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特許7606911ワーク加工用シート、ワーク加工用シートの製造方法、及び、ワーク加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ワーク加工用シート、ワーク加工用シートの製造方法、及び、ワーク加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241219BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241219BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20241219BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J133/14
C09J11/06
B32B7/025
B32B27/00 M
B32B27/00 D
B32B27/26
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
B32B27/16 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021061744
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157489
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山口 征太郎
(72)【発明者】
【氏名】土山 さやか
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255345(JP,A)
【文献】国際公開第15/145771(WO,A1)
【文献】特開2000-248234(JP,A)
【文献】特開2005-263894(JP,A)
【文献】特開2003-155455(JP,A)
【文献】国際公開第15/046529(WO,A1)
【文献】特開2012-114397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 133/14
C09J 11/06
B32B 7/025
B32B 27/00
B32B 27/26
B32B 27/30
B32B 27/18
B32B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた帯電防止層と、前記帯電防止層上に設けられた粘着剤層と、を備えるワーク加工用シートであって、
前記帯電防止層は、導電性高分子を含有し、
前記粘着剤層は、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される1種又は2種以上の触媒と、架橋剤と、を配合成分とするエネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであり、
前記架橋剤は、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、二官能プレポリマータイプ及びブロックタイプからなる群から選択される1種又は2種以上のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを含有するワーク加工用シート。
【請求項2】
前記アクリル樹脂を構成する水酸基を有する構成単位の総質量に対する前記架橋剤の配合量(質量部)の割合が0.35以上である、請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項3】
前記基材フィルムと、前記帯電防止層と、前記粘着剤層とを、この順に積層する、請求項1又は2に記載のワーク加工用シートの製造方法であって、
前記触媒の存在下で、水酸基を有するアクリル樹脂と、イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物と、を反応させて、前記イソシアネート基と、一部の前記水酸基と、からウレタン結合を形成することにより、前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を作製し、
前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、前記架橋剤と、を配合することにより、前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を調製する工程と、
前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて、前記粘着剤層を作製する工程と、を有するワーク加工用シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のワーク加工用シートを用いたワーク加工物の製造方法であって、
前記ワーク加工用シート中の前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面を、ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワーク加工用シートと前記ワークとの積層物を作製する工程と、
前記積層物中の前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工用シート中の前記粘着剤層によって、前記ワーク加工物が保持されて構成されているワーク加工物複合体を作製する工程と、
前記ワーク加工物複合体の前記基材フィルム側の外部から、前記粘着剤層に対して、エネルギー線を照射して、前記粘着剤層を硬化させる工程と、
前記粘着剤層の硬化物から、前記ワーク加工物を引き離してピックアップする工程と、を有するワーク加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工用シート、ワーク加工用シートの製造方法、及び、ワーク加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワーク加工用シートとしてのダイシングシートは、基材フィルム上に粘着剤層を備えて構成され、前記粘着剤層により半導体ウエハ等のワークに貼付し、この状態でダイシングを行うのに使用される。ダイシング後は、必要により、紫外線等のエネルギー線の照射による硬化で前記粘着剤層の粘着力を低下させ、半導体チップ等のワーク加工物をピックアップする。ダイシングシートとしては、その目的によって種々の構成のものがこれまでに提案されている。
【0003】
半導体ウエハ等のワークのダイシング工程では、半導体素子をリードフレームや有機基板などに接合するためのフィルム状接着剤とダイシングシートとが組み合わされたダイシングダイボンディングシートが使用されることがある。また、いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置のワークの裏面保護のために、保護膜形成フィルムとダイシングシートとが組み合わされた裏面保護膜形成用複合シートも使用されている。
【0004】
これらのダイシングシート、ダイシングダイボンディングシート、裏面保護膜形成用複合シート等のワーク加工用シートを用いて半導体チップ等のワーク加工物をピックアップする際には、ワーク加工物とワーク加工用シートとの間に剥離帯電と呼ばれる静電気が発生する。この静電気による、被着体(例えば回路など)への悪影響を押さえるため、基材フィルムの背面側を帯電防止処理したワーク加工用シートや、基材フィルムへ帯電防止剤を添加混合したワーク加工用シート、粘着剤層へ帯電防止剤を添加混合したワーク加工用シート、基材フィルムと粘着剤層との間に帯電防止層を設けたワーク加工用シート等が知られている(例えば、特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-255345号公報
【文献】特開2008-280520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワーク加工用シートの剥離帯電を防止するための処理は、基材フィルムと粘着剤層との間に設けることが、帯電防止剤の他への悪影響を抑えやすく、剥離帯電の効果も得やすいと考えられる。
しかしながら、基材フィルムと粘着剤層との間に設けた場合、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が損なわれることがあり、密着性が良好な組成を選択しようとしても、前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物のポットライフが短くなり適正なポットライフを確保できないことがある。
【0007】
そこで本発明は、基材フィルムと粘着剤層との間に帯電防止層を設けたワーク加工用シートにおいて、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が良好であり、かつ、前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物が適正なポットライフを有するワーク加工用シート、及び、前記ワーク加工用シートの製造方法、並びに、ワーク加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた帯電防止層と、前記帯電防止層上に設けられた粘着剤層と、を備えるワーク加工用シートであって、
前記帯電防止層は、導電性高分子を含有し、
前記粘着剤層は、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される1種又は2種以上の触媒と、架橋剤と、を配合成分とするエネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであり、
前記架橋剤は、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、二官能プレポリマータイプ及びブロックタイプからなる群から選択される1種又は2種以上のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを含有するワーク加工用シート。
[2]前記アクリル樹脂を構成する水酸基を有する構成単位の総質量に対する前記架橋剤の配合量(質量部)の割合が0.35以上である、前記[1]に記載のワーク加工用シート。
[3]前記基材フィルムと、前記帯電防止層と、前記粘着剤層とを、この順に積層する、前記[1]又は[2]に記載のワーク加工用シートの製造方法であって、
前記触媒の存在下で、水酸基を有するアクリル樹脂と、イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物と、を反応させて、前記イソシアネート基と、一部の前記水酸基と、からウレタン結合を形成することにより、前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を作製し、
前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、前記架橋剤と、を配合することにより、前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を調製する工程と、
前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて、前記粘着剤層を作製する工程と、を有するワーク加工用シートの製造方法。
[4]前記[1]又は[2]に記載のワーク加工用シートを用いたワーク加工物の製造方法であって、
前記ワーク加工用シート中の前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面を、ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワーク加工用シートと前記ワークとの積層物を作製する工程と、
前記積層物中の前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工用シート中の前記粘着剤層によって、前記ワーク加工物が保持されて構成されているワーク加工物複合体を作製する工程と、
前記ワーク加工物複合体の前記基材フィルム側の外部から、前記粘着剤層に対して、エネルギー線を照射して、前記粘着剤層を硬化させる工程と、
前記粘着剤層の硬化物から、前記ワーク加工物を引き離してピックアップする工程と、を有するワーク加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材フィルムと粘着剤層との間に帯電防止層を設けたワーク加工用シートにおいて、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が良好であり、かつ、前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物が適正なポットライフを有するワーク加工用シート、及び、前記ワーク加工用シートの製造方法、並びに、ワーク加工物の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のワーク加工用シートの一の実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明のワーク加工用シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】本発明のワーク加工物の製造方法の一の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<<ワーク加工用シート>>
【0012】
本発明のワーク加工用シートについて、図面を引用しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明のワーク加工用シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示すワーク加工用シート101は、基材フィルム11と、基材フィルム11上に設けられた帯電防止層111と、帯電防止層111上に設けられた粘着剤層12と、を備えるダイシングシートである。
【0014】
ワーク加工用シート101においては、基材フィルム11の一方の表面(以下、「第1面」と称することがある)11aに帯電防止層111が積層され、帯電防止層111の基材フィルム11とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)111aに粘着剤層12が積層されている。
【0015】
図1に示すワーク加工用シート101は、粘着剤層12の、基材フィルム11とは反対側の第1面12aが、半導体ウエハ等のワーク(図示略)の回路が形成されている面とは反対側の面に貼付されて、使用される。
【0016】
ここで、「ワーク」とは。ウエハ又は半導体装置パネルを云う。
「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
「半導体装置パネル」とは、一個又は二個以上の電子部品が封止樹脂層で封止された二個以上の半導体装置が、平面的に並んで配置された集合体を云う。
これらワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークは、ダイシング等の手段により分割され、ワーク加工物となる。本明細書においては、ワークの場合と同様に、回路が形成されている側のワーク加工物の面を「回路面」と称し、ワーク加工物の回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面とワーク加工物の回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられている。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0017】
ワーク加工用シート101において、前記帯電防止層は、導電性高分子を含有し、
前記粘着剤層は、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される1種又は2種以上の触媒と、架橋剤と、を配合成分とするエネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであり、
前記架橋剤は、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、二官能プレポリマータイプ及びブロックタイプからなる群から選択される1種又は2種以上のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを含有する。
【0018】
ワーク加工用シート101において、前記帯電防止層が、導電性高分子を含有しているので、ワーク加工用シートを用いて半導体チップ等のワーク加工物をピックアップする際には、ワーク加工物とワーク加工用シートとの間の静電気の発生を防止することができる。
ワーク加工用シート101において、前記架橋剤が、前記ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを含有するので、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性を良好に保つことができる。
【0019】
前記触媒は、水酸基含有化合物の水酸基と、イソシアネート基含有化合物のイソシアネート基と、が反応して、ウレタン結合を形成する際に、反応速度を促進させる。
したがって、前記触媒は、水酸基含有共重合体の水酸基に、イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物のイソシアネート基を反応させて、ウレタン結合を形成させる際の反応速度を促進するとともに、前記触媒は、エネルギー線硬化性粘着剤組成物において、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂の水酸基に、前記ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートのイソシアネート基を反応させて、ウレタン結合を形成させる際の反応速度を促進する。
【0020】
ただし、前記触媒の室温における反応速度を促進させる効果は穏やかである。したがって、エネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて前記粘着剤層を形成する際において、前記触媒を選択することで、前記アクリル樹脂の水酸基と、前記架橋剤との反応を穏やかに進めさせることができ、エネルギー線硬化性粘着剤組成物のポットライフを良好なものとすることができる。
【0021】
ワーク加工用シート101において、前記粘着剤層が、前記触媒と、前記架橋剤とを配合成分とするエネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであるので、導電性高分子を含有する帯電防止層が設けられているにもかかわらず、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が良好である。この理由は定かではないが、導電性高分子を含有する帯電防止層に、粘着剤層が積層された時に、粘着剤層に含まれる前記架橋剤が帯電防止層との接触面に作用して、粘着剤層と帯電防止層との間の密着性が優れたものとなり、結果、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が優れたものとなるためと推察される。
【0022】
ワーク加工用シート101を粘着剤層12側の上方から見下ろして平面視したときに、粘着剤層12は、例えば、円形状等の形状を有する。
【0023】
本発明のワーク加工用シートは、図1に示すワーク加工用シート101に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1に示すものにおいて一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0024】
例えば、図2は、本発明のワーク加工用シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。ここに示すワーク加工用シート101’は、帯電防止層112と、帯電防止層112上に設けられた基材フィルム11と、基材フィルム11上に設けられた帯電防止層111と、帯電防止層111上に設けられた粘着剤層12と、を備えるダイシングシートである。図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0025】
ワーク加工用シート101’においては、帯電防止層112の一方の表面112aに基材フィルム11が積層され、基材フィルム11の帯電防止層112とは反対側の第1面11aに帯電防止層111が積層され、帯電防止層111の基材フィルム11とは反対側の第1面111aに粘着剤層12が積層されている。
【0026】
図2に示すワーク加工用シート101’は、粘着剤層12の、基材フィルム11とは反対側の第1面12aが、半導体ウエハ等のワーク(図示略)の回路面とは反対側の裏面に貼付されて、使用される。
【0027】
以下、本発明のワーク加工用シートとして、ダイシングシートを構成する各層について説明する。
【0028】
[基材フィルム]
前記基材フィルムの構成材料は、各種樹脂であることが好ましく、具体的には、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン(LDPEと略すことがある)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPEと略すことがある)、高密度ポリエチレン(HDPE等と略すことがある))、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロック共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PETと略すことがある)、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、これらのいずれかの樹脂の水添加物、変性物、架橋物又は共重合物等が挙げられる。切削屑抑制、エキスパンド性の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、エチレン-メタクリル酸(EMAA)共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリレート(EMMA)共重合体フィルムが好ましい。
【0029】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語につても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0030】
基材フィルムを構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0031】
基材フィルムは1層(すなわち、単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。ここで、複数層が互いに異なるとは、各層の材質及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
なお、本明細書においては、基材フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0032】
基材フィルムの厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、20μm~200μmであることが好ましく、25μm~150μmであることがより好ましく、30μm~100μmであることが特に好ましい。
ここで、「基材フィルムの厚さ」とは、基材フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材フィルムの厚さとは、基材フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。なお、基材フィルムの厚さの測定方法としては、例えば、任意の5箇所において、接触式厚み計を用いて厚さを測定し、測定値の平均を算出する方法等が挙げられる。
【0033】
基材フィルムは、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理、エンボス加工処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材フィルムは、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材フィルムは、帯電防止コート層、フィルム状接着剤複合シートを重ね合わせて保管する際に、基材フィルムが他のシートに接着することや、基材フィルムが吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
これらの中でも基材フィルムは、ワークのダイシング時のブレードの摩擦による基材フィルムの断片の発生が抑制される点から、特に表面が電子線照射処理を施されたものが好ましく、一方で、ピックアップを容易に行う観点からは電子線照射処理を施していないものが好ましい。
【0034】
[帯電防止層]
前記帯電防止層に用いられる導電性高分子として、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子等が挙げられ、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子が好ましい。
ポリピロール系導電性高分子は、ピロール(モノマー)を乳化重合して得られる水分散性導電性高分子として使用することができる。
ポリチオフェン系導電性高分子も、水分散性導電性高分子として使用することができる。
【0035】
水分散性導電性高分子を用いることにより、帯電防止層を形成する際の塗布液(ポリマー組成物)を水分散液として調製でき、塗布液に有機溶剤を用いる必要がない。そのため、有機溶剤による基材フィルム基材の変質や劣化を抑制することができる。水分散性導電性高分子に、必要によりバインダー樹脂を加えて塗布液を調製し、塗布液を塗布し、加熱し乾燥することで、帯電防止層を形成することができる。
【0036】
帯電防止層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、20~200nmであることが好ましく、25~150nmであることがより好ましく、30~100nmであることが特に好ましい。
【0037】
[粘着剤層]
前記粘着剤層は、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される1種又は2種以上の触媒と、架橋剤と、を配合成分とするエネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであり、前記架橋剤は、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、二官能プレポリマータイプ及びブロックタイプからなる群から選択される1種又は2種以上のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネートを含有する。
【0038】
粘着剤層は1層(すなわち、単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。粘着剤層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよい。例えば、基材フィルム11の一方の表面11aに帯電防止層111が積層され、帯電防止層111の基材フィルム11とは反対側の表面111aに粘着剤層12が積層されており、粘着剤層12が、帯電防止層111とは反対側の第1の粘着剤層121及び帯電防止層111側の第2の粘着剤層122からなり、第1の粘着剤層121が前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであってもよい。
【0039】
前記粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。なお、粘着剤層の厚さの測定方法としては、例えば、任意の5箇所において、接触式厚み計を用いて厚さを測定し、測定値の平均を算出する方法等が挙げられる。
【0040】
粘着剤層は、これを構成するための各種成分を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~30℃の温度等が挙げられる。
【0041】
前記粘着剤層は、エネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を含有するので、エネルギー線を照射してその粘着性を低下させることで、ワーク加工物のピックアップがより容易となる。粘着剤層にエネルギー線を照射して粘着性を低下させる処理は、ワーク加工用シートを被着体に貼付した後に行ってもよいし、被着体に貼付する前に予め行っておいてもよい。
【0042】
本発明において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源としてUV-LED、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ又はキセノンランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本発明において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0043】
[粘着剤組成物]
前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物は、前記粘着剤層の製造原料であり、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される1種又は2種以上の触媒と、架橋剤と、を含有する。
粘着剤組成物におけるアクリル樹脂は、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂である。
なお、本明細書においては、前記粘着剤層を形成するためのエネルギー線硬化性粘着剤組成物を、本明細書において、単に「粘着剤組成物」ということがある。粘着剤組成物における「アクリル樹脂」との記載は、特に断りのない限り、「水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂」を意味するものとする。
【0044】
(アクリル樹脂)
水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂は、水酸基を含有しない(メタ)アクリル酸エステルと、水酸基含有モノマーと、必要に応じて、これら以外の非(メタ)アクリル酸エステルと、を共重合させ、得られた水酸基含有共重合体(以下、「プレ共重合体」ということがある。)の水酸基に、イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物のイソシアネート基を反応させて、ウレタン結合を形成して得られたものが例示できる。イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物中のイソシアネート基のモル量を、前記水酸基含有モノマー中の水酸基のモル量よりも少なくすることで、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を得ることができる。
前記アクリル樹脂は、エネルギー線重合性不飽和基を側鎖に有することにより、重合反応(硬化)後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、ワーク加工物のピックアップ性が向上する。
【0045】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート(ミリスチル(メタ)アクリレート)、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(パルミチル(メタ)アクリレート)、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、イソオクタデシル(メタ)アクリレート(イソステアリル(メタ)アクリレート)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が炭素数1~18の鎖状構造であるアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニル(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニルオキシアルキル(メタ)アクリレート;イミド(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0046】
前記水酸基含有モノマーとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
前記非(メタ)アクリル酸エステルは、好ましいものとしては(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N-メチロールアクリルアミド等が例示できる。
【0048】
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステル、前記水酸基含有モノマー、前記非(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーは、いずれも1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0049】
前記イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物としては、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル等が例示できる。
前記アクリル樹脂を構成する、前記イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0050】
粘着剤組成物が含有するアクリル樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0051】
粘着剤組成物のアクリル樹脂の含有量は、粘着剤組成物中の溶媒以外の全ての含有成分の総量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。また、粘着剤組成物のアクリル樹脂の含有量は、粘着剤組成物中の溶媒以外の全ての含有成分の総量に対して99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
(触媒)
前記触媒は、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される。
【0053】
・アセチルアセトンジルコニウム錯体
アセチルアセトンジルコニウム錯体としては、ジルコニウム(IV)アセチルアセトンとして市販のものを使用することができる。
【0054】
・金属石鹸
粘着剤組成物に含まれる金属石鹸としては、金属種がジルコニウムであれば限定されない。金属石鹸としては、ミリスチン酸ジルコニウム、パルミチン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オレイン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、リシノール酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、(2-エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウムなどの脂肪酸と結合した脂肪酸ジルコニウム塩、などが挙げられる。
【0055】
上記金属石鹸は、一種でもそれ以上でもよい。市販されている金属石鹸を用いてもよい。
【0056】
脂肪酸ジルコニウム塩の脂肪酸の炭素数は、5~20が好ましく、6~18がより好ましく、7~16が特に好ましい。
【0057】
・アセチルアセトン亜鉛錯体
アセチルアセトン亜鉛錯体としては、アセチルアセトン亜鉛(II)一水和物として市販のものを使用することができる。
【0058】
粘着剤組成物の触媒の含有量(配合量)は、前記触媒の活性により適宜調節すればよいが、アクリル樹脂100質量部に対して、0.001~1.5質量部であることが好ましく、0.005~1.0質量部であることがより好ましく、0.01~0.5質量部であることが特に好ましい。
粘着剤組成物の触媒の含有量(配合量)は、前記プレ共重合体100質量部に対して、0.001~1.5質量部であることが好ましく、0.005~1.0質量部であることがより好ましく、0.01~0.5質量部であることが特に好ましい。
【0059】
(架橋剤)
前記架橋剤は、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ、二官能プレポリマータイプ及びブロックタイプからなる群から選択される1種又は2種以上のヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート(以下、「HMDI系架橋剤)という。)を含有する。
【0060】
架橋剤としてポリイソシアネートを用いるので、これらのイソシアネート基とアクリル樹脂の水酸基との反応によって、粘着剤層に架橋構造を簡便に導入できる。HMDI系架橋剤を用いるので、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性を良好に保つことができる。
【0061】
ビウレットタイプのHMDI系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、四量体、又は五量体であるビウレットが挙げられる。
【0062】
イソシアヌレートタイプのHMDI系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、五量体、又は七量体であるイソシアヌレートが挙げられる。
【0063】
アダクトタイプのHMDI系架橋剤としては、ポリオールのすべて若しくは一部の水酸基、又はポリアミンのすべて若しくは一部のアミノ基に、ヘキサメチレンジイソシアネートが付加したポリイソシアネートが挙げられる。
アダクトタイプのHMDI系架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等のポリオールにアダクトしたものがより好ましい。これらの中でも、プロパントリオールにアダクトしたものがさらに好ましい。
【0064】
二官能プレポリマータイプのHMDI系架橋剤としては、ポリオール、ポリエステルポリオール等の二官能ポリオールの両末端の水酸基にヘキサメチレンジイソシアネートが付加したジイソシアネートが挙げられる。
【0065】
ブロック型タイプのHMDI系架橋剤としては、ビウレットタイプ、イソシアヌレートタイプ、アダクトタイプ又は二官能プレポリマータイプのHMDI系架橋剤のすべて若しくは一部のイソシアネート基をアルコール、フェノール、オキシム、ラクタム等のブロック剤でマスクしたポリイソシアネートが挙げられる。
【0066】
粘着剤組成物が含有するHMDI系架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0067】
粘着剤組成物中のHMDI系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、粘着剤組成物中のアクリル樹脂が有する水酸基のモル数に対して0.2倍以上であることが好ましい。このようにすることで、硬化後の粘着剤層の粘着性低下による被着体からの剥離性が向上し、ワーク加工物のピックアップ性が向上する。
また、粘着剤組成物中のHMDI系架橋剤が有するイソシアネート基のモル数は、粘着剤組成物中のアクリル樹脂が有する水酸基のモル数に対して3倍以下であることが好ましい。このようにすることで、HMDI系架橋剤同士の副生成物の発生をより抑制できる。
【0068】
粘着剤組成物のHMDI系架橋剤の含有量は、イソシアネート基のモル数が上述のような範囲となるように適宜調節すればよいが、このような条件を満たしたうえで、アクリル樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、0.3~10質量部であることが特に好ましい。
【0069】
前記アクリル樹脂を構成する水酸基を有する構成単位の総質量に対する前記架橋剤の配合量(質量部)の割合は、0.35以上であることが好ましい。前記アクリル樹脂を構成する水酸基を有する構成単位は、例えば、プレ共重合体を構成する水酸基を有する構成単位から、イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物と反応した構成単位を差し引くことで求めることができる。
前記架橋剤の配合量(質量部)の割合は、0.35以上であることが好ましく、0.36以上であることがより好ましく、0.37以上であることがさらに好ましい。前記架橋剤の配合量(質量部)の割合は、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.8以下であることがさらに好ましい。
【0070】
(光重合開始剤)
粘着剤組成物は、前記アクリル樹脂、前記触媒及び前記架橋剤以外に、光重合開始剤を含有することが好ましい。
前記光重合開始剤は、公知のものでよく、具体的には、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が例示できる。
【0071】
粘着剤組成物が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0072】
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物の光重合開始剤の含有量は、前記アクリル樹脂100質量部に対して、0.05~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることがさらに好ましい。光重合開始剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、光重合開始剤を用いたことによる効果が十分に得られる。また、光重合開始剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、過剰な光重合開始剤からの副生成分の発生が抑制されて、粘着剤層の硬化がより良好に進行する。
【0073】
(溶媒)
粘着剤組成物は、前記アクリル樹脂、前記触媒及び前記架橋剤以外に、さらに溶媒を含有することが好ましい。
前記溶媒は、特に限定されないが、好ましいものとしては、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が例示できる。
粘着剤組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0074】
粘着剤組成物が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0075】
(その他の成分)
粘着剤組成物は、アクリル樹脂及びHMDI系架橋剤に、本発明の効果を損なわない範囲内において、光重合開始剤、架橋剤及び溶媒に該当しないその他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等の各種添加剤が例示できる。
粘着剤組成物が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0076】
前記粘着剤組成物は、アクリル樹脂と、前記アクリル樹脂以外の成分と、を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
例えば、前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を含有する反応物を調製し、前記反応物と、前記架橋剤と、を配合することにより、前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を得ることができる。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0077】
粘着剤層は、エネルギー線照射による硬化後の弾性率が所定の範囲内となるように、例えば、粘着剤組成物に配合するアクリル樹脂等の各成分が有する、(メタ)アクリロイル基等のエネルギー線重合性不飽和基の数、架橋剤の種類及び配合量、アクリル樹脂を構成するモノマーの種類、触媒の種類及び量等を調節して、形成すればよい。
【0078】
粘着剤層は、前記基材フィルムの表面に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで形成できる。
このとき必要に応じて、塗工した粘着剤組成物を加熱することで、架橋してもよい。加熱条件は、例えば、100~130℃で1~5分とすることができるが、これに限定されない。
また、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで形成した粘着剤層を、基材フィルムの表面に貼り合わせ、必要に応じて前記剥離フィルムを取り除くことでも、基材フィルム上に粘着剤層を形成できる。
【0079】
粘着剤組成物の基材フィルムの表面又は剥離材の剥離層表面への塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0080】
<剥離フィルム>
剥離フィルムとしては、特に限定されず、市販の剥離フィルムを使用することができ、たとえばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。
【0081】
剥離フィルムの粘着剤層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。下限値は通常25mN/m程度である。このような表面張力が比較的低い剥離フィルムは、材質を適宜に選択して得ることが可能であるし、また剥離フィルムの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0082】
剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系、ゴム系などが用いられるが、特にアルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が耐熱性を有するので好ましい。
【0083】
上記の剥離剤を用いて剥離フィルムの基体となるフィルム等の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま無溶剤で、または溶剤希釈やエマルション化して、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ロールコーターなどにより塗布して、剥離剤が塗布された剥離フィルムを常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させて剥離剤層を形成させればよい。
【0084】
剥離フィルムの表面粗さ(Ra)としては、10~100nmが好ましく、15~60nmが好ましく、20~50nmが好ましい。
【0085】
<<ワーク加工用シートの製造方法>>
本発明のワーク加工用シートの製造方法は、前記基材フィルムと、前記帯電防止層と、前記粘着剤層とを、この順に積層する、前記ワーク加工用シートの製造方法であって、
前記触媒の存在下で、水酸基を有するアクリル樹脂と、イソシアネート基及びエネルギー線重合性不飽和基を有する化合物と、を反応させて、前記イソシアネート基と、一部の前記水酸基と、からウレタン結合を形成することにより、前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を作製し、
前記水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、前記架橋剤と、を配合することにより、前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を調製する工程と、
前記エネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて、前記粘着剤層を作製する工程と、を有する。
【0086】
例えば、基材フィルム上に上述の導電性高分子を含有する塗布液を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材フィルム上に帯電防止層を形成する。別途、剥離フィルム上に、上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成し、粘着剤層と、基材フィルム上の帯電防止層とを貼付することにより、基材フィルムと、帯電防止層と、粘着剤層と、剥離フィルムとが、この順に積層されたワーク加工用シートとすることができる。剥離フィルムは、ワーク加工用シートを使用する際に、必要に応じて取り除けばよい。
【0087】
<<ワーク加工物の製造方法>>
本発明のワーク加工物の製造方法は、前記ワーク加工物の製造方法であって、
前記ワーク加工用シート中の前記粘着剤層の前記基材フィルム側とは反対側の面を、ワークの一方の面に貼付することにより、前記ワーク加工用シートと前記ワークとの積層物を作製する工程と、
前記積層物中の前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工用シート中の前記粘着剤層によって、前記ワーク加工物が保持されて構成されているワーク加工物複合体を作製する工程と、
前記ワーク加工物複合体の前記基材フィルム側の外部から、前記粘着剤層に対して、エネルギー線を照射して、前記粘着剤層を硬化させる工程と、
前記粘着剤層の硬化物から、前記ワーク加工物を引き離してピックアップする工程と、を有する。
【0088】
例えば、図3は、本発明のワーク加工物の製造方法の一の実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態のワーク加工物の製造方法において、ワーク加工用シート101は、基材フィルム11と、基材フィルム11上に設けられた帯電防止層111と、帯電防止層111上に設けられた粘着剤層12と、を備える。本実施形態のワーク加工物の製造方法は、図3(a)に示されるように、ワーク加工用シート101中の粘着剤層12の基材フィルム11側とは反対側の面12aを、ワークの一方の面9bに貼付することにより、ワーク加工用シート101とワーク9との積層物を作製する工程と、図3(b)に示されるように、前記積層物中のワーク9を加工することにより、ワーク加工用シート101中の粘着剤層12によって、ワーク加工物9’が保持されて構成されているワーク加工物複合体を作製する工程と、前記ワーク加工物複合体の基材フィルム11側の外部から、粘着剤層12に対して、エネルギー線を照射して、粘着剤層12を硬化させる工程と、引き離し手段7を用いて、図3(c)に示されるように、粘着剤層12の硬化物から、ワーク加工物9’を引き離してピックアップする工程と、を有する。
【0089】
本発明のワーク加工用シートは、半導体素子をリードフレームや有機基板などに接合するためのフィルム状接着剤と組み合わされたダイシングダイボンディングシートとして使用することもできる。また、半導体装置のワークの裏面保護のための保護膜形成フィルムと組み合わされた裏面保護膜形成用複合シートとして使用することもできる。
【実施例
【0090】
以下、ワーク加工用シートとしてのダイシングシートの実施例により、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
(アクリル樹脂の製造)
窒素雰囲気下において、攪拌機、コンデンサー、温度計、及び窒素導入管を取り付けた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)62質量部と、メチルメタクリレート(MMA)10質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)28質量部と、を共重合させて得られたプレ共重合体の酢酸エチル溶液(250質量部、固形分濃度40質量%)に、Zr(C(商品名:ナーセム(登録商標)ジルコニウム化合物、日本化学産業社製)0.012質量部及びメチルエチルケトンを加え、50℃にて1時間撹拌して、固形分濃度が35質量%となる溶液を調製した。その後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(メタクリル酸2-イソシアナトエチル、以下、「MOI」と略記することがある)30質量部(HEA中の水酸基100モル%に対してイソシアネート基が80モル%となる量)を添加し、50℃で48時間反応させて(MOI付加反応)、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂を含有する反応物を得た。得られたアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0092】
(粘着剤組成物の製造)
得られたエネルギー線硬化性のアクリル樹脂100質量部(固形分)に対して、光重合開始剤としてBASF社製「オムニラッド127(固形分100質量%)」を3質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート系(HMDI系)ポリイソシアネート架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)HL(固形分75質量%)」を2.9質量部(dry換算で2.175質量部)溶解させて、固形分濃度が30質量%になるように調整し、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物を調製した。実施例1の粘着剤組成物において、前記アクリル樹脂を構成する水酸基を有する構成単位の総質量に対する前記架橋剤の配合量(質量部)の割合は0.388である。
【0093】
(ダイシングシートの製造)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)の片面に軽剥離型のシリコーン樹脂で剥離処理した剥離フィルム(SP-PET3801、リンテック製)の剥離処理面に粘着剤組成物をコンマコーターによって塗布し、90℃で1分間乾燥させて、厚さ5μmの粘着剤層を形成した。
【0094】
ピロール(モノマー)を乳化重合して得られたポリピロール系導電性高分子(100質量部(固形分))を含有するエマルションに対して、バインダー樹脂としてのブチル化メラミン樹脂(2質量部、DIC社製、製品名「スーパーベッカミン(登録商標)J820-60」)を添加し、十分に混合することで帯電防止層形成用の塗液を得た。
厚さ80μmのエチレン-メタクリル酸(EMAA)共重合体フィルムの片面にコロナ照射を行った後、同一の面に上記の帯電防止層形成用の塗液を塗布し、加熱により乾燥させることで、厚さ50nmの帯電防止層を形成した。これにより、基材フィルムと帯電防止層との積層体を得た。
【0095】
積層体の帯電防止層の露出面と、前記粘着剤層の露出面とを貼合し、23℃50%RHの環境下2週間保管して、基材フィルムと帯電防止層と粘着剤層と剥離フィルムとが、この順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている実施例1のダイシングシートを得た。
【0096】
[実施例2]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、Zr(C(商品名:ナーセム(登録商標)ジルコニウム化合物、日本化学産業社製)0.012質量部を、ZrO(C15(2-エチルヘキサン酸)酸化ジルコニウム(IV)、富士フイルム和光純薬社製)0.12質量部に変更し、50℃で48時間を、45℃で48時間に変更してアクリル樹脂の溶液を作製した他は、実施例1と同様にして、実施例2のダイシングシートを得た。実施例2におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0097】
[実施例3]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、Zr(C(商品名:ナーセム(登録商標)ジルコニウム化合物、日本化学産業社製)0.012質量部を、Zn(C・HO(商品名:アセチルアセトン亜鉛(II)一水和物、富士フイルム和光純薬社製)0.10質量部に変更し、50℃で48時間を、60℃で48時間に変更してアクリル樹脂の溶液を作製した他は、実施例1と同様にして、実施例3のダイシングシートを得た。実施例3におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0098】
[実施例4]
実施例3において、粘着剤組成物で用いた、HMDI系架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)HL(固形分75質量%)」2.9質量部(dry換算で2.175質量部)を、4.3質量部(dry換算で3.225質量部)に変更した他は、実施例1と同様にして、実施例4のダイシングシートを得た。実施例4におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0099】
[比較例1]
実施例1において、粘着剤組成物で用いた、Zr(C(商品名:ナーセム(登録商標)ジルコニウム化合物、日本化学産業社製)0.012質量部を、(C1123COO)Sn(C(ジラウリン酸ジn-ブチル錫、富士フイルム和光純薬社製)0.14質量部に変更し、50℃で48時間を、60℃で48時間に変更してアクリル樹脂の溶液を作製し、HMDI系架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)HL(固形分75質量%)」2.9質量部(dry換算で2.175質量部)を、2.29質量部(dry換算で1.7175質量部)に変更した他は、実施例1と同様にして、比較例1のダイシングシートを得た。比較例1におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0100】
[比較例2]
比較例1において、粘着剤組成物で用いた、HMDI系架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)HL(固形分75質量%)」2.29質量部(dry換算で1.7175質量部)を、4.3質量部(dry換算で3.225質量部)に変更した他は、比較例1と同様にして、比較例2のダイシングシートを得た。比較例2におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0101】
[比較例3]
実施例2において、粘着剤組成物で用いた、HMDI系架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)HL(固形分75質量%)」2.9質量部(dry換算で2.175質量部)を、キシレンジイソシアネート系(XDI系)ポリイソシアネート架橋剤「三井ポリウレタン社製,製品名:D-110N(固形分75質量%)」2.9質量部(dry換算で2.175質量部)に変更した他は、実施例2と同様にして、比較例3のダイシングシートを得た。比較例3におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0102】
[比較例4]
実施例2において、粘着剤組成物で用いた、HMDI系架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)HL(固形分75質量%)」2.9質量部(dry換算で2.175質量部)を、トリレンジイソシアネート系(TDI系)ポリイソシアネート架橋剤「東ソー株式会社製、製品名:コロネート(登録商標)L(固形分75質量%)」2.9質量部(dry換算で2.175質量部)に変更した他は、実施例2と同様にして、比較例3のダイシングシートを得た。比較例3におけるアクリル樹脂の分子量を測定したところ、重量平均分子量50万であった。
【0103】
[ポットライフ評価]
実施例1~4及び比較例1~4のダイシングシートを作製した際の粘着剤組成物について、それぞれ、調製直後の粘度を、B型粘度計を用いて測定した。その後、粘着剤組成物を23℃環境下にて保管し、1時間毎に、12時間後までの粘着剤組成物の粘度を、B型粘度計を用いて測定した。
調製直後の粘度に対して、粘度が1.5倍になるまでの時間をその粘着剤組成物のポットライフとした。評価結果を表1~表2に示した。
【0104】
[密着性評価]
実施例1~4及び比較例1~4のダイシングシートについて、基材フィルムの側からRAD2000にて紫外線照射(照度:230mW/cm 光量: 190mJ/cm)した。その後、剥離フィルムを剥離し、粘着剤層の表面に碁盤目状に5mmの間隔で10×10の100個のクロスカットを施し、その碁盤目状にクロスカットされた粘着剤層の表面に粘着テープ(ニチバン社製、セロテープ(登録商標))を貼り、JIS K 5600-5-6:1999(クロスカット法)の碁盤目テープ法に準拠して剥離試験を行った。100個の碁盤目のうち、カットの縁が完全に滑らかで剥がれていない升目の数nを、「n/100」の形式で示した。評価結果を表1~表2に示した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表1~表2に示された通り、本発明のワーク加工用シートとしてのダイシングシートは、基材フィルムと、前記基材フィルム上に設けられた帯電防止層と、前記帯電防止層上に設けられた粘着剤層と、を備えるので、ワーク加工物とワーク加工用シートとの間の静電気の発生を防止できる。
実施例1~4のダイシングシートにおいて、前記粘着剤層は、水酸基及びエネルギー線重合性不飽和基を有するアクリル樹脂と、アセチルアセトンジルコニウム錯体、金属種がジルコニウムである金属石鹸、及びアセチルアセトン亜鉛錯体からなる群より選択される1種又は2種以上の触媒と、HMDI系架橋剤と、を配合成分とするエネルギー線硬化性粘着剤組成物を用いて形成されたものであるので、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性に優れ、かつ、前記粘着剤層を形成するための粘着剤組成物が適正なポットライフを有する。
【0108】
錫系の触媒を用いた比較例1のダイシングシートでは、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物のポットライフが短く、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性も劣っていた。錫系の触媒を用いた比較例2のダイシングシートでは、HMDI系架橋剤の配合量を増やすことで基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が改善できたが、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物のポットライフがさらに短くなってしまった。
【0109】
XDI系架橋剤又はTDI系架橋剤を用いた比較例3~4のダイシングシートでは、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のワーク加工用シートは、半導体ウエハ等のワークの加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
11・・・基材フィルム、11a・・・基材フィルムの第1面、111・・・帯電防止層、111a・・・帯電防止層の第1面、12・・・粘着剤層、12a・・・粘着剤層の第1面、7・・・引き離し手段、9・・・ワーク、9a・・・ワークの回路面、9b・・・ワークの裏面、9’・・・ワーク加工物、9a’・・・ワーク加工物の回路面、101・・・ワーク加工用シート
図1
図2
図3