(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電池パックの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241219BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20241219BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20241219BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20241219BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20241219BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20241219BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/06
B62D25/08 L
B62D25/20 H
H01M50/242
H01M50/244 A
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020571015
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019047997
(87)【国際公開番号】W WO2020162028
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2019021193
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷古宇 政仁
(72)【発明者】
【氏名】平岩 義雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 毅
(72)【発明者】
【氏名】北村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 仁
【合議体】
【審判長】草野 顕子
【審判官】一ノ瀬 覚
【審判官】横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073416(WO,A1)
【文献】特開2006-335243(JP,A)
【文献】特開2013-109845(JP,A)
【文献】中国実用新案第205395746(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 2/10
H01M 10/625
H01M 10/6556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向両側に車両前後方向に沿って設けられる一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバの上に架け渡され、車両の荷室の底面を構成するリアフロアパネルと、
前記リアフロアパネルの上に、その長手方向が車両幅方向に沿うように設置される電池パックと、
前記電池パックの長手方向に延び、前記電池パックの下面及び車両幅方向両側の外側側面に接合されるとともに、前記一対のサイドメンバの上で一端部と他端部とがそれぞれ前記リアフロアパネルに固定されるブラケットと
を備え、
前記電池パックの下面は、短手方向中央域が長手方向に沿って
僅かに上方に盛り上がっており、
前記ブラケットは、前記電池パックの短手方向中央域に接合されること
を特徴とする電池パックの取付構造。
【請求項2】
前記電池パックは、
上面が開口した箱状のトレイと、
前記トレイの内側に前記トレイの長手方向に沿って設置され、前記ブラケットとともに前記トレイに接合される一対のインナーフレームと
を有し、
前記一対のインナーフレームは、前記トレイの底面に沿って設けられる底板部分と底板部分から斜めに延び前記トレイの内側側面に沿って延びる側板部分で構成され、
前記底板部分は前記トレイの底面において上方に盛り上がった前記トレイの短手方向中央域で前記ブラケットとともに前記トレイに接合され、前記側板部分は前記トレイの内側側面に設けられる傾斜面に接合されること
を特徴とする請求項1に記載の電池パックの取付構造。
【請求項3】
前記電池パックには、車室内の空気を当該電池パックの内部に供給するダクトが設けられており、
前記一対のインナーフレームは、前記トレイの短手方向において離間されるように設けられていること
を特徴とする請求項2に記載の電池パックの取付構造。
【請求項4】
前記リアフロアパネルは、前記電池パックが収容される凹部と、当該凹部の車両幅方向両側に設けられている平坦部とを有し、
前記トレイの長手方向両側において開口の周りに設けられたフランジは、前記ブラケットを介して前記平坦部に固定されること
を特徴とする請求項2又は3に記載の電池パックの取付構造。
【請求項5】
前記ダクトの直下に、前記ブラケットの一端部が配置されることを特徴とする請求項3に記載の電池パックの取付構造。
【請求項6】
前記ブラケットは、車両幅方向両側に設けられる一対のタイヤホイールハウスの間に設置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電池パックの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両の車室内に搭載された高電圧部品パックが開示されている。かかる高電圧部品パックは、フロアパネルに設けられた収納凹部に収納され、車両前後方向に間隔を開けて配置された一対のブラケットによって、車両幅方向両側に設置されたサイドメンバの一方に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する高電圧部品パックは、車体の後突時に車体の後部が前側に変形した場合に、高電圧部品パックは、変形した車体の後部によって押されて前側に移動する。
【0005】
しかしながら、大容量の電池パックは、簡単に移動するようだと、例えば、電池から電解液が漏れたり、電池や電気回路が短絡したりする可能性があり、安全性の観点で改善の余地があると考えられる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、電池パックの取付強度を高めることができる電池パックの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る電池パックの取付構造は、車両幅方向両側に車両前後方向に沿って設けられる一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバの上に架け渡され、車両の荷室の底面を構成するリアフロアパネルと、前記リアフロアパネルの上に、その長手方向が車両幅方向に沿うように設置される電池パックと、前記電池パックの長手方向に延び、前記電池パックの下面及び両外側面に接合されるとともに、前記一対のサイドメンバの上で一端部と他端部とがそれぞれ前記リアフロアパネルに固定されるブラケットとを備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、ブラケットは、電池パックの長手方向に延び、電池パックの下面及び両外側面に接合されるとともに、一対のサイドメンバの上で一端部と他端部がそれぞれリアフロアパネルに固定されるので、電池パックの取付強度を高めることができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記ブラケットは、前記電池パックの短手方向中央域に接合される。
【0010】
上記(2)の構成によれば、ブラケットは、電池パックの短手方向中央域に固定されるので、電池パックをより安定してリアフロアパネルに固定することが可能になる。さらに、電池パックの向きを180°回転させても電池パックを取り付けることができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記電池パックは、上面が開口した箱状のトレイと、前記トレイの内側に前記トレイの長手方向に沿って設置され、前記ブラケットとともに前記トレイに接合されるインナーフレームとを有する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、インナーフレームがトレイの内側にトレイの長手方向に沿って設置され、ブラケットとともにトレイに接合されるので、インナーフレーム、トレイ及びブラケットが一体となり、一つの構造体として強度を高めることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、前記電池パックには、車室内の空気を当該電池パックの内部に供給するダクトが設けられており、前記インナーフレームは、前記トレイの短手方向において離間されるように一対設けられている。
【0014】
上記(4)の構成によれば、インナーフレームは、トレイの短手方向において離間されるように一対設けられているので、ダクトから供給される空気がインナーフレームの間の空間を流れ、電池パックの内部を効果的に冷却できる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、前記リアフロアパネルは、前記電池パックが収容される凹部と、当該凹部の車両幅方向両側に設けられている平坦部とを有し、前記トレイの長手方向両側において開口の周りに設けられたフランジは、前記ブラケットを介して前記平坦部に固定される。
【0016】
上記(5)の構成によれば、トレイの長手方向両側において開口の周りに設けられたフランジは、ブラケットを介して平坦部に固定されるので、リアフロアパネルに対するトレイの接合強度を高めることができる。これにより、電池パックが安定して位置決めされ、良好な固定が維持される。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、前記ダクトの直下に前記ブラケットの一端部が配置される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、ダクトの直下にブラケットの一端部が配置されるので、ブラケットでダクトが保護される。これにより、車両が側面衝突された場合でもダクトの潰れを回避できる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか一つの構成において、前記ブラケットは、車両幅方向両側に設けられる一対のタイヤホイールハウスの間に設置される。
【0020】
上記(7)の構成によれば、ブラケットは、車両幅方向両側に設けられる一対のタイヤホイールハウスの間に設置されるので、車両の捻れを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、電池パックの取付強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造が採用される車両を概略的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示した電池パックを概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図2に示した電池パックの取付構造を示す平面図であって、電池パックのカバーを取り外した状態を示す図である。
【
図5】
図4に示した電池パックの取付構造を示すV-V線断面図である。
【
図6】
図4に示した電池パックの取付構造を示すVI-VI線断面図である。
【
図7】
図2に示した電池パックと電池パックに取り付けられるダクトを示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1を概略的に示す図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、電池パック2が搭載される車両であって、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV,PHEV)等の電動車両である。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造を概略的に示す斜視図である。
図3は、
図2に示した電池パック2を概略的に示す斜視図である。
図4は、
図2に示した電池パック2の取付構造を示す平面図であって、電池パック2のカバー22を取り外した状態を示す図である。
図5は、
図4に示した電池パック2の取付構造を示すV-V線断面図であり、
図6は、
図4に示した電池パック2の取付構造を示すVI-VI線断面図である。
図7は、
図2に示した電池パック2と電池パック2に設けられるダクト6を示す拡大斜視図である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、車両前後方向後側に電池パック2が搭載される車両であって、車両前後方向最も後側にリアバンパ(図示せず)を備えるとともに、リアバンパの前方、車両幅方向両側にタイヤホイールハウス14を備える。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、例えば、車両前後方向において車室の後方に荷室が設けられ、荷室の車両幅方向両側にタイヤホイールハウス14が配置される。
【0028】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、フロアパネル12の上に電池パック2が設置される車両であって、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1は、上述したリアバンパ及びタイヤホイールハウス14のほかに、一対のサイドメンバ11(
図5参照)及びフロアパネル12を備える。
【0029】
一対のサイドメンバ11は、車両1を構成する骨格部材であり、タイヤホイールハウス14の内側を車両前後方向に沿って設けられる。
図5に示すように、一対のサイドメンバ11は、それぞれ上面が開口した溝形の骨格部材であって、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより継ぎ目なく設けられる。一対のサイドメンバ11は、車両幅方向内側が下面から開口に向けて漸次拡開し、開口の車両幅方向内側の縁部に車両幅方向内側に向かって延びるフランジを有するとともに、開口の車両幅方向外側の縁部に上方に向かって延びるフランジを有する。
【0030】
フロアパネル12は、車両1の床を構成する床部材であり、上述した一対のサイドメンバ11の上に架け渡され、フロアパネル12の上方域に車室及び荷室を区画する。フロアパネル12は、一般に、複数のフロアパネルから構成され、車両前後方向の分割位置によってフロントフロアパネル(図示せず)、センターフロアパネル(図示せず)又はリアフロアパネル123に分類される。そして、センターフロアパネルは、車室の床面を構成し、リアフロアパネル123は、荷室の底面を構成する。これらのフロアパネルのそれぞれは、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより継ぎ目なく設けられる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1では、車両前後方向後側となるリアフロアパネル123の上に、その長手方向が車両幅方向に沿うように電池パック2が設置される。
【0032】
リアフロアパネル123は、車両幅方向内側の大きな領域が下方にくぼんでおり、
図4に示すように、この下方にくぼんだ大きな領域の車両前後方向前側の領域が電池パック2の設置領域123Aとなる。また、リアフロアパネル123の電池パック2の設置領域123Aに対応する車両幅方向両側の領域123Bに一対のリンフォース(図示せず)が設置される。一対のリンフォースは、リアフロアパネル123を補強する部材であって、車両前後方向に沿って配置される。一対のリンフォースは、リアフロアパネル123の下面に設置され、上述した一対のサイドメンバ11とリアフロアパネル123によって閉鎖される空間に収容される。これにより、一対のリンフォースは、リアフロアパネル123の一対のサイドメンバ11に重なる領域に設置される。
【0033】
また、
図5に示すように、リアフロアパネル123は、車両幅方向両側の縁部のそれぞれに上方に向かって延びるフランジを有する。リアフロアパネル123の上方に向かって延びるフランジは、サイドメンバ11の上方に向かって延びるフランジにスポット溶接によって接合される。また、サイドメンバ11の車両幅方向内側に延びるフランジは、リアフロアパネル123にスポット溶接によって接合される。
【0034】
これにより、リアフロアパネル123は、電池パック2の設置領域123Aが電池パック2が収容される凹部124となり、サイドメンバ11の開口を塞ぐリアフロアパネル123の両側縁部が凹部124の車幅方向に設けられる平坦部125となる。
【0035】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1では、センターフロアパネルとリアフロアパネル123の境界部分の上面にクロスメンバ16が設けられる。クロスメンバ16は、上述した一対のサイドメンバ11と同様に、車両1を構成する骨格部材であり、車両幅方向に沿って設けられる。クロスメンバ16は、下面が開口した溝形の骨格部材であって、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより継ぎ目なく設けられる。クロスメンバ16は、開口の車両前後方向前側の縁部に車両前後方向前側に向かって延びるフランジを有するとともに、開口の車両前後方向後側の縁部に車両前後方向後側に向かって延びるフランジを有する。クロスメンバ16の一端部は一対のサイドメンバ11の一方の上でリアフロアパネル123に固定され、クロスメンバ16の他端部は一対のサイドメンバ11の他方の上でリアフロアパネル123に固定される。そして、クロスメンバ16の車両前後方向前側に向かって延びるフランジはセンターフロアパネルにスポット溶接によって接合され、クロスメンバ16の車両前後方向後側に向かって延びるフランジはリアフロアパネル123にスポット溶接によって接合される。
【0036】
図3に示すように、電池パック2は、トレイ21とカバー22で構成される容器に、複数のバッテリセル(バッテリ)が一塊となったバッテリモジュール23とDC-DCコンバータ24等の部品を収容したものである(
図2参照)。
【0037】
図5に示すように、トレイ21は、上面が開口した平面視略矩形の浅い箱状の容器である。トレイ21は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。トレイ21の底面は、平面視略矩形であってその短手方向中央域が長手方向に沿って僅かに上方に盛り上がっている(
図6参照)。トレイ21の外側側面21Bは、トレイ21の下面21Aから開口(上面)に向けて漸次(徐々に)拡開され、長手方向両側の外側側面21B及び短手方向両側の外側側面がそれぞれ傾斜している。また、トレイ21の開口の周りにはフランジ21Cが設けられている。フランジ21Cは、カバー22が接合される部分であり、開口(上面)の全周に亘り設けられている。フランジ21Cは、開口から外側に水平に張り出され、その上面に水平な接合面が設けられる。
【0038】
図6に示すように、トレイ21は、その内側に一対のインナーフレーム211を有する。一対のインナーフレーム211は、トレイ21の短手方向に対をなし、トレイ21の短手方向において離間されるように、トレイ21の長手方向に沿って設置される。インナーフレーム211は、例えば、鋼板を折り曲げることにより一様の厚みを有する。インナーフレーム211は、トレイ21の底面に沿って設けられる底板部分と底板部分から斜めに延びてトレイ21の内側側面に沿って延びる側板部分とを有する。インナーフレーム211の底板部分は、トレイ21の底面において盛り上がったトレイ21の短手方向中央域と向かい合う位置に凹と凸が交互に連続する接合部分を有する。インナーフレーム211の底板部分は、接合部分の凹でトレイ21の底面において盛り上がったトレイ21の短手方向中央域にスポット溶接によって接合され、インナーフレーム211の側板部分はトレイ21の内側側面に設けられる傾斜面にスポット溶接によって接合される。
【0039】
図3に示すように、カバー22は、トレイ21と略同じ大きさの容器であって、下面が開口した平面視略矩形の浅い箱状の容器である。カバー22は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。カバー22の上面は、平面視略矩形であってその短手方向に沿って複数のビード(図示せず)を有している。カバー22の側面は、上面から開口(下面)に向けて漸次(徐々に)拡開され、長手方向両側の外側側面及び短手方向両側の外側側面が傾斜している。また、カバー22の開口の周りにはフランジ22Cが設けられている。フランジ22Cは、トレイ21に接合される部分であり、開口(下面)の全周に亘り設けられている。フランジ22Cは、開口から外側に水平に張り出され、その下面に水平な接合面が設けられる。
【0040】
例えば、カバー22は、カバー22のフランジ22Cに設けられた複数の穴をそれぞれ貫通するボルト(図示せず)をトレイ21のフランジ21Cの下面に設けられた複数のナット(ウエルドナット)(図示せず)に締結することによって、トレイ21に取り付けられる。
【0041】
図3に示すように、上述した電池パック2には、複数のブラケット31,32,33,34(
図4参照)が接合される。
【0042】
複数のブラケットのうち第1のブラケット31は、トレイ21の長手方向に延び、トレイ21の下面21A及び両側の外側側面21Bに接合される。これにより、第1のブラケット31は、電池パック2の下面2A及び両側の外側側面2Bに接合される。第1のブラケット31は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。第1のブラケット31は、トレイ21の底面が盛り上がったトレイ21の短手方向中央域の下面及び両側の外側側面に沿って湾曲する(
図5及び
図6参照)。
図6に示すように、第1のブラケット31の横断面は、大きなくぼみの中央に小さな突起を有する波形であって、大きなくぼみの両側に外側に延びるフランジを有する。第1のブラケット31は、トレイ21の底面が盛り上がったトレイ21の短手方向中央域の下面及び両側の外側側面に沿って設置され、第1のブラケット31のフランジはインナーフレーム211の底板部分とともにトレイ21にスポット溶接により接合される。また、第1のブラケット31のフランジはトレイ21の開口の周りに設けられたフランジ21Cにスポット溶接により接合される(
図4参照)。
【0043】
図3に示すように、複数のブラケットのうち第2のブラケット32と第3のブラケット33は、電池パック2をリアフロアパネル123の上に設置した場合に車両前後方向前側となる、トレイ21の短手方向一方側に間隔を開けて設置される。第2のブラケット32と第3のブラケット33は、トレイ21の短手方向に延び、トレイ21の短手方向一方側の外側側面に接合される。第2のブラケット32と第3のブラケット33は、例えば、一枚の鋼板をプレス加工することにより一様の厚みを有する。第2のブラケット32と第3のブラケット33は、トレイ21の外側側面に沿って湾曲する。第2のブラケット32と第3のブラケット33の横断面は、第1のブラケット31の横断面と同様、大きなくぼみの中央に小さな突起を有する波形であって、大きなくぼみの両側に外側に延びるフランジを有する。第2のブラケット32と第3のブラケット33の一端部は、トレイ21の短手方向一方側に間隔を開けて設置され、トレイ21にスポット溶接により接合される。
【0044】
図4に示すように、複数のブラケットのうち第4のブラケット34は、電池パック2をリアフロアパネル123の上に設置した場合に車両前後方向後側となる、トレイ21の短手方向他方側の中央に設置される。第4のブラケット34は、トレイ21の短手方向に延び、トレイ21の短手方向他方側の外側側面に接合される。第4のブラケット34は、例えば、プレス加工することにより一様の厚みを有する。第4のブラケット34は、トレイ21の外側側面に沿って上面が凹となるように湾曲する。第4のブラケット34の横断面は、第1のブラケット31の横断面と同様、大きなくぼみの中央に小さな突起を有する波形であって、大きなくぼみの両側に外側に延びるフランジを有する。第4のブラケット34の一端部は、トレイ21の短手方向他方側の略中央に設置され、トレイ21にスポット溶接により接合される。
【0045】
複数のブラケット31,32,33,34が接合された電池パック2(トレイ21)は、リアフロアパネル123の上に長手方向が車両幅方向に沿って設置される。リアフロアパネル123は、上述したように、車両幅方向内側の大きな領域が下方にくぼんでおり、電池パック2の下半部分(トレイ21の部分)がリアフロアパネル123の下方にくぼんだ領域の車両前後方向前側の領域(電池パック2の設置領域123A)に収容される(
図2参照)。これにより、電池パック2(トレイ21)の下面2A(21A)は、リアフロアパネル123のくぼんだ領域の底面に対向し、電池パック2(トレイ21)の両側の外側側面2B(21B)は、リアフロアパネル123のくぼんだ領域の両側の内側側面に対向する。
【0046】
電池パック2(トレイ21)に接合された第1のブラケット31は、車両幅方向両側に配置されるタイヤホイールハウス14の内側において、一対のサイドメンバ11の上で一端部31Aと他端部31Bがそれぞれリアフロアパネル123に固定される。例えば、第1のブラケット31は、第1のブラケット31の一端部31Aと他端部31Bとに設けられた穴をそれぞれ貫通するボルトをリアフロアパネル123の下面に設けられたナット(ウエルドナット)に締結することによって、リアフロアパネル123に固定される。
【0047】
これにより、トレイ21の長手方向両側において開口の周りに設けられたフランジ21Cは、第1のブラケット31を介してリアフロアパネル123の平坦部125に固定される。
【0048】
電池パック2(トレイ21)に接合された第2のブラケット32と第3のブラケット33の他端部は、クロスメンバ16に固定される。例えば、第2のブラケット32と第3のブラケット33の他端部は、第2のブラケット32と第3のブラケット33の他端部に設けられた穴をそれぞれ貫通するボルトをクロスメンバ16に設けられたネジ穴に締結することによって、クロスメンバ16に固定される。
【0049】
電池パック2(トレイ21)に接合された第4のブラケット34の他端部は、リアフロアパネル123に固定される。例えば、第4のブラケット34の他端部は、第4のブラケット34の他端部に設けられた穴を貫通するボルトをリアフロアパネル123の下面に設けられたナット(ウエルドナット)に締結することにより固定される。
【0050】
また、
図7に示すように、電池パック2には、ダクト6が設けられている。ダクト6は、車室内の空気を電池パック2に供給するためのもので、ダクト6の直下に第1のブラケット31の一端部31Aが配置されている。また、ダクト6は、車室を区画するサイドパネル(図示せず)に沿って設けられる。例えば、ダクト6は、電池パック2に接続され、電池パック2からサイドパネルに向かって延びる水平部分61と、水平部分61に接続され、サイドパネルに沿って延びる直立部分62とを備えている。
【0051】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造は、上述したように、第1のブラケット31が電池パック2(トレイ21)の長手方向に延び、電池パック2(トレイ21)の下面2A(21A)及び両側の外側側面2B(21B)に接合されるとともに、一対のサイドメンバ11の上で一端部31Aと他端部31Bがそれぞれリアフロアパネル123に固定される。したがって、第1のブラケット31は、電池パック2の取付強度を高めることができる。
【0052】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、第1のブラケット31は、上述したように、電池パック2(トレイ21)の短手方向中央域に接合される。したがって、電池パックをより安定してリアフロアパネル123に固定することが可能になる。さらに、電池パック2の向きを180°回転させても電池パック2をリアフロアパネル123に固定することができる。
【0053】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、電池パック2は、上述したように、インナーフレーム211がトレイ21の内側にトレイ21の長手方向に沿って設置され、ブラケットとともにトレイ21に接合される。したがって、インナーフレーム211、トレイ21及びブラケットが一体となり、一つの構造体として強度を高めることができる。また、こうしたインナーフレーム211にバッテリモジュール等が載置されることで、その固定も強固なものとなる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、電池パック2は、上述したように、インナーフレーム211は、電池パック2の短手方向において離間されるように一対設けられているので、ダクト6から供給される空気がインナーフレーム211の間の空間を流れ、電池パック2の内部を効果的に冷却できる。
【0055】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造において、トレイ21の長手方向両側において開口の周りに設けられたフランジ21Cは、上述したように、第1のブラケット31を介して平坦部125に固定されるので、リアフロアパネル123に対するトレイ21の接合強度を高めることができる。これにより、電池パック2が安定して位置決めされ、良好な固定が維持される。
【0056】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1において、上述したように、ダクト6の直下に第1のブラケット31の一端部31Aが配置されるので、第1のブラケット31でダクト6が保護される。これにより、車両1が側面衝突された場合でもダクトの潰れを回避できる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る電池パック2の取付構造が採用される車両1において、第1のブラケット31は、上述したように、車両幅方向両側に設けられる一対のタイヤホイールハウス14の間に設置される。したがって、車両1の捻れを抑制できる。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
11 サイドメンバ
12 フロアパネル
123 リアフロアパネル
123A 電池パックの設置領域
123B 電池パックの設置領域に対応する車幅方向両側の領域
124 凹部
125 平坦部
14 タイヤホイールハウス
16 クロスメンバ
2 電池パック
2A 下面
2B 外側側面
21 トレイ
21A 下面
21B 外側側面
21C フランジ
211 インナーフレーム
22 カバー
22C フランジ
23 バッテリモジュール
24 DC-DCコンバータ
31 第1のブラケット(ブラケット)
31A 一端部
31B 他端部
32 第2のブラケット
33 第3のブラケット
34 第4のブラケット
6 ダクト