(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20241219BHJP
G06T 5/50 20060101ALI20241219BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241219BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241219BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241219BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G06T1/00 330B
G06T5/50
G06T7/00 650B
G06T7/00 350C
G08G1/16 C
G08G1/00 D
G07C5/00 Z
(21)【出願番号】P 2021040660
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0327069(US,A1)
【文献】特開2012-160977(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112116620(CN,A)
【文献】特開2020-042422(JP,A)
【文献】特開2020-188368(JP,A)
【文献】特開2020-047165(JP,A)
【文献】勝又航生 外3名,ゆりカモ目:2台の360°カメラによるレール上浮遊体験,情報処理学会 シンポジウム エンタテインメントコンピューティングシンポジウム 2017 [online] ,日本,情報処理学会,2017年09月09日,pp.79~84
【文献】蓮沼 茂,ITSにおける画像技術の応用 車両・インフラ・地図・事故解析などにおける画像技術応用分野の全体像を紹介,画像ラボ,第19巻 第6号,日本,日本工業出版株式会社,2008年06月10日,pp.86~90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/94
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G07C 1/00 - 15/00
G08G 1/00 - 99/00
CSDB(日本国特許庁)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記マスクフィルタを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理手段と、
前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記取得手段により取得された複数の画像から得られる平均化画像に基づいて、前記マスクフィルタを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記取得手段により取得された前記複数の画像それぞれの各画素の画素値について、時系列に沿って移動平均を行うことにより前記平均化画像を取得することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記平均化画像に対して二値化処理を行うことにより、前記マスクフィルタを生成することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に対して画像処理を行うことを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理は、明度調整を含むことを特徴とする請求項
5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記検出手段による検出結果に基づいて表示手段を制御する表示制御手段、をさらに備えることを特徴とする請求項
1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記検出手段により検出された前記移動体の前記車両に対する位置に関する情報を表示するよう前記表示手段を制御することを特徴とする請求項
7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記画像処理装置の外部に構成されることを特徴とする請求項
7又は
8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記表示手段は、インジケータであることを特徴とする請求項
9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記表示手段、をさらに備えることを特徴とする請求項
7又は
8に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記取得手段は、前記車両が走行している間に、前記撮影手段により撮影された画像を前記所定の時間間隔で複数、取得することを特徴とする請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像処理装置は、ドライブレコーダであることを特徴とする請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段を備える画像処理装置において実行される画像処理方法であって、
前記撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成工程と、
前記生成工程において生成された前記マスクフィルタを記憶部に記憶させる記憶工程と、
前記記憶部に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理工程と、
前記処理工程においてマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項15】
車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得手段、
前記取得手段により取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成手段、
前記生成手段により生成された前記マスクフィルタを記憶する記憶手段、
前記記憶手段に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理手段、
前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影手段により撮影された画像を処理する画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラによる撮像画像に対して様々な処理が行われる。特許文献1には、サイドミラーから視野を後方に向けて取り付けられた撮像手段により撮像された画像において、各画素の輝度又は色相のばらつきの大きさが所定の閾値以下であることに基づいて処理範囲から除外することが記載されている。特許文献2には、サイドミラー近傍に配置された撮像部により撮像された撮像画像中の車体部分と一致するようにマスク画像を生成し、運転者の他車に対する視認性をより適切に向上させることが記載されている。特許文献3には、フロントウインドウ周辺に設置され自車両の前方を撮像する車載カメラによって撮像された画像に経路案内のための図形を重畳表示させることが記載されている。
【0003】
一方、画像処理については、画像上から移動体を除去し、路面背景のみを抽出した路面背景画像を作成することや(特許文献4)、物体認識処理において重要度の高い領域における輝度の重要度を相対的に高くし、重要度の高い領域ほど最適な輝度となるように調整することが知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-224649号公報
【文献】特開2016-111509号公報
【文献】特開2007-315861号公報
【文献】特開2003-296709号公報
【文献】特開2019-139471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの特許文献でも、車両の内部から撮影され車両の内部及び外部を含む撮影画像に基づいて、車両の外部の移動物体を適切に認識可能とすることについては言及されていない。
【0006】
本発明は、車両の内部から撮影される撮影画像に基づいて、車両の外部の移動物体を適切に認識可能とする画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得手段と、前記取得手段により取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記マスクフィルタを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理手段と、前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理方法は、車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段を備える画像処理装置において実行される画像処理方法であって、前記撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得工程と、前記取得工程において取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成工程と、前記生成工程において生成された前記マスクフィルタを記憶部に記憶させる記憶工程と、前記記憶部に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理工程と、前記処理工程においてマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出工程とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得手段、前記取得手段により取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成手段、前記生成手段により生成された前記マスクフィルタを記憶する記憶手段、前記記憶手段に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理手段、前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出手段、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両の内部から撮影される撮影画像に基づいて、車両の外部の移動物体を適切に認識可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】制御ユニットの機能ブロックを示す図である。
【
図3】ドライブレコーダとインジケータを説明するための図である。
【
図4】ドライブレコーダによる撮像画像を示す図である。
【
図6】マスクフィルタ生成処理を示すフローチャートである。
【
図8】平均化フレーム画像とマスクフィルタを説明するための図である。
【
図9】マスク済み画像を用いた物体検出を説明するための図である。
【
図10】車両の周囲に歩行者が認識された様子を示す図である。
【
図11】リスク対象となる物体の判断を説明するための図である。
【
図12】リスク対象となる物体の判断を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用制御装置(走行制御装置)のブロック図であり、車両1を制御する。
図1において、車両1はその概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。
【0014】
図1の制御装置は、制御ユニット2を含む。制御ユニット2は車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU20~29を含む。各ECUは、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、記憶デバイスおよびインタフェース等を複数備えていてもよい。また、
図1の制御装置の構成は、プログラムに係る発明を実施するコンピュータとなり得る。
【0015】
以下、各ECU20~29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、あるいは、統合することが可能である。
【0016】
ECU20は、車両1の運転支援および自動運転に関わる制御を実行する。運転支援においては、車両1の操舵と、加減速の少なくともいずれか一方を自動制御する。自動運転においては、車両1の操舵と、加減速の双方を自動制御する。
【0017】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は、操舵操作をアシストしたり、あるいは、前輪を自動操舵するための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU21は、ECU20からの指示に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0018】
ECU22および23は、車両の周囲状況を検知する検知ユニット41~43の制御および検知結果の情報処理を行う。検知ユニット41は、車両1の前方を撮影するカメラであり(以下、カメラ41と表記する場合がある。)、本実施形態の場合、車両1のルーフ前部でフロントウィンドウの車室内側に取り付けられる。カメラ41が撮影した画像の解析により、物標の輪郭抽出や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0019】
検知ユニット42は、Light Detection and Ranging(LIDAR)であり、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、検知ユニット42は5つ設けられており、車両1の前部の各隅部に1つずつ、後部中央に1つ、後部各側方に1つずつ設けられている。検知ユニット43は、ミリ波レーダであり(以下、レーダ43と表記する場合がある)、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距する。本実施形態の場合、レーダ43は5つ設けられており、車両1の前部中央に1つ、前部各隅部に1つずつ、後部各隅部に一つずつ設けられている。
【0020】
ECU22は、一方のカメラ41と、各検知ユニット42の制御および検知結果の情報処理を行う。ECU23は、他方のカメラ41と、各レーダ43の制御および検知結果の情報処理を行う。車両の周囲状況を検知する装置を二組備えたことで、検知結果の信頼性を向上でき、また、カメラやレーダ等、種類の異なる検知ユニットを備えたことで、車両の周辺環境の解析を多面的に行うことができる。
【0021】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GPSセンサ24b、通信装置24cの制御および検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は、車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GPSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報、気象情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、記憶デバイスに構築された地図情報のデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は、現在地から目的地へのルート探索等を行う。なお、データベース24aには、上記の交通情報や気象情報などのデータベースが構築されても良い。
【0022】
ECU25は、車車間通信用の通信装置25aを備える。通信装置25aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。通信装置25aは、各種の通信機能を有し、例えば、専用狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)機能やセルラー通信機能を有する。通信装置25aは、送受信アンテナを含むTCU(Telematics Communication Unit)として構成されても良い。DSRCは、単方向又は双方向の狭域~中域における通信機能であり、車両間、路車間の高速なデータ通信を可能とする。
【0023】
ECU26は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は、車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU26は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替える。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU26は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0024】
ECU27は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。
図1の例の場合、方向指示器8は、車両1の前部、ドアミラーおよび後部に設けられている。
【0025】
ECU28は、入出力装置9の制御を行う。入出力装置9は、運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置91は、運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置92は、運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置92は例えば運転席正面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動または光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせてもよい。また、表示装置92は、ナビゲーション装置を含む。
【0026】
入力装置93は、運転者が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群であるが、音声入力装置も含まれてもよい。
【0027】
ECU29は、ブレーキ装置10やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置10は、例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置10の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置10を自動制御し、車両1の減速および停止を制御する。ブレーキ装置10やパーキングブレーキは、車両1の停止状態を維持するために作動することができる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0028】
ECU20が実行する車両1の運転支援に関わる制御について説明する。運転支援においては、ECU20は車両1の操舵と、加減速の少なくともいずれか一方を自動制御する。自動制御の際、ECU20はECU22および23から車両1の周囲状況に関する情報(外界情報)を取得し、取得した情報に基づきECU21、ECU26および29に指示して、車両1の操舵、加減速を制御する。なお、車両1の操舵と加減速の双方がECU20によって制御される場合であっても、運転者に周辺やシステムの状態の監視を要求する場合には、運転支援に関わる制御として実行される。上記では、ECU20が車両1の運転支援に関わる制御を実行する場合を説明したが、ECU20が車両1の自動運転に関わる制御を実行する場合もある。この場合、ECU20は、運転者により目的地と自動運転が指示されると、ECU24により探索された案内ルートにしたがって、目的地へ向けて車両1の走行を自動制御する。この場合も運転支援に関わる制御を実行する場合と同様、ECU20はECU22および23から車両1の周囲状況に関する情報(外界情報)を取得し、取得した情報に基づきECU21、ECU26および29に指示して、車両1の操舵、加減速を制御する。本実施形態は、ECU20が車両1の運転支援に関わる制御を実行する場合と、ECU20が車両1の自動運転に関わる制御を実行する場合の双方に適用され得る。
【0029】
図2は、制御ユニット2の機能ブロックを示す図である。制御部200は、
図1の制御ユニット2に対応し、外界認識部201、自己位置認識部202、車内認識部203、行動計画部204、駆動制御部205、デバイス制御部206を含む。各ブロックは、
図1に示す1つのECU、若しくは、複数のECUにより実現される。
【0030】
外界認識部201は、外界認識用カメラ207及び外界認識用センサ208からの信号に基づいて、車両1の外界情報を認識する。ここで、外界認識用カメラ207は、例えば
図1のカメラ41であり、外界認識用センサ208は、例えば
図1の検知ユニット42、43である。外界認識部201は、外界認識用カメラ207及び外界認識用センサ208からの信号に基づいて、例えば、交差点や踏切、トンネル等のシーン、路肩等のフリースペース、他車両の挙動(速度や進行方向)を認識する。自己位置認識部202は、GPSセンサ211からの信号に基づいて車両1の現在位置を認識する。ここで、GPSセンサ211は、例えば、
図1のGPSセンサ24bに対応する。
【0031】
車内認識部203は、車内認識用カメラ209及び車内認識用センサ210からの信号に基づいて、車両1の搭乗者を識別し、また、搭乗者の状態を認識する。車内認識用カメラ209は、例えば、車両1の車内の表示装置92上に設置された近赤外カメラであり、例えば、搭乗者の視線の方向を検出する。また、車内認識用センサ210は、例えば、搭乗者の生体信号を検知するセンサである。車内認識部203は、それらの信号に基づいて、搭乗者の居眠り状態、運転以外の作業中の状態、であることなどを認識する。
【0032】
行動計画部204は、外界認識部201、自己位置認識部202による認識の結果に基づいて、最適経路、リスク回避経路など、車両1の走行経路を計画する走行計画を実行する。行動計画部204は、例えば、交差点や踏切等の開始点や終点に基づく進入判定、他車両の挙動予測に基づく行動計画を行う。駆動制御部205は、行動計画部204による行動計画に基づいて、駆動力出力装置212、ステアリング装置213、ブレーキ装置214を制御する。ここで、駆動力出力装置212は、例えば、
図1のパワープラント6に対応し、ステアリング装置213は、
図1の電動パワーステアリング装置3に対応し、ブレーキ装置214は、ブレーキ装置10に対応する。
【0033】
デバイス制御部206は、制御部200に接続されるデバイスを制御する。例えば、デバイス制御部206は、スピーカ215を制御し、警告やナビゲーションのためのメッセージ等、所定の音声メッセージを出力させる。また、例えば、デバイス制御部206は、表示装置216を制御し、所定のインタフェース画面を表示させる。表示装置216は、例えば表示装置92に対応する。また、例えば、デバイス制御部206は、ナビゲーション装置217を制御し、ナビゲーション装置217での設定情報を取得する。
【0034】
制御部200は、
図2に示す以外の機能ブロックを適宜含んでも良く、例えば、通信装置24cを介して取得した地図情報に基づいて目的地までの最適経路を算出する最適経路算出部を含んでも良い。また、制御部200が、
図2に示すカメラやセンサ以外から情報を取得しても良く、例えば、通信装置25aを介して他の車両の情報を取得するようにしても良い。また、制御部200は、GPSセンサ211だけでなく、車両1に設けられた各種センサからの検知信号を受信する。例えば、制御部200は、車両1のドア部に設けられたドアの開閉センサやドアロックの機構センサの検知信号を、ドア部に構成されたECUを介して受信する。それにより、制御部200は、ドアのロック解除や、ドアの開閉動作を検知することができる。
【0035】
本実施形態では、車両1には、ドライブレコーダ218が取り付けられている。ドライブレコーダ218は、車両1に内蔵されている構成でも良いし、後付けで取り付けられた構成でも良い。本実施形態では、ドライブレコーダ218は、
図3に示すように、例えば、フロントガラスの上部且つルームミラーの裏側に取り付けられる。ドライブレコーダ218は、例えば、センサ222により車両1に対する閾値以上の衝撃をトリガとして、カメラ221で撮影された動画像データを記憶部223に記憶する。
図2では、ドライブレコーダ218は、カメラ221が内蔵された構成として示されているが、本体とカメラ221とが分離されたセパレート型として構成されても良い。
【0036】
制御部220は、プロセッサやメモリを含み、ドライブレコーダ218を統括的に制御する。例えば、制御部220は、センサ222からの検知信号に基づいて、カメラ221での撮像を開始したり、撮像画像データを記憶部223に格納する。本実施形態の動作は、例えば、制御部220のプロセッサがメモリに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより実現される。即ち、制御部220及びドライブレコーダ218は、発明を実施するコンピュータとなり得る。
【0037】
カメラ221は、
図3に示すように、ドライブレコーダ218の前面に構成されたカメラ301と、ドライブレコーダ218の後面に構成されたカメラ302とを含む。カメラ301は、車両1の前方を撮像可能な広角カメラであり、カメラ302は、車両の後方を撮像可能な魚眼カメラである。魚眼カメラとして、例えば水平に設置された一つの魚眼カメラが用いられても良い。また、魚眼カメラとしては、例えば画角が220~240度である魚眼カメラが用いられる。
図3では、図示上、カメラ301とカメラ302が各1つずつ示されているが、各複数構成されても良い。
図4の画像401は、カメラ301により撮像された画像の一例を示す。
図4の画像402、403、404は、カメラ302により撮像された画像の一例を示す。
図4に示すように、画像402、403、404には、車両1の内部の画像と、車窓から見える外部の風景画像とが含まれている。画像402はドライブレコーダ218の右後方が撮像された画像を示し、画像403は、ドライブレコーダ218の左後方が撮像された画像を示す。また、画像404は、ドライブレコーダ218の後方が撮像された画像を示す。カメラ221は、撮像した画像データを所定のフレームレートで制御部220に送信し、制御部220は、送信された画像データに基づいて、MP4等の所定フォーマットで作成された動画ファイルの形式で記憶部223に格納する。
【0038】
センサ222は、例えば、加速度センサやモーションセンサ、GPSセンサを含む。制御部220は、センサ222からの検知信号に基づいて車両1の位置情報、車速情報、加速度情報、時刻情報等を取得し、取得した各情報に基づいてカメラ221の撮像制御、撮像された画像の表示制御を行う。
【0039】
記憶部223は、例えばSDカードであり、所定容量の動画像データを記憶可能に構成されている。また、本実施形態においては、記憶部223は、後述する生成されたマスクフィルタを記憶する。表示部224は、例えば液晶モニタであり、設定画面等、各種ユーザインタフェース画面を表示する。また、ドライブレコーダ218は、ナビゲーション装置217と連携するように構成されても良い。例えば、ナビゲーション装置217で表示された画面上での設定操作により、ドライブレコーダ218の設定が行われても良い。通信インタフェース225は、車両1の制御部200や各電装ユニットとの間での通信を可能とする。例えば、ドライブレコーダ218は、Bluetooth(登録商標)/WiFi(登録商標)により、制御部200やブレーキ装置214との間の通信を可能とする。また、ドライブレコーダ218は、車両1の制御部200や各電装ユニット以外の装置、例えば、ドライバが保持するスマートフォン等の携帯端末と通信可能なように構成されても良い。
【0040】
インジケータ219は、
図3に示すようにダッシュボード上部に設けられ、車両1周辺の8方向それぞれに対応する表示領域を個別にLED等で点灯可能に構成されている。車両1周辺の8方向とは、
図11及び
図12に示すように、車両1の前方(F)、前右方(FR)、前左方(FL)、右方(R)、左方(L)、後方(B)、後右方(BR)、後左方(BL)である。インジケータ219の表面のガラス状の円領域は、上記8方向に分割されており、各領域には、例えば黄色/赤色の可変LED304が埋め込まれている。LED304が発光することにより、ドライバからは、そのLED304に対応する扇型の部分が発光しているように見える。ドライブレコーダ218は、通信インタフェース225を介してインジケータ219と通信可能である。例えば、ドライブレコーダ218は、カメラ221の撮像画像データに基づいて車両1の外部のリスク対象物を判断し、リスク対象物が存在する方向に対応するLED304を所定色に発光させる。リスク対象物の判断については後述する。ドライブレコーダ218は、
図2に示す以外の機能ブロックを適宜含んでも良く、例えば、音を入力するためのマイクを含んでも良い。
【0041】
本実施形態では、ドライブレコーダ218により撮影された画像に基づいて、車両1の外部のリスク対象物を判断し、その判断結果をドライバ等の搭乗者に報知する。ドライブレコーダ218は、車両1の前方のみならず、車両1の内部を撮影している。そのため、ドライブレコーダ218により撮影された画像には、車両1の内部のみならず、車窓から見える外部の風景も含まれている。本実施形態では、ドライブレコーダ218により撮影された画像のそのような特長に基づいて、車両1の前方のみならず、側後方のリスク対象物を判断する。また、その際、ドライブレコーダ218により撮影された画像のうち、後述する処理によって車窓から見える外部の風景を適切に特定することができる。
【0042】
図5は、本実施形態におけるドライブレコーダ218の表示制御処理を示すフローチャートである。
図5の処理は、例えば、ドライブレコーダ218の制御部220のプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
図5の処理は、例えば、ドライバが車両1に搭乗して運転を開始する際に開始される。また、ドライバがドライブレコーダ218の設定画面において、車両1の外部のリスク対象物の報知をドライブレコーダ218により行うことを設定し、その設定をトリガとして
図5の処理が開始されても良い。
【0043】
S101において、制御部220は、車両1が走行中であるか否かを判定する。例えば、制御部220は、センサ222からの検知信号やカメラ221の撮像画像データに基づいて、車両1が走行中であるか否かを判定する。車両1が走行中であると判定された場合、S102に進み、車両1が走行中でないと判定された場合、S109に進む。車両1が走行中でないと判定された場合とは、例えば、交差点での一時停車を含む。本実施形態では、S101において車両1が走行中であるか否かを判定するが、種種の車両情報の条件に基づいて判定が行われても良い。例えば、車両1の速度が所定値以下であるか否かに基づいてS101の判定が行われても良い。S102では、マスクフィルタの生成が行われる。
【0044】
図6は、S102のマスクフィルタ生成の処理を示すフローチャートである。S201において、制御部220は、カメラ221からのフレーム画像データを取得する。S202において、制御部220は、所定数のフレーム画像データを取得したか否かを判定し、所定数のフレーム画像データを取得していないと判定された場合、S203において所定時間の経過を待ち、S201で再度、フレーム画像データを取得する。S203の所定時間は、フレームレートに対応する。即ち、S201~S203の処理により、所定の時間間隔で所定数のフレーム画像データが時系列に取得される。S202の後、S204において、制御部220は、S201~S203で取得された所定数のフレーム画像データに基づいて、平均化画像データを作成する。
【0045】
そして、S205において、制御部220は、フレーム画像データの取得を終了するか否かを判定する。例えば、制御部220は、マスクフィルタを生成するために十分な平均化画像データが作成されたと判定された場合に、フレーム画像データの取得を終了すると判定する。この判定基準については後述する。S205でフレーム画像データの取得を終了しないと判定された場合、S203において所定時間の経過を待ち、S201で再度、フレーム画像データを取得する。
【0046】
図8は、S201~S205の動作を説明するための図である。
図8では、カメラ302により、ドライブレコーダ218の左後方が撮影された画像を示している。フレーム画像801~804は、カメラ302により所定の時間間隔で時系列に撮像されたフレーム画像を示す。フレーム画像801は、フレーム画像取得時刻k-3においてS201で取得されたフレーム画像である。フレーム画像802は、S203で所定時間経過後のフレーム画像取得時刻k-2においてS201で取得されたフレーム画像である。フレーム画像803は、S203で所定時間経過後のフレーム画像取得時刻k-1においてS201で取得されたフレーム画像である。フレーム画像804は、S203で所定時間経過後のフレーム画像取得時刻kで取得されたフレーム画像である。即ち、所定時間の経過に伴って、S201でフレーム画像801~804が順に取得されている。なお、ここでは、S202で判定される所定数を「2」とする。また、各フレーム画像は、例えばRGB画像として説明し、画素値は、RGB各値として表される。制御部220は、フレーム画像801~804を順に用いて平均化画像を作成する。即ち、制御部220は、所定数取得されたフレーム画像の各画素についてRGB各値の平均値を算出する。
【0047】
例えば、フレーム画像801とフレーム画像802が取得されると、S202で所定数のフレーム画像が取得されたと判定され、フレーム画像801とフレーム画像802を用いてS204で平均化画像が作成される。そして、S203を経てS201でフレーム画像803が取得されると、S202で所定数のフレーム画像が取得されたと判定される。即ち、既にS204で作成された平均化画像と、今回のS201で取得されたフレーム画像803との2つのフレーム画像が取得されたことにより、S202で所定数のフレーム画像が取得されたと判定される。そして、既にS204で作成された平均化画像とフレーム画像803を用いてS204で平均化画像が作成される。
【0048】
そして、S203を経てS201でフレーム画像804が取得されると、S202で所定数のフレーム画像が取得されたと判定される。即ち、既にS204で作成された平均化画像と、今回のS201で取得されたフレーム画像804と2つのフレーム画像が取得されたことにより、S202で所定数のフレーム画像が取得されたと判定される。そして、既にS204で作成された平均化画像とフレーム画像804を用いてS204で平均化画像が作成される。
【0049】
即ち、本実施形態では、所定時間間隔で取得されるフレーム画像について、所定数ごとの各画素値の移動平均が算出される。平均化画像805は、上記の場合に、フレーム画像804が取得されたときに作成された平均化画像を示している。
図6の処理により作成される平均化画像の画素値には、以下のような傾向が表れる。
【0050】
フレーム画像801~804に示されるように、画像内は、車内空間を撮影した領域と、車窓から見える外部の風景を撮影した領域とを含んでいる。車内空間を撮影した領域には、例えば、シートやドアの画像が含まれ、車窓から見える外部の風景を撮影した領域には、例えば、外部の歩行者や外部の車両の画像が含まれている。ここで、車内空間を撮影した領域の画像は、撮影対象物の時間変化がほぼないとみなせるので、時間経過に伴うフレーム画像に渡って各画素の画素値はほぼ一定の画素値となる。一方、車窓から見える外部の風景を撮影した領域の画像は、撮影対象物は時間経過に伴ってランダムに変化していくので、フレーム画像801~804に渡って各画素の画素値のばらつきは大きくなる。このような傾向があることから、平均化画像内の車内空間を撮影した領域における画素値は、撮影対象物に基づく画素値となる。一方、平均化画像内の車窓から見える外部の風景を撮影した領域における画素値は、最大値もしくは最小値に近づいていく。例えば、平均化の際の加算によっては、RGB画素値の最大値=(255、255、255)の白色に近づいていく(白色化)。また、例えば、平均化の際の加算によっては、RGB画素値の最小値=(0、0、0)の黒色に近づいていく。本実施形態では、平均化画像内の車窓から見える外部の風景を撮影した領域における画素値は、最大値に近づいていくものとして説明する。
【0051】
図8の平均化画像805内の領域806は、S204の平均化画像の作成が繰り返し行われていくことによって白色化されたことを示している。なお、
図8の平均化画像805では、完全に白色化されている状態を示しているが、S204の処理回数によっては、完全に白色化されていない状態があり得る。
【0052】
S205のフレーム画像データの取得終了の判断基準として、例えば、白色化とみなせるRGB値を閾値として定めておき、RGB値が変動している領域(例えば、領域806)について、そのRGB値が閾値以上となった場合に白色化されたと判断し、フレーム画像データの取得を終了すると判定しても良い。閾値は、例えば、ランダムに色が出現する画素の重ね合わせの回数と、白色化との関係を予め定めておくことによって決定されるようにしても良い。
【0053】
S206において、制御部220は、S204で作成された平均化画像に対して二値化処理を行う。二値化を行う際の画素値の閾値は、S205で用いられた閾値と同じでも良いし、異なっていても良い。例えば、S205での白色化とみなすための閾値をS206での二値化のための閾値よりも大きくしても良い。そのような構成により、外部の風景の領域と、マスキング処理の対象となる車内空間を撮影した領域とをより適切に特定することができる。
【0054】
図8の二値化画像807は、S206で二値化処理が行われたフレーム画像を示している。例えば、二値化画像807に示されるように、領域806に対応する領域は値「0」として、それ以外の領域は値「1」として二値化される。S207において、制御部220は、S206で二値化処理が行われた二値化画像807のうち、値「1」に対応する領域に基づいてマスクフィルタを生成し、記憶部223に格納する。その後、
図6の処理を終了する。
【0055】
再び、
図5を参照する。S102でマスクフィルタが生成された後、S103において、制御部220は、カメラ221で撮像された画像データに対して、S102で生成されたマスクフィルタによりマスキング処理を行う。
図9のマスク済み画像901は、S102で生成されたマスクフィルタによりマスキング処理が行われた画像を示す。マスク済み画像901に示すように、車窓から見える外部の風景以外の画像がマスキング処理された状態となっている。そして、S104において、制御部220は、マスク済み画像901に対して画像処理を行う。ここで、行われる画像処理は、後段の移動物体を適切に検出するための画像処理であり、例えば、明度調整である。即ち、マスク済み画像901には、車窓から見える外部の風景が撮影されているため、そのときの環境によっては、例えば画像の一部に白飛びが生じて階調が失われている可能性がある。階調が失われてしまうと、移動物体の検出においては、検出すべき物体を検出できなくなってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、マスク済み画像901に対してレベル補正やトーンカーブの調整を行い、階調が失われることを防ぐ。
【0056】
S104では、例えば、以下のような画像処理が行われても良い。制御部220は、マスク済み画像901内のマスキング処理されていない領域(即ち、車窓から見える外部の風景)における明度分布を検出する。この検出結果は、各明度に対する画素数のヒストグラム分布として抽出されるものである。そして、制御部220は、その明度分布が、明度最小値側に偏っていたり、明度最大値側に偏っている場合には、最小値から最大値までに渡って分布するよう偏りを解消する。その結果、マスク済み画像901内のマスキング処理されていない領域の明度が改善され、移動物体の検出を適切に行うことができる。
【0057】
S105において、制御部220は、マスク済み画像901に基づいて物体検出を行う。なお、物体検出では、例えば、歩行者や自転車等の移動物体(交通参加者)を検出可能に学習されたニューラルネットワークが用いられる。検出済み画像902では、移動物体として歩行者903が検出されている。ここで用いられるニューラルネットワークは、S104の画像処理の条件に対応する画像、例えば所定の明度分布の画像を用いて学習されたニューラルネットワークである。
【0058】
本実施形態では、マスク済み画像901に示されるように、車内空間がマスキング処理された画像データを用いて、移動物体の検出が行われる。車内空間には、動く物体が存在する可能性があり、例えば窓部近辺に吊るした飾り物などが振動で揺れることがあり得る。マスキング処理されていない画像データを用いた場合、そのような物体が車外の歩行者や自転車等の移動物体として誤って検出されてしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、カメラ221からのフレーム画像データに基づいて、車窓から見える外部の風景以外の領域がマスキング処理されるため、上記のような車内空間での物体を車外の移動物体として誤って検出してしまうことを防ぐことができる。
【0059】
S106において、制御部220は、S105で検出された物体について、車両1からの方向及び距離を検出する。例えば、制御部220は、時間経過に伴う複数のフレーム画像データを用いたオプティカルフローや、画像上でのオブジェクトの水平方向位置、オブジェクトの検出ボックスの大きさに基づいて、移動物体の方向及び距離を検出しても良い。
【0060】
図10は、車両1の移動に伴い、フレーム画像1001とフレーム画像1002が取得された場合を示す図である。制御部220は、フレーム画像1001から歩行者1003を検出し、フレーム画像1002から歩行者1004を検出している。そして、制御部220は、フレーム画像1001とフレーム画像1002を取得したときに、
図10の下段に示すように、車両1に対して歩行者1011と歩行者1012とが位置することを認識する。歩行者1011、1012はそれぞれ、歩行者1002、1004に対応している。
【0061】
S107において、制御部220は、車両1の車両情報に基づいて、S105で検出された移動物体のうち、リスク対象となる移動物体(リスク対象物)を判断する。例えば、制御部220は、車両1および移動物体の各挙動に基づいて、リスク対象物を判断する。車両1が直進している場合、制御部220は、車両1の右側方及び左側方の撮影画像から認識された移動物体の移動方向および推定速度と、車両1の車速とから衝突するリスクを判断し、リスクが高いと判断された移動物体をリスク対象物として判断する。また、車両1が旋回している場合には、リスク対象物の判断対象領域を旋回方向に限定する。
【0062】
図11は、
図10の下段に示すように制御部220が移動物体を認識し、車両1が左方向に旋回していく場合を示す図である。その場合、制御部220は、リスク抽出範囲1101をS107の判断の対象領域とする。
図11に示すように、車両1が左方向に旋回していく方向と歩行者1012の移動方向とが重なる。さらに、制御部220は、車両1の車速と歩行者1012の推定速度から、時間経過に伴って車両1と歩行者1012とが衝突するリスクが高いと判断する場合、歩行者1012をリスク対象物として判断する。一方、車両1が左方向に旋回していく方向と歩行者1011の移動方向とは互いに重なる。しかしながら、制御部220は、車両1の車速と歩行者1011の推定速度から、車両1と歩行者1011とが衝突するリスクは極めて低いと判断する場合、制御部220は、歩行者1011をリスク対象物として判断しない。
【0063】
図12は、
図10の下段に示すように制御部220が移動物体を認識し、車両1が右方向に旋回していく場合を示す図である。その場合、制御部220は、リスク抽出範囲1201をS107の判断の対象領域とする。つまり、歩行者1011及び1012に対してはリスク対象物の判断は行われない。このように、車両1の旋回方向に応じて、S107の判断の対象領域を限定するので、制御部220の処理負荷を軽減することができる。
【0064】
S108において、制御部220は、S107における判断結果に基づいて表示制御を行う。
【0065】
図7は、S108の表示制御の処理を示すフローチャートである。S301において、制御部220は、インジケータ219の表示領域を特定する。例えば、制御部220は、S106及びS107でリスク対象物として判断された移動物体の方向・距離に基づいて、インジケータ219の8分割された表示領域の中から、表示対象の領域を特定する。ここで、8分割された表示領域とは、前方(F)、前右方(FR)、前左方(FL)、右方(R)、左方(L)、後方(B)、後右方(BR)、後左方(BL)である。例えば、
図11に示すように、歩行者1012がリスク対象物として判断された場合には、制御部220は、インジケータ219の8分割された表示領域のうち、前左方に該当する表示領域を特定する。
【0066】
S302において、制御部220は、S301で特定された表示領域の表示形態を決定する。その際、制御部220は、リスク対象物および車両1の各挙動に基づいて、表示領域の表示形態を決定する。例えば、リスク対象物と車両1とのTTC(Time to Collision)が閾値より小さい場合には、緊急を表す赤色LEDを点灯すると決定する。一方、TTCが閾値より大きい場合には、注意を表す黄色LEDを点灯すると決定する。
【0067】
S303において、制御部220は、S301で特定された表示領域を、S302で決定された表示形態で表示するようインジケータ219を制御する。S303の後、
図7の処理を終了する。
【0068】
S301での表示領域の特定、およびS302での表示形態の決定は、上記に限られない。例えば、リスク対象物の位置が前方である場合、S301及びS302において制御部220は、インジケータ219の8分割された表示領域すべてを表示領域として特定し、赤色LEDを点灯するとして決定する。そのような構成により、特にリスクが高いと認識される領域にリスク対象物が存在した場合には、その警告表示の程度を大きくすることができる。
【0069】
また、制御部220は、制御部200からの情報にさらに基づいて、S301での表示領域の特定、およびS302での表示形態の決定を行うようにしても良い。例えば、制御部220は、制御部200の車内認識部203からの送信されたドライバの視線の方向の情報を用いて、S301及びS302の処理を行う。例えば、ドライバの視線の方向とリスク対象物とが所定時間一致していた場合には、そのリスク対象物に対応する表示領域の表示を行わないようにしても良い。そのような構成により、インジケータ219の表示のために、既にリスク対象物に向けているドライバの注意を低減させてしまうことを防ぐことができる。
【0070】
また、S108及び
図7の表示制御の処理は、インジケータ219に対してだけでなく、表示部224や表示装置216、ナビゲーション装置217に対して行われても良い。その場合、
図11や
図12に示すような、リスク対象物の方向・距離を識別可能な警告画面を表示するようにしても良い。
【0071】
以上のように、S101で車両1が走行中であると判定された場合、S102でマスクフィルタが生成される。一方、交差点での一時停止など、S101で車両1が走行中でないと判定された場合には、S109において、制御部220は、記憶部223に既に記憶されているマスクフィルタが存在するか否かを判定する。そして、既に記憶されているマスクフィルタが存在すると判定された場合、S110において、制御部220は、そのマスクフィルタを取得し、以降の処理を行う。一方、既に記憶されているマスクフィルタが存在しないと判定された場合、
図5の処理を終了する。その場合、再度、S101からの処理を繰り返すようにしても良い。
【0072】
このように、本実施形態によれば、例えば車両1が目的地に到着するまでの間、ドライブレコーダによる撮影画像を用いて、車両1の外部の移動物体(リスク対象物)を適切に検出することができる。また、その検出結果に基づいて、移動物体の位置に関する情報の表示制御を行うことができる。その結果、車両1の制御部200における処理負荷を軽減することができる。なお、車両1の外部の移動物体の検出および表示制御を、ドライブレコーダ218の撮影画像を用いて実行するか否かをドライブレコーダ218の設定画面において設定可能としても良い。また、そのような設定を車両1の目的地までの移動を開始する前でも、もしくは途中においても実行可能としても良い。また、本実施形態で説明したドライブレコーダ218の処理の少なくとも一部を、制御部200により実現するようにしても良い。例えば、制御部220は、
図5のS104の画像処理まで行われた画像データを制御部200に提供し、S105~S107の処理を制御部200が実行するようにしてリスク対象物の検出をより精度よく行うようにしても良い。例えば、車両1が旋回する場合においても、旋回方向と逆側方のリスク対象物の判断を行うようにしても良い。
【0073】
本実施形態では、カメラ221で撮像された画像データに対して、S102で生成されたマスクフィルタによりマスキング処理を行う構成を説明した。なお、複数の画像間の画素値の変化量に基づく構成であるならば、他の構成によりマスキング処理が行われても良い。例えば、数秒間に渡って順次撮像された複数の撮像画像において、画素値の変化の分散が所定値より低い領域(車内空間を撮影した領域に対応)をマスクすることによりマスキング処理を行う構成でも良い。その場合においても、本実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態の画像処理装置は、車両の内部に対応する領域および外部に対応する領域を含む画像を撮影する撮影手段(221)と、前記撮影手段により撮影された画像を所定の時間間隔で複数、取得する取得手段(220、S102)と、前記取得手段により取得された複数の画像における変化量に基づいて、前記撮影手段により撮影された画像のうち前記車両の内部に対応する領域をマスクするためのマスクフィルタを生成する生成手段(220、S102)と、前記生成手段により生成された前記マスクフィルタを記憶する記憶手段(223)とを備える。
【0075】
そのような構成により、例えばドライブレコーダ218の撮像画像に基づいて、外部のリスク対象物を適切に検出することができる。
【0076】
また、前記生成手段は、前記取得手段により取得された複数の画像から得られる平均化画像に基づいて、前記マスクフィルタを生成する。また、前記生成手段は、前記取得手段により取得された前記複数の画像それぞれの各画素の画素値について、時系列に沿って移動平均を行うことにより前記平均化画像を取得する。また、前記生成手段は、前記平均化画像に対して二値化処理を行うことにより、前記マスクフィルタを生成する。また、画像処理装置は、前記記憶手段に記憶された前記マスクフィルタを用いて、前記撮影手段により撮影された画像に対してマスキング処理を行う処理手段(220、S103)をさらに備える。
【0077】
そのような構成により、例えばドライブレコーダ218の撮影画像のうち、車両の内部に対応する領域を適切にマスキング処理するためのマスクフィルタを生成することができる。
【0078】
また、前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に対して画像処理(S104)を行う。また、前記画像処理は、明度調整を含む。
【0079】
そのような構成により、マスキング処理された画像を、外部の移動物体を検出するための適切な画像とすることができる。
【0080】
また、画像処理手段は、前記処理手段によりマスキング処理が行われた画像に基づいて、前記車両の外部の移動体を検出する検出手段(220、S105)、をさらに備える。
【0081】
そのような構成により、例えばドライブレコーダ218の撮影画像を用いて、車両の外部の歩行者を適切に検出することができる。
【0082】
また、画像処理手段は、前記検出手段による検出結果に基づいて表示手段(224、219、217)を制御する表示制御手段(220、S108)、をさらに備える。また、前記表示制御手段は、前記検出手段により検出された前記移動体の前記車両に対する位置に関する情報を表示するよう前記表示手段を制御する。
【0083】
そのような構成により、例えばドライブレコーダ218の撮影画像を用いて、移動物を警告表示することができる。
【0084】
また、前記表示手段は、前記画像処理装置の外部に構成される。また、前記表示手段は、インジケータ(219)である。そのような構成により、例えばドライブレコーダ218の撮影画像を用いて、インジケータを表示制御することができる。
【0085】
また、画像処理装置は、前記表示手段(224)、をさらに備える。そのような構成により、例えばドライブレコーダ218の撮影画像を用いて、ドライブレコーダ218上で移動物を警告表示することができる。
【0086】
また、前記取得手段は、前記車両が走行している間に、前記撮影手段により撮影された画像を前記所定の時間間隔で複数、取得する。
【0087】
そのような構成により、撮影手段により所定のフレームレートで撮影されるフレーム画像を用いることができる。
【0088】
また、前記画像処理装置は、ドライブレコーダ(218)である。そのような構成により、ドライブレコーダ218上で本実施形態の動作を実現することができる。
【0089】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 車両: 2 制御ユニット: 20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 ECU: 200、220 制御部: 218 ドライブレコーダ: 219 インジケータ