IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 理想科学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ワイパ機構 図1
  • 特許-ワイパ機構 図2
  • 特許-ワイパ機構 図3
  • 特許-ワイパ機構 図4
  • 特許-ワイパ機構 図5
  • 特許-ワイパ機構 図6
  • 特許-ワイパ機構 図7
  • 特許-ワイパ機構 図8
  • 特許-ワイパ機構 図9
  • 特許-ワイパ機構 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ワイパ機構
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B41J2/165 303
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020213047
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099349
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】番匠 利裕
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-167928(JP,A)
【文献】特開2014-172344(JP,A)
【文献】特開2015-231721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズル列が設けられたインクジェットヘッドのノズル面をワイプ方向にワイプする第1ワイプブレードと、
前記ノズル面に隣接し当該ノズル面に平行に配置されたプレートを前記ワイプ方向にワイプする第2ワイプブレードとを備え、
前記第1ワイプブレードは、前記ワイプ方向に直交する前記ノズル面の幅方向における前記インクジェットヘッドの両端に亘る前記幅方向の全体が前記幅方向に対して一直線状に同一方向に傾斜した状態で前記ノズル面及び前記プレートの前記幅方向における全体をワイプし、
前記第2ワイプブレードは、当該第2ワイプブレードによって前記プレートにおいてワイプされたインク及び前記第1ワイプブレードによって前記ノズル面においてワイプされたインクを、前記第1ワイプブレードと協働して前記ノズル面と前記プレートとの境界部分に導くように、前記第1ワイプブレードが前記幅方向に対して傾斜するのとは反対方向に前記幅方向に対して傾斜した状態で前記プレートをワイプする
ことを特徴とするワイパ機構。
【請求項2】
前記第2ワイプブレードは、前記第1ワイプブレードが前記ノズル面をワイプするのよりも単位面積あたりに強い当接圧で前記プレートをワイプする
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドをワイプするワイパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドをワイプするワイプブレードを備えるワイプ機構が知られている。インクジェットヘッドの底面は、ノズル列が設けられたノズル面への用紙接触の防止やインクの侵入防止などのために、ノズル列が無い部分の一部分においてプレート(保護プレート)で覆われている。ノズル面は、ワイプ時にインクを除去しやすいように撥インク処理が施されていることが多い。
【0003】
上述のワイプ機構において、2つの板状部分の連結部分がワイプ方向の先端となるようにV字形状のワイプブレードが配置され、このワイプブレードの両端にインク捕集部が設けられたワイプ機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-167928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイプブレードのワイプによってインクがヘッド側面に付着すると、時間の経過や用紙搬送による気流によってインクがノズル面側に移動し、用紙や搬送ベルトを汚したり吐出不良を招いたりする恐れがある。特にプレートは、ノズル面よりも撥インク性が低いため、インクが付着しやすい。また、表面張力の低いインクでは、インクがワイプを伝って流れ落ちにくく、ワイプ方向に直交するノズル面の幅方向にインクが移動し、ヘッド側面に付着しやすい。また、ワイプブレードのワイプ速度が速いほどインクがヘッド側面に移動しやすい。
【0006】
ワイププレートのワイプ後のインク残りを少なくするために、ワイプブレードやプレートとの当接圧を高くすることで確実にインクを除去する必要があるが、ノズル面にワイプブレードを強く当接させると、ノズル面の撥インク処理がダメージを受ける。これにより、ノズル面の撥インク性の低下が発生するため、ノズル面にインクが残りやすくなってしまう。
【0007】
ワイプブレードの両端にインク捕集部が設けられた上述のV字形状のワイプブレードは、捕集されたインクがプレートに残りやすいため、上述のように、用紙や搬送ベルトを汚す恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、ワイプされたインクを確実に除去することができるワイパ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、ワイパ機構は、インクを吐出するノズル列が設けられたインクジェットヘッドのノズル面をワイプ方向にワイプする第1ワイプブレードと、前記ノズル面に隣接し当該ノズル面に平行に配置されたプレートを前記ワイプ方向にワイプする第2ワイプブレードとを備え、前記第1ワイプブレードは、前記ワイプ方向に直交する前記ノズル面の幅方向に対して少なくとも一部が傾斜した状態で前記ノズル面をワイプし、前記第2ワイプブレードは、当該第2ワイプブレードによって前記プレートにおいてワイプされたインク及び前記第1ワイプブレードによって前記ノズル面においてワイプされたインクを、前記第1ワイプブレードと協働して前記ノズル面と前記プレートとの境界部分に導くように、前記第1ワイプブレードが前記幅方向に対して傾斜するのとは反対方向に前記幅方向に対して傾斜した状態で前記プレートをワイプする。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、ワイプされたインクを確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置の内部構造を示す正面図である。
図2】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置の主要な制御構成を示す図である。
図3】一実施の形態に係る、ワイプ位置にあるワイパ機構を示す正面図である。
図4】一実施の形態に係るワイパ機構を示す平面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6】一実施の形態における第1ワイプブレード及び第2ワイプブレードの位置関係を説明するためのインクジェットヘッドの底面図である。
図7】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの斜視図(その1)である。
図8】一実施の形態におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの斜視図(その2)である。
図9】一実施の形態の第1変形例におけるワイプ動作を説明するためのワイパユニットの斜視図である。
図10】一実施の形態の第2変形例における第1ワイプブレード及び第2ワイプブレードの位置関係を説明するためのインクジェットヘッドの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るワイパ機構について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施の形態におけるインクジェット印刷装置100の内部構造を示す正面図である。
【0014】
図2は、インクジェット印刷装置100の主要な制御構成を示す図である。
【0015】
なお、図1及び後述する図3図10に示す前後、上下、及び左右の各方向は、媒体の一例である用紙Pの印刷時における搬送方向を右方向とし、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12のワイプ方向D1を前方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0016】
図1に示すように、インクジェット印刷装置100は、ワイパ機構1と、印刷部110と、吸着搬送部120と、外部給紙部130と、内部給紙部141~143と、搬送ローラ対151~155と、レジストローラ対156とを備える。また、図2に示すように、インクジェット印刷装置100は、更に、制御部161と、記憶部162と、操作パネル部163と、スキャナ164と、排紙部165とを備える。なお、図1には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から印刷部110へ続く搬送経路を太い実線で示す。
【0017】
図1に示す印刷部110は、例えばライン型インクジェットヘッドである複数のインクジェットヘッド111を有する。図4に示すように、用紙Pの搬送方向(右方向)に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に並べられた6個のインクジェットヘッド111が2組、計12個配置されている。すなわち、前後方向に沿って配列された1組6個のインクジェットヘッド111は、それぞれ左右方向における位置を交互にずらして配置されている。一例ではあるが、一方の組の6個のインクジェットヘッド111は、2色(例えば、ブラック(K)及びシアン(C))のインクを吐出し、他方の組の6個のインクジェットヘッド111は、上記一方の組とは異なる色の2色(例えば、マゼンタ(M)及びイエロー(Y))のインクを吐出する。
【0018】
図1に示すように、吸着搬送部120は、印刷部110に対向するように配置されている。例えば、吸着搬送部120は、用紙Pを吸着しながら、搬送ベルトによって用紙Pを搬送する。なお、吸着搬送部120は、図1に示す印刷位置と、この印刷位置よりも下方の図3に示すワイプ位置と、このワイプ位置よりも下方の図示しない待機位置とに移動可能であるとよい。また、ワイパ機構1は、図3に示すようにワイプ時において印刷部110の下方に位置し、図1に示すように印刷時において印刷部110の下方から退避した退避位置にあるとよい。
【0019】
外部給紙部130及び内部給紙部141~143は、給紙トレイ131,141a,142a,143aと、スクレーパローラ132,141b,142b,143bと、ピックアップローラ133,141c,142c,143cとを有する。
【0020】
給紙トレイ131,141a,142a,143aには、複数の用紙Pが積載される。
【0021】
スクレーパローラ132,141b,142b,143bは、給紙トレイ131,141a,142a,143aに積載された複数の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出して搬送する繰り出しローラである。
【0022】
ピックアップローラ133,141c,142c,143cは、スクレーパローラ132,141b,142b,143bによって繰り出された用紙Pを搬送する。
【0023】
搬送ローラ対151~155は、内部給紙部141~143からレジストローラ対156までの間の搬送経路に配置されている。
【0024】
レジストローラ対156には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から搬送される用紙Pが突き当てられる。これにより、用紙Pの斜行が修正される。
【0025】
図2に示す制御部161は、インクジェット印刷装置100全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、ワイパ駆動部40、印刷部110、吸着搬送部120等のインクジェット印刷装置100の各部の動作を制御する。
【0026】
記憶部162は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などのメモリ、ハードディスク装置などを有する。
【0027】
操作パネル部163は、例えば、各種操作を行うための操作キー、タッチパネル、各種情報を表示するディスプレイなどを有することで、インクジェット印刷装置100の入力部及び表示部の一例として機能する。
【0028】
スキャナ164は、原稿から画像データを読み取る。
【0029】
排紙部165は、図1には図示しないが、印刷部110によって印刷が行われた用紙Pが積載される排紙トレイと、この排紙トレイに用紙Pを排出する排出ローラとを有する。
【0030】
図3は、ワイプ位置にあるワイパ機構1を示す正面図である。
【0031】
図4は、ワイパ機構1を示す平面図である。
【0032】
図5は、図4のV-V断面図である。
【0033】
図6は、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12の位置関係を説明するためのインクジェットヘッド111の底面図である。
【0034】
図3図6及び後述する図7図10に示す前後、上下、及び左右の各方向は、ワイパ機構1が図3に示すように印刷部110と吸着搬送部120との間にある状態の方向である。
【0035】
図4に示すように、ワイパ機構1は、ワイパユニット10と、2つのガイド部20と、インク受け部30と、ワイパ駆動部40とを備える。
【0036】
ワイパユニット10は、例えば4つずつの第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12と、これらの第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12を支持するブレード支持部材13とを有する。
【0037】
第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12は、インクジェットヘッド111との当接により変形する弾性体であるとよい。第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12は、例えば、ゴム製のブレードである。
【0038】
図6に示すように、インクジェットヘッド111は、インクを吐出するノズル列111bが設けられたノズル面111aと、このノズル面111aの周囲に設けられたプレート111cとを有する。ノズル面111a及びプレート111cは、インクジェットヘッド111の例えば底面において、互いに平行に設けられている。なお、図6には、第1ワイプブレード11のノズル面111a及びプレート111cとの当接領域、並びに、第2ワイプブレード12のプレート111cとの当接領域を、2点鎖線(想像線)で示す。
【0039】
ノズル面111aは、例えばポリイミド樹脂によって形成され、撥インク膜がコーティングされている。
【0040】
プレート111cは、例えば、ノズル列111b(ノズル面111a)を保護するために設けられた保護プレートであり、ノズル面111aの周囲の全周に設けられている。これにより、プレート111cは、ノズル面111aに隣接している。
【0041】
なお、プレート111cは、ノズル面111aに隣接し且つノズル面111aに平行に配置されているものであればよく、ノズル面111aの周囲の全周に設けられているものに限らず、例えば、図9(第1変形例)に示すインクジェットヘッド211のようにノズル面111aに対して幅方向D2の片側だけに配置されていてもよい。また、プレート111cは、例えばインクジェットヘッド111の底面の全面に設けられたノズル面111aの一部を覆うものであってよい。この場合でも、プレート111cは、ノズル面111aのうちプレート111cに覆われていない部分に隣接しているため、ノズル面111aに隣接しているといえる。
【0042】
上述のように図4に示す6個ずつ2組のインクジェットヘッド111が千鳥状に配置されていることによって、インクジェットヘッド111は、図4に示すように左右方向に計4列に並んでいる。そのため、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12は、1列(3個)のインクジェットヘッド111のヘッド面111aをワイプするために4つずつ配置されている。
【0043】
図6に示すように、第1ワイプブレード11は、ワイプ方向D1に直交するノズル面111aの幅方向D2(例えば、用紙Pの搬送方向と同一)に対して一直線状に角度θ1傾斜した状態で、ノズル面111a及びプレート111cをワイプ方向D1にワイプする。すなわち、第1ワイプブレード11は、幅方向D2の全体が幅方向D2に対して同一方向に傾斜した状態で、ノズル面111a及びプレート111cの幅方向D2における全体をワイプする。
【0044】
なお、第1ワイプブレード11は、幅方向D2におけるインクジェットヘッド111の両端に亘って設けられていることが望ましい。但し、第1ワイプブレード11は、少なくとも一部が幅方向D2に対して傾斜した状態で、少なくともノズル面111aをワイプすればよい。例えば、第1ワイプブレード11の他の一部が幅方向W2に平行であってもよい。また、図10(第2変形例)に示すように、第1ワイプブレード311は、底面視(平面視)において、ノズル列111bから遠ざかるほどワイプ方向D1の上流側に位置するようにV字状を呈することで、幅方向D2におけるノズル列111bの一方側と他方側とにおいて異なる角度でワイプ方向D1に対して傾斜していてもよい。この場合、第2ワイプブレード312は、幅方向D2の両側に計2つ配置されるとよい。
【0045】
図6に示すように、第2ワイプブレード12は、プレート111cのうち、第1ワイプブレード11のワイプ方向D1における上流側部分(搬送方向下流側である幅方向D2の右側部分)によってワイプされる領域と同じ領域を、ワイプ方向D1にワイプする。また、第2ワイプブレード12は、この第2ワイプブレード12によってプレート111cにおいてワイプされたインク及び第1ワイプブレード11によってノズル面111aにおいてワイプされたインクを、第1ワイプブレード11と協働してプレート111cとノズル面111aとの境界部分111dに導くように、第1ワイプブレード11が幅方向D2に対して角度θ1傾斜するのとは反対方向に幅方向D2に対して角度θ2傾斜した状態で、プレート111cをワイプする。そのため、第2ワイプブレード12は、第1ワイプブレード11よりもワイプ方向D1における下流側に設けられているといえる。なお、第2ワイプブレード12は、幅方向D2において、境界部分111d又はその近傍から、インクジェットヘッド111の幅方向D2における端部に向かってプレート111cの少なくとも一部をワイプするように設けられているとよい。
【0046】
第1ワイプブレード11と第2ワイプブレード12とは、ワイプ時において互いに接触せず、且つ互いに近接していることが望ましい。第1ワイプブレード11と第2ワイプブレード12とが最も近接している部分の隙間は、境界部分111dに位置するとよい。また、第1ワイプブレード11と第2ワイプブレード12とが直接的に連結されていると、連結部分でワイプ時の当接圧が不均一になるため、ブレード支持部材13を介して連結されていることが望ましい。但し、第1ワイプブレード11と第2ワイプブレード12とが直接的に連結されていてもよい。
【0047】
図5に示すように、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12は、ワイプ前の状態で、ノズル面111aに直交する上方向に延びる。ワイプ前における第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12の上端は、ノズル面111aよりも上方に位置する。これにより、第1ワイプブレード11は、ワイプ時に湾曲した状態でノズル面111a及びプレート111cをワイプし、第2ワイプブレード12は、ワイプ時に湾曲した状態でプレート111cをワイプする。
【0048】
第2ワイプブレード12は、第1ワイプブレード11がノズル面111aをワイプするのよりも単位面積あたりに強い当接圧でプレート111cをワイプするとよい。このように当接圧力を強めるためには、例えば、第2ワイプブレード12の厚さを第1ワイプブレード11の厚さよりも厚くしたり、第2ワイプブレード12のワイプ前の上下方向の長さ(自由長)を第1ワイプブレード11のワイプ前の上下方向の長さよりも短くしたり、或いは、第2ワイプブレード12の材質を第1ワイプブレード11の材質とは異なるものにしたりするとよい。
【0049】
図4に示すように、ブレード支持部材13には、上述の4つの第1ワイプブレード11及び4つの第2ワイプブレード12が一体に設けられている。なお、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12は、ブレード支持部材13とは別体に設けられ、ブレード支持部材13に取り付けられていてもよい。
【0050】
図4及び図5に示すように、ブレード支持部材13には、例えば、左右一対のネジ孔13a,13aがワイプ方向D1(前後方向)に貫通して設けられている。
【0051】
2つのガイド部20のそれぞれは、ワイプ方向D1に延びる例えばネジ軸であり、ブレード支持部材13のネジ孔13a,13aを貫通するように配置されている。そのため、ガイド部20が回転することによって、ワイパユニット10がワイプ方向D1に移動可能となる。
【0052】
インク受け部30は、インクジェットヘッド111から紙粉や埃などとともに落下する図7に示すパージインクPIを受ける。
【0053】
インク受け部30内のインクは、ワイパ機構1が図1に示す退避位置において傾くことにより、図4に示すインク受け部30の排出部30bから、図示はしないが廃液経路を経て廃液収容部へ流れるとよい。インク受け部30は、例えば、上方に開口する直方体形状を呈する。そのため、インク受け部30の内部底面がインク受け面30aとなる。なお、インク受け部30は、ガイド部20の前端を回転可能に支持する。
【0054】
ワイパ駆動部40は、例えば2つのモータ41を有する。
【0055】
モータ41は、ワイパユニット10(第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12)を駆動する駆動手段(アクチュエータ)の一例であり、例えば、ガイド部20に接着によって結合されている。モータ41は、ガイド部20を回転させることによって、上述のようにワイパユニット10をワイプ方向D1に移動させる。ワイパユニット10において、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12は、ブレード支持部材13を介して連結されているため、一体に移動する。なお、単一のモータ41が、例えば駆動ベルトを回転させることによって、この駆動ベルト内のプーリを介して2つのガイド部20を回転させてもよい。或いは、単一のモータ41及び単一のガイド部20のみが配置され、この単一のガイド部20がワイパユニット10を前後方向に移動させてもよい。
【0056】
次に、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12を用いたワイプ動作について説明する。なお、このワイプ動作は、例えば、所定の印刷枚数ごと若しくは経過時間ごと又は印刷の前後に行われるか、或いは、図2に示す操作パネル部163におけるユーザの操作に基づいて行われるとよい。
【0057】
図7及び図8は、ワイプ動作を説明するためのワイパユニット10の斜視図である。
【0058】
まず、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12のワイプ前に、図3に示すように、吸着搬送部120が図1に示す印刷位置よりも下方に移動し、ワイパ機構1が印刷部110と吸着搬送部120との間に移動する。また、インクジェットヘッド111は、ノズル列111bから図7に示すようにパージインクPIを吐出する。これにより、ノズル列111bから吐出されたパージインクPIが複数箇所に集まって点在する。
【0059】
その後、図7に示すように、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12がワイプ方向D1に移動する。これにより、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12によってワイプされたパージインクPI等(例えば、パージインクPI、もともとノズル面111a又はプレート111cに付着していたインク、これらのインクに含まれる紙粉や埃など)は、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12を伝って、上述の図4及び図5に示すインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下する。
【0060】
ここで、上述のとおり、第1ワイプブレード11は、幅方向D2に対して傾斜した状態でノズル面111a及びプレート111cをワイプし、第2ワイプブレードは、プレート111cにおいてワイプしたパージインクPIを、第1ワイプブレード11によってノズル面111aにおいてワイプされたパージインクPIとともに、境界部分111dに導く。
【0061】
そのため、図8に示すように、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12によってワイプされたパージインクPIは、インクジェットヘッド111の側面には付着しない。一方で、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12のワイプ後の境界部分111dには、パージインクPIが残りやすい。しかしながら、境界部分111dは、ノズル面111aとプレート111cとの間の段差又は隙間に毛管力が働くこと、或いは、ノズル面111aの方がプレート111cよりも撥インク性が高いことによって、パージインクPIは、ノズル面111a(ノズル列111b)には移動しにくい。
【0062】
第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12がすべてのインクジェットヘッド111のワイプを完了した後には、インクジェットヘッド111がピエゾ素子を駆動させて各ノズル列111bからインクを吐出させるフラッシング動作により、ノズル列111bでのインクの混色を改善することが可能である。その後、図3に示す吸着搬送部120が下方に移動し、ワイパ機構1が図1に示す退避位置に移動する。また、吸着搬送部120は、印刷が行われる場合には印刷部110に近接する位置まで上昇し、印刷が行われない場合には更に下方の待機位置へ移動する。なお、ワイパユニット10(第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12)は、図1に示すワイパ機構1の退避位置において、次のワイプ動作に備えてワイプ方向D1の上流側に戻っている状態であることが望ましい。
【0063】
以上説明した本実施の形態では、ワイパ機構1は、インクを吐出するノズル列111bが設けられたインクジェットヘッド111のノズル面111aをワイプ方向D1にワイプする第1ワイプブレード11と、ノズル面111aに隣接しノズル面111aに平行に配置されたプレート111cをワイプ方向D1にワイプする第2ワイプブレード12とを備える。第1ワイプブレード11は、ワイプ方向D1に直交するノズル面111aの幅方向D2に対して少なくとも一部が傾斜した状態で、ノズル面111aをワイプする。第2ワイプブレード12は、この第2ワイプブレード12によってプレート111cにおいてワイプされたパージインクPI等(インク)及び第1ワイプブレード11によってノズル面111aにおいてワイプされたパージインクPI等を、第1ワイプブレード11と協働してプレート111cとノズル面111aとの境界部分111dに導くように、第1ワイプブレード11が幅方向D2に対して角度θ1傾斜するのとは反対方向に幅方向D2に対して角度θ2傾斜した状態で、プレート111cをワイプする。
【0064】
このように、第1ワイプブレード11及び第2ワイプブレード12によってワイプされたパージインクPI等が境界部分111dに導かれることによって、例えば、30mm/s以上の速度でワイプが行われる場合にも、パージインクPI等はインクジェットヘッド111の側面には付着しにくい。そのため、時間経過や用紙Pの搬送気流によってインクジェットヘッド111の側面に付着したパージインクPI等がノズル面111aやプレート111cに移動し、用紙Pや搬送ベルトを汚したり吐出不良を招いたりするのを回避することができる。また、パージインクPI等は、境界部分111dに導かれることによって、例えば40mN/m以下の表面張力を有するインクを用いる場合にも、境界部分111dから第1ワイプブレード11又は第2ワイプブレード12を伝ってインク受け部30に落下しやすくなる。また、ワイプ後の境界部分111dにパージインクPI等が残っても、境界部分111dは、ノズル面111aとプレート111cとの間の段差又は隙間に毛管力が働くこと、或いは、ノズル面111aの方がプレート111cよりも撥インク性が高いことによって、パージインクPI等を保持しやすいため、パージインクPI等がノズル面111a(ノズル列111b)やプレート111cには移動しにくい。よって、本実施の形態によれば、ワイプされたパージインクPI等を確実に除去することができる。これにより、ノズル面111aのパージインクPI等を確実にワイプするためにワイプブレードの当接圧を高くする態様と比較して、当接圧を高くすることに起因してノズル面111aの撥インク処理がダメージを受け、結果として、ノズル面111aからパージインクPI等を除去できなくなるのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、第1ワイプブレード11は、幅方向D2の全体が幅方向D2に対して同一方向に角度θ1傾斜した状態で、ノズル面111a及びプレート111cの幅方向D2における全体をワイプする。
【0066】
これにより、第1ワイプブレード11によってワイプされたパージインクPI等をインクジェットヘッド111の幅方向D2における片側の境界部分111dに導くことで、インクジェットヘッド111の幅方向D2における両端側の側面にパージインクPI等が付着するのを防止することができる。更には、図10(第2変形例)に示すように、インクジェットヘッド111の幅方向D2における両側に第2ワイプブレード312が配置される構成と比較して、単一の第2ワイプブレード12を用いた簡素な構成にすることができる。また、第1ワイプブレード11がノズル面111a及びプレート111cの幅方向D2における全体をワイプすることによって、第1ワイプブレード11と第2ワイプブレード12との間の境界部分111dに隙間がある場合には、この隙間から漏れるパージインクPI等を第2ワイプブレード12よりもワイプ方向D1における上流側に位置する第1ワイプブレード11で確実にワイプすることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、第2ワイプブレード12は、第1ワイプブレード11がノズル面111aをワイプするのよりも単位面積あたりに強い当接圧でプレート111cをワイプする。
【0068】
これにより、ノズル面111aの撥インク処理へのダメージを低下しつつ、プレート111cにワイプ後にパージインクPIが残るのを抑制し、ひいては、プレート111cから撥インク性が高いノズル面111aに向けてパージインクPI等が移動するのを抑制することができる。
【0069】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0070】
[付記1]
インクを吐出するノズル列が設けられたインクジェットヘッドのノズル面をワイプ方向にワイプする第1ワイプブレードと、
前記ノズル面に隣接し当該ノズル面に平行に配置されたプレートを前記ワイプ方向にワイプする第2ワイプブレードとを備え、
前記第1ワイプブレードは、前記ワイプ方向に直交する前記ノズル面の幅方向に対して少なくとも一部が傾斜した状態で前記ノズル面をワイプし、
前記第2ワイプブレードは、当該第2ワイプブレードによって前記プレートにおいてワイプされたインク及び前記第1ワイプブレードによって前記ノズル面においてワイプされたインクを、前記第1ワイプブレードと協働して前記ノズル面と前記プレートとの境界部分に導くように、前記第1ワイプブレードが前記幅方向に対して傾斜するのとは反対方向に前記幅方向に対して傾斜した状態で前記プレートをワイプする
ことを特徴とするワイパ機構。
【0071】
[付記2]
前記第1ワイプブレードは、前記幅方向の全体が前記幅方向に対して同一方向に傾斜した状態で、前記ノズル面及び前記プレートの前記幅方向における全体をワイプする
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【0072】
[付記3]
前記第2ワイプブレードは、前記第1ワイプブレードが前記ノズル面をワイプするのよりも単位面積あたりに強い当接圧で前記プレートをワイプする
ことを特徴とする付記1又は2記載のワイパ機構。
【符号の説明】
【0073】
1 ワイパ機構
10 ワイパユニット
11 第1ワイプブレード
12 第2ワイプブレード
13 ブレード支持部材
13a ネジ孔
20 ガイド部
30 インク受け部
30a インク受け面
30b 排出部
40 ワイパ駆動部
41 モータ
100 インクジェット印刷装置
110 印刷部
111 インクジェットヘッド
111a ノズル面
111b ノズル列
111c プレート
111d 境界部分
120 吸着搬送部
130 外部給紙部
131 給紙トレイ
132 スクレーパローラ
133 ピックアップローラ
141,142,143 内部給紙部
141a,142a,143a 給紙トレイ
141b,142b,143b スクレーパローラ
141c,142c,143c ピックアップローラ
151~155 搬送ローラ対
156 レジストローラ対
161 制御部
162 記憶部
163 操作パネル部
164 スキャナ
165 排紙部
211 インクジェットヘッド
311 第1ワイプブレード
312 第2ワイプブレード
D1 ワイプ方向
D2 幅方向
P 用紙
PI パージインク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10