(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、射出成形システム、射出成形品の製造方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/82 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B29C45/82
(21)【出願番号】P 2021058568
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳明
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-090622(JP,A)
【文献】特開2021-020431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上のキャビティと
、各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路と、を備える金型に設けられた検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定部と、
上記判定部の判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御部と、
を備えており、
上記検知位置は
、各々の上記キャビティ内
、および、各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内
、の少なくとも一方に設けられており、
上記供給制御部は、上記検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティよりも早かったキャビティについて、下記(i)および(ii)少なくともいずれかの制御を行う、情報処理装置:
(i)次回以降の射出成形時に当該キャビティに流動樹脂を供給するタイミングを遅らせる制御;
(ii)当該キャビティに供給される流動樹脂の流速を遅くする制御。
【請求項2】
上記判定部は、上記検知位置に設けられた上記流動樹脂の流入を検知するセンサの出力に基づいて、各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
2個以上のキャビティと、各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路と、を備える金型に設けられた検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定部と、
上記判定部の判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御部と、
を備えており、
上記検知位置は、各々の上記キャビティ内、および、各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内、の少なくとも一方に設けられており、
上記供給制御部は、上記検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティよりも遅かったキャビティについて、下記(i)および(ii)の少なくともいずれかの制御を行う
、情報処理装置:
(i)次回以降の射出成形時に当該キャビティに流動樹脂を供給するタイミングを早める制御;
(ii)当該キャビティに供給される流動樹脂の流速を速くする制御。
【請求項4】
2個以上のキャビティと、各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路と、を備える金型に設けられた検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定部と、
上記判定部の判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御部と、
を備えており、
上記検知位置は、各々の上記キャビティ内、および、各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内、の少なくとも一方に設けられており、
下記(i)および(ii)の対応関係を学習した学習済みモデルを用いて、上記判定部が判定したタイミングに応じた、上記供給制御部が実行する供給制御の内容を決定する制御内容決定部を備える
、情報処理装置:
(i)各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングの差;
(ii)各検知位置に流動樹脂が上記の差が生じるタイミングで流入したときに実行された供給制御であって、当該供給制御により各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了した供給制御の内容。
【請求項5】
2個以上のキャビティ、および
、各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路、を備える金型と、
上記
金型に設けられた検知位置における流動樹脂の流入を検知するセンサと、
各々の上記キャビティへと流動樹脂を供給する射出成形制御装置と、
上記検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定部と、上記判定部の判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御部と、を備え、上記検知位置は、各々の上記キャビティ内、および、各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内、の少なくとも一方に設けられている情報処理装置と、
を含み、
上記情報処理装置では、
上記判定部が、上記センサの出力に基づいて、各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定し、
上記供給制御部が、上記判定部が判定したタイミングに応じて上記射出成形制御装置を制御する、
射出成形システム。
【請求項6】
2個以上のキャビティと
、各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路と、を備える金型の検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定ステップと、
上記判定ステップの判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御ステップと、
を含み、
上記検知位置は
、各々の上記キャビティ内
、および、各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内
、の少なくとも一方に設けられており、
上記供給制御ステップでは、上記検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティよりも早かったキャビティについて、下記(i)および(ii)の少なくともいずれかの制御を行う、射出成形品の製造方法:
(i)次回以降の射出成形時に当該キャビティに流動樹脂を供給するタイミングを遅らせる制御;
(ii)当該キャビティに供給される流動樹脂の流速を遅くする制御。
【請求項7】
上記流動樹脂は、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂を含んでいる、請求項
6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記判定部および上記供給制御部としてコンピュータを機能させるための、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形品の製造方法を改善する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では廃棄プラスチックが引き起こす環境問題が注目されている。多くの廃棄プラスチックは光、熱等により、崩壊・微粒子化したマイクロプラスチックに変わり、有害物質を吸着しながら空気中、土壌中、海洋中に飛散し、生物中に蓄積、食物連鎖に取り込まれることが分かってきており、生態系への影響が懸念されている。
【0003】
このため、生物によって分解される生分解性プラスチックが注目されている。その中でも、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、特にポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂は、土壌中だけでなく海洋中でさえも生分解されることから、世界的に注目を浴びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの生分解性プラスチックは一般的なプラスチックに比べると固化速度が遅く、一回の射出で多数個の射出成形品を製造(多数個取りと呼ばれる)する場合に、各キャビティへの樹脂の供給タイミングがずれると成形不良が発生しやすいという課題がある。成形不良としては、例えば、「バリ」、「ヒケ」、「ショート(ショートショット)」等が知られる。また、程度の差はあるが、生分解性プラスチック以外の射出成形品においても、各キャビティへの樹脂の供給タイミングがずれると成形不良品が発生することがある。
【0006】
本発明の一態様は、成形不良のない射出成形品を安定して生産することを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、(i)2個以上のキャビティと、(ii)各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路と、を備える金型に設けられた検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定部と、上記判定部の判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御部と、を備えており、上記検知位置は、(i)各々の上記キャビティ内;(ii)各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内の少なくとも一方に設けられている。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る射出成形品の製造方法は、(i)2個以上のキャビティと、(ii)各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路と、を備える金型の検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定ステップと、上記判定ステップの判定結果に基づいて、各々の上記キャビティにおける流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティへ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御ステップと、を含み、上記検知位置は、下記(i)および(ii)の少なくとも一方に設けられている。(i)各々の上記キャビティ内;(ii)各々のキャビティに接続されている上記流路であって、当該流路の最終分岐よりも下流にある当該流路内。
【0009】
なお、本発明の各態様に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記情報処理装置をコンピュータにて実現させる情報処理装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、高品質な樹脂成形品を安定して製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】上記情報処理装置を含む射出成形システムの概要を示す図である。
【
図3】流動樹脂の流入検知方法の例を示す図である。
【
図4】流動樹脂の供給制御方法を説明する図である。
【
図5】上記情報処理装置が実行する処理の一例を示すフロー図である。
【
図6】流動樹脂の供給制御処理の一例を示すフロー図である。
【
図7】流動樹脂の供給制御処理の他の例を示すフロー図である。
【
図8】流動樹脂の供給制御処理のさらに他の例を示すフロー図である。
【
図9】上記情報処理装置が実行する処理の他の例を示すフロー図である。
【
図10】流動樹脂の供給制御処理の一例を示すフロー図である。
【
図11】流動樹脂の供給制御処理の他の例を示すフロー図である。
【
図12】流動樹脂の供給制御処理のさらに他の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
(システム概要)
図2に基づいて、本実施形態に係る射出成形システム100の概要を説明する。
図2は、射出成形システム100の概要を示す図である。射出成形システム100は、射出成形により樹脂成形品を製造するシステムである。樹脂は熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。射出成形システム100には、情報処理装置1、金型2、センサ3a~3d、および射出成形制御装置4が含まれている。
【0013】
金型2は、樹脂成形品を製造するための金型であり、成形品の型であるキャビティ21と射出成形制御装置4から供給される流動樹脂の流路22とを含む。流路22には、射出成形制御装置4に接続する最上流側の第1流路221と、第1流路221が第1分岐222で分岐した第2流路223aおよび223bと、第2流路223aおよび223bがそれぞれ第2分岐224aおよび224bで分岐した第3流路225a~225dが含まれる。そして、最も下流側の流路である第3流路225a~225dの下流側端部には、それぞれキャビティ21a~21dが設けられている。つまり、金型2は、一回の射出で多数個の射出成形品を製造する多数個取りの金型である。
【0014】
なお、以下の説明において、第2流路223aと223bを区別する必要のないときには、単に第2流路223と記載する。第2分岐224aおよび224b、第3流路225a~225d、キャビティ21a~21d、センサ3a~3dについても同様である。金型2は、少なくとも2個の射出成形品を同時に製造できるものであればよく、キャビティ21の数も分岐の数も任意である。
【0015】
図2に示すキャビティ21は、スプーンの型であり、射出成形システム100により製造される樹脂成形品は樹脂製のスプーンである。無論、射出成形システム100は、スプーンに限られず、任意の射出成形品の製造に適用することができる。
【0016】
センサ3は、各キャビティ21についての流動樹脂の流入を検知する装置であり、金型2における所定の検知位置に設けられている。具体的には、
図2の例では、第3流路225aにセンサ3aが、第3流路225bにセンサ3bが、第3流路225cにセンサ3cが、そして第3流路225dにセンサ3dがそれぞれ設けられている。センサ3を用いた流動樹脂の検知方法については
図3に基づいて後述する。
【0017】
射出成形制御装置4は、金型2を用いた射出成形に関する処理を行う。例えば、射出成形制御装置4は、金型2に流動樹脂を供給する処理を行う。また、射出成形制御装置4は、流動樹脂の流路の開閉制御や、金型2の内部の温度制御等の射出成形に関する各種処理についても行うものであってもよい。
【0018】
情報処理装置1は、射出成形制御装置4による流動樹脂の供給を制御する。詳細は後述するが、情報処理装置1は、センサ3の出力に基づいて各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定し、該タイミングに応じて射出成形制御装置4を制御する。
【0019】
以上のように、本実施形態に係る射出成形システム100は、(i)2個以上のキャビティ21、および、(ii)各々のキャビティ21と接続されており分岐を有する流路22、を備える金型2と、金型2に設けられた、各々のキャビティ21に対応する各検知位置における流動樹脂の流入を検知するセンサ3と、各々のキャビティ21へと流動樹脂を供給する射出成形制御装置4と、センサ3の出力に基づいて各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定し、該タイミングに応じて射出成形制御装置4を制御する情報処理装置1と、を含む。
【0020】
上記の構成によれば、情報処理装置1は、各々のキャビティ21に対応する各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定し、そのタイミングに応じて射出成形制御装置4を制御する。これにより、キャビティ21への樹脂の供給を最適化して、高品質な樹脂成形品を安定して製造することが可能になる。
【0021】
(情報処理装置の構成)
図1に基づいて情報処理装置1の構成を説明する。
図1は、情報処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置1は、情報処理装置1の各部を統括して制御する制御部10と、情報処理装置1が使用する各種データを記憶する記憶部11を備えている。また、情報処理装置1は、情報処理装置1が他の装置と通信するための通信部12、情報処理装置1に対する各種データの入力を受け付ける入力部13、情報処理装置1が各種データを出力するための出力部14を備えている。
【0022】
また、制御部10は、開始検知部101、判定部102、制御内容決定部103および供給制御部104を備えている。また、記憶部11には、判定結果DB111が記憶されている。判定結果DB111は、開始検知部101が検知した射出開始時間と、判定部102が判定した流入タイミングとを記録するためのデータベースである。
【0023】
開始検知部101は、流動樹脂の射出が開始されたことを検知する。判定部102は、各キャビティ21について、検知位置への流動樹脂の流入タイミングを判定する。制御内容決定部103は、判定部102の判定結果に基づいて制御内容を決定する。供給制御部104は、各々のキャビティ21における流動樹脂の充填が同時に完了するように、キャビティへ21各々への流動樹脂の供給を制御する。具体的には、供給制御部104は、制御内容決定部103が決定した内容の制御を行う。
【0024】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置1は、(i)2個以上のキャビティ21と、(ii)各々の当該キャビティと接続されており分岐を有する流路22と、を備える金型2に設けられた検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定部102と、判定部102の判定結果に基づいて、各々のキャビティ21における流動樹脂の充填が同時に完了するように、当該キャビティ21へ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御部104と、を備えている。また、上記検知位置は、(i)各々のキャビティ21内、および(ii)各々のキャビティ21に接続されている流路22であって、最終分岐である第2分岐224よりも下流にある第3流路225の少なくとも一方である。
【0025】
多数個取りの金型2を用いて樹脂成形品を製造する際に、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングがずれた場合、先に充填が完了したキャビティ21内に不要な圧力がかかってバリなどの成形不良が生じることがある。このように、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを揃えることは、多数個取りの金型2を用いて高品質な樹脂成形品を安定して製造することが重要である。
【0026】
そこで、上記の構成によれば、キャビティ21内および第3流路225の少なくとも一方に設けた検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定し、その判定結果に基づいて、各キャビティ21の充填が同時に完了するように流動樹脂の供給を制御する。よって、高品質な樹脂成形品を安定して製造することが可能になる。
【0027】
また、以上のように、判定部102は、検知位置に設けられた流動樹脂の流入を検知するセンサ3の出力に基づいて、各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する。これにより、各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを正確に判定することが可能になる。
【0028】
(流動樹脂の流入検知方法)
図3に基づいて流動樹脂の流入検知方法について説明する。
図3は、流動樹脂の流入検知方法の例を示す図である。上述のように、各キャビティ21についての流動樹脂の流入は、キャビティ21内と、最終分岐である第2分岐224よりも下流にある第3流路225の何れか一方または両方に設定された検知位置に設置されたセンサ3により検知される。
【0029】
EX1は、第3流路225にセンサ3を設けた例である。この例において、流動樹脂が、センサ3が設置されている検知位置に到達すると、検知位置付近の温度が上昇し、また圧力も上昇する。このため、この例におけるセンサ3としては、例えば温度センサや圧力センサが適用できる。
【0030】
センサ3として温度センサや圧力センサを用いる場合、判定部102は、例えば、センサ3の検出値の変化量が所定の閾値を超えたタイミングを、検知位置に流動樹脂が流入したタイミングであると判定すればよい。
【0031】
EX2は、キャビティ21内で固化した樹脂成形品を取り出すためのエジェクトピン23にセンサ3を取り付けた例である。この例では、エジェクトピン23とキャビティ21の接続部が検知位置となる。つまりこの例における検知位置はキャビティ内の2箇所ということになる。エジェクトピン23とキャビティ21の接続部まで流動樹脂が到達すると、エジェクトピン23を介して流動樹脂の熱がセンサ3に伝導し、また、エジェクトピン23が流動樹脂により押圧される。このため、この例におけるセンサ3としても、例えば温度センサや圧力センサが適用できる。
【0032】
EX3は、キャビティ21内の複数個所にセンサ3を設けた例である。具体的には、この例では、キャビティ21の中央部よりやや下方側に1つと、キャビティ21の端部に1つの計2つのセンサ3が設けられている。
【0033】
このように、キャビティ21内の複数個所にセンサ3を設けることにより、キャビティ21への樹脂の充填率の遷移を計測することも可能になる。例えば、キャビティ21の中央部よりやや下方側のセンサ3で流動樹脂を検知したときの充填率が40%であり、キャビティ21の端部のセンサ3で流動樹脂を検知したときの充填率が100%であったとすると、射出開始から充填率が40%になるまでの所要時間や、充填率が40%から100%になるまでの所要時間を計測することも可能である。
【0034】
この例におけるセンサ3としても、例えば温度センサや圧力センサが適用できるが、キャビティ21の端部に設けるセンサ3は圧力センサとすることが好ましい。これは、キャビティ21の端部に設けるセンサ3を圧力センサとすることにより、充填率が100%になったタイミングを精度よく判定することが可能であるためである。
【0035】
また、温度センサを適用するにせよ、圧力センサを適用するにせよ、他種のセンサを適用するにせよ、充填完了のタイミングを正確に揃えたい場合には、センサ3の検出位置は、キャビティ21の端部すなわち流動樹脂が最後に到達する位置とすることが好ましい。この位置が、各キャビティ21における流動樹脂の充填完了のタイミングを正確に揃えるのに最も好適であるためである。
【0036】
(流動樹脂の供給制御方法)
図4に基づいて、供給制御部104による流動樹脂の供給制御方法について説明する。
図4は、流動樹脂の各種供給制御方法を説明する図である。各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを揃えるためには、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に早かったキャビティ21の充填完了を遅らせるか、当該流入タイミングが相対的に遅かったキャビティ21の充填完了を早めればよい。
【0037】
(温度調整による供給制御方法)
流動樹脂が流路22およびキャビティ21を流れる速度は、流動樹脂の温度が高いほど速くなる。このため、供給制御部104は、流動樹脂の温度を調整することにより、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを調整してもよい。これについて、
図4のA1に基づいて説明する。
【0038】
A1は、金型2における第3流路225の端部付近の構成の一例を示す断面図である。A1の例では、第3流路225の周囲にはヒータ24が設けられていて、ヒータ24により第3流路225内の流動樹脂を加温できるようになっている。この部分はホットゲートとも呼ばれる。また、第3流路225の末端部は、開閉可能なゲート2251となっている。ゲート2251の周囲にはチップヒータ25が設けられていて、チップヒータ25によりゲート2251からキャビティ21へと射出される直前の流動樹脂を加温できるようになっている。この部分はホットチップとも呼ばれる。ヒータ24およびチップヒータ25は射出成形制御装置4により制御される。
【0039】
供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に早かったキャビティ21については、ヒータ24およびチップヒータ25の何れかまたは両方の設定温度を、当該流入タイミングが相対的に遅かった他のキャビティ21よりも低くすればよい。これにより、そのキャビティ21の充填完了を遅らせることができる。
【0040】
また逆に、供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に遅かったキャビティ21については、ヒータ24およびチップヒータ25の何れかまたは両方の設定温度を、当該流入タイミングが相対的に早かった他のキャビティ21よりも高くしてもよい。これにより、そのキャビティ21の充填完了を早めることができる。
【0041】
また、供給制御部104は、ヒータ24およびチップヒータ25の何れかまたは両方について、それらによる加温時間を調整することにより、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを調整してもよい。
【0042】
例えば、供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に早かったキャビティ21については、当該流入タイミングが相対的に遅かった他のキャビティ21よりも、チップヒータ25をONからOFFに切り替えるタイミングを早くしてもよい。また、供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に遅かったキャビティ21については、当該流入タイミングが相対的に早かった他のキャビティ21よりも、チップヒータ25をONからOFFに切り替えるタイミングを遅くしてもよい。
【0043】
(ゲート開閉タイミングの調整による供給制御方法)
供給制御部104は、ゲート2251の開閉タイミングを調整することにより、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを調整してもよい。これについて、
図4のA2に基づいて説明する。
【0044】
A2は、金型2における第3流路225の端部付近の構成の一例を示す断面図であり、A21はゲート2251を開いた状態、A22はゲート2251を閉じた状態を示している。この例では、バルブピン26は第3流路225の延在方向に沿って移動するようになっており、第3流路225の端部側に移動したバルブピン26がゲート2251に嵌まり込むことによりゲート2251が閉じる。また、その逆方向にバルブピン26が移動してゲート2251から外れることによりゲート2251が開き、ゲート2251が開くことにより流動樹脂がキャビティ21に供給される。バルブピン26の移動は射出成形制御装置4により制御される。
【0045】
供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に早かったキャビティ21については、当該流入タイミングが相対的に遅かった他のキャビティ21よりも、ゲート2251を開くタイミングを遅くしてもよい。また、供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に遅かったキャビティ21については、当該流入タイミングが相対的に早かった他のキャビティ21よりも、ゲート2251を開くタイミングを早くしてもよい。
【0046】
(キャビティ内の気圧調整による供給制御方法)
供給制御部104は、キャビティ21内の気圧を調整することにより、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを調整してもよい。これについて、
図4のA3に基づいて説明する。
【0047】
A3は、キャビティ21とガスベント27の構成を示す断面図である。ガスベント27は、キャビティ21内の空気を放出するための管状の構造物であり、キャビティ21の端部(流動樹脂が最後に到達する部位)に設けられている。また、ガスベント27内にはピストン28が設けられている。ガスベント27におけるキャビティ21との接続部付近は流動樹脂がガスベント27内に流れ込まないようにするために管径が狭くなっているが、ピストン28が設けられている部分における管径はそれよりも広くなっている。
【0048】
ピストン28がキャビティ21側に押し込まれると、キャビティ21内が加圧され、キャビティ21内への流動樹脂の流入速度は遅くなり、充填完了までの所要時間は長くなる。逆に、ピストン28がキャビティ21側から引き出されると、キャビティ21内が減圧され、キャビティ21内への流動樹脂の流入速度は速くなり、充填完了までの所要時間は長くなる。ピストン28の移動は射出成形制御装置4により制御される。
【0049】
以上より、供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に早かったキャビティ21については、射出成形制御装置4にピストン28をキャビティ21側に押し込ませてキャビティ21内を加圧してもよい。また、供給制御部104は、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に遅かったキャビティ21については、射出成形制御装置4にピストン28をキャビティ21側から引き出させてキャビティ21内を減圧してもよい。
【0050】
(ゲート開度の調整による供給制御方法)
供給制御部104は、ゲート2251の開度を調整することにより、各キャビティ21における流動樹脂の充填が完了するタイミングを調整してもよい。これについて、
図4のA4に基づいて説明する。なお、ゲート2251の開度とは、ゲート2251の現在の開口面積と、ゲート2251を完全に開いたときの開口面積の比である。
【0051】
A4は、ゲート2251の開度の調整機構29を備えた金型2における第3流路225の端部付近の構成の一例を示す断面図である。調整機構29はねじ込み式になっており、調整機構29を第3流路225の内部側にねじ込むことにより、調整機構29の先端部が第3流路225内のゲート2251付近に突出してゲート2251の開度が下がるようになっている。調整機構29は射出成形制御装置4により制御される。
【0052】
供給制御部104は、射出成形制御装置4を制御して調整機構29を動作させ、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に早かったキャビティ21については、当該流入タイミングが相対的に遅かった他のキャビティ21よりも、ゲート2251の開度を小さくしてもよい。また、供給制御部104は、射出成形制御装置4を制御して調整機構29を動作させ、検知位置への流動樹脂の流入タイミングが相対的に遅かったキャビティ21については、当該流入タイミングが相対的に早かった他のキャビティ21よりも、ゲート2251の開度を大きくしてもよい。ゲート2251の開度が高いほどキャビティ21への樹脂の流入速度は速くなり、充填完了までの所要時間は短くなるので、このような制御によって充填完了までの時間を揃えることも可能である。
【0053】
また、
図4のA2に示したバルブピン26により開度を調整することも可能である。この場合、供給制御部104は、射出成形制御装置4を制御してバルブピン26の位置を調整することにより、ゲート2251の開度を調整すればよい。
【0054】
(処理の流れ:全体(即時制御))
図5に基づいて情報処理装置1が実行する処理の流れ(射出成形品の製造方法)を説明する。
図5は、情報処理装置1が実行する処理の一例を示すフロー図である。なお、
図5では、射出成形品の製造方法のうち、樹脂の供給制御に関する部分を示し、固形化した流動樹脂、すなわち射出成形品を取り出す等の工程については省略している。
【0055】
S11では、開始検知部101が、流動樹脂の射出が開始されたことを検知する。開始検知部101は、例えば、射出成形制御装置4からの通知により、射出開始を検知してもよい。また、開始検知部101は、検知した時刻を判定結果DB111に記録する。
【0056】
S12では、判定部102が、各キャビティ21について、検知位置への流動樹脂の流入タイミングを判定する。上述のように、判定部102は、検知位置に設けられた流動樹脂の流入を検知するセンサ3の出力に基づいて各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定してもよい。また、判定部102は、流入が検知された時刻を判定結果DB111に記録する。
【0057】
なお、
図5の処理では、射出開始後、射出された樹脂の充填が完了するまでの間に供給制御を行う。このため、検出位置は、金型2におけるできるだけ上流側の位置とすることが好ましい。例えば、検出位置は、第3流路225等とすることが好ましい。
【0058】
S13では、供給制御部104が、S12の判定結果に基づいて、各々のキャビティ21における流動樹脂の充填が同時に完了するように、キャビティへ21各々への流動樹脂の供給を制御する。これにより、S11で射出開始された金型2に含まれる各キャビティ21において、流動樹脂の充填を同時またはほぼ同時に完了させることができる。なお、S13の処理の詳細は
図6~8に基づいて後述する。
【0059】
S14では、供給制御部104は、供給制御を終了するか否かを判定する。ここで、終了すると判定された場合(S14でYES)には
図5の処理は終了する。一方、終了しないと判定された場合(S14でNO)にはS12の処理に戻る。なお、S14における終了条件についてはS13の詳細説明の際に説明する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る射出成形品の製造方法は、2個以上のキャビティ21と、(ii)各々のキャビティ21と接続されており分岐を有する流路22と、を備える金型2の検知位置に流動樹脂が流入したタイミングを判定する判定ステップ(S12)と、判定ステップの判定結果に基づいて、各々のキャビティ21における流動樹脂の充填が同時に完了するように、キャビティ21へ各々への流動樹脂の供給を制御する供給制御ステップ(S13)と、を含む。なお、上記検知位置は、キャビティ21内および第3流路225内の少なくとも何れかに設けられている。この製造方法によれば、高品質な樹脂成形品を安定して製造することが可能になる。
【0061】
また、上記製造方法において、上記流動樹脂は、例えばポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂やポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)のような、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(以下、PHA樹脂と呼ぶ)を含んでいてもよい。PHA樹脂は、生分解性を有する脂肪族ポリエステルである。一般に、PHA樹脂を、複数のキャビティを含む金型で射出成形して樹脂成形品を製造する場合、各キャビティにおける当該樹脂の充填完了のタイミングが少しでもずれると成形不良が発生しやすい。しかし、上記製造方法によれば、PHA樹脂を含む流動樹脂を用いた場合であっても、高品質な樹脂成形品を安定して製造することが可能になる。
【0062】
上述のように、PHA樹脂を含む流動樹脂を用いて多数個取りの射出成形を行う場合には、各キャビティ21への充填完了のタイミングを正確に揃える必要性が高い。このため、情報処理装置1を、PHA樹脂を含む流動樹脂用の供給制御装置としてもよい。この場合、判定部102は、PHA樹脂を含む流動樹脂の検知位置への流入タイミングを判定し、供給制御部104はPHA樹脂を含む流動樹脂の充填が同時に完了するように制御を行う。これにより、PHA樹脂を含む流動樹脂を用いて、高品質な樹脂成形品を安定して製造することが可能になる。
【0063】
(処理の流れ:供給制御の例1)
図6に基づいて
図5のS13で行われる流動樹脂の供給制御処理の流れを説明する。
図6は、流動樹脂の供給制御処理の一例を示すフロー図である。
図6の供給制御処理では、流動樹脂の流速を遅くすることにより、各キャビティ21における充填完了タイミングを揃える。流動樹脂の流速を遅くするための制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0064】
S131Aでは、制御内容決定部103が、
図5のS12で流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21、より詳細には制御内容を未決定のキャビティ21のうち最も早いタイミングで流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21を特定する。
【0065】
S132Aでは、制御内容決定部103は、S131Aで特定したキャビティ21についての制御量を決定する。例えば、チップヒータ25(
図4のA1参照)の温度制御により流動樹脂の供給制御を行う場合、制御内容決定部103は、S131Aで特定したキャビティ21に接続する第3流路225に設けられたチップヒータ25の設定温度を何度下げるかを決定する。
【0066】
制御量の決定方法は予め定めておけばよい。例えば、チップヒータ25の設定温度を3℃下げる、等のように制御量を予め定めておいてもよい。また、例えば、流動樹脂の流入が検出された順に制御量を所定量ずつ減少させてもよい。具体例を挙げれば、制御内容決定部103が最初に検出位置への流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21のチップヒータ25の設定温度をX℃下げるとする。この場合、制御内容決定部103は、2番目に検出位置への流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21のチップヒータ25の設定温度は(X-Δt)°下げるようにしてもよい。このΔtは固定値としてもよいし、流動樹脂の流入検知のタイミングに応じて変化させてもよい。つまり、流入が検出されたタイミングの時間差が大きい場合ほど、Δtを大きい値としてもよい。これにより、各キャビティ21における充填完了のタイミングが揃う可能性を高めることができる。
【0067】
この他にも、例えば、制御内容決定部103は、予め定めた制御量を適用した結果に応じて、次回以降の制御量を調整してもよい。例えば、制御内容決定部103が、あるキャビティ21について、チップヒータ25の設定温度をX℃下げることを決定し、チップヒータ25の設定温度をX℃下げたことにより、そのキャビティ21の充填完了までの時間が長くなりすぎたとする。この場合、制御内容決定部103は、次回以降の射出成型において、当該キャビティ21のチップヒータ25の設定温度は(X-Δt)°下げるようにしてもよい。このように、制御内容決定部103は、決定した制御量を適用した結果に応じて次回以降の制御量を調整してもよい。これにより、充填完了のタイミングが揃う可能性を高めることができる。
【0068】
なお、流動樹脂の流速を遅くしすぎると、キャビティ21への充填が完了する前に流動樹脂の一部の固形化が進むなどの問題が生じることがある。このため、制御内容決定部103は、成形不良が発生しない範囲の制御量を決定することが望ましい。
【0069】
S133Aでは、供給制御部104は、S131Aで特定されたキャビティ21に供給される流動樹脂の流速を遅くする制御を行う。この制御の制御量としてはS132Aで決定した制御量が適用される。例えば、供給制御部104は、チップヒータ25の設定温度を下げることにより、流動樹脂の流速を遅くしてもよい。この場合、S132Aで上述のようにしてチップヒータ25の設定温度をX℃下げることが決定されていたとすると、供給制御部104は、射出成形制御装置4を制御して、S131Aで特定されたキャビティ21に対応するチップヒータ25の設定温度をX℃下げさせる。
【0070】
以上により、
図6の処理は終了し、この後処理は
図5のS14に進む。このS14では、供給制御部104は、流動樹脂の流速を遅くする必要があるキャビティ21がなくなっていればYESと判定し、供給制御を終了する。例えば、供給制御部104は、制御を行っていないキャビティ21が残り1つになっていれば、供給制御を終了してもよい。
【0071】
以上のように、供給制御部104は、検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティよりも早かったキャビティについて、当該キャビティに供給される流動樹脂の流速を遅くする制御を行ってもよい。これにより、流動樹脂が流入したタイミングが早かったキャビティ21について、充填完了までの時間がより長くなるようにして、流動樹脂が流入したタイミングが遅かったキャビティ21と同時に充填完了させることが可能になる。
【0072】
(処理の流れ:供給制御の例2)
図7に基づいて
図5のS13で行われる流動樹脂の供給制御処理の他の例を説明する。
図7は、流動樹脂の供給制御処理の他の例を示すフロー図である。
図7の供給制御処理では、流動樹脂の流速を速くすることにより、各キャビティ21における充填完了タイミングを揃える。流動樹脂の流速を速くするための制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0073】
S131Bでは、制御内容決定部103が、
図5のS12で流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21、より詳細には、2番目以降に流動樹脂の流入が検出された、制御内容を未決定のキャビティ21のうち、最も早いタイミングで検出位置への流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21を特定する。
【0074】
S132Bでは、制御内容決定部103は、S131Bで特定したキャビティ21についての制御量を決定する。例えば、チップヒータ25の温度制御により流動樹脂の供給制御を行う場合、制御内容決定部103は、S131Bで特定したキャビティ21に接続する第3流路225に設けられたチップヒータ25の設定温度を何度上げるかを決定する。
【0075】
制御量の決定方法は予め定めておけばよい。例えば、チップヒータ25の設定温度を3℃下げる、等のように制御量を予め定めておいてもよい。また、例えば、流動樹脂の流入が検出された順に制御量を所定量ずつ増加させてもよい。具体例を挙げれば、制御内容決定部103が2番目に検出位置への流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21のチップヒータ25の設定温度をX℃上げるとする。この場合、制御内容決定部103は、3番目に検出位置への流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21のチップヒータ25の設定温度は(X+Δt)°上げるようにしてもよい。このΔtは固定値としてもよいし、流動樹脂の流入検知のタイミングに応じて変化させてもよい。つまり、流入が検出されたタイミングの時間差が大きい場合ほど、Δtを大きい値としてもよい。これにより、各キャビティ21における充填完了のタイミングが揃う可能性を高めることができる。また、制御内容決定部103は、S132Aの説明時に述べたように、決定した制御量を適用した結果に応じて次回以降の制御量を調整してもよい。
【0076】
なお、流動樹脂の温度を上げすぎると、流動樹脂の分解や変質などの問題が生じることがある。このため、制御内容決定部103は、流動樹脂の分解や変質が生じない範囲で制御量を決定することが望ましい。
【0077】
S133Bでは、供給制御部104は、S131Bで特定されたキャビティ21に供給される流動樹脂の流速を速くする制御を行う。この制御の制御量としてはS132Bで決定した制御量が適用される。例えば、供給制御部104は、チップヒータ25の設定温度を上げることにより、流動樹脂の流速を速くしてもよい。この場合、S132Bで上述のようにしてチップヒータ25の設定温度をX℃上げることが決定されていたとすると、供給制御部104は、射出成形制御装置4を制御して、S131Bで特定されたキャビティ21に対応するチップヒータ25の設定温度をX℃上げさせる。
【0078】
以上により、
図6の処理は終了し、この後処理は
図5のS14に進む。このS14では、供給制御部104は、流動樹脂の流速を速くする必要があるキャビティ21がなくなっていればYESと判定し、供給制御を終了する。例えば、供給制御部104は、2番目以降に流動樹脂の流入が検知された全てのキャビティ21についての制御が終了している場合に、供給制御を終了してもよい。
【0079】
以上のように、供給制御部104は、検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティ21よりも遅かったキャビティ21について、当該キャビティ21に供給される流動樹脂の流速を速くする制御を行ってもよい。これにより、流動樹脂が流入したタイミングが遅かったキャビティ21について、充填完了までの時間を短縮して、流動樹脂が流入したタイミングが早かったキャビティ21と同時に充填完了させることが可能になる。
【0080】
(処理の流れ:供給制御の例3)
図8に基づいて
図5のS13で行われる流動樹脂の供給制御処理の他の例を説明する。
図8は、流動樹脂の供給制御処理のさらに他の例を示すフロー図である。
図8の供給制御処理では、予め設定した基準到達時間よりも早く流動樹脂が到達したキャビティ21については流動樹脂の充填を遅らせ、基準到達時間よりも遅く流動樹脂が到達したキャビティ21については流動樹脂の充填を早めることにより、各キャビティ21における充填完了タイミングを揃える。流動樹脂の充填を早めたり遅らせたりするための制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0081】
基準到達時間は、各検知位置における流動樹脂の到達タイミングから大きく乖離しない範囲で適宜定めておけばよい。例えば、射出開始から、各検知位置における流動樹脂の到達検知までの平均時間を基準到達時間としてもよい。また、例えば、基準到達時間を、射出開始から検知位置における流動樹脂の到達検知までの理想的な時間、つまり高品質な樹脂成形品が安定して製造できる可能性が最も高くなるように設定した時間としてもよい。このような基準到達時間は、使用する樹脂の粘度等に応じて計算により求めることもできるし、実験的に求めることもできる。また、制御内容決定部103は、製造時の天候等の条件に応じて基準到達時間を調整してもよい。
【0082】
S131Cでは、制御内容決定部103が、
図5のS12で流動樹脂の流入が検出されたキャビティ21、より詳細には制御内容を未決定のキャビティ21のうち検出位置への流動樹脂の流入が最も早く検出されたキャビティ21を特定する。
【0083】
S132Cでは、制御内容決定部103は、S131Cで特定したキャビティ21について、
図5のS11で射出開始が検知された時点から、判定部102が
図5のS12で判定した流入タイミングまでの時間と、基準到達時間との差を算出する。
【0084】
S133Cでは、制御内容決定部103は、S131Cで特定したキャビティ21についての制御量を決定する。例えば、チップヒータ25の温度制御により流動樹脂の供給制御を行う場合、制御内容決定部103は、S131Cで特定したキャビティ21に対応するチップヒータ25の設定温度を何度変動させるかを決定する。すなわち、射出開始からS12で判定した流入タイミングまでの時間が基準到達時間より長ければ、制御内容決定部103はチップヒータ25の設定温度の上げ幅を決定する。一方、射出開始からS12で判定した流入タイミングまでの時間が基準到達時間より短ければ、制御内容決定部103はチップヒータ25の設定温度の下げ幅を決定する。これらの上げ幅および下げ幅は、射出開始から流入タイミングまでの時間と基準到達時間との差の大きさに応じて決定すればよい。
【0085】
S134Cでは、供給制御部104は、S131Cで特定されたキャビティ21についての流動樹脂の供給を制御する。この制御の制御量としてはS133Cで決定した制御量が適用される。これにより、各キャビティ21における充填完了のタイミングが揃う可能性を高めることができる。
【0086】
以上により、
図8の処理は終了し、この後処理は
図5のS14に進む。このS14では、供給制御部104は、流動樹脂の供給を制御する必要があるキャビティ21がなくなっていればYESと判定し、供給制御を終了する。例えば、供給制御部104は、全てのキャビティ21についての制御が終了している場合に、供給制御を終了してもよい。
【0087】
(処理の流れ:全体(複数回の射出ごとに制御))
図9に基づいて情報処理装置1が実行する処理の流れ(射出成形品の製造方法)の他の例を説明する。
図9は、情報処理装置1が実行する処理の他の例を示すフロー図である。なお、
図9では、
図5と同様に、射出成形品の製造方法のうち、樹脂の供給制御に関する部分を示し、固形化した流動樹脂を取り出す等の工程については省略している。
図5に示す処理では、射出ごとに供給制御を行うが、
図9に示す処理では、複数回の射出ごとに供給制御を行う。
【0088】
S21では、
図5のS11と同様に、開始検知部101が、流動樹脂の射出が開始されたことを検知する。また、開始検知部101は、検知した時刻を判定結果DB111に記録する。
【0089】
S22(判定ステップ)では、判定部102が、各キャビティ21について、検知位置への流動樹脂の流入タイミングを判定する。ここでは、判定部102は、全てのキャビティ21について検知位置への流動樹脂の流入タイミングを判定し、各検知位置で流動樹脂の流入が検知された時刻を判定結果DB111に記録する。
【0090】
S23では、判定部102は、所定回数の射出成形が完了したか否かを判定する。ここで、完了したと判定された場合(S23でYES)にはS24の処理に進む。一方、完了してしないと判定された場合(S23でNO)にはS21の処理に戻り、次の射出が行われる。なお、上記所定回数は、予め定めておけばよい。例えば数回であってもよいし、数十回であってもよい。また、例えば数時間おき、一日おき等、所定期間毎にS24の処理を行うようにしてもよく、この場合S23では所定期間が経過したか否かを判定すればよい。
【0091】
S24(供給制御ステップ)では、供給制御部104が、これまでにS22で判定された各判定結果に基づいて、次回の射出成形時に、各々のキャビティ21における流動樹脂の充填が同時に完了するように、キャビティへ21各々への流動樹脂の供給を制御する。これにより、次回の射出成形時に、各キャビティ21への流動樹脂の充填を同時またはほぼ同時に完了させることが可能になる。なお、S24の処理の詳細は
図10~12に基づいて後述する。
【0092】
(処理の流れ:供給制御の例1)
図10に基づいて
図9のS24で行われる流動樹脂の供給制御処理の例を説明する。
図10は、流動樹脂の供給制御処理の一例を示すフロー図である。
図10の供給制御処理では、検知位置に流動樹脂が到達するタイミングが早い傾向にあるキャビティ21について、流動樹脂を供給するタイミングを遅らせることにより、各キャビティ21における充填完了タイミングを揃える。流動樹脂を供給するタイミングを遅らせる制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0093】
S241Aでは、制御内容決定部103が、判定結果DB111に記録された、複数回の射出における射出時刻と流入検知時刻とを用いて、各キャビティ21についての平均流入時間を算出する。なお、平均流入時間とは、射出開始から検知位置への流動樹脂の流入が検出されるまでの流入時間を、複数回の射出で平均したものである。
【0094】
S242Aでは、制御内容決定部103は、S241で算出した平均流入時間が所定の基準値以下のキャビティ21を特定する。基準値は、
図8のS132Cの判定に使われる基準到達時間と同様に適宜設定すればよい。なお、平均流入時間が基準位置以下のキャビティ21が複数存在する場合には、制御内容決定部103は、それら全てを特定する。
【0095】
S243Aでは、制御内容決定部103は、S242で特定したキャビティ21についての制御量を決定する。制御量の決定方法は予め定めておけばよい。この制御量は、平均流入時間と基準値との差が大きいほど大きい値としてもよい。例えば、供給制御部104がゲート2251を開くタイミングを調整する場合、制御内容決定部103は、平均流入時間と基準値との差から、ゲート2251を開くタイミング(射出開始からゲート2251を開くまでの時間)を決定してもよい。
【0096】
S244Aでは、供給制御部104が、S242Aで特定されたキャビティ21への流動樹脂の供給タイミングを遅らせる制御を行う。この制御における制御量はS243Aで決定されたものを適用する。なお、
図6のS133Aでは、即座に制御を行う必要があるが、S244Aでは、次回以降の射出時に供給タイミングの調整が反映されるように射出成形制御装置4を制御すればよい。以上により、
図10の処理は終了し、この後処理は
図9のS21に進む。
【0097】
以上のように、供給制御部104は、検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティ21よりも早かったキャビティ21について、次回以降の射出成形時に当該キャビティ21に流動樹脂を供給するタイミングを遅らせる制御を行ってもよい。これにより、流動樹脂が流入したタイミングが早かったキャビティ21について、流動樹脂の充填完了までの時間がより長くなるようにして、流動樹脂が流入したタイミングが遅かったキャビティ21と同時に充填完了させることが可能になる。
【0098】
なお、
図10の処理では、流動樹脂の供給タイミングを遅らせる制御の代わりに、あるいは当該制御と共に、充填完了までの所要時間を長くするための他の制御を行ってもよい。他の制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0099】
(処理の流れ:供給制御の例2)
図11に基づいて
図9のS24で行われる流動樹脂の供給制御処理の他の例を説明する。
図11は、流動樹脂の供給制御処理の他の例を示すフロー図である。
図11の供給制御処理では、検知位置に流動樹脂が到達するタイミングが遅い傾向にあるキャビティ21について、流動樹脂を供給するタイミングを早めることにより、各キャビティ21における充填完了タイミングを揃える。流動樹脂を供給するタイミングを早める制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0100】
S241Bは、
図10のS241Aと同様であり、制御内容決定部103が、判定結果DB111に記録された、複数回の射出における射出時刻と流入検知時刻とを用いて、各キャビティ21についての平均流入時間を算出する。
【0101】
S242Bでは、制御内容決定部103は、S241で算出した平均流入時間が基準値以上のものを特定する。基準値は、
図8のS132Cの判定に使われる基準到達時間と同様に適宜設定すればよい。なお、平均流入時間が基準位置以上のキャビティ21が複数存在する場合には、制御内容決定部103は、それら全てを特定する。
【0102】
S243Bでは、制御内容決定部103は、S242Bで特定したキャビティ21についての制御量を決定する。制御量の決定方法は予め定めておけばよい。例えば、制御量は、平均流入時間と基準値との差が大きいほど大きい値としてもよい。
【0103】
S244Bでは、供給制御部104が、S242Bで特定されたキャビティ21への流動樹脂の供給タイミングを遅らせる制御を行う。この制御における制御量はS243Bで決定されたものを適用する。S244Bでは、次回以降の射出時に供給タイミングの調整が反映されるように射出成形制御装置4を制御すればよい。以上により、
図11の処理は終了し、この後処理は
図9のS21に進む。
【0104】
以上のように、供給制御部104は、検知位置に流動樹脂が流入したタイミングが他のキャビティ21よりも遅かったキャビティ21について、次回以降の射出成形時に当該キャビティ21に流動樹脂を供給するタイミングを早める制御を行ってもよい。これにより、流動樹脂が流入したタイミングが遅かったキャビティ21について、流動樹脂の充填完了までの時間がより短くなるようにして、流動樹脂が流入したタイミングが早かったキャビティ21と同時に充填完了させることが可能になる。
【0105】
なお、
図11の処理では、流動樹脂の供給タイミングを早める制御の代わりに、あるいは当該制御と共に、充填完了までの所要時間を短くするための他の制御を行ってもよい。他の制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0106】
(処理の流れ:供給制御の例3)
図12に基づいて
図9のS24で行われる流動樹脂の供給制御処理のさらに他の例を説明する。
図12は、流動樹脂の供給制御処理のさらに他の例を示すフロー図である。
図12の供給制御処理では、予め設定した基準到達時間よりも早く流動樹脂が到達する傾向があるキャビティ21については流動樹脂の充填を遅らせ、基準到達時間よりも遅く流動樹脂が到達する傾向があるキャビティ21については流動樹脂の充填を早めることにより、各キャビティ21における充填完了タイミングを揃える。流動樹脂の充填を早めたり遅らせたりするための制御としては、例えば
図4に基づいて説明したような各種制御が適用できる。
【0107】
S241Cは、
図10のS241Aと同様であり、制御内容決定部103が、判定結果DB111に記録された、複数回の射出における射出時刻と流入検知時刻とを用いて、各キャビティ21についての平均流入時間を算出する。
【0108】
S242Cでは、制御内容決定部103は、各キャビティ21について、S241で算出した平均流入時間と基準到達時間との差を特定する。基準到達時間については上述したとおりである。
【0109】
S243Cでは、制御内容決定部103は、各キャビティ21についての制御量を決定する。制御量の決定方法については、
図8のS132Cと同様である。
【0110】
S244Cでは、供給制御部104が、各キャビティ21について、S243Cで決定された制御量に従って流動樹脂の供給制御を行う。S244Cでは、次回以降の射出時に供給タイミングの調整が反映されるように射出成形制御装置4を制御すればよい。以上により、
図12の処理は終了し、この後処理は
図9のS21に進む。
【0111】
(機械学習を利用した制御内容の決定)
制御内容決定部103は、機械学習を利用して制御内容を決定してもよい。例えば、各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングの差と、各検知位置に流動樹脂が、当該差が生じるタイミングで流入したときに実行された供給制御であって、当該供給制御により各々のキャビティ21における流動樹脂の充填が同時に完了した供給制御の内容との対応関係を機械学習することにより学習済みモデルを構築することができる。
【0112】
制御内容決定部103は、このような学習済みモデルに、判定部102が判定した各検知位置に流動樹脂が流入したタイミングの差を入力することにより、最適な供給制御の内容を特定することができる。これにより、学習の結果に基づく妥当な供給制御の内容を決定することが可能になる。なお、上記タイミングの差は、検知位置間における流入タイミングの差であってもよいし、所定の基準値(例えば検知位置への標準的な到達タイミング)との差であってもよい。
【0113】
機械学習のアルゴリズムは、推定したい内容に等に応じて適宜決めればよい。例えば、検知位置への標準的な到達時間と判定部102が判定した到達時間との差から、ヒータ24の設定温度の変化量等の制御量を決定する場合には、上記時間差を説明変数とし、上記制御量を目的変数とした回帰モデル等を適用することもできる。この他にも、例えばニューラルネットワークモデル等を適用することも可能である。
【0114】
また、制御内容決定部103は、最適な制御内容を強化学習により求めてもよい。この場合、各検知位置に流動樹脂が流入したタイミング等により環境を表現し、製造される樹脂成形品の品質に応じた報酬を与えるものとして、当該環境における最適な行動(制御内容)を決定すればよい。
【0115】
(充填率に基づく制御)
キャビティ21内に検知位置を設定した場合、検知時点におけるキャビティ21の充填率を求めることも可能である。そして、制御内容決定部103は、充填率を用いて制御内容を決定してもよい。具体的には、制御内容決定部103は、射出開始から所定時間が経過した時点における各キャビティ21の充填率が何れも同じ所定の充填率になるように制御内容を決定してもよい。所定の充填率は、センサ3の位置に応じて決まり、例えばセンサ3をキャビティ21の端部(最後に樹脂が充填される部分)を配置した場合には、所定の充填率は100%となる。
【0116】
また、制御内容決定部103は、充填率が増加するにつれて、複数回制御内容を決定してもよい。例えば、判定部102が、充填率30%の時点と60%の時点のそれぞれを検出する場合、制御内容決定部103は、充填率30%となったタイミングに基づいて、充填率60%になるまでの期間の制御内容を決定してもよい。そして、制御内容決定部103は、充填率60%となったタイミングに基づいて、充填が完了するまでの期間の制御内容を決定してもよい。
【0117】
〔参考例〕
情報処理装置1は、製造された射出成形品の成形不良の有無を判定し、その判定結果を次回以降の制御に反映させてもよい。例えば、情報処理装置1は、製造された射出成形品を撮影した画像を解析して成形不良の有無を判定してもよい。撮影の際には、射出成形品の裏側から光を当てながら撮影する等、想定される成形不良の性質に応じた手法を適用することが好ましい。裏側から光を当てながら撮影する手法は、バリの検出に有効である。
【0118】
また、例えば、情報処理装置1は、製造された射出成形品を三次元スキャナに読み込ませることにより生成された三次元データを解析して成形不良の有無を判定してもよい。また、例えば、ショートショット等の形成不良が生じた射出成形品は、正常なものと比べて重量が軽くなるから、情報処理装置1は、製造された射出成形品の重量データを用いて成形不良の有無を判定してもよい。
情報処理装置1は、以上のような判定により成形不良の射出成形品を特定した後は、その射出成形品を製造したキャビティ21における、次回以降の射出成形時の流動樹脂の供給を制御する。例えば、情報処理装置1は、バリが発生したキャビティ21については、充填完了タイミングが遅くなるように制御し、ショートショットが発生したキャビティ21については、充填完了タイミングが早くなるように制御してもよい。 〔変形例〕上述の各実施形態で説明した各処理の実行主体は任意であり、上述の例に限られない。つまり、上述の各実施形態で説明した各処理を実行可能であれば、射出成形システム100を構成する装置は適宜変更することができる。例えば、情報処理装置1が実行する処理を、複数の情報処理装置に分担して実行させてもよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部10に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるための制御プログラムにより実現することができる。
【0119】
この場合、上記装置は、上記制御プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記制御プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0120】
上記制御プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記制御プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0121】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0122】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0123】
100 射出成形システム
1 情報処理装置
102 判定部
103 制御内容決定部
104 供給制御部
2 金型
21 キャビティ
22 流路
224 第2分岐(最終分岐)
225 第3流路(最終分岐よりも下流にある流路)
3 センサ
4 射出成形制御装置