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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】大型消防車両
(51)【国際特許分類】
   A62C 27/00 20060101AFI20241219BHJP
   A62C 31/24 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A62C27/00 501
A62C27/00 506
A62C31/24
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021049606
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148077
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】桝谷 徹
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-183242(JP,A)
【文献】特開平11-342861(JP,A)
【文献】米国特許第09399151(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0230863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 27/00
A62C 31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡消火薬剤タンク、高所泡消火薬剤放射手段および運転室を有する大型消防車両であって、
前記泡消火薬剤タンクの容量が5.8m3以上であり、
前記高所泡消火薬剤放射手段が、泡消火薬剤を放射する筒先、該筒先を地上から22m以上の高さに配置する塔または梯子、および放水ポンプを有し、
前記運転室内に、前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段を有すると共に、
操向方向と逆方向に後輪を舵角する後輪操舵手段を有することを特徴とする大型消防車両。
【請求項2】
更に前記泡消火薬剤と水との混合手段を有する、請求項1に記載の大型消防車両。
【請求項3】
回転半径が最小になるように走行するとき、外側前輪が描く円の半径が11m以下、内側後輪が描く円の半径が7m以下である、請求項1または2に記載の大型消防車両。
【請求項4】
前記大型消防車両の走行に関係する通信信号、および前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段の制御に関係する通信信をが、CAN-BUSシステムを介して接続されている、請求項1~3のいずれかに記載の大型消防車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型消防車両に関し、石油コンビナー等で使用する大型消防車両に関する。
【背景技術】
【0002】
石油コンビナートや火力発電所等には、高所放水車、大型化学消防車、および泡原液搬送車などの特定の消防車両およびそれらを操作する多数の消防要員を常駐させておく必要がある。このような複数の特定消防車両を配備し常に出動可能にしておくこと、また多数の消防要員を常駐させることには、多大な設備、コストおよび労力を必要とする。
【0003】
このため、特定の消防車両の操作の自動化および省力化する方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。しかし、この方法では、消防車両の台数を減らすことはできず、また消防車両同士を接続するのに一定時間を要し、さらに車庫面積を低減したり、消防要員を削減する効果が、十分には得られない。
【0004】
近年、高所放水車および大型化学消防車を一体化し、大型化学高所放水車とすることにより、必要とされる消防車両の台数を減らし、メンテナンスや車庫にかかる設備費や労費を減らすと共に、高所放水車と大型化学消防車との接続操作をなくし、消防要員の人数を少なくすることが試みられ一定の成果が得られている。しかし、石油コンビナートや火力発電所等の大規模化に伴い、消防車両の機能、性能および安全性を維持、向上すると共に、設備費や労費を更に削減することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11‐137709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、石油コンビナー等で使用する消防車両の機能、性能および安全性を維持、向上すると共に、設備費や労費を更に削減可能にする大型消防車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成する大型消防車両は、泡消火薬剤タンク、高所泡消火薬剤放射手段および運転室を有する大型消防車両であって、前記泡消火薬剤タンクの容量が5.8m3以上であり、前記高所泡消火薬剤放射手段が、泡消火薬剤を放射する筒先、該筒先を地上から22m以上の高さに配置する塔または梯子、および放水ポンプを有し、前記運転室内に、前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段を有すると共に、操向方向と逆方向に後輪を舵角する後輪操舵手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の大型消防車両によれば、高所放水車、大型化学消防車および泡原液搬送車を一体化したので、高所放水車および大型化学消防車の間、大型化学消防車および泡原液搬送車の間を接続する操作を省くことができると共に、泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段を運転室内に配置したので、火災等の現場に到着後、迅速に消火活動等を開始することができる。また、その操作に携わる消防要員の数を少なくすることができる。更に、大型消防車両を格納する車庫の面積を減らし、かつそのメンテナンスに関わる人員も少なくすることができる。従来、高所放水車、大型化学消防車および泡原液搬送車を一体化すると、大型消防車両の全長が長くなり、法令等で定められた石油コンビナートや火力発電所等の工場内の道路を走行するのが困難になると懸念されたが、操向方向と逆方向に後輪を舵角する後輪操舵手段を有することにより、工場内の道路をスムーズに走行することができる。
【0009】
前記大型消防車両は、更に泡消火薬剤の混合手段を有することにより、給水から放水までのすべてを一台の大型消防車両で行うことができ、大型屋外貯蔵タンク火災等に迅速に対処することができる。
【0010】
前記大型消防車両は、回転半径が最小になるように走行するとき、外側前輪が描く円の半径が11m以下、内側後輪が描く円の半径が7m以下であるとよく、交差する幅員約9mの道路を略直角に曲がることができる。
【0011】
前記大型消防車両は、その走行に関係する通信信号、および前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段の制御に関係する通信信号が、CAN-BUSシステムを介して接続されているとよく、大型消防車両に搭載されたあらゆる通信信号を1つのネットワークに統合し、信頼性を向上すると共に、配線ハーネスを軽量化することができる。なお、本明細書において、CAN-BUSシステムとは、ISO 11898に準拠した通信規格をいう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の大型消防車両の概要を模式的に例示する説明図である。
図2図2は、本発明の大型消防車両の装備を模式的に例示する説明図である。
図3図3は、本発明の大型消防車両が備える塔の動作を例示する説明図である。
図4図4は、本発明の大型消防車両が走行時の回転半径を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、更に詳しく本発明の大型消防車両について、図面を参照して説明する。
【0014】
大型消防車両は、泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段等の消防装置と、運転室、操舵手段および車両エンジン等の走行装置を有する。消防装置として、泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段の他に、泡消火薬剤ポンプ、放水ポンプ、給水ポンプ、自動比例泡混合装置、消防ホース、給水手段(吸管、真空ポンプ、ピストンプライミングポンプ)、ハンドノズル(手持放水銃)、ハンドノズル用ホースリール、等を配備することができる。また、走行装置として、運転室、操舵手段および車両エンジンの他に、燃料タンク、冷却システム、各種オイル管理システム、各種通信システム、等を配備することができる。
【0015】
図1に示すように、大型消防車両1は、泡消火薬剤タンク6、筒先3および塔4からなる高所泡消火薬剤放射手段2および運転室7を有し、更に放水ポンプ5や泡消火薬剤ポンプ等を収容したポンプ室、各種消防用装備および工具等を格納した資材室11、等からなる。
【0016】
大型消防車両1は、図2に示すように、水15が給水手段により、放水ポンプ5へ送られ、放水ポンプ5により、加圧され混合手段9を通り、高所泡消火薬剤放射手段2の筒先3および/またはハンドノズル12から放射される。一方、泡消火薬剤タンク6に収容された泡消火薬剤14は、泡消火薬剤ポンプ10により、放水圧とほぼ同じ圧力に加圧され、混合手段9により、水と混合する。上記の他、放水操作を安全かつ円滑に行うため、必要な配管、バルブ、各種計器等が備えられている。
【0017】
泡消火薬剤タンク6は、その容量が5.8m3以上であり、好ましくは6m3以上10m3以下である。泡消火薬剤タンク6の容量を5.8m3以上にすることにより、石油コンビナーや火力発電所等で起きる火災等に適切に対処することができる。泡消火薬剤タンク6は、その大容量を確保するため、略車両幅と同じ大きさのほぼ直方体の樹脂製タンクであるとよい。樹脂としては、繊維強化プラスチック(FRP)が好ましく、例えば熱硬化性樹脂を母材とし炭素繊維強化またはガラス繊維強化のFRPが挙げられる。また、大型消防車両は、泡消火薬剤タンク6は、その下流側に、泡消火薬剤ポンプ10、泡消火薬剤と水との混合手段9、例えば自動比例泡混合装置を有するとよい。泡消火薬剤タンク6から泡消火薬剤ポンプ10を介し圧送された泡消火薬剤は、自動比例泡混合装置で自動的に一定の比率で水と混合され、筒先3から放射する泡へと調製される。ここで、水は、河川、池、湖、海から給水ポンプで汲み上げた水や、消火栓から供給される水を用いることができる。
【0018】
大型消防車両は、自動比例泡混合装置で混合した泡を、高所泡消火薬剤放射手段2に送水する。高所泡消火薬剤放射手段2は、混合した泡を放水ポンプ5により加圧した水と共に、1.4MPaの吐出圧力で毎分3.0m3以上、好ましくは毎分3.0m3以上5.0m3以下の放水を可能にする。なお、放水ポンプ5等の消防装置の動力源は、消防装置用エンジンを備えてもよいし、或いは走行用の車両エンジンの出力を共有してもよい。
【0019】
放水ポンプ5から圧送された泡(泡消火薬剤および水を混合した泡)は、高所泡消火薬剤放射手段2に備えられた筒先3から、火元等へ放射される。ここで、筒先3は地上から22m以上、好ましくは22m以上35m以下の高さに配置される。すなわち、筒先3は、塔高22m以上の塔4または梯子(以下、まとめて「塔」と記載する。)の先に配置することができる。この筒先3は、その方向および角度を遠隔操作できるとよい。
【0020】
高所泡消火薬剤放射手段2が有する塔4は、塔高22m以上であれば特に限定されるものではなく、折り畳み、伸縮、旋回、およびこれらの組み合わせのいずれの形態でもよい。図3は、大型消防車両が備える塔4の動作を例示する説明図である。この塔4の基部は、折り畳み式であり、大型消防車両の屋根部に折り畳まれた状態から略垂直に起立させると約8mの高さになる。さらに、塔4の前方を延伸させ、上方に起こすことにより、塔高22m以上の高さを確保することができる。
【0021】
大型消防車両の運転室7内には、泡消火薬剤タンク6および高所泡消火薬剤放射手段2を操作する制御手段を有する。運転室7内に、消防に係るすべての装置および走行に係るすべての装置を操作可能にする制御手段を配置する。これにより、高所放水車、大型化学消防車、および泡原液搬送車のすべての機能を有しながら、それらの操作に必要な消防要員の人数を少なくすることができる。
【0022】
大型消防車両は、その走行に関係する通信信号、および泡消火薬剤タンク6および高所泡消火薬剤放射手段2等の消防装置の制御に関係する通信信号が、CAN-BUSシステムを介し、1つのネットワークに統合されて、接続されることが好ましい。これにより、大型消防車両を制御するときの信頼性を向上すると共に、配線ハーネス等の通信信号関係の配線量を削減し、軽量化することができる。
【0023】
大型消防車両は、後輪操舵手段8を有することにより、その全長が長くても回転半径を比較的小さくすることができる。すなわち、大型消防車両が操向する方向に対し、逆方向に後輪を舵角する後輪操舵手段8を有するので、交差する幅員約9mの道路を略直角に曲がることができる。大規模な石油コンビナートや火力発電所等の工場内では、道路の幅員が約9m以上に整備されているので、本発明の大型消防車両は、これら工場内をスムーズに走行することができる。また、車庫等への出入りも支障がない。
【0024】
大型消防車両は、回転半径が最小になるように走行するとき、図4に示すように、操向方向の外側前輪が描く円の半径Roが11m以下、内側後輪が描く円の半径Riが7m以下であるとよい。半径Roおよび半径Riをこのような範囲内にすることにより、石油コンビナート等の工場内を、スムーズに走行することができる。
【0025】
本発明の大型消防車両は、公道を走行可能に設計されている。
大型消防車両は、全長が約11m以上約16m以下であるとよく、全幅が約2.0m以上約3.5m以下であるとよく、全高が、塔4を収めた状態で、約2.5m以上約5.0m以下であるとよい。
【符号の説明】
【0026】
1 大型消防車両
2 高所泡消火薬剤放射手段
3 筒先
4 塔(または梯子)
5 放水ポンプ
6 泡消火薬剤タンク
7 運転室
8 後輪操舵手段
9 混合手段
10 泡消火薬剤ポンプ
11 資材室
12 ハンドノズル
13 ハンドノズル用ホースリール
14 消火薬剤
15 水
図1
図2
図3
図4