(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】地山固結用薬液組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 17/30 20060101AFI20241219BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20241219BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09K17/30 P
C09K17/18 P
E02D3/12 101
(21)【出願番号】P 2020208167
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】本村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 智裕
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-066774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00 - 17/52
E02D 3/12
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級及び/又は2級アミノ基含有化合物
とポリオールとを必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地山固結用薬液組成物にして、
前記B液が、前記ポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を少なくとも含有しており、
前記A液中における、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)と、前記B液中におけるイソシアネート基の総モル数(Y)との比(X/Y)が、0.3~1.8である、
ことを特徴とする地山固結用薬液組成物。
【請求項2】
前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物が、1分子内に2つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するポリアミン化合物である請求項1に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項3】
前記ポリアミン化合物が芳香環を有している請求項2に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項4】
前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物がプレポリマーであり、且つ、5質量%未満の残留モノマー含有率である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項5】
前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーが、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選ばれた脂肪族系ポリイソシアネート化合物より誘導されたアダクト体、ビウレット体、アロファネート体及びイソシアヌレート体の何れかである請求項4に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項6】
前記A液及び/又はB液に、更に難燃剤が含有せしめられている請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項7】
前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物と前記ポリイソシアネートとの総量が、組成物全量の60質量%以上を占める請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【請求項8】
前記A液及び前記B液が、それぞれ、25℃の温度下において6000mPa・s以下の粘度を有している請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の地山固結用薬液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山固結用薬液組成物に係り、特に、高強度で且つ柔軟性に優れ、靭性の高い固結体を与え得る、反応活性に優れた、環境汚染の少ない地山固結用薬液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地山の不安定な岩盤や地盤の安定強化のための地盤改良用途や、人工構造物のクラックや空隙を充填する空洞充填用途において採用される方策の一つとして、無機乃至有機系グラウトを注入して、地山等を固結せしめる方法が知られており、例えば、特開平4-283290号公報においては、そのようなグラウトの一つとして、ケイ酸ソーダ水溶液(A)と、ポリイソシアネート及び、ポリイソシアネートとは反応しないが、ケイ酸ソーダ水溶液で加水分解されて、ケイ酸ソーダ水溶液及び/又はポリイソシアネートと反応する反応性希釈剤からなるポリイソシアネート組成物(B)とからなる注入薬液組成物が、知られている。また、特開平5-78667号公報においては、岩盤固結用薬液として、水及びケイ酸のアルカリ金属塩を主成分とするA液と、イソシアネートプレポリマーを主成分とするB液とを組み合わせてなる二液タイプの発泡ウレタン樹脂が明らかにされ、更に、特開2016-175982号公報においては、水ガラスとポリオールとを配合し、更に水を加えて調製されるA液と、ポリイソシアネートを必須成分とするB液とからなる二液型地山固結用薬液において、かかるA液中の水含有量を規制し、また、水とポリオールとが所定割合となるように調製すると共に、分散剤を、更に添加してなる構成のものが、提案されている。
【0003】
そして、それら固結用薬液におけるB液の主成分であるポリイソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種の有機系イソシアネート化合物やその変性体(プレポリマー)が使用され得るとされているのであるが、反応活性や得られる固結体の強度等の観点から、実用的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、ポリメリックMDI、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のポリイソシアネート化合物が用いられているのである。けだし、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等の脂肪族系のポリイソシアネート化合物をポリイソシアネート成分として用いて構成したB液を、前述の如きA液と組み合わせて、固結用薬液を構成した場合にあっては、それらA液とB液との反応が遅く、そのために、大量の漏水や湧水を止水する際に、注入した薬液の一部が漏水や湧水と共に流出することで、水の白濁や泡立ち等の問題が惹起されて、環境に悪影響をもたらすようになることに加えて、A液とB液の反応によって形成される固結体の強度も充分ではなく、そのために、地山の安定強化や空洞充填の目的に充分に応え得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-283290号公報
【文献】特開平5-78667号公報
【文献】特開2016-175982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の如き事情を背景にして、本発明者らが、ポリイソシアネートとして脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用いてなる固結用薬液について種々検討した結果、かかる脂肪族系ポリイソシアネート化合物に対して、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を、所定の割合にて組み合わせて用いることによって、上述の如き脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用いた際における問題が、悉く解消され得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0006】
すなわち、本発明の解決すべき課題とするところは、反応活性に優れ、環境汚染の少ない地山固結用薬液組成物を提供することにあり、また他の課題とするところは、高強度で且つ柔軟性に優れ、靭性の高い固結体を形成し得る、漏水や湧水等の水に接触した際の白濁化や泡立ちの如き問題を惹起することのない、地山固結用薬液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて理解されるものであることが、考慮されるべきである。
【0008】
先ず、本発明の第一の態様は、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物とポリオールとを必須の成分として含有するA液と、ポリイソシアネートを必須の成分として含有するB液とからなる地山固結用薬液組成物にして、前記B液が、前記ポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を少なくとも含有しており、前記A液中における、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)と、前記B液中におけるイソシアネート基の総モル数(Y)との比(X/Y)が、0.3~1.8である、ことを特徴とする地山固結用薬液組成物にある。
【0009】
また、本発明の第二の態様は、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物として、1分子内に2つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するポリアミン化合物を用いることにある。
【0010】
さらに、本発明の第三の態様は、前記ポリアミン化合物が芳香環を有していることにある。
【0011】
加えて、本発明の第四の態様は、前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物として、プレポリマーであり、且つ、5質量%未満の残留モノマー含有率であるものを用いることにある。
【0012】
また、本発明の第五の態様は、前記脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーが、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる群より選ばれた脂肪族系ポリイソシアネート化合物より誘導されたアダクト体、ビウレット体、アロファネート体及びイソシアヌレート体の何れかであることである。
【0013】
さらに、本発明の第六の態様は、前記A液及び/又はB液に、更に難燃剤が含有せしめられていることにある。
【0014】
更にまた、本発明の第七の態様は、前記1級及び/又は2級アミノ基含有化合物と前記ポリイソシアネートとの総量が、組成物全量の60質量%以上を占めるように構成されている。
【0015】
そして、本発明に従う第八の態様は、前記A液及び前記B液が、それぞれ、25℃の温度下において6000mPa・s以下の粘度を有していることにある。
【発明の効果】
【0016】
上記の如き、本発明に従う地山固結用薬液組成物の構成によれば、以下に列挙せる如き各種の効果が、奏され得ることとなる。
(1)反応活性に優れ、環境汚染の少ない地山固結用薬液が提供され、そのような薬液の使用によって、高強度で且つ柔軟性に優れた、靱性の高い固結体が、有利に形成され得ることとなる。
(2)地山に対して薬液を注入した後、直ちに、硬化反応が進行するようになるところから、環境への薬液の流出を抑えて、漏水や湧水の白濁や泡立ちを有利に低減することが出来る。
(3)B液の必須成分であるポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物、中でも、脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーを使用することによって、靱性の高い固結体を、より有利に形成することが出来ると共に、薬液注入現場における作業環境の汚染も、効果的に抑制乃至は回避することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
要するに、本発明は、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を必須成分とするA液と、ポリイソシアネートを必須成分とするB液とからなる二液型の薬液組成物において、B液の必須成分であるポリイソシアネートとして、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を含有せしめると共に、A液における、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の1級及び/又は2級アミノ基の総モル数と、B液におけるイソシアネート基の総モル数との比が、所定の範囲内となるように構成されているのである。このような構成を採用することにより、本発明に従う地山固結用薬液組成物にあっては、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用いているにもかかわらず、優れた反応活性が効果的に実現され得ると共に、高強度で且つ柔軟性に優れた、靱性の高い固結体が、有利に形成され得ることとなったのであり、以て、所期の目的を有利に達成し得たところに、大きな特徴が存しているのである。
【0018】
そのような本発明に従う地山固結用薬液組成物を構成する二液のうち、先ず、A液における必須の成分である1級及び/又は2級アミノ基含有化合物(以下、適宜、所定のアミン化合物ともいう)としては、1級アミノ基及び/又は2級アミノ基を含有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族アミン化合物、脂肪族ポリアミン化合物、芳香族アミン化合物、芳香族ポリアミン化合物、アミノ酸、アルカノールアミン等を挙げることが出来る。
【0019】
具体的には、脂肪族アミン化合物としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン等の直鎖状アミノ基含有化合物や、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミノ基含有化合物、ピペリジン等の環状アミノ基含有化合物を挙げることが出来、また、脂肪族ポリアミンとしては、ブタンジアミン、へキサンジアミン、オクタンジアミン、ポリエーテルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の直鎖状アミノ基含有化合物や、シクロヘキサンジアミン、ノルボルネンジアミン等の脂環式アミノ基含有化合物、ピペラジン等の環状アミノ基含有化合物、キシリレンジアミン等の芳香環を有する脂肪族アミノ基含有化合物を挙げることが出来る。芳香族アミン化合物としては、アニリン、トルイジン、アニシジン、メチルアニリン等のアミノ基含有化合物を挙げることが出来る。また、芳香族ポリアミン化合物としては、トルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルエーテル、トリメチルフェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、N,N’-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン、アミノベンジルアミン、メチレンビス(エチルメチルアニリン)等のアミノ基含有化合物を挙げることが出来る。更に、アミノ酸としては、リシン、バリン、アスパラギン等の分子内にカルボキシル基とアミノ基を含有する化合物を挙げることが出来、加えて、アルカノールアミン化合物としては、エタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジエタノールアミン等の、分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物を挙げることが出来る。そして、これら1級及び/又は2級アミノ基を有するアミン化合物は、単独で用いられる他、2種類以上を組み合わせて用いることも出来る。
【0020】
本発明にあっては、上述の如き1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は、後述するポリイソシアネートとの反応によって靱性の高い固結体が有利に形成され得る観点より、1分子内に2つ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するポリアミン化合物であることが望ましい。また、後述するポリイソシアネートとの反応性や固結体の難燃性等を向上せしめる観点より、本発明において使用される1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は、分子内に環状構造を有するものであることが好ましく、芳香環を有するアミン化合物であることがより好ましく、更に望ましくは、芳香族ポリアミン化合物であり、中でも、芳香環に結合しているアミノ基の隣の位置の少なくとも一方が、アルキル基で置換されてなる構造の芳香族ポリアミン化合物が、特に好ましく用いられることとなる。そのような分子内に環状構造を有する1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を使用する場合、かかる環状構造を有するアミン化合物は、A液に含有せしめられる1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の全量中の90質量%以上の割合となるような量において、使用されることが好ましい。
【0021】
また、A液に含有せしめられる1級及び/又は2級アミノ基含有化合物として、芳香族ポリアミン化合物と脂肪族ポリアミン化合物とを併用し、且つ、かかる芳香族ポリアミン化合物を、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の全量中の90質量%以上となるような割合においてA液に含有せしめることも、本発明においては好ましい。ここで、芳香族ポリアミン化合物と併用される脂肪族ポリアミン化合物は、分子内に環状構造を有していないものであることが望ましい。このように、芳香族ポリアミン化合物と脂肪族ポリアミン化合物とを併用したA液を、脂肪族系ポリイソシアネート化合物を含むB液と接触せしめると、A液中の芳香族ポリアミン化合物より少量の脂肪族ポリアミン化合物が、芳香族ポリアミン化合物よりも早く脂肪族系ポリイソシアネート化合物と反応し、増粘化して、湧水中に薬液が流出することが抑制されるところから、水の白濁や泡立ちの発生をより有利に低減せしめることが可能となる。
【0022】
本発明に従う薬液組成物を構成するA液においては、B液との混合により、B液中のポリイソシアネートと反応する化合物(活性水素基含有化合物)として、上述した1級及び/又は2級アミノ基含有化合物に加えて、公知の各種ポリオールを使用することができる。本発明に従う地山固結用薬液組成物のA液において、所定のアミン化合物とポリオールとを併用することにより、A液とB液との混合性の向上が得ら得ると共に、得られる固結体の強度及び柔軟性を向上させることも可能である。
【0023】
本発明で用いられるポリオールとしては、特に限定されるものではなく、従来から地山固結用薬液におけるポリオール成分として用いられているものが、同様に使用され得るところであり、例えば、公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を挙げることが出来る。それらのポリオールは、単独で使用することが出来る他、適宜に組み合わせて併用することも可能である。なお、このポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の化合物を出発原料として、これとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加反応により製造されたもの等を用いることが出来る。また、ポリエステルポリオールにあっても、特に限定されるものではないが、例えば、多価アルコールと、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ダイマー酸等のポリカルボン酸とを反応させて得られるポリカルボン酸系ポリエステルポリオール、ラクトン等を開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ひまし油系ポリエステルポリオール等を挙げることが出来る。
【0024】
上記した各種のポリオールの中でも、本発明においては、分子量が200~10000であるポリオールが有利に用いられ、分子量が400~5000であるポリオールがより有利に用いられる。また、ポリオールと1級及び/又は2級アミノ基含有化合物(所定のアミン化合物)とを併用する場合、本発明の効果をより有利に享受すべく、1)A液中における、所定のアミン化合物とポリオールとの合計量に対する所定のアミン化合物の割合が、50質量%以上となるように、また、2)ポリオールの使用量が、薬液組成物の全量に対して30質量%以下となるように、ポリオールを使用することが好ましい。
【0025】
一方、本発明に係る地山固結用薬液組成物を構成する二液のうちの、他の一つであるB液の必須成分であるポリイソシアネートとしては、本発明においては、脂肪族系ポリイソシアネート化合物そのものが用いられる他、かかる脂肪族系ポリイソシアネート化合物から誘導されるプレポリマー(脂肪族ポリイソシアネートプレポリマー)が、有利に用いられることとなる。
【0026】
ここで、脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネートや、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートの他、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートや、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2,2,1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-若しくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネートや、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネートを挙げることが出来る。
【0027】
また、脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等の上記した脂肪族系ポリイソシアネート化合物を、活性水素基含有化合物と反応させて得られるアダクト体、ビウレット体、アロファネート体や、そのようなポリイソシアネート化合物を三量化して得られるイソシアヌレート体等が、好適に用いられることとなる。なお、イソシアヌレート体には、二量体のウレトジオン体が含まれていても、何等差支えない。そして、そのような脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーには、固結体の強度や難燃性等の特性を考慮して、イソシアヌレート体が、より好適に用いられることとなる。
【0028】
さらに、かかる脂肪族ポリイソシアネートプレポリマーは、上述の如き脂肪族系ポリイソシアネート化合物を用い、それを変性して得られたものであるところから、その変性物であるプレポリマー中には、原料たる脂肪族系ポリイソシアネート化合物が、未反応のモノマー成分として残留することとなるのであるが、本発明にあっては、そのような残留モノマー成分は、5質量%以下であることが好ましく、特に、1質量%以下となるように、脂肪族系ポリイソシアネート化合物のプレポリマーが、調製されることとなる。なお、かかる残留モノマー成分が多くなると、固結体の強度等の物性の低下を惹起するようになる他、施工時にモノマー成分が揮発して、作業環境を悪化せしめる等の問題が惹起されるようになる。
【0029】
そして、上述の如き脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーは、B液中に、一般に、50~100質量%の割合において、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%の割合において含有せしめられることとなる。この脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーの含有量が、50質量%よりも少なくなると、固結体の強度が低下する問題があり、そのために、B液における脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーの割合は高い方が望ましく、そのような脂肪族系ポリイソシアネート化合物やそのプレポリマーのみにて、B液を構成することも、可能であるが、本発明においては、B液中に、公知の芳香族ポリイソシアネートを、10質量%を超えない範囲で含有せしめることが好ましい。このように、脂肪族系ポリイソシアネート化合物と芳香族ポリイソシアネートとを併用したB液を、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物を含むA液と接触せしめると、B液中の脂肪族系ポリイソシアネート化合物より少量の芳香族ポリイソシアネートが、脂肪族系ポリイソシアネート化合物よりも早く1級及び/又は2級アミノ基含有化合物と反応し、増粘化して、湧水中に薬液が流出することが抑制されるところから、水の白濁や泡立ちの発生をより有利に低減せしめることが可能となる。
【0030】
ところで、本発明に従う地山固結用薬液を構成する、上述の如きA液及びB液には、その使用目的に応じて、従来と同様な添加剤を添加せしめることが可能である。例えば、A液には、所定のアミン化合物とポリイソシアネートとの反応を促進するための反応触媒を含有せしめることが可能である。かかる反応触媒として、本発明においては、3級アミン触媒が有利に用いられる。
【0031】
ここで、3級アミン触媒としては、水との接触により発泡が意図される場合において、ポリイソシアネートと水との反応を促進する作用を有する泡化触媒、ポリイソシアネートとポリオールとの反応を促進する作用を有する樹脂化触媒、更には、ポリイソシアネートの三量化を促進する作用を有するイソシアヌレート化触媒等があり、それらは、何れも、公知のものの中から、適宜に選択されることとなる。
【0032】
具体的には、泡化触媒としては、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリエチルアミノエチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等を挙げることが出来る。また、樹脂化触媒には、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、33%トリエチレンジアミン・67%ジプロピレングリコール、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N-メチル-N’-ヒドロキシエチルピペラジン、N-メチルモルフォリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール等が挙げられる。更に、イソシアヌレート化触媒としては、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)-ヘキサヒドロ-s-トリアジン等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用しても、何等差し支えない。更に、これらの中でも、泡化触媒又は樹脂化触媒が好適に用いられる。
【0033】
また、A液に含有せしめられる触媒としては、上記した3級アミン触媒に加えて、更に金属触媒や第四アンモニウム塩等を用いることも可能である。そこにおいて、金属触媒としては、公知のものを特に制限なく用いることが出来、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、錫、鉛、ビスマス、亜鉛、鉄、ニッケル、ジルコニウム、コバルト等の有機酸金属塩や有機金属錯体を用いることが出来る。そして、その中で、有機酸金属塩としては、酢酸、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、ロジン酸等と上記金属との塩が挙げられ、また有機金属錯体としては、アセチルアセトン等と上記金属との錯体が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸錫、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウリレート;アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン錫等を挙げることが出来る。これらの金属塩や金属錯体は、その取扱い性の向上のため、ミネラルスピリット、有機酸、グリコール類、エステル類等の希釈剤に溶解させたものとして、用いてもよい。また、これらの金属触媒は、単体で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、カリウム、錫、鉛、ビスマス又は亜鉛の酢酸塩、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、ラウリル酸塩や、アセチルアセトン錯体が挙げられ、より好ましくはカリウム、錫、ビスマスを金属として用いた触媒が、好適に用いられることとなる。
【0034】
また、第四アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、プロピルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ペンチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ヘプチルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、ノニルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ウンデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム等の脂肪族アンモニウム化合物、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、トリメチルアミノエトキシエタノール等のヒドロキシアンモニウム化合物、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウム、1-メチルモルホリニウム、1-メチルピペリジニウム等の脂環式アンモニウム化合物等が、挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ、工業的に入手可能なところから、テトラメチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、オクチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、1-メチル-1-アザニア-4-アザビシクロ[2,2,2]オクタニウム、及び1,1-ジメチル-4-メチルピペリジニウムが、好ましく用いられることとなる。
【0035】
なお、かくの如き第四アンモニウム塩を構成する有機酸基又は無機酸基としては、例えば、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、蓚酸基、マロン酸基、コハク酸基、グルタル酸基、アジピン酸基、安息香酸基、トルイル酸基、エチル安息香酸基、メチル炭酸基、フェノール基、アルキルベンゼンスルホン酸基、トルエンスルホン酸基、ベンゼンスルホン酸基、リン酸エステル基等の有機酸基や、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基等の無機酸基が挙げられる。これらの中でも、触媒活性に優れ且つ工業的に入手可能なことから、ギ酸基、酢酸基、オクチル酸基、メチル炭酸基、ハロゲン基、水酸基、炭酸水素基、炭酸基が好ましい。
【0036】
また、このような第四アンモニウム塩からなる触媒としては、各種のものが市販されており、例えば、U-CAT18X(サンアプロ社製)、カオーライザーNo.410、カオーライザーNo.420(花王株式会社製)、TM-R(エボニック社製)等を挙げることが出来る。
【0037】
なお、かくの如きA液に含有せしめられる触媒は、一般に、B液中のポリイソシアネートの100質量部に対して0.1~30質量部の割合において、好ましくは0.5~20質量部の割合において、適宜に決定されることとなる。この触媒含有量が0.1質量部よりも少なくなると、反応に対する寄与が低下し、強度発現が遅くなる問題があり、一方30質量部よりも多くなると、反応が速くなり過ぎて、反応速度の制御が困難となる問題が惹起されるようになる。
【0038】
本発明のA液に添加可能な添加剤としては、上述した触媒の他にも、発泡剤、整泡剤、難燃剤や減粘剤等を挙げることが出来る。それらA液に添加せしめられる添加剤は、B液中のポリイソシアネートの100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部の割合において、用いられることとなる。一方、B液に対する添加剤としては、整泡剤、難燃剤、減粘剤等を挙げることが出来、その中で、整泡剤は、B液中のポリイソシアネートの100質量部に対して0.05~5質量部、好ましくは0.1~3質量部の割合となるように用いられ、減粘剤は、B液中のポリイソシアネートの100質量部に対して0.5~60質量部、好ましくは1~40質量部の割合となるように用いられ、また難燃剤は、B液中のポリイソシアネートの100質量部に対して1~50質量部、好ましくは5~40質量部の割合となるように用いられることとなる。
【0039】
それら添加剤の中で、発泡剤としては、水、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン等の公知のものを用いることが可能である。この発泡剤は、特に限定されるものではないが、水が好適に用いられる。この水は、薬液組成物が適用される地山からも供給されるものであって、B液のポリイソシアネートと反応して、炭酸ガスを発生するものであるところから、発泡剤として機能するものである。
【0040】
また、整泡剤は、A液とB液との反応によって形成されるフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものである。この整泡剤としては、例えばシリコーン、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン及び非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。また、整泡剤の中では、シリコーン系整泡剤がより好ましく、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等が好ましい。
【0041】
さらに、難燃剤としては、液状の難燃剤や粉状の難燃剤を使用することができる。難燃剤は、A液、B液の何れか一方、若しくは両方に、分散、含有せしめることが可能である。難燃剤は、単独での使用は勿論のこと、2種以上を併用することも可能である。発泡性組成物の減粘剤としても機能する点で、液状の難燃剤を用いことが好ましく、さらに、液状の難燃剤と粉状の難燃剤とを併用することで、更なる難燃性の向上を図ることが可能である。
【0042】
液状の難燃剤としては、リン酸エステルや臭素含有難燃剤等が挙げられ、環境への負荷が少ないことからリン酸エステルが好ましく用いられる。なお、リン酸エステルとしては、モノリン酸エステルや縮合リン酸エステル等を例示することが出来る。
【0043】
モノリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナンスレン、トリス(β―クロロプロピル)ホスフェート等を、挙げることが出来る。
【0044】
また、縮合リン酸エステルについては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ-2,6-キシリル)ホスフェート(大八化学工業社製、商品名:PX-200)、ハイドロキノンポリ(2,6-キシリル)ホスフェート並びにこれらの縮合物等を、挙げることが出来る。前記したもの以外の市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名:CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名:CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名:CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名:アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名:FP-600、FP-700)等を、挙げることが出来る。
【0045】
臭素含有難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン-ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物;臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、前記のポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート;臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物;ポリ(臭素化ベンジルアクリレート);臭素化ポリフェニレンエーテル;臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌール及び臭素化フェノールの縮合物;臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン;架橋又は非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマー等を、挙げることが出来る。
【0046】
また、粉状の難燃剤として、赤リン、リン酸塩含有難燃剤、スズ酸塩含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物や金属酸化物等が挙げられ、取扱いが容易な点で赤リン、ホウ素含有難燃剤、金属水酸化物が好ましく用いられる。なお、赤リンとしては、公知の赤リンを使用することが可能である。
【0047】
リン酸塩含有難燃剤としては、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩などのリン酸塩を挙げることが出来る。モノリン酸塩としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等を、挙げることが出来る。ポリリン酸塩としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等を挙げることが出来る。
【0048】
スズ酸塩含有難燃剤としては、例えば、スズ酸亜鉛、スズ酸バリウム、スズ酸ナトリウム、スズ酸カリウム、スズ酸コバルト、スズ酸マグネシウム等を挙げることが出来る。
【0049】
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等を挙げることが出来る。具体的に、酸化ホウ素としては、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等を例示することが出来る。また、ホウ酸塩としては、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩;ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩;ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等を、例示することが出来る。
【0050】
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウムや水酸化スズ等を挙げることが出来る。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることが出来る。
【0051】
加えて、減粘剤は溶剤として用いられ、A液又はB液に溶解されて、それらの液を減粘する働きを有するものであって、そのような機能を有するものである限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類、プロピレンカーボネート等の環状エステル類、ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油系炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して、用いられてもよい。
【0052】
ところで、本発明に従って調製されるA液及びB液は、それぞれ、25℃の温度下における粘度が6000mPa・s以下、好ましくは20~5000mPa・s、より好ましくは100~3000mPa・sとなるように、調整されることとなる。この粘度が5000mPa・sよりも高くなると、A液やB液が粘調な液となり、混合時の流動性が悪くなる他、圧送時の流動性も悪くなり、注入圧の上昇を引き起こす恐れがある等の問題を惹起するようになる。なお、そのような粘度が20mPa・sよりも低くなると、水に希釈され易くなり、排水の白濁等の問題が惹起され易くなる。また、それらA液やB液は、そのポンプ圧送時において、粘度を低減させるべく、ヒーターを用いて温度調整されてもよく、外気温に応じて0~50℃に加温されるようにすることも、可能である。
【0053】
また、かくの如きA液とB液とから構成される、本発明に従う地山固結用薬液組成物の使用に際しては、それら両液が、使用時に混合されて、目的とする地山、地盤、岩盤等に対して、公知の手法に従って注入され、反応硬化せしめられることにより、高強度で且つ柔軟性に優れた、靱性の高い固結体が形成されることとなるのである。そこにおいて、かかるA液とB液との混合比は、A液中における1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の1級及び/又は2級アミノ基の総含有量、換言すれば、A液中に存在する、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物に由来する1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)と、B液中におけるイソシアネート基(NCO基)の含有量(モル数:Y)によって、適宜に変化せしめられることとなるが、本発明においては、モル比において、X/Y=0.3~1.8の範囲内、好ましくは0.4~1.6の範囲内となるように、混合比が決定されることとなる。このモル比(X/Y)が0.3より小さいと、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物とイソシアネートとの反応が不十分となり、得られる固結体の強度が不十分になったり、反応が十分に進行しないために湧水中に薬液が流出したりする等の問題が惹起される。その一方、モル比(X/Y)が1.8より大きいと、1級及び/又は2級アミノ基含有化合物がイソシアネートに対して過剰となり、得られる固結体の強度や柔軟性が低下する等の問題が惹起される。また、一般的に1級及び/又は2級アミノ基含有化合物は高価であり、その過剰な量の使用は、経済的な観点からも得策ではない。
【0054】
このように、本発明に従うA液とB液とを混合するに際しては、A液中の1級及び/又は2級アミノ基の総含有量とB液中のイソシアネート基含有量を考慮しつつ、それらの混合比(A:B)が適宜に決定されることとなるが、一般に、質量基準にて、A:B=2:1~1:5、好ましくは、1:1~1:4の範囲内において、採用されることとなる。また、A液における1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の含有量とB液におけるポリイソシアネートの含有量との合計量が、薬液組成物の全量に対して60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上となるように、A液及びB液が調整され、それらの混合比が決定されることとなる。なお、それらA液やB液の使用方法についても、それらの使用の直前に、二液の混合が確実に行なわれ得る手法であれば、特に制限はなく、従来から公知の各種の注入手法が、適宜に採用されることとなる。
【0055】
さらに、A液とB液とを混合したときの反応時間(混合から硬化するまでの時間)は、薬液温度が25℃であるときに、600秒以内であることが好ましく、より好ましくは20~360秒である。この反応時間が600秒よりも長くなると、地山に注入後、固結するまでに、薬液が湧水中に流出して、水の白濁や泡立ちを惹起する等の問題が生じるようになる。なお、反応時間が余りにも短く、例えば、20秒よりも短くなると、反応が進み過ぎて、薬液の注入管を閉塞させる問題や、充分に地山に浸透させ難くなる等の問題が惹起されるようになる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明の実施例や比較例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0057】
なお、以下の実施例及び比較例において得られたA液とB液の特性(粘度)と共に、それらA液とB液とを混合したときの混合性、A液とB液とを混合して反応硬化せしめたときの反応時間、A液とB液とを水中で反応・発泡せしめた後の水の白濁度合い、反応生成物(無発泡)の圧縮強度及び曲げ強度、反応生成物(3倍発泡)の圧縮強度、そして反応生成物の酸素指数については、それぞれ、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。また、以下に示す「%」、「比率」及び「部」は、何れも、質量基準にて示されるものである。
【0058】
(1)粘度の測定
実施例及び比較例において得られたA液及びB液の粘度を、それぞれ、JIS-K-7117-1:1999に準拠して、B型粘度測定装置を用いて、測定した。
【0059】
(2)混合性の評価
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び各比較例に規定される混合比において、300mlのカップに、合計100部なるように収容した後、直ちに、スパーテルにて10~20秒間混合し、その混合開始から混合後の様子を観察した。そして、A液とB液とが10秒経過時点で充分混合している場合においては◎、20秒経過時点において充分に混合している場合は〇、混合途中で増粘等によって、混合がやや不充分な場合を△、途中で増粘等により混合が充分ではなく、固結物にムラがある場合を×として、評価した。
【0060】
(3)反応時間の測定
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比で混合して、反応を開始させた後、その形成される反応生成物からガスが発生し、発泡高さが変化しなくなるまでの時間、又は反応生成物に串を刺して、内部まで刺さらなくなるまでの時間を測定し、その何れか遅い方を、反応時間とした。
【0061】
(4)白濁性の評価
25℃の温度に、それぞれ、調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比において、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。次いで、その混合の後、直ちに、2Lのディスカップに収容された25℃の水1L中に、それらA液及びB液の混合物を投入し、反応が収まるまで静置した。そして、かかる反応が終了した後、目視にて水の様子を観察し、反応が収まった直後において、白濁が認められない場合を○、反応が収まった後1時間以内に白濁が認められなくなった場合を△、反応が収まった後1時間以上経過した後においても、白濁が認められる場合を×として、それぞれ評価した。
【0062】
(5)圧縮強度試験(無発泡)
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、各実施例及び比較例において採用される混合比にて、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。次いで、かかる混合の後、直ちに、内径:50mm、高さ:100mmの有底円筒型内に、所定量のA液及びB液の混合物を投入し、蓋をした後、2時間以上養生した。その後、脱型した反応生成物を、25℃の温度にて24時間以上養生し、JIS-K-7220:2006に準拠して、圧縮強度の測定を行なった。なお、各実施例及び比較例についての本試験の測定結果を、下記表1乃至表3の「圧縮強度(無発泡)」欄に示す。
【0063】
(6)曲げ強度試験(無発泡)
上記「圧縮強度試験(無発泡)」と同様の手順に従って得られた反応生成物からなる試験体を用いて、JIS-K-7221:2006に準拠して、測定を行なった。なお、各実施例及び比較例についての本試験の測定結果を、下記表1乃至表3の「曲げ強度(無発泡)」欄に示す。
【0064】
(7)圧縮強度試験(3倍発泡)
25℃の温度に調整されたA液に、整泡剤(商品名:テゴスターブB8450、エボニック・ジャパン株式会社製)の0.5部と水2部とを更に添加し、かかるA液に、25℃の温度に調整したB液を、各実施例及び比較例において採用される割合において混合した後、直ちに、250mm×100mm×50mmの型内に3倍発泡となる量において投入し、蓋をした後、2時間以上養生した。その後、脱型した反応生成物を、25℃の温度にて24時間以上養生した後、JIS-K-7220:2006に準拠して、圧縮強度の測定を行なった。なお、各実施例及び比較例についての本試験の測定結果を、下記表1乃至表3の「圧縮強度(3倍発泡)」欄に示す。
【0065】
(8)酸素指数(難燃性)の評価
実施例5、実施例23~実施例25における25℃の温度に調整されたA液に、更に、整泡剤(商品名:テゴスターブB8450、エボニック・ジャパン株式会社製)の0.5部と水2部とを添加し、これに、25℃の温度に調整したB液を、各実施例において採用する割合において混合した後、直ちに、250mm×100mm×50mmの型内に3倍発泡となる量において投入し、そして、蓋をした後、2時間以上養生した。その後、脱型し、25℃にて24時間以上養生した後、得られた反応生成物から試験体を切り出し、JIS-K-7201-2:2007に準拠して、それぞれの試験体の酸素指数を測定した。なお、この酸素指数が大となる程、難燃性が良好であることを示している。
【0066】
先ず、以下の実施例及び比較例において用いられるA液又はB液の構成成分として、以下の各種原料を準備した。
-1級及び/又は2級アミノ基含有化合物-
・エタキュア100(商品名、ジエチルトルエンジアミン、アルベマール社製)
・エタキュア300(商品名、ジエチルチオトルエンジアミン、アルベマール社製)
・MBDEA(4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、東京化成工業 株式会社製)
・エタキュア420
(商品名、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)、アルベマール 社製)
・D-400(商品名:ポリエーテルアミンD-400、ポリエーテルアミン(分子量 :400、アミノ基官能基数:2)、BASF社製)
・HDA(1,6-ヘキサメチレンジアミン、東京化成工業株式会社製)
-ポリオール(ポリエーテルポリオール)-
・PP-200(商品名:サンニックス PP-200、分子量:200、
官能基数:2、三洋化成工業株式会社製)
・PP-400(商品名:サンニックス PP-400、分子量:400、
官能基数:2、三洋化成工業株式会社製)
・PP-2000(商品名:サンニックス PP-2000、分子量:2000、
官能基数:2、三洋化成工業株式会社製)
・450ED(商品名:エクセノール 450ED、分子量:400、
官能基数:4、AGC株式会社製)
-触媒-
・オクチル酸カリウム(カリウム濃度:15%、日本化学産業株式会社製)
・カオーライザーNo.26(商品名、3級アミン触媒、花王株式会社製)
・カオーライザーNo.14(商品名、3級アミン触媒、花王株式会社製)
-脂肪族イソシアネート-
・HDIヌレート
(商品名:タケネートD-170N、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー 、ヌレート型、NCO率:21%、三井化学株式会社製)
・HDIビウレット
(商品名:タケネートD-165N、ヘキサメチレンジイソシアネートプレポリマー 、ビウレット型、NCO率:23.5%、三井化学株式会社製)
・PDIヌレート
(商品名:スタビオD-376N、ペンタメチレンジアミンプレポリマー、ヌレート 型/アロファネート型の混合、NCO率:23.5%)
-芳香族イソシアネート-
・MDI(商品名:コスモネートM-200、ポリメリックMDI、NCO率:31% 、錦湖三井化学社製)
・プレポリマーMDI(合成品、NCO率:18.3%)
3Lのフラスコ内にポリメリックMDI(商品名:コスモネートM-100、錦 湖三井化学社製)の1kgを仕込み、フラスコ内を撹拌しながらポリエーテルポリ オール(商品名:サンニックス PP-1000、三洋化成工業株式会社製)の4 00gを添加した。窒素を通しながら、80℃で2時間、反応せしめた後、冷却す ることにより、反応物としてプレポリマーMDIを得た。
-難燃剤-
・リン酸エステル
(トリス(クロロプロピル)ホスフェート、大八化学工業株式会社製)
・赤燐(商品名:ノーバエクセル140、燐化学工業株式会社製)
・ホスフィン酸塩
(商品名:EXOLIT OP-935、クラリアント・ケミカルズ社製)
【0067】
(実施例1~22)
-A液の調製-
1級及び/又は2級アミノ基含有化合物、触媒、更には必要に応じてポリオールを用いて、これらを、下記表1~表2に示される各種の組み合わせ及び配合割合において、均一に混合せしめて、実施例1~22に係る各種のA液配合組成物を、それぞれ、調製した。そして、その得られたA液配合組成物の粘度を測定し、その結果を、下記表1~2に示した。
【0068】
-B液の調製-
上記で準備したポリイソシアネートの一種以上を用いて、ポリイソシアネート100%からなるB液配合組成物を、それぞれ、調製した。そして、この得られたB液配合組成物の粘度を測定し、その結果を、下記表1~2に示した。
【0069】
-A液とB液の反応-
上記で得られたA液とB液とを、表1~2に示される割合において組み合わせて、常温下で、均一に混合して、反応せしめた後、前述せる評価手法に従って、各種の評価試験を行ない、それらの結果を、下記表1~2に示した。
【0070】
(比較例1)
1級及び/又は2級アミノ基含有化合物の100部に代えて、ポリオールの100部(PP-400:60部、450ED:40部)を配合し、また触媒の添加量を5部としたものを、A液として用いたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0071】
(比較例2)
実施例5において、脂肪族イソシアネートたるHDIヌレートに代えて、芳香族イソシアネートたるMDIプレポリマーを用いたこと以外は、実施例5と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0072】
(比較例3)
実施例5において、脂肪族イソシアネートたるHDIヌレートに代えて、芳香族イソシアネートたるポリメリックMDIを用いたこと以外は、実施例5と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0073】
(比較例4)
実施例1において、A液とB液との混合比を代えることによって、組成物全体における、1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)とイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)を、1.8を超える2.01としたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0074】
(比較例5)
実施例1において、A液とB液との混合比を代えることによって、組成物全体における、1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)とイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)を、0.3より小さい0.22としたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0075】
(比較例6)
実施例5において、A液とB液との混合比を代えることによって、組成物全体における、1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)とイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)を、1.8を超える2.02としたこと以外は、実施例5と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0076】
(比較例7)
実施例5において、A液とB液との混合比を代えることによって、組成物全体における、1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)とイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)を、0.3より小さい0.25としたこと以外は、実施例5と同様の手法に従って、それぞれ試験を行なった。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表1乃至表3の結果より明らかなように、実施例1~22における、本発明に従うA液とB液からなる薬液組成物にあっては、何れも、反応時間が400秒以下となる、反応活性に優れたものであると共に、良好な混合性を有し、高い圧縮強度と曲げ強度に優れた固結体を形成し得るものであり、しかも、白濁試験において、良好な結果を示すものであった。
【0081】
これに対して、比較例1~3において調製された、A液とB液からなる薬液組成物のうち、比較例1に係る薬液組成物にあっては、硬化反応に時間がかかり、反応活性に劣り、固結体の圧縮強度や曲げ強度において、劣るものであることが認められ、また、比較例2及び比較例3に係る各薬液組成物にあっては、混合性及び白濁性において劣るものであることが認められた。更に、1級及び/又は2級アミノ基の総モル数(X)とイソシアネート基のモル数(Y)との比(X/Y)を本発明の範囲外とした比較例4~7に関して、1)実施例1との対比において、比較例4に係る薬液組成物は、混合性、白濁性、固結体の圧縮強度及び曲げ強度において劣ることが、また、比較例5に係る薬液組成物は、反応時間、固結体の圧縮強度及び曲げ強度において劣ることが、各々、認められ、2)実施例5との対比において、比較例6に係る薬液組成物は、固結体の圧縮強度及び曲げ強度において劣ることが、また、比較例7に係る薬液組成物は、反応時間、固結体の圧縮強度及び曲げ強度において劣ることが、各々、認められるのである。
【0082】
-酸素指数による難燃性の検討-
上述した実施例5において調製されたA液及びB液と、下記表4に記載の配合組成に従って調製された3種類のA液及びB液の組み合わせ(実施例23~25)を用いて、発泡・硬化させて得られた発泡生成物(固結体)について、それぞれ、酸素指数を測定し、その結果を、下記表4に示した。
【0083】
【0084】
かかる表4の結果より明らかなように、難燃剤が配合された実施例23~25に係る薬液組成物にあっては、それを用いて得られる固結体が、大きな酸素指数の数値を示す、難燃性に優れたものであることが認められるのであり、本発明の薬液組成物に難燃剤を含有せしめることによって、難燃性に優れた固結体が有利に得られることが認められるのである。