(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド及びその製造方法、並びにサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B41J2/335 101D
(21)【出願番号】P 2020201847
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】木▲瀬▼ 信和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明良
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202444(JP,A)
【文献】特開2007-230082(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110509672(CN,A)
【文献】特開平07-001755(JP,A)
【文献】米国特許第05357271(US,A)
【文献】実開平04-000551(JP,U)
【文献】中国実用新案第203093333(CN,U)
【文献】米国特許第05077564(US,A)
【文献】特開2009-292119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体と、
前記絶縁体上の放熱層と、
前記絶縁体上及び前記放熱層上の蓄熱層と、
前記蓄熱層上の発熱抵抗体と、を備え、
前記放熱層は、前記蓄熱層と異なる材料を含み、
前記放熱層の少なくとも一部及び前記発熱抵抗体は、前記放熱層の厚さ方向から視て互いに重畳して
おり、
前記放熱層及び前記蓄熱層が配置された側の前記絶縁体の表面から前記発熱抵抗体が配置された側の前記蓄熱層の表面までの膜厚において、前記放熱層上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚と、前記絶縁体上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚とが等しい、
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記放熱層の熱抵抗は、前記絶縁体の熱抵抗より小さい、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記放熱層の熱抵抗は、前記蓄熱層の熱抵抗より小さい、請求項1又は2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記放熱層は、前記絶縁体と接している、請求項1~3のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記放熱層は、前記蓄熱層と接している、請求項1~4のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記放熱層は、電気的にフローティング状態である、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記放熱層は、金、銀、銅、アルミニウム、白金からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む金属、又は絶縁物である、請求項1~6のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記絶縁体は、基板である、請求項1~7のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記基板は、セラミックからなる、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記絶縁体の平均面粗さは、0μmより大きく10μm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記蓄熱層上にあり、かつ、前記発熱抵抗体と電気的に接続している個別電極と、
前記蓄熱層上にあり、かつ、前記発熱抵抗体と電気的に接続し、前記個別電極と離間し、かつ、前記個別電極と対向している共通電極と、をさらに備える、請求項1~10のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【請求項13】
絶縁体上に放熱層を形成し、
前記絶縁体上及び前記放熱層上に蓄熱層を形成し、
前記蓄熱層上に発熱抵抗体を形成し、
前記放熱層は、前記蓄熱層と異なる材料を含み、
前記放熱層の少なくとも一部及び前記発熱抵抗体は、前記放熱層の厚さ方向から視て互いに重畳して
おり、
前記放熱層及び前記蓄熱層が配置された側の前記絶縁体の表面から前記発熱抵抗体が配置された側の前記蓄熱層の表面までの膜厚において、前記放熱層上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚と、前記絶縁体上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚とが等しい、
サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記放熱層の熱抵抗は、前記絶縁体の熱抵抗より小さい、請求項13に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記放熱層の熱抵抗は、前記蓄熱層の熱抵抗より小さい、請求項13又は14に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記絶縁体は、基板である、請求項13~15のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記基板は、セラミックからなる、請求項16に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記絶縁体の平均面粗さは、0μmより大きく10μm以下である、請求項13~17のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記放熱層上の前記蓄熱層の膜厚は、前記放熱層の膜厚よりも薄い、請求項1~11のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項20】
前記放熱層上の前記蓄熱層の膜厚は、前記放熱層の膜厚よりも薄い、請求項13~18のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、サーマルプリントヘッド及びその製造方法、並びにサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドは、例えば、ヘッド基板上に主走査方向に並ぶ多数の発熱部を備えている。各発熱部は、ヘッド基板にグレーズ層を介して形成した抵抗体層上に、その一部を露出させるようにして、共通電極と個別電極をそれらの端部を対向させて積層することにより形成されている。共通電極と個別電極間を通電することにより、上記抵抗体層の露出部(発熱部)がジュール熱により発熱する。当該熱を印刷媒体(バーコードシートやレシートを作成するための感熱紙等)に伝えることにより、印刷媒体への印刷がなされる。
【0003】
近年、トレーサビリティが重要視され、製造所固有記号や製造年月日、消費期限など、あらゆる情報がラベルやレシートなどの印刷媒体に記載されるようになり、さらに食料品などでは、栄養成分表示の義務化やアレルギー表示の変更など、物流分野における印字情報量及びラベル印刷量が増加傾向にある。
【0004】
増加傾向にある大量の印刷を可能にするためには、サーマルプリントヘッドが高速且つ高精細で印刷媒体に情報を印字する必要がある。高速且つ高精細で印刷するためには、サーマルプリントヘッドの良好な熱応答性が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の一態様は、良好な熱応答性を有するサーマルプリントヘッドを提供する。また、本実施形態の他の一態様は、当該サーマルプリントヘッドの製造方法を提供する。さらに、本実施形態の他の一態様は、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態は、少なくとも一部が発熱抵抗体と互いに重畳している放熱層を備えることにより、熱抵抗が小さい放熱層からの放熱が盛んになり、良好な熱応答性を有するサーマルプリントヘッドを得ることができる。本実施形態の一態様は以下のとおりである。
【0008】
本実施形態の一態様は、絶縁体上の放熱層と、前記絶縁体上及び前記放熱層上の蓄熱層と、前記蓄熱層上の発熱抵抗体と、を備え、前記放熱層は、前記蓄熱層と異なる材料を含み、前記放熱層の少なくとも一部及び前記発熱抵抗体は、前記放熱層の厚さ方向から視て互いに重畳しており、前記放熱層及び前記蓄熱層が配置された側の前記絶縁体の表面から前記発熱抵抗体が配置された側の前記蓄熱層の表面までの膜厚において、前記放熱層上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚と、前記絶縁体上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚とが等しい、サーマルプリントヘッドである。
【0009】
また、本実施形態の他の一態様は、上記サーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタである。
【0010】
また、本実施形態の他の一態様は、絶縁体と、前記絶縁体上に放熱層を形成し、前記絶縁体上及び前記放熱層上に蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に発熱抵抗体を形成し、前記放熱層は、前記蓄熱層と異なる材料を含み、前記放熱層の少なくとも一部及び前記発熱抵抗体は、前記放熱層の厚さ方向から視て互いに重畳しており、前記放熱層及び前記蓄熱層が配置された側の前記絶縁体の表面から前記発熱抵抗体が配置された側の前記蓄熱層の表面までの膜厚において、前記放熱層上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚と、前記絶縁体上に前記蓄熱層が配置されている部分の前記膜厚とが等しい、サーマルプリントヘッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態によれば、良好な熱応答性を有するサーマルプリントヘッドを提供することができる。また、当該サーマルプリントヘッドの製造方法を提供することができる。さらに、当該サーマルプリントヘッドを備えたサーマルプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドを説明する部分斜視図である。
【
図2】
図2は、主走査方向Xにおける
図1のA-A線に沿う部分断面図である。
【
図3】
図3は、副走査方向Yにおける
図1のB-B線に沿う部分断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その1)。
【
図5】
図5は、主走査方向Xにおける
図4のA-A線に沿う部分断面図である。
【
図6】
図6は、副走査方向Yにおける
図4のB-B線に沿う部分断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その2)。
【
図8】
図8は、主走査方向Xにおける
図7のA-A線に沿う部分断面図である。
【
図9】
図9は、副走査方向Yにおける
図7のB-B線に沿う部分断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その3)。
【
図13】
図13は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その4)。
【
図16】
図16は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を説明する部分斜視図である(その5)。
【
図19】
図19は、副走査方向Yにおける本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの変形例1の部分断面図である。
【
図20】
図20は、副走査方向Yにおける本実施形態に係るサーマルプリントヘッドの変形例2の部分断面図である。
【
図21】
図21は、本実施形態に係るサーマルプリントヘッドを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
具体的な本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0016】
<1> 絶縁体と、前記絶縁体上の放熱層と、前記絶縁体上及び前記放熱層上の蓄熱層と、前記蓄熱層上の発熱抵抗体と、を備え、前記放熱層は、前記蓄熱層と異なる材料を含み、前記放熱層の少なくとも一部及び前記発熱抵抗体は、前記放熱層の厚さ方向から視て互いに重畳している、サーマルプリントヘッド。
【0017】
<2> 前記放熱層の熱抵抗は、前記絶縁体の熱抵抗より小さい、<1>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0018】
<3> 前記放熱層の熱抵抗は、前記蓄熱層の熱抵抗より小さい、<1>又は<2>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0019】
<4> 前記放熱層は、前記絶縁体と接している、<1>~<3>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0020】
<5> 前記放熱層は、前記蓄熱層と接している、<1>~<4>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0021】
<6> 前記放熱層は、電気的にフローティング状態である、<1>~<5>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0022】
<7> 前記放熱層は、金、銀、銅、アルミニウム、白金からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む金属、又は絶縁物である、<1>~<6>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0023】
<8> 前記絶縁体は、基板である、<1>~<7>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0024】
<9> 前記基板は、セラミックからなる、<8>に記載のサーマルプリントヘッド。
【0025】
<10> 前記絶縁体の表面の平均面粗さは、0μmより大きく10μm以下である、<1>~<9>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0026】
<11> 前記蓄熱層上にあり、かつ、前記発熱抵抗体と電気的に接続している個別電極と、前記蓄熱層上にあり、かつ、前記発熱抵抗体と電気的に接続し、前記個別電極と離間し、かつ、前記個別電極と対向している共通電極と、をさらに備える、<1>~<10>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッド。
【0027】
<12> <1>~<11>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタ。
【0028】
<13> 絶縁体上に放熱層を形成し、前記絶縁体上及び前記放熱層上に蓄熱層を形成し、前記蓄熱層上に発熱抵抗体を形成し、前記放熱層は、前記蓄熱層と異なる材料を含み、前記発熱抵抗体及び前記放熱層の少なくとも一部は、前記放熱層の厚さ方向から視て互いに重畳している、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【0029】
<14> 前記放熱層の熱抵抗は、前記絶縁体の熱抵抗より小さい、<13>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0030】
<15> 前記放熱層の熱抵抗は、前記蓄熱層の熱抵抗より小さい、<13>又は<14>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0031】
<16> 前記放熱層は、前記絶縁体と接している、<13>~<15>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0032】
<17> 前記放熱層は、前記蓄熱層と接している、<13>~<16>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0033】
<18> 前記絶縁体は、基板である、<13>~<17>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0034】
<19> 前記基板は、セラミックからなる、<18>に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0035】
<20> 前記絶縁体の平均面粗さは、0μmより大きく10μm以下である、<13>~<19>のいずれか1項に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【0036】
<サーマルプリントヘッド>
本実施形態に係るサーマルプリントヘッドについて図面を用いて説明する。
【0037】
図1は、サーマルプリントヘッドを示す部分斜視図である。
図2は、主走査方向Xにおける
図1のA-A線に沿う部分断面図である。
図3は、副走査方向Yにおける
図1のB-B線に沿う部分断面図である。
図1~
図3は、サーマルプリントヘッドの一部分(1個のサーマルプリントヘッドに相当)を示しており、本実施形態では、この1個のサーマルプリントヘッドを個片状のサーマルプリントヘッド100とする。サーマルプリントヘッド100は、絶縁体である基板15と、基板15上の放熱層30と、基板15上及び放熱層30上の蓄熱層33と、蓄熱層33上の個別電極31と、個別電極31と離間し、かつ、個別電極31と対向している蓄熱層33上の共通電極32と、蓄熱層33上、個別電極31上、及び共通電極32上の発熱抵抗体40と、個別電極31、共通電極32、及び発熱抵抗体40を覆う保護膜34と、を備える。放熱層30の少なくとも一部及び発熱抵抗体40は、後述する放熱層30の厚さ方向から視て互いに重畳している。また、発熱抵抗体40は個別電極31及び共通電極32を流れる電流により発熱する複数の発熱抵抗部41を含む。複数の発熱抵抗部41は、個別電極31及び共通電極32の間において、各発熱抵抗部41が独立して形成されている。
図1は、複数の発熱抵抗部41を省略している。複数の発熱抵抗部41は、蓄熱層33上において直線状に配置されている。また、
図1は、理解を容易にするため、保護膜34を省略している。
【0038】
本実施形態において、複数の発熱抵抗部41が直線状に延びる方向を主走査方向X、主走査方向Xに対して垂直で、かつ、基板15の上面に対して平行な方向を副走査方向Y、基板15の厚さに対応する方向を厚さ方向Zとする。言い換えれば、厚さ方向Zは、主走査方向X及び副走査方向Yのそれぞれに対して垂直な方向である。
【0039】
基板15は、絶縁体であり、例えば、セラミックからなる。セラミックとしては、例えば、アルミナ等を用いることができる。放熱性の観点から、比較的、熱伝導率が大きいアルミナを基板15に用いることが好ましい。また、後述するが、一様な分布の熱応答性を得るために、絶縁体である基板15の平均面粗さを小さくすることが好ましく、基板15の平均面粗さが、例えば、0μmより大きく10μm以下であることが好ましく、0μmより大きく1μm以下であることがより好ましい。なお、平均面粗さは、例えば、JIS B 0601:2013やISO 25178に準拠して求めることができる。
【0040】
アルミナ等からなる基板15上には、低熱抵抗材料からなる放熱層30が積層されている。放熱層30は、後に形成される蓄熱層33、個別電極31、及び共通電極32等の形成時の焼成処理などの熱処理等の温度に対する耐熱性を有することが好ましい。放熱層30は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む金属ペーストを用いて形成されることが好ましく、銀を含む金属ペーストを用いて形成されることがより好ましく、銀からなる金属ペーストを用いて形成されることがさらに好ましい。また、放熱層30は、絶縁物であってもよい。放熱層30の熱抵抗は、後述の蓄熱層33の熱抵抗より小さいことが好ましく、また、基板15の熱抵抗より小さいことが好ましい。熱抵抗が小さい放熱層30を設けることにより、放熱層30からの放熱が盛んになり、良好な熱応答性を得ることができる。放熱層30の熱抵抗は、例えば、1×10-6~1m2K/Wであると好ましい。
【0041】
また、放熱層30は、電源と接続されている状態であってもよいし、接地されている状態であってもよいし、電気的にフローティング状態であってもよい。放熱層30が電気的にフローティング状態であると、放熱特性を阻害する可能性のある通電加熱などが生じなく、良好な熱応答性を維持することが可能となるため好ましい。
【0042】
基板15の表面に接して金属ペーストを用いて放熱層30を形成すると、基板15の表面に凹凸がある場合、流動性が高い金属ペーストが基板15の凹凸の細部にまで入り込み、良好な密着性を得ることができるとともに金属ペーストは流動性が高いため、金属ペーストを焼成して形成される放熱層30の表面の平均面粗さは、基板15の表面の平均面粗さより小さくなる。
【0043】
後述の蓄熱層33が形成される表面の平均面粗さが大きいと、蓄熱層33の厚さにバラツキが生じてしまい、一様な分布の熱応答性を得ることができなくなってしまうが、本実施形態は、放熱層30を設けて盛んに放熱させるだけでなく、放熱層30の表面の平均面粗さが小さいため、放熱層30上に形成される蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制し、一様な分布の熱応答性を得ることが可能となる。
【0044】
基板15及び放熱層30の上には、熱を蓄積する機能を有する蓄熱層33(グレーズ層ともいう)が積層されている。蓄熱層33は、後述の発熱抵抗部41から発生する熱を蓄積する。熱応答性の観点から、蓄熱層33は放熱層30と接していることが好ましい。蓄熱層33は、絶縁性材料を用いることができ、例えば、ガラスの主成分である酸化シリコン、窒化シリコンを用いることができる。蓄熱層33の厚さ方向Zにおける寸法は、特に限定されず、例えば、5~100μmであり、好ましくは10~30μmである。
【0045】
蓄熱層33上には、金属ペーストから形成される、個別電極31及び共通電極32が設けられている。個別電極31及び共通電極32は、金属ペーストをスクリーン印刷法等によって塗布し、その後焼成し、電極パターンを形成することにより得られる。
【0046】
金属ペーストとしては、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金等の金属粒子などを含むペーストを用いることができる。金属の特性及びイオン化傾向の観点から、銅、銀、白金、及び金であることが好ましく、金属の特性、イオン化傾向及びコスト低減の観点から、銅及び銀であることがより好ましい。また、金属ペーストに含まれる溶剤は、金属粒子を均一に分散させる機能を有し、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、脂環族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等の1種または2種以上を混合したものなどが挙げられるがこれに限られない。
【0047】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、炭酸ジメチル等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンベンゼン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサンノン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等、これらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等や、これらモノエーテル類の酢酸エステル等である。
【0048】
脂肪族系溶剤としては、例えば、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。脂環族系溶剤としては、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、テトラリン等が挙げられる。アルコール系溶剤(上述のグリコールエーテル系溶剤を除く)としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0049】
金属ペーストは、必要に応じて、分散剤、表面処理剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、有機顔料、無機顔料、消泡剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤、イオン捕捉剤等を含有することができる。
【0050】
各個別電極31は、概ね副走査方向Yに延伸する帯状をしており、それらは、互いに導通していない。そのため、各個別電極31には、サーマルプリントヘッドが組み込まれたプリンタが使用される際に、個別に、互いに異なる電位が付与されうる。各個別電極31の端部には、図示しない個別パッド部が接続されている。
【0051】
共通電極32は、サーマルプリントヘッドが組み込まれたプリンタが使用される際に複数の個別電極31に対して電気的に逆極性となる部位である。共通電極32は、櫛歯部32Aと、櫛歯部32Aを共通につなげる共通部32Bと、を有する。共通部32Bは基板15の上方側の縁に沿って主走査方向Xに形成される。なお、副走査方向Yにおいて、個別電極31から視て共通電極32がある方向を副走査方向Yの上方側とする。各櫛歯部32Aは、副走査方向Yに延伸する帯状をしている。各櫛歯部32Aの先端部は、隣接する2つの個別電極31の先端部の間の領域に位置し、それら2つの個別電極31に対して主走査方向Xに沿って所定間隔を隔てて対向させられている。
【0052】
各櫛歯部32Aの先端部は、各個別電極31の先端部に対して副走査方向Yに沿って所定間隔を隔てて対向させられていてもよい。この場合には、櫛歯部32Aの先端部と個別電極31の先端部とが対向する領域においてのみ発熱抵抗部41が形成されることが好ましい。言い換えれば、主走査方向Xにおいて、櫛歯部32Aの先端部と個別電極31の先端部とが対向する領域以外には、発熱抵抗部41が配置されていないことが好ましい。
【0053】
発熱抵抗体40は、個別電極31及び共通電極32と電気的に接続しており、個別電極31及び共通電極32からの電流が流れた部分が発熱する。具体的には、外部から駆動IC等に送信される印字信号に従って発熱用電圧が個別に印加される発熱抵抗体40が、選択的に発熱させられる。発熱抵抗部41は、印字信号に従って個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。このように発熱することによって印字ドットが形成される。発熱抵抗体40は、配線を構成する材料よりも抵抗率が高い材料を用い、例えば、酸化ルテニウムなどを用いることができる。発熱抵抗体40は、スクリーン印刷又はディスペンサによって供給された抵抗体ペーストを焼成することによって形成することができる。本実施形態では、発熱抵抗体40の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、1~10μm程度である。
【0054】
また、放熱層30の少なくとも一部及び発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)は、互いに重畳しており、発熱抵抗部41で発生した熱が放出される経路を短くし、蓄熱層33及び放熱層30を介して効率よく放熱することができる。また、本実施形態では、発熱抵抗体40の全体及び放熱層30が互いに重畳しているがこれに限られず、例えば、放熱層30の全体及び発熱抵抗体40が互いに重畳している構成でもよいし、放熱層30の端部のみが発熱抵抗体40と重畳している構成でもよい。
【0055】
蓄熱層33、個別電極31、共通電極32、及び発熱抵抗体40等は、保護膜34で覆われており、蓄熱層33、個別電極31、共通電極32、及び発熱抵抗体40等を摩耗、腐食、酸化等から保護する。保護膜34は絶縁性の材料を用いることができ、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34はガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。保護膜34の厚さ方向Zにおける寸法は、例えば、3~8μm程度である。
【0056】
ここで、本実施形態のサーマルプリントヘッド100の製造方法について説明する。
【0057】
図4~
図6に示すように、まず、基板15を用意し、基板15上に放熱層30を形成する。放熱層30は、例えば、金属ペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、塗布された金属ペーストを乾燥させ、その後、焼成処理を行うことにより形成することができる。焼成処理は、例えば、800~1200℃で10分~1時間行う。
【0058】
放熱層30は、後に形成される蓄熱層33、個別電極31、及び共通電極32等の形成時の焼成処理などの熱処理等の温度に対する耐熱性を有することが好ましい。また、放熱層30は、熱抵抗が小さいため、サーマルプリントヘッドの放熱性を向上させる機能を有する。
【0059】
次に、
図7~
図9に示すように、基板15上及び放熱層30上に蓄熱層33を形成する。蓄熱層33は、例えば、ガラスペーストをスクリーン印刷等により塗布し、塗布されたガラスペーストを乾燥させ、その後、焼成処理を行うことにより形成することができる。焼成処理は、例えば、800~1200℃で10分~1時間行う。
【0060】
蓄熱層33の熱は、熱抵抗が小さい放熱層30を介して放熱される。また、放熱層30の表面の平均面粗さは小さいため、蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制し、一様な分布の熱応答性を得ることが可能となる。
【0061】
次に、
図10~
図12に示すように、蓄熱層33上に個別電極31及び共通電極32を形成する。個別電極31及び共通電極32は、上述の金属ペーストをスクリーン印刷等によって塗布し、その後焼成し、電極パターンを形成することによって得ることができる。
【0062】
次に、
図13~
図15に示すように、複数の個別電極31上及び共通電極32上に発熱抵抗体40(発熱抵抗部41)を厚膜形成技術によって形成する。発熱抵抗体40は、複数の個別電極31及び共通電極32と電気的に接続されている。発熱抵抗体40は、スクリーン印刷又はディスペンサによって供給された抵抗体ペーストを焼成することによって形成される。抵抗体ペーストは、例えば、酸化ルテニウムを含む。
【0063】
次に、
図16~
図18に示すように、保護膜34を形成する。保護膜34は、例えば、非晶質ガラスからなる。保護膜34はガラスペーストを厚膜印刷した後、焼成することにより形成される。
【0064】
以上の工程により、本実施形態のサーマルプリントヘッドを製造することができる。
【0065】
本実施形態によれば、熱抵抗が小さい放熱層30を設けることにより、蓄熱層33の熱を効率よく放熱することができ、良好な熱応答性を得ることができる。また、本実施形態によれば、放熱層30の表面の平均面粗さは小さいため、蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制し、一様な分布の熱応答性を得ることが可能となる。
【0066】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【0067】
例えば、本実施形態のサーマルプリントヘッド100の変形例1であるサーマルプリントヘッド100Aは、
図19に示すように、基板15及び放熱層30の間に絶縁体である絶縁膜20を設ける構成としてもよい。絶縁膜20の表面の平均面粗さはより小さい方が絶縁膜20上方に形成される蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制できるため好ましい。絶縁膜20の表面の平均面粗さを小さくするために、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等で平坦化処理してもよい。絶縁膜20は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコンを用いることができる。基板15の表面の平均面粗さが大きくても平均面粗さが小さい絶縁膜20を設けることにより、蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制でき、より一様な分布の熱応答性を得ることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態のサーマルプリントヘッド100の変形例2であるサーマルプリントヘッド100Bは、
図20に示すように、放熱層30及び蓄熱層33の間に絶縁膜25を設ける構成としてもよい。絶縁膜25の表面の平均面粗さはより小さい方が絶縁膜25上に形成される蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制できるため好ましい。絶縁膜25は、例えば、原子レベルでコントロールができ、極めて緻密な膜を形成できるALD(Atomic layer deposition)法等により形成することで表面の平均面粗さを小さくすることができる。絶縁膜25は、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムを用いることができる。基板15の表面の平均面粗さが大きくても平均面粗さが小さい絶縁膜25を設けることにより、蓄熱層33の厚さのバラツキを抑制でき、より一様な分布の熱応答性を得ることが可能となる。
【0069】
また、図示しないがサーマルプリントヘッド100Bに上述の絶縁膜20を設ける構成であってもよい。
【0070】
<サーマルプリンタ>
本実施形態のサーマルプリントヘッド(例えば、サーマルプリントヘッド100)は、さらに
図21に示すように、基板15(基板15上の放熱層30、蓄熱層33等は図示せず)、接続基板5、放熱部材8、駆動IC7と、複数のワイヤ81と、樹脂部82と、コネクタ59と、を備える。基板15及び接続基板5は、放熱部材8上に副走査方向Yに隣接させて搭載されている。基板15には、主走査方向Xに配列される複数の発熱抵抗部41が形成されている。当該発熱抵抗部41は、接続基板5上に搭載された駆動IC7により選択的に発熱するように駆動される。当該発熱抵抗部41は、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号にしたがって、プラテンローラ91により発熱抵抗部41に押圧される感熱紙等の印刷媒体92に印字を行う。
【0071】
接続基板5は、例えば、プリント配線基板を用いることができる。接続基板5は、基材層と図示しない配線層とが積層された構造を有する。基材層は、例えば、ガラスエポキシ樹脂などを用いることができる。配線層は、例えば、銅、銀、パラジウム、イリジウム、白金、及び金等の金属などを用いることができる。
【0072】
放熱部材8は、基板15からの熱を放散させる機能を有する。放熱部材8には、基板15及び接続基板5が取り付けられている。放熱部材8は、例えば、アルミニウムなどの金属を用いることができる。
【0073】
ワイヤ81は、例えば、金などの導体を用いることができる。ワイヤ81は複数あり、その一部はボンディングにより、駆動IC7と各個別電極とが導通している。また、他のワイヤ81のうちの一部はボンディングにより、接続基板5における配線層を介して、駆動IC7とコネクタ59とが導通している。
【0074】
樹脂部82は、例えば、黒色の樹脂を用いることができる。樹脂部82としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを使用することができる。樹脂部82は、駆動IC7及び複数のワイヤ81等を覆っており、駆動IC7及び複数のワイヤ81を保護している。コネクタ59は、接続基板5に固定されている。コネクタ59には、サーマルプリントヘッドの外部からサーマルプリントヘッドへ電力を供給し、及び、駆動IC7を制御するための配線が接続される。
【0075】
本実施形態のサーマルプリンタは、上述のサーマルプリントヘッドを備えることができる。サーマルプリンタは、副走査方向Yに沿って搬送される印刷媒体に印刷を施す。通常、印刷媒体は、コネクタ59の側から発熱抵抗部41の側に向かって搬送される。印刷媒体としては、例えば、バーコードシートやレシートを作成するための感熱紙等が挙げられる。
【0076】
サーマルプリンタは、例えば、サーマルプリントヘッド100と、プラテンローラ91と、主電源回路と、計測用回路と、制御部と、を備える。プラテンローラ91は、サーマルプリントヘッド100に正対している。
【0077】
主電源回路は、サーマルプリントヘッド100における複数の発熱抵抗部41に電力を供給する。計測用回路は、複数の発熱抵抗部41の各々の抵抗値を計測する。計測用回路は、例えば、印刷媒体への印字を行わない時に、複数の発熱抵抗部41の各々の抵抗値を計測する。これにより、発熱抵抗部41の寿命や故障した発熱抵抗部41の有無が確認されうる。制御部は、主電源回路及び計測用回路の駆動状態を制御する。制御部は、複数の発熱抵抗部41の各々の通電状態を制御する。計測用回路は省略される場合がある。
【0078】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッド100外の装置と通信するために用いられる。コネクタ59を介して、サーマルプリントヘッド100は、主電源回路及び計測用回路に電気的に接続している。コネクタ59を介して、サーマルプリントヘッド100は、制御部に電気的に接続している。
【0079】
駆動IC7は、コネクタ59を介して、制御部から信号を受ける。駆動IC7は制御部から受けた当該信号に基づき、複数の発熱抵抗部41の各々の通電状態を制御する。具体的には、駆動IC7は、複数の個別電極を選択的に通電させることにより、複数の発熱抵抗部41のいずれかを任意に発熱させる。
【0080】
また、本実施形態のサーマルプリントヘッドは、上述の構成に限られず、例えば、接続基板5を設けずに駆動IC7を直接基板15に搭載させる構成であってもよいし、フリップチップ実装によりワイヤ81を設けない構成であってもよいし、放熱部材8を設けない構成であってもよい。
【0081】
次に、サーマルプリンタの使用方法について説明する。
【0082】
印刷媒体への印刷時には、コネクタ59に、主電源回路から、電位V1として電位v11が付与される。この場合、複数の発熱抵抗部41が選択的に通電し、発熱する。当該熱を印刷媒体に伝えることにより、印刷媒体への印刷がなされる。上述のとおり、コネクタ59に、主電源回路から、電位V1として電位v11が付与されている場合、複数の発熱抵抗部41の各々への通電経路が確保されている。
【0083】
印刷媒体への印字を行わない時には、各発熱抵抗部41の抵抗値を計測する。当該計測時には、主電源回路からコネクタ59に電位は付与されない。各発熱抵抗部41の抵抗値の計測時には、コネクタ59に、計測用回路から、電位V1として電位v12が付与される。この場合、複数の発熱抵抗部41が順番に(例えば、主走査方向Xの端に位置する発熱抵抗部41から順番に)通電する。発熱抵抗部41に流れる電流の値および電位v12に基づき、計測用回路は、各発熱抵抗部41の抵抗値を計測する。上述のとおり、コネクタ59に、主電源回路から、電位V1として電位v11が付与されている場合、複数の発熱抵抗部41の各々への通電経路が実質的に遮断される。これにより、計測用回路によって、より正確に各発熱抵抗部41の抵抗値を計測でき、発熱抵抗部41の寿命や故障した発熱抵抗部41の有無が確認されうる。
【0084】
本実施形態によれば、良好な熱応答性を有するサーマルプリンタを得ることができる。
【符号の説明】
【0085】
5 接続基板
7 駆動IC
8 放熱部材
15 基板
20、25 絶縁膜
30 放熱層
31 個別電極
32 共通電極
32A 櫛歯部
32B 共通部
33 蓄熱層
34 保護膜
40 発熱抵抗体
41 発熱抵抗部
59 コネクタ
81 ワイヤ
82 樹脂部
91 プラテンローラ
92 印刷媒体
100、100A、100B サーマルプリントヘッド