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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】試料加工装置および試料加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20241219BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20241219BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01J37/305 A
H01J37/244
G01V8/10 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021094684
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186453
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】小塚 心尋
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】木村 達人
(72)【発明者】
【氏名】石川 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】河原 尚
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-193962(JP,A)
【文献】特開2006-300759(JP,A)
【文献】特開平09-210883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/305
H01J 37/244
G01V 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記試料を揺動させるスイング機構を備えた試料ステージと、
前記試料を透過照明する照明光を発する透過照明装置と、
前記照明光で透過照明された前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された画像に基づいて、加工の終了を判断する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記画像を取得する処理と、
取得した前記画像において、前記試料と前記遮蔽部材との間の隙間から漏れる光をマスクする処理と、
前記画像のマスクされたマスク領域を除いた非マスク領域の輝度を検出する処理と、
前記非マスク領域の輝度に基づいて、加工の終了を判断する処理と、
を行い、
前記試料および前記遮蔽部材は、第1軸に沿って配置され、
前記スイング機構は、前記第1軸に沿って配置された前記試料および前記遮蔽部材を、前記第1軸に直交する第2軸を回転軸として揺動させ、
前記カメラは、前記画像の第1方向が前記第1軸に沿った方向となるように、前記画像を撮影し、
前記処理部は、前記隙間から漏れる光をマスクする処理において、
前記画像において、前記第1方向の輝度プロファイルを複数取得し、
複数の輝度プロファイルの各々に基づいて前記試料の傾斜角度を求め、求めた前記試料の傾斜角度に応じて前記マスク領域を傾斜させる、試料加工装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記処理部は、前記隙間から漏れる光をマスクする処理において、前記画像の輝度の分布に基づいて前記隙間から漏れる光をマスクすることによって、前記マスク領域を前記試料の傾斜角度
に応じて傾斜させる、試料加工装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記処理部は、前記隙間から漏れる光をマスクする処理において、前記スイング機構による前記試料の揺動動作に基づいて前記隙間から漏れる光をマスクする、試料加工装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記処理部は、前記画像において、前記試料を回り込んだ光をマスクする処理を行う、試料加工装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記処理部は、
前記隙間から漏れる光の輝度を取得する処理を行い、
前記加工の終了を判断する処理において、前記隙間から漏れる光の輝度および前記非マスク領域の輝度に基づいて、前記加工の終了を判断する、試料加工装置。
【請求項6】
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置における試料加工方法であって、
前記試料を揺動させながら、前記試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射する工程と、
前記試料を透過照明する工程と、
透過照明された前記試料をカメラで撮影する工程と、
前記カメラで撮影された画像を取得する工程と、
取得した前記画像において、前記試料と前記遮蔽部材との間の隙間から漏れる光をマスクする工程と、
前記画像のマスクされたマスク領域を除いた非マスク領域の輝度を検出する工程と、
前記非マスク領域の輝度に基づいて、加工の終了を判断する工程と、
を含み、
前記試料および前記遮蔽部材は、第1軸に沿って配置され、
前記イオンビームを照射する工程において、前記第1軸に沿って配置された前記試料および前記遮蔽部材を、前記第1軸に直交する第2軸を回転軸として揺動させ、
前記カメラは、前記画像の第1方向が前記第1軸に沿った方向となるように、前記画像を撮影し、
前記隙間から漏れる光をマスクする工程において、
前記画像において、前記第1方向の輝度プロファイルを複数取得し、
複数の輝度プロファイルの各々に基づいて前記試料の傾斜角度を求め、求めた前記試料の傾斜角度に応じて前記マスク領域を傾斜させる、試料加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料加工装置および試料加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工する試料加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、バルク試料上に遮蔽ベルトを配置し、遮蔽ベルトを介して試料にイオンビームを照射し、遮蔽ベルトで遮蔽されなかった部分をイオンミリングすることによって、透過電子顕微鏡用の薄膜試料を作製する試料作製装置が開示されている。
【0004】
特許文献1では、CCDカメラで試料のエッチング断面を撮影し、イオンミリング終了判定回路が試料の形状変化を監視する。イオンミリング終了判定回路が試料に貫通孔が開いたことを検出した場合、イオンビームの放出が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-193962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような試料加工装置では、試料に貫通孔が開く直前、または試料に貫通孔が開いた直後に加工を終了することが望ましい。例えば、貫通孔が大きくなってしまうと、試料の厚さの変化が大きくなってしまい、透過電子顕微鏡での観察に適した、試料の厚さが薄い領域が貫通孔の周辺のごく狭い領域に限られてしまう。
【0007】
このように、試料加工装置では、加工を終了するタイミングを正確に判断できることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る試料加工装置の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置であって、
前記試料に前記イオンビームを照射するイオン源と、
前記試料上に配置され、前記イオンビームを遮蔽する遮蔽部材と、
前記試料を揺動させるスイング機構を備えた試料ステージと、
前記試料を透過照明する照明光を発する透過照明装置と、
前記照明光で透過照明された前記試料を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された画像に基づいて、加工の終了を判断する処理部と、
を含み、
前記処理部は、
前記画像を取得する処理と、
取得した前記画像において、前記試料と前記遮蔽部材との間の隙間から漏れる光をマスクする処理と、
前記画像のマスクされたマスク領域を除いた非マスク領域の輝度を検出する処理と、
前記非マスク領域の輝度に基づいて、加工の終了を判断する処理と、
を行い、
前記試料および前記遮蔽部材は、第1軸に沿って配置され、
前記スイング機構は、前記第1軸に沿って配置された前記試料および前記遮蔽部材を、前記第1軸に直交する第2軸を回転軸として揺動させ、
前記カメラは、前記画像の第1方向が前記第1軸に沿った方向となるように、前記画像を撮影し、
前記処理部は、前記隙間から漏れる光をマスクする処理において、
前記画像において、前記第1方向の輝度プロファイルを複数取得し、
複数の輝度プロファイルの各々に基づいて前記試料の傾斜角度を求め、求めた前記試料の傾斜角度に応じて前記マスク領域を傾斜させる
【0009】
このような試料加工装置では、試料と遮蔽部材との間の隙間から漏れる光をマスクするため、当該隙間から漏れる光を、試料を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。したがって、このような試料加工装置では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。
【0010】
本発明に係る試料加工方法の一態様は、
試料にイオンビームを照射して前記試料を加工する試料加工装置における試料加工方法であって、
前記試料を揺動させながら、前記試料に遮蔽部材を介してイオンビームを照射する工程と、
前記試料を透過照明する工程と、
透過照明された前記試料をカメラで撮影する工程と、
前記カメラで撮影された画像を取得する工程と、
取得した前記画像において、前記試料と前記遮蔽部材との間の隙間から漏れる光をマスクする工程と、
前記画像のマスクされたマスク領域を除いた非マスク領域の輝度を検出する工程と、
前記非マスク領域の輝度に基づいて、加工の終了を判断する工程と、
を含み、
前記試料および前記遮蔽部材は、第1軸に沿って配置され、
前記イオンビームを照射する工程において、前記第1軸に沿って配置された前記試料および前記遮蔽部材を、前記第1軸に直交する第2軸を回転軸として揺動させ、
前記カメラは、前記画像の第1方向が前記第1軸に沿った方向となるように、前記画像を撮影し、
前記隙間から漏れる光をマスクする工程において、
前記画像において、前記第1方向の輝度プロファイルを複数取得し、
複数の輝度プロファイルの各々に基づいて前記試料の傾斜角度を求め、求めた前記試料の傾斜角度に応じて前記マスク領域を傾斜させる
【0011】
このような試料加工方法では、試料と遮蔽部材との間の隙間から漏れる光をマスクするため、当該隙間から漏れる光を、試料を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。したがって、このような試料加工方法では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る試料加工装置の構成を示す図。
図2】試料加工装置の動作を説明するための図。
図3】試料加工装置の動作を説明するための図。
図4】試料加工装置の動作を説明するための図。
図5】カメラで撮影された画像の一例を示す図。
図6】情報処理装置の処理の一例を示すフローチャート。
図7】カメラで撮影された画像を模式的に示す図。
図8】マスク処理を説明するための図。
図9】非マスク領域の輝度を検出する処理を説明するための図。
図10】カメラで撮影された画像を模式的に示す図。
図11】マスク処理を説明するための図。
図12】非マスク領域の輝度を検出する処理を説明するための図。
図13】カメラで撮影された画像を模式的に示す図。
図14】カメラで撮影された画像を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 試料加工装置
まず、本発明の一実施形態に係る試料加工装置について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る試料加工装置100の構成を示す図である。図1には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0015】
試料加工装置100は、試料2にイオンビームIBを照射して試料2を加工し、観察や分析用の試料を作製するための装置である。試料加工装置100では、バルク試料から透過電子顕微鏡で観察可能な薄膜試料を作製できる。
【0016】
試料加工装置100は、図1に示すように、イオン源10と、制御回路12と、試料ステージ20と、遮蔽部材30と、透過照明装置40と、照明調光回路42と、光学系50と、カメラ60と、情報処理装置70(処理部の一例)と、表示部80と、を含む。
【0017】
イオン源10は、試料2にイオンビームIBを照射する。イオン源10は、不図示のチャンバーの上部に取り付けられており、チャンバー内に収容された試料2にイオンビームIBを照射する。チャンバー内は、真空状態である。イオン源10は、例えば、所定の加速電圧でイオンを加速させてイオンビームIBを放出するイオン銃である。イオン源10は、Z軸に沿ってイオンビームIBを照射する。イオン源10は、例えば、イオンビームIBを試料2に照射する際に、X軸に平行な軸を回転軸として揺動する。イオン源10は、制御回路12で制御される。
【0018】
試料ステージ20は、試料2を保持する。試料ステージ20には、遮蔽部材30が取り付けられている。遮蔽部材30は、試料2上に配置されている。遮蔽部材30の厚さは、例えば、10μm程度であり、試料2の厚さは、例えば、100μm程度である。遮蔽部材30は、試料2の厚さ方向の中心に配置される。
【0019】
試料ステージ20は、試料2および遮蔽部材30を揺動させるスイング機構を備えている。スイング機構は、試料2および遮蔽部材30をスイング軸(傾斜軸)を回転軸として傾斜させる。スイング軸は、例えば、Y軸に平行である。スイング機構は、例えば、一定の周期で、試料2および遮蔽部材30を揺動させる。
【0020】
試料ステージ20に保持される試料2は、板状の形状を有している。試料2は、例えば、直方体である。
【0021】
遮蔽部材30は、イオンビームIBを遮蔽する。イオン源10から放出されたイオンビームIBは、遮蔽部材30を介して試料2に照射される。遮蔽部材30は、例えば、帯状である。遮蔽部材30は、例えば、イオンビームIBでミリングされ難い材料からなる。遮蔽部材30は、試料2の上(+Z方向)に位置している。
【0022】
透過照明装置40は、試料2を透過照明する照明光を発する。すなわち、透過照明装置40は、試料2の背後から照明光を照射する。透過照明装置40が発する照明光の強度は、照明調光回路42で制御される。
【0023】
透過照明装置40、試料2、光学系50、およびカメラ60は、この順に、Y軸に沿って並んでいる。
【0024】
カメラ60は、光学系50を介して、透過照明装置40が発する照明光で透過照明された試料2および遮蔽部材30を撮影する。カメラ60は、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラなどのデジタルカメラである。光学系50は、カメラ60で試料2を撮影するための光学系である。
【0025】
情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、表示部80に表示させる処理を行う。また、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、当該画像に基づいて加工の終了を判断する処理を行う。また、情報処理装置70は、制御回路1
2を介してイオン源10を制御する。
【0026】
情報処理装置70は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)等であり、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの記憶装置(メモリ)と、操作部と、を含む。記憶装置には、各種画像処理や制御処理を行うためのプログラム、およびデータが記憶されている。情報処理装置70(処理部)の機能は、プロセッサでプログラムを実行することにより実現できる。操作部は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報をプロセッサに出力する。操作部の機能は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネルなどのハードウェアにより実現することができる。
【0027】
表示部80は、情報処理装置70で取得された画像や、情報処理装置70で生成された画像を表示する。表示部80の機能は、LCD、CRT、操作部としても機能するタッチパネルなどにより実現できる。
【0028】
2. 試料加工装置の動作
図2図4は、試料加工装置100の動作を説明するための図である。図2は、試料2および遮蔽部材30を模式的に示す斜視図である。図3は、試料2の揺動動作について説明するための図である。図4は、イオン源10の動作を説明するための図である。
【0029】
試料加工装置100では、図2に示すように、試料2上に遮蔽部材30を配置して、遮蔽部材30の上方に配置されたイオン源10からイオンビームIBを照射する。イオンビームIBは、遮蔽部材30を介して、試料2に照射される。
【0030】
イオンビームIBを照射して試料2を加工しているときには、図3に示すように、試料ステージ20のスイング機構を動作させて、試料2および遮蔽部材30を軸Aを回転軸として揺動させる。すなわち、試料ステージ20のスイング機構は、試料2および遮蔽部材30を、軸Aを傾斜軸(回転軸)として、往復傾斜(回転)運動させる。軸Aは、例えばY軸に平行な軸である。軸Aは、例えば、試料2と遮蔽部材30の境界に位置している。
【0031】
なお、図3では、試料2の傾斜角度θ1が0°のとき、試料2の傾斜角度θ1が-30°のとき、試料2の傾斜角度θ1が+30°のときを図示している。なお、図3では、傾斜角度θ1は、試料2がX軸に平行なときをθ1=0°として、反時計回りを「+」、時計回りを「-」で表している。
【0032】
試料2の加工時には、図4に示すように、イオン源10も揺動させる。例えば、イオン源10をZ軸に対して所定の角度の範囲で傾斜させる。イオン源10を揺動させることによって、試料2の加工面に対して斜め方向からイオンビームIBを照射できる。例えば、試料2の加工面に対するイオンビームIBの入射角度が2.5°程度になるようにイオン源10を傾斜させる。すなわち、イオン源10の傾斜角度θ2の範囲は、-2.5°から+2.5°の範囲である。
【0033】
このように、試料加工装置100では、試料2を揺動させ、かつ、イオン源10を揺動させながら、試料2にイオンビームIBを照射して、試料2の加工を行う。
【0034】
加工中の試料2の様子は、カメラ60で撮影される。カメラ60で撮影された試料2の画像は、リアルタイムで情報処理装置70に送られる。情報処理装置70は、カメラ60で撮影された画像を取得し、表示部80に表示する。
【0035】
図5は、カメラ60で撮影された画像I2の一例である。試料加工装置100では、試
料2は透過照明装置40が発する照明光によって透過照明されている。画像I2では、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光が確認できる。また、画像I2では、試料2の下側から回り込んだ光が確認できる。
【0036】
なお、画像I2上には、2重円のカーソルが表示されている。このカーソルについては後述する。
【0037】
3. 情報処理装置の処理
試料加工装置100では、情報処理装置70が加工の終了を判断する。
【0038】
図6は、情報処理装置70の処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
情報処理装置70に加工を開始する指示が入力されると、情報処理装置70は、イオンビームIBを照射する処理を開始する(S100)。具体的には、情報処理装置70は、イオンビームIBを照射するための制御信号を生成し、制御回路12に送る。制御回路12は、制御信号に基づいて駆動信号を生成し、イオン源10に出力する。これにより、イオン源10からイオンビームIBが試料2に照射される。このとき、試料ステージ20のスイング機構は、試料2および遮蔽部材30を揺動させる。
【0040】
このようにしてイオンビームの照射が開始されると、情報処理装置70は、カメラ60で撮影された試料2の画像を取得する(S101)。
【0041】
試料加工装置100では、上述したように、試料2および遮蔽部材30を揺動させながら、遮蔽部材30を介して試料2にイオンビームIBを照射して、試料2を加工する。試料2の加工中には、カメラ60がリアルタイムで試料2を撮影する。
【0042】
図7は、カメラ60で撮影された画像I2Aを模式的に示す図である。以下では、情報処理装置70が図7に示す画像I2Aを取得したものとして説明する。
【0043】
図7に示すように、画像I2Aには、遮蔽部材30に対応する像、試料2に対応する像、遮蔽部材30と試料2との間の隙間から漏れる光、および試料2の下から回り込んだ光が確認できる。
【0044】
情報処理装置70は、取得した画像I2Aにおいて、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光、および試料2の下から回り込んだ光をマスクする(S102)。
【0045】
図8は、画像I2Aに対するマスク処理を説明するための図である。
【0046】
情報処理装置70は、画像I2Aの輝度の分布に基づいて、隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクする。例えば、図8に示すように、画像I2Aの縦方向の輝度プロファイルを複数取得し、当該輝度プロファイルに基づいて隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクする。画像I2Aの縦方向は、図1におけるZ軸に沿った方向である。図8に示す例では、3つの輝度プロファイルを図示しているが、輝度プロファイルを取得する数は特に限定されず、画像I2Aの横方向に並ぶピクセルごとに輝度プロファイルを取得してもよい。
【0047】
隙間をマスクするマスク領域M1の形状は、例えば、長方形である。マスク領域M1は、隙間から漏れる光を完全に覆っている。マスク領域M1の一辺は、試料2の上端に平行である。マスク領域M1の下端は、試料2の上端よりも下に位置している。
【0048】
回り込んだ光をマスクするマスク領域M2の形状は、例えば、長方形である。マスク領域M2は、試料2の下から回り込んだ光を完全に覆っている。マスク領域M2の一辺は、試料2の下端に平行である。マスク領域M2の上端は、試料2の下端よりも上に位置している。
【0049】
例えば、情報処理装置70は、画像I2Aの輝度プロファイルに基づいて試料2の傾斜角度を計算し、マスクする領域を傾斜角度に応じて傾斜させる。図8に示す例では、試料2の傾斜角度は0°であり、マスク領域M1およびマスク領域M2は傾斜していない。
【0050】
隙間から漏れる光をマスクするマスク領域M1および試料2の下から回り込んだ光をマスクするマスク領域M2を形成することによって、画像I2Aから試料2に相当する領域を抽出できる。
【0051】
なお、マスク処理の手法は上記の手法に限定されず、隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクできればよい。
【0052】
次に、情報処理装置70は、画像I2Aにおいてマスク領域M1およびマスク領域M2を除いた非マスク領域の最大輝度Imaxを検出する(S104)。
【0053】
図9は、画像I2Aにおいて非マスク領域M0の輝度を検出する処理を説明するための図である。
【0054】
非マスク領域M0は、画像I2Aにおいて、マスク領域M1およびマスク領域M2を除いた領域であり、試料2に対応している。
【0055】
情報処理装置70は、画像I2Aにおいて、カーソルCで指定された領域内において非マスク領域M0における最大輝度Imaxを検出する。例えば、2重円のカーソルCを用いて、2重円を包含する最小の長方形の領域を、輝度を検出する領域に指定できる。カーソルCによる輝度を検出する領域の指定は、ユーザーが情報処理装置70の操作部を介して、カーソルCを移動させることで行う。なお、カーソルCによる領域の指定を行わずに、画像I2Aの全体において、非マスク領域M0における最大輝度Imaxを検出してもよい。
【0056】
次に、情報処理装置70は、画像I2Aにおいてマスク領域M1の最大輝度Mmaxを検出する(S106)。すなわち、情報処理装置70は、隙間から漏れる光の最大輝度を検出する。
【0057】
次に、情報処理装置70は、最大輝度Imaxおよび最大輝度Mmaxに基づいて、加工の終了を判断する(S108)。
【0058】
情報処理装置70は、例えば、最大輝度Imaxが、最大輝度Mmaxに感度をかけた値よりも大きくなった場合、すなわち、Mmax×感度<Imaxを満たした場合に、加工を終了する(イオンビームIBの照射を停止する)と判断する。感度は、任意に設定可能である。例えば、感度を80%に設定すると、試料2を透過した光の輝度が、隙間から漏れる光の輝度の80%よりも大きくなった場合に、加工を終了すると判断する。
【0059】
情報処理装置70は、Mmax×感度<Imaxを満たしていないと判断した場合(S108のNo)、処理S101に戻って、カメラ60で撮影された画像を取得する。
【0060】
図10は、カメラ60で撮影された画像I2Bを模式的に示す図である。ここでは、情
報処理装置70が、図7に示す画像I2Aの後に、図10に示す画像I2Bを取得したものとして説明する。
【0061】
情報処理装置70は、取得した画像I2Bにおいて、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光、および試料2の下から回り込んだ光をマスクする(S102)。
【0062】
図11は、画像I2Bに対するマスク処理を説明するための図である。
【0063】
情報処理装置70は、画像I2Bの輝度の分布に基づいて、隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクする。例えば、図11に示すように、画像I2Bの縦方向の輝度プロファイルを複数取得して、当該輝度プロファイルに基づいて隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクする。
【0064】
例えば、情報処理装置70は、輝度プロファイルに基づいて試料2の傾斜角度を計算し、マスクする領域を傾斜角度に応じて傾斜させる。例えば、図11に示すように、まず、複数の輝度プロファイルの各々において遮蔽部材30の下端の位置を特定し、特定された各下端の位置に基づいて遮蔽部材30の傾斜角度、すなわち、試料2の傾斜角度を求める。そして、遮蔽部材30の下端の位置に、隙間の大きさと、所定の大きさと、を加えて、マスク領域M1のエッジとする。所定の大きさは、マスク領域M1に試料2の上端を含めるために加えられる。所定の大きさは適宜設定可能である。
【0065】
マスク領域M2についても同様に、複数の輝度プロファイルの各々において試料2の下端の位置を特定し、試料2の下端の位置に、隙間の大きさと、所定の大きさと、を加えて、マスク領域M2のエッジとする。
【0066】
図11に示す例では、輝度プロファイルに基づいて計算された試料2の傾斜角度は10°であり、マスク領域M1およびマスク領域M2は、画像の横方向に対して10°傾いている。このように、情報処理装置70は、画像I2Bの輝度の分布に基づいて隙間から漏れる光および試料2の下から回り込んだ光をマスクすることによって、マスク領域M1およびマスク領域M2を試料2の傾斜角度に応じて傾斜させる。
【0067】
図12は、画像I2Bにおいて非マスク領域M0の輝度を検出する処理を説明するための図である。
【0068】
情報処理装置70は、画像I2Bにおいてマスク領域M1およびマスク領域M2を除いた非マスク領域M0の最大輝度Imaxを検出する(S104)。情報処理装置70は、画像I2Bにおいてマスク領域M1の最大輝度Mmaxを検出する(S106)。
【0069】
情報処理装置70は、最大輝度Imaxおよび最大輝度Mmaxに基づいて、加工の終了を判断する(S108)。
【0070】
このように、情報処理装置70は、Mmax×感度<Imaxを満たすと判断するまで、画像I2を取得する処理S101、マスク処理S102、最大輝度Imaxを検出する処理S104、最大輝度Mmaxを検出する処理S106、加工の終了を判断する処理S108を繰り返す。
【0071】
情報処理装置70は、Mmax×感度<Imaxを満たすと判断した場合(S108のYes)、イオン源10に試料2に対するイオンビームIBの照射を停止させる(S110)。
【0072】
図13は、カメラ60で撮影された画像I2Cを模式的に示す図である。
【0073】
加工が進んで試料2が薄くなると、照明光が試料2を透過する。照明光が試料2を透過すると、画像I2Cにおいて透過光に対応する領域の輝度が高くなる。情報処理装置70は、画像I2Cにおいて最大輝度Imaxを検出することによってこの輝度の上昇を検出して、加工の終了を判断する。
【0074】
なお、試料2が薄くなっても光を透過しない場合には、試料2が薄くなって試料2に微小な孔が開いたときに、この孔を照明光が通過するため、画像I2の輝度が高くなる。したがって、試料2が光を透過しない場合であっても、同様に、加工の終了を判断できる。
【0075】
情報処理装置70は、加工を終了すると判断した場合、イオンビームIBの照射を停止させるための制御信号を生成し、制御回路12に送る。制御回路12は、制御信号に基づいて駆動信号の出力を停止する。これにより、イオン源10においてイオンビームIBの照射が停止される。
【0076】
以上の処理により、試料2の加工を行うことができる。
【0077】
4. 効果
試料加工装置100では、照明光で透過照明された試料2を撮影するカメラ60と、カメラ60で撮影された試料2の画像I2に基づいて加工の終了を判断する情報処理装置70と、を含み、情報処理装置70は、画像I2を取得する処理と、取得した画像I2において試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光をマスクする処理と、画像I2のマスクされたマスク領域M1を除いた非マスク領域M0の輝度を検出する処理と、非マスク領域M0の輝度に基づいて加工の終了を判断する処理と、を行う。
【0078】
このように、試料加工装置100では、情報処理装置70は、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光をマスクするため、当該隙間から漏れる光を、試料2を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。したがって、試料加工装置100では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。
【0079】
試料加工装置100では、隙間をマスクする処理において、画像I2の輝度の分布に基づいて隙間から漏れる光をマスクすることによってマスク領域M1を試料2の傾斜角度に応じて傾斜させる。そのため、試料加工装置100では、試料2を揺動させながら加工を行う場合であっても、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光を、試料2を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。
【0080】
例えば、試料2の傾斜角度に応じてマスク領域M1を傾斜させるのではなく、試料2の傾斜角度に応じて画像I2を回転させることも考えられる。しかしながら、画像I2を回転させる処理は、情報処理装置70における処理の負荷が大きく、処理に時間がかかってしまう。これに対して、マスク処理は、比較的、処理の負荷が小さく、高速な処理が可能である。
【0081】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、画像I2において、試料2を回り込んだ光をマスクする処理を行う。そのため、試料加工装置100では、試料2を回り込んだ光を、試料2を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。
【0082】
試料加工装置100では、試料2を回り込んだ光をマスクする処理において、画像I2の輝度の分布に基づいて回り込んだ光をマスクすることによってマスク領域M2を試料2の傾斜角度に応じて傾斜させる。そのため、試料加工装置100では、試料2を揺動させ
て加工を行う場合であっても、試料2を回り込んだ光を、試料2を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。
【0083】
図14は、カメラ60で撮影された画像I2Dを模式的に示す図である。
【0084】
加工中には試料2は揺動しているため、図14に示すように、カーソルCで指定された輝度を検出する領域に、試料2を回り込んだ光が入ってしまう場合がある。この場合、試料2を回り込んだ光を試料2を透過した光と誤って検出してしまう可能性がある。これに対して、試料加工装置100では、試料2を回り込んだ光をマスクするため、回り込んだ光を、試料2を透過した光と誤って検出してしまう可能性を低減できる。
【0085】
試料加工装置100では、情報処理装置70は、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光の輝度および非マスク領域M0の輝度に基づいて加工の終了を判断する。そのため、試料加工装置100では、加工を終了するタイミングを正確に判断できる。
【0086】
5. 変形例
上記の実施形態では、試料2と遮蔽部材30との間の隙間から漏れる光をマスクする処理において、画像I2の輝度の分布に基づいて隙間から漏れる光をマスクすることによって、マスク領域M1を試料2の傾斜角度に応じて傾斜させたが、マスク処理の手法はこれに限定されない。
【0087】
例えば、試料ステージ20のスイング機構による試料2の揺動動作に基づいて、隙間から漏れる光をマスクする領域を決定してもよい。例えば、情報処理装置70は、スイング機構を動作させるための制御信号を受け付けて、当該制御信号に基づいて隙間から漏れる光をマスクする領域を傾斜させてもよい。これにより、マスク領域M1をスイング機構による試料2の揺動動作に同期させることができる。この結果、マスク領域M1を試料2の傾斜角度に応じて傾斜させることができる。
【0088】
試料2の下から回り込んだ光をマスクする処理についても同様であり、試料ステージ20のスイング機構による試料2の揺動動作に基づいて、回り込んだ光をマスクする領域を決定してもよい。これにより、マスク領域M2を試料2の傾斜角度に応じて傾斜させることができる。
【0089】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0090】
2…試料、10…イオン源、20…試料ステージ、30…遮蔽部材、40…透過照明装置、42…照明調光回路、50…光学系、60…カメラ、70…情報処理装置、80…表示部、100…試料加工装置
図1
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