(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】基板処理方法、および、基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20241219BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/306 F
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2021046460
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田原 香奈
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0196444(US,A1)
【文献】特表2011-511442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0035436(US,A1)
【文献】国際公開第2017/086112(WO,A1)
【文献】特表2015-522951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をエッチングする基板処理方法であって、
前記基板の主面の表層部を酸化して酸化層を形成する酸化層形成工程と、
酸性ポリマーを含有するポリマー膜を前記基板の主面上に形成し、前記ポリマー膜中の前記酸性ポリマーによって前記酸化層を除去する酸化層除去工程とを含み、
前記酸化層形成工程および前記酸化層除去工程が、交互に繰り返される、基板処理方法。
【請求項2】
前記ポリマー膜が、アルカリ成分をさらに含有し、
前記酸化層除去工程が、前記ポリマー膜が形成された後、前記ポリマー膜を加熱して前記ポリマー膜から前記アルカリ成分を蒸発させることによって前記酸化層の除去を開始する除去開始工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記ポリマー膜が、導電性ポリマーをさらに含有する、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記酸化層除去工程の後、次の酸化層形成工程が開始される前に、前記基板の主面から前記ポリマー膜を除去するポリマー膜除去工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記酸化層形成工程が、前記基板の主面に液状酸化剤を供給することによって、前記酸化層を形成するウェット酸化工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記酸化層形成工程の後で、かつ、前記酸化層除去工程の前に、前記基板の主面を洗浄するリンス液を前記基板の主面に供給するリンス工程をさらに含む、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板をスピンチャックに保持させる基板保持工程をさらに含み、
前記酸化層形成工程が、前記スピンチャックに保持されている前記基板を加熱することによって前記酸化層を形成する加熱酸化工程を含み、
前記酸化層除去工程が、前記スピンチャックに保持されている前記基板の主面上に前記ポリマー膜を形成する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記加熱酸化工程が、ヒータユニットにより前記基板を加熱することによって、前記酸化層を形成する工程を含み、
前記酸化層除去工程の実行中に前記ヒータユニットにより前記基板を介して前記ポリマー膜を加熱するポリマー膜加熱工程をさらに含む、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記酸化層形成工程が、光照射、加熱、および、気体状酸化剤の供給の少なくともいずれかによって、前記酸化層を形成するドライ酸化工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
溶媒および前記酸性ポリマーを少なくとも含有するポリマー含有液を前記基板の主面に供給するポリマー含有液供給工程をさらに含み、
前記酸化層除去工程が、前記基板の主面上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって前記ポリマー膜を形成するポリマー膜形成工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
溶媒、前記酸性ポリマーおよび酸化剤を少なくとも含有する混合液を前記基板の主面に供給する混合液供給工程をさらに含み、
前記酸化層除去工程が、前記基板の主面上の混合液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって前記ポリマー膜を形成するポリマー膜形成工程を含み、
前記酸化層形成工程が、前記基板の主面に供給された混合液中の酸化剤によって前記酸化層を形成する混合液酸化工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記混合液供給工程が、混合液ノズルから混合液を吐出させ、前記混合液ノズルから吐出された混合液を前記基板に供給するノズル供給工程を含み、
前記混合液ノズルに接続された配管内で、液状酸化剤と、前記酸性ポリマーを含有す酸性ポリマー液とを混合することで混合液を形成する混合液形成工程をさらに含む、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記混合液供給工程が、混合液ノズルから混合液を吐出させ、前記混合液ノズルから吐出された混合液を前記基板に供給するノズル供給工程を含み、
前記混合液ノズルに混合液を案内する配管に混合液を供給する混合液タンク内で液状酸化剤および酸性ポリマー液を混合することによって混合液を形成する混合液形成工程をさらに含む、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項14】
基板をエッチングする基板処理装置であって、
基板の主面の表層部を酸化させる基板酸化ユニットと、
酸性ポリマーを含有するポリマー膜を基板の主面上に形成するポリマー膜形成ユニットと、
前記基板酸化ユニットによる前記基板の主面の表層部の酸化、および、前記ポリマー膜形成ユニットによる前記ポリマー膜の形成を交互に繰り返すように、前記基板酸化ユニット、および前記ポリマー膜形成ユニットを制御するコントローラとを含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法、および、基板を処理する基板処理装置に関する。
処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、過酸化水素水(H2O2水)等の酸化流体を基板に供給して酸化金属層を形成する工程と、希フッ酸(DHF)等のエッチング液を基板に供給して酸化金属層を除去する工程とを繰り返すことで所望のエッチング量を達成する基板処理が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の基板処理では、酸化金属層の形成および酸化金属層の除去を繰り返すことで酸化金属層をエッチングするので、多量の酸化金属層を一度に除去する場合と比較して、酸化金属層を精度良くエッチングできる。
しかしながら、特許文献1の基板処理では、酸化金属層の形成および除去において、それぞれ、連続流の希フッ酸および過酸化水素水による処理が採用されている。そのため、基板処理において、希フッ酸、過酸化水素水等の薬液を多量に使用する必要があるため、環境負荷が問題となる。
【0005】
そこで、この発明の1つの目的は、基板を精度良くエッチングしつつ、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる基板処理方法、および、基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、基板をエッチングする基板処理方法を提供する。基板処理方法は、基板の主面の表層部を酸化して酸化層を形成する酸化層形成工程と、酸性ポリマーを含有するポリマー膜を前記基板の主面上に形成し、前記ポリマー膜中の前記酸性ポリマーによって前記酸化層を除去する酸化層除去工程とを含む。そして、前記酸化層形成工程および前記酸化層除去工程が、交互に繰り返される。
【0007】
この基板処理方法によれば、酸化層の形成および除去が交互に繰り返される。そのため、基板を精度良くエッチングできる。また、この基板処理方法によれば、基板の主面上に形成されたポリマー膜に含有される酸性ポリマーによって酸化層が除去される。ポリマー膜は、酸性ポリマーを含有するため半固体状または固体状である。そのため、ポリマー膜は、液体と比較して、基板の主面上に留まりやすい。そのため、酸化層を除去する間の全期間において基板の主面に酸性ポリマーを連続的に供給する必要がない。言い換えると、少なくともポリマー膜を形成した後においては、酸性ポリマーを基板の主面に追加的に供給する必要がない。したがって、基板のエッチングに要する物質である酸性ポリマーの使用量を低減できる。
【0008】
その結果、基板を精度良くエッチングしつつ、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
この発明の一実施形態では、前記ポリマー膜が、アルカリ成分をさらに含有する。そして、前記酸化層除去工程が、前記ポリマー膜が形成された後、前記ポリマー膜を加熱して前記ポリマー膜から前記アルカリ成分を蒸発させることによって前記酸化層の除去を開始する除去開始工程を含む。
【0009】
この構成によれば、酸性ポリマーとともにアルカリ成分がポリマー膜に含有されている。そのため、ポリマー膜が形成された後、ポリマー膜が加熱されるまでの間、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されており、ほぼ失活している。そのため、ポリマー膜が形成された後、ポリマー膜が加熱されるまでの間、酸化層の除去は開始されない。ポリマー膜を加熱してアルカリ成分を蒸発させることによって、ポリマー膜中の酸性ポリマーが活性を取り戻し、酸化層の除去が開始される。したがって、基板を精度良くエッチングできる。特に、基板のエッチングの開始タイミングを精度良く制御できる。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記ポリマー膜が、導電性ポリマーをさらに含有する。そのため、導電性ポリマーの作用によって、ポリマー膜中の酸性ポリマーのイオン化を促進することができる。そのため、酸性ポリマーを酸化層に効果的に作用させることができる。
すなわち、導電性ポリマーは、溶媒と同様に、酸性ポリマーがプロトン(水素イオン)を放出するための媒体として機能する。そのため、ポリマー膜中に導電性ポリマー含有されていれば、ポリマー膜から溶媒が完全に消失している場合であっても、酸性ポリマーをイオン化し、イオン化した酸性ポリマーを酸化層に作用させることができる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記酸化層除去工程の後、次の酸化層形成工程が開始される前に、前記基板の主面から前記ポリマー膜を除去するポリマー膜除去工程をさらに含む。
この基板処理方法によれば、基板からポリマー膜が除去された後に次の酸化層の形成が開始されるので、基板の主面の表層部の酸化中に酸化層が除去されることを抑制できる。詳しくは、酸化層形成工程において形成される酸化層が、基板の主面上に残留している酸性ポリマーによって除去されることを抑制でき、それによって、酸化層形成工程中に酸化層の形成および除去が連鎖的に起こることを抑制できる。そのため、基板の主面の表層部のエッチング量(除去量)が想定よりも大きくなることを抑制できる。すなわち、基板を一層精度良くエッチングできる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記酸化層形成工程が、前記基板の主面に液状酸化剤を供給することによって、前記酸化層を形成するウェット酸化工程を含む。そのため、基板への液状酸化剤の供給という簡易な工程によって基板を酸化することができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記酸化層形成工程の後で、かつ、前記酸化層除去工程の前に、前記基板の主面を洗浄するリンス液を前記基板の主面に供給するリンス工程をさらに含む。
【0013】
この基板処理方法によれば、リンス液によって液状酸化剤が基板の主面から洗い流される。すなわち、液状酸化剤が基板から除去された後に酸化層の除去が開始されるので、酸化層の除去中に酸化層が形成されることを抑制できる。詳しくは、ポリマー膜中の酸性ポリマーによって酸化層を除去している間に、基板の主面上に残留している酸化剤によって酸化層がさらに形成されることを抑制でき、それによって、酸化層除去工程中に酸化層の形成および除去が連鎖的に起こることを抑制できる。そのため、基板のエッチング量が想定よりも大きくなることを抑制できる。すなわち、一層精度良く基板をエッチングできる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板をスピンチャックに保持させる基板保持工程をさらに含む。前記酸化層形成工程が、前記スピンチャックに保持されている前記基板を加熱することによって前記酸化層を形成する加熱酸化工程を含み、前記酸化層除去工程が、前記スピンチャックに保持されている前記基板の主面上に前記ポリマー膜を形成する工程を含む。
【0015】
この基板処理方法によれば、酸化剤を用いることなく、基板の主面の表層部を酸化することができる。そのため、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。さらに、酸化層の形成および除去が、同一のスピンチャックに基板が保持されている状態で行われる。したがって、基板を移動させる必要がないため、別々のスピンチャックに基板が保持された状態で酸化層の形成および除去が行われる構成と比較して、酸化層を速やかに除去できる。
【0016】
さらに、酸化層を形成するために基板を加熱されたことにより基板に付与された熱量を、ポリマー膜の加熱に利用して、酸化層の除去を促進することができる。ひいては、基板処理に要する時間を削減できる。
この発明の一実施形態では、前記加熱酸化工程が、ヒータユニットにより前記基板を加熱することによって、前記酸化層を形成する工程を含む。そして、前記基板処理方法が、前記酸化層除去工程の実行中に前記ヒータユニットにより前記基板を介して前記ポリマー膜を加熱するポリマー膜加熱工程をさらに含む。
【0017】
この基板処理方法によれば、酸化層の形成に用いられるヒータユニットを、ポリマー膜の加熱にも利用することができる。そのため、基板を酸化するための加熱に用いられるヒータユニットとは別のヒータユニットをポリマー膜の加熱のために設ける必要がないため、基板処理を簡素化できる。
さらに、酸化層を形成するための加熱に用いられるヒータユニットを、ポリマー膜の加熱にも利用することで、酸化層の形成のためにヒータユニットに蓄積された熱量を、ポリマー膜の加熱に利用できる。
【0018】
たとえば、ポリマー膜にアルカリ成分が含有されている場合には、アルカリ成分の除去を促進することがき、アルカリ成分の有無にかかわらず、ポリマー膜中の酸性ポリマーによる酸化層の除去作用を促進できる。そのため、酸化層の形成に用いられるヒータユニットとは別のヒータユニットをポリマー膜の加熱のために設ける構成と比較して、基板のエッチングを効率良く促進できる。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記酸化層形成工程が、光照射、加熱、および、気体状酸化剤の供給の少なくともいずれかによって、前記酸化層を形成するドライ酸化工程を含む。
この基板処理方法によれば、液状酸化剤を用いることなく、酸化層を形成することができる。そのため、基板の主面に付着した液状酸化剤を除去する手間を省くことができる。特に、光照射、加熱、または、光照射および加熱の組み合わせによって基板の主面を酸化させる構成であれば、基板のエッチングに要する物質の使用量を低減できる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、溶媒および前記酸性ポリマーを少なくとも含有するポリマー含有液を前記基板の主面に供給するポリマー含有液供給工程をさらに含む。そして、前記酸化層除去工程が、前記基板の主面上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって前記ポリマー膜を形成するポリマー膜形成工程を含む。
【0021】
この基板処理方法によれば、基板に供給されたポリマー含有液から溶媒を蒸発させることによって、ポリマー膜を形成することができる。そのため、溶媒の蒸発によってポリマー膜中の酸性ポリマーの濃度を高めることができる。したがって、高濃度の酸性ポリマーによって基板を速やかにエッチングすることができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、溶媒、前記酸性ポリマーおよび酸化剤を少なくとも含有する混合液を前記基板の主面に供給する混合液供給工程をさらに含む。そして、前記酸化層除去工程が、前記基板の主面上の混合液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって前記ポリマー膜を形成するポリマー膜形成工程を含む。そして、前記酸化層形成工程が、前記基板の主面に供給された混合液中の酸化剤によって前記酸化層を形成する混合液酸化工程を含む。
【0022】
この基板処理方法によれば、混合液中の酸化剤によって基板の主面の表層部が酸化される。その後、基板の主面上の混合液中の溶媒を蒸発させることで形成されたポリマー膜中の酸性ポリマーによって酸化層が除去される。すなわち、基板の主面へ混合液を供給し、基板の主面上の混合液からポリマー膜を形成することによって、酸化層の形成および除去が順次に行われる。したがって、酸化層の形成および除去のそれぞれに連続流の液体を用いる場合と比較して、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記混合液供給工程が、混合液ノズルから混合液を吐出させ、前記混合液ノズルから吐出された混合液を前記基板に供給するノズル供給工程を含む。そして、前記基板処理方法が、前記混合液ノズルに接続された配管内で、液状酸化剤と、酸性ポリマーを含有する酸性ポリマー液とを混合することで混合液を形成する混合液形成工程をさらに含む。
【0024】
この基板処理方法によれば、混合液ノズルに接続された配管内で液状酸化剤と酸性ポリマー液とが混合されて混合液が形成される。そのため、基板の主面に酸化剤および酸性ポリマーが供給される直前に混合液が形成される。したがって、酸化剤と酸性ポリマーとが化学反応する場合であっても、酸化剤および酸性ポリマーの化学的変化を抑制しつつ、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
【0025】
この発明の一実施形態では、前記混合液供給工程が、混合液ノズルから混合液を吐出させ、前記混合液ノズルから吐出された混合液を前記基板に供給するノズル供給工程を含む。前記基板処理方法が、前記混合液ノズルに混合液を案内する配管に混合液を供給する混合液タンク内で液状酸化剤および酸性ポリマー液を混合することによって混合液を形成する混合液形成工程をさらに含む。
【0026】
この基板処理方法によれば、混合液タンク内で液状酸化剤と酸性ポリマー液とが混合されて混合液が形成される。そのため、液状酸化剤および酸性ポリマー液を別々のタンクから混合液ノズルに供給する構成と比較して設備を簡略化しつつ、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
この発明の他の実施形態は、基板をエッチングする基板処理装置を提供する。前記基板処理装置は、基板の主面の表層部を酸化させる基板酸化ユニットと、酸性ポリマーを含有するポリマー膜を基板の主面上に形成するポリマー膜形成ユニットと、前記基板酸化ユニットによる前記基板の主面の表層部の酸化、および、前記ポリマー膜形成ユニットによる前記ポリマー膜の形成を交互に繰り返すように、前記基板酸化ユニット、および前記ポリマー膜形成ユニットを制御するコントローラとを含む。
【0027】
この基板処理装置によれば、上述の基板処理方法と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、処理対象となる基板の表層部の構造を説明するための模式的な断面図である。
【
図2A】
図2Aは、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。
【
図2B】
図2Bは、前記基板処理装置の構成を説明するための立面図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置に備えられるウェット処理ユニットの構成例を説明するための模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図5は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図6A】
図6Aは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6B】
図6Bは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6C】
図6Cは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6D】
図6Dは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6E】
図6Eは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6F】
図6Fは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図6G】
図6Gは、前記第1基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、前記基板処理において酸化層形成工程と酸化層除去工程とが交互に繰り返されることによる基板の上面の表層部の変化について説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、ポリマー膜が形成されているときの基板の表層部の構造を説明するための模式図である。
【
図9A】
図9Aは、低分子量エッチング成分によって構成されるエッチング液によって結晶粒界における酸化層がエッチングされる様子について説明するための模式図である。
【
図9B】
図9Bは、ポリマー膜によって結晶粒界における酸化層がエッチングされる様子について説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
【
図11】
図11は、前記基板処理の別の例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、前記基板処理装置における基板に対するポリマー含有液の供給方法の第1例について説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、前記基板処理装置における基板に対するポリマー含有液の供給方法の第2例について説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、前記ウェット処理ユニットの第1変形例について説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、前記ウェット処理ユニットの第2変形例について説明するための模式図である。
【
図16】
図16は、前記ウェット処理ユニットの第3変形例について説明するための模式図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる光照射処理ユニットの構成例を説明するための模式的な断面図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる熱処理ユニットを説明するための模式的な断面図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態に係る基板処理装置に備えられるウェット処理ユニットの構成例を説明するための模式的な断面図である。
【
図23】
図23は、第3実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の一例の説明するための流れ図である。
【
図24A】
図24Aは、第3実施形態に係る基板処理の一例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図24B】
図24Bは、第3実施形態に係る基板処理の一例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図24C】
図24Cは、第3実施形態に係る基板処理の一例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図24D】
図24Dは、第3実施形態に係る基板処理の一例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。
【
図25】
図25は、基板に対する混合液の供給方法の第1例について説明するための模式図である。
【
図26】
図26は、基板に対する混合液の供給方法の第2例について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<処理対象となる基板の表層部の構造>
図1は、処理対象となる基板Wの表層部の構造を説明するための模式的な断面図である。基板Wは、シリコンウエハ等の基板であり、一対の主面を有する。一対の主面のうち少なくとも一方が、凹凸パターン120が形成されたデバイス面である。一対の主面のうちの一方は、デバイスが形成されていない非デバイス面であってもよい。
【0030】
デバイス面の表層部には、たとえば、複数のトレンチ122が形成された絶縁層105と、表面が露出するように各トレンチ122内に形成された処理対象層102とが形成されている。絶縁層105は、隣接するトレンチ122同士の間に位置する微細な凸状の構造体121と、トレンチ122の底部を区画する底区画部123とを有する。複数の構造体121および複数のトレンチ122によって凹凸パターン120が構成されている。処理対象層102の表面および絶縁層105(構造体121)の表面は、基板Wの主面の少なくとも一部を構成している。
【0031】
絶縁層105は、たとえば、酸化シリコン(SiO2)層または低誘電率層である。低誘電率層は、酸化シリコンよりも誘電率の低い材料である低誘電率(Low-k)材料からなる。低誘電率層は、具体的には、酸化シリコンに炭素を加えた絶縁材料(SiOC)からなる。
処理対象層102は、たとえば、金属層、シリコン層等であり、典型的には、銅配線である。金属層は、たとえば、スパッタリング等の手法によりトレンチ122内に形成されたシード層(図示せず)を核として、電気めっき技術等によって結晶成長させることによって形成される。金属層の形成手法は、この手法に限られない。金属層は、スパッタリングのみによって形成されてもよいし、他の手法で形成されてもよい。
【0032】
処理対象層102が酸化されることによって、酸化層103が形成される(
図1の二点鎖線を参照)。酸化層103は、例えば、酸化金属層であり、典型的には、酸化銅層である。
トレンチ122内において処理対象層102と絶縁層105との間には、バリア層およびライナ層が設けられていてもよい。バリア層は、たとえば、窒化タンタル(TaN)であり、ライナ層は、たとえば、ルテニウム(Ru)またはコバルト(Co)である。
【0033】
トレンチ122は、たとえば、ライン状である。ライン状のトレンチ122の幅Lは、トレンチ122が延びる方向および基板Wの厚さ方向Tに直交する方向におけるトレンチ122の大きさのことである。複数のトレンチ122の幅Lは全て同一というわけではなく、基板Wの表層付近には、少なくとも2種類以上の幅Lのトレンチ122が形成されている。幅Lは、処理対象層102および酸化層103の幅でもある。
【0034】
トレンチ122の幅Lは、たとえば、20nm以上500nm以下である。トレンチ122の深さDは、厚さ方向Tにおけるトレンチ122の大きさであり、たとえば、200nm以下である。
処理対象層102は、たとえば、スパッタリング等の手法によりトレンチ122内に形成されたシード層(図示せず)を核として、電気めっき技術等によって結晶成長させることによって形成される。
【0035】
処理対象層102および酸化層103は、複数の結晶粒110によって構成されている。結晶粒110同士の界面のことを結晶粒界111という。結晶粒界111とは、格子欠陥の一種であり、原子配列の乱れによって形成される。
結晶粒110は、トレンチ122の幅Lが狭いほど成長しにくく、トレンチ122の幅Lが広いほど成長しやすい。そのため、トレンチ122の幅Lが狭いほど小さい結晶粒110ができやすく、トレンチ122の幅Lが広いほど大きい結晶粒110ができやすい。すなわち、トレンチ122の幅Lが狭いほど結晶粒界密度が高くなり、トレンチ122の幅Lが広いほど結晶粒界密度が低くなる。
【0036】
<第1実施形態に係る基板処理装置の構成>
図2Aは、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための平面図である。
図2Bは、基板処理装置1の構成を説明するための立面図である。
基板処理装置1は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状を有する。この実施形態では、基板Wは、デバイス面を上方に向けた姿勢で処理される。
【0037】
基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを備える。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。
【0038】
各搬送ロボットIR,CRは、たとえば、いずれも、一対の多関節アームARと、上下に互いに離間するように一対の多関節アームARの先端にそれぞれ設けられた一対のハンドHとを含む多関節アームロボットである。
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーを形成している。各処理タワーは、上下方向に積層された複数(この実施形態では、3つ)の処理ユニット2を含む(
図2Bを参照)。4つの処理タワーは、ロードポートLPから搬送ロボットIR,CRに向かって延びる搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている(
図2Aを参照)。
【0039】
第1実施形態では、処理ユニット2は、液体で基板Wを処理するウェット処理ユニット2Wである。各ウェット処理ユニット2Wは、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。
チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0040】
図3は、ウェット処理ユニット2Wの構成例を説明するための模式的な断面図である。
ウェット処理ユニット2Wは、基板Wを所定の第1保持位置に基板Wを保持しながら、回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wを加熱するヒータユニット6とをさらに備える。回転軸線A1は、基板Wの中央部を通る鉛直な直線である。第1保持位置は、
図3に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
【0041】
スピンチャック5は、水平方向に沿う円板形状を有するスピンベース21と、スピンベース21の上方で基板Wを把持し第1保持位置に基板Wを保持する複数のチャックピン20と、スピンベース21に上端が連結され鉛直方向に延びる回転軸22と、回転軸22をその中心軸線(回転軸線A1)まわりに回転させるスピンモータ23とを含む。
複数のチャックピン20は、スピンベース21の周方向に間隔を空けてスピンベース21の上面に配置されている。スピンモータ23は、電動モータである。スピンモータ23は、回転軸22を回転させることでスピンベース21および複数のチャックピン20が回転軸線A1まわりに回転する。これにより、スピンベース21および複数のチャックピン20と共に、基板Wが回転軸線A1まわりに回転される。
【0042】
複数のチャックピン20は、基板Wの周縁部に接触して基板Wを把持する閉位置と、基板Wの周縁部から退避した開位置との間で移動可能である。複数のチャックピン20は、開閉ユニット25によって移動される。複数のチャックピン20は、閉位置に位置するとき、基板Wを水平に保持(挟持)する。複数のチャックピン20は、開位置に位置するとき、基板Wの周縁部の把持を解放する一方で、基板Wの下面(下側の主面)の周縁部に接触して基板Wを下方から支持する。
【0043】
開閉ユニット25は、たとえば、複数のチャックピン20を移動させるリンク機構と、リンク機構に駆動力を付与する駆動源とを含む。駆動源は、たとえば、電動モータを含む。
ヒータユニット6は、基板Wの全体を加熱する基板加熱ユニットの一例である。ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット6は、スピンベース21の上面と基板Wの下面との間に配置されている。ヒータユニット6は、基板Wの下面に下方から対向する加熱面6aを有する。
【0044】
ヒータユニット6は、プレート本体61およびヒータ62を含む。プレート本体61は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。プレート本体61の上面が加熱面6aを構成している。ヒータ62は、プレート本体61に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ62に通電することによって、加熱面6aが加熱される。ヒータ62は、ヒータ62の温度とほぼ等しい温度に基板Wを加熱できる。ヒータ62は、基板Wを常温(たとえば、5℃以上25℃以下の温度)以上400℃以下の温度範囲で加熱できるように構成されている。
【0045】
ヒータユニット6の下面には、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、中空の回転軸22とに挿入される昇降軸66が接続されている。ヒータ62には、給電線63を介して通電ユニット64が接続されており、通電ユニット64から供給される電流が調整されることによって、ヒータ62の温度が上述した温度範囲内の温度に変化する。
【0046】
ヒータユニット6は、ヒータ昇降駆動機構65によって昇降される。ヒータ昇降駆動機構65は、たとえば、昇降軸66を昇降駆動する電動モータまたはエアシリンダ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。ヒータ昇降駆動機構65は、昇降軸66を介してヒータユニット6を昇降させる。ヒータユニット6は、基板Wの下面とスピンベース21の上面との間で昇降可能である。
【0047】
ヒータユニット6は、上昇する際に、開位置に位置する複数のチャックピン20から基板Wを受け取ることが可能である。ヒータユニット6は、加熱面6aが基板Wの下面に接触する接触位置、または、基板Wの下面に非接触で近接する近接位置に配置されることによって、基板Wを加熱することができる。ヒータユニット6による基板Wの加熱が停止される程度に基板Wの下面から充分に退避する位置を退避位置という。
【0048】
処理カップ7は、スピンチャック5に保持されている基板Wから飛散する液体を受ける。処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数(
図3の例では2つ)のガード30と、複数のガード30によって下方に案内された液体を受け止める複数(
図3の例では2つ)のカップ31と、複数のガード30および複数のカップ31を取り囲む円筒状の外壁部材32とを含む。複数のガード30は、ガード昇降駆動機構(図示せず)によって個別に昇降される。ガード昇降駆動機構は、上位置から下位置までの任意の位置にガード30を位置させる。
【0049】
処理ユニット2は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面(上側の主面)に過酸化水素水等の液状酸化剤を供給する酸化剤ノズル9と、酸性ポリマー、アルカリ成分、および、導電性ポリマーを含有するポリマー含有液を、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に供給するポリマー含有液ノズル10と、スピンチャック5に保持された基板Wの上面にDIW(Deionized Water)等のリンス液を供給するリンス液ノズル11とをさらに備える。
【0050】
液状酸化剤は、基板Wの上面から露出する処理対象層の表層部を酸化させて、処理対象層の表層部に酸化層を形成する液体である。液状酸化剤によって形成される酸化層は、たとえば、1nm以上2nm以下の厚みを有する。
液状酸化剤は、たとえば、酸化剤として過酸化水素(H2O2)を含有する過酸化水素水(H2O2水)、または、酸化剤としてオゾン(O3)を含有するオゾン水(O3水)である。
【0051】
酸化剤は、必ずしも過酸化水素またはオゾンである必要はない。酸化剤は、基板Wの上面から露出する処理対象層を酸化させることができる酸化剤であればよい。たとえば、液状酸化剤には、複数の酸化剤が含有されていてもよく、具体的には、液状酸化剤は、過酸化水素およびオゾンの両方をDIWに溶解させることによって形成される液体であってもよい。酸化剤ノズル9は、基板酸化ユニットの一例である。
【0052】
酸化剤ノズル9は、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルである。酸化剤ノズル9は、第1ノズル移動ユニット35によって、水平方向に移動される。第1ノズル移動ユニット35は、酸化剤ノズル9に結合され水平に延びるアーム(図示せず)と、アームを水平方向に移動させるアーム移動ユニット(図示せず)とを含む。アーム移動ユニットは、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。以下で説明するノズル移動ユニットについても同様の構成を有する。
【0053】
酸化剤ノズル9は、鉛直方向に移動可能であってもよい。酸化剤ノズル9は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。酸化剤ノズル9は、この実施形態とは異なり、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルであってもよい。
酸化剤ノズル9は、酸化剤ノズル9に液状酸化剤を案内する酸化剤配管40の一端に接続されている。酸化剤配管40の他端は、酸化剤タンク(図示せず)に接続されている。酸化剤配管40には、酸化剤配管40内の流路を開閉する酸化剤バルブ50Aと、当該流路内の液状酸化剤の流量を調整する酸化剤流量調整バルブ50Bとが介装されている。
【0054】
酸化剤バルブ50Aが開かれると、酸化剤流量調整バルブ50Bの開度に応じた流量で、液状酸化剤が、酸化剤ノズル9の吐出口から下方に連続流で吐出される。
ポリマー含有液は、溶質と、溶質を溶解させる溶媒とを含有している。ポリマー含有液の溶質は、酸性ポリマー、アルカリ成分、および、導電性ポリマーを含む。
酸性ポリマーは、処理対象層を酸化させることなく、酸化層を溶解する酸性ポリマーである。酸性ポリマーは、常温で固体であり、溶媒中でプロトンを放出して酸性を示す。
【0055】
酸性ポリマーの分子量は、たとえば、1000以上で、かつ、100000以下である。酸性ポリマーは、ポリアクリル酸に限られない。酸性ポリマーは、たとえば、カルボキシ基含有ポリマー、スルホ基含有ポリマーまたはこれらの混合物である。カルボン酸ポリマーは、たとえば、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、カルボキシメチルセルロール、またはこれらの混合物である。スルホ基含有ポリマーは、たとえば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、または、これらの混合物である。
【0056】
ポリマー含有液に含有される溶媒は、常温で液体であり、酸性ポリマーを溶解または膨潤させることができ、基板Wの回転または加熱によって蒸発する物質であればよい。ポリマー含有液に含有される溶媒は、DIWに限られないが、水系の溶媒であることが好ましい。溶媒は、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する。
【0057】
アルカリ成分は、たとえば、アンモニアである。アルカリ成分は、アンモニアに限られない。具体的には、アルカリ成分は、たとえば、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン、またはこれらの混合物を含む。アルカリ成分は、溶媒の沸点未満の温度に加熱されることによって蒸発し、溶媒中でアルカリ性を示す成分であることが好ましい。アルカリ成分は、常温で気体であるアンモニアまたはジメチルアミン及びこれらの混合物であることが特に好ましい。
【0058】
導電性ポリマーは、ポリアセチレンに限られない。導電性ポリマーは、共役二重結合を有する共役系ポリマーである。共役系ポリマーは、たとえば、ポリアセチレン等の脂肪族共役系ポリマー、ポリ(p-フェニレン)等の芳香族共役系ポリマー、ポリ(p-フェニレンビニレン)等の混合型共役系ポリマー、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等の複素環共役系ポリマー、ポリアニリン等の含ヘテロ原子共役系ポリマー、ポリアセン等の複鎖型共役系ポリマー、グラフェン等の二次元共役系ポリマー、または、これらの混合物である。
【0059】
ポリマー含有液ノズル10は、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルである。ポリマー含有液ノズル10は、第1ノズル移動ユニット35と同様の構成の第2ノズル移動ユニット36によって、水平方向に移動される。ポリマー含有液ノズル10は、鉛直方向に移動可能であってもよい。ポリマー含有液ノズル10は、この実施形態とは異なり、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルであってもよい。
【0060】
ポリマー含有液ノズル10は、ポリマー含有液ノズル10にポリマー含有液を案内するポリマー含有液配管41の一端に接続されている。ポリマー含有液配管41の他端は、ポリマー含有液タンク(図示せず)に接続されている。ポリマー含有液配管41には、ポリマー含有液配管41内の流路を開閉するポリマー含有液バルブ51Aと、当該流路内のポリマー含有液の流量を調整するポリマー含有液流量調整バルブ51Bとが介装されている。
【0061】
ポリマー含有液バルブ51Aが開かれると、ポリマー含有液流量調整バルブ51Bの開度に応じた流量で、ポリマー含有液が、ポリマー含有液ノズル10の吐出口から下方に連続流で吐出される。
基板Wの上面に供給されたポリマー含有液から溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって、基板W上のポリマー含有液が半固体状または固体状のポリマー膜に変化する。半固体状とは、固体成分と液体成分とが混合している状態、または、基板W上で一定の形状を保つことができる程度の粘度を有する状態である。固体状とは、液体成分が含有されておらず、固体成分のみによって構成されている状態である。溶媒が残存しているポリマー膜は、半固体状であり、溶媒が完全に消失しているポリマー膜は、固体状である。
【0062】
ポリマー含有液には、溶質として、酸性ポリマーに加えて、アルカリ成分および導電性ポリマーが含有されている。そのため、ポリマー膜には、酸性ポリマー、アルカリ成分および導電性ポリマーが含有されている。
ポリマー膜にアルカリ成分と酸性ポリマーとが含有されている状態では、ポリマー膜は中性となっている。すなわち、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されておりほぼ失活している。そのため、酸性ポリマーの作用による基板Wの酸化層の溶解が行われない。ポリマー膜を加熱してポリマー膜からアルカリ成分を蒸発させれば、酸性ポリマーが活性を取り戻す。すなわち、酸性ポリマーの作用によって基板Wの酸化層が溶解される。
【0063】
ポリマー膜中には、溶媒が完全に蒸発尽くされずに残存していることが好ましい。そうであれば、ポリマー膜中の酸性ポリマーが酸としての機能を充分に発現できるため、酸化層を効率よく除去することができる。溶媒が残存していれば、アルカリ成分がポリマー膜に存在しているときに、ポリマー膜が中性を呈し、アルカリ成分が蒸発した後には、ポリマー膜が酸性を呈する。
【0064】
導電性ポリマーは、溶媒と同様に、酸性ポリマーがプロトン(水素イオン)を放出するための媒体として機能する。そのため、ポリマー膜から溶媒が完全に消失している場合であっても、酸性ポリマーをイオン化させて、酸性ポリマーを酸化層に作用させることができる。
また、ポリマー膜中の溶媒を適度に蒸発させることによって、ポリマー膜中の溶媒に溶解されている酸性ポリマー成分の濃度を高めることができる。これにより、酸化層を効率よく除去することができる。また、ポリマー膜の温度が高くなるほど、酸性ポリマーによって酸化層を除去(溶解)する化学反応が促進される。すなわち、酸性ポリマーは、温度が高いほど酸化層の除去速度が高くなる性質を有する。そのため、基板Wの上面に形成されたポリマー膜を加熱することで酸化層を効率よく除去できる。
【0065】
リンス液は、基板Wの上面に付着している液状酸化剤を除去する(洗い流す)酸化剤除去液として機能し、基板Wの上面に形成されたポリマー膜を溶解させて基板Wの主面から除去するポリマー除去液としても機能する。
リンス液は、DIWに限られない。リンス液は、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する。すなわち、リンス液としては、ポリマー含有液の溶媒と同様の液体を用いることができ、リンス液、および、ポリマー含有液の溶媒として、ともにDIWを用いれば、使用する液体(物質)の種類を少なくすることができる。
【0066】
リンス液ノズル11は、この実施形態では、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルである。リンス液ノズル11は、この実施形態とは異なり、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルであってもよい。
リンス液ノズル11は、リンス液ノズル11にリンス液を案内するリンス液配管42の一端に接続されている。リンス液配管42の他端は、リンス液タンク(図示せず)に接続されている。リンス液配管42には、リンス液配管42内の流路を開閉するリンス液バルブ52Aと、当該流路内のリンス液の流量を調整するリンス液流量調整バルブ52Bとが介装されている。リンス液バルブ52Aが開かれると、リンス液ノズル11の吐出口から連続流で吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する。
【0067】
図4は、基板処理装置1の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0068】
特に、コントローラ3は、処理ユニット2を構成する各部材(バルブ、モータ、電源等)、搬送ロボットIR,CR等を制御するようにプログラムされている。コントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの流体の吐出の有無や、対応するノズルからの流体の吐出流量が制御される。以下の各工程は、コントローラ3がこれらの構成を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0069】
<第1実施形態に係る基板処理>
図5は、基板処理装置1によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図6A~
図6Gは、基板処理装置1によって実行される基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
以下では、基板処理装置1によって実行される基板処理について、主に
図3および
図5を参照して説明する。
図6A~
図6Gについては適宜参照する。
【0070】
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図2Aを参照)によってキャリヤCからウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。開閉ユニット25が複数のチャックピン20を閉位置に移動させることによって、基板Wが複数のチャックピン20に把持される。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、スピンモータ23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。
【0071】
次に、搬送ロボットCRがウェット処理ユニット2W外に退避した後、基板Wの上面に液状酸化剤を供給する液状酸化剤供給工程(ステップS2)が実行される。具体的には、まず、第1ノズル移動ユニット35が、酸化剤ノズル9を処理位置に移動させる。酸化剤ノズル9の処理位置は、たとえば、基板Wの上面の中央領域に酸化剤ノズル9が対向する中央位置である。基板Wの上面の中央領域は、基板Wの上面の中心位置および中心位置の周囲を含む領域である。
【0072】
酸化剤ノズル9が処理位置に位置する状態で、酸化剤バルブ50Aが開かれる。これにより、
図6Aに示すように、基板Wの上面の中央領域に向けて、酸化剤ノズル9から液状酸化剤が供給(吐出)される(液状酸化剤供給工程、液状酸化剤吐出工程)。
基板Wの上面に供給された液状酸化剤が、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。基板Wの上面の周縁部に達した液状酸化剤は、基板Wの上面の周縁部から基板W外に排出される。基板Wの上面に対する液状酸化剤の供給によって、基板Wの上面から露出する処理対象層に酸化層が形成される(酸化層形成工程、ウェット酸化工程)。この基板処理では、液状酸化剤の基板Wへの供給という簡易な工程によって基板Wを酸化することができる。
【0073】
基板Wの上面に液状酸化剤を供給している間、ヒータユニット6を用いて、基板Wを介して液状酸化剤を加熱してもよい。具体的には、ヒータユニット6を近接位置に配置して回転中の基板Wを加熱する。液状酸化剤を加熱することによって、酸化層の形成が促進される(酸化層形成促進工程)。
図6Aとは異なり、液状酸化剤の供給中において、ヒータユニット6を退避位置に配置していてもよい。
【0074】
液状酸化剤の供給が所定時間継続された後、基板Wの上面にリンス液を供給し、基板Wの上面から液状酸化剤を除去する酸化剤除去工程(ステップS3)が実行される。具体的には、酸化剤バルブ50Aが閉じられ、リンス液バルブ52Aが開かれる。これにより、基板Wの上面への液状酸化剤の供給が停止され、その代わりに、
図6Bに示すように、リンス液ノズル11から基板Wの上面へのリンス液の供給(吐出)が開始される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。これにより、基板W上の液状酸化剤がリンス液で置換されて、基板Wの上面から液状酸化剤が除去される。
【0075】
酸化剤バルブ50Aが閉じられた後、第1ノズル移動ユニット35が酸化剤ノズル9を退避位置に移動させる。酸化剤ノズル9は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
リンス液の供給が所定時間継続された後、基板Wの上面にポリマー含有液を供給するポリマー含有液供給工程(ステップS4)が実行される。
【0076】
具体的には、第2ノズル移動ユニット36が、ポリマー含有液ノズル10を処理位置に移動させる。ポリマー含有液ノズル10の処理位置は、たとえば、ポリマー含有液ノズル10が基板Wの上面の中央領域に対向する中央位置である。ポリマー含有液ノズル10が処理位置に位置する状態で、ポリマー含有液バルブ51Aが開かれる。これにより、
図6Cに示すように、基板Wの上面の中央領域に向けて、ポリマー含有液ノズル10からポリマー含有液が供給(吐出)される(ポリマー含有液供給工程、ポリマー含有液吐出工程)。ポリマー含有液ノズル10から吐出されたポリマー含有液は、基板Wの上面の中央領域に着液する。
【0077】
基板Wの上面にポリマー含有液を供給する際、基板Wを低速度(たとえば、10rpm)で回転させてもよい(低速回転工程)。あるいは、基板Wの上面にポリマー含有液を供給する際、基板Wの回転は停止されていてもよい。基板Wの回転速度を低速度としたり、基板Wの回転を停止させたりすることで、基板Wに供給されたポリマー含有液は、基板Wの上面の中央領域に留まる。これにより、ポリマー含有液の使用量を低減できる。
【0078】
次に、
図6Dおよび
図6Eに示すように、基板Wの上面上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって、基板Wの上面に固体状または半固体状のポリマー膜101(
図6Eを参照)を形成するポリマー膜形成工程(ステップS5)が実行される。
具体的には、ポリマー含有液バルブ51Aが閉じられてポリマー含有液ノズル10からのポリマー含有液の吐出が停止される。ポリマー含有液バルブ51Aが閉じられた後、第2ノズル移動ユニット36によってポリマー含有液ノズル10が退避位置に移動される。ポリマー含有液ノズル10は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
【0079】
ポリマー含有液バルブ51Aが閉じられた後、
図6Dに示すように、基板Wの回転速度が所定のスピンオフ速度になるように基板Wの回転が加速される(回転加速工程)。スピンオフ速度は、たとえば、1500rpmである。スピンオフ速度での基板Wの回転は、たとえば、30秒の間継続される。基板Wの回転に起因する遠心力によって、基板Wの上面の中央領域に留まっていたポリマー含有液が基板Wの上面の周縁部に向けて広がり、基板Wの上面の全体に広げられる。
図6Dに示すように、基板W上のポリマー含有液の一部は、基板Wの周縁部から基板W外に飛散し、基板W上のポリマー含有液の液膜が薄膜化される(スピンオフ工程)。基板Wの上面上のポリマー含有液は、基板W外に飛散する必要はなく、基板Wの回転の遠心力の作用によって、基板Wの上面の全体に広がればよい。
【0080】
基板Wの回転に起因する遠心力は、基板W上のポリマー含有液だけでなく、基板W上のポリマー含有液に接する気体にも作用する。そのため、遠心力の作用により、当該気体が基板Wの上面の中心側から周縁側に向かう気流が形成される。この気流により、基板W上のポリマー含有液に接する気体状態の溶媒が基板Wに接する雰囲気から排除される。そのため、
図6Eに示すように、基板W上のポリマー含有液からの溶媒の蒸発(揮発)が促進され、固体状または半固体状のポリマー膜101が形成される(ポリマー膜形成工程)。このように、ポリマー含有液ノズル10およびスピンモータ23が、ポリマー膜形成ユニットとして機能する。
【0081】
ポリマー膜101は、ポリマー含有液と比較して粘度が高いため、基板Wが回転しているにもかかわらず、基板W上から完全に排除されずに基板W上に留まる。ポリマー膜101が形成された直後において、ポリマー膜101には、アルカリ成分が含有されている。そのため、ポリマー膜101中の酸性ポリマーはほぼ失活しているので、酸化層の除去はほとんど行われない。
【0082】
次に、基板W上のポリマー膜101を加熱するポリマー膜加熱工程(ステップS6)が実行される。具体的には、
図6Fに示すように、ヒータユニット6が近接位置に配置されて、基板Wが加熱される(基板加熱工程、ヒータ加熱工程)。
基板W上に形成されたポリマー膜101が基板Wを介して加熱される。ポリマー膜101が加熱されることによって、アルカリ成分が蒸発し、酸性ポリマーが活性を取り戻す(アルカリ成分蒸発工程、アルカリ成分除去工程)。そのため、ポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって、基板Wのエッチングが開始される(エッチング開始工程、エッチング工程)。
【0083】
詳しくは、基板Wの上面の表層部に形成されている酸化層の除去が開始される(酸化層除去開始工程、酸化層除去工程)。ポリマー膜101が形成された後、ポリマー膜101が加熱されるまでの間、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されており、ほぼ失活している。そのため、ポリマー膜101が形成された後、ポリマー膜101が加熱されるまでの間、基板Wのエッチングはほとんど開始されない。
【0084】
上述したように、酸性ポリマーは、温度が高いほど酸化層の除去速度が高くなる性質を有する。そのため、ポリマー膜101からアルカリ成分が除去された後においてもポリマー膜101の加熱を継続することによって、酸性ポリマーによる酸化層の除去が促進される(除去促進工程)。
ポリマー膜101が加熱されることでポリマー膜101中の溶媒が蒸発する。そのため、ポリマー膜101中の溶媒に溶解されている酸性ポリマーの濃度が高くなる(ポリマー濃縮工程)。これにより、酸性ポリマーの濃度が上昇して酸性ポリマーの作用による酸化層の除去速度が向上される。
【0085】
基板Wの加熱温度は、ポリマー膜101中の溶媒の沸点よりも低い温度であることが好ましい。そうであれば、基板W上のポリマー膜101から溶媒を適度に蒸発させることができる。そのため、ポリマー膜101中の溶媒に溶解されている酸性ポリマーの濃度を高めることができる。さらに、溶媒が蒸発尽くされてポリマー膜101中から完全に除去されることを抑制できる。
【0086】
次に、基板Wを介したポリマー膜101の加熱が所定時間実行された後、基板W上のポリマー膜101が除去されるポリマー膜除去工程(ステップS7)が実行される。具体的には、ヒータユニット6が退避位置に退避し、リンス液バルブ52Aが開かれる。これにより、
図6Gに示すように、ポリマー膜101が形成されている基板Wの上面の中央領域に向けて、リンス液ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。
【0087】
基板Wに供給されたリンス液によって、基板W上のポリマー膜101が溶解される(ポリマー膜溶解工程)。基板Wへのリンス液の供給を継続することによって、基板Wの上面からポリマー膜101が除去される(ポリマー膜除去工程)。リンス液による溶解作用と、基板Wの上面に形成されるリンス液の流れとによって、ポリマー膜101が基板Wの上面から除去される(リンス工程)。
【0088】
ここで、
図5における「N」は、自然数を意味している。そのため、最初のポリマー膜除去工程が終了した後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)からポリマー膜除去工程(ステップS7)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われる。これにより、酸化層形成工程および酸化層除去工程が交互に繰り返される。言い換えると、酸化層形成工程および酸化層除去工程が交互に複数回ずつ実行される。
【0089】
サイクル処理が複数サイクル行われ、最後のポリマー膜除去工程(ステップS7)の後、スピンドライ工程(ステップS8)が行われる。
具体的には、リンス液バルブ52Aが閉じられ、基板Wの上面へのリンス液の供給が停止される。そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。それによって、大きな遠心力が基板W上のリンス液に作用し、基板W上のリンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
【0090】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。搬送ロボットCRが、ウェット処理ユニット2Wに進入して、複数のチャックピン20から処理済みの基板Wを受け取って、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(基板搬出工程:ステップS9)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0091】
図7は、基板処理において酸化層形成工程と酸化層除去工程とが交互に繰り返されることによる基板Wの上面の表層部の変化について説明するための模式図である。
図7(a)および
図7(b)に示すように、基板Wの上面に過酸化水素水等の液状酸化剤を供給することによって、酸化層103が処理対象層102の表層部に形成される(酸化層形成工程)。その後、基板Wの上面にポリマー含有液が供給され、基板W上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって、
図7(c)に示すように、基板Wの上面にポリマー膜101が形成される(ポリマー膜形成工程)。その後、
図7(d)に示すように、ポリマー膜101を加熱することによってアルカリ成分が蒸発しポリマー膜101からアルカリ成分が除去される(アルカリ成分蒸発工程、アルカリ成分除去工程)。基板Wの上面上のポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって、酸化層103が溶解されてポリマー膜101に溶け込む。これにより、
図7(e)に示すように、酸化層103が基板Wの上面から選択的に除去される(酸化層除去工程)。
図7(f)は、その後、ポリマー膜101が除去された後の処理対象層102の表面の状態を示している。
【0092】
酸化層形成工程および酸化層除去工程を一回ずつ実行することによって、酸化される処理対象層102の厚みは、ほぼ一定である(
図7(b)を参照)。そのため、除去される酸化層103の厚み(エッチング量D1)も、ほぼ一定である(
図7(e)を参照)。
図7(g)に示すように、サイクル処理を複数サイクル実行することによって、処理対象層102において、厚みD1とサイクル数(
図7(h)では3サイクル)との積に相当する厚みD2の部分が基板Wから除去される(D2=D1xサイクル数)。サイクル処理を複数サイクル行うことによってエッチングされる処理対象層102の量が、厚みD2に相当する。そのため、酸化層形成工程および酸化層除去工程を繰り返し実行する回数を調節することによって、所望のエッチング量(厚みD2と同じ量)を達成することができる。
【0093】
このように、一定のエッチング量で段階的に処理対象層102をエッチングすることをデジタルエッチングという。また、酸化層形成工程および酸化層除去工程を繰り返し実行することによって処理対象層102をエッチングすることをサイクルエッチングという。
第1実施形態によれば、コントローラ3が、酸化剤ノズル9、ポリマー含有液ノズル10およびスピンベース21等を制御することによって、処理対象層の酸化(酸化層の形成)、および、ポリマー膜101の形成が交互に繰り返される。
【0094】
これにより、酸化層103の形成および酸化層103の除去が交互に繰り返されるため、処理対象層102を精度良くエッチングできる。また、この基板処理方法によれば、基板Wの上面上に形成されたポリマー膜101に含有される酸性ポリマーによって処理対象層102がエッチングされる。ポリマー膜101は、半固体状または固体状であるため、液体と比較して、基板Wの上面上に留まりやすい。そのため、フッ酸等の低分子量のエッチング成分を含有するエッチング液によって酸化層103を除去する場合と比較して、処理対象層102のエッチングに要する物質(フッ酸や酸性ポリマー)の使用量を低減できる。
【0095】
したがって、処理対象層102を精度良くエッチングしつつ、処理対象層102のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
第1実施形態のように、酸性ポリマーを含有するポリマー膜101を用いて処理対象層102をエッチングすることで以下のような効果を奏する。
連続流のエッチング液によって酸化層103を除去する場合、エッチング液が基板Wの上面の中心側から周縁側に向かう過程でエッチング液の温度が低下する。そのため、エッチング液の温度低下に起因して基板Wの上面の周縁領域におけるエッチング量(除去量)が、基板Wの上面の中央領域におけるエッチング量よりも低くなり、基板Wの上面の各位置におけるエッチング量の均一性が低下するおそれがある。
【0096】
一方、第1実施形態によれば、半固体状または固体状のポリマー膜101によって基板Wの上面の全体が覆われており、ポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって酸化層103が除去される。そのため、ポリマー膜101が形成されている状態では、酸性ポリマーは基板Wの上面の中心側から周縁側に向かって移動しないため、ポリマー膜101において基板Wの上面の各位置に接する部分の温度がほぼ一律に変化する。そのため、エッチング量の均一性の向上を図ることができる。
【0097】
第1実施形態とは異なり、連続流のエッチング液で酸化層103を除去する構成では、基板Wの上面に形成されているトレンチ122の幅Lが狭い場合には、トレンチ122に入り込んでいる液体をエッチング液で充分に置換できないことがある。そのため、互いに幅Lが異なる複数のトレンチ122が基板Wの上面に形成されている場合には、トレンチ122に入り込んでいる液体のエッチング液による置換の度合いにばらつきが生じ、基板Wの上面におけるエッチング量の均一性が低下する。
【0098】
一方、第1実施形態によれば、
図8に示すように、ポリマー膜101は、トレンチ122の幅Lにかかわらず、処理対象層102およびトレンチ122に倣うように形成される。詳しくは、ポリマー膜101は、酸化層103の表面103a、トレンチ122の側面122aおよび構造体121の頂部121aに沿うように形成される。そのため、互いに幅Lの異なるトレンチ122が形成されている場合であっても、トレンチ122間での処理対象層102のエッチング量のばらつきを低減できる。
【0099】
図9Aおよび
図9Bに示すように、結晶粒界111において酸化層103を構成する構成物質116同士の間の距離は、結晶粒110における構成物質116同士の間の距離よりも広い。そのため、結晶粒界111において構成物質116同士の間には、隙間113が存在する。構成物質116は、たとえば、分子であり、典型的には、酸化銅分子である。
【0100】
第1実施形態とは異なり、
図9Aに示すように、フッ酸等の低分子量エッチング成分114を含有するエッチング液によって酸化層103を除去する場合、基板Wの結晶粒界111に存在する隙間113に低分子量エッチング成分114が入り込みやすい。そのため、結晶粒界密度が大きい箇所(幅Lが狭いトレンチ122内)において酸化層103が除去されやすく、結晶粒界密度が小さい箇所(幅Lが広いトレンチ122内)において酸化層103が除去されにくい。したがって、処理対象層102が均一にエッチングされにくく、基板Wの上面のラフネス(表面粗さ)が増大する。
【0101】
一方、第1実施形態によれば、
図9Bに示すように、高分子量エッチング成分である酸性ポリマー115は、低分子量エッチング成分114よりも結晶粒界111に存在する隙間113に入りにくい。そのため、結晶粒界密度にかかわらず、処理対象層102を均一にエッチングすることができる。基板Wの上面のラフネスを低減できる。
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0102】
第1実施形態によれば、ポリマー膜101を加熱してアルカリ成分を蒸発させることによって、ポリマー膜101中の酸性ポリマーが活性を取り戻し、エッチングが開始される。したがって、基板Wを精度良くエッチングできる。特に、基板Wのエッチングの開始タイミングを精度良く制御できる。
また第1実施形態によれば、導電性ポリマーの作用によって、ポリマー膜101中の酸性ポリマーのイオン化を促進することができる。そのため、酸性ポリマーを酸化層103に効果的に作用させることができる。
【0103】
また、第1実施形態では、酸化層除去工程の後、次の酸化層形成工程が開始される前に、基板Wの上面からポリマー膜101が除去される。基板Wからポリマー膜101が除去された後に酸化層103の形成が開始されるので、処理対象層102の酸化中に酸化層103が除去されることを抑制できる。詳しくは、酸化層形成工程において形成される酸化層103が、基板W上に残留している酸性ポリマーによって除去されることを抑制でき、それによって、酸化層形成工程中に酸化層103の形成および除去が連鎖的に起こることを抑制できる。そのため、処理対象層102のエッチング量が想定よりも大きくなることを抑制できる。すなわち、処理対象層102を一層精度良くエッチングできる。
【0104】
また、第1実施形態によれば、酸化層形成工程の後で、かつ、酸化層除去工程の前に、基板Wの上面にリンス液を供給することによって、基板Wの上面から液状酸化剤が除去される。液状酸化剤が基板Wから除去された後に酸化層103の除去が開始されるので、基板Wの主面の表層部のエッチング中に酸化層103が形成されることを抑制できる。詳しくは、ポリマー膜101中の酸性ポリマーによって酸化層103を除去している間に、基板W上に残留している酸化剤によって酸化層103がさらに形成されることを抑制でき、それによって、酸化層除去工程中に酸化層103の形成および除去が連鎖的に起こることを抑制できる。そのため、処理対象層102のエッチング量が想定よりも大きくなることを抑制できる。すなわち、処理対象層102を一層精度良くエッチングできる。
【0105】
また、第1実施形態によれば、ポリマー膜101を加熱することによって酸化層103の除去を促進できるので、基板処理に要する時間を削減できる。
<第1実施形態に係る基板処理の別の例>
図10は、基板処理装置1によって実行される基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
図11は、当該別の例の基板処理が行われているときの基板Wの様子を説明するための模式図である。
【0106】
図10に示す基板処理が、
図5に示す基板処理と主に異なる点は、液状酸化剤供給工程(ステップS2)および酸化剤除去工程(ステップS3)の代わりに、ヒータユニット6による加熱によって酸化層を形成する酸化加熱工程(ステップS10)が実行される点である。
詳しくは、基板Wがウェット処理ユニット2Wに搬入された後、スピンチャック5に保持されている基板Wがヒータユニット6によって所定の酸化温度に加熱される(加熱酸化工程)。これにより、基板Wの上面から露出する処理対象層が酸化されて酸化層が形成される(酸化層形成工程)。所定の酸化温度は、たとえば、100℃以上で、かつ、400℃以下の温度である。加熱によって形成される酸化層は、たとえば、10nm以上20nm以下の厚みを有する。
【0107】
ヒータユニット6は、たとえば、
図11に示すように接触位置に配置される。これにより、処理対象層が酸化される程度の高温に基板Wを加熱することができる。この基板処理では、ヒータユニット6が基板酸化ユニットとして機能する。
その後、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)が実行される。詳しくは、第2ノズル移動ユニット36がポリマー含有液ノズル10を処理位置に移動させ、ポリマー含有液バルブ51Aが開かれる。これにより、基板Wの上面にポリマー含有液が供給される。
【0108】
その後、ポリマー膜形成工程(ステップS5)およびポリマー膜加熱工程(ステップS6)が実行される。ポリマー膜加熱工程(ステップS6)における酸化層103(
図1を参照)の除去は、加熱酸化工程よりも低温で基板Wを加熱しながら行われることが好ましい。たとえば、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)では、
図6Fに示すように、ヒータユニット6を接触位置よりも基板Wから離間する近接位置に配置しながら行われることが好ましい。これにより、基板Wの上面の表層部の酸化を抑制しながら、ポリマー膜101による酸化層の除去を促進できる(除去促進工程)。
【0109】
この基板処理を採用すれば、基板Wを加熱することによって、基板Wの上面から露出する処理対象層102(
図1を参照)を酸化することができる。すなわち、液体を用いることなく、酸化層103(
図1を参照)を形成することができる。そのため、処理対象層102のエッチングに用いられる物質(酸化剤)の使用量を低減できる。さらに、酸化層103の形成および除去が、同一のスピンチャック5に基板Wが保持されている状態で行われる。したがって、基板Wを移動させる必要がないため、別々のスピンチャックに基板Wが保持された状態で酸化層103の形成および除去が行われる構成と比較して、酸化層103を速やかに除去できる。
【0110】
さらに、基板Wを酸化するために加熱された基板Wの熱量をポリマー膜101の加熱に利用して、酸化層103の除去を促進することができる。ひいては、基板処理に要する時間を削減できる。
また、この基板処理を採用すれば、酸化層103の形成に用いられるヒータユニット6を、酸化層103の除去を促進するための加熱にも利用することができる。そのため、基板Wを酸化するための加熱に用いられるヒータユニット6とは別のヒータを酸化層103の除去の促進ために設ける必要がないため、基板処理を簡素化できる。
【0111】
さらに、酸化層103を形成するための加熱に用いられるヒータユニット6を、酸化層103の除去を促進するための加熱にも利用することで、酸化層103の形成のためにヒータユニット6に与えられた熱量を酸化層103の除去に利用できる。そのため、酸化層103の酸化に用いられるヒータユニット6とは別のヒータユニットを酸化層103の除去を促進するために設ける構成と比較して、処理対象層102のエッチングを効率良く促進できる。
【0112】
図10に示す基板処理とは異なり、ポリマー膜除去工程(ステップS7)の後、加熱酸化工程(ステップS10)に戻るのではなく、スピンドライ工程(ステップS8)の後、加熱酸化工程(ステップS10)に戻ってもよい。
図5に示す基板処理においても、スピンドライ工程(ステップS8)の後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)に戻ってもよい。
【0113】
また、
図5に示す基板処理と
図10に示す基板処理を組み合わせてもよい。たとえば、液状酸化剤供給工程(ステップS2)~ポリマー膜除去工程(ステップS7)を実行した後に、加熱酸化工程(ステップS10)を実行してもよいし、加熱酸化工程(ステップS10)~ポリマー膜除去工程(ステップS7)を実行した後に、液状酸化剤供給工程(ステップS2)を実行してもよい。
【0114】
<ポリマー含有液の供給方法>
図12および
図13は、基板Wに対するポリマー含有液の供給方法の第1例および第2例について説明するための模式図である。
図12および
図13では、説明の便宜上、スピンチャック5、ヒータユニット6、処理カップ7、酸化剤ノズル9、および、リンス液ノズル11の図示を省略している。
【0115】
図12に示す供給方法の第1例では、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および、導電性ポリマー液が、混合配管130内で混合されてポリマー含有液が形成され、混合配管130内で形成されたポリマー含有液がポリマー含有液ノズル10から吐出されることによって基板Wの上面に供給される(ポリマー含有液供給工程)。混合配管130は、複数の液体を混合するための配管であり、たとえば、ミキシングバルブである。
【0116】
酸性ポリマー液は、酸性ポリマーおよび溶媒を含有する液体であり、アルカリ性液体は、アルカリ成分および溶媒を含有する液体である。導電性ポリマー液は、導電性ポリマーおよび溶媒を含有する液体である。これらの液体に含まれる溶媒は、同種の液体であることが好ましく、たとえば、DIWであることが好ましい。
酸性ポリマー液は、酸性ポリマー液配管131介して、酸性ポリマー液タンク141から混合配管130へ供給される。アルカリ性液体は、アルカリ性液体配管132介して、アルカリ性液体タンク142から混合配管130へ供給される。導電性ポリマー液は、導電性ポリマー液配管133介して、導電性ポリマー液タンク143から混合配管130へ供給される。混合配管130内で形成されたポリマー含有液は、ポリマー含有液配管41を介してポリマー含有液ノズル10に供給される。酸性ポリマー液配管131、アルカリ性液体配管132および導電性ポリマー液配管133には、対応する配管内の流路を開閉する複数のバルブ(酸性ポリマー液バルブ135A、アルカリ性液体バルブ136Aおよび導電性ポリマー液バルブ137A)がそれぞれ介装されている。酸性ポリマー液配管131、アルカリ性液体配管132および導電性ポリマー液配管133には、対応する配管内の液体の流量を調整する複数の流量調整バルブ(酸性ポリマー液流量調整バルブ135B、アルカリ性液体流量調整バルブ136Bおよび導電性ポリマー液流量調整バルブ137B)がそれぞれ介装されている。
【0117】
図13に示すポリマー含有液の供給方法の第2例では、ポリマー含有液は、ポリマー含有液配管41を介して、ポリマー含有液タンク140からポリマー含有液ノズル10に供給される。ポリマー含有液タンク140には、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および、導電性ポリマー液が、酸性ポリマー液補充管145、アルカリ性液体補充管146、および、導電性ポリマー液補充管147をそれぞれ介して補充される。ポリマー含有液は、ポリマー含有液タンク140内で酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および、導電性ポリマー液が混合されることによって形成される。
【0118】
ポリマー含有液タンク140には、pHメータ129が設けられていてもよい。コントローラ3が、pHメータ129が検出するpHに基づいて、フィードバック制御してもよい。フィードバック制御は、複数の補充管(酸性ポリマー液補充管145、アルカリ性液体補充管146、および、導電性ポリマー液補充管147)にそれぞれ介装された複数の補充バルブ148を調整することによって、ポリマー含有液のpHが中性を維持するように行われる。
【0119】
<第1実施形態に係る基板処理装置の変形例>
図14~
図16は、前記ウェット処理ユニットの第1変形例~第3変形例について説明するための模式図である。
図14は、ウェット処理ユニット2Wの第1変形例について説明するための模式図である。
図14において、前述の
図1~
図13に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図15および
図16についても同様である。
【0120】
ウェット処理ユニット2Wは、
図3の例とは異なり、
図14に示すように、基板Wの上面上でポリマー含有液が形成されるように構成されていてもよい。
図14および
図15では、説明の便宜上、処理カップ7、酸化剤ノズル9、および、リンス液ノズル11の図示を省略している。
ウェット処理ユニット2Wは、ポリマー含有液ノズル10の代わりに、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に酸性ポリマー液を供給する酸性ポリマー液ノズル14と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面にアルカリ性液体を供給するアルカリ性液体ノズル15と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に導電性ポリマー液を供給する導電性ポリマー液ノズル16とを備えている。これらのノズルは、ポリマー含有液ノズル10と同様に、水平方向に移動可能であってもよい。
【0121】
酸性ポリマー液ノズル14には、酸性ポリマー液タンク141内の酸性ポリマー液を酸性ポリマー液ノズル14に案内する酸性ポリマー液配管131が接続されている。アルカリ性液体ノズル15には、アルカリ性液体タンク142内のアルカリ性液体をアルカリ性液体ノズル15に案内するアルカリ性液体配管132が接続されている。導電性ポリマー液ノズル16には、導電性ポリマー液タンク143内の導電性ポリマー液を導電性ポリマー液ノズル16に案内する導電性ポリマー液配管133が接続されている。
【0122】
酸性ポリマー液配管131、アルカリ性液体配管132および導電性ポリマー液配管133には、対応する配管内の流路を開閉する複数のバルブ(酸性ポリマー液バルブ135A、アルカリ性液体バルブ136Aおよび導電性ポリマー液バルブ137A)がそれぞれ介装されている。酸性ポリマー液配管131、アルカリ性液体配管132および導電性ポリマー液配管133には、対応する配管内の液体の流量を調整する複数の流量調整バルブ(酸性ポリマー液流量調整バルブ135B、アルカリ性液体流量調整バルブ136Bおよび導電性ポリマー液流量調整バルブ137B)がそれぞれ介装されている。
【0123】
図14に示す基板処理装置1の第1変形例では、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)において、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および導電性ポリマー液が対応するノズルから吐出されて基板Wの上面上に着液する。酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および導電性ポリマー液が基板Wの上面上で混合されてポリマー含有液が形成される。
図15は、ウェット処理ユニット2Wの第2変形例について説明するための模式図である。第2変形例のウェット処理ユニット2Wは、
図14に示す第1変形例と同様に、
図15に示すように、基板Wの上面上でポリマー含有液が形成される。ただし、第1変形例とは異なり、アルカリ性液体ノズル15および酸性ポリマー液ノズル14は設けられておらず、アルカリ性液体と酸性ポリマー液とが混合された液体である中性液体を基板Wの上面に供給される中性液体ノズル17が設けられている。中性液体ノズル17は、水平方向に移動可能である。
【0124】
中性液体ノズル17には、中性液体タンク144内の中性液体を中性液体ノズル17に案内する中性液体配管134が接続されている。中性液体配管134には、中性液体配管134内の流路を開閉する中性液体バルブ138Aが介装されている。中性液体配管134には、中性液体配管134内の中性液体の流量を調整する中性液体流量調整バルブ138Bが介装されている。中性液体タンク144には、酸性ポリマー液およびアルカリ性液体が、酸性ポリマー液補充管145およびアルカリ性液体補充管146をそれぞれ介して補充される。
【0125】
中性液体タンク144には、pHメータ129が設けられていてもよい。コントローラ3が、pHメータ129が検出するpHに基づいて、フィードバック制御してもよい。フィードバック制御は、複数の補充管(酸性ポリマー液補充管145、アルカリ性液体補充管146、および、導電性ポリマー液補充管147)にそれぞれ介装された複数の補充バルブ148を調整することによって、中性液体のpHが中性を維持するように行われる。
【0126】
図15に示す基板処理装置1の第2変形例では、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)において、中性液体および導電性ポリマー液が対応するノズルから吐出されて基板Wの上面上に着液する。中性液体および導電性ポリマー液が基板Wの上面上で混合されてポリマー含有液が形成される。
図16は、ウェット処理ユニット2Wの第3変形例について説明するための模式図である。ウェット処理ユニット2Wは、
図3の例とは異なり、
図16に示すように、ヒータユニット6の代わりに、スピンチャック5に保持された基板Wの下面に向けて、基板Wを加熱する加熱流体を供給する加熱流体ノズル12を備えていてもよい。
【0127】
加熱流体ノズル12は、たとえば、スピンベース21の貫通孔21aに挿入されている。加熱流体ノズル12の吐出口12aは、基板Wの下面の中央領域に下方から対向する。
加熱流体ノズル12には、加熱流体ノズル12に加熱流体を案内する加熱流体配管43に接続されている。加熱流体配管43には、加熱流体配管43内の流路を開閉する加熱流体バルブ53Aと、当該加熱流体配管43内の加熱流体の流量を調整する加熱流体流量調整バルブ53Bとが介装されている。加熱流体ノズル12に供給される加熱流体の温度を調整するヒータ53C(温度調整ユニット)が設けられていてもよい。
【0128】
加熱流体バルブ53Aが開かれると、加熱流体が、加熱流体流量調整バルブ53Bの開度に応じた流量で、加熱流体ノズル12の吐出口12aから上方に連続流で吐出され、基板Wの下面の中央領域に供給される。
基板Wの下面に熱媒を供給することによって、基板Wを介して、基板Wの上面上のポリマー膜101が加熱され、ポリマー膜101による酸化層の除去を促進することが可能である(除去促進工程)。また、基板Wの下面に熱媒を供給することによって、処理対象層を酸化して酸化層を形成することも可能である(酸化層形成工程)。
【0129】
加熱流体ノズル12から吐出される加熱流体は、たとえば、常温よりも高く、ポリマー含有液の溶媒の沸点よりも低い温度の高温DIWである。加熱流体ノズル12から吐出される加熱流体は、高温DIWには限られず、高温不活性ガスや高温空気等の高温気体であってもよい。
不活性ガスは、たとえば、窒素(N2)ガスである。不活性ガスは、処理対象層および酸化層と反応しないガスである。不活性ガスは、窒素ガスに限られず、たとえば、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスであってもよいし、窒素ガスおよび希ガスの混合ガスであってもよい。すなわち、不活性ガスは、窒素ガスおよび希ガスのうち少なくとも一方を含むガスであってもよい。
【0130】
図16に示すウェット処理ユニット2Wを備える基板処理装置1によって、
図5に示す基板処理を実行することができるし、
図10に示す基板処理を実行することもできる。
図12に示すウェット処理ユニット2Wを備える基板処理装置1によって
図10に示す基板処理を実行する場合、加熱流体ノズル12が基板酸化ユニットとして機能する。
図16に示すウェット処理ユニット2Wを用いて加熱酸化工程(ステップS10)を実行する場合、酸化層形成工程における加熱流体の温度が、除去促進工程における加熱流体の温度よりも高くなるように、加熱流体の温度が調整されることが好ましい。
【0131】
<第2実施形態に係る基板処理装置の構成>
図17は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pの構成を説明するための平面図である。
第2実施形態に係る基板処理装置1Pが第1実施形態に係る基板処理装置1(
図3を参照)と主に異なる点は、処理ユニット2が、ウェット処理ユニット2Wおよびドライ処理ユニット2Dを含む点である。
図17において、前述の
図1~
図16に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図18~
図21についても同様である。
【0132】
図17に示す例では、搬送ロボットIR側の2つの処理タワーが、複数のウェット処理ユニット2Wによって構成されており、搬送ロボットIRとは反対側の2つの処理タワーが、複数のドライ処理ユニット2Dによって構成されている。第2実施形態に係るウェット処理ユニット2Wの構成は、第1実施形態に係るウェット処理ユニット2Wの構成(
図3に示す構成または
図12に示す構成)と同じである。なお、第2実施形態に係るウェット処理ユニット2Wでは、酸化剤ノズル9(
図3等を参照)を省略することが可能である。ドライ処理ユニット2Dは、チャンバ4内に配置され、基板Wに対して光照射処理を行う光照射処理ユニット70を含む。
【0133】
以下では、光照射処理ユニット70の構成例について説明する。
図18は、光照射処理ユニット70の構成例を説明するための模式的な断面図である。
光照射処理ユニット70は、基板Wが載置される載置面72aを有するベース72と、ベース72を収容する光処理チャンバ71と、載置面72aに載置された基板Wの上面に向けて紫外線等の光を照射する光照射ユニット73と、ベース72を貫通して上下動する複数のリフトピン75と、複数のリフトピン75を上下方向に移動させるピン昇降駆動機構76とを備えている。
【0134】
光処理チャンバ71の側壁には、基板Wの搬入出口71aが設けられており、光処理チャンバ71は、搬入出口71aを開閉させるゲートバルブ71bを有する。搬入出口71aが開かれているとき、搬送ロボットCRのハンドHが光処理チャンバ71にアクセスできる。基板Wは、ベース72上に載置されることによって、所定の第2保持位置に水平に保持される。第2保持位置は、
図18に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
【0135】
光照射ユニット73は、たとえば、複数の光照射ランプを含んでいる。光照射ランプは、たとえば、キセノンランプ、水銀ランプ、重水素ランプ等である。光照射ユニット73は、たとえば、1nm以上400nm以下、好ましくは、1nm以上300nm以下の紫外線を照射するように構成されている。具体的には、光照射ユニット73には、電源等の通電ユニット74が接続されており、通電ユニット74から電力が供給されることによって、光照射ユニット73(の光照射ランプ)が光を照射する。光照射によって、基板Wの処理対象層が酸化されて酸化層が形成される。
【0136】
複数のリフトピン75は、ベース72および光処理チャンバ71を貫通する複数の貫通孔78にそれぞれ挿入されている。複数のリフトピン75は、連結プレート77によって連結されている。複数のリフトピン75は、ピン昇降駆動機構76が連結プレート77を昇降させることによって、載置面72aよりも上方で基板Wを支持する上位置(
図18に二点鎖線で示す位置)と、先端部(上端部)が載置面72aよりも下方に没入する下位置(
図18に実線で示す位置)との間で上下動される。ピン昇降駆動機構76は、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。
【0137】
<第2実施形態に係る基板処理の一例>
図19は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。第2実施形態に係る基板処理が、第1実施形態に係る基板処理(
図5を参照)と主に異なる点は、ドライ処理ユニット2Dによって酸化層の形成が行われ、ウェット処理ユニット2Wによって酸化層の除去が行われる点である。
【0138】
以下では、主に
図18および
図19を参照して、第2実施形態に係る基板処理が第1実施形態に係る基板処理(
図5を参照)と異なる点について詳しく説明する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図17も参照)によってキャリヤCからドライ処理ユニット2Dに搬入され、上位置に位置する複数のリフトピン75に渡される(第1搬入工程:ステップS20)。ピン昇降駆動機構76が複数のリフトピン75を下位置に移動させることによって、基板Wが載置面72aに載置される。これにより、基板Wは、水平に保持される(第1基板保持工程)。
【0139】
次に、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2D外に退避した後、基板Wの上面に光を照射して酸化層を形成する光照射工程(ステップS21)が実行される。具体的には、通電ユニット74が光照射ユニット73に電力を供給する。これにより、光照射ユニット73によって基板Wに対する光照射が開始される。光照射によって、基板Wの上面から露出する処理対象層が酸化され、酸化層が形成される(酸化層形成工程、光照射工程、ドライ酸化工程)。光照射によって形成される酸化層は、10nm以上20nm以下の厚みを有する。光照射ユニット73は、基板酸化ユニットとして機能する。
【0140】
一定時間の光照射の後、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2Dに進入し、酸化された基板Wをベース72から受け取り、ドライ処理ユニット2D外へと搬出する(第1搬出工程:ステップS22)。具体的には、ピン昇降駆動機構76が複数のリフトピン75が上位置に移動させて、複数のリフトピン75が基板Wをベース72から持ち上げる。搬送ロボットCRは、複数のリフトピン75から基板Wを受け取る。
【0141】
ドライ処理ユニット2Dから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20に渡される(第2搬入工程:ステップS23)。開閉ユニット25が複数のチャックピン20を閉位置に移動させることによって、基板Wが複数のチャックピン20に把持される。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(第2基板保持工程)。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、スピンモータ23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。
【0142】
その後、
図6C~
図6Gに示すように、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)、ポリマー膜形成工程(ステップS5)、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)、および、ポリマー膜除去工程(ステップS7)が実行される。
ポリマー膜除去工程の後、スピンドライ工程(ステップS8)が行われる。具体的には、リンス液バルブ52Aが閉じられ、基板Wの上面へのリンス液の供給が停止される。そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。それによって、大きな遠心力が基板W上のリンス液に作用し、基板W上のリンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
【0143】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。搬送ロボットCRが、ウェット処理ユニット2Wに進入して、複数のチャックピン20から基板Wを受け取って、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(第2搬出工程:ステップS24)。
その後、第1搬入工程(ステップS20)から第2搬出工程(ステップS24)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われる。すなわち、サイクル処理が、複数サイクル行われる。最後の第2搬出工程(ステップS24)の後、基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0144】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、酸化層103の形成および酸化層103の除去が交互に繰り返されるため、処理対象層102を精度良くエッチングできる。また、第2実施形態によれば、基板Wの上面上に形成されたポリマー膜101に含有される酸性ポリマーによって基板Wがエッチングされる。そのため、処理対象層102のエッチングに要する物質(フッ酸や酸性ポリマー)の使用量を低減できる。
【0145】
第2実施形態によれば、以下の効果をさらに奏する。たとえば、第2実施形態によれば、光照射によって、処理対象層102が酸化される。すなわち、液状酸化剤を用いることなく、基板Wを酸化することができる。そのため、基板Wの上面に付着した液状酸化剤を除去する手間を省くことができる。また、光照射により基板Wを酸化する構成であるため、酸化剤を用いることなく、処理対象層102をエッチングできる。すなわち、処理対象層102のエッチングに要する物質の使用量を低減できる。
【0146】
図19に示す基板処理とは異なり、最後のスピンドライ工程(ステップS8)以外のスピンドライ工程を省略してもよい。詳しくは、最後のポリマー膜除去工程(ステップS7)の後を除いて、ポリマー膜除去工程の後、スピンドライ工程を実行することなく、基板Wをウェット処理ユニット2Wからドライ処理ユニット2Dに搬送してもよい。
<ドライ処理ユニットの変形例>
ドライ処理ユニット2Dは、光照射処理ユニット70の代わりに、熱処理ユニット80を備えていてもよい。
図20は、熱処理ユニット80の構成例を説明するための模式的な断面図である。
【0147】
熱処理ユニット80は、基板Wが載置される加熱面82aを有するヒータユニット82と、ヒータユニット82を収容する熱処理チャンバ81とを備えている。
ヒータユニット82は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット82は、プレート本体82Aおよびヒータ85を含む。プレート本体82Aの上面が加熱面82aを構成している。ヒータ85は、プレート本体82A内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ85は、ヒータ85の温度とほぼ等しい温度に基板Wを加熱できる。ヒータ85は、加熱面82aに載置された基板Wを常温以上400℃以下の所定温度範囲で加熱できるように構成されている。具体的には、ヒータ85には、電源等の通電ユニット86が接続されており、通電ユニット86から供給される電流が調整されることによって、ヒータ85の温度が所定温度範囲内の温度に変化する。
【0148】
熱処理チャンバ81は、上方に開口するチャンバ本体87と、チャンバ本体87の上方で上下動しチャンバ本体87の開口を塞ぐ蓋88とを備えている。熱処理ユニット80は、蓋88を昇降(上下方向に移動)させる蓋昇降駆動機構89を備えている。チャンバ本体87と蓋88との間は、Oリング等の弾性部材90によって密閉される。
蓋88は、蓋昇降駆動機構89によって、チャンバ本体87の開口を塞いで内部に密閉処理空間SPを形成する下位置(
図20に実線で示す位置)と、開口を開放するように上方に退避した上位置(
図20に二点鎖線で示す位置)との間で上下動される。密閉処理空間SPは、基板Wの上面に接する空間である。蓋88が上位置に位置するとき、搬送ロボットCRのハンドHが熱処理チャンバ81内にアクセスできる。蓋昇降駆動機構89は、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。
【0149】
熱処理ユニット80は、プレート本体82Aを貫通して上下動する複数のリフトピン83と、複数のリフトピン83を上下方向に移動させるピン昇降駆動機構84とをさらに備えている。複数のリフトピン83は、連結プレート91によって連結されている。複数のリフトピン83は、ピン昇降駆動機構84が連結プレート91を昇降させることによって、加熱面82aよりも上方で基板Wを支持する上位置(
図20に二点鎖線で示す位置)と、先端部(上端部)が加熱面82aよりも下方に没入する下位置(
図20に実線で示す位置)との間で上下動される。ピン昇降駆動機構84は、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。
【0150】
複数のリフトピン83は、ヒータユニット82およびチャンバ本体87を貫通する複数の貫通孔92にそれぞれ挿入されている。熱処理チャンバ81の外から貫通孔92への流体の進入が、リフトピン83を取り囲むベローズ(図示せず)等によって防止されてもよい。
熱処理ユニット80は、熱処理チャンバ81内の密閉処理空間SPに気体状酸化剤を導入する複数の気体導入ポート94を備えている。各気体導入ポート94は、蓋88を貫通する貫通孔である。
【0151】
気体状酸化剤は基板Wから露出する処理対象層を酸化させて酸化層を形成する気体である。気体状酸化剤は、たとえば、オゾン(O3)ガスである。気体状酸化剤は、オゾンガスに限られず、たとえば、酸化性水蒸気、過熱水蒸気等であってもよい。
複数の気体導入ポート94には、気体状酸化剤を気体導入ポート94に供給する気体状酸化剤配管95が接続されている。気体状酸化剤配管95は、気体状酸化剤供給源(図示せず)から複数の気体導入ポート94に向かう途中で分岐している。気体状酸化剤配管95には、その流路を開閉する気体状酸化剤バルブ96Aと、気体状酸化剤配管95内の気体状酸化剤の流量を調整する気体状酸化剤流量調整バルブ96Bとが介装されている。
【0152】
気体状酸化剤バルブ96Aが開かれると、複数の気体導入ポート94から密閉処理空間SPに気体状酸化剤が導入され、基板Wの上面に向けて気体状酸化剤が供給される。
複数の気体導入ポート94は、気体状酸化剤に加えて不活性ガスを供給できるように構成されていてもよい(
図20の二点鎖線を参照)。また、密閉処理空間SPに導入される気体状酸化剤に不活性ガスを混入させることもでき、不活性ガスの混入度合いによって酸化剤の濃度(分圧)を調整できる。
【0153】
熱処理ユニット80は、チャンバ本体87に形成され、熱処理チャンバ81の内部雰囲気を排気する複数の排出ポート97を備えている。各排出ポート97には、排出配管98が接続されており、排出配管98には、その流路を開閉する排出バルブ99が介装されている。
<第2実施形態に係る基板処理の別の例>
図21は、第2実施形態に係る基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
図21に示す基板処理が
図19に示す基板処理と異なる点は、光照射工程(ステップS21)の代わりに、基板Wを加熱しながら気体状酸化剤を基板Wの上面に向けて供給することで、酸化層を形成する気体状酸化剤供給工程(ステップS30)が実行される点である。
【0154】
以下では、主に
図20および
図21を参照して、
図21に示す基板処理について、
図19に示す基板処理との差異点を中心に説明する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(
図17も参照)によってキャリヤCからドライ処理ユニット2Dに搬入される(第1搬入工程:ステップS20)。ピン昇降駆動機構84が複数のリフトピン83を下位置に移動させることによって、基板Wが加熱面82aに載置される。これにより、基板Wは、水平に保持される(第1基板保持工程)。
【0155】
その後、蓋88を下降させることによって、チャンバ本体87と蓋88とによって形成される密閉処理空間SP内で、ヒータユニット82の加熱面82a上に基板Wが載置された状態となる。加熱面82a上に載置された基板Wは、ヒータユニット82によって、所定の酸化温度に加熱される(基板加熱工程、ヒータ加熱工程)。所定の酸化温度は、たとえば、100℃以上で、かつ、400℃以下の温度である。
【0156】
密閉処理空間SPが形成されている状態で、気体状酸化剤バルブ96Aが開かれる。これにより、複数の気体導入ポート94から密閉処理空間SPにオゾンガス等の気体状酸化剤が導入され、基板Wの上に向けて気体状酸化剤が供給される(気体状酸化剤供給工程:ステップS30)。
密閉処理空間SPに気体状酸化剤が供給される前に、気体導入ポート94から不活性ガスを密閉処理空間SPに供給して、密閉処理空間SP内の雰囲気が不活性ガスで置換してもよい(予備置換工程)。
【0157】
複数の気体導入ポート94から吐出された気体状酸化剤によって、基板Wから露出している処理対象層が酸化されて酸化層が形成される(酸化層形成工程、気体状酸化剤供給工程、ドライ酸化工程)。オゾンガス等の気体状酸化剤によって形成される酸化層は、たとえば、10nm以上20nm以下の厚みを有する。基板Wは、ヒータユニット82上で酸化温度にまで加熱されている。そのため、酸化層形成工程では、基板Wを酸化温度に加熱しながら基板Wの上面に向けて気体状酸化剤を供給する加熱酸化工程が実行される。このように、気体導入ポート94、および、ヒータユニット82が、基板酸化ユニットとして機能する。
【0158】
気体状酸化剤の供給中には、排出バルブ99が開かれている。そのため、密閉処理空間SP内の気体状酸化剤は排出配管98から排気される。
気体状酸化剤で基板Wの上面を処理した後、気体状酸化剤バルブ96Aが閉じられる。これにより、密閉処理空間SPへの気体状酸化剤の供給が停止される。その後、蓋88が上位置に移動する。密閉処理空間SP内の雰囲気を不活性ガスで置換した後、蓋88を上位置に移動させてもよい。
【0159】
一定時間の熱処理の後、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2Dに進入し、酸化された基板Wをドライ処理ユニット2D外へと搬出する(第1搬出工程:ステップS22)。具体的には、ピン昇降駆動機構84が複数のリフトピン83が上位置に移動させて、複数のリフトピン83が基板Wをヒータユニット82から持ち上げる。搬送ロボットCRは、複数のリフトピン83から基板Wを受け取る。ドライ処理ユニット2Dから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20に渡される(第2搬入工程:ステップS23)。
【0160】
その後、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)~第2搬出工程(ステップS24)が実行される。その後、第1搬入工程(ステップS20)から第2搬出工程(ステップS24)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われる。すなわち、サイクル処理が複数サイクル行われる。
図21に示す第2実施形態の基板処理の別の例においても、液状酸化剤を用いることなく、酸化層103を形成することができる。そのため、基板Wの上面に付着した液状酸化剤を除去する手間を省くことができる。
【0161】
図20に示すドライ処理ユニット2Dを用いて、気体状酸化剤の供給および基板Wの加熱のいずれかのみによって、酸化層103を形成してもよい。また、
図18に示すドライ処理ユニット2Dと
図20に示すドライ処理ユニット2Dとを組み合わせてもよい。たとえば、酸化層103を形成してもよい基板Wに対して光照射を行いながら基板Wを加熱することによって、酸化層103を形成してもよい。具体的には、基板Wに対して紫外線を照射しながら基板Wを加熱することで紫外線ラジカル酸化処理を行うことができる。また、基板Wに対して光照射を行いながら基板Wに気体状酸化剤を供給することによって、酸化層103を形成してもよい。
【0162】
すなわち、ドライ処理ユニット2Dとしては、
図18および
図20に示すドライ処理ユニットだけでなく、光照射、気体状酸化剤の供給、および基板Wの加熱のうちの少なくともいずれかによって酸化層103を形成できるドライ処理ユニットであれば採用可能である。
<第3実施形態に係る基板処理装置の構成>
図22は、第3実施形態に係る基板処理装置1Qに備えられるウェット処理ユニット2Wの構成例を説明するための模式的な断面図である。
図22において、前述の
図1~
図21に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図23A~
図26についても同様である。
【0163】
第3実施形態に係る基板処理装置1Qが、第1実施形態に係る基板処理装置1と主に異なる点は、ウェット処理ユニット2Wが酸化剤ノズル9およびポリマー含有液ノズル10の代わりに、液状酸化剤およびポリマー含有液の混合液を吐出する混合液ノズル13を備えている点である。
混合液は、溶質としての酸化剤、酸性ポリマー、アルカリ成分および導電性ポリマーと、溶質を溶解させる溶媒とを含有している。混合液に含有される酸化剤、酸性ポリマー、アルカリ成分および導電性ポリマーとしては、それぞれ、第1実施形態の酸化剤、酸性ポリマーアルカリ成分および導電性ポリマーと同様の成分を用いることができる。混合液に含有される溶媒は、常温で液体であり、酸性ポリマーおよび導電性ポリマーを溶解または膨潤させることができ、酸化剤およびアルカリ成分を溶解させることができ、基板Wの回転または加熱によって蒸発する物質であればよい。具体的には、ポリマー含有液に含有される溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0164】
混合液ノズル13は、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルである。混合液ノズル13は、第1ノズル移動ユニット35と同様の構成の第3ノズル移動ユニット37によって、水平方向に移動される。混合液ノズル13は、鉛直方向に移動可能であってもよい。混合液ノズル13は、この実施形態とは異なり、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルであってもよい。
【0165】
混合液ノズル13には、混合液ノズル13に混合液を案内する混合液配管150が接続されている。混合液配管150には、混合液配管150内の流路を開閉する混合液バルブ151Aと、混合液配管150内の流路を流れる混合液の流量を調整する混合液流量調整バルブ151Bとが介装されている。
<第3実施形態に係る基板処理の一例>
図23は、第3実施形態に係る基板処理装置1Qによって実行される基板処理の一例の説明するための流れ図である。
図24A~
図24Cは、第3実施形態に係る基板処理の一例が行われているときの基板Wの様子を説明するための模式図である。第3実施形態に係る基板処理が、第1実施形態に係る基板処理(
図5を参照)と主に異なる点は、基板Wへの混合液の供給によって酸化層103(
図1を参照)が形成され、混合液から形成されたポリマー膜101によって酸化層103が除去される点である。
【0166】
以下では、
図22および
図23を主に参照して、基板処理装置1Qによって実行される基板処理について、第1実施形態に係る基板処理との差異点を中心に説明する。
図24A~
図24Cは、適宜参照する。
未処理の基板Wがウェット処理ユニット2Wに搬入された後、基板Wの上面に混合液を供給する混合液供給工程(ステップS40)が実行される。具体的には、第3ノズル移動ユニット37が、混合液ノズル13を処理位置に移動させる。混合液ノズル13の処理位置は、たとえば、中央位置である。混合液ノズル13は、中央位置に位置するとき、基板Wの上面の中央領域に対向する。
【0167】
混合液ノズル13が処理位置に位置する状態で、混合液バルブ151Aが開かれる。これにより、混合液配管150内で、液状酸化剤とポリマー含有液とが混合されて混合液が形成される(混合液形成工程)。
図24Aに示すように、基板Wの上面の中央領域に向けて、混合液ノズル13から混合液が供給(吐出)される(混合液供給工程、混合液吐出工程、ノズル供給工程)。混合液ノズル13から吐出された混合液は、基板Wの上面の中央領域に着液する。
【0168】
基板Wの回転に起因する遠心力によって、基板Wの上面に着液した混合液が基板Wの上面の周縁部に向けて広がる。これにより、基板Wの上面の全域が混合液によって覆われる。混合液中の酸化剤によって、基板Wの上面から露出する処理対象層102が酸化される(酸化層形成工程、混合液酸化工程)。このように、混合液ノズル13は、基板酸化ユニットとして機能する。
【0169】
次に、
図24Bおよび
図24Cに示すように、基板Wの上面上の混合液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって、基板Wの上面に固体状または半固体状のポリマー膜101(
図24Cを参照)を形成するポリマー膜形成工程(ステップS41)が実行される。
具体的には、混合液バルブ151Aが閉じられて混合液ノズル13からの混合液の吐出が停止される。混合液バルブ151Aが閉じられた後、第3ノズル移動ユニット37によって混合液ノズル13が退避位置に移動される。混合液ノズル13は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
【0170】
混合液バルブ151Aが閉じられた後、
図24Bに示すように、基板Wの回転速度が所定のスピンオフ速度になるように基板Wの回転が加速される(回転加速工程)。スピンオフ速度は、たとえば、1500rpmである。スピンオフ速度での基板Wの回転は、たとえば、30秒の間継続される。基板Wの回転に起因する遠心力によって、基板W上の混合液の一部は、基板Wの周縁部から基板W外に飛散し、基板W上の混合液の液膜が薄膜化される(スピンオフ工程)。
【0171】
基板Wの回転に起因する遠心力の作用により、基板W上の混合液に接する気体が基板Wの上面の中心側から周縁側に向かう気流が形成される。この気流により、基板W上の混合液に接する気体状態の溶媒が基板Wに接する雰囲気から排除される。そのため、
図24Cに示すように、基板W上のポリマー含有液からの溶媒の蒸発(揮発)が促進され、固体状または半固体状のポリマー膜101が形成される(ポリマー膜形成工程)。このように、混合液ノズル13およびスピンモータ23が、ポリマー膜形成ユニットとして機能する。
【0172】
ポリマー膜101は、混合液と比較して粘度が高いため、基板Wが回転しているにもかかわらず、基板W上から完全に排除されずに基板W上に留まる。ポリマー膜101が形成された直後において、ポリマー膜101には、アルカリ成分が含有されているため、ポリマー膜101中の酸性ポリマーはほぼ失活している。そのため、酸化層の除去はほとんど行われない。
【0173】
なお、オゾンや過酸化水素等の酸化剤は、通常、常温で液状または気体状であるため、酸性ポリマーのように溶媒の蒸発に伴って半固体状または固体状には変化せず、スピンオフ工程によってその大半が基板W上から除去される。そのため、ポリマー膜101の形成後に基板W上に残留する酸化剤の量は僅かである。したがって、基板W上に残留する酸化剤によるポリマー膜101によって酸化層が除去されて新たに露出する処理対象層102の酸化は無視できる程度である。
【0174】
次に、基板W上のポリマー膜101を加熱するポリマー膜加熱工程(ステップS6)が実行される。具体的には、
図24Dに示すように、ヒータユニット6が近接位置に配置されて、基板Wが加熱される(基板加熱工程、ヒータ加熱工程)。
基板Wを介して基板W上に形成されたポリマー膜101が加熱される。ポリマー膜101が加熱されることによって、アルカリ成分が蒸発し、酸性ポリマーが活性を取り戻す(アルカリ成分蒸発工程、アルカリ成分除去工程)。そのため、ポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって、基板Wのエッチングが開始される(エッチング開始工程、エッチング工程)。
【0175】
詳しくは、基板Wの上面の表層部に形成されている酸化層の除去が開始される(酸化層除去開始工程、酸化層除去工程)。ポリマー膜101が形成された後、ポリマー膜101が加熱されるまでの間、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されており、ほぼ失活している。そのため、ポリマー膜101が形成された後、ポリマー膜101が加熱されるまでの間、基板Wのエッチングは開始されない。
【0176】
その後、
図6Gに示すように、ポリマー膜除去工程(ステップS7)が実行される。最初のポリマー膜除去工程が終了した後、混合液供給工程(ステップS40)からポリマー膜除去工程(ステップS7)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われる。すなわち、サイクル処理は、複数サイクル行われる。最後のポリマー膜除去工程(ステップS7)の後、スピンドライ工程(ステップS8)および基板搬出工程(ステップS9)が行われる。
【0177】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、酸化層103の形成および酸化層103の除去が交互に繰り返されるため、処理対象層102を精度良くエッチングできる。また、第3実施形態によれば、基板Wの上面上に形成されたポリマー膜101に含有される酸性ポリマーによって酸化層103が除去される。そのため、処理対象層102のエッチングに要する物質(フッ酸や酸性ポリマー)の使用量を低減できる。
【0178】
第3実施形態によれば、以下の効果をさらに奏する。たとえば、第3実施形態によれば、混合液中の酸化剤によって酸化層103が形成される。その後、基板W上の混合液中の溶媒を蒸発させることで形成されたポリマー膜101中の酸性ポリマーによって酸化層103が除去される。すなわち、基板Wの上面へ混合液を供給し、基板Wの上面上の混合液からポリマー膜101を形成することによって、酸化層103の形成および除去が順次に行われる。したがって、酸化層103の形成および除去のそれぞれに連続流の液体を用いる場合と比較して、処理対象層102のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
【0179】
<第3実施形態に係る混合液の供給方法>
図25および
図26は、基板Wに対する混合液の供給方法の第1例および第2例について説明するための模式図である。
図25に示す混合液の供給方法の第1例では、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、導電性ポリマー液および液状酸化剤が、混合配管130内で混合されて混合液が形成され、混合配管130内で形成された混合液が混合液ノズル13から吐出されて基板Wの上面に供給される(混合液供給工程)。
【0180】
混合液配管150には、混合配管130が接続されている。混合配管130には、酸化剤配管40を介して酸化剤タンク153から液状酸化剤が供給される。混合配管130には、酸性ポリマー液配管131を介して酸性ポリマー液タンク141から酸性ポリマー液が供給される。混合配管130には、アルカリ性液体配管132を介してアルカリ性液体タンク142からアルカリ性液体が供給される。混合配管130には、導電性ポリマー液配管133を介して導電性ポリマー液タンク143から導電性ポリマー液が供給される。
【0181】
各供給流量調整バルブ(酸性ポリマー液流量調整バルブ135B、アルカリ性液体流量調整バルブ136B、導電性ポリマー液流量調整バルブ137Bおよび酸化剤供給流量調整バルブ155B)の少なくとも1つの開度を調整することで、混合液ノズル13の吐出口から吐出される混合液中の各成分の割合(濃度)を調整できる。
この供給方法であれば、混合液ノズル13に接続された配管(混合配管130)内で液状酸化剤とポリマー含有液(酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および、導電性ポリマー液)とが混合されて混合液が形成される。そのため、基板Wの上面に酸性ポリマー液、アルカリ性液体、導電性ポリマー液および液状酸化剤が供給される直前に混合液が形成される。したがって、酸化剤と酸性ポリマーとが化学反応する場合であっても、酸化剤および酸性ポリマーの化学的変化を抑制しつつ、処理対象層102のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
【0182】
図26に示す混合液の供給方法の第2例では、液状酸化剤、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および、導電性ポリマー液が混合液タンク165内で混合されることによって混合液が形成される。
図26に示す例では、混合液タンク165に、液状酸化剤、酸性ポリマー液、アルカリ性液体および、導電性ポリマー液が供給され混合液タンク165内で混合液が形成されるが、混合液タンク165には、液状酸化剤とポリマー含有液(酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および導電性ポリマー液)とが供給されることによって混合液が形成されてもよい。
図26に示すウェット処理ユニット2Wでは、混合液配管150の他端が、混合液タンク165に接続されている。混合液タンク165には、液状酸化剤、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および、導電性ポリマー液をそれぞれ混合液タンク165に補充する酸化剤補充管166、酸性ポリマー液補充管145、アルカリ性液体補充管146および導電性ポリマー液補充管147が接続されている。
【0183】
混合液配管150に混合液を供給する混合液タンク165内で液状酸化剤、酸性ポリマー液、アルカリ性液体、および導電性ポリマー液が混合されて混合液が形成される。そのため、各液体を別々のタンクから混合液ノズル13に供給する構成と比較して設備を簡略化しつつ、処理対象層102のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0184】
上述の実施形態では、ポリマー含有液には、溶質として、酸性ポリマー、アルカリ成分および導電性ポリマーが含有されている。しかしながら、ポリマー含有液には、アルカリ性成分および導電性ポリマーが含有されていなくともよい。ポリマー含有液には、溶質として、酸性ポリマーに加えて、アルカリ性成分および導電性ポリマーの一方のみが含有されていなくともよい。
【0185】
また、各構成を模式的にブロックで示している場合があるが、各ブロックの形状、大きさおよび位置関係は、各構成の形状、大きさおよび位置関係を示すものではない。
また、スピンチャック5としては、把持式のものに限らず、たとえば、真空吸着式のバキュームチャックであってもよい。バキュームチャックは、基板Wの裏面を真空吸着することにより基板Wを水平な姿勢で保持位置に保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、スピンチャック5に保持されている基板Wを回転させる。
【0186】
また、上述の実施形態では、ポリマー含有液または混合液を基板Wの上面に供給した後、これらの液体から溶媒を蒸発させることによって基板Wの上面上にポリマー膜101が形成される。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、半固体状のポリマー膜101を基板Wの上面に塗布することによって、基板Wの上面上にポリマー膜101を形成してもよい。
【0187】
また、上述の各実施形態のポリマー加熱工程(ステップS6)において、基板Wに接する雰囲気を窒素ガス等の不活性ガスで置換した状態で、ポリマー膜101を加熱してもよい。これにより、酸化層103の除去後に意図しない酸化層が形成されることを抑制できる。
また、上述の実施形態では、酸化層形成工程および酸化層除去工程を含む基板処理が基板Wの上面に対して行われる。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、基板Wの下面に対して基板処理が行われてもよい。
【0188】
また、上述の実施形態に係る基板処理に用いられる基板Wの主面の表層部は、
図1に示す構造である必要はない。たとえば、基板Wの主面の全体から処理対象層102が露出していてもよいし、凹凸パターン120が形成されていなくてもよい。また、処理対象層102は、金属層である必要はなく、酸化シリコン層であってもよい。また、処理対象層102が単一の物質で構成されている必要はなく、複数の物質によって構成されていてもよい。
【0189】
また、第1実施形態に係るウェット処理ユニット2Wを用いて、酸化剤ノズル9からの液状酸化剤の供給、および、ポリマー含有液ノズル10からのポリマー含有液の供給を同時に行うことで、基板Wの上面で混合液を形成することも可能である。
また、上述の各実施形態に係る基板処理においてポリマー膜加熱工程(ステップS6)が省略されてもよい。さらに、上述の第1実施形態に係る基板処理(
図5を参照)において、酸化剤除去工程(ステップS3)が省略されてもよい。図示しないが、酸化剤除去工程(ステップS3)とポリマー含有液供給工程(ステップS4)との間に、基板Wを高速回転させて酸化剤除去液としてのリンス液を基板Wから振り切るスピンドライ工程が実行されてもよい。
【0190】
また、上述の各実施形態において、配管、ポンプ、バルブ、ノズル移動ユニット等についての図示を一部省略しているが、これらの部材が存在しないことを意味するものではなく、実際にはこれらの部材は適切な位置に設けられている。
なお、上述の実施形態では、「沿う」、「水平」、「鉛直」といった表現を用いたが、厳密に「沿う」、「水平」、「鉛直」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
【0191】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0192】
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
1Q :基板処理装置
3 :コントローラ
5 :スピンチャック
6 :ヒータユニット(基板酸化ユニット)
9 :酸化剤ノズル(基板酸化ユニット)
10 :ポリマー含有液ノズル(ポリマー膜形成ユニット)
12 :加熱流体ノズル(基板酸化ユニット)
13 :混合液ノズル(基板酸化ユニット、ポリマー膜形成ユニット)
23 :スピンモータ(ポリマー膜形成ユニット)
82 :ヒータユニット(基板酸化ユニット)
101 :ポリマー膜
102 :処理対象層(基板の主面の表層部)
103 :酸化層
130 :混合配管
165 :混合液タンク