(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】データ代替システム及びデータ代替方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20241219BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241219BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2021110407
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀典
(72)【発明者】
【氏名】森部 博貴
(72)【発明者】
【氏名】末永 晋也
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-124065(JP,A)
【文献】特開2016-134939(JP,A)
【文献】特開2017-017961(JP,A)
【文献】特開2018-113817(JP,A)
【文献】特開2018-166391(JP,A)
【文献】特開2018-170925(JP,A)
【文献】特開2019-176544(JP,A)
【文献】特開2020-145910(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/06
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要家との間で電力授受のために電力の需給状況を監視して電力の需給予測を行う事前フェーズと、電力授受に基づいて消費される電力の需給実績を監視する事後フェーズとにおいて、コンピュータにより前記複数の需要家との間で電力授受に関するデータを送受信する電力サービスシステムにおけるデータ代替システムであって、
前記コンピュータにより実行される、
前記複数の需要家のそれぞれに設けられた需要家サーバから、前記電力授受に関するデータを受信する通信部と、
受信した前記電力授受に関するデータに含まれる需要家のプロファイル情報に、電力授受に関する所定の設備が含まれている場合、当該需要家を代表需要家として選出し、選出した代表需要家のプロファイル情報及び前記電力授受に関するデータに対応付けられた当該代表需要家の電力需給に係る挙動情報の一致度が所定の閾値以上となる需要家をメンバ需要家として選出し、選出した前記代表需要家および前記メンバ需要家を1つのグループをして形成するグループ形成処理部と、
形成された前記グループにおいて、選出された前記代表需要家について、所定の予測アルゴリズムを用いて電力需給に係る状況を予測し、当該予測の結果を、前記メンバ需要家についての予測の結果とする予測代替処理部と、
前記予測の結果を、前記グループに含まれる需要家メンバの予測結果として代替するデータ代替処理部と、
を有することを特徴とするデータ代替システム。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ代替システムであって、
前記グループ形成処理部は、前記電力授受に関する所定の設備として、HEMSが含まれている場合に、当該HEMSを含むプロファイル情報の需要家を前記代表需要家とする、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項3】
請求項1に記載のデータ代替システムであって、
前記グループ形成処理部は、前記電力授受に関するデータをディスアグリゲーションして得られた、時間的に固定の電力需要を示す固定需要情報と、時間的に変動する電力需要を示す変動需要情報と、気温の変化に連動する電力需要を示す気温変動需要情報と、を含む前記挙動情報のそれぞれの一致度が所定の閾値以上となる需要家を、前記メンバ需要家として選出する、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項4】
請求項3に記載のデータ代替システムであって、
前記グループ形成処理部は、需要家の所有設備と、当該設備の設備仕様と、需要家の家族構成と、需要家の所在地域と、を含む前記プロファイル情報の一致度に基づいて、前記グループの候補となる前記メンバ需要家を選出し、選出した前記グループの候補となる前記メンバ需要家の前記電力授受に関するデータについてディスアグリゲーションする、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項5】
請求項3に記載のデータ代替システムであって、
前記グループ形成処理部は、前記固定需要情報に対応する、需要家のプロファイル項目と、前記変動需要情報に対応する、需要家のプロファイル項目とその他関連情報と、前記気温変動需要情報に対応する、需要家のプロファイル項目とその他関連情報と、を含む前記挙動情報のそれぞれの一致度が所定の閾値以上となる需要家を前記メンバ需要家として選出する、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項6】
請求項1に記載のデータ代替システムであって、
前記データ代替処理部は、前記予測の結果を代替した前記需要家メンバの電力授受に関するデータと、前記需要家メンバの電力授受に関するデータとして本来あるべきデータとの乖離の少なさを示す正確度を算出する、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項7】
請求項6に記載のデータ代替システムであって、
前記データ代替処理部は、前記代表需要家の電力授受に関するデータおよび前記需要家の電力授受に関するデータに含まれるデータ種別が環境に関する情報を示す種別である場合、前記代表需要家のプロファイル情報および前記メンバ需要家のプロファイル情報のそれぞれに含まれる前記代表需要家の住所あるいは需要家サーバの場所を示す所在地域情報の間の距離の大きさに基づいて、前記正確度を算出する、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項8】
請求項6に記載のデータ代替システムであって、
前記データ代替処理部は、前記代表需要家の電力授受に関するデータおよび前記需要家の電力授受に関するデータに含まれるデータ種別が、需要家の行動を示す情報、需要家の設備を示す情報、需要家の電力授受を示す情報のいずれかを示す種別である場合、前記代表需要家と前記メンバ需要家のプロファイル情報との一致度、および前記代表需要家の電力需給に係る挙動情報と前記メンバ需要家の電力需給に係る挙動情報との一致度に基づいて、前記正確度を算出する、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項9】
請求項6に記載のデータ代替システムであって、
前記データ代替処理部は、前記予測の結果を代替した前記需要家メンバごとに、代替した前記電力授受に関するデータに関する情報と前記正確度とを、表示装置に表示する、
ことを特徴とするデータ代替システム。
【請求項10】
複数の需要家との間で電力授受のために電力の需給状況を監視して電力の需給予測を行う事前フェーズと、電力授受に基づいて消費される電力の需給実績を監視する事後フェーズとにおいて、コンピュータにより前記複数の需要家との間で電力授受に関するデータを送受信する電力サービスシステムにおいて行われるデータ代替方法であって、
前記コンピュータの通信部が、前記複数の需要家のそれぞれに設けられた需要家サーバから、前記電力授受に関するデータを受信し、
前記コンピュータのグループ形成処理部が、受信した前記電力授受に関するデータに含まれる需要家のプロファイル情報に、電力授受に関する所定の設備が含まれている場合、当該需要家を代表需要家として選出し、選出した代表需要家のプロファイル情報及び前記電力授受に関するデータに対応付けられた当該代表需要家の電力需給に係る挙動情報の一致度が所定の閾値以上となる需要家をメンバ需要家として選出し、選出した前記代表需要家および前記メンバ需要家を1つのグループをして形成し、
前記コンピュータの予測代替処理部が、形成された前記グループにおいて、選出された前記代表需要家について、所定の予測アルゴリズムを用いて電力需給に係る状況を予測し、当該予測の結果を、前記メンバ需要家についての予測の結果とし、
前記コンピュータのデータ代替処理部が、前記予測の結果を、前記グループに含まれる需要家メンバの予測結果として代替する、
を有することを特徴とするデータ代替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ代替システム及びデータ代替方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力取引及び電力授受に係る監視、データ分析処理、等のための様々な技術がある。例えば、特許文献1では、被制御機器の電力データを収集する収集部と、前記収集部によって収集された前記電力データに欠損箇所がある場合に、前記欠損箇所を補間する補間部と、前記補間部によって補間された前記電力データである補間電力データを出力する出力部と、を具備する収集装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巨多の小規模需要家向けの電力取引及び電力授受と該電力取引の約定を完遂するための需要家の監視及び調整を行う場合、電力授受実施時刻になるまでの監視及び調整を滞りなく完遂させるために、対象とする巨多の需要家に対して個別に実施する状況把握及び予測に係る処理の負荷を軽減することが求められる。また需要家の実績評価、等のために必要なデータを、各々保有するデータの異なる巨多の需要家から収集するための処理の負荷を軽減することも求められる。
【0005】
上記特許文献1に開示された技術では、各々の需要家の状況把握及び予測に係る処理は、対象とする需要家に対して各々のデータを用いて実施することが必要であり、対象とする需要家の数が増える程、状況把握及び予測に係る処理の負荷は高くなってしまう。また当該箇所にて取得可能なデータのみの補間が可能であり、サービスの要求に該当するデータ種別が当該箇所になければデータの取得は不可となる。
【0006】
本発明は、対象とする需要家の数の増加に伴う状況把握及び予測に係る処理の負荷を高めることなく、サービスが要求されたデータを取得することが可能なデータ代替システム、データ代替方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるデータ代替システムは、複数の需要家との間で電力授受のために電力の需給状況を監視して電力の需給予測を行う事前フェーズと、電力授受に基づいて消費される電力の需給実績を監視する事後フェーズとにおいて、コンピュータにより前記複数の需要家との間で電力授受に関するデータを送受信する電力サービスシステムにおけるデータ代替システムであって、前記コンピュータにより実行される、前記複数の需要家のそれぞれに設けられた需要家サーバから、前記電力授受に関するデータを受信する通信部と、受信した前記電力授受に関するデータに含まれる需要家のプロファイル情報に、電力授受に関する所定の設備が含まれている場合、当該需要家を代表需要家として選出し、選出した代表需要家のプロファイル情報及び前記電力授受に関するデータに対応付けられた当該代表需要家の電力需給に係る挙動情報の一致度が所定の閾値以上となる需要家をメンバ需要家として選出し、選出した前記代表需要家および前記メンバ需要家を1つのグループをして形成するグループ形成処理部と、形成された前記グループにおいて、選出された前記代表需要家について、所定の予測アルゴリズムを用いて電力需給に係る状況を予測し、当該予測の結果を、前記メンバ需要家についての予測の結果とする予測代替処理部と、前記予測の結果を、前記グループに含まれるメンバ需要家の予測結果として代替するデータ代替処理部と、を有することを特徴とするデータ代替システムとして構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、対象とする需要家の数の増加に伴う状況把握及び予測に係る処理の負荷を高めることなく、サービスが要求されたデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例におけるデータ代替システムを適用したシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施例を適用する場合の電力取引及び約定監視、電力授受の実施の一例を示す図である。
【
図3】本実施例におけるエネルギープラットフォームサーバ及び需要家サーバのモジュール構成を示す図である。
【
図4A】本実施例によるデータ代替システムにて使用するテーブルの構成を示す図である(需要家グループ情報テーブル)。
【
図4B】本実施例によるデータ代替システムにて使用するテーブルの構成を示す図である(需要家情報テーブル)。
【
図5】本実施例によるデータ代替システムにて、需要家プロファイル及び挙動の一致度に基づく需要家グループ形成、予測代替及びデータ代替を実施するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本実施例によるデータ代替システムにて、需要家プロファイル及び挙動の一致度を算出し、需要家グループ形成を実施するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施例によるデータ代替システムにて、より類似する需要家を選出するための考え方を示す図である。
【
図8】本実施例によるデータ代替システムにて、前記形成された需要家グループにて予測代替を実施するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本実施例によるデータ代替システムにて、前記形成された需要家グループにてデータ代替を実施し、該代替データの正確度を算出するための処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本実施例におけるデータ代替システムを適用したシステムにて提供する代替データをユーザに対して提示するための画面のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
以下の説明では、「データベース」、「テーブル」、「リスト」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」と呼ぶことがある。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いた場合、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0013】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0014】
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ(例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit))によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)および/またはインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit))を含んでいてもよい。
【0015】
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、以下の説明において、2つ以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【実施例1】
【0016】
図1は、本実施例におけるデータ代替システムを適用した電力サービスシステム1000の構成の一例を示す図である。
【0017】
電力サービスシステム1000の主な構成要素は、需要家を管理し、小規模需要家による電力市場取引に係る処理、約定監視のための需要家の電力需給に係る状況の把握及び予測に係る処理を行うデータ代替システムを有するエネルギープラットフォームサーバ101、個々の需要家にて、スマートメータまたはIoT(Internet of Things)センサ等の需要家データを管理する、または需要家設備を管理するHEMS(Home Energy Management System)が稼働する需要家サーバ(102、103、104、105)、地域毎に配置され、地域内の電力授受や需要家の管理を行うAEMS(Area Energy Management System)サーバ(106、107)である。
【0018】
エネルギープラットフォームサーバ101と需要家サーバ(102、103、104、105)とは、ネットワーク108及びネットワーク(109、110)を介して相互接続する。需要家サーバ(102、103、104、105)とAEMSサーバ(106、107)とは、ネットワーク(109、110)を介して相互接続する。ただし需要家サーバ(102、103、104、105)からエネルギープラットフォームサーバ101へのデータ提供はネットワーク108及びネットワーク(109、110)を介した通信により実施する場合だけでなく、ネットワーク108及びネットワーク(109、110)を介さず例えば人手を介してエネルギープラットフォームサーバ101へのデータ格納を行う場合もある。各々の需要家における需要家設備は、電力系統141から電力授受される。
【0019】
エネルギープラットフォームサーバ101の主なハードウェア構成は、記憶装置(メモリ、ハードディスク)111、処理装置(CPU)112、通信装置113からなる。需要家サーバ(102、103、104、105)の主なハードウェア構成は、記憶装置(メモリ、ハードディスク)121、処理装置(CPU)122、通信装置123からなる。AEMSサーバ(106、107)の主なハードウェア構成は、記憶装置(メモリ、ハードディスク)131、処理装置(CPU)132、通信装置133からなる。
【0020】
各サーバや装置に記憶され、あるいは処理に用いられる様々なデータは、CPUが、メモリやハードディスクから読み出して利用することにより実現可能である。また、各サーバや装置が有する各機能部は、CPUがハードディスクに記憶されている所定のプログラムをメモリにロードして実行することにより実現可能である。
【0021】
図2は、本実施例におけるデータ代替システムを適用した電力サービスシステム1000における電力取引及び約定監視、電力授受の実施の一例を示す図である。
【0022】
主な構成要素は、小規模需要家による電力市場取引201に係る処理、約定監視のための需要家の電力需給に係る状況の把握及び予測に係る処理を行うエネルギープラットフォームサーバ101、電力取引及び約定に基づく電力授受を行う需要家1、需要家2に設けられた需要家サーバ(102、103)、上記のために電力託送を行う電力系統141である。
【0023】
事前フェーズにおいて、需要家1、需要家2の需要家サーバ(102、103)は、需要家1、需要家2とエネルギープラットフォームを運営する事業者との間で行われた契約に基づく契約処理を実行し、エネルギープラットフォームサーバ101が電力取引に関するポートフォリオ委託設定を行う。入札期間において、前記需要家1、需要家2の需要家サーバ(102、103)のポートフォリオに基づいて、エネルギープラットフォームサーバ101は需要家1、需要家2の需要家サーバ(102、103)のために入札を代行する代行処理を実行し、該入札による需要及び供給の調整を行う需給マッチングを実施し、電力取引の約定とする。
【0024】
入札終了、約定後、電力授受時刻に達するまで、エネルギープラットフォームサーバ101は約定通りに電力授受できそうかの約定監視を実施する。つまり需要家1、需要家2の需要家サーバ(102、103)からの電力需給に係る状況通知を定期的に受け取り、現状把握するとともに、電力授受時刻における需要家の電力需給に係る状況の予測を実施する。エネルギープラットフォームサーバ101は、前記結果より約定達成困難と判断すれば、需給マッチングを再実施する。
【0025】
前記需給マッチングを再実施した後、当日の電力授受時刻に達すると、電力系統141にて電力託送され、需要家サーバ(102、103)を保持する需要家1、需要家2にて電力消費が実施される。
【0026】
また事後フェーズにおいて、エネルギープラットフォームサーバ101は、需要家1、需要家2の需要家サーバ(102、103)から取得していた需要家の電力需給に係る状況に係るデータを用いて、需要家の電力取引の実績評価を実施する。エネルギープラットフォームサーバ101は、該評価結果に基づき、約定がより適切になるように、需要家1、需要家2の需要家サーバ(102、103)による入札オーダ設定変更、等を実施し、以降の取引のための入札を継続する。
【0027】
図3は、本実施例におけるエネルギープラットフォームサーバ及び需要家サーバの機能部となるモジュール構成を示す図である。
【0028】
小規模需要家による電力市場取引201に係る処理、約定監視のための需要家の電力需給に係る状況の把握及び予測に係る処理を実行し、需要家データを管理するエネルギープラットフォームミドルウェア301が、エネルギープラットフォームサーバ101に導入される。
【0029】
エネルギープラットフォームミドルウェア301の主な構成要素は、各々の需要家から送信される需要家状況データを収集する需要家状況データ収集部311、需要家グループの形成及び管理に係る処理を実施し、需要家グループ情報テーブル331及び需要家情報テーブル332を管理する需要家グループ形成・管理部312、需要家状況データを基に需要家の現在の電力需給に係る状況を解析する需要家状況解析部313、需要家状況データ等を基に電力授受時刻に至るまでの電力需給の変動及び状況の予測に係る処理の実施及び需要家グループでの予測結果代替に係る処理を実施する需要家変動予測部314、需要家グループでのデータ代替に係る処理を実施するデータ代替処理部315、契約に基づく電力取引のためのポートフォリオを管理する需要家ポートフォリオ管理部316、電力取引のための電力需給マッチングに係る処理を実施する電力需給マッチング部317、前記需要家による電力市場取引を管理し、電力取引約定情報333を管理する電力市場取引管理部318、ネットワーク108及びネットワーク(109、110)を介して需要家サーバ(102、103、104、105)またはAEMSサーバ(106、107)との間で通信を行うデータ通信部319である。
【0030】
例えば、
図2に示した事前フェーズでは、需要家ポートフォリオ管理部316は、
図2に示した契約受付やポートフォリオ委託設定に関する処理を行い、電力市場取引管理部318は、上記入札を代行する代行処理を行い、電力需給マッチング部317は、需給マッチングに関する処理を行う。また、例えば、上記事前フェーズにおいて、需要家状況解析部313は、上記約定監視に関する処理を行い、需要家変動予測部314は、上記需要家の電力需給に係る状況の予測に関する処理を行う。さらに、
図2に示した事後フェーズでは、需要家ポートフォリオ管理部316は、上記電力取引の実績評価や入札オーダ設定変更に関する処理を行う。
【0031】
需要家データの取得、管理、エネルギープラットフォームサーバ101への送信に係る処理を実行する需要家データ管理ミドルウェア302が、需要家サーバ(102、103、104、105)に導入される。また需要家サーバ(102、103、104、105)の中には、需要家設備を管理するHEMS303が導入されているものもある。HEMSは、一般に、需要家が消費するエネルギー(例えば、電力エネルギー)を節約し、需要家の設備を適切に制御するための管理システムである。本実施例ではHEMSを例示しているが、他の同様の機能を有したシステムについても同様に適用してよい。
【0032】
需要家データ管理ミドルウェア302の主な構成要素は、需要家宅内におけるスマートメータデータ、各種IoTセンサデータまたはHEMSの管理するデータを取得する需要家データ取得部321、需要家データプロファイル327及び需要家プロファイル328を管理するプロファイル管理部322、取得した需要家データを蓄積し、需要家データ326を管理する需要家データ管理部323、エネルギープラットフォームサーバ101に対する需要家データの提供に係る処理を実施するデータ提供部324、ネットワーク108及びネットワーク(109、110)を介してエネルギープラットフォームサーバ101またはAEMSサーバ(106、107)との間で通信を行うデータ通信部325である。
【0033】
例えば、
図2に示した事前フェーズおよび事後フェーズでは、プロファイル管理部322は、上記契約処理を行い、データ提供部324は、上記電力需給に係る状況通知を行う。
【0034】
図4A、4Bは、本実施例におけるデータ代替システムにて使用するテーブルの構成を示す図である。
【0035】
主な構成要素は、エネルギープラットフォームサーバ101にて管理する、需要家グループに関する情報を格納する需要家グループ情報テーブル331(
図4A)と、需要家に関する情報を格納する需要家情報テーブル332(
図4B)である。
【0036】
需要家グループ情報テーブル331の主な構成要素は、識別情報411、代表需要家412、メンバ需要家413、メンバ数414、ステータス415、有効期限416、更新日時417である。
【0037】
識別情報411には、需要家グループを識別するための情報が格納される。代表需要家412には、識別情報411により特定される需要家グループの代表需要家に関する情報が格納される。メンバ需要家413には、識別情報411により特定される需要家グループのメンバである1つ以上の需要家に関する情報が格納される。メンバ数414には、識別情報411により特定される需要家グループのメンバ需要家の数に関する情報が格納される。ステータス415には、識別情報411により特定される需要家グループのステータスに関する情報が格納される。需要家グループのステータスとは、例えば“初期構築中”、“稼働中”、“休止中”、等の、識別情報411により特定される需要家グループの稼動状態に関する情報である。有効期限416には、識別情報411により特定される需要家グループの有効期限に関する情報が格納される。更新日時417には、411~416のレコードが最後に更新された日時が格納される。
【0038】
需要家情報テーブル332の主な構成要素は、識別情報421、グループ422、役割423、プロファイル424、固定需要425、変動需要426、気温感応需要427、予測結果428、データ種別429、データ名称430、データ値431、正確度(環境データ)432、正確度(他データ)433、データ取得時刻434、更新日時435である。
【0039】
識別情報421には、需要家を識別するための情報が格納される。グループ422には、識別情報421により特定される需要家の所属する需要家グループに関する情報が格納される。
役割423には、識別情報421により特定される需要家の、グループ422により特定される需要家グループにおける役割に関する情報が格納される。役割とは、例えば“代表”、“メンバ”である。プロファイル424には、識別情報421により特定される需要家のプロファイルに関する情報もしくは該情報へのポインタ情報(例えば、
図7)が格納される。固定需要425には、識別情報421により特定される需要家の固定需要に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。変動需要426には、識別情報421により特定される需要家の変動需要に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。気温感応需要427には、識別情報421により特定される需要家の気温感応需要に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。
【0040】
予測結果428には、識別情報421により特定される需要家の予測結果に関する情報が格納される。識別情報421により特定される需要家が、グループ422により特定される需要家グループのメンバである場合は、該需要家グループの代表需要家の予測結果情報が代替格納される。データ種別429には、識別情報421により特定される需要家のデータのデータ種別に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。データ種別としては、例えば“環境データ”、“ヒト・行動データ”、“設備データ”、“電力データ”が設定される。データ名称430には、識別情報421により特定される需要家のデータの名称に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。データ値431には、識別情報421により特定される需要家のデータの値に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。
【0041】
より具体的には、当該データ種別には、データ種別429を識別するための元となるデータに、環境を示す情報(例えば、気温、湿度、降水量、等の気象情報)が含まれていれば“環境データ”が設定される。また、データ種別429を識別するための元となるデータに、需要家の行動を示す情報(例えば、需要家のものとして登録されたスマートフォンの移動履歴)が含まれていれば“ヒト・行動データ”が設定される。また、データ種別429を識別するための元となるデータに、需要家の設備を示す情報(例えば、需要家のものとして登録されたHEMSに関する情報)が含まれていれば“設備データ”が設定される。また、データ種別429を識別するための元となるデータに、需要家の電力授受を示す情報(例えば、需要家による電力消費量に関する情報)が含まれていれば“設備データ”が設定される。
【0042】
識別情報421により特定される需要家が、グループ422により特定される需要家グループのメンバである場合は、前記データ種別429、データ名称430、データ値431には、該需要家グループの代表需要家のデータに関する情報が代替格納される。また、データ値431には、上述したように、データ種別429を識別するための元となるデータ(例えば、データ値431に温度を示す情報が含まれていれば、温度の単位である「℃」)や、当該元となるデータで表される実際の計測値(例えば、30℃のうちの値「30」)、さらには当該データが計測されたときの時刻である取得時刻(例えば、2021/03/31 12:00:00)が含まれる。
【0043】
正確度(環境データ)432には、データ種別429に格納される情報に“環境データ”が含まれる場合に、データ値431に格納される環境データの正確度に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。正確度(他データ)433には、データ種別429に格納される情報に“ヒト・行動データ”、“設備データ”、“電力データ”が含まれる場合に、データ値431に格納されるヒト・行動データ、設備データ、電力データの正確度に関する情報もしくは該情報へのポインタ情報が格納される。データ取得時刻434には、データ種別429、データ名称430、データ値431に格納する情報を該当需要家より取得した日時が格納される。更新日時435には、421~434のレコードが最後に更新された日時が格納される。
【0044】
図5は、本実施例におけるデータ代替システムにて、需要家プロファイル及び挙動の一致度に基づく需要家グループ形成、予測代替及びデータ代替を実施するための処理の流れを示すフローチャートである。以下の処理は、あるタイミング(例えば、日1回午前8時)で定期的に行われる。
【0045】
501において、エネルギープラットフォームサーバ101は、各々の需要家の需要家サーバ(102、103、104、105)から一定の頻度で送信されてくる需要家データ326を受信する。
【0046】
502において、エネルギープラットフォームサーバ101は、グループの新規形成もしくは更新が必要であると判定した場合(502;YES)、503において、グループ形成処理を実施する。グループ形成処理の詳細は
図6にて示す。例えば、ステータス415が“初期構築中”の場合や、新たな需要家情報
テーブル332の識別情報421が追加された場合(すなわち新たな需要家が需要家グループのメンバとして加わった場合)などに、グループ形成処理を行う。
【0047】
502において、エネルギープラットフォームサーバ101は、グループの新規形成もしくは更新が必要では無いと判定した場合(502;NO)、504以降の処理を実施する。エネルギープラットフォームサーバ101は、504において、予測代替処理を実施する。予測代替処理の詳細は
図8にて示す。エネルギープラットフォームサーバ101は、505において、データ代替処理を実施する。データ代替処理の詳細は
図9にて示す。
【0048】
エネルギープラットフォームサーバ101は、506において、全てのグループに対して実施終了していないと判定した場合(506;NO)、504、505の処理を繰り返す。506において、エネルギープラットフォームサーバ101は、全てのグループに対して実施終了したと判定した場合(506;YES)、507において、電力授受実施時刻が経過したか否かを判定する。エ
ネルギープラットフォームサーバ101は、電力授受実施時刻が経過していないと判定した場合(507;NO)、501~506の処理を繰り返す。507において、エネルギープラットフォームサーバ101は、電力授受実施時刻が経過した場合(507;YES)、本処理を終了する。電力授受実施時刻が経過した場合とは、例えば、
図2に示した当日の「電力授受」の時刻が経過した場合である。
【0049】
なお前記グループは、需要家からのデータを受信する度に新規形成するものではなく、一定期間は維持しておくものとする。また所定の条件を満たす場合(形成してから一定時間が経過、時間帯が変化、加入・稼働しているメンバの数が減少、等)には、更新または削除するものとする。
【0050】
図6は、本実施例におけるデータ代替システムにて、需要家プロファイル及び挙動の一致度を算出し、需要家グループ形成を実施するための処理の流れを示すフローチャートである。
【0051】
601において、エネルギープラットフォームサーバ101は、エネルギープラットフォームサーバ101にて管理する需要家(102、103、104、105)の中から、HEMS(Home Energy Management System)を有する1つ以上の需要家を代表需要家として選出する。HEMSを有する需要家であるか否かは、例えば、
図4Bに示したプロファイル424に、HEMS303が設備として記載されているか否かを判定し、当該設備が記載されていると判定した場合、代表需要家として選出すればよい。
【0052】
602において、エネルギープラットフォームサーバ101は、プロファイルを照合して、該代表需要家との一致度が所定の閾値以上の需要家を、該代表需要家のグループのメンバ候補に選出する。例えば、
図7に示す関連需要家プロファイル項目702(後述)の所有設備および設備仕様として記載されている内容や項目数が一定程度類似している場合、当該需要家をメンバ候補として選出すればよい。
【0053】
603において、エネルギープラットフォームサーバ101は、該代表需要家から取得したスマートメータデータのディスアグリゲーションを実施し、該代表需要家の固定需要曲線、変動需要曲線、気温感応需要曲線を算出する。スマートメータデータのディスアグリゲーション方法については、従来から知られている様々な技術を用いてよい。
【0054】
604において、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記メンバ候補需要家から取得したスマートメータデータのディスアグリゲーションを実施し、該メンバ候補需要家の固定需要曲線、変動需要曲線、気温感応需要曲線を算出する。スマートメータデータのディスアグリゲーション方法については、603の場合と同様、従来から知られている様々な技術を用いてよい。
【0055】
605において、エネルギープラットフォームサーバ101は、603、604にて算出した代表需要家及びメンバ候補需要家の固定需要曲線を照合し、一致度を算出する。ここで一致度は、例えば、ある一定の時間幅における曲線の類似度が、ある閾値以上近似している場合、両者は一致していると算出することができる。
【0056】
606において、エネルギープラットフォームサーバ101は、代表需要家及びメンバ候補需要家の、
図7にて説明する固定需要に関連するプロファイルの項目について照合し、一致度を算出する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、後述するように、
図7に示す関連需要家プロファイル項目702のうち、需要家挙動701のうち固定需要曲線711に対応する関連需要家プロファイル項目702の内容や項目数の一致度を算出する。より具体的には、例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、関連需要家プロファイル項目702に含まれる項目のうち、所有設備として「冷蔵庫」、「IHクッキングヒータ」、「給湯器」といった需要家の毎日同時刻に発生する時間的に固定の電力需要に係る設備(例えば、台所等の設備)が一致する割合から、両者のプロファイル項目の一致度を算出すればよい。ここでは一例として台所等の設備を挙げたが、需要家に設けられた他の様々な固定需要に関連する設備についても同様に適用すればよい。
【0057】
607において、エネルギープラットフォームサーバ101は、605、606にて算出した一致度を積算する。
【0058】
608において、エネルギープラットフォームサーバ101は、603、604にて算出した代表需要家及びメンバ候補需要家の変動需要曲線を照合し、一致度を算出する。一致度の算出については、605の場合と同様、ある一定の時間幅における曲線の類似度が、ある閾値以上近似している場合、両者は一致していると算出すればよい。
【0059】
609において、代表需要家及びメンバ候補需要家の、
図7にて説明する変動需要に関連するプロファイルの項目について照合し、一致度を算出する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、後述するように、
図7に示す関連需要家プロファイル項目702のうち、需要家挙動701のうち変動需要曲線712に対応する関連需要家プロファイル項目702の内容や項目数の一致度を算出する。より具体的には、例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、関連需要家プロファイル項目702に含まれる項目のうち、所有設備として「照明」、「TV(テレビ)」、「ステレオ」といったその時々の需要家の都合で変化する時間的に変動する電力需要に係る設備(例えば、リビングの設備)が一致する割合から、両者のプロファイル項目の一致度を算出すればよい。さらには、需要家の構成人数が多いほど、これらの所有設備の使用頻度は高くなると考えられるため、需要家の家族構成(例えば、夫婦)の一致度を算出してもよい。ここでは一例としてリビングの設備を挙げたが、需要家に設けられた他の様々な変動需要に関連する設備についても同様に適用すればよい。
【0060】
610において、代表需要家及びメンバ候補需要家の、
図7にて説明する変動需要に関連するその他関連情報の項目について照合し、一致度を算出する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、後述するように、
図7に示す関連需要家プロファイル項目702に対応するその他関連情報703のうち、需要家挙動701のうち変動需要曲線712に対応するその他関連情報703の内容や項目数の一致度を算出する。より具体的には、例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、その他関連情報703に含まれる項目のうち、気象情報として「照度」と環境条件が一致する割合から、両者のその他関連情報の項目の一致度を算出すればよい。ここでは一例として環境条件を挙げたが、需要家の行動や状態に起因する他の様々な関連情報についても同様に適用すればよい。
【0061】
611において、エネルギープラットフォームサーバ101は、608~610にて算出した一致度を積算する。
【0062】
612において、エネルギープラットフォームサーバ101は、603、604にて算出した代表需要家及びメンバ候補需要家の気温感応需要曲線を照合し、一致度を算出する。一致度の算出については、605や608の場合と同様、ある一定の時間幅における曲線の類似度が、ある閾値以上近似している場合、両者は一致していると算出すればよい。
【0063】
613において、エネルギープラットフォームサーバ101は、代表需要家及びメンバ候補需要家の、
図7にて説明する気温感応需要に関連するプロファイルの項目について照合し、一致度を算出する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、後述するように、
図7に示す関連需要家プロファイル項目702のうち、需要家挙動701のうち気温感応需要曲線713に対応する関連需要家プロファイル項目702の内容や項目数の一致度を算出する。より具体的には、例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、関連需要家プロファイル項目702に含まれる項目のうち、所有設備として「エアコン」、「ファンヒータ」、「床暖房」といった気温の変化に連動する電力需要に係る設備が一致する割合から、両者のプロファイル項目の一致度を算出すればよい。ここでは一例として設備を挙げたが、気温の変化に起因する他の様々な関連情報についても同様に適用すればよい。
【0064】
614において、代表需要家及びメンバ候補需要家の、
図7にて説明する気温感応需要に関連するその他関連情報の項目について照合し、一致度を算出する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、後述するように、
図7に示す関連需要家プロファイル項目702に対応するその他関連情報703のうち、需要家挙動701のうち気温感応需要曲線713に対応するその他関連情報703の内容や項目数の一致度を算出する。より具体的には、例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、その他関連情報703に含まれる項目のうち、気象情報として「気温」、「湿度」といった情報が一致する割合から、両者のその他関連情報の項目の一致度を算出すればよい。ここでは一例として環境条件を挙げたが、需要家の行動や状態に起因する他の様々な関連情報についても同様に適用すればよい。
【0065】
615において、エネルギープラットフォームサーバ101は、612~614にて算出した一致度を積算する。
【0066】
616において、エネルギープラットフォームサーバ101は、606、611、616にて積算した一致度を和算する。
【0067】
617において、エネルギープラットフォームサーバ101は、616にて和算した一致度が所定の閾値以上であると判定した場合(617;YES)、618において、当該メンバ候補需要家を
該代表需要家のグループにメンバとして追加する。617において、616にて和算した一致度が所定の閾値以上では無い場合(617;NO)、619以降の処理を実施する。
【0068】
619において、エネルギープラットフォームサーバ101は、全てのメンバ候補需要家に対して終了していない場合(619;NO)、604~618の処理を繰り返す。619において、全てのメンバ候補需要家に対して終了した場合(619;YES)、620に進む。
【0069】
620において、全ての代表需要家に対して終了していない場合(620;NO)、エネルギープラットフォームサーバ101は、602~619の処理を繰り返す。620において、全ての代表需要家に対して終了した場合(620;YES)、エネルギープラットフォームサーバ101は、本処
理を終了する。
【0070】
図7は、本実施例におけるデータ代替システムにて、より類似する需要家を選出するための考え方を示す図である。
図7は、
図4Bに示したプロファイル424の一例を示しているといえる。
図6の605~615の処理は該考え方に基づく。
【0071】
より類似する需要家を選出するために、エネルギープラットフォームサーバ101は、需要家の挙動を示す需要家挙動701及び該挙動に関係の深い項目である関連需要家プロファイル項目702と該需要家を取巻くその他関連情報703の全てにて一致度の高いものを選出する。
【0072】
例えば需要家挙動701が固定需要曲線711である場合を考える。固定需要は冷蔵庫等の毎日同時刻に発生する時間的に固定の需要であるため、関連需要家プロファイル項目702は、所有設備として特に冷蔵庫等の有無、該冷蔵庫等の仕様(例えば、冷蔵室や冷凍室の容量の大きさ)を例示している。
【0073】
また例えば需要家挙動701が変動需要曲線712である場合、変動需要は照明等、その時々の需要家の都合によって変化する時間的に変動する需要であるため、関連需要家プロファイル項目702は、所有設備として特に照明、TV等の有無、該照明、TV等の仕様を例示して
いる。またその他関連情報703は、照度等の気象情報や同時間帯の履歴情報である。同時間帯の履歴情報とは、例えば、ある1週間の期間でみた場合における17:00-18:00の1時間といった同じ時間帯における設備の使用履歴である。
【0074】
需要家挙動701が気温感応需要曲線713である場合、気温感応需要は気温の変化に連動する需要であるため、関連需要家プロファイル項目702は、所有設備として特にエアコン等の有無、該エアコン等の仕様、需要家の所在地域情報を例示している。また関連の深いその他関連情報703として、気温、湿度等の気象情報を例示している。
【0075】
図8は、本実施例におけるデータ代替システムにて、前記形成された需要家グループにて予測代替を実施するための処理の流れを示すフローチャートである。
【0076】
801において、エネルギープラットフォームサーバ101は、当該グループの代表需要家の需要家サーバから収集した需要家データ326を読み込む。
【0077】
802において、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記データを用いて、当該グループの代表需要家に関する予測処理を実施する。ここで該予測処理は、従来から知られている、目的に応じて適切な予測アルゴリズムを用いて実施する。また、予測処理とは、例えば、
図2に示した事前フェーズの「予測」である。
【0078】
803において、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記予測処理結果を、グループのメンバの各々の需要家に割当てて、テーブルの各需要家の該当領域に格納する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、802において所定の予測アルゴリズムを用いてある需要家が使用する電力需給に係る状況として100キロワット使用する予測が得られると、その値を、それぞれの需要家の需要家情報テーブル332(
図4B)の予測結果428に記録する。
【0079】
804において、エネルギープラットフォームサーバ101は、503で形成されたグループの全てのメンバの需要家に対して実施を終了していないと判定した場合(804;NO)、803の処理を繰り返す。804において、グループの全てのメンバの需要家に対して実施を終了したと判定した場合(804;YES)、本処理を終了する。
【0080】
図9は、本実施例におけるデータ代替システムにて、前記形成された需要家グループにてデータ代替を実施し、該代替データの正確度を算出するための処理の流れを示すフローチャートである。ここで正確度とは、本来あるべきデータからの乖離の少なさと定義する。例えば、代替前の需要家データとして本来あるべきデータと代替後の需要家データとの間の乖離が小さいほど、正確度は高いと定義する。
【0081】
901において、エネルギープラットフォームサーバ101は、当該グループの代表需要家の需要家サーバから収集した需要家データ326を読み込む。
【0082】
902において、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記需要家データ326を、グループのメンバの各々の需要家の需要家データ326の各項目に割当てて、テーブルの各需要家の該当領域に格納する。
【0083】
903において、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記割当てたデータのデータ種別が“環境データ”であるか否かを判定する。
【0084】
903において、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記割当てたデータの種別が“環境データ”であると判定した場合、904において、代表需要家及び当該メンバの需要家のプロファイルから当該需要家の住所あるいは需要家サーバの場所を示す所在地域情報を参照する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、
図4Bに示した需要家情報テーブルのデータ種別429が“環境データ”であり、プロファイル424に含まれる所在地域を参照する。
【0085】
905において、エネルギープラットフォームサーバ101は、904にて参照した代表需要家及びメンバ需要家の所在地域情報から、両者の距離を算出し、該距離の大きさから正確度を算出する(距離が小さい程、正確度を高く設定する)。
【0086】
903において、エネルギープラットフォームサーバ101は、エネルギープラットフォームサーバ101は、前記割当てたデータの種別が“ヒト・行動データ”、“設備データ”、“電力データ”である場合、906において、代表需要家及び当該メンバの需要家のプロファイル及び挙動情報を参照する。例えば、エネルギープラットフォームサーバ101は、
図4Bに示した需要家情報テーブルのプロファイル424、および挙動情報として固定需要425、変動需要426、気温感応需要427を参照する。
【0087】
907において、エネルギープラットフォームサーバ101は、906にて参照した代表需要家及びメンバ需要家のプロファイル情報の一致度を算出する。当該一致度の算出は、例えば、
図6の606、609、613で行われた処理と同様に行えば良い。
【0088】
908において、エネルギープラットフォームサーバ101は、906にて参照した代表需要家及びメンバ需要家の挙動情報のうち、固定需要曲線の一致度を算出する。当該一致度の算出は、例えば、
図6の605で行われた処理と同様に行えば良い。
【0089】
909において、エネルギープラットフォームサーバ101は、906にて参照した代表需要家及びメンバ需要家の挙動情報のうち、変動需要曲線の一致度を算出する。当該一致度の算出は、例えば、
図6の608で行われた処理と同様に行えば良い。
【0090】
910において、エネルギープラットフォームサーバ101は、906にて参照した代表需要家及びメンバ需要家の挙動情報のうち、気温感応需要曲線の一致度を算出する。当該一致度の算出は、例えば、
図6の612で行われた処理と同様に行えば良い。
【0091】
911において、エネルギープラットフォームサーバ101は、907~910にて算出した一致度を積算することで、正確度を算出する。
【0092】
912において、エネルギープラットフォームサーバ101は、905または911にて算出した正確度を、当該メンバ需要家のテーブルの該当領域である正確度(環境データ)432、正確度(他データ)433に格納する。
【0093】
913において、エネルギープラットフォームサーバ101は、当該メンバ需要家に割当てられた全データに対して終了していないと判定した場合(913;NO)、903~912の処理を繰り
返す。エネルギープラットフォームサーバ101は、913において、当該メンバ需要家に割当てられた全データに対して終了したと判定か否かを判定する。
【0094】
エネルギープラットフォームサーバ101は、913において、当該メンバ需要家に割当てられた全データに対して終了したと判定した場合(913;YES)、914において、当該グループの全てのメンバ需要家に対して処理を終了しているか否かを判定する。
【0095】
エネルギープラットフォームサーバ101は、当該グループの全てのメンバ需要家に対して処理を終了していないと判定した場合(914;NO)、902~913の処理を繰り返す。
【0096】
エネルギープラットフォームサーバ101は、914において、当該グループの全てのメンバ需要家に対して処理を終了したと判定した場合(914;YES)、本処理を終了する。
【0097】
図10は、本実施例におけるデータ代替システムにて提供する代替データをユーザに対して提示するための画面のイメージを示す図である。
【0098】
画面1001には、例えば表形式一覧1011にて、需要家毎の代替されたデータの種別、データ、正確度、取得時刻、等に関する情報が表示される。例えば、
図10では、識別情報421で識別される需要家については、データ種別429であらわされる「環境データ」として分類されるデータ名称430「気温」に関するデータのデータ値431が代替され、正確度432は、「0.3」であったことを示している。また、当該データの取得時刻434は、「2021/03/31 12:00:00」であったことを示している。当該画面は、データ代替処理部315が、本システムに接続されたディスプレイ等の表示装置に出力する。
【0099】
なお該当する情報が無い場合は空白箇所を含めて表示する。上記表形式一覧1011の各項目は、例えば、
図4Bに示した需要家情報テーブルの「需要家」項目については識別情報421、「データ種別」、および「データ」項目についてはデータ種別429、およびデータ名称430とデータ値431、「取得時刻」項目についてはデータ取得時刻434をそれぞれ読み出して表示すればよい。
【0100】
このように、本実施例では、複数の需要家との間で電力授受のために電力の需給状況を監視して電力の需給予測を行う事前フェーズ(例えば、
図2に示した「事前」)と、電力授受に基づいて消費される電力の需給実績を監視する事後フェーズ(例えば、
図2に示した「事後」)とにおいて、コンピュータにより前記複数の需要家との間で電力授受に関するデータを送受信する電力サービスシステム(例えば、電力サービスシステム1000)におけるデータ代替システム(例えば、エネルギープラットフォームサーバ101)であって、上記コンピュータ(例えば、エネルギープラットフォームサーバ101)により実行される、上記複数の需要家のそれぞれに設けられた需要家サーバ(例えば、需要家サーバ102、103、104、105)から、上記電力授受に関するデータを受信する通信部(例えば、データ通信部319)と、受信した上記電力授受に関するデータ(例えば、需要家グループ情報
テーブル331及び需要家情報
テーブル332)に含まれる需要家のプロファイル情報(例えば、プロファイル424、関連需要家プロファイル項目702)に、電力授受に関する所定の設備が含まれている場合、当該需要家を代表需要家として選出し、選出した代表需要家のプロファイル情報及び上記電力授受に関するデータに対応付けられた当該代表需要家の電力需給に係る挙動情報(例えば、固定需要425、変動需要426、気温感応需要427、需要家挙動701)の一致度が所定の閾値以上となる需要家をメンバ需要家として選出し、選出した上記代表需要家および上記メンバ需要家を1つのグループをして形成するグループ形成処理部(例えば、需要家グループ形成・管理部312)と、形成された上記グループにおいて、選出された上記代表需要家について、所定の予測アルゴリズムを用いて電力需給に係る状況を予測し、当該予測の結果を、上記メンバ需要家についての予測の結果とする予測代替処理部(例えば、データ代替処理部315)と、上記予測の結果を、上記グループに含まれる
メンバ需要家の予測結果として代替するデータ代替処理部(例えば、データ代替処理部315)と、を有する。したがって、対象とする需要家の数の増加に伴う状況把握及び予測に係る処理の負荷を高めることなく、サービスが要求されたデータを取得することができる。
【0101】
例えば、対象とする巨多の需要家の状況把握及び予測に係る処理負荷を軽減するために、実時間にてプロファイル情報及び挙動が類似する1つ以上の需要家を選出してグループを形成し、該グループにて処理結果及び収集したデータを代替することで、電力授受実施時刻になるまでの監視及び調整を滞りなく完遂させることができる。その結果、巨多の小規模需要家を対象とした電力市場取引及び約定結果に基づく電力授受が、需要家の数や需要家側の変動に関わらず、滞りなく実施できる。また需要家毎の保有データや状況の違いを意識せずとも、需要家の評価やその他の電力サービスに必要なデータを収集できる。
【0102】
また、上記グループ形成処理部は、上記電力授受に関する所定の設備として、HEMSが含まれている場合に、当該HEMSを含むプロファイル情報の需要家を上記代表需要家とする。これにより、HEMSを有した需要家を代表需要家として選出することができる。
【0103】
また、上記グループ形成処理部は、上記電力授受に関するデータをディスアグリゲーションして得られた、毎日同時刻に発生する時間的に固定の電力需要を示す固定需要情報(例えば、固定需要曲線711)と、その時々の需要家の都合で変化する時間的に変動する電力需要を示す変動需要情報(例えば、変動需要曲線712)と、気温の変化に連動する電力需要を示す気温変動需要情報(例えば、気温感応需要曲線713)と、を含む上記挙動情報のそれぞれの一致度が所定の閾値以上となる需要家を、上記メンバ需要家として選出する。したがって、固定需要、変動需要、気温感応需要といった様々な種類の需要家挙動を考慮して、上記メンバ需要家を選出することができる。
【0104】
また、上記グループ形成処理部は、需要家の所有設備(例えば、冷蔵庫)と、当該設備の設備仕様(例えば、冷蔵庫の冷蔵室や冷凍室の容量の大きさ)と、需要家の家族構成(例えば、夫婦)と、需要家の所在地域(例えば、需要家の住所や需要家サーバの設置場所)と、を含む上記プロファイル情報の一致度に基づいて、上記グループの候補となる上記メンバ需要家を選出し、選出した上記グループの候補となる上記メンバ需要家の上記電力授受に関するデータについてディスアグリゲーションする。したがって、需要家の周辺環境を含む詳細なプロファイルの内容を考慮してメンバ需要家を選出したうえで、ディスアグリゲーションすることができる。
【0105】
また、上記グループ形成処理部は、上記固定需要情報に対応する、関連需要家プロファイル項目(例えば、所有設備として「冷蔵庫」)と、上記変動需要情報に対応する、関連需要家プロファイル項目(例えば、所有設備として「照明」、「TV」)及びその他関連情報(例えば、気象情報として「照度」)と、上記気温変動需要情報に対応する、関連需要家プロファイル項目(例えば、所有設備として「エアコン」、「ファンヒータ」、「床暖房」)及びその他関連情報(例えば、気象情報として「気温」)と、を含む上記挙動情報のそれぞれの一致度が所定の閾値以上となる需要家を上記メンバ需要家として選出する。したがって、需要家の様々な需要家プロファイル項目及びその他関連情報を考慮して、前記需要家を選出することができる。
【0106】
また、上記データ代替処理部は、上記予測の結果を代替した上記メンバ需要家の電力授受に関するデータと、上記メンバ需要家の電力授受に関するデータとして本来あるべきデータとの乖離の少なさを示す正確度(例えば、正確度(環境データ)432、正確度(他データ)433)を算出する。したがって、代表需要家よりデータを代替されたメンバ需要家の本来あるべきデータとの乖離度を把握することができる。
【0107】
また、上記データ代替処理部は、上記代表需要家の電力授受に関するデータおよび上記需要家の電力授受に関するデータに含まれるデータ種別が環境に関する情報を示す種別(例えば、データ種別429であらわされる「環境データ」)である場合、上記代表需要家のプロファイル情報および上記メンバ需要家のプロファイル情報のそれぞれに含まれる上記代表需要家の住所あるいは需要家サーバの場所を示す所在地域情報の間の距離の大きさに基づいて、上記正確度を算出する。したがって、上記代表需要家と上記メンバ需要家との間の居住地域や設置場所を考慮して上記正確度を算出することができる。
【0108】
また、上記データ代替処理部は、上記代表需要家の電力授受に関するデータおよび上記需要家の電力授受に関するデータに含まれるデータ種別が、需要家の行動を示す情報(例えば、データ種別429であらわされる「ヒト・行動データ」)、需要家の設備を示す情報(例えば、データ種別429であらわされる「設備データ」)、需要家の電力授受を示す情報(例えば、データ種別429であらわされる「電力データ」)のいずれかを示す種別である場合、上記代表需要家と上記メンバ需要家とのプロファイル情報の一致度、および上記代表需要家の電力需給に係る挙動情報と上記メンバ需要家の電力需給に係る挙動情報との一致度に基づいて、上記正確度を算出する。したがって、需要家の行動、需要家が所持する設備、需要家の電力授受状況を考慮して上記正確度を算出することができる。
【0109】
また、上記データ代替処理部は、上記予測の結果を代替した上記
メンバ需要家ごとに、代替した上記電力授受に関するデータに関する情報と上記正確度とを、表示装置(例えば、
図10に示したような、本システムに接続されたディスプレイ等の表示装置)に表示する。したがって、本システムの管理者は、どのようなデータ種別のデータについて本来あるべきデータとの間でどの程度乖離しているのかを、メンバ需要家ごとに一見して把握することができる。
【符号の説明】
【0110】
1000 電力サービスシステム
101 エネルギープラットフォームサーバ
102、103、104、105 需要家サーバ
105、107 AEMSサーバ
108、109、110 ネットワーク