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特許7606910水素製造サイトの管理装置、方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】水素製造サイトの管理装置、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/023 20210101AFI20241219BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241219BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20241219BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B9/00 A
C25B15/00 303
C25B1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021061636
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157428
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 俊平
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1926008(KR,B1)
【文献】特表2002-544389(JP,A)
【文献】特開2018-178175(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189501(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/179849(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/178169(WO,A1)
【文献】特開2016-214069(JP,A)
【文献】国際公開第2020/062956(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/196889(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070680(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112103994(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解装置、及び前記水電解装置で製造された水素を貯蔵する貯蔵設備をそれぞれ有する複数のサイトの各々における前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力を前記サイト毎に監視する監視部と、
電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付ける受付部と、
前記電力調整指令として下げDRを受け付けた際に、前記複数のサイトの各々の前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、前記複数のサイトの中から、前記水電解装置が現在稼働しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が所定値以上のサイトを、前記水電解装置を停止させるサイトとして選択し、選択したサイトの前記水電解装置を停止させるように制御する制御部と、
を含む水素製造サイトの管理装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記下げDRに応じて水電解装置を停止させる期間に予想される水素需要以上の水素量に相当する貯蔵圧力値である請求項に記載の水素製造サイトの管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記水電解装置を停止させるサイトをさらに選択する必要がある場合、前記水電解装置が現在稼働しているサイトのうち、貯蔵圧力の合計が前記所定値以上となるサイトの組み合わせを選択する請求項に記載の水素製造サイトの管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記電力調整指令が上げDRの場合、前記水電解装置が現在停止しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が所定値以下のサイトを、前記水電解装置を稼働させるサイトとして選択する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の水素製造サイトの管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記水電解装置を稼働させるサイトをさらに選択する必要がある場合、前記水電解装置が現在停止しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が前記所定値より大きいサイトを、前記水電解装置を稼働させるサイトとして選択する請求項に記載の水素製造サイトの管理装置。
【請求項6】
監視部が、水電解装置、及び前記水電解装置で製造された水素を貯蔵する貯蔵設備をそれぞれ有する複数のサイトの各々における前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力を前記サイト毎に監視し、
受付部が、電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付け、
制御部が、前記電力調整指令として下げDRを受け付けた際に、前記複数のサイトの各々の前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、前記複数のサイトの中から、前記水電解装置が現在稼働しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が所定値以上のサイトを、前記水電解装置を停止させるサイトとして選択し、選択したサイトの前記水電解装置を停止させるように制御する
水素製造サイトの管理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
水電解装置、及び前記水電解装置で製造された水素を貯蔵する貯蔵設備をそれぞれ有する複数のサイトの各々における前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力を前記サイト毎に監視する監視部、
電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付ける受付部、及び、
前記電力調整指令として下げDRを受け付けた際に、前記複数のサイトの各々の前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、前記複数のサイトの中から、前記水電解装置が現在稼働しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が所定値以上のサイトを、前記水電解装置を停止させるサイトとして選択し、選択したサイトの前記水電解装置を停止させるように制御する制御部
として機能させるための水素製造サイトの管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造サイトの管理装置、水素製造サイトの管理方法、及び水素製造サイトの管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を燃料として使用する水素利用装置と、水素利用装置へ水素を供給するための水素を貯蔵する水素貯蔵手段と、水素貯蔵手段に貯蔵するための水素を発生させる水電解装置と、水電解装置に電力を供給するために商用電力からの電力を供給する電力供給手段と、商用電力の電力コスト、水素利用装置での水素消費量、及び水素貯蔵手段による水素貯蔵量に応じて水電解装置の運転を制御するコントローラを備える水素利用システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、蓄電池と、水電解装置と、水素貯蔵タンクと、指令に応じて水素を活用した発電を行う水素発電機と、水素発電機と水素貯蔵タンクとの間で水素を輸送するための水素輸送手段と、水素貯蔵タンクの圧力を計測する圧力計と、水素供給/受入れ手段と、システムコントローラと、を備える水素利用システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。この水素利用システムでは、システムコントローラは、圧力計により計測された水素貯蔵タンクの圧力を基に、水素貯蔵タンクの水素貯蔵量を算出し、水素貯蔵タンクの水素貯蔵量が不足している場合、外部から水素を受入れるとともに、外部から水素供給要求に従って水素貯蔵タンクの水素を外部に供給するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-180281号公報
【文献】特開2018-085861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に記載される従来技術では、各サイトが水電解装置及び貯蔵設備を有する複数のサイトを統合し、電力アグリゲータからの電力調整指令(上げDR及び下げDR)に対応することについては考慮されていない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、各サイトが水電解装置及び貯蔵設備を有する複数のサイトを統合し、電力アグリゲータからの電力調整指令に対応することができる水素製造サイトの管理装置、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る水素製造サイトの管理装置は、水電解装置、及び前記水電解装置で製造された水素を貯蔵する貯蔵設備を有する複数のサイトの各々における前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力を監視する監視部と、電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付ける受付部と、前記電力調整指令を受け付けた際に、前記複数のサイトの各々の前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、前記水電解装置を稼働又は停止させるサイトを選択し、選択したサイトの前記水電解装置を稼働又は停止させるように制御する制御部と、を含んで構成される。これにより、各サイトが水電解装置及び貯蔵設備を有する複数のサイトを統合し、電力アグリゲータからの電力調整指令に対応することができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記電力調整指令が下げDRの場合、前記水電解装置が現在稼働しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が所定値以上のサイトを、前記水電解装置を停止させるサイトとして選択してよい。これにより、下げDRに対応して、適切なサイトの水電解装置を停止することができる。
【0009】
また、前記所定値は、前記下げDRに応じて水電解装置を停止させる期間に予想される水素需要以上の水素量に相当する貯蔵圧力値としてよい。これにより、停止させても問題のない水電解装置を停止させることができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記水電解装置を停止させるサイトをさらに選択する必要がある場合、前記水電解装置が現在稼働しているサイトのうち、貯蔵圧力の合計が前記所定値以上となるサイトの組み合わせを選択してよい。これにより、1つのサイトだけでは下げDRに対応できない場合でも、複数のサイトを統合して、下げDRに対応することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記電力調整指令が上げDRの場合、前記水電解装置が現在停止しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が所定値以下のサイトを、前記水電解装置を稼働させるサイトとして選択してよい。これにより、貯蔵設備に余裕があるサイトの水電解装置を選択して稼働させることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記水電解装置を稼働させるサイトをさらに選択する必要がある場合、前記水電解装置が現在停止しているサイトのうち、前記貯蔵圧力が前記所定値より大きいサイトを、前記水電解装置を稼働させるサイトとして選択してよい。これにより、適切に上げDRに対応することができる。
【0013】
また、本発明に係る水素製造サイトの管理方法は、監視部が、水電解装置、及び前記水電解装置で製造された水素を貯蔵する貯蔵設備を有する複数のサイトの各々における前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力を監視し、受付部が、電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付け、制御部が、前記電力調整指令を受け付けた際に、前記複数のサイトの各々の前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、前記水電解装置を稼働又は停止させるサイトを選択し、選択したサイトの前記水電解装置を稼働又は停止させるように制御する方法である。
【0014】
また、本発明に係る水素製造サイトの管理プログラムは、コンピュータを、水電解装置、及び前記水電解装置で製造された水素を貯蔵する貯蔵設備を有する複数のサイトの各々における前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力を監視する監視部、電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付ける受付部、及び、前記電力調整指令を受け付けた際に、前記複数のサイトの各々の前記水電解装置の稼働状況及び前記貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、前記水電解装置を稼働又は停止させるサイトを選択し、選択したサイトの前記水電解装置を稼働又は停止させるように制御する制御部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水素製造サイトの管理装置、方法、及びプログラムによれば、各サイトが水電解装置及び貯蔵設備を有する複数のサイトを統合し、電力アグリゲータからの電力調整指令に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】水素製造サイトの管理システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】管理テーブルの一例を示す図である。
図3】管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】水素製造サイトの管理処理の一例を示すフローチャートである。
図5】複数の水電解装置の制御方法を説明するための図である。
図6】定常水素需要用及び余剰電力用の水電解装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る水素製造サイトの管理システム100は、管理装置10と、複数の水素製造サイト(以下、単に「サイト」ともいう)20A、20B、20Cとを含む。サイト20A、20B、20Cの各々は、水電解装置22A、22B、22Cと、貯蔵設備24A、24B、24Cと、サイト制御部26A、26B、26Cとを含む。なお、水電解装置22C、貯蔵設備24C、及びサイト制御部26Cは、図示を省略している。以下、サイト20A、20B、20Cの各々を区別なく説明する場合には、単に「サイト20」と表記する。また、サイト20に含まれる各構成についても、区別なく説明する場合には、末尾のアルファベットを省略した数字2桁の符号を付して表記する。なお、水素製造サイトの管理システム100に含まれるサイト20の数は図1の例に限定されない。
【0019】
水電解装置22は、供給された電力を利用して、水を電気分解し水素を生成する装置である。供給される電力は、商用電力であってもよいし、再生可能エネルギーを利用した電力であってもよい。また、電気分解の方式は、アルカリ水電解法であってもよいし、固体高分子形水電解法であってもよいし、その他の水電解方式であってもよい。水電解装置22は、定常的な水素の需要量(以下、「定常水素需要」という)と同等又はそれ以上の水素発生能力を示す定格負荷を有する。水電解装置22で生成された水素は、貯蔵設備24に蓄えられてもよいし、水素需要の対象である水素利用装置で利用されてもよい。
【0020】
貯蔵設備24には、水電解装置22で生成され、吐出された水素が貯蔵される。貯蔵設備24へは、水電解装置22から吐出された水素を圧縮して貯蔵してもよいし、圧縮することなく貯蔵してもよい。貯蔵設備24に貯蔵された水素は、定常水素需要で利用されてもよいし、定常水素需要以外の水素需要で利用されてもよい。貯蔵設備24は、定置式の大型容器、カードルやトレーラー等の移動式の小型容器等で実現される。
【0021】
サイト制御部26は、水電解装置22及び貯蔵設備24を含むサイト20内の各設備の管理及び制御を行う。具体的には、サイト制御部26は、水電解装置22が現在稼働しているか停止しているかを示す稼働状況を取得し、管理装置10へ通知する。また、サイト制御部26は、計測器(図示省略)により計測された貯蔵設備24の貯蔵圧力を取得し、管理装置10へ通知する。また、サイト制御部26は、管理装置10からの指示に応じて、水電解装置22の稼働及び停止を制御する。
【0022】
管理装置10は、複数のサイト20を統合して、電力アグリゲータからの電力調整指令に対応するために、各サイト20を管理する。電力アグリゲータとは、需要家の需要量を制御して電力の需要と供給とのバランスを保つディマンドレスポンス(DR)において、電力会社と需要者との間のバランスをコントロールする事業者である。DRにおいて、電力の需要量を増やすための上げDR、及び電力の需要量を減らすための下げDRが、電力調整指令として、アグリゲータサーバ50を介して、管理装置10に通知される。管理装置10は、機能的には、監視部12と、受付部14と、制御部16とを含む。
【0023】
監視部12は、複数のサイト20の各々における水電解装置22の稼働状況及び貯蔵設備の貯蔵圧力を監視する。具体的には、監視部12は、各サイト20のサイト制御部26から通知される水電解装置22の稼働状況、及び貯蔵設備24の貯蔵圧力を取得する。監視部12は、取得した稼働状況及び貯蔵圧力を、サイト20の識別情報と対応付けて、例えば、図2に示すような管理テーブルに記憶する。図2において、「サイトID」はサイト20の識別情報の一例である。また、貯蔵圧力は、貯蔵圧力/最高貯蔵圧力の形式で表している。監視部12は、各サイト20のサイト制御部26から稼働状況及び貯蔵圧力が通知される都度、管理テーブルの情報を更新する。
【0024】
受付部14は、アグリゲータサーバ50を介して通知される、電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付ける。電力調整指令は、上述したように、上げDR又は下げDRである。受付部14は、受け付けた電力調整指令を制御部16に通知する。
【0025】
制御部16は、受付部14から電力調整指令が通知されると、管理テーブルの情報に基づいて、水電解装置22を稼働又は停止させるサイト20を選択し、選択したサイト20の水電解装置22を稼働又は停止させるように制御する。
【0026】
具体的には、制御部16は、電力調整指令が下げDRの場合、水電解装置22が現在稼働しているサイト20のうち、貯蔵圧力が所定値以上のサイト20を、水電解装置22を停止させるサイト20として選択する。これは、貯蔵設備24に貯蔵されている水素量が多いサイト20を、水電解装置22を一時的に停止させても問題ないサイト20として選択するものである。したがって、所定値としては、下げDRに応じて水電解装置22を停止させる期間に予想される水素需要以上の水素量に相当する貯蔵圧力値を用いればよい。例えば、下げDRにより、水電解装置22を30分停止させる必要があり、その間の水素需要が50Nm/hの場合、制御部16は、25Nmの水素が貯蔵設備24に貯蔵された場合の貯蔵圧力を所定値とする。制御部16は、水素量を貯蔵圧力に換算するために、各貯蔵設備24の最高貯蔵圧力時における水素量の情報を保持しておけばよい。
【0027】
また、制御部16は、水電解装置22を停止させるサイト20をさらに選択する必要がある場合、水電解装置22が現在稼働しているサイト20のうち、貯蔵圧力の合計が所定値以上となるサイト20の組み合わせを選択する。例えば、水電解装置22を30分停止させる必要がある場合において、水電解装置22を30分停止可能なサイト20が存在しない場合がある。このような場合には、制御部16は、例えば、水電解装置22を20分停止可能なサイト20と、水電解装置22を10分停止可能なサイト20とを組み合わせて選択する。
【0028】
また、制御部16は、電力調整指令が上げDRの場合、水電解装置22が現在停止しているサイト20のうち、貯蔵圧力が所定値以下のサイト20を、水電解装置22を稼働させるサイト20として選択する。これは、貯蔵設備24の容量に空きがない場合には、生成された水素を貯蔵する余裕がなく、水電解装置22を稼働させても、生成された水素を放出させてしまうことになる。そのため、貯蔵設備24の容量に余裕があるサイトを、水電解装置22を稼働させるサイト20として選択するものである。ここでの所定値としては、貯蔵設備24が満畜に近い状態か否かを判定するための値、例えば、最高貯蔵圧力の所定割合(例えば、80%、90%等)の貯蔵圧力値を定めておけばよい。
【0029】
また、制御部16は、水電解装置22を稼働させるサイト20をさらに選択する必要がある場合、水電解装置22が現在停止しているサイト20のうち、貯蔵圧力が所定値より大きいサイト20を、水電解装置22を稼働させるサイト20として選択してもよい。これは、水電解装置22を稼働させることにより、生成された水素を放出することになっても、上げDRに対応するための対策である。
【0030】
図3は、管理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。図3に示すように、管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)32、メモリ34、記憶装置36、入力装置38、出力装置40、記憶媒体読取装置42、及び通信I/F(Interface)44を有する。各構成は、バス46を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
記憶装置36には、後述する水素製造サイトの管理処理を実行するための水素製造サイトの管理プログラムが格納されている。CPU32は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各構成を制御したりする。すなわち、CPU32は、記憶装置36からプログラムを読み出し、メモリ34を作業領域としてプログラムを実行する。CPU32は、記憶装置36に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0032】
メモリ34は、RAM(Random Access Memory)により構成され、作業領域として一時的にプログラム及びデータを記憶する。記憶装置36は、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0033】
入力装置38は、例えば、キーボードやマウス等の、各種の入力を行うための装置である。出力装置40は、例えば、ディスプレイやプリンタ等の、各種の情報を出力するための装置である。出力装置40として、タッチパネルディスプレイを採用することにより、入力装置38として機能させてもよい。記憶媒体読取装置42は、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、ブルーレイディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の各種の記憶媒体に記憶されたデータの読み込みや、記憶媒体に対するデータの書き込み等を行う。
【0034】
通信I/F44は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI又はWi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0035】
次に、本実施形態に係る水素製造サイトの管理システム100の作用について説明する。
【0036】
管理装置10の監視部12が、各サイト20のサイト制御部26から、水電解装置22の稼働状況、及び貯蔵設備24の貯蔵圧力が通知される都度、管理テーブルの情報を更新する。そして、管理装置10に、アグリゲータサーバ50を介して、電力アグリゲータから電力調整指令が通知されると、管理装置10が、図4に示す水素製造サイトの管理処理を実行する。水素製造サイトの管理処理は、本発明の「水素製造サイトの管理方法」の一例である。CPU32が記憶装置36から、水素製造サイトの管理プログラムを読み出して、メモリ34に展開して実行することにより、CPU32が管理装置10として機能し、水素製造サイトの管理処理が実行される。
【0037】
ステップS10で、受付部14が、アグリゲータサーバ50から通知された電力調整指令を受け付け、受け付けた電力調整指令が、下げDRか上げDRかを判定する。下げDRの場合には、ステップS12へ移行し、上げDRの場合には、ステップS20へ移行する。
【0038】
ステップS12では、制御部16が、管理テーブルを参照して、水電解装置22が現在稼働中のサイト20を抽出する。次に、ステップS14で、制御部16が、上記ステップS12で抽出したサイト20から、貯蔵設備24の貯蔵圧力が所定値以上のサイト20を選択する。次に、ステップS16で、水電解装置22を停止させるサイト20をさらに選択する必要がある場合、制御部16が、上記ステップS12で抽出したサイト20のうち、貯蔵圧力の合計が所定値以上となるサイト20の組み合わせを選択する。なお、ステップS14で、下げDRに対応可能なサイト20を選択できている場合には、ステップS16の処理はスキップする。次に、ステップS18で、制御部16が、上記ステップS14及びS16で選択したサイト20に、下げDRに対応するために必要な停止時間を通知して、水電解装置22の停止を指示する。これにより、該当のサイト20において、サイト制御部26が水電解装置22の稼働を停止させる。
【0039】
一方、ステップS20では、制御部16が、管理テーブルを参照して、水電解装置22が現在停止中のサイト20を抽出する。次に、ステップS22で、制御部16が、上記ステップS12で抽出したサイト20から、貯蔵設備24の貯蔵圧力が所定値以下のサイト20を選択する。次に、ステップS24で、水電解装置22を停止させるサイト20をさらに選択する必要がある場合、制御部16が、上記ステップS20で抽出したサイト20のうち、貯蔵圧力が所定値より大きいサイト20を選択する。なお、ステップS22で、上げDRに対応可能なサイト20を選択できている場合には、ステップS24の処理はスキップする。次に、ステップS26で、制御部16が、上記ステップS22及びS24で選択したサイト20に、上げDRに対応するために必要な稼働時間を通知して、水電解装置22の稼働を指示する。これにより、該当のサイト20において、サイト制御部26が水電解装置22を稼働させる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る水素製造サイトの管理システムでは、管理装置が、複数のサイトの各々における水電解装置の稼働状況及び貯蔵設備の貯蔵圧力を監視すると共に、電力アグリゲータからの電力調整指令を受け付ける。そして、管理装置は、電力調整指令を受け付けた際に、複数のサイトの各々の水電解装置の稼働状況及び貯蔵設備の貯蔵圧力に基づいて、水電解装置を稼働又は停止させるサイトを選択し、選択したサイトの水電解装置を稼働又は停止させるように制御する。これにより、各サイトが水電解装置及び貯蔵設備を有する複数のサイトを統合し、電力アグリゲータからの電力調整指令に対応することができる。
【0041】
一般的な水素製造方法であるSMR-PSAでは、装置の稼働及び停止に数時間を要するのに対し、上記実施形態は、水電解装置の稼働及び停止の反応速度は速いという特徴を生かして、電力調整指令への対応を可能としている。また、電気よりも貯蔵が容易な水素の貯蔵圧力に着目し、稼働又は停止する水電解装置の選択を簡易に行うことを実現している。
【0042】
なお、上記実施形態において、各サイト20の水電解装置22として、そのサイト20での定常水素需要よりも少量の定格負荷の水電解装置22を複数台備えてもよい。そして、図5に示すように、水電解装置22を稼働させる際は、水素需要を満たし、かつ部分負荷運転となる水電解装置22が1台のみとなるように、1以上の水電解装置22を選択すればよい。図5の例で、26.5Nm/hの水素需要があり、各水電解装置22の定格負荷が1Nm/hであるとする。この場合、1台目から27台目までを選択すると共に、1台目から26台目までは負荷1Nm/hで稼働させ、27台目は負荷0.5Nm/hで稼働させるように制御する。すなわち、図5の例では、27台の水電解装置22を稼働して、1Nm/h×26台+0.5Nm/h×1台=26.5Nm3/hの水素を生成する。これにより、部分負荷運転を最小限に抑制して効率良く水素を生成できると共に、上げDRに対して、より柔軟な対応が可能になる。なお、図5では、1つの四角が1台の水電解装置の定格負荷の大きさを表し、四角内の斜線部分が稼働させる負荷の大きさを表す。後述する図6においても同様である。
【0043】
また、上記実施形態において、各サイト20の水電解装置22として、定格負荷の合計が、そのサイト20での定常水素需要を超える複数の水電解装置22を備えてもよい。この場合、図6に示すように、再生可能エネルギーを活用した余剰電力など、安価な電力が入手可能な場合には、余剰電力に応じた台数の余剰電力用の水電解装置22を稼働させ、定常水素需要以上の水素を生成させることができる。余剰電力により生成された水素は、貯蔵設備24に貯蔵しておけばよい。一方、通常の電力価格の場合には、定常水素需要用の水電解装置22のみを稼働させる。これにより、定常水素需要を超える定格負荷の1台の水電解装置を備える場合に比べ、部分負荷運転を抑制しつつ、供給される電力を最大限に活用することができる。
【0044】
上記のように、複数の水電解装置22を備えた構成において、稼働させる水電解装置22を選択する際、複数の水電解装置22の各々に設定された優先度順に1以上の水電解装置22を選択してよい。例えば、サイト20の立ち上げ初期においては、各水電解装置22の状態は同等であるため、水電解装置22の番号順(並び順)に優先度を付してよい。その後、複数の水電解装置22の各々の稼働状況に基づいて、優先度を更新してよい。例えば、稼働時間が長い水電解装置22の優先度ほど低くするように更新してよい。また、稼働を停止した水電解装置22の優先度を最下位に更新してもよい。また、優先度を、所定期間毎にローテーションで更新してもよい。これにより、複数の水電解装置22の各々の稼働時間の平準化が図れる。
【0045】
さらに、優先度を、複数の水電解装置22の各々の水素生成効率が低いほど低くしてもよいし、水素生成効率が予め定めた閾値以下の水電解装置22の優先度を、最下位に固定してもよい。これにより、効率良く水素を生成可能な水電解装置22を選択することができる。
【0046】
また、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した水素製造サイトの管理処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、水素製造サイトの管理処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0047】
また、上記各実施形態では、水素製造サイトの管理プログラムが記憶装置に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
100 水素製造サイトの管理システム
10 管理装置
12 監視部
14 受付部
16 制御部
20 サイト
22、22A、22B 水電解装置
24、24A、24B 貯蔵設備
26、26A、26B サイト制御部
32 CPU
34 メモリ
36 記憶装置
38 入力装置
40 出力装置
42 記憶媒体読取装置
44 通信I/F
46 バス
50 アグリゲータサーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6