉が少ない吸水性樹脂組成物を得ることができる製造方法およびその製造方法により製造される吸水性樹脂組成物を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成からなるものである。
【0021】
〔1〕多糖類とポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
(A)アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体、内部架橋剤および多糖類を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含む油相中に懸濁させて重合を行う重合工程、または
(B)アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含むとともに多糖類を分散させた油相中に懸濁させて重合を行う重合工程、または
(C)炭化水素分散媒を含むとともに、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を分散させた油相中に、多糖類を懸濁させて重合を行う重合工程、を含む吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0022】
〔2〕前記多糖類の使用量が、前記アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の使用量に対して10質量%以上である、〔1〕に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0023】
〔3〕前記多糖類は、デンプン、セルロースおよびそれらの変性物から選択される、〔1〕または〔2〕に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0024】
〔4〕前記多糖類の溶解度が20℃のイオン交換水1リットルに対して30g未満である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0025】
〔5〕前記多糖類の体積平均粒子径が、150μm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0026】
〔6〕前記単量体水溶液は、前記アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の濃度が35質量%以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0027】
〔7〕得られる吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径が200~700μmであり、得られる吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径より添加する前記多糖類の質量平均粒子径が小さい、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0028】
〔8〕前記重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体の乾燥前の固形分率が50~80質量%である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0029】
〔9〕前記重合工程により得られた含水ゲル状架橋重合体が、1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0030】
〔10〕さらに表面架橋工程を含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0031】
〔11〕多糖類を10質量%以上含む、曲面で構成されたポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂組成物。
【0032】
〔12〕アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体を、炭化水素分散媒を含む油相中で、逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂組成物であって、多糖類を10質量%以上含む吸水性樹脂組成物。
【0033】
〔13〕多糖類を25質量%以上含む、〔11〕または〔12〕に記載の吸水性樹脂組成物。
【0034】
〔14〕1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂組成物であって、質量平均粒子径が200~700μmである、〔11〕~〔13〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【0035】
〔15〕ダメージ付与後の微粉発生割合が0~5.0質量%である、〔11〕~〔14〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【0036】
〔16〕黄色度が15以下である、〔11〕~〔15〕のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様によれば、サステナブル原料として多糖類を少なくとも一部に用いても、低コストで、生産性が高く、操作性の良い簡便な方法で、着色および微粉が少ない吸水性樹脂組成物を得ることができる製造方法およびその製造方法により製造される吸水性樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例1で得られた吸水性樹脂組成物のSEM画像撮影を行った結果を示す図である。
図2】比較例1で得られた吸水性樹脂組成物のSEM画像撮影を行った結果を示す図である。
図3】実施例1で得られた吸水性樹脂組成物をヨウ素により着色し、写真撮影を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態に関して詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても、本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味し、「ppm」は、「質量ppm」を意味する。また、「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。さらに、吸水性樹脂組成物等の質量は、特に記載のない限り、固形分に換算した数値を表す。
【0040】
〔1〕用語の定義
〔1-1〕吸水性樹脂、吸水性樹脂組成物
本明細書において、吸水性樹脂とは、水膨潤性の架橋重合体を意味し、一般的に粒子状である。また、水膨潤性とは、NWSP 241.0.R2(15)で規定される無加圧下吸水倍率(CRC)が5g/g以上であることを意味する。
【0041】
また、本明細書において、前記吸水性樹脂は、「内部のみが架橋された重合体、つまり、内部と表面の架橋密度が実質的に同じである重合体」または「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」を指す場合がある。
【0042】
本明細書において、前記「内部のみが架橋された重合体」と前記「内部と表面とが架橋された重合体」は原則、区別することなく、何れも「吸水性樹脂」と表記する。但し、表面架橋の有無について明確に区別する必要がある場合は、前記「内部のみが架橋された重合体」は表面架橋が施される前であるため、「表面架橋前の吸水性樹脂」または「ベースポリマー」と表記し、前記「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」は表面架橋が施された後であるため、「表面架橋後の吸水性樹脂」または「表面架橋された吸水性樹脂」と表記する。なお、「表面架橋前」とは、「表面架橋剤を添加する前」または「表面架橋剤が添加された後であっても加熱処理による表面架橋反応が始まる前」のことを意味する。
【0043】
なお、本明細書においては、「吸水性樹脂」とは樹脂成分のみを指し、添加剤等の樹脂以外の成分を含む場合には「吸水性樹脂組成物」と表記する。さらに、前記表面架橋されていない吸水性樹脂に添加剤等が含まれる場合には「表面架橋前の吸水性樹脂組成物」または「ベースポリマー組成物」と表記し、前記表面架橋された吸水性樹脂に添加剤等が含まれる場合には「表面架橋後の吸水性樹脂組成物」または「表面架橋された吸水性樹脂組成物」と、それぞれ表記する。
【0044】
〔1-2〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
本明細書において、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂(以下、単に「吸水性樹脂」と称することがある)は、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体を、内部架橋剤の存在下で重合して得られる架橋重合体である。言い換えれば、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を構成する構造単位全体に対して、アクリル酸(塩)由来の構造単位を主成分として有する架橋重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する架橋重合体である。ここで、本明細書において、「主成分として」とは、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは実質100モル%を意味する。
【0045】
なお、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を構成する構造単位には、内部架橋剤に由来する構造単位も含まれるが、本明細書においては、「単量体」とは、内部架橋剤を含まない趣旨である。
【0046】
〔1-3〕NWSP
NWSPは、Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015の略称であり、EDANA(European Disposables and Nonwovens Associations:欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry:北米不織布工業会)とが共同で発行
した、欧州および米国において統一された、不織布およびその製品の評価方法である。また、NWSPには、吸水性樹脂の標準的な測定方法も示されている。本明細書では、NWSP原本(2015年)に準拠して、吸水性樹脂組成物の物性を測定する。
【0047】
なお、本明細書では別途言及しない限り、吸水性樹脂組成物の各種物性の測定方法は、下記実施例での測定方法に従う。
【0048】
〔2〕吸水性樹脂組成物の製造方法
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、単量体水溶液中または炭化水素分散媒を含む油相中に、多糖類を分散させた状態で、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体を逆相懸濁重合により重合、または、炭化水素分散媒を含む油相中に、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体水溶液を分散させた状態で、多糖類を添加し懸濁させて前記単量体を逆相懸濁重合により重合したところ、単量体溶液に多糖類が溶解されていなくても、好適に、多糖類とポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物を得ることができることを見出した。さらに、逆相懸濁重合によれば、一般には粒子径が10μm程度の真球状の吸水性樹脂粒子が得られるところ、本発明の方法によれば、驚くべきことに、質量平均粒子径が200μm以上の適度な大きさの粒子状の吸水性樹脂組成物を得ることができた。それゆえ、従来のように、逆相懸濁重合で得られた粒子径が小さい吸水性樹脂を造粒したり、加熱と冷却の複雑な操作が伴う多段階での逆相懸濁重合をしたりして適度な大きさにする操作を行う必要がない。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、デンプンの糊化(α化)工程を行う必要がなく、また、単量体を水溶液中で重合する方法と比較して単量体濃度を低濃度とする必要がないため乾燥コストがかからず高生産性である。さらに、高温による乾燥を必要としないため、多糖類由来の着色を抑制することができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、多糖類を単量体溶液に溶解しなくてもよいため、操作性がよく簡便である上に、多糖類の含有量が多い場合にも、好適に、多糖類とポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物を得ることができる。
【0051】
それゆえ、サステナブル原料として多糖類を少なくとも一部に用いても、低コストで、生産性が高く、操作性の良い簡便な方法で、着色および微粉が少ない吸水性樹脂組成物を得ることができる。
【0052】
すなわち、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物の製造方法は、多糖類とポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
(A)アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体、内部架橋剤および多糖類を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含む油相中に懸濁させて重合を行う重合工程、または
(B)アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含むとともに多糖類を分散させた油相中に懸濁させて重合を行う重合工程、または
(C)炭化水素分散媒を含むとともに、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を分散させた油相中に、多糖類を懸濁させて重合を行う重合工程、を含む。
【0053】
〔2-1〕重合工程
(a)単量体
本発明で用いられる単量体は、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体であればよい。前記アクリル酸(塩)系単量体としては、(メタ)アクリル酸およびその塩が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0054】
また、アクリル酸(塩)系単量体は、10~90モル%の範囲で中和されていることが好ましく、40~80モル%の範囲で中和されていることがより好ましく、60~75モル%の範囲で中和されていることが特に好ましい。
【0055】
従って、アクリル酸(塩)系単量体は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウム等の炭酸(水素)塩、アンモニア等の一価の塩基性化合物を含む中和液で中和されていることが好ましく、水酸化ナトリウムを含む中和液で中和されていることが特に好ましい。
【0056】
前記単量体に含まれてもよいアクリル酸(塩)系単量体以外の単量体としては、不飽和二重結合を有する単量体(エチレン性不飽和単量体)のうち、酸基を含有する単量体が好ましい。かかる単量体としては、具体的には、(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、およびそれらの塩が挙げられる。これら単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0058】
また、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体は、10~90モル%の範囲で中和されていることが好ましく、40~80モル%の範囲で中和されていることがより好ましく、60~75モル%の範囲で中和されていることが特に好ましい。
【0059】
なお、前記単量体は、重合後に中和されてもよい。即ち、重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を中和して中和物としてもよい。但し、吸水性樹脂の生産性、各種物性等を考慮すれば、中和された単量体を用いて重合し、含水ゲルを得ることがより好ましい。
【0060】
また、前記単量体は、必要に応じて、前述した単量体以外に、親水性または疎水性の不飽和単量体(以下、「他の単量体」と称する)を含んでいてもよい。当該他の単量体としては、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。他の単量体の使用量は、得られる吸水性樹脂組成物の物性を損なわない程度であればよく、具体的には、単量体に対して、50モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
【0061】
(b)内部架橋剤
前記内部架橋剤としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(β-アクリロイルオキシプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(β-アクリロイルオキシプロピオネート)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン等の、分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物;ポリグリシジルエーテル(エチレングリコールジグリシジルエーテル等)、ポリオール(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等)等の、カルボキシル基と反応して共有結合を形成し得る化合物;等が挙げられ、分子内に重合性二重結合を少なくとも2個有する化合物がより好ましい。これら内部架橋剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0062】
内部架橋剤は、得られる吸水性樹脂組成物の物性を考慮して、前記の単量体全量に対して、5.0モル%以下の範囲で用いることが好ましく、2.0モル%以下の範囲で用いることがより好ましく、0.5モル%以下の範囲で用いることがさらに好ましく、0.1モル%以下の範囲で用いることが特に好ましく、0.001~0.1モル%の範囲で用いることが最も好ましい。
【0063】
(c)多糖類
本発明で使用できる多糖類としては、例えば、生物体内から得られる天然の多糖類、または、その変性物が挙げられる。これらの多糖類は、石油等の化石原料を使用していないため、再生可能原料といえる。当該多糖類は、単糖類反復単位を含む骨格を有するポリマーである。多糖類としては、例えば、デンプン、アミロペクチン、アミロース、セルロース、ガラクトマンナン、グルコマンナン、キサンタンガム、カラギーナン、キチン、キトサン、およびこれらの変性物等が挙げられる。デンプンとしては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、小麦デンプン、タピオカデンプン、ワキシーコーンデンプン、米デンプン、甘藷デンプン等が挙げられる。セルロースとしては、例えば、木綿、木材由来のパルプ、バクテリアセルロース、リグノセルロース、再生セルロース(セロハン、再生繊維等)、微結晶セルロース等が挙げられる。ガラクトマンナンとしては、例えば、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム等が挙げられる。
【0064】
また、変性デンプン、変性アミロペクチン、変性アミロース、変性セルロース、変性ガラクトマンナン、変性グルコマンナン、変性キサンタンガム、変性カラギーナン等を得るための変性方法としては、アセチル化処理等のエステル化、カルボキシアルキル化等のエーテル化、リン酸化、酸化、硫酸化、リン酸架橋、アジピン酸架橋、酵素処理、およびこれらの組み合わせが挙げられる。変性によって導入される置換基の種類は、一種類であってもよく、二種類以上であってもよい。変性時の置換度は、得られる吸水性樹脂組成物の物性を考慮して、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましく、0.25以下が特に好ましい。
【0065】
また、多糖類は、架橋されていてもよい。多糖類は、公知の任意の方法で架橋することができ、具体的には、架橋剤を用いて架橋させてもよく、放射線(例えば、ガンマ線、X線、電子ビーム等の放射線)および/または熱を用いて架橋させてもよい。前記架橋剤としては、例えば、分子内に環状部分を有するN-メチロール化合物(ジメチロールエチレン尿素、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等)、ポリカルボン酸(クエン酸トリカルバリル酸、ブタンテトラカルボン酸等)、多官能性エポキシ化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等)、多価金属イオン(アルミニウムイオン、クロムイオン等)、多官能性アミン(アミノ酸、ポリアミン、トリアミン、ジアミン等)、多官能性アルデヒド類(グルタルアルデヒド、グリオキサール等)等が挙げられる。これら架橋剤は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0066】
前記多糖類の中でも、入手の容易さ等から、デンプン、セルロース、およびこれらの変性物がより好ましく、未変性のデンプンまたは未変性のセルロースがさらに好ましく、未変性のデンプンが最も好ましい。特に、デンプンは、糊化(α化)によって流動性を付与することが可能であり、吸水性樹脂に均一に分布させることができる。それゆえ、吸水性樹脂組成物中に多糖類が偏析する(多糖類のみが多く存在する)ことを抑制することができるため、最も好ましい。
【0067】
これら多糖類は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記多糖類の体積平均粒子径は、吸水樹脂組成物全体に均一に分布させる観点から、1μm~150μmの範囲であることが好ましく、1μm~100μmの範囲であることがより好ましく、1μm~50μmの範囲であることがさらに好ましい。なお、前記多糖類の体積平均粒子径は、溶解や膨潤の起こりにくい溶媒に多糖類を分散させてレーザー回析式粒度分布測定装置で測定される。
【0068】
吸水性樹脂組成物に含有される多糖類の量は、吸水性樹脂組成物に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。多糖類の含有量の上限値は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。従って、本工程では、得られる吸水性樹脂組成物に含有される量が前述した量となるように、多糖類を使用する。前記多糖類の使用量は、前記アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の使用量に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。多糖類の含有量が10質量%未満であると、サステナブル原料としての多糖類の使用量が少なくなる。多糖類の含有量が50質量%を超えると、吸水性樹脂組成物の吸水倍率が低下するおそれがある。なお、前記多糖類は重合後に別途、添加してもよい。
【0069】
(d)炭化水素分散媒
前記炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を用いることができる。これらの炭化水素分散媒は、単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。二種類以上の炭化水素分散媒が混合された混合炭化水素分散媒としては、たとえばエクソールヘプタン(エクソンモービル社製、主成分としてn-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、メチルシクロヘキサンを含む混合炭化水素分散媒)が挙げられる。これらの炭化水素分散媒の中でも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、かつ安価である点で、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、エクソールヘプタン等が好ましい。
【0070】
前記炭化水素分散媒の使用量はこれに限定されるものではないが、重合熱を除去し、且つ逆相懸濁重合の反応温度を制御しやすくするとの観点から、単量体全量に対して50~600質量%であることが好ましく、100~550質量%であることがより好ましい。
【0071】
(e)単量体水溶液
前記アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体、および前記内部架橋剤は、前記炭化水素分散媒中にてより効率よく分散させるために、水溶液にして用いることが好ましい。このような水溶液(以下、本明細書において「単量体水溶液」と称する)における、前記単量体の濃度は、これに限定はされないが、単量体水溶液の全質量(多糖類を含む場合は、多糖類を除く質量)に対して、通常20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、好ましくは35質量%以上飽和濃度以下であり、より好ましくは35~70質量%であり、さらに好ましくは40~55質量%である。
【0072】
(f)多糖類の添加方法
本発明の一実施形態に係る製造方法においては、単量体水溶液に、前記多糖類を含有させ、アクリル酸(塩)系単量体、内部架橋剤および多糖類を含む単量体水溶液を、前記炭化水素分散媒を含む油相中に懸濁させて重合を行う。単量体水溶液に、前記多糖類を含有させる方法は特に限定されるものではなく、アクリル酸(塩)系単量体および内部架橋剤を含む水溶液を予め調製した後、当該水溶液に前記多糖類を添加してもよいし、アクリル酸(塩)系単量体を含む水溶液を予め調製した後、当該水溶液に前記内部架橋剤と前記多糖類とを添加してもよい。後者の場合、予め調製したアクリル酸(塩)系単量体を含む水溶液に、前記内部架橋剤と前記多糖類とを添加する順序も特に限定されるものではなく、いずれを先に添加してもよいし、両者を同時に添加してもよい。或いは、多糖類を水と混合した後、アクリル酸(塩)系単量体および内部架橋剤を混合してもよいし、多糖類、アクリル酸(塩)系単量体および内部架橋剤を同時に水と混合してもよい。
【0073】
前記実施形態においては、添加する多糖類をそのまま使用して、前記単量体水溶液に含有させることができる。また、添加する多糖類の少なくとも一部が、前記単量体水溶液に溶解しない場合でも、当該多糖類が分散した状態で、当該単量体水溶液を重合工程に供することができる。それゆえ、操作性の良い簡便な方法で多糖類を含有する吸水性樹脂組成物を得ることができる。また、多糖類がデンプンである場合、煩雑な糊化(α化)工程を行う必要がないという利点がある。例えば、前記多糖類の溶解度が20℃のイオン交換水1リットルに対して30g未満、さらには25g未満、さらには20g未満、さらには15g未満である場合でも、本実施形態によれば、当該多糖類が分散した状態で、当該単量体水溶液を重合工程に供することができ、非常に有利である。
【0074】
また、単量体水溶液の過度の増粘を防ぐため、多糖類を添加後、重合を開始するまでの単量体水溶液の温度は0~80℃が好ましく、10~70℃がより好ましい。さらに同じ理由から、多糖類を単量体水溶液に添加後、重合を開始するまでの時間は60分以内が好ましく、10分以内がより好ましい。
【0075】
本発明の他の一実施形態においては、アクリル酸(塩)系単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒を含むとともに多糖類を分散させた油相中に懸濁させて重合を行う。炭化水素分散媒を含む油相中に、前記多糖類を分散させる方法は特に限定されるものではない。炭化水素分散媒を含む油相は、炭化水素分散媒に必要に応じて、重合開始剤、界面活性剤等を混合することにより調製することができる。前記多糖類は、重合開始剤、界面活性剤等の添加前、添加中、および添加後の任意の時期に添加することができる。
【0076】
前記実施形態においても、添加する多糖類をそのまま使用して、前記炭化水素分散媒を含む油相中に分散させることができる。それゆえ、操作性の良い簡便な方法で多糖類を含有する吸水性樹脂組成物を得ることができる。また、多糖類がデンプンである場合、煩雑な糊化(α化)工程を行う必要がないという利点がある。例えば、前記多糖類の溶解度が20℃のイオン交換水1リットルに対して30g未満、さらには25g未満、さらには20g未満、さらには15g未満である場合でも、本実施形態によれば、当該多糖類が分散した状態で、当該単量体水溶液を重合工程に供することができ、非常に有利である。
【0077】
本発明のさらに他の一実施形態においては、炭化水素分散媒を含むとともに、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を分散させた油相中に、多糖類を懸濁させて重合を行う。
【0078】
前記実施形態においても、添加する多糖類をそのまま使用して、炭化水素分散媒を含むとともに、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体および内部架橋剤を含む単量体水溶液を分散させた油相中に分散させることができる。それゆえ、操作性の良い簡便な方法で多糖類を含有する吸水性樹脂組成物を得ることができる。また、多糖類がデンプンである場合、煩雑な糊化(α化)工程を行う必要がないという利点がある。例えば、前記多糖類の溶解度が20℃のイオン交換水1リットルに対して30g未満、さらには25g未満、さらには20g未満、さらには15g未満である場合でも、本実施形態によれば、当該多糖類が分散した状態で、当該単量体水溶液を重合工程に供することができ、非常に有利である。
【0079】
(g)逆相懸濁重合
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物の製造方法では、重合開始剤の存在下で逆相懸濁重合法によって、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体を重合させればよい。この際、必要に応じて、高分子系分散剤、界面活性剤等を用いてもよい。
【0080】
前記高分子系分散剤は、特に限定されるものではないが、例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・無水マレイン酸共重合体、ブタジエン・無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの高分子保護コロイドは単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
中でも、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体等を高分子保護コロイドとして用いることがより好ましい。
【0082】
前記高分子保護コロイドの使用量は特に限定されないが、炭化水素分散媒中においてアクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の分散状態を良好に保ち、且つ使用量に見合う分散効果を得るため、単量体全量に対して0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
【0083】
前記界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えばショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
中でも、炭化水素分散媒中におけるアクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の分散安定性の面から、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を界面活性剤として用いることがより好ましい。
【0085】
前述の界面活性剤の使用量は特に限定されないが、炭化水素分散媒中においてアクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の分散状態を良好に保ち、且つその使用量に見合う分散効果を得るため、単量体全量に対して、0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。
【0086】
本発明の一実施形態にかかる製造方法においては、ラジカル重合開始剤を使用して逆相懸濁重合法による反応を行うことが好ましい。このようなラジカル重合開始剤は、これに限定されるものではないが、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物類;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-〔1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いてもいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
前記ラジカル重合開始剤の使用量は、これに限定されるものではないが、単量体全量に対して0.005~1モル%であることが好ましい。使用量が0.005モル%以上であれば、重合反応に多大な時間を要しないので好ましい。使用量が1モル%以下である場合、急激な重合反応が起こりにくいため好ましい。
【0088】
なお、前記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いてもよい。
【0089】
本発明の一実施形態に係る製造方法における逆相懸濁重合の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、好ましくは20~110℃であり、より好ましくは40~90℃である。反応温度が20℃以上であれば、重合速度が速く、重合時間が長くならないので好ましい。反応温度が110℃以下であれば、重合熱を除去しやすくなるので、円滑に反応を行なうことができる。反応時間は、通常0.1~4時間とすればよい。
【0090】
本発明の一実施形態に係る製造方法では、前記炭化水素溶媒に対して、10~200質量%の量の水を用いることが好ましい。水の使用量は、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の分散状態を良好にする観点から、10質量%以上が好ましく、工業的な生産を良好にし、経済的に好ましい観点から、200質量%以下が好ましい。なお、多糖類がデンプンの場合、糊化の促進のために、デンプン1質量部に対して水の使用量は0.9~20質量部が好ましい。
【0091】
本発明の一実施形態に係る製造方法では、逆相懸濁重合は、1段で行ってもよく、或いは、2段以上の多段で行っても良い。
【0092】
2段以上の逆相懸濁重合を行う場合には、前述の方法で1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物に、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体、内部架橋剤および多糖類を添加し混合して、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体、内部架橋剤および多糖類の他に、重合開始剤等を添加して、前記した方法と同様の条件で逆相懸濁重合を行えばよい。
【0093】
本発明の一実施形態において、前記重合工程で得られた含水ゲルの乾燥前の固形分率は50~80質量%であり、より好ましくは55~75質量%であり、さらに好ましくは60~70質量%である。これにより、乾燥コストがかからず高生産性である。さらに、高温による乾燥を必要としないため、多糖類由来の着色を抑制することができる。
【0094】
本発明の一実施形態において、前記重合工程で得られた含水ゲルの形状は特に限定されるものではないが、通常は粒子状である。粒子状の含水ゲル、言い換えれば、含水ゲル粒子は、1次粒子であってもよいし、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいし、1次粒子と2次粒子との混合物であってもよい。より好ましくは、前記含水ゲル粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子である。これにより、最終的に、質量平均粒子径が200μm以上の適度な大きさの粒子状の吸水性樹脂組成物を得ることができる。それゆえ、従来のように、逆相懸濁重合で得られた粒子径が小さい吸水性樹脂を造粒したり、加熱と冷却の複雑な操作が伴う多段階での逆相懸濁重合をしたりして適度な大きさにする操作を行う必要がない。
【0095】
〔2-2〕乾燥工程
前述の重合工程にて得られた含水ゲルは、乾燥工程にて、水分および分散媒を除去して、得られる吸水性樹脂組成物の含水量を適宜調整する。乾燥は常圧下で行っても減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるため、窒素等の気流下で行ってもよい。乾燥工程を常圧下で行う場合、乾燥温度は70~250℃が好ましく、80~180℃がより好ましく、80~140℃がさらに好ましく、80~130℃が特に好ましい。多糖類がデンプンの場合、前記温度に制御することにより、乾燥工程において効率的にデンプンを糊化することができるとともに、吸水性樹脂組成物の着色を防ぐことができる。また、減圧下の場合、乾燥温度は60~100℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。
【0096】
乾燥時間は、乾燥工程において効率的にデンプンを糊化する観点から、通常1~360分で、10~240分が好ましく、60~180分がより好ましい。
【0097】
乾燥方法としては、より具体的には、例えば、含水ゲルを炭化水素溶媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留による脱水を行う方法;デカンテーションにより含水ゲルを取り出し、減圧乾燥する方法;フィルターにより含水ゲルをろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さと、多糖類がデンプンの場合にデンプンの糊化を促進するため、重合により得られる含水ゲルを炭化水素溶媒に分散し、共沸蒸留による脱水を行う方法が好ましい。また、前記乾燥方法においては、含水ゲルを攪拌下で乾燥することがより好ましい。具体的には、攪拌下での共沸蒸留、攪拌下での減圧乾燥がより好ましい。撹拌下で加熱することにより、効率よく乾燥ができるとともに、吸水性樹脂と多糖類をより均一に混合することができる。
【0098】
〔2-3〕表面架橋工程
本発明の一実施形態に係る製造方法は表面架橋工程を含み得る。表面架橋工程では、前記重合工程にて得られた含水ゲル粒子、または、前記乾燥工程にて含水量を適宜調整した含水ゲル粒子または乾燥後の吸水性樹脂粉末に、表面架橋剤を添加して、表面架橋処理を施す。好ましくは、前記乾燥工程にて含水量を適宜調整した含水ゲル粒子が表面架橋され、必要によりさらに乾燥される。表面架橋工程は重合や乾燥に使用される疎水性分散溶媒中で行ってもよく、分散溶媒を除去してから行ってもよい。これにより、表面架橋密度が高まり、荷重下の吸水倍率およびゲル強度等の吸水性能を高めた吸水性樹脂組成物を得ることができる。このような表面架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物、1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が特に好ましい。これらの表面架橋剤は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0099】
前記表面架橋剤の添加量は、得られる吸水性樹脂組成物の吸水倍率を低下させず、かつ表面近傍の架橋密度を強めて、諸性能を高めるために、前記重合工程で用いるアクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の総量1モルに対して、0.00001モル~0.03モルの範囲とすることが好ましく、0.00005モル~0.02モルの範囲とすることがより好ましく、0.0001モル~0.01モルの範囲とすることがさらに好ましい。
【0100】
前記表面架橋剤は、前記重合工程にて得られた含水ゲル、または、前記乾燥工程にて含水量を適宜調整した含水ゲルに添加すればよいが、含水ゲルの固形分に対し、1~400質量%の範囲の水分存在下に添加することが好ましく、5~200質量%の範囲の水分存在下に添加することがより好ましく、10~100質量%の範囲の水分存在下に添加することがさらに好ましい。
【0101】
表面架橋剤を使用する際には、必要に応じて溶媒として水や親水性有機溶媒を用いてもよい。前記親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、これらの親水性有機溶媒は、水との混合溶媒として用いてもよい。
【0102】
前記表面架橋反応における温度は、50~250℃が好ましく、60~180℃がより好ましく、60~140℃がさらに好ましく、70~120℃が特に好ましい。また、前記表面架橋の反応時間は、反応温度、表面架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1~300分間、好ましくは5~200分間である。
【0103】
表面架橋後の吸水性樹脂組成物は、再度乾燥工程にて、水分および有機溶媒等の除去を行ってもよい。このような乾燥を行うことにより、粉末状の吸水性樹脂組成物を得ることができる。表面架橋後の乾燥工程も、前述の「〔2-2〕乾燥工程」に記載の方法と同様の方法で行うことができる。
【0104】
〔2-4〕その他の工程
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物の製造方法は、さらに必要に応じて、耐熱性安定剤、酸化防止剤、抗菌剤等の添加剤を添加する工程を含み得る。
【0105】
前記添加剤の量は、吸水性樹脂組成物の用途、添加剤の種類等によって異なるが、前記吸水性樹脂組成物を構成するアクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体の総量に対して、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.01~5質量%、さらに好ましくは0.1~2質量%である。
【0106】
〔3〕吸水性樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物は、アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体を、炭化水素分散媒を含む油相中で、逆相懸濁重合することにより得られる吸水性樹脂組成物であって、多糖類を10質量%以上含む吸水性樹脂組成物である。ここで、「アクリル酸(塩)系単量体を主成分として含む単量体」、「炭化水素分散媒を含む油相」、「逆相懸濁重合」および「多糖類」については、前述したとおりである。このようにして得られる吸水性樹脂組成物は、乾燥後の吸水性樹脂組成物であり、含水率が20%以下であることが好ましく、1~15%であることがより好ましく、3~10%であることがさらに好ましい。前記吸水性樹脂組成物は、前記多糖類を、吸水性樹脂組成物に対して、10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上含む吸水性樹脂組成物である。多糖類の含有量が10質量%未満であると、サステナブル原料としての多糖類の使用量が少なくなる。多糖類の含有量が50質量%を超えると、吸水性樹脂組成物の吸水倍率が低下するおそれがある。
【0107】
前述したように、本発明の製造方法によれば、驚くべきことに、質量平均粒子径が200μm以上の適度な大きさの粒子状の吸水性樹脂組成物を得ることができる。かかる粒子状の吸水性樹脂組成物の形状はこれに限定されるものではないが、曲面で構成されている。「曲面で構成されている」とは、平面がない、即ち破断面がないことを意味する。また、かかる粒子状の吸水性樹脂組成物の形状は、角のない形状ということもできる。このような吸水性樹脂組成物は、重合工程ですでに最終製品の所望の粒子径かそれより小さい粒子径に制御することができる、逆相懸濁重合により得ることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物は、多糖類を10質量%以上含む、曲面で構成されたポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂組成物でありうる。ここで、ポリアクリル酸(塩)系の吸水性樹脂組成物とは、吸水性樹脂として、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を含む吸水性樹脂組成物を意味する。ただし、粒子状の吸水性樹脂組成物の形状として、真球状は除かれることが好ましい。質量平均粒子径が200μm以上の真球状の吸水性樹脂組成物は過度に吸水速度が遅くなる恐れがあるためである。
【0108】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径は、使用目的に応じて10~2000μmの範囲で選択できるが、衛生材料への使用を目的とする場合、質量平均粒子径が200~700μm、より好ましくは250~650μm、さらに好ましくは300~600μmである。ここで、質量平均粒子径とは、後述する実施例に記載の測定方法によって測定された値である。このように適度な大きさの吸水性樹脂組成物を得ることができるため、従来のように、逆相懸濁重合で得られた粒子径が小さい吸水性樹脂を造粒して適度な大きさにする操作を行う必要がない。また、得られる吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径より添加する前記多糖類の質量平均粒子径が小さいことが好ましい。
【0109】
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物の形状は特に限定されるものではないが、通常は粒子状である。粒子状の吸水性樹脂組成物は、1次粒子の形態であってもよいし、1次粒子が凝集した2次粒子の形態であってもよいし、1次粒子と2次粒子との混合物の形態であってもよい。より好ましくは、前記吸水性樹脂組成物は、1次粒子が凝集した2次粒子の形態である。
【0110】
また、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物は、後述するダメージテストによるダメージ付与後の微粉発生割合が0~5.0質量%、より好ましくは0~2.0質量%である。
【0111】
また、本発明の一実施形態に吸水性樹脂組成物は、無加圧下吸収倍率が、20g/g以上、より好ましくは25g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上である。無加圧下吸収倍率の上限値は、特に限定されないものの、70g/g以下、より好ましくは60g/g以下、さらに好ましくは50g/g以下である。
【0112】
また、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物は、0.7kPaの加圧下における加圧下吸水倍率(AAP0.7)が、10g/g以上、より好ましくは12g/g以上、さらに好ましくは15g/g以上である。0.7kPaの加圧下における加圧下吸水倍率(AAP0.7)の上限値は、特に限定されないものの、40g/g以下、より好ましくは35g/g以下、さらに好ましくは30g/g以下である。
【0113】
また、本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂組成物は、黄色度(YI:Yellow Index)が20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。黄色度の下限値は特に限定されず0に近いほど好ましいが、1以上、より好ましくは2以上である。黄色度が小さいほど、低着色で実質白色に近づくことを示す。
【実施例
【0114】
以下に示す実施例および比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に記載された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれることとする。
【0115】
<評価方法>
〔CRC(無加圧下吸収倍率)〕
CRC(無加圧下吸収倍率)は、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液への浸漬時間を60分に変更した以外は、NWSP 241.0.R2(15)に準拠して測定した。具体的には、吸水性樹脂組成物0.2gを不織布製の袋に入れ、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に60分間浸漬して当該吸水性樹脂組成物を自由膨潤させた後、遠心分離機(遠心力:250G)を用いて脱水し、CRC(無加圧下吸収倍率)(単位:g/g)を測定した。
【0116】
〔AAP(加圧下吸収倍率)〕
AAP(加圧下吸収倍率)は、加圧下条件を0.7psiから0.3psiに変更した以外はNWSP 242.0.R2(15)に準拠して測定した。具体的には、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液を用い、吸水性樹脂組成物0.9gを1時間、2.07kPa(21g/cm2、0.3psi)の加圧下で膨潤させた後、AAP(加圧下吸収倍率)(単位:g/g)を測定した。なお、0.3psiの加圧下条件で測定した結果をAAP0.3と表記する。
【0117】
〔ヨウ素による着色〕
0.05モル/Lヨウ素溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を脱イオン水で100倍に薄め、0.0005モル/Lヨウ素溶液を調製した。そして、吸水性樹脂組成物0.01gに0.0005モル/Lヨウ素溶液0.2gを加えて2分間静置し、当該ヨウ素溶液が吸水性樹脂組成物に全て吸収されたことを確認した。その後、膨潤した吸水性樹脂組成物の粒子を数粒取得し、写真撮影を行った。
【0118】
〔走査型電子顕微鏡(SEM)画像撮影〕
JCM-6000ネオスコープ卓上走査電子顕微鏡(日本電子株式会社)を使用し、倍率を30倍にして吸水性樹脂組成物の画像を取得した。
【0119】
〔含水ゲル状架橋重合体の含水率及び固形分率〕
含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)の含水率を、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を4.4gに、乾燥温度を180℃に、乾燥時間を3時間にそれぞれ変更した。具体的には、底面の直径が50mmのアルミカップに含水ゲル4.4gを投入した後、試料(含水ゲル及びアルミカップ)の総質量W1(g)を正確に秤量した。次に、前記試料を、雰囲気温度180℃に設定されたオーブン内に静置した。3時間経過後、該試料を前記オーブンから取り出し、総質量W2(g)を正確に秤量した。本測定に供された含水ゲルの質量をM(4.4g)としたときに、下記(式1)にしたがって、含水ゲルの含水率(100-α)(質量%)を求めた。なお、αは含水ゲルの固形分率(質量%)である。
【0120】
(100-α)(質量%)={(W1-W2)/M}×100 式(1)
〔吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径〕
JIS標準篩を上から、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μm、および受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に吸水性樹脂組成物10.0gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて5分間振とうさせて分級した。各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットし、確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。
【0121】
〔ダメージ付与後の微粉発生割合〕
吸水性樹脂組成物のダメージ付与後の微粉発生割合は、以下のダメージテストにより測定した。
【0122】
即ち、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、吸水性樹脂組成物30gと直径6mmのガラスビーズ10gとを入れ、分散機(No.488試験用分散機/株式会社東洋精機製作所製)に設置した。次いで、800(cycle/min)(CPM)で分散機を振とうさせ、40分間経過後、停止させた。その後、目開き2mmのJIS標準篩を用いて、吸水性樹脂組成物とガラスビーズを分離した。
【0123】
ダメージテスト後の吸水性樹脂組成物を目開き150μmのJIS標準篩で分級し、次式に従って、テスト前に対するテスト後の150μm以下の粒子径を有する吸水性樹脂組成物粒子の発生量を、吸水性樹脂組成物の全体質量に対する割合として算出した。下記式中「DT後」はダメージテスト後、「DT前」はダメージテスト前を意味する。
【0124】
ダメージ付与後の微粉発生割合[質量%]=(DT後の粒子径150μm以下の粒子質量の全体質量に対する質量百分率[質量%])-(DT前の粒子径150μm以下の粒子質量の全体質量に対する質量百分率[質量%])
〔吸水性樹脂組成物の着色評価(黄色度:YI)〕
吸水性樹脂組成物の着色評価は、日本電色工業株式会社製の分光式色差計SZ-Σ80COLOR MEASURING SYSTEMを用いた。設定条件(反射測定/付属の粉末・ペースト試料台(内径30mm、高さ12mm/標準として粉末・ペースト用標準丸白板No.2/30Φ投光パイプ))で、吸水性樹脂組成物を備え付けの試料台に5g充填し(備え付けの試料台の6割程度の充填)、室温(20~25℃)、湿度50%RHの条件下で前記分光式色差計にて吸水性樹脂組成物表面の黄色度(YI)を測定した。
【0125】
〔実施例1〕
攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。また、冷却部分には冷却水循環装置(東京理化器械(株)製:EYELA COOL ACE CA-1112)を用いて、5℃の冷却液を循環させた。
【0126】
このフラスコにn-ヘプタン571.5gを入れ、界面活性剤としてHLB=3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)製、リョートーシュガーエステルS-370)2.25gを添加した。フラスコ内のn-ヘプタンと界面活性剤との混合物を撹拌しつつ70℃まで昇温して界面活性剤を溶解し、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した後、50℃まで冷却した。
【0127】
一方、内容積200mLの三角フラスコに80.5質量%アクリル酸43.7g(0.49モル)を取り、外部より冷却しつつ、25.3質量%の水酸化ナトリウム水溶液56.3g(0.36モル)を滴下して73モル%の中和を行った。その後、この73モル%の中和物に、ラジカル重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.06g(0.252ミリモル)、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)0.010g(0.0195ミリモル)、多糖類としてトウモロコシデンプン(三和澱粉工業(株)製、三和コーンスターチY、体積平均粒子径15μm)14.3g(単量体固形分に対して33質量%)を加えて混合することにより、多糖類を除く単量体水溶液全質量に対し、単量体濃度43質量%(多糖類を含む単量体水溶液全質量に対し単量体濃度38質量%)の単量体水溶液を調製した。
【0128】
前記の単量体水溶液に窒素ガスを吹き込んで系内を窒素で十分に置換した後、単量体水溶液全量を前記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を70℃に昇温して重合反応を開始させた後、1時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、重合物をろ過して系外に取り出した。100℃で減圧乾燥し、目開き850μmのJIS標準篩を通過させることにより、トウモロコシデンプンを25質量%含有する、顆粒状の吸水性樹脂組成物(1)を得た。吸水性樹脂組成物(1)の質量平均粒子径は480μm、CRC(60分)は35.2g/g、黄色度YI=10.23であった。また、ダメージ付与後の微粉発生割合は1.1質量%であった。前記〔走査型電子顕微鏡(SEM)画像撮影〕に記載の方法に従って得られた吸水性樹脂組成物(1)のSEM画像撮影を行った。結果を図1に示す。得られた吸水性樹脂組成物(1)を、前記〔ヨウ素による着色〕に記載の方法に従ってヨウ素溶液により着色して写真撮影を行った結果を、そのさらなる拡大図とともに、図3に示す。図3に示されるように、吸水性樹脂組成物(1)は、1次粒子が凝集した2次粒子の形態であった。また、吸水性樹脂組成物(1)は均一に青く着色されており、多糖類が均一に含まれていることを示す。
【0129】
〔比較例1〕
実施例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)の使用量を0.026g(0.0488ミリモル)に変更し、単量体水溶液にトウモロコシデンプンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、真球状の比較吸水性樹脂組成物(1)を得た。比較吸水性樹脂組成物(1)の質量平均粒子径は58μm、、CRC(60分)は35.1g/gであった。前記〔走査型電子顕微鏡(SEM)画像撮影〕に記載の方法に従って、得られた比較吸水性樹脂組成物(1)のSEM画像撮影を行った。結果を図2に示す。
【0130】
〔比較例2〕
水溶液重合で吸水性樹脂組成物を作製した。具体的には、アクリル酸37.1g(0.51モル)、1質量%ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量523)水溶液1.02g(0.0195ミリモル)、および1質量%ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム0.23gを250mlポリプロプレン樹脂製の容器中で混合して、アクリル酸水溶液を作製した。このアクリル酸水溶液をマグネティックスターラーで攪拌しながら、多糖類としてトウモロコシデンプン(三和澱粉工業(株)製、三和コーンスターチY、体積平均粒子径15μm)15.0gを加えて分散させて単量体分散液を作製した。その後、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液29.7g(0.36モル)と水25.0gとを混合して42℃まで昇温した水酸化ナトリウム水溶液と、前記の単量体分散液とを混合した。これにより、混合液は中和熱で103℃まで直ぐに昇温した。この昇温により、分散していたトウモロコシデンプンが溶解したが、単量体水溶液の粘度が急激に増大し、マグネティックスターラーによる攪拌ができなくなった。
【0131】
この単量体水溶液の温度が95℃まで低下したところで、重合開始剤として2質量%過硫酸ナトリウム水溶液2.6gを加えた。過硫酸ナトリウム水溶液の添加により、3秒後に重合が開始した。5分後に含水重合体を取り出したが、重合開始剤が均一に混合できなかったため、重合した部分と単量体のまま残っている部分がまだらになった含水ゲル状重合体が得られた。この含水ゲル状重合体をはさみで約1~5mmサイズの小片に裁断したのち金網に載せ150℃で30分間熱風乾燥した。乾燥物をロールミルで粉砕し、目開き850μmのJIS標準篩と目開き150μmのJIS標準篩を使用して分級することにより比較吸水性樹脂組成物(2)を得た。比較吸水性樹脂組成物(2)の質量平均粒子径は472μm、CRC(60分)は27.1g/g、黄色度YI=35.12であった。また、ダメージ付与後の微粉発生割合は5.2質量%であった。
【0132】
[まとめ]
比較例1より、多糖類を添加せずに逆相懸濁重合を行った場合には、粒子径が150μm以下の微細な吸水性樹脂組成物(微紛)しか得られないことが分かる。また比較例2より、単量体水溶液に高濃度の多糖類を加熱溶解させて水溶液重合を行った場合は、激しい増粘により単量体水溶液の取り扱い性や開始剤の混合性が悪化し、重合不良を引き起こす可能性があることが分かる。さらに生産性を上げるために高温乾燥を選択した場合、短時間であっても、急激に着色し、吸水倍率も低下することが分かる。一方、実施例1の製法によれば、微粉が少なく着色も抑制された、多糖類を含有する吸水性樹脂組成物を、低コストで、生産性が高く、且つ、操作性の良い簡便な方法で得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の実施の一形態に係る吸水性樹脂組成物は、紙おむつ、生理用ナプキン、成人向け失禁用製品(失禁パッド)、ペット用シート等の衛生材料(衛生用品)、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な吸水性物品において好適に利用することができる。
図1
図2
図3